JP2011157265A - 結晶化ガラスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】充分な可視光線の遮蔽性能を有するとともに、赤外線透過率が高く、しかも長時間使用しても可視光線や赤外線の透過特性が損なわれにくい結晶化ガラスを提供する。
【解決手段】(1)質量%で、SiO 55〜73%、Al 17〜25%、LiO 2〜5%、TiO 2.6〜5%、SnO 0.01〜1%、V 0.005〜0.3%を含有し、AsおよびSbを実質的に含有しない組成となるように原料粉末を調合する工程、(2)原料粉末を溶融して前駆体ガラスを作製する工程、(3)前駆体ガラスを765〜785℃の温度域で少なくとも10分間熱処理し結晶核を形成する工程、を含むことを特徴とする結晶化ガラスの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、IH(電磁誘導加熱装置)、ハロゲンヒータ等を熱源とする調理器のトッププレートに使用される結晶化ガラスに関する。
IH、ハロゲンヒータ等を熱源とする調理器に用いられるトッププレートには、破損しにくい(機械的強度および耐熱衝撃性が高い)こと、外観が美しいこと、腐食しにくい(化学的耐久性が高い)こと、熱線である赤外線の透過率が高いことなどが要求される。このような特性を満たす材料として、β−石英固溶体(LiO−Al−nSiO(n≧2))を主結晶とする低膨張透明結晶化ガラスがあり、調理器用トッププレートとして用いられている。
低膨張透明結晶化ガラスは、各種ガラス原料を所定割合で混合する調合工程、1600〜1900℃の高温でガラス原料を溶融して均質化された流体とする溶融工程、各種方法により種々の形状に成形する成形工程、歪みを除去するアニール工程、微細な結晶を析出させる結晶化工程を経ることにより製造される。結晶化工程には、結晶の核となる微結晶を析出させる核形成の工程と、結晶を成長させる結晶成長工程を含む。
このようにして製造された低膨張透明結晶化ガラスは、概して可視光に対して透明であるため、そのままトッププレートとして使用すると、当該トッププレート下方に配置されている調理器の内部構造が直接見えてしまい、外観性に劣る。そのため、Vなどの着色剤によって結晶化ガラス自体を着色したり(例えば、特許文献1参照)、結晶化ガラス表面に遮光膜を形成したり(例えば、特許文献2参照)して、可視光を充分遮蔽した状態で使用される。
ところで、Vなどの着色剤によるガラスの着色は、清澄剤として使用されるAsやSbとの相互作用により生じる(強められる)と考えられている。ところが、AsやSbは環境負荷が大きいため、近年、その使用が制限されつつある。従来のガラス組成から単純にAsやSbを除外すると、着色剤による発色効率が低下する傾向がある。着色剤の量を増やすことで可視光遮蔽効果を向上させることも可能であるが、当該方法によると赤外線透過率が低下するという問題がある。
一方、着色剤の発色効率を高める成分として、AsやSbに替えて、例えばSnO等を添加することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。当該方法によれば、環境負荷が小さく、赤外線透過性および可視光遮蔽性に優れたトッププレートを得ることが可能となる。
特公平3−9056号公報 特開2003−68435号公報 特表2004−523446号公報
特許文献3に記載の結晶化ガラスは、使用開始時には優れた赤外線透過性を有するが、長時間使用するにつれて、赤外線透過率が低下するという問題がある。長期間使用しても高赤外線透過率を維持可能とすることは、調理性能の面からはもちろんのこと、省エネルギーの観点からも重要である。
また、直接調理性能には影響しないが、長期の使用によって可視光線透過性も低下するため、加熱部分だけが変色しやすいという問題もある。
したがって、本発明は、充分な可視光線の遮蔽性能を有するとともに、赤外線透過率が高く、しかも長時間使用しても可視光線や赤外線の透過特性が損なわれにくい結晶化ガラスを提供することを技術課題とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、長期間の使用によって可視光線や赤外線の透過性能が低下するのは、結晶化が充分に進行していないため、さらなる加熱によって結晶化がさらに進行し、マトリックスガラス相の組成が変化することが原因であると突き止めた。そこで、充分に結晶化が進行するように熱処理を行うことにより前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
