JP2011186096A - 光学フィルタ - Google Patents
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Abstract
【課題】基板に高次回折光を発生しない構造で、多層膜フィルタに近い光学特性を実現し、高い信頼性を有し、かつ入射角度依存性の少ない光学フィルタを提供する。
【解決手段】所定の波長帯の光を通過させるバンドパス特性を有する光学フィルタにおいて、基板の少なくとも一方の主面側に設けられた微細構造体であって、基板と同一材料で、通過波長帯の下限より小さい周期構造で形成され、材料の屈折率および空間の屈折率を面積比率で比例配分することにより定まる実効屈折率を有する微細構造体とを備え、少なくとも微細構造体の側面が、周期的な凹凸構造を有する。
【選択図】図2
【解決手段】所定の波長帯の光を通過させるバンドパス特性を有する光学フィルタにおいて、基板の少なくとも一方の主面側に設けられた微細構造体であって、基板と同一材料で、通過波長帯の下限より小さい周期構造で形成され、材料の屈折率および空間の屈折率を面積比率で比例配分することにより定まる実効屈折率を有する微細構造体とを備え、少なくとも微細構造体の側面が、周期的な凹凸構造を有する。
【選択図】図2
Description
本発明は、光を透過、又は光の反射を防止する光学部品、例えば、撮影カメラにおいて使用される帯域制限フィルタ、入射光線を透過する窓(光学窓)、レンズ等の光学部品に関する。
従来の光学フィルタは、屈折率の異なる膜を多層に積層し、主に屈折率、層厚、層数を制御することで透過波長域や減衰率を調節する多層膜フィルタが一般的である(例えば、特許文献1)。また、サブ波長格子(SWS: Sub-Wavelength Structure)など、波長以下の周期構造を有する光学素子においては無反射構造に用いており、屈折率変調構造による透過帯域制御を実現するものではない(例えば、特許文献2)。また、同様のSWSにおいては反射低減の用途であり、微細構造による屈折率分布構造を形成し透過帯域制御を行うものではない(例えば、特許文献3)。
近年、撮影装置の高機能化や高効率化の要求が増えており、例えば、撮影装置が取扱う光学波長帯のマルチバンド化という要求がある。ところが、上記のような多層の反射防止膜を光学部品に適用する場合、光学部品の使用環境(例えば、高温、ヒートサイクル)における膜の屈折率や膜の線膨張係数などの材料特性を考慮して、膜の材質を選択する必要がある。その理由は、設計仕様から外れた環境下で使用した場合、反射防止膜の剥離や残留歪み、反射防止膜からの残留ガスの放出といった現象が生じ、その結果、光学部品の長期信頼性を阻害する可能性があるからである。また、バンドパスフィルタとして急峻な波長選択性を付与する場合は、多層膜の層数がさらに増加する。そのため、材料選択範囲がさらに制限され、使用環境条件はより制約されることになる。
本発明の目的は、基板に高次回折光を発生しない構造パラメータを有する微細加工を施して、透過光に対する屈折率分布を構築することによって、従来の多層膜フィルタに近い光学特性を実現し、高い信頼性を有し、かつ入射角度依存性の少ない光学フィルタを提供することである。
本発明は、所定の波長帯の光を通過させるバンドパス特性を有する光学フィルタであって、基板と、基板の少なくとも一方の主面側に設けられた微細構造体であって、基板と同一材料で、通過波長帯の下限より小さい周期構造で形成され、材料の屈折率および空間の屈折率を面積比率で比例配分することにより定まる実効屈折率を有する微細構造体とを備え、少なくとも微細構造体の側面が、周期的な凹凸構造を有することを特徴とする光学フィルタである。
本発明によれば、微細構造体の材料および空間の面積比率を調整することによって、材料屈折率と空間屈折率の範囲内で任意の実効屈折率を実現できる。また、微細構造体が通過波長帯の下限より小さい周期構造を有することによって、光が微細構造体を通過する際に回折が生じなくなり、透過光は高次回折光を含まず0次回折光だけになる。その結果、単一材料の使用だけで屈折率分布を構築することが可能になるため、従来の多層膜フィルタに近い光学特性を備え、高い信頼性を有する光学フィルタが実現できる。特に、微細構造体の側面等に凹凸構造を形成することにより、光学フィルタのバンドパス特性への影響を抑えつつ入射角依存性を低減できる。
