以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態の製造方法により製造されるワックス成形体1の斜視図である。ワックス成形体1は、開口部1aと、中空部1bと、補強部1cとを有する。補強部1cは、開口部1a又は中空部1bを跨って延びている。更にワックス成形体1は、クラウン1d、サイド1e、ソール1f及びホーゼル1gを有する。開口部1aは、フェース部に設けられている。
図2は、本発明の一実施形態に係る金型2の斜視図であり、図3はこの金型2を上方から見た平面図である。図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。図5は上型4の斜視図であり、図6は上型4の内面を示す平面図である。図7は下型6の斜視図であり、図8は下型6の内面を示す平面図である。
金型2により、ワックス成形体1が成形される。金型2により、ワックス成形体1の全体が一体成形される。
金型2は、外型3及び中子8を有する(図4参照)。外型3は、上型4、下型6、ホーゼル成形型10及び基部12を有する。基部12は、開口部1aを成形する役割を果たし、且つ、中子8を固定する役割を果たす。基部12の詳細については、後述される。更に外型3は、凹部成形部材14を有する。金型2にワックスがインジェクションされて、ワックス成形体1が成形される。図6等には、ワックス注入口16と、ワックス注入路18とが示されている。なお、図2、図3及び図4は、閉じられた状態の金型2を示している。ワックス成形体1は、ロストワックス法による鋳造に用いられる。
金型2の作製にはCADやCAMの技術が適用されている。上型4は、NC加工により作製されている。下型6は、NC加工により作製されている。中子8は、NC加工により作製されている。金型2は、NC加工により作製されている。
金型2は、中空構造のゴルフクラブヘッドを製造するための金型である。金型2は、ウッド型ゴルフクラブヘッドを成形するための金型である。
図4が示すように、閉じられた状態の金型2は、成形空間K1を有している。成形空間K1は、外型3と中子8との間に形成される。図4においてハッチングの無い部分が、成形空間K1である。図4において、成形空間K1にワックスがインジェクションされる。金型2により、フェース部が開口したワックス成形体1が得られる。ワックス成形体1の中空部1bは、中子8によって成形される。成形空間K1は、補強部1cの成形空間K2を含む。なお、後述するように、最終的に得られるゴルフクラブヘッドは、補強部1cに対応する部分を有していても良いし、有していなくても良い。
成形空間K1がワックスで置換されて、ワックス成形体1が成形される。成形空間K1は、狭い空間である。成形空間K1により成形されるワックス成形体1の厚みは、好ましくは、クラウン1dが0.4mm〜1.2mm程度であり、サイドeが0.4mm〜1.2mm程度であり、ソール1fが0.7mm〜2.2mm程度である。
本実施形態の金型2は、フェース部が開口したワックス成形体1を得るための金型である。本発明は他の開口形態を有するワックス成形体を得るための金型にも適用されうる。この他の開口形態を有するワックス成形体として、ソール部が開口したワックス成形体及びクラウン部が開口したワックス成形体が例示される。フェース部が開口したワックス成形体の場合、このワックス成形体により鋳造されたヘッド本体とフェース部材とが接合されて、ヘッドが作製される。よって、フェース部が開口したワックス成形体は、フェース部と他の部分とで材質を異ならせたヘッドを作製するのに適している。フェース部の強度を高める観点から、フェース部が開口したワックス成形体が好ましい。フェース部が開口したワックス成形体の一例が、上記ワックス成形体1である。フェース部が小さいワックス成形体の場合、フェース部開口からの中子の取り出しが難しい場合がある。この観点からは、クラウン部が開口したワックス成形体が好ましい。クラウン部の比重を小さくする観点からは、クラウン部と他の部分とで材質が異なるゴルフクラブヘッドが好ましい。この観点からは、クラウン部が開口したワックス成形体が好ましい。
外側3は、ワックス成形体1の外面を成形する。上型4は、クラウン1dの外面を成形する。上型4は、クラウン成形部20を有する(図6参照)。このクラウン成形部20は、滑らかな凹曲面である。下型6は、ワックス成形体1のサイド1eの外面及びソール1fの外面を形成する。中子8は、ワックス成形体1の内面を成形する。フェース部を除き、中子8の形状は最終的に得られるゴルフクラブヘッドにおける中空部の形状に略等しい。ホーゼル成形型10は、ワックス成形体のホーゼル1gを成形する。
