JP2010223166A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Hirokuni Tomita
浩邦 冨田
Fumiaki Arikawa
文明 有川
Hisanori Ito
寿記 伊藤
Akio Kawaguchi
暁生 川口
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Abstract

【課題】単一の制御弁を利用してアウタおよびインナニードル弁の夫々の開閉状態を独立に精度良く制御することの可能な燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】燃料排出路C6、第1および第2燃料流入路C1,C2の各々に連通する弁室451と弁体452を有し、弁体452の位置を切り替えて第1および第2燃料流入路C1,C2の各々における燃料排出路C6との連通・遮断状態を切り替える制御弁45を備える。弁体452は、全閉位置のときに燃料排出路C6を第1および第2燃料流入路C1,C2何れとも遮断させ、半開位置のときに燃料排出路C6を第1燃料流入路C1と連通させると共に第2燃料流入路C2と遮断させ、全開位置のときに燃料排出路C6を第2燃料流入路C2と連通させると共に第1燃料流入路C1と遮断させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
内燃機関(特に、ディーゼル期間)の燃焼室に望む燃料噴射弁からの燃料噴射制御を行う燃料噴射装置として、所謂ツインニードルタイプの燃料噴射装置が知られている。例えば、特許文献1には、アウタニードル弁の内周側に摺動可能に収容されたインナニードル弁を独立して開閉制御するツインニードルタイプの燃料噴射弁が開示されている。
この従来文献に開示された第1の構成としては、アウタ圧力室の圧力を制御する第1制御弁と、インナ圧力室の圧力を制御する第2制御弁を備えた燃料噴射弁が開示されている。この構成においては、各々の制御弁を独立して制御することによりアウタおよびインナニードル弁の夫々の開閉状態を独立に制御することができる。しかしながら、上記したタイプの制御弁は、一般に電磁弁、ピエゾ素子等を利用して構成されるため、その体格が比較的大きい。したがって、2つの制御弁が必要となる上記構成を採用すると、装置全体の大型化を回避することが難しく、また、コストの増大といった新たな問題が生じる。
また、上記従来文献に開示された第2の構成としては、アウタ圧力室の圧力およびインナ圧力室の圧力を制御する単一の制御弁を備えた燃料噴射弁が開示されている。この単一の制御弁はいわゆる3位置3ポート型の弁である。ここで、弁室に収容された弁体が第1の位置(全閉位置)に保持されているときには、低圧に維持されているオーバーフロー油路を、アウタ圧力室およびインナ圧力室の何れとも遮断されている。これに対して、インナニードル弁のみを開弁させる際には、弁室内の弁体を第3の位置(全開位置)に切り替えることで、オーバーフロー油路をインナ圧力室と連通しアウタ圧力室と遮断する。一方、アウタニードル弁のみを開弁させる際には、弁体を第2の位置(半開位置)に切り替えることで、オーバーフロー油路をアウタおよびインナ圧力室の双方と連通させる。
ここで、アウタニードル弁のみを開弁させるべく弁体を第2の位置(半開位置)に保持すると、この構成ではアウタおよびインナ圧力室の双方がオーバーフロー油路と連通してしまうため、アウタおよびインナ圧力室の双方の圧力が等しくなってしまう。
ところが、この構成では、インナニードル弁の開弁方向にアウタ圧力室の圧力が作用し、その閉弁方向にインナ圧力室の圧力が作用することを前提としている。そのため、弁体を第2の位置に保持した際にアウタおよびインナ圧力室の圧力が等しくなると、アウタおよびインナニードル弁においてそれぞれの開閉方向への圧力を受ける受圧面積等を調節したとしても、インナニードル弁も開弁してしまう虞がある。つまり、アウタニードル弁のみを開弁させるべきときに、アウタおよびインナニードル弁が共に開弁されてしまい、燃料の噴射率や噴射角等を狙い通りに精度良く制御することが難しくなることが懸念される。
英国特許出願公開第2424451号明細書 特開2008−202417号公報
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、単一の制御弁を利用してアウタおよびインナニードル弁の夫々の開閉状態を独立に精度良く制御することの可能な燃料噴射制御装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置は、以下の手段を採用した。すなわち、内燃機関の燃焼室に臨む先端部に第1噴孔および該第1噴孔よりも先端側に位置する第2噴孔を備えたボディと、前記ボディ内に摺動可能に収容されて先端側で前記第1噴孔を開閉する筒状のアウタニードル弁と、前記アウタニードル弁の内周側に摺動可能に収容されて先端側で前記第2噴孔を開閉する柱状のインナニードル弁と、前記アウタおよびインナニードル弁の先端側に設けられると共に該アウタおよびインナニードル弁の各々の開弁状態にて前記第1噴孔および第2噴孔の夫々から噴射するための燃料が供給される室であって、且つ、該アウタニードル弁の受圧部が収容されており、内部の燃料の圧力であるレール圧により該アウタニードル弁の受圧部を開弁方向に押圧するノズル室と、前記ノズル室から独立した状態で前記アウタニードル弁の背面側に設けられると共に前記インナニードル弁の受圧部が収容されており、内部の燃料の圧力である第1制御圧によって該アウタニードル弁の背面部を閉弁方向に押圧する一方で該インナニードル弁の受圧部を開弁方向に押圧する第1制御室と、前記ノズル室および第1制御室から独立した状態で前記インナニードル弁の背面側に設けられており、内部の燃料の圧力である第2制御圧によって該インナニードル弁の背面部を閉弁方向に押圧する第2制御室と、高圧の燃料を発生する高圧発生部と、前記高圧発生部と前記ノズル室とを接続して該ノズル室に燃料を供給する燃料供給路と、前記燃料供給路と前記第1制御室とを接続する第1燃料流入路と、前記燃料供給路と前記第2制御室とを接続する第2燃料流入路と、上流側端が前記第1制御室に接続された第1燃料流出路と、上流側端が前記第2制御室に接続されて下流側端が前記第1燃料流出路の下流側端と合流する第2燃料流出路と、前記第1および第2燃料流出路の合流部と燃料タンクとを接続する低圧排出路と、前記低圧排出路、前記第1および第2燃料流出路の各々に連通する弁室と、該弁室に収容された弁体を有し、該弁体の位置を切り替えて前記第1および第2燃料流出路の各々における前記低圧排出路との連通・遮断状態を切り替える制御弁と、を備え、前記制御弁を制御して前記第1および第2制御圧を調節することで前記アウタおよびインナニードル弁の夫々の開閉状態を独立に制御する内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記制御弁の前記弁体は、第1の位置のときに前記低圧排出路を前記第1および第2燃料流出路の何れとも遮断させ、第2の位置のときに前記低圧排出路を前記第1および第2燃料流出路の何れか一方と連通させると共に他方と遮断させ、第3の位置のときに前記低圧排出路を前記第1および第2燃料流出路のうちの他方と連通させると共に一方と遮断させることを特徴とする。
上記構成において、高圧発生部(例えば、液圧ポンプ+コモンレール)で発生した高圧の燃料は、燃料供給路を介してノズル室に供給された後、アウタおよびインナニードル弁の各々の開弁状態にて第1噴孔および第2噴孔の夫々から噴射される。
ここで、アウタおよびインナニードル弁の「開閉状態」と、その「リフト量」との関係について定義する。アウタ(インナ)ニードル弁が第1(第2)噴孔を遮蔽している状態を、アウタ(インナ)ニードル弁の「閉弁状態」と定義し、そのときのリフト量は「零(0)」である。また、アウタ(インナ)ニードル弁が背面側に移動して(上昇して)、そのリフト量が零より大きくなった状態(リフト量>0)、すなわち上記閉弁状態が解除された状態が「開弁状態」と定義する。
この構成において、ノズル室、第1制御室、および第2制御室の各々は独立して形成されている(区画されている)。そして、アウタニードル弁は、第1制御室内の第1制御圧によって閉弁方向に押圧され、ノズル室内のレール圧によって開弁方向に押圧される。こ
