JP2010234640A - 多層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】割れ難く、耐白化性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れ、成形が容易な樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂材料の層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂85〜100重量部、アクリルゴム粒子0〜15重量部、及び前記メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部に対し紫外線吸収剤0.5〜10重量部を含有するメタクリル樹脂材料の層(B)を積層して、多層フィルムとする。その際、ポリカーボネート樹脂材料のガラス転移温度TgA(℃)とメタクリル樹脂材料のガラス転移温度TgB(℃)とが式:TgA−TgB<25℃を満たすようにする。
【選択図】なし
【解決手段】ポリカーボネート樹脂材料の層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂85〜100重量部、アクリルゴム粒子0〜15重量部、及び前記メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部に対し紫外線吸収剤0.5〜10重量部を含有するメタクリル樹脂材料の層(B)を積層して、多層フィルムとする。その際、ポリカーボネート樹脂材料のガラス転移温度TgA(℃)とメタクリル樹脂材料のガラス転移温度TgB(℃)とが式:TgA−TgB<25℃を満たすようにする。
【選択図】なし
Description
本発明は、多層フィルムに関するものである。また、本発明は、この多層フィルムを用いてなる加飾用フィルム及び加飾用シート、さらには加飾成形品にも関係している。
メタクリル樹脂フィルムは、その優れた透明性や耐候性を生かして、家電製品の外装部材や自動車の内装部材などの表面加飾用フィルムとして好ましく用いられている。メタクリル樹脂フィルムにより表面加飾された上記部材は、射出成形同時貼合法により有利に製造され、具体的には、加飾が施されたメタクリル樹脂フィルムを、射出成形金型に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、射出成形品を形成すると同時に、その射出成形品に上記メタクリル樹脂フィルムを貼合することにより、上記部材となる加飾成形品が製造される。
上記の如きメタクリル樹脂フィルムには、割れ難くするために、アクリル系のゴム粒子が含有させるのがよいが(例えば特許文献1〜3参照)、かかるメタクリル樹脂フィルムは、射出成形同時貼合やその前の予備成形の際に、曲げや伸び、加熱などによる白化を起こし易いという問題がある。このような問題を解決するため、比較的小粒子径のゴム粒子を用いることが提案されているが(例えば特許文献4参照)、この場合、フィルムを割れ難くするには、ゴム粒子を多めに含有させる必要があり、そのために表面硬度が低下するという問題がある。
一方、割れ難く、ゴム粒子を含有させる必要もないので白化も起こし難い樹脂フィルムとしては、ポリカーボネート樹脂フィルムが挙げられるが、ポリカーボネート樹脂フィルムは、一般に表面硬度が低く、光で黄変しやすい。また軟化温度が高いため、成形時に加熱温度を高くしたり、成形サイクルを長くしたりする必要がある。
そこで、本発明の目的は、割れ難く、耐白化性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れ、成形が容易な樹脂フィルムを提供することにある。そして、このフィルムを用いて、割れ難く、耐白化性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れ、成形が容易な加飾用フィルム及び加飾用シートを提供し、さらには、意匠性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れた加飾成形品を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明は、ポリカーボネート樹脂材料の層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂85〜100重量部、アクリルゴム粒子0〜15重量部、及び前記メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部に対し紫外線吸収剤0.5〜10重量部を含有するメタクリル樹脂材料の層(B)が積層されてなる多層フィルムであって、前記ポリカーボネート樹脂材料のガラス転移点TgA(℃)と前記メタクリル樹脂材料のガラス転移点TgB(℃)とが式:TgA−TgB<25℃を満たすことを特徴とする多層フィルムを提供する。
上記多層フィルムは、例えば、層(A)の一方の面に層(B)が積層されてなるものであれば、その層(A)側の面に加飾を施すことにより、割れ難く、耐白化性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れ、成形が容易な加飾用フィルムとして用いることができる。また、上記多層フィルムが、層(A)の両方の面に層(B)が積層されてなるものであれば、その一方の面に加飾を施すことにより、同様に割れ難く、耐白化性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れ、成形が容易な加飾用フィルムとして用いることができる。さらに、これら加飾用フィルムの加飾側の面に熱可塑性樹脂シートを積層することにより、加飾シートとすることもできる。そして、上記加飾用フィルムの加飾側の面、又は上記加飾用シートの熱可塑性樹脂シート側の面に、熱可塑性樹脂を射出成形することにより、意匠性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れた加飾成形品を得ることができる。
本発明の多層フィルムは、割れ難く、耐白化性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れ、成形が容易であり、これを用いることにより、割れ難く、耐白化性に優れ、表面硬度が高く、耐光性が優れ、成形が容易な加飾用フィルム及び加飾用シートを得ることができ、さらには、意匠性に優れ、表面硬度が高く、耐光性に優れた加飾成形品を得ることができる。
