JP2011162767A - 炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、ならびにそれを用いた成形材料および成形品 - Google Patents

炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、ならびにそれを用いた成形材料および成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、炭素繊維への含浸性や炭素繊維の成形品中への分散性に優れ、かつ、力学特性に優れた成形品を得るための炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物ならびにそれを用いた成形剤用および成形品を提供する。
【解決手段】下記成分(A)〜(C)からなる炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物により解決される。
(A)炭素繊維 1〜75質量%
(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂 17〜98.99質量%
(C)ポリアルキレンテレフタレート 0.01〜8質量%
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、加熱時の加工性が改善されたポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることで、ポリフェニレンスルフィド樹脂の炭素繊維への含浸性や炭素繊維の成形品中への分散性が良好であり、かつ力学特性に優れた成形品を製造ができる炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、ならびにそれを用いた成形材料および成形品に関する。
強化繊維と熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途に広く用いられている。これらの樹脂組成物に使用される強化繊維は、その使用用途によって様々な形態で成形品を強化している。これらの強化繊維には、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やPBO繊維などの有機繊維、およびシリコンカーバイド繊維などの無機繊維や炭素繊維などが使用されているが、比強度、比剛性および軽量性のバランスの観点から炭素繊維が好適であり、その中でもポリアクリロニトリル系炭素繊維が好適に用いられる。また、マトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂には、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などが使用されているが、耐熱性、耐薬品性、難燃性が優れることからポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す)が、電気・電子機器部材,自動車機器部材として注目を集めている。また、射出成形、押出成形等により各種成型部品、フィルム、シート、繊維等に成形可能であり、耐熱性,耐薬品性,難燃性の要求される分野に幅広く用いられている。
さらに、炭素繊維と熱可塑性樹脂をマトリックスとする成形材料として、射出成形材料や、連続した炭素繊維を用いるプリプレグ、ヤーン、マットなど多種多様な形態が知られている。このような成形材料は、熱可塑性樹脂の特性を活かして成形を容易にし、熱硬化性樹脂のような貯蔵の負荷を必要とせず、また得られる成形品の靭性が高く、リサイクル性に優れるといった特徴があり、工業材料として有用である。これらの成形材料を用いることで、射出成形,押出成形、スタンピング成形、オートクレーブ成形などの多種多様な成形方法により、各種成形品が得られる。
しかしながら、炭素繊維を添加すると炭素繊維を含む熱可塑性樹脂の粘度が上昇するために、成形性が悪化する。そこで、成形するために、成形温度や成形圧力を高くする必要があるが、成形温度や成形圧力を高くすることで、樹脂の分解や樹脂やけを起こしたり、成形時の繊維破断が多く発生することがある。一方、成形圧力を高められない場合、熱可塑性樹脂の未充填部分を発生させ、強度低下を引き起こすことがある。
また、成形材料を製造する過程で、熱可塑性樹脂を連続した炭素繊維に含浸させるには、経済性、生産性の面で問題があり、それほど広く用いられていないのが現状である。例えば、樹脂の溶融粘度が高いほど強化繊維束への含浸は困難とされることはよく知られている。靱性や伸度などの力学特性に優れた熱可塑性樹脂は、とりわけ高分子量体であり、熱硬化性樹脂に比べて粘度が高く、またプロセス温度もより高温を必要とするため、成形材料を容易に、生産性よく製造することには不向きであった。一方、含浸の容易さから低分子量の、すなわち低粘度の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂に用いると、得られる成形品の力学特性が大幅に低下するという問題があった。
特許文献1には、PPS樹脂とオリゴマー状エステルからなる樹脂組成物が開示されているが、PPS樹脂の流動性を改良するが、オリゴマー状エステルの耐熱性が乏しいため、成形加工時に蒸発ガスや分解ガスが発生したり、分解ガスが成形品中のボイドとなり、物性を低下させることがある。また、添加物が低分子量であるため成形品表面に移行し、添加物が金型表面や成形品表面を汚染することがある。
特許文献2には、PPS樹脂とアルコキシシラン化合物と強化繊維からなる樹脂組成物に低バリ性向上のためにシラン化合物を添加する方法が開示されているが、PPS樹脂の低粘度化による加工性向上について全く触れられていない。
特許文献3には、PPS樹脂と熱可塑ポリエステルとエポキシ樹脂と強化繊維からなる樹脂組成物が開示されているが、PPS樹脂の低粘度化による加工性向上について全く触れられていない。また、熱可塑ポリエステルの添加量が多く、耐熱性の不足や加水分解による強度劣化が起こることがある。
このように、従来技術では、PPS樹脂と炭素繊維からなる樹脂組成物の成形加工性の向上と、成形した際の耐熱性や耐加水分解性を発現できなかった。そのため、成形加工性や射出成形時の繊維分散性に優れ、成形品とした際に力学特性や耐加水分解性に優れるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびそれを用いた成形材料および成形品の開発が望まれていた。
特開昭62−45654号公報 特許第3079923号公報 特開昭59−58052号公報
本発明は、従来技術の背景に鑑み、炭素繊維とPPS樹脂からなる樹脂組成物の成形加工性を大幅に向上し、力学特性に優れた成形品を製造できる炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、ならびにそれを用いた成形材料、およびそれを用いた成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、上記課題を達成することができる、次の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、ならびにそれを用いた成形材料および成形品を見出した。
本発明の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、前記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、下記成分(A)〜(C)からなる炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。
(A)炭素繊維 1〜75質量%
(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂 17〜98.99質量%
(C)ポリアルキレンテレフタレート 0.01〜8質量%。
また、本発明の成形材料は、前記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、前記繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた成形材料であって、(A)〜(C)を280〜350℃で溶融混練して得られたものである成形材料、前記繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた成形材料であって、(A)と(B)を280〜350℃で溶融混練して得られた(E)炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と(C)からなる成形材料、または、前記炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた成形材料であって、280〜350℃の温度で(B)と(C)を溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイが(A)に含浸されてなる成形材料である。
さらに、本発明の成形品は、前記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、前記成形材料を用いて成形された成形品である。