こで、アウタニードル弁が閉弁状態から開弁状態へ移行する時点での第1制御圧を「アウタニードル開弁圧」と称呼する。このアウタニードル開弁圧はレール圧に相関し、レール圧が高いほどアウタニードル開弁圧も高くなる。ここで、「アウタニードル開弁圧が高い」とは、第1制御室がより高い圧力に維持されていてもアウタニードル弁が開弁することを表すところ、レール圧が高いほどアウタニードル弁が開弁し易くなるからである。また、アウタニードル弁背面部の第1制御圧の受圧面積に対する、ノズル室に収容されたアウタニードル弁受圧部のレール圧の受圧面積の比率(以下、「アウタ側受圧面積比」という)が高いほど、アウタニードル開弁圧も高くなる。
以上のように、アウタニードル弁の開閉状態は、主としてレール圧およびアウタ側受圧面積比から決定されるアウタニードル開弁圧と第1制御圧との大小関係によって決せられる。そして、第1制御圧がアウタニードル開弁圧より高い状態のときには「閉弁状態」に保持され、該アウタニードル開弁圧以下の状態のときには「開弁状態」に保持される。
一方、インナニードル弁は、第2制御室内の第2制御圧によって閉弁方向に押圧され、上記した第1制御圧によって開弁方向に押圧される。ここで、インナニードル弁が閉弁状態から開弁状態へ移行する時点での第2制御圧を「インナニードル開弁圧」と称呼すると、第1制御圧が高いほどインナニードル開弁圧も高くなる。「インナニードル開弁圧が高い」とは、第2制御室がより高い圧力に維持されていてもインナニードル弁が開弁することを表すところ、インナニードル弁の開弁方向に作用する第1制御圧が高いほどインナニードル弁が開弁し易くなるからである。また、インナニードル弁背面部の第2制御圧の受圧面積に対する、インナニードル弁受圧部の第1制御圧の受圧面積の比率(以下、「インナ側受圧面積比」という)が高いほど、インナニードル開弁圧は高くなる。
以上のように、インナニードル弁の開閉状態は、主として第1制御圧およびインナ側受圧面積比から決定されるインナニードル開弁圧と第2制御圧との大小関係によって決せられる。そして、第2制御圧がインナニードル開弁圧より高い状態のときには「閉弁状態」に保持され、該インナニードル開弁圧以下の状態のときには「開弁状態」に保持される。
次に、第1および第2制御室に対する燃料の流入出(給排)について説明する。第1および第2制御室に対しては、第1および第2燃料流入路を介して高圧発生部で発生した高圧燃料が供給される。一方、第1および第2燃料流出路からの燃料の排出(流出)については、第1および第2燃料流出路の合流部と低圧排出路との接続部に介装された(単一の)制御弁によって調整される。より具体的には、制御弁における弁体が第1〜第3の位置の何れかに切り替えることで、第1および第2燃料流出路の低圧排出路との連通・遮断状態が切り替えられ、これによって第1および第2制御圧が調節される。
まず、制御弁の弁体が第1の位置に保持されると、低圧排出路が第1および第2燃料流出路の何れとも遮断状態に維持される。その結果、第1および第2制御室の双方は共にノズル室と略同等の高圧状態に維持される。つまり、第1制御圧がアウタニードル開弁圧よりも高圧に維持さることでアウタニードル弁が閉弁状態に保持され、第2制御圧がインナニードル開弁圧よりも高圧に維持されることでインナニードル弁が閉弁状態に維持される。
制御弁の弁体が第2の位置に切り替えられると、低圧排出路が第1および第2燃料流出路のうちの何れか一方と連通され、他方と遮断される。ここでは便宜上、「一方」を「第1燃料流出路」とし、「他方」を「第2燃料流出路」とした場合を例に説明する。なお、「一方」を「第2燃料流出路」とし、「他方」を「第1燃料流出路」とした場合については括弧書きにて記す。また、この構成において燃料タンクとは燃料が貯留される貯留槽であり、その内部は低圧状態(例えば、大気圧)に維持されている。
弁体が第2の位置に切り替えられると、前述の如く、低圧排出路が第1燃料流出路(第2燃料流出路)と連通され、第2燃料流出路(第1燃料流出路)と遮断される。すなわち、その時点において高圧に維持されている第1制御室(第2制御室)と低圧に維持されている燃料タンクとが連通する。その結果、第1制御室(第2制御室)から燃料が流出することによって第1制御圧(第2制御圧)が低下する。そして、第1制御圧(第2制御圧)がアウタニードル開弁圧(インナニードル開弁圧)以下まで低下すると、アウタニードル弁(インナニードル弁)が閉弁状態から開弁状態へと移行する。すなわち、アウタニードル弁(インナニードル弁)が開弁する。
一方、制御弁の弁体が第2の位置に切り替えられても、第2制御室(第1制御室)と燃料タンクとは遮断されているため、第2制御圧(第1制御圧)は依然としてインナニードル開弁圧(アウタニードル開弁圧)より高く維持される。従って、制御弁の弁体が第2の位置にある場合には、アウタニードル弁(インナニードル弁)のみが開弁状態に保持される。
次に、制御弁の弁体が第3の位置に切り替えられると、低圧排出路が第2燃料流出路(第1燃料流出路)と連通され、第1燃料流出路(第2燃料流出路)と遮断される。すなわち、高圧に維持されている第2制御室(第1制御室)と低圧に維持されている燃料タンクとが連通する。その結果、第2制御室(第1制御室)から燃料が流出することにより、第2制御圧(第1制御圧)が低下する。そして、第2制御圧(第1制御圧)がインナニードル開弁圧(アウタニードル開弁圧)以下まで低下すると、インナニードル弁(アウタニードル弁)が開弁する。
一方、制御弁の弁体が第3の位置に切り替えられても、第1制御室(第2制御室)と燃料タンクとは遮断されているため、第1制御圧(第2制御圧)は依然としてアウタニードル開弁圧(インナニードル開弁圧)より高く維持される。そのため、制御弁の弁体が第3の位置にある場合には、インナニードル弁(アウタニードル弁)のみが開弁する。
以上のように、本発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置によれば、単一の制御弁における弁体の位置を第1〜第3の位置に切り替え制御することで、アウタおよびインナニードル弁の夫々の開閉状態を独立に精度良く制御することができる。
特に、本発明によれば、弁体を第2の位置に保持する際に低圧排出路を第1および第2燃料流出路の何れか一方と連通させ、且つ他方と遮断させるため、第1制御圧と第2制御圧との差圧を充分に確保することができる。これによれば、弁体を第2の位置に制御する際に低圧排出路を第1燃料流出路と連通させる場合には、アウタニードル弁を確実に開弁でき、インナニードル弁を確実に閉弁できる。逆に、弁体を第2の位置に制御する際に低圧排出路を第2燃料流出路と連通させる場合には、アウタニードル弁を確実に閉弁でき、インナニードル弁を確実に開弁できる。つまり、本発明によれば、アウタおよびインナニードル弁の開閉弁に関する制御不良を確実に防止できる。
なお、第1噴孔と第2噴孔においては、ボディの軸線方向との成す角を互いに相違させても良い。このようにすれば、第1噴孔からの燃料噴射と第2噴孔からの燃料噴射とにおける燃料の噴射角を変化させることができる。例えば、燃料噴射を行うときの内燃機関の運転状態(負荷および回転数)に応じて、制御弁の弁体の位置を第2および第3の何れにするかを決定すると良い。これによれば、内燃機関の運転状態に応じて燃料の噴射角を広角にするか、挟角にするかを容易に切り替えることができ、また、その噴射率や噴射量も精度良く制御することができる。
本発明によれば、単一の制御弁を利用してアウタおよびインナニードル弁の夫々の開閉状態を独立に精度良く制御することができる。
内燃機関に適用される燃料噴射制御装置の概略構成を示した図である。 制御弁における弁体の制御位置と、各ポートの開閉状態との関係を説明するための説明図である。(a)は、弁体が全閉位置にある状態を示した図である。(b)は、弁体が半開位置にある状態を示した図である。(c)は、弁体が全開位置にある状態を示した図である。 燃料噴射制御装置の作動の一例を示したタイムチャートである。(a)は、弁体を「全閉位置」→「半開位置」→「全閉位置」と切り替えたときのタイムチャートである。(b)は、弁体を「全閉位置」→「全開位置」→「全閉位置」と切り替えたときのタイムチャートである。 燃料噴射制御装置が適用される内燃機関の概略構成を示すブロック図である。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本実施形態に係る内燃機関(ディーゼル機関)に適用される燃料噴射制御装置10の概略構成を示した図である。この燃料噴射制御装置10は、燃料タンクTに貯留されている燃料を吸入・吐出する燃料ポンプ20と、燃料ポンプ20により吐出された高圧(以下、「レール圧Pcr」と称呼する。)の燃料が供給されるコモンレール30と、コモンレール30から燃料供給路C1を通してレール圧Pcrの燃料が供給されて内燃機関の燃焼室(図示せず)に燃料を噴射するインジェクタ40と、燃料ポンプ20及びインジェクタ40を制御するECU50とを備える。燃料ポンプ20とコモンレール30は、本発明における「高圧発生部」に対応している。
