JP2010503668A - インフルエンザ抗体、組成物、および関連する方法 - Google Patents

インフルエンザ抗体、組成物、および関連する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、免疫学とタンパク質工学の分野と共通部分に関し、特に、インフルエンザウイルスによる感染の予防に有用な抗原およびワクチンに関する。かかる抗原およびワクチン組成物の作製および使用のための組換えタンパク質抗原、組成物および方法を提供する。本発明は、植物において産生される、インフルエンザノイラミニダーゼ抗原に対する抗体および抗体成分を提供する。本発明は、ノイラミニダーゼの活性を阻害する抗体を提供する。本発明は、さらに、インフルエンザノイラミニダーゼ抗原に対して反応性である抗体組成物を提供する。一部のある実施形態において、提供される組成物は、1種類以上の植物成分を含む。なおさらには、本発明の抗体および組成物の作製および使用のための方法を提供する。

Description

関連出願
本願は、2006年9月15日に出願された米国仮特許出願第60/844,770号(’770号)に関連し、これに対する米国特許法第119(e)条の下での優先権を主張する。’770号は、本明細書中に参考として援用される。
発明の背景
インフルエンザは、長い間、汎発流行、一時的流行病、再流行および大流行の波の繰り返しを特徴とする歴史を有する。インフルエンザは、伝染性の高い疾患であり、発展途上国と先進国の両方において等しく該を与え得る。インフルエンザウイルスは、ヒト集団に対する大きな脅威の1つである。毎年のワクチン接種の取り組みにもかかわらず、インフルエンザ感染は、相当な罹患率および死亡率をもたらす。インフルエンザの流行はほぼ毎年起こるが、幸い、汎発流行はあまり頻繁に起こらない。しかしながら、最近、再びインフルエンザの汎発流行の可能性に直面するようなインフルエンザ株が出現した。H5N1型トリインフルエンザウイルスは、現在、アジアや東欧地域で家禽に汎発流行を引き起こし、世界中で、持続的に拡延した。感染の急速な拡延ならびにトリからヒト被検体への異種間感染により、ヒト集団における大流行の可能性および汎発流行のリスクが増大している。このウイルスは、病原性が高く、トリでは50%を超える死亡率をもたらし、ヒト症例もいくか確認されている。該ウイルスがヒトからヒトに感染するようになった場合、疾病と死亡率が急速に広がる可能性が生じ得る。
インフルエンザに対する主な防御はワクチン接種である。インフルエンザウイルスは、セグメント化されたオルトミクソウイルス科に属するマイナス鎖RNAウイルスである。このウイルス抗原は、非常に有効な免疫原であり、全身性抗体応答および粘膜抗体応答の両方を惹起し得る。インフルエンザウイルスの血球凝集素糖タンパク質(HA)は、一般的に、中和抗体の刺激およびワクチン設計に関して最も重要なウイルス抗原と考えられている。ウイルスノイラミニダーゼ(NA)の存在は、該ウイルスに対する多アーム(multi−arm)防御的免疫応答をもたらすのに重要であることが示されている。ノイラミニダーゼ活性を阻害する抗ウイルス薬が開発されており、感染時の追加的抗ウイルス処置であり得る。インフルエンザ抗ウイルス薬およびワクチンの開発に有用と考えられる第3の成分は、イオンチャネルタンパク質M2である。
インフルエンザウイルスのサブタイプは、抗原不連続変異に起因する異なるHAおよびNAによって指定される。さらにまた、同じサブタイプの新たな株は、抗原連続変異、または新たな異なるエピトープをもたらすHAもしくはNA分子における変異により生じる。15種類のHA抗原サブタイプが示されているが、これらのサブタイプのうち3種類H1、H2およびH3のみが、ヒトにおいて広く循環している。ワクチン接種は、先進工業国および後進国の両方で、生活の質の改善の追求に最重要となっている。利用可能なワクチンの大部分は、関連する感染を防御し得る免疫応答を誘導するために、依然として感染の態様を模倣する基本原理に従うものである。しかしながら、弱毒化ウイルスの種々のサブタイプおよび組合せの作製は、時間と費用がかかるものであり得る。新たな技術の出現に伴い、病原体の分子生物学、病因論および個体の免疫系との相互作用の徹底的な理解によって、ワクチン開発およびワクチン送達に対する新たなアプローチがもたらされた。したがって、技術進歩により、改善されたインフルエンザ抗原ワクチン組成物を作製する能力は改善されたが、インフルエンザのサブタイプおよび株の出現に取り組むための防御のさらなる供給源を提供する必要性がなお存在する。
発明の概要
本発明は、植物において産生される、インフルエンザノイラミニダーゼ抗原に対する抗体および抗体成分を提供する。本発明は、ノイラミニダーゼの活性を阻害する抗体を提供する。本発明は、さらに、インフルエンザノイラミニダーゼ抗原に対して反応性である抗体組成物を提供する。一部のある実施形態において、提供される組成物は、1種類以上の植物成分を含む。なおさらには、本発明の抗体および組成物の作製および使用のための方法を提供する。
発明の詳細な説明
本発明は、インフルエンザ感染に対する抗体の調製に有用なインフルエンザ抗原、および熱安定性タンパク質に作動可能に連結させたかかるインフルエンザ抗原を含む融合タンパク質に関する。本発明は、抗体組成物、および提供する抗体組成物の作製方法、例えば限定されないが、植物系内での産生に関する。さらに、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片を含むベクター、融合タンパク質、植物細胞、植物および組成物に関する。なおさらには、被検体のインフルエンザ感染に関連するキットならびに治療的および診断的使用を提供する。
インフルエンザ抗原
本発明のインフルエンザ抗原タンパク質としては、インフルエンザウイルスに対する免疫応答を惹起し得る任意の免疫原性のタンパク質またはペプチドが挙げられる。一般的に、免疫原性の目的のタンパク質としては、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質、融合タンパク質など)、その免疫原性部分、またはその免疫原性バリアントおよび前述の任意のものの組合せが挙げられる。
本発明との関連における使用のためのインフルエンザ抗原としては、完全長インフルエンザタンパク質もしくはインフルエンザタンパク質の断片および/または完全長インフルエンザタンパク質もしくはインフルエンザタンパク質の断片を含む融合タンパク質が挙げられ得る。インフルエンザタンパク質の断片を用いる場合、単独であれ融合タンパク質の状態であれ、かかる断片は免疫学的活性(例えば、抗インフルエンザ抗体との交差反応性)を保持したものである。ウイルス感染に対する免疫防御的応答を誘導するその能力に基づき、血球凝集素およびノイラミニダーゼは、抗体を生成させる際の目的の一次抗原である。
したがって、本発明は、異種タンパク質(例えば、インフルエンザ抗原(インフルエンザタンパク質もしくはその断片および/またはインフルエンザタンパク質もしくはその断片を含む融合タンパク質など))を発現する植物細胞および植物を提供する。本発明の異種タンパク質は、任意の目的のインフルエンザ抗原、例えば、ノイラミニダーゼ(NA)、ノイラミニダーゼ(NA)の一部分または融合タンパク質、断片を含むものであり得る。
さまざまな異なるインフルエンザNAタンパク質(例えば、異なるサブタイプまたは株もしくは単離株由来)のアミノ酸配列が当該技術分野で知られており、GenBankなどの公のデータベースにおいて入手可能である。現在、特に重要な2種類のインフルエンザサブタイプのNAの例示的な完全長タンパク質の配列を以下に示す。
V:ベトナム型H5N1
NA(NAV)配列番号:2:
Figure 2010503668
Figure 2010503668
W:ワイオミング型H3N2
NA(NAW)配列番号:4:
Figure 2010503668
インフルエンザタンパク質
ノイラミニダーゼ
NAベトナム型:
H5N1 NAアンカーペプチド配列番号:15:
Figure 2010503668
H5N1 NA 配列番号:16:
Figure 2010503668
H3N2 NAアンカーペプチド配列番号:17:
Figure 2010503668
H3N2 NA 配列番号:18:
Figure 2010503668
例示的なインフルエンザ抗原の配列を本明細書に示し、NAについて示したドメインを例示的な株として示したが、NAのドメインの免疫原性特性を有する任意の配列が択一的に使用され得ることは認識されよう。当業者は、提供する抗原と少なくとも75%、80%、85%もしくは90%またはそれ以上の同一性を有する配列を容易に作製することができよう。特定のある実施形態において、インフルエンザ抗原は、例えば、NAドメインまたはNAドメインの一部分と少なくとも95%、96%、97%、98%ならびにそれ以上の同一性を有するものであるタンパク質を構成し、抗原タンパク質は免疫原性の活性を保持したものである。例えば、免疫原性特性を保持しているインフルエンザ抗原(1種類または複数種)と充分な同一性を有する配列は、本明細書に示したドメイン(抗原(1種類または複数種))を反応する抗体を結合し得る。免疫原性特性は、多くの場合、関連するアミノ酸または側鎖基の3次元的提示を包含する。当業者は、配列に適度な差を有する(例えば、境界部における差および/または一部の配列代替部を有するが、なお免疫原性特性は保持されている)配列を容易に同定することができよう。例えば、その境界部が、本明細書において指定したドメイン境界部の指定したアミノ酸配列のいずれかの末端付近 (例えば、約15アミノ酸、14アミノ酸、13アミノ酸、12アミノ酸、11アミノ酸、10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7 アミノ酸6アミノ酸、5 アミノ酸4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、または1アミノ酸以内)にある配列は、本発明による関連するドメインを含むとみなされ得る。したがって、本発明では、該指定ドメインに近似した残基を含めるためのインフルエンザ抗原の配列の使用が想定される。例えば、本発明の抗原として、NAのドメイン(1つまたは複数)を操作し、インフレーム融合タンパク質として発現させた(本明細書の実施例を参照のこと)。さらに、本明細書に記載の構築物および方法を用いて、インフルエンザ抗原(例えば、NA)アミノ酸配列の免疫原性である任意のドメイン、部分ドメインまたは領域が作製され得ることは認識されよう。なおさらには、インフルエンザ抗原を作製するために、ドメインまたはサブドメインを独立して、および/または連続的に結合することができる。
例示的な抗原として、本発明者らは、特定のサブタイプのノイラミニダーゼ由来の配列を用い、これを本明細書において詳細に説明する。インフルエンザウイルスには種々のサブタイプが存在し、新たなサブタイプが出現するため、継続して同定されている。当業者には、本明細書に示す方法および組成物を、さらなるサブタイプの配列の使用に適合させ得ることが理解されよう。かかる変異は、本明細書に示す方法および組成物において想定され、包含される。
熱安定性タンパク質とのインフルエンザポリペプチド融合体
本発明の特定のある態様では、熱安定性タンパク質に作動可能に連結させたインフルエンザタンパク質(またはその断片もしくはバリアント)を構成する融合ポリペプチドを含むインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を提供する。本発明の融合ポリペプチドは、当該技術分野で知られた任意の利用可能な発現系において産生されるものであり得る。特定のある実施形態では、本発明の融合タンパク質は、植物またはその一部分(例えば、植物、植物細胞、根、苗条(shoot)など)において産生されるものである。
ヒトまたは動物の細胞内に天然に見られない酵素または他のタンパク質は、本発明の融合ポリペプチドにおける使用に特に適切である。融合させると、融合体生成物に熱安定性が付与される熱安定性タンパク質が有用である。熱安定性により、産生されるタンパク質がコンホメーションを維持すること、および産生されるタンパク質を室温に維持することが可能になる。この特徴により、容易で時間効率がよく、コスト効率のよい融合ポリペプチドの回収が助長される。本発明において有用な代表的な熱安定性酵素ファミリーは、グルカノヒドロラーゼファミリーである。この酵素は、混合型連結多糖内の1,3−β連結部に隣接する1,4−βグルコシド結合を特異的に切断する(Hahnら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:10417)。かかる酵素は、穀類、例えばオートムギおよびオオムギに見られ、また、いくつかの真菌および細菌種、例えば、C.サーモセラムにも見られる(Goldenkovaら、2002、Mol.Biol.,36:698)。したがって、本発明の融合ポリペプチドにおける使用に望ましい熱安定性タンパク質としては、グリコシダーゼ酵素が挙げられる。例示的な熱安定性のグリコシダーゼタンパク質としては、表Aに示すものから選択されるGenBank受託番号で示されるものが挙げられ、その各々の内容は、各参照番号のGenBank受託情報全体の組み込みによる引用により本明細書に組み込まれる。
本発明の融合タンパク質に有用な例示的な熱安定性酵素としては、クロストリディウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)P29716、ブレビバシラス・ブレビス(Brevibacillus brevis)P37073、およびロドサーマス・マリナス(Rhodthermus marinus)P45798(これらは各々、そのGenBank受託番号を引用することにより本明細書に組み込まれる)が挙げられる。実施例に示した代表的な融合タンパク質は、クロストリディウム・サーモセラムから単離された修飾型の熱安定性酵素を使用したものであるが、任意の熱安定性タンパク質が、本発明に従って同様に使用され得る。
表A:熱安定性グリコシダーゼタンパク質
Figure 2010503668
本発明による融合タンパク質およびポリペプチドを設計する場合、もちろん、その抗原の免疫原性を保存することが望ましい。なおさらには、本発明の特定のある態様において、融合タンパク質の熱安定性をもたらす構築物を提供することが望ましい。この特徴により、容易で時間効率がよく、コスト効率のよい標的抗原の回収が助長される。特定のある態様では、さらなる利点、例えば、免疫原性や多くの抗原決定基の組込みの可能性の向上をもたらすが、ワクチン接種被検体に対して以前に免疫原性曝露されていない抗原融合パートナーが選択され得る。さらに有益な特質の目的の融合ペプチドとしては、1種類以上の抗原の組込み操作の容易性をもたらすタンパク質、ならびに抗原および/または抗体調製物の作製、精製および/または製剤化の容易性をもたらす可能性を有するタンパク質が挙げられる。当業者には、このような有益な各特性は、3次元的提示によって影響され得ることが認識されよう。したがって、免疫性または優先的特質の保存は、例えば、融合パートナーの選択および/または融合位置の選択(例えば、N末端、C末端、内部、その組合せ)に影響を及ぼし得る。あるいはまたさらに、優先性は、融合のために選択されるセグメントの長さ(それが抗原の長さであれ)、または選択される融合パートナーの長さに影響を及ぼし得る。
本発明者らは、さまざまな抗原と熱安定性タンパク質との成功裡の融合を実証した。例えば、本発明者らは、熱安定性の担体分子LicB(リケナーゼともいう)を、融合タンパク質の作製に使用した。LicBは、クロストリディウム・サーモセラム(GenBank受託:X63355[gi:40697])由来の1,3−1,4−βグルカナーゼ(LicB)である。LicBは、球状タンパク質ファミリーに属する。LicBの3次元構造に基づくと、そのN−およびC−末端は、活性ドメインのすぐ近くの表面上で互いに近接して存在する。また、LicBは、活性ドメインから遠くに存在する表面上に露出したループ構造を有する。本発明者らは、タンパク質の該ループ構造ならびにN−およびC−末端が、インフルエンザ抗原ポリペプチドの挿入部位として使用され得るような構築物を作製した。インフルエンザ抗原ポリペプチドは、N−またはC−末端融合物として、または表面ループ内への挿入物として発現され得る。重要なことに、LicBはその酵素活性を、低pHおよび高温(75℃まで)で維持している。したがって、担体分子としてのLicBの使用は、例えば、おそらく標的の特異的免疫原性や多くの抗原決定基の組込みの可能性の向上、ならびに経鼻、経口または非経口で送達され得る抗原および/または抗体の直接的な製剤化という利点に寄与する。さらにまた、植物内でのLicB融合体の産生により、動物またはヒトの病原体による汚染のリスクが低減されるはずである。本明細書に示す例を参照のこと。
インフルエンザ抗原を含む本発明の融合タンパク質は、任意のさまざまな発現系(インビトロ系およびインビボ系の両方を含む)において産生させ得る。当業者には、多くの場合、特定の発現系のための核酸配列の最適化が望ましいことが容易に認識されよう。例えば、本明細書に示した例示において、植物内でのインフルエンザ抗原LicB融合体の発現に最適化された配列を示している(実施例1)。したがって、本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)融合タンパク質(1種類または複数種)およびその断片をコードする任意の関連する核酸が、本発明の核酸構築物の範囲に包含されることが意図される。
植物系内での産生には、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類または複数種)またはその断片もしくは融合体)を発現する遺伝子導入植物が使用され得る。あるいはまたさらに、遺伝子導入植物は、当該技術分野でよく知られた方法を使用し、安定な産生作物を作製するために作製され得る。さらに、一過性発現系を利用した植物が、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の作製に使用され得る。植物発現系を用いる場合、植物において遺伝子導入または一過性発現のいずれが使用されてようと、任意の核内発現、葉緑体内発現、ミトコンドリア内発現またはウイルス系発現が、所望の抗原に対する該系の適用可能性に従って利用され得る。さらにまた、本発明による抗原および融合タンパク質の産生のためのさらなる発現系を使用してもよい。例えば、哺乳動物の発現系(例えば、CHOなど哺乳動物細胞株など)、細菌発現系(例えば、大腸菌)、昆虫発現系(例えば、バキュロウイルス)、酵母発現系、およびインビトロ発現系(例えば、網状(reticulocyte)ライセート)が、本発明の抗原および融合タンパク質の発現に使用され得る。
インフルエンザ抗原の作製
本発明によれば、インフルエンザ抗原(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)、その断片、バリアントおよび/または融合体)は、任意の望ましい系において産生させ得る。産生は植物系に限定されない。ベクター構築物および発現系は、当該技術分野でよく知られており、本明細書に示すインフルエンザ抗原の使用の組込みに適合させ得る。例えば、インフルエンザ抗原(断片、バリアントおよび/または融合体を含む)は、既知の発現系、例えば、哺乳動物細胞系、トランスジェニック動物、微生物発現系、昆虫細胞系および植物系(例えば、遺伝子導入および一過性の植物系)において産生させ得る。特に、インフルエンザ抗原を融合タンパク質として産生させる場合、かかる融合タンパク質を非植物系内で産生させるのが望ましいことがあり得る。
本発明の一部のある実施形態において、インフルエンザ抗原は、望ましくは、植物系内で産生させたものである。植物は、遺伝子操作が比較的容易であり、ヒト体液、動物細胞株、組換え微生物およびトランスジェニック動物などの択一的供給源と比べて、いくつかの利点を有する。植物は、哺乳動物のものと類似した精巧なタンパク質翻訳後修飾機構を有する(が、植物と哺乳動物間にはグリコシル化パターンにいくらか差があることに注意されたい)。これにより、植物組織内での生物活性試薬の作製が可能になる。また、植物は、精巧な施設を必要とすることなく、非常に多量のバイオマスを経済的に生成させ得る。さらに、植物は、動物病原体による汚染に供されない。リポソームおよびマイクロカプセルと同様、植物細胞は、胃腸管への抗原の通過に対する防御をもたらすことが期待される。
植物は、種々の産生系の使用による異種タンパク質の作製に使用され得る。かかる系の一例としては、標的生成物をコードする遺伝子が植物のゲノム内に永続的に組み込まれた遺伝子導入植物/遺伝子修飾植物の使用が挙げられる。遺伝子導入系により、作物産生系がもたらされ得る。さまざまな外来タンパク質、例えば、多くの哺乳動物起源の抗原および多くのワクチン候補抗原が、遺伝子導入植物において発現され、機能的活性を有することが示されている(Tacketら、2000、J.Infect.Dis.、182:302;and Thanavalaら、2005、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,102:3378)。さらに、B形肝炎主要表面抗原を発現する遺伝子導入植物を、非免疫処置ヒト志願者に投与すると、免疫応答の発生がもたらされた(Kapustaら、1999、FASEB J.、13:1796)。
植物においてポリペプチドを発現させるための別の系では、外来配列を発現(例えば、一過性発現)するように操作された植物ウイルスベクターが使用される。このアプローチにより、迅速産生系として健常非遺伝子導入植物の使用が可能になる。したがって、遺伝子操作された植物および組換え植物ウイルスに感染させた植物は、特定の目的のタンパク質を速やかに生成および産生させるための「グリーンファクトリー」として供され得る。植物ウイルスは、自身を外来タンパク質産生のための発現ベクターとして魅力的にするという一定の利点を有する。植物RNAウイルスのいくつかの構成員が、良好にキャラクタライズされており、遺伝子操作を容易にするために、感染性cDNAクローンが利用可能である。感染性のウイルスの遺伝物質は、易感染性の宿主細胞内に進入すると、高レベルまで複製され、速やかに植物全体に拡延する。植物ウイルス発現ベクターを用いて標的ポリペプチドを産生させるためには、いくつかのアプローチがあり、ウイルスゲノム内への標的ポリペプチドの組込みが挙げられる。アプローチの一例は、細菌、動物または植物に感染して抗原性ペプチドの担体分子としての機能を果たすウイルスの外被タンパク質の操作を伴うものである。かかる担体タンパク質は、その表面上に所望の抗原エピトープがディスプレイされた組換えウイルス様粒子を合成および形成する可能性を有する。このアプローチでは、抗原および/または抗体候補の微粒子状の性質により、植物組織からの容易でコスト効率のよい回収が助長されるため、抗原および/または抗体候補の時間効率のよい作製が可能になる。さらなる利点としては、標的特異的免疫原性、多くの抗原決定基および/または抗体配列の組込みの可能性の向上、ならびに経鼻、経口または非経口で送達され得る抗原および/または抗体の容易な製剤化が挙げられる。一例として、外被タンパク質に融合させたウイルスエピトープを担持する組換え植物ウイルス粒子を含有するホウレンソウの葉は、投与すると、免疫応答がもたらされた(Modelskaら、1998,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,95:2481;およびYusibovら、2002,Vaccine,19/20:3155)。
植物発現系
異種核酸の組込みおよび/または維持が行なわれ易く、異種タンパク質を産生し得る任意の植物が、本発明に従って使用され得る。一般に、多くの場合、規定の条件下、例えば、温室および/または水性系で生長させ易い植物を用いることが望ましい。典型的には人間もしくは家畜動物が消費しない、および/または典型的にはヒト食物連鎖の一部ではないため、発現されるポリヌクレオチドが不要に摂取され得る懸念なく外部で生長させ得る植物を選択することが望ましいことがあり得る。しかしながら、一部のある実施形態では、食用植物を用いることが望ましい。特別な実施形態では、発現されたポリペプチドが植物の食用部分に蓄積される植物を用いることが望ましい。
