JP2010229475A - 高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱間鍛造工程において組織を適切に制御することにより、部分的に強化した場合にあっても、その強化部分の靭性にも優れる熱間鍛造品の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.30〜1.0%、Si:0.01〜2.0%およびMn:0.1〜3.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100℃以上に加熱して、1000℃以上で少なくとも1回の鍛造加工を行った後、部分的に10℃/s以上の冷却速度でマルテンサイト変態温度以下まで冷却した後、500℃〜AC1点の温度範囲で相当ひずみ0.5以上の鍛造加工を行い、室温まで冷却することによって、部分的に結晶粒径1μm以下の微細フェライトと球状セメンタイトとの混合組織とする。
【選択図】図2
【解決手段】質量%で、C:0.30〜1.0%、Si:0.01〜2.0%およびMn:0.1〜3.0%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100℃以上に加熱して、1000℃以上で少なくとも1回の鍛造加工を行った後、部分的に10℃/s以上の冷却速度でマルテンサイト変態温度以下まで冷却した後、500℃〜AC1点の温度範囲で相当ひずみ0.5以上の鍛造加工を行い、室温まで冷却することによって、部分的に結晶粒径1μm以下の微細フェライトと球状セメンタイトとの混合組織とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、自動車の足回り部品やエンジン部品に用いられる鋼製品を典型例とする高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法に関する。
自動車の足回り部品やエンジン部品に用いられる鋼製品は、熱間鍛造を行い、その後切削加工による仕上げ加工を経て製造するのが一般的である。近年、かかる用途の製品に対して、その供給先である自動車の軽量化を所期した小型化や薄肉化の実現に向けて、強度、特に降伏強さを高めることが求められている。例えば、特許文献1には、コンロッドの製造方法において、熱間鍛造工程の後に強度が必要とされるコラム部分にのみ空気や冷却剤を吹き付けて強化し、被削性が要求される部位は強化しない部品の製造技術が開示されている。
しかしながら、このような手法は、靭性が必要のないコンロッドのコラム部のような部位を有する特殊な部品には有効であるが、強化部分の靭性は大幅に低下するため、一般的な熱間鍛造部品への適用は困難であった。
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み開発されたものであり、熱間鍛造工程において組織を適切に制御することにより、部分的に強化した場合にあっても、その強化部分の靭性にも優れる熱間鍛造品の製造方法を提供することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、熱間鍛造プロセスにおいて、強度並びに靭性を両立可能な熱間鍛造部品を提供するための方途について鋭意検討を行った。ここに、種々ある鋼組織の中で、微細フェライト組織は、強度と靭性を両立可能であり、特にフェライト粒径が1μm以下の場合に優れた強度-靭性バランスを示すことが知られている。そこで、熱間鍛造プロセスにおいて、平均粒径1μm以下の微細フェライト組織を造り込む方法について検討を行った。なお、微細組織を造り込む部位は、部品機能として強度・靭性が要求される部位のみを対象として検討を行った。以下に、その検討結果を詳しく述べる。
表1に示す組成の供試鋼を真空溶解により50kg鋼塊として溶製し、直径30mmの棒鋼に鍛伸加工したのち、直径8mm、高さ12mmの円柱状試験片を切り出した。供試鋼は、熱間鍛造工程で一般的に用いられているJIS G 4051に規定されている機械構造用炭素鋼S48Cに相当する材料である。この試験片を用いて熱間加工シミュレータで組織形成に及ぼす前組織の影響について調査した。すなわち、試験片を1100℃に一旦加熱し、1050℃で相当ひずみ0.2の熱間加工(高さ方向に圧縮加工)を行ったのち、次に示す(イ)〜(ハ)のパターンの方法で鍛造加工前組織を造り込み、温間域(400〜750℃)に再加熱し、相当ひずみ0.3〜0.9の仕上げ加工(高さ方向に圧縮加工)を行った後、ただちに水冷した。
(イ)1050℃で圧下率20%の熱間加工後、1℃/sで400℃まで冷却し、加工前組織をフェライト・パーライトとした。
(ロ)1050℃で圧下率20%の熱間加工後、5℃/sでベイナイト変態点(Bs点)とマルテンサイト変態点(Ms点)の間の温度域まで冷却し、加工前組織をベイナイトとした。
(ハ)1050℃で圧下率20%の熱間加工後、20℃/sでMs点以下まで冷却し、加工前組織をマルテンサイトとした。
(ロ)1050℃で圧下率20%の熱間加工後、5℃/sでベイナイト変態点(Bs点)とマルテンサイト変態点(Ms点)の間の温度域まで冷却し、加工前組織をベイナイトとした。
(ハ)1050℃で圧下率20%の熱間加工後、20℃/sでMs点以下まで冷却し、加工前組織をマルテンサイトとした。