本発明の多層フィルムは、ポリカーボネート樹脂材料の層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂材料の層(B)が積層されてなるものである。ここで、ポリカーボネート樹脂材料とは、ポリカーボネート樹脂を必須成分とし、必要により他の成分を含有するものであり、すなわち、ポリカーボネート樹脂又はポリカーボネート樹脂組成物を意味する。また、メタクリル樹脂材料とは、メタクリル樹脂を必須成分とし、必要により他の成分を含有するものであり、すなわち、メタクリル樹脂又はメタクリル樹脂組成物を意味する。
層(A)を構成するポリカーボネート樹脂材料の必須成分であるポリカーボネート樹脂としては、例えば、二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られるもの、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られるもの、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるものが挙げられる。
二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステルが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン及びα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群から選ばれる二価フェノールを単独で又は2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン及びα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群れから選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
カルボニル化剤としては、例えば、ホスゲンの如きカルボニルハライド、ジフェニルカーボネートの如きカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメートの如きハロホルメートが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
層(A)を構成するポリカーボネート樹脂材料は、そのガラス転移温度TgA(℃)が、層(B)を構成するメタクリル樹脂材料のガラス転移温度TgB(℃)との関係で、式:TgA−TgB<25℃を満たすようにする。すなわち、TgAがTgBより25℃以上高くならないようにする。これにより、成形が容易で、射出成形同時貼合用途に好適な多層フィルムを得ることができる。なお、TgBは通常90〜110℃であることから、TgAは通常130℃以下であり、好ましくは120℃以下である。また、得られる多層フィルムの外観の点から、TgAとTgBとは、式:0℃<TgA−TgBを満たすのが好ましく、式:5℃<TgA−TgBを満たすのがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂材料としては、所望のガラス転移温度を有するポリカーボネート樹脂を単独で使用してもよいし、ポリカーボネート樹脂を他の成分と混合して、所望のガラス転移温度を有するポリカーボネート樹脂を調製し、これを使用してもよい。特にポリカーボネート樹脂及び可塑剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物が好ましく用いられる。
可塑剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートの如きリン酸エステル系化合物、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシルフタレート)、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレートの如きフタル酸エステル系化合物、トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートの如きトリメリット酸エステル系化合物、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネートの如き脂肪族二塩基酸エステル系化合物、メチルアセチルリシノレートの如きリシノール酸エステル系化合物、トリアセチン、オクチルアセテートの如き酢酸エステル系化合物、N−ブチルベンゼンスルホンアミドの如きスルホンアミド系化合物が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂との相溶性が良いこと、相溶後の樹脂の透明性が良いことから、リン酸エステル系化合物、特にクレジルジフェニルホスフェートやトリクレジルホスフェートが好ましい。
ポリカーボネート樹脂と可塑剤との配合割合は、両者の合計100重量部を基準として、好ましくは、ポリカーボネート樹脂が70〜99重量部、可塑剤が1〜30重量部であり、より好ましくは、ポリカーボネート樹脂が90〜98重量部、可塑剤が3〜10重量部である。可塑剤の量があまり少ないと、可塑化効果が不十分でTgAが十分に下がらず、式:TgA−TgB<25℃を満たすようにするのが難しくなり、得られる多層フィルムの成形性を高めるのが難しくなる。逆に可塑剤の量があまり多いと、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性が著しく大きくなり、メタクリル樹脂材料と積層して共押出成形する方法では、外観が良好な多層フィルムを得るのが難しくなる。
層(B)を構成するメタクリル樹脂材料の必須成分であるメタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸のアルキルエステルが用いられる。
メタクリル樹脂の好ましい単量体組成は、全単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルが50〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜50重量%、これら以外の単量体が0〜49重量%であり、より好ましくは、メタクリル酸アルキルが50〜99.9重量%、アクリル酸アルキルが0.1〜50重量%、これら以外の単量体が0〜49重量%である。
ここで、メタクリル酸アルキルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