本発明の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、それを用いて成形材料とした場合、PPS樹脂の炭素繊維への含浸性が良好であり、その成形材料を用いて成形品とした場合、炭素繊維の成形品中への分散性が良好であり、かつ力学特性に優れた成形品を製造ができる。本発明の成形材料を用いて成形された成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、または自動車の部品、内部部材および筐体などの各種部品・部材に極めて有用である。
PPS樹脂/PET、およびPPS樹脂のDSC曲線である。
本発明は、(A)炭素繊維、(B)ポリフェニレンスルフィド樹脂、(C)ポリアルキレンテレフタレート樹脂を有してなる炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物である。まず、これらの構成要素について説明する。
本発明に用いられる(A)炭素繊維としては、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などが挙げられる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。これらの炭素繊維は力学特性の向上、成形品の軽量化効果の観点から好ましく、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、導電性を付与する目的では、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した炭素繊維を用いることもできる。
本発明で用いられる炭素繊維は1〜75質量%より構成されている。1質量%未満では、得られる成形品の力学特性が不十分となる場合があり、75質量%を超えると射出成形などの成形加工の際に流動性が低下する場合がある。好ましくは5〜65質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
さらに炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05〜0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08〜0.4であり、さらに好ましくは0.1〜0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが好ましい。
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とする。
表面酸素濃度比[O/C]を0.05〜0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
また、炭素繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、3〜15μmの範囲内であることがより好ましい。炭素繊維束とした場合の単糸数には、特に制限はなく、100〜350,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ1,000〜250,000本の範囲内で使用することが好ましい。また炭素繊維の生産性の観点からは、単糸数が多いものが好ましく、20,000〜100,000本の範囲内で使用することが好ましい。
また、炭素繊維にサイジング剤を付与することで、炭素繊維表面の官能基等の表面特性に適合させて接着性およびコンポジット総合特性を向上させることができる。また、集束性、耐屈曲性や耐擦過性を改良し、高次加工工程において、毛羽、糸切れの発生を抑制しており、いわゆる糊剤、集束剤として高次加工性を向上させることもできる。
サイジング剤付着量は、特に限定しないが、炭素繊維のみの質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下付与することがさらに好ましい。0.01質量%以下では接着性向上効果が現れにくく、10質量%以上では、マトリックス樹脂の物性低下させることがある。
また、サイジング剤としては、ビスフェノール型エポキシ化合物、直鎖状低分子量エポキシ化合物、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられる。また、これらは1種または2種以上を併用してもよい。
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えばローラーを介してサイジング液に浸漬する方法、サイジング液の付着したローラーに接する方法、サイジング液を霧状にして吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、炭素繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に炭素繊維を超音波で加振させることはより好ましい。
乾燥温度と乾燥時間は化合物の付着量によって調整すべきであるが、サイジング剤の付与に用いる溶媒の完全な除去、乾燥に要する時間を短くし、一方、サイジング剤の熱劣化を防止し、サイジング処理された炭素繊維(A)で形成された炭素繊維束が固くなって束の拡がり性が悪化するのを防止する観点から、乾燥温度は、150℃以上350℃以下であることがこのましく、180℃以上250℃以下であることがより好ましい。
サイジング剤に使用する溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメリルアセトアミド、アセトン等が挙げられるが、取扱いが容易で防災の観点から水が好ましい。従って、水に不溶、若しくは難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤、界面活性剤を添加し、水分散して用いるのが良い。具体的には、乳化剤、界面活性剤としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体、オレフィン−無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができるが、相互作用の小さいノニオン系乳化剤が多官能化合物の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
また、成形材料として用いる炭素繊維の形態としては、連続繊維でもよいし、不連続繊維であってもよい。連続繊維として用いる場合、一方向や、平織り、組紐、多軸織物等の織物加工したものであってもよい。不連続繊維として用いる場合、チョップド糸や不織布状であってもよい。ここで言う不織布状とは繊維シート状、ウェブ状で、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、融着、接着のいずれかによって繊維間が結合されたものを言う。
不連続繊維として用いる炭素繊維の長さとしては、2〜50mmが好ましく、より好ましくは、4〜25mm、さらに好ましくは、5〜15mmである。2mm以下では、成形品にした際に強度向上効果が小さいことがあり、50mm以上では、炭素繊維をランダムに配向することが難しいことがある。ここで言う配向は、成形品の縦方向と横方向の強度比を比較することで簡易的に求めることができ、縦横の強度比は1に近いほど、等方となり、取扱いが容易となるため好ましい。なお、強度比は強度が高い方向を分母とし算出する。具体的には、0.5〜1が好ましく、0.7〜1がより好ましく、さらに好ましくは0.9〜1である。
不織布を製造する具体的方法としては、乾式法、湿式法がある。また、ランダムな不織布を製造するためには、乾式法では、開繊バーを設ける方法や、さらに開繊バーを振動させる方法、さらにカードの目をファインにする方法や、カードの回転速度を調整する方法などがある。湿式法では、炭素繊維を分散させる際の撹拌条件を調整する方法、濃度を希薄化する方法、溶液粘度を調整する方法、分散液を移送する際に渦流を抑制する方法などがある。
本発明で用いられる(B)PPS樹脂としては、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、耐熱性の観点から下記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含むものが好ましい。
Figure 2011162767
耐熱性の点から、上記構造式で示される繰返し単位を70モル%以上、特に90モル%以上を含む重合体であることが好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%以下を、下記の構造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
Figure 2011162767
本発明で用いられるPPS樹脂は17〜98.99質量%より構成されていることを特徴としている。PPS樹脂を17〜98.99質量%の範囲で用いることで耐熱性、耐薬品性、難燃性等の特性に優れたPPS樹脂の優れた特徴を有することができる。好ましくは30〜95質量%、より好ましくは40〜90質量%である。
本発明で用いられるPPS樹脂は、公知の方法、すなわち、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは特公昭52−12240号公報や、特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造できる。