多くの場合、特定の望ましい植物特性は、発現させる具体的なポリヌクレオチドによって決定される。数少ないが一例を示すと、ポリヌクレオチドが、高収率で産生されるタンパク質をコードしている場合(多くの場合がそうであり、例えば、抗原タンパク質を発現させる場合)、多くの場合、比較的高いバイオマスを有する植物(例えば;タバコ、これは、ウイルス感染に対して高度に易感染性であり、生長期間が短く、ヒト食物連鎖に存在しないというさらなる利点を有する)を選択することが望ましい。ポリヌクレオチドが、完全な活性に特定の翻訳後修飾が必要とされる(または該修飾によって阻害される)抗原タンパク質をコードしている場合、特定の植物種において、関連する修飾(例えば、特定のグリコシル化)を行うことができること(またはできないこと)によって、選択が指示され得る。例えば、植物は、特定の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化)が行なわれ得るものであるが、植物は、哺乳動物の翻訳後修飾に見られるシアレーション(sialation)パターンをもたらさない。したがって、植物の抗原産生により、択一的な系で産生される同一のタンパク質の配列と異なる存在体(存在体)の生成がもたらされ得る。
本発明の特定のある実施形態において、作物植物または作物関連植物が用いられる。特定の具体的なある実施形態では、食用植物が用いられる。
本発明との関連における使用のための植物としては、被子植物、苔植物類(例えば、Hepaticae、Musciなど)、シダ植物(例えば、ferns、horsetails、lycopods)、裸子植物(例えば、conifers、cycase、Ginko、Gnetales)、および藻類(例えば、Chlorophyceae、Phaeophyceae、Rhodophyceae、Myxophyceae、Xanthophyceae、およびEuglenophyceae)が挙げられる。例示的な植物は、マメ科(Leguminosae)の構成員(マメ科(Fabaceae)植物;例えば、エンドウ豆、アルファルファ、大豆);イネ科(Gramineae)(イネ科(Poaceae);例えば、トウモロコシ、小麦、米);ナス科、特にリコペリシコン属(Lycopersicon)のもの(例えば、トマト)、ナス属(例えば、イモ、ナス)、トウガラシ属(例えば、コショウ)、またはタバコ(Nicotiana)(例えば、タバコ);セリ科、特にダウクス属のもの(例えば、ニンジン)、アピウム属(例えば、セロリ)、またはミカン科(例えば、オレンジ);キク科、特にアキノノゲシ属(Lactuca)(例えば、レタス);アブラナ科、特にアブラナ属または白カラシ属である。特定のある態様において、本発明の例示的な植物は、アブラナ属またはシロイヌナズナ属の植物であり得る。一部の例示的なアブラナ科の構成員としては、Brassica campestris、B.carinata、B.juncea、B.napus、B.nigra、B.oleraceae、B.tournifortii、Sinapis alba、およびRaphanus sativusが挙げられる。形質転換に修正可能であり、発芽種苗(sprouted seedling)として食用である一部の好適な植物としては、アルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシナ、ホウレンソウ、ニンジン、ビーツ、タマネギ、ニンニク、セロリ、ルーバーブ(rhubarb)、葉菜植物(キャベツまたはレタス、クレソンまたはコショウソウなど)、ハーブ(パセリ、ミントまたはクローバーなど)、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズマメ、食用花(ヒマワリなど)などが挙げられる。
植物へのベクターの導入
一般に、ベクターは植物に、既知の手法に従って送達され得る。例えば、ベクターそれ自体を直接、植物に適用してもよい(例えば、表皮剥脱接種、機械化噴霧接種、真空浸潤、パーティクル・ボンバードメント、またはエレクトロポレーションによって)。あるいはまたさらに、ビリオンを調製してもよく(例えば、既に感染させた植物から)、それを既知の手法に従って他の植物に適用してもよい。
種々の植物種に感染する多種多様なウイルスが知られており、本発明によるポリヌクレオチド発現に使用され得る(例えば、The Classification and Nomenclature of Viruses、「Sixth Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses」、Murphyら編、Springer Verlag:New York、1995(その全内容は、引用により本明細書に組み込まれる);Griersonら、Plant Molecular Biology,Blackie、London、pp.126−146、1984;Gluzmanら、Communications in Molecular Biology:Viral Vectors、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、pp.172−189、1988;およびMathew、Plant Viruses Online、http://image.fs.uidaho.edu/vide/を参照のこと)。本発明の特定のある実施形態では、単一のウイルスベクターを植物細胞に送達するのではなく、一緒になってウイルスベクター(1つまたは複数)の複製(ならびに任意選択で、細胞間および/または長距離移動)を可能にする多くの異なるベクターを送達する。そのタンパク質の一部または全部が、遺伝子導入植物のゲノムにコードされ得る。本明細書においてさらに詳細に記載した特定のある態様において、このような系には、1種類以上のウイルスベクター成分が含まれる。
広範な植物型に容易に感染するが、感染性が広がるリスクはほとんどまたは全くない系を得るために2種類の異種植物ウイルスの成分を含むベクター系。例示的な系は、以前に報告されている(例えば、PCT公開公報WO 00/25574および米国特許公開公報第2005/0026291号(これは、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本明細書に記載のように、本発明の特別な態様では、ウイルスベクターは植物(例えば、植物、植物の一部分、苗条など)に、種々の方法によって(例えば、浸潤または機械的接種、噴霧などにより)適用される。感染が植物へのウイルスゲノムの直接適用によって行なわれる場合、任意の利用可能な手法を用いて該ゲノムが調製され得る。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスはssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムDNAコピーの転写またはRNAコピーの複製によって、インビボまたはインビトロのいずれかで調製され得る。使い易いインビトロ転写系(例えば、SP6、T7、網状赤血球ライセートなど)が容易に入手可能であること、また、RNAベクターのDNAコピーの維持が簡便であることを考慮すると、本発明のssRNAベクターは、多くの場合、インビトロ転写によって特にT7またはSP6ポリメラーゼを用いて調製されることが予測される。
本発明の特定のある実施形態では、単一のウイルスベクター型を植物細胞に導入するのではなく、多くの異なるウイルスベクターを導入する。かかるベクターは、例えば、複製、細胞間移動および/または長距離移動などの機能に関して互いに対補体(trans−complement)であり得る。ベクターは、本発明のインフルエンザ抗原をコードする異なるポリヌクレオチドを含有するものであり得る。1種類以上のインフルエンザ抗原をコードする多くのポリペプチドを発現する植物(1種類または複数種)またはその一部分の選択は、単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドについて上記のようにして行なわれ得る。
植物組織発現系
上記のように、本発明によれば、インフルエンザ抗原は、任意の望ましい系内で産生させ得る。ベクター構築物および発現系は、当該技術分野でよく知られており、本明細書に示すインフルエンザ抗原の使用の組込みに適合させ得る。例えば、遺伝子導入植物の作製は、既知であり、構築物の作製および植物産生は、当該技術分野で知られた手法に従って適合させ得る。一部のある実施形態では、植物における一過性発現系が望ましい。このような系の2つの例として、クローン根およびクローン植物系およびその誘導体の作製、ならびに発芽種苗系の作製が挙げられる。
クローン植物
クローン根は、RNAウイルス発現ベクターを維持し、標的タンパク質を安定的に、根全体において、および多数回の継代培養で均一に長期間にわたって産生する。植物とは対照的に、標的遺伝子が細胞間または長距離移動中に組換えによって排除された場合、根の培養物では、ウイルスベクターの完全性が維持され、経時的に産生される標的タンパク質のレベルは、初期スクリーニング中に観察されるものと同様である。クローン根により、抗原および抗体組成物の経口製剤のための異種タンパク質材料の容易な作製が可能になる。抗原(例えば、本発明の抗原タンパク質)の作製に有用な植物由来のさまざまなクローン存在体を作製するための方法および試薬は、以前に報告されており、当該技術分野で知られている(例えば、PCT公開公報WO 05/81905(これは、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。クローン存在体としては、抗原(例えば、本発明の抗原タンパク質)を産生し得るクローン根株(line)、クローン根細胞株、クローン植物細胞株およびクローン植物が挙げられる。本発明は、さらに、種々の植物組織(例えば、根、葉)に由来するクローン細胞株、および単一細胞(クローン植物)に由来する完全体の植物における抗原ポリヌクレオチドおよびポリペプチド産物の発現のための方法および試薬を提供する。かかる方法は、典型的には、種々の型の植物ウイルスベクターの使用に基づくものである。
例えば、一態様において、本発明は、(i)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを、植物またはその一部分に導入する工程;および(ii)1種類以上のクローン根株を植物から作製する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株を得る方法を提供する。クローン根株は、例えば、植物または植物の一部分(例えば、採取した葉片)を、毛状根の形成を引き起こすアグロバクテリウム(例えば、A.リゾゲネス)に感染させることにより作製され得る。クローン根株は、ウイルスを維持する株、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する株などを同定するために種々の様式でスクリーニングされ得る。本発明は、さらに、クローン根株(例えば、本発明の方法に従って作製されるクローン根株)を提供し、さらに、クローン根株を用いて、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチドを発現させる方法、およびそのポリペプチド(1種類または複数種)を産生させる方法を包含する。
本発明は、さらに、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)細胞を、根細胞増殖に適した条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根細胞株を作製する方法を提供する。本発明は、クローン根細胞株ならびにクローン根細胞株を用いたポリヌクレオチドの発現方法およびポリペプチドの産生方法を提供する。
一態様において、本発明は、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)細胞を培養状態で、植物細胞増殖に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株を作製する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドウイルスベクターを、培養状態で維持された植物細胞株の細胞内に導入する工程;および(ii)該ウイルスベクターを含有する細胞を富化する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物細胞株の作製方法を提供する。富化は、例えば、(i)一部の細胞を培養物から取り出し、(ii)取り出した細胞を、細胞濃度が低下するように希釈し、(iii)希釈された細胞を増殖させ、(iv)該ウイルスベクターを含有する細胞についてスクリーニングすることにより行なわれ得る。クローン植物細胞株は、本発明によるインフルエンザ抗原の作製に使用され得る。
本発明には、その細胞が、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを含有するクローン植物を作製するためのいくつかの方法が含まれる。例えば、本発明は、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン根株を作製する工程;(ii)個々の細胞をクローン根株から解放する工程;および(iii)放出された細胞を植物の形成に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作製する方法を提供する。本発明は、さらに、(i)その細胞がウイルスベクターを含有し、ゲノムが本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含むクローン植物細胞株を作製する工程;および(ii)細胞を植物の形成に適切な条件下に維持する工程を含む、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン植物を作製する方法を提供する。一般に、本発明によるクローン植物は、本発明のインフルエンザ抗原をコードする任意のポリヌクレオチドを発現するものであり得る。かかるクローン植物は、抗原ポリペプチドの作製に使用され得る。
上記のように、本発明は、クローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株(例えば、葉、茎などに由来する細胞株)、およびクローン植物において、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする1種類または複数種類のポリヌクレオチドを発現させるための系を提供する。本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドは、植物ウイルスベクターを用い、そのゲノムが、プロモーターに作動可能に連結された(すなわち、その制御下にある)本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む祖先植物細胞内に導入される。クローン根株またはクローン植物細胞株は、任意のいくつかの手法(さらに後述する)に従ってウイルスを含有する細胞から樹立されたものである。植物ウイルスベクターまたはその一部分は植物細胞内に、感染、ウイルス転写物または感染性cDNAクローンの接種、エレクトロポレーション、T−DNA媒介性遺伝子導入などによって導入され得る。
以下のセクションに、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株およびクローン植物の作製方法を記載する(are 次いで、described)。「根株」は、根株により実際に根様構造または根がもたらされるのに対し、根細胞株は、根様構造を形成しない根細胞からなるという点で、「根細胞株」と区別される。用語「株」の使用は、その株の細胞が増殖し、遺伝情報を子孫細胞に伝え得ることを示すことが意図される。細胞株の細胞は、典型的には、そのままの植物に見られるものなどの組織化された構造の一部ではなく、培養状態で増殖させる。用語「根株」の使用は、根構造内の細胞が、完全な植物の一部ではなく、増殖し得ることを示すことが意図される。用語「植物細胞」には根細胞が包含されることに注意されたい。しかしながら、根株および根細胞株を作製するための本発明の方法を、非根組織から植物細胞株を直接作製する(クローン根株またはクローン根株由来のクローン植物からのクローン植物細胞株の作製とは反対)ために使用されるものと区別するため、用語「植物細胞」および「植物細胞株」は、本明細書で用いる場合、一般的には、非根植物組織からなる細胞および細胞株をいう。植物細胞は、例えば、葉、茎、苗条、花の部分などであり得る。種子は、本明細書において誘導されるようにして作製されたクローン植物に由来のものであり得ることに注意されたい。かかる種子は、ウイルスベクターを含有するものであり得、かかる種子から得られる植物も同様である。種子ストックを得るための方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、米国特許公開公報第2004/0093643号を参照のこと)。
クローン根株
本発明は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの発現を指令するのに植物ウイルスベクターを用いる、クローン根株の作製のための系を提供する。プロモーターに作動可能に連結された本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む1種類以上のウイルス発現ベクターを、植物またはその一部分に、任意のさまざまな既知の方法に従って導入する。例えば、植物葉に、ウイルス転写物が接種され得る。ベクターそれ自体を直接、植物に適用してもよい(例えば、表皮剥脱接種、機械化噴霧接種、真空浸潤、パーティクル・ボンバードメント、またはエレクトロポレーションによって)。あるいはまたさらに、ビリオンを調製してもよく(例えば、既に感染させた植物から)、それを既知の手法に従って他の植物に適用してもよい。
感染が植物へのウイルスゲノムの直接適用によって行なわれる場合、任意の利用可能な手法を用いてウイルスゲノムが調製され得る。例えば、本発明に従って有用に使用される多くのウイルスはssRNAゲノムを有する。ssRNAは、ゲノムDNAコピーの転写またはRNAコピーの複製によって、インビボまたはインビトロのいずれかで調製され得る。使い易いインビトロ転写系(例えば、SP6、T7、網状赤血球ライセートなど)が容易に入手可能であること、また、RNAベクターのDNAコピーの維持が簡便であることを考慮すると、本発明のssRNAベクターは、多くの場合、インビトロ転写によって特にT7またはSP6ポリメラーゼを用いて調製されることが予測される。感染性cDNAクローンを使用してもよい。アグロバクテリウム(Agrobacterially)媒介性遺伝子導入を使用し、ウイルス核酸(例えば、ウイルスベクター(ウイルスゲノム全体またはその一部分のいずれか)など)が植物細胞に、例えばアグロバクテリウム浸潤(agroinfiltration)を用いて当該技術分野で知られた方法に従って導入され得る。
次いで、植物または植物の一部分は、ウイルス転写物の複製に適した条件下に維持(例えば、培養または増殖)され得る。本発明の特定のある実施形態において、ウイルスは、最初に接種した細胞を越えて(例えば、細胞間で局所的に、および/または最初に接種した葉から別の葉に全体的に)拡延する。しかしながら、本発明の一部のある実施形態では、ウイルス拡延しない。したがって、ウイルスベクターは、機能的MPおよび/またはCPをコードする遺伝子を含有するものであり得るが、かかる遺伝子の一方または両方を欠くものであってもよい。一般に、ウイルスベクターは、植物またはその一部分の多くの細胞内に導入される(感染する)。
植物へのウイルスベクターの導入後、葉を採取する。一般に、葉は、ウイルスベクターの導入後の任意の時点で採取され得る。しかしながら、植物へのウイルスベクターの導入後、植物をある一定期間(例えば、ウイルスの複製に充分な期間および任意選択で、最初に導入された細胞からのウイルスの拡延に充分な期間)、維持することが望ましい場合もあり得る。クローン根の培養物(または多重培養物)は、例えば、以下にさらに説明する既知の方法によって調製される。
一般に、任意の利用可能な方法を用いて、ウイルスベクターを導入した植物または植物組織からクローン根の培養物が調製され得る。かかる方法の一例では、ある種の細菌プラスミド内に存在する遺伝子が使用される。このようなプラスミドは、多種多様な生物体に感染し、DNAを転移させる種々の種アグロバクテリウムに見られる。一例として、アグロバクテリウム属は、多くの多様な組の植物型(例えば、数多くの双子葉植物および単子葉植物の被子植物種および裸子植物)に、DNAを転移させることができる(Gelvinら、2003、Microbiol.Mol.Biol.Rev.、67:16)およびそこに挙げられた参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。植物細胞の遺伝的形質転換の分子的根拠は、細菌からの転移と、植物の核内ゲノムへの種々のアグロバクテリウム種に存在する大きな腫瘍誘導性(Ti)または発根性(rhizogenic)(Ri)プラスミド領域の組込みである。この領域は、プラスミド内に存在する場合はT−領域と呼ばれ、プラスミドから切除された場合はT−DNAと呼ばれる。一般的に、単鎖T−DNA分子は、天然のアグロバクテリウム感染において植物細胞内に転移され、最終的にゲノム内に組み込まれる(二本鎖形態で)。Tiプラスミドを主体とする系は、植物への外来遺伝物質の導入および遺伝子導入植物の作製に広く使用されている。
種々のアグロバクテリウム種による植物の感染およびT−DNAの導入は、いくつかの効果を有する。例えば、A.ツメファシエンスは、クラウンゴール病を引き起こし、一方、A.リゾゲネスは、感染部位において、「毛状根病」として知られる状態の毛状根の発生を引き起こす。各根は、単一の遺伝的形質転換細胞から生じる。したがって、根の根細胞はクローンであり、各根は、細胞のクローン集団である。A.リゾゲネス感染によってもたらされる根は、高い生長速度と遺伝的安定性を特徴とする(Giriら、2000、Biotechnol.Adv.,18:1、およびそこに挙げられた参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる))。また、かかる根は、遺伝的に安定な植物を再生する能力を有する(Giriら、2000、前掲)。
一般に、本発明には、植物細胞からの根の形成を誘導する能力を有する任意の株のアグロバクテリウム(例えば、任意のA.リゾゲネス株)の使用が包含される。上記のように、Riプラスミドの一部分(Ri T−DNA)は、毛状根病の原因を担う。Riプラスミドのこの部分の植物細胞への導入は、Riプラスミドを保有するアグロバクテリウムによる感染によって簡便に行なわれ得るが、本発明には、関連する領域を植物細胞内に導入する択一的な方法の使用が包含される。かかる方法としては、植物細胞内に遺伝物質を導入する任意の利用可能な方法、例えば限定されないが、粒子銃(biolistic)、エレクトロポレーション、PEG媒介性DNA取込み、Ti系ベクターなどが挙げられる。Ri T−DNAの関連する領域は植物細胞内に、ウイルスベクターの使用によって導入され得る。Ri遺伝子は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含有する同じベクター内に含めてもよく、異なるウイルスベクター(本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターと同じ型であっても異なる型であってもよい)に含めてもよい。毛状根の発生には、Ri T−DNA全体が必要とされるわけではないこともあり得、本発明には、当該技術分野で知られているような、根形成を誘導するのに充分な遺伝物質を含有していれば、Ri T−DNAの一部分の使用が包含されることに注意されたい。さらなる遺伝物質、例えば、Riプラスミド内に存在するがT−DNAには存在しない遺伝子(特に、その発現産物によって植物細胞DNA内へのT−DNAの組込みが助長される遺伝子)を、本発明に従って植物細胞に導入してもよい。
本発明の特定のある実施形態によるクローン根株を調製するため、採取した葉部分をA.リゾゲネスと、感染および形質転換に適した条件下で接触させる。葉部分を培養状態で維持し、毛状根を発生させる。各根はクローンである、すなわち、根の細胞は、Ri T−DNAが導入された単一の祖先細胞に由来している。本発明によれば、一部のかかる祖先細胞は、ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、かかる祖先細胞に由来する根の細胞は、細胞***中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン根の娘細胞に受け継がれるため、根内のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターをその根中に維持するものである必要はないことに注意されたい。個々のクローン毛状根を葉部分から取り出し、さらに培養してもよい。かかる根を、本明細書では根株ともいう。単離したクローン根は、単離後、継続して培養される。