また、アクリル酸アルキルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
また、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体は、単官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であってもよいし、多官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物であってもよいが、単官能単量体が好ましく用いられる。そして、この単官能単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き芳香族アルケニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルの如きアルケニルシアン化合物、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミドが挙げられる。また、多官能単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートの如き多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルの如き不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの如き多塩基酸のポリアルケニルエステル、ジビニルベンゼンの如き芳香族ポリアルケニル化合物が挙げられる。
なお、上記のメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
メタクリル樹脂は、層(A)を構成するポリカーボネート樹脂材料と熱的性質が大きく異ならないよう、そのガラス転移温度が60℃以上であるのが好ましく、80℃以上であるのがより好ましい。このガラス転移温度は、単量体の種類やその割合を調整することにより、適宜設定することができる。
メタクリル樹脂は、その単量体成分を、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの方法により重合させることにより、調製することができる。その際、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適な多層フィルムへの成形性を示す粘度を得るため、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類やその割合などに応じて、適宜決定すればよい。
メタクリル樹脂材料として、アクリルゴム粒子を含有するメタクリル樹脂組成物を用いることにより、得られる多層フィルムをより割れ難くすることができる。
アクリルゴム粒子は、ゴム成分としてアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を含有する粒子であり、この弾性重合体のみからなる単層構造の粒子であってもよいし、この弾性重合体からなる層を有する多層構造の粒子であってもよいが、層(B)の表面硬度の点から、多層構造の粒子であることが好ましい。また、この弾性重合体は、アクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸エステル50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、アクリル酸エステルとしては、通常、アクリル酸のアルキルエステルが用いられる。
アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の好ましい単量体組成は、全単量体の合計100重量%を基準として、アクリル酸アルキルが50〜99.9重量%、メタクリル酸アルキルが0〜49.9重量%、これら以外の単官能単量体が0〜49.9重量%、及び多官能単量体が0.1〜10重量%である。
ここで、アクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは4〜8である。またメタクリル酸アルキルの例も、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
また、これら以外の単官能単量体は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体の例と同様である。中でもスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如き芳香族アルケニル化合物が好ましく用いられる。
また、多官能単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げた多官能単量体の例と同様であり、中でも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや、多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましく用いられる。
なお、上記のアクリル酸アルキル、これ以外の単官能単量体、及び多官能単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
アクリルゴム粒子として多層構造のものを使用する場合、その好適な例としては、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体からなる層の外側に、メタクリル酸エステルを主体とする重合体からなる層を有するもの、すなわち、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を内層とし、メタクリル酸エステルを主体とする重合体を外層とする、少なくとも2層構造のものを挙げることができる。ここで、外層の重合体の単量体成分であるメタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。また、外層の重合体は、内層の弾性重合体100重量部に対し、通常10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部の割合で形成するのがよい。外層の重合体を、内層の弾性重合体100重量部に対し10重量部以上とすることで、該弾性重合体の凝集が生じ難くなり、基材層の透明性が良好となる。
