以下、本発明に係る実施の形態の例につき、適宜図面に基づいて説明する。なお、当該形態は、下記の例に限定されない。
[第1形態]
図1は第1形態に係る塗装乾燥装置1の模式図であって、塗装乾燥装置1は、ここでは図示しない自動車のスポイラーの下塗り塗装(プライマー)を乾燥する工程に用いられる。下塗り塗装の乾燥後、上塗り塗装(ベース)が行われ、上塗り塗装の乾燥後は、クリア塗装が施される。なお、塗装乾燥装置1の対象物(ワーク)につき、自動車のパーツや、建設土木機械、特殊車両、鋼製家具、鋼製建具、自動販売機、電気機器、通信機器、配電盤、空調機等あるいはこれらの部品とすることができる。
塗装乾燥装置1は、スポイラーに温風を作用させて下塗り塗装を乾燥させる乾燥炉(乾燥ブース)2、及び、温風の作用により加熱されたスポイラーに冷風を作用させてクリア塗装に適した温度まで冷却する冷却炉(冷却ブース)4を備えている。乾燥炉2ないし冷却炉4には、下塗り塗装工程から上塗り工程を経てクリア塗装工程に至るまでスポイラーを搬送する図示しないコンベアが併設されている。乾燥炉2において温風の作用によりスポイラーの下塗り塗装における溶媒が蒸発し、冷却炉4において冷風の作用により下塗り塗装が上塗り塗装に適した温度まで冷却される。温風や冷風は、乾燥炉2や冷却炉4の内部に設けられた図示しないノズルによりスポイラーに吹き付けられることで作用する。
温風や冷風の温度は塗装に係る塗料の性質やその下地・上乗せする塗料の材質・状態、あるいは塗装面積等に応じて調整され、ここでは、温風につき摂氏(以下同様)60度前後とされ、冷風につき20度前後とされている。なお、乾燥炉2や冷却炉4のいずれか一方あるいは双方を複数に分け、それぞれに温風あるいは冷風を導入して良く、この場合に、それぞれの温度を互いに異なるものとすることができる。
そして、塗装乾燥装置1は、このような温風及び冷風を生成するために温水(加熱媒体)ないし冷水(冷却媒体)を一括して供給する排熱回収型のヒートポンプ10を備えている。ヒートポンプ10は、冷水を生成しながらその際発生する排熱を利用して温水を同時に生成しそれぞれ外部に供給するものであり、ここでは7度〜30度程度の冷水と70度程度の温水を同時に供給可能である株式会社神戸製鋼所製「ハイエフミニHR」を用いる。ヒートポンプ10は、温冷水が同時に供給される特性上、温冷水のバランスをとる必要があり、高温水を多量に取り出すには、高温水の熱が十分に対象へ吸収されて戻り、又低温水も多量に取り出された上で十分に熱を受けて戻る必要がある。なお、ヒートポンプ10として、最高80度の温水を供給可能であるものや、80〜120度程度の高温風を供給可能なもの等を用いても良い。
ヒートポンプ10は、温風を生成するため乾燥炉2に加熱媒体としての温水を供給するパイプ12を有すると共に、冷風を生成するため冷却炉4に冷却媒体としての冷水を供給するパイプ14を有する。温風は、パイプ12からの温水を導入した乾燥用熱交換機16に対して室温のエアを吹き付けることで、温水とエアとの熱交換により生成され、冷風は、パイプ14からの冷水を導入した冷却用熱交換機18に対して室温のエアを吹き付けることで、冷水とエアとの熱交換により生成される。乾燥用熱交換機16は、乾燥炉2(の側部)に配置され、冷却用熱交換機18は、冷却炉4(の側部)に配置される。又、乾燥炉2から水をヒートポンプ10に戻すパイプ22を有すると共に、冷却炉4から水をヒートポンプ10に戻すパイプ24を有する。なお、各パイプには、図示しない熱交換機やタンク、流量調節弁が1個ないし複数個介装されることがある。又、パイプ12,14を途中で分岐ないし集合させる等、パイプの配置等を適宜変更して良い。
そして、塗装乾燥装置1は、ここではボディーのプレスや溶接等も行う工場に設置されている。当該工場からは、コンプレッサーの冷却水やスポット溶接機の冷却水といった排温水Xが拠出される。即ち、塗装乾燥装置1は、冷却側加熱媒体としての排温水Xを生ずる工場に設置されている。なお、上記に例示した乾燥対象(ワーク)を含め、一般に塗装の乾燥を行うのは他の機器も設置された排温水Xの存在する工場である。
更に、塗装乾燥装置1における冷却炉4からヒートポンプ10へのパイプ24には、冷却媒体加熱機としての熱交換機30が設置され、この熱交換機30には、排温水Xを導入するパイプ32と、熱交換後の排温水Xを導出するパイプ34とが接続されている。熱交換機30により、排温水Xの熱と冷水の熱とが交換される。パイプ32には、加熱量調節手段としての流量調節弁36が設けられる。なお、流量調節弁36を、パイプ14や、これら双方のパイプ14,32に設置しても良い。
このような塗装乾燥装置1は、次に説明するように動作する。
例えば乾燥炉2(乾燥用熱交換機16)の加温負荷(加熱負荷)が併せて800kW(キロワット)であり、冷却炉4の冷却負荷が360kWであったとする。この場合、ヒートポンプ10からは温水800kWの供給が必要であるが、この供給のため電気入力に330kWを要し、又冷水470kWが同時に供給される。70度の温水800kWはパイプ12を通じ乾燥炉2に供給され、乾燥用熱交換機16を通過するエアについて必要十分に加熱し、65度の温水となってパイプ22からヒートポンプ10に循環する。一方、7度の冷水470kWはパイプ14を通じ冷却炉4に供給され、冷却用熱交換機18を通過するエアについて十分に冷却するが、なお110kWの冷却が可能な状態(10.8度)でパイプ24に入る。そして、この冷却水は熱交換機30内で排温水Xのパイプ32の周囲に達し、熱交換機30の作用によって排温水Xの熱を110kW分奪い、12度となってヒートポンプ10に循環する。このような熱交換により排温水Xも冷却される。
又、加温負荷や冷却負荷の変動には、ヒートポンプ10や流量調節弁36の調整によって対処する。これらの調整は、パイプ24のヒートポンプ10接続部付近の温度(冷水戻り温度)を検知するセンサや、パイプ22のヒートポンプ10接続部付近の温度(温水戻り温度)を把握するセンサと接続された図示しない自動制御装置により自動的に行われる。なお、自動制御装置は、ヒートポンプ10や流量調節弁36にそれぞれ配備される制御装置から構成するようにして良いし、独立した別体のものとしても良い。又、温度センサは、各炉あるいは他のパイプや熱交換機30、乾燥用熱交換機16や冷却用熱交換機18あるいはこれらを通過したエアの流路の少なくとも何れかに配して良いし、パイプ24の冷却炉4側に配して良い。更に、温度センサは、ヒートポンプ10の温水負荷追従装置に具備されたものとする代わりに、パイプ22の乾燥炉2側に配しても良い。
即ち、図2に示すように、加温負荷を基準に温水に追従するように冷水を出し排温水Xの熱を回収する運転を許可していると、自動制御装置がパイプ24の温度を監視する(ステップS1でYes)。この監視において、冷水戻り温度が設定値を下回ると(ステップS2でYes)、冷却負荷が比較的に軽くなっているので、パイプ24の冷水温度が設定値に上がるまで流量調節弁36を徐々に開放する(ステップS3〜S5)。一方、冷水戻り温度が設定値を上回ると(ステップS2でNo、ステップS6でYes)、冷却負荷が比較的に重くなっているので、パイプ24の冷水温度が設定値に下がるまで流量調節弁36を徐々に絞る(ステップS7〜S9)。
例えば、冷却負荷が360kWから100kWに軽くなった場合、冷却炉4における冷風を20度に維持すると、冷却炉4から出るパイプ24の冷水温度は低くなるが、自動制御装置はパイプ24の温度センサによってこれを把握し、その分だけ排温水Xによる加熱を増加するため、上述のように流量調節弁36を徐放して、排温水Xによる加温量を110kWから370kWとし、温水側に対する冷水側の温度(熱量)バランスをとってヒートポンプ10の運転を継続させる。
又、夏季等で加温負荷が比較的に軽い(600kW)場合、冷却負荷360kWにおいて自動制御装置はパイプ22の温度センサによる温度上昇によってこれを把握し、ヒートポンプ10から出る温水の熱量を少なくする(600kW)。又、これに応じて冷水の逆の熱量(冷熱)が減ると(353kW)、上述のように流量調節弁36が絞られて排温水Xとの熱交換量が相応に減らされ(110kWから7kWへ)、ヒートポンプ10の運転の継続に寄与する。
一方、冬季等で加温負荷が比較的に重い場合、自動制御装置はパイプ22の温度センサによる所定値からの温度不足によってこれを把握し、ヒートポンプ10から出る温水の熱量を増やし、これに応じて冷水の冷熱も増えるので、上述のように流量調節弁36を開放してパイプ24における熱交換の量を増やす。
以上の塗装乾燥装置1は、排温水Xを生ずる自動車製造工場に設置されており、塗装されたスポイラーに温風を作用させて当該塗装を乾燥させる乾燥炉2と、スポイラーに冷風を作用させて前記塗装を冷却する冷却炉4と、この温風を生成するためにエアを加熱する温水を加熱すると共に、この冷風を生成するためにエアを冷却する冷水を冷却するヒートポンプ10と、この冷水と排温水Xとを導入し熱交換することで当該冷水を当該排温水Xにより加熱する熱交換機30とを備えている。
従って、加温負荷に合わせてヒートポンプ10を作動させようとするが、冷却負荷が軽すぎで冷水が十分に冷熱を奪われた状態で戻らず、加温水と冷水のバランスがとれずにヒートポンプ10が停止してしまう事態を回避することができ、加熱ないし冷却をひとつのヒートポンプ10でまかなうことができる。又、ヒートポンプ10を冷却負荷に合わせて作動させ、不足する加温負荷に蒸気発生装置等の他熱源で対処する方式に比して、他熱源を設置する必要がなくシンプルな構成としてエネルギー使用量を低減することができるし、他熱源駆動分のエネルギーが不要であり、更に元来そのまま排熱されていた排温水Xのエネルギーを有効利用することができ、省エネルギー性に優れた塗装乾燥装置1とすることができ、更に他熱源駆動による二酸化炭素の排出を削減することもできる。
なお、工場の排温水Xを乾燥用熱交換機16の加熱に用いる方式が考えられなくもないが、一般に排温水Xの温度は10〜50度程度であって、排温水Xに十分な熱がなく、スポイラーの乾燥(温風60度)等において有効に加熱することができない。これに対し、塗装乾燥装置1では、温度の低い冷却水に対して工場の排温水Xを適用するので、有効に排温水Xの熱を利用することができる。
又、排温水Xの熱交換機30への流量を調節する流量調節弁36と、この冷水がヒートポンプ10へ戻る際の温度である冷水戻り温度を検知する冷水戻り温度センサと、当該冷水戻り温度センサと接続され、当該冷水戻り温度センサから得た前記冷水戻り温度に応じて流量調節弁36の開度を制御する自動制御装置とを備えている。
従って、ヒートポンプ10にとって適した冷水の戻り温度ないし熱量となるように、工場の排温水Xとの熱交換量を自動的に調整することができ、効率の良い加熱ないし冷却を自動的に行うことができる。
[第2形態]
図3は第2形態に係る塗装乾燥装置101の模式図であって、塗装乾燥装置101は、冷却炉4とヒートポンプ10の間の構成以外は第1形態と変更例も含め同様である。
塗装乾燥装置101は、排熱回収型のヒートポンプ10の他、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプとしての空冷式のヒートポンプ131を備えている。そして、塗装乾燥装置101は、図3(a)に示すように、ヒートポンプ131と冷却炉4との間において、冷却炉4の冷却用熱交換機18に直接媒体(冷水)を供給するためのパイプ114を有すると共に、冷却用熱交換機18から媒体を回収するためのパイプ124を有している。
又、塗装乾燥装置101は、図3(b)に示すように、パイプ24において、第1形態の熱交換機30と同様の熱交換機130を備えており、熱交換機130には、第1形態と同様パイプ132,134が配されると共に流量調節弁136が配置されている。そして、パイプ132,134にはヒートポンプ131が接続され、このうちパイプ132はヒートポンプ131の媒体(温水、冷却側加熱媒体)を通し、パイプ134は熱交換機130を通過してヒートポンプ131に戻る媒体を通す。
塗装乾燥装置101の自動制御装置は、ヒートポンプ131に係る媒体の循環につき、パイプ114,124側(冷却炉4側の回路)か、あるいはパイプ132,134側(熱交換機130側の回路)かで切替可能である。又、塗装乾燥装置101の自動制御装置は、パイプ24の温度センサの監視に応じて流量調節弁136を開閉可能である。なお、パイプ24の温度センサは、ヒートポンプ10側に設けても良いし、冷却炉4側に設けても良い。
このような塗装乾燥装置101は、次に説明するように動作する。
塗装乾燥装置101では、ヒートポンプ10の他、ヒートポンプ131並びに熱交換機130及び温度センサが設けられており、自動制御装置は、図3(a)で示すようにヒートポンプ131につき媒体を冷水として冷却炉4側へ供給する夏季等に係るモードと、図3(b)で示すようにヒートポンプ131につき媒体を温水として、ヒートポンプ10から供給され冷却炉4でエアと熱交換された冷水に対し熱交換機130を介して適用する冬季等に係るモードとを切替可能である。
即ち、自動制御装置は、夏季等であり、温熱負荷と共に冷却負荷も十分にかかり、温熱負荷に対して冷却負荷のバランスがとり易い場合には、図3(a)で示すように、基本的にヒートポンプ10の温水と冷水のみで乾燥炉2側の加熱と冷却炉4の冷却を行わせ、ヒートポンプ131の媒体をヒートポンプ10の冷水に作用させることはしない。自動制御装置は、ヒートポンプ131につき、媒体を冷却炉4側(パイプ114,124側)で循環するように回路の切替を行うと共に、熱Aを外気へ放出することで媒体を冷水として供給する運転をさせ、その冷水を冷却炉4の冷却用熱交換機18に導入して回収するようにさせる。このとき、冷却用熱交換機18においては、ヒートポンプ10の冷水と、ヒートポンプ131の冷水とがそれぞれ導入される。自動制御装置は、乾燥炉2において必要な熱量を供給するための温水を供給することができるように温水に追従してヒートポンプ10を運転させ、この運転による冷水の冷熱量の変化や、冷却炉4付近の気温変化等による必要な冷熱の変化に対しては、ヒートポンプ131の運転状態を変更してその冷水の温度を変化させるか、あるいはその冷水の流量調節をするかして対応する。
例えば、温熱負荷800kWに対し、冷却負荷が900kWも必要である場合、自動制御装置は、ヒートポンプ10に電力330kWを入力して、温水800kWを供給させると共に、冷水470kWを供給させる。そして、冷却炉4における冷却が430kW不足するので、自動制御装置はヒートポンプ131に冷水430kWを生成させ、冷却炉4に供給させる。
一方、自動制御装置は、冬季等であり、温熱負荷に対して冷却負荷が少ない場合、図3(b)で示すように、ヒートポンプ10を温水に追従させた状態で運転して冷水も供給し、その冷水側にヒートポンプ131の媒体を温水(冷却側加熱媒体)として作用させるべく、ヒートポンプ131につき外気における熱Bを取り込む状態で(冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプとして)運転させると共に、媒体を熱交換機130側(パイプ132,134側)で循環するように回路の切替を行う。ヒートポンプ10が比較的に大きい温熱負荷に追従する運転をするために冷却負荷より多い冷熱を有する冷水を供給し、冷却炉4において十分に冷熱が使用されないままヒートポンプ10に戻ろうとする冷水に対して、ヒートポンプ131による温水との熱交換が熱交換機130において行われ、熱を比較的多く使用される温水に対して冷水(使用される冷熱)をバランスさせることが可能となって、ヒートポンプ10の運転が継続される。
例えば、温熱負荷800kWに対し、冷却負荷が150kWである場合、自動制御装置は、ヒートポンプ10につき温熱負荷に対して温水800kWを追従させる。ヒートポンプ10は、これに応じ冷水470kWを生成する。この冷水(7度)によって冷却炉4の冷却(冷風20度)が行われるが、この冷却を経ても冷水の冷熱が320kWだけ残る。しかし、この冷熱は熱交換機130におけるヒートポンプ131からの温水320kWとの熱交換により解消され、このように余った冷熱の取り除かれた冷水(12度)がヒートポンプ10に戻る。自動制御装置は、ヒートポンプ131につき、外気の熱Bを用いて温水を供給するモードで運転させ、回路を熱交換機側に切替える。又、自動制御装置は、第1形態と同様、パイプ24の温度センサの検知した温度等に応じて流量調節弁136を制御して冷水の戻り温度(冷熱)を温水に対しバランスさせ、あるいはヒートポンプ131の運転を制御してその温水の温度(熱量)を調整し、冷水の戻り温度を温水に対しバランスさせる。
