JP2010229517A - 電子部品用銅合金板 - Google Patents
電子部品用銅合金板 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2010229517A JP2010229517A JP2009079777A JP2009079777A JP2010229517A JP 2010229517 A JP2010229517 A JP 2010229517A JP 2009079777 A JP2009079777 A JP 2009079777A JP 2009079777 A JP2009079777 A JP 2009079777A JP 2010229517 A JP2010229517 A JP 2010229517A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- copper alloy
- mass
- strength
- conductivity
- aging treatment
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Lead Frames For Integrated Circuits (AREA)
- Non-Insulated Conductors (AREA)
Abstract
【課題】Hv≧170、引張強度≧550MPa、及び70%IACS以上を有し、例えばQFP、QFN等の半導体リードフレーム用に適する電子部品用銅合金板を提供する。
【解決手段】Co:0.1〜0.5質量%、P:0.03〜0.2質量%、Mg:0.01超〜0.15質量%を含み、残部Cu及び不可避不純物からなり、Co,Mg,Pの含有量が下記式(1)、(2)を満たし、CoとPを含む析出物の平均粒径が50nm以下、かつCoとPとMgを含む析出物の平均粒径が100nm以下である銅合金板。
1≦([Co]+[Mg])/[P]≦5・・・(1)
1≦[Co]/[Mg]≦35・・・(2)
ただし、(1),(2)式において、[Co],[Mg],[P]は各元素の質量%を意味する。
【選択図】なし
【解決手段】Co:0.1〜0.5質量%、P:0.03〜0.2質量%、Mg:0.01超〜0.15質量%を含み、残部Cu及び不可避不純物からなり、Co,Mg,Pの含有量が下記式(1)、(2)を満たし、CoとPを含む析出物の平均粒径が50nm以下、かつCoとPとMgを含む析出物の平均粒径が100nm以下である銅合金板。
1≦([Co]+[Mg])/[P]≦5・・・(1)
1≦[Co]/[Mg]≦35・・・(2)
ただし、(1),(2)式において、[Co],[Mg],[P]は各元素の質量%を意味する。
【選択図】なし
Description
本発明は、半導体リードフレーム用等に適する、高強度で高導電率を有する電子部品用銅合金板に関する。
QFP、QFN等の半導体リードフレーム用銅合金として、従来よりFeとPとを含有するCu−Fe−P系の銅合金が汎用されている。Cu−Fe−P系の銅合金としては、例えば、C19210合金(Cu−0.1質量%Fe−0.03質量%P)や、CDA194合金(Cu−2.2質量%Fe−0.03質量%P−0.15質量%Zn)等が例示される。また、特許文献1には、Fe:0.01〜1.0%、P:0.01〜0.4%、Mg:0.1〜1.0%を含有する銅合金が記載されている。これらの銅合金は、いずれも銅母相中にFe又はFe−P等の金属間化合物を析出させ、強度及び導電率を向上させたものである。
一方、半導体装置の小型化、軽量化などに伴い、これらのリードフレーム用銅合金にも、一段と高い強度(Hv≧170、引張強度≧550MPa)や導電率(70%IACS)が求められるようになってきた。
しかし、C19210合金はビッカース硬さがHv130程度と強度が低く、CDA194合金はHv160程度で強度が低くかつ導電率が低い。また、特許文献1に記載された銅合金は、これらのCu−Fe−P系の銅合金を改良したものだが、軟化開始温度が余り高くなく、最終冷延前に時効処理して強度と導電率を調整する際、導電率を向上させる時効処理温度を選択すると析出物が粗大化して軟化するため、強度と導電率の両方を高い水準で満足することが難しい。