なお、図1では、コモンレール30から1本の燃料供給路C1を通してレール圧Pcrの燃料が供給される1つのインジェクタ40が記載されているが、実際には、インジェクタ40及び燃料供給路C1は内燃機関の複数の燃焼室の各々に対してそれぞれ設けられていて、各インジェクタ40は対応する燃料供給路C1を通してコモンレール30と個別に接続されている。以下、説明の便宜上、各図における紙面上の上・下を単に、「上」、「下」と称呼することもある。
燃料ポンプ20は、ECU50から指令により燃料の吸入流量を調整可能に構成されており、これによりレール圧Pcrを調整することができる。具体的には、例えば内燃機関の負荷(トルク)およびエンジン回転数が増加するほどレール圧Pcrが大きい値に調整される。
インジェクタ40は、主として、ボディ41と、ボディ41の内部の所定空間においてその軸線方向(上下方向)に摺動可能に収容された円筒状のアウタニードル弁42と、アウタニードル弁42の内部(内周側)に同軸的且つ液密的にアウタニードル弁42の軸線方向(上下方向)に摺動可能に収容された円柱状のインナニードル弁43と、ボディ41内に配設された制御弁45と、この制御弁45を駆動する駆動装置46を備えている。
ボディ41は、第1ボディ41A〜第4ボディ41Dを有して構成されている。第1ボ
ディ41Aは駆動装置46および制御弁45を収容しており、該第1ボディ41Aの下端面に接して第2ボディ41Bが配設されている。そして、第3ボディ41Cは第2ボディ41Bの下端面に接し、第4ボディ41Dは第3ボディ41Cの下端面に接するように配設されている。図示のように、アウタおよびインナニードル弁42,43が収容されるボディ41内部の所定空間は、第2ボディ41Bの下端面、第3および第4ボディ41C,41Dの内周面によって画定されている。
ここで、ボディ41の所定空間のうち、アウタおよびインナニードル弁42,43を除いた残りの空間は、主として第1制御室R1、第2制御室R2、ノズル室R3の3つの空間に液密的に区画されている。ノズル室R3は、アウタおよびインナニードル弁42,43の先端側(下端側)に設けられている。また、ノズル室R3に対して互いに独立した第1および第2制御室R1,R2は、アウタ及びインナニードル弁42,43の背面側(上端側)にそれぞれ設けられている。
アウタニードル弁42の外形は段付き円柱形状となっており、背面側(上端側)からアウタ中径部42A、アウタ大径部42B、アウタ小径部42Cが形成されている。アウタ中径部42Aを基準として、アウタ大径部42Bは該アウタ中径部42Aよりも拡径しており、アウタ小径部42Cはアウタ中径部42Aよりも縮径している。また、アウタ中径部42Aの外周には、該アウタ中径部42Aの外径と略等しい内径を有する円筒状のスリーブ(以下、「アウタスリーブ」という)44が嵌められている。このアウタスリーブ44の下端面とアウタ大径部42Bの上端面との間には、コイルスプリング(以下、「アウタスプリング」という)46が圧縮された(縮んだ)状態で配置されている。そして、アウタスプリング46は、アウタスリーブ44を第3ボディ41Cの下端面に対して押しつける一方で、アウタニードル弁42を先端側(下端側)に向かって付勢する。
本実施形態において、第1制御室R1はアウタニードル弁42(アウタ中径部42A)の背面、アウタスリーブ44、第3ボディ41Cの下端および内周面、第2ボディ41Bの下端面によって区画されている。また、第1制御室R1は、アウタスリーブ44によってノズル室R3と液密的に遮断されている。
次に、インナニードル弁43について説明する。インナニードル弁43の外形も、アウタニードル弁42と同様に段付き円柱形状となっており、背面側(上端側)からインナ中径部43A、インナ大径部43B、インナ小径部43Cが形成されている。インナ中径部43Aを基準として、インナ大径部43Bは該インナ中径部43Aよりも拡径しており、インナ小径部43Cはインナ中径部43Aよりも縮径している。
ここで、インナ中径部43Aおよびインナ大径部43Bは、第1制御室R1内に収容されている。また、インナ中径部42Aの外周には、該インナ中径部43Aの外径と略等しい内径を有する円筒状のスリーブ(以下、「インナスリーブ」という)47が嵌められている。インナスリーブ47の下端面とインナ大径部43Bの上端面との間には、コイルスプリング(以下、「インナスプリング」という)48が圧縮された(縮んだ)状態で配置されている。このように配置されたインナスプリング48は、インナスリーブ47を第2ボディ41Bの下端面に対して押しつけると共に、インナニードル弁43を先端側(下端側)に向かって付勢する。そして、第2制御室R2は、インナスリーブ47によって第1制御室R1と液密的に遮断されている。
ノズル室R3は燃料供給路C1と連通していて、ノズル室R3内の燃料圧力は上記レール圧Pcrと等しい。ノズル室R3は、ボディ41の先端部に設けられた燃焼室に臨む複数の第1噴孔(群)41X、及び第1噴孔41Xよりも先端側(下側)に位置する複数の第2噴孔(群)41Yと連通している。ここで、第1噴孔41Xがボディ41の軸線と成
す角度は、第2噴孔41Yが同軸線と成す角度に比べて大きい。
アウタおよびインナニードル弁42,43の先端部(下端部)には、先端に近づくほど縮径する円錐状のアウタテーパー部42T及びインナテーパー部43Tがそれぞれ形成されている。アウタニードル弁42(インナニードル弁43)が上記所定空間内にて下降してアウタテーパー部42T(インナテーパー部43T)がボディ41先端部のノズル室R3に臨む円錐状の内面(弁座面)に当接した状態(図1に示す状態)にて、第1噴孔41X(第2噴孔41Y)がノズル室R3から遮断される。この状態では、第1噴孔41X(第2噴孔41Y)を介して燃料が噴射されない。以下、この状態を、アウタニードル弁42(インナニードル弁43)の「閉弁状態」と称呼する。
また、アウタニードル弁42(インナニードル弁43)のリフト量であるアウタリフト量Lon(インナリフト量Lin)は、この状態からのアウタニードル弁42(インナニードル弁43)の上方への移動量(上昇量)を意味するものとする。すなわち、図1に示したアウタニードル弁42(インナニードル弁43)の閉弁状態では、アウタリフト量Lon(インナリフト量Lin)は「0」である。
一方、アウタニードル弁42(インナニードル弁43)が閉弁状態から上方へ移動(上昇)してアウタテーパー部42T(インナテーパー部43T)が上記弁座面から離間すると、第1噴孔41X(第2噴孔41Y)がノズル室R3と連通する。なお、アウタニードル弁42には、図示のような内部通路42Yが形成されており、インナテーパー部43Tが弁座面から離間した場合には内部通路42Yを介してノズル室R3と第2噴孔41Yとが連通するようになっている。そして、アウタリフト量Lon(インナリフト量Lin)が0より大きい状態においては、燃料が第1噴孔41X(第2噴孔41Y)を介して噴射される。以下、この状態を、アウタニードル弁42(インナニードル弁43)の「開弁状態」と称呼する。また、以下において、開弁状態から閉弁状態に移行することを「閉弁」と呼び、閉弁状態から開弁状態に移行することを「開弁」と呼ぶ。
第1制御室R1(第2制御室R2)は、第1流入オリフィスZ1(第2流入オリフィスZ2)が介装された第1燃料流入路C2(第2燃料流入路C3)を介して燃料供給路C1と接続されている。ここで、第1制御室R1内の燃料の圧力を第1制御圧Pc1と称し、第2制御室R2内の燃料の圧力を第2制御圧Pc2と称する。この場合、レール圧Pcrと第1制御圧Pc1(第2制御圧Pc2)の差圧に応じて第1燃料流入路C2(第2燃料流入路C3)を介して燃料供給路C1から第1制御室R1(第2制御室R2)内に燃料が流入する。
また、第1制御室R1(第2制御室R2)には、第1燃料流出路C4(第2燃料流出路C5)の上流側端が接続されている。そして、第1燃料流出路C4および第2燃料流出路C5の下流側端は合流部Yにて合流し、合流部Yは、流出オリフィスZ3が介装された燃料排出路C6を介して燃料タンクTと接続されている。つまり、合流部Yは、第1および第2燃料流出路C4,C5、および燃料排出路C6が合流する部分といえる。本実施形態においては燃料排出路C6が本発明における低圧排出路に対応する。
