JP2011142724A - 非接触電力伝送装置及びそのための近接場アンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】近接場での磁場結合を利用する非接触電力伝送装置で使用される近接場アンテナのQ値を高くし、電力伝送効率を向上するための構造を提供する。
【解決手段】非接触電力伝送装置において使用する近接場アンテナにおいて、共振する第一のインダクター31と第一コンデンサ32を含む共振回路を、送信回路又は受信回路から、直流的に、分離すると共に、送信回路又は受信回路と当該近接場アンテナとの間を第二のインダクター33又は第二のコンデンサ34により、電磁結合又は誘導結合を行い、アンテナ間の距離が離れてアンテナ間の結合が低下しても、高いQを維持することを可能とする。
【選択図】図2
【解決手段】非接触電力伝送装置において使用する近接場アンテナにおいて、共振する第一のインダクター31と第一コンデンサ32を含む共振回路を、送信回路又は受信回路から、直流的に、分離すると共に、送信回路又は受信回路と当該近接場アンテナとの間を第二のインダクター33又は第二のコンデンサ34により、電磁結合又は誘導結合を行い、アンテナ間の距離が離れてアンテナ間の結合が低下しても、高いQを維持することを可能とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、各種の電子機器に対して非接触で電力を供給する非接触電力伝送装置に関し、特に、近接場での磁場結合により非接触で電力を供給する際の電力伝送効率を向上げることを可能にする非接触電力伝送装置及びそのための新規な近接場アンテナ構造に関する。
非接触で電力を送受信する装置および方法としては、インダクター間の相互作用を利用する、所謂、電磁誘導方式のものが広く利用されている。かかる電磁誘導方式を利用したアプリケーションの例としては、例えば、電動歯ブラシ、電気シェーバ、携帯デジタル機器への非接触充電、また、JR東日本のSUICAに代表されるようなICカードへの非接触電力供給、更には、電気自動車へのワイヤレス充電装置などが既に知られており、かつ、実用されている。
この様々な非接触電力伝送装置では、1次コイルを非接触電力送信側に、2次コイルを非接触電力受信側に設置することが一般的であり、そして、非接触電力送信側の内部において発生した高周波交流電力を印加することで、1次コイル或いは送信側のインダクターに高周波の磁場を発生させ、もって、2次コイル或いは受信側のインダクターに誘導電流を発生させる。そして、2次コイルに誘導された高周波電力を直流に変換し、受信側の負荷に供給することでワイヤレス電力伝送を実現する。なお、このような非接触電力伝送装置の基本構成は、以下の特許文献1において既に開示されている。
また、上述した非接触電力伝送装置では、送信側のインダクターと受信側のインダクターとの間は、近接場での磁場で結合されて電力伝送が行われることから、かかる送信側のインダクターと受信側のインダクターは、それぞれ、近接場アンテナとも呼ばれる。なお、従来技術になる非接触電力伝送装置の基本構成を、添付の図12に示す。
この図12からも明らかなように、送信側では、高周波を発生する交流電源と、送信出力をON/OFFする制御回路と、アンテナと他の回路との間のインピーダンスをマッチングするための整合回路を備えており、そして、当該整合回路には、電力を送信するための近接場アンテナが接続される構成となっている。また、図12の受信側では、機能デバイスとしての負荷と、交流電力を直流に変換する整流回路と、近接場アンテナと、他の回路間のインピーダンスをマッチングするための整合回路を備えると共に、やはり、当該整合回路に、電力を受信するための近接場アンテナが接続される構成となっている。
なお、上述した非接触電力伝送装置の近接場アンテナの詳細構造を、添付の図13に示す。即ち、送信側と受信側のアンテナとは、基本的に同様の形状をしており、磁場を発生するためコイルの形になっている。送信側のコイル或いはインダクターには、交流電源とON/OFF制御回路とインピーダンス整合回路とで構成される送信回路が、直接、接続されている。また、同様に、受信側のコイル或いはインダクターには、負荷と整流回路とインピーダンス整合回路とで構成される受信回路が、直接、接続されている。
このように、上述した特許文献1に開示された非接触電力伝送装置は、近接場での送受信アンテナ間の磁場結合を利用したものであり、送信側の近接場アンテナのインダクターと受信側の近接場アンテナのインダクターとの結合度は、下記の式の結合係数kで表わされる。ここで、M12は送信側のインダクターと受信側のインダクター間のとの相互インダクタンスを、L1とL2は、それぞれ、インダクターの自己インダクタンスを示す。
この式からも明らかなように、上記の結合係数kは、インダクターの幾何学形状とインダクター間の距離の関数となっており、インダクター間の距離が離れると、当該距離の3乗に反比例して急激にその値を低下する。従って、上述した従来技術の非接触電力伝送装置においては、送信側の近接場アンテナと受信側との近接場アンテナの距離が離れると、その間の結合度が低下することにより、非接触電力の送受信距離が限られてしまうという課題があった。