しかし、C19210合金はビッカース硬さがHv130程度と強度が低く、CDA194合金はHv160程度で強度が低くかつ導電率が低い。また、特許文献1に記載された銅合金は、これらのCu−Fe−P系の銅合金を改良したものだが、軟化開始温度が余り高くなく、最終冷延前に時効処理して強度と導電率を調整する際、導電率を向上させる時効処理温度を選択すると析出物が粗大化して軟化するため、強度と導電率の両方を高い水準で満足することが難しい。
本発明は、強化元素としてPを含有する銅合金において、より高い強度及び導電率、具体的にはHv≧170、引張強度≧550MPa及び70%IACS以上を有し、例えばQFP、QFN等の半導体リードフレーム等に適する電子部品用銅合金板を提供することを目的とする。
本発明に係る電子部品用銅合金板は、Co:0.1〜0.5質量%、P:0.03〜0.2質量%、Mg:0.01超〜0.15質量%を含み、残部Cu及び不可避不純物からなり、Co,Mg,Pの含有量が下記式(1)、(2)を満たし、Co−P金属間化合物の平均粒径が5〜50nm、かつCo−P−Mg金属間化合物の平均粒径が5〜100nmであることを特徴とする。
1≦([Co]+[Mg])/[P]≦5・・・(1)
1≦[Co]/[Mg]≦35・・・(2)
ただし、(1),(2)式において、[Co],[Mg],[P]は各元素の質量%を意味する。
上記銅合金は、必要に応じてさらにSn:0.01〜0.3質量%とZn:0.01〜1質量%のいずれか1種又は2種、又は/及びCr,Mn,Zrのうち1種又は2種以上を合計で0.0005〜0.1質量%以下含有することができる。
1≦([Co]+[Mg])/[P]≦5・・・(1)
1≦[Co]/[Mg]≦35・・・(2)
ただし、(1),(2)式において、[Co],[Mg],[P]は各元素の質量%を意味する。
上記銅合金は、必要に応じてさらにSn:0.01〜0.3質量%とZn:0.01〜1質量%のいずれか1種又は2種、又は/及びCr,Mn,Zrのうち1種又は2種以上を合計で0.0005〜0.1質量%以下含有することができる。
本発明に係る銅合金は、軟化開始温度が比較的高く、最終冷延前に時効処理して強度と導電率を調整する際、導電率を向上させるため比較的高い時効処理温度又は比較的長い時効処理時間を選択しても、軟化を防止できるため、強度と導電率の両方を高い水準(Hv≧170、引張強度≧550MPa及び70%IACS以上)で満足し、例えばQFP、QFN等の半導体リードフレーム等に適する電子部品用銅合金板を得ることができる。
はじめに本発明に係る銅合金板の組成について説明する。
本発明に係る銅合金は、Co:0.1〜0.5質量%、P:0.03〜0.2質量%、Mg:0.01超〜0.15質量%を必須成分として含む。
CoはPとの金属間化合物を析出することで銅合金の強度を向上させる。しかし、Co含有量が0.1質量%未満であると析出物の数が不足して強度がでない。一方、Co含有量が0.5質量%を超えると、粗大な晶出物が出て熱間圧延時の割れの原因、薄板での曲げ加工性低下、Agめっきの析出以上、打抜きプレスの金型摩耗などの問題が生じやすく、また固溶分のCoにより導電率が低下する。従って、Co含有量は0.1〜0.5質量%とする。望ましくは0.12〜0.48質量%である。
本発明に係る銅合金は、Co:0.1〜0.5質量%、P:0.03〜0.2質量%、Mg:0.01超〜0.15質量%を必須成分として含む。
CoはPとの金属間化合物を析出することで銅合金の強度を向上させる。しかし、Co含有量が0.1質量%未満であると析出物の数が不足して強度がでない。一方、Co含有量が0.5質量%を超えると、粗大な晶出物が出て熱間圧延時の割れの原因、薄板での曲げ加工性低下、Agめっきの析出以上、打抜きプレスの金型摩耗などの問題が生じやすく、また固溶分のCoにより導電率が低下する。従って、Co含有量は0.1〜0.5質量%とする。望ましくは0.12〜0.48質量%である。
PはCoとの金属間化合物を析出することで銅合金の強度を向上させ、Co及びMgとの金属間化合物を析出することで銅合金の耐熱性を向上させる。しかし、P含有量が0.03質量%未満であると析出物の数が不足して強度及び耐熱性が向上しない。一方、P含有量が0.2質量を超えると熱間加工性が低下する。従って、P含有量は0.03〜0.2質量%とする。望ましくは0.05〜0.18質量%である。
