JP2010534061A - 組換えコレラ菌外毒素 - Google Patents

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Abstract

本発明は、様々なヒト疾患、特に望しくない細胞が大量または過剰にあることによって特徴づけられる疾患の治療のための、コレラ菌由来の組換え外毒素を特徴とする。

Description

発明の分野
本発明は、コレラ菌(Vibrio cholerae)外毒素(VCE)に基づく治療法、ならびに選択した標的細胞に対する選択的細胞毒性または細胞***停止剤として外毒素およびその誘導体を用いる方法および組成物に関する。
発明の背景
特定の型の細胞を選択的に死滅させることは、通常は悪性細胞の成長および蓄積を通じて現れる、癌の治療を含む様々な臨床状況において望ましい。癌に対する確立された治療は化学療法で、DNA合成を阻害するか、またはDNAを損傷することによって腫瘍細胞を死滅させる(Chabner and Roberts, Nat. Rev. Cancer 5:65 (2005)(非特許文献1))。しかし、そのような治療は、正常細胞を区別せずに死滅させることによる重度の全身毒性を引き起こすことが多い。多くの癌化学療法は増殖中の細胞の選択的破壊を通じてその有効性を発揮するため、骨髄、胃腸管、および毛包などの増殖速度が高い正常組織への毒性が高まり、通常は最適な用量でのそれらの使用が妨げられる。そのような治療は失敗することが多く、薬物耐性、疾患の再発、および/または転移を引き起こすことになる。全身毒性を低減するために、特定の細胞集団を選択的に標的とするための異なる戦略が探究されてきた。腫瘍関連抗原を認識する抗体および他のリガンドを小分子薬物またはタンパク質毒素と結合して、それぞれ免疫複合体および免疫毒素と呼ばれることが多い複合体および融合タンパク質が生成されている(Allen, Nat. Rev. Cancer 2:750 (2002)(非特許文献2))。
用量を制限する毒性に加えて、化学療法のもう一つの制限は、増殖の加速がみられない癌の治療には無効であるが、アポトーシスの欠陥により、むしろ悪性細胞の生存が延長されることである(Kitada et al., Oncogene 21:3459 (2002)(非特許文献3))。例えば、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)は、ゆっくり蓄積するアポトーシス抵抗性腫瘍性B細胞によって特徴づけられる疾患で、現在のところこの疾患に対する治療法はない(Munk and Reed, Leuk. Lymphoma 45:2365 (2004)(非特許文献4))。
癌幹細胞(CSC)は、自己複製および無限成長の能力を有する腫瘍細胞の小画分であり、したがって癌をイニシエートする能力において、それらの後代と異なる(Schulenburg et al., Cancer 107:2512 (2006)(非特許文献5))。現行の癌療法はこれらの癌幹細胞を特異的に標的としておらず、CSCの残留は薬物耐性を示す後代細胞および/または転移の形成に寄与する後代細胞を生じうる、根絶できない細胞サブセットをもたらすとの仮説が立てられる。CSCを有する腫瘍において、これらの細胞を除去しうることが非常に望ましい。CSCは正常な幹細胞と類似の多くの性質、例えば、長い寿命、相対的な有糸***静止状態、および活発なDNA修復能力、ならびにP-糖タンパク質などのATP結合カセット薬物トランスポーターの高レベルの発現による、アポトーシスおよび/または薬物/毒素に対する抵抗性を有すると考えられていた。したがって、CSCは通常の癌療法では標的とし、破壊するのが難しいと考えられる(Dean et al., Nat. Rev. Cancer 5:275 (2005)(非特許文献6))。反対に、正常な幹細胞が正常な組織の再生において果たす必須の役割ゆえに、CSCを正常な幹細胞から識別することが非常に重要である。
毒性が非常に高い抗腫瘍剤の選択性を高めるために、よく灌流されている組織の正常細胞付近では見られない、低いpH、低い酸素分圧、または高い密度の腫瘍特異的酵素などの、腫瘍微小環境の特異的な特徴を利用するための様々な試みがなされてきた。固形腫瘍において高い毒性を示すとの仮説が立てられている、環境に感受性の抗腫瘍剤が開発された。例えば、「生体内還元プロドラッグ」は、固形腫瘍の低酸素環境において細胞毒性物質に活性化されうる物質である(Ahn and Brown, Front Biosci. 2007 May 1;12:3483-501.(非特許文献7))。同様に、Kohchi et al.は腫瘍において見いだされる膜ジペプチダーゼによって活性化されうる化学療法プロドラッグの合成を記載している(Bioorg Med Chem Lett. 2007 Apr 15;17(8):2241-5(非特許文献8))。腫瘍微小環境を変えるための選択的抗体結合酵素の使用も、多くのグループによって探究されている。抗体指向酵素プロドラッグ療法(ADEPT)として知られている戦略において、腫瘍特異的抗体に結合した酵素を患者に送達し、続いて結合酵素の作用を受けるまでは不活性な化学療法剤を送達することが計画されている(例えば、Bagshawe, Expert Rev Anticancer Ther. 2006 Oct;6(10):1421-31(非特許文献9)またはRooseboome et al. Pharmacol Rev. 2004 Mar;56(1):53-102(非特許文献10)参照)。今日まで、これらの戦略の、臨床における利点は報告されておらず、治療上の有用性を示すことができる、より選択的で、より強力な剤を開発することに強く関心が持たれる。
Chabner and Roberts, Nat. Rev. Cancer 5:65 (2005) Allen, Nat. Rev. Cancer 2:750 (2002) Kitada et al., Oncogene 21:3459 (2002) Munk and Reed, Leuk. Lymphoma 45:2365 (2004) Schulenburg et al., Cancer 107:2512 (2006) Dean et al., Nat. Rev. Cancer 5:275 (2005) Ahn and Brown, Front Biosci. 2007 May 1;12:3483-501. Kohchi et al., Bioorg Med Chem Lett. 2007 Apr 15;17(8):2241-5 Bagshawe, Expert Rev Anticancer Ther. 2006 Oct;6(10):1421-31 Rooseboome et al. Pharmacol Rev. 2004 Mar;56(1):53-102
本発明は、組換えコレラ菌外毒素(VCE)に基づく組成物および治療法を特徴とする。本発明は、天然のADPリボシルトランスフェラーゼ活性、1つまたは複数の特定の細胞表面タンパク質に結合する修飾細胞結合ドメイン、ならびに選択されたタンパク質分解活性により切断可能な修飾トランスロケーションドメインを含む、変異体VCE融合タンパク質を含む。
一つの局面において、本発明は、SEQ ID NO: 1と70、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%よりも高い配列同一性を有するか、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む組換えVCEを特徴とする。
もう一つの局面において、本発明は、VCEの断片を含むタンパク質(例えば、融合タンパク質)であって、この断片がSEQ ID NO: 2と70、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%よりも高い配列同一性を有するか、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質を特徴とする。このタンパク質はADPリボシル化活性および/または細胞膜トランスロケーション活性(例えば、VCE細胞膜トランスロケーションドメインを有することにより)を含みうる。もう一つの局面において、このタンパク質はVCE細胞結合ドメインを含まない。
前述の局面のいずれかにおいて、VCE断片またはタンパク質を非天然の細胞標的化部分(例えば、抗体、もしくはその機能性断片、人工的に多様化したポリペプチド結合因子、または受容体のリガンド)に融合することができる。非天然の細胞標的化部分は、例えば、癌細胞上で発現される細胞表面標的を標的とすることができ、または造血細胞、リンパ球、および侵害受容ニューロンからなる群より選択される細胞を標的とすることもできる。
前述の局面のいずれかにおいて、VCE断片またはタンパク質の天然のフリン切断部位を修飾可能な活性化ドメインで置き換え、ここで修飾可能な活性化ドメインは外因性酵素の基質(例えば、グランザイムB活性の基質)を含む。外因性酵素は、外因性ヒトプロテアーゼまたは非ヒト(または非哺乳動物)プロテアーゼ(例えば、ウイルスプロテアーゼ)を含む、プロテアーゼでありうる。修飾可能な活性化ドメインはプロテアーゼ切断部位の翻訳後修飾または翻訳後修飾を除去可能な酵素の基質を含んでいてもよい。
もう一つの局面において、本発明は、前述のタンパク質またはタンパク質融合物のいずれかをコードする核酸を含むベクターを特徴とする。もう一つの局面において、本発明は、前述のベクターのいずれかを含む宿主細胞を特徴とする。
さらにもう一つの局面において、本発明は、前述のタンパク質またはタンパク質融合物のいずれかに特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を特徴とする。
もう一つの局面において、本発明は、標的細胞(例えば、癌細胞、造血細胞、リンパ球、および侵害受容ニューロン)を破壊する方法であって、標的細胞をVCEの断片を含むタンパク質と接触させることによる方法を特徴とし、ここで断片はSEQ ID NO: 2(またはSEQ ID NO: 3によってコードされるタンパク質)と70、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%よりも高い配列同一性を有するか、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。このタンパク質は、ADPリボシル化活性および/または細胞膜トランスロケーション活性(例えば、VCE細胞膜トランスロケーションドメインを有することにより)を含みうる。もう一つの局面において、このタンパク質はVCE細胞結合ドメインを含まない。
前述の方法のいずれかにおいて、VCE断片またはタンパク質を非天然の細胞標的化部分(例えば、抗体、もしくはその機能性断片、人工的に多様化したポリペプチド結合因子、または受容体のリガンド)に融合することができる。非天然の細胞標的化部分は、例えば、癌細胞上で発現される細胞表面標的を標的とすることができ、または造血細胞、リンパ球、および侵害受容ニューロンからなる群より選択される細胞を標的とすることもできる。
同様に、前述の方法のいずれかにおいて、VCE断片またはタンパク質の天然のフリン切断部位を修飾可能な活性化ドメインで置き換え、ここで修飾可能な活性化ドメインは外因性酵素の基質(例えば、グランザイムB活性の基質)を含む。外因性酵素は、外因性ヒトプロテアーゼまたは非ヒト(または非哺乳動物)プロテアーゼ(例えば、ウイルスプロテアーゼ)を含む、プロテアーゼでありうる。修飾可能な活性化ドメインはプロテアーゼ切断部位の翻訳後修飾または翻訳後修飾を除去可能な酵素の基質を含んでいてもよい。
本明細書において用いられる「a」または「an」は1つまたは複数を意味してもよく;「もう一つの(another)」は少なくとも二つ目またはそれ以上を意味してもよい。
本明細書において用いられる「ポリペプチド」または「ペプチド」なる用語は、一つのアミノ酸のカルボキシル末端ともう一つのアミノ末端との間のアミド結合により連結された2つまたはそれ以上のアミノ酸を意味する。
本明細書において用いられる「アミノ酸」なる用語は、天然または非天然アルファまたはベータアミノ酸を意味し、ここでそのような天然または非天然アミノ酸は、ハロ、例えば、F、Br、ClもしくはIまたはCF3、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリール(アリール)もしくはジアリール、アリールアルキル、アリールアルキルオキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、置換されていてもよいアミノ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシル、アルカノイル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、シクロヘテロアルキル、アリールヘテロアリール、アリールアルコキシカルボニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、アリールオキシアルキル、アリールオキシアリール、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ハロアルキル、トリハロアルキルおよび/またはアルキルチオなどの、1から4つの置換基で置換されていてもよい。
本明細書において用いられる「修飾された」なる用語は、遺伝的変更または化学的置換もしくは分解を含む、任意の様々な方法により、自然に見られる1つまたは複数の主な型から変更された型に機能的に変えられ、かつアミノ酸または核酸残基などの生物学的成分または置換基の追加、取り去り、または変更、ならびにグリカン、脂質、ホスフェート、スルフェート、メチル、アセチル、ADPリボシル、ユビキチニル、スモイル、ネドイル、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、またはホルミルなどであるが、それらに限定されるわけではない、タンパク質翻訳後修飾の追加、取り去りまたは修飾を含む、組成物を意味する。「修飾された」は、化学的部分を追加、取り去り、または変更して、10%よりも高い、または1%よりも高い、または0.1%よりも高い比率を含む、その天然存在度で存在する場合には組成物中で見られない型を提供するための、化学的または酵素的置換または分解による変更も含む。「修飾された」なる用語は、製造、精製、保存、または新規宿主中での発現の結果として偶発的に変更され、そのような変更が組成物の特徴を機能的に変えない組成物を意味する意図はない。
本明細書において用いられる「コレラ菌外毒素A」または「VCE」なる用語は、その原型がコレラ菌のtoxA遺伝子によってコードされるジフタミド特異的毒素である、プロトキシンのファミリーから選択されるタンパク質を意味する。原型VCEは保存DT様ADPリボシル化ドメインを有し、アミノ酸配列同一性が中等度(約32%)の、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素A(PEA)のものに非常に類似した全ドメイン構造をとる。全長「コレラ菌外毒素A」または「VCE」は、SEQ ID NO: 1と70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。最低でも、「コレラ菌外毒素A」または「VCE」は、全長VCEのADPリボシル化活性を有する(SEQ ID NO: 2、およびSEQ ID NO: 3によってコードされるタンパク質)。配列アラインメントによって、PEAと同様に、VCEはN末端細胞標的化部分(残基Met1〜Lys297および残基Ala419〜Asn457)と、続いてトランスロケーションドメイン(Gly298からAla418)およびER保持シグナル662KDEL665(SEQ ID NO: 4)を含むC末端ADPリボシルトランスフェラーゼ(Arg458からLys666)を有することが示唆され、結晶構造によって確認される。推定フリン切断部位(321RKPK↓DL326)(SEQ ID NO: 5)は推定トランスロケーションドメインのN末端の近くに位置する。
「修飾VCE」、「修飾VCE」、または「改変VCE」なる用語は、元の配列内のアミノ酸配列の追加、欠失、および置き換えを含む、VCEのものと比べてアミノ酸配列変化を与えるように修飾されている、組換えまたは合成VCEタンパク質を記載するために、本明細書において交換可能に用いられる。特に、これらの用語は、突然変異配列を提供するためにフリン切断部位の配列変化を有するVCEタンパク質、および/または他の細胞標的化部分を含むために天然の細胞標的化部分が部分的または完全に除去、突然変異性に変更、もしくは変化した、VCE融合タンパク質を意味しうる。この用語は、グリコシル化およびPEG化などのアミノ酸共有結合修飾を有するVCEも意味しうる。
本明細書において用いられる「VCE融合物」なる用語は、例えば、異種配列に直接または間接的に融合されたVCEまたは修飾VCE、および標的とする細胞表面に結合しうるポリペプチドを含む融合タンパク質を意味する。VCEまたは修飾VCEは、好ましくは融合タンパク質のC末端に位置し、細胞標的化ポリペプチドはVCEまたは修飾VCEのN末端に結合される。融合毒素の文脈で論じる場合、「修飾VCE」は単に「VCE」と呼ぶこともある。本明細書において用いられる「細胞標的化部分」なる用語は、1つまたは複数の細胞表面標的に結合しうる1つまたは複数のタンパク質ドメインを意味し、したがってVCEまたは修飾VCEをそれらの細胞に指向させることができる。そのような細胞標的化部分には、特に、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片、単一抗体ドメイン、ならびにscFv、二重特異性抗体、改変リポカリン、ラクダ抗体(camelbody)、ナノ抗体(nanobody)および関連する構造体などの関連分子などの、抗体または抗体様分子が含まれる。同様に、可溶性メディエータ、サイトカイン、成長因子、可溶性受容体断片、マトリックス断片、合成分子、または標的とする細胞上に同族の結合構造を有することが知られている他の構造も含まれる。加えて、例えば、フィブロネクチン、アンチカリン、タイチンおよび他の構造からの結合成分の生成において、不変または多形骨格の多様化によって選択されたタンパク質ドメインも含まれる。細胞標的化部分には部分の組み合わせ(例えば、scFvとサイトカインおよびscFvと第二のscFv)も含まれうる。
本明細書において用いられる「融合タンパク質」、「プロトキシン融合物」、「毒素融合物」、「プロトキシン活性化因子融合物」および「プロテアーゼ融合物」なる用語は、少なくとも1つの追加の成分に機能的に連結されたペプチド成分を有し、かつそのドメインの組成および/または構成において自然のタンパク質と異なるタンパク質を意味する。追加の成分は性質上ペプチドまたは非ペプチドでありうる。追加のペプチド成分は自然生成または化学合成によって誘導することができ、阻害剤部分、細胞標的化部分、または切断部位として作用するペプチド成分の場合、追加のペプチド成分は任意の自然の鋳型を元にする必要はないが、望まれる目的のために、実質的にすべての一次配列類似性は失われるが、機能的性状は保存されるように、人工骨格もしくはランダム配列から、または既存の鋳型の多様化により選択してもよい。非ペプチド追加成分は、1つまたは複数の機能性化学種を含むことができる。化学種は、それぞれ化学種のポリペプチドまたはもう一つの化学種への柔軟な結合を提供しうる1つまたは複数のリンカーで置換されていてもよい、リンカーまたは切断部位を含んでいてもよい。
「選択的に修飾可能な活性化部分」なる用語は、修飾後、プロトキシンを毒素もしくは本来活性化可能なプロトキシンに変換する、またはプロトキシン活性化因子前駆体を活性化する、もしくはプロトキシン活性化因子前駆体を本来活性化可能となるように修飾する、プロトキシンまたはプロトキシン活性化因子の不自然または自然には見られない部分を意味する。選択的に修飾可能な活性化部分がプロトキシン融合タンパク質の成分である場合、修飾可能な活性化部分のプロトキシン活性化因子による修飾は、直接プロトキシンが標的細胞に対して毒性となる結果となりうるか、またはプロトキシンが標的細胞に対して毒性となるよう本来活性化可能な型を呈する結果となりうる。選択的に修飾可能な活性化部分がプロトキシン活性化因子前駆体タンパク質の成分である場合、修飾可能な活性化部分の活性化因子前駆体活性化因子による修飾は、直接活性化因子前駆体がプロトキシンを修飾しうる型へと活性化される結果となりうるか、または活性化因子前駆体がプロトキシンを修飾しうる型となるよう本来活性化可能な型を呈する結果となりうる。本来活性化可能なプロトキシンまたは活性化因子前駆体は、例えば、修飾可能な活性化部分が標的細胞の内因性成分、または標的細胞の周囲の環境(例えば、標的細胞特異的プロテアーゼまたは遍在性のプロテアーゼ)に感受性となるような、その部分の修飾を含む。
「機能的に連結された」または「機能的連結」なる用語は、2つまたはそれ以上のペプチド成分の共有結合もしくは非共有結合または共有結合および非共有結合の両方による連結ならびに1つまたは複数のペプチド成分と1つまたは複数の化学種との共有結合もしくは非共有結合または共有結合および非共有結合の両方による連結、ならびに2つまたはそれ以上の化学種の共有結合による連結を含む。ペプチド成分の共有結合による連結の適当な型には、mRNAの翻訳後に1つのポリペプチドが生成される直接翻訳融合、あるいは化学的もしくは酵素的手段を通じての機能的連結またはジスルフィド結合の形成などの自然の分子間反応を通じての機能的連結により達成される翻訳後融合がある。機能的連結は、供与体分子の様々な部分を化学的または酵素的に活性化して、活性化供与体分子の受容体分子への結合をもたらすことにより実施してもよい。機能的連結の後、2つの部分はそれらの間に追加のリンカー種を有していても、追加の種がなくてもよく、または、例えば、酵素的に誘導される機能的連結後に起こりうるような、1つまたは複数の部分から原子の欠損を引き起こす、共有結合により連結されていてもよい。
本明細書において用いられる「人工的に多様化したポリペプチド結合因子」なる用語は、そこから所望の細胞表面標的に結合しうる高親和性変異体を選択することができるペプチドまたはポリペプチドの集合を提供するように、追加、欠失および置換を含む、自然またはインビトロ突然変異の結果としての複数の態様を含むように調製されている、少なくとも1つのドメインを含むペプチドまたはポリペプチドを意味する。そのような人工的に多様化したポリペプチド結合因子は、例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、RNAディスプレイ、酵母ディスプレイ、細胞表面ディスプレイもしくは関連する方法により選択したペプチド、または同様に選択し、典型的には抗体可変領域様物質もしくは関連する結合分子を提供するように、強い骨格の可動性ループにおいて多様化したポリペプチドを含みうる。
本明細書において用いられる「細胞表面標的」なる用語は、例えば、細胞内小胞の細胞質膜との融合の結果でありうる、一時的曝露を含む、細胞の表面上で機能的に曝露され、かつ細胞標的化部分によって特異的に認識されうる、任意の構造を意味する。細胞表面標的は、1つまたは複数の置換されていてもよいポリペプチド、炭水化物、核酸、ステロールもしくは脂質部分、またはその組み合わせ、ならびにポリペプチド、炭水化物、核酸、ステロールもしくは脂質部分の別々もしくは組み合わせでの修飾物を含みうる。細胞表面標的は、細胞標的化部分によって機能的に認識される、置換されていてもよいポリペプチドおよび置換されていてもよい炭水化物、置換されていてもよい炭水化物および置換されていてもよい脂質、または他の構造の組み合わせを含みうる。細胞表面標的は、複合体中の1つまたは複数のそのような置換されていてもよいポリペプチド、炭水化物、核酸、ステロールまたは脂質、例えば、ヘテロ多量体タンパク質、グリカン置換ヘテロ多量体タンパク質、またはペプチドと主要組織適合複合体抗原との複合体などの他の複合体を含みうる。細胞表面標的は、もう一つの結合媒介物を通じて標的細胞に機能的に連結された型で存在してもよい。細胞表面標的は、置換されていてもよい小分子、ポリペプチド、炭水化物、核酸、ステロールまたは脂質で特定の細胞を修飾するためのいくつかの介入により作成してもよい。例えば、細胞表面標的は、目的の細胞に結合する種の投与により作成してもよく、それにより本発明の修飾VCEのための結合表面を提供する。
「コンビナトリアル標的化」および「バイナリ標的化」なる用語は、PCT特許出願公報第2008/011157号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載のコンビナトリアル標的化アプローチを用いての標的細胞の選択的死滅による、様々な疾患の治療法を意味する。簡単に言うと、この戦略は、細胞標的化ドメイン、標的細胞の中、上、またはその近くに、自然に機能的に見られない活性化部分によって活性化される修飾可能な活性化部分を含む、プロトキシン融合タンパク質を特徴とする。これらの方法は、特定の細胞集団を標的として破壊するために、最低でもプロトキシンおよびプロトキシン活性化因子を含む、2つまたはそれ以上の治療薬のコンビナトリアル使用も含む。各剤は、標的とする細胞の独立の細胞表面標的に結合する少なくとも1つの細胞標的化部分を含む。プロトキシンは、プロトキシン活性化因子によって作用されうる修飾可能な活性化部分を含む。プロトキシン活性化因子は、修飾可能な活性化部分で作用した後、プロトキシンを活性毒素または本来活性化可能な毒素に変換するか、または変換を可能にする酵素活性を含む。次いで、標的とする細胞を活性化毒素により阻害または破壊する。2つの剤だけが関与する場合、戦略は「バイナリ標的化」と呼ぶ。プロトキシンおよびプロトキシン活性化因子の対の一例は、修飾VCE融合タンパク質およびプロテアーゼ融合タンパク質である。
本明細書において用いられる「活性化可能なAB毒素」なる用語は、細胞標的化およびトランスロケーションドメイン(Bドメイン)ならびに生物活性ドメイン(Aドメイン)を含み、かつそれらの毒性効果を実質的に促進するために、活性化配列上での内因性標的細胞プロテアーゼの作用を必要とする任意のタンパク質を意味する。AB毒素は、補助タンパク質またはグラム陰性菌のIII型分泌系などのタンパク質送達構造を必要とすることなく、標的細胞を中毒させる能力を有する。AB毒素は典型的には、遍在性フリン/ケキシン様プロテアーゼの作用に感受性の部位を含み、活性化するためには切断されなければならない。本発明に従い、「活性化可能なAB毒素」なる用語は、内因性細胞標的化ドメインが1つまたは複数の異種細胞標的化部分で置き換えられているか、または1つまたは複数の異種細胞標的化部分が無傷の内因性細胞標的化ドメインに追加され、活性化配列が外因性活性化因子によって修飾されうる修飾可能な活性化部分で置き換えられている、修飾AB毒素を含むことになる。
「ADPリボシル化毒素」なる用語は、β-NAD+のADPリボース部分を真核生物の標的タンパク質に転移させる酵素を意味する。このプロセスは標的細胞の基本的機能を損ない、細胞***停止または細胞毒性を引き起こす。細菌ADPリボシル化毒素の例には、ジフテリア毒素、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A、緑膿菌細胞毒性外毒素S、百日咳毒素、コレラ毒素、大腸菌(E. coli)由来熱不安定エンテロトキシンLT-IおよびLT-II(Krueger and Barbieri, Clin. Microbiol. Rev. 8:34-47 (1995))、ならびにCholix毒素(Jorgensen et al. J. Biol. Chem. 283 (16):10671-10678 (2008))が含まれる。非細菌ADPリボシル化毒素の例には、DNA ADPリボシル化酵素ピエリシン-1、ピエリシン-2、CARP-1ならびにアサリ(Ruditapes philippinarum)およびヤマトシジミ(Corbicula japonica)(Nakano et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 103(37):13652-7 (2006))の関連する毒素が含まれる。加えて、コンピュータでの分析の適用により、推定ADPリボシル化毒素の予想が可能となった(Pallen et al. Trends Microbiol. 9:302-307 (2001)。
本明細書において用いられる「活性化可能なADPリボシル化毒素」または「活性化可能なADPRT」なる用語は、β-NAD+のADPリボース部分を真核生物の標的タンパク質に転移させる能力を共有し、それらの毒性効果を実質的に促進するために、活性化配列上での内因性標的細胞プロテアーゼの作用を必要とする、様々な種により生成された、機能が保存された酵素である毒素を意味する。このプロセスは標的細胞の基本的機能を損ない、細胞***停止または細胞毒性を引き起こす。活性化可能な細菌ADPRTの例は、VLE、ジフテリア毒素(DT)、緑膿菌外毒素A(PEA)、百日咳毒素、コレラ毒素、ならびに大腸菌由来熱不安定エンテロトキシンLT-IおよびLT-IIである(Krueger and Barbieri, Clin. Microbiol. Rev. 8:34-47 (1995);Holbourn et al. The FEBS J. 273:4579-4593(2006))。活性化可能な非細菌ADPリボシル化毒素の例には、モンシロチョウ(Pieris Rapae)(Kanazawa et al Proc. Natl. Acad. Sci. 98:2226-2231 (2001))および、配列相同性により、オオモンシロチョウ(Pieris brassicae)(Takamura-Enya et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 32:579-582 (2004))由来DNA ADPリボシル化酵素が含まれる。
「VCEプロトキシン」および「VCE関連プロトキシン」なる用語は、VCE由来の少なくとも1つの機能ドメイン、ADPリボシル化ドメインまたはトランスロケーションドメインのいずれかを含む、組換え毒素を意味する。一つの態様において、そのようなVCEプロトキシンはVCEのADPリボシルトランスフェラーゼドメイン(Arg458からLys666)、C末端ER保持シグナル、細胞結合部分、およびPEAのものなどのもう一つのADPリボシル化毒素または活性化可能なADPリボシル化毒素のトランスロケーションドメインを含み、ここでタンパク質分解活性化部位は選択されたプロテアーゼの基質となるよう変更されうる。もう一つの態様において、VCEプロトキシンはVCEのトランスロケーションドメイン(Gly298からAla418)、C末端ER保持シグナル、細胞結合部分、ならびに活性化可能なADPRTの触媒ドメインおよび活性化可能なAB毒素の生物活性Aドメインなどの細胞毒性部分を含む。
本明細書において用いられる毒素の「トランスロケーションドメイン」なる用語は、細胞膜トランスロケーション活性を有する毒素(例えば、天然または修飾毒素)の任意のドメインを意味する。「細胞膜トランスロケーション活性」は、毒素の活性ドメインの細胞質または細胞質近接区画へのトランスロケーションに必要な活性である。トランスロケーションの前に、活性ドメインは細胞表面上にあってもよく、または細胞表面から細胞質以外の細胞内空隙、例えば、エンドソーム、リソソーム、ゴルジ、または小胞体などの小胞区画へと運ばれていてもよい。そのようなドメインの例は、DTのトランスロケーションドメイン(残基187〜389)およびシュードモナス外毒素Aのトランスロケーションドメイン(残基253〜364)である。すべての毒素がトランスロケーションドメインを含むわけではない(例えば、孔形成毒素)。
本明細書において用いられる「基質」なる用語は、特定の酵素によって認識され、化学的に修飾される特定の分子、または分子の一部を意味する。
本明細書において用いられる「プロテアーゼ」なる用語は、タンパク質分解活性を有し、好ましくは特定のペプチド配列を特異的に認識し、切断することができる組成物を意味する。一つの特定の態様において、特異的認識部位は4つのアミノ酸の天然のフリン切断配列のものと等しいか、またはそれよりも長く、したがって天然の毒素に匹敵するか、またはそれよりも大きい活性化の厳密性を提供する。プロテアーゼは、所望のタンパク質分解活性を有する天然の、改変された、または合成分子であってもよい。タンパク質分解の特異性は遺伝子突然変異、インビトロ修飾、または活性を制御する結合部分の追加もしくは取り去りによって増強することができる。