本発明において、上記の様に得られたPPS樹脂を、空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することも可能であり、さらに、これらの処理を2種類以上行うことももちろん可能である。また、これらの処理を行ったPPS樹脂を、2種類以上の混合で使用することももちろん可能である。2種類以上の混合で使用する場合の具体的方法として、空気中加熱により架橋したPPS樹脂と熱処理を行っていないPPS樹脂の混合、酸水溶液による洗浄を行ったPPS樹脂と有機溶媒による洗浄を行ったPPS樹脂の混合、有機溶媒で洗浄したPPS樹脂と有機溶媒で洗浄を行っていないPPS樹脂の混合、などが例示できる。
本発明で用いられるPPS樹脂の分子量については、特に制限はないが、後述の分散径に影響するため、適宜選択する必要があり、この分子量に関するパラメーターである溶融粘度については、通常5〜1,000Pa・s(320℃、剪断速度1000sec−1)のものが使用されるが、中でも10〜500Pa・sのものが好ましく用いられる。
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃であり、時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この加熱処理温度と時間を適宜コントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は減圧仕様、またはシール性の高い仕様の通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は静置型の加熱装置でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN − メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用することもできる。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃ 程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。
また、有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧で或いは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
PPS樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
また、本発明で用いられるPPS樹脂の形状は特に限定されるものではなく、例えば、ペレット、フレーク、顆粒状、パウダーなどが挙げられる。
本発明で用いられる(C)ポリアルキレンテレフタレートとは、ポリアルキレンテレフタレート、アルキレンテレフタレートのコポリエステル、ポリアルキレンテレフタレートの混合物などが挙げられる。
上記のポリアルキレンテレフタレートとしては、ジオール成分とテレフタル酸成分を用いて得られる重合体が挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2ービス(2’ーヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどおよびエステル形成能を持つそれらの誘導体が挙げられ、1,4ブタンジオール、エステル形成能を有するその誘導体、エチレングリコールまたはエステル形成能を有するその誘導体とテレフタル酸またはエステル形成能を有するその誘導体、を重縮合して得られるポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
中でも、ポリエチレンテレフタレートは熱安定性に優れ、かつ、比較的安価なポリマーであることからより好ましく用いることができる。
また、本発明で用いられるポリアルキレンテレフタレートは0.01〜8質量%の範囲とすることで、樹脂組成物の流動性および結晶性が飛躍的に向上する(図参照)。0.01質量%以下では、流動性を向上できないことがあり、8質量%以上では、耐薬品性に劣ることがある。
ポリアルキレンテレフタレートの固有粘度は0.5〜1.1であることが好ましい。ここで言う固有粘度はポリアルキレンテレフタレートの分子量に置き換えることもでき、固有粘度0.5〜1.1に相当する分子量は10000〜30000である。固有粘度が0.5より小さいと結晶性が低下する傾向にあり、また、1.1を超えると分散性が低下し樹脂組成物の機械特性が低下する傾向にある。より好ましくは、0.6〜1.0である。
また、本発明で用いられるポリアルキレンテレフタレートの形状は特に限定されるものではなく、例えば、ペレット、フレーク、顆粒状、パウダーなどが挙げられる。
本発明の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物には、必要に応じてガラス繊維、アルミナ繊維等のセラミック繊維、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の補強用充填剤や炭酸カルシウム、マイカ、タルク、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン,クレー、パイロフェライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、ネフェリンシナイト、アタパルジャイト、ウォラストナイト、PMF、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、石英、石英ガラス等の無機充てん剤および有機,無機顔料を配合することも可能である。
ガラス繊維としては、例えば繊維長1.5〜12mm、繊維径3〜24μmのチョップドストランド、繊維径3〜8μmのミルドファイバー、325メッシュ以下のガラスフレークやガラスパウダーを挙げることができる。
また、ワックス等の離型剤、シラン系,チタネート系のカップリング剤、滑剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、結晶核剤、発泡剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等を必要に応じて添加してもよい。
さらに本発明の樹脂組成物に他のポリマーを少量添加し、他の物性を付与することも可能である。添加するポリマーとしては、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリスチレン、ポリブテン、ポリα−メチルスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610,ナイロン12,ナイロン11,ナイロン46等のポリアミド、ポリアリレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂などの単独重合体、ランダムまたはブロック,グラフト共重合体およびそれらの混合物またはその改質物等が挙げられる。
本発明の一態様を構成する(D)ポリマーアロイは、280〜350℃の温度で(B)PPS樹脂と(C)ポリアリーレンテレフタレートを溶融混練して得られるものである。
溶融混練の方法は特に限定されず、公知の加熱溶融混合装置を使用することができる。具体的には、加熱溶融混合装置として、単軸押出機、二軸押出機、それらの組み合わせの二軸押出機、ニーダー・ルーダー等を使用することができる。中でも、二軸押出機を用いるとPPS樹脂とポリアルキレンテレフタレートの分散性が向上することから好ましく用いられる。より好ましくは、ニーディングゾーンが2箇所以上ある二軸押出機を用いることである。
混練時のPPS樹脂およびポリアルキレンテレフタレートの混練機への供給方法は特に限定されず、例えば、PPS樹脂およびポリアルキレンテレフタレートを予めブレンドし混練機へ供給する方法、PPS樹脂およびポリアルキレンテレフタレートの各々を計量しながら混練機へ供給する方法、PPS樹脂を供給した混練機へポリアルキレンテレフタレートをサイドフィードで供給する方法が挙げられる。
混練時の温度は、280〜350℃の温度で溶融混練することを特徴としている。ここで言う温度とは、吐出部で計測される樹脂の温度のことである。この温度が280℃より低い温度で混練すると、PPS樹脂の溶融粘度が高くなったり、PPS樹脂が未溶融となったりするため分散性が悪化し、成形品の機械特性を低下させることがある。一方、350℃を越えるとポリアルキレンテレフタレートが分解し、混練機の口金に分解物が付着し生産性が低下したり、成形品の強度が低下することがあり好ましくない。好ましくは、285〜330℃、より好ましくは290〜320℃である。
また、混練時間は特に限定されないが、0.5〜30分であることが好ましい。混練時間が30分を超えると、熱分解反応が進行し物性低下することがある。また、0.5分より短いと分散が不十分となり、成形品の強度が低下することがある。
本来、PPS樹脂は融点が285℃と高く、流動性を得るためには300℃以上に加熱する必要があるが、上記混練方法により得られる(D)ポリマーアロイは、融点は変化しないが融点以上における流動性が飛躍的に向上し、290℃においても流動化し、さらには驚くべきことにポリマーアロイの粘度は、PPS樹脂とポリアルキルテレフタレートのいずれの粘度よりも低くなることを見出したものである。このようなポリマーアロイとすることで成形加工性と寸法安定性を両立することができたのである。
