JP2010247605A - 車両駆動制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機を備える車両の駆動制御において、ECBの使用頻度を抑制することである。
【解決手段】車両駆動制御システム10は、車両の駆動系12と、駆動系12を構成する各要素の動作を全体として制御する車両駆動制御装置40を備える。車両駆動制御装置40は、駆動系12の各要素の作動を制御する駆動制御処理部42と、変速機22に対する変速指示を与える変速指示処理部44と、アクセルオフされて変速指示が出されたときにECBの使用頻度を抑制するための変速指示を前倒しするのに必要な変速開始必要時間を算出する変速開始必要時間算出処理部46と、変速開始必要時間に基づいて変速指示を前倒しする前倒し指示処理部48とを含んで構成される。
【選択図】図1
【解決手段】車両駆動制御システム10は、車両の駆動系12と、駆動系12を構成する各要素の動作を全体として制御する車両駆動制御装置40を備える。車両駆動制御装置40は、駆動系12の各要素の作動を制御する駆動制御処理部42と、変速機22に対する変速指示を与える変速指示処理部44と、アクセルオフされて変速指示が出されたときにECBの使用頻度を抑制するための変速指示を前倒しするのに必要な変速開始必要時間を算出する変速開始必要時間算出処理部46と、変速開始必要時間に基づいて変速指示を前倒しする前倒し指示処理部48とを含んで構成される。
【選択図】図1
Description
本発明は、車両駆動制御システムに係り、特に、変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機を備える車両の車両駆動制御システムに関する。
変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機を備える車両においては、変速を行う際に、電動機の出力が一時的に車両の駆動軸に伝達されなくなることが生じるので、駆動制御において注意が必要である。
例えば、特許文献1には、変速機を介して駆動軸に電動機が接続された自動車の動力出力装置として、変速機の変速段をLoからHiに切り替える際には電動機から駆動軸へ駆動力の伝達が一時的に遮断されることが述べられている。ここでは、そのようなときに、アクセル開度が全開でないときと全開であるときに分け、前者の場合は車速が所定車速Vhi1になったときまで変速を行わず、後者の場合は、Vhi1よりも大きな所定車速Vhi2になるまで変速を行わないことが開示されている。これによってアクセル全開でないときは変速処理を短時間で終了させてトルクの落ち込みを抑制し、また、アクセル全開のときに加速性能がよいLoギヤで走行する車速領域を広くして動力性能を向上させることができると述べられている。
また、特許文献2には、変速機を介して駆動軸に電動機が接続された自動車の動力出力装置として、変速機を介して駆動軸に電動機による制動力を出力しているときHiからLoへの変速要求がある場合には、電動機による制動力を駆動輪のブレーキによる制動力に一旦置き換えて電動機からトルクを出力していない状態として変速を行い、変速後に再び駆動輪のブレーキによる制動力を電動機による制動力に戻すことで、変速の際のショックを抑制することが開示されている。
上記のように、変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機を備える車両においては、変速を行う際に、電動機の出力が一時的に車両の駆動軸に伝達されなくなる。そこで、その変速を行っている途中で、要求駆動力が負となると、電動機による制動力が期待できないので、機械的なブレーキを使用することになる。すなわち、電子制御可能なブレーキ(Electric Control Brake:ECB)を用いた協調制御が実行される。ECBの使用頻度が多いと、その摩耗損傷が生じやすくなる。
本発明の目的は、変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機を備える車両において、ECBの使用頻度を抑制できる車両駆動制御システムを提供することである。
