JP2011198606A - 酸化チタン構造体 - Google Patents

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Abstract

【課題】小さい平均粒子径を有する酸化チタン微粒子からなり、且つ、亜酸化チタンを多く含有することで、導電性の高い色素増感太陽電池を作製できる酸化チタン構造体を提供する。
【解決手段】平均粒子径が1〜100nmの酸化チタン微粒子からなり、前記酸化チタン微粒子の30%以上が、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンである、棒状、管状又は繊維状の酸化チタン構造体。該酸化チタン構造体は、例えば、平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンの集合体を、還元雰囲気下、950℃以下で熱処理する工程を備える方法により得られる。
【選択図】図7

Description

本発明は、色素増感太陽電池等の光電変換素子に用いられる酸化チタン構造体及びその製造方法、並びに該酸化チタン構造体を用いた光電変換素子に関する。
太陽電池は、環境にやさしい発電デバイスとして注目されており、pn接合を利用したシリコン系半導体が広く知られている。しかし、シリコン系太陽電池は製造に際して高真空・高温が必要であり、低コスト化が難しく、普及が妨げられていた。
より低コストの太陽電池の開発が待たれる中、色素を修飾した二酸化チタン粒子等を活性電極に用いた色素増感太陽電池がグレッツェルらによって報告された(特許文献1参照)。色素増感太陽電池は、安価で容易に製造できる太陽電池として注目を集めている。
しかし、現状では、更なる性能の向上が求められており、そのひとつに、導電性の向上が挙げられている。
導電性を向上させるためには、酸化チタンからなる活性電極の比表面積を大きくする、つまり、酸化チタン粒子の平均粒子径を小さくすることが有効とされている。また、酸化チタンのなかでも、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンは、二酸化チタンから酸素が抜けた構造(TiOx;x=1.75〜1.95)をしており、高導電性、高耐食性等の特徴を有するため、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンを燃料電池の触媒、電気デバイスの電極板として用いることで高性能化できることが期待されている。また、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンのなかでも、Tiが最も導電性が高いことが知られている(図1、非特許文献1参照)ことから、Tiを得るために、様々な検討がなされてきた。
従来、Ti等のマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンは、酸化チタン粒子等を出発材料とし、1000℃以上という高温アニールにより作製されてきた(例えば、特許文献2参照)。しかし、高温で作製するため、酸化チタン微粒子同士が凝集し、平均粒子径が100μm以上の粒子しか得られなかった。また、特許文献2では、良好な導電性を得るためには100〜150μm程度の平均粒子径が適切とされており、ナノメートルオーダーまで小さくする課題は全く示唆されていない。
また、平均粒子径特許文献3では、出発材料を酸化チタン微粒子(平均粒子径:数十nm)にすることで、1ミクロン程度の直径を有する酸化チタン微粒子を得ているが、「直径・・・が1ミクロン以上、・・・の粒度を包含しなければならない。」と記載されている等、酸化チタン粒子の平均粒子径をナノメートルオーダーまで小さくする課題は全く示唆されていない。
一方、小さい平均粒子径を有する酸化チタン微粒子からなる酸化チタン構造体としては、例えば、酸化チタン微粒子をカーボンナノチューブ(CNT)表面に被覆させて加熱処理等の方法により、数十nm程度の平均粒子径を有する酸化チタン微粒子からなり、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタン構造体を得る方法が知られている(特許文献4参照)。
ただし、小さい平均粒子径を有する酸化チタン微粒子からなり、且つ、導電性のマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンを多く含む酸化チタン構造体を得る方法は知られていないのが現状である。
特公平8−15097号公報 特表2008−539538号公報 特許第3955620号 特開2010−24132号公報
Monolithic Ti4O7 Ebonex Ceramic
本発明は、小さい平均粒子径を有する酸化チタン微粒子からなり、導電性の高い色素増感太陽電池を作製できる酸化チタン構造体を提供することを目的とする。
上記目的を鑑み、鋭意検討した結果、平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンの集合体を、還元雰囲気下、950℃以下で熱処理することで、上記課題を解決した酸化チタン構造体が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
項1.平均粒子径が1〜100nmの酸化チタン微粒子からなり、
前記酸化チタン微粒子の30%以上が、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンである、
棒状、管状又は繊維状の酸化チタン構造体。
項2.マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンが、一般式(1):
TiOx
(式中、xは1.75〜1.95である)
で示される、項1に記載の酸化チタン構造体。
項3.酸化チタン微粒子が連なってなる、項1又は2に記載の酸化チタン構造体。
項4.さらに、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン及びブルッカイト型酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項5.長軸に直交する平均直径が5〜500nm、長軸の平均長さが0.1〜1000μmであり、平均アスペクト比が3〜200000である、項1〜4のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項6.管状である項1〜5のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
項7.肉厚が1〜250nmである項6に記載の酸化チタン構造体。
項8.平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンの集合体を、還元雰囲気下、950℃以下で熱処理する工程
を備える、項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項9.酸化チタンの集合体が、
棒状又は繊維状のナノスケールカーボンの表面が、平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンからなる被覆層で被覆されてなる酸化チタン被覆ナノスケールカーボンである、項8に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項10.還元雰囲気が、還元性ガスを50〜100モル%含む、項8又は9に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項11.還元性ガスが、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、不飽和炭化水素性ガス及び飽和炭化水素性ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項10に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
項12.項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン構造体、又は項8〜11のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法により得られる酸化チタン構造体を含む活性物質の表面に、色素を担持することを特徴とする光電変換素子。
本発明によれば、小さい平均粒子径を有する酸化チタン微粒子からなり、且つ、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンを多く含有することで、導電性の高い色素増感太陽電池を作製できる酸化チタン構造体を提供できる。
マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンのなかでも、Tiが最も導電性が高いことを示すグラフである。 粒子状酸化チタンが連なってなる酸化チタン構造体を使用する場合における電子の移動を説明する模式図である。 特開2002−338220号公報の実施例1で得られた炭素質材料を構成する鉄−炭素複合体1本の電子顕微鏡(TEM)写真である。 特開2002−338220号公報の実施例1で得られた炭素質材料における鉄−炭素複合体の存在状態を示す電子顕微鏡(TEM)写真である。 特開2002−338220号公報の実施例1で得られた鉄―炭素複合体1本を輪切り状にした電子顕微鏡(TEM)写真である。なお、図6の写真中に示されている黒三角(▲)は、組成分析のためのEDX測定ポイントを示している。 カーボンチューブのTEM像の模式図を示し、(a−1)は、円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図であり、(a−2)は、入れ子構造の多層カーボンナノチューブのTEM像の模式図である。 実施例1の酸化チタン構造体の表面形状を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例1の酸化チタン構造体の中央部の電子顕微鏡(TEM)写真である。 実施例1の酸化チタン構造体の端部の電子顕微鏡(TEM)写真である。