この原因は明らかではないが、PPS分子間にポリアルキレンテレフタレートが入り込みポリマーアロイを可塑化し流動化していると考えられる。また、ポリアルキレンテレフタレートがPPS分子間に入り込むことで、ポリアルキレンテレフタレートのベンゼン環とPPS樹脂のベンゼン環がスタッキングし、冷却時の結晶性を向上させていると考えられる。このようなことから、ポリアルキレンテレフタレートの含有量が0.01質量%より少ないと流動性および結晶性の向上効果が得られないことがある。また、8質量%より多いとPPS樹脂の優れた特性である耐熱性、耐薬品性、難燃性等が得られないことがある。また、ポリアルキレンテレフタレートの分散径が大きくなる傾向にあり、成形品の強度が低下することがある。好ましくは0.1〜5質量%である。より好ましくは1〜3質量%である。なお、ポリアルキレンテレフタレートは、オリゴマー状エステルを用いた場合と比べ、流動性の向上もさることながら、耐熱性、耐薬品性、難燃性等の性能が得られることも期待でき、成形品の強度向上も認められる。
本発明の一態様を構成する(D)ポリマーアロイは、示差走査熱量分析(DSC)測定で降温速度16℃/minにて測定した降温結晶化温度(Tc’)が230〜250℃であることが好ましい。このような範囲とすることで樹脂組成物の耐熱性が向上し、該樹脂組成物を用いた成形品の機械的強度が向上する。好ましくは240〜250℃である。
本発明の一態様を構成する(D)ポリマーアロイは、DSC測定で昇温速度16℃/minで測定した昇温結晶化温度は特に限定されないが、昇温結晶化温度(Tc)が130℃以下とすることで成形加工性が向上する。
本発明の一態様を構成する(D)ポリマーアロイは、290℃における剪断速度1216sec−1において測定した溶融粘度が200Pa・sec以下であることが好ましい。200Pa・secを超えると成形加工時に不安定な流動状態を発生しやすく、成形時の安定した生産性を確保できないことがある。成形温度における溶融粘度を低くすることにより流動状態を安定化し、生産性を改善できる。
なお、溶融粘度はキャピラリーレオメーター(東洋精機製作所(株)キャピログラフ1B型)により測定される値である。
本発明の一態様を構成する(D)ポリマーアロイに含まれる(C)ポリアリーレンテレフタレートの分散径は、本発明の成形材料を成形して得られる成形品により観察することができ、この分散径が0.4μm以下であることが好ましい。本発明において(C)ポリアリーレンテレフタレートの分散径とは、PPS樹脂を主成分とする相と、ポリアリーレンテレフタレートを主成分とする相が、0.01μm以上の相分離構造を有する場合の、ポリアリーレンテレフタレートを主成分とする相構造の島部分の直径である。島相が楕円形、不定形、または、二層以上の円または楕円になっている場合は、島相の最長距離と最短距離の平均値を用いるものとする。これに対し、分子レベルで均一に混合している状態、すなわち、ポリアリーレンテレフタレートを主成分とする相が0.01μm未満の相分離構造周期である場合は、相溶状態と見なすものとする。本発明において、0.4μm以下の分散径は、相分離構造をとっていても良いし、相溶状態であっても良い。また、0.4μm以上では、成形品の強度が低下することがある。より好ましくは、0.3μm以下である。
なお、(C)ポリアリーレンテレフタレートの分散径は、本発明の成形材料を成形して得られる成形品の断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察することができる。必要に応じて、オスミウムなどで染色しても良い。染色は、通常の方法で行うことができる。
本発明の一態様を構成する(D)ポリマーアロイは、結晶化速度が従来のPPS樹脂に比べ著しく速いため、低温金型を用いても射出成形によって十分に結晶化し、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。また、本発明のポリマーアロイは繊維に成形化する際、紡糸温度を下げることができ、また、結晶化速度が速いため延伸工程の熱セット温度も低温とすることができるため、製糸工程の省エネ効果が大きい。また、低温で成型加工や紡糸が可能となるため、口金汚れが従来のPPS樹脂と比較して少なくなり、生産性が向上する。
本発明における成形材料とは、(A)炭素繊維と(B)PPS樹脂と(C)ポリアリーレンテレフタレートとを複合化したもの、好ましくは、(A)炭素繊維と、(B)PPS樹脂と(C)ポリアリーレンテレフタレートを280〜350℃の温度で溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイとを複合化したものであり、各種公知の成形法により最終的な形状の製品に加工できるものである。複合化する方法は、特に制限しないが、各成分の形態により以下の(1)〜(4)の4つの方法が例示される。
(1)(A)炭素繊維と(B)PPS樹脂と(C)ポリアリーレンテレフタレートとを280〜350℃の温度で溶融混練して複合化する方法である。溶融混練の方法は特に限定されず、公知の加熱溶融混合装置を使用することができる。具体的には、加熱溶融混合装置として、単軸押出機、二軸押出機、それらの組み合わせの二軸押出機、ニーダー・ルーダー等を使用することができる。中でも、二軸押出機を用いると炭素繊維の分散性が向上することから好ましく用いられる。より好ましくは、ニーディングゾーンが2箇所以上ある二軸押出機を用いることである。
混練時の各成分の混練機への供給方法は特に限定されず、例えば、PPS樹脂およびポリアルキレンテレフタレートを予めブレンドし混練機へ供給した混練機へ炭素繊維をサイドフィードで供給する方法が挙げられる。なお、炭素繊維とPPS樹脂を溶融混練し、成形時にポリアルキレンテレフタレートを配合する方法であっても、成形時の流動性を改良できる。
(2)(D)ポリマーアロイを加熱溶融させて、(A)炭素繊維と複合化する方法である。ここでの加熱溶融には、押出機、プランジャー、溶融バスなどの公知の装置を用いることができるが、スクリュウ、ギアポンプなどの溶融したポリマーアロイを移送する機能を具備していることが好ましい。
例えば、押出機を用いてポリマーアロイを溶融させつつ、Tダイやスリットダイなどの金型ダイに供給し、該金型ダイ中に炭素繊維束を通過させる方法や、同様にギアポンプにて溶融バスに供給し、該溶融バス内で炭素繊維束をしごきながら通過させる方法や、プランジャーポンプで溶融させたポリマーアロイをキスコーターに供給し、炭素繊維にポリマーアロイの溶融物を塗布する方法や、同様に、加熱した回転ロールの上に溶融させたポリマーアロイを供給し、このロール表面に炭素繊維束を通過させる方法が例示できる。
また、本発明の成形材料は、連続、長尺のままでも成形法によっては使用可能である。例えば、ヤーンプリプレグとして、加熱しながらマンドレルに巻き付け、ロール状成形品を得たりすることができる。このような成形品の例としては、液化天然ガスタンクなどが挙げられる。また本発明の成形材料を、複数本一方向に引き揃えて加熱・融着させることにより一方向熱可塑性プリプレグを作製することも可能である。このようなプリプレグは、軽量性、高強度、弾性率、耐衝撃性が要求されるような分野、例えば自動車部材などに適用が可能である。
製造された成形材料は、ペレタイザーやストランドカッターなどの装置で一定長に切断して用いることもある。この切断工程が金型ダイ通過後に連続的に設置されていてもよい。成形材料が扁平であったりシート状である場合には、スリットして細長くしてから切断してもよい。スリットと切断を同時におこなうシートペレタイザーのようなものを使用してもよい。
本発明の成形材料は、好ましくは2〜25mmの範囲の長さに切断して用いられる。前記の長さに調製することにより、成形時の流動性、取扱性を十分に高めることができる。このように適切な長さに切断された成形材料としてとりわけ好ましい態様は、射出成形用の長繊維ペレットが例示できる。
(3)粒子状、繊維状、フレーク状、フィルム状、シート状、不織布状からなる群から選択される少なくとも1種の形態の(D)ポリマーアロイを、(A)炭素繊維に接するように配置させる方法である。ここで、フィルム状とは平均厚みが200μm以下の厚さのものを言い、シート状とは平均厚みが200μmを超えるものを言う。不織布状とは繊維シート状、ウェブ状で、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、融着、接着のいずれかによって繊維間が結合されたものを言う。なお、平均厚みは、シートもしくはフィルムを複数枚重ね、任意の10点をノギスで測定し、得られた厚みを重ねた枚数で除することで求めることができる。
具体的には、粒子状、繊維状、フレーク状のポリマーアロイを気相に散布し炭素繊維を通過させることで付着する方法や、粒子状、繊維状、フレーク状のポリマーアロイを液相に分散させ通過後乾燥させることで付着する方法や、炭素繊維をコンベアに移動させ、その片面または両面にフィルム状のポリマーアロイをホットローラーで積層する方法や、不織布状のポリマーアロイをパンチングで固定する方法や、炭素繊維と不織布状のポリマーアロイをエアジェットで絡合する方法などが例示できる。
また、経済性、生産性の観点から、いずれの形態もロール加工されていることが好ましい。ポリマーアロイがロール加工困難な場合、各形態に加工後に離型紙上に塗布して、ロール加工することが、好ましい方法の1つとして例示できる。
ここで、炭素繊維の形態としては、一方向や、平織り、組紐、多軸織物等の織物加工したものであってもよい。また、特定の長さに切断した不連続繊維であってもよく、不織布状であってもよい。