これに対し、以下の非特許文献1では、近接場アンテナである送信側のインダクターと受信側のインダクターの形状を最適化することにより、その間の結合度を上げる方法が紹介されており、更には、この方法により電力伝送効率が向上することにより、電力伝送距離を延ばす方法が開示されている。
C.M.Zichhofer et al., "Geometric Approach for Coupling Enhancement of Magnetically Coupled Coils", IEEE Transactions on Biomedical Engineering, Vol.43, No. 7, July 1996, pp.708~714
しかし、上述した特許文献1及び非特許文献1に開示された方式では、送信側のインダクターと受信側のインダクターとの間の結合度を上げても、本来の結合係数がコイル間の距離の3乗に反比例して低下することから、当該距離が離れると電力伝送効率が急激に落ち、非接触で電力を送受信が可能な距離が限られてしまうという課題があった。
そこで、本発明では、上記した従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、電力伝送効率を上げるための技術を提示すると共に、非接触電力伝送距離を延ばすことが可能な改良された構造の非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
そこで、本発明によれば、上述した目的を達成するため、近接場の磁場結合を利用する非接触電力伝送装置であって、少なくとも高周波交流電源と近接場アンテナとを備え、高周波電力を送信する送信側装置と、少なくとも負荷と近接場アンテナとを備え、前記送信側装置から送信された高周波電力を受信するための受信側装置とから構成される非接触電力伝送装置、又は、そのための近接場アンテナであって、前記送信側装置、又は、前記受信側装置が備える近接場アンテナは、共振用の第一のインダクターと、前記第一のインダクターと接続され、発振周波数を調整するための第一のコンデンサと、共に、更に、前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む共振回路から交流的に分離されて形成されると共に、前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む前記共振回路に対して前記送信側装置の前記高周波交流電源からの交流電力を供給し、又は、前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む前記共振回路で受信した高周波電力を前記受信側装置の前記負荷に供給する結合手段とを備えているものが提供される。
また、本発明によれば、前記に記載した非接触電力伝送装置、又は、近接場アンテナにおいて、前記結合手段は、前記共振用の第一のインダクターと電磁的に結合された第二のインダクターにより構成されていることが好ましく、更には、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記共振回路を構成する前記第一のインダクターと前記発振周波数調整用の第一のコンデンサと共に、同一の誘電体基板上に、金属薄膜からなる電極により形成したことが、そして、更には、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記同一の誘電体基板上において、前記第一のインダクターの外側に形成すると共に、前記第一のコンデンサを、当該第一のインダクターの内側に配置すること、又は、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記同一の誘電体基板上において、前記第一のインダクターの内側に形成すると共に、前記第一のコンデンサを、当該第一のインダクターの外側に配置することが好ましい。
加えて、本発明によれば、やはり、上述した目的を達成するため、前記に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段は、前記共振用の第一のインダクターと電磁的に結合された第二のコンデンサにより構成されていることが好ましく、更には、前記結合手段を構成する前記第二のコンデンサを、前記第一のコンデンサと共に、前記同一の誘電体基板の表裏面において互いに近接して配置して形成したことが、そして、前記結合手段を構成する前記第二のコンデンサと前記第一のコンデンサを形成するため、前記同一の誘電体基板の表裏面において近接して配置された電極の一部を櫛歯電極としたことが好ましい。
