JP2011041686A - 多重モジュラー式の飛沫感染防止装置 - Google Patents

多重モジュラー式の飛沫感染防止装置 Download PDF

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Abstract

【課題】閉鎖的な小空間を任意に区切って飛沫の飛散を防止し、既存の医療機関などで使用するために、心理的抵抗が少なく小型軽量で省スペースかつ小電力で、個人防御具と組み合わせて用い、必要な清浄度を維持する装置を提供する。
【解決手段】折り返し袖つき隔離パネル2、並列薄型ファンを用いた層流送風機および超小型の換気装置つき頭頚部シールドの3部分から構成される多重モジュラー式の飛沫感染防止装置によって、飛散する感染性飛沫から医療者を防御する。発生源からの飛沫は折り返し袖つき隔離パネル2によって大部分が阻止され、並列薄型ファンを用いた層流送風機からの微風によって吹き返される。また医療者は装着した超小型の換気装置つき頭頚部シールド4によって守られる。いずれのモジュールも独自あるいは組み合わせて用いることが可能で、飛沫予防装置として医療機関以外でも広く用いることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は限られた空間の内部を折り返し袖つき隔離パネル(衝立)によって仕切り、これと平行な位置に置かれる並列薄型ファンを用いた層流送風機、および操作者(医療者)が着用する超小型の換気装置つき頭頚部シールドから構成される多重モジュラー式の飛沫感染防止装置である。
感染性飛沫の拡散防止(隔離)には空間そのものを完全に仕切って、気流が相互に混合しないようにすることが理想である。しかし人間が何らかの操作を行なう空間では、遠隔操作装置を用いない限り完全な隔離が達成できない。このためフィルターによって飛沫を排除する技術と、気流そのものによって飛沫の飛散を減少させる方法が用いられてきた。しかしフィルターを用いる飛沫の除去は装置の大型化と同時に、換気量の増大にともなって飛沫捕捉率の低下が発生する欠点を有する。また送風機によって発生する気流を利用する場合には、比較的小さな閉鎖空間を仕切って安定した清浄度を保つことが難しい。なぜならば飛沫の拡散速度を上回る気流を確保しなければ医療者を守れないが、気流の速度を上げると却って室内全体に飛沫を拡散してしまう。とくに咳嗽などによる突発的な飛沫の発生時には、近距離で医療処置を行なっている医療者を十分に保護できない。このため医療者と患者を完全に隔離する従来の装置は、いずれも心理的な圧迫が強くて実際の使用が困難である。このため既設の小空間すなわち小規模な病院や診療所の限られた空間では、実用的な隔離装置が設置できなかった。すなわち小型軽量で設置面積を取らず、必要な清浄度を維持しながら心理的圧迫を与えないという装置は知られていなかった。このためマスク等の個人防御具に頼ってきたが、十分に飛沫感染を防ぐことは困難なままであった。
飛沫の防止は産業分野でも重要視されているが、主として感染予防の必要性から医療の領域で喫緊の課題となっている。しかし限られた空間を仕切って完全に閉鎖された隔離空間を作り出すのは難しく、費用的にも空間的にも大きなものとならざるを得ない。一方で身体に装着する防御具は簡易なものに限られ、それらの感染防止効果は限られてしまう。したがって本発明が解決しようとする課題は、閉鎖的な小空間を任意に仕切って飛沫の飛散を遮断(隔離)し、必要とされる清浄度に応じて隔離の方式を設定することである。すなわち完全隔離型ではないとしても、半開放型あるいは半閉鎖型の実用的な飛沫感染防止装置を開発して提供することである。
以上の課題を解決するため、三つのモジュール(部分)から構成される多重モジュラー式の飛沫感染防止装置(請求項1)を開発した。本発明(請求項1)のうちイ(請求項2)は空間を仕切るための折り返し袖つき隔離パネルであり、ロ(請求項3)はパネルの後方から層流(微風)を送る並列薄型ファンを用いた送風機であり、ハ(請求項4)は超小型の換気装置つき頭頚部シールドである。それぞれのモジュールは独立あるいは組み合わせて用いることが可能である。