MgはCoと共にP化物(金属間化合物)を析出することで、銅合金の強度と耐熱性を向上させる。すなわち、このP化物が析出することにより、銅合金の軟化開始温度が高温側にずれ、最終冷延前に時効処理して強度と導電率を調整する際、導電率を向上させるため比較的高い時効処理温度を選択しても、銅合金板の軟化を防止できるようになる。また、時効処理後の導電率が高いため、最終冷延の加工率を高めたり、他の添加元素を添加して高強度化を図る(いずれも導電率を低下させる作用がある)余地が大きい。しかし、0.01質量%以下であると耐熱性を向上させる(軟化開始温度を高温側にずらす)効果が十分でなく、0.2質量%を超えると固溶Mgが増加し、導電率が低下する。従って、Mg含有量は0.01超〜0.2質量%とする。望ましくは0.015〜0.18質量%である。
本発明に係る銅合金は、上記範囲のCo,Mg,P含有量において、その含有量比が前記(1),(2)式を満たす。
([Co]+[Mg])/[P]が1未満であると固溶Pが増加し、導電率が低下し、酸化膜密着性及びはんだ密着性も低下する。この値が5を超えると固溶Co,Mgの1種又は2種が増加し、強度と導電率が低下する。従って、([Co]+[Mg])/[P]は、前記(1)式のとおり1〜5の範囲とする。望ましくは1.1〜4.9の範囲である。
([Co]+[Mg])/[P]が1未満であると固溶Pが増加し、導電率が低下し、酸化膜密着性及びはんだ密着性も低下する。この値が5を超えると固溶Co,Mgの1種又は2種が増加し、強度と導電率が低下する。従って、([Co]+[Mg])/[P]は、前記(1)式のとおり1〜5の範囲とする。望ましくは1.1〜4.9の範囲である。
一方、[Co]/[Mg]が1未満の場合、Mgが過剰で固溶Mgが増加して導電率が低下し、35を超える場合、Mgが過少でCo−Mg−P金属間化合物の析出が減少し、銅合金の軟化開始温度が向上しない。銅合金の軟化開始温度が低いと、銅合金板において高い強度と導電率を両立させることができない。すなわち、時効処理で導電率を向上させようとすると銅合金板が軟化し、続いて冷間圧延しても強度が十分向上せず、時効処理で強度を向上させようとすると低い温度を選択せざるを得ず、導電率が向上しない。従って、[Co]/[Mg]は1〜35の範囲とする。望ましくは1.1〜30の範囲である。
本発明に係る銅合金は、必要に応じてさらにSn:0.01〜0.3質量%とZn:0.01〜1質量%のいずれか1種又は2種、又は/及びCr,Mn,Zrのうち1種又は2種以上を合計で0.0005〜0.1質量%以下含有する。
Snは銅合金中に固溶することで、銅合金の強度を向上させる作用があり、必要に応じて添加する。しかし、Sn含有量が0.01質量%未満であると固溶Snが少ないため添加の効果が少なく、0.3質量%を超えると固溶Snが増加し、導電率が低下する。従って、銅合金がSnを含む場合、その含有量は0.01〜0.3質量%とする。望ましくは0.015〜0.25質量%の範囲である。
Snは銅合金中に固溶することで、銅合金の強度を向上させる作用があり、必要に応じて添加する。しかし、Sn含有量が0.01質量%未満であると固溶Snが少ないため添加の効果が少なく、0.3質量%を超えると固溶Snが増加し、導電率が低下する。従って、銅合金がSnを含む場合、その含有量は0.01〜0.3質量%とする。望ましくは0.015〜0.25質量%の範囲である。
Znは、リードフレーム等に要求されるはんだ耐熱剥離性及び酸化膜密着性を改善する作用を有する。しかし、Zn含有量が0.01質量%以下ではこれらの改善効果が小さく、逆に1質量%を超えると固溶Znの増加により導電率が低下する。従って、銅合金がZnを含む場合、その含有量は0.01〜1質量%とする。望ましくは0.05〜0.8質量%の範囲である。
Cr,Mn,Zrは、鋳塊の粒界を強化する作用を有し、銅合金の熱間加工性を改善する。しかし、これらの元素の1種又は2種以上が0.0005質量%未満では添加効果が少なく、0.1質量%を超えると鋳造時に酸化物が形成されやすくなり,鋳塊の健全性に悪影響を及ぼす。従って、銅合金がCr,Mn,Zrの1種又は2種以上を含む場合、その含有量は合計で0.0005〜0.1%とする。望ましくは0.0007〜0.08質量%の範囲である。
本発明に係る銅合金板において、Co−P金属間化合物の平均粒径は50nm以下、かつCo−P−Mg金属間化合物の平均粒径は100nm以下とされる。