図4が示すように、中子8は、複数の部材が組み合わされてなる。中子8は、第一延在部(後述)の少なくとも一部と、第二延在部(後述)の少なくとも一部と、上記第一延在部と上記第二延在部との間に配置された中間体8aと、他の分割体8bとから構成されている。中間体8aは、複数に分割されている。中間体8aは、2つに分割されている。中間体8aは、第一部材8a1と第二部材8a2とを有する。第一部材8a1は第二部材8a2のフェース側に位置している。
中子8は、ワックス成形体1の内面を成形する。ワックス成形体1の内面のうち、どの部分を成形するのかという観点に立つ場合、中子8の表面は、クラウン成形部、ソール成形部、サイド成形部及び補強部成形部に分類される。クラウン成形部は、クラウン1dの内面を成形する。ソール成形部は、ソール1fの内面を成形する。サイド成形部は、サイド1eの内面を成形する。補強部成形部は、補強部1cの内面を成形する。後述するように、この補強部成形部は、中間体8aの開口部側の端面8tである。
図4の実施形態では、中子8は、ワックス成形体1のフェース部内面を成形するフェース成形部を有していない。しかし、フェース部が開口していないワックス成形体の場合、中子は、ワックス成形体のフェースの内面を成形するフェース成形部を有しうる。
図9は、ホーゼル成形型10の一部である基部38の斜視図である。図10は、ホーゼル成形型10の一部であるピン36の斜視図である。ホーゼル成形型10は、ピン36と基部38とを有する。基部38は、下型6に取り付けられる。下型6は、基部38を取り付けるためのスライド溝40と、基部38の底部を嵌め込むための凹部42とを有する(図7参照)。基部38は、スライド溝40にスライド挿入するためのレール44を有する(図9参照)。このスライド機構により、基部38は、外型3に対して着脱可能である。
図5及び図6が示すように、上型4は、基部38の存在を許容する凹部46を有する。この凹部46により、基部38を設置するためのスペースが確保される。
図5及び図6が示すように、上型4の凹部46には、その断面形状が半円である半円凹部48が設けられている。一方、図9が示すように、基部38には、その断面形状が半円である半円凹部50が設けられている。基部38が外型3に取り付けられた状態において、半円凹部48と半円凹部50との組み合わせにより、断面が円形とされたピン挿入孔52が構成される。このピン挿入孔52に、ピン36が挿入されている。
図10が示すように、ピン36は、シャフト孔形成部54と、スライド部56と、ストッパー部58とを有する。シャフト孔形成部54、スライド部56及びストッパー部58は、いずれも円筒状である。シャフト孔形成部54、スライド部56及びストッパー部58は、いずれもその断面形状が円形である。シャフト孔形成部54の外径は、スライド部56の外径よりも小さい。スライド部56の外径は、ストッパー部58の外径よりも小さい。シャフト孔形成部54、スライド部56及びストッパー部58は、同軸である。
スライド部56は、ピン挿入孔52に挿入されている。スライド部56は、ピン挿入孔52の内部においてスライドしうる。前述したピン挿入孔52の孔径は、スライド部56の外径に略等しい。ピン挿入孔52とスライド部56との間には実質的に隙間が存在しない。
シャフト孔形成部54は、ワックス成形体1のシャフト孔を形成する。シャフト孔形成部54の外径は、シャフト孔の孔径に対応して設定される。ホーゼル成形型10の基部38は、ネックの半周面と、このネックから延びるサイド面の一部を成形する。基部38により成形されるサイド面の一部は、ネックの根元の近傍に位置する。ネックのうち、基部38により成形されない残りの半周面は、上型4によって成形される。
ピン36において、シャフト孔形成部54とスライド部56との間には段差面60が存在する(図10参照)。この段差面60が、ワックス成形体1のネック端面を成形する。また、閉じられた状態の金型2において、この段差面60は、半円凹部50の下端に存在する段差面62(図9参照)と当接する。この当接により、ワックス成形体1のネック長さが定まる。この当接により、ワックス成形体1のネック長さは高精度である。なお、本実施形態とは異なるが、ピン36の挿入長さによってネック長さが調節されうる構成も可能である。この場合、例えば、外型3に存在しネック部の外面を成形するネック外面成形孔にピンが挿入される。この場合も、例えば、図10で示されるピン36が用いられうる。この場合の金型は、上記ネック外面成形孔の孔径がピン36のスライド部56と略等しくされ、且つ、スライド部56が上記ネック外面成形孔の内部でスライド移動しうるように構成される。この場合、ネック端面を成形する段差面60の位置がスライド移動しうるので、ピン36の挿入長さによってネック長さが調節されうる。
図11は、凹部成形部材14の斜視図である。凹部成形部材14は、下型6に対してスライド可能に取り付けられている。凹部成形部材14は、凹部成形部64と、スライド部66と、基部68とを有する。凹部成形部64、スライド部66及び基部68は、いずれも円筒形である。凹部成形部64、スライド部66及び基部68は、同軸である。