すなわち、本発明は、(1)質量%で、SiO 55〜73%、Al 17〜25%、LiO 2〜5%、TiO 2.6〜5.5%、SnO 0.01〜1%、V 0.005〜0.3%を含有し、AsおよびSbを実質的に含有しない組成となるように原料粉末を調合する工程、(2)原料粉末を溶融して前駆体ガラスを作製する工程、(3)前駆体ガラスを765〜785℃の温度域で少なくとも10分間熱処理し結晶核を形成する工程、を含むことを特徴とする結晶化ガラスの製造方法に関する。
上記組成を有する前駆体ガラスを結晶化させるにあたり、765〜785℃の温度域で少なくとも10分間(例えば10分間〜2時間)熱処理を行うことにより、結晶核を多数析出させることができる。その後、結晶成長させることにより、短時間で結晶化を充分に進行させることができる。そのため、本発明により作製された結晶化ガラスは、その後加熱に供されても結晶化がほとんど進行しない。結果として、加熱に伴うマトリックスガラス相の組成変化を抑制でき、可視領域および赤外領域における透過特性の経時変化を低減することができる。
なお、SnOはマトリックスガラス中に存在することで色調が変動しやすくなるが、上記の条件で熱処理を行うと、SnOを多く含有した結晶核が析出しやすくなり、マトリックスガラス中のSnO量が低減される。したがって、加熱に伴うマトリックスガラス相中のSnO濃度の変化も小さくなるため、この観点からも、可視領域および赤外領域における透過特性の経時変化が低減される。
なお、本発明の製造方法により得られる結晶化ガラスの着色メカニズムは以下の通りである。
ガラス中において、Vイオンは主に3〜5価の状態で存在するが、結晶化ガラスの着色は、マトリックスガラス相に存在する4価のVイオンに起因して生じると推定される。さらに、4価のVイオンがマトリックスガラス相に存在するTiOと結合すると、着色の程度がさらに強まる(可視光透過率が低下する)ことがわかっている。このように、結晶化ガラスの着色は、マトリックスガラス相における4価のVイオンとTiOの量に大きく影響される。
一方で、Vイオンの価数は、Snの存在(特に、Snイオンの酸化還元作用)により変化することがわかっている。VとSnOの割合を適宜制限することにより、4価のVイオンの量が多くなり、Vの発色効果を最大限に引き出すことが可能となる。
ところで、本発明の結晶化ガラスを、例えば調理器用トッププレートとして長期にわたって使用した場合、使用時の加熱により、結晶化がさらに進行する。結晶化が進行すると、マトリックスガラス組成が変化し、マトリックスガラス相において、結晶組成に寄与しない4価のVイオンおよびTiOの濃度が相対的に高まる。その結果、4価のVイオンとTiOの結合状態が変化し、可視領域および赤外領域における透過率が変化することになる。そこで、4価のVイオンに対してTiOが過剰に存在していると、長期使用によるマトリックスガラス組成の変化に対しても、4価のVイオンとTiOの結合状態が変化しにくく、可視光透過率が変化しにくい。
なお、本発明の製造方法により得られる結晶化ガラスはβ−石英固溶体を主結晶として含有する結晶化ガラスであるが、長期使用による加熱により、β−石英固溶体からβ−スポジュメン固溶体(LiO−Al−nSiO(n≧4))へ結晶転移が起こり、白濁を生じる性質を有している。結晶化ガラスにおいて白濁が生じると、外観が変化するとともに、散乱により赤外線透過率が低下する。AsおよびSbは結晶転移を促進する作用が大きい成分であることが知られている。本発明の製造方法により得られる結晶化ガラスは、AsおよびSbを実質的に含有しないため、結晶転移しにくく、長期使用による可視領域および赤外領域の透過率変化が小さいという特徴を有する。
また、AsやSbは環境負荷が大きいとされ、近年はその使用が制限されつつある。本発明の製造方法により得られる結晶化ガラスは、これらの成分を実質的に含有しないため、廃棄時における環境負荷を低減できる。なお、本発明における「実質的に含有しない」とは、意図してこれらの成分を原料として添加せず、各種ガラス原料に含まれる不純物として混入するレベルをいい、具体的には、含有量が0.1%以下であることを意味する。