本明細書において用いられる「異種」なる用語は、非天然の、または自然に見られない組成物または状態、例えば、既存の自然の組成物または状態を別の供給源由来のもので置き換えることによって得られるものを意味する。したがって、自然に存在する、例えば、フリン感受性の切断部位を別の酵素の切断部位で置き換えることは、天然の部位を異種部位で置き換えるということになる。同様に、あるタンパク質が自然に発現される生物以外の生物で発現されることは、異種発現系および異種タンパク質ということになる。
本明細書において用いられる「外因性」なる用語は、標的とする宿主細胞の中、上、またはその近くに機能的に存在しない任意のタンパク質を意味する。機能的に存在するとは、タンパク質が存在する場合、そのタンパク質は治療的に供給されたタンパク質が作用しうる様式で作用可能な形では存在しないことを意味する。存在しうるが、機能的に存在しない、プロトキシン活性化部分の例には、例えば、細胞内のプロテアーゼ、ホスファターゼまたはユビキチンC末端ヒドロラーゼが含まれ、これらは治療的に供給されるプロテアーゼ、ホスファターゼまたはユビキチンC末端ヒドロラーゼ(治療的に供給される場合、細胞の表面上または形態的に細胞の外部に等しい小胞区画内のいずれかに存在する)とは異なる区画にあり、プロトキシンに対してその活性化を引き起こす様式で作用することができないため、機能的に存在しない。タンパク質は、プロトキシンまたはプロトキシン活性化因子前駆体の活性化の速度に著しい影響をおよぼさない、例えば、最小治療有効用量の外因性供給によって達成しうる比率の10%よりも高い、または1%よりも高い、または0.1%よりも高い比率で、標的とする細胞の中、上、またはその近くに機能的に見られない形を提供するような、少ない量で見られる場合にも、存在しうるが、機能的に存在しない。さらなる非限定例として、治療的タンパク質におけるフリン感受性部位の、標的とする宿主細胞の上、中、またはその近くに機能的に存在する、自然に見られるプロテアーゼに対する部位による置換は、内因性プロテアーゼによる作用を受けうる異種置換ということになる。治療的タンパク質におけるフリン感受性部位の、標的とする宿主細胞の近くに機能的に存在する、自然には見られないプロテアーゼに対する部位による置換は、外因性プロテアーゼによる作用を受けうる異種置換ということになる。
「PEG化」なる用語は、直鎖、分枝およびデンドリマーなどの様々なサイズおよび幾何学のポリエチレングリコールポリマーによるタンパク質の共有結合または非共有結合による修飾を意味し、修飾毒素の治療的作用にとって有用でありうるような、追加の官能基を有するポリエチレングリコールポリマーまたは修飾ポリマーを組み込むブロックコポリマーを意味することもある。例えば、ポリエチレングリコール部分を修飾可能な活性化配列を任意の阻害剤配列に連結してもよく、または1つもしくは複数の細胞標的化部分を修飾毒素に連結してもよい。タンパク質を複合タンパク質の活性の保持に一致する様式でPEG化するための戦略が当技術分野において記載されている。これらには、システインなどの遊離チオールへのアルキル化もしくはマイケル付加による結合、N末端へのアシル化もしくは還元的アルキル化による結合、リジン残基の側鎖アミノ基への結合、グルタミン残基へのトランスグルタミナーゼを用いての結合、N末端への天然の連結反応もしくはシュタウディンガー連結反応、またはN-連結グリカンもしくはO-連結グリカンなどの内因性グリカンへの結合が含まれる。過ヨウ素酸酸化により生じたアルデヒドによるヒドラゾン生成、代謝的標識により組み込まれたグリカンアジドによるシュタウディンガー連結反応、およびグリカン置換技術を含む、多くのグリカン付加戦略が公知である。非共有結合による修飾の例には、高親和性リガンド置換PEGのそのようなリガンドに結合するタンパク質ドメインとの反応、例えば、ビオチン置換PEG部分のストレプトアビジンまたはアビジン融合タンパク質との反応が含まれる。
「PEG」なる用語は、直鎖、分枝またはデンドリマーなどの様々なサイズおよび幾何学で存在しうる置換されていてもよいポリエチレングリコール部分を意味し、修飾毒素の治療的作用にとって有用でありうるような、追加の官能基を有するブロックコポリマーまたは修飾ポリマーを意味することもある。PEG部分中の置換されていてもよい、または無置換のエチレングリコール部分の数は少なくとも2つである。
「PEG化された」なる用語は、PEG部分の可逆的または不可逆的結合を受けた組成物を意味する。
「チオール特異的PEG化」なる用語は、置換されていてもよいチオール反応性PEG部分のタンパク質またはタンパク質置換基の1つまたは複数のチオール基への結合を意味する。チオール指向PEG化の標的はシステイン残基、あるいはイミノチオランのリジンイプシロンアミノ基またはN末端アルファアミノもしくはイミノ基との反応によるなどの、化学反応により導入されたチオール基でありうる。チオール指向PEG化のためのいくつかの高度特異的化学、すなわち、PEG-オルト-ピリジル-ジスルフィド、PEG-マレイミド、PEG-ビニルスルホン、およびPEG-ヨードアセトアミドが開発されている。チオール特異的結合化学の型に加えて、市販のチオール反応性PEGはサイズ、直鎖または分枝、およびヒドロキシル、カルボン酸、メトキシまたは他のアルコキシ基を含む異なる末端基に関しても多様である。
「カルボキシル反応性PEG化」なる用語は、タンパク質またはタンパク質置換基の、タンパク質のグルタミン酸もしくはアスパラギン酸側鎖またはC末端などのカルボキシル基と反応することができる置換されていてもよいPEG部分との反応を意味する。タンパク質のカルボキシル基は、カルボキシル基が酸性pHで塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド(EDC)などのカップリング剤により活性化されている場合、PEG-ヒドラジドを用いてのカルボキシル反応性PEG化にかけることができる。
「アミン反応性PEG化」なる用語は、タンパク質またはタンパク質置換基の、一級アミンまたは二級アミンなどのアミンと反応することができる置換されていてもよいPEG部分との反応を意味する。タンパク質のアミン反応性PEG化の一般的経路は、リジンおよび/またはN末端アミノもしくはイミノ基と反応する官能基を含むPEGの使用である(Roberts et al. Adv. Drug Deliv. Rev. 54(4):459-476 (2002))。アミン反応性PEGの例には、PEGジクロロトリアジン、PEGトレシレート、PEG炭酸スクシンイミジル、PEG炭酸ベンゾトリアゾール、PEG炭酸p-ニトロフェニル、PEGカルボニルイミダゾール、PEGコハク酸スクシンイミジル、PEGプロピオンアルデヒド、PEGアセトアルデヒド、およびPEG N-ヒドロキシスクシンイミドが含まれる。
「N末端PEG化」なる用語は、置換されていてもよいPEG部分とタンパク質のアミノ末端との結合を意味する。N末端PEG化のための好ましいタンパク質融合物またはタンパク質ハイブリッドは少なくとも1つのN末端アミノ基を有する。N末端PEG化は、アミン反応性PEGのタンパク質との反応により、または天然の化学的連結反応として公知の反応におけるチオエステル末端PEGのN末端システインとの反応により、またはヒドラジド、ヒドラジンもしくはヒドロキシルアミン末端PEGの、N末端セリンもしくはトレオニン残基の過ヨウ素酸酸化により生成したN末端アルデヒドとの反応により行うことができる。好ましくは、PEG-タンパク質結合体は1〜5つのPEG置換基を含み、実験的に最適化しうる。タンパク質を過剰のPEG化試薬に曝露すると、複数の結合が起こることもある。結合の数および/または部位を制限するために、タンパク質:PEG比、pH、ならびにインキュベーションの時間および温度を含む反応条件を調節してもよい。基質、可逆的阻害剤、または結合タンパク質存在下でPEG化を行うことにより、融合タンパク質内の活性部位の修飾を防止してもよい。より複雑なPEG化融合タンパク質混合物からカラムクロマトグラフィ分別を用いて、所望の数のPEG置換を有する融合タンパク質を得てもよい。
「不自然アミノ酸反応性PEG化」なる用語は、タンパク質またはタンパク質置換基の、修飾tRNAを用いてタンパク質の特定の部位に導入しうる反応性官能基を有する不自然アミノ酸と反応することができる置換されていてもよいPEG部分との反応を意味する。特に、酵母および大腸菌中での発現により、それぞれパラアジドフェニルアラニン(Deiters et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 14(23):5743-5 (2004))およびアジドホモアラニン(Kiick et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 99(1):19-24(2002))をタンパク質中に特異的に組み込んでもよい。これらのアジド修飾残基はアルキン誘導体化PEG試薬と選択的に反応して、部位特異的PEG化を可能にしうる。
「グリカン反応性PEG化」なる用語は、タンパク質またはタンパク質置換基の、グリコシル化タンパク質と反応することができる置換されていてもよいPEG部分との反応を意味し、N末端セリンまたはトレオニンを含むタンパク質はPEG化に続いて選択的酸化を行ってもよい。炭水化物側鎖を酵素的に、または過ヨウ素酸ナトリウムを用いて化学的に酸化して、反応性アルデヒド基を生成してもよい。N末端セリンまたはトレオニンも同様に過ヨウ素酸酸化を受けてグリオキシリル誘導体を生成しうる。アルデヒドおよびグリオキシリル基はいずれもPEG-ヒドラジンまたはPEG-アミンと選択的に反応することができる。
「酵素触媒PEG化」なる用語は、タンパク質またはタンパク質置換基の、1つまたは複数の酵素触媒反応を通じての置換されていてもよいPEG部分との反応を意味する。一つのそのようなアプローチは、遊離アミン基と、タンパク質またはペプチドに結合したグルタミンのガンマ-カルボキサミド基との間の共有結合生成を触媒するタンパク質ファミリーである、トランスグルタミナーゼの使用である。このタンパク質ファミリーの例には、ヒトおよび動物由来のトロンビン、第XIII因子、および組織トランスグルタミナーゼを含む、多くの異なる起源のトランスグルタミナーゼが含まれる。好ましい態様は、LLQGのペプチド配列内に埋め込まれたグルタミン残基を含むタンパク質基質と、一級アミノ基を含むPEG化試薬との間の結合反応を触媒するための、微生物トランスグルタミナーゼの使用を含む(Sato Adv. Drug Deliv. Rev. 54(4):487-504 (2002))。もう一つの例は、同じ結合を誘導するためのソルターゼの使用である。したがって、ソルターゼAおよびソルターゼBのためにそれぞれLPXTGまたはNPQTNと、N末端のジペプチドGGもしくはGK、または一級アミン、あるいはリンカーに連結したジペプチドGGまたはGKを含むポリペプチドなどの第二の部分が付与された置換PEG部分を提供し、次いでこのソルターゼAおよびソルターゼBを提供して、PEG部分の第二の部分への連結を行う。または、このLPXTGまたはNPQTNを修飾するポリペプチドのC末端に提供し、GGもしくはGKまたは一級アミンで置換されたPEG部分を提供して、ソルターゼ反応を行うことができる。
「グリコPEG化」なる用語は、原核生物宿主において発現されるタンパク質の特定のセリンおよびトレオニン残基での酵素によるGalNAcグリコシル化を通じての、タンパク質の置換されていてもよいPEG部分との反応を意味し、続いてシアル酸結合PEGの導入されたGalNAcへの酵素による転移を行う(Defrees et al. Glycobiology. 16(9):833-843 (2006))。
「インテイン媒介PEG化」なる用語は、PEG化するタンパク質のC末端に結合していてもよいインテインドメインを通じての、タンパク質の置換されていてもよいPEG部分との反応を意味し、続いてシステイン末端PEGで処理してPEG化タンパク質を得る。そのようなインテイン媒介タンパク質結合反応は、チオフェノールまたはトリカルボキシルエチルホスフィンの添加によって促進される(Wood, et al., Bioconjug. Chem. 15(2):366-372 (2004))。
「可逆的PEG化」なる用語は、切断または除去されてPEG部分を遊離しうるリンカーを通じての、タンパク質またはタンパク質置換基の置換されていてもよいPEG部分との反応を意味する。可逆的PEG化の好ましい形は、細胞表面または細胞内区画に存在する様々な活性に感受性であり、内部移行した、または細胞表面に結合したプロトキシンまたはプロトキシン活性化因子前駆体または活性化因子前駆体活性化因子がPEG置換による阻害または妨害を受けずにそれらの所望の作用を行わせる一方で、有用な血漿半減期の延長および/または免疫原性の低減を可能にする、リンカーの使用を含む。可逆的PEG化リンカーの例には、カテプシン、フリン/ケキシンプロテアーゼ、ならびにノイラミニダーゼ、ヌクレアーゼおよびグリコールヒドロラーゼなどのリソソームヒドロラーゼの作用に感受性のリンカーが含まれる。
本明細書において用いられる「投与」および「同時投与」なる用語は、治療を必要としている生物への1つまたは複数のタンパク質の投与を意味する。1つまたは複数のタンパク質は、例えば、融合タンパク質でありえ、治療を必要としている生物に同時および/または逐次投与することができる。最適化された選択的細胞毒性または細胞***停止効果を達成するために、適用の順序、間隔、および相対量は変動しうる。1つの剤を大過剰に用いることが好ましいこともあれば、2つの剤をほぼ同等の量で用いることが好ましいこともある。1つの剤を第二の剤を追加する時点のかなり前に適用してもよく、またはそれらを短い間隔で、もしくは同時に適用してもよい。加えて、投与および同時投与には、複数の部位からの注射または送達、例えば、2つの異なる解剖学的位置への注射、またはエアロゾルおよび静脈内注射、もしくは静脈内および筋肉内注射などの複数の様式による送達が含まれうる。
「選択的死滅」なる用語は、本明細書において、1つの特定の集団の細胞を別の集団よりも、例えば、99:1以上、95:5以上、90:10以上、85:15以上、80:20以上、75:25以上、70:30以上、65:35以上、または60:40以上の差で多く死滅させる、破壊する、または阻害することを意味するために用いる。
「標的細胞の破壊または阻害」なる用語は、本明細書において、特定の細胞型(例えば、所望の細胞表面標的を発現している細胞)の細胞***の速度を低下させる(細胞***停止)、または細胞死を引き起こす(細胞毒性)ことを意味するために用いる。細胞***停止または細胞毒性は、例えば、細胞の分化の誘導、細胞のアポトーシス、細胞の壊死による死滅、または細胞***の過程の障害によって達成しうる。
「グリコシル化」なる用語は、タンパク質の炭水化物による共有結合修飾を意味する。グリコシル化は、N-グリコシル化またはO-グリコシル化を通じて達成することができる。タンパク質を哺乳動物細胞株またはヒトに対して無害のグリコシル化パターンを作る細胞株において産生させる場合、コンセンサスN-連結グリコシル化部位の導入が好ましいこともある。
ヒト「グランザイムB」(GrB)は、アポトーシスに関与することが公知のセリンプロテアーゼのグランザイムファミリーのメンバーである。具体的には、GrBは限られた数の自然の基質、例えば、プロカスパーゼ-3およびBidだけを切断することが明らかにされている。GrBは、効率的な触媒のために基質における長いペプチド配列、すなわち、IEPDのコンセンサス認識配列との相互作用を必要とするため、高い基質配列特異性を有する酵素であることが判明している。GrBは一本鎖および単一ドメインのセリンプロテアーゼであり、2つのアミノ酸プロペプチドのジペプチジルペプチダーゼI(DPPI)での除去により活性化される、プロ型で合成する。本発明において、GrBなる用語は、例えば、成熟型、すなわちプロペプチドを含まない型を意味する。
ヒト「グランザイムM」(GrM)は、ナチュラルキラー細胞の顆粒中に特異的に見いだされ、標的細胞の死の誘導に関係するとされる、セリンプロテアーゼのグランザイムファミリーの別のメンバーである。GrMは、効率的な触媒のためにペプチド基質における少なくとも4つのアミノ酸、すなわち、KVPLの好ましい認識配列との相互作用を必要とするため、高い基質配列特異性を有する酵素であることが判明している。
「ポティウイルスプロテアーゼ」なる用語は、植物ウイルスファミリーのポティウイルス科(Potyviridae)のメンバーによってコードされ、高い切断特異性を示す、任意の様々なプロテアーゼを意味する。「ポティウイルスプロテアーゼ」は、自然のプロテアーゼならびに遺伝子突然変異または化学的修飾によって生成される改変変異体を含む。「タバコエッチウイルスプロテアーゼ」または「TEVプロテアーゼ」なる用語は、厳密な配列特異性を示す、27kDaのシステインプロテアーゼの自然または改変変異体を意味する。これは、組換えタンパク質の親和性タグを除去するために、バイオテクノロジーにおいて広く用いられている。TEVプロテアーゼは7アミノ酸認識配列EXXYXQ↓S/Gを認識し、ここでXは任意の残基である。
「ピコルナウイルスプロテアーゼ」なる用語は、動物ウイルスファミリーのピコルナウイルス科(Picornaviridae)のメンバーによってコードされ、高い切断特異性を示す、任意の様々なプロテアーゼを意味する。「ピコルナウイルスプロテアーゼ」は、自然のプロテアーゼならびに遺伝子突然変異または化学的もしくは酵素的修飾によって生成される改変変異体を含む。「ヒトライノウイルス3Cコンセンサスプロテアーゼ」なる用語は、特定のライノウイルスプロテアーゼの複数の例由来のコンセンサス配列の選択によって作成される、合成ピコルナウイルスプロテアーゼを意味する。
「レトロウイルスプロテアーゼ」なる用語は、ウイルスファミリーのレトロウイルス科(Retroviridae)のメンバーによってコードされる任意の様々なプロテアーゼを意味する。「HIVプロテアーゼ」は、自然のプロテアーゼならびに遺伝子突然変異または化学的もしくは酵素的修飾によって生成される改変変異体を含む。
「コロナウイルスプロテアーゼ」なる用語は、動物ウイルスファミリーのコロナウイルス科(Coronaviridae)のメンバーによってコードされ、高い切断特異性を示す、任意の様々なプロテアーゼを意味する。「コロナウイルスプロテアーゼ」は、自然のプロテアーゼならびに遺伝子突然変異または化学的もしくは酵素的修飾によって生成される改変変異体を含む。「SARSプロテアーゼ」なる用語は、ヒト症候群SARSを誘導するコロナウイルス科の任意のメンバーによってコードされるコロナウイルスプロテアーゼを意味する。
「実質的に同一」とは、例えば、以下に記載する方法を用いて最適に整列させた場合、第二の核酸またはアミノ酸配列、例えば、SAA配列と、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する核酸またはアミノ酸配列を意味する。「実質的同一性」は、全長配列、エピトープまたは免疫原性ペプチド、機能性ドメイン、コーディングおよび/または調節配列、エキソン、イントロン、プロモーター、ならびにゲノム配列などの、様々な型および長さの配列を意味するために用いてもよい。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の同一性パーセントは、当分野における技術の範囲内の様々な様式、例えば、Smith Waterman Alignment (Smith, T. F. and M. S. Waterman (1981) J Mol Biol 147:195-7);GeneMatcher Plus(商標), Schwarz and Dayhof (1979) Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhof, M.O., Ed pp 353-358に組み込まれた“BestFit”(Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics, 482-489 (1981));BLASTプログラム (Basic Local Alignment Search Tool; (Altschul, S. F., W. Gish, et al. (1990) J Mol Biol 215: 403-10)、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign (DNASTAR) ソフトウェアなどの、公に利用可能なコンピューターソフトウェアを用いて決定する。加えて、当業者であれば、比較している配列の全長を通して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適当なパラメーターを決めることができる。一般に、タンパク質または核酸について、比較の長さは全長まで、および全長を含む、任意の長さでありうる(例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%)。保存的置換は、典型的には、以下の群内の置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
「癌細胞」なる用語は、組織における不適当な蓄積によって特徴づけられる細胞集団の成分を意味する。この不適当な蓄積は、細胞集団の1つまたは複数の細胞で起こる遺伝的または後成的変動の結果でありうる。この遺伝的または後成的変動は、細胞集団の細胞が周囲の正常組織よりも速く成長する、ゆっくり死滅する、またはゆっくり分化する原因となる。本明細書において用いられる「癌細胞」なる用語は、悪性細胞の成長または生存を支持する細胞も含む。そのような支持細胞には、線維芽細胞、血管もしくはリンパ管内皮細胞、炎症細胞または悪性細胞の成長もしくは生存に有利な同時に拡大する非腫瘍性細胞が含まれうる。「癌細胞」なる用語は、造血、上皮、内皮、または固形組織起源の癌を含むことになる。「癌細胞」なる用語は、癌幹細胞も含むことになる。本発明の融合タンパク質が標的とする癌細胞には表1に示すものが含まれる。
図1Aは、BLASTによるPEA(SEQ ID NO: 8)およびVCE(SEQ ID NO: 9)の配列アラインメントを示す図である。PEA配列は成熟N末端から番号付けし、VCEは推定タンパク質前駆体のN末端から番号付けしている。図1Bは、PEAとVCEとの間の全配列同一性および類似性ならびにPEAおよびVCEの個々のドメインの配列同一性および類似性の解析を示す図である。図1Cは、PEAおよびDTのフリン切断部位と比べての、VCEの推定フリン切断部位の配列を示す図である。効率的なインビトロフリン切断にとって重要であることが公知であるか、またはそのような仮説が立てられている残基を灰色で強調している。 図2Aは、VCEの分離ADPRTドメインが293T細胞溶解物中の100kDのタンパク質を修飾しうることを示す免疫ブロットである。図2B〜2Dは、ビオチン-ADP-リボシル化タンパク質の親和性捕獲と、続く抗eEF2抗体(図2B)または抗GrB2抗体(図2C)での免疫ブロットの結果を示す図である。図2Bの最初の2レーンは溶解物中のeEF2の存在を示し、次の2レーンはビオチン-NAD存在下でのVCEによる溶解物の反応後に、eEF2がアビジンビーズにより選択的に回収されることを示している。図2Cおよび2Dは、無関係のタンパク質(Grb2)に対する抗体は溶解物中のGrb2を検出する(最初の2レーン)が、アビジンビーズから遊離された生成物中にGrb2は検出されない(最後の2レーン)ことを示している。これは、一般に溶解物タンパク質がアビジンビーズに結合する可能性を除外するのに役立つ。 図3Aは、293T、CHO-K1およびRe1.22CがeEF2特異的抗体により検出されるのとほぼ同等の量のeEF2を発現することを示す免疫ブロットである。図3Bは、Re1.22CからのeEF2はVCEのADPリボシル化活性に対して抵抗性であるが、293TおよびCHO-K1からのeEF2はVCE-ADPRTによって修飾されうることを示す免疫ブロットである。 図4Aは、様々なN-GFD-VCE融合タンパク質のPEAと比べてのADRPT活性を示す免疫ブロットである。図4Bは、CD19+ジャーカット細胞を用いての細胞毒性検定の結果を示すグラフである。 図5Aは、2つのVCEに基づく免疫毒素、CCPE-VCEおよびCCPE2-VCEの概略図である。これらの免疫毒素において、野生型VCEの細胞標的化ドメインを、細胞表面タンパク質のクラウジン3およびクラウジン4を標的とすることが明らかにされているウェルシュ菌(Clostridium perfringens)腸毒素のC末端ドメイン(CCPE)の1つまたは2つのコピーで置き換えた。図5Bおよび5Cは、HT29、MCF7、およびMB231を含むクラウジン3/4陽性細胞株、ならびにクラウジン3/4陰性対照細胞株Nalm6に対する、CCPE-VCEの細胞毒性検定の結果を示すグラフである。非線形回帰分析を、GraphPad Prism 4プログラムを用いて実施した。EC50を計算した曲線に基づいて算出した。CCPE2-VCEはCCPE-VCEよりもクラウジン3/4陽性細胞株に対して5〜10倍高い毒性を示したが、いずれの免疫毒素も陰性細胞株に対してはほぼ同等の毒性を示した。 図6Aは、DT-抗CD5、抗CD5-PEAおよび抗CD5-VCEにおいて用いるグランザイムB切断部位の配列アラインメントを示す図である。矢印は切断部位を示している。図6Bは、精製したDT-抗CD5、抗CD5-PEAおよび抗CD5-VCEを示す電気泳動ゲルである。図6Cは、異なる条件下での精製したDT-抗CD5、抗CD5-PEAおよび抗CD5-VCEのマウスグランザイムB切断を示す電気泳動ゲルである。 図6に示すDT、PEA、VCEに基づくコンビナトリアル標的化剤の細胞毒性検定の結果を示すグラフである。細胞毒性検定は1.0nM GrB-抗CD19非存在下または存在下で実施した。非線形回帰分析を、GraphPad Prism 4プログラムを用いて実施した。 CD5+Raji細胞を用いてのVCEに基づくコンビナトリアル標的化剤の細胞毒性検定の結果を示すグラフである。検定は1.0nM GrB-抗CD19および様々な濃度の抗CD5-VCEで実施した。比較のために、発明者らは、内因性フリン切断配列を有する抗CD5-VCE(抗CD5-VCEwt)および予測活性部位残基のグルタミン酸613がアラニンで置き換えられた突然変異抗CD5-VCE(抗CD5-VCEE613A)の細胞毒性も測定した。非線形回帰分析を前述の通りに実施した。 図9Aは、B-CLL患者からの抗CD5および抗CD19抗体で精製したPBMNCのFACS分析を示すグラフである。図9Bは、1.0nM GrB-抗CD19単独ではPBMNCまたはCD5+Rajiのいずれに対しても毒性ではなかったことを示すグラフである。図9Cは、抗CD5-VCEがCD5+Raji細胞およびPBMNCの画分をGrB-抗CD19存在下でのみ選択的に死滅させることを示すグラフである。 組換えVCEに基づく毒素で誘導した血管漏出症候群の可能性を低減するための突然変異を示す図である。 組換えVCEに基づく毒素の免疫原性を低減するための突然変異を示す図である。 CD19+ジャーカット細胞を用いてのN-GFD-VCE、N-GFD-VCEE613AおよびN-GFD-VE-PEA融合タンパク質の細胞毒性検定の結果を示すグラフである。 図13Aは、2羽のウサギ(9375および9376)から産生させた抗VCEポリクローナル抗体のELISA結果を示すグラフである。両方の動物からの抗VCEポリクローナル抗体は、VCE抗原のADPRTドメインからなる融合タンパク質(MBP-VCE)に特異的に反応するが、対照タンパク質(MBP、マルトース結合タンパク質)には反応しない。図13Bは、抗VCEポリクローナル抗体を変性VCEを検出するためのウェスタンブロットに用いうることを示すクーマシー染色および免疫ブロットである。左図は特異抗原(レーン1、抗CD19-VCE)、細胞溶解物(レーン2、293T細胞溶解物)および陰性対照タンパク質(抗CD5-ジフテリア毒素)を含む融合タンパク質のクーマシー染色したSDS-PAGEを示す。左図は、ウサギ9375からの抗VCEポリクローナル抗体をプローブとし、HRP結合抗ウサギFc抗体で可視化した、同じタンパク質群のウェスタンブロット結果を示す。図13Cは、いくつかの抗VCEモノクローナル抗体の、表面プラズマ共鳴による親和性測定の結果を示すグラフである。3つの代表的クローンの親和性(KD)を示した。
発明の詳細な説明
コレラ菌由来の組換え外毒素は、様々なヒト疾患、特に望まれない細胞が大量または過剰にあることによって特徴づけられる疾患の治療のために有用である。ビブリオ外毒素は、当技術分野において公知の類似の毒素に比べて、大腸菌で高レベルに発現される場合、強い折りたたみ、および増強された溶解性を含む、すぐれた生物物理学的性質を有する。外因性細胞標的化部分を含むビブリオ外毒素融合タンパク質は、関心対象の細胞の選択した表面標的に結合し、中毒を引き起こす。加えて、天然の活性化配列が修飾可能な活性化部分で置き換えられている、そのような融合タンパク質は、中毒のために標的とすることになる細胞に特異的とすることができる、または自然に特異的である、第二の活性化因子前駆体または活性化因子によって作用されうる。ビブリオ外毒素活性化配列が外因性プロテアーゼのもので置き換えられる場合、得られる改変毒素はシュードモナス外毒素Aまたはジフテリア毒素に基づく匹敵する毒素よりも、部位特異的タンパク質溶解によって容易に活性化される。ビブリオ外毒素タンパク質は、シュードモナスまたはジフテリア毒素のいずれよりも、コンビナトリアル毒素として強力である。
本発明は、組換えコレラ菌外毒素(VCE)を提供し、これはシュードモナス外毒素A(PEA)と約32%の配列同一性を有し、同様のドメイン構成、フリン活性化、EF-2に対するADPリボシルトランスフェラーゼ(ADPRT)活性、および関連の細胞毒性を示す。本発明は、天然のADPリボシルトランスフェラーゼ活性、1つまたは複数の特異的細胞表面タンパク質に結合する修飾細胞結合ドメイン、ならびに選択したタンパク質分解活性によって切断可能な修飾トランスロケーションドメインを含む、突然変異VCE融合タンパク質も提供する。
特に、本発明は、フリンではなく、代わりに選択した別のプロテアーゼによって活性化されるように変更されたタンパク質分解活性を有する、修飾VCE融合タンパク質を提供する。1つの好ましい態様は、標的細胞中に存在する、またはアップレギュレートされる内因性プロテアーゼによって活性化可能な修飾VCE融合タンパク質を含む。本発明のもう1つの好ましい態様は、標的細胞上の細胞表面マーカーに結合されている外因性プロテアーゼ融合タンパク質によって活性化される修飾VCE融合タンパク質を含む。
本発明の1つの局面は、VCEの細胞表面標的化部分を、標的細胞の特定の細胞表面標的を標的とするために、異なる特異性の別の結合成分で置き換えうることである。本発明のもう1つの局面は、VCEのトランスロケーションドメインを、異なるプロテアーゼの活性を含む、フリン以外の酵素活性により活性化されるように修飾しうることである。
本発明のさらなる局面は、VCEの天然のまたは修飾トランスロケーションドメインであり、PEAとの配列同一性は31%にすぎない(35/112)。VCEのトランスロケーションドメインを用いて、他の細胞死滅成分のKDEL(SEQ ID NO: 10)などのER保持配列と組み合わせての標的細胞へのトランスロケーションを促進してもよい。そのような細胞毒性物質には、毒性小分子、RNAi物質などのオリゴヌクレオチド、ならびにPEAのADPリボシルトランスフェラーゼドメインおよびリシンAのN-グリコシダーゼドメインなどのタンパク質毒素の触媒ドメインが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
VCEのADPRTドメインは本発明のもう1つの態様である。このドメインの199残基のうちのわずか86(43%)がPEAの配列と同一である。この触媒ドメインを、PEAなどの異なる起源のトランスロケーションドメイン、ならびに標的細胞の特定の細胞表面マーカーに結合する異なる結合成分との組み合わせで用いてもよい。
マウス、ラット、ヤギ、または他の起源のVCEまたは修飾VCEに対して産生させた抗体も本発明の態様である。他のVCEに特異的な生物または化学プローブも本発明のさらなる態様である。