図4が示すように、下型6には、スライド部66を挿通するためのスライド孔70が設けられている。スライド孔70の孔径は、スライド部66の外径に略等しい。スライド部66は、スライド孔70の内部をスライド移動しうる。スライド部66とスライド孔70との間には、実質的に隙間が存在しない。凹部成形部64により、ワックス成形体1に凹部が成形される。
このようにスライド移動しうる凹部成形部材14が設けられているのは、アンダーカット部分を成形するためである。成形されたワックス成形体1が取り出されるのに先立ち、凹部成形部材14が引き抜かれる。
図12は、装着部材72の斜視図である。装着部材72は、外型3と組み合わせて用いられる。装着部材72は、入れ子と称されることがある。装着部材72は、下型6と組み合わせて用いられる。図4が示すように、本実施形態は、2つの装着部材72を有しており、図12で示されているのはこのうちの一つである。図7が示すように、外型3は、装着部材72を装着するための収容凹部74を有している。図12が示すように、装着部材72には、例えば凸文字76が設けられている。この凸文字76が転写されることにより、ワックス成形体1には凹文字が形成される。この凸文字76で表現される内容として、例えば、商品名、各種マーク、ブランド名、番手、ロフト角及びライ角が挙げられる。収容凹部74と装着部材72との間には実質的に隙間が存在しない。収容凹部74に装着された状態において、収容凹部74の基体面78(図12参照)は、下型6における他の成形面80(図7参照)と実質的に段差なく連続する。装着部材72は入れ替え可能である。装着部材72が入れ替えらえることにより、凸文字76が変更されうる。また、基体面の形状が異なる装着部材に入れ替えることにより、ワックス成形体1の形状を変更することも可能である。
図13は、基部12及び中子8をクラウン側から見た平面図である。
前述したように、金型2は、基部12を有する。基部12は、中子8を固定する役割を果たす。更に基部12は、開口部1aを形成する役割を果たす。基部12は、スライド部83とストッパー部85とを有する。閉じた金型2において、ストッパー部85は、上型4及び下型6に当接している。ストッパー部85は、基部12の位置決めをする役割を果たす。スライド部83は、スライド孔86に挿入されている(図4参照)。スライド孔86は、上型4と下型6とにより形成されている。即ち、上型4と下型6とが組み合わさることで、スライド孔86が形成されている。
基部12は、開口成形部87を有する。スライド部83の端部が、開口成形部87である(図4参照)。開口成形部87は、開口部1aを成形する。
図14は、図13の実施形態をバック側(図13における上側)から見た図である。前述したように、中子8は、第一延在部89の少なくとも一部と、第二延在部91の少なくとも一部と、中間体8aと、他の分割体8bとから構成されている。中間体8aは、第一延在部89と第二延在部91との間に配置されている。
なお、図14では、溝g1(後述)の記載が省略されている。
図15は、基部12、第一延在部89、第二延在部91及び中間体8aを示す平面図である。換言すれば、図15は、図13から、他の分割体8bが除かれた状態の図である。図16は、基部12、第一延在部89及び第二延在部91を示す平面図である。換言すれば、図16は、図15から中間体8aが除かれた状態の図である。図17は、図15のF17−F17線に沿った断面図である。
図16が示すように、第一延在部89は、フェース−バック方向に延びている。第二延在部91は、フェース−バック方向に延びている。図16の紙面における上下方向が、フェース−バック方向である。
第一延在部89と他の分割体8bとは、凹凸嵌合により連結されている。第一延在部89と他の分割体8bとは、互いにスライド可能な状態で連結されている。第一延在部89と他の分割体8bとは、フェース−バック方向にスライド可能に連結されている。第一延在部89と他の分割体8bとは、一方向にのみスライド可能に連結されている。フェース−バック方向にスライドしない限り、第一延在部89と他の分割体8bとは分離しない。第一延在部89は、真っ直ぐに伸びる線状突出部t1を有している。この線状突出部t1は、フェース−バック方向に伸びている。他の分割体8bは、この線状突出部t1に対応した断面形状を有する溝(図示省略)を有している。この溝も、フェース−バック方向に真っ直ぐ伸びている。この溝は、スライド溝である。この溝に線状突出部t1が嵌っている。この溝に線状突出部t1がスライド挿入されている。第一延在部89と他の分割体8bとは、実質的に隙間が存在しない状態で連結されている。第一延在部89と他の分割体8bとの連結は、緊密である。