上述したように、本発明の非接触電力伝送装置、又は、そのための近接場アンテナによれば、近接場アンテナから送受信回路を分離することで、アンテナのQ値を高く位置することが可能になり、その結果、両アンテナ間の距離が離れて、送受信アンテナの共振用インダクター間の結合度が低下しても、従来の非接触電力伝送システムと比べて高い電力伝送効率を実現することができ、伝送距離を延ばすことが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、添付の図1は、本発明になる非接触電力伝送装置の基本構成を示しており、この図において、送信側10は、高周波を発生する交流電源14と、送信出力をON/OFFするON/OFF制御回路13と、アンテナと他の回路間のインピーダンスをマッチングするインピーダンス整合回路12を備えて、これらは、所謂、送信回路15を形成している。そして、当該送信回路15、特に、そのインピーダンス整合回路12の出力が、電力を送信するための近接場アンテナ11へ接続されている。
一方、図の受信側は、機能デバイスとしての負荷24と、交流電力を直流電力に変換し、当該直流電力を負荷24に供給する整流回路23と、近接場アンテナと他の回路間のインピーダンスをマッチングするインピーダンス整合回路22を備え、これらは、所謂、受信回路25を形成している。そして、当該受信回路25、特に、そのインピーダンス整合回路22の入力が、電力を受信するための近接場アンテナ21に接続されている。
ここで、本発明になる非接触電力伝送装置でも使用される近接場アンテナについて、一般の非接触電力伝送システムでも使用されている近接場アンテナと比較しながら、以下に述べる。
<従来技術の非接触電力伝送システムの近接場アンテナ>
一般に知られる非接触電力伝送システムでは、通常、電力伝送効率を最大にするために、送信側のインダクターと受信側のインダクターに、それぞれ、コンデンサを接続し、そして、これらを共振周波数で動作させている。かかる構成において、上記のコンデンサは、送信側のインダクターと受信側のインダクターの周波数を同調する役割を果たしている。
一般に知られる非接触電力伝送システムでは、通常、電力伝送効率を最大にするために、送信側のインダクターと受信側のインダクターに、それぞれ、コンデンサを接続し、そして、これらを共振周波数で動作させている。かかる構成において、上記のコンデンサは、送信側のインダクターと受信側のインダクターの周波数を同調する役割を果たしている。
かかる一般に知られる非接触電力伝送システムで利用される近接場アンテナの構造の一例を、添付の図12に示す。なお、この近接場アンテナは、送信側と受信側において、基本的に、同様の形状・構造をしており、磁場を発生するためコイルを形成している。即ち、基板26の表面上に、送信側のコイル又はインダクター27が螺旋状に形成されている。
かかる一般の近接場アンテナを利用した非接触電力伝送システムの電気回路の一例を、添付の図13に示す。この図13において、送信側は、高周波を発生する高周波源(Source)61と、送信回路のインピーダンスを表す抵抗(R source)64を備えており、更に、電力を送信するための近接場アンテナは、そのインダクター(L1)65と、周波数を調節するためのコンデンサ(C1)63と、アンテナの配線による内部抵抗(Rs 1)64とで構成されている。一方、この図11の受信側は、機能デバイスとしての負荷と受信回路のインピーダンスを表す抵抗(R load)72を備えており、更に、電力を受信するための近接場アンテナは、そのインダクター(L2)75と、周波数を調節するためのコンデンサ(C2)73と、そして、アンテナの配線による内部抵抗(Rs2)74とで構成されている。このような回路の共振周波数は、下記の式で表れる。ここで、fは共振周波数を、L1, L2とC1, C2は、それぞれ、送受信側のインダクターのインダクタンスとコンデンサの容量を表している。
従来の共振システムにおけるエネルギー伝送効率は、共振システムのQ値の影響を受ける。即ち、このQ値が高いと、共振システムに貯まるリアクタンスエネルギーが大きくなり、狭帯域でありながら高伝送効率の特性を表す。他方、このQ値が低いと、リアクタンスエネルギーに対し、抵抗で消費されるエネルギーが大きくなり、広帯域であるが、低い伝送抗率の特性を表す。そして、上述した非接触電力伝送システムや非接触電力伝送方法においても、その電力伝送効率は、上記のインダクター間の結合度以外にも、送受信側のアンテナのQの影響を受けており、そのため、高いQ値のアンテナを有する非接触電力伝送システムでは、高い電力伝送効率特性を示すこととなる。
アンテナ部のQ値は、下記の式で表わされる。ここで、fは周波数を、Lはアンテナのインダクタンスを、Rはアンテナ部の抵抗を、それぞれ、表している。
この式からも明らかなように、図13において電気回路で示される一般の非接触電力伝送システムでは、アンテナ部に、送受信回路部が、直接、接続されており、そのため、送受信回路のインピーダンスが上記の式において抵抗として表れ、アンテナのQ値を下げる原因となっていた。その結果、共振特性が悪い共振システムになってしまい、電力伝送効率を低下する原因となる。即ち、本発明者等によれば、一般の非接触電力伝送システムでは、上述した低いQ値がその原因となって、電力伝送距離が限られてしまうことが判明した。