上記外層の重合体の好ましい単量体組成は、全単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルが50〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜50重量%、これら以外の単官能単量体が0〜50重量%、及び多官能単量体が0〜10重量%である。
ここで、メタクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
また、アクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
また、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体の例と同様であり、また、多官能単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げた多官能単量体の例と同様である。
なお、上記のメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単量体、及び多官能単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
また、多層構造のアクリルゴム粒子の好適な例として、上記2層構造の内層であるアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体からなる層の内側に、さらにメタクリル酸エステルを主体とする重合体からなる層を有するもの、すなわち、このメタクリル酸エステルを主体とする重合体を内層とし、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を中間層とし、先のメタクリル酸エステルを主体とする重合体を外層とする、少なくとも3層構造のものを挙げることもできる。ここで、内層の重合体の単量体成分であるメタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。また、内層の重合体は、中間層の弾性重合体100重量部に対し、通常10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部の割合で形成するのがよい。
上記内層の重合体の好ましい単量体組成は、全単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルが70〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜30重量%、これら以外の単官能単量体が0〜30重量%、及び多官能単量体が0〜10重量%である。
ここで、メタクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。また、アクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
また、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体の例と同様であり、また、多官能単量体の例は、先にメタクリル酸樹脂の単量体成分として挙げた多官能単量体の例と同様である。
なお、上記のメタクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
アクリルゴム粒子は、先に述べたアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、調製することができる。その際、先に述べた如く、上記弾性重合体からなる層の外側に、メタクリル酸エステルを主体とする重合体からなる層を形成する場合は、この外層の重合体の単量体成分を、上記弾性重合体の存在下に、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記弾性重合体にグラフトさせればよい。また、先に述べた如く、上記弾性重合体からなる層の内側に、さらにメタクリル酸エステルを主体とする重合体からなる層を形成する場合は、まず、この内層の重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させ、次いで、得られる重合体の存在下に、上記弾性重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記内層の重合体にグラフトさせ、さらに、得られる弾性重合体の存在下に、上記外層の重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記弾性重合体にグラフトさせればよい。なお、各層の重合を、それぞれ2段以上で行う場合、いずれも、各段の単量体組成ではなく、全体としての単量体組成が所定の範囲内にあればよい。
アクリルゴム粒子の粒径については、該ゴム粒子中のアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体からなる層の平均粒子径が、0.01〜0.4μmであるのが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3μm、さらに好ましくは0.07〜0.25μmである。この平均粒子径があまり大きいと、層(B)の透明性が低下するため、好ましくない。また、この平均粒子径があまり小さいと、層(B)の表面硬度が低下して傷が付き易くなったり、層(B)の柔軟性が低下して割れ易くなったりするため、好ましくない。
なお、上記平均粒子径は、アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において酸化ルテニウムによる上記弾性重合体からなる層の染色を施し、電子顕微鏡で観察して、染色された部分の直径から求めることができる。すなわち、アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで染色すると、母相のメタクリル樹脂は染色されず、上記弾性重合体からなる層の外側にメタクリル酸エステルを主体とする重合体からなる層が存在する場合は、この外層の重合体も染色されず、上記弾性重合体からなる層のみが染色されるので、こうして染色され、電子顕微鏡でほぼ円形状に観察される部分の直径から、粒子径を求めることができる。上記弾性重合体からなる層の内側にメタクリル酸エステルを主体とする重合体からなる層が存在する場合は、この内層の重合体も染色されず、その外側の上記弾性重合体からなる層が染色された2層構造の状態で観察されることになるが、この場合は、2層構造の外側、すなわち上記弾性重合体からなる層の外径で考えればよい。