本発明に係る車両駆動制御システムは、変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機と、アクセルがオフされたときに、電動機に対する要求駆動力が低下して、予め定めた変速閾値駆動力以下となる閾値時間において、変速機にLoからHiへの変速開始を指示する変速指示手段と、アクセルがオフされたときに、アクセル開度の時間変化量であるアクセル開放速度に応じて求められる時間であって、電動機に与えられる要求駆動力に対して実際に実行される駆動力である実行駆動力が負となるときの時間と、変速機の変速開始から変速完了までに要する時間と、に基づき、実行駆動力が負になる前に変速機の変速が完了するために必要な変速開始必要時間を求める変速開始必要時間算出手段と、算出された変速開始必要時間が閾値時間よりも先に来る場合に、変速指示手段に対し、変速開始指示を変速開始必要時間に前倒しする変更を指示する前倒し指示手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る車両駆動制御システムにおいて、変速開始必要時間算出手段は、単位時間当たりの駆動力の次元を有する定数であって、アクセル開放速度が大きいほど大きな値となるようにアクセル開放速度に応じて予め定めた積算用定数を記憶する積算用定数記憶手段と、アクセル開放速度に対応する積算用定数を取得し、取得された積算用定数をアクセルオフが開始されたときから単位時間ごとに順次加算して駆動力の次元を有する積算値を単位時間の経過ごとに生成する手段と、単位時間の経過ごとに生成される積算値を電動機に対する要求駆動力から減算して変速判断用駆動力として単位時間の経過ごとに出力する手段と、変速判断用駆動力が閾値駆動力以下となる時間を変速開始必要時間として出力する手段と、を含むことが好ましい。
上記構成により、車両駆動制御システムは、アクセルがオフされたときに、アクセル開度の時間変化量であるアクセル開放速度に応じて求められる時間であって、電動機に与えられる要求駆動力に対して実際に実行される駆動力である実行駆動力が負となるときの時間と、変速機の変速開始から変速完了までに要する時間と、に基づき、実行駆動力が負になる前に変速機の変速が完了するために必要な変速開始必要時間を求める。そして、算出された変速開始必要時間が閾値時間よりも先に来る場合に、変速指示手段に対し、変速開始指示を変速開始必要時間に前倒しする変更を指示する。
これによって、電動機において実行駆動力が負となってECBの協調制御を必要とする前に、変速処理を完了することができる。変速処理が完了すれば、電動機の出力を駆動軸に伝達できるので、要求駆動力が負であっても、ECBの協調制御を用いることなく、電動機による制動力で、要求駆動力に対応できる。このようにして、ECBの使用頻度を抑制できる。
また、車両駆動制御システムにおいて、変速開始必要時間算出は次のようにして行う。すなわち、単位時間当たりの駆動力の次元を有する定数であって、アクセル開放速度が大きいほど大きな値となるようにアクセル開放速度に応じて予め定めた積算用定数を用い、この積算用定数をアクセルオフが開始されたときから単位時間ごとに順次加算して積算値を単位時間の経過ごとに生成する。そして、電動機に対する要求駆動力からこの積算値を減算して変速判断用駆動力とし、変速判断用駆動力が閾値駆動力以下となる時間を変速開始必要時間とする。
アクセル開放速度が速いときほど、電動機の実行駆動力が負になる時間が早くなる。上記構成によれば、アクセル開放速度に応じた積分用定数を用いて電動機に対する要求駆動力を補正してこれを変速判断用駆動力とするので、アクセル開放速度が速いほど、変速判断用駆動力が小さくなる。したがって、アクセル開放速度が速いほど、閾値駆動力に達する時間が早くなるので、変速開始必要時間をより前倒しできることになる。これによって、電動機の実行駆動力が負になる前に、変速処理を完了させることができる。
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車両の駆動系として、エンジンと2つの回転電機が動力分配機構によって接続されているものを説明するが、これ以外の構成であっても、少なくとも変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機を備えるものであればよい。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、車両駆動制御システム10の構成を示す図である。車両駆動制御システム10は、車両の駆動系12と、駆動系12を構成する各要素の動作を全体として制御する車両駆動制御装置40を含んで構成される。車両駆動制御装置40は、シフトレバー34、アクセルペダル36、ブレーキペダル38の操作子に接続され、また、記憶装置50と接続されている。