自動制御装置は、ヒートポンプ131の運転モードや回路の切替を、パイプ24の温度センサの検知した温度が所定の閾値以下(未満)となったか否か、あるいは特定の閾値以上となった(上回った)か否かを判断することにより行う。自動制御装置は、前者が成立すれば、図3(b)の運転モードとし、後者が成立すれば、図3(a)の運転モードとする。ここで、所定の閾値と特定の閾値は、同一であっても良い。又、他の部分の温度や熱量等に基づいて判断しても良い。
以上の塗装乾燥装置101では、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプとして機能するヒートポンプ131が設置されており、塗装されたスポイラーに温風を作用させて当該塗装を乾燥させる乾燥炉2と、スポイラーに冷風を作用させて前記塗装を冷却する冷却炉4と、この温風を生成するためにエアを加熱する温水を加熱すると共に、この冷風を生成するためにエアを冷却する冷水を冷却するヒートポンプ10と、この冷水とヒートポンプ131の温水(冷却側加熱媒体)とを導入し熱交換することでヒートポンプ10の冷水をヒートポンプ131の温水により加熱する熱交換機130とを備えている。
従って、第1形態と同様に、ヒートポンプ10の冷水を加温して温水とのバランスをとることができ、シンプルな構成で省エネルギー性に優れたものとすることができながら、第1形態と異なり冷水の加温に排温水を用いないため、排温水の生じない工場等においても設置することができる。
[第3形態]
図4は第3形態に係る塗装乾燥装置201の模式図であって、当該塗装乾燥装置201の構成は、冷却炉4と各種ヒートポンプの間の構成以外は第2形態と変更例も含め同様である。
第3形態の塗装乾燥装置201の冷却炉4側の構成は、第2形態の塗装乾燥装置101における構成から、ヒートポンプ131を(冷却用ヒートポンプとして)維持したうえで、熱交換機130・パイプ132,134・流量調節弁136を取り除き、工場の排温水Xをヒートポンプ10の冷水としてパイプ14,24と切り替えて循環させるパイプ214,224を設けて成る。塗装乾燥装置201の自動制御装置は、排温水X(パイプ214,224)側と冷却炉4(パイプ14,24)側との切替を指令可能である。
このような塗装乾燥装置201は、次に説明するように動作する。
塗装乾燥装置201では、ヒートポンプ10の冷水側回路につき排温水X側と冷却炉4側との切替が可能であると共に、ヒートポンプ10の冷水側回路に温度センサが設けられており、自動制御装置は、図4(a)で示すように冷却炉4側とする夏季等に係るモードと、図4(b)で示すようにヒートポンプ10の冷水側回路につき排温水X側とする冬季等に係るモードとを切替可能である。
即ち、自動制御装置は、夏季等であり、温熱負荷と共に冷却負荷も十分にかかり、温熱負荷に対して冷却負荷のバランスがとり易い場合には、図4(a)で示すように、ヒートポンプ10の冷水側につき、媒体を冷却炉4側(パイプ14,24側)で循環するように回路の切替を行い、基本的に温水に追従してヒートポンプ10を運転させ、ヒートポンプ10の温水と冷水のみで乾燥炉2側の加熱と冷却炉4の冷却を行わせる。又、自動制御装置は、温度センサにより把握した冷水の温度が所定値以上であれば、ヒートポンプ131を起動し、パイプ114,124を介して冷媒(第2冷却媒体)を冷却炉4へ供給させる。一方、自動制御装置は、ヒートポンプ131の起動中、温度センサにより把握した冷水の温度が特定値以下となれば、ヒートポンプ131の運転を中止して、パイプ114,124を介した冷却炉4への冷媒の供給を停止させる。
例えば、温熱負荷800kWに対し、冷却負荷が900kWも必要である場合、自動制御装置は、ヒートポンプ10に電力330kWを入力して、温水800kWを供給させると共に、冷水470kWを供給させる。そして、冷却炉4における冷却が430kW不足するので、自動制御装置はヒートポンプ131に冷水430kWを生成させ、冷却炉4に供給させる。
他方、自動制御装置は、冬季等であり、温熱負荷に対して冷却負荷が少なくヒートポンプ10のバランスが保てない場合、図4(b)で示すように、ヒートポンプ10の冷水側回路をパイプ214,224側に切替えて、ヒートポンプ10を温水に追従させた状態で運転しつつその冷水側に排温水Xを導入させる。パイプ214を通るヒートポンプ10の冷水は夏季の排温水Xと同様の処理がなされ、パイプ224には排温水Xが通り、ヒートポンプ10の冷水の冷熱が十分に奪われて戻ると同様の状態でヒートポンプ10に入って、熱を比較的多く使用される温水に対して冷水側をバランスさせることが可能となり、ヒートポンプ10の運転が継続される。そして、冷却炉4の冷却は、ヒートポンプ131によってパイプ114,124を介して冷却炉4へ冷媒を供給させることで行われる。
例えば、温熱負荷800kWに対し、冷却負荷が150kWである場合、自動制御装置は、ヒートポンプ10につき温熱負荷に対して温水800kWを追従させる。ヒートポンプ10は、これに応じ冷水625kW(30度)を生成する。この冷水はパイプ214を経て夏季の排温水Xと同様に処理され、代わりに35度の排温水Xがパイプ224を経てヒートポンプ10の冷水側に戻る。この冷水側の構成により、625kWの加温を行ったのと同等の効果を生じることとなり、冷水の戻り温度が温水に対しバランスする。
以上の第3形態の塗装乾燥装置201は、塗装されたボディーに温風を作用させて当該塗装を乾燥させる乾燥炉2と、ボディーに冷風を作用させてこの塗装を冷却する冷却炉4と、この温風を生成するためにエアを加熱する温水を加熱すると共に、この冷風を生成するためにエアを冷却する冷水を冷却するヒートポンプ10と、この冷風を生成するためにエアを冷却する第2冷却媒体を冷却するヒートポンプ131とを備えており、ヒートポンプ10の冷水を冷却炉4側と工場から生ずる排温水X側で切替可能とし、ヒートポンプ10が温水を加熱し続ける場合に冷水の冷熱が充分奪われないときには、この冷水を冷却炉4側から排温水X側に切替える。
従って、ヒートポンプ10において温水側に対して冷水側が過冷却となるとしても、排温水Xを直接冷水側に導入することで、流量調節弁を設けなくともヒートポンプ10の冷水側を温水側とバランスさせることができ、シンプルな構成で省エネルギー性に優れた塗装乾燥装置201を提供することができる。
[第4形態]
図5は第4形態に係る塗装乾燥装置301の模式図であって、塗装乾燥装置301は、冷却炉4とヒートポンプ10の間の構成以外は第1形態と変更例も含め同様である。なお、乾燥炉2から排気管302が出されており、排気管302は乾燥炉2の内部で用いられたエアを大気へ導出する。
塗装乾燥装置301は、冷却炉4からのパイプ24に、流量調節弁304を備えており、流量調節弁304からパイプ306が分岐している。パイプ306は、その熱を排気管302の熱と交換する熱交換機308まで延びており、熱交換機308から先はパイプ310となって、流量調節弁304よりヒートポンプ10側におけるパイプ24に戻るように配置されている。
パイプ24のヒートポンプ10側(あるいはパイプ24の冷却炉4側、パイプ308,310の何れか又はこれらの組合せ)には、パイプ内の媒体の温度(熱量)を検知する温度センサが設置されており、塗装乾燥装置301の自動制御装置は、この温度センサが検知した温度に基づいて、第1形態における排温水Xとの熱交換に係る制御と同様に、乾燥炉2の排気との熱交換に係る制御を行う。ここで、第1形態では排温水Xの流量を調節してヒートポンプ10の冷水の熱交換の度合を調整したが、本形態では排気の流量は調節せず、ヒートポンプ10の冷水に係る熱交換機308への分岐流量を流量調節弁304により調整して、当該冷水の熱交換の度合を調整する。なお、排気管302に流量調節弁を設けても良いし、双方に設けても良い。又、冷却炉4に排気管を有する場合には、当該排気管における排気とヒートポンプ10の冷水とに係る熱交換機ないし流量調節弁を設けて良いし、この熱交換機と乾燥炉2の排気に係る熱交換機(ないし流量調節弁)とを併せて設けても良い。
このような塗装乾燥装置301は、第1形態と同様に動作し、例えば次に説明するように動作する。
即ち、自動制御装置は、ヒートポンプ10につき、乾燥炉2の800kWの温熱負荷に追従した運転をさせる(電気入力330kW)。ヒートポンプ10は、これに伴い、冷水470kW(7度)を生成し、当該冷水は冷却炉4の冷却(負荷150kW)に用いられ、8.6度となって流量調節弁304に入る。自動制御装置は、流量調節弁304を制御して、熱交換機308において排気管302の排気から冷水が320kWの熱を受けるように冷水の流量を調整し、その冷水につきパイプ310を介してヒートポンプ10に戻すようにして、ヒートポンプ10の温水と冷水とをバランスさせ、ヒートポンプ10の運転を継続させる。
以上の第4形態の塗装乾燥装置301は、第1形態と同様に成り、特に乾燥炉4の排気熱によりヒートポンプ10の戻り冷水が加温される。
従って、第1形態と同様の効果を奏し、特に乾燥炉4の排気熱を利用するので排温水のない工場においても塗装乾燥装置301を導入することができるし、ヒートポンプ10の戻り冷水の加熱のために新たにヒートポンプを設置せずとも塗装乾燥装置301を導入することができ、シンプルな構成で極めてエネルギー効率の良い塗装乾燥装置301を提供することができる。
[第5形態]
図6は第5形態に係る塗装乾燥装置321の模式図であって、塗装乾燥装置321は、乾燥炉2における空調の構成、ワークが自動車のボディーであること、又このことにより乾燥炉2の温風が90度程度とされ冷却炉4の冷風が20度程度とされていること以外は、第4形態と変更例も含め同様である。
即ち、乾燥炉2には、炉内のエアの一部を循環させるパイプ316,318と、パイプ316,318に介装されるヒーター320が設けられており、炉内のエアがパイプ316より取り入れられ、ヒーター320により熱せられてパイプ318により戻るようになっている。なお、パイプ316,318及びヒーター320は、他の形態において設置されて良い。又、パイプ316,318及びヒーター320は、省略しても良い。
又、ヒートポンプ10の温水側のパイプ12,22の間には乾燥用熱交換機322が設置されており、乾燥用熱交換機322に対してブース空調323(冷却炉4あるいは他の機器との共通の空調ないしエア導入)のエアを通して乾燥炉2に導入するパイプ324,326が配されている。なお、このようなブース空調を利用した乾燥炉2へのエアの導入は、他の形態においてなされて良い。
このような塗装乾燥装置321は、第4形態と同様に動作し、例えば次に説明するように動作する。
乾燥炉2におけるエア(温風90度)は、ヒーター320及び乾燥用熱交換機322を経たブース空調323(20度から90度に昇温)により供給され、排気管302において90度の排気がなされる。乾燥用熱交換機322には、パイプ12からの60kWの加熱媒体(冷媒)が必要であり、ヒートポンプ10は自動制御装置により温風に追従して運転され(電気入力20kW)、冷水40kW(7度)が供給される。冷却炉4(冷風20度)における冷却負荷は30kWであり、冷却後冷水は10.75度となって冷却炉4を出るが、流量調節弁304により冷水の一部が乾燥炉2の排気熱から10kWの加温を受けるように冷水の流量を調整され、その冷水の一部を合流させ冷水全体としてまとめてヒートポンプ10の冷水側に戻り、ヒートポンプ10は温水側と冷水側とのバランスを調整されてその運転の継続が図られる。
以上の第5形態の塗装乾燥装置321においても、第4形態と同様、乾燥炉4の排気熱によりヒートポンプ10の戻り冷水を加温することで、シンプルな構成で極めてエネルギー効率の良いものとすることができる。
[第6形態]
図7(a)は第6形態に係る塗装乾燥装置401の模式図であって、塗装乾燥装置401は、自動車のボディーの上塗り塗装(ベース)を乾燥させる乾燥炉2を有すると共に、上塗り塗装(ベース)に上塗りされるクリア塗装を乾燥させる後段乾燥炉402を有する。後段乾燥炉402においては例えば(以下同様)180度の排気が排気管403より出され、その排気は排気管403に介装された脱臭炉405で脱臭される際に400度に昇温される。なお、排気管403や脱臭炉405は一般にボディー塗装工場等でみられる既存の設備である。又、既存の設備として、工場において共用される蒸気(主蒸気)を乾燥炉2におけるエア(90度)加熱用の乾燥用熱交換機16に導入する蒸気管407が設置され、ないしは蒸気管407に温風温度調節弁408が介装され、あるいはエア(20度)を導入するエアダクト409も設置されており、塗装乾燥装置401はこれら既存の設備に追加することで形成されるものである。温風温度調節弁408は、乾燥用熱交換機16に導入する蒸気の量を調整することで、乾燥炉2におけるエアの温度を調節する。
そして、塗装乾燥装置401は、後段乾燥炉402の排気熱により熱せられた熱源媒体を導入してその熱を熱源とし、別途給水した水(媒体)により蒸気及び温水を発生するヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410を備えている。後段乾燥炉402の脱臭炉405より下流側の排気管403には、熱交換機411が設置されていると共に、熱交換機411とヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410との間に、熱源媒体(50〜95度)を後者に供給するパイプ412ないし熱源媒体(45〜90度)を前者に戻すパイプ414が設けられており、熱交換機411は排気管403内の排気(熱源加熱媒体)の熱と熱源媒体の熱とを交換する。又、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410は、給水を導入する軟水管417及び給水管418と接続されている。なお、熱交換機411は、排気管403における脱臭炉405より後段乾燥炉402側に設置されても良いし、他の炉や工程の排気(熱源加熱媒体)等と熱交換するものとしても良い。
更に、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410は、熱源媒体(50〜95度)の熱を用いて軟水管417及び給水管418からの給水(25度)を加熱する運転により、蒸気(100〜120度)及び/又は高温水(85〜95度)を発生するところ、その発生した蒸気を提供する蒸気管420と、高温水を提供する温水管421が接続されている。蒸気管420は、蒸気管407に介装されたエゼクター424に接続され、エゼクター424は、主蒸気(例えば5キログラム(kg)毎平方センチ)とヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410により供給される蒸気とを混合して乾燥用熱交換機16に蒸気を供給する。
一方、温水管421は、給水管418へ戻るように配置されており(戻り温度40度)、温水管421ないしエアダクト409には、高温水とエアとの熱交換を行うことでエアを予熱する熱交換機426が介装されている。なお、乾燥炉2内のエアはブロワ付きのパイプ428により一部エアダクト409(熱交換機426より乾燥炉2側)に戻される(80度)。なお、図7(b)に示すように、蒸気管407,420のそれぞれに乾燥用熱交換機16,416を設け、乾燥用熱交換機16で最終的にエアを加熱する前に乾燥用熱交換機416でエアを加熱するようにし、エゼクター424を省略するようにしても良い。又、図7(b)に示す塗装乾燥装置において、蒸気管407(の温風温度調節弁408より乾燥用熱交換機16側)と蒸気管420を別途パイプにより接続し、当該パイプにバックアップ弁を設けても良い。この場合、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410が停止した際に当該バックアップ弁を開放することによって、乾燥用熱交換機416にも蒸気管407の熱を導入することができ、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410の停止に備えて乾燥用熱交換機16の容量を大きくする必要が無く、乾燥用熱交換機16の容量を少なくすることができる。
このような第6形態の塗装乾燥装置401にあっては、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410について後段乾燥炉402内の排気(熱源加熱媒体)の熱を利用して乾燥炉2のエア加熱用の蒸気と高温水とを生成する運転を継続することができ、更に高温水を熱交換機426によりエアのプレヒートに用いて熱の奪われた状態でヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410の給水に戻すことができ、全体として極めてエネルギー効率の良好な塗装乾燥装置401を提供することができる。
