JP2011194872A - 塗装鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】耐熱性樹脂、フッ素樹脂および未被覆アルミニウム粒子を含むトップ塗料を、鋼板の表面に塗布し、焼き付ける。耐熱性樹脂としては、その分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせを使用する。
【選択図】図2
Description
[1]鋼板を準備するステップと、耐熱性樹脂、フッ素樹脂および未被覆アルミニウム粒子を含むトップ塗料を前記鋼板の表面に塗布するステップと、前記鋼板の表面に塗布されたトップ塗料を焼き付けるステップとを有し;前記耐熱性樹脂は、その分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせである、塗装鋼板の製造方法。
[2]前記未被覆アルミニウム粒子は、アスペクト比が10以上の鱗片状である、[1]に記載の塗装鋼板の製造方法。
[3]前記未被覆アルミニウム粒子は、平均粒径が6〜60μmの範囲内である、[1]または[2]に記載の塗装鋼板の製造方法。
[4]前記トップ塗料中の前記未被覆アルミニウム粒子の配合量は、前記耐熱性樹脂に対して0.1〜50質量%の範囲内である、[1]〜[3]のいずれかに記載の塗装鋼板の製造方法。
[5]前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である、[1]〜[4]のいずれかに記載の塗装鋼板の製造方法。
第1のステップでは、塗装原板となる鋼板を準備する。
塗装原板となる鋼板の種類は、特に限定されない。塗装原板となる鋼板の例には、亜鉛めっき鋼板(電気Znめっき、溶融Znめっき)、合金化亜鉛めっき鋼板(溶融Znめっき後に合金化処理した合金化溶融Znめっき)、亜鉛合金めっき鋼板(溶融Zn−Mgめっき、溶融Zn−Al−Mgめっき、溶融Zn−Alめっき)、溶融Alめっき鋼板、溶融Al−Siめっき鋼板、ステンレス鋼板などが含まれる。高温環境における耐食性を向上させる観点からは、溶融Al−Siめっき鋼板が好ましい。
塗装原板となる鋼板は、耐食性および塗膜密着性を向上させる観点から、化成処理皮膜を形成されていてもよい。この場合、化成処理の種類は、特に限定されない。化成処理の例には、クロメート処理、クロムフリー処理、リン酸塩処理などが含まれる。化成処理皮膜の膜厚は、塗装原板の腐食の抑制および塗膜密着性の向上に有効な範囲内であれば特に限定されない。たとえば、クロメート皮膜の場合、全Cr換算付着量が5〜100mg/m2となるように膜厚を調整すればよい。また、クロムフリー皮膜の場合、Ti−Mo複合皮膜では10〜500mg/m2、フルオロアシッド系皮膜ではフッ素換算付着量または総金属元素換算付着量が3〜100mg/m2の範囲内となるように膜厚を調整すればよい。また、リン酸塩皮膜の場合、付着量が5〜500mg/m2となるように膜厚を調整すればよい。
塗装原板となる鋼板は、耐食性および塗膜密着性を向上させる観点から、鋼板表面または化成処理皮膜の表面にプライマー塗膜を形成されていてもよい。プライマー塗膜の構成は、特に限定されない。通常、プライマー塗膜は、有機樹脂をベースとして防錆顔料を含有する。有機樹脂の種類および防錆顔料の種類は、特に限定されない。有機樹脂は、後述するトップ塗膜と同様の耐熱性樹脂が用いられうるが、必ずしもトップ塗膜と同一である必要はない。防錆顔料の例には、リン酸マグネシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなどが含まれる。
第2のステップでは、鋼板表面に塗布するトップ塗料を準備する。トップ塗料は、耐熱性樹脂をベースとしてフッ素樹脂および未被覆アルミニウム粒子を含有する。
ベースとなる耐熱性樹脂としては、分子鎖の両末端に水酸基(−OH)を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせが使用される。本発明の製造方法では、ベースとなる耐熱性樹脂として、分子鎖の両末端に水酸基(−OH)を有する、脱水縮合可能な樹脂を使用することを一つの特徴とする。これらの分子鎖の両末端に水酸基を有する樹脂は、塗膜焼成時に脱水縮合により高分子量化する。
トップ塗料の溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)やN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などの非プロトン性極性溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)やジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)などのエーテル類;塩化メチレンや四塩化炭素などの脂肪族炭化水素の塩化物などが用いられる。これらの溶剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、これらの溶剤に、樹脂の溶解性を低下させない範囲でキシレンなどの炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコールなどの溶剤を添加してもよい。