(4)(D)ポリマーアロイからなる繊維と(A)炭素繊維を混織し複合化する方法である。本発明における混織とは、ポリマーアロイからなる繊維と炭素繊維からなる複合糸であり、一方向や、平織、組紐、多軸織物等の織物加工したものであってもよい。また、不織布状であってもよい。
ポリマーアロイからなる繊維(以下、ポリマーアロイ繊維と称する。)は、(B)PPS樹脂と(C)ポリアリーレンテレフタレートを280〜350℃の温度で溶融混練した後、紡糸温度は285〜310℃で溶融紡糸することが好ましい。紡糸温度が310℃を越えると、PPS樹脂に含まれているオリゴマーなど有機系低重合度物やポリアルキレンテレフタレートの分解物やオリゴマーなどが揮発し、口金が汚れなどにより糸切れが多発するなど、安定した紡糸が困難となる。紡糸温度を低くすることで有機系低重合度物の発生量が少なくなるなどして、ポリアルキレンテレフタレートの分解物やオリゴマーの揮発量が抑制できるため、より低温で溶融紡糸することが好ましいが、285℃未満では樹脂の流動性が悪く安定した溶融紡糸が困難となる。本発明の範囲とすることで、ポリマーの流動性と有機系低重合度物や分解物などの揮発成分の発生量が両立でき、安定してポリマーアロイ繊維を製造することができる。より好ましい紡糸温度は285〜300℃である。
ポリマーアロイ繊維の製造方法において、溶融混練工程を経て、溶融紡糸工程により溶融紡糸されれば特に限定されるものではない。例えば、PPS樹脂とポリアルキレンテレフタレートを予め押出機で溶融混練したペレットを使用しても良いし、ポリアルキレンテレフタレートが高濃度に含有したマスターバッチを作成しておき、紡糸工程で任意の濃度に希釈しても良い。また、混練機を紡糸機に直結し、ペレットを得ることなく混練した溶融物を直接紡糸してもかまわない。
紡糸工程では、増粘によるゲル化を防止するため、窒素雰囲気下で上記紡糸温度に加熱し、口金より吐出することが望ましい。口金は通常の溶融紡糸に使用するもの、例えば、吐出孔径Dが0.15〜0.5mmφで、吐出孔深さLが0.2〜2.0mm程度のものが好ましく用いられる。
口金から吐出した糸条は、通常、紡出後に風速5〜100m/分のチムニー風により冷却され、集束剤として油剤を適量付与させて、巻き取ることにより得られる。引き取り速度に特に制限は無いが、通常500m/分〜7000m/分の範囲である。また、製造プロセスもUY(低速紡糸)もしくはPOY(高速紡糸)の状態で一旦巻き取り公知の延伸機を用いて延伸処理するUY−DT(延伸撚糸)、POY―DT方式、一旦巻き取ることなく紡糸延伸工程を連続して行うDSD(直接紡糸延伸)方式などのプロセスが適用出来る。また、POY―仮撚り工程やDT−仮撚り工程などの工程も適用することも可能である。
さらに、短繊維を製造する際には、必要に応じて、紡糸で得られた糸条を温水浴中、もしくは熱板上にて適正倍率にて延伸後、必要に応じてスタッフィングボックス型クリンパーにて捲縮を付与し、所定の温度にて弛緩熱処理を施し、次いで、油剤を付与後、所定の長さに繊維を切断し、短繊維を得ることができる。得られる糸の特性に特に制限は無いが、通常、単糸繊度0.5〜10.0dtex、強度は2.0cN/dtex以上、好ましくは3.0cN/dtex以上、より好ましくは3.1cN/dtex以上であり、強度の上限に特に制限はないが通常10.0cN/dtex以下、伸度10〜100%、乾熱収縮率0〜20.0%の繊維が得られる。
また、本発明のPPS繊維の断面形状は特に限定されるものでは無く、通常の円形断面のみならず、△断面、Y字断面、□断面、十字断面、中空断面、C型断面、田型断面などいかなる異形断面も採用できる。
また、前記(3)〜(4)の方法で得られた(A)炭素繊維と(D)ポリマーアロイからなる複合体を、加熱、加圧することで(A)炭素繊維に(D)ポリマーアロイを含浸させた成形材料としてもよい。
まず、炭素繊維とポリマーアロイからなる複合体を加熱し、該加熱により、ポリマーアロイを溶融することが重要である。このときの加熱温度は280〜400℃であり、好ましくは285〜380℃であり、より好ましくは290℃〜360℃であり、さらに好ましくは295〜340℃である。280℃未満では、ポリマーアロイを十分に溶融できず、含浸不足の成形材料となり、400℃以上では、ポリマーアロイの分解反応を起こすなどの好ましくない副反応が生じる場合がある。
加熱方法としては、具体的には、加熱したチャンバー内に複数の加圧ローラーを配置し複合体を通過させる方法や、同様にカレンダーロールを上下に配置し複合体を通過させる方法や、ホットローラーを用いて加熱と加圧を同時に行う方法が例示できる。
また、ポリマーアロイの架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制する観点から、非酸化性雰囲気下で加熱することが好ましい。ここで、非酸化性雰囲気とは酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を含有しない雰囲気、すなわち、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの面から、窒素雰囲気が好ましい。
さらに、加熱させると同時に、または加熱させた後に加圧力を付与することで、炭素繊維へのポリマーアロイの含浸をより高めることができるため好ましい。ここでの加圧力としては、含浸性と生産性のバランスの観点から、0.5〜10MPaが好ましく、1〜8MPaがより好ましく、2〜6MPaがさらに好ましい。
具体的には、窒素置換された系内で、ダブルベルトプレスにより上下から加圧力を付与しながら複合体を通過させる方法や、窒素置換された加熱炉内で、複数配置されたカレンダーロールに複合体を加圧しながら通過させる方法や、複合体を高温のプレス型に配置し、プレス型間を密封して加圧すると同時に型内を窒素置換、そして減圧条件として含浸完了後にプレス型間を開放して複合体を引き抜く方法が例示できる。
また、得られた複合体の冷却する方法は、特に制限はなく、エアを噴射して冷却する方法や、冷却水を噴霧する方法や、冷却バスを通過させる方法や、冷却板の上を通過させる方法など公知の方法が使用できる。
引き取り速度は、成形材料の製造がオンラインであった場合、工程速度に直接影響するため、経済性、生産性の観点から高いほど好ましい。引き取り速度としては、5〜100m/分が好ましく、10〜100m/分がより好ましく、20〜100m/分がさらに好ましい。
具体的には、ニップローラーで引き出す方法や、ドラムワインダーで巻き取る方法や、固定治具で基材を把持して治具ごと引き取る方法が例示できる。また、引き取る際に、基材をスリッターに通して一部を切断してもよいし、ギロチンカッターなどで所定の長さにシート加工してもよいし、ストランドカッターなどで一定長に切断してもよいし、ロール形状のままとしてもよい。
また、前記(2)〜(4)の成形材料を製造する前段階で、炭素繊維束を予め開繊しておくことがより好ましい。開繊とは収束された炭素繊維束を分繊させる操作であり、PPS樹脂の含浸性をさらに高める効果が期待できる。開繊により、炭素繊維束の厚みは薄くなり、開繊前の炭素繊維束の幅をb1(mm)、厚みをa1(μm)、開繊後の炭素繊維束の幅をb2(mm)、厚みをa2(μm)とした場合、開繊比=(b2/a2)/(b1/a1)は2.0以上が好ましく、2.5以上がさらに好ましい。
炭素繊維束の開繊方法としては、特に制限はなく、例えば凹凸ロールを交互に通過させる方法、太鼓型ロールを使用する方法、軸方向振動に張力変動を加える方法、垂直に往復運動する2個の摩擦体による炭素繊維束の張力を変動させる方法、炭素繊維束にエアを吹き付ける方法を利用できる。
なお、本発明の成形材料は、その効果を損なわない範囲内で、他の工程を組み合わせることができる。例えば、電子線照射工程、プラズマ処理工程、強磁場付与工程、表皮材積層工程、保護フィルムの貼付工程、などが挙げられる。
本発明の成形材料は、各成分の質量配分は、引取速度やフィーダー供給量を制御することで容易に実施できる。
また、前記(2)または(3)、(4)の含浸後に得られる本発明の成形材料のボイド率は0〜20%の範囲が好ましい。より好ましいボイド率の範囲は10%未満である。ボイド率は、複合体の部分をASTM D2734(1997)試験法により測定するか、または成形材料の断面に存在するボイドを観察し、成形材料の全面積とボイド部の全面積とから次式を用いて算出することができる。
ボイド率(%)=ボイド部の全面積/(複合体部の全面積+ボイド部の全面積)×100。
本発明の上記(1)〜(4)で得られる成形材料の成形方法としては、特に限定しないが、射出成形、オートクレーブ成形、プレス成形、フィラメントワインディング成形、スタンピング成形などの生産性に優れた成形方法に適用でき、これらを組み合わせて用いることをできる。また、インサート成形、アウトサート成形などの一体化成形も容易に実施できる。さらに、成形後にも加熱による矯正処置や、熱溶着、振動溶着、超音波溶着などの生産性に優れた接着工法を活用することもできる。得られる成形品は、PPS樹脂の特性を反映して、耐熱性、耐薬品性、力学特性、難燃性に優れ、種々の用途に展開できる。
