以下、本発明を実施するための最良の形態として、キッチン用カウンターに適用される樹脂成形体の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した樹脂成形体の製造方法を経て製造された人工大理石からなるカウンター2のワークトップの構成例である。
樹脂成形体としてのカウンター2は、システムキッチンに適用される場合には、キャビネット上に載置し、固定されるものである。カウンター2は、前縁26aや水返し、バックガードを備えている。
このカウンター2のサイズは、通常奥行きが60〜98cm程度、幅が180cm〜300cm程度となり、顧客の要望等によりサイズが決定される。
また、カウンター2には、例えば花びら等の特定模様を構成するインサート体11を表面に露出されている。本発明では、カウンター2及びインサート体11は、アクリル系の人工大理石を素材としている。この人工大理石は、アクリル系樹脂に水酸化アルミニウムや二酸化珪素等の無機充填剤を配合することにより得られる、いわゆるアクリル系人工大理石である。しかしながら、このインサート体11は、かかる材料により構成される場合に限定されるものではなく、ポリエステルやエポキシ系やFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の樹脂材料で構成されていてもよく材質を限定しない。
図2は、このカウンター2の断面構成図を示している。このカウンター2は、基材12を構成するベース樹脂を硬化させる過程で、模様となるインサート体を固定するように一体化させたものである。
カウンター2の基材12を形成するベース樹脂は、型体にベース樹脂であるアクリル系樹脂を注入し硬化して得られるものである。
インサート体11は、その下面がカウンター2の表面21aに直接露出するように基材12に埋め込まれている。図3(a)のインサート体11の斜視図であり、図3(b)と図3(c)は、インサート体11の平面図である。このインサート体11は、カウンター2の表面21aに表出させる模様を構成する模様面82aを頂部に形成させた凸部82が、基板81の表面81a上において形成されている。この模様面82aを介してカウンター2の表面21aに微細な特定模様を表出させることが可能となる。この図3の例では、5〜20mm程度の大きさからなる花びらの模様に応じた模様面82aが形成されるように基板81上に凸部82を凸設している。また、この模様面82aはカウンター2の表面21aにおいて直接露出するものであることから、互いに平行に、しかも高い平滑度をもって構成されている。なお、この凸部82により構成される模様はいかなるものであってもよいことは勿論である。また、凸部82は、意匠目的の材料に限らず、機能を付加する材料や形状を付加する材料でもよく、材質や使用目的に限定されるものではない。
基板81には、中央において開口83が設けられている。そして、この開口83には、図2、図3(c)に示すように、基板81の裏面81b側において、例えばコイルバネで構成される押さえ部材14が接合されている。この押さえ部材14は、基板81に対して接着剤等により着脱不能に接合されていてもよいし、単に開口83に対して機械的に着脱自在に嵌合されていてもよい。
ここでいうコイルバネとは、JIS B0103でいうところの円すいコイルばね、或いは圧縮コイルばね、円形コイルばね(その分類中でも円すいコイルばね)、異形コイルばね等を含むものであり、鉄線をコイル状や螺旋状などに巻き上げて弾性変形可能に構成したあらゆる対象を含むものである。また、このコイルバネは、一般的にいうところのつる巻きバネにも相当するものである。また、コイルバネとしては、内部に通じる空隙が形成された弾性体であればよく、押圧した際においても内部に通じる空隙が形成されていることが必要である。この空隙を通じて基材としてのベース樹脂をコイルバネ内部へと充填させることが可能となる。
ちなみに、この押さえ部材14は、合成樹脂材で構成されている。図4(a)は、押さえ部材14のコイルバネの平面図であり、図4(b)は、その側面図を示している。押さえ部材14は、最上部において押圧部材が当接される当接部214が形成されてなるとともに、底面213が設けられ、この当接部214から底面213にかけて下方に向けて縮径されるように渦巻状に巻きまわされた形状に成形され、また空隙211も形成されている。そして、この空隙211を介して内部(図4(a)でいうところの、底面よりも上側にある開空間)へ樹脂を流し込むことが可能となり、また当該内部から空隙211を介して外部に樹脂を流し込むことが可能となるように構成されている。押さえ部材14の持つバネ定数は、成形時の圧縮の障害になる強さ未満で、基材を流し込む際の意匠板の固定するに充分な強さ以上であればよい。押さえ部材14は、少なくともその上端がインサート体11を構成する基板81の裏面81bに接触し、少なくともその下端がカウンター2の裏面21bから直接露出する場合もある。