1.酸化チタン構造体
本発明の棒状、管状又は繊維状の酸化チタン構造体は、平均粒子径が1〜100nmの酸化チタン微粒子からなり、前記酸化チタン微粒子の30%以上が、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンであることを必須としている。なお、本明細書において、「酸化チタン」とは、二酸化チタンのみを指すものではなく、Ti、Ti等のニ酸化チタンから酸素欠陥したものも含むものである。
本発明の酸化チタン構造体を構成する酸化チタン微粒子の平均粒子径は、1〜100nm、好ましくは30〜80nmである。このように、酸化チタン微粒子の平均粒子径を上記範囲内とすることで、活性比表面積を大きくすることができるため、より多くの色素を吸着し、光を吸収しやすくできる。なお、酸化チタン微粒子の平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により測定することができる。
本発明の酸化チタン構造体では、酸化チタン微粒子の30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上が、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンである。酸化チタン微粒子の30%以上を、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンとすることで、導電性を向上させることができる。
マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンとは、一般式(1):
TiOx
(式中、xは1.75〜1.95である)
で示され、なかでもxが1.75〜1.85のものは金属と同程度の導電性を有するものである。具体的には、例えば、Ti、Ti、Ti11、Ti15等が挙げられる。中でも、より導電性の高いTが好ましい。これらのマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本発明の酸化チタン構造体には、上記のマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタン以外にも、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン等を含んでいてもよい。マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタン以外の酸化チタンを含む場合には、上記の3種類のなかでも、光に対する活性が高い点から、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。なお、上記3種類のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
酸化チタン微粒子の結晶構造は、例えば、X線回折、電子線回折、ラマン分光分析等により測定することができる。
本発明の酸化チタン構造体の形状は、棒状、管状及び繊維状のいずれでもよい。なかでも、活性表面積を大きくできる点から、管状のものが好ましい。
また、本発明の酸化チタン構造体は、充分な表面積を有しつつ、効率よく電子を伝達する点から、長軸に直交する平均直径が5〜500nm、長軸の平均長さが0.1〜1000μm、平均アスペクト比(長軸の平均長さ/長軸に直交する平均直径)が3〜200000であるものが好ましく、長軸に直交する平均直径が5〜500nm、長軸の平均長さが0.1〜1000μm、平均アスペクト比(長軸の平均長さ/長軸に直交する平均直径)が3〜5000であるものがより好ましく、長軸に直交する平均直径が7〜300nm、長軸の平均長さが1〜50μm、平均アスペクト比が10〜3000であるものがさらに好ましい。なお、本発明において、酸化チタン構造体として管状のものを使用する場合、その直径とは、外径のことを言う。また、酸化チタン構造体の平均直径、平均長さ及び平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡(SEM)観察等により測定することができる。
本発明の酸化チタン構造体が管状の場合、その肉厚は漏れ電流を防止する点から、1〜250nm程度が好ましく、5〜200nm程度がより好ましい。なお、肉厚とは、管状の酸化チタン構造体における外径と内径の差のことを言う。また、本発明の酸化チタン構造体の肉厚は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により測定することができる。
また、本発明では、酸化チタン構造体は、その表面が平滑なものであってもよいし、凹凸を有していてもよい。表面に凹凸を有している場合は、酸化チタン構造体は、酸化チタン微粒子が連なってなるものを使用することが好ましい。ここで、連なってなるとは、酸化チタン微粒子が、隣接する酸化チタン微粒子と密接に接していることを示しており、ただ単に混合して得られる状態のものではないものを言う。
本発明の酸化チタン構造体を、酸化チタン微粒子が連なってなるものとすれば、本発明の棒状、管状又は繊維状の酸化チタン構造体の表面に、微細な凹凸を形成させることができる。このように、表面に微細な凹凸を有する酸化チタン構造体を色素増感太陽電池用として使用すれば、色素を多量に担持し、入射した光を効率よく吸収し、効率よく電子を発生させることができる。また、本発明の酸化チタン構造体は、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンを多く含んでいるため、図2に示すように、隣接する酸化チタンを通して、電子を効率よく透明電極に運ぶことができる。なお、図2では、酸化チタン構造体は、便宜上1原子層のみからなるものを記載しているが、これに限られることはない。
本発明の酸化チタン構造体は、色素を多量に担持し、入射した光を効率よく吸収する点から、比表面積が20m/g以上であるものが好ましく、比表面積が70m/g以上であるものがより好ましく、80m/g以上であるものがさらに好ましい。比表面積は、大きいほうが好ましく、上限値は特に制限されないが、3000m/g程度である。なお、比表面積は、BET法等により測定できる。
本発明の酸化チタン構造体は、より大きな電流が得られる点から、10MPa下での粉体抵抗が3×10Ω・m以下であるものが好ましく、1×10Ω・m以下であるものがより好ましい。粉体抵抗は、小さいほうが好ましく、下限値は特に制限されないが、1×10−6Ω・m以下Ω・m程度である。なお、酸化チタン構造体の粉体抵抗の測定方法は、特に限定されないが、例えば、10MPaの圧力で厚さ0.3mmの平板状に加工し、ペレット間に電圧1Vを印加して流れる電流値を測ることにより測定することができる。
2.酸化チタン構造体の製造方法
本発明の酸化チタン構造体は、平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンの集合体を、還元雰囲気下、950℃以下で熱処理する工程を備える。これにより、平均粒子径が1〜100nm程度と小さい酸化チタン微粒子からなるため比表面積が大きく、酸化チタン微粒子中のマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンの量が多い酸化チタン構造体が得られる。
<酸化チタンの集合体>
酸化チタンの集合体としては、平均粒子径が1〜100nm、好ましくは30〜80nmの酸化チタン微粒子からなる棒状、管状又は繊維状のものであれば特に制限はなく、炭素等を含むものであってもよい。例えば、酸化チタン被覆ナノスケールカーボン、酸化チタンナノチューブ、酸化チタンナノロッド、酸化チタンナノワイヤー等が挙げられる。なかでも、還元性の固体と充分に接し、かつその固体が低温で焼失することでマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンが形成されやすい点から、酸化チタン被覆ナノスケールカーボンが好ましい。なお、酸化チタンの集合体ではなく、酸化チタン微粒子を用いた場合は、1000℃以上という高温で熱処理しなければ2価チタンの酸化物及び3価チタンの酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化チタン(特に、マグネリ相の結晶形態を有する酸化チタン)を含む酸化チタン構造体は得られない。また、酸化チタン微粒子を用いて1000℃以上で熱処理すると、酸化チタン微粒子同士が凝集してしまい、平均粒子径が1μm以上程度となってしまう。このため、活性比表面積を大きくすることができず、充分な導電性が得られない。
酸化チタン被覆ナノスケールカーボンとは、棒状又は繊維状のナノスケールカーボンの表面が、平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンからなる被覆層で被覆されてなるものである。
この酸化チタン被覆ナノスケールカーボンは、例えば、棒状又は繊維状のナノスケールカーボンの表面に、チタンフルオロ錯体からの析出反応により、酸化チタン微粒子からなる被覆層を形成して得られる。
具体的には、例えば、棒状又は繊維状のナノスケールカーボンを、硝酸、硫酸、塩酸等の酸で処理した後、分散剤を含む溶媒中に分散させ、その後、チタンフルオロ錯体及びホウ酸、塩化アルミニウム等のフッ化物イオン補足剤等を加えて酸化チタンを析出させる方法である。