トップ塗膜に非粘着性を付与するために、トップ塗料にはフッ素樹脂が配合される。フッ素樹脂の種類は、特に限定されないが、非粘着性および耐熱性を付与する観点から融点が270℃以上の熱溶融性フッ素樹脂が好ましい。そのようなフッ素樹脂の例には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレンなどの重合体または共重合体が含まれる。これらの中では、非粘着性の持続性および耐熱性の観点から、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が特に好ましい。
トップ塗膜に意匠性(メタリック感)を付与するために、トップ塗料にはアルミニウム粒子が配合される。本発明の製造方法では、アルミニウム粒子として「未被覆アルミニウム粒子」をトップ塗膜に配合することを一つの特徴とする。ここで「未被覆アルミニウム粒子」とは、粒子表面が有機樹脂で被覆されておらず、粒子表面(主として酸化アルミニウムからなる)の少なくとも一部が外部に露出しているアルミニウム粒子を意味する。製造工程によっては、アルミニウム粒子の表面に脂肪酸などの粉砕助剤が付着していることがあるが(特許文献4参照)、粒子表面が有機樹脂で被覆されていなければ、粉砕助剤が付着していても「未被覆アルミニウム粒子」に該当する。未被覆アルミニウム粒子は、アルミニウムのみから構成されていてもよいし、アルミニウム基合金から構成されていてもよい。アルミニウムの純度は、特に限定されない。
トップ塗膜を着色するために、任意の着色顔料をトップ塗料に配合してもよい。着色顔料の例には、酸化チタン、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄などが含まれる。また、トップ塗膜の塗膜硬度および耐摩耗性を向上させるために、鱗片状無機質添加材や無機質繊維などをトップ塗料に配合してもよい。鱗片状無機質添加材の例には、ガラスフレーク、グラファイトフレーク、合成マイカフレーク、シリカフレークなどが含まれる。また、無機質繊維の例には、チタン酸カリウム繊維、ウォラスナイト繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、シリカ繊維、ロックウール、スラグウール、ガラス繊維、炭素繊維などが含まれる。
第3のステップでは、第2のステップで準備したトップ塗料を、第1のステップで準備した鋼板の表面に塗布する。
第4のステップでは、第3のステップで塗布されたトップ塗料を焼き付ける。この工程により、ベースとなる耐熱性樹脂は、脱水縮重合により高分子量化(硬化)する。また、フッ素樹脂は、トップ塗膜の表面に移動して薄膜を形成する。
1.塗装鋼板の作製
板厚0.5mmのSPCCを基材として、片面めっき付着量40g/m2の溶融Al−9%Siめっき鋼板を作製した。本実施例では、この溶融Al−9%Siめっき鋼板を塗装原板とした。塗装原板の表面を脱脂した後、表1に示す組成のクロムフリー化成処理液をTiおよびZrの総金属元素換算付着量が3.5mg/m2となるようにバーコーターで塗布した。化成処理液を塗布した鋼板を到達板温100℃で10秒間加熱して、化成処理皮膜を形成した。
各塗装鋼板(No.1〜4)から試験片(50mm×50mm)を切り出し、耐アルカリ性試験を実施した。各試験片を95℃の2%NaOH水溶液(pH14)に70時間浸漬し、変色の有無により耐アルカリ性を評価した。変色がまったく見られなかった場合を「○」、やや変色した場合を「△」、顕著に変色した場合を「×」と評価した。各塗装鋼板の耐アルカリ性試験の結果を表2に示す。各塗装鋼板において、プライマー塗膜に含まれる耐熱性樹脂の種類と、トップ塗膜に含まれる耐熱性樹脂の種類とは同一である。
実施例2では、塗装原板のめっき層を焼鈍することで、塗装鋼板の加工部耐食性も向上させうることを示す。
塗装原板として、以下の2種類の溶融Al−9%Siめっき鋼板を準備した。塗装原板Aと塗装原板Bとは、めっき層を形成した後に焼鈍処理を行ったかどうかという点のみ異なる。
[塗装原板A]
・溶融Al−9%Siめっき鋼板
・基材:板厚0.5mmのSPCC
・片面めっき付着量:40g/m2
・めっき層を形成した後に焼鈍処理無し
[塗装原板B]
・溶融Al−9%Siめっき鋼板
・基材:板厚0.5mmのSPCC
・片面めっき付着量:40g/m2
・めっき層を形成した後に焼鈍処理有り(420℃で30時間加熱)
各塗装鋼板(No.5、6)から試験片を切り出し、加工部耐食性試験を実施した。180度密着折り曲げ加工を行った後、各試験片の端面をシールした。加工後の各試験片について、JIS K2246に準拠して70℃で200時間湿潤試験を行った。試験後、各試験片の表面に赤錆が発生しているか否かを観察して、加工部耐食性を評価した。赤錆の発生が無い場合を「○」、赤錆の発生がある場合を「×」と評価した。表3は、各塗装鋼板の分析結果を示す表である。