本発明は、上述した本発明者等による検討の結果に基づいて成されたものであり、インダクター間の距離が長くなり、インダクター間の結合度が下がっても、アンテナのQ値を高い状態で維持することによれば、非接触電力伝送システムの全体電力伝送効率を向上することが可能であるとの認識に基づいて達成されたものである。
<本発明の非接触電力伝送原理>
そこで、本発明の非接触電力伝送システムでは、送受信用の近接場アンテナとして、同一基板上に、共振のための第一のインダクターと、当該第一のインダクターと結合する第二のインダクターとを設置し、更に、共振周波数の同調のために、前記第一のインダクターには、周波数調節用のコンデンサを接続する。そして、第二のインダクターは、前記第一のインダクターとの間の電磁誘導により電力の交換を行い、そして、当該第二のインダクターには、送信回路又は受信回路が、直接、接続されている。即ち、第一のインダクターと、上記送信回路又は受信回路とは、直流的に、分離される。
そこで、本発明の非接触電力伝送システムでは、送受信用の近接場アンテナとして、同一基板上に、共振のための第一のインダクターと、当該第一のインダクターと結合する第二のインダクターとを設置し、更に、共振周波数の同調のために、前記第一のインダクターには、周波数調節用のコンデンサを接続する。そして、第二のインダクターは、前記第一のインダクターとの間の電磁誘導により電力の交換を行い、そして、当該第二のインダクターには、送信回路又は受信回路が、直接、接続されている。即ち、第一のインダクターと、上記送信回路又は受信回路とは、直流的に、分離される。
このように、共振のための第一のインダクターと、結合のための第二のインダクターとで構成される、本発明の近接場アンテナは、上述した一般の非接触電力伝送システムの近接場アンテナと比較して、その送受信回路がアンテナから直流的に分離されており、そのため、送受信回路のインピーダンスがアンテナのQに、直接、影響を及ぼすことはなく、近接場アンテナのQを高い状態に保つことが可能になる。従って、送信アンテナと受信アンテナとの間では、高い伝送効率を実現することが可能となる。
加えて、共振のための第一のインダクターと、結合のための第二のインダクターとで構成される本発明になる近接場アンテナは、垂直方向での距離が零(0)となる同一平面上に形成せれており、そのため、電磁誘導にける結合度を高くし、もって、両インダクター間において、高い伝送効率の実現を可能としている。
そして、本発明になる近接場アンテナにおける伝送効率は、送信側における共振用の第一のインダクターと、結合用の第二のインダクターと間の伝送効率と、受信側における共振用の第一のインダクターと結合用の第二のインダクターとの間の効率と、送信側における近接場アンテナの共振インダクターと、そして、受信側における近接場アンテナの共振コイル間の伝送効率との積として表される。
このように、本発明になる近接場アンテナの構造では、一般の非接触電力伝送システムのアンテナを、共振用インダクターと結合用インダクターとに、直流的に、分離することで、近接場アンテナの高いQを維持することを可能にした。その結果、両アンテナ間の距離が離れ、送受信アンテナの共振用インダクター間の結合度が低下しても、一般の非接触電力伝送システムと比べ、高い電力伝送効率を実現することが可能となり、その結果、伝送距離を延ばすことが可能となる。
添付の図2には、本発明の実施例1になる、非接触電力伝送の近接場アンテナの原理構成を示す。図において、同一基板30上には、共振用の第一のインダクター31と、当該第一のインダクターと結合する第二のインダクター33とが設置されている。そして、第一のインダクター31の両端の間には、周波数調節のためのコンデンサ32が接続されており、そして、第二のインダクターの両端には、送信回路又は受信回路が接続されている。なお、この実施例1の構造では、同一基板30上において、第一のインダクター31は、第二のインダクター33の内側に設置されており、これら両インダクターの間では、高い結合の電磁誘導により、エネルギー交換が行われる。
添付の図3には、上述した本発明の実施例1になる非接触電力伝送の近接場アンテナの斜視図を示しており、誘電体からなる基板30には、金属薄膜からなる第一のインダクター31及び第二のインダクター33が設置されている。なお、この誘電体基板30の材質としては、FR-4、セラミック基板、ガラス基板、高抵抗シリコンなどを使用することが可能である。