例えば、上述の例で、従来例(乾燥用熱交換機16に対し都市ガスボイラーで生成した蒸気のみを導入する例)と共にエネルギー使用に係るシミュレーションを行い、それぞれの年間エネルギー使用量を把握してこれらの対比を行うと、図8や以下に説明するように、第6形態の塗装乾燥装置401のエネルギー使用量の少なさ(効率の良好さ)が表れる。
即ち、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410(図8ではHP式蒸気・温水発生装置,HP,熱源媒体約80度)の消費電力を20kWh(kW時)とし、従来例の都市ガスボイラーの効率を90パーセント(%)とする。又、電気の効率を860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh)とし、二酸化炭素(CO2)の排出係数や各自の効率を次の通りとする。即ち、都市ガスについて、地球温暖化対策の推進に関する法律施行令及び特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令を基に環境省が作成した「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」からの計算値(11000キロカロリー毎ノルマル立方メートル(kcal/Nm3),2.3300キログラム(CO2)毎ノルマル立方メートル(kg−CO2/Nm3))を用い、電気について、中部電力株式会社の08年度実績値(860キロカロリー毎キロワット時(kcal/kWh),0.4550kg−CO2/kWh)を用いる。
そして、まず1時間当たりで考えると、第6形態に係るヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410の負荷は146880kcal/hとなり、併用するボイラーの負荷は39204kcal/hとなる。よって、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410の電気使用量は20kWhとなり、ボイラーの都市ガス使用量は4.0N立方mとなって、CO2排出量は電気の使用に基づく9.1kg/h及び都市ガスの使用に基づく9.2kg/hの合計18.3kg/hとなる。一方、従来例のボイラーの負荷は185868kcal/hとなり、都市ガス使用量は18.8N立方mとなって、CO2排出量は都市ガスの使用に基づく43.7kg/hとなる。
次に、1年間の総計を考える。ここで、1日当たりの運転時間を16時間とし、年間操業日数を250日とする。すると、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410の電気使用量は80000kWhとなり、併用するボイラーの都市ガス使用量は15840N立方mとなって、CO2排出量は電気の使用に基づく36.4トン(t)及び都市ガスの使用に基づく36.9tの合計73.3tとなる。一方、従来例のボイラーの都市ガス使用量は75098N立方mとなって、CO2排出量は都市ガスの使用に基づく175.0tとなる。
このようなシミュレーションに基づくエネルギー使用状況の把握結果によれば、第6形態の塗装乾燥装置401では、従来例と比べて、年間のCO2の排出量を58%削減することができている。又、年間のエネルギー使用量につき原油に換算すると、第6形態の塗装乾燥装置401で39キロリットル(kl)となる一方、従来例で89klとなり、56%の削減効果が現れている。
そして、塗装乾燥装置401にあっては、蒸気管407等の既存の設備を利用することが可能であり、既存の設備が無駄にならず、又導入コストを低減することができる。
[第7形態]
図9は第7形態に係る塗装乾燥装置451の模式図であって、塗装乾燥装置451は、排熱回収型のヒートポンプ10と空冷のヒートポンプ131とを備えた第3形態の構成において、ヒートポンプ10と乾燥炉2との間に第5形態と同様のヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410を介装させて成る。なお、本形態では、ヒートポンプ10は熱源媒体加熱機の役目を担う。
即ち、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410は、発生した蒸気を乾燥炉2に供給する蒸気管420と、高温水を乾燥炉2に供給する温水管421と、乾燥炉2において熱を使用されて戻る加熱媒体(高温水)を受ける給水管418とを有すると共に、熱源媒体としてヒートポンプ10からの温水を受けるパイプ412と、熱使用済みの熱源媒体をヒートポンプ10に戻すパイプ414とを有する。又、ヒートポンプ10の冷水側は、冷却炉4に係るパイプ14,24(図9(a))と、工場の排温水Xに係るパイプ214,224(図9(b))とで回路を切替え可能である。更に、ヒートポンプ131は、冷却炉4へ冷媒を供給し回収するためのパイプ114,124を備えている。
このような塗装乾燥装置451は、例えば次に説明するように動作する。
即ち、自動制御装置は、ヒートポンプ10に関し、夏季等であり、温熱負荷(温水55〜80度)と共に冷却負荷(冷風20度)も十分にかかり、温熱負荷に対して冷却負荷のバランスがとり易い場合には、図9(a)で示すように、冷水側につき媒体を冷却炉4側(パイプ14,24側)で循環するように回路の切替を行い、基本的に温水に追従してヒートポンプ10を運転させ、ヒートポンプ10の温水と冷水のみでヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410への温水(熱源媒体)の供給と冷却炉4の冷却を行わせる(熱源加熱媒体供給用ヒートポンプとしてのヒートポンプ10)。又、自動制御装置は、温度センサにより把握した冷水の温度(冷水の熱量)が所定値以上であれば、ヒートポンプ131を起動し、パイプ114,124を介して冷媒(第2冷却媒体)を冷却炉4へ供給させる。一方、自動制御装置は、ヒートポンプ131の起動中、温度センサにより把握した冷水の温度が特定値以下となれば、ヒートポンプ131の運転を中止して、パイプ114,124を介した冷却炉4への冷媒の供給を停止させる。
一方、自動制御装置は、ヒートポンプ10に関し、冬季等であり、温熱負荷に対して冷却負荷が少なくヒートポンプ10のバランスが保持できない場合、図9(b)で示すように、冷水側回路をパイプ214,224側に切替えて、温水に追従させた状態で運転しつつその冷水側に排温水Xを導入させる。パイプ214を通るヒートポンプ10の冷水は夏季の排温水Xと同様の処理がなされ、パイプ224には排温水Xが通り、ヒートポンプ10の冷水の冷熱が十分に奪われて戻ると同様の状態でヒートポンプ10に入って、熱を比較的多く使用される温水に対して冷水側をバランスさせることが可能となり、温水(熱源媒体)をヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410に適したものとした状態においてヒートポンプ10の運転が継続される。そして、冷却炉4の冷却(冷風20度)は、ヒートポンプ131によってパイプ114,124を介して冷却炉4へ冷媒を供給させることで行われる。
他方、自動制御装置は、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410に関し、夏季等ないし冬季等のいずれの時季であっても、ヒートポンプ10により熱源媒体を加熱させることで安定した熱源媒体をヒートポンプ10から供給させるように制御するので、乾燥炉2(温風90度)に対し、蒸気管420にて蒸気(100〜120度)を供給させると共に、温水管421にて高温水(85〜95度)を供給させることが可能である。なお、蒸気の供給は、第6形態と同様、エゼクターにより既存の蒸気管との混合を図っても良いし、個別の熱交換機になされるようにしても良い。
このような第7形態に係る塗装乾燥装置451にあっても、ヒートポンプ10の冷水側に適宜排温水Xを適用してヒートポンプ10の安定した温水に追従した運転を図ることができ、又ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410によって、既存の蒸気用設備を用いつつ、乾燥炉2への安定した蒸気等の供給をエネルギー効率の極めて良好な状態で図ることができる。更に、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410に対する熱源媒体を加熱する熱源媒体加熱器をヒートポンプ10とするため、ヒートポンプ式蒸気・温水発生装置410の安定した動作を確保することができるし、ヒートポンプ10は同時に冷却炉4に係る冷却を行うため、極めて効率を良好なものとすることができる。
[第8形態]
図10は第8形態に係る塗装乾燥装置501の模式図であって、塗装乾燥装置501は、第5形態と同様、乾燥炉2に対してブース空調をヒートポンプ10の加熱媒体を受け入れる乾燥用熱交換機322により加熱して、パイプ324,326を介し導入する。又、塗装乾燥装置501は、乾燥炉2内の温風の一部をパイプ316によりパイプ324に戻し、一部をパイプ302により大気へ排気する。なお、冷水側との熱交換機308や、パイプ306,310は、省略されている。
一方、塗装乾燥装置501における冷却炉4の冷風についても、乾燥炉2における温風と同様、ブース空調を用いて生成されている。即ち、塗装乾燥装置501は、冷水の入る熱交換機522を備えており、パイプ524によりブース空調を冷却用熱交換機522に導入し、冷却用熱交換機522を通過することで冷却されたブース空調をパイプ526により冷却炉4へ導入する。なお、冷却炉2のエアは同様にパイプ516によりパイプ524へ戻されたり、パイプ502を経て排気されたりする。
そして、塗装乾燥装置501は、ヒートポンプ10の冷水側(パイプ14,24)と接続された冷却媒体タンクとしての冷水タンク530を有しており、冷水タンク530から熱交換機522に対してブース空調の冷却等のための冷水がパイプ532,534ないしポンプ536を介して供給される。パイプ532,534には、流量調節弁537が介装されている。更に、冷水タンク530には、空冷ヒートポンプ540も、パイプ542,544やポンプ546を介して接続されており、又ブース空調や工場空調の基にある熱交換機ともパイプ552,554やポンプ556を介して接続されている。なお、パイプ24にも、ポンプ558が取り付けられている。又、空冷ヒートポンプ540は省略し、あるいは1個又は3個以上として良いし、ブース空調や工場空調の基にある熱交換機等を省略しても良い。
このような塗装乾燥装置501は、例えば次に説明するように動作する。
即ち、自動制御装置は、ヒートポンプ10に関し、乾燥用熱交換機322を通ったエアにつき所定量(640立方m/分)で所定温度(80度)が維持されるように加熱媒体を供給するように運転する。
そして、自動制御装置は、空冷ヒートポンプ540を、冷水タンク530の冷水につきヒートポンプ10の運転が継続でき且つ冷却炉4に係るエアの冷却が賄えるよう冷却等するために運転する。
即ち、夏季等であり、ヒートポンプ10の加熱媒体に追従する運転によって発生する冷熱によっても冷却炉4の冷却が不十分となる場合には、空冷ヒートポンプ540を冷水発生モードで運転し、冷却負荷に対する調整を行う。
例えば、エアはブース空調から65立方m/分だけ28度で供給され、パイプ316からは575立方m/分だけ70度で戻されて640立方m/分で65.7度のものとなって乾燥用熱交換機322に入り、80度に加熱されて乾燥炉2に入る一方、乾燥炉2からは65立方m/分だけ70度で排気されるとすると、およそ2629kcal/分(約3.06kW/分)の加熱媒体を供給するようヒートポンプ10の運転が行われる。
加熱媒体側の運転(ワークの出入りにより加熱負荷が変動する)により、ヒートポンプ10の出す冷水の温度は変化し得るが、ヒートポンプ10の冷水はパイプ14により冷水タンク530に供給される(7度)。
一方、自動制御装置は、冷水タンク530ないしポンプ536により冷水を冷却用熱交換機522に供給させ、ブース空調からのエア(28度,65立方m/分)とこれに混合する冷却炉4からパイプ516により戻るエア(30度,575立方m/分、混合後29.9度,640立方m/分)を冷却する(20度)。このとき、冷水による冷却用熱交換機522への冷熱の供給は、およそ1826kcal/分(約2.12kW/分)となる。なお、冷却用熱交換機522に対する冷熱の供給は、流量調節弁537による冷水の供給量の調節によっても調整される。
又、ブース空調や工場空調に対しても冷却のために冷水がパイプ552,554やポンプ556を介して供給される(14333kcal/分,16.67kW/分の冷熱)。
そして、冷水は冷水タンク530からパイプ24ないしポンプ558を介してヒートポンプ10に戻されるが、この戻り冷水がヒートポンプ10の加熱媒体側とのバランスをとるためヒートポンプ10の出す冷水に対し適度に加温された状態(12度,1762kcal/分・2.05kW/分の冷熱)となるよう、空冷ヒートポンプ540を冷水発生モードで運転して、冷水の冷却を行う(2台の空冷ヒートポンプ540の運転により計14397kcal/分(約16.74kW/分)の冷却)。
一方、冷却負荷が比較的に少なくなる中間期や冬季等であり、ヒートポンプ10の発生する冷熱が冷却側において余剰する場合には、空冷ヒートポンプ540を温水発生モードで運転し、冷水タンク530に温水を供給して冷水を加温する(冷却媒体加熱機ないし加熱用ヒートポンプとしての空冷ヒートポンプ540)。
例えば、エアはブース空調から65立方m/分だけ20度で供給され、575立方m/分だけ70度で戻されて640立方m/分で64.9度のものとなって乾燥用熱交換機322に入り、80度に加熱されて乾燥炉2に入る一方、乾燥炉2からは65立方m/分だけ70度で排気されるとすると、およそ2779kcal/分(約3.23kW/分)の加熱媒体を供給するようヒートポンプ10の運転が行われる。加熱媒体側の運転により、ヒートポンプ10の冷水はパイプ14により冷水タンク530に供給される(7度)。
一方、自動制御装置は、冷水タンク530から冷水を冷却用熱交換機522に供給させ、ブース空調からのエア(20度,65立方m/分)とこれに混合する冷却炉4からの戻りエア(30度,575立方m/分、混合後29.0度,640立方m/分)を冷却する(20度)。このとき、冷水による冷却用熱交換機522への冷熱の供給は、およそ1656kcal/分(約1.93kW/分)となる。なお、ここではブース空調や工場空調に対する冷却は不要であり、ブース空調や工場空調に対して冷水の冷熱は用いられない。
そして、冷水は冷水タンク530からヒートポンプ10に戻されるが、この戻り冷水がヒートポンプ10の加熱媒体側とのバランスをとるためヒートポンプ10の出す冷水に対し適度に加温された状態(12度,1862kcal/分・2.17kW/分の冷熱)となるよう、空冷ヒートポンプ540を温水発生モードで運転して、冷水の加温を行う(2台の空冷ヒートポンプ540の運転により計206kcal/分(約0.24kW/分)の加熱)。この加温により、ヒートポンプ10の冷水行き温度(パイプ24により受け入れる冷水の温度)を、冷水供給温度(パイプ14により供給する冷水の温度)に対して十分冷熱の奪われたものとすることができ、ヒートポンプ10の温水に追従した運転の継続が可能となる。
このような第8形態に係る塗装乾燥装置501にあっても、ヒートポンプ10の冷水側に冷水タンク530を配して冷水の温度を調整することで、ヒートポンプ10に温水追従運転を継続させることができ、又、冷水タンク530を介することで、冷水の温度変化を比較的に穏やかなものとして、より一層制御を容易にすることができる。
[第9形態]
図11は第9形態に係る塗装乾燥装置571の模式図であって、塗装乾燥装置571は、冷却側の構成を除いて第8形態と同様に成る。塗装乾燥装置571では、冷水タンクやこれと空冷ヒートポンプとの間のパイプは配置されず、ヒートポンプの冷水供給用のパイプ14は、ブース空調や工場空調に係る熱交換機に接続されると共に、冷却用熱交換機522へのパイプ532との分岐部を有している。冷却用熱交換機522からのパイプ534は、ブース空調や工場空調に係る熱交換機からのパイプ554の途中に接続され、その接続部の先にポンプ558が配置され、更にその先において空冷ヒートポンプ572が接続されている。空冷ヒートポンプ572の出力先は、パイプ24を介してヒートポンプ10となっている。