なお、このインサート体11は、図2に示すように複数個に亘って規則的に、又はランダムに配置されている。このインサート体11の配置間隔、或いは図3(b)に示すように隣接する凸部82間の間隔t11は、1mmもしくは2mm以上となるように調整されていることが望ましいが、その理由については後述する。
なお、インサート体11は、この凸部82の構成を省略するようにしてもよい。かかる場合には、インサート体11における基板81が直接表面に露出する構成となる。
また、このインサート体11には、上述したように裏面81bにおいて押さえ部材14が接合されており、インサート体11がカウンター2の裏面21bから露出することはない。本実施例では、インサート体11を基材12を構成するベース樹脂とほぼ同一性質の樹脂を使用している場合を想定しているが、これに限定されるものではなく、互いに異なる樹脂を使用するようにしてもよい。また、このインサート体11を構成する材料は樹脂以外に例えば金属で構成するようにしてもよい。
また、インサート体11の材料と基材12を構成するベース樹脂とを組み合わせる際には、それぞれの熱膨張係数に着目するようにしてもよい。基材12を構成するアクリル系人工大理石の熱膨張係数は、例えば5×10−5である。このような材料からなる基材12に対して、インサート体11の材料を組み合わせる際に、同じ素材であるアクリル系人工大理石や、熱膨張係数5×10−5を示すポリプロピレン樹脂では美麗に仕上がった。その理由として、インサート体11の材料と基材12を構成するベース樹脂とを同一の熱膨張係数とすることにより、製造時に加わる温度に対しても同一の熱膨張挙動を示すことから互いに歪みが生じることなく、空隙が表出してしまうのを抑えることができるためである。また、熱膨張係数1.2×10−5の鉄や熱膨張係数1.7×10−5のステンレスを意匠板としてのインサート体11に使用した場合でも、基材12との間で間隙を生じることはなかったが、表面の歪み修正のため表面研磨を伴う必要がある。また熱膨張係数8.5×10−6のガラスをインサート体11に使用した場合、基材12との間で間隙が生じてしまい、本発明の実施には適さなかった。
なお、この基材12の板厚t12は、7〜10mm程度であり、インサート体11の板厚t13は、5〜8mm程度である。なお、この基材12の板厚t12とインサート体11の板厚t13との差分、換言すれば、インサート体11を構成する基板21の裏面81bからカウンター2の裏面21bまでの厚さは、2mm程度とされている。
次に、本発明を適用した樹脂成形体の製造方法について説明をする。
図5は、樹脂成形体の製造方法を示すフローである。先ずステップS11において、上下に対向する上型体51と下型体52の間に上述したインサート体11を配置する。なお、この上型体51と下型体52の間には、ガスケット33が両側に介装されており、後段において注入する樹脂の漏洩を防止している。ガスケット33の代替として、何れかの材質からなるシール材を用いるようにしてもよい。この上型体51と下型体52には、ヒータ35、36がそれぞれ実装されており、これらを加熱可能としている。
このステップS11においてインサート体11の配置は、最終的にカウンター2の表面21aに形成される模様に影響を及ぼすことになることから、所望の模様となるようにこれを載置していくことになる。
インサート体11と基材12とにより下型体52の上面52aに相当するパネル表面に描かれる模様が互いに異なるようにしたい場合には、そのようにインサート体11を載置することになる。このステップS11においては下型体52に対して上型体51がある程度押し上げられた状態にあり、広い内部空間が形成された状態にある。このためインサート体11を配置する上での作業性をより向上させることが可能となる。具体的には、インサート体11を下型体52の上面52aに載置していくことになるが、この載置に関しては最終的に得られるカウンター2の表面21aの模様に応じたものとされる。