第二に、本発明の結晶化ガラスの製造方法は、さらに、(4)結晶核が形成された前駆体ガラスを800〜930℃の温度域で少なくとも10分間熱処理して結晶を成長させる工程を含むことを特徴とする。
当該構成によれば、結晶化がさらに進行しやすくなり、可視領域および赤外領域における透過特性の経時変化をより一層低減することができる。
第三に、本発明は、前記いずれかの製造方法により作製されたことを特徴とする結晶化ガラスに関する。
第四に、本発明の結晶化ガラスは、900℃で50時間熱処理した後の波長700nmにおける吸光度変化率が20%以下であることを特徴とする。
第五に、本発明は、前記いずれかの結晶化ガラスを用いてなる調理器用トッププレートに関する。
本発明の製造方法において、まず質量%で、SiO 55〜73%、Al 17〜25%、LiO 2〜5%、TiO 2.6〜5.5%、SnO 0.01〜1%、V 0.005〜0.3%を含有し、AsおよびSbを実質的に含有しない組成となるように原料粉末を調合する。このように組成を限定した理由を以下に説明する。
SiOはガラスの骨格を形成するとともに、β−石英固溶体を構成する成分である。SiOの含有量は55〜73%、好ましくは60〜71%、より好ましくは63〜70%である。SiOの含有量が少なくなると、熱膨張係数が高くなる傾向にあり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向にある。一方、SiOの含有量が多くなると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が大きくなったりして、ガラスの成形が困難になる傾向がある。
Alはガラスの骨格を形成するとともに、β−石英固溶体を構成する成分である。Alの含有量は17〜25%、好ましくは17.5〜24%、より好ましくは18〜22%である。Alの含有量が少なくなると、熱膨張係数が高くなる傾向にあり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向にある。一方、Alの含有量が多くなると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が大きくなったりして、ガラスの成形が困難になる傾向がある。また、ムライト結晶の析出によりガラスが失透する傾向があり、失透部位からガラスにクラックが発生しやすくなるため、成形が困難になる。
LiOはβ−石英固溶体を構成する成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘性を低下させて、溶融性および成形性を向上させる成分である。LiOの含有量は2〜5%、好ましくは2.3〜4.7%、より好ましくは2.5〜4.5%である。LiOの含有量が少なくなると、ムライト結晶によってガラスが失透する傾向があり、失透部位からガラスにクラックが発生しやすくなるため、成形が困難になる。また、ガラスを結晶化させる際に、β−石英固溶体結晶が析出し難しくなり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。さらに、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなったりする傾向にあり、ガラスの成形が困難になる。一方、LiOの含有量が多くなると、結晶性が強くなりすぎて結晶化工程において粗大結晶が析出しやすく、その結果、白濁して透明な結晶化ガラスが得られなくなったり、破損しやすくなって成形が困難になる。
TiOは結晶化工程で結晶を析出させるための結晶核を構成する成分であるとともに、4価のVイオンの発色を強める作用を有する。TiOの含有量は2.6〜5.5%、好ましくは2.6〜5%、より好ましくは2.8〜4.8%、さらに好ましくは3〜4.5%である。TiOの含有量が少なくなると、結晶核として使用されずにマトリックスガラス相に残留する量が少なくなるため、4価のVイオンと結びつきにくく、発色効率が低くなる傾向がある。また、長期間の使用によって結晶化が進行すると、既述のように、ガラスマトリックス中における4価のVイオンとTiOの濃度が高まり、両者の結合状態が変化するため、着色の程度が不当に変化する(特に、色が濃くなる)傾向がある。さらに、充分な数の結晶核が形成されないため、個々の結晶核から成長する結晶の粒径が大きくなって(粗大結晶)、白濁して透明な結晶化ガラスが得られにくい。一方、TiOの含有量が多くなると、溶融工程から成形工程においてガラスが失透する傾向にあり、破損しやすくなるため成形が困難になる。