得られた試験片について、圧縮試験片中央部を圧縮方向に平行となるように切断研磨し、3%ナイタールで腐食し、走査型電子顕微鏡にて組織を観察し、組織調査を行った。そして、微細フェライト組織が得られた場合を○、組織の一部で微細フェライトの形成が観察されたものの、それ以外の組織はもとの組織が圧縮方向と垂直な方向に伸長した組織である場合を△、単にもとの組織が圧縮変形を受けて、圧縮方向と垂直な方向に伸長した場合を×として評価した。その結果を表2に示す。表2から明らかなように、圧縮加工後に微細フェライト組織が得られたのは加工前組織がマルテンサイトの場合のみであり、微細フェライトが得られた温度域は500℃からAC1点の間の温度域であった。いずれの場合においても、組織中にマルテンサイトが観察された場合は、評価の対象外とした。
マルテンサイトの温間域加工によって得られた微細フェライト組織には微細な球状セメンタイトが多数分散していたため、これら炭化物は、フェライト粒成長を抑制する効果が期待できる。そこで、微細フェライト粒径に及ぼすC量の影響について調査した。
表3に示す組成の供試鋼を用いて、表1の供試鋼と同じ要領で直径8mm、高さ12mmの圧縮試験片を作製し、熱間加工シミュレータを用いてその組織形成挙動を調査した。熱間加工試験では、供試鋼を一旦1100℃に加熱したのち、1050℃で圧下率20%の熱間加工を行い、加工後ただちに20℃/sでMs点以下まで冷却し、その後650℃まで再加熱して、相当ひずみ0.5の圧縮加工を行った。圧縮加工後、水冷、5℃/s、1℃/sの3水準の冷却速度で冷却した。前述と同様の組織観察を行い、平均粒径1μm以下の微細フェライト粒が得られた場合を○、平均粒系1μmを超える場合を×として評価した。その結果を表4に示す。
表3に示す組成の供試鋼を用いて、表1の供試鋼と同じ要領で直径8mm、高さ12mmの圧縮試験片を作製し、熱間加工シミュレータを用いてその組織形成挙動を調査した。熱間加工試験では、供試鋼を一旦1100℃に加熱したのち、1050℃で圧下率20%の熱間加工を行い、加工後ただちに20℃/sでMs点以下まで冷却し、その後650℃まで再加熱して、相当ひずみ0.5の圧縮加工を行った。圧縮加工後、水冷、5℃/s、1℃/sの3水準の冷却速度で冷却した。前述と同様の組織観察を行い、平均粒径1μm以下の微細フェライト粒が得られた場合を○、平均粒系1μmを超える場合を×として評価した。その結果を表4に示す。
表4から、いずれの冷却速度においても1μm以下の微細フェライト粒が得られたのは、C含有量が0.3mass%以上の場合であった。
次に、微細フェライト組織の衝撃値と、被削性について調査した。表3に示す成分組成を有する、直径30mmの丸鋼棒について、その対向する側面を平滑面となるように切削加工し、1050℃に加熱したのち、60℃の油焼入を行い組織をマルテンサイトとした。その後、高周波加熱で650℃まで加熱し、図1に示すように圧下率50%(相当ひずみ0.7)の鍛造加工を行い、そのまま室温まで空冷した。図1に示すように鍛造素材の中央部から、2mm−Vノッチ衝撃試験片を切り出し、20℃でシャルピー衝撃試験を行った。衝撃値が、30J/cm2 を超える場合を○とし、30J/cm2に満たない場合を×で評価した。また、鍛造素材の中央部からは、組織観察用のサンプルを切り出し、圧縮方向に平行となるように切断研磨し、前述と同様の組織観察を行い、平均粒径1μm以下の微細フェライト粒が得られた場合を○、平均粒径1μmを超える場合を×として評価した。その結果を表5に示す。
表5に示すようにC含有量が0.3%に満たない場合、フェライト粒径増加による衝撃値の低下が起った。また、C含有量が1%を超える場合、セメンタイトが組織中に過度に分散することによる衝撃値の低下が見られた。
以上の検討結果から、衝撃値が高く、かつ平均粒径1μm以下の微細フェライト組織を得るためにはC含有量が0.30〜1.0質量%の範囲である必要があることがわかった。このように鋼成分と加工プロセスの最適化により、部分的な組織制御が可能であることがわかった。
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、すなわち、本発明の要旨構成は次の通りである。
(1)質量%で、
C:0.30〜1.0%、
Si:0.01〜2.0%および
Mn:0.1〜3.0%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100℃以上に加熱して、1000℃以上で少なくとも1回の鍛造加工を行った後、部分的に10℃/s以上の冷却速度でマルテンサイト変態温度以下まで冷却した後、500℃〜AC1点の温度範囲で相当ひずみ0.5以上の鍛造加工を行い、室温まで冷却することによって、部分的に結晶粒径1μm以下の微細フェライトと球状セメンタイトとの混合組織とすることを特徴とする高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法。
(1)質量%で、
C:0.30〜1.0%、
Si:0.01〜2.0%および
