JP2011173244A - 積層皮膜被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

積層皮膜被覆部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐磨耗性および密着性に優れ、摺動特性を向上させて相手部材への攻撃性を低下させることができ、過酷環境下においても基材の損傷を防止することができる、積層皮膜被覆部材およびその積層皮膜被覆部材を低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】基材1上に複数のクロム皮膜2と複数の窒素含有クロム皮膜3をこの順に交互に連続して形成した後、最表面の窒素含有クロム皮膜3上に固体潤滑剤からなる皮膜4を形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層皮膜被覆部材およびその製造方法に関し、特に、基材上に硬質皮膜として窒素含有クロム皮膜が形成された部材およびその製造方法に関する。
従来、耐摩耗性や耐焼き付き性が必要とされる自動車などの摺動部品や機械部材の他、高面圧下で使用される金型などの表面に、スパッタリングなどの物理的蒸着によって窒素含有クロム皮膜を形成して、耐摩耗性や耐焼き付き性を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、自動車などの摺動部品の摺動面に、PVD法によりダイヤモンドライクカーボンの下層膜を形成した後に、CVD法によりダイヤモンドライクカーボンの上層膜を形成することによって、耐久性が高く且つ摩擦係数が低いダイヤモンドライクカーボン皮膜を形成する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平11−217666号公報(段落番号0008−0010) 特開2009−167512号公報(段落番号0014−0019)
しかし、従来の方法では、自動車などの摺動部品、機械部材、金型などの表面に要求される耐磨耗性、密着性、摺動特性などの全てを満足する硬質皮膜として表面処理皮膜を単純な系で形成するのは困難であり、硬質皮膜としての能力を最大限に発揮させるためには、硬質皮膜を形成する基材の強化や、基材の表面形状の調整などが必須であった。
また、特許文献1などに記載された窒素含有クロム皮膜は、アモルファス構造を有するために化学的に安定で耐磨耗性および密着性に優れているが、硬質皮膜であるが故の相手部材への攻撃性や、過酷環境下における硬質皮膜の破壊時の基材(母材)の損傷の問題がある。
また、特許文献2などに記載されたダイヤモンドライクカーボン皮膜は、耐久性が高く且つ摩擦係数が低いが、基材との密着性や、皮膜の破壊時の基材の損傷の問題があり、また、製造工程が複雑で製造コストが高いという問題がある。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、耐磨耗性および密着性に優れ、摺動特性を向上させて相手部材への攻撃性を低下させることができ、過酷環境下においても基材の損傷を防止することができる、積層皮膜被覆部材およびその積層皮膜被覆部材を低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、基材上にクロム皮膜を介して窒素含有クロム皮膜を形成し、この窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜を形成することにより、耐磨耗性および密着性に優れ、摺動特性を向上させて相手部材への攻撃性を低下させることができ、過酷環境下においても基材の損傷を防止することができる、積層皮膜被覆部材を低コストで製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による積層皮膜被覆部材は、基材上にクロム皮膜を介して窒素含有クロム皮膜が形成され、この窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜が形成されていること特徴とする。また、本発明による積層皮膜被覆部材は、基材上に複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜が形成され、最表面に固体潤滑剤からなる皮膜が形成されていることを特徴とする。これらの積層皮膜被覆部材において、固定潤滑剤が、フッ素系樹脂からなるのが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンからなるのがさらに好ましい。