SnOは着色成分である4価のVイオンを増加させて発色を強める成分である。SnOの含有量は0.01〜1%、0.03〜0.7%、0.03〜0.6%、0.03〜0.3%、0.03〜0.25%、特に0.05〜0.23%であることが好ましい。SnOの含有量が少なくなると、4価のVイオンが効率よく生成しないため発色効果が強まりにくい。SnOの含有量が多くなると、ガラスを溶融、成形する際に失透する傾向にあり、成形が困難になる。また、同じ組成であっても溶融条件や結晶化条件のわずかな違いによって、色調が変化しやすくなる傾向がある。
は着色成分である。Vの含有量は0.005〜0.3%、0.01〜0.3%、0.02〜0.2%、特に0.03〜0.15%であることが好ましい。Vの含有量が少なくなると、着色が薄くなって可視光を充分に遮蔽できなくなる。一方、Vの含有量が多くなると、赤外線の透過率が低下する傾向がある。また、β−石英固溶体からβ−スポジュメン固溶体に結晶転移しやすくなり、白濁の原因となるおそれがある。
なお、AsとSbは既述の理由から実質的に含有しない。
さらに、上記以外にも、要求される特性を損なわない範囲で種々の成分を添加することができる。
MgOは、LiOの替わりにβ−石英固溶体結晶に固溶する成分である。MgOの含有量は0〜1.5%、好ましくは0〜1.4%、より好ましくは0.1〜1.2%である。MgOの含有量が多くなると、結晶性が強くなりすぎて失透する傾向にあり、その結果、ガラスが破損しやすくなって成形が困難になる。
ZnOは、MgOと同様にβ−石英固溶体結晶に固溶する成分である。ZnOの含有量は0〜1.5%、好ましくは0〜1.4%、より好ましくは0.1〜1.2%である。ZnOの含有量が多くなると、結晶性が強くなりすぎる傾向がある。そのため、緩やかに冷却しながら成形すると、ガラスが失透して破損しやすくなるため、例えばフロート法での成形に不向きとなる。
ZrOは、TiOと同様に結晶化工程で結晶を析出させるための結晶核を構成する成分である。ZrOの含有量は0〜2.3%、好ましくは0〜2.1%、より好ましくは0.1〜1.8%である。ZrOの含有量が多くなると、ガラスの溶融および成形工程において失透する傾向にあり、ガラスの成形が困難になる。
なお、TiOとZrOの合量は3.8〜6.5%、好ましくは4.2〜6%である。これらの成分の合量が多くなると、ガラスの溶融および成形工程において失透する傾向にあり、ガラスの成形が困難になる。一方、これらの成分の合量が少なすぎる場合、結晶核が充分に形成されないため、結晶が粗大化しやすく、結果として、白濁して透明な結晶化ガラスが得られにくくなる。
はガラスの分相を促進する成分である。結晶核はガラスが分相する場所に生じやすいことから、Pは結晶核の形成を助ける働きをする。Pの含有量は0〜2%、好ましくは0.1〜1%である。Pの含有量が多くなると、溶融工程において分相するため、所望の組成を有するガラスが得られにくくなるとともに、不透明となる傾向がある。
NaOはガラスの粘性を低下させて、ガラス溶融性および成形性を向上させる成分である。NaOの含有量は0.5%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。NaOの含有量が多すぎると、β−石英固溶体からβ−スポジュメン固溶体への結晶転移が促進されるため、結晶の粗大化による白濁が発生しやすい。また、熱膨張係数が高くなる傾向にあり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。
ガラスの粘性を低下させて、溶融性および成形性を向上させるために、KO、CaO、SrOおよびBaOを合量で5%まで添加することが可能である。なお、CaO、SrOおよびBaOは、ガラスを溶融する際に、失透を引き起こす成分でもあるため、これら成分は合量で2%以下とすることが望ましい。また、CaOはβ−石英固溶体からβ−スポジュメン固溶体への結晶転移を促進する作用を有するため、できる限り使用を控えたほうがよい。