チタンフルオロ錯体としては、特に制限されるわけではないが、例えば、ヘキサフルオロチタン酸アンモニウム、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロチタン酸カリウム等が挙げられる。
前記溶媒としては、特に制限されるものではないが、例えば、水、水とアルコールとの混合溶媒等、チタンフルオロ錯体が溶解する溶媒等が挙げられる。
また、分散剤としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物系分散剤、ポリカルボン酸塩系分散剤、マレイン酸α−オレフィン共重合体塩系分散剤、アニオン性界面活性剤等の陰イオン性分散剤;四級アンモニウム塩系分散剤、アルキルアミン塩等の陽イオン性分散剤;セルロース系分散剤、ポリビニルアルコール系分散剤、ポリエーテル系分散剤等の非イオン性分散剤;両性界面活性剤等のその他の分散剤等が挙げられる。これらのなかでも、非イオン性分散剤が好ましく、ポリエーテル系分散剤がより好ましい。
なお、酸化チタン被覆ナノスケールカーボンの作製方法は上記方法に限られることなく、例えば、チタンアルコキシドを原料とするゾルゲル法又は四塩化チタン等を原料とする湿式法でもよい。ただし、酸化チタン微粒子が連なってなり、比表面積の大きい酸化チタン構造体を作製する観点から、チタンフルオロ錯体からの析出反応により酸化チタンを析出させる方法が好ましい。
ナノスケールカーボン
棒状又は繊維状のナノスケールカーボンとしては、特に制限はないが、ナノスケールカーボンチューブを使用することが好ましい。このナノスケールカーボンチューブは、導電性を有する物質で形成されているのが好ましい。
また、この棒状又は繊維状のナノスケールカーボンは、後にできるだけ微細で表面積が大きく、酸化チタンが長く連続した構造体を製造できる点から、長軸に直交する平均直径が1〜100nm程度、長軸の平均長さが0.1〜1000μm程度、平均アスペクト比が5〜1000000程度のものが好ましく、長軸に直交する平均直径が1〜100nm程度、長軸の平均長さが0.1〜1000μm程度、平均アスペクト比が5〜10000程度のものがより好ましく、長軸に直交する平均直径が1〜50nm程度、長軸の平均長さが1〜50μm程度、平均アスペクト比が10〜10000程度のものがさらに好ましい。なお、長軸に直交する平均直径、長軸の平均長さ及び平均アスペクト比は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察により測定できる。
ナノスケールカーボンチューブ
ナノスケールカーボンチューブは、ナノサイズの直径を有するカーボンチューブを指し、該カーボンチューブのチューブ内空間部には鉄等が内包されていてもよい。
かかるナノスケールカーボンチューブとしては、
(I)単層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブ、
(II)アモルファスナノスケールカーボンチューブ、
(III)ナノフレークカーボンチューブ、
(IV)(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブよりなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に(b)の炭化鉄又は鉄が充填されている鉄−炭素複合体、
(V)これらの2種以上の混合物
等を例示することができる。
カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブ(I)は、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面ないしグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質であり、その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。カーボンナノチューブ(I)のうち、壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じたものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているものは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。本発明では、これら単層カーボンナノチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブがいずれも使用できる。
単層カーボンナノチューブとしては、長軸に直交する平均直径が1〜10nm程度、長軸の平均長さが0.1〜500μm程度、平均アスペクト比が10〜500000程度のものが好ましく、長軸に直交する平均直径が1〜10nm程度、長軸の平均長さが0.1〜500μm程度、平均アスペクト比が10〜50000程度のものがより好ましく、長軸に直交する平均直径が1〜5nm程度、長軸の平均長さが1〜100μm程度、平均アスペクト比が15〜30000程度のものがさらに好ましく、特に、長軸に直交する平均直径が1〜2nm程度、長軸の平均長さが1〜20μm程度、平均アスペクト比が20〜20000程度のものが好ましい。
また、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとしては、長軸に直交する平均直径が1〜100nm程度、長軸の平均長さが0.1〜500μm程度、平均アスペクト比が1〜500000程度のものが好ましく、長軸に直交する平均直径が1〜100nm程度、長軸の平均長さが0.1〜500μm程度、平均アスペクト比が5〜10000程度のものがより好ましく、長軸に直交する平均直径が1〜50nm程度、長軸の平均長さが1〜100μm程度、平均アスペクト比が10〜10000程度のものがさらに好ましく、特に、長軸に直交する平均直径が1〜40nm程度、長軸の平均長さが1〜20μm程度、平均アスペクト比が10〜10000程度のものが好ましい。
アモルファスナノスケールカーボンチューブ
アモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)は、WO00/40509(日本国特許第3355442号)に記載されており、カーボンからなる主骨格を有し、直径が0.1〜1000nmであり、アモルファス構造を有するナノスケールカーボンチューブであって、直線状の形態を有し、X線回折法(入射X線:CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される炭素網平面(002)の平面間隔(d002)が3.54Å以上、特に3.7Å以上であり、回折角度(2θ)が25.1度以下、特に24.1度以下であり、2θバンドの半値幅が3.2度以上、特に7.0度以上であることを特徴とするものである。
該アモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)は、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル等の金属の塩化物の少なくとも1種からなる触媒の存在下で、分解温度が200〜900℃である熱分解性樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール等を、励起処理することにより得られる。
出発原料としての熱分解性樹脂の形状は、フィルム状乃至シート状、粉末状、塊状等の任意の形状であって良い。例えば、基板上に薄膜化アモルファスナノスケールカーボンチューブを形成させた炭素材料を得る場合には、基板上に熱分解性樹脂を塗布あるいは載置した状態で、適切な条件下に励起処理すればよい。
該励起処理としては、例えば、不活性雰囲気中、好ましくは450〜1800℃程度の温度域でかつ原料の熱分解温度以上で加熱する、室温〜3000℃程度の温度域でかつ原料の熱分解温度以上でプラズマ処理する等の処理が例示できる。
アモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)は、アモルファス構造(非晶質構造)を有するナノスケールのカーボンナノチューブで、中空直線状であり、細孔が高度に制御されている。その形状は、主に円柱、四角柱などであり、先端の少なくとも一方が、キャップを有していない(開口している)場合が多い。先端が閉口している場合には、形状がフラット状である場合が多い。
該アモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)としては、平均外径が1〜100nm程度、平均長さが0.1〜1000μm程度、平均アスペクト比が1〜1000000程度のものが好ましく、平均外径が1〜100nm程度、平均長さが0.1〜1000μm程度、平均アスペクト比が5〜10000程度のものがより好ましく、平均外径が1〜50nm程度、平均長さが1〜50μm程度、平均アスペクト比が10〜10000程度のものがさらに好ましい。
ここで、「アモルファス構造」とは、規則的に配列した炭素原子の連続的な炭素層からなる黒鉛質構造ではなく、不規則な炭素網平面からなる炭素質構造を意味し、多数の微細なグラフェンシートが不規則に配列している。代表的な分析手法である透過型電子顕微鏡による像からは、本発明で使用できる非晶質構造のナノスケールカーボンチューブは、炭素網平面の平面方向の広がりがアモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)の直径の1倍より小さい。このように、アモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)は、その壁部が黒鉛構造ではなく多数の微細なグラフェンシート(炭素網面)が不規則に分布したアモルファス構造を有しているため、最外層を構成する炭素網面は、チューブ長手方向の全長にわたって連続しておらず、不連続となっている。特に、最外層を構成する炭素網面の長さは、20nm未満、特に5nm未満である。