Mn:0.1〜3.0%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100℃以上に加熱して、1000℃以上で少なくとも1回の鍛造加工を行った後、部分的に10℃/s以上の冷却速度でマルテンサイト変態温度以下まで冷却した後、500℃〜AC1点の温度範囲で相当ひずみ0.5以上の鍛造加工を行い、室温まで冷却することによって、部分的に結晶粒径1μm以下の微細フェライトと球状セメンタイトとの混合組織とすることを特徴とする高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法。
(2)前記(1)において、前記鋼素材が、さらに、質量%で
P:0.05%以下、
S:0.05%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Al:0.05%以下、
Ti:0.2%以下、
Nb:0.2%以下、
V:0.2%以下および
B:0.005%以下
の1種または2種以上を含有する高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法。
P:0.05%以下、
S:0.05%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Al:0.05%以下、
Ti:0.2%以下、
Nb:0.2%以下、
V:0.2%以下および
B:0.005%以下
の1種または2種以上を含有する高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法。
本発明によれば、微細フェライトと球状セメンタイトとの混合組織を有する高強度化された部分を有し、かつ、この部分の靭性が高い熱間鍛造品を得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼素材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.30〜1.0%
Cは、微細フェライト組織中に分散する球状セメンタイト量を決定する重要な元素である。しかし、0.30%未満では、微細化が十分でなく結晶粒径が1μm以下とならず、1.0%を超えると球状セメンタイト量が増大するため靭性が低下する。したがって、0.30〜1.0%の範囲とした。
まず、本発明において、鋼素材の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.30〜1.0%
Cは、微細フェライト組織中に分散する球状セメンタイト量を決定する重要な元素である。しかし、0.30%未満では、微細化が十分でなく結晶粒径が1μm以下とならず、1.0%を超えると球状セメンタイト量が増大するため靭性が低下する。したがって、0.30〜1.0%の範囲とした。
Si:0.01〜2.0%
Siは、脱酸剤として作用する元素である。0.01%未満では脱酸効果が不足し、2.0%を超えて含有すると硬度が高くなりすぎて靭性を低下させるため、0.01〜2.0%の範囲とした。
Siは、脱酸剤として作用する元素である。0.01%未満では脱酸効果が不足し、2.0%を超えて含有すると硬度が高くなりすぎて靭性を低下させるため、0.01〜2.0%の範囲とした。
Mn:0.1〜3.0%
Mnは、固溶強化元素としてフェライトを強化するのに有効な元素である。その効果を得るためには少なくとも0.1%以上必要であるが、3.0%を超えて含有すると靭性が低下するため、0.1〜3.0%の範囲とした。
Mnは、固溶強化元素としてフェライトを強化するのに有効な元素である。その効果を得るためには少なくとも0.1%以上必要であるが、3.0%を超えて含有すると靭性が低下するため、0.1〜3.0%の範囲とした。
以上、説明した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるものが本発明の基本成分組成である。本発明の鋼素材としては、さらに必要に応じて、P、S、Cr、Mo、Cu、Ni、Al、Ti、Nb、V、およびBのうちの1種または2種以上を含有してもよい。その場合、それぞれ以下に示すとおり、各上限値以下にすることが好ましい。
P:0.05%以下
Pは、0.05%を超えて添加すると靭性が低下するため、0.05%以下とすることが好ましい。
Pは、0.05%を超えて添加すると靭性が低下するため、0.05%以下とすることが好ましい。
S:0.05%以下
Sは、0.05%を超えて含有すると靭性が低下するため、0.05%以下とすることが好ましい。
Sは、0.05%を超えて含有すると靭性が低下するため、0.05%以下とすることが好ましい。
Cr:1.0%以下
Crは、強度上昇に有効であり、好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加すると靭性が低下するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Crは、強度上昇に有効であり、好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加すると靭性が低下するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Mo:1.0%以下