図1は、全体が100で表される、本発明の実施の形態にかかる光学フィルタの斜視図である。また、図2は、図1の光学フィルタ100をI−I方向に見た場合の断面図である。図1では、図2に示す凹部5(凹凸構造)は省略してある。
図1を用いて凹部5を除いた光学フィルタ100について説明する。光学フィルタ100は、基板2と、基板2の上面に設けられた上部ブロック1と、基板2の下面に設けられた下部ブロック3とを備える。上部ブロック1および下部ブロック3は、基板2と同一材料で形成された微細な周期構造を備え、基板2に垂直方向(z軸方向)から入射する光に対して、材料の屈折率および空間の屈折率を面積比率で比例配分することにより定まる実効屈折率を有する。
即ち、波長以下の周期構造では、材料の屈折率は空間の面積比率によりその層の実効的な屈折率(nx)を制御することができる。例えば、空気で満たされた空間の面積比率をfとすると、この単層の実効屈折率(nx)は下記式(1)から求めることができる。
図1では、基板2の両面にブロック1、3をそれぞれ設けた構成を示しているが、基板2の片面だけに上部ブロック1または下部ブロック3を設けた構成でも構わない。また、図1では、周期構造の単位セルが直方体の形状である場合を示しているが、円柱形状など、他の任意の立体形状でも構わない。
以下、赤外線検出器用の光学フィルタとして、3〜5μm帯及び8〜14μm帯という2つの通過波長帯に対応するマルチバンドパス特性を有する光学フィルタを設計する場合について説明する。なお、本発明は、任意の波長帯でのバンドパス特性を有する光学フィルタに適用可能である。
まず、理解を容易にするために、基板2の上面に上部ブロック1を設けた構成について説明する。基板2がSiである場合、厳密波結合波解析により、透過光が0次回折成分のみで構成される波長の最小値を求めたものが図3である。
図3は、光学フィルタの構造パラメータL(横軸)と、高次回折光を生じない波長(縦軸)との相関を示すグラフである。ここで、単位セルの構造パラメータとして直方体および空間のx寸法、y寸法、z寸法をそれぞれ定義するとともに、図3ではLx1=Ly1=sx1=sy1=Lとし、d1=1.4μmに設定している。d1=1.4μm程度にすることで長赤外域に透過率のピークを合わせることができる。また、d以外の各構造パラメータを等しくすることによって、基板法線方向に進行する光に対する偏光依存性を抑制することが可能になる。
図3は、光学フィルタの構造パラメータL(横軸)と、高次回折光を生じない波長(縦軸)との相関を示すグラフである。ここで、単位セルの構造パラメータとして直方体および空間のx寸法、y寸法、z寸法をそれぞれ定義するとともに、図3ではLx1=Ly1=sx1=sy1=Lとし、d1=1.4μmに設定している。d1=1.4μm程度にすることで長赤外域に透過率のピークを合わせることができる。また、d以外の各構造パラメータを等しくすることによって、基板法線方向に進行する光に対する偏光依存性を抑制することが可能になる。
図3のグラフから、通過波長帯の下限が3μmである場合、高次回折光の影響が除外できるのは、Lが約500nm(0.5μm)以下(即ち、1μm以下の周期構造)であることが分かる。3μmより長波長の赤外線を入射光として扱う場合、Lが500nm程度以下の構造の場合、入射光は表面の凹凸により回折されないため、高次の回折光を生じない。つまり従来の薄膜に相当する層と同じ効果を有するようになる。
このように高次回折光を抑制した微細構造体を基板の片面または両面に形成した場合、基板の屈折率より低い実効屈折率を有する微細構造体が存在することになり、透過光に対して低屈折率の薄膜が基板の片面または両面に成膜されている構造と等価となる。その結果、従来の多層膜フィルタに近い光学特性を有する光学フィルタを実現することが可能になる。