I. 組換えVCE
VCEはコレラ菌TP株のtoxA遺伝子の組み換え産物である。VCEはX線結晶回折により分析され、得られた構造データよりADPリボーストランスフェラーゼのジフタミド特異的クラスのメンバーであることが確認された(Jorgensen et al. J. Biol. Chem. 283 (16):10671-10678 (2008))。VCEはN末端細胞標的化部分(残基Met1〜Lys297および残基Ala419〜Asn457)と、続いてトランスロケーションドメイン(Gly298からAla418)およびER保持シグナル662KDEL665(SEQ ID NO: 10)を含むC末端ADPリボシルトランスフェラーゼドメイン(Arg458からLys666)を有する。推定フリン切断部位(321RKPK↓DL326)(SEQ ID NO: 11)は推定トランスロケーションドメインのN末端近辺に位置する。
これに比べて、シュードモナス外毒素A(PEA)の天然の細胞結合ドメインは、ドメインIa(残基Ala1からGlu252)およびドメインIb(残基Ala365〜Gly404)からなる(米国特許第4892827号)。PEAからのドメインIaの欠失は、非特異的細胞毒性を低減することが明らかにされており(米国特許第4892827号)、これを一本鎖抗体などの別の細胞結合部分で置き換えることで、適当な抗原または受容体を有する細胞を効果的かつ選択的に死滅させうる修飾PEA融合タンパク質が得られた(米国特許第5863745号)。
フリンは修飾PEAを276RQPR↓GW279(SEQ ID NO: 12)で切断してトランスロケーションを活性化する役割を担う細胞内プロテアーゼとして同定されており、このフリン仲介性切断は酸性条件下で優先的に起こる(Chiron et al. J. Biol. Chem. 272(50):31701-31711 (1997))。天然のPEAからのフリン切断部位を含むトランスロケーションドメインの残基1〜28、すなわち残基Gly253からGly280の欠失は、その毒性を実質的に増大させた(米国特許第5602095号)。フリン切断部位を異なるプロテアーゼによって認識される配列、すなわち、前立腺特異的抗原(PSA)に変更すると、PSAを発現しないDU145細胞に比べてPSA発現LNCap細胞におけるタンパク質合成の優先的阻害が可能になることも開示されている(米国特許第6426075号)。同様のアプローチがジフテリア毒素(DT)に適用され、ここでフリン切断部位をウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子(uPA)切断部位で置き換えて、uPA受容体を過剰発現する急性骨髄性白血病(AML)細胞の選択的死滅を引き起こした(Abi-Habib et al. Blood 104 (7):2143-2148 (2004))。
ジフテリア毒素(DT)およびシュードモナス外毒素A(PEA)の触媒部分と同様、VCE触媒部分はeEF2上のジフタミドを特異的にADPリボシル化する。ジフタミドのADPリボシル化はeEF2の機能を障害し、タンパク質合成の阻害につながって、深刻な生理学的変化および最終的には細胞死を引き起こす。いくつかの点において、VCEはそれがDTに類似するよりも密接にPEAに類似する。第一に、VCEのドメイン構成はPEAと類似していると思われ、ここで細胞標的化ドメインの後にトランスロケーションドメインと、次いで酵素ドメインが続く。VCEおよびPEAはいずれもC末端にマスクされたER保持シグナルを有し、VCEおよびPEAが小胞体を介して標的細胞の細胞質ゾルに入ることが示唆される。VCEおよびPEAはいずれも低いリジン含有率を有し、小胞体関連分解(ERAD)経路を通じての毒素の細胞質への導入メカニズムに一致すると考えられる。本発明のデータは、PEAおよびVCEを活性化するタンパク質分解事象は酸性エンドソーム区画内で起こるが、DTのフリン切断はより中性の環境で起こりうるとの見解を支持するものである。
VCEのC末端は、特徴的な小胞体保持シグナル(KDEL)(SEQ ID NO: 10)と、続いてVCEのC末端先端にリジン残基を有し、これはカルボキシペプチダーゼBなどの遍在性のカルボキシルペプチダーゼ活性によって除去される。VCEは標的細胞の細胞質ゾルに、PEAと同様の様式で侵入し、VCEのC末端配列は完全な細胞毒性のために必須である。したがって、好ましいVCE分子の最大の細胞毒性のために、分子を標的細胞の細胞質ゾルにトランスロケーションさせる適当なカルボキシル末端配列が好ましい。そのような好ましいアミノ酸配列には、KDELK、RDELK、KDELRおよびRDELR(SEQ ID NO: 13〜16)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
本発明は、組換えDNA作成物およびそれらがコードする修飾VCE融合タンパク質の発現を含む組成物および方法を特徴とする。例えば、異なる細胞結合特異性および変更されたプロテアーゼ認識部位を含む修飾VCE融合物を、VCEのアミノ酸残基1〜666をコードする核酸作成物から産生することができ、ここで天然のフリン切断部位321RKPK↓DL326(SEQ ID NO: 11)はGrB、GrM、およびTEVプロテアーゼなどの外因性プロテアーゼの認識配列で置き換えられており、細胞結合ドメイン(残基1〜295)は特定の細胞表面標的に結合しうるポリペプチドで置き換えられている。VCEをコードする核酸配列に突然変異を導入する方法、または突然変異VCEをコードする核酸配列を合成する方法は、当技術分野において周知である(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 2005))。核酸作成物をPCRを用いて生成することもできる。例えば、VCE融合タンパク質をコードする作成物を、突然変異誘発性PCRで生成することができ、ここで別のプロテアーゼ認識部位をコードするプライマーを用いて、フリン切断部位(残基321〜326:RKPK↓DL)(SEQ ID NO: 11)をコードするDNA配列を置換することができる。突然変異を含む作成物は、オリゴヌクレオチドの配列構築を通じて生成することもできる。いずれのアプローチも、RKPK↓DL(SEQ ID NO: 11)をコードするものの代わりにグランザイムB切断部位IEPD↓DL(SEQ ID NO: 17)をコードする核酸配列を導入するために用いることができる。IEPD(SEQ ID NO: 18)に加えて、GrBはIAPDおよびIETD(SEQ ID NO: 19および20)を含む他の類似のペプチド配列を、高い効率で認識し、切断することが明らかにされている。GrBによって特異的に切断可能なこれらおよび他の配列を組み込んでもよい。特異性が天然のものよりも高い、または天然のプロテアーゼとは異なる特異性を示す、遺伝的に修飾したプロテアーゼは、プロテアーゼの正常な作用に起因しうる望ましくない副作用を回避するために有用でありうる。
細胞標的化ポリペプチドをコードするDNA配列を、PCRを用いて同様にクローニングすることができ、VCE融合タンパク質をコードする全長作成物をPCR産物およびVCE作成物の制限消化と、続く連結反応により構築することができる。修飾VCEをコードする核酸配列を翻訳開始部位の近くに配置し、細胞標的化部分をコードするDNA配列を翻訳終止部位の近くに配置するよう、作成物を設計してもよい。そのような配列整理は、VCEの触媒ドメインの細胞質ゾルへの最適なトランスロケーション効率を与えるために、天然のVCEを用いる。
VCE融合タンパク質は細菌、昆虫、酵母、または哺乳動物細胞中で、当業者には公知の確立された方法を用いて発現させてもよく、その多くは、例えば、Current Protocols in Protein Science (Coligan et al., eds., 2006)に記載されている。これらの各宿主中での発現を意図したDNA作成物を、各宿主にとって好ましいコドンに対応するように修飾してもよく(Gustafsson et al., Trends Biotechnol. 22:346 (2004))、これは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 2005)に記載の確立された方法、例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて達成しうる。特定のVCE融合物を産生するための適当な宿主系を素早く同定するために、ゲートウェイクローニング法(Invitrogen)を適用して、インビトロ部位特異的組換えにより異なる発現ベクターの中でクローニングする遺伝子を混合してもよい。
コドンの変更に加えて、VCE融合タンパク質の作成物に対する他の配列修飾には、その細胞毒性に著しい影響をおよぼさない、VCE配列の天然の変種、および標的細胞に選択的に結合する能力を消滅させない、細胞標的化ドメインの変異体が含まれうる。
さらに、細胞標的化ドメインの配列を、改善された特徴、例えば、低い免疫原性、高い結合親和性および/もしくは特異性、すぐれた薬物動態特性、またはVCE融合タンパク質の産生改善を伴う変異体を選択するために修飾することもできる。細胞標的化ドメインおよび/またはVCE融合物のライブラリを、部位特異的突然変異誘発、エラープローンPCR、または変性オリゴヌクレオチドプライマーを用いてのPCRを用いて生成することができる。コンセンサスグリコシル化部位を除去もしくは追加するため、望ましいタンパク質機能を維持するため、または免疫原性を低減するためのグリコシル化部位を導入するために、配列修飾が必要となることもある。
VCE融合タンパク質の高収率発現のために、コードするポリヌクレオチドを多くの市販の発現ベクターの1つにサブクローニングしてもよく、発現ベクターは典型的には選択可能なマーカー、制御可能な転写プロモーター、および転写/翻訳終結シグナルを含む。加えて、発現したタンパク質の局在化を指向するためにシグナルペプチドがよく用いられるが、融合タンパク質の検出、単離、および精製を促進するために、6 Hisタグ、FLAGタグ、およびmycタグなどの他のペプチド配列を導入してもよい。VCE融合物内での各ドメインの正常な折りたたみを助けるために、柔軟なリンカーを発現作成物の修飾VCEドメインと細胞標的化部分との間に挿入してもよい。
VCE融合タンパク質を細菌発現系の大腸菌において発現させてもよい。この系において、翻訳開始を増強するためにリボソーム結合部位を用いる。可溶性タンパク質融合物を得る可能性を高めるために、その発現作成物は、タンパク質の折りたたみを助けるため、VCE融合物の5'または3'いずれかに、MBP、GST、またはチオレドキシンなどの担体タンパク質をコードするDNAを含んでいてもよい。担体タンパク質は発現後にタンパク質分解により除去してもよい。タンパク質分解による切断部位は、タンパク質またはペプチドタグを除去し、活性融合タンパク質を生成するために日常的に組み込まれる。VCE部分を含む融合タンパク質の正常な大腸菌発現に関するほとんどの報告は封入体の形であり、これらは再度折りたたまれて可溶性タンパク質を提供しうる。
VCE融合タンパク質はメチロトローフの酵母発現系、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)において発現させてもよい。この目的のための発現ベクターは、ピチアアルコールオキシダーゼ(AOX1)遺伝子由来プロモーター、天然のピチアAOX1遺伝子由来転写終止配列、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼHIS4の選択可能なマーカー野生型遺伝子、および染色体AOX1遺伝子の3'側の遺伝子置換または遺伝子挿入によるベクター配列の組み込みに必要な、転写終止配列の3'側にある天然の遺伝子の領域由来3'AOX1配列を含む、いくつかの共通の特徴を含んでいてもよい。P.パストリスは、広範囲の異種タンパク質を細胞内または分泌タンパク質のいずれかとして発現させるためにうまく用いられてきたが、ピチアは非常に低レベルの天然のタンパク質を分泌するため、分泌の方がより一般的に用いられる。分泌シグナルペプチドMAT因子プレプロペプチド(MF-α1)は、発現されたタンパク質を分泌経路に指向させるためによく用いられる。
ピチアにおけるN連結グリコシル化などの翻訳後修飾は、側鎖ごとに約8〜14のマンノース残基を加えることによって起こる。発現作成物内の任意のコンセンサスNグリコシル化部位NXS(T)を突然変異させてグリコシル化を避けることができる。
触媒ドメインが細胞質ゾルにトランスロケーションする、または細胞質ゾルに局在する場合、VCEは真核細胞に対して非常に毒性である。分泌経路による毒性DT融合物の発現がうまくいっていたため、ピチアはVCE発現を支持することができる(Woo et al., Protein Expr. Purif. 25:270 (2002))。ピチアにおいて発現させた異種タンパク質の分泌はKex2によるシグナルペプチドMF-α1の切断に関与するため、フリン切断部位が置き換えられたフリン様タンパク質であるDTまたはVCE融合タンパク質は、対応する野生型融合タンパク質よりもピチアに対する毒性が低いはずである。または、VCE融合タンパク質は、染色体のEF-2遺伝子座がVCEの触媒ドメインによるGDPリボシル化に抵抗するよう変異している、ピチアの突然変異株において発現させることができる(Liu et al., Protein Expr. Purif. 30:262 (2003))。
VCE融合タンパク質は哺乳動物細胞でも発現させうる。ADPリボシル化に対する抵抗性を付与する突然変異細胞株が記載されており(Kohno and Uchida, J. Biol. Chem. 262:12298 (1987);Liu et al., Protein Expr. Purif. 19:304 (2000);Shulga-Morskoy and Rich, Protein Eng. Des. Sel. 18:25 (2005))、可溶性VCE融合タンパク質を発現させるために用いることができる。例えば、毒素耐性細胞株CHO-K1 RE1.22cが選択され、DT-ScFv融合タンパク質を発現させるために用いられており(Liu et al., Protein Expr. Purif. 19:304 (2000))、突然変異293T細胞株が選択され、DT-IL7融合タンパク質を発現させるために用いられている(Shulga-Morskoy and Rich, Protein Eng. Des. Sel. 18:25 (2005))。EF-2遺伝子のコドン717の第一の位置におけるGからAへのトランジションは、グリシンからアルギニンへの置換を引き起こし、DTによるADPリボシル化の標的アミノ酸である、EF-2のヒスチジン715におけるジフタミドの翻訳後修飾を防止することが明らかにされている。突然変異遺伝子によって産生されるEF-2はタンパク質合成において完全に機能性である(Foley et al., Somat. Cell Mol. Genet. 18:227 (1992))。この情報およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 2005)に記載のものなどの確立された方法に基づき、異なる哺乳動物細胞にEF-2遺伝子のG717A突然変異体を含むベクターを形質移入し、VCE耐性の細胞を選択してもよい。
哺乳動物細胞における安定な発現は、融合タンパク質をコードする外来DNAおよび転写シグナルを宿主細胞の染色体DNAに導入することも必要とする。様々なベクターが市販されており、これらは典型的に大腸菌(Apr)およびCHO細胞(DHFR)における選択のためのマーカー、大腸菌のための複製開始点、SV40由来ポリアデニル化配列、SV40などの真核生物複製開始点、ならびにプロモーターおよびエンハンサー配列を含む。Current Protocols in Protein Science (Coligan et al., eds., 2006)に記載の方法に基づき、VCE耐性細胞株で開始して、VCE融合タンパク質をコードするDNAを含むベクターを用いて宿主細胞を形質移入してもよく、これらを融合タンパク質を多く産生するものについてスクリーニングしてもよい。
VCEは細菌由来のものであるため、天然のVCEの細胞毒性を保持するために、その配列内の可能性のあるN-グリコシル化部位を突然変異させることができる。さらに、その望ましい結合特性を維持しつつ、細胞標的化ドメイン内のグリコシル化を避けることもできる。しかし、そのようなグリコシル化がVCEおよび細胞標的化部位の機能を妨害しないように、コンセンサスN-グリコシル化部位をリンカーまたは末端配列に導入してもよい。
PEAの毒性を改善する様々な修飾が当技術分野において記載されている。これらの修飾はVCE免疫毒素の毒性を改善するためにも有用である。
Mere et al. J. Biol. Chem. 280: 21194-21201 (2005)は、PEAの内部移行中に低いエンドソームpHに曝露すると、PEAが細胞質ゾルへとトランスロケーションし、そこでタンパク質合成を不活化するのに必須のプロセスである、そのトランスロケーションドメインの膜挿入を誘発することを教示している。膜挿入は鍵となるトリプトファン残基(Trp 305)の露出によって促進される。中性pHでは、この残基はトランスロケーションドメインの最も小さいα-ヘリックス(ヘリックスF)によって閉じられた疎水性ポケットに埋没している。酸性化後、ヘリックスのN-キャップ残基であるAspのプロトン化がその不安定化をまねき、Trp側鎖のエンドソーム膜への挿入を可能にする。ヘリックスFの最初の2つのN末端アミノ酸(Asp 358およびGlu 359)が非酸性アミノ酸で置換された変異PEAは、ヘリックスFの不安定化を示し、酸性環境なしでトリプトファン305を分子の外側に露出させ、野生型PEAの7倍高い毒性を示す結果となる。同様に、ヘリックスF全体が除去された変異PEAは野生型PEAの3倍高い毒性を示すことが判明した。配列アラインメントにより、発明者らはPEAのヘリックスFに対応するヘリックスを見いださなかったが、PEAのタンパク質分解切断と同様、VCEのフリンによる切断は弱酸性の条件下で有利であることがわかり、VCEの膜挿入中に同様の酸によって誘発される配座変化が起こっていることが示唆される。VCEの膜挿入を促進し、それにより細胞毒性を増強する突然変異が、ランダム変異誘発などの手段を通じて見いだされるかもしれない。
したがって、本発明のために好ましいVCEの型には、より効率的な膜挿入を示し、より高い毒性を示すものが含まれる。
PEAまたはVCEに基づく免疫毒素の毒性を決定する重要な因子の1つは、免疫毒素が受容体結合後に標的細胞によって内部移行されるかどうかに依存する。内部移行は免疫毒素仲介性細胞毒性における律速段階と考えられる(Li and Ramakrishnan. J. Biol. Chem. 269: 2652-2659 (1994))。He et al.は、周知の膜トランスロケーションシグナルであるArg9-ペプチドを抗CEA(癌胎児抗原)免疫毒素、PE35/CEA(Fv)/KDELに、毒素部分と結合部分との間の位置で融合した。この融合タンパク質の強い結合および内部移行が、すべての検出された細胞株で観察されたが、細胞表面上にCEA分子を持たない細胞に対して細胞毒性はほとんど検出されなかった。しかし、細胞表面上で大量のCEA分子を発現している特定の腫瘍細胞に対する融合タンパク質の結合活性に加えて細胞毒性が著しく改善され、Arg9-ペプチドがこの免疫毒素の受容体仲介性エンドサイトーシスを促進しうることが示され、これはこの免疫毒素の特異的細胞毒性の増大につながる(He et al. International Journal of Biochemistry and Cell Biology, 37: 192-205 (2005))。したがって、中毒のための小胞体へのトランスロケーションに依存するプロトキシンの1つの好ましい態様には、HIV-Tat由来のもの、アンテナペディア、または単純疱疹VP22などであるが、それらに限定されるわけではない、Arg9-ペプチドまたは関連膜トランスロケーションシグナルのそのようなプロトキシンへの機能的連結が含まれる。本発明のさらなる好ましい態様には、HIV-Tat由来のもの、アンテナペディア、または単純疱疹VP22などであるが、それらに限定されるわけではない、Arg9-ペプチドまたは関連膜トランスロケーションシグナルに機能的に連結された修飾PEAまたはVCEプロトキシンが含まれる。
リガンド結合に無関係の毒性がほとんどの標的毒素で観察されている。これらには、異常な肝機能値を引き起こす肝細胞傷害または血管内皮損傷とその結果としての血管漏出症候群(VLS)のいずれかが含まれる。肝傷害および血管傷害はいずれも正常なヒト組織による標的毒素の非特異的取り込みに関係しうる。米国特許出願公報第2006/0159708 A1号および米国特許第6,566,500号は、血管内皮または血管内皮細胞への結合を低減し、したがって血管漏出症候群(VLS)の発生率を低減する、ジフテリア毒素の修飾変異体または一般には免疫毒素に関連する方法および組成物を記載している。一例において、(X)D(Y)モティーフの2つが変異しているDTの変異体、V7AV29Aは、完全な細胞毒性を維持しているが、(X)D(Y)配列がGDL、GDS、GDV、IDL、IDS、IDV、LDL、LDS、およびLDVであるヒト血管内皮細胞(HUVEC)に対する結合活性の低下を示すことが明らかにされている。米国特許第5,705,156号は、動物に対するPEAの非特異的毒性を低減するために、ドメインIの4アミノ酸(57、246、247、249)をグルタミンまたはグリシンに変異させている、修飾PEA分子の使用を教示している。それ故、本発明の1つの態様は、正常組織に対する毒性を有利に低減する配列変化を有する修飾VCEプロトキシンを含む。
いくつかの治療的タンパク質の血漿半減期が、Collen et al., Bollod 71:216-219 (1998);Hotchkiss et al., Thromb. Haemostas. 60:255-261 (1988);Browne wt al., J. Biol. Chem. 263:1599-1602 (1988);Abuchowski et al., Cancer Biochem. Biophys. 7:175 (1984))によって記載されたものなどの様々な技術を用いて改善されている。非結合毒素と比べて血清中の半減期が延長している免疫毒素を生成するために、抗体が毒素に化学結合されており、延長した半減期は天然の抗体に起因する。国際公開公報第94/04689号は、哺乳動物血清中のタンパク質の半減期を延長させる性質を有するIgG定常部ドメインに免疫毒素が連結されている、修飾免疫毒素の使用を教示している。IgG定常部ドメインはCH2またはその断片である。同様の戦略を、血清半減期が延長しているVCE免疫毒素の変異体を作成するために適用することができる。加えて、アルブミン、ポリエチレングリコール、または関連の非免疫原性ポリマーへの機能的連結は、治療的毒素の血漿残存性を促進しうる。
免疫毒素の反復治療後、患者は免疫毒素の有効性を中和し、したがって小さくする抗体を発生しうる。所与の免疫毒素に対する高い抗体価の問題を回避するために、米国特許第6,099,842号は、同じ標的化成分を有するが、それらの細胞毒性部分は異なる免疫毒素の組み合わせの使用を教示している。一例において、ヒト抗毒素抗体を誘導する可能性を低減するために、抗Tac(Fv)-PE40およびDT(1-388)-抗Tac(Fv)免疫毒素が組み合わせて用いられる。原理的には、同様の戦略を、VCE融合物をPEAおよび/またはDTに基づく1つまたは複数の他のプロトキシンと交互にしうる、本発明に適用することができる。
II. VCEのトランスロケーションドメインおよび触媒ドメイン
詳細なX線結晶回折および生化学分析によって、PEAおよびVCEなどのADPリボシル化毒素は、細胞結合ドメイン、トランスロケーションドメイン、およびADPリボシルトランスフェラーゼドメインを含む明確なドメインからなることが明らかにされている(Wedekind et al. J. Mol. Biol. 314:823-837 (2001)、Jorgensen et al. J. Biol. Chem. 283 (16):10671-10678 (2008)、およびその中に引用文献)。これらの毒素の細胞結合ドメインを天然の毒素配列から欠失させ、抗体、サイトカイン、および小分子などの他の細胞標的化部分で置き換えうることが立証されている(Pastan et al. Annu. Rev. Med. 58:221-37 (2007) & Hilgenbrink and Low, J Pharm Sci. 94(10):2135-46 (2005))。得られる免疫毒素は、皮膚T細胞リンパ腫の治療用のジフテリア毒素-インターロイキン-2結合体(Ontak(登録商標))の開発成功によって最初に示されたとおり、腫瘍疾患の治療において臨床上の有用性を有する(Foss, Clin. Lymphoma 1(2):110-6 (2000))。
加えて、ADPRTを他のAB毒素の触媒ドメインで置換しうることが開示されている。例えば、PEAの触媒ADPリボシルトランスフェラーゼドメイン(Gly405からLys613)をリシンA鎖と組み合わせ、これにC末端ER保持シグナルKDELを加えることにより、ハイブリッド毒素を生成しうることが開示されている。このハイブリッド毒素はPEAと同様の細胞毒性を示した。(Pitcher et al. Bioconj. Chem. 6:624-629 (1995))。本発明は、他の毒素のトランスロケーションドメインの状況で、標的細胞を死滅させる適用のために用いうる触媒細胞毒性成分としてのVCEのADPリボシルトランスフェラーゼ配列を提供する。
米国特許第6086900号は、固有のADPリボシルトランスフェラーゼ活性を欠くPEAの適用が、非末端化学結合部位に結合された治療剤の、膜を通過しての細胞質内への輸送を促進するために有用であることを開示した。PEAの解毒は、553位の触媒ドメインの活性部位におけるグルタミン酸残基を欠失させることにより達成された。システイン残基が非活性化触媒ドメインに挿入され、輸送する分子であるペプチド核酸(PNA)の結合部位として役立った。もう一つの以前に論じられた例において、PEAのトランスロケーションドメイン(Gly253からAsn364)は、C末端ER保持シグナルKDEL(SEQ ID NO: 10)と共に、細胞毒性物質としてリシンA鎖を利用する、組換えハイブリッド毒素の観察された細胞毒性を可能にした(Pitcher et al. Bioconj. Chem. 6:624-629 (1995))。PEAのトランスロケーションドメインは、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)の細胞外リボヌクレアーゼであるバルナーゼの、哺乳動物細胞の細胞質ゾルへの導入を支持しうることが明らかにされている(Prior et al. Biochemistry 31(14):3555-9 (1992))。さらに、Bcl-2ファミリーのアポトーシス促進性メンバーのBadをヒト神経膠腫細胞内に輸送し、アポトーシスを誘導するために、DTのトランスロケーションドメインを用いて成功している(Ichinose et al. Cancer Res. 62(5):1433-8 (2002))。
本発明は、VCEのトランスロケーションドメイン配列を提供し、これはKDELなどのER保持シグナルとの組み合わせで、様々な生体プローブまたは治療剤の細胞質ゾル内への輸送を促進するために用いうる。
III. 疾患適応および標的細胞表面マーカー
本発明において開示するVCEプロトキシンは、特定の細胞サブセットを標的として死滅させる一方、密接に関連する細胞を残し、それによって癌のより特異的かつ有効な治療を提供するために有用である。VCEプロトキシンの標的化特異性は、漸進的により選択的な細胞標的化戦略により付与することができる:(i)天然の細胞結合ドメイン(残基1〜295)を、選択した細胞表面マーカーに機能的に連結し、かつ特異的に標的とする、細胞結合部分で置き換えること;(ii)天然のフリン切断部位(残基321〜326:RKPK↓DL)を標的細胞内で過剰発現される異なるプロテアーゼにより認識される配列で置き換えること:および(iii)選択的細胞表面結合部分および別のタンパク質分解切断部位の両方を含む修飾VCEプロトキシンの、機能的に連結された細胞表面結合部分によって同じ細胞を指向し、かつプロトキシンを特異的に活性化しうるプロテアーゼ融合タンパク質とのコンビナトリアル使用。
修飾VCEプロトキシンの有用性は、所望の治療効果を達成するための、細胞のサブセットの選択的除去にある。特に、選択性は1つまたは複数の細胞結合部分によって提供され、これらは標的癌細胞、または治療上の利益を達成するために除去することが好ましい標的非癌性細胞の細胞表面標的を標的としうる。
A. 細胞表面標的
標的化戦略に応じて、修飾VCEプロトキシンを単独、またはプロテアーゼ融合タンパク質との組み合わせで用いてもよい。いずれの場合にも、細胞標的化部分の1つまたは複数が、細胞の特定の型に典型的な細胞表面標的を、例えば、細胞のサブセット上に見られる系統特異的マーカーを認識し、体の様々な臓器もしくはそのような臓器内の特定の細胞型、または造血、神経、もしくは血管系の細胞のマーカーなどの、それらの自然の起源を提示することにより、標的とすることができる。または、1つまたは複数の細胞標的化部分は、癌細胞または自己免疫活性を誘発もしくは実施する細胞(例えば、B細胞、T細胞、樹状細胞、NK細胞、好中球、白血球、マクロファージ、血小板、マクロファージ、骨髄細胞、および顆粒球)などの、患部組織上で異常に発現される細胞表面マーカーを標的とすることができる。1つまたは複数の物質が、癌細胞によって異常に過剰発現される細胞表面マーカーを標的とすることができる。
特に、異種活性化因子として単独またはプロテアーゼ融合タンパク質との組み合わせで用いられる、修飾VCEプロトキシンは、正常または所望の細胞には重大な損傷を与えることなく、腫瘍細胞または望まれない細胞を破壊するために用いられ、それによって慢性B細胞白血病、マントル細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、成人T細胞白血病、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫などの白血病およびリンパ腫;ならびに黒色腫、結腸癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、胃癌、肝臓癌、膀胱癌、甲状腺癌、脳癌、骨癌、精巣癌、子宮癌、軟部組織腫瘍、神経系腫瘍、および頭頸部癌を含む固形腫瘍を含む癌の治療を提供する。
修飾VCEプロトキシンは、自己反応性BまたはT細胞を含む、非癌性細胞を標的とするために用いることもでき、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、原発性胆汁性肝硬変、グレーブス病、橋本病、1型糖尿病、悪性貧血、重症筋無力症、ライター症候群、免疫性血小板減少症、セリアック病、炎症性腸疾患、ならびに喘息およびアトピー性障害を含む慢性炎症性疾患の治療を提供する。
加えて、修飾VCEプロトキシンは、病的もしくは望まれない活性を担う神経系の細胞、例えば、末梢神経系の侵害受容ニューロンを除去する、または感覚性幻影感覚を治療する、または糖尿病性神経障害もしくはウイルス再活性化による疼痛などの神経障害性疼痛を制御するために用いることができる。
修飾VCEプロトキシンは、根絶するのが難しいウイルス、微生物、または寄生性病原体に感染した細胞を標的とすることもでき、HIV、HBV、HCVもしくはパピローマウイルス感染症、結核、マラリア、デング熱、シャーガス病、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、またはライム病などの後天性症候群の治療を提供する。
さらに、これらは、体の主要臓器の実質細胞、ならびに脂肪細胞、内皮細胞、神経系の細胞、肺細胞、特定の系統のB細胞またはT細胞、樹状細胞、NK細胞、好中球、白血病、マクロファージ、血小板、マクロファージ、骨髄細胞、顆粒球、脂肪細胞、および任意の他の特定の組織細胞が含まれるが、それらに限定されるわけではない、特定の細胞を標的とすることができる。