また、このステップS11では、インサート体11上に押さえ部材14を当接させることにより、これを配置する。この押さえ部材14の配置は、上述したようにインサート体11を構成する基板81、中央に設けられた開口83に対して、例えばコイルバネで構成される押さえ部材14を接合するようにしてもよい。また、このステップS11以前において、予め押さえ部材14が接合された状態のインサート材11を準備し、これをステップS11において下型体52の上面52aに載置するようにしてもよい。
上述したようにインサート体11上に押さえ部材14を設置した後、上型体51と下型体52をそれぞれ加熱する。このとき、上型体51並びに下型体52の加熱は、それぞれに実装されているヒータ35、36を介して行う。このときの加熱温度は、上型体51と下型体52ともに冷却固化しない温度とし、かかる温度で10分程度保持する。この工程により、インサート体11と基材12の加熱圧縮開始時の温度差がなくなり、間隙の発生などを防止し、確実な成形をすることに寄与する。なお、このステップS11における加熱工程は、必要に応じて省略してもよく、ステップS15以降において加熱を開始させてもよい。
次にステップS12へ移行し、上型体51を下方へ押し下げていく。その結果、上型体51の下面51aが、押さえ部材14に接触することになる。このとき上型体51は、押さえ部材14に対して少なくとも接触しており、その結果、押さえ部材14とインサート体11とが互いに密着して、ずれないように固定することが可能となる。このステップS12では、上型体51の下方への押圧により、押さえ部材14が上下に亘り弾性変形する程度に押圧する。このステップS12においても上述した加熱温度を保持することになる。なお、このステップS12では、下型体52に対向する上型体51を互いに近接させることにより押さえ部材14を介してインサート体11を押圧できればよいのであって、必ずしも上型体51を下方へ押し下げていく場合に限定されるものではなく、逆に下型体52を上方へ押し上げるようにしてもよい。
次に、ステップS13へ移行し、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる基材12を下型体52と上型体51の間隙へ注入する。
なお、上記では、樹脂は注入によって型内へ導入する方法を説明したが、樹脂の導入の仕方に限定されるものではなく、バルクやシート状の樹脂301を予めチャージしてもよい。この場合、図6(a)に示すように、押圧の際に、上型体51が、まず押さえ部材14に到達し、次に下型体52にチャージした樹脂301に到達するようにそれぞれを配置すればよい。このように、樹脂301のチャージ高さ位置を押さえ部材の高さ位置よりも低くすることで、インサート体11を下型体52へ押し付けることができ、樹脂の製品面への回り込みやインサート体11のズレを防止することができる。
ちなみに、このステップS13においても上述した加熱温度を保持するため、基材12を硬化させることなく液状化させた状態で、下型体52と上型体51の間隙の隅々まで行き渡らせることが可能となる。このステップS13においても、下型体52と上型体51を互いに近接させることによる押さえ部材14を介したインサート体11の押圧を継続させて行う。これにより、熱硬化性樹脂からなる基材12の注入時において、インサート体11が押さえ部材14を介して支持されているため、基材12における流動による影響を受けることなく、インサート体11が指定位置から移動してしまうのを防止することが可能となる。
ちなみに、この上型体51を押し下げた際におけるインサート体11における基板81と上型体51との隙間は1mm以上開いていることが望ましい。その理由として、インサート体11と上型体51との隙間が1mm未満では、当該隙間に基材12を構成するベース樹脂の充填が困難になるためである。
また、本発明では、インサート体11の配置間隔、或いは隣接する凸部82間の間隔t11は、1mmもしくは2mm以上となるように調整しているが、これも上述した理由と同等であり、これらの間隔が1mm未満では基材12を構成するベース樹脂の当該間隔に対する充填が困難になるためである。
次に、ステップS14へ移行し、下型体52を上方に押し上げることにより、熱硬化に適した圧力までこれを押圧する。このとき、下型体52を上方に押し上げる場合に限定されるものではなく、下型体52及び/又は上型体51により押圧すればよい。ちなみに、このステップS14において、基材12を熱硬化するのに適した温度に加熱する。なお、このステップS14における押圧変形量は、押さえ部材14の弾性率や断面積、断面形状、設置密度により異なるが、例えばステップS13において上型体51と下型体52との間隔が9mm程度である場合に、このステップS14では、さらにその間隔を1mm程度狭める程度を想定している。これによりインサート体11と基材12は一体化することとなる。
