JP2010120574A - 動力装置 - Google Patents

動力装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2010120574A
JP2010120574A JP2008297791A JP2008297791A JP2010120574A JP 2010120574 A JP2010120574 A JP 2010120574A JP 2008297791 A JP2008297791 A JP 2008297791A JP 2008297791 A JP2008297791 A JP 2008297791A JP 2010120574 A JP2010120574 A JP 2010120574A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rotor
power
rotating machine
rotating
torque
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2008297791A
Other languages
English (en)
Inventor
Noriyuki Abe
典行 阿部
Yoshio Okada
義雄 岡田
Shigemitsu Akutsu
重光 圷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2008297791A priority Critical patent/JP2010120574A/ja
Publication of JP2010120574A publication Critical patent/JP2010120574A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/60Other road transportation technologies with climate change mitigation effect
    • Y02T10/62Hybrid vehicles
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02TCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES RELATED TO TRANSPORTATION
    • Y02T10/00Road transport of goods or passengers
    • Y02T10/60Other road transportation technologies with climate change mitigation effect
    • Y02T10/64Electric machine technologies in electromobility

Landscapes

  • Hybrid Electric Vehicles (AREA)
  • Electric Propulsion And Braking For Vehicles (AREA)

Abstract

【課題】左右の被駆動部の回転を容易に精度良く制御できることで、ドライバビリティを向上させることができる動力装置を提供する。
【解決手段】動力装置1では、第1回転機11は、第1回転磁界、第2および第1のロータ15,14が回転数の共線関係を保ちながら回転可能に構成され、第2回転機21は、第2回転磁界、第4および第3のロータ25,24が回転数の共線関係を保ちながら回転可能に構成されている。第1差動装置PS1の第1〜第3の要素R1,C1,S1は、回転数の共線関係を保ちながら回転する。第2ロータ15および第1要素R1は左被駆動部WFLに、第2要素C1、第1および第3のロータ14,24は、原動機3の出力部3aに、第4ロータ25および第3要素S1は右被駆動部WFRに、第5ロータ33は原動機3の出力部3aに、それぞれ連結され、第1および第3の回転機11,31は互いに接続され、第2および第3の回転機21,31は互いに接続されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、直進・旋回可能な輸送機関を推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置に関する。
従来、この種の動力装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この動力装置は、車両の左右の駆動輪を駆動するためのものであり、いずれも一般的な1ロータタイプの第1および第2の回転機と、いずれも一般的なシングルピニオンタイプの第1および第2の遊星歯車装置と、発電機を備えている。第1遊星歯車装置の第1サンギヤおよび第2遊星歯車装置の第2サンギヤは、第1回転機の出力軸および第2回転機の出力軸にそれぞれ連結されており、第1遊星歯車装置の第1キャリアおよび第2遊星歯車装置の第2キャリアは、左駆動輪および右駆動輪にそれぞれ連結されている。また、第1遊星歯車装置の第1リングギヤおよび第2遊星歯車装置の第2リングギヤは、互いに直結されるとともに、発電機に連結されている。
以上の構成の従来の動力装置では、次のようにして左右の駆動輪が駆動される。すなわち、第1および第2の回転機に電力を供給することによって、第1および第2の回転機の出力軸を正転させるとともに、第3回転機において発電を行う。これにより、第1および第2の回転機のトルクはそれぞれ、第1および第2のサンギヤに伝達されるとともに、第3回転機での発電に伴って第1および第2のリングギヤに作用する制動トルクを反力として、第1および第2のキャリアに伝達され、さらに、左右の駆動輪に伝達される。その結果、左右の駆動輪が正転し、車両が走行する。
また、車両の右旋回時には、第1回転機を正転させることによって、第1サンギヤおよび第1キャリアに、正転させるトルクが伝達されるとともに、第1リングギヤに、逆転させるトルクが伝達される。さらに、第2回転機を逆転させることによって、第2サンギヤおよび第2キャリアに、逆転させるトルクが伝達されるとともに、第2リングギヤに、正転させるトルクが伝達される。この場合、第1および第2のリングギヤが互いに連結されているので、上述した第1リングギヤを逆転させるトルクと第2リングギヤを正転させるトルクが互いに相殺される。また、第1キャリアを介して左駆動輪に、正転させるトルクが伝達され、第2キャリアを介して右駆動輪に、逆転させるトルクが伝達される。以上の結果、車両の右旋回時、左駆動輪が増速されるとともに、右駆動輪が減速され、それにより、車両の右旋回がアシストされる。車両の左旋回時にも、上記とは逆の動作によって、車両の左旋回がアシストされる。
しかし、上述した従来の動力装置は、第1および第2のキャリアが互いに無関係に回転するように構成されているので、左右の駆動輪の回転(トルク・回転数)を精度良く制御することが非常に困難であり、それにより、良好なドライバビリティを確保することができないおそれがある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、左右の被駆動部の回転を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる動力装置を提供することを目的とする。
特開平11−240348号公報
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、直進・旋回可能な輸送機関(実施形態における(以下、本項において同じ)車両V)を推進するための左右の被駆動部(左右の前輪WFL,WFR)を駆動する動力装置1、1A、1D、1Eであって、出力部(クランク軸3a)を有し、出力部から動力を出力する原動機(エンジン3)と、第1回転磁界を発生させるための不動の第1ステータ13、72と、第1磁石(永久磁石14a、永久磁石71a)で構成され、第1ステータ13、72に対向するように設けられた第1ロータ14、71と、第1軟磁性体(コア15a、第1および第2のコア73a,73b)で構成され、第1ステータ13、72と第1ロータ14、71の間に設けられた第2ロータ15、73とを有し、第1ステータ13、72と第1ロータ14、71と第2ロータ15、73の間で、第1回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、エネルギの入出力に伴い、第1回転磁界、第2および第1のロータ15,14、73,71が、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1回転機11、70と、第2回転磁界を発生させるための不動の第2ステータ23、82と、第2磁石(永久磁石24a、永久磁石81a)で構成され、第2ステータ23、82に対向するように設けられた第3ロータ24、81と、第2軟磁性体(コア25a、第1および第2のコア83a,83b)で構成され、第2ステータ23、82と第3ロータ24、81の間に設けられた第4ロータ25、83とを有し、第2ステータ23、82と第3ロータ24、81と第4ロータ25、83の間で、第2回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、エネルギの入出力に伴い、第2回転磁界、第4および第3のロータ25,24、83,81が、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第2回転機21、80と、第5ロータ(ロータ33)を有し、第5ロータに入力された動力を電力に変換可能な第3回転機31と、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1要素(第1リングギヤR1、第1サンギヤS1)、第2要素(第1キャリアC1)および第3要素(第1サンギヤS1、第1リングギヤR1)を有する第1差動装置(第1遊星歯車装置PS1)と、を備え、第1回転機11、70の第2ロータ15、73および第1要素は、左右の被駆動部の一方に機械的に連結され、第1回転機11、70の第1ロータ14、71、第2回転機21、80の第3ロータ24、81、および第2要素は、原動機の出力部に機械的に連結され、第2回転機21、80の第4ロータ25、83および第3要素は、左右の被駆動部の他方に機械的に連結され、第3回転機31の第5ロータは、原動機の出力部に機械的に連結され、第1回転機11、70と第3回転機31、および、第2回転機21、80と第3回転機31はそれぞれ、互いに電気的に接続されていることを特徴とする。
この動力装置によれば、第1回転機は、その第1ステータ、第1および第2のロータの間で、第1ステータにおける第1回転磁界の発生に伴ってエネルギが入出力されるとともに、それに伴い、第1回転磁界、第2および第1のロータが、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように、構成されている。このような第1回転磁界、第1および第2のロータの三者間の回転数の関係は、遊星歯車装置のサンギヤおよびリングギヤの一方、他方、およびキャリア(以下、これらを「3要素」という)の回転数の関係に相当する。このため、第1ステータ、第1および第2のロータの間におけるエネルギの入出力の関係は、遊星歯車装置の上記3要素の間におけるエネルギの入出力の関係と同じになっている。
また、第2回転機は、第1回転機と同様に構成されており、第2回転機の第2ステータ、第3および第4のロータの間におけるエネルギの入出力の関係は、遊星歯車装置の上記3要素の間におけるエネルギの入出力の関係と同じになっている。さらに、第3回転機は、第5ロータを有しており、第5ロータに入力された動力を電力に変換可能に構成されている。また、第1差動装置の第1〜第3の要素が、互いの間で動力を伝達可能で、この動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成されている。
さらに、第1回転機の第2ロータおよび第1要素は、左右の被駆動部の一方に機械的に連結されており、第1回転機の第1ロータ、第2回転機の第3ロータおよび第2要素は原動機の出力部に、第2回転機の第4ロータおよび第3要素は左右の被駆動部の他方に、第3回転機の第5ロータは原動機の出力部に、それぞれ機械的に連結されている。また、第1回転機と第3回転機は、互いに電気的に接続されるとともに、第2回転機と第3回転機は、互いに電気的に接続されている。
以上の構成の動力装置により、左右の被駆動部は、例えば次のようにして駆動される。すなわち、原動機から第3回転機の第5ロータに伝達される動力の一部を用いて、第3回転機で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機に供給する。これにより、第1および第2の回転機に供給された電力は、動力に変換された後、原動機の動力の残りとともに、第1差動装置を介して左右の被駆動部に伝達され、ひいては、左右の被駆動部が駆動される。この場合において、第2ロータおよび第1要素が左被駆動部に連結されるとともに、第4ロータおよび第3要素が右被駆動部に連結されているときには、各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図97のように表される。
図97に示すように、上述した各種の回転要素の間の連結関係から、第2ロータおよび第1要素の回転数は、左被駆動部の回転数と相関関係にあり、第4ロータおよび第3要素の回転数は、右被駆動部の回転数と相関関係にある。また、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素の回転数は、互いに相関関係にある。さらに、図97において、Te1は、第1回転機に供給された電力および第1回転磁界の回転数と等価のトルク(以下「第1駆動用等価トルク」という)であり、Te2は、第2回転機に供給された電力および第2回転磁界の回転数と等価のトルク(以下「第2駆動用等価トルク」という)であり、TRMは、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素に伝達されるトルクである。さらに、TLTおよびTRTはそれぞれ、左右の被駆動部に伝達されるトルク(以下、それぞれ「左被駆動部伝達トルク」「右被駆動部伝達トルク」という)である。なお、同図および後述する他の速度共線図では、周知のように、値0を示す横線に交わる縦線は、各パラメータの回転数を示すためのものであり、この横線から縦線上の白丸までの距離が、各パラメータの回転数に相当する。
また、図97において、第1回転磁界の回転数を示すための縦線と、第2ロータおよび第1要素の回転数を示すための縦線との間の距離をAとし、第2ロータおよび第1要素の回転数を示すための縦線と、第1ロータ、第2要素および第3ロータの回転数を示すための縦線との間の距離をBとする。さらに、第1ロータ、第2要素および第3ロータの回転数を示すための縦線と、第3要素および第4ロータの回転数を示すための縦線との間の距離をCとし、第3要素および第4ロータの回転数を示すための縦線と、第2回転磁界の回転数を示すための縦線との間の距離をDとする。この場合、左右の被駆動部伝達トルクTLT,TRTは、次式(1)および(2)でそれぞれ表される。
TLT=−{(C+B+A)Te1+C・TRM−D・Te2}/(C+B)
……(1)
TRT=−{(B+C+D)Te2+B・TRM−A・Te1}/(B+C)
……(2)
これらの式(1)および(2)から明らかなように、第1差動装置、第1および第2の回転機で構成される、図97に示すような5つの回転要素の回転数に関する共線関係を満たす限りにおいて、第1および第2の駆動用等価トルクTe1,Te2を制御することによって、左右の被駆動部伝達トルクTLT,TRTの大小関係を任意に制御することができる。また、図97から明らかなように、上記の5つの回転要素の回転数に関する共線関係を満たす限りにおいて、第1および第2の回転磁界の回転数を制御することによって、左右の被駆動部の回転数の大小関係を任意に制御することができる。
この場合、前述したように、第1および第2の回転機に、原動機の動力の一部を用いて第3回転機で発電した電力が供給されることから、上述したように左右の被駆動部伝達トルクTLT,TRTや左右の被駆動部の回転数の大小関係を任意に制御できることは、原動機の動力を左右の被駆動部に任意に分配できることを意味する。したがって、本発明による動力装置によれば、輸送機関の左右の旋回をアシストすることができる。また、以上のような左右の被駆動部への原動機の動力の分配中、左右の被駆動部に連結された第2ロータや、第1要素、第4ロータ、第3要素が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の被駆動部の回転を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。
なお、これまでに述べた動作例は、第2ロータおよび第1要素が左被駆動部に連結され、第4ロータおよび第3要素が右被駆動部に連結されている場合の例であるが、これとは逆に、第4ロータおよび第3要素が左被駆動部に連結され、第2ロータおよび第1要素が右被駆動部に連結されている場合にも、同様の動作が行われることはもちろんである。また、本発明による動力装置は、これまでに述べた動作に限らず、他の様々な動作によって、左右の被駆動部を駆動することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の動力装置1、1Aにおいて、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第4要素(第2リングギヤR2、第2サンギヤS2)、第5要素(第2キャリアC2)および第6要素(第2サンギヤS2、第2リングギヤR2)を有する第2差動装置(第2遊星歯車装置PS2)をさらに備え、第1回転機11、70の第1ロータ14、71、第2回転機21、80の第3ロータ24、81および第2要素は、第4および第5の要素を介して、原動機の出力部に機械的に連結されており、第3回転機31の第5ロータは、第6および第5の要素を介して、原動機の出力部に機械的に連結されていることを特徴とする。
この構成によれば、第2差動装置の第4〜第6の要素が、互いの間で動力を伝達可能で、この動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成されている。また、第1回転機の第1ロータ、第2回転機の第3ロータおよび第2要素が、第4および第5の要素を介して、第3回転機の第5ロータが、第6および第5の要素を介して、原動機の出力部にそれぞれ機械的に連結されている。
以上の構成の動力装置により、左右の被駆動部は、例えば次のようにして駆動される。すなわち、原動機の動力の一部を、第3回転機において電力に変換するとともに、この電力を、第1および第2の回転機に供給する。この場合において、第2ロータおよび第1要素が左被駆動部に連結されるとともに、第4ロータおよび第3要素が右被駆動部に連結されているときには、各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図98のように表される。
図98に示すように、上述した各種の回転要素の間の連結関係から、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素の回転数は、第4要素の回転数と相関関係にあり、第5要素の回転数は、原動機の出力部の回転数(以下「原動機の回転数」という)と、第6要素の回転数は、第3回転機の第5ロータの回転数(以下「第3回転機の回転数」という)と、それぞれ相関関係にある。また、図98において、TPMは、原動機の出力トルク(以下「原動機トルク」という)であり、TG3は、第3回転機での発電に伴って、第3回転機から第6要素に作用する制動トルク(以下「第3回転機発電トルク」という)であり、T4Tは、第4要素に伝達されるトルクである。その他のパラメータについては、図97と同様である。
図98から明らかなように、原動機トルクTPMの一部が、第3回転機に伝達され、残りは、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第4要素に伝達され、さらに、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素に伝達される。以上のように、原動機の動力の一部が第3回転機に伝達され、残りは、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素に伝達される。また、第3回転機から第1および第2の回転機に供給された電力は、動力に変換され、上記のように第1ロータ、第3ロータおよび第2要素に伝達された原動機の動力の残りとともに、左右の被駆動部に伝達され、ひいては、左右の被駆動部が駆動される。この図98に示す各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係と、前述した図97との比較から明らかなように、本発明による動力装置においても、請求項1の場合と同様、輸送機関の左右の旋回をアシストすることができ、それに加え、左右の被駆動部の回転を容易に精度良く制御できることにより、ドライバビリティを向上させることができる。
また、上述したように左右の被駆動部を駆動する場合、図98に一点鎖線で示す速度共線図から明らかなように、原動機の回転数に対して、第3回転機の回転数を低下させ、第1および第2の回転磁界の回転数を上昇させるとともに、第1および第2の駆動用等価トルクTe1,Te2を減少させることによって、原動機の動力を無段階に増速して、左右の被駆動部に伝達することができる。逆に、図98に破線で示す速度共線図から明らかなように、原動機の回転数に対して、第3回転機の回転数を上昇させ、第1および第2の回転磁界の回転数を低下させるとともに、第1および第2の駆動用等価トルクTe1,Te2を増大させることによって、原動機の動力を無段階に減速して、左右の被駆動部に伝達することができる。このため、例えば、原動機が熱機関である場合に、原動機の回転数を、より良好な燃費が得られるように制御できるので、動力装置の効率を高めることができる。
なお、これまでに述べた動作例は、第2ロータおよび第1要素が左被駆動部に連結され、第4ロータおよび第3要素が右被駆動部に連結されている場合の例であるが、これとは逆に、第4ロータおよび第3要素が左被駆動部に連結され、第2ロータおよび第1要素が右被駆動部に連結されている場合にも、同様の動作が行われることはもちろんである。また、本発明による動力装置は、これまでに述べた動作に限らず、他の様々な動作によって、左右の被駆動部を駆動することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の動力装置1D、1Eにおいて、原動機からの動力を変速し、第1回転機11、70の第1ロータ14、71、第2回転機21、80の第3ロータ24、81、および第2要素に伝達するための変速装置111をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、原動機からの動力が変速装置によって変速された状態で、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素に伝達され、ひいては、左右の被駆動部に伝達される。このため、例えば、原動機が熱機関である場合に、変速装置の変速比を制御することによって、原動機の回転数を、より良好な燃費が得られるように制御できるので、動力装置の効率を高めることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の動力装置1、1A、1D、1Eにおいて、充電および放電可能に構成され、第1〜第3の回転機11、70、21、80、31に電気的に接続された蓄電装置(バッテリ44)をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、充電および放電可能な蓄電装置が、第1〜第3の回転機に電気的に接続されている。このため、例えば、原動機が熱機関である場合に、原動機の最良な燃費(以下「最良燃費」という)が得られる動力に対して、左右の被駆動部を駆動するのに必要な動力が小さいときに、原動機の動力を最良燃費が得られるように制御するとともに、原動機の余剰の動力を電力として蓄電装置に充電することが可能になる。逆に、原動機の最良燃費が得られる動力に対して、左右の被駆動部の駆動に必要な動力が大きいときに、原動機の動力を最良燃費が得られるように制御するとともに、動力の不足を、上記の蓄電装置に充電した電力を第1および第2の回転機に供給することにより補うことが可能になる。以上により、原動機の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置の効率を高めることができる。