組換えVCE融合タンパク質および関連プロトキシンはさらに、良性前立腺肥大における前立腺細胞、または正常組織の過剰増殖もしくは、例えば、肥満における脂肪細胞のような望ましくない細胞区画の拡大につながる様々な症候群における、良性増殖を通じて疾患を発生する細胞を標的とすることができる。
当業者であれば、修飾VCEプロトキシン、および適当な場合には、それに伴うプロテアーゼ融合タンパク質を腫瘍組織に標的化させるために用いうる、多くの細胞表面標的があることをよく理解するであろう。例えば、乳癌細胞をクラウジン-3(Soini, Hum. Pathol. 35:1531 (2004))、クラウジン-4(Soini, Hum. Pathol. 35:1531 (2004))、MUC1(Taylor-Papadimitriou et al., J. Mammary Gland Biol. Neoplasia 7:209 (2002))、EpCAM(Went et al., Hum. Pathol. 35:122 (2004))、CD24(Kristiansen et al., J. Mol. Histol. 35:255 (2004))、およびEphA2(Ireton and Chen, Curr. Cancer Drug Targets 5:149 (2005);Zelinski et al.,Cancer Res. 61:2301 (2001))、ならびにHER2(Stern, Exp. Cell Res. 284:89 (2003))、EGFR(Stern, Cell Res. 284:89 (2003))、CEA、およびuPAR(Han et al., Oncol. Rep. 14:105 (2005))などの過剰発現された表面抗原を用いて標的としてもよい。結腸直腸癌を、A33(Sakamoto et al., Cancer Chemother. Pharmacol. 46:S27 (2000))、EpCAM(Went et al., Hum. Pathol. 35:122 (2004))、EphA2(Ireton and Chen, Curr. Cancer Drug Targets 5:149 (2005);Kataoka et al., Cancer Sci. 95:136 (2004))、CEA(Hammarstrom, Semin. Cancer Biol. 9:67 (1999))、CSAp、EGFR(Wong,Clin. Ther. 27:684 (2005))、およびEphB2(Jubb et al., Clin. Cancer Res. 11:5181 (2005))などのアップレギュレートされた表面抗原を用いて標的としてもよい。非小細胞肺癌を、EphA2(Kinch et al., Clin. Cancer Res. 9:613 (2003))、CD24(Kristiansen et al., Br. J. Cancer 88:231 (2003))、EpCAM(Went et al., Hum. Pathol. 35:122 (2004))、HER2(Hirsch et al., Br. J. Cancer 86:1449 (2002))、およびEGFR(Dacic et al., Am. J. Clin. Pathol. 125:860 (2006))を用いて標的としてもよい。メソテリンはNSCLCの治療のためにPEAに基づく免疫毒素によって標的とされてきた(Ho et al., Clin. Cancer Res. 13(5):1571 (2007))。卵巣癌を、アップレギュレートされたクラウジン-3(Morin, Cancer Res. 65:9603 (2005))、クラウジン-4(同書)、EpCAM(Went et al., Hum. Pathol. 35:122 (2004))、CD24(Kristiansen et al., J. Mol. Histol. 35:255 (2004))、MUC1(Feng et al., Jpn. J. Clin. Oncol. 32:525 (2002))、EphA2(Ireton and Chen, Curr. Cancer Drug Targets 5:149 (2005))、B7-H4(Simon et al., Cancer Res. 66:1570 (2006))、およびメソテリン(Hassan et al., Appl. Immunohistochem Mol. Morphol. 13:243 (2005))、ならびにCXCR4(Jiang et al., Gynecol. Oncol. 20:20 (2006))およびMUC16/CA125を用いて標的としてもよい。膵臓癌を、過剰発現されたメソテリン(Rodriguez et al., World J. Surg. 29:297 (2005))、PSCA(Rodriguez et al., World J. Surg. 29:297 (2005))、CD24(Kristiansen et al., J. Mol. Histol. 35:255 (2004))、HER2(Garcea et al., Eur. J. Cancer 41:2213 (2005))、およびEGFR(Garcea et al., Eur. J. Cancer 41:2213 (2005))を用いて標的としてもよい。前立腺癌を、PSMA(Kinoshita et al., World J. Surg. 30:628 (2006))、PSCA(Han et al., J. Urol. 171:1117 (2004))、STEAP(Hubert et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:14523 (1999))、およびEphA2(Ireton and Chen, Curr. Cancer Drug Targets 5:149 (2005))を用いて標的としてもよい。EpCAMは前立腺癌でもアップレギュレートされ、抗体による治療のために標的とされてきた(Oberneder et al., Eu. J. Cancer 42:2530 (2006))。活性化白血球細胞接着分子(ALCAM、CD166としても公知)の発現は、前立腺癌(Kristiansen et al., J. Pathol. 205:359 (2005))、結腸直腸癌(Weichert et al., J. Clin. Pathol. 57:1160 (2004))、および黒色腫(van Kempen et al. Am. J. Pathol. 156(3):769 (2000))の予後および診断マーカーである。化学療法で治療され、多剤耐性(MDR)を発生したすべての癌を、P-糖タンパク質(P-gp)、多剤耐性関連タンパク質(MRP1)、肺耐性タンパク質(LRP)、および乳癌耐性タンパク質(BCRP)(Tan et al., Curr. Opin. Oncol. 12:450 (2000))を含む、関与する膜貫通輸送体タンパク質を用いて標的とすることができる。
様々な癌由来の癌幹細胞の独特の細胞表面マーカー特性を同定する上で、過去10年間に著しい進歩が見られ、それらを対応する腫瘍細胞の大部分から区別している。例えば、急性骨髄性白血病(AML)において、CD34+/CD38- AML細胞の小画分を構成するCD133+/CD38- AML細胞が動物モデルにおけるヒトAMLの誘発を担っていることが観察されている(Yin et al., Blood 12:5002 (1997))。加えて、CD133は最近、脳腫瘍(Singh et al., Nature 432:395 (2004)およびBao et al., Nature 444:756 (2006))、結腸癌(O'Brien et al., Nature 445:106 (2007)およびRicci-Vitiani et al, Nature 445:111 (2007))、前立腺癌(Rizzo et al., Cell Prolif. 38:363 (2005))、および肝細胞癌(Suetsugu et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 351:820 (2006)およびYin et al., Int. J. Cancer 120:1444 (2007))を含む、いくつかの固形腫瘍に対する癌幹細胞表面マーカーとして同定された。結腸癌の場合、CD133+腫瘍形成細胞が抗体Ber-EP4を結合することが判明し(Ricci-Vitiani et al. Nature 445:111 (2007))、これはESAおよびCD326としても公知の上皮細胞接着分子(EpCAM)を認識する。最近、CD44+はCD133+よりも正確に結腸直腸癌のCSC集団を規定することが報告され、結腸癌のCSCがEpCAMhigh/CD44+/CD166+として同定された(Dalerba et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 104(24):10158 (2007))。この情報に基づき、EpCAM/CD133、EpCAM/CD44、EpCAM/CD166、およびCD44/CD166は結腸癌CSCのコンビナトリアル標的化のための可能性がある組み合わせである。CD133に加えて、前立腺癌幹細胞が別にCD44+であると同定されており(Gu et al. Cancer Res. 67:4807 (2007))、したがってこれらは表面マーカーのCD44/CD133の対を用いて標的化可能でありうる。さらに、CXCR4がCD44+/CD133+推定前立腺CSCにおいて検出され、CXCR4のCD44またはCD133のいずれかとの組み合わせがコンビナトリアル標的化戦略のための有用な標的対を提供することが示唆されている。唯一の現在公知の表面抗原がCD133である他のCSCにおいて、さらなる表面抗原を包括的抗体スクリーニングを通じて同定し、次いでコンビナトリアル標的化スキームにおいてCD133を補うために用いてもよい。同様に、乳癌の腫瘍形成細胞が乳癌細胞のCD44+/CD24-亜集団と同定されている。さらなる分析により、CD44+/CD24-/EpCAM+画分はさらに高い腫瘍形成能を有することが明らかとなった(Al-Hajj et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:3983 (2003))。CD44+およびEpCAM+を標的表面マーカーとして用いるコンビナトリアル標的化アプローチは、これらのCSCを特異的に死滅させる一方で、正常なCD44+白血球/赤血球および正常なEpCAM+上皮細胞を無傷で残しうると考えられる。もう一つの最近の試験により、膵臓CSCがCD44+/CD24+/EpCAM+であることが明らかにされている(Li et al., Cancer Res. 67:1030 (2007))。したがって、膵臓CSCを、CD44/CD24、CD44/EpCAM、またはCD24/EpCAMの組み合わせを用いて標的としてもよい。
B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)はゆっくり蓄積するCD5+B細胞によって特徴づけられる(Guipaud et al., Lancet Oncol. 4:505 (2003))。CD5は正常なT細部およびB1細胞として公知のB細胞の一部で見られる細胞表面タンパク質である。CD5を標的とする免疫毒素はT細胞を死滅させる上で高い有効性が示されている(Better et al., J. Biol. Chem. 270:14951 (1995))。本発明に記載のコンビナトリアル標的化戦略は、CD5をCD19、CD20、CD21、またはCD22などのB細胞マーカーとの組み合わせで用い、それによりB-CLL細胞またはB1サブセットにおける他のB細胞をT細胞から識別することを可能にする。B1サブセットは、自己免疫障害の状況でよく見られる低親和性の多反応性抗体を生じると考えられ、したがってB細胞の残りを著しく損傷することなくこの集団を除去すれば、すべてのB細胞を除去した場合に誘導されるのと同程度に、個人の免疫応答を含むことなく、自己免疫疾患の経過に好ましい影響を与えるであろう。
本発明のプロテアーゼ融合および毒素融合タンパク質の有用な標的となりうる表面抗原の例がPCT出願公報第2008/011157号の表1に示されており、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。コンビナトリアル標的化のために、各抗原を1つまたは複数の他の抗原との組み合わせで標的としてもよい。バイナリ標的化のための2つの表面抗原のコンビナトリアル使用の例も示されている。
B. 細胞標的化部分
本発明は、細胞標的化部分を含む組換えVCE融合タンパク質および関連プロトキシンを提供する。本発明のそのような細胞標的化部分には、細胞表面分子に特異的に結合する、抗体由来のタンパク質、抗体様物質、標的細胞表面上で発現される特定の受容体に特異的なリガンド、炭水化物、およびペプチドが含まれる。
細胞標的化部分の1つの態様は、細胞表面上の標的を特異的に認識しうるタンパク質である。タンパク質による標的認識の最も一般的な形は抗体である。1つの態様は、IgG、IgD、IgM、IgA、およびIgEなどの、すべてのアイソタイプの無傷の抗体を用いる。または、細胞標的化部分は、Fab、Fab'、Fab2、またはscFv断片などの、全長抗体の断片または改変版でありうる(Huston, et al. 1991. Methods Enzymol. 203:46-88、Huston, et al. 1988. Proc Natl Acad Sci U S A. 85:5879-83)。一つの態様において、結合抗体はヒト、マウス、ヤギ、ラット、ウサギ、またはラクダ抗体由来のものである。もう一つの態様において、結合抗体は、CDR領域がヒト抗体の骨組み上に接ぎ合わされた、動物抗体のヒト化版である(Queen and Harold. 1996. 米国特許第5530101号)。ヒトエピトープに対するヒト抗体は、ヒト抗体を有するトランスジェニックマウスから、ならびにヒト抗体に基づくファージディスプレイライブラリから単離することができる(Kellermann and Green. 2002. Curr Opin Biotechnol. 13:593-7、Mendez, et al. 1997. Nat Genet. 15:146-56、Knappik, et al. 2000. J Mol Biol. 296:57-86)。結合部分は、再改変T細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、CTLA-4、モノマーVhまたはVlドメイン(ナノ抗体)、およびラクダ化抗体などの、抗体に構造的に関連する免疫系からの分子であってもよい(Berry and Davies. 1992. J Chromatogr. 597:239-45、Martin, et al. 1997. Protein Eng. 10:607-14、Tanha, et al. 2001. J Biol Chem. 276:24774-80、Nuttall, et al. 1999. Proteins. 36:217-27)。さらなる態様は、同じ細胞上の2つの異なるエピトープに特異性を有する、2つの一本鎖可変断片の遺伝的融合物である、二重特異性抗体を含んでいてもよい。一例として、B細胞標的に対する親和性を高めるために、抗CD19および抗CD22 scFvの二重特異性抗体をプロトキシンに融合することができる(Kipriyanov. 2003. Methods Mol Biol. 207:323-33)。
もう一つの態様において、細胞標的化部分は、抗体様物質として作用する多様化タンパク質でもありうる。多様化タンパク質は、それらの天然の配列が異種標的に結合しうる配列によって置き換えられた部分を有する。多様化タンパク質は、安定性、産生、およびサイズに関して抗体よりもすぐれていることもある。1つの例はフィブロネクチンIII型ドメインで、これは以前、様々な標的に対する親和性試薬を単離するために用いられていた(Lipovsek and Pluckthun. 2004. J Immunol Methods. 290:51-67、Lipovsek, et al. 2007. J Mol Biol. 368:1024-41、Lipovsek, Wagner, and Kuimelis. 2004. 米国特許第20050038229号)。リポカリンは、分子多様化および選択のために用いられてきた(Skerra et al. 2005. 米国特許第20060058510号)。リポカリンは、血清中のステロイドおよび代謝物に結合するタンパク質のクラスである。CTLA4およびVEGFに対する機能性結合因子が、ファージディスプレイ技術を用いて単離されている(Vogt and Skerra. 2004. Chembiochem. 5:191-9)。C型レクチンドメイン、Aドメインおよびアンキリン反復は、骨格の結合表面を増やすためにオリゴマー化されうる骨組みを提供する(Mosavi, et al. 2004. Protein Sci. 13:1435-48)。他の多様化タンパク質には、ヒト血清アルブミン、緑色蛍光タンパク質、PDZドメイン、クニッツドメイン、カリブドトキシン、植物ホメオドメイン、およびβ-ラクタマーゼが含まれるが、それらに限定されるわけではない。タンパク質骨格の包括的総説が下記に記載されている(Hosse, et al. 2006. Protein Sci. 15:14-27、Lipovsek. 2005.)。当業者であれば、多くの多様なタンパク質またはタンパク質ドメインが多様化される可能性を有し、親和性試薬として開発され、用いられるかもしれず、これらはプロトキシンにおける細胞結合部分として役立ちうることが理解される。
もう一つの態様において、細胞標的化部分は細胞表面上で発現されるエピトープの天然リガンド、接着分子、または受容体でありうる。リガンドの組成物は、ペプチド、レクチン、ホルモン、脂肪酸、核酸、またはステロイドであってもよい。例えば、ヒト成長ホルモンを、ヒト成長ホルモン受容体を発現する細胞に対する細胞標的化部分として用いうるであろう。自然のリガンドが内在性膜タンパク質である場合に、可溶化受容体リガンドを用いてもよい。そのような可溶化内在性膜タンパク質は当技術分野において周知で、膜貫通または膜固着ドメインを除去して可溶性活性リガンドを提供することによる、膜タンパク質の機能性断片の形成により容易に調製され;例えば、可溶性CD72をリガンドとして用いて、改変プロトキシンをCD5含有細胞に局在させうる。もう一つの例は、ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)のその受容体uPARへの結合である。uPARへの高親和性結合(Kdが約0.5nM)を担うu-PAの領域は、N末端成長因子様ドメイン(N-GFD)と呼ばれる最初の46アミノ酸内に完全に局在することが明らかにされている(Appella, et al. 1987. J Biol Chem. 262:4437-40)。アビマーは、特定の標的に対する結合力および特異性を高めるために混合された複数の受容体結合ドメインを意味する(Silverman, et al. 2005. Nat Biotechnol. 23:1556-61)。これらの受容体結合ドメインおよびリガンドはプロトキシンの近接ポリペプチドとして遺伝的に融合して産生してもよく、またはこれらは別々に単離し、次いで化学的もしくは酵素的に結合することもできる。これらはプロトキシンと非共有結合により結合してもよい。
以前に報告された例において、デニロイキンディフチトクスはDTおよびヒトインターロイキン(IL)-2の融合タンパク質である(Fenton and Perry. 2005 Drugs 65:2405)。デニロイキンディフチトクスは、所期の標的CTCL細胞を含む、IL-2受容体(IL2R)を発現する任意の細胞を標的とする。急性過敏型反応、血管漏出症候群、および視力損失が副作用として報告されている。ヒトの正常な間葉および神経外胚葉由来の非造血細胞は機能性IL2Rを発現しうるため、観察されるいくつかの細胞毒性作用はIL-2と非造血組織との間の直接相互作用が原因でありうる。この毒性を克服するために、本発明は、例えば、第二の標的化要素としてのT細胞マーカー、例えば、CD3の追加を特徴とする。
部分がマンノース、マンノース6-リン酸、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、またはシアリル-ルイスXなどの炭水化物である場合、これはそれぞれマンノース受容体、マンノース6-リン酸受容体、アシアロ糖タンパク質受容体、N-アセチルグルコサミン受容体、またはE-セレクチンを標的とすることができる。部分がチロシン硫酸化ペプチドまたは硫酸化炭水化物に機能的に連結されたシアリル-ルイスXグリカンを含む場合、これはそれぞれP-セレクチンまたはL-セレクチンを標的とすることができる。
もう一つの例として、結合相手は、病原体宿主相互作用と同様、異なる生物間の公知の相互作用からのものでありうる。ウェルシュ菌腸毒素のC末端ドメイン(C-CPE)は哺乳動物クラウジン3/4付着分子に高い親和性および特異性で結合する。クラウジンはほとんどの細胞密着結合の成分であるが、典型的に頂端表面上に露出しない。多くの型の癌の状態である、非関与のクラウジン3/4を過剰発現する細胞にC-CPEを局在させるために、これをプロトキシンに付加することができる(Takahashi, et al. 2005. J Control Release. 108:56-62、Ebihara、et al. 2006. J Pharmacol Exp Ther. 316:255-60)。
ペプチドの一例は、アンギオテンシン受容体を発現する細胞に複合体を局在させるためのアンギオテンシンの使用である。もう一つの態様において、結合ペプチドは、無作為の配列ライブラリから選択された不自然ペプチドでありうる。1つのグループがファージディスプレイを用いてYSAと命名されたペプチドを同定し、これはEphA2受容体を特異的に認識することができる。EphA2は多くの乳癌細胞において過剰発現される(Koolpe, et al. 2005. J Biol Chem. 280:17301-11、Koolpe, et al. 2002. J Biol Chem. 277:46974-9)。結合親和性を高めるために、ペプチドを連続反復融合を通じて、またはペプチドを続いてプロトキシンに結合しうるデンドリマーに結合して、多量体化することができる。
もう一つの態様において、細胞標的化部分は、DNA、RNA、PNAまたはその他の類縁体からなる核酸でありうる。多くのタンパク質標的に対する核酸アプタマーが同定されており、インビトロでの進化の過程を通じて非常に高い親和性で結合する(Gold. 1991. 米国特許第5475096号、Wilson and Szostak. 1999. Annu Rev Biochem. 68:611-47)。PSMAに特異的なRNAアプタマーは、結合ゲロニン毒素をPSMAを過剰発現する細胞に特異的に局在させることが明らかにされた(Chu, et al. 2006. Cancer Res. 66:5989-92)。核酸を化学的に合成する、または生化学的に転写し、次いで再改変毒素への結合のための結合基を含むように修飾することができる。核酸を一般的な架橋試薬を用いて直接結合してもよく、または当技術分野において公知の方法により酵素的にカップリングしてもよい。核酸をプロトキシンと非共有結合により結合することもできる。
細胞標的化部分を、当技術分野において記載されているいくつかの技術を用いて同定してもよい。典型的に、自然のホルモンおよびペプチドリガンドは、報告された文献中で報告された相互作用を通じて同定することができる。加えて、抗体様物質および核酸アプタマーは、癌細胞または他の疾患状態で発現されるものなどの、関心対象のエピトープに対するまれな結合分子を単離しうる選択技術を用いて同定することができる。これらの技術には、SELEX、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、mRNAディスプレイ、インビボ補完、酵母2ハイブリッド系、およびリボソームディスプレイが含まれる(Roberts and Szostak. 1997. Proc Natl Acad Sci U S A. 94:12297-302、Boder and Wittrup. 1997. Nat Biotechnol. 15:553-7、Ellington and Szostak. 1990. Nature. 346:818-22、Tuerk and MacDougal-Waugh. 1993. Gene. 137:33-9、Gyuris, et al. 1993. Cell. 75:791-803、Fields and Song. 1989. Nature. 340:245-6、Mattheakis, et al. 1994. Proc Natl Acad Sci U S A. 91 :9022-6)。抗体を、前述の技術を用いて、または動物を免疫し、得られる抗体を単離するか、もしくは血漿細胞からモノクローナル抗体を作成することによる伝統的様式で産生することができる。
細胞標的化部分の標的は、細胞表面上、またはその周囲のタンパク質受容体、炭水化物、および脂質でありうる。細胞表面標的の成分を都合よく含みうる、当技術分野において公知のポリペプチド修飾の例には、グリコシル化、硫酸化、リン酸化、ADPリボシル化、およびユビキチン化が含まれる。細胞の特定の系統に特有でありうる、炭水化物修飾の例には、硫酸化、アセチル化、脱水素および脱水が含まれる。脂質修飾の例には、グリカン置換および硫酸化が含まれる。特定の標的細胞に特有でありうる脂質の例には、ガングリオシド、グロボシド、セラミドおよびスルファチドなどのスフィンゴ脂質およびそれらの誘導体、またはグリコシルホスファチジルイノシトール連結タンパク質アンカーなどの脂質アンカー部分が含まれる。
細胞標的化部分は、これが再改変毒素を細胞表面に局在させるよう作用する限り、細胞表面エピトープに直接結合する別の結合中間物質を通じて、標的細胞に間接的に結合してもよい。これらの結合モジュールの標的は、常在タンパク質、受容体、炭水化物、脂質、コレステロール、および標的細胞表面への他の修飾でありうる。細胞標的化部分は、両方の種をコードするDNAを連結する場合、直接の翻訳融合物を通じてプロトキシンに連結することができる。または、化学的カップリング法および酵素的架橋も2つの成分を連結することができる。細胞標的化部分は、剤の構造または結合に関与していないが、プロトキシンとの結合または相互作用などの他のプロセスに関与している配列を含んでいてもよい。
IV. 活性化配列の修飾
本発明のVCEプロトキシンは、修飾VCEの天然活性化配列の修飾を含み、様々な異なる癌の型においてVCEの活性化を可能にする。修飾活性化配列は、1つまたは複数の一般切断部位修飾、または多数の特異的切断部位修飾を含み、多くの型の癌細胞を死滅させるために活性化可能な単一の修飾VCEを生じる。
A. 標的細胞に存在する内因性プロテアーゼ活性
1つまたは複数の一般切断部位修飾を有する修飾VCEプロトキシンは、一般活性化物質のための1つまたは複数の切断部位を提供するために天然活性化配列の修飾を含み、一般活性化物質は酵素であり、その存在は様々な異なる癌の型に関連している。例えば、酵素の発現は正常細胞に比べて癌細胞でアップレギュレートされることもあり、または酵素は正常細胞に比べて癌細胞に局在することもあり、または酵素は癌関連の組織もしくは細胞によって産生および/もしくは活性化されうる。一般活性化物質は、例えば、プロテアーゼであってもよい。
一つの態様において、修飾VCEプロトキシンは、2つまたはそれ以上の一般切断部位を含むように修飾された活性化配列を含み、一般切断部位はそれぞれ同じ一般活性化物質で切断されうる。または、一般切断部位はそれぞれ異なる活性化物質で切断されうる。複数の一般切断部位が存在する場合、これらの切断部位は互いに隣接していてもよく、重なっていてもよく、または当技術分野において公知の様々な長さの介在配列によって分離されていてもよい。もう一つの態様において、修飾VCEプロトキシンは、1つの一般切断部位を含むように修飾された活性化配列を含む。さらにもう一つの態様において、修飾VCEプロトキシンは、2つの一般切断部位を含むように修飾された活性化配列を含む。さらにもう一つの態様において、修飾VCEプロトキシンは、5つ未満の一般切断部位を含むように修飾された活性化配列を含む。
天然活性化配列への1つまたは複数の一般切断部位修飾は、当技術分野において公知のとおりに達成しうる。この修飾は、天然活性化配列、または活性化配列の1つもしくは複数の天然切断部位の機能性欠失を引き起こす。機能性欠失は突然変異によって達成され、これは、例えば、天然活性化配列を不活性にする、それへの部分的または完全な欠失、挿入、または他の変異を引き起こしうる。一つの態様において、VCEの天然の活性化配列は、1つまたは複数の一般切断部位の挿入によって機能性に欠失しうる。もう一つの態様において、天然活性化配列、または活性化配列の1つもしくは複数の天然切断部位の機能性欠失は、天然の活性化配列の1つまたは複数のアミノ酸残基における突然変異によって達成され、これは1つまたは複数の一般切断部位を作りだし、その部位はそれぞれ一般活性化物質によって切断されうる。他の態様において、VCEの天然の活性化配列は、天然活性化配列、または活性化配列の1つもしくは複数の天然切断部位を、それぞれ一般活性化物質によって切断されうる1つまたは複数の一般切断部位で置き換えることによって機能性に欠失する。前述のとおり、本発明の修飾VCEプロトキシンは、1つまたは複数の切断部位を提供する1つまたは複数の一般切断部位修飾を含み、その部位はそれぞれプロテアーゼである一般活性化物質によって認識され、プロテアーゼの存在は様々な異なる癌の型に関連している。本発明の一つの態様において、一般活性化物質は一般には癌の浸潤および転移に関連するプロテアーゼである。
そのようなプロテアーゼの例には、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリー、カスパーゼ、エラスターゼ、およびプラスミノゲン活性化因子ファミリー、ならびに線維芽細胞活性化タンパク質が含まれる。MMPファミリーのメンバーには、コラゲナーゼ、ストロメライシン、ゼラチナーゼ、および5つの膜型メタロプロテアーゼが含まれる。特に、MMP-2(ゼラチナーゼA)、MMP-9(ゼラチナーゼB)、および膜型1MMP(MT1-MMP)が様々なヒト癌の浸潤および転移に最も関連すると報告されている。プラスミノゲン活性化因子ファミリーのプロテアーゼの例には、uPA(ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子)およびtPA(組織型プラスミノゲン活性化因子)が含まれる。
もう一つの態様において、プロテアーゼは癌細胞によってアップレギュレートおよび/または分泌される。
これらのプロテアーゼの例には、マトリックスメタロプロテアーゼ、いくつかのカテプシン、tPA、いくつかのカスパーゼ、カリクレイン、エラスターゼ、プラスミン、トロンビン、およびuPAが含まれる。さらなる態様において、プロテアーゼは癌細胞によって発現される酵素によって活性化される。さらにもう一つの態様において、プロテアーゼは癌細胞によって発現される受容体によって活性化される。そのようなプロテアーゼの非限定例はuPA(例えば、SGRSAQの切断部位を有する)で、これは受容体uPAR(ウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子受容体)によって活性化される。
もう一つの態様において、一般活性化物質は一般には血管形成に関連するプロテアーゼ(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼおよびカスパーゼ)である。
多数の特異的切断部位修飾を有する修飾VCEプロトキシンは、2つまたはそれ以上の異なる型の特異的切断部位を含み、それぞれの型は特異的活性化物質によって切断可能であるための、天然活性化配列の修飾を含む。2つまたはそれ以上の異なる型の切断部位は、一般活性化物質のための切断部位をさらに含んでいてもよい。特異的活性化物質は酵素であり、その存在は特定の型の癌に関連している。例えば、酵素の発現は特定の型の癌細胞においてアップレギュレートされることもあり、または酵素は特定の型の癌細胞に局在することもあり、または酵素は特定の型の癌に関連する細胞によって産生されうる。特異的活性化物質は、例えば、プロテアーゼであってもよい。