次にステップS15へ移行し、上述した加熱温度に保持していた上型体51及び下型体52を室温付近まで自然冷却する。次に上型体51及び下型体52を互いに離間させ、この基材12とインサート体11を互いに一体化させた模様付パネル体1を取り出すことになる。
以上、ステップS11〜ステップS15に至るまでの工程を経て、模様付パネル体1の製造が完了することになる。
このような本発明に係る樹脂成形体の製造方法では、上述したステップS13に示すように、熱硬化性樹脂からなる基材12を注入した後、ステップS14に示すように、更に基材12を上型体51及び下型体52により加圧している。特に、このステップS14では、単に押さえ部材14を介してインサート体11を支持することにより、基材12を注入時における流動の影響を受けるのを防止することとなる。
また本発明では、上述したように押さえ部材14を弾性変形させるところまで加圧することにより、インサート体11が下型体52の上面52aにおいて適度に押圧させ、このインサート体11と下型体52の上面52aとの間をより密着させて基材12が浸入してしまうのを防止することが可能となる。その結果、成形の終了時にかかるインサート体11の表面が部分的に基材12に覆われてしまうのを防止することが可能となる。
また本発明では、上述したように押さえ部材14を弾性変形させるところまで加圧することにより、インサート体11が下型体52の上面52aにおいて適度に押圧させ、その結果、インサート体11と下型体52の上面52aとの間をより密着させて、基材12とインサート体11とがそれぞれ露出する上面11aと基材の面21aを、よりフラットに仕上ることができ、平滑度を向上させることが可能となる。
特に本発明では、花びらのような細かい模様をカウンター2の表面21aに形成させたり、例えば0.5mm〜20mm程度のサイズからなる微細な模様をカウンター2の表面21aに形成させる場合においても、凸部82を介してその微細な模様を構成し、この凸部82を基板81上に設ける構成としている。即ち、本発明によれば、インサート体11を凸部82のみで構成するのではなく、1又は複数の凸部82を基板81上に構成し、当該基板81を介して押さえ部材14により押さえ込むことで、インサート体11が型体上で動くことを強固に防止することが可能となる。従って、流れ込んできた熱硬化性樹脂からなる基材12により、特定模様を構成する微細な凸部82がずれてしまうのを防止することができ、表現すべき模様の再現性を確保することが可能となる。
また本発明では、模様を構成する凸部82が微細なものであってもあくまで基板12を介して押さえ部材14により押圧する構成としていることから、凸部82が小さいために押さえ部材14が極めて不安定な状態となったり、上から押圧した場合に当該押さえ部材14が倒れ落ちるのを防止することが可能となる。また、本発明によれば、模様が多数に亘り、その結果凸部82を多数必要となる場合においても、複数の凸部82をまとめて一つの基板81上に形成させればよいため、部品点数を減らすことができ、製造コストの抑制、作業効率の向上を図ることが可能となる。
特に本発明では、インサート体11の中央に開口83を形成しているため、ステップS13において基材12を構成するベース樹脂を流し込む際において、当該開口83を介してエアーが抜けることになる。その結果、基材12を充填した後においてエアーが残り、仕上がり時においてインサート体11の周囲がへこんでしまうことを防止することが可能となり、更には成形不良を起こしたり、品質低下を引き起こすことを極力防止することが可能となる。また、ステップS13において基材12を充填する際に開口83を介して基材12を流し込むことができ、未充填をより強固に防止することが可能となる。
また、本発明に係る模様付パネル体1の製造方法では、基材12とインサート体11について、熱膨張係数がほぼ等しい素材で構成した場合には、ステップS14〜ステップS15において、上述した加熱温度に保持していたインサート体11及び基材12を冷却させる際において、インサート体11及び基材12は、ほぼ同程度の熱収縮が生じることになる。即ち、ステップS15における冷却過程において、インサート体11及び基材12においてほぼ同程度の熱収縮に伴う歪み量が発生することになり、ひいてはインサート体11及び基材12間において互いに反りや撓みが生じることも無くなり、インサート体11及び基材12間において空隙等が発生することも無くなる。その結果、従来技術において問題となっていた、熱収縮に伴って撓みや空隙等が発生し、これが欠陥源となって成形品の機械的特性を悪化させることを、本発明では防止することが可能となる。