上記成形方法により得られる成形品としては、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナ、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品、部材および外板、ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、モンキー、レンチ等の工具類、パソコン、ディスプレー、携帯電話、携帯情報端末などの電気または電子機器、OA機器の筐体、部材、各種ラケット、ゴルフクラブシャフト、ヨット、ボード、スキー用品、釣り竿などのスポーツ関連部品、部材、ロッド、パネル、フロア、継ぎ手、ヒンジ、ギアなどの工業資材および人工衛星関連部品など幅広い用途に有用である。また、流動性に優れるため成形品の厚みが0.5〜2mmの薄肉の成形品を得ることができる。このような薄肉成形が要求されるものとしては、例えばパーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材が挙げられる。このような電気・電子機器用部材では、導電性を有する炭素繊維を使用しており、電磁波シールド性が付与されるためにより好ましい。
本発明の成形材料を用いて成形された成形品は、30%NaOH水溶液に93℃×24時間浸漬後の強度保持率が90%以上であることが好ましい。より好ましくは95%以上である。本来、PPS樹脂は耐アルカリ性に優れるが、耐アルカリ性の低いポリアルキルテレフタレートなどを混合すると、アルカリによりポリアルキルテレフタレートが分解し、成形品の強度は低下する傾向にある。しかしながら、本発明の成形品では、ポリアルキルテレフタレートを0.01〜8質量%配合することで、成形性が向上するのみならず、耐アルカリ性の低下も抑制できるのである。
以下に実施例を示し、本発明を実施例でさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
(1)示差走査熱量測定
示差走査熱量分析(DSC)を用い、JIS−K−7122(1987年)に従って測定・算出した。まず始めに、320℃で2分間保持して、完全に融解させた後、液体窒素にて急冷し、樹脂中に結晶が残存しない状態とした。続いて50℃から320℃まで16℃/分で昇温したときに観測される発熱ピークをTcとし、それに続いて、320℃で2分間保持した後、320℃から50℃まで16℃/分の降温速度で降温したときに観測される発熱ピークの温度をTc’として求めた。
装置:TA Instruments製 DSC Q2000
データ解析:TA Instruments製 ユニバーサル アナリシス 2000。
(2)溶融粘度
キャピラリーレオメーターを用いて、孔径1mmφ、L/D=10のダイスを用い、剪断速度1216sec−1 で測定した。
装置:東洋精機製作所(株)製 キャピログラフ1B型。
(3)固有粘度[η]
25℃で、オルトクロロフェノール中0.1g/ml濃度で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(g/100ml)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
(4)ポリマーアロイ繊維の強度(cN/dtex)、伸度(%)
JIS L 1013の方法に準拠し、試長25cm、引張り速度30cm/分の条件で測定した。
(5)ポリマーアロイ繊維の熱収縮率
熱安定性の指標として熱収縮率を98℃に温度調節された熱水バスで30分間放置後の初期長さに対する熱収縮率(%)として求めた。
(6)MFR
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM−D1238−70に準ずる方法で測定した。
(7)ボイド率
ASTM D2734(1997)試験法に準拠して、ボイド率(%)を算出した。ボイド率の判定は以下の基準でおこない、成形材料はA〜Cを合格とし、成形品はA、Bを合格とした。
A:0〜5%未満
B:5%以上10%未満
C:10%以上20%未満
D:20%以上。
(8)成形材料を用いて得られた成形品の繊維分散性
100mm×100mm×2mmの成形品を成形し、表裏それぞれの面に存在する未分散CF束の個数を目視でカウントした。評価は50枚の成形品についておこない、その合計個数について繊維分散性の判定を以下の基準でおこない、A、Bを合格とした。
A:未分散CF束が1個以下
B:未分散CF束が1個以上5個未満
C:未分散CF束が5個以上10個未満
D:未分散CF束が10個以上。
(9)NaOH処理強度保持率
耐アルカリの指標として、30%のNaOH水溶液に成形品を浸漬した。その後、NaOH水溶液を加熱し、93℃で24時間熱処理後の繊維の強度を測定し、初期の強度に対する強度保持率(%)として求め、A、Bを合格とした。
A:0〜5%未満
B:5以上10%未満
C:10%以上20%未満
D:20%以上。
参考例1.炭素繊維1
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、表面酸化処理を行い、総単糸数24,000本の連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維の特性は次に示す通りであった。
単繊維径:7μm
単位長さ当たりの質量:1.6g/m
比重:1.8
表面酸素濃度比 [O/C]:0.06
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa。
ここで、表面酸素濃度比は、表面酸化処理を行ったあとの炭素繊維を用いて、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めた。まず、炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10Torrに保った。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積をK.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積をK.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出した。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES−200を用い、感度補正値を1.74とした。
なお、各原料ポリマーおよびオリゴマーは次の参考例に従って合成した。
参考例2.PPS樹脂−1の製造合成
攪拌機および底に弁のついたオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム水溶液8267g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2925g(70.20モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13860.00g(140.00モル)、酢酸ナトリウム2187g(26.67モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14740gおよびNMP280.0gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.023モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10324g(70.24モル)、NMP6452g(65.17モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで攪拌しながら、200℃から250℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、250℃で70分保持した。次いで、250℃から278℃まで0.8℃/分の速度で昇温し、278℃で78分保持した。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を撹拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく攪拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを攪拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPS樹脂顆粒を得た。得られたPPS樹脂−1のMFRは298g/10分だった。また、290℃で剪断速度1216sec−1において測定した溶融粘度が220Pa・sであった。
参考例3.PPS樹脂−2の製造
p−DCBの仕込量を10250g(69.76モル)とした以外は参考例2と同様にして行った。得られたPPS樹脂−2のMFRは168g/10分だった。また、290℃で剪断速度1216sec−1において測定した溶融粘度が150Pa・sであった。
参考例4.PETの製造
高純度テレフタル酸(三井化学社製)1000gとエチレングリコール(日本触媒社製)450gのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約1230gが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行い、このエステル化反応生成物の1230gを重縮合槽に移送した。
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された前記重縮合反応槽に、三酸化アンチモンを230ppmとなるように添加し、その後、低重合体を30rpmで撹拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。