多数の特異的切断部位を含む修飾は、当技術分野において公知で、前述したとおりに達成しうる。この修飾も、天然活性化配列、または活性化配列の1つもしくは複数の天然切断部位の機能性欠失を引き起こす。一つの態様において、VCEの天然の活性化配列は多数の特異的切断部位の挿入によって機能性に欠失する。もう一つの態様において、天然活性化配列の機能性欠失は、天然活性化配列のアミノ酸配列における突然変異を介して達成され、2つまたはそれ以上の特異的切断部位の追加を引き起こし、その部位はそれぞれ特異的活性化物質で切断されうる。他の態様において、VCEの天然の活性化配列を2つまたはそれ以上の特異的切断部位で置き換えてもよく、その部位はそれぞれ特異的活性化物質で切断可能である。当技術分野において公知のとおり、特異的切断部位は互いに隣接していてもよく、重なっていてもよく、または当技術分野において公知の様々な長さの介在配列によって分離されていてもよい。
本発明のもう一つの態様において、多数の特異的切断部位修飾は2つまたはそれ以上の切断部位を追加し、その部位はそれぞれプロテアーゼである特異的活性化物質によって認識される。本発明のもう一つの態様において、特異的活性化物質は特定の癌の浸潤および転移に関連するプロテアーゼである。本発明のさらなる態様において、特異的活性化物質はプロテアーゼであり、その発現は特定の癌においてアップレギュレートされる。さらにもう一つの態様において、特異的活性化物質は、特定の癌に関連する細胞によって産生されるプロテアーゼである。
もう一つの態様において、特異的活性化物質は結腸癌に関連するプロテアーゼである。
B. 標的細胞に送達されるタンパク質分解活性
以前に記載された細胞を標的とするアプローチの主要な制限は、内因性プロテアーゼへの依存で、これらはすべての腫瘍上に存在するわけではなく、または存在量が不十分であることもあり、またはかなりの量が流されることもあり、毒素の非特異的活性化につながる。本発明は、細胞表面への特異的結合を通じて標的細胞に独立にもたらされるプロテアーゼ融合物によって活性化可能なVCEプロトキシンも提供し;これらのVCEプロトキシンは、適当な内因性プロテアーゼ活性を持たない腫瘍細胞または他の望ましくない細胞の標的破壊のために有用である。
外因性プロテアーゼおよび対応する切断部位を、以下の考察に基づき、本発明のために選択してもよい。プロテアーゼは好ましくは、プロトキシンまたはそれ自体を著しく不活化することなく、プロトキシン活性化部分を切断可能である。プロテアーゼは好ましくは、残すことが望まれる細胞内または細胞上に自然に見いだされないが、例外として、その自然の位置により外から投与されたプロトキシンを活性化することができない場合には、そのような細胞において自然に見いだされうる。例えば、毒素を細胞の表面またはエンドソーム、ゴルジ、もしくは小胞体などの、細胞内プロテアーゼを自然に含まない、いくつかの細胞内小胞区画内で活性化しなければならない場合、カスパーゼなどの細胞内プロテアーゼを用いてもよい。そのような場合、残すことが望まれる細胞はプロテアーゼを含みうるが、プロテアーゼはプロトキシンを活性化しないということになる。
プロテアーゼの触媒活性は好ましくは、インビボでその治療効果を発揮するのに要する時間、インビボの条件に対して安定である。治療プログラムがプロテアーゼの反復投与を必要とする場合、プロテアーゼは好ましくは、その機能を損なう抗体、例えば、中和抗体の生成による干渉に対して抵抗性である。いくつかの態様において、プロテアーゼは低い免疫原性を有するか、または免疫原性を低減するために置換されていてもよく、またはその活性に対する抗体の効果を低減するために置換されていてもよい。プロテアーゼは好ましくは、それ自体は低い毒性を有するか、または1つもしくは複数の細胞表面結合部分との機能的連結の形で低い毒性を有する。プロテアーゼは好ましくは、治療用製剤の製造および配給に関連する条件に対して安定であるか、または安定にすることができる。プロテアーゼは好ましくは、自然のプロテアーゼ、修飾プロテアーゼ、または人工酵素である。
本発明の望ましいプロテアーゼには、伸長触媒部位により、または相対的に非選択的プロテアーゼに適当な特異性を与える特異的基質認識モジュールの存在により、高度に特異的な基質選択性を有することが公知のものが含まれる。選択性が限定されたプロテアーゼを、遺伝的突然変異または基質結合ポケットに近い残基の化学的修飾によって、より選択的とすることもできる。
当技術分野において公知のとおり、多くのプロテアーゼが特定の切断部位を認識し、いくつかの特定の非限定例を以下に示す。当業者であれば、列挙したもの以外の切断部位も列挙したプロテアーゼによって認識され、本発明の一般プロテアーゼ切断部位として用いうることを理解するであろう。
ヒト由来のプロテアーゼは、免疫原性のリスクが低いため、本発明の好ましい態様である。アスパラギン酸プロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、およびトレオニンプロテアーゼを含む、任意の触媒メカニズム、すなわちアミノ酸残基の性質またはペプチドおよびタンパク質の加水分解に関与する活性部位での補助因子を用いるヒトプロテアーゼは、本発明のために有用でありうる。
可能性のある治療薬は、ヒトでの臨床試験の前に、毒性、有効性、および薬物動態などの性質を調べるためにモデル試験を動物で行わなければならないため、動物の血漿中のプロテイナーゼ阻害剤の存在は、タンパク質分解活性を含む治療薬の開発も制限することになりうる。動物の血漿中のプロテイナーゼ阻害剤は、それらのヒト対応物とは異なる阻害剤特性を有することもある。例えば、ヒトGrBはマウスserpina3nによって阻害されることが判明しており、これは培養セルトリ細胞によって分泌され、マウス血漿中に存在するserpina3(α1-抗キモトリプシン)の主成分である(Sipione et al., J. Immunol. 177:5051-5058 (2006))。しかし、ヒトα1-抗キモトリプシンはヒトGrBの阻害剤であると示されたことはない。マウスおよびヒト血漿プロテアーゼ阻害剤の間の相違はそれらの遺伝的相違が原因であると考えられる。主要なヒト血漿プロテアーゼ阻害剤であるα1-抗トリプシンおよびα1-抗キモトリプシンはそれぞれ単一の遺伝子によってコードされるが、マウスでは、それぞれ5および14遺伝子のクラスターによって提示される。これらの阻害剤のクラスター内で高度の全配列類似性があるが、標的プロテアーゼ特異性を決定する反応中心ループ(RCL)ドメインは顕著に異なる。マウスプロテアーゼによる阻害に打ち勝つために、本明細書に記載のスクリーニングおよび突然変異生成戦略を適用して、選択した動物モデルに存在する阻害剤による阻害に抵抗性の変異プロテアーゼを同定することができる。
ヒトグランザイム
組換えヒトグランザイムB(GrB)を、プロテアーゼ融合タンパク質内の外因性プロテアーゼとして用いてもよい。GrBはIEPDのコンセンサス認識配列との高い基質配列特異性を有し、限られた数の自然の基質だけを切断することが知られている。GrBは細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞の細胞質顆粒中に見られ、したがって、これらの細胞が標的細胞でないならば、本発明にとって有用であろう。GrB活性の至適pHはpH8付近であるが、pH5.5からpH9.5の間でその活性を保持する(Fynbo et al., Protein Expr. Purif. 39:209 (2005))。GrBはIEPD(SEQ ID NO: 18)を含むペプチドを高い効率および特異性で切断する(Harris et al., J. Biol. Chem. 273:27364 (1998))。GrBはプログラムされた細胞死の調節に関与しているため、インビボで厳密に調節される。加えて、GrBは一本鎖および単一ドメインのセリンプロテアーゼであり、これは融合タンパク質のより単純な複合構造に寄与しうる。さらに、GrBは一般に非常に安定であることが最近になって判明し、異なる融合タンパク質の切断において非常に良く作用する(Fynbo et al., Protein Expr. Purif. 39:209 (2005))。
セリンプロテアーゼのグランザイムファミリーの任意のメンバー、例えば、グランザイムAおよびグランザイムMを、本発明のプロテアーゼ融合における組換えプロテアーゼ成分として用いてもよい。例えば、グランザイムM(GrM)はナチュラルキラー細胞の顆粒中に特異的に見られ、ペプチド配列KV(Y)PL(M)(SEQ ID NO: 21)を高い効率および特異性で加水分解することができる(Mahrus et al., J. Biol. Chem. 279:54275 (2004))。
本発明のプロテアーゼ融合物を設計し、利用する上で、プロテイナーゼ阻害剤はプロテアーゼ融合タンパク質のタンパク質分解活性を妨害しうることに留意すべきである。例えば、GrBは、細胞傷害性リンパ球に主に存在するserpinスーパーファミリーのメンバーである細胞内プロテイナーゼ阻害剤9(PI-9)によって特異的に阻害され(Sun et al., J. Biol. Chem. 271:27802 (1996))、ヒト血漿中で検出されている。GrBは、ヒト血漿中に存在するα1-プロテアーゼ阻害剤(α1PI)によっても阻害されうる(Poe et al., J. Biol. Chem. 266:98 (1991))。GrMはα1-抗キモトリプシン(ACT)およびα1PIによって阻害され(Mahrus et al., J. Biol. Chem. 279:54275 (2004))、GrAはインビトロでプロテアーゼ阻害剤の抗トロンビンIII(ATIII)およびα2-マクログロブリン(α2M)によって阻害される(Spaeny-Dekking et al., Blood 95:1465 (2000))。これらのプロテイナーゼ阻害剤はヒト血漿中にも存在する(Travis and Salvesen, Annu. Rev. Biochem. 52:655 (1983))。
GrAの成熟および活性型が、顆粒関連プロテオグリカンであるセルグリシンとの複合体としてヒト血漿中で観察されているため、グランザイムのタンパク質分解活性を保存するための1つのアプローチは、プロテオグリカンとの複合体形成を利用することである(Spaeny-Dekking et al., Blood 95:1465 (2000))。GrBのグリコサミングリカン複合体も、タンパク質分解活性を有することが明らかにされている(Galvin et al., J. Immunol. 162:5345 (1999))。したがって、硫酸コンドロイチンを用いての製剤を通じて、グランザイム融合タンパク質を血漿中で活性に維持することが可能である。
カテプシンおよびカスパーゼ
カテプシンの任意のメンバー(Chwieralski et al., Apoptosis 11:143 (2006))、例えば、カテプシンA、B、C、D、E、F、G、H、K、L、S、W、およびXを、本発明のための組換えプロテアーゼとして用いてもよい。カテプシンは生理的条件下でリソソーム内に局在するプロテアーゼであり、したがって酸性環境で最適な活性を有する。カテプシンは異なる酵素クラスのプロテアーゼを含み;例えば、カテプシンAおよびGはセリンプロテアーゼであり、カテプシンDおよびEはアスパラギン酸プロテアーゼである。特定のカテプシンはカスパーゼ、すなわちアポトーシスの誘発および実行において中心的役割を果たすシステインプロテアーゼの独特のファミリーである。すべての公知の哺乳動物プロテアーゼの中で、セリンプロテアーゼグランザイムBだけがカスパーゼと類似の基質特異性を有する。
カテプシンまたはカスパーゼは、活性化するプロトキシンが内部移行の前(内部移行しなければならない毒素の場合)または活性毒素の自然な生成の過程においてそのカテプシンまたはカスパーゼに曝露されない場合にのみ、外因性活性化因子または活性化因子前駆体として用いることができる。例えば、孔形成毒素のプロトキシンを細胞表面で活性化し、続いてオリゴマー化して孔形成する。孔形成毒素はリソソームに局在しないため、カテプシンおよびカスパーゼを外因性活性化因子として適用することができる。その一方で、A-B毒素DTはエンドソームおよび/またはリソソームを通じて細胞質ゾルへと直接トランスロケーションすることが公知であるため、カテプシンが自然に存在する場合、カテプシンをDTに基づくプロトキシンの外因性活性化因子として用いるべきではない。VCEに基づく毒素は細胞質ゾルへのトランスロケーションの前にトランスゴルジ網およびERに運ばれるため、これらは外因性活性化因子としてのリソソームプロテアーゼの使用に適合性でありうる。カスパーゼ-1、-2、-3、-4、-5、-6、-7、-8、-9およびその他を含む、すべてのカスパーゼは高い選択性を示し、アスパラギン酸残基に隣接するタンパク質を切断する(Timmer and Salvesen, Cell Death Diff. 14:66-72 (2007))。カスパーゼ-1、4、-5、および-14の好ましい切断部位は(W/Y)EXD↓Φで、ここでXは任意の残基であり、ΦはGly、Ala、Thr、Ser、またはAsnである(SEQ ID NO: 22)。カスパーゼ-8、-9、および-10の好ましい基質は(I/L)EXD↓Φ(SEQ ID NO: 23)の配列を含み、カスパーゼ-3および-7の好ましい基質はDEXD↓Φ(SEQ ID NO: 24)を含む。カスパーゼ-6は好ましくはVEXD↓Φ(SEQ ID NO: 25)で切断し、一方、カスパーゼ-2は(V/L)DEXD↓Φ(SEQ ID NO: 26)を選択的に標的とする。カスパーゼの天然阻害剤、例えば、IAPは、通常は細胞内に局在する(LeBlanc, Prog. Neuropsychopharmacol. Biol. Psychiatry 27:215 (2003))ため、血漿中の阻害の確率は劇的に低下する。カスパーゼ-1およびカスパーゼ-4はPI-9によって中程度の速度で阻害されうるが、これはカスパーゼ-3を阻害しない(Annand et al., Biochem. J. 342:655 (1999))。
他のヒトプロテアーゼ
患部細胞によって分泌される、または癌浸潤および転移に関連している、特定の疾患マーカーとして同定されているものを含む、多くのヒトプロテアーゼは、異種プロテアーゼとして本発明のために有用でありうる。これらのプロテアーゼは十分に研究され、タンパク質分解活性および配列選択性についての詳細な情報が利用可能である。そのようなプロテアーゼの例には、GSGR↓SA(SEQ ID NO: 27)を認識して切断する、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子(uPA);基質配列SS(Y/F)Y↓SG(SEQ ID NO: 28)を好む前立腺特異抗原(PSA);HPFHL↓VIH(SEQ ID NO: 29)で切断する、レニン;およびHPVG↓LLAR(SEQ ID NO: 30)で切断しうる、MMP-2が含まれる。さらなる例には、カスパーゼ、エラスターゼ、カリクレイン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)ファミリー、プラスミノゲン活性化因子ファミリー、ならびに線維芽細胞活性化タンパク質が含まれる。
特定の場合に、1つの疾患に関与するプロテアーゼは、通常はその過剰発現に関与しない別の疾患の治療のために有用でありうる。他の場合に、天然のレベルで分泌されたプロテアーゼの濃度は、対応する毒素融合物を標的細胞の死滅に必要な程度まで活性化するのに十分でない、すなわち、標的細胞上に機能的に存在しないこともある。標的プロテアーゼ融合物を通じて細胞に送達されるさらなるタンパク質分解活性は、所望の毒素活性化を提供するであろう。一つの態様において、プロテアーゼ融合物は患部細胞によって分泌されるプロテアーゼと同じ配列特異性を有しうる。もう一つの態様において、全体の切断効率を高めるために、複数の異なるタンパク質分解活性の組み合わせを用いることが望ましい場合もあり、タンパク質分解活性の少なくとも1つは標的プロテアーゼ融合物によって提供される。
内因性プロテアーゼのさらなる例には、特定の疾患においてアップレギュレートされる、特定の疾患マーカーとして同定されているものが含まれる。そのようなプロテアーゼの非限定例には、GSGR↓SA(SEQ ID NO: 31)を認識して切断する、ウロキナーゼプラスミノゲン活性化因子(uPA);基質配列SS(Y/F)Y↓SG(SEQ ID NO: 32)を好む前立腺特異抗原(PSA);HPFHL↓VIH(SEQ ID NO: 33)で切断する、レニン;およびHPVG↓LLAR(SEQ ID NO: 34)で切断しうる、MMP-2が含まれる。そのような設計された酵素前駆体の使用は、活性となるのに特異的N末端アミノ酸Ileを必要とする、GrBなどのプロテアーゼにとって最適ではないこともあるが、そのようなインビボ活性化プロセスを他のプロテアーゼおよび活性化酵素に適用可能でありうる。
または、可能性のある候補プロテアーゼを、血漿中の公知のプロテイナーゼ阻害剤との相互作用により、またはこれらのプロテイナーゼ阻害剤によって生じる複雑化の可能性を避けるためにヒト血漿との直接の相互作用により、インビトロでスクリーニングしてもよい。または、同族の阻害剤が血漿中で見いだされるプロテアーゼを改変して、阻害に抵抗する変異型を提供することもできる。例えば、公知のHIV-1プロテアーゼ阻害剤に抵抗性の変異プロテアーゼを選択するために、インビトロ大腸菌発現-スクリーニング法が開発されている(Melnick et al., Antimicrob. Agents Chemother. 42:3256 (1998))。
レトロウイルスプロテアーゼを本発明のために用いてもよい。ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)(Beck et al., 2002)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)(Shuker et al., Chem. Biol. 10:373 (2003))のものを含む、ヒトレトロウイルスプロテアーゼが抗ウイルス療法の標的として広範に研究されている。これらのプロテアーゼは、長い認識配列および高い基質選択性を有することが多い。
ピコルナウイルスプロテアーゼを本発明のために用いてもよい。そのようなピコルナウイルスプロテアーゼは、例えば、ヒトライノウイルス(HRV)の抗ウイルス療法の標的として研究されている(Binford et al., Antimicrob. Agents Chemother. 49:619 (2005))。
任意の起源の組換え異種プロテアーゼを、前述の特質を有するように改変し、本発明のために用いてもよい。例えば、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼは非常に高い基質特異性よび触媒効率を有し、組換えタンパク質からペプチドタグを除去するための手段として広く用いられる(Nunn et al., J. Mol. Biol. 350:145 (2005))。TEVプロテアーゼは、タンパク質接合部に存在する、伸長した7アミノ酸残基の長いコンセンサス配列E-X-X-Y-X-Q↓S/G(ここでXは任意の残基である)(SEQ ID NO: 35)を認識する。当業者であれば、特定のプロテアーゼをその配列特異性が変わって別の基質配列を好むように改変可能であることを理解するであろう(Tozser et al., FEBS J. 272:514 (2005))。
さらなる修飾を作成してプロテアーゼの活性および/または特異性を高めることができる。これらの修飾には、血清に対する安定性を高めるため、または免疫原性を低下させるためのPEG化が含まれ、遺伝的改変/選択は、特定の阻害剤に対する抵抗性、高い熱安定性、および改善された溶解性などの、変化した性質を有する変異プロテアーゼを生成しうる。
レトロウイルスプロテアーゼ
組換えヒトレトロウイルスプロテアーゼを本発明のために用いてもよい。ヒト免疫不全症ウイルス1型(HIV-1)(Beck et al., 2002)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)(Shuker et al., Chem. Biol. 10:373 (2003))、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS)のものを含む、ヒトレトロウイルスプロテアーゼが抗ウイルス療法の標的として広範に研究されている。これらのプロテアーゼは、長い認識配列および高い基質選択性を有することが多い。例えば、SQNY↓PIV(SEQ ID NO: 36)はHIV-1プロテアーゼの好ましい切断配列であることが判明し(Beck et al. Curr. Drug Targets Infect. Disord. 2(1):37-50 (2002)、HTLVプロテアーゼの好ましい切断配列はPVIL↓PIQA(SEQ ID NO: 37)であることが判明した(Naka et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 16(14):3761-3764 (2006)。
コロナウイルスプロテアーゼ
コロナウイルスまたはトロウイルスプロテアーゼは、動物ウイルスのコロナウイルス科(Coronaviridae)のメンバーによってコードされ、高い切断特異性を示す。そのようなプロテアーゼは本発明のもう一つの好ましい態様である。SARS 3C様プロテアーゼは、AVLQ↓SGF(SEQ ID NO: 38)で選択的に切断することが明らかにされている(Fan et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 329(3):934-940 (2005))。
ピコルナウイルスプロテアーゼ
ピコルナウイルスプロテアーゼを本発明のために用いてもよい。そのようなピコルナウイルスプロテアーゼは、例えば、ヒトライノウイルス(HRV)の抗ウイルス療法の標的として研究されている(Binford et al., Antimicrob. Agents Chemother. 49:619 (2005))。HRV 3Cプロテアーゼは、ALFQ↓GP(SEQ ID NO: 39)を認識して切断する(Cordingley et al. J. Biol. Chem. 265(16):9062-9065 (1990))。
ポティウイルスプロテアーゼ
ポティウイルスプロテアーゼは、植物ウイルスのポティウイルス科(Potyviridae)のメンバーによってコードされて、高い切断特異性を示し、本発明のもう一つの好ましい態様である。例えば、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼは非常に高い基質特異性よび触媒効率を有し、過剰発現された組換えタンパク質からペプチドタグを除去するための手段として広く用いられる(Nunn et al., J. Mol. Biol. 350:145 (2005))。TEVプロテアーゼは、タンパク質接合部に存在する、伸長した7アミノ酸残基の長いコンセンサス配列E-X-X-Y-X-Q↓S/G(ここでXは任意の残基である)(SEQ ID NO: 40)を認識する。当業者であれば、特定のプロテアーゼをその配列特異性が変わって別の基質配列を好むように改変可能であることを理解するであろう(Tozser et al., FEBS J. 272:514 (2005))。
他の起源のプロテアーゼ
プロテアーゼは生きている生物にとって生理的に必要であるため、遍在性で、植物、動物、および微生物などの広範な供給源において見いだされる(Rao et al. Microbiol. Mol. Biol. Rev. 62(3):597-635 (1998))。これらのプロテアーゼはすべて本発明のための可能性ある候補である。好ましい態様において、PEG化を用いて本発明の融合プロテアーゼ、特に非ヒト由来のものの免疫学的能力を低減してもよい。PEG化は、血漿残存性の改善および非特異的細胞結合の低減などの、さらなる利点をプロテアーゼ融合タンパク質に付与しうる。
さらなるプロテアーゼは、例えば、PCT出願公報第2008/011157号において見いだすことができ、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
V. 連結
本発明に従い、プロトキシン融合タンパク質内の各部分(例えば、1つまたは複数の細胞標的化部分、1つまたは複数の選択的修飾可能な活性化ドメイン、1つまたは複数の本来活性化可能なドメイン、および1つまたは複数の毒素ドメイン)またはプロトキシン活性化因子融合物、(例えば、1つまたは複数の細胞標的化部分、1つまたは複数の修飾ドメイン、1つまたは複数の本来活性化可能なドメイン、および1つまたは複数の毒素ドメイン)は独立に機能しうるが、それぞれは機能的に連結されている。各融合タンパク質内で、2つの機能性部分の間の機能的連結は分子架橋として作用し、これは共有結合でも非共有結合でもよい。各融合タンパク質の部分は、互いに関して任意の方向、すなわち、一方のC末端から他方のN末端、または一方のC末端から他方のC末端、または一方のN末端から他方のN末端、または内部残基から末端残基もしくは内部残基から内部残基により、機能的に連結されていてもよい。任意のリンカーが、空間的独立を可能にするセパレーターとして、または互いにさらなる官能性を提供するための手段として、またはその組み合わせとして、2つの部分を物理的に連結するための接着剤として役立ちうる。例えば、細胞標的化部分を機能的に連結された酵素部分から分離して、それらが互いの活性を妨害するのを防ぐことが望ましい場合もある。この場合、リンカーは機能的に連結された部分の間の立体的衝突を回避させる。リンカーは、例えば、2つの部分の間の接続の易変性、酵素切断部位(例えば、プロテアーゼの切断部位またはエステラーゼの加水分解部位)、安定性配列、分子タグ、検出可能な標識、またはその様々な組み合わせも提供しうる。
アミノ酸残基の化学的活性化は、1つの分子上のアミノ酸残基の側鎖を別の分子上の残基の側鎖と連結させることになる、当技術分野において周知の様々な方法を通じて、またはアルファアミノ基への側鎖の連結を通じて、または複数のアルファアミノ基の連結により、実施することができる。典型的に、化学的活性化によって誘導される連結は、小分子、ポリペプチドに結合するための複数の末端もしくはポリペプチド上の置換基の特定の部分に適合させた同一の、もしくは同一でないサブユニットの置換されていてもよい分枝もしくは直鎖ポリマー、または置換されていてもよいポリペプチドであってもよいリンカーを通じて達成する。一般的な共有結合によるタンパク質機能的連結物質の例は、Pierce Chemical Corporationによって販売されているものを含む、様々な業者の製品において見いだしうる。一般に、単純な再現可能に製造された物質を提供するために、成分の機能的連結を部位特異的様式で誘導可能であることが好ましい。化学的活性化による機能的連結は、機能が独特である、すなわち活性化される部分に1回だけ存在する、または例えばリジン残基のイプシロンアミノ単位のpKの低下をもたらすなどの、独特の化学的環境のために、優先的に活性化可能である、特定の残基を標的とする化学的活性化の結果でありうる。化学的活性化の可能性ある基は、同じ性質を有するすべての他の残基の遺伝的除去により、例えば、1つ以外のすべてのシステイン残基、または1つ以外のすべてのリジン残基を除去することにより、機能を独特とすることができる。アミノ末端残基は、アルファアミノ基の低いpKにより、または別の活性化可能な基に近接するアルファアミノ基の高い反応性を活用する適当な化学により、都合よく標的とすることができる。後者の例には、天然の化学的連結反応、シュタウディンガー連結反応、およびアルデヒド置換基を提供するためのアミノ末端セリンの酸化が含まれる。化学的活性化は、グリカンの酸化などの天然タンパク質置換基を活性化する反応、またはビオチンもしくはリポ酸により生成されるものなどの他の天然タンパク質修飾を通じても実施することができ、あるいは1つの側鎖の官能基を別のものに変換する、または後で活性化して所望の機能的連結を生成しうる新規化学反応性基を導入する、化学反応に基づいて行うこともできる。後者の例には、リジン残基にスルフヒドリル部分を付与するためのイミノジチオランの使用、またはチオールの官能基を別の所望の反応性部分に変えるためのシステイン部分の適当なマレイミドもしくはハロアセトアミドとの反応が含まれる。化学的活性化は、互いに相互作用して機能的連結を提供する反応性種を提供する、例えば、一方の部分上のヒドラジド、ヒドラジンまたはヒドロキシルアミンおよび他方の部分上のアルデヒドの導入のために、機能的に連結する両方の種において実施することもできる。
非共有結合による機能的連結は、1つの部分ともう1つとの間の相補的表面を提供して、治療的使用における機能的に連結された部分の所期の有用な残存のために安定な複合体を提供することにより得ることができる。そのような非共有結合による連結は、同じもしくは異なっていてもよい複数のポリペプチド、または1つもしくは複数のポリペプチドおよび第二の部分に結合された小分子もしくはリガンドのいずれかから生成することができる。小分子またはリガンドの結合は、ビオチンまたはリポ酸の、自然または人工的ビオチンまたはリポ酸受容体ドメインであってもよく、インビボでの自然の取り込みまたはインビトロでの酵素的ビオチン化もしくはリポイル化のいずれかによって得てもよい、それらの特異的受容体配列への取り込みなどの、インビトロまたはインビボ法を通じて行うことができる。または、タンパク質は、ビオチン誘導体との化学反応により、ビオチンまたは他の部分で置換されていてもよい。タンパク質とカップリングするために用いるビオチン誘導体の一般的な例には、アルデヒド、アミン、ハロアセトアミド、ヒドラジド、マレイミド、およびN-ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの活性エステルが含まれる。一般に用いられる非共有結合による連結の例には、ビオチンおよびその誘導体またはイミノビオチンもしくはジアミノビオチンもしくはチオビオチンなどのビオチン関連置換基の、ストレプトアビジンもしくはアビジンまたはその変異体への結合、メトトレキセートの哺乳動物ジヒドロ葉酸レダクターゼへの結合などの、酵素のそれらの共有結合または非共有結合による特異的阻害剤への結合、自然または合成ロイシンジッパーの互いへの結合、酵素の、抗トリプシンまたはロイペプチンまたはアルファ-2-マクログロブリンなどの特異的または非特異的阻害剤への結合、ビスヒ酸アリールの適当に配置されたシステイン残基を有するアルファヘリックスへの結合、核酸アプタマーとその標的との間;Tat-TAR相互作用などのペプチドと核酸との間の結合によって誘導される連結が含まれる。
別のポリペプチドとのカップリングを提供するための1つのポリペプチドの酵素的活性化も用いることができる。基質様分子との反応により共有結合による修飾を受ける酵素または酵素ドメインを用いて融合物を生成することもできる。そのような酵素または酵素ドメインの例には、O6-アルキルグアニンDNA-アルキルトランスフェラーゼ(Gronemeyer et al. Protein Eng Des Sel. 2006 19(7):309-16)、チミジル酸シンターゼ、または、例えば、DPPIV(SEQ ID NO: 41)のような、活性部位の共有結合もしくは安定な非共有結合による修飾に感受性のプロテアーゼが含まれる。
本発明は、近くまたは反対の末端に配置された少なくとも2つの相互作用性または反応性官能基を含み、それぞれは連結される部分の1つに結合または反応しうる、二官能性または多官能性リンカーを特徴とする。複数の官能基は同じである(すなわち、リンカーは同種二官能性である)こともでき、または異なる(すなわち、リンカーは異種二官能性である)こともできる。当技術分野において公知の様々な二官能性または多官能性架橋剤が、リンカーとしての使用に適している。例えば、シスタミン、m-メレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミド-エステル、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオネート、メチルメルカプトブチルイミデート、ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)、および多くの他の架橋剤が、例えば、Pierce Chemical Co. Rockford, ILから市販されている。そのような特定の機能的連結反応に適したその他の化学的直交反応には、例えば、シュタウディンガー連結反応、Cu[I]触媒[2+3]付加環化、および天然の連結反応が含まれる。