このような塗装乾燥装置571においても、空冷ヒートポンプ572がヒートポンプ10の冷水入口(パイプ24)に対して加熱等の調整の施された冷水を供給するため、ヒートポンプ10の加熱媒体に追従した運転を継続することができる。
例えば、第8形態の例と同様にブース空調のエアを乾燥ないし冷却すると、ヒートポンプ10は7度の冷水を出力し、ブース空調等に係る熱交換機や冷却用熱交換機522を経て、空冷ヒートポンプ572に対し、夏季等で17度、冬季等で9度の冷水が入る。そこで、自動制御装置は、夏季等においては、空冷ヒートポンプ572につき冷水モードで運転し、冷水の負荷調整を行う(17度から12度に冷却する)。一方、自動制御装置は、中間期や冬季等においては、空冷ヒートポンプ572につき温水モードで運転し(冷却媒体加熱機ないし加熱用ヒートポンプとしての空冷ヒートポンプ572)、ヒートポンプ10の入口冷水温度を加温(9度から12度)することで運転を継続させる。
なお、ヒートポンプ10は加熱負荷に追従する運転をするため、パイプ14において出力する冷水の温度を直接制御することができないが、自動制御装置は、空冷ヒートポンプ572の出力する冷水の温度(ヒートポンプ10の冷水入口温度)を調整することで、間接的にパイプ14内の冷水の温度を制御することが可能である。ここで、自動制御装置は、パイプ14内の冷水の温度をセンサにより監視して、当該温度が所定温度(7度)となるように空冷ヒートポンプ572の出力する冷水の温度を調整する。
このような第9形態に係る塗装乾燥装置571にあっても、ヒートポンプ10の冷水入口に空冷ヒートポンプ572を配して冷水入口温度を調整することで、ヒートポンプ10に、適切な乾燥及び冷却を行う温水追従運転を継続させることができる。
[第10形態]
図12は第10形態に係る塗装乾燥装置601の模式図であって、塗装乾燥装置601は、第5形態と同様に成るが、熱交換機308は、乾燥炉2の排気管302に配置されず、上塗り塗装を行う前の工程である前処理電着塗装工程(の前処理槽602)において拠出される排気に係る排気管604に配置されている。排気管604としては、前処理電着塗装工程に属する前処理槽602としての脱脂槽に係るもの、予備脱脂槽に係るもの、湯洗槽に係るもの、化成槽に係るもの、又はこれらの組合せが挙げられ、複数存在する場合には熱交換機308もこれに対応して複数とすることができる。なお、塗装乾燥装置601の乾燥炉2及び冷却炉4におけるエアの供給は、第8,9形態と同様、ブース空調を利用したものとなっている。
第10形態の塗装乾燥装置601においても、第4,5形態と例示も含めて同様に動作するので、第4,5形態と同様、従来熱利用されることなく単に大気へ放出されていた前処理電着塗装工程から出る排気熱を利用してヒートポンプ10の戻り冷水を加温することができ、ヒートポンプ10につき加熱及び冷却のバランスの取れた運転を継続させることができて、シンプルな構成で極めてエネルギー効率の良いものとすることができる。
[第11形態]
図13は第11形態に係る塗装乾燥装置701の夏季等における模式図であり、図14は塗装乾燥装置701の中間期等ないし冬季等における模式図であって、塗装乾燥装置701は、第4,5形態と同様、乾燥炉2の排気管302においてパイプ306内の冷却媒体との熱交換機308を有する。
又、塗装乾燥装置701は、第8,9形態と同様、ブース空調を利用した乾燥ないし冷却を行うための配管等が施されている。更に、塗装乾燥装置701は、冷却媒体側において、冷却用熱交換機522の手前(パイプ14側)に流量調節弁702を備えていると共に、加熱媒体側において、エア導入用のパイプ324ないし排気管302に、エアを排気で予熱するためのプレヒート用熱交換機704が介装されている。
加えて、パイプ324のプレヒート用熱交換機704より手前(外調機)側と、冷却炉4の排気管502との間には、冷却炉4の排気を加熱用熱交換機322(プレヒート用熱交換機704)に導くためのパイプ708が配置されており(図14)、切替により、排気管302の排気につきパイプ708に導入されてプレヒート用熱交換機704に達する排気路が選択可能となっている。なお、自動制御装置は、冷却炉4の排気を大気に導き、プレヒート用熱交換機704には外調機(ブース空調)のエアを導く、図13に示された排気路ないしエア路への切替も指令可能である。又、ブース空調は、蒸気や冷水を通す各種の熱交換機を含む空調機706により実施されている。
このような塗装乾燥装置701は、第4,5,8,9形態と同様に動作し、例えば次に説明するように動作する。
即ち、図13に示す夏季等において、自動制御装置は、ヒートポンプ10につき、乾燥炉2へのエアが80度に加熱されるよう、乾燥用熱交換機322に対する加熱媒体の供給を調整させる。
ブース空調に係る28度のエアが65立方m/分だけプレヒート用熱交換機704に導入され、38度に予熱される。予熱されたエアは循環に係るパイプ316の70度・575立方m/分のエアと混合して66.8度・640立方m/分のエアとなり、乾燥用熱交換機322に入る。
ヒートポンプ10は、66.8度・640立方m/分のエアを80度に加熱すべく、2442kcal/分(2.84kW/分)の熱量をもった加熱媒体を供給する。このとき、加熱媒体の温度は90度となる。
一方、自動制御装置は、ヒートポンプ10が加熱媒体と同時に拠出する冷却媒体により、冷却炉4へのエアが20度となるように冷却を行わせる。
28度のブース空調が65立方m/分だけ冷却用熱交換機522に導入され、循環に係るパイプ516の27度・575立方m/分のエアと混合して27.1度・640立方m/分のエアとなり、冷却用熱交換機522に入る。
ヒートポンプ10からは、1465kcal/分(1.7kW/分)の冷熱をもった7度の冷却媒体が拠出され、27.1度・640立方m/分のエアは、その内1309kcal/分(1.52kW/分)の冷熱を用いて、冷却用熱交換機522により20度に冷却される。冷却用熱交換機522に導入する冷熱量は、冷却用熱交換機522手前の冷却媒体の流量調節弁702によって調整される。流量調節弁702は、自動制御装置により開度(閉度)を制御される。ヒートポンプ10においては、必要となる加熱媒体への熱量の付与に対して、随伴する冷却媒体への冷熱の付与は冷却炉4に係る冷却に比して十分となり、あるいはそのままでは冷却炉4において十分に冷熱が奪われず、ヒートポンプ10の加熱負荷に応じた運転の継続が図れなくなる。なお、冷却炉4からは、排気管502を介して65立方m/分の排気がなされる。
他方、乾燥炉2からは、排気管302を通じて70度・65立方m/分の排気がなされ、プレヒート用熱交換機704を通過すると60度となり、ヒートポンプ10の冷却媒体の一部との熱交換機308に入る。そして、ヒートポンプ10の冷却媒体の冷熱を適切に奪ってその運転を継続すべく、熱交換機308により冷却媒体の一部を乾燥炉2の排気で加熱する(156kcal/分,0.2kW/分)。自動制御装置は、ヒートポンプ10の運転を継続すると共に、ヒートポンプ10の拠出するパイプ14内の冷却媒体の温度が冷却炉4のエアの冷却に要する冷熱量に対して低すぎない(高すぎない)ようにするため、流量調節弁304により熱交換機308における熱交換に用いられる冷却媒体の量を調節し、熱交換機308における熱交換量を調整する。排気は、熱交換機308通過後、52度となる。
以上に対し、自動制御装置は、図14に示す中間季ないし冬季等において、冷却炉4の排気管502ないし乾燥炉2側のブース空調のパイプ324につきパイプ708側に切替えて、冷却炉4の排気(20度・65立方m/分)をプレヒート用熱交換機704に導くようにする。そして、乾燥炉2の排気(70度・65立方m/分)にてエアを30度とするプレヒートを行い、70度・575立方m/分の戻りエアと共に65.9度・640立方m/分のエアとして乾燥用熱交換機322に入り、80度の温風としてエアを乾燥炉2に供給する。自動制御装置は、ヒートポンプ10につき、2592kcal/分(3.01kW/分)の熱量をもった90度の加熱媒体を乾燥用熱交換機322に供給する。
又、自動制御装置は、夏季等と同様に、ヒートポンプ10が生じた1555kcal/分(1.8kW/分)・7度の冷却媒体の内の一部(流量調節弁702により調整した1159kcal/分・1.35kW/分)にて20度・65立方m/分のブース空調からのエア及び27度・575立方m/分の戻りエア(合わせて26.3度)を冷却用熱交換機522で冷やし、20度・640立方m/分の冷風を生成する。
そして、自動制御装置は、夏季等と同様に、乾燥炉2のプレヒート後の排気(60度・65立方m/分)を熱交換機308に導入し、流量の調節された冷却媒体に対し396kcal/分(0.46kW/分)の熱を与え(冷熱を奪い)、ヒートポンプ10の運転を継続させる。
以上の塗装乾燥装置701の効果を明らかにするため、次に説明する塗装乾燥装置701と同規模の比較例(従来例)と共に、一年間におけるエネルギーの使用状況をシミュレートする(図17)。
比較例の夏季等(夏季)における模式図を図15に示し、中間期等ないし冬季等(他季)における模式図を図16に示す。比較例に係る塗装乾燥装置801は、蒸気(夏季4.31kg/分・2830kcal/分・3.29kW/分,他季4.57kg/分・3003kcal/分・3.49kW/分)を生成する都市ガスボイラー802を備えており、当該蒸気を乾燥用熱交換機322へ導入して温風(80度・640立方m/分)を発生する(夏季2442kcal/分・2.84kW/分,他季2592kcal/分・3.01kW/分)。蒸気は、乾燥用熱交換機322を経ると、90度となり、ドレン804にて排出される(夏季0.45kW/分,他季0.48kW/分)。
乾燥用熱交換機322へ導入するエア(夏季・ブース空調28度・65立方m/分,他季・冷却炉4の排気20度・65立方m/分)は、乾燥炉2の排気(70度・65立方m/分)によりプレヒートされる(夏季38度,他季30度)。プレヒートのエアは、戻りエア(70度・575立方m/分)と合流し、夏季66.8度,他季65.9度となる。なお、塗装乾燥装置801は、流量調節弁810を備えている。又、乾燥炉2の排気は、プレヒート後、大気へ放出される。
一方、塗装乾燥装置801は、冷水を冷却する空冷ヒートポンプ806を備えており、冷水を7度として夏季1309kcal/分・1.52kW/分,他季1159kcal/分・1.35kW/分の冷熱を生成し、冷却用熱交換機522に冷熱を与え、ブース空調のエア(65立方m/分,夏季28度,他季20度)と戻りエア(27度・575立方m/分)との混合エア(夏季27.1度,他季26.3度)を冷却して20度・640立方m/分の冷風を生成する。冷水は、12度となって空冷ヒートポンプ806へ戻る。なお、塗装乾燥装置801は、流量調節弁812やポンプ814を備えている。
図17に、このようなシミュレートに基づく本発明の第11形態と比較例との年間エネルギー使用量の比較結果を示す。シミュレートに当たっては、本発明のヒートポンプ10(排熱回収型HP)の加熱媒体(温水・温風)側のCOP(Coefficient Of Performance,効率)を2.5とし、冷却媒体(冷水・冷風)側のCOPを1.5とする。又、比較例の空冷ヒートポンプ806(空冷HP)の夏季のCOPを3.3とし、他季のCOPを5.3とし、都市ガスボイラー802の効率を90%とする。更に、CO2排出量や電気や都市ガスの効率につき、第6形態と同様のものを用いる。
そして、まず1時間当たりで考えると、ヒートポンプ10の冷水負荷は夏季87921kcal/h,他季93312kcal/hとなり、温水負荷は夏季146534kcal/h,他季155320kcal/hとなる。よって、ヒートポンプ10の電気使用量は夏季68.2kWh,他季72.3kWhとなり、CO2排出量は電気使用に基づく夏季31.0kg/h,他季32.9kg/hとなる。
一方、比較例の空冷ヒートポンプ806の冷水負荷は夏季78538kcal/h,他季69552kcal/hとなり、都市ガスボイラー802の負荷は夏季163333kcal/h,他季173349kcal/h(給水温度25度)となる。よって、空冷ヒートポンプ806の電気使用量は夏季27.7kWh,他季15.3kWhとなり、都市ガスボイラー802の都市ガス使用量は夏季16.5N立方m/h,他季17.5N立方m/hとなり、CO2排出量は、電気使用に基づく夏季12.6kg/h,他季6.9kg/hと都市ガス使用に基づく夏季38.4kg/h,他季40.8kg/hとの合計の、夏季51.0kg/h,他季47.7kg/hとなる。
次に季毎の総計を考える。ここで、1日当たりの運転時間を16時間とし、夏季(6〜9月とする)の操業日数を年間81日とし、他季(10〜5月とする)の操業日数を年間169日とする。
本発明のヒートポンプ10の電気使用量は、夏季88330kWh,他季195594kWhとなり、CO2排出量は、夏季40.2t,他季89.0tとなって、原油に換算すると夏季23kl,他季50klとなる。
一方、比較例の空冷ヒートポンプ806の電気使用量は夏季35865kWh,他季41261kWhとなり、都市ガスボイラー802の都市ガス使用量は夏季21382N立方m,他季47347N立方mとなり、CO2排出量は、夏季66.1t(電気使用に基づく16.3t及び都市ガス使用に基づく49.8t),他季129.1t(電気使用に基づく18.8t及び都市ガス使用に基づく110.3t)となって、原油に換算すると夏季35kl,他季67klとなる。
従って、本発明の第11形態のCO2排出量は夏季40.2t,他季89.0tとなり、比較例の夏季66.1t,他季129.1tに比して夏季39%,他季31%の削減を達成している。又、第11形態のエネルギー消費の原油換算量は夏季23,他季50klとなり、比較例の夏季35kl,他季67klに比して夏季34%,他季25%の削減を達成している。
又、本発明の第11形態のCO2排出量は年間129tとなり、比較例の195tに比して34%の削減を達成している。又、第11形態のエネルギー消費の原油換算量は年間73klとなり、比較例の102klに比して28%の削減を達成している。
[第12形態]
図18(a)は第12形態に係る塗装乾燥装置1101の模式図であって、当該塗装乾燥装置1101は、戻り温水の代わりにエアを吸うと共に温水供給の代わりに温風を出す温風冷水発生型のヒートポンプ1110を備え、温風を更に他熱源熱交換機1104により適宜加熱する他熱源Zを有し、更に基エアをヒートポンプ1110に送るほか温風路1112へ適宜分岐させる送風バイパス弁1102を備える他は、第4形態と変更例も含め同様に成る。他熱源Zは、例えば電気ヒーターであり、他熱源熱交換機1104は、温風路1112における温風を、熱交換により更に加熱する。温風は、乾燥炉2に導入される。なお、乾燥炉2からの排気を冷却側と熱交換しない(外部に放出する)ようにして良い。
このような塗装乾燥装置1101は、第4形態と同様に動作する他、次に説明するように動作する。
自動制御装置は、温風温度を把握する図示しないセンサからの信号に基づき、ヒートポンプ1110の出力を制御して吐出温風温度を調整する。又、自動制御装置は、冷水温度を把握する図示しないセンサからの信号により冷水温度を監視し、冷却負荷の変動(軽減)により冷熱が変化して(冷水温度が低下して)温風出力に対する冷水供給のバランスの崩れを監視する。
例えば、自動制御装置は、冷水供給のバランスが取れていると判断する場合には、図18(a)のように、送風バイパス弁1102を全量ヒートポンプ1110側に切り替えて15度のエア10m3/minをヒートポンプ10に吸わせ、13kWの加熱により同量で設定温度(80度)となった温風を乾燥炉2へ供給する。ここで、他熱源Zによる温風の加熱は0kWであり、即ち追加の加熱はなされない。なお、このときの冷水負荷は8.7kWであり、冷水往き温度は7度、冷水戻り温度は17度である。
一方、自動制御装置は、戻り又は往きの冷水温度の低下(所定温度(15度)以下となったこと、例えば冷水戻り温度が17度から12.7度となったこと)を把握して温風負荷に対する冷水負荷(5kWに減少)のバランスが崩れたと判断すると、図18(b)に示すように、送風バイパス弁1102によりエアの一部を温風路1112側へ分岐させ、ヒートポンプ1110への送風量を少なくする(10m3/minから5.7m3/min)。ヒートポンプ1110は、温風設定温度を維持するため、温風側の出力を絞り、これに伴い冷熱側も絞る。この冷却出力の低減により、低下した冷却負荷に対応しながら温熱負荷とのバランスを保持可能である。但し、ヒートポンプ1110によるエアの加熱量が減少する(分岐させたエアが温風に混合して温風が10m3/minで52度となる)ため、他熱源Zにより最終的に加熱調整し(5.6kW)、温風温度(温風の熱量)を80度に維持する。