最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の撹拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻し、重縮合反応を停止して、冷水中にストランド状に吐出、直ちにカッティングしてPETチップ1000gを得た。得られたポリマーのMFRは158g/10分であった。また、290℃で剪断速度1216sec−1において測定した溶融粘度が140Pa・sであった。
参考例5.BHT(PETオリゴマー(以下、BHT))の製造
高純度テレフタル酸(三井化学社製)1000gとエチレングリコール(日本触媒社製)450gのスラリーを予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約1230gが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行った。
反応終了後、1230gをステンレス製のバットに吐出、空冷したのち粉砕してPETオリゴマー粉末を得た。得られたポリマーのMFRは80g/10minであった。また、290℃で剪断速度1216sec−1において測定した溶融粘度が65Pa・sであった。
実施例1
炭素繊維を40質量%、PPS樹脂−1を58.2質量%およびPETを1.8質量%配合し、300℃に加熱されたニーディングゾーンが2箇所有したベント式2軸混練押出機に供給して、せん断速度100sec−1、滞留時間1分にて溶融押出した。混練時の樹脂温度は300℃であった。混練機より冷水中にストランド状に吐出、直ちにカッティングして、成形材料を得た。得られた成形材料を冷却後、カッターで切断してペレット状の成形材料とした。
次いで、得られたペレット状の成形材料を150℃で10時間、真空乾燥し、日本製鋼所(株)製J350EIII型射出成形機を用いて、シリンダー温度:320℃、金型温度:150℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の成形品評価方法に従い評価した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。得られた成形品中の炭素繊維の割合は40質量%であった。
実施例2
PETを射出成形時に配合した以外は実施例1と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例3
炭素繊維を、ニーディングゾーンが2箇所有したベント式2軸混練押出機の先端に設置された金型ダイ中に通し、押出機からダイ内に320℃に溶融させたPPS樹脂−1を79.2質量%およびPETを0.8質量%からなるポリマーアロイを吐出させて、炭素繊維にポリマーアロイを含浸した。この際、炭素繊維のみの含有率が20質量%になるようにポリマーアロイ量を調整した。得られた成形材料を冷却後、カッターで切断してペレット状の成形材料とした。得られた成形材料は実施例1と同様にして、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に示した。
実施例4
PPS樹脂−1とPETの配合量をそれぞれ77.6質量%、2.4質量%とした以外は実施例3と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例5
PPS樹脂−1とPETの配合量をそれぞれ73.6質量%、6.4質量%とした以外は実施例3と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例6
PPS樹脂−2を用いた以外は実施例4と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例7
炭素繊維含有量を10質量%にし、PPS樹脂−1とPETの配合量をそれぞれ87.3質量%、2.7質量%とした以外は実施例4と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例8
炭素繊維含有量を30質量%にし、PPS樹脂−1とPETの配合量をそれぞれ67.9質量%、2.1質量%とした以外は実施例4と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例9
炭素繊維含有量を50質量%にし、カッターで切断せず、プリプレグとした以外は、実施例4と同様にして、成形材料を得た。得られた成形材料を150℃で10時間、真空乾燥し、70tプレス機を用いて、金型温度:320℃にて特性評価用試験片(成形品)を成形した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の成形品評価方法に従い評価した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例10
PPS樹脂−1 48.5質量%およびPET1.5質量%を、300℃に加熱されたニーディングゾーンが2箇所有したベント式2軸混練押出機に供給して、せん断速度100sec−1、滞留時間1分にて溶融押出した。混練時の樹脂温度は300℃であった。混練機より冷水中にストランド状に吐出、直ちにカッティングして、成形材料を得た。得られた成形材料を冷却後、カッターで切断してペレット状のポリマーアロイとした。次いで得られたポリマーアロイを150℃で10時間、真空乾燥し、2軸混練押出機が接続された紡糸機に供給した。紡糸機に接続された2軸混練押出機は設定温度300℃、せん断速度100sec−1とした。また、紡糸温度は295℃、口金口径0.23mm、口金孔数24ホール、1000m/分の条件で紡糸し、未延伸糸を得た。5時間紡糸した結果、糸切れ回数は0回であり紡糸性は良好であった。
次いで得られた未延伸糸を、延伸温度90℃、熱処理温度170℃、延伸倍率2.6倍で延伸した。延伸時の糸切れ回数は0回であり延伸性は良好であった。
得られた延伸糸は強度3.8cN/dtex、伸度35%であり、熱収縮率は5.1%であり、寸法安定性の良好な糸であった。
得られたポリマーアロイ繊維を横糸にし、炭素繊維を縦糸に用いた混織の成形材料を作成した。得られた成形材料中の炭素繊維の割合は50質量%であった。さらに、含浸部温度を320℃に設定したダブルベルトプレスにより、ポリマーアロイを炭素繊維に含浸した成形材料を得た。得られた成形材料を150℃で10時間、真空乾燥し、70tプレス機を用いて、金型温度:320℃にて特性評価用試験片(成形品)を成形した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の成形品評価方法に従い評価した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例11
PPS樹脂−1 47.5質量%およびPET2.5質量%を配合し、300℃に加熱されたニーディングゾーンが2箇所有したベント式2軸混練押出機に供給して、せん断速度100sec−1、滞留時間1分にて溶融押出した。混練時の樹脂温度は300℃であった。混練機より冷水中にストランド状に吐出、直ちにカッティングして、成形材料を得た。得られた成形材料を冷却後、カッターで切断してペレット状のポリマーアロイとした。次いで得られたポリマーアロイを150℃で10時間、真空乾燥し、不織布とした。
得られたポリマーアロイ不織布と炭素繊維を積層した。積層された成形材料の炭素繊維の割合は50質量%であった。さらに、含浸部温度を320℃に設定したダブルベルトプレスにより、ポリマーアロイを炭素繊維に含浸した成形材料を得た。得られた成形材料を150℃で10時間、真空乾燥し、70tプレス機を用いて、金型温度:320℃にて特性評価用試験片(成形品)を成形した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の成形品評価方法に従い評価した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例12
参考例1で得られた炭素繊維1をカートリッジカッターで6mmにカットし、チョップド炭素繊維を得た。水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を作成し、この分散液と上記チョップド炭素繊維とを用いて炭素繊維不織布を製造した。製造装置は、分散槽として容器下部に開口コックを有する直径1000mmの円筒形状の容器、分散槽と抄紙槽とを接続する直線状の輸送部を備えている。分散液中の炭素繊維濃度を0.05質量%にしておこない、得られた炭素繊維不織布は200℃の乾燥炉で30分間乾燥した。
上記炭素繊維基材と、実施例11で得られたポリマーアロイ不織布を積層した。積層された成形材料の炭素繊維の割合は50質量%であった。さらに、含浸部温度を320℃に設定したダブルベルトプレスにより、ポリマーアロイを炭素繊維に含浸した成形材料を得た。得られた成形材料を150℃で10時間、真空乾燥し、70tプレス機を用いて、金型温度:320℃にて特性評価用試験片(成形品)を成形した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の成形品評価方法に従い評価した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。また、得られた成形品の縦横の強度比は0.90であった。
実施例13
ポリマーアロイをフィルムとして用いた以外は、実施例12と同様にして成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
