JP2010215538A - 歯科用仮封材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた封鎖性を有するだけでなく、治療期間中の咬合等による衝撃(外来刺激)を緩和し、更に仮封材を除去する際には、容易に除去できる程度の弾性を併せ持つ仮封材を開発することを目的とする。
【解決手段】 (A)ラジカル重合性単量体、好適には、少なくとも一部として(a)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含有してなる
(B)ロジン系環式テルペン酸、具体的にはアビエチン酸、レボピマル酸、ピマル酸等
を含んでなり、且つ光重合開始剤を含まないことを特徴とする光硬化性歯科用仮封材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、歯科用仮封材に関するものである。詳しくは、硬化後に適度な弾性を有する歯科用仮封材に関するものである。
仮封材とは、歯科治療において、歯牙齲蝕部位を削除して窩洞形成を行った後、一時的に窩洞を清浄に封鎖する目的で使用する暫間充填材料である。歯牙の保存治療や歯内治療において頻繁に使用され、充填期間は通常約一週間である。仮封材を充填する目的は、主に治療期間中の歯内組織の保護である。具体的には、(1)窩洞内歯質の細菌感染防止、(2)外来刺激の遮断、(3)治療薬物の漏出防止、などが挙げられ、順調な治療を継続するためには重要な要素である。
仮封材に期待される性質としては、(1)咬合圧に耐え、破損、脱落および変形しないこと、(2)緊密な封鎖性があること、(3)充填および除去操作が容易であること、などが挙げられる。しかしながら、これら全てを満足する材料は、従来存在しなかった。それは、「封鎖性があること」および「脱落しにくいこと」という条件と、「除去操作が容易であること」という条件が相反しているためである。しかしながら、これら全てを満足する材料は、従来存在しなかった。それは、「封鎖性があること」および「脱落しにくいこと」という条件と、「除去操作が容易であること」という条件が相反しているためである。
従来の仮封材は、大別して次の4種類に分けられる。
(1)熱可塑性樹脂(テンポラリーストッピング)、
(2)水硬化性仮封材、
(3)仮封セメント(ユージノールセメント、リン酸亜鉛セメント、ポリカルボン酸セメント)、
(4)レジン系仮封材。
熱可塑性樹脂は、加熱し軟化させた後、窩洞に充填して用いるもので、充填、除去操作が簡便なため、多く利用されている。しかし、冷却硬化時に収縮するため、窩洞を緊密に封鎖する効果は期待できない。
水硬化性仮封材は、口腔内の唾液と反応して硬化する材料である。容器から取り出し、そのまま窩洞に充填するだけの簡便なものだが、硬化に数時間を有すること、摩擦や脱落が起こりやすいことなどの欠点がある。
仮封セメントは、数分で適度な硬さの硬化体となる材料であり、鎮痛、鎮静および抗菌作用を持つものもある。しかし、操作性がやや面倒であり、また、硬化体が硬いため除去操作が困難である。
レジン系仮封材は、重合開始剤により硬化させる材料であり、特に、該重合開始剤として光重合開始剤(可視光硬化型)を用いたものは可視光照射で短時間に硬化させることができる操作性の良好さから格別に有用性が高い。しかし一方で、該レジン系仮封材は、一般に硬化体が硬く脆いため除去しにくい問題があり、適度に柔らかさを付与することで除去操作性を改良した製品もあるが、充分な性能を具備しているとはいえない。
ここで、レジン系仮封材として、ラジカル重合性単量体、フィラー、可塑剤および重合開始剤からなる重合性単量体組成物において、ロジンまたはサンダラックを含有させたものが、乾燥した歯面とのヌレ性を向上させ、封鎖性に優れた仮封材となり得るとして、既に開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、該仮封材は、光重合開始剤を含めた、重合開始剤による高活性な重合反応を利用して硬化させるため、得られる硬化体は比較的硬く、硬化体の弾性の観点からは必ずしも充分とは言えるものではなかった。即ち、優れた封鎖性と、治療期間中の咬合等による衝撃(外来刺激)を緩和し、更に仮封材を除去する際には、容易に除去できる程度の弾性を併せ持つ仮封材が求められていた。
このように、仮封材は歯科治療において頻繁に使用される材料であり、短期間とはいえ、治療期間途中の歯内組織を保護する役割は大きい。しかし、封鎖性が悪かったり脱落の危険性があり、歯内組織保護の観点から十分に満足できないものが多かった。また、充填・除去が困難であったり、その操作に時間がかかったりするものも多かった。一般的に、充填および除去操作が容易なものは封鎖性が悪く、封鎖性の良いものは充填および除去操作が煩雑なものが多い。
特開平9−268109号公報
以上の背景にあって本発明は、優れた封鎖性、操作性を有するだけでなく、治療期間中の咬合等による衝撃(外来刺激)を緩和し、更に仮封材を除去する際には、容易に除去できる程度の弾性を併せ持つ仮封材を開発することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねてきた。その結果、ラジカル重合性単量体と、ロジン系環式テルペン酸を含んでなる組成物に光照射すると、適度な弾性を有する硬化物となり、封鎖性と操作性(除去性)を両立する仮封材となり得ることを見出し、本願発明を開発するに至った。