前記目的を達成するため、請求項5に係る発明は、直進・旋回可能な輸送機関(実施形態における(以下、本項において同じ)車両V)を推進するための左右の被駆動部(左右の前輪WFL,WFR)を駆動する動力装置1B、1Cであって、出力部(クランク軸3a)を有し、出力部から動力を出力する原動機(エンジン3)と、第1回転磁界を発生させるための不動の第1ステータ13、72と、第1磁石(永久磁石14a、永久磁石71a)で構成され、第1ステータ13、72に対向するように設けられた第1ロータ14、71と、第1軟磁性体(コア15a、第1および第2のコア73a,73b)で構成され、第1ステータ13、72と第1ロータ14、71の間に設けられた第2ロータ15、73とを有し、第1ステータ13、72と第1ロータ14、71と第2ロータ15、73の間で、第1回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、エネルギの入出力に伴い、第1回転磁界、第2および第1のロータ15,14、73,71が、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1回転機11、70と、第2回転磁界を発生させるための不動の第2ステータ23、82と、第2磁石(永久磁石24a、永久磁石81a)で構成され、第2ステータ23、82に対向するように設けられた第3ロータ24、81と、第2軟磁性体(コア25a、第1および第2のコア83a,83b)で構成され、第2ステータ23、82と第3ロータ24、81の間に設けられた第4ロータ25、83とを有し、第2ステータ23、82と第3ロータ24、81と第4ロータ25、83の間で、第2回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、エネルギの入出力に伴い、第2回転磁界、第4および第3のロータ25,24、83,81が、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第2回転機21、80と、第3回転磁界を発生させるための不動の第3ステータ93、102と、第3磁石(永久磁石94a、永久磁石101a)で構成され、第3ステータ93、102に対向するように設けられた第5ロータ94、101と、第3軟磁性体(コア95a、第1および第2のコア103a,103b)で構成され、第3ステータ93、102と第5ロータ94、101の間に設けられた第6ロータ95、103とを有し、第3ステータ93、102と第5ロータ94、101と第6ロータ95、103の間で、第3回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、エネルギの入出力に伴い、第3回転磁界、第6および第5のロータ95,94、103,101が、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第3回転機91、100と、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1要素(第1リングギヤR1、第1サンギヤS1)、第2要素(第1キャリアC1)および第3要素(第1サンギヤS1、第1リングギヤR1)を有する差動装置(第1遊星歯車装置PS1)と、を備え、第1回転機11、70の第2ロータ15、73および第1要素は、左右の被駆動部の一方に機械的に連結され、第1回転機11、70の第1ロータ14、71、第2回転機21、80の第3ロータ24、81、および第2要素は、第3回転機91、100の第5ロータ94、101に機械的に連結され、第2回転機21、80の第4ロータ25、83および第3要素は、左右の被駆動部の他方に機械的に連結され、第3回転機91、100の第6ロータ95、103は、原動機の出力部に機械的に連結され、第1回転機11、70と第3回転機91、100、および、第2回転機21、80と第3回転機91、100はそれぞれ、互いに電気的に接続されていることを特徴とする。
この動力装置によれば、第1回転機は、その第1ステータ、第1および第2のロータの間で、第1ステータにおける第1回転磁界の発生に伴ってエネルギが入出力されるとともに、それに伴い、第1回転磁界、第2および第1のロータが、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように、構成されている。このような第1回転磁界、第1および第2のロータの三者間の回転数の関係は、前述した遊星歯車装置の3要素の回転数の関係に相当する。このため、第1ステータ、第1および第2のロータの間におけるエネルギの入出力の関係は、遊星歯車装置の3要素の間におけるエネルギの入出力の関係と同じになっている。
また、第2回転機は、第1回転機と同様に構成されており、第2回転機の第2ステータ、第3および第4のロータの間におけるエネルギの入出力の関係は、遊星歯車装置の3要素の間におけるエネルギの入出力の関係と同じになっている。さらに、第3回転機も、第1回転機と同様に構成されており、第3回転機の第3ステータ、第5および第6のロータの間におけるエネルギの入出力の関係は、遊星歯車装置の3要素の間におけるエネルギの入出力の関係と同じになっている。また、差動装置の第1〜第3の要素が、互いの間で動力を伝達可能で、この動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成されている。
さらに、第1回転機の第2ロータおよび第1要素は、左右の被駆動部の一方に機械的に連結されており、第1回転機の第1ロータ、第2回転機の第3ロータおよび第2要素は第3回転機の第5ロータに、第2回転機の第4ロータおよび第3要素は左右の被駆動部の他方に、第3回転機の第6ロータは原動機の出力部に、それぞれ機械的に連結されている。また、第1回転機と第3回転機は、互いに電気的に接続されるとともに、第2回転機と第3回転機は、互いに電気的に接続されている。
以上の構成の動力装置により、左右の被駆動部は、例えば次のようにして駆動される。すなわち、原動機から第6ロータに伝達される動力の一部を用いて、第3回転機で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機に供給する。この場合において、第2ロータおよび第1要素が左被駆動部に連結されるとともに、第4ロータおよび第3要素が右被駆動部に連結されているときには、各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図99のように表される。
図99に示すように、上述した各種の回転要素の間の連結関係から、第2ロータおよび第1要素の回転数は、左被駆動部の回転数と相関関係にあり、第4ロータおよび第3要素の回転数は、右被駆動部の回転数と相関関係にある。また、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素の回転数は第3回転機の第5ロータの回転数と、第3回転機の第6ロータの回転数は原動機の回転数と、それぞれ相関関係にある。さらに、図99において、Tg3は、第3回転機で発電した電力および第3回転磁界の回転数と等価のトルク(以下「第3発電用等価トルク」という)であり、TR5は、第5ロータに伝達されるトルクである。その他のパラメータについては、図98と同様である。
図99から明らかなように、原動機トルクTPMの一部が、第3回転機の第3ステータに電気エネルギとして伝達され、残りは、第3発電用等価トルクTg3を反力として、第5ロータに伝達され、さらに、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素に伝達される。以上のように、原動機の動力の一部が第3ステータに電力として伝達され、残りは、第1ロータ、第3ロータおよび第2要素に伝達される。また、第3回転機から第1および第2の回転機に供給された電力は、動力に変換され、原動機の動力の残りとともに、差動装置を介して左右の被駆動部に伝達され、ひいては、左右の被駆動部が駆動される。
この図99に示す各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係と、前述した図97との比較から明らかなように、本発明による動力装置においても、請求項1の場合と同様、差動装置、第1および第2の回転機で構成される、図99に示すような5つの回転要素の回転数に関する共線関係を満たす限りにおいて、原動機の動力を左右の被駆動部に任意に分配でき、それにより、輸送機関の左右の旋回をアシストすることができる。また、以上のような左右の被駆動部への原動機の動力の分配中、左右の被駆動部に連結された第2ロータや、第1要素、第4ロータ、第3要素が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の被駆動部の回転を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。
また、上述したように左右の被駆動部を駆動する場合、図99に一点鎖線で示す速度共線図から明らかなように、原動機の回転数に対して、第3回転磁界の回転数を低下させ、第1および第2の回転磁界の回転数を上昇させるとともに、第1および第2の駆動用等価トルクTe1,Te2を減少させることによって、原動機の動力を無段階に増速して、左右の被駆動部に伝達することができる。逆に、図99に破線で示す速度共線図から明らかなように、原動機の回転数に対して、第3回転磁界の回転数を上昇させ、第1および第2の回転磁界の回転数を低下させるとともに、第1および第2の駆動用等価トルクTe1,Te2を増大させることによって、原動機の動力を無段階に減速して、左右の被駆動部に伝達することができる。このため、例えば、原動機が熱機関である場合に、原動機の回転数を、より良好な燃費が得られるように制御できるので、動力装置の効率を高めることができる。
なお、これまでに述べた動作例は、第2ロータおよび第1要素が左被駆動部に連結され、第4ロータおよび第3要素が右被駆動部に連結されている場合の例であるが、これとは逆に、第4ロータおよび第3要素が左被駆動部に連結され、第2ロータおよび第1要素が右被駆動部に連結されている場合にも、同様の動作が行われることはもちろんである。また、本発明による動力装置は、これまでに述べた動作に限らず、他の様々な動作によって、左右の被駆動部を駆動することができる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の動力装置1B、1Cにおいて、充電および放電可能に構成され、第1〜第3の回転機11、70、21、80、91、100に電気的に接続された蓄電装置(バッテリ44)をさらに備えることを特徴とする。
この構成によれば、充電および放電可能な蓄電装置が、第1〜第3の回転機に電気的に接続されている。このため、例えば、原動機が熱機関である場合に、原動機の最良燃費が得られる動力に対して、左右の被駆動部を駆動するのに必要な動力が小さいときに、原動機の動力を最良燃費が得られるように制御するとともに、原動機の余剰の動力を電力として蓄電装置に充電することが可能になる。逆に、原動機の最良燃費が得られる動力に対して、左右の被駆動部の駆動に必要な動力が大きいときに、原動機の動力を最良燃費が得られるように制御するとともに、動力の不足を、上記の蓄電装置に充電した電力を第1および第2の回転機に供給することにより補うことが可能になる。以上により、原動機の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置の効率を高めることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による動力装置1を、これを適用した車両Vとともに概略的に示している。この車両Vは、駆動輪としての左右の前輪WFL,WFRと、従動輪としての左右の後輪WRL,WRRを有しており、車両Vでは、ハンドル(図示せず)の回転に伴い、左右の前輪WFL,WFRの向きが変化することによって、左右方向への旋回が行われる。
この動力装置1は、これらの左右の前輪WFL,WFRを駆動するためのものであり、図2および図4に示すように、駆動源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3、第1回転機11および第2回転機21と、第3回転機31と、動力を伝達するための第1遊星歯車装置PS1および第2遊星歯車装置PS2と、エンジン3や第1〜第3の回転機11〜31の動作を制御するためのECU2を備えている。このエンジン3は、ガソリンエンジンであり、動力を出力するためのクランク軸3aを有している。なお、図2および後述する他の図面では、断面を示す部分のハッチングを適宜、省略するものとする。
第1および第2の回転機11,21は、第1遊星歯車装置PS1を中心として互いに対称で、かつ、左前輪WFL側および右前輪WFR側に、それぞれ配置されている。また、左右の前輪WFL,WFRにはそれぞれ、左右の駆動軸DSL,DSRが、減速ギヤ(図示せず)を介して機械的に連結されている。これらの左右の駆動軸DSL,DSRと、後述する回転軸4〜6は、互いに同軸状に配置されている。
第1回転機11は、2ロータタイプのものであり、第1ステータ13と、第1ステータ13に対向するように設けられた第1ロータ14と、両者13,14の間に設けられた第2ロータ15を有している。これらの第1ステータ13、第2ロータ15および第1ロータ14は、上記の回転軸4の径方向に、外側からこの順で並んでおり、互いに同軸状に配置されている。
上記の第1ステータ13は、第1回転磁界を発生させるものであり、図5および図6に示すように、鉄芯13aと、この鉄芯13aに設けられたU相、V相およびW相のコイル13c,13d,13eを有している。なお、図5では、便宜上、U相コイル13cのみを示している。鉄芯13aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、回転軸4の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に延びており、不動のケースCAに固定されている。また、鉄芯13aの内周面には、12個のスロット13bが形成されており、これらのスロット13bは、軸線方向に延びるとともに、回転軸4の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相のコイル13c〜13eは、スロット13bに分布巻き(波巻き)で巻回されている。図3に示すように、U相〜W相のコイル13c〜13eを含む第1ステータ13は、第1パワードライブユニット(以下「第1PDU」という)41を介して、充電・放電可能なバッテリ44に電気的に接続されている。この第1PDU41は、インバーターなどの電気回路で構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図4参照)。
以上の構成の第1ステータ13では、バッテリ44から電力が供給され、U相〜W相のコイル13c〜13eに電流が流れたときに、または、後述するように発電が行われたときに、鉄芯13aの第1ロータ14側の端部に、4個の磁極が周方向に等間隔で発生する(図9参照)とともに、これらの磁極による第1回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯13aに発生する磁極を「第1電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの第1電機子磁極の極性は、互いに異なっている。なお、図9や後述する他の図面では、第1電機子磁極を、鉄芯13aやU相〜W相のコイル13c〜13eの上に、(N)および(S)で表記している。
図6に示すように、第1ロータ14は、8個の永久磁石14aから成る第1磁極列を有している。これらの永久磁石14aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第1磁極列は、第1ステータ13の鉄芯13aに対向している。各永久磁石14aは、軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、第1ステータ13の鉄芯13aのそれと同じに設定されている。
また、永久磁石14aは、リング状の取付部14bの外周面に取り付けられている。この取付部14bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、円板状のフランジ14cの外周面に取り付けられている。このフランジ14cは、前述した回転軸4に同軸状に一体に設けられている。以上により、永久磁石14aを含む第1ロータ14は、回転軸4と一体に回転自在になっている。さらに、上記のように軟磁性体で構成された取付部14bの外周面に永久磁石14aが取り付けられているので、各永久磁石14aには、第1ステータ13側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。なお、図6や後述する他の図面では、永久磁石14aの磁極を(N)および(S)で表記している。また、周方向に隣り合う各2つの永久磁石14aの極性は、互いに異なっている。
第2ロータ15は、6個のコア15aから成る第1軟磁性体列を有している。これらのコア15aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第1軟磁性体列は、第1ステータ13の鉄芯13aと第1ロータ14の第1磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア15aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、軸線方向に延びている。また、コア15aの軸線方向の長さは、永久磁石14aと同様、第1ステータ13の鉄芯13aのそれと同じに設定されている。
さらに、コア15aの軸線方向の一端部は、円板状のフランジ15bの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部15cを介して取り付けられている。このフランジ15bは、前述した左駆動軸DSLに一体に設けられている。これにより、コア15aを含む第2ロータ15は、左前輪WFLに機械的に連結されている。また、コア15aの軸線方向の他端部は、ドーナツ板状のフランジ15dの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部15eを介して取り付けられている。このフランジ15dは、前述した回転軸5の一端部に一体に設けられている。これにより、コア15aを含む第2ロータ15は、回転軸5と一体に回転自在になっている。また、回転軸5は、中空に形成されており、その内側には、回転軸4が回転自在に嵌合している。なお、図6や図9では、便宜上、フランジ15b,15dおよび連結部15c,15eを省略している。
以上の構成の第1回転機11では、第1ロータ14と第1ステータ13の間において、複数の第1電機子磁極による第1回転磁界が発生するとともにコア15aが配置されていることから、各コア15aは、永久磁石14aの磁極(以下「第1磁石磁極」という)と第1電機子磁極によって磁化される。このことと、上述したように隣り合う各2つのコア15aの間に間隔が空いていることによって、第1磁石磁極とコア15aと第1電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生する(図9参照)。このため、第1ステータ13への電力の供給により第1回転磁界を発生させると、この磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ13に供給された電力は動力に変換され、その動力が、第1ロータ14や第2ロータ15から出力される。
ここで、第1ステータ13に供給された電力および第1回転磁界の電気角速度ωmfと等価のトルクを第1駆動用等価トルクTSE1という。以下、この第1駆動用等価トルクTSE1と、第1および第2のロータ14,15に伝達されるトルク(以下、それぞれ「第1ロータ伝達トルクTR1」「第2ロータ伝達トルクTR2」という)の関係、および、第1回転磁界、第1および第2のロータ14,15の間の電気角速度の関係について説明する。
第1回転機11を次の条件(A)の下に構成した場合には、第1回転機11に相当する等価回路は図7のように表される。
(A)第1電機子磁極が2個、第1磁石磁極が4個、すなわち、第1電機子磁極のN極およびS極を1組とする極対数が値1、第1磁石磁極のN極およびS極を1組とする極対数が値2であり、コア15aが3個(第1〜第3のコア)である
なお、このように、本明細書で用いる「極対」は、N極およびS極の1組をいう。
この場合、コア15aのうちの第1コアを通過する第1磁石磁極の磁束Ψk1は、次式(3)で表される。
Figure 2010120574
ここで、ψfは第1磁石磁極の磁束の最大値、θ1およびθ2はそれぞれ、U相コイル13cに対する第1磁石磁極の回転角度位置および第1コアの回転角度位置である。また、この場合、第1電機子磁極の極対数に対する第1磁石磁極の極対数の比が値2.0であるため、第1磁石磁極の磁束が第1回転磁界に対して2倍の周期で回転(変化)するので、上記の式(3)では、そのことを表すために、(θ2−θ1)に値2.0が乗算されている。
したがって、第1コアを介してU相コイル13cを通過する第1磁石磁極の磁束Ψu1は、式(3)にcosθ2を乗算することで得られた次式(4)で表される。
Figure 2010120574
同様に、コア15aのうちの第2コアを通過する第1磁石磁極の磁束Ψk2は、次式(5)で表される。
Figure 2010120574
この場合、第1ステータ13に対する第2コアの回転角度位置が、第1コアに対して2π/3だけ進んでいるため、上記の式(5)では、そのことを表すために、θ2に2π/3が加算されている。
したがって、第2コアを介してU相コイル13cを通過する第1磁石磁極の磁束Ψu2は、式(5)にcos(θ2+2π/3)を乗算することで得られた次式(6)で表される。
Figure 2010120574
同様に、コア15aのうちの第3コアを介してU相コイル13cを通過する第1磁石磁極の磁束Ψu3は、次式(7)で表される。
Figure 2010120574
図7に示すような第1回転機11では、コア15aを介してU相コイル13cを通過する第1磁石磁極の磁束Ψuは、上記の式(4)、(6)および(7)で表される磁束Ψu1〜Ψu3を足し合わせたものになるので、次式(8)で表される。
Figure 2010120574
また、この式(8)を一般化すると、コア15aを介してU相コイル13cを通過する第1磁石磁極の磁束Ψuは、次式(9)で表される。
Figure 2010120574
ここで、a、bおよびcはそれぞれ、第1磁石磁極の極対数、コア15aの数および第1電機子磁極の極対数である。また、この式(9)を、三角関数の和と積の公式に基づいて変形すると、次式(10)が得られる。
Figure 2010120574
この式(10)において、b=a+cとするとともに、cos(θ+2π)=cosθに基づいて整理すると、次式(11)が得られる。
Figure 2010120574
この式(11)を三角関数の加法定理に基づいて整理すると、次式(12)が得られる。
Figure 2010120574
この式(12)の右辺の第2項は、a−c≠0を条件として、級数の総和やオイラーの公式に基づいて整理すると、次式(13)から明らかなように値0になる。
Figure 2010120574
また、上記の式(12)の右辺の第3項も、a−c≠0を条件として、級数の総和やオイラーの公式に基づいて整理すると、次式(14)から明らかなように値0になる。
Figure 2010120574
以上により、a−c≠0のときには、コア15aを介してU相コイル13cを通過する第1磁石磁極の磁束Ψuは、次式(15)で表される。
Figure 2010120574
また、この式(15)において、a/c=αとすると、次式(16)が得られる。
Figure 2010120574
さらに、この式(16)において、c・θ2=θe2とするとともに、c・θ1=θe1とすると、次式(17)が得られる。
Figure 2010120574
ここで、θe2は、U相コイル13cに対する第1コアの回転角度位置θ2に第1電機子磁極の極対数cを乗算していることから明らかなように、U相コイル13cに対するコア15aの電気角度位置(以下「第2ロータ電気角」という)を表す。また、θe1は、U相コイル13cに対する第1磁石磁極の回転角度位置θ1に第1電機子磁極の極対数cを乗算していることから明らかなように、U相コイル13cに対する第1磁石磁極の電気角度位置(以下「第1ロータ電気角」という)を表す。
同様に、コア15aを介してV相コイル13dを通過する第1磁石磁極の磁束Ψvは、V相コイル13dの電気角度位置がU相コイル13cに対して電気角2π/3だけ進んでいることから、次式(18)で表される。また、コア15aを介してW相コイル13eを通過する第1磁石磁極の磁束Ψwは、W相コイル13eの電気角度位置がU相コイル13cに対して電気角2π/3だけ遅れていることから、次式(19)で表される。
Figure 2010120574
Figure 2010120574
また、上記の式(17)〜(19)でそれぞれ表される磁束Ψu〜Ψwを時間微分すると、次式(20)〜(22)がそれぞれ得られる。
Figure 2010120574
Figure 2010120574
Figure 2010120574
ここで、ωe1は、第1ロータ電気角速度であり、第1ロータ電気角θe1の時間微分値、すなわち、第1ステータ13に対する第1ロータ14の角速度を電気角速度に換算した値である。また、ωe2は、第2ロータ電気角速度であり、第2ロータ電気角θe2の時間微分値、すなわち、第1ステータ13に対する第2ロータ15の角速度を電気角速度に換算した値である。