本発明では、発生源(患者)から拡散する感染性の飛沫は、正面のパネルによって阻止されて左右上下に拡散するが、四辺に設けられた折り返し袖によって発生源側に偏向する。このため感染性飛沫の発生源から生じた突発的な気流の大部分は、発生源側に逆流して医療者側に侵入して来ない。正面パネルに設けられた操作用の開口部および貫通するポケットには、自重式のフラップが付属して飛沫の侵入を最小限に抑制する。またパネル後方に設置された並列薄型ファンを用いた層流送風機から送られる定常流(微風)によって、操作用の開口部および折り返し袖の周辺から飛沫の侵入が阻止される。さらに超小型の換気装置つきの頭頚部シールドによって、医療者は最終的に感染性の飛沫から免れる。
(イ) 請求項2は折り返し袖の構造を利用しており、対面で近接した状態で処置を行う場合でも、直接に感染性飛沫が飛散しないようにするパネルである。 パネル構造のため軽量にして簡易であり占有面積も小さい。さらに容易に移動可能なため、限られた面積の閉鎖空間内でも自由に設置できる。
折り返し袖つき隔離パネルの中央部は平面で、視認あるいは操作用の透明窓を設けてある。これによりパネル越しの医療処置が確実に行える。また折り返し袖つき隔離パネルの全面に透明素材を用いることも可能である。比較的薄い透明素材を用いることで患者の心理的圧迫感が減少し、症状の聴取や指示の伝達における困難が解消される。折り返し袖つき隔離パネルの本体(骨組)に取り外し可能な透明覆いを掛ければ、容易に廃棄できる構造となるため短期間に交換することが可能である。
上肢とくに手を用いる医療処置(操作)のために複数の開口部を設け、上部より自重による自動フラップが降りる仕組みである。処置中に発生源側から突発的に気流(感染性飛沫)が生じても、自動フラップによって開口部は覆われているため、反対側(医療者側)には飛沫が侵入し難い。また物品を受け渡すポケットについても、同様なフラップ構造を設けることにより、飛沫の侵入を最小限に止めることができる。なお用手操作の場合には取り外し式の防水腕カバーと手袋を使用し、感染性飛沫が医療者の皮膚に付着するのを防止する。
(ロ)請求項3は微風(定常流)を発生する並列薄型ファンを用いた層流送風機である。閉鎖的な小空間で強い気流を発生させると、予想外の対流あるいは乱流が発生するため、必要最小限の層流(微風)によって軽微な圧力を折り返し袖つき隔離パネルに加え、パネルの周囲ならびに操作用の開口部のみで一定の風量を確保する。すなわち層流送風機より低速の気流をパネル面に送り、小開口部および折り返し部分より侵入する飛沫を抑止する。従来の送風機では乱流が発生するため気流の減衰が大きく、また折り返し袖つき隔離パネルの周辺で渦流の発生による飛沫の引き込みが生じる。渦流の発生を防止するためには層流送風機を設置しなければならないが、従来の層流送風機は装置が大きくなり狭小な空間に適合しない。薄型ファンを二次元平面に並列することで、室内レイアウトに影響されずに層流を作り出すことができる。
二次元に並列された薄型ファンから発生する気流は、発生直後に乱流部分(回転翼の回転方向の気流)が相互に打ち消し合うため、原理的に層流部分のみが気流として送られる。このため整流板を設けなくても、一定の風圧が平行して置かれた正面の隔離パネルまで到達する。また薄型ファンを並列することで静粛性が高まり、電動モーターの発熱およびエネルギー消費も少なくできる。これは多段式の整流板構造を省略することの利点であり、耳障りな風切り音も発生しない。このため静粛性や会話が必要な医療機関においても、設置が容易となる。さらに並列薄型ファンを用いた層流送風機にフィルターを装着して空気清浄機能を付加すれば、比較的狭い閉鎖空間においても循環気流中の飛沫および塵埃を減少させることも可能である。
(ハ) 請求項4はフェイスシールドに超小型の換気装置を付加した個人用防御装置であり、頭頚部を覆うカバーと一体化している。感染性飛沫の侵入を防止するフィルター機能は、頭頚部覆いおよび防御服全体が果し、換気装置は陰圧を作り出す排気のみを行なう。頭頚部のカバーは体幹および四肢を保護する防御服と連結する必要がなく、フェイスシールド(顔面防御板)と一体化している。このため自由な頭部の運動が可能で着脱も容易である。また超小型の薄型ファンを用いることで、医療処置を行なうための視野も十分に確保できる。
一方で肩を含めた上半身を頭頚部のカバーが覆っており、フェイスシールドと頭頚部カバーを装着した上から防御服を着用すれば、感染性飛沫が侵入する開口部は実質的に極小化する。また頭頚部カバーおよび防御服そのものが、飛沫に対するフィルターとして機能するため、別に陽圧の換気装置あるいは換気口を設ける必要がない。感染症を扱う医療機関では個人防御具の装着が日常化しており、頭頚部を覆うカバーは医療処置の障害とはならない。