また、本発明による積層皮膜被覆部材の製造方法は、基材上にクロム皮膜を介して窒素含有クロム皮膜を形成した後、この窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤を塗布して焼成することにより、窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜を形成することを特徴とする。また、本発明による積層皮膜被覆部材の製造方法は、基材上に複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜をこの順に交互に形成した後、最表面に固体潤滑剤を塗布して焼成することにより、最表面に固体潤滑剤からなる皮膜を形成することを特徴とする。これらの積層皮膜被覆部材の製造方法において、窒素含有クロム皮膜が、クロムターゲットを使用してアルゴンガスと窒素ガスを含む雰囲気中でスパッタリングすることによって形成されるのが好ましい。また、クロム皮膜が、クロムターゲットを使用してアルゴンガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成されるのが好ましい。また、固定潤滑剤が、フッ素系樹脂からなるのが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンからなるのがさらに好ましい。
なお、本明細書中において、「窒素含有クロム皮膜」とは、クロム皮膜中に窒素および窒化クロムの少なくとも一方が分散した皮膜をいう。
本発明によれば、耐磨耗性および密着性に優れ、摺動特性を向上させて相手部材への攻撃性を低下させることができ、過酷環境下においても基材の損傷を防止することができる、積層皮膜被覆部材を低コストで製造することができる。この硬質被膜被覆部材は、金型、機械部品、自動車部品などに使用することができる。
本発明による積層皮膜被覆部材の実施の形態の構造を示す断面図である。 本発明による積層皮膜被覆部材の実施の形態を製造するための処理装置の概略図である。 実施例において使用した高速ファレックス摩擦磨耗試験機の概略図である。
以下、添付図面を参照して、本発明による積層皮膜被覆部材およびその製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明による積層皮膜被覆部材の実施の形態は、基材1と、この基材1上に(応力緩和層としての)クロム皮膜と(硬質層としての)窒素含有クロム皮膜がこの順に交互に配置されるように形成された複数のクロム皮膜2および複数の窒素含有クロム皮膜3と、最表面の窒素含有クロム皮膜上に形成された固体潤滑剤からなる皮膜4とを備えている。
このように、窒素含有クロム皮膜(機械的強度の高い硬質層)上にフッ素系樹脂などの固体潤滑剤からなる皮膜(低摩擦係数の層)を形成することにより、耐磨耗性および密着性に優れ、摺動特性を向上させて相手部材への攻撃性を低下させることができ、過酷環境下においても基材の損傷を防止する皮膜で被覆された積層皮膜被覆部材を製造することができる。
すなわち、基材上に硬質で機械的な強度の高い窒素含有クロム皮膜を形成し、その上にフッ素系樹脂などの固体潤滑剤からなる低摩擦係数の皮膜を形成することにより、耐磨耗性および密着性に優れ、摺動特性を向上させて相手部材への攻撃性を低下させることができ、過酷環境下においても基材の損傷を防止することができる、積層皮膜被覆部材を製造することができる。
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化エチレンプロピレン(FEP),テトラフルオロエチレン(TFE)などを使用するのが好ましい。
積層皮膜被覆部材の耐磨耗性、耐高温酸化性、耐アルカリ性および離型性を良好にするためには、複数の窒素含有クロム皮膜の合計の厚さは、1〜30μmであるのが好ましく、1〜20μmであるのがさらに好ましく、1〜15μmであるのが最も好ましい。また、複数のクロム皮膜の合計の厚さは、0.01〜10μmであるのが好ましく、0.1〜5μmであるのがさらに好ましい。
複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜は、クロムターゲットを使用してスパッタリングする装置の処理室内で連続的に形成することができる。すなわち、下地層としてのクロム皮膜を形成する際には、処理室内をアルゴンガス雰囲気し、窒素含有クロム皮膜を形成する際には、処理室内をアルゴンガスと窒素ガスを含む雰囲気にして、複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜を連続的に形成することができる。