Moは、強度上昇に有効であり、好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加すると靭性が低下するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Moは、強度上昇に有効であり、好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加すると靭性が低下するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Cu:1.0%以下
Cuは、強度上昇に有効であり、好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加すると靭性が低下するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Cuは、強度上昇に有効であり、好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加すると靭性が低下するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Ni:1.0%以下
Niは、強度、靭性向上に有効な元素である。好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加しても効果が飽和するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Niは、強度、靭性向上に有効な元素である。好ましくは0.02%以上添加するが、1.0%を超えて添加しても効果が飽和するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Al:0.05%以下
Alは、脱酸元素として作用する元素である。好ましくは0.01%以上添加するが、0.050%以上添加しても効果が飽和するため、0.05%以下とすることが好ましい。
Alは、脱酸元素として作用する元素である。好ましくは0.01%以上添加するが、0.050%以上添加しても効果が飽和するため、0.05%以下とすることが好ましい。
Ti:0.2%以下
Tiは、炭化物、窒化物を形成し、粒成長を抑制する効果がある。好ましくは0.01%以上添加するが、0.2%を越えて添加すると靭性が低下するため、0.2%以下とすることが好ましい。
Tiは、炭化物、窒化物を形成し、粒成長を抑制する効果がある。好ましくは0.01%以上添加するが、0.2%を越えて添加すると靭性が低下するため、0.2%以下とすることが好ましい。
Nb:0.2%以下
Nbは、Tiとともに炭化物、窒化物を形成し、粒成長を抑制する効果がある。好ましくは、0.01%以上添加するが、0.2%を越えて添加すると靭性が低下するため、0.2%以下とすることが好ましい。
Nbは、Tiとともに炭化物、窒化物を形成し、粒成長を抑制する効果がある。好ましくは、0.01%以上添加するが、0.2%を越えて添加すると靭性が低下するため、0.2%以下とすることが好ましい。
V:0.2%未満
Vは、炭化物、窒化物を形成し、析出強化によってフェライトを強化する働きがある。好ましくは0.05%以上添加するが、0.2%以上添加すると靭性が低下するため、0.2%未満とすることが好ましい。
Vは、炭化物、窒化物を形成し、析出強化によってフェライトを強化する働きがある。好ましくは0.05%以上添加するが、0.2%以上添加すると靭性が低下するため、0.2%未満とすることが好ましい。
B:0.005%以下
Bは、焼入性を向上させる元素である。0.005%以上添加すると効果が飽和するため、0.005%以下とすることが好ましい。
Bは、焼入性を向上させる元素である。0.005%以上添加すると効果が飽和するため、0.005%以下とすることが好ましい。
以上説明した成分組成からなる鋼素材を用い、本発明では、以下に説明する鍛造を行う。
まず、鋼素材全体を1100℃以上に加熱し、1000℃以上の熱間で少なくとも1回の鍛造加工を施す。これは、熱間加工における粗加工は、高温の方が変形抵抗が小さく有利であるためである。
まず、鋼素材全体を1100℃以上に加熱し、1000℃以上の熱間で少なくとも1回の鍛造加工を施す。これは、熱間加工における粗加工は、高温の方が変形抵抗が小さく有利であるためである。
次に、部分的に10℃/s以上の冷却速度でマルテンサイト変態温度(Ms点)以下まで冷却する。組織を微細化するのは、強化が必要な部位のみについて行えばよく、よって、本発明においては、部分的に冷却を行い、さらにこの部分について後述するさらなる鍛造を行う。冷却速度が10℃/s未満であったり、冷却がMs点以下まで行われないと、マルテンサイト組織が得られず、その後に500℃〜AC1点の温度範囲で相当ひずみ0.5以上の鍛造加工を行っても、微細フェライト組織が得られない。
このようにしてマルテンサイト組織を得た後に、さらに、500℃〜AC1点の温度範囲で相当ひずみ0.5以上の鍛造加工を行う。このとき、鍛造温度が500℃未満の場合には、単にもとの組織が変形を受けて伸長した組織が得られるだけで、微細フェライト組織を得ることができない。また、鍛造温度がAC1点を超えると、鋼の2相域領域となるため、冷却後の組織に微細でないフェライトやパーライトが混入するので、組織を完全に微細フェライト組織と球状セメンタイト組織との混合組織とすることができなくなる。また、相当ひずみが0.5未満である場合には、微細フェライト以外のもとの組織が圧縮方向と垂直な方向に伸長した組織が残留してしまう。