特に本発明によれば、ステップS11においてインサート体11を上型体51と下型体52の間に設置した段階から加熱を開始している。これにより、インサート体11の温度を事前に上昇させておくことが可能となる。その後ステップS12において注入されてくる基材12は、既に温められた状態にあることから、事前に温めたインサート体11との間で温度の差異を無くすことが可能となる。その結果、低温のインサート体11が高温の基材12に触れることによる反りの発生を抑えることが可能となる。
また、本発明では、断面形状が円形、楕円形又は角部が面取りされた形状からなる押さえ部材14をインサート体11上に配置した場合には、かかる押さえ部材14を断面角形状で構成されている場合と比較して、押さえ部材14によって生じた空洞の角部に応力が集中することを防止でき、破壊の欠陥源が生成されるのを防止することができる。このため、この模様付パネル体1をカウンター2に適用する際において、何らかの衝撃力が加わった場合においても、これに十分に耐えることが可能となる。
また、押さえ部材14としてコイルバネを使用すれば、押圧した当該押さえ部材14内部にベース樹脂としての基材12を浸入させることが可能となる。その結果、バネの内側にも基材12が充填されるので弾性材の存在による空洞の発生、ひいてはインサート体周囲に凹みが発生してしまうのを防ぐことができる。
また、押さえ部材14としてコイルバネを使用すれば、内部にベース樹脂としての基材12を浸入させることができるため、当該コイルバネ自体をベース樹脂(基材12)で覆うことが可能となり、成形後の衝撃性低下を防止することができる。これは、基材12がコイルバネとしての押さえ部材14と一体化させることができ、耐衝撃性についても、殆ど基材12の材質がその支配的因子になる程度まで押さえ部材14内に基材12を入り込ませることを意味している。
また、押さえ部材14としてコイルバネを用いることにより、空隙を通じて内部に基材12を入りこませることが可能となり、これにより押さえ材14の内部と外部が空隙を通じてベース樹脂で連結されるために、当該ベース樹脂が分断されず硬化後の耐衝撃性が向上する。また、本発明によれば、樹脂流動中、前記空隙に樹脂が入り込み押さえ部材外部へ流れ出るため、樹脂の流れを阻害せず、樹脂未充填が発生しない。
押さえ部材14としてバネを用いる場合は、円錐型のコイルバネ(円錐コイルバネ)が望ましい。円錐形の裾側を意匠板の方に置けば、加熱圧縮加工時に倒れてしまう可能性が円柱型のバネより低く確実な成形が可能だからである。また、バネの弾性変形とその後の押圧力の開放のプロセスにおいて基材12との間で空隙が形成されるのを防止することができ、模様付パネル体1における耐衝撃性能や機械強度が空隙により低下してしまうのを防止することが可能となる。更に押さえ部材14としてブロック状の弾性のある合成樹脂材等で構成した場合には、成形後において押さえ材が抜け落ちてしまい、その結果、インサート体11の一部が基材12により覆われず、耐衝撃性が低下してしまうが、押さえ部材14としてバネを用いることにより、このような問題点を解消することが可能となる。
また、押さえ部材14として適用される樹脂としては、例えばポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)等のように耐熱安全温度が70℃以上、望ましくは110℃以上のものを使用する。ここでいう耐熱安全温度が70℃とは、1.8MPaにより測定した荷重たわみ温度が70℃を超えることを意味するものである。即ち、この耐熱安全温度は、加熱時に規定の反発力(押圧力)を保持していることが前提となる。
また、樹脂成形中の型温度もしくは樹脂の硬化発熱温度と比較して押さえ部材の耐熱性を高めることで、成形中の押さえ部材14の軟化を抑制できるために、反発力が低下せず、インサート体と型接触面への樹脂の入り込みと、樹脂流動圧によるインサート体の位置ずれが防止できる。