即ち、本願発明は、(A)ラジカル重合性単量体、および(B)ロジン系環式テルペン酸を含んでなり、且つ光重合開始剤を含まないことを特徴とする光硬化性歯科用仮封材である。
本発明の歯科用仮封材は、一般的に歯科で使用されている活性の高い光重合開始剤を含有していないため、可視光照射しても高度に重合は進行せず、硬い硬化体は得られないが、他方でロジン系環式テルペン酸の作用により、該可視光照射によって適度な弾性を有する硬化体を形成させることができる。硬化体の弾性は、ゴムの硬度の測定において一般的に使用されているショアA硬度により数値化することができる。ここで述べる適度な弾性とは、ショアA硬度の値が45〜70、より好適には47〜67の硬度のを有する硬化体を指す。
このように本発明の歯科用仮封材は、適度な弾性を有するため、確実に窩洞を封鎖して歯内組織を保護することが可能である。また、治療期間中の咬合等による衝撃(外来刺激)を緩和することができる。更には、仮封材を除去する際に、歯質に仮封材の一部を残すことなく容易に除去することが可能である。このことは、臨床上非常に有用である。すなわち、咬合等による衝撃によって仮封材の脱落等が生じると、歯髄に悪影響を及ぼす原因となる可能性があり、また、仮封材の一部が歯質に残った場合には、補綴物装着(接着)の際に、窩洞と補綴物との適合性を低下させてしまい、歯面で接着阻害を起こし、二次齲蝕等の原因になる可能性があるが、前記性状の本発明の仮封材を用いればこれらの問題が良好に改善でき好適である。
<(A)ラジカル重合性単量体>
本発明の歯科用仮封材において、(A)ラジカル重合性単量体としては、分子中に少なくとも一つの重合性不飽和基を持つ重合性単量体であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができるが、(A)ラジカル重合性単量体の一部として、(a)酸性基含有ラジカル重合性単量体を使用すると、歯質への相互作用による封鎖性向上の観点から好ましい。酸性基含有ラジカル重合性単量体としては、1分子中に少なくとも一つのラジカル重合性不飽和基と少なくとも一つの酸性基を有するラジカル重合性単量体であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。
ここで酸性基とは、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}、カルボキシル基{−C(=O)OH}、スルホ基(−SOH)等の遊離の酸基のみならず、当該酸性基の2つが脱水縮合した酸無水物構造(例えば、−C(=O)−O−C(=O)−)、あるいは酸性基のOHがハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基(例えば、−C(=O)Cl)等など、該基を有する重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を示す基を示す。
(a)酸性基含有ラジカル重合性単量体として使用できるものとして、(メタ)アクリル酸、N−(メタ)アクリロイルグリシン、N−(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ハイドロジェンサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ハイドロジェンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ハイドロジェンマレート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸、O−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルチロシン、N−(メタ)アクリロイルフェニルアラニン、N−(メタ)アクリロイル−p−アミノ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−O−アミノ安息香酸、p−ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4−(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、N−(メタ)アクリロイル−5−アミノサリチル酸、N−(メタ)アクリロイル−4−アミノサリチル酸等の分子内に1つのカルボキシル基を有す重合性単量体、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物;11−(メタ)アクリロイルオキシウンデカン−1,1−ジカルボン酸、10−(メタ)アクリロイルオキシデカン−1,1−ジカルボン酸、12−(メタ)アクリロイルオキシドデカン−1,1−ジカルボン酸、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキサン−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−3’−メタクリロイルオキシ−2’−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)プロピル