さまざまな異なるクローン根株が、本発明の方法を用いて作製された。これらの根株は、本発明のインフルエンザ抗原をコードする(例えば、インフルエンザポリペプチド(1種類または複数種)、またはその断片もしくは融合タンパク質をコードする)ポリヌクレオチド(1種類または複数種)を含有するウイルスベクターを用いて作製した。根株をウエスタンブロットによって試験した。根株は、種々のポリペプチドのさまざまな異なる発現レベルを示した。高発現を示す根株を選択し、さらに培養した。続いて、これらの根株を再度試験すると、長期間にわたって高レベルの発現を維持していることが示され、これは、安定性を示す。発現レベルは、クローン根株を作製するのに用いたのと同じウイルスベクターに感染させたそのままの(intact)植物における発現と同等またはそれ以上であった。また、根株の発現の安定性は、同じウイルスベクターに感染させた植物で得られるものより優れていた。かかるウイルス感染植物の80%までが、2〜3回の継代後に野生型に復帰した(かかる継代は、植物に転写物を接種すること、感染させて(局所または全体的)樹立させること、葉試料を採取すること、および新たな植物に接種を行ない、続いて、これを発現について試験することを伴うものであった)。
根株を、以下にさらに説明するようにして、大規模で培養し、本発明の抗原ポリペプチドを生成させてもよい。クローン根株(およびクローン根株由来の細胞株)は、一般的に、根および植物細胞の培養に典型的に使用される種々の化合物(例えば、植物生長ホルモン(オーキシン、サイトカインなど))を含有しない培地中で維持できることに注意されたい。この特徴により、組織培養に伴う費用が大きく低減され、本発明者らは、該特徴が、植物を用いたタンパク質作製の経済的な実現可能性に大いに寄与すると予測する。
任意のさまざまな方法を用いて、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチド(1種類または複数種)を発現するクローン根が選択され得る。ウエスタンブロット、ELISAアッセイなどが、コードポリペプチドの検出に使用され得る。GFPなどの検出可能なマーカーの場合は、択一的な方法、例えば、視覚的スクリーニングが行なわれ得る。選択可能なマーカーをコードするポリヌクレオチドを含有するウイルスベクターが使用される場合、適切な選択が課され得る(例えば、葉材料および/またはこれに由来する根が、適切な抗生物質の存在下または栄養条件下で培養され、生存根が同定および単離され得る)。ある種のウイルスベクターは、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする2種類以上のポリヌクレオチド(例えば、異なるポリペプチドをコードする2種類以上のポリヌクレオチド)を含有する。これらのうちの一方が選択可能または検出可能なマーカーである場合、マーカーを選択するまたはその発現を検出することにより選択または検出されたクローン根は、第2のポリヌクレオチドも発現する高い確率を有する。また、特定のポリヌクレオチドを含有する根株のスクリーニングが、PCRおよび他の核酸検出方法を用いて行なわれ得る。
あるいはまたさらに、クローン根株は、ウイルス感染の結果、局所病変を形成する宿主植物(例えば、過敏性宿主植物)に接種することにより、ウイルスの存在についてスクリーニングされ得る。例えば、5mgの根組織を50μlのリン酸塩バッファー中でホモジナイズし、これを、タバコ植物の単一の葉に接種するために使用し得る。ウイルスが根の培養物中に存在する場合、2〜3日以内に特徴的な病変が、感染させた葉に出現する。これは、根株が、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチド(標的遺伝子)を担持する組換えウイルスを含有することを意味する。局所病変が形成されない場合、ウイルスは存在せず、根株は陰性として却下される。この方法は、非常に時間効率およびコスト効率がよい。ウイルスの存在について最初にスクリーニングした後、ウイルスを含有する根は、二次スクリーニング、例えば、ウエスタンブロットまたはELISAに供され、高発現体が選択され得る。さらなるスクリーニング、例えば、急速生長、特定の培地中または特定の環境条件下での生長についてのスクリーニングなどが適用され得る。これらのスクリーニング方法は、一般に、本明細書に記載の任意のクローン根株、クローン根細胞株、クローン植物細胞株および/またはクローン植物の開発に適用され得る。
当業者には自明のように、ウイルスベクターを含有するクローン根株を作製するための本発明の方法の記載に対して、さまざまな変形が行なわれ得る。かかる変形は、本発明の範囲に含まれる。例えば、一般的には、ウイルスベクターをそのままの植物またはその一部分に、Ri T−DNA遺伝子の導入前に導入することが望ましいが、本発明の特定のある実施形態では、Ri−DNAが、ウイルスベクターの導入前に導入される。また、葉部分を採取し、次いでこれらを細菌に曝露するのではなく、そのままの植物をA.リゾゲネスと接触させることも可能である。
ウイルスベクターを保有する植物またはその一部分の単一細胞からクローン根株を作製する他の方法を使用してもよい(すなわち、A.リゾゲネスまたはRiプラスミド由来の遺伝物質を使用しない方法)。例えば、ある種の植物ホルモンまたは植物ホルモンの組合せでの処理により、植物組織からの根の発生がもたらされることが知られている。
クローン根株由来のクローン細胞株
上記のように、本発明は、その細胞がウイルスベクターを含有するクローン根株の作製方法を提供する。当該技術分野でよく知られているように、さまざまな異なる細胞株を、根から生成させ得る。例えば、根細胞株は、根から得られる個々の根細胞から、さまざまな既知の方法を用いて生成させ得る。かかる根細胞株は、根内の種々の異なる根細胞型から得られ得る。一般に、根材料を採取して解離させ(例えば、物理的に、および/または酵素的消化により)、個々の根細胞に解放し、次いで、これをさらに培養する。完全なプロトプラスト形成は、一般的には必要でない。所望により、根細胞は、単一の根細胞から根細胞株が得られるように、非常に薄い細胞濃度でプレーティングされ得る。この様式で誘導された 根細胞株は、ウイルスベクターを含有するクローン根細胞株である。したがって、かかる根細胞株は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの安定な発現を示す。クローン植物細胞株は、同様にクローン根から、例えば、解離させた根細胞を適切な植物ホルモンの存在下で培養することにより得られ得る。スクリーニングおよび連続的な富化の繰り返しを用いて、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを高レベルで発現する細胞株が同定され得る。しかしながら、細胞株を誘導するクローン根株が、既に高レベル発現を示す場合は、かかるさらなるスクリーニングは不必要であり得る。
クローン根株の場合と同様、クローン根細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞***中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン根細胞株の娘細胞に受け継がれるため、細胞間のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。クローン根細胞株は、後述のようにして、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの作製に使用され得る。
クローン植物細胞株
本発明は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドの直接的な発現に植物ウイルスベクターが使用される、クローン植物細胞株を作製するための方法を提供する。本発明の方法によれば、プロモーターに作動可能に連結された本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを含む1種類以上のウイルス発現ベクターが、細胞培養物の状態で維持された植物細胞株の細胞内に導入される。種々の植物型に由来するいくつかの植物細胞株が当該技術分野で知られており、その任意のものが使用され得る。新たに誘導される細胞株は、本発明の実施における使用のための既知の方法に従って作製され得る。ウイルスベクターは植物細胞株の細胞内に、任意のいくつかの方法に従って導入される。例えば、プロトプラストを作製し、次いで、ウイルス転写物を細胞内にエレクトロポレーションしてもよい。植物ウイルスベクターを植物細胞株の細胞内に導入するための他の方法を使用してもよい。
本発明によるクローン植物細胞株の作製方法および植物細胞(例えば、プロトプラスト)の導入に適したウイルスベクターは、以下のようにして使用され得る。ウイルスベクターの導入後、植物細胞株は、組織培養状態で維持され得る。この期間中、ウイルスベクターが複製され得、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチド(1種類または複数種)が発現され得る。クローン植物細胞株は、例えば、連続的な富化プロセスによる培養物に由来するものである。例えば、試料は、培養物から取り出され、任意選択で、細胞濃度が低くなるように希釈を伴い、ペトリ皿に個々の液滴状態でプレーティングされ得る。次いで、液滴を維持し、細胞***させる。
液滴には、培養物の初期密度および希釈物の量に応じて種々の数の細胞が含有され得ることは認識されよう。1回だけの富化後に本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリヌクレオチドを発現するクローン細胞株を得ることが所望される場合、細胞は、ほとんどの液滴が0または1つのいずれかの細胞を含有するように希釈され得る。しかしながら、各液滴に多くの細胞が存在し、次いで液滴をスクリーニングすると、発現細胞を含有するものが同定されるような濃度を選択することが、より効率的であり得る。一般に、任意の適切なスクリーニング手順が使用され得る。例えば、GFPなどの検出可能なマーカーの選択または検出が使用され得る。ウエスタンブロットまたはELISAアッセイが使用され得る。個々の液滴(100μl)は、このようなアッセイを実施するのに充分量より多くの細胞を含む。多数回の富化を行なうと、高発現細胞株が成功裡に単離される。単一のクローン植物細胞株(すなわち、単一の祖先細胞に由来する集団)は、単一細胞クローニングのための標準的な方法を使用し、さらに限界希釈することによってもたらされ得る。しかしながら、個々のクローン株を単離する必要はない。多くのクローン細胞株を含む集団を、1種類以上の本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチドの発現に使用してもよい。
一般に、クローン根株の作製について上記した一定の考慮事項は、クローン植物細胞株の作製に当てはまる。例えば、1種類以上の本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードするポリヌクレオチド(1種類または複数種)を含有する多様なウイルスベクターが使用され得、多くの異なるベクターの組合せであってもよい。同様のスクリーニング方法が使用され得る。クローン根株およびクローン根細胞株の場合と同様、クローン植物細胞株の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞***中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン植物細胞株の娘細胞に受け継がれるため、細胞内のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。クローン植物細胞株は、後述のようにして、本発明のインフルエンザ抗原をコードするポリペプチドの作製に使用され得る。
クローン植物
クローン植物は、上記の種々の方法に従って作製されるクローン根、クローン根細胞株および/またはクローン植物細胞株から作製され得る。根、根細胞株および植物細胞株(例えば、本明細書に記載のクローン根株、クローン根細胞株およびクローン植物細胞株)からの植物の作製方法は当該技術分野でよく知られている(例えば、Peresら、2001,Plant Cell,Tissue,and Organ Culture,65:37;および本明細書の別の箇所に挙げた植物分子生物学およびバイオテクノロジーに関する標準的な参考研究論文を参照のこと)。したがって、本発明は、(i)上記の任意の本発明の方法によりクローン根株、クローン根細胞株またはクローン植物細胞株を作製する工程;および(ii)クローン根株、クローン根細胞株またはクローン植物から完全体の植物を作製する工程を含む、クローン植物を作製する方法を提供する。クローン植物は、標準的な方法に従って繁殖および生長させ得る。
クローン根株、クローン根細胞株およびクローン植物細胞株の場合と同様、クローン植物の細胞は、ウイルスベクターを含有する単一の祖先細胞に由来し、したがって、細胞***中にウイルスベクターが複製され、伝播するため、該ウイルスベクターを含有するものであり得る。したがって、高率(例えば、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%)、すべて(100%)または実質的にすべて(少なくとも98%)の細胞が、ウイルスベクターを含有する。ウイルスベクターはクローン植物の娘細胞に受け継がれるため、細胞間のウイルスベクターの移動は、ウイルスベクターを維持するものである必要はないことに注意されたい。
苗条および発芽種苗の植物発現系
本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)の作製に有用な、さまざまな苗条および発芽種苗を作製するための系および試薬は、以前に報告されており、当該技術分野で知られている(例えば、PCT公開公報WO 04/43886(これは、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本発明は、さらに、インフルエンザ抗原を含有するバイオマスとしての、摂食可能であり得る発芽種苗を提供する。特定のある態様において、バイオマスは、抗原含有組成物の消費に直接提供される。一部のある態様では、バイオマスは、消費前に、例えばホモジネーション、破砕、乾燥または抽出により加工される。特定のある態様において、インフルエンザ抗原は、バイオマスから精製され、医薬組成物に製剤化されたものである。
さらに、生で消費または採取され得る発芽種苗(例えば、アブラナ属の苗条、発芽種苗)において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を産生させるための方法を提供する。特定のある態様では、本発明は、種子を食用発芽種苗まで、収容型の(contained)調節可能な環境内(例えば、屋内、容器内など)で生長させることを伴うものである。種子は、インフルエンザ抗原をコードする発現カセットを含有し、その発現が外来誘導プロモーターによって駆動される遺伝子操作された種子であってもよい。例えば、光、熱、植物ホルモン、栄養素などによって誘導され得るさまざまな外来誘導プロモーターが使用され得る。
関連する実施形態において、本発明は、アグロバクテリウム形質転換系を用い、インフルエンザ抗原の発現が誘導プロモーターによって駆動されるインフルエンザ抗原コード発現カセットで植物を形質転換することによって、最初に発芽種苗用の種子ストックを作製することにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発芽種苗において産生させる方法を提供する。遺伝子導入種子は、収容型の調節可能な環境内で生長させ、インフルエンザ抗原を発現するように誘導した形質転換植物から得られ得る。
一部のある実施形態では、発現が任意のウイルスプロモーターまたは誘導プロモーターによって駆動され得るインフルエンザ抗原コードするウイルス系発現カセットに、発芽種苗を感染させることを伴う方法を提供する。発芽種苗は、収容型の調節可能な環境内で2〜14日間、または少なくとも、消費もしくは採取に充分なレベルのインフルエンザ抗原が得られるまで生長させる。
本発明は、さらに、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発芽種苗において産生させるための系であって、温度調節器を備えた収容ユニットと、1種類以上のインフルエンザ抗原をコードし、その発現が構成的または誘導プロモーターによって駆動される発現カセットを含む発芽種苗とを含む系を提供する。該系により、屋外環境または温室では制御不可能な特有の利点がもたらされ得る。したがって、本発明により、栽培者が、インフルエンザ抗原の発現の誘導に、正確に測定することが可能になる。これにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の作製の時間とコストが大きく低減され得る。
特定のある態様において、一過的にトランスフェクトされた苗条は、本発明のインフルエンザ抗原をコードするウイルスベクター配列を含有する。種苗は、苗条におけるウイルス核酸の生成が可能となるような期間生長させた後、多コピーのウイルスが産生される生長期間生長させる。それにより、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の産生がもたらされる。
特定のある態様において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)をコードする核酸を含有する遺伝子操作された種子または胚を発芽種苗段階まで、収容型の調節可能な環境内で生長させる。収容型の調節可能な環境は、種子が屋内で生長させ得る収容ユニットまたは部屋であり得る。収容型の調節可能な環境のあらゆる環境因子は制御され得る。苗条は、生長に光を必要とせず、照明は高価であり得るため、遺伝子操作された種子または胚は発芽種苗段階まで、屋内で光の非存在下で生長させ得る。
本発明の収容型の調節可能な環境内で調節され得る他の環境因子としては、温度、湿度、水、栄養素、ガス(例えば、OもしくはCO含量または空気循環)、化学薬品(小分子(例えば、糖類および糖誘導体)またはホルモン(例えば(such as such as)、植物ホルモンであるジベレリン酸またはアブシジン酸など)などが挙げられる。
本発明の特定のある方法によれば、インフルエンザ抗原をコードする核酸の発現は、外来誘導プロモーターによって制御され得る。外来誘導プロモーターは、内部刺激ではなく、外部刺激に応答して核酸の発現を増減するようにされたものである。いくつかの環境因子は、遺伝子操作された苗条の発現カセットに担持された核酸発現の誘導因子として作用し得る。プロモーターは、熱誘導プロモーター、例えば、熱ショックプロモーターであってもよい。例えば、熱ショックプロモーターとして使用すると、収容型の環境の温度が簡単に上昇し、核酸の発現が誘導され得る。他のプロモーターとしては、光誘導プロモーターが挙げられる。光誘導プロモーターは、収容型の調節可能な環境内の光を常にオンにしておくと、構成的プロモーターとして維持され得る。あるいはまたさらに、単に点灯することにより、核酸の発現を発育中の特定の時点でオンをすることができる。プロモーターは、化学的誘導プロモーターであってもよく、核酸の発現に使用される。このような実施形態によれば、単に化学薬品を種子、胚または種苗上に霧吹きまたは噴霧すると、核酸の発現が誘導され得る。噴霧および霧吹きは、意図する標的種子、胚または種苗上に正確に制御および指向され得る。収容型の環境には、化学薬品を意図する標的から離れるように分散させ得る風または空気流がなく、そのため、化学薬品は、意図する標的上に留まる。
本発明によれば、発現を誘導する時間は、採取時点までに発芽種苗におけるインフルエンザ抗原の発現が最大限となるように選択され得る。特定の生長段階での胚における発現の誘導、例えば、発芽の特定の日数後の胚における発現の誘導により、採取時点でインフルエンザ抗原の最大の合成がもたらされ得る。例えば、発芽4日後のプロモーターからの発現の誘導では、3日後または5日後でのプロモーターからの発現の誘導より多くのタンパク質合成がもたらされ得る。当業者には、発現の最大化が常套的な実験手法によって達成され得ることが認識されよう。一部の方法では、発芽種苗は、発芽の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12日後に採取される。
発現ベクターが、誘導プロモーターの代わりに構成的プロモーターを有する場合、発芽種苗は、発芽種苗の形質転換の一定期間後に採取され得る。例えば、発芽種苗を発育の初期段階(例えば、胚段階)でウイルスにより形質転換した場合、発芽種苗は、発現が形質転換後に最大となる時点で、例えば、形質転換の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日後に採取され得る。苗条は、種子の発芽に応じて、形質転換の1、2、3ヶ月後またはそれ以上に発育することがあり得る。
一般的には、インフルエンザ抗原の発現(1種類または複数種)が開始されると、
種子、胚または発芽種苗を、充分なレベルのインフルエンザ抗原(1種類または複数種)が発現されるまで生長させる。特定のある態様において、充分なレベルは、採取されたバイオマスを生で摂食されると、患者に対して治療的有益性をもたらし得るレベルである。あるいはまたさらに、充分なレベルは、バイオマスからインフルエンザ抗原を濃縮または精製することができ、患者に投与されると治療的有益性がもたらされる医薬組成物に製剤化することができるレベルである。典型的には、インフルエンザ抗原は、自然界の発芽種苗において発現されるタンパク質ではない。任意の速度において、インフルエンザ抗原は、典型的には、自然界の発芽種苗に存在し得るものより高い濃度で発現される。
インフルエンザ抗原の発現が誘導されたら、発芽種苗段階まで生長を継続させ、該段階の時点で発芽種苗を採取する。発芽種苗は生きた状態で採取され得る。発芽種苗を生で採取することは、いくつかの利点(例えば、労力および破損が最小限であること)を有する。本発明の発芽種苗は水栽培で生長させ得、採取は、発芽種苗をその水栽培溶液から摘みあげるという単純なものになる。土壌は、本発明の発芽種苗の生長に必要とされないが、当業者が必要または望ましいと考えれば供給してもよい。苗条は、土壌なしで生長させ得るため、採取時点で発芽種苗材料の清浄は必要とされない。発芽種苗を直接その水栽培環境から、洗浄または擦ることなく採取できることにより、採取される材料の破損が最小限に抑えられる。植物の破損およびしおれは、アポトーシスを誘導する。アポトーシス中、ある種のタンパク質分解酵素が活性となり、これによって、発芽種苗において発現された医薬用タンパク質が分解され、該タンパク質の治療活性の低下がもたらされ得る。アポトーシス誘導型タンパク質分解により、成熟植物からのタンパク質の収量が有意に低下し得る。本発明の方法を用いると、タンパク質を植物から抽出する時点まで採取を行わない場合、アポトーシスが回避され得る。
例えば、生の苗条を磨砕、破砕またはブレンドし、発芽種苗バイオマスをプロテアーゼインヒビター含有バッファー中に含むスラリーを作製してもよい。バッファーは約4℃に維持され得る。一部のある態様において、発芽種苗バイオマスは、風乾、噴霧乾燥、凍結または凍結乾燥される。成熟植物の場合と同様、一部のこれらの方法(例えば、風乾など)により、医薬用タンパク質の活性の低下がもたらされることがあり得る。しかしながら、発芽種苗は非常に小さく、体積に対して大きな表面積比を有するため、これが起こる可能性はかなり低い。当業者には、発現されたタンパク質のタンパク質分解を最小限に抑える多くのバイオマス採取手法が利用可能であり、本発明に適用され得ることが認識されよう。
一部のある実施形態において、発芽種苗は食用のものである。特定のある実施形態では、充分なレベルのインフルエンザ抗原を発現する発芽種苗が、採取時に(例えば、採取直後、採取後最小限の期間内)消費され、そのため、発芽種苗が消費される前に加工処理は全く行われない。このように、処置を必要とする患者へのインフルエンザ抗原の投与前でのインフルエンザ抗原の任意の採取誘導性タンパク質分解的破壊は、最小限に抑えられる。例えば、消費されるよう準備された発芽種苗は、直接患者に送達され得る。あるいはまたさらに、遺伝子操作された種子または胚は、処置を必要とする患者に送達され、患者によって発芽種苗段階まで生長される。一態様では、遺伝子操作された発芽種苗の供給源が、患者または患者を処置する医師に提供され、その結果、ある種の望ましいインフルエンザ抗原を発現する発芽種苗の継続的なストックは栽培されるものであり得る。これは、高価な医薬品が手ごろな価格または送達可能でない発展途上国の集団にとって特に有益であり得る。本発明の発芽種苗を容易に生長させ得ることにより、本発明の発芽種苗は、かかる開発途上国の集団に特に望ましいものとなる。
