JP2010236020A - 複合軟磁性材料及びその製造方法と電磁気回路部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】純鉄粒子が本来有する高い飽和磁束密度を維持しながら、Fe−3Si合金粒子相あるいはFe−Si−Al合金粒子相が有する高透磁率、低保磁力、低鉄損失の特性を併せ持つことができるようにした複合軟磁性材料とその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、Fe−3Si合金粒子とFe−Si−Al合金粒子と純鉄粒子が圧密され、焼成されてなる複合軟磁性材料であり、複数のFe−3Si合金粒子相及びFe−Si−Al合金粒子相と、少なくとも3つ以上の前記Fe−3Si合金粒子相あるいはFe−3Si−Al合金粒子相に囲まれた粒界に存在する複数の純鉄粒子相とを有し、前記純鉄粒子相の全体に対する含有率が、3質量%以上10質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁処理された純鉄粒子とFe−3Si合金粒子とFe−Si−Al合金粒子とを混合圧密し、焼成してなる複合軟磁性材料及びその製造方法と電磁気回路部品に関する。
インバータやトランスのコア、チョークコイルなどの電子機器用電磁気部品は、電子機器の小型化、高性能化に伴い、より厳しい材料特性が求められるようになってきている。このような部品に用いられる軟磁性材料として、従来、Fe−Si−Al系合金やケイ素鋼などの金属磁性材料、フェライトなどの酸化物磁性材料料が使用されてきた。しかし、Fe−Si−Al系合金の金属磁性材料は、粉末とした場合の硬度が高く、粉末成形により高密度化することが難しい問題がある。
例えば、粉末成形による高密度複合軟磁性材料の製造では、先ず、絶縁皮膜を有する金属軟磁性粉末と、必要に応じて添加される潤滑剤粉末とバインダーからなる原料粉末を金型のキャビティに充填した後、加圧成形することによって目的の形状の圧粉体を作製し、その後、圧粉体を焼成することによって複合軟磁性材料が製造されている。
従って、成形に用いる粉末自体の硬度が高い場合、圧粉体として高い圧密度を得ることが困難となり易い問題がある。例えば、Fe−Si−Al系合金は室温で加工する場合、塑性変形が極めて少なく、粉砕による微粉末化は可能であるが、板状には成形困難なものである。従って、磁心などの磁気部品に成形しようとして、粉末状態で成形しても、ほとんど塑性変形しないことから、Fe−Si−Al系合金粒子は添加した結合剤で単純に結びついている状態となっているのみであり、Fe−Si−Al系合金粉末自体の透磁率は高くとも、圧粉磁心とした場合に高い透磁率を得ることができない問題がある。
そこで従来、酸化物磁性材料と金属磁性材料を混合し、複合化して、高性能化しようとする試みがなされている。
例えば、パーマロイなどの金属磁性粉末をフェライトなどの酸化物磁性材料で被覆し、その後に成形して熱処理する方法が知られている。(特許文献1参照)
また、アスペクト比を規定したFe-Si系合金粉末と扁平状Fe粉末混合し、圧密後に焼成処理してなる複合磁性材料が知られている。(特許文献2参照)
更に、5〜8質量%のSiを含むFe−Si系合金粉末と純鉄粉末とこれらの混合粉末間に存在する無機絶縁バインダーにより構成され、純鉄粉末の全体に対する重量比が10〜55%の範囲にある圧粉磁心が知られている。(特許文献3参照)
また、2種類の軟磁性粉末を混合圧密してなる軟磁性材料であって、軟磁性粉末がFe−Si合金粉末とFe−Si−Al合金粉末である磁性混合物が知られている。(特許文献4参照)
また、絶縁層で被覆した複数の複合磁性粒子からなり、複合磁性粒子の一部が絶縁被覆した高圧縮性軟磁性粒子であり、他の複合磁性粒子が絶縁得被覆した合金粒子であり、合金粒子と高圧縮性軟磁性粒子の平均粒径が3μm〜300μmである軟磁性材料が知られている。(特許文献5参照)
特開昭56−38402号公報 特開平6−236808号公報 特開2008−192897号公報 特開2002−110413号公報 特開2006−135164号公報
前記パーマロイなどの金属磁性粉末をフェライトなどの酸化物磁性材料で被覆して製造される軟磁性複合材料は、熱処理するとそれらの界面で金属とフェライトが反応し易いので、磁気特性が劣化するという問題を有していた。
また、Fe−Si−Al系合金粉末と他の軟磁性金属粉末を混合する方法にあっては、Fe−Si−Al系合金粉末が非常に硬いために、圧縮性の良好な軟磁性金属粉末を混合したとしても、20ton/cm程度の高圧成形技術が必要となり、ダストコアなど、円筒形のような単純な形状の製品しか得られないという問題を有していた。
更に、使用する周波数により磁性材料の使い分けを行う場合があり、低周波数領域では主に鉄系の材料が使用される。鉄系の材料は、高飽和磁束密度の長所を有するが、損失が大きいという欠点を有している。また、高周波数領域は酸化物系の磁性材料が多用されている。この酸化物系の材料は、低鉄損失の長所を有するが、鉄系の金属の半分ほどの飽和磁束密度しか得られないと言う問題がある。従って従来、要求特性に合わせて、飽和磁束密度ができるだけ高く得られる材料の選択を行うか、鉄損の少ない材料の選択を行うか、あるいは材料加工を行うか、要求特性に応じた材料を選択するなどの手段を採用することが一般的であったが、更に諸得性をバランスさせて高次元で両立することができる技術の提供が望まれていた。