さらに、コア15aを介さずにU相〜W相のコイル13c〜13eを直接、通過する第1磁石磁極の磁束は、極めて小さく、その影響は無視できる。このため、コア15aを介してU相〜W相のコイル13c〜13eをそれぞれ通過する第1磁石磁極の磁束Ψu〜Ψwの時間微分値dΨu/dt〜dΨw/dt(式(20)〜(22))は、第1ステータ13に対して第1磁石磁極やコア15aが回転するのに伴ってU相〜W相のコイル13c〜13eに発生する逆起電圧(誘導起電圧)(以下、それぞれ「U相逆起電圧Vcu」「V相逆起電圧Vcv」「W相逆起電圧Vcw」という)をそれぞれ表す。
このことから、U相、V相およびW相のコイル13c〜13eをそれぞれ流れる電流Iu、IvおよびIwは、次式(23)、(24)および(25)で表される。
Figure 2010120574
Figure 2010120574
Figure 2010120574
ここで、Iは、U相〜W相のコイル13c〜13eをそれぞれ流れる電流Iu〜Iwの振幅(最大値)である。
また、これらの式(23)〜(25)より、U相コイル13cに対する第1回転磁界のベクトルの電気角度位置θmfは、次式(26)で表されるとともに、U相コイル13cに対する第1回転磁界の電気角速度(以下「磁界電気角速度」という)ωmfは、次式(27)で表される。
Figure 2010120574
Figure 2010120574
このため、磁界電気角速度ωmf、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2の間の関係をいわゆる共線図で表すと、例えば図8のように表される。なお、同図および後述する他の速度共線図では、前述した図97に示す速度共線図と同様、値0を示す横線に交わる縦線は、各パラメータの角速度(回転数)を表すためのものであり、この横線から縦線上の白丸までの距離が、各パラメータの角速度(回転数)に相当する。
さらに、U相〜W相のコイル13c〜13eに電流Iu〜Iwがそれぞれ流れることで第1および第2のロータ14,15に出力される機械的出力(動力)Wは、リラクタンス分を除くと、次式(28)で表される。
Figure 2010120574
この式(28)に上記の式(20)〜(25)を代入し、整理すると、次式(29)が得られる。
Figure 2010120574
また、この機械的出力Wと、前述した第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2と、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2との関係は、次式(30)で表される。
Figure 2010120574
これらの式(29)および(30)から明らかなように、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2は、次式(31)および(32)でそれぞれ表される。
Figure 2010120574
Figure 2010120574
さらに、第1ステータ13に供給された電力と機械的出力Wが互いに等しい(ただし、損失は無視)ことと、式(27)および(29)から、前述した第1駆動用等価トルクTSE1(第1ステータ13に供給された電力および磁界電気角速度ωmfと等価のトルク)は、次式(33)で表される。
Figure 2010120574
また、これらの式(31)〜(33)より、次式(34)が得られる。
Figure 2010120574
この式(34)で表されるトルクの関係、および式(27)で表される電気角速度の関係は、遊星歯車装置のサンギヤとリングギヤとキャリアにおけるトルクおよび回転数の関係とまったく同じである。
さらに、前述したように、式(27)の電気角速度の関係および式(34)のトルクの関係は、b=a+cおよびa−c≠0を条件として成立する。この条件b=a+cは、第1磁石磁極の数をp、第1電機子磁極の数をqとすると、b=(p+q)/2、すなわち、b/q=(1+p/q)/2で表される。ここで、p/q=mとすると、b/q=(1+m)/2が得られることから明らかなように、上記のb=a+cという条件が成立していることは、第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比が、1:m:(1+m)/2であることを表す。また、上記のa−c≠0という条件が成立していることは、m≠1.0であることを表す。
以上から明らかなように、第1回転機11は、その第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比が、1:m:(1+m)/2(m≠1.0)に設定されていれば、適正に作動するとともに、式(27)に示す電気角速度の関係と、式(34)に示すトルクの関係が成立する。本実施形態では、前述したように、第1電機子磁極が4個、第1磁石磁極が8個、コア15aが6個であり、すなわち、第1電機子磁極の数と、第1磁石磁極の数と、コア15aの数との比は、1:2:(1+2)/2であり、したがって、第1回転機11は、適正に作動するとともに、式(27)に示す電気角速度の関係と、式(34)に示すトルクの関係が成立する。
次に、第1ステータ13に供給された電力が、具体的にどのようにして動力に変換され、第1ロータ14や第2ロータ15から出力されるかについて説明する。まず、図9〜図11を参照しながら、第1ロータ14を回転不能に保持した状態で第1ステータ13に電力を供給した場合について説明する。なお、図9〜図11では、便宜上、複数の構成要素の符号を省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。また、理解の容易化のために、図9〜図11に示される同じ1つの第1電機子磁極およびコア15aに、ハッチングを付している。
まず、図9(a)に示すように、ある1つのコア15aの中心と、ある1つの永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア15aから3つ目のコア15aの中心と、その永久磁石14aから4つ目の永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、第1回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの第1電機子磁極の位置を、中心がコア15aと一致している各永久磁石14aの中心と周方向に一致させるとともに、この第1電機子磁極の極性をこの永久磁石14aの第1磁石磁極の極性と異ならせる。
前述したように第1ステータ13による第1回転磁界が第1ロータ14との間に発生することと、コア15aを有する第2ロータ15が第1ステータ13と第1ロータ14の間に配置されていることから、第1電機子磁極および第1磁石磁極により、各コア15aは磁化される。このことと、隣り合う各コア15aの間に間隔が空いていることから、第1電機子磁極とコア15aと第1磁石磁極を結ぶような磁力線MLが発生する。なお、図9〜図11では、便宜上、鉄芯13aや取付部14bにおける磁力線MLを省略している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
図9(a)に示す状態では、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結び、かつ、これらの第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、コア15aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
そして、第1回転磁界の回転に伴って第1電機子磁極が図9(a)に示す位置から図9(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、コア15aに磁力が作用する。この場合、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極および第1磁石磁極を結ぶ直線に対して、磁力線MLが、このコア15aにおいて第1回転磁界の回転方向(以下「磁界回転方向」という)と逆方向に凸に曲がった状態になるため、上記の磁力は、コア15aを磁界回転方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、コア15aは、磁界回転方向に駆動され、図9(c)に示す位置に回転し、コア15aが設けられた第2ロータ15も、磁界回転方向に回転する。なお、図9(b)および(c)における破線は、磁力線MLの磁束量が極めて小さく、第1電機子磁極とコア15aと第1磁石磁極の間の磁気的なつながりが弱いことを表している。このことは、後述する他の図面においても同様である。
また、第1回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLがコア15aにおいて磁界回転方向と逆方向に凸に曲がる→磁力線MLが直線状になるようにコア15aに磁力が作用する→コア15aおよび第2ロータ15が、磁界回転方向に回転する」という動作が、図10(a)〜(d)、図11(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第1ロータ14を回転不能に保持した状態で、第1ステータ13に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ13に供給された電力は動力に変換され、その動力が第2ロータ15から出力される。
また、図12は、図9(a)の状態から第1電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図12と図9(a)の比較から明らかなように、コア15aは、第1電機子磁極に対して1/3の回転角度だけ、同方向に回転していることが分かる。この結果は、前記式(27)において、ωe1=0とすることによって、ωe2=ωmf/(α+1)=ωmf/3が得られることと合致する。
次に、図13〜図15を参照しながら、第2ロータ15を回転不能に保持した状態で、第1ステータ13に電力を供給した場合の動作について説明する。なお、図13〜図15では、理解の容易化のために、同じ1つの第1電機子磁極および永久磁石14aに、ハッチングを付している。まず、図13(a)に示すように、前述した図9(a)の場合と同様、ある1つのコア15aの中心と、ある1つの永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致するとともに、そのコア15aから3つ目のコア15aの中心と、その永久磁石14aから4つ目の永久磁石14aの中心が、周方向に互いに一致した状態から、第1回転磁界を、同図の左方に回転するように発生させる。その発生の開始時においては、互いに同じ極性を有する1つおきの第1電機子磁極の位置を、中心がコア15aと一致している各永久磁石14aの中心と周方向に一致させるとともに、この第1電機子磁極の極性をこの永久磁石14aの第1磁石磁極の極性と異ならせる。
図13(a)に示す状態では、図9(a)の場合と同様、磁力線MLは、周方向の位置が互いに一致している第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結び、かつ、これらの第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極のそれぞれの周方向の各両側に隣り合う第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極を結ぶように発生する。また、この状態では、磁力線MLが直線状であることにより、永久磁石14aには、周方向に回転させるような磁力は作用しない。
そして、第1回転磁界の回転に伴って第1電機子磁極が図13(a)に示す位置から図13(b)に示す位置に回転すると、磁力線MLが曲がった状態になり、それに伴い、磁力線MLが直線状になるように、永久磁石14aに磁力が作用する。この場合、この永久磁石14aが、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極およびコア15aの延長線上よりも磁界回転方向に進んだ位置にあるため、上記の磁力は、この延長線上に永久磁石14aを位置させるように、すなわち、永久磁石14aを磁界回転方向と逆方向に駆動するように作用する。このような磁力線MLによる磁力の作用により、永久磁石14aは、磁界回転方向と逆方向に駆動され、図13(c)に示す位置に回転し、永久磁石14aが設けられた第1ロータ14も、磁界回転方向と逆方向に回転する。
また、第1回転磁界がさらに回転するのに伴い、上述した一連の動作、すなわち、「磁力線MLが曲がり、磁力線MLで互いに結ばれた第1電機子磁極およびコア15aの延長線上よりも、永久磁石14aが磁界回転方向に進んだ位置に位置する→磁力線MLが直線状になるように永久磁石14aに磁力が作用する→永久磁石14aおよび第1ロータ14が、磁界回転方向と逆方向に回転する」という動作が、図14(a)〜(d)、図15(a)および(b)に示すように、繰り返し行われる。以上のように、第2ロータ15を回転不能に保持した状態で、第1ステータ13に電力を供給した場合には、上述したような磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ13に供給された電力は動力に変換され、その動力が第1ロータ14から出力される。
また、図15(b)は、図13(a)の状態から第1電機子磁極が電気角2πだけ回転した状態を示しており、図15(b)と図13(a)の比較から明らかなように、永久磁石14aは、第1電機子磁極に対して1/2の回転角度だけ、逆方向に回転していることが分かる。この結果は、前記式(27)において、ωe2=0とすることによって、−ωe1=ωmf/α=ωmf/2が得られることと合致する。
また、図16および図17は、第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極の数を、値16、値18および値20にそれぞれ設定し、第1ロータ14を回転不能に保持するとともに、第1ステータ13への電力の供給により第2ロータ15から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図16は、第2ロータ電気角θe2が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
この場合、第1ロータ14が回転不能に保持されていることと、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(27)から、磁界電気角速度ωmf、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2の間の関係は、ωmf=2.25・ωe2で表される。図16に示すように、第2ロータ電気角θe2が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ2.25周期分、発生している。また、図16は、第2ロータ15から見たU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第2ロータ電気角θe2を横軸として、W相逆起電圧Vcw、V相逆起電圧VcvおよびU相逆起電圧Vcuの順に並んでおり、このことは、第2ロータ15が磁界回転方向に回転していることを表す。以上のような図16に示すシミュレーション結果は、上述した式(27)に基づくωmf=2.25・ωe2の関係と合致する。
さらに、図17は、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の推移の一例を示している。この場合、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ、値8および値10であることと、前記式(34)から、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25で表される。図17に示すように、第1駆動用等価トルクTSE1は、ほぼ−TREFに、第1ロータ伝達トルクTR1は、ほぼ1.25・(−TREF)に、第2ロータ伝達トルクTR2は、ほぼ2.25・TREFになっている。このTREFは所定のトルク値(例えば200Nm)である。このような図17に示すシミュレーション結果は、上述した式(34)に基づくTSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25の関係と合致する。
また、図18および図19は、第1電機子磁極、コア15aおよび第1磁石磁極の数を図16および図17の場合と同様に設定し、第1ロータ14に代えて第2ロータ15を回転不能に保持するとともに、第1ステータ13への電力の供給により第1ロータ14から動力を出力した場合におけるシミュレーション結果を示している。図18は、第1ロータ電気角θe1が値0〜2πまで変化する間におけるU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの推移の一例を示している。
この場合、第2ロータ15が回転不能に保持されていることと、第1電機子磁極および第1磁石磁極の極対数がそれぞれ値8および値10であることと、前記式(27)から、磁界電気角速度ωmf、第1および第2のロータ電気角速度ωe1,ωe2の間の関係は、ωmf=−1.25・ωe1で表される。図18に示すように、第1ロータ電気角θe1が値0〜2πまで変化する間に、U相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwは、ほぼ1.25周期分、発生している。また、図18は、第1ロータ14から見たU相〜W相の逆起電圧Vcu〜Vcwの変化状態を示しており、同図に示すように、これらの逆起電圧は、第1ロータ電気角θe1を横軸として、U相逆起電圧Vcu、V相逆起電圧VcvおよびW相逆起電圧Vcwの順に並んでおり、このことは、第1ロータ14が磁界回転方向と逆方向に回転していることを表す。以上のような図18に示すシミュレーション結果は、上述した式(27)に基づくωmf=−1.25・ωe1の関係と合致する。
さらに、図19は、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の推移の一例を示している。この場合にも、図17の場合と同様、式(34)から、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25で表される。図19に示すように、第1駆動用等価トルクTSE1は、ほぼTREFに、第1ロータ伝達トルクTR1は、ほぼ1.25・TREFに、第2ロータ伝達トルクTR2は、ほぼ−2.25・TREFになっている。このような図19に示すシミュレーション結果は、上述した式(34)に基づくTSE1=TR1/1.25=−TR2/2.25の関係と合致する。
以上のように、第1回転機11では、第1ステータ13への電力供給により第1回転磁界を発生させると、前述した第1磁石磁極とコア15aと第1電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生し、この磁力線MLによる磁力の作用によって、第1ステータ13に供給された電力は動力に変換され、その動力が、第1ロータ14や第2ロータ15から出力されるとともに、上述したような電気角速度やトルクの関係が成立する。このため、第1ステータ13に電力を供給していない状態で、第1および第2のロータ14,15の少なくとも一方に動力を入力することにより、この少なくとも一方のロータを第1ステータ13に対して回転させると、第1ステータ13において、発電が行われるとともに、第1回転磁界が発生し、この場合にも、第1磁石磁極とコア15aと第1電機子磁極を結ぶような磁力線MLが発生するとともに、この磁力線MLによる磁力の作用によって、上述した式(27)に示す電気角速度の関係と式(34)に示すトルクの関係が成立する。
すなわち、発電した電力および磁界電気角速度ωmfと等価のトルクを第1発電用等価トルクTGE1とすると、この第1発電用等価トルクTGE1、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間にも、式(34)のような関係が成立する。以上から明らかなように、本実施形態における第1回転機11は、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた装置と同じ機能を有する。
また、第1回転機11では、第1回転磁界の回転数(以下「第1磁界回転数」という)NMF1と、第1ロータ14の回転数(以下「第1ロータ回転数」という)NR1と、第2ロータ15の回転数(以下「第2ロータ回転数」という)NR2の関係は、m=(第1磁石磁極の数p/第1電機子磁極の数q)≠1.0であれば、前記式(27)を満たす限り、成立する。さらに、第1駆動用等価トルクTSE1(第1発電用等価トルクTGE1)、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、p/q≠1.0であれば、前記式(34)を満たす限り、成立する。したがって、これらの式(27)および(34)におけるα(=a/c)、すなわち、第1電機子磁極の極対数cに対する第1磁石磁極の極対数aの比(以下「第1極対数比」という)を設定することによって、第1磁界回転数NMF1、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係と、第1駆動用等価トルクTSE1(第1発電用等価トルクTGE1)、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係を自由に設定でき、第1回転機11の設計の自由度を高めることができる。以上の効果は、第1ステータ13のコイル13c〜13eの相数が前述した値3以外の場合にも同様に得られる。
なお、本実施形態では、第1極対数比α=2.0であるので、第1磁界回転数NMF1、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係は、NMF1=3・NR2−2・NR1で表され、第1駆動用等価トルクTSE1(第1発電用等価トルクTGE1)、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係は、TSE1(TGE1)=TR1/2=−TR2/3で表される。
また、ECU2は、第1PDU41を制御することによって、第1ステータ13に供給する電力と、電力の供給に伴って発生する第1回転磁界の第1磁界回転数NMF1を制御する。さらに、ECU2は、第1PDU41を制御することによって、第1ステータ13で発電する電力と、発電に伴って発生する第1回転磁界の第1磁界回転数NMF1を制御する。
また、第2回転機21は、第1回転機11と同様に構成されているので、以下、その構成および動作について簡単に説明する。図2および図20に示すように、第2回転機21は、第2ステータ23と、第2ステータ23に対向するように設けられた第3ロータ24と、両者23,24の間に設けられた第4ロータ25を有している。これらの第2ステータ23、第4ロータ25および第3ロータ24は、径方向に、外側からこの順で並んでおり、同軸状に配置されている。
上記の第2ステータ23は、第2回転磁界を発生させるものであり、鉄芯23aと、この鉄芯23aに設けられたU相、V相およびW相のコイル23bを有している。鉄芯23aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、軸線方向に延びており、不動のケースCAに固定されている。また、鉄芯23aの内周面には、12個のスロット(図示せず)が形成されており、これらのスロットは、周方向に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相のコイル23bは、スロットに分布巻き(波巻き)で巻回されている。図3に示すように、U相〜W相のコイル23bを含む第2ステータ23は、第2パワードライブユニット(以下「第2PDU」という)42を介して、バッテリ44に電気的に接続されている。この第2PDU42は、第1PDU41と同様、インバータなどからなる電気回路で構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図4参照)。
以上の構成の第2ステータ23では、バッテリ44から電力が供給され、U相〜W相のコイル23bに電流が流れたときに、または、発電が行われたときに、鉄芯23aの第3ロータ24側の端部に、4個の磁極が周方向に等間隔で発生するとともに、これらの磁極による第2回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯23aに発生する磁極を「第2電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの第2電機子磁極の極性は、互いに異なっている。
第3ロータ24は、8個の永久磁石24a(2つのみ図示)から成る第2磁極列を有している。これらの永久磁石24aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第2磁極列は、第2ステータ23の鉄芯23aに対向している。各永久磁石24aは、軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、第2ステータ23の鉄芯23aのそれと同じに設定されている。