収容型の環境が調節可能である特質により、本発明に対し、屋外環境で植物を生長させることと比べて利点が付与される。一般に、植物において医薬用タンパク質を発現する遺伝子操作された発芽種苗を生長させることにより、遺伝子操作された植物を生長させるよりも速く(幼若な植物を採取するため)、労力、リスクおよび規制の考慮事項が少ない医薬用生成物がもたらされる。本発明において使用される収容型の調節可能な環境により、自然界の植物との異花受粉のリスクが低減または排除される。
例えば、熱誘導プロモーターは、屋外温度を制御することができないため、おそらく屋外では使用され得ない。該プロモーターは、屋外温度が一定レベルを超えて上昇した任意の時点でオン状態となり得る。同様に、該プロモーターは、屋外温度が下がるごとにオフ状態となり得る。かかる温度シフトは1日のうち起こり得、例えば、日中に発現がオン状態となり、夜間にオフとなり得る。熱誘導プロモーター(例えば、本明細書に記載のものなど)は、屋外とほぼ同じ程度に気候の変化を受け易い温室における使用ですら実用的でないことがあり得る。温室内での遺伝子操作された植物の生長は、かなり費用がかかる。対照的に、本発明の系では、どの可変量も、採取ごとに最大量の発現が達成され得るように制御することができる。
特定のある実施形態では、本発明の発芽種苗を、発芽種苗の発育中の任意の時点で給水、噴霧または霧吹きができるトレイ内で生長させる。例えば、トレイは、発芽種苗の発育中の特定の時点で正確な量で水、栄養素、化学薬品などを送達および/または除去することができる1種類以上の給水、噴霧、霧吹きおよび排水装置を取り付けたものであり得る。例えば、種子は、自身を湿潤状態に維持するために充分な水分を必要とする。過剰な水分は、トレイ内の孔から部屋の床の排水部へと排出される。典型的には、排水は適宜、廃棄して環境内に戻す前に有害な化学薬品の除去のために処理される。
トレイの別の利点は、非常に小さいスペース内に収容され得ることである。発芽種苗を生長させるのに光は必要とされないため、種子、胚または発芽種苗を入れたトレイを互いの上面に縦方向に密接して積み重ねてもよく、このような目的のために特別に構築された収容施設の単位床空間あたり大量のバイオマスが提供される。また、積み重ねたトレイは、収容ユニット内で水平に何列にも配列され得る。種苗が採取に適切な段階まで生長したら(約2〜14日間)、個々の種苗トレイを加工処理施設内に、手動または自動手段(ベルトコンベアなど)のいずれかによって移動させる。
本発明の系は、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)の供給源である発芽種苗バイオマスが提供されるという点で、特殊である。直接消費されようと、医薬組成物の形態に加工処理されようと、発芽種苗を収容型の調節可能な環境内で生長させるため、発芽種苗バイオマスおよび/またはバイオマスから誘導される医薬組成物は、消費者に低コストで提供され得る。また、発芽種苗の生長条件を制御できることにより、生成物の品質および純度が一貫性となる。本発明の収容型の調節可能な環境により、科学者が遺伝子操作された農作物を屋外で生長させるのを妨げ得るEPAの多くの安全性の規制が回避される。
形質転換された苗条
さまざまな方法を用いて、植物細胞が形質転換され、遺伝子操作された発芽種苗が作製され得る。遺伝子導入植物細胞株をインビトロで作製した後、完全体の植物への細胞株の再生が必要とされる植物の形質転換に利用可能な方法の2つの例として、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介性遺伝子導入と、マイクロプロジェクタイルボンバードメント(microprojectile bombardment)またはエレクトロポレーションとが挙げられる。ウイルスによる形質転換は、所望の生成物を得る前に実験または作製による遅れを伴うことなく採取され得る胚および発芽種苗を形質転換する高速であまり高価でない方法である。任意のこれらの手法について、当業者には、植物、種子、胚または発芽(spouted)種苗に対して伝統的に使用されている形質転換プロトコルを、どのように調整および最適化するかが認識され得よう。
アグロバクテリウム形質転換発現カセット
アグロバクテリウムは、グラム陰性リゾビウム科の代表的な属である。この種は、クラウンゴールおよび毛状根病などの植物腫瘍の原因を担う。腫瘍に特徴的な脱分化植物組織では、オピンとして知られるアミノ酸誘導体がアグロバクテリウムによって産生され、該植物によって異化作用を受ける。オピンの発現を担う細菌遺伝子は、キメラ発現カセット用の制御エレメントの簡便な供給源である。本発明によれば、アグロバクテリウム形質転換系を用いて食用発芽種苗が作製され得、これにより、成熟する前の植物が簡単に採取される。アグロバクテリウム形質転換方法は、インフルエンザ抗原を発現する発芽種苗の再生に容易に適用され得る。
一般に、植物の形質転換は、植物/細菌系ベクターを保有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスとの共培養による、組織培養で生長させた植物細胞の形質転換を伴う。該ベクターは、インフルエンザ抗原をコードする遺伝子を含有する。アグロバクテリウムは、ベクターを植物宿主細胞に転移させ、次いで、抗生物質処理を用いて排除される。インフルエンザ抗原を発現する形質転換植物細胞を選択し、分化させ、最終的に完全体の小さな植物に再生させる(Hellensら、2000、Plant Molecular Biology,42:819;Pilon−Smitsら、1999、Plant Physiolog.,119:123;Barfieldら、1991、Plant Cell Reports,10:308;およびRivaら、1998、J.Biotech,1(3);これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる。
本発明における使用のための発現ベクターとしては、植物における操作のために設計されたインフルエンザ抗原をコードする遺伝子(または発現カセット)であって、その発現カセットの上流および下流に随伴(companion)配列を有するものが挙げられる。随伴配列は、一般的にはプラスミドまたはウイルス起源のものであり、ベクターによってDNAが細菌から所望の植物宿主に転移されるのに必要な特性をもたらすものである。
基本的な細菌系/植物ベクター構築物は、望ましくは、広範囲の宿主に、原核生物系の選択可能なマーカーである原核生物の複製起点を提供するものであり得る。好適な原核生物系の選択可能なマーカーとしては、アンピシリンまたはテトラサイクリンなどの抗生物質に対する耐性が挙げられる。当該技術分野でよく知られたさらなる機能をコードする他のDNA配列を、該ベクターに存在させてもよい。
アグロバクテリウムT−DNA配列は、植物の染色体へのDNAのアグロバクテリウム媒介性転移に必要とされる。典型的には、腫瘍誘導遺伝子であるT−DNAを除去し、インフルエンザ抗原をコードする配列と置き換える。T−DNAボーダー配列は、植物ゲノム内へのT−DNA領域の組込みを開始させるため、保持しておく。インフルエンザ抗原の発現が容易に検出されにくい場合は、細菌系/植物ベクター構築物に、植物細胞が形質転換されたかどうかの判定に適した選択可能なマーカー遺伝子(例えば、nptIIカナマイシン耐性遺伝子)を含めてもよい。Ti配列は、同じまたは異なる細菌系/植物ベクター(Tiプラスミド)上に存在させる。Ti配列は、T−DNAの切除、転移および植物ゲノム内への組込みを担う一組のタンパク質をコードするビルレンス遺伝子を含む(Schell、1987、Science,237:1176)。植物ゲノム内への異種配列の組込みを許容するのに適した他の配列としては、相同組換えのためのトランスポゾン配列などが挙げられ得る。
ある種の構築物は、抗原タンパク質をコードする発現カセットを含む。1つ、2つまたはそれ以上の発現カセットが、所与の形質転換に使用され得る。組換え発現カセットには、インフルエンザ抗原コード配列に加えて、少なくとも以下のエレメント:プロモーター領域、植物の5’非翻訳配列、開始コドン(発現される遺伝子がそれ自身のものを有するか否かに依存する)、ならびに転写および翻訳終結配列が含有される。また、転写および翻訳ターミネーターを、本発明の発現カセットまたはキメラ遺伝子に含めてもよい。タンパク質のプロセッシングおよびトランスロケーションを可能にするシグナル分泌配列を、適宜、発現カセットに含めてもよい。さまざまなプロモーター、シグナル配列、ならびに転写および翻訳ターミネーターが報告されている(例えば、Lawtonら、1987、Plant Mol.Biol.,9:315;米国特許第5,888,789号(引用により本明細書に組み込まれる))。また、抗生物質耐性の構造遺伝子が選択因子として一般に使用されている(Fraleyら1983、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,80:4803(引用により本明細書に組み込まれる))。カセットの5’および3’末端の特殊な制限酵素部位により、既存のベクター内への容易な挿入が可能になる。少なくとも1つのT−DNAボーダー配列を担持するアグロバクテリウム媒介性形質転換のための他のバイナリーベクター系が、PCT/EP99/07414(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
再生
形質転換植物の種子は、採取、乾燥、清浄化され、所望の遺伝子産物の生存能力ならびに存在および発現について試験され得る。これを測定したら、種子ストックは、典型的には、必要時に使用されるまで適切な温度、湿度、衛生およびセキュリティ条件下で保存される。次いで、完全体の植物を培養プロトプラストから既報のようにして再生させ得る(例えば、Evansら、Handbook of Plant Cell Cultures、第1巻:MacMillan Publishing Co.New York、1983;およびVasil(編)、Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Acad.Press、Orlando,FL,第I巻、1984、および第Ill巻、1986(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。特定のある態様では、植物を発芽種苗段階までしか再生させない。一部のある態様では、完全体の植物を種子ストックが得られるまで再生させ、該種子ストックの種子から発芽種苗を発生させる。
プロトプラストを単離および培養して完全体の再生植物を得ることができるあらゆる植物が、本発明によって形質転換され得、その結果、導入遺伝子を含有する完全体の植物が回収される。事実上すべての植物(例えば限定されないが、食用の苗条を発生するあらゆる主要な種の植物)が、培養細胞または組織から再生させ得ることがわかっている。適当な植物の一例としては、アルファルファ、緑豆、ラディッシュ、小麦、カラシナ、ホウレンソウ、ニンジン、ビーツ、タマネギ、ニンニク、セロリ、ルーバーブ、葉菜植物(キャベツまたはレタス、クレソンまたはコショウソウなど)、ハーブ(パセリ、ミントまたはクローバーなど)、カリフラワー、ブロッコリー、大豆、レンズマメ、食用花(ヒマワリなど)などが挙げられる。
再生手段は、植物の種によって異なる。しかしながら、当業者には、一般的に、異種遺伝子コピーを含有する形質転換原始植物(protoplant)の懸濁液を最初に準備することは認識されよう。カルス組織を形成させ、苗条をカルスから誘導し、続いて根付かせ得る。あるいはまたさらに、胚形成をプロトプラスト懸濁液から誘導してもよい。このような胚は、自然な胚として発芽し、植物を形成する。水中に種子を浸すこと、または種子に水を噴霧することで種子の含水量を35〜45%まで増大させると、発芽が開始される。発芽を進行させるためには、種子を、典型的には、制御された温度および空気流条件下、水分で飽和させた空気中で維持する。培養培地は、一般的に、種々のアミノ酸およびホルモン(例えば、オーキシンおよびサイトカインなど)を含有するものである。グルタミン酸およびプロリンを培地に添加することは、特にアルファルファなどの種では、好都合である。苗条および根は、通常、同時に発育する。効率的な再生は、培地、遺伝子型および培養歴に依存する。これらの3つの可変量を制御すると、再生は、充分に再現可能および反復可能となる。
形質転換植物細胞から生長させた成熟植物を自家受粉させ、非分離性(non−segregating)のホモ接合型遺伝子導入植物が確認される。同系交配植物により、本発明の抗原をコードする配列を含む種子が得られる。かかる種子を発芽させ、発芽種苗段階まで生長させると、本発明によるインフルエンザ抗原(1種類または複数種)が産生される。
関連する実施形態では、本発明の種子は、種子製品に形成され、どのようにして種苗を投与または採取に適切な発芽種苗段階まで生長させて医薬組成物にするかに関する使用説明書とともに販売され得る。関連する一部のある実施形態では、所望の形質を具現化するハイブリッドまたは新規な変種が、本発明の同系交配植物から開発され得る。
直接組込み
マイクロプロジェクタイルボンバードメントまたはエレクトロポレーションによる植物細胞のゲノム内へのDNA断片の直接組込みが本発明において使用され得る(例えば、Kikkertら、1999、In Vitro Cellular & Developmental Biology.Plant:Journal of the Tissue Culture Association.35:43;Bates、1994、Mol.Biotech.,2:135を参照のこと)。より具体的には、本発明のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を発現するベクターが植物細胞内に、さまざまな手法によって導入され得る。上記のように、ベクターは、植物細胞における使用のための選択可能なマーカーを含むものであってもよい。ベクターは、二次宿主内でのその選択および増殖を可能にする配列、(例えば、複製起点および選択可能なマーカーを含む配列など)を含むものであってもよい。典型的には、二次宿主としては、細菌および酵母が挙げられる。一実施形態において、二次宿主が細菌であり(例えば大腸菌であり、複製起点はcolE1型複製起点である)、選択可能なマーカーが、アンピシリン耐性をコードする遺伝子である。かかる配列は当該技術分野でよく知られており、市販されている(例えば、Clontech、パロアルト、CAまたはStratagene、ラ・ホーヤ、CA)。
本発明のベクターは、アグロバクテリウム・ツメファシエンスベクターに対して相同性の領域、アグロバクテリウム・ツメファシエンス由来のT−DNAボーダー領域、および上記の抗原コード核酸または発現カセットを含む植物形質転換プラスミドに介在(intermediate)するように修飾されたものであり得る。さらなるベクターとしては、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの不活化(disarmed)植物腫瘍誘導プラスミドが挙げられ得る。
この実施形態によれば、本発明のベクター(vectors invention)の直接的な形質転換は、組換えDNAを機械的に導入するためのマイクロピペットの使用によってベクターを直接植物細胞内にマイクロインジェクションすることを伴うものであり得る(例えば、Crossway、1985、Mol.Gen.Genet.、202:179(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。遺伝物質は植物細胞内に、ポリエチレングリコールを用いて転移させ得る(例えば、Krensら、1982、Nature、296:72を参照のこと)。小さいビーズもしくは粒子のマトリックス内または表面上のいずれかに核酸を有する小さい粒子により、高速度バリスティック(ballistic)浸透によって植物内に核酸を導入する別の方法(例えば、Kleinら、1987、Nature、327:70;and Knudsenら、Planta、185:330を参照のこと)。また別の導入方法は、プロトプラストと他の存在体(ミニ細胞、細胞、リソソームまたは他の融合可能な脂質表面体のいずれか)の融合である(例えば、Fraleyら、1982、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79:1859を参照のこと)。本発明のベクターは植物細胞内に、エレクトロポレーションによって導入され得る(例えば、Frommら 1985、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82:5824を参照のこと)。この手法によれば、植物プロトプラストは、遺伝子構築物を含有するプラスミドの存在下でエレクトロポレーションされる。高い磁界強度の電気インパルスによって生体膜を可逆的に透過性とし、プラスミドの導入を可能にする。エレクトロポレーションされた植物のプロトプラストでは、細胞壁が再構成され、***し、植物カルスが形成され、これを再生させて、本発明の発芽種苗が形成され得る。当業者には、どのようにしてこれらの方法を、食用発芽種苗を再生させるために使用され得る植物細胞の形質転換に使用するかが認識されよう。
ウイルス形質転換
慣用的な発現系と同様、植物ウイルスベクターを用いて完全長タンパク質(例えば、完全長抗原)を産生させ得る。本発明によれば、植物ウイルスベクターを用いて種子、胚、発芽種苗などを感染させ、抗原(1種類または複数種)を産生させ得る。単鎖ペプチドから大きな複合タンパク質まであらゆるものを発現させるために使用され得るウイルス系。具体的には、トバモウイルスベクターの使用が報告されている(例えば、McCormickら、1999、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,96:703;Kumagaiら 2000、Gene,245:169;およびVerchら、J.Immunol Methods,220:69;(これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。したがって、植物ウイルスベクターは、単鎖ペプチドならびに大きな複合タンパク質を発現する実証された能力を有する。
特定のある実施形態において、インフルエンザ抗原を発現する遺伝子導入苗条は、宿主/ウイルス系を用いて作製される。ウイルス感染によって得られる遺伝子導入苗条は、安全であることが既に実証された遺伝子導入タンパク質の供給源を提供する。例えば、苗条には動物病原体による汚染がない。例えばタバコとは異なり、食用苗条由来のタンパク質は、少なくとも理論的には、精製せずに経口適用において使用され得、したがって、コストが有意に削減され得る。また、ウイルス/苗条系は、導入遺伝子がウイルス内に導入されており、これは2〜3日間以内に市販規模まで増殖し得るため、規模拡大および製造のためのずっと簡単であまり高価でない経路をもたらす。対照的に、遺伝子導入植物は、充分な種子または植物材料が大規模な試行または商業化に利用可能となるまでに5〜7年が必要とされ得る。
本発明によれば、植物RNAウイルスは、外来タンパク質発現のためのベクターとして魅力的となる一定の利点を有する。いくつかの植物RNAウイルスの分子生物学および病理学は充分にキャラクタライズされており、ウイルス生物学、遺伝学および調節配列の知識は相当ある。ほとんどの植物RNAウイルスは、小さいゲノムを有し、遺伝子操作を簡単にするために感染性cDNAクローンが利用可能である。感染性のウイルス物質は、易感染性の宿主細胞に侵入すると、高レベルまで複製され、発芽種苗全体に速やかに拡延する(接種後、1〜10日間)。ウイルス粒子は、感染発芽種苗組織から容易かつ経済的に回収される。ウイルスは広範な宿主範囲を有し、いくつかの易感染性種の感染に対して単一の構築物の使用が可能となる。このような特性は、苗条に容易に伝達され得る。
外来配列は植物RNAウイルスから、典型的には、ウイルス遺伝子の1つを所望の配列と置き換えること、外来配列をウイルスゲノム内の適切な位置に挿入すること、または外来ペプチドをウイルスの構造タンパク質に融合させることにより発現させ得る。さらに、任意のこれらのアプローチを組み合わせ、ウイルスの生命機能のトランス相補性(trans−complementation)によって外来配列を発現させてもよい。タバコモザイクウイルス(TMV)、アルファルファモザイクウイルス(AlMV)、およびそのキメラを使用し、ウイルス感染植物において外来配列を発現させるためのツールとして、いくつかの異なるストラテジーが存在する。
AlMVのゲノムは、ブロモウイルス科ウイルスの代表例であり、3つのゲノムRNA(RNA1〜3)およびサブゲノムRNA(RNA4)からなる。ゲノムRNA1および2は、それぞれ、ウイルスレプリカーゼタンパク質P1および2をコードする。ゲノムRNA3は、細胞間移動タンパク質P3および外被タンパク質(CP)をコードする。CPは、サブゲノムRNA4(ゲノムRNA3から合成される)から翻訳され、感染の開始に必要とされる。諸研究により、多くの機能、例えば、ゲノム活性化、複製、RNA 安定性、症状の形成、およびRNAキャプシド封入におけるCPの関与が示されている(例えば、Bolら、1971、Virology,46:73;Van Der Vossenら、1994、Virology 202:891;Yusibovら、Virology,208:405;Yusibovら、1998、Virology,242:1;Bolら、(概説、100件の参考文献)、1999、J.Gen.Virol、80:1089;De Graaff、1995、Virology,208:583;Jasparsら、1974、Adv.Virus Res.、19:37;Loesch−Fries、1985、Virology,146:177;Neelemanら、1991、Virology,181:687;Neelemanら、1993、Virology,196:883;Van DerKuylら、1991、Virology,183:731;およびVan Der Kuylら、1991、Virology,185:496を参照のこと)。
ウイルス粒子のキャプシド封入は、典型的には、種子、胚もしくは発芽種苗の接種部分から非接種部分までのウイルスの長距離移動のため、および全体感染のために必要とされる。本発明によれば、接種は、植物発育の任意の段階で行なわれ得る。胚および苗条では、接種ウイルスの拡延は非常に速いはずである。AlMVのビリオンは、特殊なCP(24kD)にキャプシド封入されており、1種類より多くの型の粒子を形成している。粒子の大きさ(30〜60nmの長さおよび18nmの直径)ならびに形状(球形、楕円形または桿状)は、キャプシド封入されるRNAの大きさに依存する。合成されると、ALMV CPのN末端は、ウイルス粒子の表面上に存在すると考えられ、ウイルス合成を妨げないようである(Bolら、1971、Virology,6:73)。そのうえ、さらに38アミノ酸ペプチドをN末端に有するALMV CPは、インビトロで粒子を形成し、生物学的活性を保持している(Yusibovら、1995、J.Gen.Virol、77:567)。
AlMVは広範な宿主範囲を有し、これには、いくつかの農学的に価値のある作物植物、例えば、植物種子、胚および苗条が含まれる。合わせると、これらの特性により、ALMV CPは、担体分子として優れた候補となり、AlMVは、植物の発育の苗条段階における外来配列の発現のための魅力的な候補ベクターとなる。さらに、TMVなどの異種ベクターから発現されると、AlMV CPは、ウイルス感染性を妨げることなくTMVゲノムをキャプシド封入する(Yusibovら、1997、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,94:5784(引用により本明細書に組み込まれる))。これにより、外来配列に融合させたAlMV CPのための担体ウイルスとしてのTMVの使用が可能になる。