本発明は、このような従来の事情に鑑み提案されたものであり、その目的は、軟磁性合金粉末に対し純鉄粉末を混合し、それらの添加量の範囲、それぞれの粒径範囲を好適に選択し、最適な配合とすることにより、純鉄粉末が本来有する高い飽和磁束密度を生かして飽和磁束密度の向上を図り、損失を低く抑えることができる複合軟磁性材料とその製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、純鉄粉末とFe−Si−Al合金粉末とFe−3Si合金粉末の添加量の範囲、それぞれの粒径範囲を好適に選択し、最適な配合とすることにより、純鉄粉末が本来有する高い飽和磁束密度を生かしながら、Fe−Si−Al合金粉末が本来有する低保磁力、低鉄損失を生かし、Fe−3Si合金粉末が本来有する低保磁力と大きな比抵抗の特性を併せ持つことができるようにした複合軟磁性材料とその製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る複合軟磁性材料は、複数のFe−3Si合金粒子とFe−Si−Al合金粒子と純鉄粒子が圧密され、焼成されてなる複合軟磁性材料であり、複数のFe−3Si合金粒子相及びFe−Si−Al合金粒子相と、前記複数のFe−3Si合金粒子相及びFe−3Si−Al合金粒子相のうち、少なくとも3つ以上の粒子相に囲まれた粒界に存在する複数の純鉄粒子相とを有し、前記純鉄粒子相の含有率が、前記Fe−3Si合金粒子相とFe−Si−Al合金粒子相と純鉄粒子相の全量に対して2%以上10%以下であることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料は、前記Fe−3Si合金粒子相及びFe−Si−Al合金粒子相の平均粒径が各々100〜150umであることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料は、前記純鉄粒子相の平均粒径が、10μm以上、50μm以下であることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料は、前記Fe−Si−Al合金粒子相と純鉄相とFe−3Si合金粒子相が、(2〜10%):(2〜10%):(81〜95%)の割合であることを特徴とする
本発明に係る複合軟磁性材料は、Fe−3Si合金相比率80〜100%、Fe−Si−Al合金相比率0〜20%、純鉄粒子相比率0〜20%を示す三角組成図(図3に示す)において、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が85:10:5の(1)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が81:9:10の(2)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が91:2:7の(3)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が95:3:2の(4)点で囲まれる領域内の組成比である。
本発明に係る複合軟磁性材料は、前記Fe−3Si合金粒子と前記Fe−3Si−Al合金粒子が共に800℃以上1000℃以下の温度で焼鈍されていることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料は、前記Fe−3Si合金粒子相同士、Fe−Si−Al合金粒子相同士の粒界、前記純鉄粒子同士の粒界および前記Fe−3Si系合金粒子相とFe−Si−Al系合金粒子相と前記純鉄粒子相の粒界の少なくともいずれかに、絶縁層を有することを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、平均粒径が100〜150μmのFe−3Si合金粒子及びFe−Si−Al合金粒子と、純鉄粒子とを、該純鉄粒子の含有率がこれらの全粒子に対し2%以上10%以下となるように混合することによって混合粒子を得る第1の工程と、前記混合粒子を加圧成形することによって成形体を得る第2の工程と、前記成形体を焼成することによって、複数のFe−3Si合金粒子相と、複数のFe−Si−Al合金粒子相と、前記複数のFe−3Si合金粒子相と複数のFe−Si−Al合金粒子相のうち、少なくとも3つ以上の粒子相に囲まれた粒界に存在する複数の純鉄粒子相とを有する複合軟磁性材料を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、前記Fe−Si−Al合金粒子相と純鉄相とFe−3Si合金粒子相を(2〜10%):(2〜10%):(81〜95%)の割合で混合することを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、前記純鉄粒子の表面が平滑化されて2%以上10%以下となるように混合されてなることを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、前記純鉄粒子のかさ密度(A.D)が平滑化する前の純鉄粒子よりも0.09〜0.25Mg/m高いことを特徴とする。
本発明に係る複合軟磁性材料の製造方法は、前記Fe−3Si合金粒子、Fe−Si−Al合金粒子および前記純鉄粒子の少なくともいずれかに、絶縁被膜を形成する工程を有することを特徴とする。
本発明の電磁気回路部品は、先のいずれかに記載の複合軟磁性材料を備えることを特徴とする。
本発明によれば、複合軟磁性材料の主要成分としてFe−3Si合金粒子相に加えFe−Si−Al合金粒子相と純鉄粒子相を用いているため、保磁力が低く、比抵抗が大きく、鉄損が小さく抑えられ、飽和磁束密度も高い、優れた圧粉磁心などの複合軟磁性材料を提供できる。
また、複数のFe−3Si合金粒子相及び複数のFe−Si−Al合金粒子相のうち、少なくとも3つ以上の粒子相に囲まれた粒界に純鉄粒子相を存在させ、この純鉄粒子相の含有率を所定の範囲としているため、Fe−3Si合金粒子相またはFe−Si−Al合金粒子相の間の隙間を磁性体(純鉄粒子相)で確実に埋めることができる。このため、本発明の複合軟磁性材料は、高い飽和磁束密度も発揮することができる。