なお、図18(b)の状態となった後で冷却負荷が増加して冷水温度が特定温度(20度)以上となると、自動制御装置は、徐々に送風バイパス弁1102の分岐側を絞ってヒートポンプ1110へのエアの送風量を増やす。すると、ヒートポンプ1110による吐出温風温度を維持したエアの加熱量が増加して、冷熱も加熱量の増加に従い増えるので、送風量の調節によって増加した冷却負荷に対応することが可能である。
以上の第12形態の塗装乾燥装置1101は、第4形態と同様に成るため、加熱や冷却を極めて効率の良好な状態で適切に実行しながら運転を継続することができ、消費電力やCO2排出量を上述の通り極めて効果的に抑制することができる。
又、塗装乾燥装置1101は、ヒートポンプ1110へのエアの導入量を調節することによって、温熱負荷を調整し、もって冷却負荷を制御する一方、エアの導入量変化による温風の熱量不足を補う他熱源Zを有するため、エアの送風バイパス弁1102を設置するというシンプルな構成によって冷却負荷の変動に簡易且つ確実に対応することができる。
[第13形態]
図18(c)は第13形態に係る塗装乾燥装置1121の模式図であって、当該塗装乾燥装置1121は、乾燥炉2からの排気の一部がエア(の一部)として循環する循環方式とされている他は、第12形態と変更例も含め同様に成る。
このような第13形態の塗装乾燥装置1121であっても、第12形態と同様に、ヒートポンプ1110への送風量を増減することで、ヒートポンプ1110における温熱と冷熱の供給バランスを維持して運転の継続を可能としながら、冷却負荷の増減に簡易且つ適切に対応することができる。
[第14形態]
第14形態に係る塗装乾燥装置は、第12形態から送風バイパス弁1102を除いて構成される。自動制御装置は、冷水温度が下がったと判断すると、ヒートポンプ1110に吐出温風温度を下げるように指令する。ヒートポンプ1110はこの指令に応じ、よってエアの導入量を変えなくとも加熱量が減少し、これに伴いヒートポンプ1110における冷却量も低下して、冷却負荷の減少から生ずる冷水温度の低下に対応することが可能となる。
例えば、10m3/minで15度のエアをヒートポンプ1110による13kWの温熱で加熱し、80度として他熱源Zの加熱無しで乾燥炉2に温風を供給する。このとき、冷熱負荷が8.7kWであればバランスが取れているが、5kWに低下したとすると、このままでは冷水温度が17度から12.7度となり、15度以下となる。自動制御装置は、ヒートポンプ1110に対し、吐出温風温度を52度とするように指令し、ヒートポンプ1110はこれに基づき加熱量を13kWから7.4kWへ変更する。変更すべき吐出温風温度の値は、冷却負荷あるいは冷水温度(の低下幅)により自動制御装置が定める。すると、ヒートポンプ1110は冷却量も減少し、減少した冷熱量と冷却負荷が釣り合ってヒートポンプ1110の運転が継続可能となる。なお、吐出温風温度の値は、吐出温風温度の低下に伴って低減する冷却量の度合といった装置の特性により決定することができる。又、このような吐出温風温度の調整による冷却負荷のバランスの確保は、第13形態のような循環方式においても採用することができる。
このような第14形態の塗装乾燥装置であっても、第12形態と同様に、ヒートポンプ1110における温熱と冷熱の供給バランスを維持して運転の継続を可能としながら、冷却負荷の増減に簡易且つ適切に対応することができ、又吐出温風温度の設定変更という簡易な方式によって温熱と冷熱の供給バランスを維持することが可能である。
[第15形態]
第15形態に係る塗装乾燥装置1151は、図19(a)に示すように、温風発生型のヒートポンプ1110に代えて前記ヒートポンプ10を設置したことを除き、第14形態と同様に成る。ヒートポンプ10は、温水供給パイプ1160及び温水戻りパイプ1162と接続されており、これらのパイプには温水とエアとで熱交換を行う熱交換機1164(加熱手段)が接続されている。エアは熱交換機1164を通過することで加熱され、適宜他熱源Zによる追加的加熱を受けて乾燥炉2に温風として供給される。なお、温水戻りパイプ1162には、温水を一定速で循環させる温水ポンプ1166(加熱媒体ポンプ)が取り付けられている。
自動制御装置は、例えば、10m3/minで15度のエアを熱交換機1164に導入させ、70度の温風とする。この温風は更に他熱源Zにより80度に加熱される(加熱負荷2kW)。エア加熱のための温水は往き80度・戻り70度である一方(加熱負荷11kW,COP2.0)、この温水供給に伴い冷水も往き7度・戻り17度で発生し、冷却負荷5.5kWに対してバランスの取れる状態で(丁度冷熱が用いられる状態で)作用する。自動制御装置は、熱交換機1164と他熱源Zの間の温風路1112(熱交換機1164の直後)における温風温度を監視し、当該温度が70度となるようにヒートポンプ10の温水供給を制御する(温水80度)。
そして、自動制御装置は、冷水温度を監視し、冷却負荷が4.6kWに低下して冷水温度が所定温度以下となった場合には、ヒートポンプ10の温水供給設定温度を80度から60度へ下げる。すると、ヒートポンプ10の加熱量は7kW(COP3.0)へ軽減され、エアから50度の温風が生成されると共に、冷水に加わる冷熱も減少して冷水戻り温度が所定温度以上に復帰して(15.7度)、温熱に対する冷熱のバランスが保たれる。なお、他熱源Zにより、加熱量6kWにて温風を加熱し、乾燥炉2の所望する80度とする。
なお、ヒートポンプ10につき、温水温度に追従して運転しても良く(例えば所望温風温度+5度)、この場合でも温水温度設定値を下げることで冷熱量を下げることが可能である。又、温水供給温度を一定にしつつ、温水ポンプ1166の流量をインバーターにより絞っても、加熱量を下げひいては冷熱量を下げることになる。加えて、このようなヒートポンプ10の冷熱制御は、第13形態のような温風循環方式においても同様に実行可能であるし、本出願人による別出願に係るヒートポンプ関連の各種技術(特願2009−261206「電着塗装装置」,特願2009−193528「空調システム」,特願2009−129380「媒体温度調整システム」におけるヒートポンプ制御においても実行可能である。これらの変更例も、他の実施形態(第16〜19形態等)において採用することができる。
又、図19(b)に示すように、塗装乾燥装置1181において、冷却側に冷水タンク530を配備し、冷水タンク530から冷却炉4へのパイプ532にポンプ536を設けると共に、ヒートポンプ10から乾燥炉2へのパイプ12やヒートポンプ10から冷水タンク530へのパイプ14、あるいは冷水タンク530から熱交換機308へのパイプ306(流量調節弁304は無い)にも順にポンプ1182,1184,1186を設けた場合にあっても、これらポンプ536,1182,1184,1186において上記温水ポンプ1166と同様にインバータ制御による流量調整を行うことができ、特にポンプ1186のインバーターによる流量制御により冷水と排ガスとの熱交換量を簡易に調整することができる。
このような第15形態の塗装乾燥装置1151,1181であっても、第14形態と同様に、ヒートポンプにおける温熱と冷熱の供給バランスを簡易な方式によって維持して運転の継続が可能となる。
[第16形態]
第16形態に係る塗装乾燥装置は、第15形態と同様に成る。自動制御装置は、温水ポンプ1166につき、流量一定運転に代えて、所定の温風温度を生成する熱量を有する熱量一定運転を行う。温水ポンプ1166は、熱量を一定にするため、温水の流量を自動調整する。
例えば、10m3/minで15度のエアを熱交換機1164により9kWの加熱(COP2.5,温水往き70度)で60度とし、冷却負荷5.4kW(COP1.5)にバランスの取れた状態で対応する(冷水往き7度・戻り17度)。温水ポンプ1166は、温水循環量につき、温風温度が60度となるような温水熱量を有するように運転される。
そして、自動制御装置は、冷却負荷が4.5kWに減少して冷水温度が15度以下となると、ヒートポンプ10の温水供給設定温度を80度に上げる(温水温度往き80度・戻り70度)。このとき、温水ポンプ1166は依然として熱量一定運転を続けるため、ヒートポンプ10の加熱COPが2.5から2.0となり、又循環温水量が絞られる。よって、ヒートポンプ10の発生する冷熱も低減され(冷水戻り温度15.3度,COP1.0)、冷却負荷の減少に対応しながらヒートポンプ10の運転を継続することが可能となる。
[第17形態]
図20(a)に示す第17形態に係る塗装乾燥装置1201は、ヒートポンプ10に代えてヒートポンプ式給湯器1204を用いる他、第15形態と同様に成る。ヒートポンプ式給湯器1204は、水熱源であり、好ましくはCO2冷媒であるが、R410A冷媒等であっても良い。又、ヒートポンプ式給湯器1204は、低温の戻り温水(25度)から90度程度の高温の温水を極めて効率良く生成可能であるが、温水戻り温度が45度程度以上に高くなると、ヒートポンプサイクルが成り立たないために運転の継続が不可能となるか、効率の悪化した状態(加熱側COP1.0〜1.5)でしか運転できなくなる。従って、ヒートポンプ式給湯器1204を温風生成にそのまま用いると、80度の温風を生成するために往き温水温度が90度程度必要となり、戻り温水温度が80度となって、良好な運転状態とならない。
そこで、第15形態と同様に、温水ポンプ1166を温風温度が80度となり且つ温水戻り温度が所定温度(35度)以下となるように自動調整運転させ、ヒートポンプ式給湯器1204の効率良い運転を継続させる。例えば、10m3/minで15度のエアから生成される温風温度を80度で維持するために温水温度往き90度とし(加熱13kW,COP3.0)、他熱源Zの加熱は0kWである。一方、冷却負荷8.7kW(COP2.0)に対し、温熱と同時に生成される冷熱により冷水温度往き7度・戻り17度でバランスする。温水戻り温度は温水ポンプ1166の流量調整により25度となる。温水戻り温度を35度以下とするために温水循環量を絞った場合において、エアの加熱量が不足する際には、他熱源Zにより再加熱する。なお、なるべく他熱源Zを使用しないために、熱交換機1164について十分に温水戻り温度が下がる容量とする。
このような制御における自動制御装置の作動の例について図21等に基づき改めて説明すると、自動制御装置は、まず乾燥炉2が運転中か否かを把握する(ステップS101)。運転中でなければ(No)、温水ポンプ1166及びヒートポンプ式給湯器1204を停止して(ステップS102,S103)、処理を終了する。
一方、自動制御装置は、ステップS101でYesであると、温風路1112のエア流通のための送風ファンが運転中であるか否かを確認し(ステップS104)、運転中でなければ(No)、温水ポンプ1166の運転中であるときのみこれを停止して(ステップS105,S106)、処理の最初(ステップS101)に戻る。又、ステップS104でYesであれば、ヒートポンプ給湯器1204が停止中である場合にのみこれを起動し(ステップS107,S108)、温水ポンプ1166が運転中でない場合のみこれを最低回転数で起動して(ステップS109,S110)、ヒートポンプ給湯器1204の温水戻り温度が所定値(35度)を上回るかを確認する(ステップS111)。
自動制御装置は、ヒートポンプ給湯器1204の温水戻り温度が設定値を上回る場合(Yes)、温水ポンプ1166における流量をインバーター制御によって減らす(ステップS112)。この戻り温水流量を減少するインバーター制御により、ヒートポンプ給湯器1204に戻る温水の温度が所定値以下に保持される。そして処理の最初(ステップS101)に戻る。
一方、自動制御装置は、ヒートポンプ給湯器1204の温水戻り温度が設定値を上回らない場合(No)、熱交換機1164を通過した温風の温度が設定値より5度を超えて低いか否かを確認し(ステップS113)、Yesである場合のみ、温水ポンプ1166における流量をインバーター制御によって増やす(ステップS114)。この戻り温水流量を増加するインバーター制御により、温風温度が低く(温水加熱量が少なく)かつ温水温度が設定値以下で余裕がある場合に温水加熱量を増やすことができる。この後処理の最初(ステップS101)に戻る。
このような第17形態の塗装乾燥装置1201では、温水ポンプ1166により温水熱量を調整して戻り温水温度を低温とするため、極めて効率の良好な運転を行うヒートポンプ式給湯器1204を温風生成に継続利用することができる。
[第18形態]
図20(b)に示す第18形態に係る塗装乾燥装置1221は、水熱源のヒートポンプ式給湯器1204に代えて空気熱源のヒートポンプ式給湯器1224を用いる他、第17形態と同様に成る。この第18形態にあっても、第17形態と同様に制御することができ、温風生成のためのヒートポンプ式給湯器1204の極めて効率良い運転を継続させることができる。
又、乾燥炉2からの排気をヒートポンプ式給湯器1224の空気熱交換機に導入すると、効率が更に向上する(外気6度の場合のCOP3.0から排気導入空気25度の場合のCOP3.8へ)。
[第19形態]
図22に示す第19形態に係る塗装乾燥装置1251は、パイプ24に冷水を循環させる冷水ポンプ1252が設置されていると共に、パイプ14にパイプ24への分岐パイプ1253が接続された冷熱量調整手段としての冷水弁1254が設置されており、更にパイプ24の分岐パイプ1253接続部よりヒートポンプ10側に排気冷水熱交換機1256が設置されている他、第12形態と同様に成る。排気冷水熱交換機1256には、乾燥炉2の排気口から排出された排気の排気路1258も通されており、当該排気と冷水とで熱交換が可能となっている。
このような塗装乾燥装置1251にあって、ヒートポンプ10は第12形態と同様に動作する他、次に示すように起動される。
即ち、図22(a)に示すような、起動前で停止中のヒートポンプ10を起動させる場合、冷水側において熱交換すべき排気が発生していないため、ヒートポンプ10を継続運転可能な状態で起動することができない。従って、ヒートポンプ10を立ち上げる前において、他熱源Zでまず温風を作り、排気が発生した後に、ヒートポンプ10を起動する。
例えば、エアにつき10m3/min・15度で導入し、停止中のヒートポンプ10をそのまま通過させて他熱源Zで80度まで加熱して(13kW)、乾燥炉2に導入して排気10m3/min・70度を発生させる。そして、この排気につき、排気冷水熱交換機1256において冷水を加熱すべく流通させる。熱交換後の排気は、35度となって排出される。
そして、自動制御装置は、排気温度が所定値(60度)まで上昇したことを把握すると、図22(b)に示すようにヒートポンプ10を起動し、他熱源Zを補助熱源とする運転に切り替える。なお、(冷水ポンプ1252をまず作動させ)冷水温度が所定値(25度)以上となったことを条件にヒートポンプ10の運転を開始するようにしても良い。
例えば、10m3/min・15度のエアにつき、ヒートポンプ10で13kWの加熱を行って80度とし、他熱源Zの加熱無しで乾燥炉2へ温風を導入する。温風の排気は70度となり、排気冷水熱交換機1256の通過後は35度となる。冷却負荷がないので冷水は冷水弁1254により全量分岐パイプ1253へ送られ、往き温度20の冷水が排気との熱交換により25度となってヒートポンプ10に戻る。
このような第19形態の塗装乾燥装置1251では、他熱源Zにより排気を発生させてからヒートポンプ10を起動するため、極めて効率の良好な運転を継続的に行えるヒートポンプ10の起動を極めて円滑に実行することができる。
[第20形態]
図23(a)は第20形態に係る塗装乾燥装置2861の冷熱負荷が重い場合における模式図、図23(b)は塗装乾燥装置2861の冷熱負荷が比較的軽い場合における模式図、図23(c)は塗装乾燥装置2861の温熱負荷が冷熱負荷を上回る場合における模式図、図24(a)は塗装乾燥装置2861の冷熱負荷がない場合における模式図、図24(b)は塗装乾燥装置2861の冷熱負荷がなく温熱負荷が比較的大きい場合における模式図であって、塗装乾燥装置2861は、第2形態と同様に成るが、空冷ヒートポンプの代わりに複数のヒートポンプ2004,2004p,2004q,2004r等を用いており、又空気圧縮機2840が配備されている。なお、塗装乾燥装置2861は、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034における温水を加温する熱交換機2862と、熱交換機2862に蒸気(温水)STを供給可能な図示しないボイラーと、当該蒸気STの供給量を調整可能な温熱供給量調節弁2864を備えている(図24(b)参照)。又、塗装乾燥装置2861は、空気圧縮機2840の冷却水を冷却するクーリングタワー2832aと、冷却量を調整するための冷熱供給調節弁2866を備えている。