トバモウイルスの基本型であるTMVは、杆状形状粒子(300nmの長さ)をもたらす17.0kDのCPにキャプシド封入された単一+センスRNAからなるゲノムを有する。CPは、TMVの唯一の構造タンパク質であり、キャプシド封入および感染宿主内でのウイルスの長距離移動に必要とされる(Saitoら、1990、Virology,176:329)。183kDおよび126kDのタンパク質がゲノムRNAから翻訳され、ウイルス複製に必要とされる(Ishikawaら、1986、Nucleic Acids Res.、14:8291)。30kDのタンパク質は、ウイルスの細胞間移動タンパク質である(Meshiら、1987、EMBO J.、6:2557)。移動タンパク質および外被タンパク質は、サブゲノムmRNAから翻訳される(Hunterら、1976、Nature、260:759;Brueningら、1976、Virology,71:498;およびBeachyら、1976、Virology,73:498;これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)。
植物組織の他の形質転換方法としては、植物の花の形質転換が挙げられる。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の形質転換は、植物の花をアグロバクテリウム・ツメファシエンスの溶液中に浸漬することにより達成され得る(Curtisら、2001、Transgenic Research、10:363;Qingら、2000、Molecular Breeding:New Strategies in Plant Improvement、1:67)。形質転換された植物は、「浸漬」植物によって発生する種子集団に形成される。花の発育中の特定の時点では、子房壁内に孔が存在し、それを通してアグロバクテリウム・ツメファシエンスが該子房の内部に到達する。子房内部に入ると、アグロバクテリウム・ツメファシエンスは増殖し、個々の胚珠を形質転換させる(Desfeuxら、2000、Plant Physiology、123:895)。形質転換された胚珠は、子房内で典型的な種子形成経路に従う。
抗原の作製および単離
一般に、当該技術分野で知られた標準的な方法が、抗原(1種類または複数種)の産生のための本発明の植物、植物細胞、および/または植物組織(例えば、クローン植物、クローン植物細胞、クローン根、クローン根株、苗条、発芽種苗、植物など)の培養または生長に使用され得る。多種多様な培養培地およびバイオリアクターが、毛状根細胞、根細胞株および植物細胞の培養に使用されている(例えば、Giriら、2000,Biotechnol.Adv.,18:1;Raoら、2002,Biotechnol Adv.,20:101;および前記の両文献中の参考文献(これらはすべて、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。クローン植物は、任意の適当な様式で生長させ得る。
特定のある実施形態において、本発明のインフルエンザ抗原は、任意の既知の方法で作製され得る。一部のある実施形態において、インフルエンザ抗原は、植物またはその一部分において発現させる。タンパク質は、慣用的な条件および当該技術分野で知られた手法に従って単離および精製される。このようなものとしては、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、電気泳動などの方法が挙げられる。本発明は、当該技術分野で知られた、および本明細書に示す任意のさまざまな植物発現系(例えば、本明細書に記載のウイルスの植物発現系)を用いたインフルエンザ抗原(1種類または複数種)の精製および手ごろな価格の作製規模拡大を伴うものである。
本発明の多くの実施形態では、抗体生成物を生成させるためにインフルエンザ抗原(1種類または複数種)を単離することが望ましい、および/または生成されたインフルエンザ抗体もしくは抗原結合断片を単離することが望ましい。本発明のタンパク質を該タンパク質を発現する植物組織(1種類または複数種)またはその一部分(例えば、根、根細胞、植物、植物細胞)から産生させる場合、本明細書においてさらに詳細に記載する方法、または当該技術分野で知られた任意の適用可能な方法が、植物材料からの任意の部分的または完全な単離に使用され得る。発現産物を、これを発現する植物細胞または組織の一部または全部から単離することが望ましい場合、任意の利用可能な精製手法が使用され得る。当業者は、広範な分画および分離手順を熟知している(例えば、Scopesら、Protein Purification:Principles and Practice,第3版、Jansonら、1993;Protein Purification:Principles, High Resolution Methods, and Applications,Wiley−VCH,1998;Springer−Verlag,NY,1993;およびRoe,Protein Purification Techniques,Oxford University Press,2001を参照のこと;これらは各々、引用により本明細書に組み込まれる)。多くの場合、生成物を約50%より高い、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%純粋にすることが望ましい。例えば、植物組織または液からの物質の精製に有用な特定の方法の論考については、米国特許第6,740,740号および同第6,841,659号を参照のこと。
当業者には、所望のインフルエンザ抗原(1種類または複数種)生成物(1種類または複数種)を得る方法は、抽出によるものであることが認識されよう。植物材料(例えば、根、葉など)を抽出すると、所望の生成物が残余のバイオマスから取り出され得、それにより生成物の濃度および純度が増大する。植物は、緩衝溶液中で抽出され得る。例えば、植物材料は、例えばリン酸塩バッファーで緩衝化されたある量の氷冷水中に、1:1の重量比で移され得る。必要に応じて、プロテアーゼインヒビターを添加してもよい。植物材料は、バッファー溶液中に懸濁しながら激しくブレンドまたは摩砕することによって破砕され得、濾過または遠心分離によって抽出され、バイオマスから取り出される。溶液中に担持された生成物は、さらなる工程によってさらに精製してもよく、フリーズドライまたは沈殿によって乾燥粉末に変換してもよい。抽出は圧搾により行われ得る。植物または根は、圧搾機内で圧搾することにより、または間隔の狭いローラー間に通して破砕することにより抽出され得る。破砕された植物または根から搾り出された液は、当該技術分野でよく知られた方法に従って回収および加工処理される。圧搾による抽出によって、より濃縮された形態での生成物の放出が可能になる。しかしながら、生成物の全体収率は、生成物を溶液中で抽出した場合よりも低いことがあり得る。
抗体
本発明は、治療的使用のための医薬用抗原タンパク質および抗体タンパク質、例えば、インフルエンザ感染の治療的および/または予防的処置のための抗体として活性な、インフルエンザ抗原(1種類もしくは複数種)(例えば、インフルエンザタンパク質(1種類もしくは複数種)もしくはその免疫原性部分(1種類もしくは複数種)、あるいはインフルエンザ抗体タンパク質(1種類もしくは複数種)またはその抗原結合部分(1種類もしくは複数種))を含む融合タンパク質などを提供する。さらに、本発明は、かかるインフルエンザ抗原が獣医学的適用において活性であるため、獣医学的使用を提供する。特定のある実施形態において、インフルエンザ抗原(1種類または複数種)および/または抗体は、本発明の植物(1種類または複数種)またはその一部分(例えば、根、細胞、苗条、細胞株、植物など)によって産生させたものであり得る。特定のある実施形態では、提供するインフルエンザ抗原および/または抗体を、植物、植物細胞および/または植物組織(例えば、苗条、発芽種苗、根、根の培養、クローンの細胞、クローン細胞株、クローン植物など)において発現させ、植物から直接、または一部精製もしくは精製して調製物において、医薬投与のために被検体に使用され得る。
モノクローナル抗体
現在、モノクローナル抗体(MAb)を作製するための種々の方法が、当該技術分野で非常によく知られている。最も標準的なモノクローナル抗体の作製手法は、一般的に、ポリクローナル抗体の調製用のものと同じ系統に従って始める(Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988、これは、引用により本明細書に組み込まれる)。ポリクローナル抗体応答を、動物を免疫原性のアニオン系リン脂質および/またはアミノリン脂質組成物で免疫処置することにより開始させ、所望の力価レベルが得られたら、免疫処置した動物をMabの産生に使用し得る。典型的には、本明細書に開示した具体的なスクリーニング手法および選択手法を使用し、求めていた特定を有する抗体を選択する。
Mabは、よく知られた手法(例えば、米国特許第4,196,265号(引用により本明細書に組み込まれる)に例示されたものなど)の使用によって容易に調製され得る。典型的には、該手法は、適当な動物を選択した免疫原組成物で免疫処置し、抗体産生細胞を刺激することを伴う。マウスおよびラットなどの齧歯類が例示的な動物であるが、ウサギ、ヒツジおよびカエルの細胞の使用も可能である。ラットの使用は一定の利点をもたらし得る(Goding、1986、pp.60−61;引用により本明細書に組み込まれる)が、場合によってはマウスが好ましく、多くの場合、最も常套的に使用され、一般的に高率の安定な融合体をもたらすため、BALB/cマウスが最も好ましい。
免疫処置後、所望の抗体を産生する可能性を有する体細胞である、特異的Bリンパ球(B細胞)を、Mabの精製および不死化骨髄腫細胞(一般的には、免疫処置した動物と同じ種のもの)細胞との融合における使用に選択する。ハイブリドーマ生成融合手順における使用に適した骨髄腫細胞株は、典型的には、非抗体産生性であり、高い融合効率を有し、ある種の選択培地中での増殖が不可能となり、それにより所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持するような酵素欠損である。当業者にはわかるいくつかの骨髄腫細胞の任意の1種が使用され得る(Goding、pp.65−66、1986;Campbell、pp.75−83、1984;各々、引用により本明細書に組み込まれる)。例えば、免疫処置した動物がマウスである場合、P3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulが使用され得、ラットでは、R210.RCY3、Y3−Ag 1.2.3、IR983F、4B210または上記のマウス細胞株のうちの1種類が使用され得、U−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2およびUC729−6はすべて、ヒト細胞融合体との関連において有用である。
この培養によりハイブリドーマの集団がもたらされ、該集団から特異的ハイブリドーマを選択した後、連続希釈およびクローニングにより個々の抗体産生株を得、抗体の産生のために無限に増殖させ得る。
産生されたMabは、一般的に、例えば、濾過、遠心分離、およびHPLCまたは親和性クロマトグラフィーなどの種々のクロマトグラフィー法(これらはすべて、精製手法は当業者によく知られている)を用いてさらに精製される。これらの精製手法は各々、所望の抗体を混合物の他の成分から分離するための分画を伴う。抗体の調製に特に適した解析方法としては、例えば、プロテインA−セファロースおよび/またはプロテインG−セファロースクロマトグラフィーが挙げられる。
抗体断片および誘導体
ノイラミニダーゼに対する抗体起源の供給源にかかわらず、インタクトな抗体、抗体多量体、または抗体のさまざまな機能性の抗原結合領域の任意の1つのいずれかが、本発明において使用され得る。例示的な機能性領域としては、抗体のscFv、Fv、Fab’、FabおよびF(ab’)断片が挙げられる。かかる構築物を調製するための手法は当業者によく知られており、本明細書においてさらに例示する。
抗体構築物の選択は、種々の要素によって影響され得る。例えば、長い半減期は、免疫グロブリンのFc片の特性の1つである腎臓内でのインタクトな抗体の活発な再吸着によってもたらされ得る。したがって、IgG系抗体は、そのFab’対応物よりも遅い血中クリアランスを示すことが予測される。しかしながら、Fab’断片系組成物は、一般的に、より良好な組織浸透能力を示す。
抗体断片は、非特異的チオールプロテアーゼであるパパインによる完全体免疫グロブリンのタンパク質分解によって得られ得る。パパイン消化により、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab断片」と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、残余の「Fc断片」とがもたらされる。種々の画分が、プロテインA−セファロースまたはイオン交換クロマトグラフィーによって分離される。
ウサギおよびヒト起源のIgGからのF(ab’)断片の調製のための通常の手順は、酵素ペプシンによる限定的タンパク質分解である。インタクトな抗体のペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原架橋能を有するF(ab’)断片がもたらされる。
Fab断片は、軽鎖の定常ドメインと、重鎖の最初の定常ドメイン(CH1)とを含む。Fab’断片はFab断片と、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に2〜3個の残基(例えば、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステイン)が付加されていることで異なる。F(ab’)抗体断片は、最初は、間にヒンジシステインを有する対のFab’断片として生成された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
「Fv」断片は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小限の抗体断片である。この領域は、強固な共有結合された状態の(con−covalent association)1つの重鎖と1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してV−V二量体の表面上の抗原結合部位が画定されるのは、この立体構成においてである。集合的に、6つの超可変領域が抗体に抗原結合特異性を賦与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含む半分のFv)であっても、抗原を認識し、結合する能力を有するが、完全な結合部位よりも親和性は低い。
「単鎖Fv」または「scFv」」抗体断片(現在では「単鎖」として知られる)は、抗体のVおよびVドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、さらに、VおよびVドメイン間に、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成するのを可能にするポリペプチドリンカーを含む。
以下の特許:米国特許第5,855,866号;同第5,877,289号;同第5,965,132号;同第6,093,399号;同第6,261,535号;および同第6,004,555号は、抗体の機能性の抗原結合領域、例えば、抗体のscFv、Fv、Fab’、FabおよびF(ab’)断片の調製および使用に関する本発明の教示をさらにいっそう補足する目的のため、引用により本明細書に組み込まれる。また、WO98/45331も、例えば、抗体の可変、超可変および相補性決定(CDR)領域の調製をさらにいっそう説明および教示する目的のために引用により本明細書に組み込まれる。
「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であって、同じポリペプチド鎖(V−V)内で軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む断片である。同じ鎖上での2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、該ドメインは、強制的に別の鎖の相補的ドメインと対合され、2つの抗原結合部位がもたらされる。ダイアボディは、EP 404;097およびWO 93/11161(各々は、引用により具体的に本明細書に組み込まれる)に記載されている。「線状抗体」は、二重特異性または単一特異性であり得、既報のように、1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデムFdセグメント(V−CH1−V−CH1)を含む(例えば、Zapataら,1995(引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
抗体のFab’または抗原結合断片の使用において、組織浸透に対する付随の有益性により、その半減期を増大させるために該断片を修飾すると、さらなる利点が誘導され得る。さまざまな手法、例えば、抗体分子自体の操作または修飾および不活性担体へのコンジュゲーションなどが使用され得る。薬剤を標的に送達するのではなく、単に半減期を増大させる目的の任意のコンジュゲーションは、組織に浸透するFab’および他の断片を選択するという点で、注意深く取り組むべきである。それでもなお、PEGなどの非タンパク質ポリマーへのコンジュゲーションが想定される。
したがって、コンジュゲーション以外の修飾は、体内でより安定にするため、および/または異化作用速度を低下させるための抗体断片の構造の修飾に基づくものである。かかる修飾の機構の一例は、L−アミノ酸の代わりにD−アミノ酸を使用することである。当業者には、かかる修飾の導入の後、得られる分子の厳格な試験によって、所望の生物学的特性が保持されていることを確実にすることが必要であることが理解されよう。さらに安定化させる修飾としては、N末端もしくはC末端または両方のいずれかに、生物学的分子の半減期を延長させるのに一般的に使用される安定化部分の付加の使用が挙げられる。一例にすぎないが、アシル化またはアミノ化による末端の修飾が所望され得る。
二重特異性抗体
一般に、二重特異性抗体は、一方のアームがアミノリン脂質またはアニオン系リン脂質に結合し、当該二重特異性抗体が、その抗原結合部位と異なる部位で治療用因子に結合するのであれば使用してもよい。
一般に、二重特異性抗体の調製は、当該技術分野でよく知られている。一例の方法は、一方においてアミノリン脂質またはアニオン系リン脂質に特異性を有する抗体を、他方において治療用因子に特異性を有する抗体を別々に調製することを伴う。ペプシン処理F(ab’)断片を2つの選択した抗体から調製した後、それぞれ還元し、別々のFab’SH断片を得る。2つのパートナーのうちの一方のSH基を互いにカップリングさせ、次いで、O−フェニレンジマレイミドなどの架橋試薬によりアルキル化し、一方のパートナー上に遊離マレイミド基をもたらす。次いで、このパートナーを他方のこのパートナーに、チオエーテル結合によってコンジュゲートさせると、所望のF(ab’)ヘテロコンジュゲートが得られ得る。SPDPもしくはプロテインAとの架橋を行なうか、または三重特異性構築物を調製する他の手法が知られている。
二重特異性抗体を作製するたえの方法の一例は、2つのハイブリドーマの融合によりクアドローマ(quadroma)を形成するものである。本明細書で用いる場合、用語「クアドローマ」は、2つのB細胞ハイブリドーマの生産的融合を示すために用いる。現行の標準的な手法を使用し、2つの抗体産生ハイブリドーマを融合させて娘細胞を得、次いで、両方の組のクロノタイプ(clonotype)の免疫グロブリン遺伝子の発現が維持された細胞を選択する。
CDR手法
抗体は、可変領域および定常領域で構成される。用語「可変」は、抗体に関して本明細書で用いる場合、可変ドメインのある種の部分が抗体間で配列が極めて異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合性および特異性において使用されることを意味する。しかしながら、可変性は、ともに軽鎖および重鎖の可変ドメイン内の「超可変領域」とよばれる3つのセグメント内に集中している。
可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、4つのFR(それぞれ、FR1、FR2、FR3およびFR4)を含み、大きくβ−シート立体構成を採用し、該β−シート構造を連結させる(場合によっては、その一部を構成する)ループを形成した3つの超可変領域によって連結されている。
各鎖内の超可変領域は、FRによって互いに非常に近接して保持されており、他方の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、1991、引用により本明細書に組み込まれる)。定常ドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害性における抗体の関与など)を示す。
用語「超可変領域」は、本明細書で用いる場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基をいう。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基24〜34(Ll)、50〜56(L2)および89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインの31〜35(H1)、50〜56(H2)および95〜102(H3);Kabatら、l991、引用により本明細書に組み込まれる)および/または「超可変ループ」由来の残基(すなわち、軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)ならびに重鎖可変ドメインの26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3))を含むものである。「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に規定の超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
2B9抗体のVh鎖およびVκ鎖のDNA配列および推定アミノ酸配列は、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域のCDR1〜3を含む。本明細書に示す配列および他の情報、ならびに当該技術分野における知識に鑑みて、一連の2B9様の改善された抗体および抗原結合領域がここに調製され得、したがって、本発明に包含される。2B9抗N1モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変領域の配列を付表Aに示す。
特定のある実施形態において、本発明は、寄託されるハイブリドーマ2B9によって産生される抗体の少なくとも1つのCDRを提供する。一部のある実施形態において、本発明は、寄託されるハイブリドーマ2B9によって産生される抗体のCDR、少なくともノイラミニダーゼに結合し、該抗体の少なくとも1つのCDRを含む抗体またはその抗原結合領域を提供する。
特別な一実施形態において、本発明は、2B9抗体のフレームワーク領域がマウスのものからヒトIgG(ヒトIgG1またはヒトにおいて免疫原性を低下させる他のIgGサブクラスなど)に変更された抗体またはその抗原結合領域を提供する。一部のある実施形態では、2B9抗体の配列を、当該技術分野で知られているようにして、T細胞エピトープの存在について調べる。次いで、基礎となる配列を、T細胞エピトープするために(すなわち、抗体を「脱免疫する」ため)に変更してもよい。
2B9抗体のVh鎖およびVκ鎖のDNA配列およびアミノ酸配列の利用可能性とは、一連の抗体が、ここに、CDR手法を用いて調製され得ることを意味する。特に、ランダム変異をCDRにおいて行ない、生成物をスクリーニングし、より高い親和性および/またはより高い特異性を有する抗体を同定する。かかる変異誘発および選択は、抗体技術分野で常套的に実施されている。これは、本明細書に開示した好都合なスクリーニング手法を考慮すると、本発明における使用に特に好適である。かかる代用バリアントの作製のための簡便な方法は、ファージディスプレイを用いた親和性成熟である。
CDRシャッフリングおよび移植(implantation)手法は、本発明の抗体、特に2B9抗体とともに使用され得る。CDRシャッフリングにより、CDR配列が特定のフレームワーク領域内に挿入される(Jirholtら、1998、引用により本明細書に組み込まれる)。CDR移植手法により、単一のマスターフレームワーク内でのランダム組合せのCDR配列が可能になる(Soderlindら、1999、2000、各々は引用により本明細書に組み込まれる)。かかる手法を使用し、例えば、2B9抗体のCDR配列に変異誘発して複数の異なる配列を作出し、これを骨格配列内に組み込み、得られた抗体バリアントを、所望の特性(例えば、高親和性)についてスクリーニングする。