ここで、鍛造の際に相当ひずみ0.5以上とするには、通常行われているFEM解析を用いた、鍛造条件設定時のシミュレーションで金型形状を決定することで、相当ひずみの設定を行うことができる。
表6に示す化学組成の鋼を真空溶解炉にて溶製し、100kgのインゴットに鋳造した。次いで、インゴットを熱間鍛造により直径60mmの鍛造棒鋼とした。この棒鋼を1100℃以上に加熱後、図2に示す、3段階の熱間鍛造を施して同図(d)に示すフランジを有する熱間鍛造品2に成形した。この時、同図(a)→(b)、(b)→(c)に示す2段の熱間鍛造によりの中間素材1に成形後、図中1aで示すフランジ根元部に冷却水を吹き付け、表層部を所定の温度まで冷却したのち、自己復熱後に仕上げ鍛造を行って同図(d)に示す形状に成形し、空冷した。このとき、1a部のひずみ量が0.52となるように金型形状を決定した。なお、2段目までの熱間鍛造時の温度は放射温度計にて測定した。また、2段目の熱間鍛造により得られた中間素材1のフランジ根元部1aに熱電対を取り付け、冷却から仕上げ鍛造開始までの冷却部の温度を測定した。このときの、2段目までの熱間鍛造温度(熱鍛温度)、フランジ根元部1aの冷却速度および冷却停止温度、仕上げ鍛造時の鍛造温度を表7に示す。
次いで、仕上げ鍛造後に鍛造品を室温まで冷却した後、フランジ根元部2aおよび軸端部2bから組織観察用サンプルを切り出し、そのナイタール腐食組織を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した。微細フェライト組織の得られたサンプルの2a部のフェライト粒径は切断法で測定し、その測定値dに1.128倍した値を平均フェライト粒径とした。結果を表7に示す。
また、上記棒鋼を用いて、上記の3段階の熱間鍛造をシミュレートした熱間加工を施した。すなわち、棒鋼を1100℃以上に加熱後、表7に示す熱鍛温度にて直径30mmの棒鋼に熱間鍛造し、表7に示す冷却速度、冷却停止温度となる冷却を施した後、さらに、表7に示す仕上げ鍛造温度にて図1に示すように圧下率40%(相当ひずみ0.51)となる熱間鍛造を施した。この熱間加工を施した鋼材の中央部から、2mm−Vノッチ衝撃試験片を切り出し、20℃でシャルピー衝撃試験を行い、靭性を評価した。靭性の評価は、衝撃値が、30J/cm2 を超える場合を○とし、30J/cm2に満たない場合を×で評価した。表7には靭性の評価結果を合わせて示す。
表7において、No.1〜5は本発明例であり、図2に示した2a部の組織が平均フェライト粒径1μm以下の微細フェライトとセメンタイトの混合組織が得られ、同2b部よりも高強度化が達成した。
No.6およびNo.7は、冷却速度が遅く、Ms点以下まで冷却しているにもかかわらず、冷却途中でベイナイトやフェライト・パーライトが生成したため、微細フェライト組織は得られなかった。No.8は仕上げ鍛造温度が低く、No.9は仕上げ鍛造温度がフェライト・オーステナイト2相域となっているため、微細なフェライト組織が得られなかった。No.10は冷却停止温度がMs点よりも高く、組織がベイナイトとなった。No.11は冷却速度が遅く、Ms点以下までの冷却途中でベイナイトが生成した。No.12は仕上げ鍛造温度が低く、微細フェライト組織が得られなかった。No.13は、冷却停止温度が高くベイナイトが生成し、微細フェライトが得られなかった。そして、微細フェライト組織が得られなかったNo.6〜No.13は、衝撃値が低い値を示した。
1 中間素材
1a 中間素材のフランジ根元部
2 熱間鍛造品
2a 熱間鍛造品のフランジ根元部
1a 中間素材のフランジ根元部
2 熱間鍛造品
2a 熱間鍛造品のフランジ根元部
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.30〜1.0%、
Si:0.01〜2.0%および
Mn:0.1〜3.0%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼素材を、1100℃以上に加熱して、1000℃以上で少なくとも1回の鍛造加工を行った後、部分的に10℃/s以上の冷却速度でマルテンサイト変態温度以下まで冷却した後、500℃〜AC1点の温度範囲で相当ひずみ0.5以上の鍛造加工を行い、室温まで冷却することによって、部分的に結晶粒径1μm以下の微細フェライトと球状セメンタイトとの混合組織とすることを特徴とする高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法。 - 請求項1において、前記鋼素材が、さらに、質量%で
P:0.05%以下、
S:0.05%以下、
Cr:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、
Cu:1.0%以下、
Ni:1.0%以下、
Al:0.05%以下、
Ti:0.2%以下、
Nb:0.2%以下、
V:0.2%以下および
B:0.005%以下
の1種または2種以上を含有する高強度高靱性熱間鍛造品の製造方法。
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