清澄剤として、SOやClを必要に応じて単独でまたは組み合わせて添加してもよい。これらの成分の合量は0.5%以下とすることが望ましい。AsおよびSbも清澄剤成分であるが、環境負荷が大きいとされる成分であるため、実質的に含有しないことが重要である。
上記しなかった有色遷移金属元素(例えばCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cd等)を含有すると、赤外線を吸収したり、Snイオンの還元能が失われる(当該有色遷移金属元素がSnイオンと反応し、結果としてVイオンとSnイオンの反応が阻害される)おそれがあるため、できる限り含有しないことが好ましい。
以上のようにして調合した原料粉末を溶融して結晶性の前駆体ガラスを得る。溶融温度は特に限定されないが、充分にガラス化を進行させるため、例えば1600〜1900℃であることが好ましい。なお、溶融ガラスの成形方法としては、ブロー法、プレス法、ロールアウト法、フロート法等の様々な成形方法を適用可能である。成形された前駆体ガラスは、必要に応じてアニールに供される。
次に、前駆体ガラスに対し、765〜785℃の温度域で少なくとも10分間熱処理を行う。当該熱処理工程で結晶核を析出させることができる。熱処理温度が当該範囲を外れると十分な数の結晶核が形成されにくくなる。765〜785℃の温度域が最も核形成しやすい範囲であり、結晶核を充分に形成することができる。ただし、熱処理時間が10分より短いと結晶化直後の色が薄く、白濁が生じやすい傾向にある。一方、熱処理時間が長くすぎても、形成される結晶核の量は多くなりにくく、むしろ生産性やエネルギー面で不利である。そのため、熱処理時間の上限は10時間以下、3時間以下、特に2時間以下が好ましい。
結晶核が形成された前駆体ガラスに対し、さらに熱処理を施すことにより結晶を成長させ、所望の結晶化ガラスが得られる。ここで、熱処理は、充分に結晶化を促進させるため、800〜930℃、好ましくは850〜920℃、より好ましくは870〜890℃で少なくとも10分間行うことが好ましい。熱処理時間が10分より短いと結晶化直後の色が薄く、白濁が生じやすい傾向にある。一方、熱処理時間が長すぎても、形成される結晶核の量は多くなりにくく、むしろ生産性やエネルギー面で不利である。そのため、熱処理時間の上限は10時間以下、3時間以下、特に2時間以下が好ましい。
本発明の製造方法により得られた結晶化ガラスは、3mm厚において波長700nmにおける透過率が35%以下、さらには30%以下であることが好ましく、それにより調理器の内部構造を充分に遮蔽することが可能となる。一方で、LED等を用いて温度や火力などを表示する場合は、3mm厚において波長700nmにおける透過率が15%以上、さらには18%以上であることが望ましい。それにより、調理器のトッププレートに用いた場合、LED等による表示を結晶化ガラスを介して充分に認識することが可能となる。
また、本発明の結晶化ガラスは、3mm厚において波長1150nmにおける透過率が85%以上、さらには86%以上であると熱線(赤外線)を効率的に透過できるため好ましい。
なお、調理器用トッププレートのような用途に長期間使用しても、高い赤外線透過能が損なわれず、さらには、可視光透過率も変化しにくいことが好ましい。具体的には、本発明の結晶化ガラスは3mm厚で、加速試験として900℃で50時間熱処理した後の波長1150nmにおける透過率の変化量が5%以下、3%以下、特に2%以下であることが好ましい。また、上記加速試験において、波長700nmにおける透過率の変化量が5%以下、3%以下、特に2%以下であることが好ましい。
また、本発明の結晶化ガラスは、900℃で50時間熱処理した後の波長700nmにおける吸光度変化率が20%以下、特に10%以下であることが好ましい。なお、吸光度変化率は以下の計算式により算出される。
吸光度=−log10(透過率(%)/100)
吸光度変化率=(熱処理後の吸光度−熱処理前の吸光度)/熱処理前の吸光度×100(%)
本発明の結晶化ガラスの30〜750℃の温度範囲での熱膨張係数は、好ましくは−10〜30×10−7/℃、より好ましくは−10〜20×10−7/℃である。熱膨張係数が当該範囲にあると、耐熱衝撃性に優れたガラスとなる。なお、本発明において、熱膨張係数はディラトメーターにより測定した値をいう。