CoとPを含む析出物は母材中に微細に析出して銅合金の強度及び導電率を向上させる。しかし、平均粒径が50nmを超えると、すでに過時効の状態であり、導電率は維持されるが強度の向上に寄与しないものとなり、結果的に銅合金板の強度は低下する。一方、粒径が5nm未満では耐熱性が得られない。従って、CoとPを含む析出物の平均粒径は5〜50nmの範囲とする。望ましくは5〜40nmの範囲である。
また、Co−Mg−P金属間化合物は母在中に微細に析出して銅合金の耐熱性を向上させ、より高温域での時効処理が可能となる。しかし、平均粒径が100nmを超えると、すでに過時効の状態であり、導電率は維持されるが銅合金は耐熱性を保てず軟化しており、結果的に強度と導電率を同時に満足する銅合金板を製造することができない。一方、粒径が5nm未満では耐熱性が得られない。従って、CoとPとMgを含む析出物の平均粒径は5〜100nmの範囲とする。望ましくは10〜80nmの範囲である。
CoとPを含む析出物は母材中に微細に析出して銅合金の強度及び導電率を向上させる。しかし、平均粒径が50nmを超えると、すでに過時効の状態であり、導電率は維持されるが強度の向上に寄与しないものとなり、結果的に銅合金板の強度は低下する。一方、粒径が5nm未満では耐熱性が得られない。従って、CoとPを含む析出物の平均粒径は5〜50nmの範囲とする。望ましくは5〜40nmの範囲である。
また、Co−Mg−P金属間化合物は母在中に微細に析出して銅合金の耐熱性を向上させ、より高温域での時効処理が可能となる。しかし、平均粒径が100nmを超えると、すでに過時効の状態であり、導電率は維持されるが銅合金は耐熱性を保てず軟化しており、結果的に強度と導電率を同時に満足する銅合金板を製造することができない。一方、粒径が5nm未満では耐熱性が得られない。従って、CoとPとMgを含む析出物の平均粒径は5〜100nmの範囲とする。望ましくは10〜80nmの範囲である。
本発明に係る銅合金板において、従来Pと共に添加されていたFeは、不純物として含まれる場合でも、軟化開始温度の向上を妨げる作用があるため、0.1質量%未満、望ましくは0.01質量%未満に制限することが望ましい。
その他、本発明に係る銅合金にMgを添加することに伴い、溶解、熱延及び熱処理の過程でMg−P,Mg−O,Mg−P−Oなどの化合物が生成し、これが銅合金板の母材中に存在することがある。しかし、これらの化合物のサイズは0.1〜5μm程度で、強度/導電率特性に寄与せず、逆に曲げ加工性、スタンピング性及びエッチング加工性を低下させることから、極力少なくすることが望ましい。これは下記製造方法によって達成される。
その他、本発明に係る銅合金にMgを添加することに伴い、溶解、熱延及び熱処理の過程でMg−P,Mg−O,Mg−P−Oなどの化合物が生成し、これが銅合金板の母材中に存在することがある。しかし、これらの化合物のサイズは0.1〜5μm程度で、強度/導電率特性に寄与せず、逆に曲げ加工性、スタンピング性及びエッチング加工性を低下させることから、極力少なくすることが望ましい。これは下記製造方法によって達成される。
本発明に係る銅合金板は、銅合金を溶解して鋳造し、鋳塊を均質化処理し、熱間圧延及び冷間圧延した後、時効処理と冷間圧延を1回以上行い、必要に応じてさらに低温焼鈍を行って製造することができる。
溶解鋳造は、Mgを酸化させないように、木炭やフラックスで表面を被覆し、又はカバリングして非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。均質化処理及び熱間圧延開始温度は銅合金がMg,Pを含むため850〜950℃とし、Mg−P,Mg−Co−P,Co−Pなどの化合物を析出させないように、熱間圧延終了温度は650℃以上、望ましくは700℃以上とし、熱間圧延後急冷する。
溶解鋳造は、Mgを酸化させないように、木炭やフラックスで表面を被覆し、又はカバリングして非酸化性雰囲気下で行うことが望ましい。均質化処理及び熱間圧延開始温度は銅合金がMg,Pを含むため850〜950℃とし、Mg−P,Mg−Co−P,Co−Pなどの化合物を析出させないように、熱間圧延終了温度は650℃以上、望ましくは700℃以上とし、熱間圧延後急冷する。