このスパッタリングは、DCマグネトロンスパッタリング法によって行うことができるので、基材として使用する鋼材の焼き戻し温度(約300℃)以下の低温で成膜することができるため、鋼材の軟化や熱歪を抑制することができ、また、他の物理的蒸着と比べて生産性が高い。また、このスパッタリングでは、イオンプレーティング法によって成膜する場合のように皮膜の材料が溶融した塊(ドロップレット)が発生しないので、平滑な表面の皮膜を形成することができる。さらに、このスパッタリングでは、クロム皮膜と窒素含有クロム皮膜を形成するため、他の材料の中間層を排除することができるので、従来のスパッタリング装置に単一のターゲットを使用して、処理室内への窒素ガスを導入のON/OFFの切り替えにより、複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜を形成することができる。そのため、応力緩和層としてのクロム皮膜と硬質層としての窒素含有クロム皮膜の界面でクラックが伝播するのを防止して、高硬度を確保しながら応力緩和層により応力緩和して優れた密着性を有する窒素含有クロム皮膜を得ることができる。また、バイアス電圧を一定にしてスパッタリングを行うことができるので、皮膜の割れを防止することができ、応力緩和層を挟み込んでも硬度が低下するのを防止することができる。
本発明による積層皮膜被覆部材の実施の形態は、例えば、図2に示す処理装置10を使用して製造することができる。この処理装置10は、真空処理室12と、この真空処理室12内を減圧して真空にするための真空ポンプ14と、真空処理室12内の底部の中心部に配設された回転テーブル16と、この回転テーブル16上に治具18を介して載置された被処理部材として基材20と、この基材20を取り囲むように配置された蒸発源としてのターゲット22と、これらのターゲット22の各々に接続された直流のスパッタ電源24と、回転テーブル16に接続された直流のイオンボンバードおよびバイアス電源26と、真空処理室12内にアルゴンガスおよび窒素ガスを導入するためのガス導入パイプ28とを備えている。以下、この処理装置10を使用して、本発明による積層皮膜被覆部材の実施の形態を製造する方法について説明する。
(イオンボンバード処理工程)
まず、処理装置10のターゲット22としてクロムターゲットを使用し、真空ポンプ14を作動させて真空処理室12内を真空排気した後、ガス導入パイプ28を介して真空処理室12内にアルゴンガスを導入して真空処理室12内をアルゴンガス雰囲気にして、イオンボンバード処理を行って、基材20の表面を活性化する。
(クロム皮膜形成工程)
次に、アルゴンガスの導入を一旦停止し、真空処理室12内を真空排気した後、ガス導入パイプ28を介して真空処理室12内にアルゴンガスを導入して真空処理室12内をアルゴンガス雰囲気にする。その後、ターゲット22にスパッタ電源24の所定の電圧を印加して、ターゲット22の近傍にグロー放電(低温プラズマ)を生じさせる。これにより、放電領域内のアルゴンガスがイオン化してターゲット22に高速で衝突し、この衝突によってターゲット22からクロム原子が叩き出され、このクロム原子が基材20の表面に叩き付けられて、基材20の表面に応力緩和層としてのクロム皮膜が形成される。
(窒素含有クロム皮膜形成工程)
次に、真空処理室12内を真空排気した後、ガス導入パイプ28を介して真空処理室12内にアルゴンガスと窒素ガスを導入して真空処理室12内をアルゴンガスと窒素ガスの雰囲気にする。その後、ターゲット22にスパッタ電源24の所定の電圧を印加して、ターゲット22の近傍にグロー放電(低温プラズマ)を生じさせる。これにより、放電領域内のアルゴンガスがイオン化してターゲット22に高速で衝突し、この衝突によってターゲット22からクロム原子が叩き出され、このクロム原子が真空処理室12内の雰囲気中の窒素原子とともに基材20上のクロム皮膜の表面に叩き付けられて、基材20上のクロム皮膜の表面に窒素を含有するクロム皮膜(硬質層)が形成される。
さらに、上記のクロム皮膜形成工程と窒素含有クロム皮膜形成工程を繰り返して、クロム皮膜と窒素含有クロム皮膜が交互に配置されるように複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜を形成する。
なお、上記のクロム皮膜形成工程と窒素含有クロム皮膜形成工程におけるスパッタリングでは、それぞれの皮膜の厚さを均一にするために且つ基材20の温度をその焼戻し温度以下に維持するために、ターゲット22と基材20の間隔を、例えば、70〜80mmに保持するのが好ましい。
(固体潤滑剤からなる皮膜形成工程)