車両駆動制御システム10は、ユーザの操作子の操作によって要求される内容にしたがって、車両の駆動を制御する機能を有するが、ここでは特に、アクセルがオフされて変速指示が出されたときに、図示されていないECBの使用頻度を抑制する制御を行う機能を有する。
車両の駆動系12は、駆動源として、エンジン14と、発電機18と、電動機20とを含む。ここでは、動力分配機構26を介して、エンジン14、発電機18、電動機20の動力がユーザの要求に応じて適当に分配され、プロペラシャフト24と固定段減速機28を介して車両の駆動軸25に伝達され、車輪30を駆動する。
動力分配機構26はプラネタリ機構であって、外歯歯車であるサンギヤには発電機18の回転軸が接続され、内歯歯車であるリングギヤには変速機22を介した電動機20の出力軸がプロペラシャフト24と一体となって接続され、リングギヤとサンギヤの間に配置される外歯歯車である複数のピニオンを公転させるキャリアにはダンパ16を介したエンジン14の出力軸が接続される。
このような構成において、電動機20は、変速機22と固定段減速機28を介して車両の駆動軸25に接続されている。固定段減速機28は、減速比が常に一定であるので、実質上、電動機20は変速機22を介して車両の駆動軸25に接続されているといえる。
駆動系12に含まれる電源・駆動回路部32は、発電機18と電動機20に接続される回路で、ここには、2次電池である蓄電装置、昇圧コンバータ、インバータ等が含まれる。
車両駆動制御装置40に接続されるシフトレバー34は、ユーザがシフトポジションを変更するときに用いられる操作子である。ユーザによって選択されたシフトポジションの状態は、シフトポジションセンサによって検出され、適当な信号線を介して車両駆動制御装置40に伝送される。
アクセルペダル36は、ユーザが加減速を望むとき等に用いられる操作子である。アクセルペダル36の踏込み量は、ユーザの要求トルクに対応する。アクセルペダル36の踏込み量は、アクセル開度とも呼ばれるが、アクセル開度センサによって検出され、適当な信号線を介して車両駆動制御装置40に伝送される。
ブレーキペダル38は、ユーザが車両の制動を望むとき等に用いられる操作子である。ブレーキペダル38の踏込み量は、ユーザの要求制動力に対応する。ブレーキペダル38の踏込み量は、ブレーキ踏込み量センサによって検出され、適当な信号線を介して車両駆動制御装置40に伝送される。
記憶装置50は、車両駆動制御装置40において実行される車両駆動制御プログラム等を格納する装置である。ここでは、特に、アクセルがオフされて変速指示が出されたときに、図示されていないECBの使用頻度を抑制する制御のために、2つのファイルが格納される。
1つは、積算用定数記憶ファイル52である。このファイルは、単位時間当たりの駆動力の次元を有する定数であって、アクセル開放速度が大きいほど大きな値となるようにアクセル開放速度に応じて予め定めた積算用定数を記憶する。積算用定数は、後述するように、アクセルがオフの際に、つまり、アクセルペダル36が踏込まれなくなって開放状態とされた際に、変速指示が出され、その変速処理中に電動機20に対する要求駆動力が負となった場合に、ECBの協調制御を避けるために変速指示の前倒しをする処理において用いられる。
アクセル開放速度によって積分用定数の大きさを変えるのは、アクセル開放速度が速いほど、電動機20の実行駆動力が負となる時間が早くなるので、変速指示の前倒しも早めとする必要があるからである。
図2は、積分用定数の例を示す図である。ここでは、横軸にΔアクセル開度、すなわちアクセル開度の時間変化量であるアクセル開放速度がとられ、縦軸に積分用定数Cがとられている。この図に示されるように、アクセル開度が閉じて行く方向の時間変化量であるアクセル開放速度は負の値をとるが、その絶対値が大きくなるほど、積分用定数Cが大きくなるように設定される。
記憶装置50に記憶されるもう1つのファイルは、閾値駆動力ファイル54である。閾値駆動力は、アクセルがオフされたときに、変速機22がLoからHiへの変速をするか否かの境界の駆動力のことである。閾値駆動力は、車両の駆動系12の仕様によって、予め設定される。
図3は、閾値駆動力の例を示す図である。ここでは、横軸にプロペラシャフト24の回転数、縦軸に変速機22を介した電動機20に対する要求駆動力をとって、駆動系12の駆動力−回転数特性図に重ねて、変速機22がLoの状態とされる領域と、Hiの状態とされる領域とが示されている。