時効処理はCo−P金属間化合物及びCo−P−Mg金属間化合物を析出させ、強度及び導電率を向上させるもので、350〜600℃×5min〜10hrの範囲内で、70%IACS以上の導電率が得られ、かつCo−P金属間化合物とCo−P−Mg金属間化合物の平均粒径がそれぞれ50nm,100nmを超えない条件を選択して行うとよい。上記範囲内において、処理温度が高く時間が長いほど導電率が向上し、かつ金属間化合物の平均粒径が増加する。時効処理を複数回行う場合は上記範囲内で異なる条件を選択することができる。なお、時効処理により銅合金の導電率は10%IACS程度向上する。
時効処理後の冷間圧延の加工率は、目標とする強度及び導電率に応じて適宜選択すればよく、最終冷間圧延はおおよそ20〜80%の範囲内で選択すればよい。
最終圧延後の低温焼鈍は、300〜400℃×5sec〜60minの範囲内で行えばよい。
時効処理後の冷間圧延の加工率は、目標とする強度及び導電率に応じて適宜選択すればよく、最終冷間圧延はおおよそ20〜80%の範囲内で選択すればよい。
最終圧延後の低温焼鈍は、300〜400℃×5sec〜60minの範囲内で行えばよい。
(実施例1)
Cu−0.38Co−0.1P、Cu−0.5Co−0.13P、Cu−0.57Co−0.15P、Cu−0.31Co−0.1P−0.05Mgの各銅合金板(数値はいずれも質量%を表す)について、825℃×30secの再結晶を伴う溶体化処理を行い、続いて40%の冷間圧延を行い、425℃、450℃、475℃、500℃の各温度において2時間の加熱処理(時効処理)を行った後、各銅合金板のビッカース硬さ(MHv)と導電率(%IACS)を測定した(板厚0.3mm)。ビッカース硬さと導電率の測定方法は後述する実施例2と同様に行った。その結果を表1に示す。
Cu−0.38Co−0.1P、Cu−0.5Co−0.13P、Cu−0.57Co−0.15P、Cu−0.31Co−0.1P−0.05Mgの各銅合金板(数値はいずれも質量%を表す)について、825℃×30secの再結晶を伴う溶体化処理を行い、続いて40%の冷間圧延を行い、425℃、450℃、475℃、500℃の各温度において2時間の加熱処理(時効処理)を行った後、各銅合金板のビッカース硬さ(MHv)と導電率(%IACS)を測定した(板厚0.3mm)。ビッカース硬さと導電率の測定方法は後述する実施例2と同様に行った。その結果を表1に示す。
時効処理温度425℃では、上記4合金のビッカース硬さの差はごくわずかであったが、Mgを含まない3合金のビッカース硬さは、時効処理温度450℃で低下し始め、475℃以上で急低下し、これに対しMgを含む合金のビッカース硬さは時効処理温度が500℃までほとんど変化がなかった。一方、上記4合金の導電率は、時効処理温度が上昇するにつれて同じように向上した。
Mgを含まない3合金の時効処理温度425℃でのビッカース硬さと、Mgを含む合金の時効処理温度500℃でのビッカース硬さはほぼ同等であり、導電率は後者が10%IACS程度高かった。また、Mgを含まない3合金の時効処理温度450℃での導電率と、Mgを含む合金の時効処理温度500℃での導電率を比較しても、後者が5%IACS程度高かった。
このように、Cu−Co−P系合金にMgを添加することにより、銅合金の強度を低下させることなく、高い導電率を得ることができることが理解される。
Mgを含まない3合金の時効処理温度425℃でのビッカース硬さと、Mgを含む合金の時効処理温度500℃でのビッカース硬さはほぼ同等であり、導電率は後者が10%IACS程度高かった。また、Mgを含まない3合金の時効処理温度450℃での導電率と、Mgを含む合金の時効処理温度500℃での導電率を比較しても、後者が5%IACS程度高かった。
このように、Cu−Co−P系合金にMgを添加することにより、銅合金の強度を低下させることなく、高い導電率を得ることができることが理解される。
(実施例2)
表2,3に示すNo.1〜21の組成の銅合金を、小型電気炉で大気中にて木炭被覆下で溶解し、厚さ50mm、幅80mm、長さ200mmの鋳塊を溶製した。この鋳塊の表裏面を各2mm面削した後、表4に示す条件で均質化処理を行い、その温度で熱間圧延を開始し、厚さ20mmtの板材とした後、700℃以上の温度から急冷し、さらに板材の表裏面をそれぞれ約2mm面削した。なお、No.12は熱間圧延割れを生じたため、それ以降の工程を取りやめた。