第二延在部91と他の分割体8bとは、凹凸嵌合により連結されている。第二延在部91と他の分割体8bとは、互いにスライド可能な状態で連結されている。第二延在部91と他の分割体8bとは、フェース−バック方向にスライド可能に連結されている。第二延在部91と他の分割体8bとは、一方向にのみスライド可能に連結されている。フェース−バック方向にスライドしない限り、第二延在部91と他の分割体8bとは分離しない。第二延在部91は、真っ直ぐに伸びる線状突出部t1を有している。この線状突出部t1は、フェース−バック方向に伸びている。他の分割体8bは、この線状突出部t1に対応した断面形状を有する溝(図示省略)を有している。この溝も、フェース−バック方向に真っ直ぐ伸びている。この溝は、スライド溝である。この溝に線状突出部t1が嵌っている。この溝に線状突出部t1がスライド挿入されている。第二延在部91と他の分割体8bとは、実質的に隙間が存在しない状態で連結されている。第二延在部91と他の分割体8bとの連結は、緊密である。
なお、図示しないが、分割体8b同士の間でも、凹凸嵌合が達成されている。即ち、一の分割体8bが線状突出部t1を有し、他の分割体8bがスライド溝を有している。このスライド溝に、隣接する分割体8bの線状突出部t1が嵌められている。
成形空間K1は狭いため、許容される寸法誤差は少ない。またヘッドの内面及び外面は自由曲面により構成されているため、誤差が生じやすい。これらの誤差を抑制する観点から、金型2には高い精度が要求される。略隙間無くスライド嵌合する線状突出部t1と溝とにより、中子8の精度が高められており、ひいては金型2の精度が高められている。
前述したように、中間体8aは複数に分割されている。中間体8aは、第一部材8a1と第二部材8a2とを有する。第一部材8a1は第二部材8a2のフェース側に位置している。中間体8aが分割されることにより、中子取り出し工程において、中間体8aの取り出しが容易とされている。なお中間体8aは、分割されていなくてもよい。
第一延在部89及び第二延在部91は、一体成形部材93の一部である。図18は、この一体成形部材93の斜視図である。一体成形部材93は、第一延在部89と第二延在部91と連結部95とを有する。このように、第一延在部89の開口側端部と、第二延在部91の開口側端部との間に、連結部95が設けられている。
基部12には、連結部95を嵌め込むための凹部97が設けられている(図15参照)。この凹部97に、連結部95が嵌め込まれている。連結部95は、基部12に固定されている。連結部95が固定されることにより、第一延在部89及び第二延在部91が基部12に固定されている。第一延在部89及び第二延在部91は中子8の一部であるから、中子8の全体が基部12に固定される。
第一延在部89及び第二延在部91が基部12によって支持されているから、中子8は基部12によって支持されている。この支持により、成形空間K1が確保される。また、図13等が示すように、中子8は、突起部99を有する。この突起部99は、真っ直ぐに延在している。この突起部99は、フェース−バック方向に延在している。突起部99は、外型3に支持されている。図6、図7及び図8が示すように、外型3には、突起部99が挿入される挿入孔101が設けられている。突起部99が挿入孔101に挿入されることにより、中子8が支持されている。この支持により、成形空間K1の寸法精度が向上する。中子8は、前方(フェース側)において基部12により支持され、後方(バック側)において突起部99により支持される。このように、中子8は、前方及び後方において外型3に対して支持されているので、成形空間K1が精度よく確保されうる。この突起部99は、フェース−バック方向に延びているので、一体成形部材93のフェース−バック方向へのスライド移動を阻害しない。
このように、中子8は、第一延在部89、第二延在部91、中間体8a及び他の分割体8bに分割されている。中子8が分割されている理由は、ワックス成形体1の開口部1aからの中子8の取り出しを可能とするためである。即ち中子8は、ワックス成形体1の開口部1aから取り出すことができるように分割されている。中子8は、ワックス成形体1を破壊することなく取り出されうる。中子8は、補強部1cを破壊することなく取り出されうる。
中子8を取り出す工程が、本願において、中子取り出し工程とも称される。この中子取り出し工程は、第一延在部89及び第二延在部91を取り出す第一工程と、この第一工程により得られた空間を利用して上記中間体8a及び他の分割体8bを取り出す第二工程とを含む。
第一工程では、基部12がフェース−バック方向フェース側にスライド移動される。このスライド移動に伴い、第一延在部89及び第二延在部91もスライド移動される。第一工程は、補強部1cに干渉されない。換言すれば、第一工程により、補強部1cの破壊や変形は発生しない。