非晶質炭素は一般的にはX線回折を示さないが、ブロードな反射を示す。黒鉛質構造では、炭素網平面が規則的に積み重なっているので、炭素網平面間隔(d002)が狭くなり、ブロードな反射は高角側(2θ)に移行して、次第に鋭くなり(2θバンドの半値幅が狭くなり)、d002回折線として観測できるようになる(黒鉛的位置関係で規則正しく積み重なっている場合はd002=3.354Åである)。
これに対し、非晶質構造は、上記のように一般的にはX線による回折を示さないが、部分的に非常に弱い干渉性散乱を示す。X線回折法(入射X線=CuKα)において、ディフラクトメーター法により測定される本発明によるアモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)の理論的な結晶学的特性は、以下の様に規定される:炭素網平面間隔(d002)は、3.54Å以上であり、より好ましくは3.7Å以上である;回折角度(2θ)は、25.1度以下であり、より好ましくは24.1度以下である;前記2θバンドの半値幅は、3.2度以上であり、より好ましくは7.0度以上である。
典型的には、アモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)は、X線回折による回折角度(2θ)が18.9〜22.6度の範囲内にあり、炭素網平面間隔(d002)は3.9〜4.7Åの範囲内にあり、2θバンドの半値幅は7.6〜8.2度の範囲内にある。
アモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)の形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。すなわち、透過型電子顕微鏡によるアモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)像の長さをLとし、そのアモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)を伸ばした時の長さをLとした場合に、L/Lが0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
かかるアモルファスナノスケールカーボンチューブ(II)のチューブ壁部分は、あらゆる方向に配向した複数の微細な炭素網平面(グラフェンシート)からなる非晶質構造であり、これらの炭素網平面の炭素平面間隔により活性点を有するためか、樹脂との親和性に優れているという利点を有する。
鉄−炭素複合体
また、本発明で使用できる鉄−炭素複合体(IV)は、特開2002−338220号公報(特許第3569806号)に記載されており、(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブよりなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなり、該カーボンチューブ(a)のチューブ内空間部の10〜90%の範囲に(b)の炭化鉄又は鉄が充填されている。即ち、チューブ内空間部の100%の範囲に完全に充填されているものではなく、上記炭化鉄又は鉄がそのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に充填されている(即ち、部分的に充填されている)ことを特徴とするものである。壁部は、パッチワーク状ないし張り子状(いわゆるpaper mache状)のナノフレークカーボンチューブである。
本明細書において、「ナノフレークカーボンチューブ」とは、フレーク状の黒鉛シートが複数枚(通常は多数)パッチワーク状ないし張り子状(paper mache状)に集合して構成されている、黒鉛シートの集合体からなる炭素製チューブを指す。
かかる鉄−炭素複合体(IV)は、特開2002−338220号公報に記載の方法に従って、
(1)不活性ガス雰囲気中、圧力を10−5Pa〜200kPaに調整し、反応炉内の酸素濃度を、反応炉容積をA(リットル)とし酸素量をB(Ncc)とした場合の比B/Aが1×10−10〜1×10−1となる濃度に調整した反応炉内でハロゲン化鉄を600〜900℃まで加熱する工程、及び
(2)上記反応炉内に不活性ガスを導入し、圧力10−5Pa〜200kPaで熱分解性炭素源を導入して600〜900℃で加熱処理を行う工程
を包含する製造方法により製造される。
ここで、酸素量Bの単位である「Ncc」は、気体の25℃での標準状態に換算したときの体積(cc)という意味である。
該鉄−炭素複合体(IV)は、(a)ナノフレークカーボンチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブよりなる群から選ばれるカーボンチューブと(b)炭化鉄又は鉄とからなるものであって、該カーボンチューブ内空間部(即ち、チューブ壁で囲まれた空間)の実質上全てが充填されているのではなく、該空間部の一部、より具体的には10〜90%程度、特に30〜80%程度、好ましくは40〜70%程度が炭化鉄又は鉄により充填されている。
鉄−炭素複合体(IV)においては、特開2002−338220号公報に記載されているように、炭素部分は、製造工程(1)及び(2)を行った後、特定の速度で冷却するとナノフレークカーボンチューブとなり、製造工程(1)及び(2)を行った後、不活性気体中で加熱処理を行い、特定の冷却速度で冷却することにより、入れ子構造の多層カーボンナノチューブとなる。
ナノフレークカーボンチューブ(a−1)と炭化鉄又は鉄(b)からなる鉄−炭素複合体(IV)は、典型的には円柱状であるが、そのような円柱状の鉄−炭素複合体(特開2002−338220号公報の実施例1で得られたもの)の長手方向にほぼ垂直な断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を図5に示し、側面のTEM写真を図3に示す。
また、図6の(a−1)にそのような円柱状のナノフレークカーボンチューブのTEM像の模式図を示す。図6の(a−1)において、100は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向のTEM像を模式的に示しており、200は、ナノフレークカーボンチューブの長手方向にほぼ垂直な断面のTEM像を模式的に示している。
鉄−炭素複合体(IV)を構成するナノフレークカーボンチューブ(a−1)は、代表的には、中空円筒状の形態を有し、その断面をTEM観察した場合、弧状グラフェンシート像が同心円状に集合しており、個々のグラフェンシート像は、不連続な環を形成しており、その長手方向をTEMで観察した場合、略直線状のグラフェンシート像が、長手方向にほぼ並行に多層状に配列しており、個々のグラフェンシート像は、長手方向全長にわたって連続しておらず、不連続となっているという特徴を有している。
より詳しくは、本発明で使用できる鉄−炭素複合体(IV)を構成しているナノフレークカーボンチューブ(a−1)は、図5及び図6の(a−1)の200から明らかなように、その長手方向に垂直な断面をTEM観察した場合、多数の弧状グラフェンシート像が同心円状(多層構造のチューブ状)に集合しているが、個々のグラフェンシート像は、例えば210、214に示すように、完全に閉じた連続的な環を形成しておらず、途中で途切れた不連続な環を形成している。一部のグラフェンシート像は、211に示すように、分岐している場合もある。不連続点においては、一つの不連続環を構成する複数の弧状TEM像は、図6の(a−1)の222に示すように、層構造が部分的に乱れている場合もあれば、223に示すように隣接するグラフェンシート像との間に間隔が存在している場合もあるが、TEMで観察される多数の弧状グラフェンシート像は、全体として、多層状のチューブ構造を形成している。
また、図3及び図6の(a−1)の100から明らかなように、ナノフレークカーボンチューブ(a−1)の長手方向をTEMで観察した場合、多数の略直線状のグラフェンシート像が本発明で使用する鉄−炭素複合体(IV)の長手方向にほぼ並行に多層状に配列しているが、個々のグラフェンシート像110は、鉄−炭素複合体(IV)の長手方向全長にわたって連続しておらず、途中で不連続となっている。一部のグラフェンシート像は、図6の(a−1)の111に示すように、分岐している場合もある。また、不連続点においては、層状に配列したTEM像のうち、一つの不連続層のTEM像は、図6の(a−1)の112に示すように、隣接するグラフェンシート像と少なくとも部分的に重なり合っている場合もあれば、113に示すように隣接するグラフェンシート像と少し離れている場合もあるが、多数の略直線状のTEM像が、全体として多層構造を形成している。
かかるナノフレークカーボンチューブ(a−1)の構造は、従来の多層カーボンナノチューブと大きく異なっている。即ち、図6の(a−2)の400に示すように、入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)は、その長手方向に垂直な断面のTEM像が、410に示すように、実質上完全な円形のTEM像となっている同心円状のチューブであり、且つ、図6の(a−2)の300に示すように、その長手方向の全長にわたって連続する直線状グラフェンシート像310等が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
以上より、詳細は未だ完全には解明されていないが、鉄−炭素複合体(IV)を構成するナノフレークカーボンチューブ(a−1)は、フレーク状のグラフェンシートが多数パッチワーク状ないし張り子状に重なり合って全体としてチューブを形成しているようにみえる。