二官能性または多官能性リンカーは相互作用性であるが非反応性であってもよい。そのようなリンカーは、前述の非共有結合による相互作用の任意の例の複合使用を含む。
リンカーの長さおよび組成は、分子架橋としてのその目的を満たすことができるならば、かなり変動することができる。リンカーの長さおよび組成は一般に、リンカーの所期の機能、ならびに任意に合成の容易さ、安定性、特定の化学および/または温度パラメーターに対する抵抗性や、生体適合性などの他の因子を考慮に入れて選択される。例えば、リンカーは、毒素の標的化に関連する細胞標的化部分の調節能力、または活性化および/もしくは細胞毒性に関連する毒素もしくは酵素の活性を著しく妨害すべきではない。
本発明の使用に適したリンカーは、前述のペプチドを含む、分枝、非分枝、飽和、または不飽和炭化水素鎖であってもよい。
さらに、リンカーがペプチドである場合、リンカーを毒素部分および酵素部分ならびに/または細胞標的化部分に組換えDNA技術を用いて結合することもできる。
本発明の一つの態様において、リンカーは1から100炭素原子を有する分枝または非分枝、飽和または不飽和炭化水素鎖であって、ここで炭素原子の1つまたは複数は-O-または-NR-(ここで、RはH、またはC1からC6アルキルである)で任意に置き換えられており、かつ鎖は炭素上で(C1〜C6)アルコキシ、(C3〜C6)シクロアルキル、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C1〜C6)アルキルチオ、アミド、アジド、シアノ、ニトロ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ(=O)、カルボキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、およびヘテロアリールオキシの群より選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
適当なリンカーの例には、1から100原子の鎖長を有するペプチド、ならびにエタノールアミン、エチレングリコール、6から100炭素原子の鎖長を有するポリエチレン、3から30の反復単位を有するポリエチレングリコール、フェノキシエタノール、プロパノールアミド、ブチレングリコール、ブチレングリコールアミド、プロピルフェニルや、エチル、プロピル、ヘキシル、ステリル、セチル、およびパルミトイルアルキル鎖などの基由来のリンカーが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
一つの態様において、リンカーは1から50炭素原子を有する分枝または非分枝、飽和または不飽和炭化水素鎖であって、ここで炭素原子の1つまたは複数は-O-または-NR-(ここで、Rは上で定義したとおりである)で任意に置き換えられており、かつ鎖は炭素上で(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C1〜C6)アルキルチオ、アミド、ヒドロキシ、オキソ(=O)、カルボキシ、アリールおよびアリールオキシの群より選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
もう一つの態様において、リンカーは1から50炭素原子を有する非分枝、飽和炭化水素鎖であって、ここで炭素原子の1つまたは複数は-O-または-NR-(ここで、Rは上で定義したとおりである)で任意に置き換えられており、かつ鎖は炭素上で(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルカノイル、(C1〜C6)アルカノイルオキシ、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、(C1〜C6)アルキルチオ、アミド、ヒドロキシ、オキソ(=O)、カルボキシ、アリールおよびアリールオキシの群より選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
本発明の特定の態様において、リンカーは1から50原子の鎖長を有するペプチドである。もう一つの態様において、リンカーは1から40原子の鎖長を有するペプチドである。
当技術分野において公知のとおり、リンカーのプロトキシン部分への(またはリンカー要素の細胞標的化部分への、もしくは細胞標的化部分のプロトキシン部分への)結合は、結合または反応の特定の様式である必要はない。生成物に適当な安定性および生物学的適合性を提供する、様々な非共有結合による相互作用または反応が許容される。
本発明の1つの好ましい態様は、プロトキシンの部分、プロトキシン活性化因子、またはプロトキシン活性化因子前駆体の間の機能的連結を提供するために、酵素反応に依存する。そのような機能的連結を生成する酵素反応の中でも、トランスグルタミナーゼ連結反応、ソルターゼ連結反応、およびインテイン媒介連結反応は高い特異性を提供することが当技術分野において周知である。
上に挙げた好ましいペプチド基質配列は、例示のためのもので、限定的ではない。これらの酵素ファミリーは基質として異なる配列を認識して利用しうることが当技術分野において公知で、これらの配列は本発明の態様として本明細書に含まれる。
いくつかの局面において、本発明は本来活性化可能なリンカーの使用を特徴とする。そのようなリンカーは補体系の酵素によって切断され、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子、トリプシン、プラスミン、またはタンパク質分解活性を有する別の酵素を本発明の一つの態様において用いてもよい。本発明のもう一つの態様に従い、プロトキシンを、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子、プラスミン、トロンビンまたはトリプシンなどのタンパク質分解活性を有する酵素による切断に感受性のリンカーを介して結合する。加えて、プロトキシンをジスルフィド結合(例えば、システイン分子上のジスルフィド結合)を介して細胞標的化部分に結合してもよい。多くの腫瘍は高いレベルのグルタチオン(還元剤)を自然に放出するため、これはジスルフィド結合を還元し、続いて送達部位でプロトキシンを放出することができる。
一つの態様において、細胞標的化部分をプロトキシンに、切断可能なリンカー領域によって連結する。本発明のもう一つの態様において、切断可能なリンカー領域はプロテアーゼ切断可能なリンカーであるが、例えば、小分子によって切断可能な他のリンカーを用いてもよい。プロテアーゼ切断部位の例は、第Xa因子、トロンビンおよびコラゲナーゼによって切断されるものである。本発明の一つの態様において、プロテアーゼ切断部位は、一般に癌によりアップレギュレートされる、または癌に関連するプロテアーゼによって切断されるものである。そのようなプロテアーゼの例は、uPA、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)ファミリー、カスパーゼ、エラスターゼ、およびプラスミノゲン活性化因子ファミリー、ならびに線維芽細胞活性化タンパク質である。さらにもう一つの態様において、切断部位は癌関連細胞により分泌されるプロテアーゼによって切断される。これらのプロテアーゼの例には、マトリックスメタロプロテアーゼ、エラスターゼ、プラスミン、トロンビン、およびuPAが含まれる。もう一つの態様において、プロテアーゼ切断部位は、特定の癌によりアップレギュレートされる、またはその癌に関連するものである。さらにもう一つの態様において、タンパク質分解活性は同じ細胞を標的とするプロテアーゼ融合物によって提供されうる。プロテアーゼによって認識される様々な切断部位が当技術分野において公知で、当業者であれば適当な切断部位を容易に選択するであろう。切断部位の非限定例は本文書の他所に記載している。当技術分野において公知のとおり、これらのプロテアーゼによって認識される他のプロテアーゼ切断部位を用いることもできる。一つの態様において、切断可能なリンカー領域は、内因性プロテアーゼによって標的とされるものである。
化学的リンカーを、カルボキシルトランスフェラーゼまたは細胞標的化部分を有する対応する融合タンパク質によって選択的に切断されうるように、これらのカルボキシルエステラーゼの基質となるよう設計してもよい。1つの好ましい態様は、エステルリンカーの切断を活性化するためのカルボキシルトランスフェラーゼ活性の使用を含む。例えば、分泌されたヒトカルボキシルトランスフェラーゼ-1、-2、および-3をこの目的のために用いてもよいが、それらに限定されるわけではない。さらなる例には、他の起源のカルボキシルトランスフェラーゼが含まれる。
切断可能なリンカーのもう一つの態様は、エンドヌクレアーゼに特異的に感受性の核酸単位を含む。エンドヌクレアーゼはヒト血漿中に高レベルで存在することが知られている。
もう一つの態様において、修飾可能な活性化部分はペプチドではなく、活性化因子または活性化因子前駆体によって提供される同源の酵素活性による作用を受けうる切断可能なリンカーである。切断可能なリンカーは、好ましくは活性化可能なプロトキシン中のフリン様切断配列と同じ位置、または活性化可能な活性化因子前駆体中の酵素前駆体阻害ペプチドの位置に位置する。切断可能なリンカーは、フリン様切断配列を置き換えるか、またはフリン様切断もしくは別の修飾可能な活性化部分に並行して結合して、活性化のためにフリン様切断または他のタンパク質分解事象およびリンカー切断の両方を必要とするプロトキシンを提供してもよい。一つの態様において、切断可能なリンカーはVCEに基づくプロトキシンのADPリボシルトランスフェラーゼドメインを、その、または別のプロトキシンのトランスロケーションドメインに連結する。もう一つの態様において、切断可能なリンカーはPEAまたはVCEに基づくプロトキシンのトランスロケーションドメインを、同じまたは異なる毒素のADPリボシルトランスフェラーゼドメインに連結する。さらにもう一つの態様において、切断可能なリンカーは孔形成毒素の孔形成ドメインをC末端阻害ペプチドと連結する。
好ましい切断可能なリンカーは、インビボ条件に対して安定であるが、活性化因子の作用には感受性のものである。適当なリンカーの多くの例が、抗体指向酵素プロドラッグ療法を開発する試みの文脈で提供されている。例えば、蛍光体などの活性部分の放出を引き起こす酵素基質の大きなクラスが、自壊的(self-immolative)リンカーとして公知のものの使用を通じて考案されている。自壊的リンカーは、例えば、糖とアリール部分との間の、上流の共役連結の放出後に活性部分を遊離するように設計される。そのようなリンカーはアリールメチルエーテルのグリコシド、例えば、3-ニトロ,4-ヒドロキシベンジルアルコールのフェノールグリコシド;例えば、Ho et al. Chembiochem, 2007 Mar 26;8(5):560-6参照、または4-アミノベンジルアルコールのフェノールアミド、例えば、Niculescu-Duvaz et al. J Med Chem. 1998 Dec 17;41(26):5297-309もしくはToki et al. J Org Chem. 2002 Mar 22;67(6): 1866-72に基づいていることが多い。
グリコシドに基づく自壊的リンカーを生成するために、フェノールヒドロキシルをアルファ-1-Brガラクトースまたはアルファ-1-Brグルクロン酸などの1-Br-置換糖との反応により糖化して、活性化酵素の基質を提供し、次いでベンジルアルコール部分をホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールなどのカルボニル化試薬で活性化し、一級アミンと反応させてカルバメート連結を提供する。アリールグリコシド結合またはアリールエステルの切断後、アリール部分を脱離してカルバモイル部分を残し、次いでこれを脱離して、CO2および再生アミンを得る。アミンはポリペプチド鎖のアルファアミノ基またはリジン側鎖のイプシロンアミノ基であってもよい。
アミド結合に基づく自壊的リンカーを生成するために、4-アミノベンジルアルコールのフェニルアミンを適当なペプチドまたはアミノ酸の活性化カルボキシル基と反応させて、適当なペプチダーゼ、例えば、カルボキシペプチダーゼG2の基質でありうるフェニルアミドを生成する。Niculescu-Duvaz et al. J Med Chem. 41(26):5297-309 (1998)。次いで、ベンジルアルコール部分をホスゲンまたはカルボニルジイミダゾールなどのカルボニル化試薬で活性化し、一級アミンと反応させてカルバメート連結を提供する。アリールアミド結合の切断後、アリール部分を脱離してカルバモイル部分を残し、次いでこれを脱離して、CO2および再生アミンを得る。このアミンはポリペプチド鎖のアルファアミノ基またはリジン側鎖のイプシロンアミノ基であってもよい。
本発明の適当な自壊化(self-immolating)活性化部分を生成するために、アリール基を、毒素部分またはトランスロケーション部分または阻害ペプチド部分などのプロトキシンまたは活性化因子前駆体の1つの要素への連結を提供する反応性部分で置換する。
自壊的リンカーの類似の型は当技術分野において周知である。例えば、Papot et al. Bioorg Med Chem Lett. 8(18):2545-8 (1998)は、グルクロニダーゼによる切断後にアリールリンカー部分の脱離を起こす、アリールマロンアルデヒドに基づくグルクロニドプロドラッグの生成を教示している。本発明の文脈におけるアリールマロンアルデヒドに基づく適当なリンカーは、アリール置換基が毒素部分の1つの末端、例えば、フリン切断部位の位置に機能的に連結されており、かつカルバモイル官能基がトランスロケーション部分または阻害部分に機能的に連結されている、修飾可能な活性化部分を提供する。Papotらによって考案されたシステムにおいて、グルクロニダーゼによる切断はアリールマロンアルデヒドの脱離およびプロトキシンの活性化を引き起こすことになる。同様の脱離事象が、7-アミノセファロスポラン酸に基づくリンカーのラクタム部分の加水分解後に起こることが知られており、ベータラクタム抗生物質または関連する構造に基づく酵素により活性化されたプロドラッグは当技術分野において周知である。例えば、Alderson et al. Bioconjug Chem. 17(2):410-8 (2006)は、Papotらによって開示されたアリールマロンアルデヒドと同様の様式でカルバメート部分の脱離および切断を起こす7-アミノセファロスポラン酸に基づくリンカーの生成を教示している。加えて、Harding et al. Mol Cancer Ther. 4(11):1791-800 (2005)は、7-アミノセファロスポラン酸核に基づくプロドラッグ部分のための活性化因子として都合よく適用しうる、免疫原性が低減されたベータラクタマーゼを教示している。
さらにもう一つの態様において、修飾可能な活性化部分はペプチドであるが、自然のフリン様プロテアーゼ切断部位と同じ位置の、または自然のフリン様切断部位と並行して、いずれか、または両方の末端で柔軟な非ペプチドリンカーにより機能的に連結されている。そのような態様において、活性化因子は、修飾可能な活性化部分のペプチドを認識する同族のプロテアーゼまたはペプチドヒドロラーゼである。二重に誘発されたプロトキシンにおいて、フリン様切断部位を修飾可能な活性化部分で置き換え、切断可能なリンカーを修飾可能な活性化部分に並行して結合する。そのようなプロトキシンにおいて、プロトキシンを活性化するために2つの活性化因子の作用が必要とされる。
VI. 毒素融合およびプロテアーゼ融合タンパク質の単離および精製
A. 組換えタンパク質精製のための一般的戦略
Current Protocols in Protein Science (Coligan et al, eds. 2006)に記載のものなどの、当業者には公知の組換えタンパク質を単離および精製するための多くの確立された戦略がある。所望の組換えタンパク質と混入物との間の物理化学的特性の相違を利用する、イオン交換クロマトグラフィ、疎水性相互作用(逆相)クロマトグラフィ、およびサイズ排除(ゲルろ過)クロマトグラフィなどの、通常のクロマトグラフィが広く用いられる。HPLCも用いることができる。
組換えタンパク質の精製を促進するために、特異的プロテアーゼを用いて後で除去しうる、N末端またはC末端ポリペプチド(タグ)が付いた融合タンパク質の一部としての標的タンパク質を発現するための様々なベクター系が開発されている。そのようなタグを用いて、アフィニティクロマトグラフィを適用してタンパク質を精製することができる。そのようなタグの例には、特異的抗体があるタンパク質およびペプチド(例えば、抗FLAG抗体カラムを用いて精製したFLAG融合物)、特異的リガンドを含むカラムに特異的に結合しうるタンパク質(例えば、グルタチオンアフィニティゲルで精製したGST融合物)、固定化金属カラムに親和性を有するポリヒスチジンタグ(例えば、Ni2+カラムに固定化した6 Hisタグで、イミダゾールにより溶離)、および発現中に宿主により、または単離後にインビトロでビオチン化することができ、アビジンカラムでの精製を可能にする配列(例えば、BirA)が含まれる。
B. 不溶性型で発現された融合タンパク質の単離および精製
多くの組換え融合タンパク質が大腸菌における封入体、すなわち、主に非天然状態の所望の組換え産物からなる高密度凝集物として発現される。事実、最も多く報告された大腸菌において発現されるDT-ScFv融合タンパク質は、不溶性型で得られる。通常、封入体は(a)標的タンパク質は産生される濃度で不溶性であるため、(b)標的タンパク質は細菌環境で正しく折りたたむことができないため、または(c)標的タンパク質は還元細胞内環境で正しいジスルフィド結合を形成することができないために生成する。
当業者であれば、可溶性の活性融合タンパク質を封入体から得るために、異なる方法を用いうることを理解する。例えば、封入体を他の細胞成分から分画遠心法により分離して、ペレット画分にあるほぼ純粋な不溶性生成物を得ることができる。封入体を界面活性剤および変性剤、尿素またはグアニジン・HClのいずれかの混合物で抽出し、続いて変性剤存在下で最初の精製段階としてのゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィ、または金属キレートクロマトグラフィにより部分的に精製することができる。可溶化し、部分精製した蛋白質を、凝集を最小限にし、ジスルフィド結合の正しい形成を可能にする条件下、変性剤の制御された除去により再び折りたたむことができる。非生産的凝集を最小限にするために、再折りたたみの間は低いタンパク質濃度を用いるべきである。加えて、非変性濃度の尿素またはグアニジン・HCl、アルギニン、界面活性剤、およびPEGなどの様々な添加物を用いて、折りたたみ中間体に存在する疎水性表面の間の分子間結合を最小限にすることができる。
C. 可溶性型で発現された融合タンパク質の単離および精製
組換えタンパク質を、可溶性型で発現し、精製することもできる。封入体で発現されない組換えタンパク質は、細胞内で可溶性であるか、または排出ベクターを用いる場合、細胞外(または、大腸菌が宿主である場合、おそらく細胞周辺)である。可溶性タンパク質は前述の通常の方法を用いて精製することができる。
VI. 細胞成長の阻害を評価するための検定
細胞増殖および細胞死を評価する検定を含む、当技術分野において周知の様々な検定は、本発明のタンパク質調製物の有効性を調べるために有用である。下記は、本発明における試薬の細胞毒性を分析するために用いうる多くの検定の例である。
A. タンパク質合成阻害検定
多くの毒素(例えば、VCE)はそれらの細胞毒性をタンパク質合成の阻害を通じて発揮するため、毒素への曝露後に細胞によって合成されるタンパク質を直接定量する検定は特に有用である。この検定において、細胞を毒素に曝露し、次いで[3H]-Leu、[35S]-Metまたは[35S]-Met-Cysなどの放射性アミノ酸と共に一時的にインキュベートする。続いて、タンパク質に取り込まれた放射性アミノ酸の量を、通常は細胞を溶解し、タンパク質を10%トリクロロ酢酸(TCA)で沈澱させることにより定量し、どれだけのタンパク質が合成されるかの直接的尺度を提供する。そのような検定を用いて、DTの細胞への侵入はタンパク質合成の即時阻止には関連しないが、細胞質ゾルにおける単一のDT触媒断片分子の持続性作用(4〜24時間)は、低い毒素濃度で完全なタンパク質合成阻害を得るのに十分であることが示された(Falnes et al., J. Biol. Chem. 275:4363 (2000))。
この方法の延長がルシフェラーゼによる検定である(Zhao and Haslam, J. Med. Microbiol. 54:1023 (2005))。ルシフェラーゼcDNAを様々な***中または非***中の哺乳動物細胞に、アデノウイルス発現系を用いて取り込ませ、得られた細胞に、短い細胞内半減期のために追加のPEST配列を含むように改変されているルシフェラーゼcDNAを構成性に転写させた。検定は細胞中のタンパク質合成のレベルを、短命なルシフェラーゼによって触媒されるD-ルシフェリン反応からの光出力を通じて測定する。ルシフェラーゼmRNAを構成性に発現する細胞において、タンパク質合成の阻害はルシフェラーゼ翻訳の低減および光出力の比例的低下を引き起こす。
B. チミジン取り込み検定
細胞の増殖速度を、[3H]-チミジンの細胞核酸への取り込み定量により評価することができる。この検定を毒素(例えば、DTに基づく免疫毒素)の細胞毒性を分析するために用いてもよい。この方法を用いて、DT-IL3免疫毒素がヒト骨髄性白血病細胞株を有するIL3-受容体の成長阻害において活性であることが示された(Frankel et al., Leukemia. 14:576 (2000))。本発明の毒素融合およびプロテアーゼ融合タンパク質を、そのような検定を個別または組み合わせで用いて試験してもよい。
C. コロニー形成検定
コロニー形成は、特定の他の一般に用いられる方法よりも、はるかに感度の高い尺度を提供しうる。この感度増大の理由は、コロニー形成を細胞が増殖の状態にあり、したがって毒性効果に対して感受性が高い間に評価しているという事実であろう。コロニー形成検定の感度、ならびに用量および時間依存性効果が検出可能であるという事実から、短期および長期曝露期間を調べることが可能となり、かつ回収試験も可能である。例えば、組換えDT-IL6融合タンパク質のヒト骨髄腫細胞株に対する細胞毒性が、U266骨髄腫細胞によるメチルセルロースコロニー形成を用いて調査された。正常な骨髄およびU266細胞の両方を含む培養物において、DT-IL-6はU266骨髄腫コロニーの成長を効果的に阻害したが、正常な骨髄赤血球、顆粒球および混合赤血球/顆粒球コロニー成長に対してはほとんど効果がなかった(Chadwick et al., Haematol. 85:25 (1993))。
D. MTT細胞毒性検定
特定の融合タンパク質または融合タンパク質の組み合わせの細胞毒性を、MTT細胞毒性検定を用いて評価することができる。ヒトGMCSFの高い親和性受容体を有するヒト白血病細胞株に対するDT-GMCSF融合タンパク質の細胞毒性が、そのようなMTT検定、コロニー形成検定、およびタンパク質阻害検定を用いて示された(Bendel et al., Leuk. Lymphoma. 25:257 (1997))。典型的なMTT検定において、黄色のテトラゾリウム塩(MTT)が代謝的に活性な細胞で還元されて不溶性の紫色ホルマザン結晶を生じ、これを界面活性剤の添加によって可溶化し、UV-VIS分光法で定量する。細胞を80〜100%コンフルエンスまで培養した後、これらを無血清緩衝液で洗浄し、細胞毒性物質で処理する。細胞をMTT試薬と共に約2から4時間インキュベートした後、界面活性剤溶液を加えて細胞を溶解し、着色結晶を可溶化する。試料を570nmの波長で分析し、生成した色の量は生細胞数と直接比例する。
VII. VCE融合タンパク質の機能検定
A. インビトロタンパク質合成阻害検定
真核細胞において、VCEの触媒ドメインが延長因子2(EF-2)を、細胞質へのエンドサイトーシス後にそのADPリボシル化を触媒することによって不活化しうるため、VCEはタンパク質合成を阻害する。例えば、ウサギ網状赤血球溶解物およびコムギ胚芽抽出物を用いる、インビトロでの真核細胞翻訳系は、組換えVCE融合タンパク質の触媒機能を試験するために適している可能性がある。例えば、NAD+、アミノ酸、[35S]-Met、DNA鋳型、およびRNAポリメラーゼを補充した、TNT結合コムギ胚芽抽出物を用いて、組換え発現させたDTの触媒断片によるタンパク質合成の阻害が試験されている(Epinat and Gilmore, Biochim. Biophys. Acta. 1472:34 (1999))。35S-標識翻訳タンパク質のレベルはDT毒性の程度の指標である。
これらのインビトロ検定を用いて、特定のタンパク質分解活性非存在下または存在下でVCE融合物の阻害効果をスクリーニングし、改変VCE融合タンパク質ならびにプロテアーゼ融合タンパク質の機能の完全性を分析するための容易な検定を提供することができる。
B. インビトロEF-2 ADPリボシル化検定
VCEは、NADのADPリボース部分の、ジフタミドと呼ばれるEF-2の翻訳後修飾されたHis715への転写を触媒することによってタンパク質合成を阻害する。したがって、VCE融合物の機能を、DTについて以前に示されたとおり、その触媒活性を放射性標識したADPリボースの組換えEF-2への伝達速度に相関させることにより、インビトロで直接検定することもできる(Parikh and Schramm, Biochemistry 43: 1204 (2004))。この検定はADPリボシルトランスフェラーゼ活性の阻害を試験するために適用されており、DTに基づく免疫毒素についての検定の1つとしてよく用いられる(Frankel et al., Leukemia. 14:576 (2000))。ビオチン化NADまたはエテノ-NADなどの非放射性標識したNADを基質として用いてもよい(Zhang. Method Enzymol. 280:255-265 (1997))。
C. インビトロタンパク質分解活性検定
組換えプロテアーゼ融合タンパク質の機能活性を、プロテアーゼの認識配列を含むペプチドまたはタンパク質基質のいずれかを用いて、インビトロで検定してもよい。様々なプロトコルが当業者には周知である。
VIII. タンパク質の投与
本発明のタンパク質は典型的に、クモ膜下、皮下、粘膜下、または腔内注射ならびに静脈内または動脈内注射などの任意の投与経路を用いての注射手段により、被験体に投与する。したがって、タンパク質を、例えば、患者の血流中へのタンパク質の静脈内注射によって全身に注射してもよく、またはタンパク質を特定の部位に直接注射することもできる。本発明のタンパク質は単独、または他のタンパク質もしくは治療法との組み合わせで投与することもできる。
本発明のプロトキシンは、プロトキシン活性化因子またはプロトキシン活性化因子前駆体の投与の前、同時、または後に投与することができ、任意に本発明の活性化因子前駆体活性化因子の投与の前、同時、または後に投与する。好ましい態様において、投与中の自発的活性化を最小限にするような様式で、成分を投与する。別々に投与する場合、2つまたはそれ以上の融合タンパク質の投与は互いに、例えば、1分、15分、30分、1時間、2時間、6時間、12時間、1日、2日、1週間以上離すことができる。さらに、本発明の融合タンパク質の1つまたは複数を被験体に、単一用量または複数用量で投与してもよい。複数用量を投与する場合、用量は互いに、例えば、1日、2日、1週間、2週間、または1ヶ月離してもよい。例えば、タンパク質は1週間に1回、例えば、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20週間またはそれ以上の期間投与してもよい。任意の特定の被験体に対して、特定の投与法を、個々の必要性およびタンパク質を投与する、またはタンパク質の投与を監視する者の専門的判断に応じて、経時的に調節すべきである。例えば、低い用量が所望の標的細胞の成長を十分に破壊または阻害しない場合、タンパク質の用量を増やすことができる。反対に、標的細胞が効果的に破壊または阻害される場合、タンパク質の用量を減らすこともできる。
主治医が適当な量および投与法を最終的に決定することになるが、タンパク質の治療上有効な量は、例えば、1日に体重1kgあたり約0.0035μgから20μgまたは1週間に体重1kgあたり0.010μgから140μgの範囲であってもよい。治療上有効な量は、1日1回、2日に1回、または1週間に2回投与して体重1kgあたり約0.025μgから10μgの範囲、例えば、約0.025、0.035、0.05、0.075、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、または9.0μgであってもよい。加えて、治療上有効な量は、1週間に1回、2週間に1回、または1ヶ月に1回投与して体重1kgあたり約0.05、0.7、0.15、0.2、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、10.0、12.0、14.0、16.0、または18.0μgの範囲であってもよい。さらに、タンパク質の治療上有効な量は、例えば、2日に1回、1週間に1回、または2週間に1回として約100μg/m2から100,000μg/m2の範囲であってもよい。治療上有効な量は、1日1回、2日に1回、1週間に2回、1週間に1回、または2週間に1回投与して約1000μg/m2から20,000μg/m2の範囲、例えば、約1000、1500、4000、または14,000μg/m2のタンパク質であってもよい。
いくつかの場合には、本発明の成分単独またはコンビナトリアル治療薬中の成分の血漿半減期を修飾することが望ましいこともある。治療的タンパク質の血漿半減期が、Collen et al., Bollod 71:216-219 (1998);Hotchkiss et al., Thromb. Haemostas. 60:255-261 (1988);Browne wt al., J. Biol. Chem. 263:1599-1602 (1988);Abuchowski et al., Cancer Biochem. Biophys. 7:175 (1984))によって記載されたものなどの様々な技術を用いて延長されている。非結合毒素と比べて血清中の半減期が延長している免疫毒素を生成するために、抗体が毒素に化学結合されており、延長した半減期は天然の抗体に起因する。国際公開公報第94/04689号は、哺乳動物血清中のタンパク質の半減期を延長させる性質を有するIgG定常部ドメインに免疫毒素が連結されている、修飾免疫毒素の使用を教示している。IgG定常部ドメインはCH2またはその断片である。
本発明のタンパク質の投与は、他の成分と合わせて、標的細胞の成長を効果的に破壊または阻害するタンパク質の濃度を生じる、任意の適当な手段によるものであってもよい。タンパク質は任意の適当な量で任意の適当な担体物質に含まれていてもよく、一般には組成物の全重量の1〜95重量%の量で存在する。組成物は任意の非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、または腹腔内)投与経路に適した剤形で提供しうる。薬学的組成物を通常の薬学的業務に従って製剤する(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (20th ed.), ed. Gennaro, Williams & Wilkins, 2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. Swarbrick and Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New York参照)。
実験結果
A. 融合タンパク質および細胞株の作成
抗CD19 ScFv VCE(抗CD19 VCE)融合遺伝子の作成