第二工程では、中間体8aは、第一延在部89又は第二延在部91が除去されることにより生じた空間に先ず移動され、次に前方(フェース側)に移動される。第二工程において、中間体8aは、ワックス成形体1の開口部1aを通過する。第二工程により、中間体8aはワックス成形体1の外側に取り出される。
第二工程では、他の分割体8bは、第一延在部89又は第二延在部91が除去されることにより生じた空間に先ず移動され、次に前方(フェース側)に移動される。第二工程において、他の分割体8bは、ワックス成形体1の開口を通過する。第二工程により、他の分割体8bはワックス成形体1の外側に取り出される。
中子8の分割数は限定されない。作業性及び精度向上の観点から、分割数を過度に多くすることは好ましくない。ワックス成形体1の開口部1aからの取り出しが可能とされる範囲内で、分割数が少なくされるのが好ましい。一方分割数が少なすぎると、中間体8a又は他の分割体8bが大きくなり、これらがワックス成形体1の開口部1aを通過できない。これらの観点から、本実施形態のようにフェース部が開口し且つこの開口部近傍に補強部1cを有するワックス成形体1を成形するための金型の場合、中子8の分割数は、下限としては8以上が好ましく、10以上がより好ましく、上限としては、30以下が好ましく、27以下がより好ましく、24以下が更に好ましい。
図示は省略されているが、全ての中間体8a及び全ての分割体8bには、前方(フェース側)に突出する取っ手が設けられている。この取っ手は、細い棒状である。この取っ手は、中間体8a及び分割体8bを取り出しやすくするために設けられており、成形には関与しない。中間体8a及び分割体8bを取り出す作業は、例えば、この取っ手を指先で持ちつつ実施される。なお、図示が省略されているが、基部12には、この取っ手の存在を許容するための孔又は溝が設けられている。また、分割体8bには、その分割体8b以外の分割体8bが有する取っ手の存在を許容するための孔又は溝が適宜設けられている。
図13が示すように、中子8には、溝g1が設けられている。中子8のクラウン成形面に、溝g1が設けられている。この溝g1は、略フェース−バック方向に延在している。溝g1は、複数本設けられている。この溝g1により、ワックス成形体1のクラウン部内面には、リブ(内面リブ)が成形される。図6が示すように、上型4には、溝g2が設けられている。溝g2は、上記溝g1の位置の少なくとも一部に対応して配置されている。全ての溝g1の長さを合計した総全長がL1とされ、溝g1の位置に対応して溝g2が設けられている部分の総長さがL2とされたとき、比(L2/L1)は、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、1.0が最も好ましい。溝g2により、ワックス成形体1におけるクラウン外面には、リブ(外面リブ)が形成される。上記内面リブの成形に伴い、ワックス成形体1の外面には、ヒケが生じうる。このヒケは、上記外面リブにより抑制される。なお、上記外面リブは、最終的にはヘッド研磨によって除去される。なお、上記外面リブの断面形状は限定されず、矩形であってもよいし、凸状の曲線形状であってもよい。凸状の曲線形状としては、山型(山のような形状)、円弧状等が例示される。ヘッド研磨における外面リブの除去を良好に且つ効率的に行う観点から、外面リブの断面形状は、その両端から中央側に向かって徐々に高さが増加する形状が好ましい。即ち、溝g2の断面形状は、その両端から中央側に向かって徐々に深さが増加する形状が好ましい。また、溝g2の断面形状において、その両端の深さはゼロであるのが好ましい。換言すれば、外面リブの断面形状の両端には段差が無いのが好ましい。また、ヘッド研磨における生産性を向上させる観点から、溝g2の断面積S1は、この溝g2に対応する位置における溝g1の断面積S2よりも小さいのがよく、より好ましくは、比(S1/S2)の値は、0.8以下が好ましく、0.6以下がより好ましく、0.4以下がより好ましい。上記ヒケの抑制効果を高める観点から、比(S1/S2)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。比(S1/S2)は、溝g1(溝g2)の長手方向の各位置のそれぞれにおいて定まる。
成形空間K1は、狭い。成形空間K1には、ワックスが流れにくい位置が存在しうる。ワックスの流れをよくする目的で、外型3には、逃げ103が設けられている(図7及び図8参照)。逃げ103により、ワックスの流れが改善されうる。逃げ103により、巣(気泡)の発生が抑制される。逃げ103を設ける位置は、試験により決定されうる。即ち、試験的にワックス注入を行い、この試験の結果に基づきワックスで満たされにくい位置が決定され、この満たされにくい位置に逃げ103が設けられる金型設計方法が好ましい。なお、ワックス流れを良くする観点から、逃げ103は、成形空間K1の厚みが1.0mm以下である位置に設けるようにするのも好ましい。逃げ103により成形された部分は、ワックス成形体1の段階で除去されてもよいし、金属成形体の段階で除去されてもよい。除去の手間を少なくする観点から、逃げ103により成形された部分は、ワックス成形体1の段階で除去されるのが好ましい。