表2,3に示すNo.1〜21の組成の銅合金を、小型電気炉で大気中にて木炭被覆下で溶解し、厚さ50mm、幅80mm、長さ200mmの鋳塊を溶製した。この鋳塊の表裏面を各2mm面削した後、表4に示す条件で均質化処理を行い、その温度で熱間圧延を開始し、厚さ20mmtの板材とした後、700℃以上の温度から急冷し、さらに板材の表裏面をそれぞれ約2mm面削した。なお、No.12は熱間圧延割れを生じたため、それ以降の工程を取りやめた。
これらの板材について、冷間圧延を行った後、時効処理と冷間圧延を1回以上繰り返し、板厚を0.15mmtとした。時効処理条件は350〜600℃×1〜5hrの範囲内とし、冷間圧延はNo.1〜11,13〜21の全てで同じ加工率で行った。なお、最終の時効処理条件は表4に示す条件で行い、時効処理と冷間圧延を繰り返す場合は最終時効処理以外の時効処理はいずれも最終時効処理より高温で行った。また最終冷間圧延の加工率は50%とした。
No.1〜11,13〜21について、最終時効処理後の板材から試料を採取して、析出物の種類とサイズ(平均粒径)を測定し、最終冷間圧延後の板材から試料を採取して、引張強さ、ビッカース硬さ(Hv)及び導電率、酸化膜密着性及びはんだ密着性の各特性の測定試験に供した。測定結果を同じく表1,2に示す。なお、各試験の手順等は下記のとおりである。
<析出物の種類とサイズ>
最終時効処理後の板材から観察サンプルを採取し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて10〜20万倍で3視野観察し、TEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により析出物の含有元素を同定し、析出物A(Co−P金属間化合物粒子)と析出物B(Co−P−Mg金属間化合物粒子)について、長径5nm以上のものをカウントし、各々の平均粒径を求めた。最終時効処理後の銅合金板の析出物の種類とサイズは、最終冷間圧延によって実質的に変化しない。
最終時効処理後の板材から観察サンプルを採取し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて10〜20万倍で3視野観察し、TEMのエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により析出物の含有元素を同定し、析出物A(Co−P金属間化合物粒子)と析出物B(Co−P−Mg金属間化合物粒子)について、長径5nm以上のものをカウントし、各々の平均粒径を求めた。最終時効処理後の銅合金板の析出物の種類とサイズは、最終冷間圧延によって実質的に変化しない。
<引張強さ>
各板材から長手方向が圧延方向になるようにJIS5号試験片を採取し、引張試験を行って引張強度を測定した。引張強度は550MPa以上を合格と評価した。
<硬さ測定>
JISZ2244の規定に基づき、荷重4.9Nにてビッカース硬さ試験を行って測定した。ビッカース硬さはMHv170以上を合格と評価した。
<導電率測定>
導電率はJISH0505に基づいて測定した。なお、導電率は70%IACS以上を合格と評価した。
各板材から長手方向が圧延方向になるようにJIS5号試験片を採取し、引張試験を行って引張強度を測定した。引張強度は550MPa以上を合格と評価した。
<硬さ測定>
JISZ2244の規定に基づき、荷重4.9Nにてビッカース硬さ試験を行って測定した。ビッカース硬さはMHv170以上を合格と評価した。
<導電率測定>
導電率はJISH0505に基づいて測定した。なお、導電率は70%IACS以上を合格と評価した。
<酸化膜剥離試験>
表面清浄化した各試験片を用い、大気中にて350℃×5minのホットプレート加熱を施した。その後、酸化膜を生成させた試験片に市販の粘着テープを貼り、一気にテープを試験片から剥がした。剥がしたテープを目視にて観察し、酸化物の存在の有無で酸化膜剥離性を評価した。酸化膜の剥離が認められないものを合格(○)、認められるものを不合格(×)と評価した。
表面清浄化した各試験片を用い、大気中にて350℃×5minのホットプレート加熱を施した。その後、酸化膜を生成させた試験片に市販の粘着テープを貼り、一気にテープを試験片から剥がした。剥がしたテープを目視にて観察し、酸化物の存在の有無で酸化膜剥離性を評価した。酸化膜の剥離が認められないものを合格(○)、認められるものを不合格(×)と評価した。
<はんだ剥離試験>