このLoとされる領域とHiとされる領域との境界線上の駆動力が、閾値駆動力Sthである。したがって、回転数を決めれば、要求駆動力が高いときはLoであっても、要求駆動力が低下し、閾値駆動力Sth以下となると、Hiに自動的に変速指示が変速機22に発行され、これによって、変速機22は変速処理を行うことになる。
いま、アクセルがオフされると、電動機20に対する要求駆動力は時間経過と共に小さくされる。したがって、最初Lo状態であっても、要求駆動力が低下して、閾値駆動力Sth以下となると、変速機22の変速段は、Hi状態に移行することになる。
再び図1に戻り、車両駆動制御装置40は、車両の駆動系12を構成する要素を全体として制御する機能を有する。また、ここでは特に、アクセルペダル36がオフされて変速機22に変速指示が出されたときに、図示されていないECBの使用頻度を抑制する制御を行う機能を有する。かかる車両駆動制御装置40は、車両搭載に適したコンピュータ等で構成することができる。また、車両駆動制御装置40の機能は、他の車両搭載コンピュータの機能の一部とすることもできる。例えば、車両全体の制御を行うハイブリッドECU等に、車両駆動制御装置40の機能を持たせることができる。
車両駆動制御装置40は、アクセルペダル36等の操作子を介してのユーザの要求を受けて、駆動系12の各要素の作動を制御する駆動制御処理部42と、変速機22に対する変速指示を与える変速指示処理部44と、アクセルオフされて変速指示が出されたときにECBの使用頻度を抑制するための変速指示を前倒しするのに必要な変速開始必要時間を算出する変速開始必要時間算出処理部46と、変速開始必要時間に基づいて変速指示を前倒しする前倒し指示処理部48とを含んで構成される。
かかる機能は、ソフトウェアを実行することで実現できる。具体的には、車両駆動制御プログラムのアクセルオフ時変速制御ルーティンを実行することで実現できる。これらの機能の一部をハードウェアで実行するものとしてもよい。
上記構成の作用、特に車両駆動制御装置40の各機能について図4、図5を用いて詳細に説明する。図4は、車両の変速制御、特にアクセルオフ時の変速制御の手順を示すフローチャートである。これらの手順は、車両駆動制御プログラムのアクセルオフ時変速制御ルーティンの各処理手順にそれぞれ対応する。図5は、図4の手順を行うときの各要素の動作状態の時系列変化を説明するタイムチャートで、横軸に時間、縦軸にアクセル開度、駆動力、変速機、ECB等の状態が並べられている。ここで、駆動力と変速機の動作状態については、変速前倒しの有無が比較できるように示されている。
そこで、図4における変速前倒し制御の説明の前に、図5の上段の動作状態を用いて、変速前倒しが行われない従来技術の様子を先に説明する。図5の最も上段から下段に向かって、アクセル開度、駆動力の2つは、変速前倒しの有無に関わらず、車両の駆動系12の仕様によって定まるもので、アクセルオフされたときのアクセル開度の時間変化、要求駆動力と実行駆動力の時間変化を示すタイムチャートである。その次の変速機の時間変化状態とECBの時間変化状態の2つが、変速前倒しが行われないときの様子を示すタイムチャートである。この4つのタイムチャートを用いて、従来技術の様子の説明をする。
アクセルオフされると、アクセル開度は、時間経過とともに小さな開度となってゆく。ここでは、アクセルを一杯踏込んだときがアクセル開度100%と考えればよい。図5で示されるΔアクセル開度とは、(Δアクセル開度)/(Δ時間)を省略したもので、アクセル開度の時間変化量であり、アクセル開放速度に相当する。例えば、アクセル開放速度=−100%/秒であれば、1秒で、アクセル前回からアクセル全閉となることを意味する。アクセルオフのΔアクセル開度は、負の値を有する。これに対し、通常のアクセル踏込みときは、Δアクセル開度は正の値を有する。
このように、アクセルオフして、アクセル開度が時間経過と共に低下すると、アクセルペダル36の検出値はユーザの要求加減速を示すので、ここでは減速指示として車両駆動制御装置40は受け取り、電動機20に対し要求駆動力を低下させる指示を与える。図5の上から2段目の駆動力のタイムチャートで「要求」として示される実線が、要求駆動力62の時間変化を示すものである。
要求駆動力62が次第に低下してきて、閾値駆動力Sthとなると、その時間t1において、変速機22は、LoからHiへの変速を開始する。実際の変速完了は時間t4で示されている。この時間t1から時間t4までの間は、変速中であって、減速段のつかみ変えが行われ、電動機20とプロペラシャフト24とは接続されていない。したがって、電動機20の出力は、実際にはプロペラシャフト24を介して車両の駆動軸25に伝達されていない。時間t1から時間t4の間の期間は、そのような性質を有する期間である。が生じるのは、制御処理時間、油圧系の応答時間、変速機22の応答時間等である。