合流部Yには、第1および第2燃料流出路C4,C5の各々における燃料排出路C6との連通・遮断状態を切り替える制御弁45が介装されている。燃料タンクT内の燃料圧力は大気圧と略等しい。制御弁45は、いわゆる3位置3ポート型の電磁弁であり第1ボディ41Aに設けられている。より具体的には、制御弁45は、第1ボディ41Aに形成された弁室451、該弁室451内に収容されている弁体452によって主に構成されている。そして、ECU50からの指示により制御される駆動装置46からの駆動力によって弁体452の(停止)位置が変更されると、上記した連通・遮断状態が切り替えられる。
制御弁45の制御によって、第1燃料流出路C4と燃料排出路C6とが連通状態にある場合、第1制御室R1が燃料タンクTと連通する。この場合、第1制御圧Pc1と燃料タンクT内の燃料圧力(=大気圧)の差圧に応じて第1燃料流出路C4および燃料排出路C6を通して第1制御室R1から燃料タンクTへ燃料が排出される。一方、第1燃料流出路C4と燃料排出路C6とが遮断状態にある場合、第1制御室R1は燃料タンクTから遮断されるため、上述した第1制御室R1からの燃料タンクTへの燃料の排出が禁止される。
また、第2燃料流出路C5と燃料排出路C6とが連通状態にある場合、第2制御室R2が燃料タンクTと連通し、第2制御圧Pc2と燃料タンクT内の燃料圧力(=大気圧)の差圧に応じて第2燃料流出路C5および燃料排出路C6を通して第2制御室R2から燃料タンクTへ燃料が排出される。一方、第2燃料流出路C5と燃料排出路C6とが遮断状態にある場合、第2制御室R2は燃料タンクTと遮断されるため、上述した第2制御室R2からの燃料タンクTへの燃料の排出が禁止される。
次に、アウタおよびインナニードル弁42,43に作用する力について説明する。アウタニードル弁42については、レール圧Pcrの作用するアウタ受圧部42B1がアウタ大径部42Bの下端面に形成されている。レール圧Pcrは、アウタニードル弁42の開弁方向(背面側(上端側)方向)に向かってアウタ受圧部42B1を押圧する。このアウタ受圧部42B1は本発明におけるアウタニードル弁の受圧部に対応している。
一方、アウタニードル弁42(アウタ中径部42A)の上端面であるアウタ背面部42A1は第1制御室R1に面しており、第1制御圧Pc1によってアウタニードル弁42の閉弁方向(先端側(下端側)方向)に押圧される。それに加え、アウタニードル弁42のアウタ中径部42Aは、常時作用するアウタスプリング46の付勢力によって閉弁方向に付勢される。本実施形態においてはアウタ背面部42A1が本発明におけるアウタニードル弁の背面部に対応する。
次に、インナニードル弁43について説明する。第1制御室R1内に収容されたインナ大径部43Bの下端面には、第1制御圧Pc1によって押圧されるインナ受圧部43B1が形成されている。第1制御圧Pc1は、インナニードル弁43の開弁方向(背面側(上端側)方向)に向かってインナ受圧部43B1を押圧する。本実施形態においてはインナ受圧部43B1が本発明におけるインナニードル弁の受圧部に対応する。
一方、インナニードル弁43(インナ中径部43A)の上端面であるインナ背面部43A1は第2制御室R2に面しており、第2制御圧Pc2によってインナニードル弁43の閉弁方向(先端側(下端側)方向)に押圧される。これに加えて、インナニードル弁43のインナ中径部43Aは、常時作用するインナスプリング48の付勢力によって閉弁方向に付勢される。本実施形態においてはインナ背面部43A1が本発明におけるインナニードル弁の背面部に対応する。
なお、アウタおよびインナスプリング46,48は、燃料ポンプ20の非作動中などレール圧Pcrが低い場合等において、アウタ及びインナニードル弁42,43が開弁して燃料が燃焼室へ流出すること等を防止するために機能する。
図1を参照して駆動装置46の構成を説明すると、駆動装置46は主に、電歪アクチュエータ461、大径ピストン462、変位拡大室463、小径ピストン464によって構成されている。第1ボディ41A内には、電歪アクチュエータ461の下端面に当接して大径ピストン462が摺動自在に配設されている。この大径ピストン462は、その下方に位置する変位拡大室463に配置したスプリング(図示省略)によって上方に付勢され
ており、印加電圧に応じて伸縮する電歪アクチュエータ461と一体に変位する。なお、この電歪アクチュエータ461に印加される駆動電圧は、ECU50によって制御される。
この変位拡大室463は、電歪アクチュエータ461の変位を油圧変換し、大径ピストン462と同じく第1ボディ41A内周面を摺動する小径ピストン464に伝達する。変位拡大室463内の圧力は、図示しない給排油路による給排油によって所定の設定圧力に制御されている。また、小径ピストン464の受圧面積は、大径ピストン462に比べて小さく、その受圧面積比に応じて小径ピストン464の変位が大径ピストン462に比して拡大される。
また、小径ピストン464について説明すると、小径ピストン464は、ピストン本体部464aと、該ピストン本体部464a外周に摺動可能に設けた拡大率変換リング464bと、ピストン本体部464aの下端面に接続されると共に拡大率変換リング464bを支持するフランジ部464cと、フランジ部464cの下端面および制御弁45の弁体452の上端面を連結する連結ピン464dとから構成される。
小径ピストン464が摺動する第1ボディ41Aの摺動孔SSには、所定の中間位置に段差部465が形成されており、拡大率変換リング464bの下方への移動はこの段差部465によって規制される。また、段差部465より下方において、第1ボディ41Aの摺動孔の内径はフランジ部464cの外径と等しい。そのため、段差部465によって拡大率変換リング464bの下方への移動が規制された後も、ピストン本体部464aおよびフランジ部464cは第1ボディ41Aの摺動孔SSに摺動しつつ下方に移動することが可能となっている。
次に、制御弁45の詳細な構成およびその作動状況を説明する。制御弁45の弁室451は円筒形状に形成されている。そして、弁室451の頂面、底面、および周面には、該弁室451に収容された弁体452によって開閉状態が切り替えられるポートが開口している。ここで、弁室451の頂面、底面、周面に形成された各々のポートを、低圧ポート451A、第1制御ポート451B、第2制御ポート451Cと称呼する。
弁体452は、その上端側からヘッド円錐台部452A、ヘッド円柱部452B、ボディ部452C、ボトム部452Dの4つの部位によって構成されている。ヘッド円錐台部452Aは、上端側ほど縮径している円錐台形状を有する。また、ヘッド円柱部452B、ボディ部452C、ボトム部452Dは何れも円柱形状を有する。そして、ヘッド円柱部452Bの外径はヘッド円錐台部452Aの下端面における外径と等しく、且つ弁室452の内径に比べて小径となっている。また、ボディ部452Cの外径は弁室452の内径と等しく、ボトム部452Dの外径はボディ部452Cの外径よりも小さい。また、弁体452内部には、ボディ部452Cの下端面のうちのボトム部45Dによって覆われていない部位(以下に、「ボディ部452Cの下端面」というときは、特別に断らない限りボトム部45Dによって覆われていない部位を指す)と、ヘッド円柱部452Bの外周面を連通する連通路(以下、「内部貫通孔」という)453が形成されている。また、ボトム部452Dの下端面と弁室451の底面との間には、スプリングが圧縮された(縮んだ)状態で配置されている。
弁体452におけるヘッド円錐台部452Aの上端面には、小径ピストン464における連結ピン464dの下端が低圧ポート451Aを貫通して連結されている。これにより、小径ピストン464が変位に応じて、弁体452の位置が変化するようになっている。
図2は、制御弁45における弁体452の制御位置と、各ポートの開閉状態との関係を
説明するための説明図である。図2(a)は、弁体452が全閉位置にある状態を示した図である。図2(b)は、弁体452が半開位置にある状態を示した図である。図2(c)は、弁体452が全開位置にある状態を示した図である。また、同図において図1と共通する部材については、同一の符号を付している。