はんだ付けは,市販のSn−3質量%Ag−0.5質量%Cuはんだを,260℃に保持し溶融させ、表面清浄化した10mm幅×35mm長さの各試験片を浸漬速度25mm/sec、浸漬深さ12mm、浸漬時間5secにて溶融はんだ中に浸漬させた。はんだ付け装置として、ソルダーチェッカー(SAT5100型)を用いた。フラックスには活性フラックスを使用した。はんだ付けした試験片に対し、175℃で72hrまでの加熱試験を大気中で行った。さらに、これら加熱試験片に対し、曲げ戻し試験を常温にて行った。曲げ戻し部に市販の粘着テープを貼り、一気にテープを試験片から剥がした。剥がしたテープを目視にて観察し、はんだの剥離が認められないものを合格(○)、認められるものを不合格(×)と評価した。
はんだ付けは,市販のSn−3質量%Ag−0.5質量%Cuはんだを,260℃に保持し溶融させ、表面清浄化した10mm幅×35mm長さの各試験片を浸漬速度25mm/sec、浸漬深さ12mm、浸漬時間5secにて溶融はんだ中に浸漬させた。はんだ付け装置として、ソルダーチェッカー(SAT5100型)を用いた。フラックスには活性フラックスを使用した。はんだ付けした試験片に対し、175℃で72hrまでの加熱試験を大気中で行った。さらに、これら加熱試験片に対し、曲げ戻し試験を常温にて行った。曲げ戻し部に市販の粘着テープを貼り、一気にテープを試験片から剥がした。剥がしたテープを目視にて観察し、はんだの剥離が認められないものを合格(○)、認められるものを不合格(×)と評価した。
表1,2に示すように、本発明に規定する組成及び組成比率を有し、析出物の種類及びサイズも本発明の規定範囲内のNo.1,13〜18は、強度(引張強さ、ビッカース硬さ)及び導電率が高く、酸化膜及びはんだの密着性も良好であった。
一方、析出物サイズが規定範囲外のNo.2、([Co]+[Mg])/[P]が大きいNo.6、Mg含有量が少なく[Co]/[Mg]が大きいNo.7、Co含有量が少ないNo.9、Mg及びP含有量が少ないNo.11は、いずれも強度(引張強さ、ビッカース硬さ)が低い。No.6は、固溶CoとMgの量が多く、導電率は70%を下回る。No.7は、最終の時効処理を除きNo.1と同条件で加工熱処理を行ったが、Mg含有量が少なくCo−P−Mg金属間化合物が析出しないため、耐熱性が十分でなく、時効処理後の強度が低下し、その後の圧延によっても強度が上昇しなかったものである。No.9はCoが、No.11はMg及びPの含有量が少ないため、Co−P金属間化合物及びCo−P−Mg金属間化合物の析出量が少なく、強度が上昇しなかったものである。
また、([Co]+[Mg])/[P]が小さいNo.3、Mg含有量が少なく[Co]/[Mg]が大きいNo.4、[Co]/[Mg]が小さいNo.5、Mg含有量が多いNo.8、Co含有量が多いNo.10、Fe,Sn,Zn含有量が多いNo.19〜21は、いずれも導電率が低い。なお、No.3は、固溶Pの量が多く、導電率が上昇していない。No.4は、Co−P−Mg金属間化合物の析出量が少ないため、軟化による強度低下を避けるため低温で時効処理し、そのため強度は得られたが導電率が上昇していない。No.5はMgの固溶量が多く、導電率が上昇していない。No.19はFe含有量が多く、軟化による強度低下を避けるため低温で時効処理し、そのため導電率が上昇しなかった。
Claims (4)
- Co:0.1〜0.5質量%、P:0.03〜0.2質量%、Mg:0.01超〜0.15質量%を含み、残部Cu及び不可避不純物からなり、Co,Mg,Pの含有量が下記式(1)、(2)を満たし、Co−P金属間化合物の平均粒径が5〜50nm、かつCo−P−Mg金属間化合物の平均粒径が5〜100nmであることを特徴とする電子部品用銅合金板。
1≦([Co]+[Mg])/[P]≦5・・・(1)
1≦[Co]/[Mg]≦35・・・(2)
ただし、(1),(2)式において、[Co],[Mg],[P]は各元素の質量%を意味する。 - さらにSn:0.01〜0.3質量%を含むことを特徴とする請求項1に記載された電子部品用銅合金板。
- さらにZn:0.01〜1質量%を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載された電子部品用銅合金板。