このようなナノフレークカーボンチューブ(a−1)とそのチューブ内空間部に内包された炭化鉄又は鉄(b)からなる鉄−炭素複合体(IV)は、特許第2546114号に記載されているような入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)のチューブ内空間部に金属が内包された複合体に比し、カーボンチューブの構造において大きく異なっている。
鉄−炭素複合体(IV)を構成しているナノフレークカーボンチューブ(a−1)をTEM観察した場合において、その長手方向に配向している多数の略直線状のグラフェンシート像に関し、個々のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。即ち、図6の(a−1)の100に示されるように、110で示される略直線状のグラフェンシートのTEM像が多数集まってナノフレークカーボンチューブ(a−1)の壁部のTEM像を構成しており、個々の略直線状のグラフェンシート像の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。
このように、鉄−炭素複合体(IV)においては、その壁部を構成するナノフレークカーボンチューブ(a−1)の最外層は、チューブ長手方向の全長にわたって連続していない不連続なグラフェンシートから形成されており、その最外面の炭素網面の長さは、通常、2〜500nm程度、特に10〜100nm程度である。
鉄−炭素複合体(IV)を構成するナノフレークカーボンチューブ(a−1)の壁部の炭素部分は、上記のようにフレーク状のグラフェンシートが多数長手方向に配向して全体としてチューブ状となっているが、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
また、鉄−炭素複合体(IV)のナノフレークカーボンチューブ(a−1)からなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
前記のように、工程(1)及び(2)を行った後、特定の加熱工程を行うことにより、得られる鉄−炭素複合体(IV)を構成するカーボンチューブは、入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)となる。
こうして得られる入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)は、図6の(a−2)の400に示すように、その長手方向に垂直な断面のTEM像が実質的に完全な円を構成する同心円状のチューブであり、且つ、その長手方向の全長にわたって連続したグラフェンシート像が平行に配列している構造(同心円筒状ないし入れ子状の構造)である。
鉄−炭素複合体(IV)を構成する入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)の壁部の炭素部分は、X線回折法により測定した場合に、炭素網面間の平均距離(d002)が0.34nm以下の黒鉛質構造を有するものである。
また、鉄−炭素複合体(IV)の入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)からなる壁部の厚さは、49nm以下、特に0.1〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度であって、全長に亘って実質的に均一である。
本明細書において、上記ナノフレークカーボンチューブ(a−1)及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)よりなる群から選ばれるカーボンチューブ内空間部の炭化鉄又は鉄(b)による充填率(10〜90%)は、鉄−炭素複合体(IV)を透過型電子顕微鏡で観察し、各カーボンチューブの空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の像の面積に対する、炭化鉄又は鉄(b)が充填されている部分の像の面積の割合である。
炭化鉄又は鉄(b)の充填形態は、カーボンチューブ内空間部に連続的に充填されている形態、カーボンチューブ内空間部に断続的に充填されている形態等があるが、基本的には断続的に充填されている。従って、鉄−炭素複合体(IV)は、金属内包炭素複合体ないし鉄化合物内包炭素複合体、炭化鉄又は鉄内包炭素複合体とも言うべきものである。
また、鉄−炭素複合体(IV)に内包されている炭化鉄又は鉄(b)は、カーボンチューブの長手方向に配向しており、結晶性が高く、炭化鉄又は鉄(b)が充填されている範囲のTEM像の面積に対する、結晶性炭化鉄又は鉄(b)のTEM像の面積の割合(以下「結晶化率」という)は、一般に、90〜100%程度、特に95〜100%程度である。
内包されている炭化鉄又は鉄(b)の結晶性が高いことは、鉄−炭素複合体(IV)の側面からTEM観察した場合、内包物のTEM像が格子状に配列していることから明らかであり、電子線回折において明確な回折パターンが得られることからも明らかである。
また、鉄−炭素複合体(IV)に炭化鉄又は鉄(b)が内包されていることは、電子顕微鏡、EDX(エネルギー分散型X線検出器)により容易に確認することができる。
鉄−炭素複合体(IV)は、湾曲が少なく、直線状であり、壁部の厚さが全長に亘ってほぼ一定の均一厚さを有しているので、全長に亘って均質な形状を有している。その形状は、柱状で、主に円柱状である。
該鉄−炭素複合体(IV)としては、平均外径が1〜100nm程度、平均長さが0.1〜1000μm程度、平均アスペクト比が1〜1000000程度のものが好ましく、平均外径が1〜100nm程度、平均長さが0.1〜1000μm程度、平均アスペクト比が5〜10000程度のものがより好ましく、平均外径が1〜50nm程度、平均長さが1〜400μm程度、平均アスペクト比が10〜10000程度のものがさらに好ましい。
鉄−炭素複合体(IV)の形状を表す一つの用語である「直線状」なる語句は、次のように定義される。即ち、透過型電子顕微鏡により本発明で使用する鉄−炭素複合体(IV)を含む炭素質材料を200〜2000nm四方の範囲で観察し、像の長さをWとし、該像を直線状に伸ばした時の長さをWoとした場合に、比W/Woが、0.8以上、特に、0.9以上となる形状特性を意味するものとする。
鉄−炭素複合体(IV)は、バルク材料としてみた場合、次の性質を有する。即ち、本発明では、上記のようなナノフレークカーボンチューブ(a−1)及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(a−2)から選ばれるカーボンチューブのチューブ内空間部の10〜90%の範囲に鉄または炭化鉄(b)が充填されている鉄−炭素複合体(IV)は、顕微鏡観察によりかろうじて観察できる程度の微量ではなく、多数の該鉄−炭素複合体(IV)を含むバルク材料であって、鉄−炭素複合体(IV)を含む炭素質材料、或いは、炭化鉄又は鉄内包炭素質材料ともいうべき材料の形態で大量に得られる。
特開2002−338220号公報の実施例1で製造されたナノフレークカーボンチューブ(a−1)とそのチューブ内空間部に充填された炭化鉄(b)からなる本発明で使用できる炭素質材料の電子顕微鏡写真を、図4に示す。
図4から判るように、本発明で使用する鉄−炭素複合体(IV)を含む炭素質材料においては、基本的にはほとんど全ての(特に99%又はそれ以上の)カーボンチューブにおいて、その空間部(即ち、カーボンチューブのチューブ壁で囲まれた空間)の10〜90%の範囲に炭化鉄又は鉄(b)が充填されており、空間部が充填されていないカーボンチューブは実質上存在しないのが通常である。但し、場合によっては、炭化鉄又は鉄(b)が充填されていないカーボンチューブも微量混在することがある。
また、本発明で使用する炭素質材料においては、上記のようなカーボンチューブ内空間部の10〜90%に鉄又は炭化鉄(b)が充填されている鉄−炭素複合体(IV)が主要構成成分であるが、鉄−炭素質複合体(IV)以外に、スス等が含まれている場合がある。そのような場合は、鉄−炭素質複合体以外の成分を除去して、炭素質材料中の鉄−炭素質複合体(IV)の純度を向上させ、実質上鉄−炭素複合体(IV)のみからなる炭素質材料を得ることもできる。
また、従来の顕微鏡観察で微量確認し得るに過ぎなかった材料とは異なり、鉄−炭素複合体(IV)を含む炭素質材料は大量に合成できるので、その重量を容易に1mg以上とすることができる。
炭素質材料は、該炭素質材料1mgに対して25mm以上の照射面積で、CuKαのX線を照射した粉末X線回折測定において、内包されている鉄又は炭化鉄(b)に帰属される40°<2θ<50°のピークの中で最も強い積分強度を示すピークの積分強度をIaとし、カーボンチューブの炭素網面間の平均距離(d002)に帰属される26°<2θ<27°のピークの積分強度Ibとした場合に、IaのIbに対する比R(=Ia/Ib)が、0.35〜5程度、特に0.5〜4程度であるのが好ましく、より好ましくは1〜3程度である。
本明細書において、上記Ia/Ibの比をR値と呼ぶ。このR値は、鉄−炭素複合体(IV)を含む炭素質材料を、X線回折法において25mm以上のX線照射面積で観察した場合に、炭素質材料全体の平均値としてピーク強度が観察されるために、TEM分析で測定できる1本の鉄−炭素複合体(IV)における内包率ないし充填率ではなく、鉄−炭素複合体(IV)の集合物である炭素質材料全体としての、炭化鉄又は鉄(b)充填率ないし内包率の平均値を示すものである。
なお、多数の鉄−炭素複合体(IV)を含む炭素質材料全体としての平均充填率は、TEMで複数の視野を観察し、各視野で観察される複数の鉄−炭素複合体(IV)における炭化鉄又は鉄(b)の平均充填率を測定し、更に複数の視野の平均充填率の平均値を算出することによっても求めることができる。かかる方法で測定した場合、鉄−炭素複合体(IV)からなる炭素質材料全体としての炭化鉄又は鉄(b)の平均充填率は、10〜90%程度、特に40〜70%程度である。