ファージライブラリーからの抗体
ここに、組換え手法によって一連の抗体をコードする組換え遺伝子に由来する所望の特異性を有する抗体の調製が可能になる(Van Dijkら、1989;引用により本明細書に組み込まれる)。ある種の組換え手法は、免疫処置動物の脾臓から単離したRNAから調製したコンビナトリアル免疫グロブリンファージ発現ライブラリーの免疫学的スクリーニングによる抗体遺伝子の単離を伴う(Morrisonら、1986;WinterおよびMilstein、1991;Barbasら、1992;各々、引用により本明細書に組み込まれる)。かかる方法のため、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーを、免疫処置動物の脾臓から単離したRNAから調製し、適切な抗体を発現するファージミドを、抗原発現細胞および対照細胞を用いたパニングによって選択する。慣用的なハイブリドーマ手法と比べたこのアプローチの利点としては、ほぼ10倍多くの抗体が1回で産生され、スクリーニングされ得ること、およびH鎖とL鎖の組合せで新たな特異性がもたらされ、それにより生成される適切な抗体の割合がさらに増大することが挙げられる。
細菌における多様な抗体分子大きなレパートリーを作製するための方法の一例では、ベクターとしてバクテリオファージλが使用される(Huseら、1989;引用により本明細書に組み込まれる)。λベクターを用いた抗体の作製は、別々の開始ベクター内へのDNA配列の重鎖集団および軽鎖集団のクローニングを伴う。続いて、ベクターを無作為に合わせ、重鎖および軽鎖の共発現を指令して抗体断片をもたらす単一のベクターを形成する。糸状ファージディスプレイのための一般的な手法が報告されている(米国特許第5,658,727号、引用により本明細書に組み込まれる)。最も一般的な意味において、該方法は、単一のベクター系を用いて、抗体遺伝子レパートリーの予め選択したリガンド結合特異性を同時にクローニングおよびスクリーニングするための系を提供する。予め選択したリガンド結合能力に関する単離されたライブラリー構成員のスクリーニングにより、発現された抗体分子の結合能力を、ライブラリー構成員をコードする遺伝子を単離するための簡便な手段と相関させることが可能になる。ファージミドライブラリーをスクリーニングためのさらなる方法が報告されている(米国特許第5,580,717号;同第5,427,908号;同第5,403,484号;および同第5,223,409号、各々は引用により本明細書に組み込まれる)。
完全または部分合成の抗体結合部位またはパラトープの大きなライブラリーの作製およびスクリーニングのための方法の一例では、糸状ファージ(M13、flまたはfdなど)由来のディスプレイベクターが使用される(米国特許第5,698,426号、引用により本明細書に組み込まれる)。糸状ファージディスプレイベクターは、「ファージミド」とも呼ばれ、多様で新規な免疫特異性を有するモノクローナル抗体大きなライブラリーをもたらす。該手法では、糸状ファージの外被タンパク質膜アンカードメインが、糸状ファージ複製の合成段階中に遺伝子産物と遺伝子を関連させるための手段として使用され、コンビナトリアルライブラリーからの抗体のクローニングおよび発現に使用されている(Kangら、1991;Barbasら、1991;各々、引用により本明細書に組み込まれる)。表面発現ライブラリーは、標準的な親和性単離手順によって、ノイラミニダーゼ分子に結合する特異的Fab断片についてスクリーニングされる。選択されたFab断片は、ファージ集団の増幅後、そのポリペプチドをコードする核酸を配列決定することにより、キャラクタライズされ得る。
抗体の多様なライブラリーを作製し、望ましい結合特異性についてスクリーニングするための方法の一例が報告されている(米国特許第5,667,988号および同第5,759,817号、各々は引用により本明細書に組み込まれる)。該方法は、ファージミドライブラリーの形態のヘテロ二量体の免疫グロブリン分子のライブラリーの調製を伴い、縮重オリゴヌクレオチドおよびプライマー伸張反応を用いて、免疫グロブリン可変重鎖および軽鎖可変ドメインのCDR領域内に縮重を組み込み、変異誘発したポリペプチドをファージミドの表面上にディスプレイさせる。その後、ディスプレイタンパク質を、予め選択した抗原に結合する能力についてスクリーニングする。抗体の多様なライブラリーを作製し、望ましい結合特異性についてスクリーニングするためのこの方法のさらなるバリエーションが、米国特許第5,702,892号(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。この方法では、重鎖配列のみが使用され、重鎖配列は、CDRIまたはCDRIIIいずれかの超可変領域をコードするすべてのヌクレオチド位置で無作為化されており、CDRにおける遺伝的変異性が、なんら生物学的プロセスとは独立してもたらされる。
ヒト抗体ライブラリーを含むトランスジェニックマウス
組換え手法が、抗体の調製に利用可能である。上記に開示したコンビナトリアル免疫グロブリンファージ発現ライブラリーに加えて、分子クローニングアプローチの一例は、ヒト抗体ライブラリーを含むトランスジェニックマウスから抗体を調製することである。かかる手法は報告されている(米国特許第5,545,807号、引用により本明細書に組み込まれる)。
最も一般的な意味において、これらの方法は、その生殖細胞系内に、ヒト起源の免疫グロブリンの少なくとも一部分をコードするか、または免疫グロブリンのレパートリーをコードするように再配列され得る遺伝物質が挿入されたトランスジェニック動物の作製を伴う。挿入される遺伝物質は、ヒト供給源から得られるものであってもよく、合成により作製されたものであってもよい。該物質は、既知の免疫グロブリンの少なくとも一部分をコードするものであり得るか、または改変された免疫グロブリンの少なくとも一部分をコードするように修飾されたものであり得る。
挿入された遺伝物質は、トランスジェニック動物において発現され、少なくとも一部が挿入ヒト免疫グロブリン遺伝物質に由来する免疫グロブリンの産生をもたらす。挿入される遺伝物質は、原核生物のベクター(例えば、プラスミドおよび/またはコスミドなど)内にクローニングされたDNAの形態であり得る。線状DNA断片は、酵母人工染色体ベクターを用いて(Burkeら、1987;引用により本明細書に組み込まれる)、または染色体断片の導入(Richerら、1989;引用により本明細書に組み込まれる)によって挿入される。挿入される遺伝物質は宿主に、慣用的な様式で、例えば、受精卵または胚性茎細胞内への注射または他の手順によって導入され得る。
適当なトランスジェニック動物が準備されたら、該動物を、単に所望の免疫原で免疫処置する。挿入される物質の性状に応じて、動物は、例えば、マウス/ヒト混合起源のキメラ免疫グロブリンを産生し得る(この場合、外来起源の遺伝物質は、該免疫グロブリンの一部分のみをコードする)か、または、動物は、例えば、完全にヒト起源の完全に外来の免疫グロブリンを産生し得る(この場合、外来起源の遺伝物質は、免疫グロブリン全体をコードする)。
ポリクローナル抗血清は、免疫処置後にトランスジェニック動物から得られ得る。免疫グロブリン産生細胞を動物から取り出して、目的の免疫グロブリンを産生させてもよい。一般的に、モノクローナル抗体は、例えば、該動物由来の脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させ、得られたハイブリドーマをスクリーニングして所望の抗体を産生するものを選択することにより、トランスジェニック動物から産生させる。かかるプロセスに好適な手法は、本明細書に記載している。
一例のアプローチでは、遺伝物質は動物に、所望の抗体が血清または動物の外分泌物(例えば、乳汁、初乳もしくは唾液)などの体液中に産生されるような様式で組み込まれ得る。例えば、インビトロで、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分をコードする遺伝物質を、乳汁タンパク質をコードする哺乳動物の遺伝子内に挿入し、次いで、該遺伝子を哺乳動物の受精卵に、例えば、注射によって導入することにより、該受精卵は、少なくとも一部が挿入ヒト免疫グロブリン遺伝物質に由来する免疫グロブリンを含有する乳汁を生成する成体雌哺乳動物に発育し得る。次いで、所望の抗体が乳汁から回収され得る。かかるプロセスを行なうのに好適な手法は、当業者にはわかる。
前述のトランスジェニック動物は、通常、単一のアイソタイプのヒト抗体を作製するため、より詳しくは、B細胞の成熟に不可欠なアイソタイプのヒト抗体(例えば、IgMおよび場合によってはIgDなど)を作製するために使用される。ヒト抗体を作製するための別の方法は、米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;および同第5,770,429号(各々は、引用により本明細書に組み込まれる)に記載されており、この場合、これらには、B細胞発達に必要なアイソタイプから他のアイソタイプへのスイッチング能を有するトランスジェニック動物が記載されている。
米国特許第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;および同第5,770,429号に記載の方法では、トランスジェニック動物に含有されたヒト免疫グロブリン導入遺伝子が、B細胞発達経路全体を通して正しく機能し、アイソタイプスイッチングがもたらされる。したがって、この方法では、これらの導入遺伝子は、アイソタイプスイッチングと、以下:(1)高レベルで細胞型特異的発現、(2)機能性遺伝子の再配列、(3)対立遺伝子排除の活性化および該排除に対する応答、(4)充分な一次レパートリーの発現、(5)シグナル伝達、(6)体細胞超変異、ならびに(7)免疫応答中の導入遺伝子の抗体遺伝子座の支配の1つ以上がもたらされるように構築される。
ヒト化抗体
ヒト抗体一般的に、ヒト治療における使用のための少なくとも3つの潜在的な利点を有する。第1に、エフェクター部分がヒトのものであるため、例えば、補体依存性細胞傷害性(CDC)または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)によって、より効率的に 標的細胞を破壊するため、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用し得る。第2に、ヒト免疫系が、当該抗体を異物とみなさないはずであることである。第3は、ヒトの循環系中での半減期が天然のヒト抗体と類似し、投与する用量をより少なく、より低頻度にできることである。
ヒト抗体の作製のための種々の方法を本明細書に示す。ヒト抗体に加え、「ヒト化」抗体は多くの利点を有する。「ヒト化」抗体は、一般的に、マウス、ラット、ハムスター、ウサギまたは他の種に由来し、ヒト定常および/または可変領域ドメインあるいは特異的変化を有するキメラまたは変異型モノクローナル抗体である。いわゆる「ヒト化」抗体を作製するための手法は当業者によく知られている。
ヒト化抗体を作製するためのいくつかの方法が報告されている。抗体ドメイン同士をタンパク質ジスルフィド結合によって連結させて新たな人工タンパク質分子(すなわち「キメラ」抗体)を形成させる制御された再配列が利用され得る(Koniecznyら、1981;引用により本明細書に組み込まれる)。組換えDNA手法を使用し、マウス抗体の可変軽鎖および重鎖ドメインとヒト抗体の軽鎖および重鎖定常ドメインをコードするDNA配列間の遺伝子融合体が構築され得る(Morrisonら、1984;引用により本明細書に組み込まれる)。
マウスモノクローナル抗体の抗原結合部分または相補性決定領域(CDR)をコードするDNA配列は、分子的手段によって、ヒト抗体の重鎖および軽鎖のフレームワークをコードするDNA配列内にグラフティングさせ得る(Jonesら、1986;Riechmannら、1988;各々、引用により本明細書に組み込まれる)。発現された組換え産物は、「新形態(reshaped)」またはヒト化抗体と呼ばれ、ヒト抗体の軽鎖または重鎖のフレームワークと、マウスモノクローナル抗体の抗原認識部分であるCDRとを含む。
ヒト化抗体を作製するための方法の一例は、米国特許第5,639,641号(引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。ヒト化抗体の作製のための同様の方法が、米国特許第5,693,762号;同第5,693,761号;同第5,585,089号;および同第5,530,101号(各々は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。これらの方法は、1つ以上の相補性決定領域(CDR)と、ドナー免疫グロブリン由来の可能な付加的アミノ酸と、受容ヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク領域とを有するヒト化免疫グロブリンの作製を伴う。各ヒト化免疫グロブリン鎖は、通常、CDRに加え、ドナー免疫グロブリンフレームワーク由来のアミノ酸であって、CDRと相互作用して結合親和性を発揮し得るアミノ酸(例えば、分子モデル設計において予測したとき、ドナー免疫グロブリンにおいてCDRと直接隣接する1種類以上のアミノ酸、または約3A以内に存在するものなど)を含む。重鎖および軽鎖は各々、米国特許第5,693,762号;同第5,693,761号;同第5,585,089号;および同第5,530,101号(各々は引用により本明細書に組み込まれる)に記載された位置基準の任意の1つ、任意の組合せまたはすべてを使用することにより設計され得る。1つのインタクトな抗体に結合する場合、ヒト化免疫グロブリンは、ヒトにおいて実質的に非免疫原性であり、起源の抗原に対してドナー免疫グロブリンと実質的に同じ親和性を保持している。
ヒト化抗体を作製するためのさらなる方法は、米国特許第5,565,332号および同第5,733,743号(各々は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。この方法は、抗体のヒト化の概念を本明細書に記載のファージミドライブラリーと組み合わせたものである。一般的な意味において、該方法では、目的の抗原に対して指向される抗体または抗体集団の抗原結合部位に由来する配列を用いる。したがって、単一の齧歯類抗体では、該抗体の抗原結合部位の一部分を含む配列がヒト抗体の配列の多様なレパートリーと結合され得、組合せで、完全な抗原結合部位が作出され得る。
このプロセスによって作出される抗原結合部位は、CDRグラフティングによって作出されるものと、起源の齧歯類抗体の配列の該部分のみが、同様の様式で抗原と接触すると思われる点で異なる。選択されるヒト配列は、おそらく、起源の結合部位のものと配列が異なり、該抗原とは別の接触を行う。しかしながら、抗原に対する起源の配列の一部分の結合ならびに抗原およびその抗原結合部位の形状によってもたらされる制約により、おそらく、抗原の同じ領域またはエピトープに対するヒト配列の新たな接触が誘導される。したがって、このプロセスは、「エピトープインプリント(imprinted)選択」または「EIS」と呼ばれている。
動物抗体から開始し、一例のプロセスでは、一部ヒト抗体である抗体の選択がもたらされる。かかる抗体は、配列が、治療に直接または数個の重要な残基の改変後に使用されるヒト抗体に充分に類似したものであり得る。EISでは、抗体断片のレパートリーを糸状ファージ(phase)の表面上にディスプレイさせ、抗原結合活性を有する断片をコードする遺伝子を、抗原へのファージの結合によって選択し得る。
本発明における使用に想定される抗体のヒト化のまたさらなる方法は、米国特許第5,750,078号;同第5,502,167号;同第5,705,154号;同第5,770,403号;同第5,698,417号;同第5,693,493号;同第5,558,864号;同第4,935,496号;および同第4,816,567号(各々は引用により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
上記の手法において論考したように、分子生物学的方法および組換え手法の出現により、ここに、本発明における使用のための抗体を、組換え手段によって作製し、それにより、抗体のポリペプチド構造に見られる具体的なアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を得ることが可能である。これにより、上記のような、異なる種および供給源に由来する阻害性抗体に特徴的な配列を有する抗体の容易な作製が可能になった。上記のことに従うと、本発明の方法に有用な抗体は、抗ノイラミニダーゼ抗体であり、具体的には、その特異性が2B9と同じノイラミニダーゼのエピトープに対するものである抗体であり、抗体ポリペプチドが組換え方法によって作製されたものであれ、直接合成によって作製されたものであれ、あらゆる治療上活性なバリアントおよび抗原結合その断片が包含される。
本発明は、その投与を必要とする被検体に投与されたとき医薬活性が維持される抗体を発現する植物、植物細胞および植物組織を提供する。例示的な被検体としては、椎動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)が挙げられる。本発明によれば、被検体としては、獣医学的被検体、例えば、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコなどが挙げられる。特定のある態様において、食用植物またはその一部分(例えば、苗条、根)が被検体に、治療有効量で経口投与される。一部のある態様では、1種類以上のインフルエンザ抗原が、本明細書に記載のようにして医薬調製物にて提供される。
治療用組成物および使用
本発明によれば、インフルエンザ抗体での被検体の処置は、生理学的効果を惹起することが意図される。抗体またはその抗原結合断片は、障害または疾患に対して治癒性の治療的または予防的特性を有するものであり得、疾患または障害の症状または重症度を改善、軽減、緩和するため、その発症を遅滞させるため、逆転または低減させるために投与され得る。インフルエンザ抗原を含む抗体組成物は、予防特性を有するものであり得、疾患の発症を予防もしくは遅滞させるため、またはかかる疾患、障害の重症度、あるいは病状が現れたときはこれを低減させるために使用され得る。本発明による抗原での被検体の処置によって惹起される生理学的効果としては、生物体による感染が阻止されるような有効な免疫応答が挙げられ得る。
一部のある実施形態において、抗体組成物は、経口および/または粘膜経路によって送達される。経口および/または粘膜送達は、多くの病原体の感染の主な進入口である粘膜の組織の感染を予防する可能性を有する。経口および/または粘膜送達は、全身性免疫応答の抗原刺激となり得る。粘膜免疫系を刺激し、全身性免疫の抗原刺激抗原の経口投与のための異種発現系の開発は、相当進歩している。しかしながら、経口タンパク質送達におけるこれまでの取り組みにより、有効性が達成されるには相当な量の抗原が必要であることが示された。したがって、大量の標的抗体またはその抗原結合断片(1つまたは複数)を経済的に作製することが、有効な経口タンパク質の作製のための必須条件である。抗体(例えば、熱安定性の抗原)を発現する植物の開発は、かかる問題に対するより現実的なアプローチである。
本発明の医薬調製物は被検体に、多種多様な様式で、例えば、経口、経鼻、経腸、非経口、筋肉内もしくは静脈内、経直腸、経膣、経表面的、眼経由、肺経由など、または接触適用によって投与され得る。特定のある実施形態において、植物またはその一部分において発現させたインフルエンザ抗原は被検体に、被検体への植物の直接投与によって経口投与される。一部のある態様では、植物またはその一部分において発現させた抗体またはその抗原結合断片を抽出および/または精製し、医薬組成物の調製に使用する。かかる単離した生成物を、その意図される用途のために(例えば、医薬用薬剤、抗体組成物などとして)製剤化することが望ましい場合もあり得る。一部のある実施形態では、該生成物を、該生成物を発現する植物組織の一部または全部と一緒に製剤化することが望ましい。
該生成物をその植物材料と一緒に製剤化することが望ましい場合、これは、多くの場合、関連するレシピエント(例えば、ヒトまたは他の動物)に対して毒性でない植物を用いたものであることが望ましい。関連する植物組織(例えば、細胞、根、葉)は、発現される生成物の活性が維持するように充分考慮して、当該技術分野で知られた手法に従って、簡単に採取および加工処理されるものであり得る。本発明の特定のある実施形態では、インフルエンザ抗原を食用植物(特に、その植物の食用部分)において発現させ、その後、該植物を食べることができるようにすることが望ましい。例えば、抗体またはその抗原結合断片が経口送達後に活性である場合(適切に製剤化されている場合)、抗体タンパク質を食用植物の一部分において産生させ、発現されたインフルエンザ抗体を経口送達用に、該タンパク質を発現させた植物材料の一部または全部と一緒に製剤化すること望ましい場合があり得る。
提供する抗体またはその抗原結合断片 (すなわち、本発明のインフルエンザ抗体またはその抗原結合断片)は、既知の手法に従って製剤化され得る。例えば、有効量の抗体生成物は、1種類以上の有機または無機系の液状または固形の医薬用に適した担体材料と一緒に製剤化され得る。本発明に従って作製される抗体またはその抗原結合断片は、該タンパク質の生物学的活性がその投薬形態破壊されない限り、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、ゲルカプセル剤(gelcap)、丸剤、カプレット剤、クリーム剤、軟膏、エーロゾル剤、粉剤薬包(powder packet)、液状の液剤、溶媒、希釈剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、および固形結合剤などの投薬形態で使用され得る。
一般に、組成物は、任意のさまざまな異なる薬学的に許容され得る担体(1種類または複数種)、アジュバント(1種類または複数種)、もしくはビヒクル(1種類または複数種)、あるいは1種類以上のかかる担体(1種類または複数種)、アジュバント(1種類または複数種)、もしくはビヒクル(1種類または複数種)の組合せを含むものであり得る。本明細書で用いる場合、文言「薬学的に許容され得る担体、アジュバント、またはビヒクル」には、医薬投与に適合性である溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌x剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に許容され得る担体として供され得る物質としては、限定されないが、糖類(ラクトース、グルコースおよびスクロースなど);デンプン(トウモロコシデンプンおよびイモデンプンなど);セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど);粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤用ワックスなど;油類(ピーナツ油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油など);グリコール(プロピレングリコールなど);エステル類(オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど);寒天;緩衝剤(水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど);アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の無毒性で適合性の滑沢剤(ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなど)、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、フレーバー剤および香料剤が挙げられ、製剤者の判断に従って保存剤および抗酸化剤を組成物中に存在させてもよい(また、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、E.W. Martin、Mack Publishing Co.、イーストン、PA、1975も参照のこと)。例えば、抗体または抗原結合断片生成物は、慣用的な混合、造粒、糖衣作製、溶解、凍結乾燥または同様のプロセスによって医薬組成物として提供され得る。
さらなる成分