メタクリル樹脂とアクリルゴム粒子との配合割合は、両者の合計100重量部を基準として、メタクリル樹脂が85〜100重量部であり、アクリルゴム粒子が0〜15重量部である。メタクリル樹脂の割合があまり小さく、アクリルゴム粒子の割合があまり大きいと、折り曲げ時や成形時などに白化し易くなり、また層(B)の表面硬度が低下して傷が付き易くなると共に、形状転写後の製品外観が悪くなる。したがって、アクリルゴム粒子を配合しなくても、フィルムとして必要な強度が得られる場合は、アクリルゴム粒子を配合しなくてもよい。
また、アクリルゴム粒子中のアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の量は、メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部を基準として、0〜10重量部であることが好ましく、0〜8重量部であることがより好ましい。
メタクリル樹脂材料には紫外線吸収剤を含有させる。このように、層(B)を構成するメタクリル樹脂材料に紫外線吸収剤を含有させることで、該メタクリル樹脂材料の光劣化のみならず、層(A)を構成するポリカーボネート樹脂材料の光劣化も抑制でき、長期にわたり黄変し難い、紫外線カット能を有する多層フィルムとすることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、サリチル酸誘導体系紫外線吸収剤、置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤、ニッケル錯体系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](市販品の例としては株式会社ADEKAのLA31)や、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(市販品の例としてはチバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社のチヌビン234)の如き、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
メタクリル樹脂材料における紫外線吸収剤の含有量は、メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部に対し0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。紫外線吸収剤の含有量があまり少ないと、多層フィルムの紫外線カット能が不十分になり、あまり多いと、多層フィルム製造の際、紫外線吸収剤の熱揮散による、作業環境の悪化や設備の汚染、得られるフィルムの表面荒れなどの不具合を招く恐れがある。
また、メタクリル樹脂材料における紫外線吸収剤の含有量は、層(B)の面積あたりの含有量として、通常0.15〜1.5g/m2であり、好ましくは0.25〜1g/m2である。この含有量があまり少ないと、多層フィルムの紫外線カット能が不十分になり易く、あまり多いと、多層フィルムの外観や成膜性が低下し易くなる。
なお、層(B)を構成するメタクリル樹脂材料には、アクリルゴム粒子及び紫外線吸収剤の他、必要に応じて他の成分、例えば、有機系染料、無機系染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有させてもよい。
また、マット調の意匠を発現させるためには、層(A)を構成するポリカーボネート樹脂材料、若しくは層(B)を構成するメタクリル樹脂材料、又はその両方に、有機系又は無機系の微粒子を含有させて、層(A)及び/又は層(B)を光拡散性のマット層とするのが有効である。有機系の微粒子としては、例えば架橋アクリル系重合体粒子や架橋スチレン系重合体粒子が用いられ、無機系の微粒子としては、例えばシリカやアルミナが用いられる。これら微粒子の使用量は、要望する表面光沢や意匠により適宜調整されるが、ポリカーボネート樹脂材料に含有させるのであれば、該ポリカーボネート樹脂材料100重量%を基準として、またメタクリル樹脂材料に含有させるのであれば、該メタクリル樹脂材料100重量%を基準として、通常0.1〜50重量%である。
以上説明した層(A)の構成材料であるポリカーボネート樹脂材料と、層(B)の構成材料であるメタクリル樹脂材料とを、多層フィルム化することにより、ポリカーボネート樹脂材料の層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂材料の層(B)を形成することで、本発明の多層フィルムが得られる。この多層フィルム化の方法は適宜選択されるが、例えば、それぞれの構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法を用いて積層させる共押出成形法や、ポリカーボネート樹脂材料を押出成形法などによりフィルム化し、このフィルムの表面に、メタクリル樹脂材料を必要により溶剤に溶解してコーティングする方法が、有利に採用されるが、なかでも共押出成形法が好ましく用いられる。
共押出成形法の場合、溶融した樹脂材料をロールやベルトに密着させてフィルム成形を行う。このときのロールやベルトの本数や配置、材質は特に限定されないが、溶融した樹脂材料を2本の金属ロール間又は金属ロールと金属ベルトに接触、通過させて、ロールやベルトの表面を転写させる方法が、フィルム表面の面精度を高め、加飾性を向上させるうえで好ましい。あるいは、金属ロールと、弾性を有する金属ロールにより、面で溶融樹脂材料の両面を接触、通過させる方法は、成形時の歪みを低減させ、強度や熱収縮性の異方性を低減したフィルムを得るのに好適である。金属弾性ロールとしては、例えば、軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され、溶融樹脂材料に接触する円筒形の金属製薄膜とを備えており、これら軸ロールと金属製薄膜との間に水や油などの温度制御された流体が封入されたものや、ゴムロールの表面に金属ベルトを巻いたものが例として挙げられる。
こうして得られる多層フィルムは、その厚さが通常20〜200μmであり、好ましくは30〜150μmであり、より好ましくは50〜100μmである。あまり厚い多層フィルムは、例えば自動車内装材として成形する際に成形加工に時間がかかると共に、物性や意匠性の向上効果が小さく、コストも高くなる。一方、あまり薄い多層フィルムは、押出成形による製膜自体が、機械的制約により困難になると共に、破断強度が小さくなり、生産不具合の発生確率が高くなる。多層フィルムの厚さは、製膜速度、T型ダイスの吐出口厚み、ロールの間隙などを調節することにより、調整できる。