ステップS13〜14のプロセスの下で110℃程度の温度になる場合においても、当該温度まで耐熱性を発揮する押さえ部材14を用いることにより、当該押さえ部材14が熱変形するのを防止することが可能となるためである。その結果、インサート体11に対する押さえ部材14による押圧機能を維持させることが可能となり、樹脂がインサート体11の表面に回りこむのを抑えることができる。また、110℃程度の温度下においても、押さえ部材14が熱変形するのを防止することが可能となるため、インサート体11に対する押さえ部材14による押圧機能を維持させることが可能となり、インサート体11の位置ずれを防止することが可能となる。
また、押さえ部材14として樹脂を利用することにより、押さえ部材14自体の表面硬度を柔らかく構成することが可能となり、金型としての上型体51への疵を防止することが可能となる。
また、押さえ部材14として、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)の何れかにより被覆された金属製のバネで構成してもよい。これによっても通常の金属製のバネとしての機能を発揮させることが可能となると共に、これらの樹脂で被覆されていることにより、金型としての上型体51への疵を防止することが可能となる。
ちなみに、この押さえ部材14をインサート体11に対して単に当接させるだけでなく、例えば接着剤等を介して着脱不能に接合しておくことにより、上型体51と下型体52とを近接させて押圧した場合においても、インサート体11から押さえ部材が外れてしまうのを防止することが可能となる。
また、本発明によれば、インサート体11の表面積よりも小さい押さえ部材14を配置している。これにより、ステップS13、14において、基材12を構成する熱硬化性樹脂の通り道を押さえ部材14間に形成させることが可能となり、上型体51及び下型体52の間隙において当該熱硬化性樹脂の未充填が生じるのを防止することが可能となる。特に、インサート体11の配置間隔、或いは隣接する凸部82間の間隔t11が、直線や円同士の間であれば1mm以上開けるように調整し、連続した鋭角があるような複雑な形状であっても2mm以上間を開けることができるように調整されていることにより、インサート体11の間に沿って当該熱硬化性樹脂の通り道を確保することが可能となり、当該熱硬化性樹脂の未充填が生じるのを防止することができる。そして、この上型体51及び下型体52の間隙において基材12を隙間無く充填することができれば、耐衝撃性その他機械的強度をより向上させることが可能となる。なお間隔t11のみならず、インサート体11或いは凸部82とワークトップ21の端部との間の間隔も同様に1mm以上空けることにより当該熱硬化性樹脂の未充填が生じるのを防止することができる。
また、従来の切削、接着工法の場合においては基材に設けた雌部と意匠板の寸法が間隙を開けさせないためには同一であることが求められる一方、嵌合を行うためには逃げ寸法が必要であり同一にすることができないといった問題や、そのような寸法を出そうとしても樹脂の成形時の温度変化や圧縮により多少の誤差は生じてしまい間隙のない成形品を求めることが困難であったが、本発明においては、そのような問題を生じないことから、インサート体11により構成される模様の複雑化も実現可能となり、また任意の大きさからなるインサート体11を配置することによる模様の大きさの自由度も確保することが可能となる。
更に、この基材12、インサート体11における材料の選択を通じて、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性等の機能を付与することが可能となる。
ところで、上述したブロック状の弾性のある合成樹脂からなる押さえ部材14を適用した場合に、ステップS14において上下に押圧された場合に、押さえ部材14が水平方向外側に弾性変形し、その状態で基材12が硬化する。しかしながら、押さえ部材14は、上下の押圧から開放された場合に、水平方向外側に弾性変形されていたものが収縮し、基材12と押さえ部材14との間に空隙が形成される。この空隙は、局部的に板厚が薄くなるのと同等となり、模様付パネル体1における耐衝撃性能や機械強度を低下させる、一つの阻害要因として作用する可能性がある。
このため、本発明では、ブロック状の弾性のある合成樹脂からなる押さえ部材14の代替として、上述した円錐状のバネや、金属製の巻きバネからなる押さえ部材14をインサート体11上に配置するようにしてもよい。これによっても同様にバネの弾性変形とその後の押圧力の開放のプロセスにおいて基材12との間で空隙が形成されるのを防止することができ、得られるカウンター2における耐衝撃性能や機械強度が空隙により低下してしまうのを防止することが可能となる。