ヒートポンプ2004p等の加熱側には、供給側のモーター弁2047p等や戻り側のモーター弁2049p等を介してクーリングタワー2832p等が接続されている。又、ヒートポンプ2004p等の加熱供給パイプ2034pにあっては、モーター弁2047pによりヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034側へ切替(ないし流量調整)可能であり、ヒートポンプ2004p等の加熱戻りパイプ2036pは、モーター弁2049pによりヒートポンプ2004の加熱側戻りパイプ2036側へ切替(ないし流量調整)可能である。なお、クーリングタワー2832p等の何れかとクーリングタワー2832aとは共通であっても良い。
更に、ヒートポンプ2004p等の冷却側のモーター弁2043p,2045p等により、当該冷却側の回路につきヒートポンプ2004の冷却側と空気圧縮機840側とで切替(ないし流量調整)可能とされている。空気圧縮機2840側に切替えられた場合には空気圧縮機2840の冷却水と熱交換可能である。又、ヒートポンプ2004の冷却側供給パイプ2030及び冷却側戻りパイプ2032にも順にモーター弁2043,2045が設置されており、同様に冷却炉4側と空気圧縮機2840側とで切替(ないし流量調整)可能とされている。なお、図23(a),(b)においてはヒートポンプ2004pの回路が省略されており、図23(c),図24(a)においてはヒートポンプ2004pの加熱側回路が省略されている。これらの加熱側回路は、実際には乾燥炉2の乾燥用熱交換機16と繋がっている。
このような塗装乾燥装置2861は、第2形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、冷熱重負荷時等の図23(a)の場合、冷却用熱交換機18へ冷熱を供給する必要があり、冷熱負荷に応じた台数におけるヒートポンプ2004p等の冷房運転を行う。このとき、ヒートポンプ2004p等の冷却側はヒートポンプ2004の冷却側に切り替わっており、ヒートポンプ2004p等の加熱側はクーリングタワー2832p等側に切り替わっている。又、複数のヒートポンプ2004p等が冷房運転していれば、全てのヒートポンプ2004p等につき冷房運転又は冷房運転待機の状態とする。ただし、全体としての冷却能力に余裕があれば、1台を暖房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004,2004p等により冷水が7度で冷却用熱交換機18に供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。このとき、ヒートポンプ2004の温水供給温度は70度であり、温水戻り温度は65度である。又、ヒートポンプ2004p等の温水供給温度は35度であり、温水戻り温度はクーリングタワー2832p等の冷却により30度である。当該冷却により、ヒートポンプ2004p等は冷房運転を継続することができる。
又、冷熱軽負荷時等の図23(b)の場合、負荷に応じて冷房運転するヒートポンプ2004p等が1台となったら、他の1台につき冷房待機を行い、残りのヒートポンプ2004p等につき温水追従運転(暖房運転)の待機を行う。温水追従待機中のヒートポンプ2004p等の加熱側は、クーリングタワー2832p等側からヒートポンプ2004の加熱側に切替えられ、冷却側は、ヒートポンプ2004の冷却側から空気圧縮機2840側へ切替えられる。そして、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水戻り温度あるいは温水出口温度が所定値以下となる等、温熱の不足を検知したら、温水追従待機中のヒートポンプ2004p等を運転する。なお、ヒートポンプ2004p等の内1台でも温水追従運転が開始されると、冷房待機中のヒートポンプ2004p等を温水追従待機状態に切替える。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転するヒートポンプ2004p等により冷水が7度で冷却コイル16に供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。ここで、ヒートポンプ2004の温水供給温度は70度であるものの、温水戻り温度は65度から63度以下となったら、温水追従待機中のヒートポンプ2004p等を運転し、冷水を30度で空気圧縮機2840に供給し、冷却水との熱交換により35度で戻らせる。又、温水追従運転中のヒートポンプ2004p等は、ヒートポンプ2004へ戻る温水を70度まで加熱し、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034へ戻す。温水追従運転中のヒートポンプ2004p等に空気圧縮機2840の排熱を適用することにより、ヒートポンプ2004p等は暖房運転を継続することができる。
更に、冷熱負荷が少なく、ヒートポンプ2004の冷却最低出力(あるいはこれを上回る所定出力)未満となった場合、図23(c)に示すように、ヒートポンプ2004の冷却側を空気圧縮機2840側に切替え、ヒートポンプ2004による冷却用熱交換機18に対する冷熱供給を停止する。当該冷熱供給は、冷房運転する1台のヒートポンプ2004p等により行われる。
例えば、冷房運転するヒートポンプ2004p等により冷水が7度で冷却用熱交換機18に供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。冷房運転するヒートポンプ2004p等の加熱側は、クーリングタワー2832p等で運転継続可能に冷却される。又、ヒートポンプ2004の冷水供給温度は30度であり、冷水戻り温度は空気圧縮機2840の冷却水との熱交換により35度とされ、ヒートポンプ2004による温水供給の継続を可能としている。一方、ヒートポンプ2004の温水側は温水追従運転中のヒートポンプ2004p等により適宜加温され、供給温度が70度に維持される(戻り温度は65度近辺となる)。
又、生産ライン立ち上げ時等で冷熱が不要である場合、図24(a)に示すように、ヒートポンプ2004p等は温熱負荷に応じて温水追従運転又は待機状態とされ、ヒートポンプ2004も含めて冷却側が空気圧縮機2840側に切替えられる。ただし、自動制御装置は、冷却側の温度や各種モーター弁の開度あるいは生産状況ないしこれらの関係から、冷却用熱交換機18において冷水が必要になりそうであると判断すると、ヒートポンプ2004p等の内の1台を冷房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004,2004p等の加熱側は、65度で戻り、70度で供給される。又、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側は、空気圧縮機2840の冷却水により30度から35度に加温され、空気圧縮機2840の排熱を利用してヒートポンプ2004,2004p等の運転を継続することができる。
加えて、冬季の生産ライン立ち上げ時等で冷熱が不要であり温熱負荷が大きい場合、図24(b)に示すように、ヒートポンプ2004p等は温水追従運転され、ヒートポンプ2004も含めて冷却側が空気圧縮機2840側に切替えられる。又、温熱負荷により、ボイラーから蒸気ST等を温熱供給量調節弁2864による調整のうえで供給し、熱交換機2862を介して温水を加熱する。
更に、空気圧縮機2840の排熱量が工場の空気消費量の減少等により低下して、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側の加温が十分に行えなくなる場合、そのままではヒートポンプ2004,2004p等の冷水戻り温度が低下し、ヒートポンプ2004,2004p等が停止する温度(例えば5度)となってしまう。そこで、冷水が所定温度(例えば20度)以下となった場合、自動制御装置はヒートポンプ2004p等を1台ずつ停止して温水追従待機状態とし、空気圧縮機2840の冷却水温度を保持する。ヒートポンプ2004p等の停止による加熱量の減少は、熱交換機2862による加熱により補われる。なお、ヒートポンプ2004,2004p等の出力をインバーター等により絞ることで空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良いし、温水の流量を温水ポンプやインバーター等により絞ることでヒートポンプ2004,2004p等の出力を絞って空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良いし、熱交換機2862における加熱量を増すことでヒートポンプ2004,2004p等の負担を減らして運転継続に必要な冷水の加熱量を減らし、空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良いし、ヒートポンプ2004,2004p等の温水供給温度設定値を下げて、ヒートポンプ2004,2004p等の出力を絞って空気圧縮機2840の冷却水温度の低下を防止しても良い。
又、空気圧縮機2840の排熱量が工場の空気消費量の増加等により上昇して、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側の加温が過剰となる場合、そのままではヒートポンプ2004,2004p等の冷水戻り温度が上昇し、ヒートポンプ2004,2004p等が停止する温度となってしまう。そこで、自動制御装置は、冷水が所定温度以上となるかあるいは空気圧縮機2840の冷却水温度が所定温度(例えば35度)以上となった場合、ボイラーが運転していて温水追従待機中のヒートポンプ2004p等があればそのヒートポンプ2004p等を運転して冷却水の冷却を行い、あるいはクーリングタワー2832aを運転し、冷却水温度が上昇しないよう保持する。
例えば、ヒートポンプ2004,2004p等の冷却側は、30度で供給され、35度で戻る。又、ヒートポンプ2004,2004p等の加熱側は、68度から熱交換機2862の加熱により70度となって供給され、63度で戻る。
以上の塗装乾燥装置2861では、加熱負荷や冷熱負荷に応じてヒートポンプ2004,2004p等の冷却側を自動で空気圧縮機2840側に切替え、空気圧縮機2840の冷却水との熱交換によりヒートポンプ2004,2004p等の冷水を加温するため、冷却水を利用してヒートポンプ2004,2004p等の運転を継続させることができ、省エネルギー性の高い状態で作動させることができる。
[第21形態]
図25(a)は第21形態に係る塗装乾燥装置2871において冷熱負荷が温熱負荷に対して極めて大きい場合等における模式図、図25(b)は塗装乾燥装置2871において冷熱負荷が温熱負荷に対して大きい場合等における模式図、図25(c)は塗装乾燥装置2871において温熱負荷が冷熱負荷に対して大きい場合等における模式図、図26(a),(b)は塗装乾燥装置2871において空冷ヒートポンプが故障した場合等における模式図であって、塗装乾燥装置2871は、第20形態と同様に成る。
加えて、空冷ヒートポンプ2154a等の回路は、モーター弁2043a等やモーター弁2045a等により、ヒートポンプ2004の加熱側と冷却側とで切替可能である。なお、図25,26において、冷却炉4とヒートポンプ2004の間の回路は一部省略されている。
塗装乾燥装置2871では、空冷ヒートポンプ2154a等による冷却を見込み、ヒートポンプ2004の最大冷熱出力を当該最低冷熱負荷より小さくしている。
このような塗装乾燥装置2871は、第20形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、夏季の冷熱重負荷時等の図25(a)の場合、冷却炉4の冷却用熱交換機18へ冷熱を供給する必要があり、冷熱負荷に応じた台数における空冷ヒートポンプ2154a等の冷房運転を行う。このとき、空冷ヒートポンプ2154a等の冷却側はヒートポンプ2004の冷却側に切り替わっている。又、複数の空冷ヒートポンプ2154a等が冷房運転していれば、全ての空冷ヒートポンプ2154a等につき冷房運転又は冷房運転待機の状態とする。ただし、全体としての冷却能力に余裕があれば、1台を暖房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却用熱交換機18に供給され、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等には12度で戻る。このとき、ヒートポンプ2004の温水供給温度は65度であり、温水戻り温度は60度である。又、空冷ヒートポンプ2154a等による戻り冷水の冷却ないし冷却側供給パイプ2030への供給により、冷水温度ないし冷熱量を制御する。温水については、ヒートポンプ2004を温水追従モードで運転(熱回収運転)することにより、温水温度ないし加熱量を制御する。
又、冷熱軽負荷時等の図25(b)の場合、負荷に応じて冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等が所定台数(1台)以下となったら、他の所定台(1台)につき冷房待機を行い、残りの空冷ヒートポンプ2154a等につき暖房運転の待機を行う。暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等の加熱側は、ヒートポンプ2004の冷却側から加熱側に切替えられる。そして、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水戻り温度が所定値以下となる等温熱の不足を検知したら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転する。なお、空冷ヒートポンプ2154a等の内所定台(1台)以上において暖房運転が開始されると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却コイル2016に供給され、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等には12度で戻る。ここで、ヒートポンプ2004の温水供給温度は65度であるものの、温水戻り温度は60度から58度以下となったら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、ヒートポンプ2004へ戻る温水を空冷ヒートポンプ2154a等により65度まで加熱し、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034へ戻して温水不足を解消する。
更に、生産状況により冷熱負荷が少なくなった場合、図25(c)に示すように、ヒートポンプ2004による冷却は続行すると共に、空冷ヒートポンプ2154a等(の1台)を冷房運転して冷熱負荷を調整する。又、温熱負荷に応じて暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転すると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。なお、空冷ヒートポンプ2154a等において冷房待機機を(1台)設けても良い。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却用熱交換機18に供給され、ヒートポンプ2004には12度で戻る。ヒートポンプ2004や暖房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等による温水供給温度は65度であり、温水戻り温度は60度とされ、ヒートポンプ2004による温水ないし冷水の供給の継続を可能としている。
加えて、冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等がトリップ等により故障した場合、図26(a)に示すように、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を冷房モードに切替え冷房運転して冷熱不足を防止する。