実施例14
参考例1で得られた炭素繊維1をカートリッジカッターで50mmにカットし、チョップド炭素繊維を得た。カットした炭素繊維を開綿機に投入し、炭素繊維を開繊した後、再度開綿機に投入し、綿状の炭素繊維を得た。また、実施例10で得られたポリマーアロイ繊維をカートリッジカッターで50mmにカットし、不連続繊維を得た。綿状の炭素繊維とポリマーアロイ不連続繊維を質量比で50:50で混合した。この混合物を再度、開綿機に投入して、炭素繊維とポリマーアロイ繊維とからなる混合原綿を得た。
この混合原綿を直径600mmのシリンダーロールを有するカーディング装置に投入し、炭素繊維とポリマーアロイ繊維とからなるシート状の成形材料を得た。成形材料の炭素繊維の割合は50質量%であった。さらに、含浸部温度を320℃に設定したダブルベルトプレスにより、ポリマーアロイを炭素繊維に含浸した成形材料を得た。得られた成形材料を150℃で10時間、真空乾燥し、70tプレス機を用いて、金型温度:320℃にて特性評価用試験片(成形品)を成形した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を上記の成形品評価方法に従い評価した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
比較例1
PETを用いず、PPS樹脂−1を60質量%用いたこと以外は実施例1と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
比較例2
PETを用いず、PPS樹脂−1を80質量%用いたこと以外は実施例3と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
比較例3
PPS−1を40質量%、PETを40質量%用いたこと以外は実施例3と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
比較例4
PETの代わりにBHTを用いたこと以外は実施例3と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した。
比較例5
PETを用いず、PPS樹脂−1を50質量%用いたこと以外は実施例9と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した
比較例6
PETを用いなかったこと以外は実施例10と同様にして溶融紡糸を行ったが、紡糸温度が295℃ではPPS樹脂−1繊維は得られず、実施例10と同様の成形材料は得られなかった。
比較例7
PETを用いなかったこと以外は実施例11と同様にして、成形材料、成形品を得た。特性評価結果はまとめて表1に記載した
Figure 2011162767
以上のように、実施例1〜11においては、本発明における成形材料は炭素繊維への含浸性に優れ、また該成形材料を用いることで繊維分散性にすぐれ、かつ力学特性に優れた成形品を得ることができた。
一方比較例においては、成形材料の炭素繊維への含浸不足、または、成形品のボイドが多く、成形品の力学特性に優れる成形材料は得られなかった。
本発明の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物は、加熱時の加工性が改善されたポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることで、ポリフェニレンスルフィド樹脂の炭素繊維への含浸性や炭素繊維の成形品中への分散性が良好であり、かつ力学特性に優れた成形品を得ることが可能であり、種々の用途に展開できる。特に自動車部品、電気・電子部品、家庭・事務電気製品に好適である。
1:実施例1 PPS樹脂/PET 昇温時熱量曲線
2:比較例1 PPS樹脂 昇温時熱量曲線
3:実施例1 PPS樹脂/PET 降温時熱量曲線
4:比較例1 PPS樹脂 降温時熱量曲線

Claims (23)

  1. 下記成分(A)〜(C)からなる、炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
    (A)炭素繊維 1〜75質量%
    (B)ポリフェニレンスルフィド樹脂 17〜98.99質量%
    (C)ポリアルキレンテレフタレート 0.01〜8質量%
  2. 280〜350℃の温度で(B)と(C)を溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイを含み、(D)の粘度が、(B)と(C)いずれの溶融粘度よりも低い、請求項1に記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  3. 280〜350℃の温度で(B)と(C)を溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイを含み、(D)の示唆走査熱量分析(DSC)測定で降温速度16℃/minにて測定した降温結晶化温度が230〜250℃である、請求項1または2に記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  4. 280〜350℃の温度で(B)と(C)を溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイを含み、(D)の290℃で剪断速度1216sec−1において測定した溶融粘度が200Pa・s以下である、請求項1〜3いずれかに記載の繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 280〜350℃の温度で(B)と(C)を溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイを含んでなり、(D)に含まれる(C)の分散径が0.4μm以下である、請求項1〜4いずれかに記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  6. (C)がポリエチレンテレフタレートである、請求項1〜5いずれかに記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  7. (C)の固有粘度が0.5〜1.1である、請求項1〜6いずれかに記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  8. (A)のX線光電子分光法(ESCA)で測定される表面酸素濃度比(O/C)が0.05〜0.5である、請求項1〜7いずれかに記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  9. (A)が20,000〜100,000本の単繊維からなる炭素繊維束である、請求項1〜8いずれかに記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9いずれかに記載の繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた成形材料であって、(A)〜(C)を280〜350℃で溶融混練して得られたものである成形材料。
  11. 請求項1〜9いずれかに記載の繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた成形材料であって、(A)と(B)を280〜350℃で溶融混練して得られた(E)炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物と(C)からなる成形材料。
  12. 請求項1〜9いずれかに記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた成形材料であって、280〜350℃の温度で(B)と(C)を溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイが(A)に含浸されてなる成形材料。
  13. 請求項12に記載の成形材料を2〜25mmでカットした成形材料。
  14. 請求項1〜9いずれかに記載の炭素繊維強化ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を用いた成形材料であって、(A)と、280〜350℃の温度で(B)と(C)を溶融混練して得られた(D)ポリマーアロイとが複合化されてなる成形材料。
  15. (D)が不織布である、請求項14に記載の成形材料。
  16. (D)が繊維である、請求項14に記載の成形材料。
  17. (D)が285〜310℃で溶融紡糸されたものである、請求項16に記載の成形材料。
  18. (A)が不連続繊維である、請求項14に記載の成形材料。
  19. (A)が不織布状である、請求項14に記載の成形材料。
  20. 請求項14〜19いずれかに記載の成形材料を加熱、加圧することにより、(D)を(A)に含浸させたものである成形材料。
  21. ボイド率が10%未満である、請求項12、13、20いずれかに記載の成形材料。
  22. 請求項10〜21いずれかに記載の成形材料を用いて成形された成形品。
  23. 30%NaOH水溶液に93℃×24時間浸漬後の強度保持率が90%以上である、請求項22に記載の成形品。
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