サクシネート、1,4−ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート、N,O−ジ(メタ)アクリロイルチロシン、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート アンハイドライド、4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)トリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメリテート、4−(メタ)アクリロイルオキシデシルトリメリテート、4−アクリロイルオキシブチルトリメリテート、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,2,6−トリカルボン酸無水物、6−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−2,3,6−トリカルボン酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルカルボニルプロピオノイル−1,8−ナフタル酸無水物、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルナフタレン−1,8−トリカルボン酸無水物等の分子内に複数のカルボキシル基あるいはその酸無水物基を有す重合性単量体、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物(ただしこれらはカルボキシル基を有す化合物である場合);2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ジハイドロジェンフォスフェート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル) ハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル フェニル ハイドロジェンフォスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル ジハイドロジェンフォスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル ジハイドロジェンフォスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2−ブロモエチル ハイドロジェンフォスフェート等の分子内にホスフィニコオキシ基又はホスホノオキシ基を有す重合性単量体(重合性酸性リン酸エステルとも称す)、およびこれらの酸無水物、酸ハロゲン化物;ビニルホスホン酸、p−ビニルベンゼンホスホン酸等の分子内にホスホノ基を有す重合性単量体;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸等の分子内にスルホ基を有す重合性単量体が例示される。
これら酸性基含有ラジカル重合性単量体は単独で用いても、複数の種類のものを併用しても良い。
上記酸性基含有重合性単量体のなかでも、歯質との相互作用つまり、封鎖性向上の観点から、重合性酸性リン酸エステルが特に好ましい。
(a)酸性基含有ラジカル重合性単量体の配合量は特に限定されないが、(A)ラジカル重合性単量体100に対して、5〜60質量%であることが好ましい。特に好ましくは、15〜25質量%である。(a)酸性基含有ラジカル重合性単量体の配合量が5質量%未満の場合、歯質に対する相互作用が低下し、また、60質量%を超えると硬化体の強度が低下するため、封鎖性が低下する傾向にある。
一方、(A)ラジカル重合性単量体において、上記酸性基含有ラジカル重合性単量体以外の重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリジジル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル(メタ)アクリレート、ベンジルメタアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリルモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2'−ビス[4−(メタ)アクリオイルオキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシエトキシエトキシエトキシフェニル]プロパン、2,2'−ビス{4−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,2,4−トリメチルヘキサン、1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)−2,4,4−トリメチルヘキサン、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート系単量体;フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレン、α−メチルスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。