また、永久磁石24aは、リング状の取付部24bの外周面に取り付けられている。この取付部24bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、円板状のフランジ24cの外周面に取り付けられている。このフランジ24cは、前述した回転軸4に一体に設けられている。以上により、永久磁石24aを含む第3ロータ24は、回転軸4と一体に回転自在になっており、回転軸4を介して、第1ロータ14に機械的に直結されている。さらに、上記のように軟磁性体で構成された取付部24bの外周面に永久磁石24aが取り付けられているので、各永久磁石24aには、第2ステータ23側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。また、周方向に隣り合う各2つの永久磁石24aの極性は、互いに異なっている。なお、本明細書において、「直結」とは、ギヤなどの変速機構を用いずに各種の要素を連結することをいう。
第4ロータ25は、6個のコア25a(2つのみ図示)から成る第2軟磁性体列を有している。これらのコア25aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第2軟磁性体列は、第2ステータ23の鉄芯23aと第3ロータ24の第2磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア25aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、軸線方向に延びている。また、コア25aの軸線方向の長さは、永久磁石24aと同様、第2ステータ23の鉄芯23aのそれと同じに設定されている。
さらに、コア25aの軸線方向の一端部は、ドーナツ板状のフランジ25bの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部25cを介して取り付けられている。このフランジ25bは、前述した回転軸6の一端部に、一体に設けられている。これにより、コア25aを含む第4ロータ25は、回転軸6と一体に回転自在になっている。回転軸6は、中空に形成されており、その内側には、回転軸4が回転自在に嵌合している。また、コア25aの軸線方向の他端部は、円板状のフランジ25dの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部25eを介して取り付けられている。このフランジ25dは、前述した右駆動軸DSRに一体に設けられている。これにより、コア25aを含む第4ロータ25は、右前輪WFRに機械的に連結されている。
以上のように、第2回転機21では、第2電機子磁極が4個、永久磁石24aの磁極(以下「第2磁石磁極」という)が8個、コア25aが6個である。すなわち、第2電機子磁極の数と第2磁石磁極の数とコア25aの数との比は、第1回転機11の第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比と同様、1:2.0:(1+2.0)/2に設定されている。また、第2電機子磁極の極対数に対する第2磁石磁極の極対数の比(以下「第2極対数比β」という)は、第1回転機11の第1極対数比αと同様、値2.0に設定されている。以上のように、第2回転機21は、第1回転機11と同様に構成されているので、第1回転機11と同じ機能を有している。
すなわち、第2ステータ23に供給された電力を動力に変換し、第3ロータ24や第4ロータ25から出力するとともに、第3ロータ24や第4ロータ25に入力された動力を電力に変換し、第2ステータ23から出力する。また、そのような電力および動力の入出力中、第2回転磁界、第3および第4のロータ24,25が、前述した第1回転機11に関する式(27)に示すような回転数に関する共線関係を保ちながら回転する。すなわち、この場合、第2回転磁界の回転数(以下「第2磁界回転数NMF2」という)、第3および第4のロータ24,25の回転数(以下、それぞれ「第3ロータ回転数NR3」「第4ロータ回転数NR4」という)の間には、次式(35)が成立する。
NMF2=(β+1)NR4−β・NR3
=3・NR4−2・NR3 ……(35)
また、第2ステータ23に供給された電力および第2磁界回転数NMF2と等価のトルクを第2駆動用等価トルクTSE2とすると、第2駆動用等価トルクTSE2と、第3および第4のロータ24,25に伝達されるトルク(以下、それぞれ「第3ロータ伝達トルクTR3」「第4ロータ伝達トルクTR4」という)との間には、次式(36)が成立する。
TSE2=TR3/β=−TR4/(β+1)
=TR3/2=−TR4/3 ……(36)
さらに、第2ステータ23で発電した電力および第2磁界回転数NMF2と等価のトルクを第2発電用等価トルクTGE2とすると、第2発電用等価トルクTGE2、第3および第4のロータ伝達トルクTR3,TR4の間には、次式(37)が成立する。以上のように、第2回転機21は、第1回転機11と同様、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機とを組み合わせた装置と同じ機能を有する。
TGE2=TR3/β=−TR4/(1+β)
=TR3/2=−TR4/3 ……(37)
また、ECU2は、第2PDU42を制御することによって、第2回転機21の第2ステータ23に供給される電力と、電力の供給に伴って第2ステータ23で発生する第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を制御する。さらに、ECU2は、第2PDU42を制御することによって、第2ステータ23で発電する電力と、発電に伴って第2ステータ23で発生する第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を制御する。
前述した第3回転機31は、一般的な1ロータタイプの3相ブラシレスDCモータであり、複数の鉄芯やコイルなどで構成されたステータ32と、複数の磁石などで構成されたロータ33とを有している。このステータ32は、回転磁界を発生可能に構成されており、不動のケースCAに固定されている。上記のロータ33は、ステータ32に対向するように配置され、回転自在になっている。以上の構成の第3回転機31では、ステータ32に電力が供給されると、回転磁界が発生し、それに伴って、供給された電力は、動力に変換され、ロータ33に出力される。また、ロータ33に動力が入力されると、この動力は、電力に変換され、ステータ32に出力されるとともに、回転磁界が発生する。
また、ロータ33には、回転軸34が同軸状に一体に設けられており、この回転軸34は、クランク軸3aと同軸状に配置されている。さらに、図3に示すように、ステータ32は、第3パワードライブユニット(以下「第3PDU」という)43を介して、バッテリ44に電気的に接続されている。この第3PDU43は、第1PDU41と同様、インバータなどの電気回路で構成されており、ECU2、第1および第2のPDU41,42に電気的に接続されている(図3および図4参照)。すなわち、第1回転機11の第1ステータ13と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されており、第2回転機21の第2ステータ23と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されている。ECU2は、第3PDU43を制御することによって、第3回転機31のステータ32に供給する電力と、ステータ32で発電する電力と、第3回転機31のロータ33の回転数(以下「第3回転機回転数」という)NM3を制御する。
第1遊星歯車装置PS1は、一般的なシングルピニオンタイプのものであり、第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1の外周に設けられた第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う複数の第1プラネタリギヤP1と、これらの第1プラネタリギヤP1を回転自在に支持する第1キャリアC1を有している。第1サンギヤS1の歯数に対する第1リングギヤR1の歯数の比(第1リングギヤR1の歯数/第1サンギヤS1の歯数、以下「第1ギヤ比G1」という)は、所定値に設定されている。周知のように、これらの第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1は、互いの間で動力を伝達可能で、動力の伝達中、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、それらの回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成されている。
また、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1は、前述した回転軸4と同軸状に配置されている。第1サンギヤS1は、前述した回転軸6の他端部に、一体に設けられ、それにより、第4ロータ25に機械的に直結されており、第4ロータ25と一体に回転自在になっている。第1リングギヤR1は、筒状の部材とドーナツ板状のフランジを一体に有する連結部7の軸線方向の一端部に一体に設けられており、この連結部7の軸線方向の他端部には、前述した回転軸5の他端部が一体に設けられている。これにより、第1リングギヤR1は、第2ロータ15に機械的に直結されており、第2ロータ15と一体に回転自在になっている。第1キャリアC1は、回転軸4に一体に設けられ、それにより、第1および第3のロータ14,24に機械的に直結されており、両者14,24と一体に回転自在になっている。また、第1キャリアC1には、ギヤCGが一体に設けられており、このギヤCGは、回転自在のアイドラギヤ8に噛み合っている。
第2遊星歯車装置PS2は、第1遊星歯車装置PS1と同様に構成されており、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う複数の第2プラネタリギヤP2と、これらの第2プラネタリギヤP2を回転自在に支持する第2キャリアC2を有している。第2遊星歯車装置PS2は、第1遊星歯車装置PS1と同じ機能を有している。また、第2サンギヤS2の歯数に対する第2リングギヤR2の歯数の比(第2リングギヤR2の歯数/第2サンギヤS2の歯数、以下「第2ギヤ比G2」という)は、第1遊星歯車装置PS1の第1ギヤ比G1と同様、所定値に設定されている。
また、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2は、クランク軸3aおよび回転軸34と同軸状に配置されている。第2サンギヤS2は、回転軸34に一体に設けられ、それにより、第3回転機31のロータ33に機械的に直結されており、ロータ33と一体に回転自在になっている。第2リングギヤR2の外周面には、ギヤRGが形成されており、このギヤRGは、前述したアイドラギヤ8に噛み合っている。これにより、第2リングギヤR2は、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24に機械的に連結されている。また、第2キャリアC2は、クランク軸3aに、フライホイール(図示せず)を介して機械的に直結されており、それにより、クランク軸3aと一体に回転自在になっている。
さらに、図4に示すように、ECU2には、クランク角センサ51から、クランク軸3aのクランク角度位置を表す検出信号が出力される。ECU2は、このクランク角度位置に基づいて、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、ECU2には、第1回転角センサ52および第2回転角センサ53からそれぞれ、第1および第2のロータ14,15の回転角度位置を表す検出信号が出力される。ECU2は、検出された第1および第2のロータ14,15の回転角度位置に基づいて、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2をそれぞれ算出する。さらに、前述したように、第2ロータ15が左前輪WFLに機械的に連結されているため、ECU2は、検出された第2ロータ15の回転角度位置と前述した減速ギヤのギヤ比に基づいて、左前輪の回転数(以下「左前輪回転数」という)NWFLを算出する。
また、前述したように第3ロータ24が第1ロータ14に直結されているため、ECU2は、検出された第1ロータ14の回転角度位置に基づいて、第3ロータ24の回転角度位置を算出するとともに、第3ロータ回転数NR3を算出する。さらに、ECU2には、第3回転角センサ54から、第4ロータ25の回転角度位置を表す検出信号が出力される。ECU2は、検出された第4ロータ25の回転角度位置に基づいて、第4ロータ回転数NR4を算出する。また、前述したように、第4ロータ25が右前輪WFRに機械的に連結されているため、ECU2は、検出された第4ロータ25の回転角度位置と前述した減速ギヤのギヤ比に基づいて、右前輪の回転数(以下「右前輪回転数」という)NWFRを算出する。
さらに、ECU2には、第4回転角センサ55から、第3回転機31のロータ33の回転角度位置を表す検出信号が出力される。ECU2は、検出されたロータ33の回転角度位置に基づき、第3回転機回転数NM3を算出する。また、ECU2には、左後輪回転数センサ56および右後輪回転数センサ57からそれぞれ、左右の後輪WRL,WRRの回転数(以下、それぞれ「左後輪回転数NWRL」「右後輪回転数NWRR」という)を表す検出信号が、出力される。ECU2は、検出された左右の後輪回転数NWRL,NWRRに基づき、車両Vの速度(以下「車速」という)を算出する。
さらに、ECU2には、操舵角センサ58から車両Vのハンドルの操舵角θstを表す検出信号が、ヨーレートセンサ59から車両VのヨーレートYを表す検出信号が、出力される。また、ECU2には、電流電圧センサ60から、バッテリ44に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が出力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ44の充電状態を算出する。さらに、ECU2には、アクセル開度センサ61から、車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度APを表す検出信号が、ブレーキセンサ62から、車両Vのブレーキペダル(図示せず)の踏み込み量であるブレーキペダル踏込量BPを表す検出信号が、出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されており、上述した各種のセンサ51〜62からの検出信号に応じ、エンジン3および第1〜第3の回転機11〜31の動作を制御する。これにより、動力装置1の各種の動作が行われる。
図21(a)は、前述した第1回転磁界、第1および第2のロータ14,15の間の回転数の関係の一例を、第1サンギヤS1、第1キャリアC1および第1リングギヤR1の間の回転数の関係の一例とともに示している。これらの回転要素の間の回転数の関係は、前述した第1回転機11および第1遊星歯車装置PS1の間の連結関係から、例えば、図21(b)に示す1つの速度共線図で表される。同図に示すように、第1回転機11および第1遊星歯車装置PS1の間の連結によって、互いに回転数が共線関係にある4つの回転要素が構成される。なお、同図および後述する他の速度共線図では、便宜上、各パラメータの回転数を表す白丸の付近に、各パラメータの回転数の符号を表記している。
また、図22(a)は、上記の4つの回転要素の間の回転数の関係の一例を、第2回転磁界、第3および第4のロータ24,25の間の回転数の関係の一例とともに示している。これらの回転要素の間の回転数の関係は、前述した第1回転機11、第1遊星歯車装置PS1および第2回転機21の間の連結関係から、例えば、図22(b)に示す1つの速度共線図で表される。同図に示すように、第1回転機11、第1遊星歯車装置PS1および第2回転機21の間の連結によって、互いに回転数が共線関係にある5つの回転要素が構成される。以下、これらの5つの回転要素のうち、第2ロータ15および第1リングギヤR1で構成される回転要素を、「第1メンバ」といい、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24で構成される回転要素を、「第2メンバ」という。また、第4ロータ25および第1サンギヤS1で構成される回転要素を、「第3メンバ」という。
さらに、前述したように、第2ロータ15および第1リングギヤR1、すなわち第1メンバは、左前輪WFLに連結されており、第1メンバの回転数と左前輪回転数NWFLは、前述した減速ギヤによる変速を無視すれば、互いに等しい。また、第1ロータ14、第1キャリアC1および第3ロータ24、すなわち第2メンバは、第2リングギヤR2に連結されており、第2メンバの回転数と第2リングギヤR2の回転数は、前述したギヤCGおよびRGによる変速を無視すれば、互いに等しい。また、第4ロータ25および第1サンギヤS1、すなわち第3メンバは、右前輪WFRに連結されており、第3メンバの回転数と右前輪回転数NWFRは、前述した減速ギヤによる変速を無視すれば、互いに等しい。
また、第2サンギヤS2は、第3回転機31のロータ33に直結されており、第2サンギヤS2の回転数と第3回転機回転数NM3は、互いに等しい。さらに、第2キャリアC2は、クランク軸3aに直結されており、第2キャリアC2の回転数とエンジン回転数NEは、互いに等しい。以上のように、第2メンバ、すなわち、第1ロータ14、第1キャリアC1および第3ロータ24は、第2リングギヤR2および第2キャリアC2を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、第3回転機31のロータ33は、第2サンギヤS2および第2キャリアC2を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。
以上から、第1〜第3のメンバの回転数と、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2と、第2サンギヤS2、第2キャリアC2および第2リングギヤR2の回転数と、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと、第3回転機回転数NM3と、エンジン回転数NEの関係は、例えば図23のように表される。以下、この図23に示すような速度共線図を用いて、動力装置1の動作について説明する。なお、同図および後述する他の速度共線図では、正転方向を「+」で、逆転方向を「−」で、それぞれ表記している。また、以下の説明では、前述したギヤCG,RGおよび減速ギヤによる変速や、各ギヤにおける損失などはないものとする。
動力装置1の動作モードには、「停車中ENG始動モード」「ENG発進モード」「ENG直進モード」「ENG旋回モード」「ENG後進モード」「減速運転モード」「EV発進モード」「EV走行中ENG始動モード」および「EV後進モード」が含まれる。以下、これらの動作モードについて、停車中ENG始動モードから順に説明する。
・停車中ENG始動モード
この停車中ENG始動モードは、車両Vの停止中に、エンジン3を始動する動作モードである。停車中ENG始動モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図24のように表される。停車中ENG始動モードでは、エンジン3のクランク軸3aを正転させるために、バッテリ44から第3回転機31に電力を供給し、そのロータ33を第2サンギヤS2とともに正転させる。
この場合、図24から明らかなように、電力供給に伴って発生した第3回転機31の出力トルク(以下「第3回転機トルク」という)TM3は、第2キャリアC2に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第2リングギヤR2や、第2メンバ、左右の前輪WFL,WFRを逆転させるように作用する。このため、図24に示すように、そのような左右の前輪WFL,WFRの逆転を防止すべく、左右の前輪WFL,WFRを静止状態に保持するために、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給し、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2をそれぞれ、第1および第2の回転磁界が正転するように発生させる。
これにより、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2は、第2メンバを介して第2リングギヤR2に伝達され、第2リングギヤR2の逆転を阻止するように作用する。第3回転機トルクTM3は、第2リングギヤR2に伝達されたトルク(以下「第2リングギヤ伝達トルク」という)TRG2を反力として、クランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが正転する。図24において、T2Tは、第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24に伝達されるトルク(以下「第2メンバ伝達トルク」という)であり、TCRKは、クランク軸3aに伝達されるトルクである。
また、停車中ENG始動モードでは、第3回転機回転数NM3は、エンジン回転数NEがエンジン3の始動に適した所定の始動時用回転数NSTになるように、制御される。具体的には、この場合、第2サンギヤS2の回転数が第3回転機回転数NM3と等しいことと、第2キャリアC2の回転数がエンジン回転数NEと等しいことと、第2リングギヤR2の回転数が値0になることから、第3回転機回転数NM3は、次式(38)が成立するように制御される。
NM3=(G2+1)NST ……(38)
以上により、停車中ENG始動モードでは、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが値0に、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTに、それぞれ制御される。その状態で、検出されたクランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグ(いずれも図示せず)の点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。このように、停車中ENG始動モードでは、エンジン回転数NEを始動に適した始動時用回転数NSTに制御した状態で、エンジン3を始動することができるので、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。また、エンジン3の始動に伴って、左右の前輪WFL,WFRを駆動することがなく、両者WFL,WFRを静止状態に保持することができる。
・ENG発進モード
このENG発進モードは、エンジン3の動力を用いて、停車中の車両Vを発進させる動作モードである。ENG発進モードでは、エンジン3のスロットル弁や燃料噴射弁を制御することにより、エンジン3に吸入される混合気を制御することによって、エンジン3の動力を増大させる。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行い、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、第1および第2の回転磁界を正転させる。ENG発進モードの開始時における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図25のように表される。同図において、TWLTおよびTWRTはそれぞれ、左右の前輪WFL,WFRに伝達されるトルク(以下、それぞれ「左前輪伝達トルクTWLT」「右前輪伝達トルクTWRT」という)である。
図25に示すように、ENG発進モードの開始時、左右の前輪WFL,WFRのフリクションが第3回転機31のフリクションよりも大きいため、第2リングギヤR2の回転数が左右の前輪回転数NWFL,NWFRとともに値0の状態になるとともに、第3回転機31のロータ33が正転する。このため、上記の第3回転機31での発電に伴って発生した第3回転機31の制動トルク(以下「第3回転機発電トルク」という)TG3は、ロータ33とともに正転する第2サンギヤS2の回転数を低下させるように作用する。
また、エンジン3から第2キャリアC2に伝達されたトルク(以下「第2キャリア伝達トルク」という)TC2は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第2リングギヤR2に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。換言すれば、第2キャリア伝達トルクTC2は、第3回転機31と第2リングギヤR2に分配される。また、第1および第2の回転機11,21への電力供給に伴ってそれぞれ発生した第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2は、エンジン3から第2メンバに上記のように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