ナノフレークカーボンチューブ
上記の鉄又は炭化鉄(b)がナノフレークカーボンチューブ(a−1)のチューブ内空間に部分内包されている鉄−炭素複合体(IV)を酸処理することにより、内包されている鉄又は炭化鉄(b)が溶解除去され、チューブ内空間部に鉄又は炭化鉄(b)が存在しない中空のナノフレークカーボンチューブ(III)を得ることができる。
上記酸処理に使用する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等を例示でき、その濃度は0.1〜2N程度のものが好ましい。酸処理方法としては、種々の方法により行うことが可能であるが、例えば、1Nの塩酸100mlに対して、1gの鉄内包ナノフレークカーボンチューブを分散し、室温で6時間撹拌処理し、ろ過分離した後、さらに、2回1Nの塩酸100mlで同様の処理を行なうことで、中空のナノフレークカーボンチューブ(III)を得ることができる。
この酸処理によってもナノフレークカーボンチューブ(III)の基本的構成は特に変化を受けない。よって、チューブ内空間部に鉄又は炭化鉄(b)が存在しない中空のナノフレークカーボンチューブ(III)においても、その最外面を構成する炭素網面の長さは、500nm以下であり、特に2〜500nm、特に10〜100nmである。
酸化チタン被覆ナノスケールカーボン
このようにして得られる酸化チタン被覆ナノスケールカーボンは、漏れ電流を防止する点から、棒状又は繊維状のナノスケールカーボンの表面の酸化チタンの被覆率が、70〜100%、特には85〜100%であることが好ましい。また、カーボン/チタンの表面元素比率は、0/100〜70/30(原子比)が好ましく、0/100〜50/50(原子比)がより好ましい。なお、表面被覆率(カーボンの表面上の、粒子状酸化チタンが連なってなる被覆層で覆われている箇所の割合)は、例えば、電子顕微鏡(SEM又はTEM)観察等により、また、カーボン/チタンの表面元素比率は、例えば、X線光電子分光分析等により、測定することができる。
<還元雰囲気>
還元雰囲気としては、特に制限されるわけではないが、還元性ガスを有する雰囲気とすればよい。還元性ガスとしては、例えば、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、不飽和炭化水素性ガス(アセチレン、エチレン等)、飽和炭化水素性ガス(メタン、エタン、プロパン等)等が挙げられ、水素、一酸化炭素及びアセチレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。このように、還元雰囲気下で熱処理することで、得られる酸化チタン構造体におけるマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンの含有量を大きくすることができる。
なお、本発明では、還元雰囲気とは、必ずしも、上記還元性ガスのみからなる雰囲気とする必要はなく、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスを含んでいてもよい。不活性ガスを含む雰囲気とする場合には、還元性ガスは、50モル%以上含んでいればよい。
また、還元雰囲気で熱処理した場合でも、後述の熱処理温度を満たさない場合、つまり高温で熱処理した場合は、酸化チタン微粒子同士が凝集してしまい、平均粒子径が1μm以上程度となってしまう。このため、活性比表面積を大きくすることができず、充分な導電性が得られない。
<熱処理温度>
熱処理温度は950℃以下、好ましくは650〜850℃である。上述のように、熱処理温度が高すぎると、酸化チタン微粒子同士が凝集してしまい、平均粒子径が1μm以上程度となってしまうためである。
なお、950℃以下で熱処理した場合でも、後述の還元雰囲気でない場合、例えば大気中、不活性雰囲気下等で熱処理した場合は、得られる酸化チタン構造体におけるマグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンの含有量を充分に大きくできない。
3.光電変換素子
本発明の光電変換素子は、導電性基板、半導体層、電荷輸送層及び対向電極から少なくとも構成される。
導電性基板は、通常、基板上に電極層を有するものである。基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色又は有色の樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン等が挙げられる。なお、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
また、電極として作用する導電膜の材料は特に限定されないが、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステン、チタン等の金属や金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、錫や亜鉛等の金属酸化物に、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))、Antimony doped Tin Oxide(ATO(SnO:Sb))等が好適なものとして用いられる。
導電膜の膜厚は、通常100〜10000nm、好ましくは300〜2000nmである。また、表面抵抗(抵抗率)は適宜選択されるところであるが、通常0.5〜500Ω/sq、好ましくは1〜50Ω/sqである。
導電膜の形成法は特に限定されるものではなく、用いる金属や金属酸化物の種類により公知の方法を適宜採用することができる。通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法又はスパッタリング法等が用いられる。いずれの場合も基板温度が20〜700℃の範囲内で形成されるのが望ましい。
本発明の光電変換素子における対向電極(対極)は、導電性材料からなる単層構造でもよいし、導電層と基板とから構成されていてもよい。基板としては、特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、樹脂でも良い。かかる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテン等が挙げられる。また、電荷輸送層上に直接導電性材料を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)して対極を形成しても良い。
導電性材料としては、白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属;炭素材料;導電性有機物等の比抵抗の小さな材料が用いられる。
また、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いても良い。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀、タングステン等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。
半導体層としては、上述した本発明の酸化チタン構造体からなるものを使用する。ただし、本発明の酸化チタン構造体の配向方向に関しては特に制限はなく、その長手方向が基板に対して必ずしも略垂直等特定の方向に配向させる必要はない。また、半導体層は、必ずしも本発明の酸化チタン構造体のみからなるものである必要はなく、例えば、酸化チタン微粒子、公知の酸化チタンナノチューブ等と混合してもよい。
導電性基板上に半導体層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、本発明の酸化チタン構造体を含むペーストを調製し、導電性基板上に塗布して焼成する方法等が挙げられる。この際、ペーストの溶媒としては、水、有機溶媒などを用いることができる。
有機溶媒としては、本発明の酸化チタン構造体を分散できるものであれば、特に限定はない。例えば、エタノール、メタノール、テルピネオール等のアルコール類やエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類等を用いることができる。これらの溶媒は、分散性と揮発性、粘度を考慮し、通常混合して用いられる。ペースト中の溶媒の割合としては、塗布時に流動性を持たせる点と塗布後の厚みを保持する点、また多孔質の酸化チタンを形成する点から、50〜90重量%が、特に60〜75重量%が好ましい。
分散液の成分として、上記の溶媒以外に、増粘剤等を含んでもよい。
増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース等が挙げられる。なかでも、アルキルセルロース、特にエチルセルロースを好適に用いることができる。
ペースト中の増粘剤の割合としては、塗布時の流動性と塗布後の厚みのバランスをとる点から、2〜20重量%が、特に3〜15重量%が好ましい。
ペースト中の酸化チタンの割合としては、上記と同様に塗布時の流動性と塗布後の厚みのバランスの点から、10〜50重量%が、特に10〜30重量%が好ましい。さらにその酸化チタン中において、本発明の酸化チタン構造体と他の酸化チタンとを併用する場合には、本発明の酸化チタン構造体を0.1〜90重量%(さらに0.2〜70重量%(特に0.3〜50重量%))含んでいることが好ましい。なお、残部は上記の酸化チタン微粒子又は公知の酸化チタンナノチューブとすることが好ましい。
本発明の光電変換素子においては、半導体層の光吸収効率を向上すること等を目的として、半導体層に色素を担持(吸着、含有など)させたものが用いられる。