以上の塗装乾燥装置2871では、加熱負荷や冷熱負荷に応じて空冷ヒートポンプ2154a等の状態を切替え、ヒートポンプ2004による加熱や冷却を補助するため、乾燥炉2ないし冷却炉4につき年間を通じて的確に加熱ないし冷却することができ、ヒートポンプ2004の運転を継続させて、省エネルギー性の高い状態で塗装乾燥装置2871を作動させることができる。
[第22形態]
図26(c)は第22形態に係る塗装乾燥装置2881において温熱負荷が冷熱負荷に対して大きい場合等における模式図であって、塗装乾燥装置2881は、第20形態と同様に成るが、ヒートポンプ2004の最大冷熱出力を当該最低冷熱負荷以上にしている点で相違する。
塗装乾燥装置2881においては、温水追従運転中のヒートポンプ2004にあって、冷熱負荷が少ないことから冷熱が十分に利用されないで冷水が戻り、このままでは温熱と冷熱のバランスが崩れて運転が停止してしまうような場合、暖房運転中の(1台の)空冷ヒートポンプ2154a等の温水を熱交換機2040側に切替えて、ヒートポンプ2004の冷水を熱交換により加熱し、ヒートポンプ2004の冷水の冷熱を奪って温熱とのバランスを保ち、ヒートポンプ2004の運転を継続させる。なお、ヒートポンプ2004の加熱側の回路を熱交換機2040側に分岐可能とし、この分岐回路ないし熱交換機2040によってヒートポンプ2004の冷水側を加熱しても良い。
このような塗装乾燥装置2881にあっても、ヒートポンプ2004の冷熱と温熱のバランスが維持されてヒートポンプ2004の運転を継続させることができ、省エネルギー性に優れた状態で塗装乾燥装置2881を適切に運転することができる。
[第23形態]
図27(a)は第23形態に係る塗装乾燥装置2901において冷熱負荷が温熱負荷に対して極めて大きい場合等における模式図、図27(b)は塗装乾燥装置2901において冷熱負荷が温熱負荷に対して大きい場合等における模式図、図27(c)は塗装乾燥装置2901において温熱負荷が冷熱負荷に対して大きい場合等における模式図、図28(a)は塗装乾燥装置2901において冷熱負荷がない場合等における模式図、図28(b)は塗装乾燥装置2901において冷熱負荷がなく温熱負荷が比較的に大きい場合等における模式図であって、塗装乾燥装置2901は、第20形態と同様に成る。なお、図27,28においても一部の回路が省略されている。
又、塗装乾燥装置2901は、第20形態と同様に、空気圧縮機2840を備えていると共に、ヒートポンプ2004の冷却側を空気圧縮機2840の冷却水(排温水)側に切替えるモーター弁2043,2045ないし回路を有している。
このような塗装乾燥装置2901は、第20形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、冷熱重負荷時等の図27(a)の場合、冷却用熱交換機18へ冷熱を供給する必要があり、冷熱負荷に応じた台数における空冷ヒートポンプ2154a等の冷房運転を行う。このとき、空冷ヒートポンプ2154a等の冷却側はヒートポンプ2004の冷却側に切り替わっている。又、複数の空冷ヒートポンプ2154aが冷房運転していれば、全ての空冷ヒートポンプ2154a等につき冷房運転又は冷房運転待機の状態とする。ただし、全体としての冷却能力に余裕があれば、1台を暖房待機状態とする。
例えば、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却コイル16に供給され、ヒートポンプ4や空冷ヒートポンプ154a等には12度で戻る。このとき、ヒートポンプ2004の温水供給温度は65度であり、温水戻り温度は60度である。又、空冷ヒートポンプ2154a等による戻り冷水の冷却ないし冷却側供給パイプ30への供給により、ヒートポンプ2004の冷熱負荷が軽減され、ヒートポンプ2004は冷房運転を継続することができる。
又、冷熱軽負荷時等の図27(b)の場合、負荷に応じて冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等が1台となったら、他の1台につき冷房待機を行い、残りの空冷ヒートポンプ2154a等につき暖房運転の待機を行う。暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等の加熱側は、ヒートポンプ2004の冷却側から加熱側に切替えられる。そして、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水戻り温度が所定値以下となる等温熱の不足を検知したら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転する。なお、空冷ヒートポンプ2154a等の内1台でも暖房運転が開始されると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。
例えば、ヒートポンプ2004や冷房運転する空冷ヒートポンプ2154a等により冷水が7度で冷却用熱交換機2018に供給され、ヒートポンプ2004や空冷ヒートポンプ2154a等には12度で戻る。ここで、ヒートポンプ2004の温水供給温度は65度であるものの、温水戻り温度は60度から58度以下となったら、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、ヒートポンプ2004へ戻る温水を65度まで加熱し、ヒートポンプ2004の加熱側供給パイプ2034へ戻して温水不足を解消する。
更に、生産状況により冷熱負荷が少なくなり、冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等の出力が所定値(最大出力の所定割合(25%)に応じた値)以下となるか、あるいは冷水戻り温度が所定値(10度)以下となった場合、図27(c)に示すように、ヒートポンプ2004の冷却側を空気圧縮機2840側に切替えると共に、空冷ヒートポンプ2154a等の1台を冷房運転して冷却炉4の冷熱負荷に対応する。又、温熱負荷に応じて暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転し、暖房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を運転すると、冷房待機中の空冷ヒートポンプ2154a等を暖房待機状態に切替える。なお、空冷ヒートポンプ2154a等において冷房待機機を(1台)設けても良い。
例えば、ヒートポンプ2004は65度の温水を供給して60度の戻り温水を受ける一方、空気圧縮機2840側に30度の冷水を供給して冷却水との熱交換により35度の戻り冷水を受ける。乾燥炉2の加熱はヒートポンプ2004によりまかなわれ、冷却炉4の冷却は冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等によりまかなわれる(供給7度,戻り12度)。ヒートポンプ2004の冷却側に空気圧縮機2840の排温水を適用することで、ヒートポンプ2004の運転が継続される。
一方、冷房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等の出力が所定値(最大出力の所定割合(85%)に応じた値)以上となるか、あるいは冷水戻り温度が所定値(15度)以上となった場合、ヒートポンプ2004を一旦停止し、冷水側を乾燥炉2側に切替え、乾燥炉2の温水を空冷ヒートポンプ2154a等でまかなった後、ヒートポンプ2004を温水追従運転して冷温水を供給する。
加えて、生産ライン立ち上げ時等で冷房負荷がない図28(a)のような場合、空冷ヒートポンプ2154a等を加熱負荷に応じた台数で暖房運転し、残りを暖房待機状態とする。又、冷熱供給量調節弁2048の開度が所定値以上となるか、あるいは生産状況が所定のものとなったら、冷水の供給再開に対応するため、(1台の)空冷ヒートポンプ2154a等を冷房待機状態に切替える。
又、冬季の生産ライン立ち上げ時等で温熱負荷が大きい図28(b)のような場合、温水の熱量が加熱負荷に対して少なければ、その分ヒートポンプ2004の加熱側がボイラーからの蒸気STとの熱交換により加温され、加熱不足を防止する。例えば、ヒートポンプ2004の温水戻り温度が58度で温水供給温度が暖房運転中の空冷ヒートポンプ2154a等によっても63度にしか昇温しない場合、自動制御装置は温度センサ等によりこの場合を把握して温熱供給量調節弁2864を作動させ、蒸気STにより供給する温水を65度に加温する。
以上の塗装乾燥装置2901では、加熱負荷や冷熱負荷に応じて空冷ヒートポンプ2154a等の状態を切替え、ヒートポンプ2004による加熱や冷却を補助すると共に、冷熱負荷がない場合にはヒートポンプ2004の冷却側を排温水側に切替えると共に必要に応じて空冷ヒートポンプ2154a等を冷房待機させるため、乾燥炉2や冷却炉4につき的確に加熱ないし冷却しながら、ヒートポンプ2004の運転を継続させて、省エネルギー性の高い状態で塗装乾燥装置2901を作動させることができる。
[第24形態]
図28(c)は第24形態に係る塗装乾燥装置2911において冷熱負荷がない場合等における模式図であって、塗装乾燥装置2911は、第23形態と同様に成るが、冷却側回路の切替えにつき、モーター弁2043,2045で行うのではなく、熱交換機2040で空気圧縮機2840の冷却水との熱交換を行いつつ流量調節弁2046により行うものとしている。
このような塗装乾燥装置2911にあっても、例えば空気圧縮機2840の40度の冷却水によってヒートポンプ2004の25度の冷水を30度に昇温できる(空気圧縮機2840の冷却水は35度となる)ため、温熱と冷熱のバランスを保持して省エネルギー性に優れたヒートポンプ2004の運転を継続させることができる。
[第25形態]
図29は第25形態に係る塗装乾燥装置3001の模式図であって、塗装乾燥装置3001は、第20形態と同様に成るが、温水ボイラー2506及び温水タンク2508が加熱側戻りパイプ2036側に配置されていると共に、冷却側戻りパイプ2032a〜2032dないし加熱側戻りパイプ2036a〜2036dのそれぞれに冷水ポンプ3002a〜3002dあるいは温水ポンプ3006a〜3006dが設置されている。又、ヒートポンプ2004aは、冷熱負荷調整機として位置づけられている。なお、冷熱負荷調整機はここでは1台とされているが、複数台配置しても良い。
塗装乾燥装置3001の自動制御装置は、例えばヒートポンプ2004b等につき自身の温水供給温度に基づいて制御し、冷熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004aにつき自身の温水供給温度及び冷水供給温度に基づいて制御し、温水ボイラー2506につき温水タンク2508の温度あるいは加熱側戻りパイプ2036の温水戻り温度に基づいて制御し、冷水戻り温度を調整する流量調節弁2046につき冷水戻り温度に基づいて制御し、乾燥炉2への温水供給量を調整する第2温熱供給量調節弁2109ないし冷却炉4への冷水供給量を調整する冷熱供給量調節弁2048につき温風温度に基づいて制御する。これらの温度は、それぞれの温度センサにより検知され、自動制御装置により把握される。
このような塗装乾燥装置3001は、第20形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、図30に示すように、自動制御装置は、乾燥炉2の停止指令があれば(ステップS1001でNO)、ヒートポンプ2004a等や温水ボイラー2506を停止して(ステップS1002,1003)、処理を終了する。
一方、停止指令がなければ(ステップS1001でYES)、流量調節弁2046の開度が60%以下であるかを判定し(ステップS1004)、YESであれば、冷水を加温する排温水Xの熱量に余裕があるので、温水ボイラー2506が運転中でなければ最初に戻る(ステップS1005でNO)。なお、初期状態において、ヒートポンプ2004aは運転していると共に、ヒートポンプ2004b等は停止している。
他方、温水ボイラー2506が運転中であれば(ステップS1005でYES)、流量調節弁2046の開度を上げるためのループ1の処理に移る。即ち、まず冷熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004aの温水ポンプ3006aにおける流量を増加する(ステップS1006)。すると、一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が下がるので、ヒートポンプ2004aは、温水が設定温度(60度)となるように、出力を自動的に増加する(温熱追従運転,インバーター出力増)。
温水出力が増加すると、これに伴い冷水出力も増加して、そのままでは冷水温度が低下していくので、自動制御装置は、流量調節弁2046の開度が所定値(70%)に上昇し、排温水X(35度)との熱交換量が増加して冷水戻り温度(17度,供給温度10度)が維持される状態で落ち着くように、ヒートポンプ2004a等や温水ボイラー2506を次のように制御する。
即ち、自動制御装置は、ヒートポンプ2004aの負荷が最大負荷に対して所定割合(95%)以下であるか否か確認する(ステップS1007)。ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以下でなければ(NO)、ヒートポンプ2004b等のうち運転していないものを(1台)起動し(ステップS1008)、ステップS1009に移行する。又、ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以下であれば(ステップS1007でYES)、ステップS1008を実行せずにステップS1009に移行する。
又、ヒートポンプ2004aの戻り温水の流量を増やすと、乾燥炉2への温水流量も増加し、温水戻り温度が上昇するため、他熱源としての温水ボイラー2506の出力を絞ることで、温水戻り温度を適切な温度差(ヒートポンプ2004aの最大出力時のもの,差分5度)が確保されるようにする。
即ち、自動制御装置は、ステップS1009において、温水戻り温度が所定値(66度)以上となったか否か監視する。温水戻り温度が所定値以上であれば温水戻り温度を所定値(65度)まで下げるためのループ2を実行し、そうでなければループ1の先頭(ステップS1007)若しくは処理の先頭(流量調節弁46の開度が所定値に達した場合,ステップS1001)に戻る。ループ2では、温水ボイラー2506の出力を減じていく(ステップS1010)。
例えば、450kWの温熱負荷を賄う場合、温水流量毎時43トンで温度差5度となるヒートポンプ4aでは250kW(43×5を860kW/kcalで除する)を賄い、又温水ボイラー2506では200kWを賄っている状態から、温水流量を毎時60.2トンに増加すると、一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が下がり、当該温度を設定値まで回復するためインバーターで350kW(60.2×5/860)に増加され、乾燥炉2からの温水戻り温度が上昇するものの、これに従い温水ボイラー2506の出力を100kWに絞るので、ヒートポンプ2004aでの温水供給・戻り温度差を保持しながら、450kWの温熱負荷に対応することができる。
なお、以上に対し、温水ボイラー2506によって温水戻り温度を調整しないとすると、戻り温水の流量を増やしても一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が下がるので、温水追従運転をするヒートポンプ2004aは出力を増して温水供給温度を設定値(70度)とする。すると、一時的に設定温度における温水の流量が増えて熱量が増えるが、乾燥炉2における熱消費量は変わらない程度の時間経過であるため、温水戻り温度が上昇して供給温度との差が少なくなり、温水追従運転によりヒートポンプ2004aの出力が絞られるため、結局ヒートポンプ2004aの加熱出力は変わらないとみることができ、よって冷却出力も増加しないことになる。
例えば、450kWの温熱負荷を賄う場合、ヒートポンプ2004aにおいて温水流量毎時77.4トンで温度差5度のところ流量を毎時129トンに増加しても温度差が3度となり、加熱出力は450kWで変わらない。即ち、流量を増すと一時的に温水供給温度が68度に下がるが、温水追従運転により温水温度を70度とするためインバーター出力が増加され、一時的に750kWの高出力となる。しかし、乾燥炉2での負荷が450kWであるため温熱が用いられず温水戻り温度が上がることとなり、温水供給温度との温度差が縮まって結局ヒートポンプ2004aの温水出力が乾燥炉2での負荷に合っていく。