ここで、図2(a)に示した状態は、電歪アクチュエータ461への駆動電圧(以下、「ピエゾ駆動電圧」ともいう)が0に制御されている状態(以下、「待機状態」ともいう)にある。このような待機状態においては、弁室451の頂面に開口された低圧ポート451Aにヘッド円錐台部452Aのテーパ部が当接する位置までスプリングの弾性復元力によって弁体452が上方に押し上げられている。この状態では、ヘッド円錐台部452Aが弁室451の頂面への当接によって、それ以上の上方(電歪アクチュエータ461側)への移動が規制されている。以下、当該待機状態のように、ヘッド円錐台部452Aが弁室451の頂面への当接している状態における弁体452の位置を「全閉位置」と定義する。なお、本明細書においては、弁体452の「変位量δh」を、全閉位置を基準点としたときの該基準点からの下方側への変位差の意味として用いる。例えば、「全閉位置」に位置する弁体452の変位量δhは0である。
低圧ポート451A、第1制御ポート451B、第2制御ポート451Cのそれぞれは、燃料タンクTと連通する燃料排出路C6、第1燃料流出路C4、第2燃料流出路C5のそれぞれと接続されている。また、弁体452が「全閉位置」にある場合には、低圧ポート451Aがヘッド円錐台部452Aによって閉鎖(遮蔽)されるようになっている。
次に、各図を参照して、弁体452の変位量δhの変化と各ポートの開閉状態の関係について説明する。図2(a)に示したように、弁体452が「全閉位置」にある場合、第1制御ポート451Bは開放され、且つ、第2制御ポート451Cはボディ部452Cの外周面によって閉鎖された状態となっている。
この状態から、電歪アクチュエータ461のピエゾ駆動電圧を徐々に上げていくと、電歪アクチュエータ461が伸長して大径ピストン462が下降し、変位拡大室463内の圧力が上昇する。小径ピストン464には、ピストン本体部464aおよび拡大率変換リング464bの双方の上端面に変位拡大室463の油圧力が下向きに作用している。この下向きの力が、弁体452に作用する弁室451内の燃料の圧力を超えると、小径ピストン464(ピストン本体部464a、拡大率変換リング464b、フランジ部464c、連結ピン464d)および弁体452が下方に変位し始める。
このようにして、弁体452の変位量δhが0から増加してゆくと、低圧ポート451Aからヘッド円錐台部452Aが離間し、該低圧ポート451Aが開放される。これに対して、弁体452の変位量δhが0より大きくなっても、その値が比較的小さいうちは、第2制御ポート451Cは依然としてボディ部452Cの外周面によって閉鎖された状態に保持される。この図においては、弁体452の変位量δhがh1以下の範囲に属するときには、第2制御ポート451Cはボディ部452Cによって完全に閉鎖される。以下、弁体452の変位量δhが0よりも大きく、且つh1以下の範囲に属するとき(0<δh≦h1)における弁体452の位置を「半開位置」と称呼する。なお、弁体452の変位量δhがh1を超えると、ボディ部452Cの外周面による第2制御ポート451Cの閉鎖状態が解除されることにより、第2制御ポート451Cが開放される。また、図示のように、弁体452が「半開位置」にあるときには、第1制御ポート451Bは開放されている。
本実施形態においては、弁体452の変位量δhがh1まで到達したときに、拡大率変換リング464bの下端面がちょうど段差部465に当接するようになっている。この状
態から、電歪アクチュエータ461のピエゾ駆動電圧を上昇させると、変位拡大室463内の圧力がさらに上昇するが、小径ピストン464に作用する下向きの力は、ピストン本体部464aの上端面に作用する油圧力だけとなる。この受圧面積の減少により、小径ピストン464に作用する下向きの力が小さくなるため、小径ピストン464に作用する油圧力が充分に大きくなるまで、弁体462の変位量がh1に保持される。これにより、弁体462を「半開位置」に制御するための電圧制御幅が拡大されるため、仮に印加電圧の値に多少の狂いが生じたとしても、制御弁45が誤作動する虞がない。
さらに、電歪アクチュエータ461のピエゾ駆動電圧の上昇を徐々に上げていくと小径ピストン464は下降するが、拡大率変換リング464bの下方への移動は段差部465により規制されるため、ピストン本体部464a、フランジ部464c、および連結ピン464dが下降してゆく。これに伴い、弁体452の変位量δhがh1を超えてゆき、最終的にはボトム部452Dの下端面が弁室451の底面に当接するときの変位量δhであるh2まで到達する。
ここで、弁体462の変位量δhがh2の状態における弁体452の位置を「全開位置」と称呼する。第1制御ポート451Bは、弁体452が全開位置以外(全閉位置、半開位置)にあるときに開放され、全開位置にあるときにボトム部452Dの下端面によって閉鎖される。また、前述したように、「全開位置」においては、第2制御ポート451Cが開放された状態となる。
以上述べたように、ECU50は、電歪アクチュエータ461のピエゾ駆動電圧を制御し、弁体452の位置を「全閉位置」、「半開位置」、「全開位置」の何れかに制御することで、インジェクタ40からの燃料噴射を制御することができる。
図3は、燃料噴射制御装置10の作動の一例を示したタイムチャートである。図3(a)は、弁体452を「全閉位置」→「半開位置」→「全閉位置」と切り替えたときのタイムチャートである。図3(b)は、弁体452を「全閉位置」→「全開位置」→「全閉位置」と切り替えたときのタイムチャートである。なお、この図において、弁体452を「半開位置」に制御するときの該弁体452の変位量δhはh1に設定されている。
まず、図3(a)のうち、弁体452を「全閉位置」から「半開位置」に切り替えた際の作動状況について説明する。図3(a)の時刻t1は、弁体452を全閉位置(変位量δh=0)から半開位置(変位量δh=h1)に切り替えるべくピエゾ駆動電圧が変更された時刻を表す。時刻t1以前においては、弁体452が全閉位置(変位量δh=0)に保持されており、低圧ポート451Aがヘッド円錐台部452Aによって閉鎖されている。この状態では、燃料排出路C6が第1燃料流出路C4および第2燃料流出路C5の何れに対しても遮断されており、第1および第2制御室R1,R2からの燃料タンクTへの燃料の排出が禁止される。したがって、第1および第2制御圧Pc1,Pc2の各々はレール圧Pcrと略等しい圧力に収束した状態となっている。
ところで、アウタニードル弁42は、第1制御圧Pc1による押圧力とアウタスプリング46の付勢力によって閉弁方向に押圧され、レール圧Pcrによって開弁方向に押圧される。つまり、アウタニードル弁42に作用する開弁方向の力(レール圧Pcrによる押圧力)が、閉弁方向に作用する力(第1制御圧Pc1による押圧力とアウタスプリング46の付勢力の和)を上回ると、アウタニードル弁42が開弁する。
一方、インナニードル弁43は、第2制御圧Pc2による押圧力とインナスプリング48の付勢力によって閉弁方向に押圧され、第1制御圧Pc1によって開弁方向に押圧される。つまり、インナニードル弁43に作用する開弁方向の力(第1制御圧Pc1による押
圧力)が、閉弁方向に作用する力(第2制御圧Pc2による押圧力とインナスプリング48の付勢力の和)を上回ると、インナニードル弁43が開弁する。
ここで、アウタニードル弁42(インナニードル弁43)が閉弁状態から開弁状態へ移行する時の第1制御圧(第2制御圧)を「アウタニードル開弁圧Pcon(インナニードル開弁圧Pcin)」と称呼する。アウタニードル開弁圧Pconは、レール圧Pcr、アウタスプリング46の付勢力、アウタ背面部42A1に対するアウタ受圧部42B1の受圧面積比率(以下、「アウタ側受圧面積比」という)Ronの大きさに応じて定まる。そして、アウタニードル開弁圧Pconが高いほど、第1制御圧Pc1がより高い状態にあってもアウタニードル弁42が閉弁状態から開弁状態に移行することを意味する。例えば、その他のパラメータの条件が等しい場合、レール圧Pcrが高いほど、アウタスプリング46の付勢力が低いほど、アウタ側受圧面積比Ronが高いほど、アウタニードル開弁圧Pconは高くなる。
一方、インナニードル開弁圧Pcinは、第1制御圧Pc1、インナスプリング48の付勢力、インナ背面部43A1に対するインナ受圧部43B1の受圧面積比率(以下、「インナ側受圧面積比」という)Rinの大きさに応じて定まる。そして、インナニードル開弁圧Pcinが高いほど、第2制御圧Pc2がより高い状態にあってもインナニードル弁43が閉弁状態から開弁状態に移行することを意味する。例えば、その他のパラメータの条件が等しい場合、第1制御圧Pc1が高いほど、インナスプリング48の付勢力が低いほど、インナ側受圧面積比Rinが高いほど、インナニードル開弁圧Pcinは高くなる。