超小型ファンを用いた換気装置はフェイスシールドと一体化しており、内部の空気(呼気)を外部に向かって排出する陰圧換気装置である。超小型ファンは軽量で小電力の薄型ファンであり、電池など携帯可能な軽量内部電源によって長時間の駆動が可能である。たとえばボタン電池による駆動を選択すれば、電源部分も頭頚部カバーの内部に搭載できる。
超小型ファンを用いた陰圧換気装置により、人体から発生する水蒸気、二酸化炭素および熱を有効に排出できる。また頭頚部カバーの内部に十分な空間的余裕が保てるため、マスク等の個人防御具に較べて呼吸抵抗が小さく、音声伝達に必要な開口の制限がない。さらに陰圧換気のため音声の外部への伝達に問題が生じない。また頭頚部カバーは音声伝達を遮断しないため、聴力の低下も無視できる。
超小型の換気装置には外部から飛沫の侵入を防ぐため、フィルターあるいはカバーを付加することができる。この換気装置のカバーは排気の方向を変えるもので、前方からの気流(飛沫飛散)を防止しつつ、しかも排気抵抗を増大させない。薄型ファンを用いる超小型の換気装置は空気の圧縮度が低いため、突発的な逆流状態を回避することが難しく、排気カバーによって気流方向を限定することが必要となる。
超小型の換気装置つき頭頚部シールドは、医療者が直接に飛沫発生源と接触する場合にも有効で、折り返し袖つき隔離パネルおよび薄型ファンを並列した層流送風機が設置されていない場所でも用いることができる。たとえば感染性家畜の処理や検疫などが実施される開放空間であっても、従来の個人防御具よりも有効な感染予防具として用いられる。
請求項1(多重モジュラー式飛沫感染防止装置)の全体側面図であり、向って右より飛沫発生源(患者)、折り返し袖つき隔離パネル(請求項2)、超小型の換気装置つき頭頚部シールド(請求項4)、並列薄型ファンを用いた層流送風機(請求項3)の順で並ぶ。 請求項1(多重モジュラー式飛沫感染防止装置)の全体平面図であり、並列薄型ファンを用いた層流送風機からの気流を矢印で示してある。正面パネルの中央部に当った気流は左右に向きを変え、折り返し袖に沿って飛沫発生源方向へ流れる仕組である。 請求項2(折り返し袖つき隔離パネル)の正面図である。自重式の自動フラップは破線で記入してある。 請求項2(折り返し袖つき隔離パネル)の側面断面図である。自重式の自動フラップの動きと送風機からの定常気流を矢印で記入してある。飛沫発生源からの突発的な気流は、自動フラップによって下方へ向きを変える。 請求項3(並列薄型ファンを用いた層流送風機)の正面図である。同一規格の薄型ファンが二次元に規則正しく(等間隔で)配置されている。 請求項(並列薄型ファンを用いた層流送風機)の側面断面図(部分)である。個々のファンは回転翼と同等な厚味しかなく、両側のフレーム兼用の防護網によって支持されている。並列機構による乱流の減少があるため、とくに整流板を記入していないが、場合によっては整流板を設けることができる。 薄型ファンにおける乱流発生の原理を示した。回転翼の回転によって回転の接線方向に空気が圧縮され、回転方向への気流が発生する。これと本来の層流部分が混合することで渦流状の乱流が発生する。 並列した薄型ファン(同一規格で同期しているもの)の間では、回転方向への気流が隣同士で打ち消し合い、渦流は発生直後に打ち消される。このため層流部分のみが残って遠方へ届くことになる。 請求項4(超小型の換気装置つき頭頚部シールド)の正面図である。フェイスシールドに設けられた超小型の陰圧換気装置は、装着者の視野に大きく影響しない。また呼気の大部分は超小型の換気装置を通じて直接に外部へ排気される。一方、吸気は頭頚部カバーあるいは防御服を通じて供給されるため、別にフィルターを用いる必要がない。また小型の携帯電源(たとえばボタン電池など)によって駆動可能であり、別に電池ボックスあるいは吸気を提供する管などを必要としない。 超小型の換気装置の断面図である。薄型ファンの内側あるいは外側にフィルターを設けることもできるが、外側に排気方向を変えるカバーを設けるのが実用的である。変流カバーはフィルターよりも排気抵抗が少なく、しかも正面方向からの逆流を防止することができる。外部環境が内部より清浄で装着者からの飛沫を防止する目的で用いる場合には、薄型ファンを逆向きに取り付けることで目的が達成される。