- さらに、Cr,Mn,Zrのうち1種又は2種以上を合計で0.0005〜0.1質量%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された電子部品用銅合金板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009079777A JP2010229517A (ja) | 2009-03-27 | 2009-03-27 | 電子部品用銅合金板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009079777A JP2010229517A (ja) | 2009-03-27 | 2009-03-27 | 電子部品用銅合金板 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010229517A true JP2010229517A (ja) | 2010-10-14 |
Family
ID=43045599
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009079777A Pending JP2010229517A (ja) | 2009-03-27 | 2009-03-27 | 電子部品用銅合金板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2010229517A (ja) |
-
2009
- 2009-03-27 JP JP2009079777A patent/JP2010229517A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3550233B2 (ja) | 高強度高導電性銅基合金の製造法 | |
JP3962751B2 (ja) | 曲げ加工性を備えた電気電子部品用銅合金板 | |
JP4439447B2 (ja) | 異形断面銅合金板の製造方法 | |
JP2008196042A (ja) | 強度と成形性に優れる電気電子部品用銅合金板 | |
JP2008075172A (ja) | Cu−Ni−Si系合金 | |
JPH0741887A (ja) | 電気、電子部品用銅合金及びその製造方法 | |
JP6155405B2 (ja) | 銅合金材料およびその製造方法 | |
TWI429768B (zh) | Cu-Co-Si based copper alloy for electronic materials and method for producing the same | |
JP2007126739A (ja) | 電子材料用銅合金 | |
JP3797736B2 (ja) | 剪断加工性に優れる高強度銅合金 | |
JP4567906B2 (ja) | 電子・電気部品用銅合金板または条およびその製造方法 | |
KR101688300B1 (ko) | 강도, 내열성 및 굽힘 가공성이 우수한 Fe-P계 구리 합금판 | |
TWI537401B (zh) | Strength and heat resistance and flexographic workability of the Fe-P copper alloy plate | |
JP5291494B2 (ja) | 高強度高耐熱性銅合金板 | |
JP3049137B2 (ja) | 曲げ加工性が優れた高力銅合金及びその製造方法 | |
JP2008024995A (ja) | 耐熱性に優れた電気電子部品用銅合金板 | |
JP5981866B2 (ja) | 銅合金 | |
JP3459520B2 (ja) | リードフレーム用銅合金 | |
JP2000144284A (ja) | 耐熱性に優れる高強度・高導電性Cu−Fe系合金板 | |
JP5748945B2 (ja) | 銅合金材の製造方法とそれにより得られる銅合金材 | |
JPH11323463A (ja) | 電気・電子部品用銅合金 | |
JP5638357B2 (ja) | 電気・電子部品用銅合金およびその製造方法 | |
JP3296709B2 (ja) | 電子機器用薄板銅合金およびその製造方法 | |
JP2007100136A (ja) | 均一めっき性に優れたリードフレーム用銅合金 | |
JP2011190469A (ja) | 銅合金材、及びその製造方法 |