この場合、第3回転機31で発電する電力を制御することによって、第3回転機発電トルクTG3を漸増させるとともに、第3回転機回転数NM3を低下させる。第2遊星歯車装置PS2の機能から明らかなように、上記のように第3回転機発電トルクTG3を漸増させることによって、エンジン3から第2リングギヤR2を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTが、漸増する。また、上記のように第3回転機回転数NM3を低下させることによって、エンジン3から第3回転機31に伝達される動力が低下し、第2リングギヤR2を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力が増大する。
以上の結果、図26に示すように、左右の前輪WFL,WFRが駆動され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、車両Vが前方に発進する。以上のように、ENG発進モードでは、第3回転機31での発電電力を制御することによって、エンジン3から左右の前輪WFL,WFRに伝達されるトルクを漸増させることができるので、左右の前輪WFL,WFRからエンジン3に急激に大きな負荷が作用するのを防止でき、エンジンストールを発生させることなく、車両Vを発進させることができる。したがって、車両Vの発進用の発進クラッチが不要になる。
また、ENG発進モード中、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように制御されるとともに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御される。この要求トルクTREQは、車両Vに要求されるトルクであり、算出された車速と検出されたアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。以上により、ENG発進モード中、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、第3回転機回転数NM3は、エンジン回転数NEに応じて制御される。以下、この場合における第1〜第3の回転機11〜31の制御について、具体的に説明する。
上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、両者を代表して、左前輪回転数NWFLを用いると、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと共線関係にあるため、次式(39)が成立するように制御される。
NMF1=NMF2=NWFL ……(39)
また、図26から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、次式(40)で表される。
(β・G1+G1+1+α)TSE1+(β・G1+G1+1)TWLT
+(β・G1+G1)T2T+β・G1・TWRT=0 ……(40)
この場合、前述したように、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、次式(41)が得られる。
TWLT=TWRT=TREQ/2 ……(41)
また、第2リングギヤ伝達トルクTRG2が第2メンバに伝達されることと、第2サンギヤS2に第3回転機発電トルクTG3が伝達されることから、第2メンバ伝達トルクT2Tは次式(42)で表される。
T2T=−TRG2=−G2・TG3 ……(42)
これらの式(40)〜(42)から、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(43)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(43)が成立するように制御される。
TSE1=-{(2・β・G1+G1+1)TREQ/2-(β・G1+G1)G2・TG3}/(β・G1+G1+1+α)
……(43)
さらに、図26から明らかなように、第2駆動用等価トルクTSE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、次式(44)で表される。
(α+1+G1+β・G1)TSE2+(α+1+G1)TWRT
+(α+1)T2T+α・TWLT=0 ……(44)
上記の式(41)、(42)および(44)から、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(45)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(45)が成立するように制御される。
TSE2=-{(2・α+1+G1)TREQ/2-(α+1)G2・TG3}/(α+1+G1+β・G1) ……(45)
また、第2リングギヤR2の回転数が左前輪回転数NWFLと、第2キャリアC2の回転数がエンジン回転数NEと、第2サンギヤS2の回転数が第3回転機回転数NM3と、それぞれ等しいことから、第3回転機回転数NM3は次式(46)で表される。したがって、第3回転機回転数NM3は、この式(46)が成立するように制御される。
NM3=(G2+1)NE−G2・NWFL ……(46)
なお、ENG発進モード中、車両Vの緩発進時や下り坂での発進時には、要求トルクTREQが小さいため、第3回転機31で発電した電力の一部を第1および第2の回転機11,21に供給し、残りをバッテリ44に充電する。一方、車両Vの急発進時や上り坂での発進時には、要求トルクTREQが大きいため、第3回転機31で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する。
・ENG直進モード
このENG直進モードは、エンジン3の動力を用いて、車両Vを前方に直進させる動作モードであり、上述したENG発進モードや、後述するEV走行中ENG始動モードに続いて選択される。ENG直進モードでは、通常直進モード、充電直進モードおよびアシスト直進モードが、要求動力に応じて選択される。この要求動力は、前述した要求トルクTREQと車速によって定まるものである。以下、これらの運転モードについて、通常直進モードから順に説明する。
・通常直進モード
通常直進モードは、要求動力が所定の最良燃費範囲(エンジン3の最良な燃費が得られる動力の範囲)内にあるときに選択される。また、通常直進モードでは、エンジン3のスロットル弁や燃料噴射弁を制御することによって、エンジン3の動力を要求動力になるように制御する。さらに、ENG発進モードと同様、エンジン3から第3回転機31に伝達される動力の一部を用いて発電を行うとともに、発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。
通常直進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図27のように表される。同図から明らかなように、エンジン3の出力トルク(以下「エンジントルク」という)TENGは、第2キャリアC2にすべて伝達され、さらに、第2キャリアC2に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第2リングギヤR2に伝達される。換言すれば、エンジントルクTENGがすべて、第3回転機31と第2リングギヤR2に分配される。エンジン3から第2リングギヤR2に伝達された第2リングギヤ伝達トルクTRG2は、第2メンバに伝達される。また、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、ENG発進モードと同様、エンジン3から上記のように第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
さらに、通常直進モードでは、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。この目標エンジン回転数NEOBJは、算出された車速および要求トルクTREQに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップでは、目標エンジン回転数NEOBJは、エンジン3の最良の燃費が得られるような値に設定されている。また、第1〜第3の回転機11〜31の制御によって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和(以下「左右の前輪伝達動力」という)は、エンジン3の動力と等しくなる。
この場合、第1〜第3の回転機11〜31と第2遊星歯車装置PS2は、無段変速装置として機能し、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達する。以下、第1〜第3の回転機11〜31の制御について、具体的に説明する。
通常直進モードでは、ENG発進モードと同様、上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、両者を代表して、左前輪回転数NWFLを用いると、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、前記式(39)が成立するように制御される。
また、図27から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。さらに、ENG発進モードと同様、前述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(41)が得られる。また、第2リングギヤ伝達トルクTRG2が第2メンバに伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2に分配されることから、第2メンバ伝達トルクT2Tは次式(47)で表される。
T2T=−TRG2=G2・TENG/(1+G2) ……(47)
また、エンジン3の動力と左右の前輪伝達動力が互いに等しいので、エンジントルクTENGおよび目標エンジン回転数NEOBJと、要求トルクTREQおよび左前輪回転数NWFLの関係は、次式(48)で表される。
TENG=−TREQ・NWFL/NEOBJ ……(48)
これらの式(40)、(41)、(47)および(48)から、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(49)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(49)が成立するように制御される。
TSE1=-TREQ{(2・β・G1+G1+1)/2-(β・G1+G1)G2・NWFL/(1+G2)NEOBJ}
/(β・G1+G1+1+α) ……(49)
さらに、図27から明らかなように、第2駆動用等価トルクTSE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(44)で表される。上記の式(41)、(44)、(47)および(48)から、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(50)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(50)が成立するように制御される。
TSE2=-TREQ{(2・α+1+G1)/2-(α+1)G2・NWFL/(1+G2)NEOBJ}/(α+1+G1+β・G1)
……(50)
また、第2リングギヤR2の回転数が左前輪回転数NWFLと、第2キャリアC2の回転数がエンジン回転数NEと、第2サンギヤS2の回転数が第3回転機回転数NM3と、それぞれ等しいことと、上述したようにエンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3回転機回転数NM3は次式(51)で表される。したがって、第3回転機回転数NM3は、この式(51)が成立するように制御される。
NM3=(G2+1)NEOBJ−G2・NWFL ……(51)
さらに、エンジントルクTENGがすべて、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2に分配されることから、第3回転機発電トルクTG3とエンジントルクTENGの関係は、次式(52)で表される。
TG3=−TENG/(1+G2) ……(52)
この式(52)と上記の式(48)から、第3回転機発電トルクTG3は次式(53)で表される。したがって、第3回転機31で発電する電力は、この式(53)が成立するように制御される。
TG3=TREQ・NWFL/(1+G2)NEOBJ ……(53)
以上の第1〜第3の回転機11〜31の制御により、左右の前輪回転数NWFL,NWFRに対して、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように制御され、ひいては、エンジン3の動力が無段階に変速され、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜31と第2遊星歯車装置PS2による増速度合が大きいほど、前記式(39)および(51)から明らかなように、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、より高速側に制御されるとともに、第3回転回転数NM3はより低速側に制御される。また、前記式(49)および(50)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2は、より小さな値に制御される。以上により、図27に一点鎖線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に上昇し、エンジン3の動力が無段階に増速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
上記とは逆に、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜31と第2遊星歯車装置PS2による減速度合が大きいほど、前記式(39)および(51)から明らかなように、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、より低速側に制御されるとともに、第3回転回転数NM3はより高速側に制御される。また、前記式(49)および(50)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2は、より大きな値に制御される。以上により、図27に破線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に低下し、エンジン3の動力が無段階に減速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
なお、上述した第1〜第3の回転機11〜31と第2遊星歯車装置PS2を用いた変速動作は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJによって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NM3=(G2+1)NEOBJ−G2・NWFL>0で、NEOBJ>G2・NWFL/(G2+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<G2・NWFL/(G2+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJによって定まるロータ33の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力を第3回転機31に供給し、ロータ33を逆転させる。この場合にも、第1および第2の回転機11,21で発電する電力や、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2、第3回転機回転数NM3を制御することによって、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。この場合、図27から明らかなように、エンジン3の動力を、より大きく増速した状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。
・充電直進モード
この充電直進モードは、次の条件(a)および(b)が成立しているときに選択される。
(a)算出されたバッテリ44の充電状態が第1所定値よりも小さいとき
(b)前述した要求動力が最良燃費範囲よりも小さい側にあるとき
これにより、充電直進モードは、バッテリ44の電力が比較的小さく、過充電にならないときで、かつ、要求動力が、エンジン3の最良な燃費が得られる動力(以下「最良燃費動力」という)よりも小さいときに選択される。以下、充電直進モードにおける動作について、通常直進モードと異なる点を中心に説明する。
充電直進モード中、エンジン3の動力を、要求動力よりも大きな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行い、発電した電力の一部をバッテリ44に充電するとともに、残りを第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電される。また、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、通常直進モードと同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。この目標エンジントルクTEOBJは、最良燃費動力を目標エンジン回転数NEOBJで除算した値である。
以上により、充電直進モード中、左右の前輪伝達動力(左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和)は、要求動力と等しくなるとともに、この左右の前輪伝達動力と、バッテリ44に充電される電力(エネルギ)との和は、エンジン3の動力と等しくなる。また、充電直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図27と同様である。
充電直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、通常直進モードと同様、エンジントルクTENGがすべて、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2に分配されることから、第3回転機発電トルクTG3とエンジントルクTENGの関係は、前記式(52)で表される。このことと、上述したようにエンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機発電トルクTG3は、次式(54)で表される。したがって、第3回転機31で発電する電力は、この式(54)が成立するように制御される。
TG3=−TEOBJ/(1+G2) ……(54)
また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3回転機回転数NM3は、前記式(51)が成立するように制御される。
さらに、バッテリ44の充電に用いられるトルクを充電トルクTGとすると、第3回転機31で発電した電力の一部を充電し、残りを第1および第2の回転機11,21に供給することから、次式(55)が得られる。
(TG3−TG)NM3=−(TSE1+TSE2)NWFL ……(55)
また、通常直進モードと同様、図27に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTを要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、次式(56)が成立する。
TSE1+TSE2=−TREQ−T2T ……(56)
さらに、この場合にも、第2リングギヤ伝達トルクTRG2が第2メンバに伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2に分配されることから、第2メンバ伝達トルクT2Tは前記式(47)で表される。このことと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第2メンバ伝達トルクT2Tは、次式(57)で表される。また、これらの式(56)および(57)から、次式(58)が得られる。
T2T=−TRG2=G2・TEOBJ/(1+G2) ……(57)
TSE1+TSE2=−TREQ−G2・TEOBJ/(1+G2) ……(58)
また、以上の式(51)、(54)、(55)および(58)から、充電トルクTGは次式(59)で表される。したがって、バッテリ44に充電される電力は、この式(59)が成立するように制御される。
TG=−(TREQ・NWFL+TEOBJ・NEOBJ)
/{(G2+1)NEOBJ−G2・NWFL} ……(59)
また、この場合にも、図27に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することから、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。この式(40)と、第2メンバ伝達トルクT2Tに関する上記の式(57)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は、次式(60)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(60)が成立するように制御される。
TSE1=-{(2・β・G1+G1+1)TREQ/2+(β・G1+G1)G2・TEOBJ/(1+G2)}/(β・G1+G1+1+α)
……(60)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(44)で表される。この式(44)と、第2メンバ伝達トルクT2Tに関する式(57)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(61)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(61)が成立するように制御される。また、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。
TSE2=-{(2・α+1+G1)TREQ/2+(α+1)G2・TEOBJ/(1+G2)}/(α+1+G1+β・G1)
……(61)
なお、上述した充電直進モード中における第1〜第3の回転機11〜31の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJによって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NM3=(G2+1)NEOBJ−G2・NWFL>0で、NEOBJ>G2・NWFL/(G2+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<G2・NWFL/(G2+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJによって定まるロータ33の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部をバッテリ44に充電し、残りを第3回転機31に供給し、ロータ33を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電されるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・アシスト直進モード
このアシスト直進モードは、次の条件(c)および(d)が成立しているときに選択される。
(c)バッテリ44の充電状態が第2所定値(<第1所定値)よりも大きいとき
(d)要求動力が最良燃費範囲よりも大きい側にあるとき
これにより、アシスト直進モードは、バッテリ44の電力が十分にあり、過放電にならないときで、かつ、要求動力がエンジン3の最良燃費動力よりも大きいときに選択される。以下、アシスト直進モードにおける動作について、通常直進モードと異なる点を中心に説明する。
アシスト直進モード中、エンジン3の動力を、要求動力よりも小さな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力に加え、バッテリ44の電力を、第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給によって補われる。また、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、アシスト直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、バッテリ44からの電力(エネルギ)とエンジン3の動力の和と等しくなる。また、アシスト直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図27と同様である。