ポリカーボネート樹脂材料の層(A)は、その厚さが多層フィルム全体の厚さの10〜80%であるのが好ましい。層(A)が薄いと、多層フィルムが脆く、割れ易くなる。また、メタクリル樹脂材料の層(B)は、その厚さが通常10μm以上であり、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。層(B)があまり薄いと、表面硬度が不十分になる。なお、層(B)を層(A)の両面に配置する場合は、各層(B)の厚さを通常10μm以上とすればよく、好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。
本発明の多層フィルムは、加飾用フィルムとして好ましく用いられる。加飾性や製品化後の表面硬度を考慮すると、層(A)の両面に層(B)が形成されたものが好ましく用いられる。加飾手段としては、例えば、連続グラビア印刷やシルク印刷などにより表面に木目調などや各種デザインの直接印刷を施す方法や、蒸着やスパッタリングなどにより金属メッキ調の加飾を施す方法、また印刷や蒸着などの加飾が施された他の樹脂フィルムをラミネートする方法が挙げられる。
また、この加飾用フィルムは、その加飾側の面に、バッキング材として熱可塑性樹脂シートを積層して、加飾用シートとすることもできる。ここで、熱可塑性樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、この熱可塑性樹脂シートの厚さは、所謂フィルム領域の厚さも包含し、通常0.1〜2mmである。
そして、こうして得られる加飾フィルム又は加飾シートを、加飾層が設けられていない樹脂層側が表側に配置されるように、熱可塑性樹脂成形品に積層することにより、すなわち、加飾フィルムであれば、加飾側の面に、熱可塑性樹脂成形品を積層することにより、また、加飾シートであれば、熱可塑性樹脂シート側の面に、熱可塑性樹脂成形品を積層することにより、加飾成形品を得ることができる。ここで、熱可塑性樹脂成形品を構成する樹脂としては、例えば、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
加飾成形品を得るための方法としては、射出成形同時貼合法が有利に採用される。射出成形同時貼合法は、加飾フィルム又は加飾シートを予備成形することなく、射出成形金型内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、射出成形品を形成すると同時に、その成形品に加飾フィルム又は加飾シートを貼合する方法(狭義の射出成形同時貼合法と呼ばれることがある)、加飾フィルム又は加飾シートを真空成形や圧空成形などにより予備成形してから、射出成形金型内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、射出成形品を形成すると同時に、その成形品に加飾フィルム又は加飾シートを貼合する方法(インサート成形法と呼ばれることがある)、加飾フィルム又は加飾シートを射出成形金型内で真空成形や圧空成形などにより予備成形した後、そこに溶融樹脂を射出して、射出成形品を形成すると同時に、その成形品に加飾フィルム又は加飾シートを貼合する方法(インモールド成形法と呼ばれることがある)によって行うことができる。射出成形同時貼合法のさらに詳しい説明は、例えば、特公昭63−6339号公報、特公平4−9647号公報、特開平7−9484号公報に記載されている。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また、ガラス転移温度は、JIS K7121:1987に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
ポリカーボネート樹脂として、住友ダウ株式会社製 カリバー 303−10(ガラス転移温度145℃)を用いた。
可塑剤として、クレジルジフェニルホスフェート(大八化学工業株式会社製 CDP)を用いた。
メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97.8%とアクリル酸メチル2.2%とからなる単量体のバルク重合により得られた熱可塑性重合体(ガラス転移温度104℃)のペレットを用いた。
アクリルゴム粒子(1)として、最内層がメタクリル酸メチル93.8%とアクリル酸メチル6%とメタクリル酸アリル0.2%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、中間層がアクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体の重合により得られた弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、最内層/中間層/最外層の重量割合が35/45/20であり、中間層の弾性重合体の層の平均粒子径が0.22μmである、乳化重合法による球形3層構造の粒子を用いた。
アクリルゴム粒子(2)として、最内層がアクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体の重合により得られた弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、最内層/最外層の重量割合が80/20であり、最内層の弾性重合体の層の平均粒子径が0.08μmである、乳化重合法による球形2層構造のゴム粒子を用いた。
なお、上記のアクリルゴム粒子における中間層の弾性重合体の層の平均粒子径は、以下の方法で測定した。
〔弾性重合体の層の平均粒子径の測定〕
アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬し、該ゴム粒子中の弾性重合体の層を染色した。さらに、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行った。この写真から無作為に100個の染色された弾性重合体の層を選択し、その各々の径を算出した後、その数平均値を求めた。
〔弾性重合体の層の平均粒子径の測定〕
アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬し、該ゴム粒子中の弾性重合体の層を染色した。さらに、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行った。この写真から無作為に100個の染色された弾性重合体の層を選択し、その各々の径を算出した後、その数平均値を求めた。