次に、クロム皮膜と窒素含有クロム皮膜が交互に形成された基材20を処理装置10から取り出し、最表面の窒素含有クロム皮膜上にポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂などからなる固体潤滑剤をスプレーガンで噴射して所定の厚さにした後、260〜340℃の温度で0.1〜3時間程度加熱して焼成する。これにより、窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜が形成される。この固体潤滑剤からなる皮膜の厚さは、1〜10μmであるのが好ましく、1〜6μmであるのがさらに好ましい。
以下、本発明による積層皮膜被覆部材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
まず、基材として、鋼種SCM415に浸炭焼入れ焼き戻しを施した後に鏡面研磨した円柱形の直径6.5mmのファビリピンを用意した。この基材をクロムターゲットを使用する処理装置(DCマグネトロンスパッタリング装置)の真空処理室に入れて、到達真空度5×10−4Pa以下に真空排気した後、真空処理室内が圧力5×10−1Paのアルゴンガス雰囲気になるように制御してアルゴンガスを真空処理室内に導入し、1000V×2Aでイオンボンバード処理を約180分間施して、基材の表面を活性化した。
次に、アルゴンガスの導入を一旦停止し、真空処理室内を排気して真空にした後、真空処理室内の雰囲気中のアルゴンガスの分圧が0.061Paになるようにアルゴンガスを真空処理室内に導入しながら、投入電力4kW、バイアス電圧を−100Vとして、スパッタリングを30秒間行って、基材上に厚さ約40nmのクロム皮膜(ビッカース硬度HV500程度)を形成した(クロム皮膜形成工程)。
次に、真空処理室内を排気して真空にした後、真空処理室内の雰囲気中のアルゴンガスの分圧が0.042Paになるようにアルゴンガスを真空処理室内に導入するとともに、窒素ガスの分圧が0.054Paになるように窒素ガスを真空処理室内に導入しながら、投入電力4kW、バイアス電圧を−100Vとして、スパッタリングを60秒間行って、基材上に厚さ約80nmの窒素含有クロム皮膜を形成した(窒素含有クロム皮膜形成工程)。
さらに、上記のクロム皮膜形成工程と窒素含有クロム形成工程を交互に繰り返して、それぞれ厚さ約40nmのクロム皮膜と厚さ約80nmの窒素含有クロム皮膜を40層ずつ(合計80層、全膜厚4.8μm)交互に形成した(窒素含有クロム皮膜形成工程)。
次に、クロム皮膜と窒素含有クロム皮膜が交互に形成された基材を処理装置から取り出し、乾式塗布焼成法に基づいて、最表面の窒素含有クロム皮膜の表面にポリテトラフルオロエチレンからなる固体潤滑剤を塗布し、300℃で2時間程度保持して固体潤滑剤を焼成することによって、窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜を形成した。
このようにして得られた積層皮膜被覆部材(円柱形の積層皮膜被覆ファビリピン)の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、窒素含有クロム皮膜の全面に形成された固体潤滑剤が確認された。また、得られた積層皮膜被覆部材の断面をSEMで観察したところ、厚さ2μm程度の固体潤滑剤の層が確認された。
また、得られた積層皮膜被覆ファビリピンの耐荷重性能および摺動特性を評価するために、図3に示すような高速ファレックス摩擦磨耗試験機の回転駆動機112にピン113により積層皮膜被覆ファビリピン110の上部を固定し、その側面を一対の(SCM415に浸炭焼き入れ焼き戻しを施した)Vブロック(V溝付ブロック)111のV溝で挟み、回転駆動機112により積層皮膜被覆ファビリピン110を回転させながら、Vブロックに加える(図中、矢印Lで示す)荷重を増加して、非潤滑で摩擦磨耗試験を行った後、試験終了後の積層皮膜被覆ファビリピンとVブロックの外観を観察した。この試験では、すべり速度を0.1m/sとして、試験終了時の最大荷重が20000N(試験機最大荷重)であり、摺動特性の評価として試験終了時の摩擦係数μは0.021であった。また、試験終了後のファビリピン(基材)の外観の観察では、焼付きや損傷などは認められず、窒素含有クロム皮膜の損傷も観察されなかった。
[実施例2]
クロム皮膜形成工程のスパッタリングを45秒間行って基材上に厚さ約60nmのクロム皮膜を形成し、窒素含有クロム皮膜形成工程のスパッタリングを90秒間行って基材上に厚さ約120nmの窒素含有クロム皮膜を形成し、このクロム皮膜形成工程と窒素含有クロム皮膜形成工程を交互に繰り返して、それぞれ厚さ約60nmのクロム皮膜40層と、厚さ約120nmの窒素含有クロム皮膜39層(合計79層、全膜厚約7.08μm)を交互に形成し、最表面のクロム皮膜の表面にポリテトラフルオロエチレンからなる固体潤滑剤を塗布した以外は、実施例1と同様の方法により、積層皮膜被覆部材を作製した。