本発明の製造方法により得られた結晶化ガラスは、切断、研磨、曲げ加工、リヒートプレス等の後加工を施してもよく、表面に絵付けや膜付け等を施してもよい。
このように作製された結晶化ガラスは、IHヒータを備えたIH調理器、ハロゲンヒータを備えたハロゲンヒータ調理器、ガスバーナーを備えたガス調理器等のトッププレートとして使用可能である。
次に、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試料No.1〜10は実施例、試料No.11〜14は比較例である。
表1〜3に記載の組成となるようにガラス原料を調合し、白金坩堝を用いて1600℃で20時間、さらに1700℃で4時間溶融した。カーボン板の上に5mm厚の2本のスペーサーを載置し、スペーサーの間に溶融ガラスを流し出すとともにローラーにて均一の厚みの板状に成形した。
得られた板状試料を700℃に保持した電気炉に投入し、30分保持してから電源を落として10時間以上かけて炉内で室温まで冷却(アニール)した。
次いで、冷却後の試料を電気炉で熱処理することにより結晶化し、結晶化ガラスを得た。各試料の熱処理のプロファイルを表1〜3に示す。なお、室温から核形成温度までの昇温速度は15℃/分、核形成温度から結晶成長温度までの昇温速度は10℃/分、結晶成長温度から室温への降温は80℃/分とした。
各結晶化ガラスについて、可視および赤外領域における透過率、失透性について評価した。
透過率は、各結晶化ガラスを、両面を鏡面研磨した3mm厚の試料に加工し、分光光度計(日本分光株式会社製 V−760)を用いて700nmおよび1150nmについて測定した。測定条件は、測定範囲1500〜380nm、スキャンスピード200nm/分とした。また、900℃で50時間の熱処理(加速試験)を行なった試料についても同様に透過率を測定した。さらに、加速試験後の吸光度変化率を前記計算式に従い算出した。
失透性は、1350℃に設定した電気炉内にて、白金箔の上に各試料を載置した状態で24時間保持し、失透が生じるか否かで評価した。失透が確認されなければ「○」、失透が確認された場合は「×」とした。
表1〜3より明らかなように、実施例である試料No.1〜10の結晶化ガラスは、可視領域の光を充分に遮蔽できるとともに高い赤外線透過率を有し、長期間にわたる使用を想定した加速試験においても可視域における吸光度変化率が小さいことがわかる。
一方、試料No.12〜14の結晶化ガラスは、加速試験後の可視域の吸光度変化率が大きかった。なお、試料No.11の結晶化ガラスは外観が白濁していた。
本発明の結晶化ガラスは、ガス、IH、ハロゲンヒータ等の調理器用トッププレートとして好適である。また、従来よりβ−石英固溶体を主結晶とする低膨張結晶化ガラスが使用されている高温炉内観察用のぞき窓、防火窓等にも使用可能である。

Claims (5)

  1. (1)質量%で、SiO 55〜73%、Al 17〜25%、LiO 2〜5%、TiO 2.6〜5.5%、SnO 0.01〜1%、V 0.005〜0.3%を含有し、AsおよびSbを実質的に含有しない組成となるように原料粉末を調合する工程、(2)原料粉末を溶融して前駆体ガラスを作製する工程、(3)前駆体ガラスを765〜785℃の温度域で少なくとも10分間熱処理し結晶核を形成する工程、を含むことを特徴とする結晶化ガラスの製造方法。
  2. さらに、(4)結晶核が形成された前駆体ガラスを800〜930℃の温度域で少なくとも10分間熱処理して結晶を成長させる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶化ガラスの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法により作製されたことを特徴とする結晶化ガラス。
  4. 900℃で50時間熱処理した後の波長700nmにおける吸光度変化率が20%以下であることを特徴とする請求項3に記載の結晶化ガラス。
  5. 請求項3または4に記載の結晶化ガラスを用いてなる調理器用トッププレート。
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