実施例3では、塗装原板としてAlめっきステンレス鋼板を使用することで、塗装原板としてステンレス鋼板を使用した場合に比べて、塗装鋼板のマイクロ波反射特性を向上させうることを示す。
塗装原板として、以下の2種類のフェライト系ステンレス鋼板を準備した。
[塗装原板C]
・溶融Al−9%Siめっきステンレス鋼板
・基材:板厚0.5mmのフェライト系ステンレス鋼板(Cr:11.16質量%、C:0.006質量%、Si:0.57質量%、Mn:0.2質量%、N:0.008質量%、Ni:0.12質量%、Ti:0.19質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼)
・片面めっき付着量:40g/m2
[塗装原板D]
・フェライト系ステンレス鋼板(Cr:17.03質量%、C:0.007質量%、Si:0.11質量%、Mn:0.17質量%、N:0.01質量%、Ti:0.19質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼)
・板厚:0.5mm
各塗装鋼板(No.7、8)について、マイクロ波の反射特性を評価した(JIS C9250参照)。市販の電子レンジの加熱室の壁面のうち、マグネトロンが配置されている面を除く全面に、No.7またはNo.8の塗装鋼板をトップ塗膜が内側を向くように貼り付けた。そして、加熱室底面の中央部に、容量1000mLのビーカーを2個互いに接するように並べ、各ビーカーに水温10±1℃の水を1000mL入れた。この状態で、水2000mLを所定の出力(300W、500Wまたは800W)で2分間加熱し、加熱前後の水温を測定した。測定された加熱前後の平均水温の値から、以下の式により、単位時間あたりの水に吸収されたエネルギー(W)を算出した。
単位時間あたりの水に吸収されたエネルギー(W)
=水の比熱×水の重量(g)×平均水温の上昇値(℃)/加熱時間(秒)
=4.2×2000(g)×(T2−T1)(℃)/120(秒)
=70×(T2−T1)
ここで、「T1」は加熱前の平均水温(℃)であり、「T2」は加熱後の平均水温(℃)である。
実施例4では、塗装原板としてAlめっきステンレス鋼板を使用することで、塗装原板としてAlめっき鋼板を使用した場合に比べて、塗装鋼板の端面部耐食性も向上させうることを示す。
塗装原板として、以下の2種類の溶融Al−9%Siめっき鋼板を準備した。塗装原板Eと塗装原板Fとは、めっき原板がステンレス鋼板かどうかという点のみ異なる。
[塗装原板E]
・溶融Al−9%Siめっきステンレス鋼板
・基材:板厚0.5mmのステンレス鋼板(Cr:11.16質量%、C:0.006質量%、Si:0.57質量%、Mn:0.2質量%、N:0.008質量%、Ni:0.12質量%、Ti:0.19質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるステンレス鋼)
・片面めっき付着量:40g/m2
[塗装原板F]
・溶融Al−9%Siめっき鋼板
・基材:板厚0.5mmのSPCC
・片面めっき付着量:40g/m2
各塗装鋼板から試験片を切り出し、端面部耐食性試験を実施した。各試験片について、JIS K2246に準拠して70℃で200時間湿潤試験を行った。試験後、各試験片の切断面に赤錆が発生しているか否かを観察して、端面部耐食性を評価した。切断端面全体の長さ(試験片の周囲長;厚さは考慮しない)に対する赤錆が発生している部分の長さを「赤錆発生率」として、赤錆発生率が5%未満の場合を「○」、5%以上30%未満の場合を「△」、30%以上の場合を「×」と評価した。表5は、端面部耐食性試験の結果を示す表である。
Claims (5)
- 鋼板を準備するステップと、
耐熱性樹脂、フッ素樹脂および未被覆アルミニウム粒子を含むトップ塗料を前記鋼板の表面に塗布するステップと、
前記鋼板の表面に塗布されたトップ塗料を焼き付けるステップと、を有し、
前記耐熱性樹脂は、その分子鎖の両末端に水酸基を有する、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの組み合わせである、塗装鋼板の製造方法。 - 前記未被覆アルミニウム粒子は、アスペクト比が10以上の鱗片状である、請求項1に記載の塗装鋼板の製造方法。
- 前記未被覆アルミニウム粒子は、平均粒径が6〜60μmの範囲内である、請求項1に記載の塗装鋼板の製造方法。
- 前記トップ塗料中の前記未被覆アルミニウム粒子の配合量は、前記耐熱性樹脂に対して0.1〜50質量%の範囲内である、請求項1に記載の塗装鋼板の製造方法。
- 前記フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体である、請求項1に記載の塗装鋼板の製造方法。
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