更に、本発明の複合軟磁性材料であるならば、従来のFe−3Si合金粒子あるいはFe−Si−Al合金粒子の成形に必要としていた高い成形力を要することなく一般的な粉末成形に必要な程度の圧力で圧密成形が可能であって、上述の優れた諸特性を発揮できる複合軟磁性材料とその製造方法を提供することができる。
図1は、実施例で得られた複合軟磁性材料の一例を示す金属組織写真の模写図。 図2は、実施例で得られた複合軟磁性材料の他の例を示す金属組織写真の模写図。 図3は、Fe−3Si合金粒子相とFe−Si−Al合金粒子相と純鉄粒子相の配合組成を示す三角組成図。 図4は、本発明に係る複合軟磁性材料の製造工程の一例を示す工程図である。 図5は、本発明の圧粉磁心を適用した電磁気回路部品(リアクトル)を示す斜視図である。 図6は、図5に示すリアクトルが備えるリアクトルコアを示す斜視図である。 図7は、実施例においてメカノフュージョン装置にて表面平滑化を行った場合の純鉄粒子の状態を示すもので、(A)は処理前の元粒子を示す顕微鏡写真、(B)は2分処理後の状態を示す顕微鏡写真、(C)は4分処理後の状態を示す顕微鏡写真、(D)は6分処理後の状態を示す顕微鏡写真、(E)は8分処理後の状態を示す顕微鏡写真、(F)は10分処理後の状態を示す顕微鏡写真である。 図8は、メカノフュージョン装置にて表面平滑化を行った場合の実施例の純鉄粒子のかさ密度と平滑化時間の関係を示す図である。 図9は、純鉄粒子の平滑化を行った実施例において得られた圧粉磁心において、平滑化時間と比抵抗の関係を示す図である。
以下、本発明の複合軟磁性材料、その製造方法および電磁気回路部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
<複合軟磁性材料>
まず、本発明に係る複合軟磁性材料としての圧粉磁心について説明する。
図1は、本発明に係る複合軟磁性材料としての圧粉磁心の一実施形態を示す断面模式図であり、図1は後述する実施例において得られた試料の1000倍拡大図である。
図1に示す組織を有する複合軟磁性材料(圧粉磁心)1は、複数のFe−3Si合金粒子相2Aおよび複数のFe−Si−Al合金粒子相2Bと、複数のFe−3Si合金粒子相2Aと複数のFe−Si−Al合金粒子相2Bのうち、いずれかの3つ以上の合金粒子相2A、2Bに囲まれた粒界2aに存在する複数の純鉄粒子相3とを有している。
Fe−3Si合金粒子相2AおよびFe−Si−Al合金粒子相2Bは、それぞれ、粒状をなし、隣り合うFe−3Si合金粒子相2A同士、あるいは、隣り合うFe−Si−Al合金粒子相2B同士、あるいは、隣り合うFe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bとが圧密され、更に、上述の3つ以上の合金粒子相に囲まれた粒界2aに純鉄粒子相3が存在されている。
本発明で用いるFe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bの平均粒径は、100〜150μmの範囲とされている。Fe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bの平均粒径が100μmより小さいと、圧粉磁心1の飽和磁束密度Bsが小さくなる。また、Fe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bの平均粒径が150μmを超えると、粒内渦電流損が大きくなる。
さらに、Fe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bの平均粒径のより好ましい範囲は、110〜140μmである。Fe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bの平均粒径がこのような範囲であることにより、粒内渦電流損をより小さく抑えることができ、また、圧粉磁心1の飽和磁束密度Bsをより高くすることができる。なお、本明細書中において「平均粒径」とは、D50を示す。
なお、Fe−Si−Al合金粒子相を構成するのはセンダスト合金が望ましく、例えばFe−9.6Si−5.4Alの組成のセンダスト合金を適用することができる。
各純鉄粒子相3は、それぞれ、鉄の含有率が99.5質量%を超える粒子状の相である。これら純鉄粒子相3は、3つ以上のFe−3Si合金粒子相2Aに囲まれた粒界、3つ以上のFe−Si−Al合金粒子相2Bに囲まれた粒界、あるいは、複数のFe−3Si合金粒子相2Aと複数のFe−Si−Al合金粒子相2Bのうち、いずれか3つ以上の粒子相が構成する粒界2aに存在している。以上の組織とすることにより、次のような効果を得ることができる。
すなわち、後述する如くFe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bと純鉄粒子相3は、Fe−3Si合金粒子とFe−Si−Al合金粒子と純鉄粒子の混合処理と圧密処理と焼成処理により形成されるのであるが、Fe−Si系合金粒子、Fe−Si−Al系合金粒子は、純鉄粒子に比べて圧縮性が悪いため、これらの粒子を単独で加圧成形し、焼成することによって圧粉成形体を製造した場合、Fe−Si系合金粒子、Fe−Si−Al系合金粒子の粒子形状がそのまま製品中に保持され易い。この場合、特に、純鉄粒子が多すぎると、合金粒子よりも純鉄粒子の方が圧縮性が良好であり、合金粒子よりも純鉄粒子の方が飽和磁束密度は大きくなり、密度と飽和磁束密度の面で有利となるが、純鉄粒子の短所でもある比抵抗が小さいことが原因となって、全体の比抵抗が急激に小さくなり、小さくなった分、渦電流損失が増加し、圧粉磁心1としてのトータル的な鉄損の増加を引き起こす問題がある。