紫外線吸収剤として、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](株式会社ADEKA製 LA31)を用いた。
実施例1〜10、比較例1〜5
ポリカーボネート樹脂を75mmφ二軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、バレルの途中からポンプで液状の可塑剤を送り込み、ポリカーボネート樹脂と可塑剤とを表1に示す割合で混合し、ポリカーボネート樹脂組成物をペレットとして得た(実施例1〜10、比較例1〜3)。このポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度TgAを表1に示した。
ポリカーボネート樹脂を75mmφ二軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、バレルの途中からポンプで液状の可塑剤を送り込み、ポリカーボネート樹脂と可塑剤とを表1に示す割合で混合し、ポリカーボネート樹脂組成物をペレットとして得た(実施例1〜10、比較例1〜3)。このポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度TgAを表1に示した。
また、メタクリル樹脂とアクリルゴム粒子(1)又は(2)と紫外線吸収剤を、表1に示す割合でスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混錬して、メタクリル樹脂組成物をペレットとして得た(実施例1〜10、比較例2〜5)。このメタクリル樹脂組成物のガラス転移温度TgBを表1に示した。
次いで、ポリカーボネート樹脂(比較例4、5)又はポリカーボネート樹脂組成物(実施例1〜10、比較例1〜3)を65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で、メタクリル樹脂(比較例1)又はメタクリル樹脂組成物(実施例1〜10、比較例2〜5)を45mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で、それぞれ溶融させ、フィードブロック法にて溶融積層一体化させ、設定温度265℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして3層構成の多層フィルムを製造し、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
〔柔軟性試験〕
JIS K5600−5−1:1999に従って、フィルムの耐屈曲性を評価し、試験片が破断せず、柔軟性が良好であるものを○、試験片が破断し、柔軟性に欠けるものを×とした。
JIS K5600−5−1:1999に従って、フィルムの耐屈曲性を評価し、試験片が破断せず、柔軟性が良好であるものを○、試験片が破断し、柔軟性に欠けるものを×とした。
〔耐白化性試験〕
JIS K5600−5−1:1999に従って、フィルムの耐屈曲性を評価し、試験片の屈曲部分が白化せずに透明であるものを○、試験片の屈曲部分が白化したものを×とした。
JIS K5600−5−1:1999に従って、フィルムの耐屈曲性を評価し、試験片の屈曲部分が白化せずに透明であるものを○、試験片の屈曲部分が白化したものを×とした。
〔鉛筆硬度試験〕
JIS K 5600−5−4に従って測定した。
JIS K 5600−5−4に従って測定した。
〔加熱引張り試験〕
フィルムから10×150mmの試験片を作成し、インストロン社のINSTRON5500Rを使用して、チャック間50mmにセットし、140℃において50mm/minの速度で、試験片が破断するまで延伸した。延伸中の最大応力(kgf)を表1に示した。なお、通常のインサート成形法において、真空成形や圧空成形などの予備成形時のフィルム表面の温度は140〜160℃であることから、140℃における延伸時の最大応力が小さいほど、成形が容易であると判断した。
フィルムから10×150mmの試験片を作成し、インストロン社のINSTRON5500Rを使用して、チャック間50mmにセットし、140℃において50mm/minの速度で、試験片が破断するまで延伸した。延伸中の最大応力(kgf)を表1に示した。なお、通常のインサート成形法において、真空成形や圧空成形などの予備成形時のフィルム表面の温度は140〜160℃であることから、140℃における延伸時の最大応力が小さいほど、成形が容易であると判断した。
〔耐光性試験〕
フィルムに対して、(株)東洋精機製作所製 ATLAS UVCONを用いて300時間紫外線照射による促進耐光試験を行った。試験前後のYI(黄色度)の差ΔYIをJIS K7105に従って測定した。
フィルムに対して、(株)東洋精機製作所製 ATLAS UVCONを用いて300時間紫外線照射による促進耐光試験を行った。試験前後のYI(黄色度)の差ΔYIをJIS K7105に従って測定した。
比較例6、7
メタクリル樹脂とアクリルゴム粒子(1)又は(2)とを、表1に示す割合でスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混錬して、メタクリル樹脂組成物をペレットとして得た。このメタクリル樹脂組成物のガラス転移温度TgBを表1に示した。次いで、メタクリル樹脂組成物を、65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、設定温度265℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして厚さ75μmの単層メタクリル樹脂フィルムを製造し、先と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
メタクリル樹脂とアクリルゴム粒子(1)又は(2)とを、表1に示す割合でスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混錬して、メタクリル樹脂組成物をペレットとして得た。このメタクリル樹脂組成物のガラス転移温度TgBを表1に示した。次いで、メタクリル樹脂組成物を、65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、設定温度265℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして厚さ75μmの単層メタクリル樹脂フィルムを製造し、先と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