また、この図からも明らかなように、第一のインダクター31及び第二のインダクター33は、誘電体基板30の表面上に形成され、かつ、当該第一のインダクター31は、基板30の外周に沿って形成されており、第二のインダクター33は、その内側に形成されている。更に、基板30の略中心部では、誘電体基板30をその間に挟んで(即ち、その表裏面に)設けられた一対の電極板32uと32dによりコンデンサ32が形成されており、このコンデンサ32は、基板の表面及び裏面、更には、当該基板を貫通して形成された導体を介して、上述したように、前記第一のインダクター31の両端部に接続されている。なお、このコンデンサ32は、共振周波数の同調のため設置されており、この図の例では、誘電体基板を介して、その上下の面に形成された電極により構成される、所謂、平行平板型のコンデンサとして形成されている。但し、このコンデンサとしては、図示の例に限定されることなく、誘電体基板30の表面に実装が可能なチップコンデンサとしてもよく、又は、周波数の変調機能を持たせるために、可変コンデンサを設置することも可能である。また、特に、この実施例1では、上記のコンデンサ32は、基板30上の略中央部である第一のインダクター31の内部に設ける構造としたことから、近接場アンテナ全体をより小さい寸法で構成することが可能である。
図4には、上述した本発明の実施例1になる非接触電力伝送装置の電気回路を示す。この図からも明らかなように、送信側においては、近接場アンテナを構成する第一のインダクター31(L1)は、送信回路から、直流的に、分離されている。なお、送信回路は、高周波を発生する交流電源14を含む回路であり、当該交流電源を含む送信回路のインピーダンス(R source)62と、結合インダクター33としてのインダクタンス(L source)を備えており、当該交流電源からの高周波は、電磁誘導により、第二のインダクター33(L source)から第一のインダクター31(L1)へ伝送される。また、電力を送信する近接場アンテナは、共振インダクターとしての第一のインダクター31(L1)と、周波数を調節するコンデンサ(C1)32と、当該近接場アンテナの配線による内部抵抗(Rs 1)64から構成されている。
また、受信側においても、近接場アンテナを構成する第一のインダクター31(L1)は、受信回路から、直流的に、分離されている。なお、受信回路は、インピーダンス(R load)として示される機能デバイスとしての負荷24と、結合インダクタンス33としてのインダクタンス(L load)を備えている。そして、上記送信側から電力を受け取る受信側の近接場アンテナも、上記と同様に、共振インダクターとして第一のインダクター31(L2)と、周波数を調節するコンデンサ(C2)と、近接場アンテナの配線による内部抵抗(Rs 2)から構成されている。
このように、本発明の非接触電力伝送装置では、一般の非接触電力伝送装置と比較し、特に、その近接場アンテナは、送信回路又は受信回路から直流的に分離されており、そのため、近接場アンテナのQ値を高く保つことが可能になる。そして、本発明の非接触電力伝送装置では、図にも示すように、以下の3段階に分けて電力伝送が行われることとなる。
まず、(1)送信側では、高い結合度を有する結合インダクター33と共振インダクター31との間で、電力伝送が行われる。(2)次に、双方、高いQを有する送信側のアンテナである第一のインダクター31(L1)と、受信側のアンテナである第一のインダクター31(L2)との間で、近接場の磁場結合により電力伝送が行われる。そして、(3)最後に、受信側では、高い結合度を有する共振インダクター31と結合インダクター33との間で電力伝送が行われる。そのため、本発明の非接触電力伝送装置における電力伝送効率は、上述した3段階での伝送効率の積として表れるが、それぞれ、高い伝送効率の条件で、電力伝送が行われており、そのため、低いQを有する従来の非接触電力伝送装置と比較して、高い電力伝送効率を実現することが可能となる。換言すれば、アンテナ間の距離が離れてアンテナ間の結合が低下しても、高いQを維持することが可能となる。
次に、図5に、本発明の実施例2になる、非接触電力伝送の近接場アンテナの原理構造を示す。この実施例でも、上記実施例1と同様に、誘電体からなる同一基板30上に、共振用の第一のインダクター31と、当該第一のインダクターと結合する第二のインダクター33が設置されている。しかしながら、この実施例では、上記実施例1とは異なり、第一のインダクター31は、同一の基板30上において、第二のインダクター33の外側に設置されており、これら両インダクターの間では、高い結合の電磁誘導でエネルギー交換が行われるものである。なお、この実施例2でも、第一のインダクター31には、周波数調節のためコンデンサ32が接続されており、そして、第二インダクター33には、上述した送信回路又は受信回路が接続されている。