VCEをコードする合成遺伝子を、大腸菌中での発現のために最適化したコドンを用いてCodon Devices(Cambridge, MA)により調製した。VCE由来のタンパク質の精製を容易にするため、およびVCEのER保持シグナルを露出するため、野生型VCEの最後の5アミノ酸(Lys-Asp-Glu-Leu-Lys)(SEQ ID NO: 42)をコードする配列をHisx6タグおよびER保持シグナル(His-His-His-His-His-His-Lys-Asp-Glu-Leu)(SEQ ID NO: 43)をコードする配列で置き換えた。抗CD5-VCEおよび抗CD19-VCE融合物をコードする遺伝子を、抗CD5 ScFvまたは抗CD 19 ScFvコード領域と、柔軟なリンカー(Gly-Ser-Gly-Ala-Ser)(SEQ ID NO: 44)をコードするDNA配列に連結したVCEのドメインIIおよびドメインIIIをコードする配列との遺伝的融合により調製した。グランザイムB活性化可能プロトキシンを、VCEのフリン認識配列(RKPRDL)(SEQ ID NO: 11)をコードする配列をコンセンサスグランザイムB認識配列(IEPDDL)(SEQ ID NO: 17)で置き換えることにより調製した。
ヒトグランザイムB-抗CD19 ScFv(GrB-抗CD19)融合遺伝子の作成
成熟ヒトグランザイムBに対応する配列(アミノ酸21から247)を、OriGene Inc.から入手した全長グランザイムB cDNAクローンから増幅し、合成抗CD19 ScFv DNA断片と共にpEAK15ベクターに3成分連結反応により挿入した(pEAK15 GrB-抗CD19L)。得られる発現作成物中の融合遺伝子のプロモーターはCMV/ニワトリβ-アクチンハイブリッドプロモーターである。融合タンパク質をコードする開いた読み枠は、コペポーダ(Gaussia princeps)ルシフェラーゼ由来のシグナルペプチド、合成N連結グリコシル化部位、FLAGタグおよびエンテロキナーゼ切断配列と続く成熟ヒトグランザイムB配列、柔軟なリンカー(Gly-Gly-Gly-Ser)3(SEQ ID NO: 45)、抗CD19 ScFv、ならびにC末端6Hisタグの生成を指示する。得られる融合タンパク質コード配列の所望の構造をDNA配列決定によって確認した。
ジフテリア毒素抗CD5 ScFv(DT-抗CD5)融合遺伝子の作成
DT-抗CD5融合遺伝子を、ピチア・パストリス中およびヒト細胞株中での発現のために共同で最適化したコドンを用いてRetrogen Co.(San Diego)により化学合成で調製した。フリン認識部位(190 RVRRSVG196)(SEQ ID NO: 46)をコードする配列をコンセンサスグランザイムB認識配列(190 IEPDSG195)(SEQ ID NO: 47)で置き換えた。2つの可能性があるN連結グリコシル化部位を記載のとおりに変異させ(Thompson et al. Protein Eng. 14(12):1035-41 (2001))、6Hisタグ配列を検出および精製のために融合遺伝子のC末端に付加した。融合遺伝子をpPIC9ベクター(Invitrogen)のXhoIおよびNotI部位に、α因子シグナルペプチドおよびKex2切断部位を維持しながらクローニングした。
CD5+Raji、および細胞の生成
Raji細胞(ATCC)を10%鉄補充ウシ血清(Hyclone)、2mM L-Glutamaxを補充したRPMI 1640(Invitrogen)中で維持した。
組換えレトロウイルス形質導入粒子を調製するために、レトロウイルスベクターM3P-GFP中に見られるGFPコード配列をヒトCD5をコードする全長cDNAで置き換えた。水疱性口内炎ウイルスエンベロープ糖タンパク質(VSVG-偽型ウイルス粒子を生成するために、直鎖化M3P-CD5プラスミドをpMD-MLV pMD-VSVGと共に、形質移入の前日に10cm2プレート1枚につき5×106で播種した293 ETN細胞に同時形質移入した。M3P-CD5、pMD-MLV-G/PおよびpMD-VSVG DNAを混合し、DNA 1μgあたり2.5μlのTransFectin(Bio-Rad)を用いて、10cm2プレート1枚につきそれぞれ10μg、7μgおよび3μgで形質移入した。ウイルス粒子を形質移入の48時間後に回収し、0.45μmフィルター(Corning)を通してろ過した。
形質導入のために、5×105Raji細胞を1.5mlの培地に懸濁し、6穴プレート中の1.5mlのろ過ウイルスと混合した。3μlの8mg/mlポリブレンを混合物に、最終濃度8μg/mlまで加えた。プレートを2000rpmで1時間遠心分離した後、5%CO2を含む37℃のインキュベーターで培養を開始した。CD5を発現するRaji細胞を単離するために、感染細胞をFITC結合抗ヒトCD5抗体(eBioscience)で染色した後に選別した。高濃度のCD5を発現するRaji細胞を回収し、細胞毒性検定に用いた。
フローサイトメトリー分析
細胞表面上のCD5およびCD19の存在を、間接的免疫蛍光染色を用いて分析した。細胞を、細胞100万個あたり0.5μgの濃度のマウス抗ヒトCD5またはマウス抗ヒトCD19(Pharmingen, San Diego, CA)と共にインキュベートした。RPEAに結合したヤギF(ab')2抗マウスIgG1(Southern Biotechnology)を、細胞100万個あたり0.25μgの濃度で二次抗体として用いた。染色した細胞をフローサイトメトリー(FAXCaliber)で分析した。
B. 293ETN細胞由来GrB-抗CD19融合物の発現および精製
293ETN細胞を10cm2プレート1枚につき5 106〜6 106細胞で播種し、12μgのpEAK15 GrB-抗CD19Lおよび25μlのTransFectin(Bio-Rad)で、製造者のプロトコルに従って形質移入した。形質移入した細胞をOpti-MEM(Invitrogen)中で3日間培養し、融合タンパク質を蓄積させた。上清を回収して、あらかじめ平衡化したNi-NTA樹脂(Qiagen)と共にインキュベートし、融合タンパク質を50mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、250mMイミダゾールおよび5%グリセロールを含む緩衝液で溶離した。精製したGrB-抗CD19融合タンパク質をエンテロキナーゼ(New England Biolabs)と共に室温で終夜インキュベートし、グランザイムBのタンパク質分解活性を活性化した。エンテロキナーゼおよびエンテロキナーゼにより放出されたN末端ペプチドを除去するために、反応混合物をNi-NTA樹脂によるアフィニティ精製にかけた。もう一つの調製の形において、エンテロキナーゼおよびエンテロキナーゼにより放出されたN末端ペプチドをゲルろ過精製(superdex 200, G E Healthcare)によって除去した。グランザイムB-抗CD19 ScFvのタンパク質分解活性を、精製タンパク質を蛍光原ペプチド基質(Ac-IEPD-AMC, Sigma Aldrich)と共にインキュベートすることによって測定した。蛍光生成物の蓄積を30秒ごとに、それぞれ380および460nmの励起および発光波長で15分間モニターした。
C. P.パストリス由来DT-抗CD5融合物の発現および精製
ピチア・パストリスKM71細胞(Invitrogen)を電気穿孔法により発現プラスミドで形質転換した。陽性クローンを製造者のプロトコルに従って選択した。大規模精製のために、1つのコロニーを10mlのBuffer Minimal Glycerol培地(BMG)pH6.0中、28℃で終夜培養した。終夜培養物を1LのBMG pH6.0に移し、28℃でOD600が6.0に達するまで培養した。タンパク質発現を誘導するために、培養物を遠心沈降し、1%カザミノ酸を含む緩衝化(pH6.6)メタノール複合培地(BMMYC)100mlで再懸濁し、15℃で48時間培養した。上清を回収し、5%NaOHでpH7.6に調節した。GrB-抗CD19融合タンパク質の精製のために、清澄化した上清を前述のとおりアフィニティ精製にかけた。
D. 大腸菌由来抗CD5-VCEおよび抗CD19 VCE融合タンパク質の発現および精製
抗CD5-VCE、抗CD19-VCEおよびその様々な変異体に対応するDNA配列をpET22bベクター(Novagen)のNcoIおよびNotI部位の間にクローニングした。形質転換した細菌細胞(BL21)をLB培地中、37℃で培養した。タンパク質発現を0.2mM IPTGにより17℃、OD600=0.3〜0.5で終夜誘導した。細菌細胞周辺画分を記載のとおりに回収し(Malik et al. Protein Expr Purif. 55(1):100-11 (2007))、融合タンパク質をNi-NTA樹脂で精製した。
E. 大腸菌由来N-GFD-VCE、CCPE-VCEおよびCCPE 2 -VCE融合タンパク質の発現および精製
N-GFD-VCE、CCPE-VCEおよびCCPE2-VCEならびにそれらの変異体に対応するDNA配列をpET28aベクター(Novagen)のNcoIおよびNotI部位の間にクローニングした。形質転換した細菌細胞(BL21)をLB培地中、37℃で培養した。タンパク質発現を0.2mM IPTGにより17℃、OD600=0.5〜0.8で終夜誘導した。可溶性タンパク質画分をB-PERII(Pierce Biotechnology)で抽出しNi-NTA精製にかけた。
F. BLAST分析を用いての推定コレラ菌外毒素の同定
BLAST分析は、コレラ菌の水生株由来の仮定的toxA遺伝子産物(GI: 58615288)が、保存されたジフテリア毒素(DT)様ADPリボシル化ドメインを有し、アミノ酸配列同一性が中等度(33%)の、シュードモナス外毒素A(PEA)のものに非常に類似した全ドメイン構造をとることを示している。PEAと同様、ビブリオ外毒素A(VCE)はN末端細胞結合ドメイン、C末端に近いADPリボシル化触媒ドメイン、および真ん中のトランスロケーションドメインを有する。BLAST分析は、NCBIタンパク質データベースにおいて2つのさらなる仮定的ビブリオ外毒素、すなわちコレラ菌株1587由来の仮定的外毒素A(GI: 124114053)およびコレラ菌株V51由来の仮定的タンパク質(GI: 116219709 & 116219710)も同定し、これらは水生VCEと約97%のアミノ酸配列同一性およびPEAに対しては低い配列同一性を有する。
VCEはPEAに対して中程度のタンパク質配列相同性(33%の配列同一性、図1B)しか有していないが、仮定された活性部位残基(PEA中のH440、Y481、E553)、ドメインIIにおけるフリン切断部位、およびC末端のER保持シグナルを含む、PEAの機能にとって重大と考えられる残基はVCEにおいて保存されている(図1Aおよび1C)。さらに、予測VCE触媒ドメイン配列は、VCEがPEAと類似の構造に折りたたまれ、したがって類似の酵素活性を有するであろうとの考えに一致して、PEA触媒ドメインの構造上に通すことができた(Yates S.P., TIBS 31, 123-133, 2006)。
G. VCEの特徴分析
細胞侵入後、DTおよびPEAは、高度の翻訳後修飾を受けてジフタミドとして公知の残基を形成している、真核生物延長因子2(eEF2)の露出したヒスチジンを特異的にリボシル化する。ジフタミドのADPリボシル化は、eEF2の機能を妨害し、深刻な生理的変化と最終的には細胞死につながるタンパク質合成の停止を引き起こす。VCEが標的細胞を、PEAおよびDTが用いるのと同じ毒性成分で中毒させるかどうかを調べるために、精製したVCEのADPRTドメインをヒト293T細胞溶解物と共にビオチン-NAD存在下でインキュベートした。ビオチン-NADはADPRTの基質であることが示されており、ADPRT反応の結果、標的タンパク質がビオチン化される(Zhang, Method Enzymol. 280:255-265 (1997))。発明者らは、VCEおよびビオチン-NAD存在下で、見かけの分子量が100kDのタンパク質がビオチン化されることを見いだした(図2A、レーン2)。分子量が同じタンパク質もPEAによって修飾されることが判明し(図4A、レーン2)、VCEおよびPEAは、PEAの場合にeEF2として知られる、同じタンパク質を標的としうることが示唆される。VCEの標的タンパク質をさらに調べるために、単量体アビジンビーズを用いて修飾標的タンパク質をアフィニティ捕獲にかけた。次いで、捕獲されたタンパク質を、ヒトeEF2(図2B)またはヒトGrB2(図2C)を認識する抗体をプローブに用いて調べた。eEF2はVCEのADPRTドメインによる修飾後にアビジンビーズによって捕獲されうるが、GrB2は捕獲されず、eEF2がVCEの内因性標的であるとの見解を支持している。
いくつかのDT抵抗性細胞株が開発されており、その1つであるRel.22Cはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株に由来している(Moehring et al. Somat. Cell Genet. 5:453-468 (1979))。細胞株Rel.22CにDT抵抗性を与える特定の突然変異はeEF2上に位置し、ジフタミド側鎖修飾を欠く変異体eEF2を生じる(Foley et al. J Biol. Chem. 270:23218-25,1995)。VCEは野生型CHO細胞および293T細胞由来のeEF2を修飾したが、Rel.22C由来のeEF2を修飾することはできなかった(図3B、レーン1および2を3と比較されたい)。これらのデータは、VCEはPEAおよびDTと同様にeEF2を特異的に修飾するとの見解を強く支持するものである。
H. VCEの細胞結合ドメインの置き換え
VCEを通常の免疫毒素として機能させうるかどうかについて検討するために、発明者らはVCEのドメインIをコードするDNA配列をウロキナーゼ様プラスミノゲン活性化因子のN末端成長因子様ドメインで置き換えて、VCE融合タンパク質N-GFD-VCEを得た。ウロキナーゼ様プラスミノゲン活性化因子のN末端成長因子様ドメインは、ウロキナーゼ様プラスミノゲン活性化因子受容体(uPAR/CD87)に非常に高い親和性(約0.1nM)で結合することが明らかにされており(Appella et al. J. Biol. Chem. 262:4437-4440 (1987))、ウロキナーゼ様プラスミノゲン活性化因子のN末端成長因子様ドメインを有する免疫毒素はuPAR/CD87を発現する標的細胞に対して高度に毒性であると報告されている(Rajagopal and Kreitman. J. Biol. Chem. 275:7566-7573 (2000);Ramage et al. Leuk. Res. 27:79-84 (2003))。N-GFD-VCEを大腸菌中で調製し、精製し、以前に低レベルのuPAR/CD87(800+/-50/細胞)を発現することが明らかにされているジャーカットT細胞と共にインキュベートした。N-GFD-VCEはジャーカット細胞をIC50=0.4nMで効率的に死滅させた(図4B、三角)。これとは対照的に、N-GFD-VCEは、検出可能なuPAR/CD87をほとんど、またはまったく持たないRaji細胞に対し、毒性はほとんど、またはまったくない。これらの結果は、VCEのドメインIは細胞結合を担うが、ドメインIIまたはIIIにその役割はなく、VCEのドメインIIおよびIIIならびにドメインIの代わりの標的化成分を含む融合タンパク質は選択的細胞毒性物質として機能しうることを示唆するものである。もう一つの例において、VCEのドメインIを一本鎖Fv(scFv)ドメインで置き換えた。CD5またはCD19を標的とするscFv-VCE融合タンパク質は、それぞれCD5およびCD19を発現する細胞株を効率よく死滅させる(図8、三角、およびデータを示していない)。
さらにもう一つの例において、VCEのドメインIを、密着結合タンパク質クラウジン3および4を標的とすることが公知のウェルシュ菌腸毒素のC末端ドメイン(CCPE)由来の細胞標的化ドメインで置き換えた。CCPE-VCE融合タンパク質は、 HT29、MCF7およびMB231を含む、クラウジン3および/または4を発現する細胞を効率的に死滅させ、陰性対照細胞株Nalm6の死滅においては無効であった(図5)。CCPEに基づく免疫毒素のクラウジン3/4を発現する細胞への親和性を高めるために、発明者らはVCEのドメインIをタンデムCCPEドメインで置き換え、融合タンパク質CCPE2-VCEを生じた。クラウジン3/4陽性細胞株によるタンパク質合成阻害に対するCCPE2-VCEのEC50は、CCPE-VCEの約5〜10分の1であったが、陰性対照株に対する毒性は相対的に変化がなかった(図6Bと6Cを比較されたい)。これらの結果は、VCEをu-PAのN-GFD、ScFv、CCPEの2つのコピーの1つ、および他の天然または人工的に作成された親和性試薬などのいくつかの細胞標的化部分に連結して、関心対象の細胞を選択的に標的としうるVCE融合タンパク質を作成しうるとの考えを支持するものである。
I. VCEの細胞毒性にとって重大な残基の同定
DTおよびPEAの突然変異分析により、毒素機能の様々な局面にとって重大ないくつかの残基が同定されている。配列アラインメントにより、発明者らはVCEにおいて対応する残基を同定した。推定触媒不活性変異体を、グルタミン酸613(E613A)をアラニンで置き換えることにより作成した。ヒトeEF2によるインビトロADPRT検定から、E613A変異体のADPRT活性が野生型の対応するものに比べて著しく損なわれることが示され(図4A、レーン4および5を比較されたい)、細胞培養実験から、N-GFD-VCEE613Aはジャーカット細胞に対して毒性を持たないことが示された(図4B)。PEAのトリプトファン305はPEAの膜挿入開始において重要な役割を果たすことが明らかにされている(Mere et al. J. Biol. Chem 280:21194-21201 (2005))。PEAのW305のフェニルアラニンまたはアラニンへの突然変異は、PEAの毒性をそれぞれ3または30分の1に低減した。配列分析により、PEAのW305に機能が対応する残基はVCEにおけるフェニルアラニン343(F343)でありうることが示唆された。発明者らは、VCEのF343をトリプトファン(F343W)およびアラニン(F343A)に変異させ、F343における突然変異はADPRT活性を変化させない(図4A、レーン7および8を5と比較されたい)が、変異体N-GFD-VCE型の細胞毒性は8分の5(F343W)または60分の1(F343A)に低減することを見いだした(図4B)。
加えて、フリン切断部位がグランザイムB切断部位で置き換えられた変異体N-GFD-VCE融合タンパク質は、機能性ADPRT活性を示した(図4A、レーン3および4を比較されたい)が、標的細胞に対して細胞毒性ではなかった(図4B)。全体として、この一連の実験はADPRTの触媒活性にとって重大な残基、膜挿入にとって重大な残基、およびVCEの活性化にとって重大なフリン切断配列を同定した。
J. 特定の細胞表面標的化およびタンパク質分解活性化のためのVCE改変
VCEに基づく免疫毒素をコンビナトリアル標的化戦略のプロトキシン成分として適合させることができるかどうかについて検討するために、VCEのフリン切断配列をグランザイムB切断配列または突然変異グランザイムBの切断配列候補で置き換えた。フリン切断配列(RKPR↓DL)(SEQ ID NO: 48)のグランザイムB切断(IEPD↓SG、IEPD↓DL、IAPD↓SGおよびIAPD↓DL)(SEQ ID NO: 49〜52)配列での置換はヒトCD19を発現するジャーカット細胞に対するN-GFD-VCEの毒性を著しく低減したが、修飾毒素は全酵素活性を保持した(図4A、レーン3および4を比較されたい)。GrB-抗CD19存在下で、N-GFD-VCEを活性化すると、標的細胞に対する細胞毒性を示し(図4B)、GrB-抗CD19は内因性フリン認識配列の代わりにグランザイムB切断部位を有するN-GFD-VCEをタンパク質分解により活性化しうることが示唆された。
驚くことに、3つの抗CD5に基づく免疫毒素、抗CD5-PE、抗CD5-VCEおよびDT-抗CD5を切断するグランザイムBの能力を比べた場合、改変グランザイムB部位は切断に対して等しく感受性ではなかった。大多数のVCE融合タンパク質の切断を引き起こす条件下で、DTおよびPEA融合タンパク質のわずかな割合だけが切断された(図6A〜C)。これらの結果より、VCEはグランザイムB融合タンパク質の存在下でよりよい特異的毒性を示しうることが示唆された。GrB-抗CD19存在下または非存在下で標的細胞を死滅させる、3つの毒素融合タンパク質の能力を調べた。グランザイムB切断配列を有するDT-抗CD5および抗CD5-PEA融合タンパク質と同様、グランザイムB切断配列を有する抗CD5-VCE融合タンパク質は単独では標的細胞に対して毒性ではなく、GrB-抗CD19融合タンパク質存在下でのみ標的細胞を選択的に死滅させた(図7)。修飾免疫毒素の細胞毒性を活性化するGrB-抗CD19の能力は、インビトロで修飾免疫毒素を切断するGrB-抗CD19の能力に相関することが判明した。観察されたEC50値によって例示される相対効力は次のとおりであった:抗CD5-VCE(約1.3nM)<DT-抗CD5(約3.0nM)<抗CD5-PEA(約4.8nM)。
可能性のあるコンビナトリアル標的化戦略の有効性をさらに評価するために、発明者らはグランザイムB部位を有する抗CD5-VCEと内因性フリン切断部位を有する抗CD5-VCE融合タンパク質および活性部位の1つが変異した(グルタミン酸613からアラニン)抗CD5-VCE融合タンパク質との比較も行った。予想されたとおり、活性部位突然変異を有する融合タンパク質は、試験したすべての濃度で標的細胞を死滅させることができなかった(図7、菱形)。フリン切断部位をグランザイムB切断部位によって置き換えると、抗CD5-VCE融合タンパク質の毒性を実質的に低減した(図8、四角)。しかし、1.0nM Gr-B抗CD19存在下で、抗CD5-VCE融合タンパク質の細胞毒性は完全に回復した(図8、三角を逆三角と比較されたい)。これらの結果は、バイナリ標的化剤は高度に選択的で、通常の免疫毒素と同程度に有効でありうることを示している。
K. CLL患者からのPBMNCの抗CD5-VCEおよび抗CD19-GrBの組み合わせによる選択的死滅
バイナリ標的化剤がB細胞-慢性リンパ球性白血病細胞を特異的に死滅させうるかどうかを試験するために、発明者らはB細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)の患者から精製した末梢血単核細胞(PBMNC)で細胞***停止検定を実施した。FACS分析により、患者からのPBMNCの約30%がCD5+ B細胞であることが示された(図9A)。バイナリ標的化剤の個々の成分はPBMNCに対して毒性ではなかった(図9BおよびC)。バイナリ標的化剤がレポーター細胞株(CD5+Raji)のタンパク質合成活性を完全に阻害する濃度で、PBMNCからの全タンパク質合成活性の約30%が停止した。DT-抗CD5の濃度を上げてもタンパク質合成のそれ以上の阻害は観察されず、バイナリ標的化剤は標的細胞集団のタンパク質合成活性だけを停止するとの考えに一致していた。これらのデータより、コンビナトリアル標的化剤を配備して、細胞の異種混合物から特定の細胞集団を、他の細胞型への毒性を最小限にしながら除去しうることが示唆された。
L. 血管漏出症候群(VLS)を低減する突然変異
免疫毒素の臨床上の有用性は、様々な毒性症候群、肝毒性としての症状、神経毒性、および血管漏出症候群(VLS)によって制限されてきた。VLSは低アルブミン血症、胸膜浸出液、体重増加、浮腫、低血圧、ヘマトクリット値の上昇および臓器不全によって特徴づけられる。用量漸増と、したがってPEAに基づくもの(Pai, et al., Nat. Med., 2: 350-353,1996)を含む免疫毒素の有効性はVLSによって制限されてきた。ラットモデルを用いて、PEAに基づく免疫毒素の毒素成分はVLSを誘導する役目を担うことが明らかとなり、非ステロイド性抗炎症薬はPEA免疫毒素の投与を受けているラットでVLSを阻止することが判明した。(Seegall et al., Clin. Cancer Res. 3(3):339-45 (1997))。VLSの根元メカニズムは不明で、内皮細胞(EC)損傷によって誘発される事象のカスケードに関与し、炎症反応に関与すると考えられる。VLS誘導分子における構造モティーフが内皮細胞への結合およびVLSの発症を担う可能性が提唱されている。提唱されたモティーフは(x)D(y)であり、ここでx=L、I、G、またはVおよびy=V、L、またはSである。以前の試験により、このモティーフおよび/またはその隣接配列内の欠失または突然変異がVLSを防止しうることが示唆された(Baluna et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:3957-3962 (1999)およびSmallshaw JE et al. Nat. Biotechnol. 21:387-391 (2003))。
最近の試験により、3つの(x)D(y)モティーフ、すなわちGDL(323-325)、GDV(405-407)およびGDV(580-582)に近接しているが、それに特異的ではない、PEAのトランスロケーションおよび触媒ドメイン内の突然変異もVLSを低減しうることが明らかにされている。特に、三重変異体R293K/N416Q/R576Kは、VLS誘導がはるかに弱くなった一方で、標的細胞への細胞毒性を維持することが示された(Wang et al. Cancer Immunol Immunother. 56(11):1775-83(2007))。PEA内の残基を、VCEにおける対応する残基と共に図10に示す。PEAとVCEとの間の変異領域の類似性を例示するために、最も近い隣接コンセンサス残基を橙色の下線を付けて示す。
VCEはPEAと類似の構造に折りたたまれる(Yates S.P., TIBS 31, 123-133, 2006)ため、VCE上の対応する変異、すなわちN338K/N468Q/N636Kは、VCEによるVLS誘導の可能性を低減するかもしれない。VCEのトランスロケーションおよび触媒ドメインがいかなる(x)D(y)モティーフも含まないことは注目に値する。これはVCEの毒性を低くする可能性がある。一方、観察されたR293K/N416Q/R576K PEA変異体によるVLSの低減は、必ずしもこれらのモティーフに関連していないのかもしれない。対応するVCE変異N338K、N468Q、および/またはN636KはVLS低減のために好ましい態様である。
M. VCEの抗原性を低減する突然変異
PEAに基づく免疫毒素を患者に投与すると、3週間以内に中和抗体が発生することが多い。ほとんど常にPEAと反応し、非常にまれに細胞標的化ドメインと反応するこれらの抗体は、適用しうる治療周期の回数を制限する(Roscoe et al. Eur. J. Immunol. 27(6):1459-68 (1997))。PEAのトランスロケーションおよび触媒ドメインの主なヒトB細胞エピトープがマッピングされ、対応する抗体が特徴づけられている(Onda et al., J. Immunol. 177(12):8822-34 (2006))。PEA上の各エピトープの位置を、かさ高い表面残基がアラニンまたはグリシンのいずれかに変異されたPEAの41の変異体を調製することにより決定した。7つの主なエピトープ群すべておよび13のエピトープ亜群の9つを14の異なる変異体によって同定し、これらは高い細胞毒性を保持していた。抗体への結合が減少していると報告された14の変異体は、エピトープに基づき、PEAの抗原性が低い型であると予測される(Onda et al., J. Immunol. 177(12):8822-34 (2006))。PEA内のこれらの変異の位置、ならびにVCE内の対応する残基を、図10に示す(矢印で表示)。PEAとVCEとの間の変異領域の類似性を例示するために、最も近い隣接コンセンサス残基(それ自体がコンセンサスである場合にはそれを含む)を橙色の下線を付けて示す。PEAのR576およびVCEのY636に最も近いコンセンサス残基は4残基離れている(この位置の例示について図10も参照されたい)。
報告されたPEAの突然変異には下記が含まれる:R313A、D324A、E327A、Q332A、R412A、E431A、R432G、R467A、R490A、R513A、R538A、R576A、K590A。VCEの対応する残基を図11に示す。可能性があるVCEの突然変異には下記が含まれる:T358、D374、R377、N381、N382、Q464、R483、E484、G522、A552、R575、R598、Y636、およびK648。抗原性を低減するために、GlyおよびAlaなどの小さい残基への変異を行ってもよい。N381、N382、Q464、G522、およびA552を含む、これらのいくつかはすでに小さい残基であって、変異させる必要はないかもしれない。
図11に示す多くを含むさらなる突然変異が、国際公開公報第27016150A2号に開示されている。
N. VCEのトランスロケーションドメインによる異種タンパク質の形質導入
PEAのトランスロケーションドメインは、異種タンパク質または小分子を標的細胞の細胞質ゾルへと往復輸送しうることが明らかにされている(Theuer et al., J. Biol. Chem 267:16872-16877 (1992);Prior et al., Cell 64:1017-1023 (1991);米国特許第6086900号)。VCEのトランスロケーションドメインも異種タンパク質を標的細胞の細胞質ゾルへと往復輸送しうるかどうかについて検討するために、発明者らはVCEのADPRTドメインを、VCEのADPRTドメインとわずかに39%の同一性を有するPEAのADPRTドメインで置き換えた。発明者らは、VCEトランスロケーションドメインおよびPEAのADPRTドメインを有する融合タンパク質(N-GFD-VCE-PEA)がジャーカット細胞に対して毒性であることを見いだし、PEAのADPRTドメインはVCEのトランスロケーションドメインによって標的細胞の細胞質ゾルへと往復輸送されたことを示していた(図12)。これらの結果は、VCEのトランスロケーションドメインを用いてタンパク質、または脂質二重層を透過することができない分子を、膜を通過して運びうるとの考えを支持するものである。
O. VCEに対するポリクローナルおよびモノクローナル抗体の生成
VCEに対するポリクローナル抗体を、VCEのドメインIII(ADPRTドメイン)でのウサギの免疫化によって調製した。宿主動物に対する抗原のいかなる可能な毒性も低減するために、活性部位グルタミン酸残基がアラニン(E613A)で置き換えられた変異体VCE ADPRTドメインを抗原として用いた。抗VCEポリクローナル抗体の産生をAffinity Bioreagents(Golden, CO)により実施した。免疫化したウサギからの血清をアフィニティ精製し、ELISA検定によって滴定した。2羽のウサギ(9375および9376)で産生させたポリクローナル抗体は、マルトース結合タンパク質(VCE抗原)およびVCEのADPRTドメインからなる融合タンパク質に特異的に反応したが、マルトース結合タンパク質単独(対照抗原)には反応しなかった(図13A)。ポリクローナル抗体を、VCEのADPRTドメインを検出するための免疫ブロット試薬としても用いた。図13Bに示すとおり、ウサギ9375から産生させたポリクローナル抗体は抗CD19-VCE融合タンパク質決定基と特異的に反応したが、抗CD5-ジフテリア毒素融合タンパク質または293T細胞溶解物からの任意のタンパク質のいずれも認識しなかった。同様の結果が、ウサギ9376からの抗体でも得られた。これらの結果は、アフィニティ精製したポリクローナル抗体は、VCEのADPRTドメインおよびVCEのADPRTドメインを含む融合タンパク質に高度に特異的であることを示していた。VCEに対するモノクローナル抗体を作成するために、動物9376の脾臓を回収し、ハイブリドーマ産生のためにEpitomics Inc.(Burlingame, CA)に送っ
た。天然のVCE抗原と反応するいくつかの高親和性モノクローナル抗体ならびに天然のVCEおよびブロット転写したVCEの両方と反応する抗体。図13Cは約3000ハイブリドーマのスクリーニングから同定したいくつかのモノクローナル抗体のSPR結果を示す。
(表3)
配列