色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し、半導体層の光吸収効率を向上(増感)させる色素であれば特に限定されないが、金属錯体色素、有機色素、天然色素、半導体等が好ましい。また、半導体層への吸着性を付与するために、色素の分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、ホスホニル基、カルボキシルアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホニルアルキル基、ホスホニルアルキル基等の官能基を有するものが好適に用いられる。
金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、亜鉛、水銀の錯体(例えば、メリクルクロム等)や、金属フタロシアニン、クロロフィル等を用いることができる。また、有機色素としては、例えば、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、金属フリーフタロシアニン系色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。色素として用いることができる半導体としては、i型の光吸収係数が大きなアモルファス半導体や直接遷移型半導体、量子サイズ効果を示し、可視光を効率よく吸収する微粒子半導体が好ましい。通常、各種の半導体や金属錯体色素や有機色素の一種、又は光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合することができる。また、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、混合する色素とその割合を選ぶことができる。
色素を半導体層に吸着させる方法としては、例えば、溶媒に色素を溶解させた溶液を、半導体層上にスプレーコートやスピンコート等により塗布した後、乾燥する方法により形成することができる。この場合、適当な温度に基板を加熱しても良い。また、半導体層を溶液に浸漬して吸着させる方法を用いることもできる。浸漬する時間は色素が充分に吸着すれば特に制限されることはないが、好ましくは10分〜30時間、より好ましくは1〜20時間である。また、必要に応じて浸漬する際に溶媒や基板を加熱しても良い。溶液にする場合の色素の濃度としては、1〜1000mmol/L、好ましくは10〜500mmol/L程度である。
用いる溶媒は特に制限されるものではないが、水及び有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等のニトリル類;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、2−ブタノン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、半導体層に共吸着させてもよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等のステロイド化合物やスルホン酸塩類等が挙げられる。
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶媒等を用いて行うのが好ましい。
色素を吸着させた後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて、半導体層の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としては、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としては、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する。本発明で用いる電荷輸送材料は、イオンが関わる電荷輸送材料であり、酸化還元対イオンが溶解した溶液、酸化還元対の溶液をポリマーマトリックスのゲルに含浸したゲル電解質組成物、固体電解質組成物等が挙げられる。
イオンがかかわる電荷輸送材料としての電解液は、電解質、溶媒及び添加物から構成されることが好ましい。電解液に用いる電解質の例としては、ヨウ素とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、臭素と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr、CaBr等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合わせ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等が挙げられる。中でも、IとLiI又はピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩とを組み合わせた電解質が好ましい。電解質は混合して用いてもよい。
溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられる溶媒であればいずれも使用することができる。具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が使用可能である。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプロピオニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が好ましい。また、常温溶融塩類も用いることができる。ここで、常温溶融塩とは、常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示すものである。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
また、4−t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を前述の溶融塩電解質組成物や電解液に添加することが好ましい。塩基性化合物を電解液に添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2mol/Lである。溶融塩電解質組成物に添加する場合、塩基性化合物はイオン性基を有することが好ましい。溶融塩電解質組成物全体に対する塩基性化合物の配合割合は、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。
ポリマーマトリックスとして使用できる材料としては、ポリマーマトリックス単体で、あるいは可塑剤の添加や、支持電解質の添加、または可塑剤と支持電解質の添加によって固体状態またはゲル状態が形成されれば特に制限は無く、一般的に用いられるいわゆる高分子化合物を用いることができる。
上記ポリマーマトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、フッ化ビニリデン等のモノマーを重合又は共重合して得られる高分子化合物を挙げることができる。また、これらの高分子化合物は単独で用いても良く、また混合して用いても良い。これらの中でも、特にポリフッ化ビニリデン系高分子化合物が好ましい。
電荷輸送層は2通りの方法のいずれかにより形成できる。1つ目の方法は半導体層と対極を貼り合わせておき、その間隙に液状の電荷輸送層を挟み込む方法である。2つ目の方法は半導体層上に直接電荷輸送層を付与する方法で、対極はその後付与することになる。
前者の方法の場合、電荷輸送層を挟み込む際には、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス、又は常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
後者の方法において湿式の電荷輸送層を用いる場合は、通常未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置を施す。また、ゲル電解質組成物を用いる場合には、これを湿式で塗布した後で重合等の方法により固体化してもよい。固体化は対極を付与する前に行っても後に行ってもよい。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらのみに限定されるものではない。
実施例1
ナノスケールカーボンチューブ(平均直径:35nm、平均長さ:5μm、平均アスペクト比:143)0.96gに69%硝酸150gを加え、90〜95℃にて6時間保持した。これをろ過し、蒸留水にてろ液がpH6〜7になるまで洗浄した後、乾燥させた。
これを、ポリエーテル系分散剤3.7gを含む蒸留水100gに超音波ホモジナイザーを用いて分散させた。このナノスケールカーボン分散液に1.0Mに希釈したヘキサフルオロチタン酸アンモニウム及び1.0Mに希釈したホウ酸をそれぞれの濃度が0.20M及び0.4Mとなるように加え、35℃にて16時間放置した後、ろ過し、乾燥してナノスケールカーボンチューブの表面に酸化チタンが被覆した構造体を得た。
この構造体をX線光電子分光分析で測定したところ、カーボン/チタンの原子比は0.1でわずかのカーボンしか検出されなかった。また、電子顕微鏡(SEM)で観察を行ったところ、酸化チタンの表面被覆率は98%程度であった。なお、1nm以上の凹凸がない平滑な部分(カーボンチューブの酸化チタンで被覆されていない部分)が5nm以上連続して存在する部分を、被覆されずカーボンチューブが露出している部分とみなし、表面被覆率を測定した。
X線回折法及びラマン分光分析が数マイクロメートルの深さまでの情報を反映するのに対し、X線光電子分光分析は、表面の数ナノメートルの部分の分析なのでナノスケールカーボンチューブが露出せず、酸化チタンが被覆されていることがわかる。