図4は、L=500nmの場合の透過率スペクトルを示すグラフである。縦軸は透過率、横軸は波長である。このグラフを見ると、中赤外域(3〜5μm帯)と長赤外域(8〜14μm帯)において、透過率が比較的高い窓が形成されていることが分かる。
一般に、任意の波長帯でのバンドパス特性を有する光学フィルタの場合、微細構造体は、通過波長帯の下限より小さい周期構造、好ましくは、下限の1/2以下の周期構造を有することにより、透過光は高次回折光を含まず0次回折光だけになる。その結果、単一材料の使用だけで屈折率分布を構築することが可能になる。また、こうした微細構造体は基板と同じ単一材料で形成できるため、剥離や脱ガス等の問題が起こりにくく、高い信頼性を有する光学フィルタを実現できる。
更に、本実施の形態にかかる光学フィルタ100では、図2に示すように、光学フィルタ100の表面に複数の凹部(ナノ細孔)5が周期的に設けられた構造(凹凸構造)となっている。凹部5は、例えば、直径が50nm、深さが50nmの円柱形状であり、周期100nmで設けられている。凹部5は上部ブロック1の上面、側面、および上部ブロック1の間に露出した基板2の表面に設けられている。
図2では、光学フィルタ100の上部ブロック1側に凹部5を設けた構造を示したが、上部ブロック1側、下部ブロック3側の片方または双方に形成しても良い。また、凹部5は、上部ブロック1や下部ブロック3の少なくとも側面に形成される。
図2では、光学フィルタ100の上部ブロック1側に凹部5を設けた構造を示したが、上部ブロック1側、下部ブロック3側の片方または双方に形成しても良い。また、凹部5は、上部ブロック1や下部ブロック3の少なくとも側面に形成される。
このように、上部ブロック1等の表面に、更に100nmレベルの凹部5を設けることにより、光学フィルタ100への入射光が垂直方向(z軸方向)から傾いた場合の、光学特性の入射角依存性を小さくすることができる。例えば、z軸方向から30°程度傾いた入射光に対しても、良好な光学特性を示す。
特に、上部ブロック1の形状を例えば円錐形等に変えて光学特性の入射角依存性を小さくした場合には、入射角依存性は小さくなるが、一方で、バンドパス特性が変化するという問題があった。これに対して、上部ブロック1の表面(少なくとも側面)に凹凸構造を設けた本実施の形態にかかる光学フィルタ100では、上部ブロック1の基本構造は変わらないため、バンドパス特性を変化させることなく入射角依存性を小さくすることが可能となる。
次に、本実施の形態にかかる光学フィルタの製造方法について説明する。まず、図5に示すように、基板2の表面にレジスト4のパターンを形成して、これをマスクとする。L=500nmレベルのパターニングでは、i線ステッパや電子線描画などが用いられる。
次に、図6に示すように、ICP−RIE(Inductive Coupled Plasma-RIE)等のドライエッチング10を用いて、基板2の露出エリアに対して設計深さまでエッチングを施す。その後、レジスト4をアセトン等の有機溶剤で溶解したり、アッシングによって除去することによって、微細な周期構造を持つ上部ブロック1が形成される。
基板2の裏面側にも微細構造体を形成する場合、図7〜図9に示すように、表面側の処理と同様に、レジスト4のパターニング、ドライエッチングを用いた設計深さまでエッチング、レジスト4の除去を施すことによって、微細な周期構造を持つ下部ブロック3が形成される。こうして基板2の両面に、基板2と同一材料で形成された上部ブロック1および下部ブロック3が得られる。これらのブロック1、3の材料および空間の面積比率を個別に調整することによって、材料屈折率と空間屈折率の範囲内で任意の実効屈折率を実現できるため、全体として、低屈折率/高屈折率/低屈折率の屈折率分布を構築できる。
基板2の表面と裏面とでレジストパターンの露光位置を合わせたい場合、所定の位置にアライメントマーク等を予め形成すればよい。但し、こうした微細構造体は、透過光に対して薄膜として機能するため、表面パターンと裏面パターンとが位置ずれしていても光学特性上の差異は現れない。