本実施形態において、ノズル室R3へと導入されるレール圧Pcrは、アウタおよびインナニードル開弁圧Pcon,Pcinの何れに対しても、これらに比して充分に大きな圧力として設定されている。そのため、弁体452の制御位置が全閉位置(変位量δh=0)にある場合には、第1制御圧Pc1がアウタニードル開弁圧Pconよりも高く保持され、且つ、第2制御圧Pc2がインナニードル開弁圧Pcinよりも高く保持される。そのため、アウタリフト量Lonおよびインナリフト量Linは共に0に保持され、アウタおよびインナニードル弁42,43は共に閉弁状態に制御される。
時刻t1以降、弁体452が下降し始め、その変位量δhが0から徐々に増加してゆく。これにより、低圧ポート451Aから弁体452が離間し、該低圧ポート451Aが開放され、低圧ポート451A、内部貫通孔453、第1制御ポート451Bを通じて第1燃料流出路C4と燃料排出路C6とが連通するようになる。そうすると、第1制御室R1から第1燃料流出路C4へと流出した高圧の燃料は、第1制御ポート451Bを介して弁室452内へと流入した後、内部貫通孔453を通過する。そして、この燃料は、低圧ポート451Aを介して低圧の燃料排出路C6へと流出し、この燃料排出路C6を通じて燃料タンクTに戻される。このような、第1制御室R1と燃料タンクTとの間で燃料の遣り取りが行われることで第1制御圧Pc1は図示のように低下してゆく。
本実施形態においては、弁体452が半開位置に制御されるときの第1制御圧Pc1が確実にアウタニードル開弁圧Pcon以下まで低下するように、アウタ側受圧面積比Ron、アウタスプリング46の付勢力等が設定されている。
このようにして、第1制御圧Pc1がアウタニードル開弁圧Pconまで低下するとアウタニードル弁42が開弁し、アウタリフト量Lonが増加する。ここで、アウタリフト量Lonが増加すると第1制御室R1の室容積が減少するため、アウタニードル弁42の開弁を境に第1制御圧Pc1が反転して上昇する。これに対して、アウタニードル弁42のリフトが一旦開始された以降は、第1噴孔41Xを遮蔽していたアウタニードル弁42
のアウタテーパー部とボディ41先端部の弁座面との間にノズル室R3に供給された燃料が回り込むようになる。そのため、アウタニードル弁42の開弁方向の受圧面積が実質的に増大する。
例えば、開弁状態にあるアウタニードル弁42の閉弁方向に作用する合力が開弁方向に作用する合力と丁度釣り合うときの第1制御圧Pc1を「アウタニードル閉弁圧Pconc」と称すると、アウタニードル閉弁圧Pconcはアウタニードル開弁圧Pconよりも大きくなる。これは、前述したように、アウタニードル弁42が開弁状態にある場合には、アウタテーパー部への燃料の回り込みによって開弁方向の受圧面積が増大するからである。そのため、アウタニードル弁42の開弁後においては、第1制御圧Pc1がアウタニードル開弁圧Pconに比して高くなっても、弁体452が半開位置に制御される限りアウタニードル閉弁圧Pconcより低く維持されるため、開弁状態は保持される。
次に、インナニードル弁43の作動状況について説明する。時刻t2において弁体452の変位量δhがh1まで増加しても、依然として第2燃料流出路C5は燃料排出路C6と遮断された状態に保持される。つまり、第2制御室R2からの燃料タンクTへの燃料の排出が禁止されることで、第2制御圧Pc2がインナニードル開弁圧Pcinよりも高圧に維持される。言い換えると、本実施形態においては、弁体452が半開位置に制御されるときの第2制御圧Pc2が確実にインナニードル開弁圧Pcinより高く維持されるように、インナ側受圧面積比Rin、インナスプリング48の付勢力等が設定されている。そのため、インナニードル弁43は確実に閉弁状態に保持される。
このように、制御弁45における弁体452の制御位置が半開位置にある場合にはアウタニードル弁42のみが開弁状態となる。その結果、インジェクタ40による燃料噴射は第1噴孔41Xからのみ行われる。
ところで、弁体452を半開位置に保持する期間が長くなると、インジェクタ40に供給される燃料やインジェクタ40自体の温度が変化して駆動装置46のピエゾ素子が伸縮する可能性がある。そうすると、これに起因して第1制御圧Pc1または第2制御圧Pc2に意図しない圧力変化を招く虞がある。前述したように、インナニードル弁43が開弁する時の第2制御圧であるインナニードル開弁圧Pcinは、第1制御圧Pc1に相関する。したがって、弁体452を半開位置に保持しているときの第1制御圧Pc1と第2制御圧Pc2との圧力差が少ないと、上記意図しない圧力変化が生じたときに、制御弁45の制御誤差を招く要因となる。
これに対して、本実施形態に係る燃料噴射制御装置10によれば、弁体452を半開位置に保持している間、第2制御圧Pc2を第1制御圧Pc1に比して高く維持し、且つその双方の差圧も充分に大きく確保できる。これによれば、弁体452を半開位置に保持している最中に第1制御圧Pc1または第2制御圧Pc2に多少の圧力変化が生じても、第2制御圧Pc2がインナニードル開弁圧Pcin以下となることがなく、インナニードル弁43が誤って開弁されることがない。つまり、アウタおよびインナニードル弁42,43の双方が同時に開弁されたり、インジェクタ40の噴射率や噴射角が目標値から乖離する等といった制御誤差(制御不良)が生じることを確実に抑制できる。
次に、弁体452を「半開位置」から「全閉位置」に切り替える際の作動状況について説明する。図3(a)において時刻t3は、弁体452を「半開位置」から再び「全閉位置」に切り替えるべくピエゾ駆動電圧が変更された時刻を表す。時刻t3において弁体452が上昇し始めるため、その後は弁体452の変位量δhが減少してゆく。その後、時刻t4において弁体452の変位量δhが0まで減少すると低圧ポート451Aが再び弁体452によって閉鎖され、第1燃料流出路C4と燃料排出路C6とが遮断状態となる。
その結果、第1制御室R1からの燃料タンクTへの燃料の排出が禁止された状態で、第1燃料流入路C2から高圧の燃料が流入し始める。これにより、第1制御圧Pc1が急増し、該第1制御圧Pc1がアウタニードル閉弁圧Pconcを超えた時点からアウタリフト量Lonが減少を開始する。そして、アウタリフト量Lonが0まで減少した時点でアウタニードル弁42が閉弁され、第1噴孔41Xからの燃料が噴射されなくなる。
次に、図3(b)について説明する。まず、弁体452を「全閉位置」から「全開位置」に切り替えた際の作動状況について説明する。時刻t1’は、弁体452を全閉位置(変位量δh=0)から全開位置(変位量δh=h2)に切り替えるべくピエゾ駆動電圧が変更された時刻を表す。同図における時刻t1’以前の状況は図3(a)における時刻t1以前の状況と同等であり、ここでの詳しい説明を割愛する。
時刻t1’以降、弁体452の下降が開始され、その変位量δhが増加してゆく。変位量δhがh2となる時刻t2’までは低圧ポート451Aおよび第1制御ポート451Bが共に開放された状態となるため、第1制御圧Pc1が低下する。これに際して、本実施形態においては、第1制御圧Pc1がアウタニードル開弁圧Pconまで低下する前に、確実に弁体452の変位量δhをh2まで増加させるべくピエゾ駆動電圧が制御される。弁体452が全開位置に到達した以降は、第1制御ポート451Bが弁体452によって閉鎖されるため、第1制御圧Pc1は再びレール圧Pcrに向かって上昇する。
ここで、弁体452が全開位置に制御されるときの第1制御圧Pc1が確実にアウタニードル開弁圧Pconより高く維持されるように、アウタ側受圧面積比Ron、アウタスプリング46の付勢力等が設定されている。したがって、弁体452の「全閉位置」から「全開位置」への切り替えに際しては、第1制御圧Pc1がアウタニードル開弁圧Pconよりも高く維持され、アウタニードル弁42は閉弁状態に保持される。
一方、第2制御ポート451Cの開閉状態に関しては、弁体452の変位量δhの増加に伴って第2制御ポート451Cが開放されると、第2燃料流出路C5と燃料排出路C6とが連通する。その結果、第2制御室R2から第2燃料流出路C5へと流出した高圧の燃料が第2制御ポート451Cを介して弁室452内に流入するようになる。そして、この燃料は低圧ポート451Aを介して燃料排出路C6へと流出し、該燃料排出路C6を通じて燃料タンクTに戻される。このような、第2制御室R2と燃料タンクTとの間の燃料の遣り取りにより、第2制御圧Pc2が低下してゆく。