駆動力のタイムチャートにおいて、車両駆動制御装置40から要求駆動力62が指令されても、実際の電動機20において実行される駆動力である実行駆動力63は、この要求駆動力62よりも時間遅れがある。駆動力のタイムチャートにおいて破線で「実行」として示されているのが、電動機20において実際に実行される実行駆動力63である。実行駆動力63も時間経過と共に低下する。
この実行駆動力63が+、すなわち正の駆動力の状態で減少するのは、車両が自然減速している状態であって、制動が特にかかっているわけでもない。ところで、要求駆動力62がゼロから負になると、制動を要求することになる。実行駆動力63も時間t3よりは遅れるが、時間t4でゼロとなり、それ以後は制動を実行することになる。
ところが、時間t4で、変速機22がまだ変速中であると、電動機20はその制動力を出力してもプロペラシャフト24に接続されていないので、その制動力が車両の駆動軸25に伝達できない。このような状態であると、車両駆動制御装置40は、制動を指示しているのに、電動機20による制動力が期待できない。図5の時間t3から時間t4はまさにそのような状態となっている。
そこで、この状態において、ユーザの要求する制動指示を満足するために、車両駆動制御装置40は、図示されていないECBによる制動制御を行う。図5の上から4段目のECBの時間変化は、時間t3から時間t4までの間、制動力を発生していることを示している。このように、電動機20とECBの協調制御によって、ユーザの要求する制動指示を満足させることができる。
しかしながら、ECBは機械的ブレーキであるので、頻繁に使用されると、摩耗損傷を生じるので、できるだけその使用頻度を抑制することが好ましい。そのためには、実行駆動力がゼロとなる時間t3より前に、LoからHiへの変速が完了していればよい。図4は、そのための変速前倒し制御を行うときの手順を示すフローチャートである。
車両駆動制御プログラムが起動すると、制御の各サンプリングタイムにおいて、アクセル開放速度に応じた積算用定数の積算が行われ、その積算値の大小によって変速前倒しが実行される。具体的には、図4の手順に沿って処理が行われる。
最初にアクセル開放速度が計算される。図4では、アクセル開放速度がΔアクセル開度で示されている。そして、計算されたアクセル開度が予め定めた所定値A未満か否かが判断される(S10)。Δアクセル開度の大小を符号も入れて表すものとすると、Δアクセル開度が小さいとは、その符号が負でその絶対値が大きいことである。
Δアクセル開度が小さいほど、要求駆動力62は急速に低下するので、実行駆動力63も急速に低下する。したがって、Δアクセル開度が小さいほど、実行駆動力63がゼロとなる時間t3が早まり、ECBとの協調制御の期間が長くなる。したがって、所定値Aは、ECBの強調制御を要するか要しないかの観点から設定することができる。例えば、Δアクセル開度が−25%/秒よりも小さいとECB協調制御を必要とすることが計算から分かっていれば、所定値Aを−25%/秒に設定することができる。これは1例であって、勿論、場合によってこれ以外の値に所定値Aを設定するものとできる。
図4において、S10の判断が否定されると、次にΔアクセル開度が所定値Bより大きいか否かが判断される(S12)。これは、例えば、アクセルペダル36が踏込まれ始めることがあるか否かを判断するためである。
アクセルペダル36が踏込まれるときは、積算値がクリアされる(S14)。積算値とは、図2で説明した積算用定数の順次加算された値であって、Δアクセル開度が負の値のときに用いられるものである。アクセルペダル36が踏込まれることは、Δアクセル開度が正であるので、積算値を用いる必要がない。したがって、所定値Bは例えばゼロとすることができる。勿論ゼロ以外でその近傍の値に設定することもできる。
図4において、S10の判断が肯定されると、積算計算が行われる。積算計算は、図2で説明した積算用定数Cを、サンプリングの単位時間ごとに、順次加算することで行われる。すなわち、現在の積算値=前回積算値+所定値Cの計算が行われる(S16)。現在と前回との差は、制御のサンプリングタイムの時間である。所定値Cは、図2で説明した積算用定数である。
図2に示したように、積算用定数Cは、Δアクセル開度が小さいほど、すなわち、アクセル開放速度が大きいほど、大きな値になるように設定されている。また、積算用定数Cは、単位時間当たりの駆動力の次元を有する定数であるので、これを単位時間ごとに加算してゆくことで積算演算がなされ、その結果である積算値は駆動力の次元となる。