アシスト直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、充電直進モードと同様、第3回転機発電トルクTG3とエンジントルクTENGの関係が、前記式(52)で表されることと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機31で発電する電力は、前記式(54)が成立するように制御される。また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3回転機回転数NM3は、前記式(51)が成立するように制御される。
また、アシスト直進モード中、充電直進モードと同様、図27に示すようなトルクの関係が成立し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御する。以上から、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2に関する前記式(60)および(61)がそれぞれ成立するように、制御される。また、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。
さらに、要求トルクTREQのうち、バッテリ44からの電力供給によるアシストトルクに対応する分を、アシスト対応トルクTREQ_Aとし、エンジントルクTENGに対応する分を、エンジン対応トルクTREQ_0とすると、これらのトルクの間に、次式(62)が成立する。
TREQ=TREQ_0+TREQ_A ……(62)
また、第3回転機31で発電した電力を第1および第2の回転機11,12に供給することで第1および第2のステータ13,23で発生するトルクをそれぞれ、第1トルクTSE1_0および第2トルクTSE2_0とし、バッテリ44からの電力供給により第1および第2のステータ13,23で発生するトルクをそれぞれ、第1アシストトルクTA1および第2アシストトルクTA2とする。第1駆動用等価トルクTSE1、第1トルクTSE1_0および第1アシストトルクTA1の間に、次式(63)が成立するとともに、第2駆動用等価トルクTSE2、第2トルクTSE2_0および第2アシストトルクTA2の間に、次式(64)が成立する。
TSE1=TSE1_0+TA1 ……(63)
TSE2=TSE2_0+TA2 ……(64)
さらに、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(60)から明らかなように、第1トルクTSE1_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(65)が成立する。また、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(61)から明らかなように、第2トルクTM2_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(66)が成立する。
TSE1_0=-{(2・β・G1+G1+1)TREQ_0/2+(β・G1+G1)G2・TEOBJ/(1+G2)}
/(β・G1+G1+1+α) ……(65)
TSE2_0=-{(2・α+1+G1)TREQ_0/2+(α+1)G2・TEOBJ/(1+G2)}/(α+1+G1+β・G1)
……(66)
以上の式(60)、(62)、(63)および(65)から、次式(67)が得られるとともに、式(61)、(62)、(64)および(66)から、次式(68)が得られる。また、アシスト対応トルクTREQ_Aは、次式(69)で表される。
TA1=-(2・β・G1+G1+1)TREQ_A/2(β・G1+G1+1+α) ……(67)
TA2=-(2・α+1+G1)TREQ_A/2(β・G1+G1+1+α) ……(68)
TREQ_A=TREQ+TEOBJ・NEOBJ/NWFL ……(69)
上記の式(67)および(69)から、第1アシストトルクTA1は、次式(70)で表され、式(68)および(69)から、第2アシストトルクTA2は、次式(71)で表される。したがって、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、これらの式(70)および(71)がそれぞれ成立するように制御される。
TA1=-(2・β・G1+G1+1)(TREQ+TEOBJ・NEOBJ/NWFL)/2(β・G1+G1+1+α)
……(70)
TA2=-(2・α+1+G1)(TREQ+TEOBJ・NEOBJ/NWFL)/2(β・G1+G1+1+α) ……(71)
なお、上述したアシスト直進モード中における第1〜第3の回転機11〜31の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJによって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NM3=(G2+1)NEOBJ−G2・NWFL>0で、NEOBJ>G2・NWFL/(G2+1)が成立している場合に行われる。
一方、NEOBJ<G2・NWFL/(G2+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJによって定まるロータ33の回転方向が逆転方向の場合において、要求トルクTREQが小さいときには、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力とバッテリ44の電力の双方を、第3回転機31に供給し、ロータ33を逆転させる。また、要求トルクTREQが大きいときには、第1〜第3の回転機11〜31に電力を供給し、第1および第2の回転磁界を正転させるとともに、ロータ33を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44からの電力供給によって補われるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・ENG旋回モード
このENG旋回モードは、エンジン3の動力を用いた車両Vの旋回中に、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させることによって、旋回アシストを行う動作モードである。なお、車両Vの旋回中か否かの判定は、操舵角θstおよびヨーレートYに応じて行われる。ENG旋回モードには、左右の前輪WFL,WFRに、車両Vの右旋回中に小さな旋回アシスト力を作用させる第1右旋回アシストモードと、大きな旋回アシスト力を作用させる第2右旋回アシストモードが含まれる。まず、第1右旋回アシストモードについて説明する。
・第1右旋回アシストモード
この第1右旋回アシストモード中、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。このようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。また、これらの左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQは、車速、アクセル開度AP、操舵角θstおよびヨーレートYに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップでは、基本的には、左前輪要求トルクTLREQは、右前輪要求トルクTRREQよりも大きな値に設定されている。
以上により、第1右旋回アシストモード中、左前輪伝達トルクTWLTが右前輪伝達トルクTWRTよりも大きくなり、その結果、小さな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左右の前輪伝達動力が要求動力になり、この場合における要求動力は、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まるものである。
以下、第1右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図28のように表される。同図に示すように、通常、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的大きく、それにより、両者の関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的低いことと、第2リングギヤR2の回転数がエンジン回転数NEよりも高くなることによって、両者の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1および第3の回転機11,31に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、ロータ33を逆転させる。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行うとともに、発電した電力を第1および第3の回転機11,31にさらに供給する。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図28のように表される。
図28から明らかなように、エンジントルクTENGは、第2キャリアC2に伝達され、第2キャリアC2に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機トルクTM3を反力として、第2リングギヤR2に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。すなわち、エンジン3の動力と第3回転機31の動力は、合成され、第2メンバに伝達される。その結果、第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24が正転する。また、第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転磁界が逆転し、第2発電用等価トルクTGE2は、逆転している第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を低下させるように作用する。
さらに、第1駆動用等価トルクTSE1と、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tと、第2発電用等価トルクTGE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合、図28から明らかなように、第1磁界回転数NMF1と、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、次式(72)で表される。したがって、この式(72)が成立するように、第1磁界回転数NMF1は制御される。
NMF1={(α+1+G1)NWFL−α・NWFR}/(1+G1)
……(72)
また、図28から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。それに加え、この場合、充電直進モードと同様、第2メンバ伝達トルクT2Tが前記式(57)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(73)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(73)が成立するように制御される。
TSE1=-{(β・G1+G1+1)TLREQ+(β・G1+G1)G2・TEOBJ/(1+G2)+β・G1・TRREQ}
/(β・G1+G1+1+α) ……(73)
さらに、図28から明らかなように、第2磁界回転数NMF2と左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、次式(74)で表される。したがって、第2磁界回転数NMF2は、この式(74)が成立するように制御される。
NMF2={(β・G1+1+G1)NWFR−β・G1・NWFL}
/(1+G1) ……(74)
また、図28から明らかなように、第2発電用等価トルクTGE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、次式(75)で表される。
(α+1+G1+β・G1)TGE2+(α+1+G1)TWRT
+(α+1)T2T+α・TWLT=0 ……(75)
この式(75)と、第2メンバ伝達トルクT2Tが式(57)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御することから、第2発電用等価トルクTGE2は、次式(76)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(76)が成立するように制御される。
TGE2=-{(α+1+G1)TRREQ+(α+1)G2・TEOBJ/(1+G2)+α・TLREQ}/(α+1+G1+β・G1)
……(76)
さらに、図28から明らかなように、第3回転機トルクTM3とエンジントルクTENGの関係は、次式(77)で表される。この場合、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機トルクTM3は次式(78)で表される。したがって、第3回転機31に供給する電力は、この式(78)が成立するように制御される。さらに、第3回転機回転数NM3は、通常直進モードと同様、前記式(51)が成立するように制御される。
TM3=−TENG/(1+G2) ……(77)
TM3=−TEOBJ/(1+G2) ……(78)
また、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21に電力を供給し、第2回転磁界を正転させるとともに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(76)において第2発電用等価トルクTGE2を第2駆動用等価トルクTSE2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第1右旋回アシストモード中でかつ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に(第2回転磁界が正転する場合には、第1および第2の回転機11,21に)供給する。この場合、第3回転機31で発電する電力は、第3回転機発電トルクTG3に関する前記式(54)が成立するように制御される。
次に、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図29のように表される。同図に示すように、この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的小さいため、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的高いことによって、第2リングギヤR2とエンジン回転数NEによって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、基本的には、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。さらに、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力が、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まる要求動力に対して余るときには、その余剰分は、第3回転機31での発電により電力としてバッテリ44に充電されることで、消費される。逆に、不足するときには、その不足分は、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給することで、補われる。以上により、左右の前輪伝達動力は、要求動力になるように制御される。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図29のように表される。また、この場合における各種の回転要素におけるトルク(動力)の伝達は、図29と前述した図27との比較から明らかなように、通常直進モードの場合と同様に行われ、それにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、図29と前述した低車速走行中の図28との比較から明らかなように、第1磁界回転数NMF1は、前記式(72)が成立するように制御されるとともに、第1回転機11に供給する電力は、第1駆動用等価トルクTSE1に関する前記式(73)が成立するように制御される。
また、第2磁界回転数NMF2は、前記式(74)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(76)における第2発電用等価トルクTGE2を第2駆動用等価トルクTSE2に置き換えた次式(79)が成立するように制御される。
TSE2=-{(α+1+G1)TRREQ+(α+1)G2・TEOBJ/(1+G2)+α・TLREQ}/(α+1+G1+β・G1)
……(79)
また、第3回転機回転数NM3は、前記式(51)が成立するように制御されるとともに、第3回転機31で発電する電力は、第3回転機発電トルクTG3に関する前記式(54)が成立するように制御される。
以上の第1〜第3の回転機11〜31の制御において、エンジン3の動力の一部を用いて第3回転機31で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する場合には、エンジン3の動力が、第1〜第3の回転機11〜31、第1および第2の遊星歯車装置PS1,PS2を介して、左右の前輪WFL,WFRに分配され、左前輪WFLに分配されるエンジン3の動力は、右前輪WFRのそれよりも大きくなる。
・第2右旋回アシストモード
この第2右旋回アシストモード中、左右の前輪WFL,WFRの間に大きなトルク差を発生させ、大きな旋回アシスト力を生じさせるために、第1右旋回アシストモードとは異なり、右前輪WFRには、駆動力を作用させずに、制動力を作用させる。また、基本的には、第1右旋回アシストモードと同様、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。
さらに、第2右旋回アシストモード中、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左前輪伝達トルクTWLTを前述した左前輪要求トルクTLREQになるように制御し、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。また、この右前輪要求制動トルクBRREQは、車速、アクセル開度AP、操舵角θstおよびヨーレートYに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。
以上により、第2右旋回アシストモード中、左前輪WFLには駆動力が、右前輪WFRには制動力が、それぞれ作用し、その結果、大きな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左前輪WFLに伝達される動力と、右前輪WFRに作用する制動力との差が、要求動力になる。
以下、第2右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図30のように表される。同図に示すように、前述した図28の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第2リングギヤR2の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1〜第3の回転機11〜31に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第2回転磁界およびロータ33をいずれも逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図30のように表される。同図において、TWRは、右前輪WFLから受けるトルク(以下「右前輪トルク」という)である。
図30から明らかなように、前述した図28の場合と同様、エンジントルクTENGは、第2キャリアC2に伝達され、第2キャリアC2に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機トルクTM3を反力として、第2リングギヤR2に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。すなわち、エンジン3の動力と第3回転機31の動力は、合成され、第2メンバに伝達される。また、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2駆動用等価トルクTSE2は、左前輪WFLから第1メンバに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2と、第3回転機回転数NM3は、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(72)、(74)および(51)がそれぞれ成立するように制御される。また、第3回転機31に供給する電力も、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(78)が成立するように制御される。
さらに、図30から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左前輪伝達トルクTWLTと、右前輪トルクTWRと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、次式(80)で表される。
(β・G1+G1+1+α)TSE1+(β・G1+G1+1)TWLT
+(β・G1+G1)T2T+β・G1・TWR=0 ……(80)
この場合、上述したように、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御するとともに、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御する。また、右前輪WFRから第3メンバに右前輪トルクTWRが伝達されており、そのことは、第3メンバから右前輪WFRに制動力が作用していることと同じである。さらに、第2メンバ伝達トルクT2Tは、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(57)で表される。以上のことと、上記の式(80)から、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(81)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(81)が成立するように制御される。
TSE1=-{(β・G1+G1+1)TLREQ+β・G1・BRREQ+(β・G1+G1)G2・TEOBJ/(1+G2)}
/(β・G1+G1+1+α) ……(81)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(82)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(82)が成立するように制御される。
TSE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・TLREQ+(α+1)G2・TEOBJ/(1+G2)}/(α+1+G1+β・G1)
……(82)
また、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第3の回転機11,31に供給する。この場合、第2回転機21で発電する電力は、上記の式(82)における第2駆動用等価トルクTSE2を第2発電用等価トルクTGE2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に(第2回転磁界が正転する場合には、第1回転機11のみに)供給する。この場合、第3回転機31で発電する電力は、前記式(54)が成立するように制御される。
次に、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図31のように表される。同図に示すように、高車速走行中における右旋回時、前述した図29の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第2リングギヤR2の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行う。さらに、第2および第3の回転機21,31で発電した電力を、基本的には、第1回転機11に供給し、第1回転磁界を正転させる。また、この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図31のように表される。