図6には、上記本発明の実施例2になる、非接触電力伝送の近接場アンテナの斜視図を示す。誘電体基板上に金属製の第一インダクター及び第二インダクターを設置せれている。この実施例2でも、誘電体基板30の材質として、FR-4、セラミック基板、ガラス基板及び高抵抗シリコンなどを利用することが可能である。そして、図からも明らかなように、第一のインダクター31及び第二のインダクター33は、誘電体の基板30の表面上に形成されると共に、第一イのンダクター31は、第二のインダクター33の内側に設置されている。そして、第一のインダクター31には、上述した共振周波数の同調のためコンデンサ32が設置されているが、この実施例2では、誘電体基板30の端部において、誘電体基板30をその間に挟んで(上下の面に)設けられた一対の電極板32Uと32Dによりコンデンサ32が形成されている。なお、このコンデンサ32は、基板の表面及び裏面、更には、当該基板を貫通して形成された導体を介して、上述したように、前記第一のインダクター31の両端部に接続されている。また、このコンデンサとしては、図示の例に限定されることなく、誘電体基板30の表面に実装が可能なチップコンデンサとしてもよく、又は、周波数の変調機能を持たせるために、可変コンデンサを設置することも可能である。
なお、上述した構成になる、本発明の実施例2になる非接触電力伝送の近接場アンテナにおいても、その動作や効果については、上述した実施例1と同様である。そして、この実施例2の非接触電力伝送装置においても、上述したように、3段階に分けて電力伝送が行われ、その伝送効率は、上記と同様、上記3段階の伝送効率の積として表わされ、従って、低いQを有する従来の非接触電力伝送装置と比べて高い電力伝送効率を実現することが可能となる。即ち、アンテナ間の距離が離れてアンテナ間の結合が低下しても、高いQを維持することが可能となる。
続いて、添付の図7には、本発明の実施例3になる非接触電力伝送の近接場アンテナの原理構造を示す。即ち、この実施例3によれば、同一の誘電体基板30上に、共振用の第一のインダクター31が設置されており、そして、当該第一のインダクター31の両端には、周波数調節のためのコンデンサ32が接続されている。そして、本実施例では、上記実施例1や2とは異なり、同一基板30上に第二のインダクターを形成することなく、むしろ、上記周波数調節のための(第一の)コンデンサ32に隣接して、第二コンデンサ34が設置されており、この第二コンデンサ34は、送信回路又は受信回路に接続されている。
添付の図8には、上述した非接触電力伝送の近接場アンテナの斜視図が示されており、この斜視図からも明らかなように、誘電体基板30上には、金属製の第一のインダクター31と共に、上記第一コンデンサ32と第二コンデンサ34とが、互いに近接して、設置せれている。より具体的には、例えば、FR-4、セラミック基板、ガラス基板及び高抵抗シリコンなどを材質とした誘電体基板30の上下の面において、それぞれ、一対の電極板32uと32d、34uと34dよってコンデンサ32、34が、互いに近接して、形成されている。なお、これら第一のコンデンサ32及び第二のコンデンサ34は、共に、誘電体基板30をその間に介して形成された電極により構成された、所謂、平行平板型のコンデンサである。
そして、これらの電極板32uと32d、34uと34dは、誘電体基板30の上下の面において、互いに近接しており、そのため、第一のコンデンサ32と第二のコンデンサ34とは、相互に容量結合を行っている。即ち、本発明の実施例3になる近接場アンテナでは、第一のコンデンサ32と、第二のコンデンサ34は、その間の高い容量結合により、エネルギーの交換が行われる。なお、本実施例では、図8にも示すように、誘電体基板30の下(裏)面側に形成された第一のコンデンサ32の電極板32dと第二のコンデンサ34の電極板34dを櫛歯電極とすると共に、当該電極板32dと電極板34dを、その櫛歯電極の凹凸部が互いに対向し、交差するように、それぞれ、配置することにより、第一のコンデンサ32と第二のコンデンサ34との間の大きな容量結合を確保している。また、第一のコンデンサと第二のコンデンサとの間の容量結合の方法としては、様々な方法があり、上述した櫛歯電極以外の方法によってもよい。
添付の図9には、上述した実施例3になる近接場アンテナを使用した非接触電力伝送装置の電気回路を示す。この図9からも明らかなように、送信側では、交流電源14を含む送信回路は、直流的には、近接場アンテナを構成する第一のインダクター31(L1)から分離されている。但し、交流電源14からの高周波は、上述した第一のコンデンサ32と第二のコンデンサ34との間の大きな容量結合により、第一のインダクター31(L1)へ伝送される。なお、図では、送信側の送信回路のインピーダンス(R source)を符号62で示し、結合コンデンサとしての第二のコンデンサ34は容量(C_source)で示す。そして、電力を送信する近接場アンテナは、共振インダクターの(L1)と周波数を調節するコンデンサ(C1)と近接場アンテナの配線による内部抵抗(Rs 1)で構成されている。
一方、受信側でも、上記と同様に、直流的には、受信回路と近接場アンテナ部に分離されている。まず、受信回路には、機能するデバイスを含めた負荷24がインピーダンス(R load)で示され、そして、受信回路の結合コンデンサ(第二のコンデンサ)34は、容量(C_load)を備えている。そして、上述した送信側からの電力を受信する近接場アンテナ(第一のアンテナ)31は、更に、共振インダクターとしてのインダクタンス(L2)と、周波数を調節するコンデンサである容量(C2)と、近接場アンテナの配線による内部抵抗(Rs 2)とを備えて構成されている。