これに対して、図1に示すように、3つ以上のFe−3Si合金粒子相2Aに囲まれた粒界、3つ以上のFe−Si−Al合金粒子相2Bに囲まれた粒界、あるいは、複数のFe−3Si合金粒子相2Aと複数のFe−Si−Al合金粒子相2Bのうち、3つ以上の粒子相が構成する粒界2aに純鉄粒子相3が適切な量存在していると、粒子相同士の隙間が磁性体である純鉄粒子相3で埋められるため、Fe−3Si合金粒子相のみ、あるいは、Fe−Si−Al合金粒子相のみによって構成された圧粉成形体に比べて、高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。
ここで、純鉄粒子相3は、2つのFe−3Si合金粒子相2Aによってのみ挟まれた粒界、2つのFe−Si−Al合金粒子相2Bによってのみ挟まれた粒界、Fe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bによってのみ挟まれた粒界のいずれかの粒界2bには実質的に存在しないことが好ましい。このような粒界2bに純鉄粒子相3が実質的に存在しない組織とすることにより、圧粉磁心1の飽和磁束密度の低下を防ぐことができる。
純鉄粒子相3の平均粒径は、10μm以上、50μm以下であるのが好ましい。純鉄粒子相3の平均粒径が10μmより小さいと、圧粉磁心1の保磁力Hcが大きくなり、鉄損が大きくなる。また、純鉄粒子相3の平均粒径が50μmを超えると、後述するようにFe−Si系合金粒子と純鉄粒子よりなる混合粒子を加圧成形する際、その成形密度が低くなる。その結果、この加圧成形体を焼成して得られる圧粉磁心1の飽和磁束密度Bsが低くなる。
また、本発明では、Fe−Si−Al合金粒子相2Aにおいては、Fe−Si−Al合金粒子相2AとFe−3%Si合金粒子相2Bの総量に対して3〜10質量%の割合とされ、純鉄粒子相3については、Fe−Si−Al合金粒子相2AとFe−3%Si合金粒子相2Bと純鉄粒子相3の総量に対して2〜10質量%の割合、より好ましくは3〜10質量%の割合とされている。
純鉄粒子相3の含有率が2質量%より小さいと、純鉄粒子相3を添加する効果、すなわち、圧粉磁心1の飽和磁束密度Bsを向上させる効果が十分に得られなくなる。また、純鉄粒子相3の含有率が10質量%を超えると、3つ以上の粒子相で囲まれた粒界2aに収容し切れない過剰の純鉄粒子が発生し、これらが2つの粒子相で挟まれた粒界2bに隙間4を生じさせるようになる(図2参照)。
このため、純鉄粒子相3の含有率が10質量%以下の範囲では、純鉄粒子相3の含有率を増加させても鉄損はほとんど変化せず、比較的低い値に保持されるが、純鉄粒子相3の含有率が10質量%以上になると、その含有率の増加に依存して圧粉磁心1の鉄損が増大する傾向となる。
次に、本発明の圧粉磁心1に含有されるFe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bと純鉄粒子相3の比率について説明する。
本発明の圧粉磁心1において、純鉄粒子相3の比率については先に説明した如く2質量%以上10質量%以下が望ましいが、Fe−Si−Al合金粒子相2Bの比率についてはFe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bと純鉄粒子相3の全合計量に対し、2質量%以上、10質量%以下の範囲が好ましく、3質量%以上、10質量%以下の範囲がより好ましい。
更に、これらFe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bと純純鉄粒子相3の合金相比率については、Fe−3Si合金相比率80〜100%、Fe−Si−Al合金相比率0〜20%、純鉄粒子相比率0〜20%を示す図3の三角組成図において、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が85:10:5の(1)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が81:9:10の(2)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が91:2:7の(3)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が95:3:2の(4)点で囲まれる領域内の組成比である。この範囲とすることが、飽和磁束密度と低損失を、確保する上において好ましい。
これらの合金相比率の範囲を外れる比率であると、鉄損、飽和磁束密度、渦電流損失のいずれかが低下する傾向となり易い。
また、上述の範囲内において、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が85:10:5の(1)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が81:9:10の(2)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が91:2:7の(3)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が94:3:3の(5)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が92:5:3の(6)点で囲まれる領域内の組成比であることがより好ましい。
以上説明した構造の圧粉磁心1において、鉄損は、ヒステリシス損失と渦電流損失の和となる。ヒステリシス損失は、純鉄粒子の結晶の大きさに依存し、結晶が大きいとヒステリシス損失が小さくなる。よって、純鉄粒子の含有量が増えると、比例して増加する傾向となる。渦電流損失は、比抵抗に依存し、粉末同士の抵抗が低いと導体に渦電流が増え、急激な増加に繋がると考えられる。このことから、比抵抗の大きなFe−3Si合金粒子の中に比抵抗の小さな純鉄粒子を含有させると、各純鉄粒子は絶縁皮膜されてはいるが、高圧力成形で絶縁皮膜が破れ易くなっており、被覆が破れた純鉄粒子同士が接触された場合、渦電流が大幅に増加し、結果、鉄損の急激な増大につながると思われる。よって、Fe−3Si合金粒子相2Aで囲まれた隙間に充填される純鉄粒子は成形によって、大きな変形は生じていないが、隙間に収容しきれなかった純鉄粒子は、大きな変形がなされたことにより皮膜が破れているものが多く、隙間に収容されなかった純鉄粒子であって絶縁被覆が破れた純鉄粒子の存在が比抵抗の低下の原因になっていると思われる。