図31から明らかなように、前述した図27に示す通常直進モードの場合と同様、エンジントルクTENGは、第2キャリアC2に伝達され、第2キャリアC2に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第2リングギヤR2に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。すなわち、エンジン3の動力は、第3回転機31と第2メンバに分配される。その結果、第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24が正転する。また、第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転磁界が正転し、第2発電用等価トルクTGE2は、正転している第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を低下させるように作用する。
さらに、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。また、第2発電用等価トルクTGE2は、左前輪WFLから第1メンバに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合、図31と前述した図30との比較から明らかなように、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2と、第3回転機回転数NM3は、前記式(72)、(74)および(51)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1回転機11に供給する電力は、第1駆動用等価トルクTSE1に関する前記式(81)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21で発電する電力は、前記式(82)における第2駆動用等価トルクTSE2を第2発電用等価トルクTGE2に置き換えた次式(83)が成立するように、制御される。また、第3回転機31で発電する電力は、前記式(54)が成立するように制御される。
TGE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・TLREQ+(α+1)G2・TEOBJ/(1+G2)}/(α+1+G1+β・G1)
……(83)
さらに、前述したように、第2右旋回アシストモード中には、左前輪WFLに駆動力を作用させるとともに、右前輪WFRに制動力を作用させる。このため、左前輪要求トルクTLREQが比較的大きく、左前輪WFLに作用する駆動力が大きい場合には、車両Vがオーバーステア状態になるおそれがあり、これを回避するために、第2右旋回アシストモードによる運転は実行されない。
一方、車両Vの左旋回中には、左旋回アシスト力を生じさせる第1および第2の左旋回アシストモードが選択される。これらの第1および第2の左旋回アシストモードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、上述した第1および第2の右旋回アシストモードとそれぞれ同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。なお、第1および第2の左右の旋回アシストモード中、バッテリ44の充電・放電が行われる場合があるため、各モードの選択の可否は、バッテリ44の過充電・過放電を防止するために、バッテリ44の充電状態に応じて決定される。
・ENG後進モード
このENG後進モードは、エンジン3の運転中に車両Vを後進させる動作モードである。ENG後進モード中、基本的には、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを後進させる。ENG後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図32のように表される。この場合、エンジン3の動力を増大させるとともに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、第3回転機31で発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、第1および第2の回転磁界を逆転させる。これにより、図32から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪WFL,WFRが駆動される。その結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが逆転方向に上昇し、ひいては、車両Vが後方に発進する。
また、ENG後進モード中、図32に示すように、第3回転機31のロータ33が正転するため、第2キャリアC2に伝達されたエンジントルクTENGの一部が、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第2リングギヤR2に伝達され、さらに、第2メンバに伝達され、ひいては、左右の前輪WFL,WFRを正転させるように作用する。このため、車両Vの後進を支障なく行うべく、第3回転機31で発電する電力は、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2が、第3回転機発電トルクTG3により定まる第2メンバ伝達トルクT2Tを上回るように、制御される。
さらに、この場合、第1および第2の回転機11,21は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように、制御される。具体的には、図32から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。また、上述した各種の要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第2メンバ伝達トルクT2Tは、前記式(42)で表される。
これらの式(40)および(42)と、上述したように、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は前記式(43)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(43)が成立するように制御される。同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は前記式(45)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(45)が成立するように制御される。
また、ENG後進モード中、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、車両Vが直進しているときには、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御され、車両Vが旋回しているときには、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)がそれぞれ成立するように、制御される。さらに、第3回転機回転数NM3は、前記式(46)が成立するように制御される。また、第3回転機31で発電した電力のみでは不足する場合には、バッテリ44の電力が、第1および第2の回転機11,21に供給される。
さらに、ENG後進モード中、第2遊星歯車装置PS2の機能から明らかなように、エンジン3に作用する負荷は、第3回転機発電トルクTG3が大きいほどより大きくなる。このため、停車中の車両Vを後方に発進させる場合には、エンジンストールを防止するために、第3回転機発電トルクTG3を漸増させる。
・減速運転モード
この減速運転モードは、車両Vの減速走行中、すなわち、アクセル開度APがほぼ値0で、車両Vが惰性で走行しているときに選択される動作モードである。減速運転モード中、エンジン3への燃料の供給を停止するフューエルカットが行われる。また、減速運転モード中には、車両Vの直進中に選択される「減速直進モード」と、車両Vの旋回中に選択される「減速旋回モード」が含まれる。まず、減速直進モードについて説明する。
・減速直進モード
この減速直進モード中、車両Vの慣性エネルギを用いて、第1〜第3の回転機11〜31で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。また、減速直進モードは、バッテリ44の過充電を防止するために、バッテリ44の充電状態が第1所定値よりも小さいときに選択される。減速直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図33のように表される。同図において、TWLは、左前輪WFLから受けるトルク(以下「左前輪トルク」という)である。
図33から明らかなように、減速直進モード中、第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2はそれぞれ、正転している第1および第2の回転磁界の第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2を低下させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2発電用等価トルクTGE2は、第2メンバに後述するように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第2メンバおよび第2遊星歯車装置PS2を介して、第3回転機31に伝達され、第2リングギヤR2の回転数とエンジン回転数NEの関係から、第3回転機31のロータ33は逆転する。このため、第3回転機発電トルクTG3は、第2キャリアC2に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第2リングギヤR2の回転数を低下させるように作用する。その結果、第2メンバには、第2リングギヤR2を介して、第3回転機発電トルクTG3に基づく制動トルクが作用する。
また、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、要求制動トルクBREQになるように制御する。これにより、車両Vを、その良好な直進性を確保しながら、減速させることができる。この要求制動トルクBREQは、検出されたブレーキペダル踏込量BPに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。
さらに、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31の制御によって、エンジン回転数NEを非常に低い所定回転数NELになるように制御する。これにより、クランク軸3aを回転させることによる損失が抑えられるので、第1〜第3の回転機11〜31で発電し、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。また、減速走行中、エンジン回転数NEが高いと、エンジン3の吸気・排気動作によって、多量の新気がエンジン3の排気管に導入され、それにより、排気管に設けられた排ガス浄化用の触媒(いずれも図示せず)の温度が急激に低下し、触媒が不活性状態になり、ひいては、減速直後のエンジン3の運転の再開時、排ガスを触媒で十分に浄化できなくなってしまう。これに対して、本実施形態によれば、減速直進モード中、上述したようにエンジン回転数NEを所定回転数NELになるように制御するので、排気管への新気の導入を抑えることができ、それにより、触媒が活性状態に維持され、したがって、減速直後のエンジン3の運転の再開時、排ガスを触媒で十分に浄化することができる。
減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。また、図33から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、次式(84)で表される。
(β・G1+G1+1+α)TGE1+(β・G1+G1+1)TWL
+(β・G1+G1)T2T+β・G1・TWR=0 ……(84)
また、上述した各種の回転要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第2メンバ伝達トルクT2Tと第3回転機発電トルクTG3の間の関係は、前記式(42)で表される。これらの式(42)および(84)と、上述したように左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ要求制動トルクBREQになるように制御することから、第1発電用等価トルクTGE1は次式(85)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(85)が成立するように制御される。
TGE1=-{(2・β・G1+G1+1)BREQ-(β・G1+G1)G2・TG3}/(β・G1+G1+1+α)
……(85)
同様に、第2発電用等価トルクTGE2は次式(86)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(86)が成立するように制御される。
TGE2=-{(2・α+1+G1)BREQ-(α+1)G2・TG3}/(α+1+G1+β・G1) ……(86)
さらに、前述したようにエンジン回転数NEを所定回転数NELになるように制御することから、第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3は、次式(87)が成立するように制御される。
NM3=(G2+1)NEL−G2・NWFL ……(87)
・減速旋回モード
この減速旋回モードには、車両Vの減速走行中における右旋回時に選択される「減速右旋回モード」と、左旋回時に選択される「減速左旋回モード」が含まれる。これらのモードの動作は互いに同様にして行われるので、以下、両者を代表して、減速右旋回モード中の動作についてのみ説明する。
・減速右旋回モード
この減速右旋回モード中、第1〜第3の回転機11〜31を後述するように制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに制動トルクを作用させるとともに、両者WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御する。この場合、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQはそれぞれ、車速、操舵角θst、ヨーレートYおよびブレーキペダル踏込量BPに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。これらのマップでは、同じ大きさの車速、操舵角θst、ヨーレートYおよびブレーキペダル踏込量BPに対し、左前輪要求制動トルクBLREQは、右前輪要求制動トルクBRREQよりも大きな値に設定されている。以上により、減速右旋回モード中、オーバーステアを抑制しながら、車両Vを安定的に旋回させることができる。
以下、減速右旋回モード中の動作について、まず、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図34のように表される。同図に示すように、この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第2リングギヤR2の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、逆転方向になる。このような場合には、第1および第3の回転機11,31で発電を行い、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第2回転機21に供給するとともに、第2回転磁界を逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図34のように表される。
図34から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1発電用等価トルクTGE1は、第1磁界回転数NMF1を低下させるように作用し、第2駆動用等価トルクTSE2は、第2磁界回転数NMF2を逆転方向に上昇させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、第2メンバに後述するように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、減速直進モードと同様、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、減速直進モードと同様、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第3回転機31に伝達され、第3回転機31のロータ33は逆転する。このため、第3回転機発電トルクTG3は、第2キャリアC2に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第2リングギヤR2の回転数を低下させるように作用する。その結果、第2メンバには、第2リングギヤR2を介して、第3回転機発電トルクTG3に基づく制動トルクが作用する。
減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合、図34と図33の比較から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(84)で表される。また、この場合にも、第2メンバ伝達トルクT2Tと第3回転機発電トルクTG3の関係は、前記式(42)で表される。これらの式(42)および(84)と、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御することから、第1発電用等価トルクTGE1は次式(88)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(88)が成立するように制御される。
TGE1=-{(β・G1+G1+1)BLREQ+β・G1・BRREQ-(β・G1+G1)G2・TG3}
/(β・G1+G1+1+α) ……(88)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(89)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(89)が成立するように制御される。また、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)がそれぞれ成立するように制御される。
TSE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・BLREQ-(β・G1+G1)G2・TG3}/(α+1+G1+β・G1)
……(89)
さらに、図34から明らかなように、第3回転機発電トルクTG3は、エンジン回転数NEを上昇させるように作用するので、第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3は、より大きな電力をバッテリ44に充電するとともに、触媒を活性状態に維持するために、エンジン回転数NEが高くならないように、制御される。この場合、第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3を、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
次に、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図35のように表される。同図に示すように、この場合には、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第2リングギヤR2の回転数の関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向は、正転方向になる。このような場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第3回転機31に供給するとともに、そのロータ33を正転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図35のように表される。
図35から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2はそれぞれ、正転している第1および第2の回転磁界の第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2を低下させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2発電用等価トルクTGE2は、第2メンバに後述するように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、この場合にも、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、第3回転機31のロータ33が正転するため、第3回転機トルクTM3は、第2キャリアC2に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第2リングギヤR2の回転数を低下させるように作用する。その結果、第2メンバには、第2リングギヤR2を介して、第3回転機トルクTM3に基づく制動トルクが作用する。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、図35と図34の比較から明らかなように、第1回転機11で発電する電力は、前記式(88)において第3回転機発電トルクTG3を第3回転機トルクTM3に置き換えた次式(90)が成立するように制御される。
TGE1=-{(β・G1+G1+1)BLREQ+β・G1・BRREQ-(β・G1+G1)G2・TM3}/(β・G1+G1+1+α)
……(90)
同様に、第2回転機21で発電する電力は、前記式(89)における第2駆動用等価トルクTSE2を第2発電用等価トルクTGE2に置き換えるとともに、第3回転機発電トルクTG3を第3回転機トルクTM3に置き換えた次式(91)が成立するように、制御される。さらに、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)がそれぞれ成立するように制御される。
TGE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・BLREQ-(β・G1+G1)G2・TM3}/(α+1+G1+β・G1)
……(91)
また、図35から明らかなように、第3回転機トルクTM3がエンジン回転数NEを上昇させるように作用することから、第3回転機31に供給する電力と、第3回転機回転数NM3は、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機31に供給する電力と、第3回転機回転数NM3を、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転機31のロータ33の回転方向が、逆転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、バッテリ44に充電する。この場合における第3回転機31で発電する電力と、第3回転機回転数NM3の制御は、上述した手法によって行われ、その詳細な説明については省略する。
・EV発進モード
このEV発進モードは、エンジン3の停止中に、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを前方に発進させ、走行させる動作モードである。また、EV発進モードは、バッテリ44の充電状態が前述した第2所定値よりも大きく、バッテリ44が過放電にならないようなときに、選択される。また、EV発進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図36のように表される。EV発進モード中、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給するとともに、第1および第2の回転磁界を正転させる。この場合、図36から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。
また、図36から明らかなように、EV発進モード中、第1および第2の回転機11,21の動力は、第2メンバを介して、第2リングギヤR2に伝達され、さらに、第2プラネタリギヤP2を介して、第2サンギヤS2に伝達される。この場合、エンジン3のフリクションが第3回転機31のそれよりも大きいため、上記のような動力の伝達に伴って、第2サンギヤS2が、第3回転機31のロータ33とともに逆転する。それに伴い、第3回転機31で発電が行われていなくても、第3回転機31のステータ32において回転磁界が発生し、その場合には、それによる回転抵抗(以下「第3磁界回転抵抗」という)DM3が、ロータ33を介して第2サンギヤS2に作用する。この場合、この第3磁界回転抵抗DM3を反力として、第1および第2の回転機11,21から第2リングギヤR2に伝達された第2リングギヤ伝達トルクTRG2が、第2キャリアC2を介してクランク軸3aに伝達され、エンジン回転数NEが上昇するおそれがある。
このため、EV発進モード中には、上記の第3磁界回転抵抗DM3を打ち消すように、第3回転機31に電力を供給し、ロータ33を逆転させる。この場合、第3回転機31に供給する電力は、第3回転機トルクTM3が第3磁界回転抵抗DM3と等しくなるように制御される。