このように、本実施例3の近接場アンテナを使用した非接触電力伝送装置でも、一般の非接触電力伝送装置と比較し、特に、送信回路と近接場アンテナ、又は、近接場アンテナと受信回路が、容量結合により、直流的には、互いに分離されており、そのため、送受信アンテナのQ値を高く保つことが可能になる。従って、Q値が低い従来の非接触電力伝送システムと比べ、本発明の非接触電力伝送装置では、高い伝送効率を実現することが可能となる。即ち、アンテナ間の距離が離れてアンテナ間の結合が低下しても、高いQを維持することが可能となる。
なお、上述した本発明の実施例3になる近接場アンテナは、上記図7や8に示した構造からも明らかなように、誘電体基板30上には、螺旋状のコイルとして、第一のインダクター31だけを形成すればよく、そのため、上述した実施例1及び2の構成に比較して、その製造が容易であり、かつ、装置全体(基板)をより小型化することが可能となる。
更に、添付の図10のグラフには、本発明の非接触電力伝送システムにおける電力伝送効率を、従来の非接触電力伝送装置のそれと比較して示す。なお、伝送効率の計算には、JR東日本のSUICAのような非接触ICカードに使われるコイルのサイズを利用して計算を行った。また、コイルのサイズ(=インダクターのサイズ:70×40mm^2,インダクターの幅:1mm,インダクターの ターン数:1 インダクターの材質:無損失金属)とし、このインダクターのサイズに対するインダクター間の距離を正規化距離と定義して、正規化距離を「0」から「3」まで変化させた時の伝送効率を計算した。
上述した条件下で、インダクターのインダクタンスは0.14μHであり、直列に10pFのコンデンサを接続した場合、共振周波数は42MHzである。近接場アンテナの内部抵抗を1Ωにすることによれば、従来の非接触電力伝送装置のアンテナのQ値は2.5であったが、本発明の非接触電力伝送装置のアンテナのQ値は37.3であり、即ち、約15倍Q値が向上された。
また、例えば、非接触電力伝送に於いて実用的なレベルの伝送効率を0.5にすれば、従来の非接触電力伝送装置では、正規化距離が0.1程度に留まるのに対して、本発明の非接触電力伝送装置では、正規化距離が0.9程度まで伸ばすことができ、伝送効率を大きく向上することが可能であることが確認できる。
最後に、添付の図11には、従来非接触電力伝送装置に対する本発明の非接触電力伝送装置の伝送効率の比(=本発明システムの効率/従来システムの効率)の変化を示す。即ち、図の曲線からも明らかなように、横軸に示す正規化距離が「0」である場合、両装置の伝送効率の比が「1」程度(ほぼ同等)でるが、しかしながら、特に、距離が延びるに従って、大幅に、伝送効率比が改善され、その後、正規化距離が「1.5」以降は、約「220」で安定することが確認できる。この結果は、本発明の非接触電力伝送装置のアンテナを採用した場合、伝送効率が従来の非接触電力伝送装置より220倍改善することを意味する。即ち、アンテナ間の距離が離れてアンテナ間の結合が低下しても、高いQを維持することが可能となる。
10…非接触電力伝送装置の送信側、11…送信側の近接場アンテナ、12…インピーダンス整合回路、13…送信電力のON/OFF制御回路、14…高周波交流電源、15…送信回路、20…非接触電力伝送装置の受信側、21…受信側の近接場アンテナ、22…インピーダンス整合回路、23…整流回路、24…負荷、25…受信回路、30…誘電体基板、31…共振用第一のインダクター、32…周波数調節用の第一コンデンサ、33…結合用第二インダクター、34…容量結合用の第二コンデンサ。
Claims (16)
- 近接場の磁場結合を利用する非接触電力伝送装置であって、
少なくとも高周波交流電源と近接場アンテナとを備え、高周波電力を送信する送信側装置と、
少なくとも負荷と近接場アンテナとを備え、前記送信側装置から送信された高周波電力を受信するための受信側装置とから構成される非接触電力伝送装置であって、
前記送信側装置、又は、前記受信側装置が備える近接場アンテナは、
共振用の第一のインダクターと、
前記第一のインダクターと接続され、発振周波数を調整するための第一のコンデンサと、共に、更に、
前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む共振回路から交流的に分離されて形成されると共に、
前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む前記共振回路に対して前記送信側装置の前記高周波交流電源からの交流電力を供給し、又は、前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む前記共振回路で受信した高周波電力を前記受信側装置の前記負荷に供給する結合手段とを備えていることを特徴とする非接触電力伝送装置。 - 前記請求項1に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段は、前記共振用の第一のインダクターと電磁的に結合された第二のインダクターにより構成されていることを特徴とする非接触電力伝送装置。