従って、各Fe−3Si合金粒子相2A同士の粒界、各Fe−Si−Al合金粒子相2B同士の粒界、各純鉄粒子相3同士の粒界、および、各Fe−3Si合金粒子相2A及び各Fe−Si−Al合金粒子相2B同士の粒界と各純鉄粒子相3同士の粒界には、それぞれ、絶縁層が設けられているのが好ましい。これにより、圧粉磁心1の比抵抗ρが大きくなり、渦電流の発生が抑えられる。その結果、圧粉磁心1の渦電流損失に起因する鉄損を低減することができる。
絶縁層の構成材料としては、特に限定されないが、たとえばリン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム等の酸化物絶縁材料、シリコーンレジンあるいは、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、またはポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂等が挙げられ、このうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、絶縁層が熱可塑性樹脂を含んでいると、この熱可塑性樹脂が粒子同士を接合する接合材として機能し、機械的強度に優れた圧粉磁心1を得ることができる。
以上のような圧粉磁心1は、Fe−3Si合金粒子相2Aを主成分とし、Fe−Si−Alを含有していることにより、保磁力Hcが小さく、比抵抗ρが大きく、鉄損が小さく抑えられる。
また、少なくとも3つ以上の粒子相に囲まれた粒界2aに純鉄粒子相3が存在しており、この純鉄粒子相3の含有率が所定の範囲とされていることにより、Fe−3Si合金粒子相2A同士の隙間、Fe−Si−Al合金粒子相2B同士の隙間、あるいは、Fe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bの隙間のいずれかの隙間(粒界2a)が磁性体(純鉄粒子相3)で確実に埋まり、高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。また、低保磁力のFe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bの含有比率を高くし、高保磁力の純鉄粒子相3の含有比率を少なくしているので、圧粉磁心1として低保磁力とすることができる。
<圧粉磁心の製造方法>
次に、本発明の圧粉磁心の製造方法を、図1に示す圧粉磁心を製造する場合を例にして説明する。図4は、本発明の複合軟磁性材料の製造方法の一例を工程順に示す工程説明図である。以下、各工程について説明する。
[1]Fe−3Si合金粒子の前処理工程
まず、Fe−3Si系合金粒子を用意する(ステップS11)。このFe−3Si合金粒子は、最終的に圧粉磁心1のFe−3Si合金粒子相2Aとなるものである。次に、Fe−3Si合金粒子を、還元雰囲気下、800以上1000℃以下の温度で焼鈍処理する(ステップS12)。ここで行う焼鈍処理の目的は、歪低減による保磁力(ヒステリシス損失)の低減である。焼鈍処理の温度1000℃を超える温度で行うと、粉末同士が固着してしまうおそれがある。
次に、Fe−3Si合金粒子を、例えばステンレス篩を用い、平均粒径が100〜150μmとなるように分級する(ステップS13)。次に、Fe−3Si系合金粒子を絶縁被膜で被覆する(ステップS14)。絶縁被膜は、例えば、Fe−3Si系合金粒子を前述の絶縁層の構成材料またはその前駆体を含有する液状材料中に浸漬した後、乾燥し、必要に応じて後処理を行うことによって形成することができる。
[2]純鉄粒子の前処理工程
まず、純鉄粒子を用意する(ステップS21)。この純鉄粒子は、最終的に圧粉磁心1の純鉄粒子相3となるものである。純鉄粒子を、例えばステンレス篩を用い、平均粒径が10〜50μmとなるように分級する(ステップS22)。次に、純鉄粒子を絶縁被膜で被覆する(ステップS23)。絶縁被膜の被覆方法および絶縁被膜の厚さは、Fe−Si系合金粒子の場合と同様である。なお、この例では、Fe−Si系合金粒子を絶縁被膜で被覆する工程と、純鉄粒子を絶縁被膜で被覆する工程とを、別工程で行っているが、絶縁被膜を形成する前のFe−Si系合金粒子および純鉄粒子を所定の混合比で混合した後、これら各粒子に、同時に絶縁被膜を形成する処理を施してもよい。
なお、本発明において、純鉄粒子に対し表面平滑化を行っても良い。この表面平滑化については、純鉄粉末のみをメカノフュージョンで時間変量し、高回転で圧縮、剪断を行うことにより、純鉄粉末の表面を平滑化し、角の少ない純鉄粒子を得ることができる。また、純鉄粒子を平滑化していると、純鉄粉末粒子の流動性も同時に改善することができる。この処理により、圧密後の密度を向上させて特性を向上させることができる。
[3]Fe−Si−Al合金粒子の前処理工程
まず、Fe−Si−Al系合金粒子を用意する(ステップS31)。このFe−Si−Al系合金粒子は、最終的に圧粉磁心1のFe−Si−Al合金粒子相2Bとなるものである。次に、Fe−Si−Al系合金粒子を、還元雰囲気下、800℃以上1000℃以下の温度で焼鈍理する(ステップS32)。ここで行う焼鈍処理の目的は、歪低減による保磁力(ヒステリシス損失)の低減である。焼鈍処理の温度を1000℃を超える温度で行うと、粉末同士が固着してしまうおそれがある。