比較例8
ポリカーボネート樹脂を75mmφ二軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、バレルの途中からポンプで液状の可塑剤(1)を送り込み、ポリカーボネート樹脂と可塑剤(1)とを表1に示す割合で混合し、ポリカーボネート樹脂組成物をペレットとして得た。このポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度TgAを表1に示した。次いで、ポリカーボネート樹脂組成物を、65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして厚さ75μmの単層ポリカーボネート樹脂フィルムを製造し、先と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
ポリカーボネート樹脂を75mmφ二軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、バレルの途中からポンプで液状の可塑剤(1)を送り込み、ポリカーボネート樹脂と可塑剤(1)とを表1に示す割合で混合し、ポリカーボネート樹脂組成物をペレットとして得た。このポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度TgAを表1に示した。次いで、ポリカーボネート樹脂組成物を、65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして厚さ75μmの単層ポリカーボネート樹脂フィルムを製造し、先と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
Claims (19)
- ポリカーボネート樹脂材料の層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂85〜100重量部、アクリルゴム粒子0〜15重量部、及び前記メタクリル樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部に対し紫外線吸収剤0.5〜10重量部を含有するメタクリル樹脂材料の層(B)が積層されてなる多層フィルムであって、前記ポリカーボネート樹脂材料のガラス転移点TgA(℃)と前記メタクリル樹脂材料のガラス転移点TgB(℃)とが式:TgA−TgB<25℃を満たすことを特徴とする多層フィルム。
- 層(B)の面積あたりの紫外線吸収剤の含有量が、0.15〜1.5g/m2である請求項1に記載の多層フィルム。
- 紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である請求項1又は2に記載の多層フィルム。
- ポリカーボネート樹脂材料が、ポリカーボネート樹脂70〜99重量部及び可塑剤1〜30重量部を含有するポリカーボネート樹脂組成物である請求項1〜3のいずれかに記載の多層フィルム。
- 可塑剤がリン酸エステル系の可塑剤である請求項4に記載の多層フィルム。
- メタクリル樹脂が、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜50重量%、及びこれら以外の単量体を0〜49重量%の割合で重合させてなる重合体である請求項1〜5のいずれかに記載の多層フィルム。
- アクリルゴム粒子が、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計100重量%を基準として、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量%、メタクリル酸アルキルを0〜49.9重量%、これら以外の単官能単量体を0〜49.9重量%、及び多官能単量体を0.1〜10重量%の割合で重合させてなる弾性重合体を含有する粒子である請求項1〜6のいずれかに記載の多層フィルム。
- アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体からなる層の外側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜50重量%、これら以外の単官能単量体を0〜50重量%、及び多官能単量体を0〜10重量%の割合で重合させてなる重合体からなる層を有する多層構造の粒子である請求項7に記載の多層フィルム。
- アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体からなる層の内側に、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単官能単量体、及び多官能単量体の合計100重量%を基準として、メタクリル酸アルキルを70〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜30重量%、これ以外の単官能単量体を0〜30重量%、及び多官能単量体を0〜10重量%の割合で重合させてなる重合体からなる層を有する多層構造の粒子である請求項7又は8に記載の多層フィルム。
- 全体の厚さが20〜200μmであり、層(A)の厚さが全体の厚さの10〜80%であり、かつ層(B)の厚さが10μm以上である請求項1〜9のいずれかに記載の多層フィルム。
- 層(A)及び/又は層(B)が有機系又は無機系の微粒子を含有する層である請求項1〜10のいずれかに記載の多層フィルム。
- ポリカーボネート樹脂材料とメタクリル樹脂材料とが共押出成形されてなる請求項1〜11のいずれかに記載の多層フィルム。
- 層(A)の一方の面に層(B)が積層されてなる請求項1〜12のいずれかに記載の多層フィルム。
- 層(A)の両方の面に層(B)が積層されてなる請求項1〜12のいずれかに記載の多層フィルム。
- 請求項13に記載の多層フィルムの層(A)側の面に、加飾が施されてなることを特徴とする加飾用フィルム。
- 請求項14に記載の多層フィルムの一方の面に、加飾が施されてなることを特徴とする加飾用フィルム。
- 請求項15又は16に記載の加飾用フィルムの加飾側の面に、熱可塑性樹脂シートが積層されてなることを特徴とする加飾用シート。
- 請求項15又は16に記載の加飾用フィルムの加飾側の面に、熱可塑性樹脂が射出成形されてなることを特徴とする加飾成形品。
- 請求項17に記載の加飾用シートの熱可塑性樹脂シート側の面に、熱可塑性樹脂が射出成形されてなることを特徴とする加飾成形品。
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