一方、流量調節弁2046の開度が所定値(60%)以下でなければ(ステップS1004でNO)、更に当該開度がこれを上回る特定値(80%)以上であるかをチェックし(ステップS1011)、そうでなければ、処理の先頭(ステップS1001)に戻り、そうであれば、排温水Xの熱量が不足するものとして、流量調節弁2046の開度を当該所定値と特定値の間の値(70%)に下げるためのループ3を実行する。
ループ3では、ヒートポンプ2004aの温水ポンプ3006aにおける流量を減らし(ステップS1012)、ヒートポンプ2004aの負荷が最大負荷に対して所定割合(50%)以上であるか否か確認する(ステップS1013)。自動制御装置は、ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以上でなければ、ヒートポンプ2004b等のうち運転中のものを(1台)停止し(ステップS1014)、ステップS1015に移行する。又、自動制御装置は、ヒートポンプ2004aの負荷が所定割合以上であれば、ステップS1014を実行せずにステップS1015に移行する。
自動制御装置は、ステップS1015において、温水戻り温度が所定値(64度)以下となったか否か監視する。温水戻り温度が所定値以下であれば温水戻り温度を所定値(65度)まで上げるためのループ4を実行し、そうでなければループ3の先頭(ステップS1012)若しくは処理の先頭(流量調節弁2046の開度が所定値に達した場合,ステップS1001)に戻る。ループ4では、温水ボイラー2506が自動運転モードでなければ当該モードとしたうえで(ステップS1016,S1017)、温水ボイラー2506の出力を増していく(ステップS1018)。
このようなループ3等の実行により、温水ポンプ3006aの流量を減らすと共に他熱源としての温水ボイラー2506による加温量を調整して、ヒートポンプ2004aにおける温水側の温度差を適切に保持し、冷熱負荷に適切に対応することができる。
例えば、350kWの温熱負荷を賄う場合、温水流量毎時60.2トンで温度差5度となるヒートポンプ2004aでは350kWを賄っている状態から、温水流量を毎時43トンに減少すると、一時的にヒートポンプ2004aの温水供給温度が上がり、当該温度を設定値へ下げるためインバーターで250kWに絞られて、乾燥炉2からの温水戻り温度が下がるものの、これに伴い温水ボイラー2506による100kWの加熱を開始するので、ヒートポンプ2004aでの温水供給・戻り温度差を差分5度に保持しながら、350kWの温熱負荷に対応することができる。
なお、以上に対し、温水ボイラー2506によって温水戻り温度を調整しないとすると、例えば温水流量を毎時60.2トンから毎時43トンに絞っても、結局温度差が7度に広がって加熱出力が350kWから変わらない。
以上の塗装乾燥装置3001では、流量調節弁2046の開度が所定値以上となって排温水Xの熱量が不足し温熱負荷に対する冷熱のバランスがとれなくなってヒートポンプ2004が停止しそうになると、適宜ヒートポンプ2004の一部を停止したり、温水ボイラー2506の出力を増したりし、又流量調節弁2046の開度が所定値以下(かつ温水ボイラー2506運転中)となって排温水Xの熱量に余裕がありヒートポンプ2004による運転が可能な状況になると、順次ヒートポンプ2004の運転を開始するので、温熱負荷に適切に対応しつつ運転の継続可能な状態で最大数のヒートポンプ2004を稼働させることができ、運転に影響のない範囲でなるべくヒートポンプ2004の他熱源に対する運転比率を向上して、温熱負荷が変動しても省エネルギー性の高い状態で塗装乾燥を施すことができる。
又、塗装乾燥装置3001では、排温水Xや温水ボイラー2506という他熱源が設置されると共に、冷水ポンプ3002a等や温水ポンプ3006a等によってヒートポンプ2004に対する媒体の流量を調整するため、流量の調整によって媒体温度ないし媒体熱量を制御することができる。
更に、塗装乾燥装置3001では、複数のヒートポンプ2004のうちの一部を冷水負荷調整機とし、その負荷に応じて他のヒートポンプ2004の追加起動や停止を行うため、単数あるいは複数のヒートポンプ2004を負荷が過剰とならない範囲で負荷の高く効率の良好な状態で運転することができ、又このような適切な運転を冷熱負荷調整機の負荷というシンプルな指標に基づいて簡便に実行することができる。
[第26形態]
図31は第26形態に係る塗装乾燥装置の動作を示すフローチャートであって、当該塗装乾燥装置は、第25形態と同様に成るが、冷却側戻りパイプ2032(冷却側戻りパイプ32aに分岐する手前・上流側)に冷水タンクを備えている。又、図示しない冷水チラーが、後述の第28形態(図33参照)と同様、冷却側に接続されている。
このような塗装乾燥装置は、第25形態と同様に動作するが、流量調節弁2046の開度の代わりに、冷水タンク等における冷水戻り温度に基づいて、ヒートポンプ2004の運転台数を変更したり、他熱源の出力を増減したりする。
即ち、冷水戻り温度が特定値(17度)以上であって(ステップS1021でYES)、温水ボイラー2506が運転中であれば(ステップS1005でYES)、冷水戻り温度を所定値(15度)まで下げるためにループ1を実行する。なお、温水ボイラー2506が運転中でなければ(ステップS1005でNO)、冷水チラーを運転する(ステップS1022)。
又、冷水戻り温度が特定値(13度)以下であれば(ステップS1023でYES)、冷水戻り温度を所定値(15度、下げる場合の所定値と異なっても良い)まで上げるためにループ3を実行する。なお、ステップS1012の手前において、冷水チラーが運転中か否かを確認し(ステップS1024)、運転中であれば(YES)、冷水チラーを1台停止して(ステップS1025)ループ3の末尾に移行し、運転中でなければ(NO)、ステップS1012を実行する。
以上の第26形態に係る塗装乾燥装置においても、第25形態に係る塗装乾燥装置3001と同様、温熱負荷に適切に対応しつつ運転の継続可能な状態で最大数のヒートポンプ2004を稼働させることができ、運転に影響のない範囲でなるべくヒートポンプ2004の他熱源に対する運転比率を向上して、温熱負荷が変動しても省エネルギー性の高い状態で塗装乾燥を実行することができる。
[第27形態]
図32は第27形態に係る塗装乾燥装置の動作を示すフローチャートであって、当該塗装乾燥装置は、第26形態と同様に成るが、温水ボイラー2506と接続された温水タンクが、加熱側供給パイプ2034及び加熱側戻りパイプ2036の双方(合流分岐部と第2温熱供給量調節弁2109の間)において介装されており、当該温水タンクと乾燥炉2の間における加熱側供給パイプ2034には、当該温水タンクから温水を乾燥炉2(第2温熱供給量調節弁2109)に供給するためのポンプが設置されている。
又、第27形態の塗装乾燥装置にあっては、冷水を直接冷却しあるいは冷水を冷却するための媒体を冷却する冷水チラーが、1台又は複数台設置されている。当該冷水チラーの冷水側は、ヒートポンプ2004と同様に接続されている。又、冷水チラーには、冷却時に発生した熱を冷却するため、ヒートポンプ2004の温水回路から独立しているクーリングタワーが接続されているが、クーリングタワーを必要としない空冷式としても良い。なお、排熱回収型ヒートポンプ(の予備機)を冷水チラーとして用いても良い。
このような塗装乾燥装置は、第26形態と同様に動作するが、冷水温度をヒートポンプ2004の台数の増減に加えて(増減をする前に)冷水チラーにより制御することが可能である。
即ち、冷水戻り温度が特定値(17度)以上であって(ステップS1021でYES)、温水ボイラー2506が運転中でなければ(ステップS1005でNO)、冷水チラーを運転する(ステップS1031)。なお、温水ボイラー2506が運転中であれば(ステップS1005でYES)、冷水戻り温度を所定値(15度)まで下げるためにループ1を実行するが、ループ1においては、温水タンク内の温水の温度が所定値(70度)以上である場合にループ2を実行する(ステップS1032)。又、ループ3においても、温水タンク温度が所定値(67度)以下である場合にループ4を実行する(ステップS1033)。
以上の第27形態に係る塗装乾燥装置においても、第26形態に係る塗装乾燥装置と同様、温熱負荷に適切に対応しつつ運転の継続可能な状態で最大数のヒートポンプ2004を稼働させることができ、又冷水チラーを配備することによりヒートポンプ4の台数を減じる前に冷水温度を調整することができ、運転に影響のない範囲でなるべくヒートポンプ2004の他熱源に対する運転比率をよりきめ細かく向上して、温熱負荷が変動しても省エネルギー性の高い状態で塗装乾燥を実行することができる。
[第28形態]
図33は第28形態に係る塗装乾燥装置3051の模式図であって、塗装乾燥装置3051は、第25形態と同様に成るが、第27形態の冷水チラーと同様の冷水チラー3052a,3052bが複数設置されている。冷水チラー3052a等には、温熱渡しパイプ3054a等と温熱戻りパイプ3056a等を介してクーリングタワー2504c等と接続されている。温熱戻りパイプ3056a等には、ポンプ3057a等が配置されている。なお、冷水チラーは、単数でも良い。又、塗装乾燥装置3051は、第25形態と同様の温水タンク3058を有する。
更に、ヒートポンプ2004a,2004bは、冷水の温度あるいは冷熱が一定となるような冷水追従運転が可能であり、ヒートポンプ2004a,2004bは温熱負荷調整機として位置づけられているが、全台を温熱負荷調整機としなくても良いし、ヒートポンプ2004につき単数あるいは3台以上としても良い。又、排温水Xや流量調節弁2046等は省略されている。
塗装乾燥装置3051の自動制御装置は、例えば温熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004a,2004bにつき自身の冷水供給温度及び温水供給温度に基づいて制御し、温水ボイラー2506につき温水タンク3058の温度あるいは加熱側供給パイプ2034の温水供給温度に基づいて制御し、乾燥炉2への温水供給量を調整する第2温熱供給量調節弁2109ないし冷却炉4への冷水供給量を調整する冷熱供給量調節弁2048につき温風温度に基づいて制御する。これらの温度は、それぞれの温度センサにより検知され、自動制御装置により把握される。
このような塗装乾燥装置3051は、第25,27形態と同様に動作し、例えば次のように動作する。
即ち、図34に示すように、自動制御装置は、ヒートポンプ2004の温水供給温度が68度以下であれば(ステップS1051でYES)、温水供給温度を所定温度(70度)に上げるためのループ1を実行し、ヒートポンプ4の温水供給温度が特定温度(72度)以上であって温水ボイラー2506が停止中であれば(ステップS1051でNO、ステップS1060,S1061で共にYES)、温水供給温度を所定温度(70度)に下げるためのループ3を実行する。なお、ステップS1061でNOであれば、温水ボイラー506の出力を減じ(ステップS1062)、処理の最初に戻る。
自動制御装置は、ループ1において、温熱負荷調整機としてのヒートポンプ4a,4bの冷水ポンプ3002aの流量を増し(ステップS1052)、冷水供給温度が特定温度(7度)以下であれば(ステップS1053でYES)、冷水供給温度を所定温度(10度)とするために冷水チラー3052a,3052bの出力を減ずる(台数を減らすことを含む、ステップS1054)ループ2を実行して、ヒートポンプ2004の温水供給温度が所定温度(70度)から所定温度幅内に収まるか否か判断する(ステップS1055)。一方、ステップS1053でNOであれば、ループ2を実行せずにステップS1055に移行する。
ステップS1055でYESであれば、温水ボイラー2506の出力を減じ(ステップS1056)、ループ1の最初に戻る。一方、ステップS1055でNOであれば、ヒートポンプ2004aの負荷が所定値(最大負荷の95%)以下であるか確認し(ステップS1057)、YESであればループ1の最初に戻り、NOであれば温水ボイラー2506の出力を増して(ステップS1058)、処理の最初に戻る。
即ち、ループ1では、温熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004a,2004bの冷水ポンプ3002aの流量を増やすと、一時的にヒートポンプ2004a,2004bの冷水供給温度が上昇し、ヒートポンプ2004a,2004bの冷水供給温度を所定温度(10度)にするようにヒートポンプ2004a,2004bが出力を自動的に増やす(インバーター出力増)。ヒートポンプ2004a,2004bの冷水出力が増加すれば、温水出力も増加するため、温水温度を所定値に維持させる。
一方、自動制御装置は、ループ3において、ヒートポンプ2004a,2004bの冷水ポンプ3002aの流量を減じ(ステップS1063)、冷水供給温度が特定温度(13度)以上であるか否か判断する(ステップS1064)。YESであれば冷水供給温度を所定温度(10度)に下げるためのループ4を実行し、NOであればループ4を実行せずループ3の最初に戻る。ループ4においては、冷水チラー3052a,3052bの出力を増し、あるいは台数を増やす(ステップS1065)。
即ち、ループ3では、温熱負荷調整機としてのヒートポンプ2004a,2004bの冷水ポンプ3002aの流量を減らすと、一時的にヒートポンプ2004aの冷水供給温度が下がり、ヒートポンプ2004a,2004bの冷水供給温度を所定温度(10度)にするようにヒートポンプ2004a,2004bが出力を自動的に絞る(インバーター出力減)。ヒートポンプ2004a,2004bの冷水出力が減少すれば、温水出力も減少するため、冷水チラー3052a,3052bにより冷熱の不足分を補う。
以上の塗装乾燥装置3051では、冷水追従運転するヒートポンプ2004と、冷水チラー3052a,3052bを備えているため、年間を通じて冷熱負荷がある塗装乾燥において温熱負荷に適切に対応しながら冷水追従運転を行うことができ、極めて省エネルギー性の高い状態で塗装乾燥を実施することができる。
又、塗装乾燥装置3051では、冷水ポンプ3002a等によってヒートポンプ2004に対する媒体の流量を調整するため、流量の調整によって媒体温度ないし媒体熱量を制御することができる。
更に、塗装乾燥装置3051では、複数のヒートポンプ2004を温熱負荷調整機とし、その負荷に応じて温水ボイラー2506等の起動や停止を行うため、温水ボイラー2506等を効率の良好な状態で運転することができ、又このような適切な運転を冷熱負荷調整機の負荷というシンプルな指標に基づいて簡便に実行することができる。
[その他の形態]
以上の形態の一部にあっては、加熱と冷却とを行うヒートポンプの冷却側に適用する冷却側加熱媒体として排気の排熱を用いているが、排熱に代えてあるいはこれと共に、次に示すような他の工場に属する熱を用いることができる。即ち、工場で生ずる他の排気や排熱を用いたり、これらの組合せを用いたりする。加えて、自動制御装置による各種の制御や切替等を、手動により行うことも可能である。又、加熱量の調整(加熱量調節手段)につき、冷水の熱交換機への分岐量の調節によるものに代えて、冷却媒体加熱用熱交換機に当たる排気の量の調節によるものや、これらの組合せによるもの等として良い。更に、冷水の分岐量の調整(熱交換量調節手段)において、インバーターポンプを用いても良い。又、ヒートポンプや冷却機を複数台組み合わせて構成する等、各要素の数を適宜変更して良い。
又、以上の形態の一部にあっては、加熱と冷却とを行うヒートポンプの冷水側に適用する冷却側加熱媒体として排温水を用いているが、各形態における排温水の代わりに、当該ヒートポンプとは別個のヒートポンプ(冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプ)により生成した温水を用いて良い。この場合、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの稼働分だけ使用するエネルギーが増加するが、その増加分は加熱冷却用ヒートポンプの温水の熱を捨てる場合のエネルギーに比べ少なくて済み、総合しても効率の良好な塗装乾燥装置とすることが可能である。又、冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの温水及び工場の排温水と加熱冷却用ヒートポンプの冷水とを熱交換機に導入し、当該温水及び排温水Xを併せて加熱冷却用ヒートポンプの冷水に適用しても良い。更に、冷却側加熱媒体として、ボイラの蒸気等又はこれと排温水ないし冷却側加熱媒体供給用ヒートポンプの温水との組合せを用いることができる。