次に、Fe−Si−Al系合金粒子を、例えばステンレス篩を用い、平均粒径が100〜150μmとなるように分級する(ステップS33)。次に、Fe−Si−Al系合金粒子を絶縁被膜で被覆する(ステップS34)。絶縁被膜は、例えば、Fe−Si−Al系合金粒子を前述の絶縁層の構成材料またはその前駆体を含有する液状材料中に浸漬した後、乾燥し、必要に応じて後処理を行うことによって形成することができる。
なお、前記前処理工程において、Fe−3Si合金粒子の前処理工程とFe−Si−Al合金粒子の前処理工程は、同じで良いが、いずれの工程においても、粉末分級と熱処理の順番が入れ替わっても差し支えなく、粉末分級を(ステップS12及びS32)とし、熱処理を(ステップS13及びS33)で行っても良い。
[4]Fe−3Si合金粒子と純鉄粒子とFe−Si−Al合金粒子の成形・焼成工程
次に、前記工程[1]、[2]、[3]で前処理が施されたFe−Si系合金粒子と純鉄粒子とFe−Si−Al合金粒子を混合し、混合粒子を得る(ステップS41、ステップS42)。Fe−Si系合金粒子と純鉄粒子との混合比は、上述の割合とする。
次に、得られた混合粒子を金型に入れ、大気中において温間加圧成形することによって成形体を得る(ステップ43)。ここで、加圧成形の圧力は785MPa程度である。
次に、成形体を焼成(熱処理)することによって、圧粉磁心を得る(ステップ44)。熱処理は、焼成までの間、粉末に歪が起こるのでこの歪を取って特性を向上させるために行う。焼成温度は例えば800℃とすることができる。焼成の雰囲気は真空中で行っても良いし、非酸化性雰囲気であれば、窒素雰囲気中、アルゴンガス雰囲気中などで行っても良い。
この熱処理により、図1に示すように、3つ以上のFe−3Si合金粒子相2Aが構成する粒界、3つ以上のFe−Si−Al合金粒子相2Bが構成する粒界、あるいは、複数のFe−3Si合金粒子相2Aと複数のFe−Si−Al合金粒子相2Bのうち、3つ以上の粒子相が構成する粒界のいずれかに純鉄粒子相3が存在する圧粉磁心1が得られる。
以上のようにして製造された圧粉磁心1は、Fe−3Si合金粒子相2Aを主成分とし、適量のFe−Si−Al合金粒子相2Bと、適量の純鉄粒子相3により構成されていることにより、保磁力Hcが小さく、比抵抗ρが大きく、鉄損が小さく抑えられる。
また、少なくとも3つ以上のFe−3Si合金粒子相2AあるいはFe−Si−Al合金粒子相2Bに囲まれた粒界2aに純鉄粒子相3が存在しており、この純鉄粒子相3の含有率が所定の範囲とされていることにより、Fe−3Si合金粒子相2同士の隙間(粒界2a)、Fe−Si−Al合金粒子相2B同士の隙間、あるいは、これらの混在した粒子相の隙間が、磁性体(純鉄粒子相3)で確実に埋まるので、高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。
<電磁気回路部品>
次に、本発明に係る複合軟磁性材料としての圧粉磁心を適用した電磁気回路部品について、リアクトルを例にして説明する。
図5は、本発明の圧粉磁心を適用したリアクトルを示す斜視図、図6は、図5のリアクトルが備えるリアクトルコアを示す斜視図である。
図5に示すリアクトル10は、リアクトルコア11と、リアクトルコア11に巻装された2つのコイル12を有している。
図5に示すように、リアクトルコア11は、平面視でU字状をなす一対のU型コア11a、11bと、一対のU型コア11a、11bの間に、間隔を置いて配設された複数の矩形状のコア(I型コア)11cと、U型コア11a、11bとI型コア11cとの間およびI型コア11c、11c同士の間に介装されたギャップ板14と、ギャップ板14同士を接着する接着剤層15を有しており、全体として横長円環形状をなしている。このリアクトルコア11では、コイル12に電流を流したとき、この円環方向に磁気回路が形成される。
図5に示すように、各コイル12は、それぞれ、多数回巻回された導線よりなり、リアクトルコア11の長手方向の直線区間に巻装されている。このリアクトル10では、リアクトルコア11が本発明の圧粉磁心によって構成されている。
このようなリアクトル10では、リアクトルコア11が、保磁力Hcが低く、比抵抗ρが大きく、鉄損が小さく抑えられており、また、高い飽和磁束密度Bsを有する。このため、例えば、コイル12に大電流が供給されても、リアクトルコア11が磁気飽和し難く、また、電気エネルギーの損失が小さく抑えられ、リアクトル10として高い性能を得ることができる。
なお、前記実施形態において、圧粉磁心および電磁気回路部品を構成する各部、圧粉磁心の製造方法の各工程は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
まず、Fe−3%Si合金粒子を用意し、水素雰囲気下、1000℃の温度で3時間加熱後徐冷する焼鈍処理を施した。次に、熱処理が施された合金粒子を、ステンレス篩を用いて分級し、平均粒径が106〜150μmの合金粒子のみを回収した。次に、合金粒子を、0.6%のレジン溶液中に浸漬し、乾燥することにより、シリコーンレジンによって被覆した。Fe−9.6Si−5.4Al合金粒子についても同等の前処理を施し、同等粒径の粒子のみを回収し、シリコーンレジンによって被覆した。
次に、リン酸被膜付きの純鉄粒子(ヘガネス社製 商品名ソマロイ110i)を用意した。そして、この純鉄粒子を、ステンレス篩を用いて分級し、平均粒径が50μm以下の純鉄粒子を回収した。次に、純鉄粒子を、0.6%のレジン溶液中に浸漬し、乾燥することによって、シリコーンレジンによって被覆した。
次に、Fe−Si−Al合金粒子においては、Fe−Si−Al合金粒子とFe−3%Si合金粒子の総量に対して3〜10質量%の割合で混合し、純鉄粒子については、Fe−Si−Al合金粒子とFe−3%Si合金粒子と純鉄粒子の総量に対して3〜10質量%の割合になるように混合して混合粒子を調製し、この混合粒子を、加圧成形することによって成形体を得た。加圧成形の条件は、温度150℃、圧力785MPaである。