本実施形態では、弁体452が全開位置に制御されるときの第2制御圧Pc2が確実にインナニードル開弁圧Pcin以下まで低下するように、インナ側受圧面積比Rin、インナスプリング48の付勢力等が設定されている。このようにして、第2制御圧Pc2がインナニードル開弁圧Pcinまで低下すると、インナニードル弁43が開弁し、インナリフト量Linが増加してゆく。インナリフト量Linが増加してゆくとこれに伴って第2制御室R2の室容積が減少する。そのため、インナニードル弁43の開弁を境に第2制御圧Pc2は反転して上昇してゆくことになる。
また、開弁状態にあるインナニードル弁43の閉弁方向に作用する合力が開弁方向に作用する合力と丁度釣り合うときの第2制御圧Pc2を「インナニードル閉弁圧Pcinc」と称すと、インナニードル閉弁圧Pcincはインナニードル開弁圧Pcinよりも大きくなる。これは、インナニードル弁43のリフトが一旦開始された以降は、第2噴孔41Yを遮蔽していたインナニードル弁43のインナテーパー部とボディ41先端部の弁座面との間にノズル室R3に供給された燃料が回り込み、インナニードル弁43の開弁方向の受圧面積が実質的に増大するからである。そのため、インナニードル弁43が開弁した後は、第2制御圧Pc2がインナニードル開弁圧Pcinに比して高くなっても、弁体4
52が全開位置に制御される限りインナニードル閉弁圧Pcincより低く抑えられ、その開弁状態が保持される。
このように、制御弁45における弁体452の制御位置が全開位置に有る場合には、インナニードル弁43のみが開弁状態となる。その結果、インジェクタ40による燃料噴射が第2噴孔41Yからのみ行われる。
次に、弁体452を「全開位置」から「全閉位置」に切り替える際の作動状況について説明する。図3(b)において時刻t3’は、弁体452を「全開位置」から再び「全閉位置」に切り替えるべくピエゾ駆動電圧が変更された時刻を表し、時刻t4’は変位量δhが0となる時刻を表す。時刻t3’以降、弁体452が上昇し始める。そして、第2制御ポート451Cが弁体452によって遮蔽されると第2燃料流出路C5と燃料排出路C6とが遮断され、第2制御室R2からの燃料タンクTへの燃料の排出が禁止された状態で第2燃料流入路C3から高圧の燃料が流入する。これにより、第2制御圧Pc2が急増し、該第2制御圧Pc2がインナニードル閉弁圧Pcincを超えた時点からインナリフト量Linが減少を開始する。そして、このインナリフト量Linが0まで減少した時点でインナニードル弁43が閉弁され、第2噴孔41Yからの燃料の噴射が停止される。
このように、ECU50は、制御弁45における弁体452を「全閉位置」に制御することで、アウタおよびインナニードル弁42,43が共に閉弁状態となり、インジェクタ40から燃料噴射が停止された状態となる。また、本実施形態にかかる燃料噴射制御装置10によれば、制御弁45における弁体452の制御位置を「半開位置」とすることでアウタニードル弁42のみを開弁し、第1噴孔41Xのみから燃料を噴射できる。また、弁体452の制御位置を「全開位置」とすることでインナニードル弁43のみを開弁し、第2噴孔41Yのみから燃料を噴射できる。なお、本実施形態においては弁体452の「全閉位置」、「半開位置」、「全開位置」のそれぞれが、本発明における「第1の位置」、「第2の位置」、「第3の位置」のそれぞれに対応している。
次に、ECU50により実行される内燃機関の運転状態に応じた燃料噴射制御の制御例を説明する。図4は、本実施形態における燃料噴射制御装置10が適用される内燃機関の概略構成を示すブロック図である。内燃機関1は、燃焼室内に直接燃料を噴射し、燃焼室内を圧縮した際の圧縮熱により自己着火する直噴式ディーゼル内燃機関である。
内燃機関1における気筒2の頂部には、該気筒2と同軸状にインジェクタ40が配置されている。気筒2内には、ピストン4が摺動自在に設けられている。このピストン4は、コンロッドを介してクランクシャフトに接続されており、ピストン4の往復運動に伴ってクランクシャフトが回転する。内燃機関1には吸気管5が接続されており、この吸気管5はシリンダヘッド9に設けられた吸気ポートを介して燃焼室に接続される。同様に、内燃機関1には排気管6が接続され、この排気管6はシリンダヘッド9に設けられた排気ポートを介して燃焼室に接続される。
ECU50は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態等を制御するほか、インジェクタ40による燃料噴射制御を行う。前述したように、インジェクタ40において、第1噴孔41Xがボディ41の軸線と成す角は、第2噴孔41Yが同軸線と成す角に比べて大きい。ここで、第1噴孔41Xによる燃料の噴射方向と気筒2の軸線Cとの成す角を第1噴射角θ1とし、第2噴孔41Yによる燃料の噴射方向と気筒2の軸線Cとの成す角を第2噴射角θ2とする。ボディ41は気筒2と同軸状に配置されているため、第1噴射角θ1は第2噴射角θ2に比べて大きくなる。また、第1噴孔41Xから噴射された燃料を「第1噴射燃料」と称し、第2噴孔41Yから噴射された燃料を「第2噴射燃料」と称する。
ここで、ECU50は、内燃機関1の運転状態に応じてその燃焼モードを、予混合燃焼モードおよび拡散燃焼モードの間で切り替える。具体的には、ECU40は、機関負荷及び機関回転数が比較的低い時は内燃機関1の燃焼モードを予混合燃焼モードに制御する。この場合、インジェクタ40からの燃料噴射制御としては、例えば、圧縮行程の初期から中期にて予混合気形成用の燃料噴射を行うことで気筒2内に予混合気を形成させる。次いで、圧縮上死点の近傍時期にて火種として少量の燃料を噴射することにより上記予混合気を燃焼させる。このように、予混合燃焼を行うことで排気エミッションの向上が図られる。
一方、ECU50は、機関負荷及び機関回転数が比較的高い時は、内燃機関1が要求する燃料噴射量が多くなるため、内燃機関1を拡散燃焼モードに制御する。この場合、圧縮上死点近傍において多量の燃料を噴射させることによりこの燃料を拡散燃焼させる。これにより、機関出力を優先させた燃焼が行われる。
ここで、内燃機関1を予混合燃焼モードで制御する場合、特に、予混合気形成用の燃料を第1噴孔41Xから噴射させてしまうと、第1噴射燃料が気筒2のボア壁面に気化する前に付着する虞がある。前述のように、第1噴射角θ1は第2噴射角θ2よりも大きいからである。ここで、気筒2のボア壁面に付着した燃料は、蒸発することなく液体として留まり、この燃料によりオイルが希釈される(ボアフラッシング)場合がある。希釈されたオイルは、その潤滑性能が低下するため、状況によっては、ピストン4の作動を阻害し、焼き付き等の発生の原因となる場合がある。また、気筒2のボア壁面に燃料が付着すると、スモークやHCの排出量が増加する原因となる。
そこで、この実施形態においてECU50は、内燃機関1を予混合燃焼モードで制御するとき(特に、予混合気を形成するための燃料噴射を行うとき)に、制御弁45における弁体452の制御位置を「全開位置」に制御し、インナニードル弁43のみを開弁状態とする燃料噴射(以下、「挟角噴射」という)を行う。この挟角噴射によれば、第1噴孔41Xからは燃料が噴射されず、第2噴孔41Yのみから燃料が噴射される。これにより、燃料の噴射角を小さくすることが可能となり、インジェクタ40から噴射された燃料(第2噴射燃料)が気筒2のボア壁面に付着する虞はない。
一方、ECU50は、内燃機関1を拡散燃焼モードで制御するときには、制御弁45における弁体452の制御位置を「半開位置」に制御し、アウタニードル弁42のみを開弁状態とする燃料噴射(以下、「広角噴射」という)を行う。ここで、広角噴射が行われるのは前述のように機関負荷及び機関回転数が比較的高い時であり、燃焼温度が高まることに起因して排気ガス中のスモーク量が比較的多くなる。これに対し、この広角噴射によれば、第2噴孔41Yからは燃料が噴射されず、第1噴孔41Xのみから燃料が噴射される。これにより、インジェクタ40から噴射される燃料の噴射角を大きくすることができ、内燃機関1の燃焼室に噴射された燃料噴霧の拡散(すなわち、微粒子化)が促進され、スモークの排出量を低減することができる。