ワックス成形体1を成形する工程の一例は、以下の工程を含む。
(1a)金型2を閉じる。
(2a)閉じられた金型2のワックス注入口16からワックスを注入する。
(3a)成形空間K1に充填されたワックスの温度を固化温度以下にまで低下させる。
(4a)金型2を開けて、固化したワックス(ワックス成形体1)を取り出す。
金型を開けてワックス成形体を取り出す工程(4a)の一例は、以下の工程を含む。
(1b)第一延在部89及び第二延在部91をフェース−バック方向フェース側に抜き出す。
(2b)凹部成形部材14及びピン36を抜く。
(3b)第一延在部89及び第二延在部91が抜き出されることにより生じた空間を利用して、中間体8aを取り出す。
(4b)第一延在部89及び第二延在部91が抜き出されることにより生じた空間を利用して、他の分割体8bを取り出す。
(5b)上型4が取り外される。
(6b)下型6が取り外される。
上記工程(1b)、工程(3b)及び工程(4b)は、中子取り出し工程の一例である。上記工程(1b)は、中子取り出し工程における上記第一工程の一例である。上記工程(3b)及び(4b)は、中子取り出し工程における上記第二工程の一例である。
上記工程(1b)において、第一延在部89及び第二延在部91は、基部12とともに引き抜かれる。上記工程(1b)は、補強部1cを破壊しないようにしてなされる。補強部1cの破壊を防止する観点から、中間体8aを固定したまま、上記第一工程(工程(1b))がなされる。この観点から、中間体8aにバック側への外力を付与しつつ、上記工程(1b)がなされるのが好ましい。換言すれば、第一延在部89及び第二延在部91の引き抜き方向とは逆方向の力を中間体8aに付与しつつ、上記第一工程(工程(1b))がなされるのが好ましい。中間体8aへの外力の付与は、例えば、中間体8aが有する上記取っ手をバック側に押すことによりなされうる。
中間体8aは、開口部側の端面8tを有する(図15の拡大部及び図4を参照)。本実施形態では、この端面8tは、第一部材8a1の端面である。金型2は、この端面8tに対向する対向面105を有する。この対向面105は、端面8tに当接しうる当接面105aと、端面8tに当接しえない非当接面105bとを有する(図16参照)。当接面105aと非当接面105bとの間には段差があり、この段差により、非当接面105bを底面とする溝状凹部が形成されている(図18参照)。
本実施形態では、対向面105は、連結部95の表面である。本発明では、対向面105がどの部材に属するかは限定されない。例えば対向面105は、基部12の表面であってもよい。
金型2が閉じた状態では、当接面105aと端面8tとが互いに当接する(図15の拡大部参照。)。このとき、非当接面105bと端面8tとの間には、隙間Skが存在している。この隙間Skが、補強部1cの成形空間K2を構成している(図15の拡大部参照)。
閉じられた状態の金型において、端面8tの全てが、補強部1cの成形面となっていてもよい。閉じられた状態の金型において、対向面105が他の面に当接していなくてもよい。本実施形態の金型2では、中間体8aの開口部側の端面8tの一部と対向面105の一部とが当接している。この当接により、中間体8aの位置決めの精度が高まり、補強部1cの成形精度が向上する。このように、本実施形態では、閉じられた状態の金型において、端面8tの一部が補強部1cの成形面であり、端面8tの他の一部が対向面105に当接している。
本実施形態では、開口部側の端面8tは、成形空間K2を画成する部分及び当接面105aに接触する部分のみから構成されている。本実施形態では、対向面105と端面8tとの当接部分を除き、開口部側の端面8tと対向面105との間に隙間Skが存在している。端面8tにおいて、成形空間K2を画成する部分以外は、全て対向面105に当接している。よって、対向面105と端面8tとの接触面積が最大限となり、中間体8aの位置決めの精度が更に高まる。よって、補強部1cの成形精度が向上する。
本実施形態では、補強部1cの成形空間K2を形成するための溝状凹部が連結部95に設けられている。この溝状凹部は、例えば端面8tに設けられても良い。
本発明では、一体成形部材93が用いられなくてもよい。例えば、第一延在部89に相当する第一延在体と、第二延在部91に相当する第二延在体とが、それぞれ別々に成形されてもよい。この場合、第一延在体及び第二延在体のそれぞれが、基部12に固定される。この固定において、第一延在体と第二延在体との相対的な位置関係に誤差が生じうる。これに対して、一体成形部材93では、第一延在部89と第二延在部91とはいずれも一体成形部材93の一部である。一体成形部材93が用いられることにより、基部12への固定の際における上記誤差は生じない。よって、金型の精度が向上する。また、一体成形部材93を用いることにより、部品点数が減少し、金型作製の作業時間が低減しうる。