<(B)ロジン系環式テルペン酸>
本発明の歯科用仮封材において、(A)ラジカル重合性単量体に(B)ロジン系環式テルペン酸を配合することにより、一般的に歯科で使用されている光重合開始剤によって硬化させたものと比較して、可視光照射により適度な弾性を有する硬化体を形成させることができる。ここで、ロジンとは、松科植物から得られる樹脂油のうち、精油などの揮発性物質を留去したあとの残留樹脂であり、こうしたロジンに含有されている環式テルペン酸が、本発明では上記(B)成分として配合される。なお、係るロジン系環式テルペン酸は、該ロジンとして、或いは該ロジンからの単離精製成分として配合するだけでなく、合成したものであっても良好に使用できる。
上記ロジン系環式テルペン酸としては、硬化体の弾性から下記のアビエタン骨格〔一般式(1)〕、ピマラン骨格〔一般式(2)〕、イソピマラン骨格〔一般式(3)〕、およびラブダン骨格〔一般式(4)〕の4つの基本炭化水素骨格のうち、いずれかを有するものが好ましい。
Figure 2010215538
Figure 2010215538
Figure 2010215538
Figure 2010215538
式中R1〜R11はそれぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、およびアリール基からなる群より選択される基である。ここで、上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の炭素素1〜6の数直鎖状または分岐鎖状のものが好ましい。また、シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素素1〜6のものが好ましい。アリール基としては、フェニル基、トリル基が好ましい。また、上記アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、およびアリール基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、およびアミノ基等の置換基を有するものであっても良い。本発明において、R1〜R11として特に好ましい基は、メチル基、エチル基等の単素数1〜3のアルキル基である。
本発明において、上記ロジン系環式テルペン酸を配合することにより、ラジカル重合性単量体が可視光照射により適度な弾性を有する硬化体になる詳細は、必ずしも定かではないが、以下の方法により実施される、光重合によるラジカル重合性の確認試験により、緩やかなラジカル重合が生じていることが確認された。すなわち、メタクリル酸メチル100質量部に対して、ロジン系環式テルペン酸を1質量部添加し、歯科用可視光照射器(例えば、トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて30秒間、波長390〜700nmの可視光を照射して試料を硬化させたときの、ラジカル重合性不飽和基の残存率を、硬化前後の試料の赤外吸収スペクトルから算出したところ、残存率は通常30〜40%程度になる。この結果から、上記硬化が緩やかなラジカル重合によることが確認でき、これはロジン系環式テルペン酸の下記共通構造
Figure 2010215538
部分の立体構造に起因して重合反応が立体障害を受け何らか抑制されているのではないかと推測される。
なお、上記光重合によるラジカル重合性の確認試験において、可視光照射時間を更に長くしていくと、上記ラジカル重合性不飽和基の残存率は除々に低下して行くが、24時間程度照射した後は通常、頭打ちになり、光照射の強度を少々変化させても該残存率は40〜60%程度は残存したままになる。すなわち、このロジン系環式テルペン酸を配合して生じるラジカル重合は、一定以上の進度には進行しない極めて緩やかな反応であり、これにより硬化体の前記適度な弾性は良好に保持され、仮封材として使用に適したものになる。
本発明で使用される上記ロジン系環式テルペン酸の具体例は、前記一般式(1)で示されるものとして、アビエチン酸、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、デヒドロアビエチン酸等、前記一般式(2)および(3)で示されるものとして、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸等、前記一般式(4)で示されるものとして、ラブダノール酸等が挙げられる。これらの中でも、硬化体の弾性の観点から、アビエチン酸が特に好ましい。
(B)ロジン系環式テルペン酸の配合量は、(A)ラジカル重合性単量体100質量部に対して、3〜50質量部であることが好ましい。さらに好ましくは10〜30質量部である。(A)ラジカル重合性単量体100質量部に対して、(B)ロジン系環式テルペン酸が3質量部未満の場合、光照射しても硬化性が低下してしまう。また、50質量部を超えると、好ましい弾性が得られない。