例えば、サンプリングタイムの単位時間をτとし、現在のΔアクセル開度に対応する積算用定数をC1とすると、時間=0で積算値=0、時間=τで積算値=C1の駆動力になり、時間=2τで積算値=2C1の駆動力となる。一般的に時間=nτで積算値=nC1の駆動力となる。そして、アクセル開放速度が大きいほど、同じ経過時間の比較で、積算値である駆動力が大きくなる。
この駆動力の次元を有する積算値を用いて、変速前倒しの判断に用いられる変速判断用駆動力が計算される。具体的には、(変速判断用駆動力=要求駆動力−積算値)の計算が行われる(S18)。積算値が各サンプリングタイムで行われるので、変速判断用駆動力の算出も欠くサンプリングタイムごとに行われる。すなわち、単位時間τごとに行われる。
次に、この変速判断用駆動力が変速閾値駆動力以下であるか否かが判断される(S20)。判断が否定されるとS10に戻り、上記の手順が繰り返される。判断が肯定されると、その時が、変速前倒しに必要なタイミングであると判断されて、変速前倒し指示が変速機22に出されることになる。したがって、S20までの手順が、変速前倒しに必要な時間を算出している処理手順に相当し、車両駆動制御装置40の変速開始必要時間算出処理部46の機能によって実行される。
S20で判断が肯定されて、変速機22に変速前倒し指示が発行されると、変速機22は、LoからHiへの変速を開始する(S22)。この変速前倒し指示は、車両駆動制御装置40の前倒し指示処理部48の機能によって実行される。その様子を図5の下段側の状態変化を示すタイムチャートを用いて説明する。上記のように、上段側のアクセル開度と駆動力のタイムチャートは、そのまま用いられる。上段側から下段側に向かって5つ目のタイムチャートが、積算用定数Cの積算の様子を示す図である。積算は、各単位時間ごとに行われるので、図5では積算が終了している部分を実線で示し、そのままさらに積算されるとしたときの様子を破線で示してある。このように、積算用定数Cを用いた積算値は、アクセルオフで、S10の判断が肯定された時間から、次第にその値を大きくしてゆく。
その下段側のタイムチャートは、変速判断用駆動力66を実行駆動力63と積算値64とを用いて算出する様子を示す図である。この図に示されるように、(変速判断用駆動力66)=(要求駆動力62)−(積算値64)の計算によって、変速判断用駆動力66が求められる。
そして、変速判断用駆動力66が、閾値駆動力Sthとなる時間t11において、前倒し変速指示が出され、LoからHiへの変速処理が開始する。その様子は、最も下段側の変速機22のタイムチャートに示されている。変速前倒しが行われないときの変速開始時間はt1であったので、Δt=t1−t11だけ、変速開始が前倒しされたことになる。
この前倒しは、(変速判断用駆動力66)=(要求駆動力62)−(積算値64)の計算から分かるように、積算値64が大きいほど早くなる。積算値64は、積算用定数Cが大きいほど大きくなる。図2で説明したように、アクセル開放速度が大きいほど、積算用定数Cが大きいので、アクセル開放速度が大きいほど、変速前倒しを早めることができる。
図5の最下段に示されるように、変速前倒しがΔtとなったことから、変速終了の時間t14も、変速前倒しを行わない場合の変速終了時間であるt4よりもΔt=t1−t11だけ早まることになる。この早まった時間t3が、電動機20の実行駆動力63が下降してゼロになる時間t3よりも早くなるようにすることで、電動機20の制動力を車両の駆動軸25に伝達できる。これによって、ECBの協調制御を行わなくても、ユーザの制動要求を満足することができる。
すなわち、ECBの協調制御を抑制するには、アクセル開放速度に応じた積分用定数Cを以下の条件を考慮して設定すればよい。1つは、アクセル開放速度によって変化する要求駆動力62が閾値駆動力Sthとなる時間t1である。1つは、要求駆動力に従って変化する実行駆動力63が下降してゼロとなる時間t3である。1つは、変速開始から変速終了までの時間である(t4−t1)である。はじめの2つは、駆動系12の仕様が定まれば、アクセル開放速度との関係を予め求めておくことができる。変速に要する時間も駆動系12の仕様が定まれば予め求めておくことができる。
また、要求駆動力62の下降特性が定まれば、積分用定数Cを用いたときの変速判断用駆動力66の変速前倒し時間Δtが求められる。要求駆動力62の下降特性も積分用定数Cもアクセル開放速度に依存するので、Δtは、アクセル開放速度によって定まることになる。