なお、一体成形部材93の製造方法は限定されない。成形精度の観点から、好ましい一体成形部材93の製造方法は、一体成形部材93及び中間体8aを含む部材Xを一体成形する工程1と、この部材Xから、中間体8aに相当する部分Yを切断する工程2とを含む製造方法である。工程1において、部材Xは、好ましくは、NC加工により作製される。工程2における切断方法として、ワイヤーカットが好適に用いられる。
図17が示すように、中間体8aの角部8kに段差d1が設けられている。第一延在部89には、上記段差d1に対応する段差d2が設けられている。更に、第二延在部91には、上記段差d1に対応する段差d2が設けられている。この段差d1と段差d2とが当接することにより、中間体8aの位置決めが達成されている。
第一延在部89と第二延在部91との間隔は狭いので、第一延在部89と第二延在部91との対向面に溝やレールを加工するのは難しい。その一方で、中間体8aは、第一延在部89と第二延在部91との間で精度よく位置決めされる必要がある。段差d2の形成は、レールや溝の形成と比べて容易である。加工の容易性を確保しつつ中間体8aを精度よく位置決めする観点から、上記段差d1及び段差d2を用いた中間体8aの固定は、好ましい。
外型3は、内側(中子8側)に突出した部分を有する。上記実施形態において、この内側突出部は、凸文字76である。この内側突出部により、第一延在部89及び第二延在部91を引き抜く際に、ワックス成形体1が外型3に固定されやすくなる。即ちこの内側突出部は抜け止めとして機能しうる。このように、この内側突出部により、第一延在部89及び第二延在部91の引き抜きが容易とされている。
ワックス成形体1は、ワックスにより形成されているので、壊れやすい。上記実施形態のワックス成形体1は薄いので、なおさら壊れやすい。他の分割体8bはワックス成形体1と密着しているので、この他の分割体8bの取り出しの際に、ワックス成形体1の破損が生じるおそれがある。ワックス成形体1の破損を抑制する観点から、上型4又は下型6の少なくともいずれかが取り外されていない状態で、上記第二工程がなされるのが好ましい。この場合、ワックス成形体1は、上型4及び/又は下型6により支持されているので、壊れにくい。ワックス成形体1の破損を更に抑制する観点からは、上型4及び下型6のいずれもが取り外されていない状態で、上記第二工程がなされるのが好ましい。一方、上型4及び下型6のいずれもが取り外されていない状態では、スライド孔86から金型内部をのぞき込みつつ中間体8a及び他の分割体8bを取り出す必要が生じるため、作業性が低下しやすい。またこの場合、スライド孔86を通過させつつ中間体8aや他の分割体8bを取り出す必要があるため、やはり作業性が低下しやすい。上記第二工程の作業性を向上させつつ、ワックス成形体1の破損を抑制する観点からは、上型4及び下型6の一方は取り外され他方は取り外されていない状態で、上記第二工程がなされるのが好ましい。
中子8を取り出す際におけるワックス成形体1の破損を抑制する観点から、中子取り出し工程におけるワックス成形体の温度T1は、40℃以上とされるのが好ましく、50℃以上とされるのがより好ましい。ワックス成形体1の温度T1の温度が高くされることにより、ワックス成形体1が弾性変形しやすくなり、ワックス成形体1の破損が抑制される。ワックス成形体1の温度T1が高すぎると、ワックス成形体1の固化が不十分となり、ワックス成形体1が変形しやすい。この観点から、上記ワックス成形体1の温度T1は、70℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
前述したように、ワックス成形体1は、補強部1cを有している。ワックス成形体1は薄いため、変形しやすい。またワックス成形体1は開口部1aを有しているため、変形しやすい。補強部1cは、この変形を効果的に抑制しうる。また補強部1cは、ワックス成形体1の他の部分とともに一体成形されている。よって、補強部1cの位置精度及び寸法精度は高い。また補強部1cは、ワックス成形体1の成形と同時に存在するため、補強部1cを後付けする場合と比較して、ワックス成形体1の変形を抑制する効果が高い。
得られたワックス成形体1を用いて、周知のロストワックス法により、金属成形体が鋳造される。金属成形体は、補強部1cに相当する部分を有していても良いし、有していなくても良い。即ち、ワックス成形工程と金属成形体の鋳造工程との間に、ワックス成形体1の補強部1cは、除去されてもよいし、除去されなくてもよい。金属成形体(ヘッド)において、補強部1cの切除痕は、残っていても良いし、残っていなくても良い。即ち、本発明のヘッドの製造方法として、以下の(a)、(b)及び(c)が採用されうる。