なお、上記(A)ラジカル重合性単量体および(B)ロジン系環式テルペン酸を含んでなる本発明の仮封材は、前記したとおり可視光照射された際の該ロジン系環式テルペン酸の作用により緩やかなラジカル重合を生じせしめ、適度な弾性の硬化体に保持することが大きな特徴であるため、光重合を強力に進行させてこの硬化状態を保持できなくさせてしまう化合物、すなわち、光重合開始剤は含有させない。光重合開始剤は、可視光照射によってそれ自身が分解し、ラジカルを高活性で発生し化合物を含む可視光硬化型のものが該当する。詳細には、前記光重合によるラジカル重合性の確認試験(可視光照射時間30秒)において、ラジカル重合性不飽和基の残存率が20%以下になるものである。斯様な光重合開始剤の具体例としては、α−ジケトン系化合物またはチオキサントン系化合物などと各種アミン類とを組合せたものや、アリールボレート誘導体、増感色素、および光酸発生剤から成るような多成分混合型の光重合触媒等などが挙げられる。
なお、このような光重合開始剤は、該光重合開始剤としての作用を実質的に有しない極微量であれば、たとえ含有されていたとしても実質的に含有されていない態様として許容される。
このような光重合開始剤が仮封材に含有されていると、可視光照射によりラジカル重合性単量体のほとんどが重合し、硬化体は硬く硬化してしまい、仮封材に求められる除去性、封鎖性、硬化体弾性を満足することは困難である。また、これらの重合開始剤の配合量を少なくすることで硬化体の弾性を調整しようとしても、重合に要する時間(硬化時間)を遅延させることはできるものの、やはり最終的にはラジカル重合性単量体のほとんどが重合してしまうことになり易く、硬い硬化体しか得られないのが普通である。更に重合禁止剤などを組み合わせた場合においても、同様の理由で目的を達成することは困難である。
本発明の仮封材には、機械的強度および耐水性を向上させるために(C)無機充填剤を含有させるのが好ましい。使用することができる無機充填剤としては、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、貴金属(例えばバリウム、ストロンチウム、ジルコニウム)を含むガラス、アルミノシリケート、ガラスセラミックス、シリカやシリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・アルミナなどの複合無機酸化物などが挙げられ、このうちシリカが最も好ましい。
これらの無機充填剤は、シランカップリング剤に代表される表面処理剤で疎水化することでラジカル重合性単量体とのなじみを良くし、機械的強度や耐水性を向上させることができる。疎水化の方法は公知の方法で行えばよく、シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが好適に用いられる。上記各種無機充填剤は単独または二種以上を混合して使用することができる。
本発明に用いることができる(C)無機充填剤の配合量は特に限定されないが、(A)ラジカル重合性単量体100質量部に対して、30〜150質量部の範囲で用いるのが好ましく、特に、50〜80質量部の範囲で用いるのが好ましい。
本発明の歯科用仮封材においては、その物性を著しく低下しない範囲で更に他の添加物を添加しても良い。かかる添加剤としては、重合禁止剤、紫外吸収剤、可塑剤、顔料、酸化防止剤、抗菌剤、界面活性剤等が挙げられる。なお、化学重合開始剤は、光重合開始剤を含有させないのと同様の理由により含有させないのが好ましい。
本発明の歯科用仮封材の調製方法は、既知の歯科用仮封材の調整方法となんら変わることはない。即ち、(A)ラジカル重合性単量体、(B)ロジン系環式テルペン酸を赤色光などの不活性光下にて適量計量し、均一溶液になるまでよく混合する。(C)無機充填剤を添加する場合は、更に、ライカイ機等の一般的な混練機によって均一になるまで混練することにより、ペースト状の組成物を得ることができる。ただし、遮光した状態で混練する等の注意が必要である。
本発明の歯科用仮封材の使用方法は、基本的には通常の仮封材と同様である。即ち、歯牙に窩洞を形成した後、歯科用仮封材を充填して適当に小窩裂溝を形成し、ついで歯科用照射器を用いて可視光、通常は波長390〜700nmのものを照射し、硬化させればよい。なお、歯科用仮封材を窩洞から除去するときは、エキスプローラーやエキスカベーターのような器具で抉ればよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
なお、実施例および比較例で使用した化合物とその略称を(1)に、本発明の歯科用仮封材の評価方法を(2)に示す。
(1)略称および構造
(A)ラジカル重合性単量体
Bis−GMA;2,2’−ビス{4−[3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}プロパン
3G;トリエチレングリコールジメタクリレート
D−2,6E;2,2’−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン
HEMA;2−ヒドロキシエチルメタクリレート
TMPT;トリメチロールプロパントリメタクリレート
UDMA;1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルオキサン
(a)酸性基含有ラジカル重合性単量体
SPM;2−メタクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ハイドロジェンホスフェートとの2:1の混合物