- 前記請求項2に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記共振回路を構成する前記第一のインダクターと前記発振周波数調整用の第一のコンデンサと共に、同一の誘電体基板上に、金属薄膜からなる電極により形成したことを特徴とする非接触電力伝送装置。
- 前記請求項3に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記同一の誘電体基板上において、前記第一のインダクターの外側に形成すると共に、前記第一のコンデンサを、当該第一のインダクターの内側に配置したことを特徴とする非接触電力伝送装置。
- 前記請求項3に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記同一の誘電体基板上において、前記第一のインダクターの内側に形成すると共に、前記第一のコンデンサを、当該第一のインダクターの外側に配置したことを特徴とする非接触電力伝送装置。
- 前記請求項1に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段は、前記共振用の第一のインダクターと電磁的に結合された第二のコンデンサにより構成されていることを特徴とする非接触電力伝送装置。
- 前記請求項6に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段を構成する前記第二のコンデンサを、前記第一のコンデンサと共に、前記同一の誘電体基板の表裏面において互いに近接して配置して形成したことを特徴とする非接触電力伝送装置。
- 前記請求項7に記載した非接触電力伝送装置において、前記結合手段を構成する前記第二のコンデンサと前記第一のコンデンサを形成するため、前記同一の誘電体基板の表裏面において近接して配置された電極の一部を櫛歯電極としたことを特徴とする非接触電力伝送装置。
- 近接場の磁場結合を利用する非接触電力伝送装置において、送信側装置、又は、受信側装置が備える近接場アンテナであって、
共振用の第一のインダクターと、
前記第一のインダクターと接続され、発振周波数を調整するための第一のコンデンサと、共に、更に、
前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む共振回路から交流的に分離されると共に、
前記第一のインダクターと前記第一のコンデンサとを含む前記共振回路に対して外部からの交流電力を供給し、又は、受信した高周波電力を外部に供給するための結合手段とを備えていることを特徴とする近接場アンテナ。 - 前記請求項9に記載した近接場アンテナにおいて、前記結合手段は、前記共振用の第一のインダクターと電磁的に結合された第二のインダクターにより構成されていることを特徴とする近接場アンテナ。
- 前記請求項10に記載した近接場アンテナにおいて、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記共振回路を構成する前記第一のインダクターと前記発振周波数調整用の第一のコンデンサと共に、同一の誘電体基板上に、金属薄膜からなる電極により形成したことを特徴とする近接場アンテナ。
- 前記請求項11に記載した近接場アンテナにおいて、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記同一の誘電体基板上において、前記第一のインダクターの外側に形成すると共に、前記第一のコンデンサを、当該第一のインダクターの内側に配置したことを特徴とする近接場アンテナ。
- 前記請求項11に記載した近接場アンテナにおいて、前記結合手段を構成する前記第二のインダクターを、前記同一の誘電体基板上において、前記第一のインダクターの内側に形成すると共に、前記第一のコンデンサを、当該第一のインダクターの外側に配置したことを特徴とする近接場アンテナ。
- 前記請求項9に記載した近接場アンテナにおいて、前記結合手段は、前記共振用の第一のインダクターと電磁的に結合された第二のコンデンサにより構成されていることを特徴とする近接場アンテナ。
- 前記請求項14に記載した近接場アンテナにおいて、前記結合手段を構成する前記第二のコンデンサを、前記第一のコンデンサと共に、前記同一の誘電体基板の表裏面において互いに近接して配置して形成したことを特徴とする近接場アンテナ。
- 前記請求項15に記載した近接場アンテナにおいて、前記結合手段を構成する前記第二のコンデンサと前記第一のコンデンサを形成するため、前記同一の誘電体基板の表裏面において近接して配置された電極の一部を櫛歯電極としたことを特徴とする近接場アンテナ。
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