(a)外型及びこの外型の内部に配置された中子を有する金型を用いて上記補強部を有するワックス成形体を得るワックス成形工程と、
上記補強部を除去することなく、このワックス成形体を用いて、ロストワックス法により金属成形体を鋳造する工程とを含む製造方法。
(b)外型及びこの外型の内部に配置された中子を有する金型を用いて上記補強部を有するワックス成形体を得るワックス成形工程と、
上記補強部を、切除痕を残して切除する工程と、
この補強部が切除されたワックス成形体を用いて、ロストワックス法により金属成形体を鋳造する工程とを含む製造方法。
(c)外型及びこの外型の内部に配置された中子を有する金型を用いて上記補強部を有するワックス成形体を得るワックス成形工程と、
上記補強部を、切除痕を残さずに切除する工程と、
この補強部が切除されたワックス成形体を用いて、ロストワックス法により金属成形体を鋳造する工程とを含む製造方法。
ワックス成形体1から成形される金属成形体は、フェース部が開口している。この開口を塞ぐフェース部が、別途作製される。このフェース部は、ロストワックス法により製造されてもよいし、鍛造により製造されてもよいし、プレスフォーミングにより製造されてもよい。このフェース部と、上記金属成形体とが接合される。この接合は、例えば溶接によりなされる。この接合により、ゴルフクラブヘッドが得られる。好ましくは、このゴルフクラブヘッドは、仕上げ工程に供される。この仕上げ工程では、表面研磨や塗装等がなされる。
補強部1cの長さは限定されない。大きな開口及び大きな中空部は、変形しやすい。大きな開口及び大きな中空部が存在する場合、補強部1cによる変形抑制効果が高い。この観点から、補強部1cの長さは、50mm以上が好ましく、55mm以上がより好ましい。ヘッドの大きさを考慮すると、補強部1cの長さは、通常、60mm以下である。
補強部1cの幅W1は限定されない。ワックス成形体の変形を抑制する観点から、幅W1は、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、8mm以上がより好ましい。補強部1cを除去してヘッドを作製する場合、幅W1が大きすぎると、ワックス材料の無駄が大きい。また、幅W1が大きすぎると、補強部1cの両側の開口面積が狭くなる。補強部1cの両側の開口面積が狭くなると、中子の取り出しが難しくなったり、中子の分割構成が複雑となったり、中子の分割個数が増加したりする。中子の分割構成の複雑さや分割個数の増加は、金型コストの増大を招く。また、補強部1cを除去することなくヘッドを作製する場合、幅W1が大きすぎると、補強部1c相当部分の重量が大きくなり、ヘッドの設計自由度が低下する。また、補強部1c相当部分を有する金属成形体を製造した後にこの補強部1c相当部分を切除する場合があるが、この場合、幅W1が大きすぎると、金属材料の無駄が大きい。これらの観点から、幅W1は、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。
補強部1cの厚みW2は限定されない。ワックス成形体の変形を抑制する観点から、厚みW2は、0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましい。補強部1cを除去してヘッドを作製する場合、厚みW2が大きすぎると、ワックス材料の無駄が大きい。また、補強部1cを除去することなくヘッドを作製する場合、厚みW2が大きすぎると、補強部1c相当部分の重量が大きくなり、ヘッドの設計自由度が低下する。これらの観点から、厚みW2は、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.0mm以下がより好ましい。
ワックス成形体1の開口部1aは特に変形しやすい。この観点から、補強部1cは、開口部1aを跨って延びているのがよい。同じ観点から、補強部1cが中空部1bを跨って延びている場合、補強部1cは開口部1aの近くに位置するのが好ましい。補強部1cと開口部1aとの最短距離は、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、2.0mm以下がより好ましい。
中子8の材質は限定されない。加工性、耐久性及び軽量性の観点から、中子8の材質は、アルミニウム合金が好ましく、超々ジュラルミンがより好ましく、中でも7075アルミニウム合金が特に好ましい。
第一延在部89の材質は限定されない。加工性、耐久性及び軽量性の観点から、第一延在部89の材質は、アルミニウム合金が好ましく、超々ジュラルミンがより好ましく、中でも7075アルミニウム合金が特に好ましい。
第二延在部91の材質は限定されない。加工性、耐久性及び軽量性の観点から、第二延在部91の材質は、アルミニウム合金が好ましく、超々ジュラルミンがより好ましく、中でも7075アルミニウム合金が特に好ましい。