組成物は、被検体に投与されたときの該組成物の免疫原性を増強するため、さらに任意の適当なアジュバントを含むものであってもよい。例えば、かかるアジュバント(1種類または複数種)としては、限定されないが、キラヤ・サポナリア(Quillaja saponaria)(QS)の抽出物、例えば、食品等級QSの精製部分画分(Quil AおよびQS−21など)、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、MF59、Malp2、不完全フロイントアジュバント;完全フロイントアジュバント;3 De−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)が挙げられ得る。さらなるアジュバントとしては、免疫調節性オリゴヌクレオチド(例えば、WO 96/02555に開示された非メチル化CpG配列)が挙げられる。上記に記載のものなどの種々のアジュバントの組合せが、TH1細胞応答の優先的な刺激因子であるアジュバントを提供することが想定される。例えば、QS21が3D−MPLと一緒に製剤化され得る。QS21:3D−MPLの比は、典型的には、1:10〜10:1;1:5〜5:1程度であり、多くの場合、実質的に1:1である。最適な相乗効果の所望の範囲は、3D−MPL:QS21が2.5:1〜1:1であり得る。ヒト用製剤における使用に適した精製QS抽出物の用量は、0.01mg〜10mg/kg体重である。
ある種の熱安定性タンパク質(例えば、リケナーゼ)は、それ自身が免疫応答増強活性を示すものであり得、その結果、インフルエンザ抗原との融合体であれ別々の状態であれ、かかるタンパク質の使用は、アジュバントのの使用とみなされ得ることに注意されたい。したがって、組成物は、さらに、1種類以上のアジュバントを含むものであり得る。ある種の組成物は、2種類以上のアジュバントを含むものであり得る。さらにまた、製剤および投与経路に応じて、ある種のアジュバントは、特に製剤および/または組合せにおいて好ましいことがあり得る。
状況によっては、皮下または筋肉内注射される抗体生成物(例えば、タンパク質)の1種類以上の成分の吸収を遅滞させることにより、抗体またはその抗原結合断片の効果を延長させることが望ましい場合があり得る。これは、水溶性が不充分な結晶性または非晶質の物質の液状懸濁液の使用により達成され得る。このとき、該生成物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、該速度は、大きさおよび形態に依存し得る。あるいはまたさらに、非経口投与される生成物の吸収の遅延は、該生成物を油性ビヒクル中に溶解または懸濁することにより達成される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリドなど)中にタンパク質のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製される。ポリマーに対する該生成物の比および使用される具体的なポリマーの性質に応じて、放出速度が制御され得る。生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、該生成物を、身体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に封入することにより調製され得る。経口製剤のために、択一的なポリマー系送達ビヒクルは、使用され得る。例えば、生分解性で生体適合性のポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などが使用され得る。抗原(1種類または複数種)またはその免疫原性部分は、例えばポリマー系送達ビヒクルとの組合せで微粒子として製剤化され得る。
経腸投与される抗体調製物は、固体、半固体、懸濁液またはエマルジョンの形態で導入され得、任意の薬学的に許容され得る担体(水、懸濁剤および乳化剤など)とともに配合され得る。抗原は、ポンプまたは徐放形態(特に、予防的手段として投与される場合)によって、被検体において疾患の発症が予防されるように、または既に確立された疾患が改善もしくは遅滞されるように投与され得る。補助的活性化合物、例えば、処置対象の疾患もしくは臨床状態に対して独立して活性な化合物、または本発明の化合物の活性を向上させる化合物が、組成物に組み込まれ得るか、または組成物とともに投与され得る。フレーバー剤および着色剤を使用してもい。
本発明の抗体生成物は、任意選択で植物組織と一緒になっており、医薬組成物として、特に経口投与によく適している。液状の経口製剤が使用され得、小児集団に特に有用であり得る。採取された植物材料は、所望の治療用生成物の特性およびその所望される形態に応じて、任意のさまざまな様式(例えば、風乾、フリーズドライ、抽出など)で加工処理され得る。上記のかかる組成物は、単独で経口摂取され得るか、または食品もしくは飼料もしくは飲料と一緒に摂取され得る。経口投与用組成物は、植物;植物の抽出物および感染植物から精製されたタンパク質(乾燥粉末、食料品として提供される)、水性または非水性溶媒、懸濁液またはエマルジョンを含むものである。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、魚油および注射用有機エステルである。水性担体としては、水、水−アルコール溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば、生理食塩水および医療用(medial)緩衝非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース溶液、デキストロース+塩化ナトリウム溶液、ラクトース含有リンゲル液または固定油が挙げられる。乾燥粉末の例としては、乾燥(例えば、フリーズドライ、風乾または噴霧乾燥)させた任意の植物バイオマスが挙げられる。例えば、植物は、カ氏約120度の市販の風乾装置内に、バイオマスが含有する湿分が5重量%未満になるまで入れることにより風乾させ得る。乾燥させた植物は、さらなる加工処理のためにバルク固形物として保存してもよく、所望のメッシュ径粉末に摩砕することによりさらに加工処理してもよい。あるいはまたさらに、風乾に感受性の生成物に対しては、フリーズドライが使用され得る。生成物は、真空乾燥機内に入れることによりフリーズドライさせ、バイオマスが含有する湿分が5重量%未満になるまで真空下で凍結乾燥させ得る。乾燥させた物質は、本明細書に記載のようにしてさらに加工処理してもよい。
植物由来の物質は、1種類以上のハーブ調製物として、または該調製物と一緒に投与され得る。有用なハーブ調製物としては、液所および固形のハーブ調製物が挙げられる。ハーブ調製物の一例としては、チンキ剤、エキス(例えば、水性エキス、アルコールエキス)、煎剤、乾燥調製物(例えば、風乾、噴霧乾燥、凍結または凍結乾燥されたもの)、粉末(例えば、凍結乾燥粉末)、および液状物が挙げられる。ハーブ調製物は、任意の標準的な送達ビヒクル中にて、例えば、カプセル剤、錠剤、坐剤、液状投薬形態などにて提供され得る。当業者には、本発明に適用され得るハーブ調製物の種々の製剤および送達モダリティが認識されよう。
本発明の根株、細胞株、植物、抽出物、粉末、乾燥調製物および精製タンパク質または核酸生成物などは、上記の1種類以上の賦形剤を含む、または含まないカプセル封入形態であり得る。固形投薬形態、例えば、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤などは、コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび医薬製剤分野でよく知られた他のコーティングなど)を用いて調製され得る。かかる固形投薬形態では、活性薬剤は、少なくとも1種類の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプンなど)と混合され得る。かかる投薬形態は、通常の常套手段と同様、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、打錠滑沢剤および他の打錠助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微晶質セルロースなど)を含むものであり得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、投薬形態には緩衝剤が含まれ得る。該形態は、任意選択で不透明化(opacifying)剤を含むものであり得、活性成分(1種類または複数主)のみを、または優先的に腸管の特定部分において放出する、および/または遅延様式で放出する組成のものであり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー系物質およびワックスが挙げられる。
一部の方法では、本発明によるインフルエンザ抗原を発現する植物もしくはその一部分、またはそのバイオマスは、薬用食品として経口投与される。かかる食用組成物は、典型的には、固形形態の場合は生で食べることにより、または液状形態の場合は飲むことにより消費される。植物材料は、事前の加工処理工程なしで直接、または最小限の調理調製後に摂取され得る。例えば、抗体タンパク質を苗条において発現させ、直接摂食することができる。例えば、アルファルファ苗条、緑豆苗条、またはホウレンソウもしくはレタスの葉の苗条などにおいて発現させたタンパク質。一実施形態において、植物バイオマスを加工処理してもよく、加工処理工程後に回収した物質が摂取される。
本発明による有用なに加工処理方法は、食品または飼料産業界で一般に使用されている方法である。かかる方法の最終生成物は、典型的には相当な量の発現抗原を含み、簡便に食べたり飲んだりできるものである。最終生成物を、他の食品または飼料形態、例えば、塩、担体、風味(favor)向上剤、抗生物質などと混合してもよく、固形、半固形、懸濁液、エマルジョンまたは液状形態で消費され得る。かかる方法は、保存工程、例えば、低温殺菌、加熱調理または保存剤および防腐剤の添加などを含むものであり得る。任意の植物が本発明において使用および加工処理され、食用または飲用植物物質が得られ得る。植物由来調製物中のインフルエンザ抗原の量は、当該技術分野で標準的な方法、例えば、ゲル電気泳動、ELISAまたはウエスタンブロット解析(生成物に特異的なプローブもしくは抗体を使用する)によって試験され得る。この測定を用いて、摂取される抗体タンパク質の量が標準化され得る。例えば、抗体の量を測定し、例えば、単回用量で摂取される飲用または食用物質の量が標準化され得るように、異なるレベルの生成物を有する生成物のバッチを混合することにより調節し得る。しかしながら、本発明の収容型の調節可能な環境では、かかる標準化手順を行う必要性が最小限に抑えられるはずである。
植物細胞または組織において産生させ、被検体によって摂食される抗体タンパク質は、好ましくは消化器系によって吸収されるものであり得る。最小限した加工処理されていない植物組織の摂取の利点の1つは、植物細胞内へのタンパク質の封入または封鎖が提供されることである。したがって、生成物は、消化管または腸に達する前に上部消化管において消化から少なくとも一部の保護を受け、より高率の活性生成物が取込みに利用可能となり得る。
本発明の医薬組成物は、治療的または予防的に投与され得る。該組成物は、疾患を処置または予防するために使用され得る。例えば、疾患に苦しむ任意の個体または疾患を発症するリスクのある任意の個体が処置され得る。個体は、その疾患の任意の症状について診断されていなくても疾患を発症するリスクがあるとみなされ得ることは認識されよう。例えば、個体がインフルエンザ感染への曝露に対して比較的高いリスクにあったことがわかっているか、または該リスクにあることが意図されるか、または該リスクの状況におかれている場合、該個体は、疾患を発症するリスクがあるとみなされる。同様に、個体の家族の構成員または友人がインフルエンザ感染と診断された場合、該個体は、疾患を発症するリスクがあるとみなされ得る。
経口投与のための液状投薬形態としては、限定されないが、薬学的に許容され得るエマルジョン剤、マイクロエマルジョン剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。活性薬剤に加え、液状投薬形態には、当該技術分野で一般に使用されている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などが含有され得る。不活性希釈剤の他に、経口組成物には、佐剤、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、フレーバーおよび香料剤など含めてもよい。
経直腸または経膣投与のための組成物は、坐剤または貯留型注腸剤であり得、これらは、本発明の組成物を、周囲温度では固形であるが、体温では液状となり、したがって直腸または膣腔内で融解され、活性タンパク質が放出される適当な非刺激性賦形剤または担体(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤用ワックスなど)と混合することにより調製され得る。
本発明の組成物の経表面、経粘膜または経皮投与のための投薬形態としては、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、吸入剤または貼付剤が挙げられる。活性薬剤またはその調製物を、滅菌条件下、薬学的に許容され得る担体および任意の必要とされる保存剤または緩衝剤(必要に応じて)と混合する。経粘膜または経皮投与では、障壁を通過するのに適切な浸透剤が製剤に使用され得る。かかる浸透剤は、一般的に、当該技術分野で知られており、例えば、経粘膜の投与では、デタージェント、胆汁塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、経鼻スプレー剤または坐剤の使用により行われ得る。経皮投与のためには、抗原またはその免疫原性部分は、当該技術分野で一般的に知られているようにして、軟膏(ointment/salve)、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化され得る。眼科用製剤、点耳剤、点眼剤も、本発明の範囲に包含されることが想定される。さらに、本発明では経皮パッチの使用が想定され、これは、身体へのタンパク質の制御送達をもたらす付加的な利点を有するものである。かかる投薬形態は、生成物を適正な媒体中に懸濁または分散させることにより作製され得る。吸収向上剤を使用し、皮膚を通過するタンパク質流入を増大させ得る。その速度は、速度制御膜を設けること、またはタンパク質をポリマーマトリックスもしくはゲル中に分散させることのいずれかにより制御され得る。
本発明の組成物は、所望の結果が得られるのに必要な量と時間で投与され得る。本発明の特定のある実施形態において、医薬組成物の「治療有効量」は、被検体において疾患を処置、減衰または予防するのに有効な量である。したがって、「疾患を処置、減衰または予防するのに有効な量」は、本明細書で用いる場合、任意の被検体において無毒性だが疾患を処置、減衰または予防するのに充分な医薬組成物の量をいう。例えば、「治療有効量」は、感染(例えば、ウイルス感染、インフルエンザ感染)などを処置、減衰または予防する量であり得る。
必要とされる正確な量は、被検体の種、年齢および一般状態、疾患の病期、具体的な医薬混合物、その投与様式などに応じて、被検体ごとに異なり得る。本発明のインフルエンザ抗原、例えば、抗原(1種類または複数種)を発現する植物および/またはその調製物は、容易な投与および均一な投薬のための単位投薬形態に製剤化され得る。表現「単位投薬形態」は、本明細書で用いる場合、処置対象の患者に適切な組成物の物理的に分離された単位をいう。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、典型的には、担当医師によって充分な医学的判断の範囲内で決定されることは理解されよう。任意の特定の患者または生物体に対する具体的な治療有効用量レベルは、さまざまな要素、例えば、感染の重症度またはリスク;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、一般健康状態、性別、患者の食生活、患者の薬物動態学的状態、投与期間、投与経路、および使用される特異的抗原(1種類または複数種)の排出速度;処置期間;使用される組成物と併用または同時使用される薬物;などの医学分野でよく知られた要素に依存し得る。
本発明の組成物は、併用療法(例えば、併用ワクチン療法)において使用され得ること、すなわち、医薬組成物は、1種類以上の他の所望の医薬および/またはワクチン接種手順と同時に、一緒に、その前または後に投与され得ることは認識されよう。併用レジメンに使用される具体的な併用療法(例えば、インフルエンザ感染のワクチン、治療的処置)では、一般的に、所望の治療薬および/または手順の適合性ならびに得られる所望の治療効果が考慮される。使用する治療および/またはワクチンによっては、同じ障害に対して所望の効果が得られることもあり(例えば、本発明の抗原が別のインフルエンザ抗体と同時に投与され得る)、異なる効果が得られることもあり得ることは認識されよう。
キット
一態様において、本発明は、本発明によるインフルエンザ抗原を含む医薬用パックまたはキットを提供する。特定のある実施形態において、医薬用パックまたはキットは、生きた発芽種苗、本発明による抗体もしくは抗原結合断片を産生するクローン存在体もしくは植物、または抗体を含有する調製物、抽出物もしくは医薬組成物を、任意選択で本発明の医薬組成物の1種類以上のさらなる成分を充填した1つ以上の容器内に含むものである。一部のある実施形態において、医薬用パックまたはキットは、精製された本発明によるインフルエンザ抗原を含む医薬組成物を、任意選択で本発明の医薬組成物の1種類以上のさらなる成分が充填された1つ以上の容器内に含むものである。特定のある実施形態では、医薬用パックまたはキットは、併用療法剤としての使用に承認されたさらなる治療用因子(例えば、インフルエンザ抗体、インフルエンザワクチン)を含むものである。任意選択で、かかる容器(1つまたは複数)は、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定される形態の通知書(notice)と関連していることがあり得、該通知書は、当該機関によるヒト投与のための製造、使用または販売の承認を反映する。
治療用試薬を含むを含むキットを提供する。非限定的な一例として、インフルエンザ抗体は、経口製剤として提供され得、治療として投与され得る。あるいはまたさらに、インフルエンザ抗体は、投与のための注射用製剤にて提供され得る。一実施形態では、インフルエンザ抗体は、投与のための吸入用製剤として提供され得る。したがって、医薬用量またはその使用説明書を、インフルエンザ感染に苦しむ、またはそのリスクのある個体への投与のためにキットに提供してもよい。
以下の代表的な実施例は、本発明の例示を補助することが意図され、本発明の範囲の限定は意図されず、そう解釈されるべきでもない。実際、本明細書において示し記載したものに加え、本発明の種々の変形例および多くのそのさらなる実施形態が、以下の実施例を含む本文書の全内容から、ならびに本明細書に挙げた科学文献および特許文献を参照すると、当業者に自明となろう。以下の実施例は、本発明の種々の実施形態およびその均等物において、本発明の実施に適合させ得る情報、例示および手引きを含む。
実施例1. 抗原構築物の作成
インフルエンザウイルスノイラミニダーゼ由来の抗原配列の作製
各インフルエンザウイルス型のノイラミニダーゼをコードするヌクレオチド配列
ベトナム型H5N1(NAV)およびワイオミング型H3N2(NAW)を合成し、正しいことを確認した。作製した核酸を制限エンドヌクレアーゼSalIで、ドメインコード配列にいずれかの末端が操作された部位を消化した。得られたDNA断片をC末端において、操作された熱安定性担体分子をコードする配列にインフレームで融合させた。
NAV(N1):(配列番号:27):
Figure 2010503668
Figure 2010503668
NAV:(配列番号:16):
Figure 2010503668
NAW(N2):(配列番号:28):
Figure 2010503668
Figure 2010503668
NAW:(配列番号:18):
Figure 2010503668
Figure 2010503668
組換え抗原構築物の作製
本発明者らは、pBR322プラスミドから誘導し、高レベルの転写および翻訳を促進するT7バクテリオファージ遺伝子10の特徴が利用されるように操作したpET発現ベクターを使用した。該バクテリオファージコードRNAポリメラーゼは、T7ファージゲノム以外のゲノムに見られるのは稀であるT7プロモーター配列に対して高度に特異的である(図1)。pET−32を用いて、HAおよびNA構築物を、このベクター内でクローニングしておいた修飾リケナーゼ配列のループ領域内に融合させた。上流配列PR−1A(「病原体関連タンパク質1A」)(小胞体(KDEL)または空胞保持配列(VAC)を有する)および下流Hisタグを有するリケナーゼ遺伝子の触媒性ドメインを、修飾pET−32ベクター(T7プロモーターとT7ターミネーター間の領域は切除されてある)内のPacI部位XhoI部位間にクローニングした。このようにして、pET−PR−LicKM−KDELおよびpET−PR−LicKM−VACを得た(図2)。DNA断片HAドメインまたはNAをLicKMの1部分内にサブクローニングし、翻訳のための正しいリーディングフレームにおいて融合体を得た。さらにまた、LicKM−NA融合体を構築した。NAWまたはNAVのDNA断片を、SalI部位を用いてLicKMのC−末端内にサブクローニングし、翻訳のための正しいリーディングフレームにおいて融合体を得た。
実施例2. 抗原ベクターの作製
標的抗原構築物LicKM−NAを、選択したウイルスベクター(pBI−D4)内にサブクローニングした。pBI−D4は、大腸菌β−D−グルクロニダーゼ(GUS)をコードするレポーター遺伝子がXbal部位とSacI部位の間で「ポリリンカー」に置き換えられたpBI121由来バイナリーベクターであり、TMV由来ベクターをクローニングした(図3)。pBI−D4は、発現させる外来遺伝子(例えば、標的抗原(例えば、LicKM−HA、LicKM−NA)をTMVの外被タンパク質(CP)遺伝子に置き換えるTMV系構築物である。該ウイルスは、TMV 126/183kDa遺伝子、移動タンパク質(MP)遺伝子、およびCPサブゲノムmRNAプロモーター(sgp)(これは、CPオープンリーディングフレーム(ORF)内に延在している)を保持している。CPの開始コドンは変異されている。該ウイルスはCPを欠き、したがって、師部(phloem)を介して宿主植物中を移動することができない。しかしながら、ウイルス感染の細胞間移動は機能性のままであり、ウイルスは、この様式で上方の葉までゆっくりと移動することができる。マルチクローニング部位(PacI−PmeI−AgeI−XhoI)が、外来遺伝子の発現のためにsgpの末端において操作されており、その後にTMV3’非翻訳領域(NTR)が存在する。35Sプロモーターをウイルス配列の5’末端に融合させる。ベクター配列を、pBI121のBamH1部位とSac1部位の間に配置する。ハンマーヘッド型リボザイムをウイルス配列の3’に配置する(Chenら、2003、Mol.Breed.,11:287)。このような構築物としては、LicKM−HAまたはNAをコードする配列のタバコPR−1aタンパク質由来のシグナルペプチドをコードする配列、6×HisタグおよびER−保持アンカー配列KDELまたは空胞配列への融合体が挙げられる(図4)。PR−LicKM−HA(SD)−KDEL、PR−LicKM−HA(GD)−KDEL、およびPR−LicKM−NA−KDELをコードする配列を含む構築物では、コードDNAをPacI−XhoI断片として、pBI−D4内に導入した。さらにまた、HAW(HAワイオミング型)、HAV(HAベトナム型)、NAW(NAワイオミング型)、およびNAV(NAベトナム型)を直接、PacI−XhoI断片としてpBI−D4内に導入した。続いて、ヌクレオチド配列を、最終発現構築物の接合部をサブクローニングするパニングによって確認した(図5)。
実施例3:植物の作製および抗原産生
植物のアグロバクテリウム浸潤
アグロバクテリウム浸潤によって得られるアグロバクテリウム媒介性一過性発現系がしようされ得る(Turpenら、1993、J.Virol.Methods、42:227)。ベンサミアナタバコ(N.benthamiana)の健常な葉に、LicKM−HAまたはLicKM−NAを発現するように操作したA.リゾゲネス含有ウイルスベクターを浸潤させた。