このようにして、積分用定数Cごとに、変速前倒ししたときの変速終了時間をt14={t11+Δt+(変速時間であるt4−t1)}から求め、このt14がt3よりも先になるように、積分用定数Cを設定する。こうして設定されたアクセル開放速度と積部用定数Cの関係を図2のように記憶しておけばよい。
こうすることで、アクセルオフのときにLoからHiへの変速指令が出されても、電動機20の実行駆動力が負になる前に変速機22の変速処理を完了させることができ、ECBの協調制御を抑制することができる。
本発明に係る車両駆動制御システムは、変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機を備える車両の駆動制御に利用できる。
10 車両駆動制御システム、12 駆動系、14 エンジン、16 ダンパ、18 発電機、20 電動機、22 変速機、24 プロペラシャフト、25 駆動軸、26 動力分配機構、28 固定段減速機、30 車輪、32 電源・駆動回路部、34 シフトレバー、36 アクセルペダル、38 ブレーキペダル、40 車両駆動制御装置、42 駆動制御処理部、44 変速指示処理部、46 変速開始必要時間算出処理部、48 前倒し指示処理部、50 記憶装置、52 積算用定数記憶ファイル、54 閾値駆動力ファイル、62 要求駆動力、63 実行駆動力、64 積算値、66 変速判断用駆動力。
Claims (2)
- 変速機を介して車両の駆動軸に接続される電動機と、
アクセルがオフされたときに、電動機に対する要求駆動力が低下して、予め定めた変速閾値駆動力以下となる閾値時間において、変速機にLoからHiへの変速開始を指示する変速指示手段と、
アクセルがオフされたときに、アクセル開度の時間変化量であるアクセル開放速度に応じて求められる時間であって、電動機に与えられる要求駆動力に対して実際に実行される駆動力である実行駆動力が負となるときの時間と、変速機の変速開始から変速完了までに要する時間と、に基づき、実行駆動力が負になる前に変速機の変速が完了するために必要な変速開始必要時間を求める変速開始必要時間算出手段と、
算出された変速開始必要時間が閾値時間よりも先に来る場合に、変速指示手段に対し、変速開始指示を変速開始必要時間に前倒しする変更を指示する前倒し指示手段と、
を備えることを特徴とする車両駆動制御システム。 - 請求項1に記載の車両駆動制御システムにおいて、
変速開始必要時間算出手段は、
単位時間当たりの駆動力の次元を有する定数であって、アクセル開放速度が大きいほど大きな値となるようにアクセル開放速度に応じて予め定めた積算用定数を記憶する積算用定数記憶手段と、
アクセル開放速度に対応する積算用定数を取得し、取得された積算用定数をアクセルオフが開始されたときから単位時間ごとに順次加算して駆動力の次元を有する積算値を単位時間の経過ごとに生成する手段と、
単位時間の経過ごとに生成される積算値を電動機に対する要求駆動力から減算して変速判断用駆動力として単位時間の経過ごとに出力する手段と、
変速判断用駆動力が閾値駆動力以下となる時間を変速開始必要時間として出力する手段と、
を含むことを特徴とする車両駆動制御システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009097904A JP2010247605A (ja) | 2009-04-14 | 2009-04-14 | 車両駆動制御システム |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2009097904A JP2010247605A (ja) | 2009-04-14 | 2009-04-14 | 車両駆動制御システム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013091471A (ja) * | 2011-10-27 | 2013-05-16 | Toyota Motor Corp | ハイブリッド車両の制御装置 |
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2009
- 2009-04-14 JP JP2009097904A patent/JP2010247605A/ja active Pending
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