次に、これらの成形体を、真空下、800℃の温度で1時間焼成し、焼成体(圧粉磁心)を得た。以上の工程により、3〜10質量%の純鉄粒子相あるいはFe−Si−Al合金粒子相を含有する圧粉磁心試料を複数製造した。なお、Fe−3Si合金粒子とFe−Si−Al合金粒子は純鉄粒子よりも硬いので、上述の加圧力程度では圧密し焼成した後も粒径の変化や形状の変化は少なく、分級した際の粒径や形状がある程度維持される。したがって、圧密前に粒子として配合した各粒子の配合量と焼成後に得られる軟磁性複合材料における粒子相の比率は同等であると見なすことができる。
[評価]
以上のようにして各実施例および各比較例で製造された圧粉磁心について、直流特性(飽和磁束密度Bs)および交流特性(鉄損失Pcm)を測定した。
ここで、直流特性は、B−Hトレーサー(横河社製 直流磁化測定装置B積分ユニット:TYPE3257)を用い、最大磁界Hm:10kA/mの条件で測定した。また、交流特性は、B−Hアナライザー(岩通計測社製 SY−8232)を用い、飽和磁束密度Bm:0.1T、周波数f:10kHzの条件で測定した。
その結果を以下の表1に示す。
表1に示す結果から、本発明で規定する望ましい範囲内の試料は、いずれも飽和磁束密度が高く、鉄損が少ないという優れた特性を両立できている。
次に、表1に示した各試料の組成比について、図3に示す三角組成図を利用し、各試料毎の粒子相の質量比について検討した。
即ち、先に図3の説明において記載した如く、Fe−3Si合金粒子相2AとFe−Si−Al合金粒子相2Bと純鉄粒子相3の統括的質量比について、Fe−3Si合金相比率80〜100%、Fe−Si−Al合金相比率0〜20%、鉄粒子相比率0〜20%を示す図3の三角組成図において、各試料の粒子相質量比率をプロットした。
図3に示す結果から、Fe−3Si合金相比率80〜100%、Fe−Si−Al合金相比率0〜20%、純鉄粒子相比率0〜20%を示す図3の三角組成図において、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が85:10:5の(1)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が81:9:10の(2)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が91:2:7の(3)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が95:3:2の(4)点で囲まれる領域内の組成比である。この範囲とすることが、飽和磁束密度と低損失を、確保する上において好ましいことが判明した。
また、この範囲内であっても、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が85:10:5の(1)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が81:9:10の(2)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が91:2:7の(3)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が94:3:3の(5)点と、Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が92:5:3の(6)点で囲まれる領域内の組成比であることが、飽和磁束密度と低損失を確保する上においてより好ましい範囲であることが判明した。
<平滑化試験>
前記実施例にて利用したリン酸被膜付きの純鉄粒子(ヘガネス社製 商品名ソマロイ110i)を用意した。この純鉄粒子を(ホソカワミクロン(株)製:型番AMS−30F)のメカノフュージョン装置にて表面平滑化を行った。装置の運転条件は、回転数1500rpm、処理時間、2分、4分、6分、8分、1バッチあたり、10kgの純鉄粒子(純鉄粉末)を平滑化する条件とした。
得られた純鉄粉末の平滑化について、元の純鉄粒子と2分処理後の純鉄粒子、4分処理後の純鉄粒子、6分処理後の純鉄粒子、8分処理後の純鉄粒子、10分処理後の純鉄粒子について、1500倍に拡大した顕微鏡写真を図7に示す。また、平滑化時間に対する、かさ密度を測定した結果を図8に示す。図7と図8に示す結果から、処理時間が長くなるほどかさ密度が向上し、純鉄粒子の表面を平滑化できているので、メカノフュージョン装置による留処理時間を調整することでかさ密度と表面の平滑状態を制御できることが明らかである。
次に、Fe−3Si合金粒子とFe−9.6Si−5.4Al合金粒子と上述の表面平滑化した純鉄粒子を用い、Fe−3Si合金粒子とFe−9.6Si−5.4Al合金粒子と純鉄粒子を配合比83.7:9.3:7の割合で混合した。各粒子は、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社商品名:YR3370)のレジン0.6%溶液に粉末を浸漬し、乾燥・焼付けを行った。なお、0.6%溶液に粉末を浸漬することは0.6重量%のシリコーンレジンを添加したことを意味する。
また、純鉄粉末のメカノフュージョン加工は、1500rpmにて0分(処理無し)、2分、4分、6分、8分、10分それぞれ1バッチあたり、10kgの純鉄粉末を平滑化する条件として各種試料を用意した。
次に、前述のFe−3Si合金粒子と純鉄粒子とを、純鉄粒子の含有率が7質量%となるように混合して混合粒子を調製し、この混合粒子を、温間成形することによって成形体を得た。温間成形の条件は、温度150℃、圧力785MPaである。
次に、成形体を、真空下、800℃の温度で1時間焼成し、焼成体(圧粉磁心)を得た。以上の工程により、7質量%の純鉄粒子を含有する圧粉磁心を製造した。