A.リゾゲネスA4(ATCC 43057)を、構築物pBI−D4−PR−LicKM−HA−KDEL、pBI−D4−PR−LicKM−HA−VAC、pBI−D4−PR−LicKM−NA−KDELおよびpBI−D4−PR−LicKM−NA−VACで形質転換した。アグロバクテリウム培養物を、既報のようにして培養および誘導した(Kapilaら1997、Plant Sci.,122:101)。2mlの出発培養物(新たなコロニーから選出)を、一晩、25μg/mlのカナマイシンを加えたYEB(5g/lの牛肉抽出物、1g/lの酵母抽出物、5g/lのペプトン、5g/lのスクロース、2mM MgSO)中、28℃で培養した。出発培養物を、500mlのYEB(25μg/mlのカナマイシン、10mMの2−4(−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)pH5.6、2mMのさらなるMgSOおよび20μMのアセトシリンゴン含有)中で1:500に希釈した。次いで、希釈培養物を、約1.7のO.D.600まで28℃で一晩培養した。細胞を3,000×gで15分間遠心分離し、MMA培地(MS塩、10mMのMES pH5.6、20g/lのスクロース、200μMのアセトシリンゴン)中に、2.4のO.D.600まで再懸濁し、室温で1〜3時間維持し、アグロバクテリウム浸潤に使用した。ベンサミアナタバコ葉にアグロバクテリウム懸濁液を、針なしの使い捨てシリンジを用いて注射した。浸潤の6日後に浸潤葉を採取した。植物を、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット解析の評価によって標的抗原発現の存在についてスクリーニングしてもよい(図6および7)。ザイモグラム解析により、試験したベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)遺伝子導入根においてNAキメラタンパク質の発現が示された。該発現はリケナーゼ活性と関連している(図6)。融合タンパク質に関連する活性バンドは、リケナーゼ対照より大きい分子量、およびアグロ(agro−)感染後に植物によって発現される産物と同じ分子量を示し、完全体の融合体生成物の存在が確認される。
クローン根およびクローン根株の作製
1cm×1cm幅のベンサミアナタバコ葉外植片を、0.1%NHCl中での消毒および滅菌dHO中での6回の洗浄後の葉から得る。この外植片に、ナイフで無菌(abacsial)側面上にわずかに傷をつけ、pBID4−Lic−HA−KDELまたはpBID4−Lic−NA−KDELのいずれかを含有するアグロバクテリウムリゾゲネス株A4とともに共培養する。該外植片を2分間、アグロバクテリウムO.N.培養物(O.D.600nm=0.8〜1)とともにインキュベートし、10分間3000rpmで4℃にて遠心分離し、MMA培地中に、20mMアセトシリンゴンの存在下で最終O.D.600nm=0.5まで再懸濁する。インキュベーションの最後に、該外植片を滅菌紙上で乾燥させ、1%グルコースおよび20mMアセトシリンゴンの存在下で0.8%寒天MSプレート上に移す。プレートをパラフィルムで覆い、室温で2日間維持する。次いで、外植片を、500mg/lのセフォタキシム(Cif)、100mg/lのチメンチン(Tim)および25mg/lのカナマイシンの存在下でMSプレート上に移す。ほぼ5週間後、 pBID4−Lic−HA−KDELおよびpBID4−Lic−NA−KDEL構築物を含有するアグロバクテリウムリゾゲネスで形質転換したベンサミアナタバコ葉の外植片から遺伝子導入根の生成が得られる。
形質転換後、毛状根を切り取り、固形のホルモン無含有K培地中に一列に配置し得る。4〜6日後、最も活発に生長している根を単離し、液状K培地に移す。選択した根を、暗所にて24℃で回転式振とう機において培養し、クローン株を単離し、毎週継代培養する。根および/またはクローン株は、リケナーゼ活性アッセイおよびイムノブロット解析の評価によって標的抗原発現の存在についてスクリーニングされ得る。
実施例4:抗原の産生
感染の4、5、6および7日後、ベンサミアナタバコの浸潤葉材料の100mg試料を採取した。新鮮な組織を、採取直後にタンパク質発現について解析するか、またはその後の粗製植物抽出物の調製のため、または融合タンパク質の精製のために−80℃で回収した。
新鮮な試料を、冷PBS 1x+プロテアーゼインヒビター(Roche)中に1/3w/v比(1ml/0.3gの組織)で再懸濁し、乳棒(pestel)で磨砕した。このホモジネートをSDSゲル負荷バッファー中で5分間煮沸し、次いで、4℃にて12,000rpmで5分間の遠心分離によって清澄化した。上清みを新たなチューブ内に移し、20μl、1μlまたはその希釈物を12%SDS−PAGE上で分離し、抗HiS−HAマウスもしくはウサギ抗リケナーゼポリクローナル抗体を用いたウエスタン解析によって、および/または機能性リケナーゼ活性を示すタンパク質分解活性を評価するザイモグラム解析によって解析した。ザイモグラフィーは、タンパク質分解活性を測定するための電気泳動による方法である。該方法は、インキュベーション期間中に分離されるそのプロテアーゼによって分解されるタンパク質基質を含浸させたドデシル硫酸ナトリウムゲルを主体とするものである。ゲルの染色により、タンパク質分解部位が、暗青色の背景上に白いバンドとして示される。一定の範囲内では、バンド強度は、プロテアーゼの負荷量と線形に関連し得る。
プラスミドpBID4−Lic−HA−KDELを含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウムリゾゲネスのいずれかを浸潤させたベンサミアナタバコ植物におけるHA発現により、融合タンパク質におけるHAタンパク質の電気泳動移動度が理論的MW(リケナーゼ酵素のMWは約21〜24kD)に相当する場合、キメラタンパク質Lic−HA−KDELの分子量に相当する特異的バンドがもたらされる。
粗製抽出物中の発現キメラタンパク質Lic−NA−KDELの定量は、手作業浸潤組織および真空浸潤組織の両方におけるイムノブロッティングによって行なわれ得る。
抗原の精製
pBID4−Lic−HA−KDEL構築物およびpBID4−Lic−NA−KDEL構築物を含む組換えアグロバクテリウム・ツメファシエンスを浸潤させた植物の葉を、ホモジネーションによって磨砕した。「EDTA無含有」プロテアーゼインヒビター(Roche)および1%Triton X−100を含む抽出バッファーを、3×(w/v)の比で使用し、4℃で30分間ロック(rock)した。抽出物を4℃にて10分間9000×gでの遠心分離によって清澄化した。上清みを逐次、Miraクロスに通して濾過し、4℃にて30分間20.000×gで遠心分離し、0.45μmフィルターに通して濾過した後、クロマトグラフィー精製した。
得られた抽出物を、硫酸アンモニウム沈殿を用いてカット(cut)した。簡単には、(NHSOを抽出物に20%飽和まで添加し、氷上で1時間インキュベートし、18,000×gで15分間遠沈させた。ペレットをを廃棄し、(NHSOをゆっくりと60%飽和まで添加し、氷上で1時間インキュベートし、18,000×gで15分間遠沈させた。上清みを廃棄し、得られたペレットをバッファー中に再懸濁し、次いで、氷上で20分間維持した後、18,000×gで30分間遠心分離した。上清みを10,000容量の洗浄バッファーに対して一晩透析した。
Hisタグ化Lic−HA−KDELおよびLic−NA−KDELキメラタンパク質を、Ni−NTAセファロース(「Chelating Sepharose Fast Flow Column」、Amersham)を使用することにより、室温にて重力下で精製した。精製は、非変性条件下で行った。タンパク質を0.5mlの画分として回収し、これらを1つにまとめ、20mM EDTAを添加し、1×PBSに対して一晩4℃で透析し、SDS−PAGEによって解析した。
あるいはまた、次いで、画分を一緒に回収し、20mM EDTAを添加し、10mM NaHPOに対して一晩4℃で透析し、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製した。LiC−HA−KDELおよびLiC−NA−KDELの精製には、アニオン交換カラムQ Sepharose Fast Flow(Amersham Pharmacia Biosciences)を使用した。Lic−HA−KDELまたはLic−NA−KDELの親和性またはイオン交換精製キメラタンパク質の試料を、12%ポリアクリルアミドゲル上で分離した後、クマシー染色を行った。また、膜を電気泳動によりニトロセルロース膜上に移し、ポリクローナル抗リケナーゼ抗体、続いて、抗ウサギIgG ウマラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を用いたウエスタン解析を行った。
透析後に回収した画分を、pAb α−リケナーゼおよびpAb α−抗Hisの両方を用いたイムノブロッティングによって解析した。Hisタグは、発現されたキメラタンパク質によって維持され、精製タンパク質の最終濃度をソフトウェアによって評価した。
実施例5:モノクローナル抗体を分泌するマウスハイブリドーマの誘導
(A型インフルエンザ/ベトナム型/03 H5N1)(NIBRG−14)。NIBRG−14は、PR8背景における逆遺伝学および組合せ(reassortment)によって誘導されたH5N1ウイルスであり、添付したNational Institute for Biological Standards and Controlsの文献に記載されている。
10週齢の雌A/Jマウスに、50μgの完全長N1ノイラミニダーゼで構成された植物発現ワクチン材料を腹腔内注射した。可溶性タンパク質は、アジュバントなしで300μlにて送達した。同一の用量を14日後および24日後に与えた。
2回目の追加抗原刺激の72時間後、4500万個の脾臓細胞を500万個のP3XAg8.653マウス骨髄腫細胞と、ポリエチレングリコールを用いて融合させた。得られた5000万個の融合細胞を5×10細胞/ウェルで、10×96ウェルプレート内にプレーティングした。24時間後、続いて、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)選択を行ない、コロニーが生成するまで継続した。すべての免疫グロブリン分泌ハイブリドーマを、HATの存在下、3回の限界希釈によってサブクローニングした。
潜在的ハイブリドーマをELISAプレート上で、LicKM(500ng/ウェル)またはA型インフルエンザ/ベトナム型/03(300ngのプロプリオラクトン(propriolactone)不活化ウイルス/ウェル)いずれかに特異的なIgGについてスクリーニングした。ハイブリドーマ2B9は、非常に高い特異性のシグナルを有した。このモノクローナル抗体の特異性を、植物発現抗原に対するELISAによってさらに試験した。10%ウシ胎仔血清を補給した2.5mlのイスコフ最少必須培地中で48時間培養した10細胞由来の上清みは、NIBRG−14およびN1ノイラミニダーゼに対して強く反応性であったが、N2ノイラミニダーゼに対してはそうではなかった。このモノクローナルのアイソタイプは、まだ規定されていない。凍結させたストックを液体窒素タンク内に維持し、本明細書において以下、「Fraunhofer 2B9」と表示する。2B9抗N1モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖可変領域の配列を付表Aに示す。
実施例6:抗体の阻害活性のキャラクタライゼーション
抗体活性のキャラクタライゼーションのため、本発明者らは、推奨されたWHOノイラミニダーゼアッセイプロトコルに基づいたアッセイを少し変形して使用した。各アッセイでは、反応を3連で行ない、
a. N末端膜貫通ドメインを欠くノイラミニダーゼ(N1)をコードする発現ベクターを浸潤させておいた植物組織から調製した1μlの新鮮な抽出物。植物抽出物の調製の目的のため、植物組織1mgあたり1μlのバッファーを使用した。
b. 抗体(陽性対照)なし、または抗体に対するノイラミニダーゼのモル比が1:1、1:10、1:20または1:30となるような容量のモノクローナル抗体(Ab αN1[ハイブリドーマ2B9由来]またはAb RSV[マウスにおいて生成させたウイルスRSV Fタンパク質に対する抗体]のいずれか)で構成した。
ノイラミニダーゼ抗体およびRSV F抗体は、同じアイソタイプ(マウスIgG 2b)のものであることに注意されたい。反応物を室温で30分間インキュベートし、抗体に植物産生ノイラミニダーゼを認識する機会を与えた。次いで、反応物を、ノイラミニダーゼ活性に最適な温度である37℃でインキュベートした。生成物(シアリン酸)蓄積を、分光光度計を用いた549nmでの比色分析によって評価し、シアリン酸標品に対して定量した。
ノイラミニダーゼ阻害の割合を、等式:
%阻害=([PC−Tr]/PC)×100
式中、PC − 陽性対照のノイラミニダーゼ活性
Tr − 抗体/ノイラミニダーゼ組合せのノイラミニダーゼ活性
を用いて計算した。抗体がノイラミニダーゼを阻害する能力のモル比較を図8に示す。ノイラミニダーゼ阻害パーセント(上記の等式に従って計算)をy軸に示し、抗体に対するノイラミニダーゼのモル比(1:1、1:10、1:20または1:30)をx軸に、それぞれ、R1、R10、R20またはR30として示す(図8)。標準誤差をp<0.05について示す。
植物発現ノイラミニダーゼの活性の阻害は、この同じ植物発現ノイラミニダーゼに対して生成されたマウスモノクローナル抗体の存在下で見られた。比較により、無関連(RSV)抗体は、この同じ植物産生ノイラミニダーゼを阻害できないこともまた示されている(図8)。
抗NA 2B9が、2B9抗原を最初に誘導した株に加えて、インフルエンザ株由来のN1抗原を認識し得る否かを調べるため、本発明者らは、5つの他の株:3種の異なるH5N1 株:A/ベトナム型/1203/04、A/ホンコン型/156/97、およびA/インドネシア型/05;ならびに1種類のH1N1株:A/ニューカレドニア型/99においてノイラミニダーゼアッセイを行なった。また、本発明者らは、1種類のH3N2株(A/Udorn/72)においてHIアッセイを行ない、抗NA 2B9がN1以外のサブタイプを認識するか否かを調べた。
これらの実験において、NA阻害は、シアリダーゼ活性に応答して定量可能な蛍光タグを放出させる2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセチルノイラミン酸(MDNA、図9)を用いて測定した。MDNAは、それぞれ、、ほぼ365および450に最大の吸収および蛍光発光を有し、シグナルは、10ウイルス粒子/ml(合計10粒子)という低感度にて、ウイルスストック0〜30倍希釈物の広い線形範囲で蛍光測定により検出され得る。使用した系により、反応バッファー(100mM酢酸ナトリウム、pH6.5、10mM CaCl)中で適切な濃度まで希釈した生ウイルスを増幅させ、試験抗体の2倍連続希釈物を入れたプレートに直接添加した。活性NAがウイルスの表面上に存在するため、酵素活性を測定するのにNAタンパク質の精製は必要でなかった。抗体は、2倍に連続希釈し、384マイクロプレートウェルに3連で等分した(表1)。滴定ウイルス(これも反応バッファー中に希釈)をプレートウェルに添加した後、30分間インキュベーションした。その後、MDNAを反応バッファー中で0.2mMまで希釈し、プレートウェルに添加し、反応をさらに30分間進行させた。200mM炭酸ナトリウム(pH9.5)の添加により、反応を停止させた。
表1. 3連NAアッセイのプレート割付け
Figure 2010503668
Figure 2010503668
NA活性検出の線形範囲および10〜15のシグナル枠に必要な最少ウイルス濃度を確立するため、各細胞培養増幅ウイルス株の滴定をアッセイ前に行なった。オセルタミビルカルボン酸塩(タミフル(登録商標)、2μM)を、このアッセイの対照薬物として使用した。オセルタミビルカルボン酸塩は、インフルエンザウイルスNA活性の特異的インヒビターであり、SRI化学物質貯蔵機関(respository)から個人的に入手可能である。
抗体希釈物および対照を、3連のアッセイで実験した(表2)。1〜250μg/ml(最終ウェル容量)の抗体濃度を試験し、オセルタミビルカルボン酸塩(2μM最終ウェル濃度)を陽性阻害対照として含めた。各ウイルス株についての50%結果のまとめを表2に示す。オセルタミビルカルボン酸塩との有効性を比較し、IC50を示す棒グラフおよび線グラフを図10〜14に示す。計算値を付表Bに示す。未加工データを付表Cに示す。
表2. NAアッセイIC50 結果01−12−2007
Figure 2010503668
IC50 = 50%阻害濃度
** N/D = 測定せず
図1は、pET32プラスミドマップである。左上は、標的抗原のクローニングに使用した修飾プラスミドにはない、T7プロモーターとT7ターミネーターの間の領域を示す。 図2は、修飾pET32aベクター内に挿入されたpET−PR−LicKM−KDEL構築物およびpET−PR−LicKM−VAC構築物の概略図である。 図3は、pBI121ベクター構成の概略図である。 図4は、GUS遺伝子の切除およびTMV由来プラスミドの付加後の、pBIベクターからのpBID4プラスミドの誘導の概略構成図である。 図5は、ベクター内に配置された標的化配列を有する、または有しない、リケナーゼ配列内のHA、HAドメインおよびNAの融合体の概略図である。 図6は、Lic−NA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のリケナーゼアッセイである。 図7は、Lic−HA融合タンパク質を発現する植物の抽出物のウエスタン解析である。 図8は、抗NA抗体および対照抗RSV抗体の存在下でのノイラミニダーゼアッセイである。 図9は、2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセチルノイラミン酸の化学構造である。 図10は、ノイラミニダーゼアッセイにおけるA/Udorn/72とオセルタミビルカルボン酸塩(タミフル(登録商標))の有効性の比較であり、IC50を示す。 図11は、ノイラミニダーゼアッセイにおけるA/New Caldonia/99とオセルタミビルカルボン酸塩(タミフル(登録商標))の有効性の比較であり、IC50を示す。 図12は、ノイラミニダーゼアッセイにおけるA/ベトナム型/1203/04とオセルタミビルカルボン酸塩(タミフル(登録商標))の有効性の比較であり、IC50を示す。 図13は、ノイラミニダーゼアッセイにおけるA/ホンコン型/156/97とオセルタミビルカルボン酸塩(タミフル(登録商標))の有効性の比較であり、IC50を示す。 図14は、ノイラミニダーゼアッセイにおけるA/Indonesia/05とオセルタミビルカルボン酸塩(タミフル(登録商標))の有効性の比較であり、IC50を示す。

Claims (35)

  1. ノイラミニダーゼに結合し、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片であって、該抗体はノイラミニダーゼ酵素活性を阻害し得る、抗体。
  2. IgG抗体である、請求項1に記載の抗体。
  3. IgG2b抗体である、請求項1に記載の抗体。
  4. 前記抗体の抗原結合断片である、請求項1に記載の抗体。
  5. 前記抗体のscFv、Fv、Fab’、Fab、ダイアボディ、線状抗体またはF(ab’)抗原結合断片、請求項4に記載の抗体。
  6. CDR、一価断片、単一ドメイン抗体である、請求項4に記載の抗体。
  7. ヒト抗体、ヒト化抗体もしくは一部ヒト抗体またはその抗原結合断片である、請求項1に記載の抗体。
  8. ヒト抗体フレームワークまたは定常領域に作動可能に結合された抗原結合領域を含む、請求項7に記載の抗体。
  9. キメラ抗体である、請求項1に記載の抗体。
  10. 二重特異性抗体である、請求項1に記載の抗体。
  11. 組換え抗体である、請求項1に記載の抗体。
  12. 操作された抗体である、請求項1に記載の抗体。
  13. 動物を精製ノイラミニダーゼで免疫処置すること、および免疫処置した該動物から、ノイラミニダーゼに結合する抗体であって、ハイブリドーマ2B9によって産生されたモノクローナル抗体とノイラミニダーゼに対する結合に関して有効に競合する抗体を選択することを含むプロセスによって調製される、請求項1に記載の抗体。
  14. ノイラミニダーゼ酵素活性を阻害する能力を有する、請求項1に記載の抗体。
  15. ハイブリドーマ2B9によって産生されたモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
  16. 少なくとも第1の生物学的因子または診断用因子に作動可能に結合された、請求項1〜15いずれか1項に記載の抗体。
  17. 少なくとも、実質的に不活性なプロドラッグを切断して実質的に活性な薬物を放出させる第1の因子に作動可能に結合された、請求項16に記載の抗体。
  18. 実質的に不活性なリン酸エステル−プロドラッグを切断して実質的に活性な抗ウイルス薬を放出させるアルカリホスファターゼに作動可能に結合された、請求項17に記載の抗体。
  19. 前記抗ウイルス薬が抗インフルエンザ剤である、請求項18に記載の抗体。
  20. 少なくとも第1の抗ウイルス剤に作動可能に結合された、請求項16に記載の抗体。
  21. 抗インフルエンザ剤に作動可能に結合された、請求項20に記載の抗体。
  22. 診断用因子、造影剤または検出可能な因子に作動可能に結合された、請求項16に記載の抗体。
  23. X線検出可能な化合物、放射性イオンまたは核磁気スピン共鳴同位体に作動可能に結合された、請求項22に記載の抗体。
  24. (a)X線検出可能な化合物であるビスマス(III)、金(III)、ランタン(III)もしくは鉛(II);(b)検出可能な放射性イオンである銅67、ガリウム67、ガリウム68、インジウム111、インジウム113、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、水銀197、水銀203、レニウム186、レニウム188、ルビジウム97、ルビジウム103、テクネチウム99mもしくはイットリウム90;または(c)検出可能な核磁気スピン共鳴同位体であるコバルト(II)、銅(II)、クロム(III)、ジスプロシウム(III)、エルビウム(III)、ガドリニウム(III)、ホルミウム(III)、鉄(II)、鉄(III)、マンガン(II)、ネオジム(III)、ニッケル(II)、サマリウム(III)、テルビウム(III)、バナジウム(II)もしくはイッテルビウム(III)に作動可能に結合された、請求項23に記載の抗体。
  25. ビオチン、アビジン、または色原体基質と接触すると着色生成物を生成させる酵素に作動可能に結合された、請求項22に記載の抗体。
  26. 同じリーディングフレーム内に、生物学的因子をコードするDNAセグメント作動可能に連結された抗体をコードするDNAセグメントを含む組換えベクターを発現させることにより調製される融合タンパク質として、該生物学的因子に作動可能に結合された、請求項16に記載の抗体。
  27. 生物学的に放出可能な結合または選択的に切断可能なリンカーを介して該生物学的因子に作動可能に結合された、請求項16に記載の抗体。
  28. 前記組成物が、さらに薬学的に許容され得る担体を含む薬学的に許容され得る組成物である、請求項1に記載の抗体。
  29. 前記薬学的に許容され得る組成物が非経口投与用に製剤化されたものである、請求項28に記載の組成物。
  30. 前記薬学的に許容され得る組成物が、植物産生抗体の製剤である、請求項28に記載の組成物。
  31. 前記薬学的に許容され得る組成物が、カプセル封入された製剤またはリポソーム製剤である、請求項28に記載の組成物。
  32. さらに第2の治療用因子を含む、請求項28に記載の組成物。
  33. インフルエンザ感染の処置方法であって、請求項1〜27いずれか1項に記載の組成物の生物学的有効量を、インフルエンザ感染の処置を必要とする動物に投与し、それによりインフルエンザ感染を処置することを含む、方法。
  34. ヒトインフルエンザウイルスによる感染による状態の診断のため、またはヒトインフルエンザウイルスタイピングのための、請求項1〜27いずれか1項に記載の抗体の、使用。
  35. 請求項1〜27いずれか1項に記載の物質を用いて試料中のヒトインフルエンザウイルスの存在を調べるためのアッセイ。
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