請求項1のように三つのモジュールを同時に用いるのが発明を実施するための最良の形態である。さらに請求項3(並列薄型ファンを用いた層流送風機)と請求項4(超小型の換気装置つき頭頚部シールド)に飛沫防止用のフィルターと排気カバーを取り付けることができる。
請求項3の並列薄型ファンを用いた層流送風機は簡便に層流を作り出せるため、家庭用あるいは他の産業分野における送風機として広く利用可能である。たとえば壁掛け式の層流送風機あるいは空気清浄機として家庭内に設置することも可能で、乱流が少ないために小電力で遠方まで気流が届く。従来のサーキュレーターで室内の温度を一定に保とうとすれば、ファンの騒音やモーターの大型化という問題が顕在化したが、並列薄型ファンを用いた層流送風機によって、これらの問題が解決可能である。また簡単に定常気流が作り出せるため、高い空気清浄度が要求される生産設備の内部に設置することも可能である。たとえば作業を行なう人間に対して機械装置側から定常気流を発生させれば、機械装置が飛沫から守られる。
請求項4の超小型の換気装置つき頭頚部シールドは、携帯可能な小電力源(ボタン電池など)によって長時間駆動ができるため、屋外などの開放空間においても利用可能である。同じく介護や看護など隔離空間を設定できない環境下で、直接に感染源(患者)と接する場合にも広く利用できる。
また外部が清浄な環境では、装着者が発する飛沫を防止する目的で用いることも可能である。その場合には超小型の換気装置を逆向きに取り付けて陽圧換気とし、頭頚部カバーや防護服の素材が排気フィルターとして機能することになる。こうした場合にも、マスク等の個人防御具に比較して呼吸抵抗の低減や排熱の効率化が図れ、頭部や上肢の動きを制限しない。また視野も実質的に制限されないため、長時間の作業にも適している。
本発明は医療機関以外の公的空間あるいは接客業においても応用が可能であり、インフルエンザなどの飛沫感染症が流行する場合には広く用いられる。たとえば卓上型の折り返し袖つき隔離パネルと、壁掛け式あるいは天井吊りの層流送風機を用いれば、一般的な受付カウンターなどでも利用できる。
1 気流の方向
2 折り返し袖つき隔離パネル
3 並列薄型ファンを用いた層流送風機
4 超小型の換気装置つき頭頚部シールド

Claims (4)

  1. 多重モジュラー式の飛沫感染防止装置。医療機関等で患者からの飛沫を防止するための、多重モジュラー式の飛沫感染防止装置である。各々のモジュールは独立あるいは組み合わせて用いられ、必要とされる実用的清浄度に応じて狭小な閉鎖空間でも隔離環境を作り出すことができる。
  2. 折り返し袖つき隔離パネルである。中央平面パネルの上下左右に角度つきの突出部を設けることで、患者から発生する気流および飛沫を吹き返す装置。中央平面パネルには透明素材よりなる窓と、処置用の開口部ならびに物品を受け渡すためのポケットが付属する。いずれも自重式のフラップによって自動的に閉鎖される。
  3. 並列薄型ファンを用いた層流送風機。折り返し袖つき隔離パネルには、処置中に微小な開口部が生じることがあり、飛沫を完全に遮断するできない可能性がある。このため医療者の背後から折り返し袖つき隔離パネルに向って微弱な層流を送り、微小な開口部からの飛沫侵入を抑止する装置である。
  4. 超小型の換気装置つき頭頚部シールド(フェイスシールドと頭頚部カバー)である。折り返し袖つき隔離パネルおよび並列薄型ファンを用いた層流送風機によっても、微細な飛沫が医療者に吹き付けられる可能性があり、これに対して医療者は一般的に防御服を着用するが、露出する顔面および頭頚部を覆う超小型の換気装置を取り付けた頭頚部シールドである。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112902339A (zh) * 2021-02-02 2021-06-04 重庆海润绿色科技集团有限公司 带智能感控的诊室安全环控***
JP2021184789A (ja) * 2020-05-25 2021-12-09 株式会社エムビーエス 検査用シールド、検査用ブース、及び検査方法
JP2021195802A (ja) * 2020-06-16 2021-12-27 日本エアーテック株式会社 診察ブース
JP7458068B2 (ja) 2020-06-05 2024-03-29 宝来メデック株式会社 検体の採取方法

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