この積層皮膜被覆部材の表面をSEMで観察したところ、ほぼ全面に形成された固体潤滑剤が確認され、積層皮膜被覆部材の断面をSEMで観察したところ、厚さ3μm程度の固体潤滑剤の層が確認された。
また、得られた積層皮膜被覆ファビリピンの耐荷重性能および摺動特性を実施例1と同様の方法により評価したところ、試験終了時の最大荷重は20000Nであり、試験終了時の摩擦係数μは0.023であった。また、試験終了後のファビリピンの外観の観察では、焼付きや損傷などは認められず、積層皮膜の損傷も観察されなかった。
[比較例1]
窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、積層皮膜被覆部材(円柱形の積層皮膜被覆ファビリピン)を作製して、耐荷重性能および摺動特性を評価した。この試験では、試験終了時の最大荷重は5519N、試験終了時の摩擦係数μは0.282であった。また、試験終了後の外観の観察では、窒素含有クロム皮膜が破壊され、ファビリピン(基材)には塑性流動による変形が認められ、かじりや凝着も観察された。
[比較例2]
実施例1と同様のファビリピン(鋼種SCM415に浸炭焼入れ焼き戻しを施した後に鏡面研磨した円柱形の直径6.5mmのファビリピン)の耐荷重性能および摺動特性を実施例1と同様の方法により評価したところ、試験終了時の最大荷重は4837Nであり、試験終了時の摩擦係数μは0.336であった。また、試験終了後のファビリピンの外観の観察では、塑性流動による変形が認められ、焼き付きが観察された。
1 基材
2 クロム皮膜
3 窒素含有クロム皮膜
4 固体潤滑剤からなる皮膜
10 処理装置
12 真空処理室
14 真空ポンプ
16 回転テーブル
18 治具
20 基材
22 ターゲット
24 スパッタ電源
26 イオンボンバードおよびバイアス電源
28 ガス導入パイプ
110 積層皮膜被覆ファビリピン
111 Vブロック
112 回転駆動機
113 ピン

Claims (10)

  1. 基材上にクロム皮膜を介して窒素含有クロム皮膜が形成され、この窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜が形成されていること特徴とする、積層皮膜被覆部材。
  2. 基材上に複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜が形成され、最表面に固体潤滑剤からなる皮膜が形成されていることを特徴とする、積層皮膜被覆部材。
  3. 前記固定潤滑剤がフッ素系樹脂からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層皮膜被覆部材。
  4. 前記固定潤滑剤がポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の積層皮膜被覆部材。
  5. 基材上にクロム皮膜を介して窒素含有クロム皮膜を形成した後、この窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤を塗布して焼成することにより、窒素含有クロム皮膜上に固体潤滑剤からなる皮膜を形成することを特徴とする、積層皮膜被覆部材の製造方法。
  6. 基材上に複数のクロム皮膜と複数の窒素含有クロム皮膜をこの順に交互に形成した後、最表面に固体潤滑剤を塗布して焼成することにより、最表面に固体潤滑剤からなる皮膜を形成することを特徴とする、積層皮膜被覆部材の製造方法。
  7. 前記窒素含有クロム皮膜が、クロムターゲットを使用してアルゴンガスと窒素ガスを含む雰囲気中でスパッタリングすることによって形成されることを特徴とする、請求項5または6に記載の積層皮膜被覆部材の製造方法。
  8. 前記クロム皮膜が、クロムターゲットを使用してアルゴンガス雰囲気中でスパッタリングすることによって形成されることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれかに記載の積層皮膜被覆部材の製造方法。
  9. 前記固定潤滑剤がフッ素系樹脂からなることを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載の積層皮膜被覆部材の製造方法。
  10. 前記固定潤滑剤がポリテトラフルオロエチレンからなることを特徴とする、請求項5乃至8のいずれかに記載の積層皮膜被覆部材の製造方法。
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