この酸化チタン被覆ナノスケールカーボンチューブを、750℃で2時間焼成し、ナノスケールカーボンチューブを消失させることで、粒子状酸化チタンが連なってなる管状の酸化チタン構造体を得た。なお、焼成雰囲気は、水素ガスを0.1L/minで導入し、水素ガスのみからなる雰囲気とした。
実験例1
実施例1にて製造した焼成後の酸化チタン構造体について、X線回折法及びラマン分光分析により結晶相を同定したところ、約50%がマグネリ相(Ti)であった。
また、ナノスケールカーボンチューブに由来するグラファイトのピークは観測されなかった。
また、電子顕微鏡(SEM及びTEM)にて構造を観察したところ、図7〜9のような結果になり、平均粒子径30〜60nmの酸化チタン微粒子が集合して肉厚が30〜200nm程度、平均直径が50〜300nm程度、平均長さが1000〜10000nm程度、平均アスペクト比が20〜200程度の管状であった。
なお、図8(酸化チタン構造体の中央部)のA〜C、図9(酸化チタン構造体の端部)のD〜Fの各点において、電子線回折測定をしたところ、以下の表1のような構造が確認された。
Figure 2011198606
さらに、実施例1で製造した酸化チタン構造体を、色素増感太陽電池の負極として用い、太陽電池の評価を行った。
酸化チタン(石原産業(株)製のST−21(平均粒子径20nm))3.0g、エチルセルロース1.5g及びα−テルピネオール10gを混合し、さらに、実施例1で製造した酸化チタン構造体を、酸化チタンの5重量%となるように添加して得られる酸化チタンペーストを、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)ガラス(日本板硝子(株)製、抵抗:10Ω/sq)上に、厚みが14μmとなるように塗布した。
その後、125℃で乾燥し、500℃で1時間焼成することで、酸化チタン電極を作製した。得られた酸化チタン電極にルテニウム色素(Solaronix社製のRutenium535-bis-TBA(N719))を吸着させ、Ptスパッタ導電ガラス(ジオマテック(株)製、抵抗:2Ω/sq)との間に電解液(Solaronix社製のIodolyte AN-50)を封入した。
セルに擬似太陽光(100mW/cm)を照射し、マルチメーター(ADCMT製)により短絡電流を測定したところ、17.2mA/cmの電流密度を得た。
実施例2
焼成温度を850℃とすること以外は実施例1と同様に、酸化チタン構造体を得た。
実験例2
実施例2にて製造した焼成後の酸化チタン構造体について、X線回折法及びラマン分光分析により結晶相を同定したところ、ほぼ100%がマグネリ相(Ti)であった。
また、電子顕微鏡(SEM及びTEM)にて構造を観察したところ、平均粒子径50〜80nmの酸化チタン微粒子が集合して肉厚が50〜200nm程度、平均直径が100〜300nm程度、平均長さが1000〜10000nm程度、平均アスペクト比が10〜100程度の管状であった。
さらに、実施例1と同様に太陽電池セルの短絡電流を測定したところ、18.2mA/cmの電流密度を得た。
実施例3
焼成雰囲気を、一酸化炭素ガスを0.1L/minで導入し、一酸化炭素ガスのみからなる雰囲気とすること以外は実施例1と同様に、酸化チタン構造体を得た。
実験例3
実施例3にて製造した焼成後の酸化チタン構造体について、X線回折法及びラマン分光分析により結晶相を同定したところ、ほぼ100%がマグネリ相(Ti)であった。
また、電子顕微鏡(SEM及びTEM)にて構造を観察したところ、平均粒子径50〜80nmの酸化チタン微粒子が集合して肉厚が50〜200nm程度、平均直径が100〜300nm程度、平均長さが1000〜10000nm程度、平均アスペクト比が10〜100程度の管状であった。
さらに、実施例1と同様に太陽電池セルの短絡電流を測定したところ、18.2mA/cmの電流密度を得た。
実施例4
焼成雰囲気を、アセチレンガスを0.1L/minで導入し、アセチレンガスのみからなる雰囲気とすること以外は実施例1と同様に、酸化チタン構造体を得た。
実験例4
実施例4にて製造した焼成後の酸化チタン構造体について、X線回折法及びラマン分光分析により結晶相を同定したところ、ほぼ100%がマグネリ相(Ti)であった。
また、電子顕微鏡(SEM及びTEM)にて構造を観察したところ、平均粒子径50〜80nmの酸化チタン微粒子が集合して肉厚が50〜200nm程度、平均直径が100〜300nm程度、平均長さが1000〜10000nm程度、平均アスペクト比が10〜100程度の管状であった。
さらに、実施例1と同様に太陽電池セルの短絡電流を測定したところ、18.2mA/cmの電流密度を得た。
比較例1
平均粒子径20nmの酸化チタン微粒子を、850℃で2時間焼成した。なお、焼成雰囲気は、水素ガスを0.1L/minで導入し、水素ガスのみからなる雰囲気とした。
比較実験例1
比較例1にて製造した焼成後の酸化チタン構造体について、X線回折法及びラマン分光分析により結晶相を同定したところ、マグネリ相(Ti)は存在しなかった。
また、電子顕微鏡(SEM及びTEM)にて構造を観察したところ、平均直径が30〜50nm程度のものであった。
さらに、実施例1と同様に太陽電池セルの短絡電流を測定したところ、13.6mA/cmの電流密度を得た。
比較例2
焼成温度を1100℃とすること以外は比較例1と同様にした。
比較実験例2
比較例2にて製造した焼成後の酸化チタン構造体について、X線回折法及びラマン分光分析により結晶相を同定したところ、約80%がマグネリ相(Ti)であった。
また、電子顕微鏡(SEM及びTEM)にて構造を観察したところ、酸化チタン微粒子同士が凝集しており、平均直径が1000〜1500nm程度のものであった。
さらに、実施例1と同様に太陽電池セルの短絡電流を測定したところ、14.3mA/cmの電流密度を得た。
比較例3
焼成雰囲気を、大気中とすること以外は実施例1と同様に、酸化チタン構造体を得た。
比較実験例3
比較例3にて製造した焼成後の酸化チタン構造体について、X線回折法及びラマン分光分析により結晶相を同定したところ、約16%がマグネリ相(Ti)であった。
また、電子顕微鏡(SEM及びTEM)にて構造を観察したところ、平均粒子径30〜50nmの酸化チタン微粒子が集合して肉厚が30〜200nm程度、平均直径が50〜300nm程度、平均長さが1000〜10000nm程度、平均アスペクト比が20〜200程度の管状であった。
さらに、実施例1と同様に太陽電池セルの短絡電流を測定したところ、15.8mA/cmの電流密度を得た。
上記実施例及び比較例の結果を表2に示す。
Figure 2011198606

Claims (12)

  1. 平均粒子径が1〜100nmの酸化チタン微粒子からなり、
    前記酸化チタン微粒子の30%以上が、マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンである、
    棒状、管状又は繊維状の酸化チタン構造体。
  2. マグネリ相構造の結晶形態を有する酸化チタンが、一般式(1):
    TiOx
    (式中、xは1.75〜1.95である)
    で示される、請求項1に記載の酸化チタン構造体。
  3. 酸化チタン微粒子が連なってなる、請求項1又は2に記載の酸化チタン構造体。
  4. さらに、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン及びブルッカイト型酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
  5. 長軸に直交する平均直径が5〜500nm、長軸の平均長さが0.1〜1000μmであり、平均アスペクト比が3〜200000である、請求項1〜4のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
  6. 管状である請求項1〜5のいずれかに記載の酸化チタン構造体。
  7. 肉厚が1〜250nmである請求項6に記載の酸化チタン構造体。
  8. 平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンの集合体を、還元雰囲気下、950℃以下で熱処理する工程
    を備える、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法。
  9. 酸化チタンの集合体が、
    棒状又は繊維状のナノスケールカーボンの表面が、平均粒子径が1〜100nmの酸化チタンからなる被覆層で被覆されてなる酸化チタン被覆ナノスケールカーボンである、請求項8に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
  10. 還元雰囲気が、還元性ガスを50〜100モル%含む、請求項8又は9に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
  11. 還元性ガスが、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、不飽和炭化水素性ガス及び飽和炭化水素性ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の酸化チタン構造体の製造方法。
  12. 請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン構造体、又は請求項8〜11のいずれかに記載の酸化チタン構造体の製造方法により得られる酸化チタン構造体を含む活性物質の表面に、色素を担持することを特徴とする光電変換素子。
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