また、図6(b)に示すように、押さえ部材14に対して更に裏打ち材121を設けるようにしてもよい。その結果、上型体51が押し下げられてきたときに、この押さえ部材14に取り付けられた裏打ち材121を介して接触することになり、得られるカウンター2における裏面21bの平滑性を向上させることが可能となる。仮に、裏打ち材121がない場合であって、しかも押さえ部材14としてバネ等を使用する際には、裏面21bからバネが飛び出したりしてしまう場合があり、結果として裏面21bに凹凸が形成されて平滑度が低下してしまう。その結果、裏面21bにおける他の部材との密着性が低下してしまい、施工性に支障をきたす。このため、裏面21bの平滑性を確保するために研磨等の処理工程を加えなければならず、作業効率が悪化してしまう場合があった。これに対して、裏打ち材121を設けることによる裏面21bの平滑性を向上させることができれば、このような研磨等の作業を省略することが可能となり、作業効率を向上させることが可能となる。ちなみに、この裏打ち材121の材料としては、金属製、木製、樹脂製、繊維製などで構成されていればよい。
また図7は、インサート体11を表面、裏面の双方に設けることにより、模様付パネル体1の表裏に模様を形成させる場合におけるステップS14の工程を示している。押さえ部材14の上部に更に押さえ部材14を載置し、下型体52に対向する上型体51を押さえ部材14の上部に載置されたインサート体11に接触するまで押し下げることにより作製することが可能となる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、複数のインサート体11を亘り互いに一体化させて構成するようにしてもよい。
図8〜11は、かかる複数のインサート体11を亘り互いに一体化させて構成する例を示している。図8(a)は、基台85に対して複数のインサート体11に同一材料で一体的に構成した状態の斜視図であり、図8(b)は、これを裏面側からみた斜視図である。複数枚のインサート体11を互いに間隔を開けて基台85上に例えば、削り出し加工、型による押圧を通じた樹脂成形、又は打ち抜き加工により互いに一体に形成されている。また基台85の裏面には、少なくとも製造時において、例えばコイルバネ等で構成される押さえ部材14が当接される。またこの押さえ部材14は、予めこの基台85に対して取り付けられていてもよい。
ちなみに、この図8の例では、基台に対して何ら開口や切欠を設けることの無い、極めてシンプルな構成としている。
図9は、隣接するインサート体11を架橋体88で架橋する構成した例を示している。図9(a)は、インサート体11に架橋体88をあたかも架設するようにして一体化させて構成した状態の斜視図であり、図9(b)は、これを裏側からみた斜視図である。少なくとも製造時においては、押さえ部材14が架橋体88の裏面又はインサート体11に当接され又は予め接合される。この構成では、中央において開口86が形成され、基材12を構成するベース樹脂を流し込む際において当該開口86を介してエアーを抜くことが可能となる。
また当該開口86を介してベース樹脂を流し込ませることが可能となる。仮に開口86が設けられていない場合には、図9(c)に示すように、隣接するインサート体11の間隙Gにおいて、樹脂がうまく流れ込まなくなり、ひいては未充填を引き起こす要因にもなるが、開口86が設けられていれば、図9(d)に示すように当該開口86を介して樹脂を流し込ませることが可能となり、未充填になるのを防止することが可能となる。
また、開口86は、型体の近接時において他方の型体側(図9(d)中の上型体51側)から一方の型体側(図9(d)中の下型体52側)へ注入された樹脂を流し込むための流込案内部として構成されていればよい。即ち、開口86に限定されるものではなく、上型体51側から下型体52側へ樹脂を流し込むことを案内するものであればいかなる構成とされていてもよい。
図10は、中心に設けられた基台85を介してインサート体11をそれぞれ接合する例を示している。基台85の裏面には、少なくとも製造時において押さえ部材14が当接され又は接合される。また、隣接するインサート体11と基台85により囲まれる断面矩形状の切欠89が上記流込案内部として4箇所に亘り形成され、基材12を構成するベース樹脂を流し込む際において当該切欠89を介してエアーを抜くことが可能となり、また樹脂を流し込むことが可能となる。