以上のようにして製造された圧粉磁心について、平滑化時間と比抵抗の関係を求めた結果を図9に示す。
この測定結果から、平滑化時間が4分を超えて増加するとともに比抵抗が向上し、平滑化時間の増加とともに渦電流損失が減少し、鉄損も若干減少する傾向が得られた。また、これらの測定結果において、図8に示す純鉄粒子のかさ密度(A.D)の対比から、平滑化する前の純鉄粒子に対し、0.09〜0.25Mg/mの範囲高い純鉄粒子をFe−3Si合金粒子とFe−9.6Si−5.4Al合金粒子に3〜10質量%添加すると、比抵抗が高くなり、損失が少なくなることが分かった。
これは、純鉄粒子をメカノフュージョン装置により表面平滑化したことにより、図7(A)に示す如く大きな異形状となっている純鉄粒子表面が滑らかになる結果、この表面滑らかな粒子どうしの圧密がなされるので、表面が異形状の純鉄粒子どうしの圧密に比べ、粒子表面に形成したレジン等のコーティング層が破れ難くなる結果と思われる。圧密時に異形状の純鉄粒子同士が押圧されると、表面に被覆されているレジン層に異形状の純鉄粒子の角が押し付けられるので亀裂が生成され易くなり、結果的に比抵抗が低下すると思われる。よって平滑化の効果が現れているものと思われる。

Claims (12)

  1. 複数のFe−3Si合金粒子とFe−Si−Al合金粒子と純鉄粒子が圧密され、焼成されてなる複合軟磁性材料であり、複数のFe−3Si合金粒子相及びFe−Si−Al合金粒子相と、前記複数のFe−3Si合金粒子相及びFe−3Si−Al合金粒子相のうち、少なくとも3つ以上の粒子相に囲まれた粒界に存在する複数の純鉄粒子相とを有し、前記純鉄粒子相の含有率が、前記Fe−3Si合金粒子相とFe−Si−Al合金粒子相と純鉄粒子相の全量に対して2%以上10%以下であることを特徴とする複合軟磁性材料。
  2. 前記Fe−3Si合金粒子相及びFe−Si−Al合金粒子相の平均粒径が各々100〜150μmであることを特徴とする請求項1に記載の複合軟磁性材料。
  3. 前記純鉄粒子相の平均粒径が、10μm以上、50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合軟磁性材料。
  4. 前記Fe−Si−Al合金粒子相と純鉄相とFe−3Si合金粒子相が、(2〜10%):(2〜10%):(81〜95%)の割合であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合軟磁性材料。
  5. Fe−3Si合金相比率80〜100%、Fe−Si−Al合金相比率0〜20%、純鉄粒子相比率0〜20%を示す三角組成図(図3に示す)において、
    Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が85:10:5の(1)点と、
    Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が81:9:10の(2)点と、
    Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が91:2:7の(3)点と、
    Fe−3Si合金相比率:Fe−Si−Al合金相比率:純鉄粒子相比率が95:3:2の(4)点とで囲まれる領域内の組成比であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合軟磁性材料。
  6. 前記Fe−3Si合金粒子と前記Fe−3Si−Al合金粒子が共に800℃以上1000℃以下の温度で焼鈍されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合軟磁性材料。
  7. 前記Fe−3Si合金粒子相同士、Fe−Si−Al合金粒子相同士の粒界、前記純鉄粒子同士の粒界および前記Fe−3Si系合金粒子相とFe−Si−Al系合金粒子相と前記純鉄粒子相の粒界の少なくともいずれかに、絶縁層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複合軟磁性材料。
  8. 平均粒径が100〜150μmのFe−3Si合金粒子及びFe−Si−Al合金粒子と、純鉄粒子とを、該純鉄粒子の含有率がこれらの全粒子に対し2%以上10%以下となるように混合することによって混合粒子を得る第1の工程と、前記混合粒子を加圧成形することによって成形体を得る第2の工程と、前記成形体を焼成することによって、複数のFe−3Si合金粒子相と、複数のFe−Si−Al合金粒子相と、前記複数のFe−3Si合金粒子相と複数のFe−Si−Al合金粒子相のうち、少なくとも3つ以上の粒子相に囲まれた粒界に存在する複数の純鉄粒子相とを有する複合軟磁性材料を得る第3の工程とを有することを特徴とする複合軟磁性材料の製造方法。
  9. 前記Fe−Si−Al合金粒子相と純鉄相とFe−3Si合金粒子相を(2〜10%):(2〜10%):(81〜95%)の割合で混合することを特徴とする請求項8に記載の複合軟磁性材料の製造方法。
  10. 前記純鉄粒子のかさ密度(A.D)が平滑化する前の純鉄粒子よりも0.09〜0.25Mg/m高いことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の複合軟磁性材料の製造方法。
  11. 前記Fe−3Si合金粒子、Fe−Si−Al合金粒子および前記純鉄粒子の少なくともいずれかに、絶縁被膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の複合軟磁性材料の製造方法。
  12. 請求項1〜7のいずれかに記載の複合軟磁性材料を備えることを特徴とする電磁気回路部品。
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