以上のように、制御弁45における弁体452の制御位置を内燃機関1の運転状態に応じて切り替える制御例を説明したが、具体的な運転状態と弁体452の制御位置との関係については適宜変更しても勿論構わない。また、本実施形態のインジェクタ40では、第1噴孔41Xから噴射される第1噴射角θ1を第2噴孔41Yから噴射される第2噴射角θ2よりも大きく設定しているが、その大小関係が逆であっても構わない。その場合、インジェクタ40による挟角噴射(広角噴射)を行う際には燃料の噴射角が小さく(大きく)なる方の噴孔から噴射されるように制御弁45を制御すれば良い。
また、本実施形態においては、第1噴孔41Xおよび第2噴孔41Yにおけるボディ41の軸線との成す角を相違させることにより第1噴射角θ1および第2噴射角θ2を相違させているが、その代わりに他の手法を採用しても構わない。例えば、第1噴孔41Xと第2噴孔41Yの孔径を相違させることにより、第1噴射角θ1および第2噴射角θ2を相違させても良いのは勿論である。
また、本実施形態において、制御弁45の弁体452は、第1の位置(全閉位置)のときに燃料排出路C6を第1燃料流出路C4および第2燃料流出路C5の何れとも遮断させ、第2の位置(半開位置)のときに燃料排出路C6を第1燃料流出路C4および第2燃料流出路C5の何れか一方と連通させると共に他方と遮断させ、第3の位置(全開位置)のときに燃料排出路C6を第1燃料流出路C4および第2燃料流出路C5のうちの他方と連通させると共に一方と遮断させる機能を有していれば、他の構成を採用しても構わない。前述の構成例では、第1燃料流出路C4および第2燃料流出路C5のうち、上記「何れか一方」として第1燃料流出路C4を採用し、「他方」として第2燃料流出路C5を採用したが、これらを逆にした構成も本発明の技術的範囲に属するものである。
例えば、弁室452の第1制御ポート451Bを第2燃料流出路C5に接続し、第2制御ポート451Cを第1燃料流出路C4に接続した構成を採用することができる(以下、「第2構成」という)。この第2構成の場合には、制御弁45の弁体452を「半開位置」に制御したときには、低圧ポート451Aに接続された燃料排出路C6と第1制御ポート451Bに接続された第2燃料流出路C5が連通(導通)状態となり、燃料排出路C6と第1燃料流出路C4とが遮断される。そうすると、図1および2で示した構成(以下、「第1構成」という)のときとは逆に、第1制御室R1からの高圧燃料の排出が規制されることで第1制御圧Pc1が高く保持され、第2制御室R2からの高圧燃料の排出が許容されることで第2制御圧Pc2が低下する。
第2構成においては、制御弁45を半開位置に制御したときの第1制御圧Pc1が確実にアウタニードル開弁圧Pconより高く維持されるように、アウタ側受圧面積比Ron、アウタスプリング46の付勢力等を設定すると良い。また、第2制御圧Pc2が確実にインナニードル開弁圧Pcin以下まで低下するように、インナ側受圧面積比Rin、インナスプリング48の付勢力等を設定すると良い。これにより、インジェクタ40のインナニードル弁43のみが開弁され、第2噴孔41Yのみから内燃機関1の燃焼室へと燃料が噴射される。
また、第2構成において、制御弁45の弁体452を「全開位置」に制御すると、燃料排出路C6と第1燃料流出路C4が連通(導通)状態となり、燃料排出路C6と第2燃料流出路C5とが遮断される。そうすると、第2制御室R2からの高圧燃料の排出が規制されることで第2制御圧Pc2が高く保持され、第1制御室R1からの高圧燃料の排出が許容されることで第1制御圧Pc1が低下する。
第2構成においては、制御弁45を「全開位置」に制御するときの第1制御圧Pc1が確実にアウタニードル開弁圧Pcon以下に低下するように、アウタ側受圧面積比Ron、アウタスプリング46の付勢力等を設定すると良い。また、第2制御圧Pc2が確実にインナニードル開弁圧Pcinより高く維持されるように、インナ側受圧面積比Rin、インナスプリング48の付勢力等を設定すると良い。これにより、インジェクタ40のアウタニードル弁42のみが開弁され、第1噴孔41Xのみから内燃機関1の燃焼室へと燃料が噴射される。
また第2構成においても、制御弁45を「全閉位置」に制御する場合、燃料排出路C6を第1燃料流出路C4および第2燃料流出路C5の何れとも遮断させる点では第1構成と
同様である。したがって、この場合には、アウタおよびインナニードル弁42,43が共に閉弁状態となり、インジェクタ40からの燃料噴射は停止状態に保持される。
以上のように、本実施形態に適用される燃料噴射制御装置10によれば、単一の制御弁45を利用してアウタリフト量LonおよびインナリフトLinの夫々を独立に制御することが可能であり、且つ、制御弁45の誤作動を確実に防止することができる。そのため、アウタおよびインナニードル弁42,43の開閉状態を精度良く確実にコントロールすることができる。したがって、インジェクタ40から噴射される燃料噴射率や噴射角を、内燃機関1の運転状態に適した目標値に精度良く一致させることができる。
1 内燃機関
2 気筒
10 燃料噴射制御装置
30 コモンレール
40 インジェクタ
50 ECU
41 ボディ
42 アウタニードル弁
43 インナニードル弁
45 制御弁
46 駆動装置
41X 第1噴孔
41Y 第2噴孔
R1 第1制御室
R2 第2制御室
R3 ノズル室
C1 燃料供給路
C2 第1燃料流入路
C3 第2燃料流入路
C4 第1燃料流出路
C5 第2燃料流出路
C6 燃料排出路
451 弁室
452 弁体
453 内部貫通孔
461 電歪アクチュエータ
451A 低圧ポート
451B 第1制御ポート
451C 第2制御ポート

Claims (1)

  1. 内燃機関の燃焼室に臨む先端部に第1噴孔および該第1噴孔よりも先端側に位置する第2噴孔を備えたボディと、
    前記ボディ内に摺動可能に収容されて先端側で前記第1噴孔を開閉する筒状のアウタニードル弁と、
    前記アウタニードル弁の内周側に摺動可能に収容されて先端側で前記第2噴孔を開閉する柱状のインナニードル弁と、
    前記アウタおよびインナニードル弁の先端側に設けられると共に該アウタおよびインナニードル弁の各々の開弁状態にて前記第1噴孔および第2噴孔の夫々から噴射するための燃料が供給される室であって、且つ、該アウタニードル弁の受圧部が収容されており、内部の燃料の圧力であるレール圧により該アウタニードル弁の受圧部を開弁方向に押圧するノズル室と、
    前記ノズル室から独立した状態で前記アウタニードル弁の背面側に設けられると共に前記インナニードル弁の受圧部が収容されており、内部の燃料の圧力である第1制御圧によって該アウタニードル弁の背面部を閉弁方向に押圧する一方で該インナニードル弁の受圧部を開弁方向に押圧する第1制御室と、
    前記ノズル室および第1制御室から独立した状態で前記インナニードル弁の背面側に設けられており、内部の燃料の圧力である第2制御圧によって該インナニードル弁の背面部を閉弁方向に押圧する第2制御室と、
    高圧の燃料を発生する高圧発生部と、
    前記高圧発生部と前記ノズル室とを接続して該ノズル室に燃料を供給する燃料供給路と、
    前記燃料供給路と前記第1制御室とを接続する第1燃料流入路と、
    前記燃料供給路と前記第2制御室とを接続する第2燃料流入路と、
    上流側端が前記第1制御室に接続された第1燃料流出路と、
    上流側端が前記第2制御室に接続されて下流側端が前記第1燃料流出路の下流側端と合流する第2燃料流出路と、
    前記第1および第2燃料流出路の合流部と燃料タンクとを接続する低圧排出路と、
    前記低圧排出路、前記第1および第2燃料流出路の各々に連通する弁室と、該弁室に収容された弁体を有し、該弁体の位置を切り替えて前記第1および第2燃料流出路の各々における前記低圧排出路との連通・遮断状態を切り替える制御弁と、を備え、
    前記制御弁を制御して前記第1および第2制御圧を調節することで前記アウタおよびインナニードル弁の開閉状態を独立に制御する内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
    前記制御弁の前記弁体は、第1の位置のときに前記低圧排出路を前記第1および第2燃料流出路の何れとも遮断させ、第2の位置のときに前記低圧排出路を前記第1および第2燃料流出路の何れか一方と連通させると共に他方と遮断させ、第3の位置のときに前記低圧排出路を前記第1および第2燃料流出路のうちの他方と連通させると共に一方と遮断させることを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
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