MDP;10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート
MAC−10;11,11−ジカルボキシウンデシルメタクリレート
4−META;4−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸
(B)ロジン系環式テルペン酸
AE;アビエチン酸
Figure 2010215538
LP;レボピマル酸
Figure 2010215538
PA;ピマル酸
Figure 2010215538
(C)無機充填剤
F1;平均粒径0.4μmの球状シリカーチタニア(γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン疎水化処理物)
F2;粒径0.02μmの非晶質シリカ(メチルトリクロロシラン処理物)
光重合開始剤
CQ;カンファーキノン
DMBE;N,N−ジメチル安息香酸エチル
(2)評価方法
(I)ショアA硬度
硬化体の弾性を評価する指標として、ショアA硬度を用いた。以下、評価方法を示した。
硬化体を作製し、37度水中に24時間浸漬した後、ショアA硬度計によって測定する。測定はJIS K6253に従った。
(II)除去操作性
抜去した新鮮牛歯の歯冠部に、直径3mmX深さ2mmの窩洞を形成し、試料を充填した。次に、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて30秒間光照射し試料を硬化させ、37度の水中に24時間浸漬した。その後、エキスプローラーによって除去操作を行い、その操作性を以下の4段階で評価した。
A・・・容易に一塊となって除去できる。
B・・・一塊となって除去することはできないが、歯面に残すことなく容易に除去できる。
C・・・容易に除去できず、窩洞内に一部残ってしまう。
D・・・硬すぎて除去できない。
(III)封鎖性
抜去した新鮮牛歯の歯冠部に、直径3mmX深さ2mmの窩洞を形成し、試料を充填したる。次に、歯科用可視光照射器(トクソーパワーライト、トクヤマ社製)にて30秒間光照射し試料を硬化させ、37度の水中に24時間浸漬した。その後、濃度0.1%のフクシン水溶液中において、4度と60度の熱サイクルを60往復行った。熱サイクル終了後、充填した試料を除去し、色素の侵入状態を肉眼により観察した。評価は以下の5段階とした。
A・・・色素の侵入が全く認められない。
B・・・エナメル質の一部に色素の侵入が認められる。
C・・・エナメル質の中部まで色素の侵入が認められる。
D・・・象牙質の一部に色素の侵入が認められる。
E・・・窩洞の象牙質部分の深部まで色素の侵入が認められる。
F・・・窩洞全体に色素が侵入している。
実施例1
(A)ラジカル重合性単量体として6gのBis−GMAと4gの3G、(B)ロジン系環式テルペン酸として2gのAEを量り取り、混合し本発明の仮封材を調製し、ショアA硬度、除去操作性および封鎖性を評価した。仮封材の組成を表1に、評価結果を表2に示した。
実施例2〜22、比較例1〜8
実施例1の方法に準じ、組成の異なる仮封材を調製し、ショアA硬度、除去操作性および封鎖性を評価した。仮封材の組成を表1および表3に、評価結果を表2および表4に示した。
Figure 2010215538
Figure 2010215538
Figure 2010215538
Figure 2010215538
実施例1〜22は各成分が本発明で示される構成を満足するように配合されたものであるが、いずれの場合においても、ショアA硬度における硬化体の硬度、除去操作性のしやすさ、封鎖性において、良好な結果を示した。
これに対して比較例1は、本発明で示される(A)ラジカル重合性単量体を含んでいない場合であるが、光照射しても硬化しないため評価出来なかった。
比較例2〜4は、本発明で示される成分に光重合開始剤を一般的な配合量で添加した場合であるが、いずれの場合においても硬化体が硬く、除去時に歯面に強固に付着し除去操作性が悪かった。
また、比較例5および6は、本発明で示される(B)ロジン系環式テルペン酸を含んでいない場合であるが、いずれの場合においても硬化せず、仮封材として使用できるものではなかった。
さらに、比較例7および8は、光重合開始剤を微量添加して、ロジン系環式テルペン酸含有系と同等の硬化状態を再現しようとした系であるが、硬化時間が非常に遅くなったものの、最終的には硬い硬化物となり、除去操作性が悪かった。

Claims (4)

  1. (A)ラジカル重合性単量体、および(B)ロジン系環式テルペン酸を含んでなり、且つ光重合開始剤を含まないことを特徴とする光硬化性歯科用仮封材。
  2. (A)ラジカル重合性単量体の少なくとも一部として、(a)酸性基含有ラジカル重合性単量体を含有してなる請求項1記載の歯科用仮封材。
  3. (A)ラジカル重合性単量体100質量部に対して、(B)ロジン系環式テルペン酸の配合量が3〜50質量部である請求項1または請求項2に記載の歯科用仮封材。
  4. さらに、(C)無機充填剤を含有してなる請求項1〜3の少なくとも一項に記載の歯科用仮封材。
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