なお、レジスト4のパターニングにおいて、装置や製造コストが比較的高価であるi線ステッパや電子線描画の代わりに、アルミニウムの陽極酸化法を用いてもよい。この方法は、ナノメートル周期の規則的な孔の配列が蜂の巣状に自然に形成されるアルミナの自己組織化特性を利用してエッチングマスクを形成するものであり、孔の密度を調節することによって、高次回折光が発生しないような周期構造が容易に得られる。
本実施の形態では、更に、図10に示すように、基板2の上部ブロック1側を覆うように、アルミニウム膜6をスパッタ法等で形成する。アルミニウム膜6の膜厚は、スパッタにより白濁しない厚さである100nm程度が好ましい。なお、図10〜図14では、図9に示す光学フィルタ100の、点線で囲まれた部分Aのみを示す。
次に、図11に示すように、アルミニウム膜6の陽極酸化を行う。陽極酸化は、例えば、3%wt程度のシュウ酸溶液を電解液に用いて、印加電圧は40V、印加時間は10分程度で行う。アルミニウム膜6は、酸化されてアルミナ(酸化アルミニウム)となり、アルミナ中には、ナノメートル周期の規則的な孔7が、蜂の巣状に自然に形成される。孔7は円筒形であり、例えば直径は10nm、周期は100nmである。
次に、図12に示すように、この試料を5%wt程度のリン酸溶液に10分程度浸漬して、アルミナのエッチングを行う。この結果、孔7の直径が50nm程度に拡大されてエッチング用の開口部8になると共に、底面のアルミナ(バリア層)が除去され、上部ブロック1や基板2の表面が開口部8中に露出する。これにより開口部8を有するエッチングマスク16が形成される。
次に、図13に示すように、ICP−RIE等により、エッチングマスク16を用いて上部ブロック1および基板2をエッチングして凹部(ナノ細孔)5を形成する。凹部5は、例えば、直径が50nm、深さが50nmの円筒形状であり、周期は100nmとなる。
最後に、リン酸溶液等を用いてエッチングマスク16を選択的に除去し、図2に示すような光学フィルタが完成する。
通常のフォトリソグラフィでは、例えば上部ブロック1の側面のような、凹凸を有する面へのパターン転写は困難であるが、本実施の形態のようにアルミニウムの陽極酸化を用いることにより、上部ブロック1の側面や基板2の表面にも凹部5を形成することが可能となる。
更に、選択的に、図14に示すように、凹部5を、例えばポリイミド、フォトレジストのような樹脂や、Au、Ag等の金属からなる充填材9で埋め込んでもよい。充填材9の材料を選択することにより、有効屈折率を任意に選択することが可能となる。凹部5の埋め込みには、樹脂等の直接注入、浸潤、浸漬、めっき等が用いられる。
1 上部ブロック、2 基板、3 下部ブロック、4 レジストマスク、5 凹部(ナノ細孔)、6 アルミニウム膜、7 孔、8 開口部、9 充填材、100 光学フィルタ。
Claims (3)
- 所定の波長帯の光を通過させるバンドパス特性を有する光学フィルタであって、
基板と、
基板の少なくとも一方の主面側に設けられた微細構造体であって、基板と同一材料で、通過波長帯の下限より小さい周期構造で形成され、材料の屈折率および空間の屈折率を面積比率で比例配分することにより定まる実効屈折率を有する微細構造体とを備え、
少なくとも微細構造体の側面が、周期的な凹凸構造を有することを特徴とする光学フィルタ。 - 上記凹凸構造が、上記微細構造体の上面と側面、および上記基板の露出した上面に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
- 上記凹凸構造の凹部に、充填材が充填されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルタ。
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JP2019521391A (ja) * | 2016-07-06 | 2019-07-25 | カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー | 光学格子及び光学格子の光学アセンブリ |
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