図11は、流込案内部としての開口86を規則的に配列させた一枚のプラスチック製の台板で構成した基台85の例であり、図11(a)は、基台85に対してインサート板11を一体的に形成させた状態の斜視図であり、図11(b)は、これを裏面側からみた斜視図である。基台85の裏面には、少なくとも製造時において押さえ部材14が当接され、又は押さえ部材14が接合される。この例では、特に多数のインサート板11を基台85へ取り付け可能とするために、基台85を大面積で構成している。また、樹脂充填時において、開口86を介してエアーを抜くことができ、また樹脂を流し込むことが可能となることは勿論である。
なお、上述したように基台85において流込案内部として開口86を設けるようにしてもよいし、或いはインサート体11において開口83を設けるようにしてもよい。インサート体11において開口83を設ける際には、その開口83に対応する基台83上の位置においても開口を設けておくことでエアーを抜くことが可能となる。
上述した何れの構成について、流込案内部として、上下に貫通する開口83のみならず、周囲に切欠89を設けるようにしてもよいことは勿論である。
このようにして、基台85を介してインサート体11を一体的に構成した場合には、例えば図12(a)に示すように、連結したインサート体11を下型体52上に載置するとともに、インサート体11が下型体52上で動くことを防止するための押さえ部材14を基台85の裏面に当接させ、又は予め取り付けておく。そして、下型体52と上型体51を互いに近接させることにより基台85に当接させた押さえ部材14を押圧しつつ、基材12を構成するベース樹脂を注入し、その後上記ベース樹脂を硬化させることを実行することになる。
上述した基台85に複数のインサート体11を一体的にした構成によれば、特に複数のインサート体11の間での位置ズレを強固に防止することが可能となる。即ち、複数のインサート体11は一の基台85に連結されていることにより、基材12充填時においても、インサート体11同士のズレが無くなり、デザイン性をより向上させることが可能となる。また、インサート体11が基台85に一体化されているユニット構成とすることにより、インサート体11を一つずつ下型体52にセットすることなく、そのユニットをセットすることで作業を完了させることができるため、製造労力を低減させることが可能となる。
また、複数のインサート体11を、削りだしや樹脂成形により一体化することで、複数の表出部品を連結部品に貼り合わせる作業が不要で、かつ表出させるべきインサート体が微細な場合もかかるインサート体の位置ずれを防止することが可能となる。また、インサート体と連結部とを一体化させることにより、押さえ部材が各インサート体毎には必要なくなり、押さえ部材の費用が削減でき、かつ押さえ部材のセット時間も短縮させることが可能となる。
なお、上述したように、インサート体11を基台85に一体化させる場合に限定されるものではなく、別々に作製したインサート体11並びに基板85を接合することにより構成するようにしてもよい。
図12(b)は、上述した製造方法に基づいて製造されたカウンター2の断面構成を示している。カウンター2の表面21aにおいて、凸部82の模様面82aが露出し、またこの基材12内部には、凸部82以外にインサート体11、基台85、押さえ部材14が埋設された状態となっている。基台85は、複数個のインサート体11に対して互いに一体化させ、押さえ部材14は、基台85の底部に当接させてなる。
なお図13は、インサート体11を網状体で構成される基台122を介して連結する例を示している。この基台122の材質は、金属で構成してもよいが、樹脂製であってもよい。この基台122は、インサート体11と比較して大面積で構成されている。これにより、上型体51により押さえ部材14に押圧する際において、大面積からなる基台122で受けることができ、応力を効果的に分散させることで、インサート体11の局所部分に応力が集中してしまうのを防止することが可能となる。
図14は、上述した押さえ部材14としての機能を、基台123に担わせた例である。この基台123は、例えばコイルバネ等の弾性体として構成される。この構成によれば、押さえ部材14を別途配設することなく、基台123にその役割を担わせることが可能となることから、部品コストを低減させることが可能となる。
なお、上述した実施の形態においては、いわゆるシステムキッチンや洗面化粧台等に適用されるカウンター2に適用される場合に限定されるものではなく、シンク、浴室、防水パン、洗面ボウル、壁、扉、パネル、ミラーキャビネット等、あらゆる建築構造物へ適用するようにしてもよいことは勿論である。