VCE(SEQ ID NO: 1)
野生型配列
Figure 2010534061

SEQ ID NO: 2
VCEのADPRTドメインに対応するタンパク質配列
Figure 2010534061

SEQ ID NO: 3
VCEのADPRTドメインをコードする合成遺伝子
Figure 2010534061

SEQ ID NO: 53
N-GFD-VCE
内因性フリン切断部位を有するN-GFD-VCEをコードする合成遺伝子
Figure 2010534061

SEQ ID NO: 54
内因性フリン切断部位を有する合成N-GFD-VCEに対応するタンパク質配列
Figure 2010534061

SEQ ID NO: 55
N-GFD-VCE
グランザイムB切断部位を有するN-GFD-VCEをコードする合成遺伝子
Figure 2010534061

Figure 2010534061
をコードする配列を含む、太字下線領域に代わる配列が作成されている。

SEQ ID NO: 62
グランザイムB切断部位を有する合成N-GFD-VCEに対応するタンパク質配列
Figure 2010534061

IEPDDLSEQ ID NO: 56、IAPDSGSEQ ID NO: 58およびIAPDDLSEQ ID NO: 60を含む、下線領域の代わりの配列が作成されている。

N-GFD-VCE
グランザイムB切断部位およびフェニルアラニン343でのアミノ酸置換(アラニンF343A、またはトリプトファンF343Wによる)を有するN-GFD-VCEをコードする合成遺伝子
Figure 2010534061
下線を付けたTTTをTGGで置き換えてF343W変異体を生じ、またはGCGで置き換えてF343A変異体を生じた。

グランザイムB切断部位およびフェニルアラニン343でのアミノ酸置換(アラニンF343A、またはトリプトファンF343Wによる)を有する合成N-GFD-VCEに対応するタンパク質配列
Figure 2010534061
下線を付けたFをWで置き換えてF343W変異体を生じ、またはAで置き換えてF343A変異体を生じた。

N-GFD-VCE
SEQ ID NO: 65
内因性フリン切断部位およびGlu 613のAlaによる置換(E613A)を有するN-GFD-VCEをコードする合成遺伝子
Figure 2010534061
下線を付けたTTTをTGGで置き換えてF343W変異体を生じ、またはGCGで置き換えてF343A変異体を生じた。

SEQ ID NO: 66
内因性フリン切断部位およびGlu 613のAlaによる置換(E613A)を有する合成N-GFD-VCEに対応するタンパク質配列
Figure 2010534061

GrB-抗CD19をコードする合成遺伝子
Figure 2010534061

GrB-抗CD19タンパク質配列
Figure 2010534061

抗CD5-VCE
内因性フリン切断部位を有する抗CD5-VCEをコードする合成遺伝子
Figure 2010534061

様々なグランザイムB切断配列
Figure 2010534061
をコードする変化した下線付き配列を有する遺伝子も作成した。

15アミノ酸のリンカーを伴う抗CD5-VCEのタンパク質配列
Figure 2010534061

IEPDDLSEQ ID NO: 75、IAPDSGSEQ ID NO: 76、IEPDSGSEQ ID NO: 77、およびIAPDDLSEQ ID NO: 78を含む、変化した下線付き配列を有するタンパク質も作成した。

抗CD19-VCE
Figure 2010534061

様々なグランザイムB切断配列
Figure 2010534061
をコードする変化した下線付き配列を有する遺伝子も作成した。

抗CD19-VCEタンパク質配列
Figure 2010534061

IEPDDL、IEPDSG、IAPDDL、IAPDSGを含む、変化した下線付き配列を有するタンパク質も作成した。

抗CD5-PEA
抗CD5-PEAをコードする合成遺伝子
Figure 2010534061

抗CD5-PEAタンパク質配列
Figure 2010534061

N-GFD-VC-PEA融合タンパク質をコードする遺伝子
Figure 2010534061

合成N-GFD-VC-PEA融合タンパク質に対応するタンパク質配列
Figure 2010534061

CCPE-VCE融合タンパク質をコードする遺伝子
Figure 2010534061

合成CCPE-VCE融合タンパク質に対応するタンパク質配列
Figure 2010534061

CCPE2-VCE融合タンパク質をコードする遺伝子
Figure 2010534061

合成CCPE2-VCE融合タンパク質に対応するタンパク質配列
Figure 2010534061
他の態様
本発明の記載の方法および組成物の様々な改変および変異は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明を特定の望ましい態様に関連して記載してきたが、特許請求される本発明はそのような特定の態様に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。事実、医学、免疫学、薬理学、内分泌学の分野、または関連する分野の当業者には明白な、本発明を実施するために記載した様式の様々な改変は本発明の範囲内であることが意図される。
本明細書において言及されるすべての発行物は、それぞれ独立の発行物が具体的かつ個別に参照により組み入れられるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。本出願に関連する核酸およびアミノ酸配列を上の表3に列挙している。

Claims (63)

  1. SEQ ID NO: 1と80%よりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換えコレラ菌(Vibrio cholerae)外毒素(VCE)。
  2. 前記アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1と90%よりも高い配列同一性を有する、請求項1記載のVCE。
  3. 前記アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1と95%よりも高い同一性を有する、請求項1記載のVCE。
  4. 前記アミノ酸配列がSEQ ID NO: 1と100%の配列同一性を有する、請求項1記載のVCE。
  5. 請求項1記載のVCEをコードする配列を含むベクター。
  6. 請求項1記載のVCEをコードする配列を含む宿主細胞。
  7. 請求項1記載のVCEに特異的に結合する抗体。
  8. モノクローナル抗体である、請求項7記載の抗体。
  9. VCEの断片を含むタンパク質であって、該断片がSEQ ID NO: 2と80%よりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、タンパク質。
  10. 前記断片がSEQ ID NO: 2と90%よりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9記載のタンパク質。
  11. 前記断片がSEQ ID NO: 2と95%よりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9記載のタンパク質。
  12. 前記断片がSEQ ID NO: 2と100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9記載のタンパク質。
  13. 前記断片がADPリボシル化活性を含む、請求項9記載のタンパク質。
  14. 細胞膜トランスロケーション活性を含む、請求項13記載のタンパク質。
  15. 前記断片が前記細胞膜トランスロケーション活性を有するVCE細胞膜トランスロケーションドメインを含む、請求項14記載のタンパク質。
  16. 前記断片の天然のフリン切断部位が修飾可能な活性化ドメインで置き換えられており、該修飾可能な活性化ドメインが外因性酵素の基質を含む、請求項15記載のタンパク質。
  17. 前記修飾可能な活性化ドメインがグランザイムB活性の基質を含む、請求項16記載のタンパク質。
  18. VCE細胞結合ドメインを含まない、請求項14記載のタンパク質。
  19. 請求項9記載のタンパク質をコードする配列を含むベクター。
  20. 請求項9記載のタンパク質をコードする配列を含む宿主細胞。
  21. 請求項9記載のタンパク質を特異的に結合する抗体。
  22. 融合タンパク質である、請求項9記載のタンパク質。
  23. 非天然の細胞標的化部分を含む、請求項22記載の融合タンパク質。
  24. 前記非天然の細胞標的化部分が抗体、またはその機能性断片である、請求項23記載の融合タンパク質。
  25. 前記非天然の細胞標的化部分が人工的に多様化したポリペプチド結合因子である、請求項23記載の融合タンパク質。
  26. 前記非天然の細胞標的化部分が受容体のリガンドである、請求項23記載の融合タンパク質。
  27. 前記非天然の細胞標的化部分が、癌細胞上で発現される細胞表面標的を認識する、請求項23記載の融合タンパク質。
  28. 前記非天然の細胞標的化部分が、造血細胞、リンパ球、および侵害受容ニューロンからなる群より選択される細胞を認識する、請求項23記載の融合タンパク質。
  29. 修飾可能な活性化ドメインをさらに含む融合タンパク質であって、該修飾可能な活性化ドメインが外因性酵素の基質を含む、請求項22記載の融合タンパク質。
  30. 前記酵素がプロテアーゼである、請求項29記載の融合タンパク質。
  31. 前記プロテアーゼが外因性ヒトプロテアーゼである、請求項30記載の融合タンパク質。
  32. 前記プロテアーゼが非ヒトプロテアーゼである、請求項30記載の融合タンパク質。
  33. 前記プロテアーゼが非哺乳動物プロテアーゼである、請求項32記載の融合タンパク質。
  34. 前記プロテアーゼがウイルスプロテアーゼである、請求項33記載の融合タンパク質。
  35. 前記修飾可能な活性化ドメインがプロテアーゼ切断部位の翻訳後修飾を含む、請求項29記載の融合タンパク質。
  36. 前記修飾可能な活性化ドメインが翻訳後修飾を除去可能な酵素の基質を含む、請求項29記載の融合タンパク質。
  37. 前記修飾可能な活性化ドメインがグランザイムB活性の基質を含む、請求項29記載の融合タンパク質。
  38. 標的細胞を破壊する方法であって、該標的細胞をVCEの断片を含むタンパク質と接触させる段階を含み、該断片はSEQ ID NO: 2と80%よりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、方法。
  39. 前記断片がSEQ ID NO: 2と90%よりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項38記載の方法。
  40. 前記断片がSEQ ID NO: 2と95%よりも高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項38記載の方法。
  41. 前記断片がSEQ ID NO: 2と100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項38記載の方法。
  42. 前記断片がADPリボシル化活性を含む、請求項38記載の方法。
  43. タンパク質が細胞膜トランスロケーション活性を含む、請求項42記載の方法。
  44. 前記断片が前記細胞膜トランスロケーション活性を有するVCE細胞膜トランスロケーションドメインを含む、請求項43記載の方法。
  45. 前記断片の天然のフリン切断部位が修飾可能な活性化ドメインで置き換えられており、該修飾可能な活性化ドメインが外因性酵素の基質を含む、請求項44記載の方法。
  46. 前記修飾可能な活性化ドメインがグランザイムB活性の基質を含む、請求項45記載の方法。
  47. 前記タンパク質がVCE細胞結合ドメインを含まない、請求項43記載の方法。
  48. 前記タンパク質が融合タンパク質である、請求項38記載の方法。
  49. 前記融合タンパク質が非天然の細胞標的化部分を含む、請求項48記載の方法。
  50. 前記非天然の細胞標的化部分が抗体、またはその機能性断片である、請求項49記載の方法。
  51. 前記非天然の細胞標的化部分が人工的に多様化したポリペプチド結合因子である、請求項49記載の方法。
  52. 前記非天然の細胞標的化部分が受容体のリガンドである、請求項49記載の方法。
  53. 前記非天然の細胞標的化部分が癌細胞上で発現される細胞表面標的を認識する、請求項49記載の方法。
  54. 前記非天然の細胞標的化部分が造血細胞、リンパ球、および侵害受容ニューロンからなる群より選択される細胞を認識する、請求項49記載の方法。
  55. 修飾可能な活性化ドメインをさらに含み、該修飾可能な活性化ドメインは外因性酵素の基質を含む、請求項48記載の方法。
  56. 前記酵素がプロテアーゼである、請求項55記載の方法。
  57. 前記プロテアーゼが外因性ヒトプロテアーゼである、請求項56記載の方法。
  58. 前記プロテアーゼが非ヒトプロテアーゼである、請求項56記載の融合タンパク質。
  59. 前記プロテアーゼが非哺乳動物プロテアーゼである、請求項58記載の方法。
  60. 前記プロテアーゼがウイルスプロテアーゼである、請求項59記載の方法。
  61. 前記修飾可能な活性化ドメインがプロテアーゼ切断部位の翻訳後修飾を含む、請求項55記載の方法。
  62. 前記修飾可能な活性化ドメインが翻訳後修飾を除去可能な酵素の基質を含む、請求項55記載の方法。
  63. 前記修飾可能な活性化ドメインがグランザイムB活性の基質を含む、請求項55記載の方法。
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