また、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、車両Vの良好な直進性を得ることができる。この場合、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。
すなわち、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。また、図36から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの関係は、次式(92)で表される。
(β・G1+G1+1+α)TSE1+(β・G1+G1+1)TWLT
+β・G1・TWRT=0 ……(92)
上述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することと、この式(92)から、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(93)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(93)が成立するように制御される。
TSE1=−{(2・β・G1+G1+1)TREQ/2}
/(β・G1+G1+1+α) ……(93)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2と左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの関係は、次式(94)で表される。
(α+1+G1+β・G1)TSE2+(α+1+G1)TWRT
+α・TWLT=0 ……(94)
上述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することと、この式(94)から、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(95)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(95)が成立するように制御される。
TSE2=−{(2・α+1+G1)TREQ/2}
/(α+1+G1+β・G1) ……(95)
また、EV発進モード中で且つ車両Vの旋回時、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)がそれぞれ成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力はそれぞれ、基本的には、上記の式(93)および(95)に基づいて制御される。この場合、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、ENG旋回モードと同様、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させてもよい。
・EV走行中ENG始動モード
このEV走行中ENG始動モードは、EV発進モード中で車両Vが走行しているときに、エンジン3を始動する動作モードであり、バッテリ44の充電状態が前述した第1所定値よりも小さくなったときに、選択される。EV走行中ENG始動モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図37のように表される。以下、EV走行中ENG始動モードにおける動作について、EV発進モードと異なる点を中心に説明する。
図37に示すように、EV走行中ENG始動モードでは、EV発進モードと同様、第1および第2の回転機11,21から第3回転機31に動力が伝達され、ロータ33が逆転する。この動力を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。これにより、第1および第2の回転機11,21から第2リングギヤR2に伝達された第2リングギヤ伝達トルクTRG2は、第3回転機発電トルクTG3を反力として、第2キャリアC2に伝達され、さらに、クランク軸3aに伝達される。換言すれば、第2リングギヤR2に伝達された第1および第2の回転機11,21の動力が、クランク軸3aと第3回転機31に分配される。また、第3回転機回転数NM3を値0になるように制御し、それにより、第1および第2の回転機11,21から第3回転機31に分配される動力を減少させるとともに、クランク軸3aに分配される動力を増大させ、それにより、クランク軸3aが正転する。その状態で、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。
また、EV走行中ENG始動モードでは、前述した停車中ENG始動モードと同様、第3回転機回転数NM3を、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTになるように制御する。具体的には、第3回転機回転数NM3は、次式(96)が成立するように制御される。
NM3=(G2+1)NST−G2・NWFL ……(96)
この場合において、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが低いときには、第2リングギヤR2の回転数と始動時用回転数NSTの関係によって定まる第2サンギヤS2の回転方向が正転方向になる場合がある。その場合には、バッテリ44から第3回転機31に電力を供給するとともに、そのロータ33を正転させ、第3回転機回転数NM3を制御することによって、エンジン回転数NEを始動時用回転数NSTになるように制御する。したがって、EV走行中ENG始動モードでは、停車中ENG始動モードと同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
さらに、図37から明らかなように、第3回転機発電トルクTG3(または第3回転機トルクTM3)は、左右の前輪WFL,WFRに対し、制動トルクとして作用する。このため、EV走行中ENG始動モードでは、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの急減を防止し、良好なドライバビリティを確保するために、第3回転機31で発電する電力(第3回転機31に供給する電力)は、第3回転機発電トルクTG3(第3回転機トルクTM3)が漸増するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが直進しているときには、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。すなわち、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。
さらに、この場合、図37から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。また、第2メンバ伝達トルクT2Tと第3回転機発電トルクTG3の関係は、前記式(42)で表される。これらの式(40)および(42)と、EV発進モードと同様、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は、前記式(43)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(43)が成立するように制御される。同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は、前記式(45)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(45)が成立するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが旋回しているときには、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)がそれぞれ成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力はそれぞれ、基本的には、上記の式(43)および(45)に基づいて制御される。この場合、ENG旋回モードと同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに左右の旋回アシスト力を作用させてもよい。
・EV後進モード
このEV後進モードは、エンジン3の停止中に、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを後方に発進させ、走行させる動作モードである。また、EV後進モードは、EV発進モードと同様、バッテリ44の充電状態が前述した第2所定値よりも大きく、バッテリ44が過放電にならないようなときに、選択される。また、EV後進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図38のように表される。同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したEV発進モードを示す図36における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、EV後進モード中、第1〜第3の回転機11〜31の制御は、第1および第2の回転磁界を逆転させるとともに、ロータ33を正転させる以外は、EV発進モードと同様に行われる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、車両Vおよび左右の前輪WFL,WFRが、本発明における輸送機関および左右の被駆動部にそれぞれ相当し、エンジン3およびクランク軸3aが、本発明における原動機および出力部にそれぞれ相当する。また、永久磁石14a、コア15a、永久磁石24a、コア25a、およびロータ33が、本発明における第1磁石、第1軟磁性体、第2磁石、第2軟磁性体、および第5ロータに、それぞれ相当する。さらに、第1遊星歯車装置PS1が、本発明における第1差動装置に相当し、第1リングギヤR1、第1キャリアC1および第1サンギヤS1が、本発明における第1要素、第2要素および第3要素にそれぞれ相当する。また、第2遊星歯車装置PS2が、本発明における第2差動装置に相当し、第2リングギヤR2、第2キャリアC2および第2サンギヤS2が、本発明における第4要素、第5要素および第6要素にそれぞれ相当する。さらに、バッテリ44が、本発明における蓄電装置に相当する。
以上のように、本実施形態によれば、第1回転機11の第2ロータ15および第1リングギヤR1が、左前輪WFLに機械的に連結されており、第2回転機21の第4ロータ25および第1サンギヤS1が、右前輪WFRに機械的に連結されている。また、第1回転機11の第1ロータ14、第2回転機21の第3ロータ24、および第1キャリアC1が、第2リングギヤR2および第2キャリアC2を介して、エンジン3のクランク軸3aに機械的に連結されている。さらに、第3回転機31のロータ33が、第2サンギヤS2および第2キャリアC2を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、第1および第3の回転機11,31が互いに電気的に接続されており、第2および第3の回転機21,31が互いに電気的に接続されている。
さらに、図28〜図31を用いて説明したように、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させ、車両Vの左右の旋回アシストを行うことができる。この場合、左右の前輪WFL,WFRにそれぞれ連結された第1および第3のメンバ(第2ロータ15、第1リングギヤR1、第4ロータ25、第1サンギヤS1)が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の前輪WFL,WFRの回転(回転数・トルク)を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。また、図27などを用いて説明したように、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができ、エンジン回転数NEを、より良好な燃費が得られる目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するので、動力装置1の効率を高めることができる。
さらに、充電および放電可能なバッテリ44が、第1〜第3の回転機11〜31に電気的に接続されており、充電直進モードなどで説明したように、エンジン3の動力を最良燃費動力に制御するとともに、要求動力に対するエンジン3の動力の余剰分が、電力としてバッテリ44に充電される。また、アシスト直進モードなどで説明したように、要求動力に対するエンジン3の動力の不足分が、バッテリ44に充電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給することで補われる。以上により、エンジン3の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置1の効率をさらに高めることができる。
さらに、第1および第2の回転機11,21が一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有しているので、そのような遊星歯車装置および回転機を用いた場合と比較して、動力装置1の小型化を図ることができる。また、第1および第2の回転機1,21を作動させる上で、コア15a,25aから成る単一の軟磁性体列をそれぞれ用いればよいので、第1および第2の回転機11,21の構成を単純化でき、ひいては、動力装置1の構成の単純化とコストの削減を図ることができる。
さらに、第1および第2の回転機11,21において、第1および第2の極対数比α,βが値2.0にそれぞれ設定されている。これにより、前述した第1および第2の回転機11,21の機能から明らかなように、第1〜第4のロータ伝達トルクTR1〜TR4に対して、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2(第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2)を低減できる。これにより、第1および第2のステータ13,23や、第1および第2のPDU41,42の小型化を図ることができ、ひいては、動力装置1のさらなる小型化およびコストの削減を図ることができる。
次に、図39を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力装置1Aについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Aは、第1実施形態と比較して、第1および第2の回転機11,21に代えて、第1および第2の回転機70,80を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Aについて、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図39および図42に示すように、この第1回転機70は、2ロータタイプのものであり、特開2008−067592号公報や特開2008−132971号公報に開示された回転機と同様に構成されている。以下、その構成および動作について、簡単に説明する。第1回転機70は、第1ロータ71と、第1ロータ71に対向するように配置された第1ステータ72と、両者71,72の間に所定の間隔を存した状態で設けられた第2ロータ73とを備えている。第1ロータ71、第2ロータ73および第1ステータ72は、径方向に、内側からこの順で並んでいる。以下、図39および図42の左側を「左」、右側を「右」として説明する。
第1ロータ71は、2n個の永久磁石71aを有しており、これらの永久磁石71aは、リング状の取付部71bの外周面に取り付けられており、前述した回転軸4の周方向に等間隔で並んでいる。この取付部71bは、軟磁性体、例えば鉄で構成されており、その内周面が、回転軸4と一体の円板状のフランジ71cの外周面に、取り付けられている。以上により、永久磁石71aを含む第1ロータ71は、回転軸4を介して、前述した第1キャリアC1に機械的に直結されており、第1キャリアC1と一体に回転自在になっている。
また、図43に示すように、回転軸4を中心として、周方向に隣り合う各2つの永久磁石71aがなす中心角は、所定角度θである。また、永久磁石71aの極性は、周方向に隣り合う各2つについては互いに異なっている。以下、永久磁石71aの左側および右側の磁極をそれぞれ、「第1磁極」および「第2磁極」という。
第1ステータ72は、回転磁界を発生させるものであり、周方向に等間隔で並んだ3n個の電機子72aを有している。各電機子72aは、鉄芯72bと、鉄芯72bに集中巻きで巻回されたコイル72cなどで構成されている。鉄芯72bの内周面の軸線方向の中央部には、周方向に延びる溝72dが形成されている。3n個のコイル72cは、n組のU相、V相およびW相の3相コイルを構成している(図43参照)。また、電機子72aは、取付部72eを介して不動のケースCAに固定されている。
さらに、図40に示すように、第1ステータ72は、前述した第1PDU41を介してバッテリ44に電気的に接続されている。また、第1ステータ72は、バッテリ44から電力が供給されたとき、または、後述するように発電したときに、鉄芯72bの左右の端部に、互いに異なる極性の磁極がそれぞれ発生するように構成されている。これらの磁極の発生に伴って、第1ロータ71の左側(第1磁極側)の部分との間および右側(第2磁極側)の部分との間に、第1および第2の回転磁界が周方向に回転するようにそれぞれ発生する。以下、鉄芯72bの左右の端部に発生する磁極をそれぞれ、「第1回転磁極」「第2回転磁極」という。また、これらの第1および第2の回転磁極の数はそれぞれ、永久磁石71aの磁極の数と同じ、すなわち2nである。
第2ロータ73は、複数の第1コア73aおよび第2コア73bを有している。第1および第2のコア73a,73bはそれぞれ、周方向に等間隔で並んでおり、両者73a,73bの数はいずれも、永久磁石71aと同じ、すなわち2nに設定されている。各第1コア73aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したもので、軸線方向に永久磁石71aのほぼ半分の長さで延びている。各第2コア73bは、第1コア73aと同様に構成されている。
また、軸線方向において、第1コア73aは、第1ロータ71の左側(第1磁極側)の部分と第1ステータ72の左側(第1回転磁極側)の部分との間に配置され、第2コア73bは、第1ロータ71の右側(第2磁極側)の部分と第1ステータ72の右側(第2回転磁極側)の部分との間に配置されている。さらに、第2コア73bは、第1コア73aに対して周方向に互い違いに並んでおり、その中心が、第1コア73aの中心に対して、前述した所定角度θの1/2、ずれている(図43参照)。
また、第1および第2のコア73a,73bの左端部はそれぞれ、左駆動軸DSLと一体の円板状のフランジ73cの外端部に、軸線方向に若干延びる棒状の連結部73dを介して取り付けられている。これにより、第1および第2のコア73a,73bを含む第2ロータ73は、前述した左前輪WFLに機械的に連結されている。また、第1および第2のコア73a,73bの右端部はそれぞれ、ドーナツ板状のフランジ73eの外端部に、軸線方向に若干延びる棒状の連結部73fを介して取り付けられている。このフランジ73eは、前述した回転軸5の左端部に一体に設けられている。これにより、第1および第2のコア73a,73bを含む第2ロータ73は、回転軸5を介して、前述した第1リングギヤR1に機械的に直結されており、第1リングギヤR1と一体に回転自在になっている。
以上の構成の第1回転機70は、第1実施形態の第1回転機11と同様、一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有する装置とみなすことができる。以下、この点に関し、第1回転機70の動作に基づいて簡単に説明する。図43の構成は、それと等価のものとして、図44のように示すことができるため、以下、第1回転機70の動作を、永久磁石71a、電機子72a、第1および第2のコア73a,73bが、図44に示すように配置されているものとして説明する。
また、便宜上、第1および第2の回転磁界の動きを、それと等価の、永久磁石71aと同数の2n個の仮想の永久磁石(以下「仮想磁石」という)VMの物理的な動きに置き換えて、説明するものとする。さらに、仮想磁石VMの左側(第1磁極側)および右側(第2磁極側)の磁極をそれぞれ、第1および第2の回転磁極として、第1ロータ71の左側(第1磁極側)の部分との間および右側(第2磁極側)の部分との間にそれぞれ発生する回転磁界を、第1および第2の回転磁界として、説明するものとする。さらに、以下、永久磁石71aの左側の部分および右側の部分をそれぞれ、「第1磁石部」「第2磁石部」という。
まず、第1回転機70の動作として、第1ロータ71を回転不能にした状態で、第1ステータ72への電力供給により第1および第2の回転磁界を発生させた場合の動作について説明する。
図45(a)に示すように、各第1コア73aが各第1磁石部に対向するとともに、各第2コア73bが隣り合う各2つの第2磁石部の間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を、同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1回転磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2回転磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。
第1コア73aは、第1磁極および第1回転磁極によって磁化されるとともに、第1磁極、第1コア73aおよび第1回転磁極の間に、磁力線(以下「第1磁力線」という)L1が発生する。同様に、第2コア73bは、第2回転磁極および第2磁極によって磁化されるとともに、第2回転磁極、第2コア73bおよび第2磁極の間に、磁力線(以下「第2磁力線」という)L2が発生する。
図45(a)〜図46(c)に示すように、仮想磁石VMが回転するのに伴い、これらの第1および第2の磁力線L1,L2による磁力によって、第1および第2のコア73a,73bがそれぞれ、仮想磁石VMの回転方向、すなわち第1および第2の回転磁界の回転方向(以下「磁界回転方向」という)に駆動され、その結果、第2ロータ73が磁界回転方向に回転する。図47(a)および図47(b)はそれぞれ、図45(a)および図45(b)に示す状態において形成される磁気回路を示している。また、図45(a)〜図46(c)に示すように第1および第2のコア73a,73bが駆動される場合、第1磁力線L1により第1コア73aに作用する磁力は、徐々に弱くなり、第1コア73aを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に小さくなる。また、第2磁力線L2により第2コア73bに作用する磁力は、徐々に強くなり、第2コア73bを磁界回転方向に駆動する駆動力が、徐々に大きくなる。
そして、図46(c)に示す状態から、仮想磁石VMがさらに回転すると、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力によって、第1および第2のコア73a,73bが磁界回転方向に駆動され、第2ロータ73が磁界回転方向に回転する。その際、仮想磁石VMが図45(a)に示す位置まで回転する間、以上とは逆に、第1磁力線L1により第1コア73aに作用する磁力は強くなり、第1コア73aに作用する駆動力が大きくなる。逆に、第2磁力線L2により第2コア73bに作用する磁力は弱くなり、第2コア73bに作用する駆動力が小さくなる。
以上のように、仮想磁石VMの回転、すなわち第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1および第2のコア73a,73bにそれぞれ作用する駆動力が、交互に大きくなったり、小さくなったりする状態を繰り返しながら、第2ロータ73が磁界回転方向に回転する。この場合、第1および第2のコア73a,73bを介して伝達されるトルクをT73a,T73bとすると、第2ロータ73に伝達されるトルク(以下「第2ロータ伝達トルク」という)Tr2と、これら2つのトルクT73a,T73bとの関係は、概ね図48に示すものになる。同図に示すように、第2ロータ伝達トルクTr2は、上記のように変化する2つのトルクT73a,T73bを足し合わせたものとなり、ほぼ一定になる。
また、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力の作用によって、第1コア73aが、第1磁力線L1で結ばれた第1磁極と第1回転磁極の中間に位置し、かつ、第2コア73bが、第2磁力線L2で結ばれた第2磁極と第2回転磁極の中間に位置した状態を保ちながら、第2ロータ73が回転する。このため、第1および第2の回転磁界の回転数(以下「第1磁界回転数」という)Nmf1と、第1ロータ71の回転数(以下「第1ロータ回転数」という)Nr1と、第2ロータ73の回転数(以下「第2ロータ回転数」という)Nr2との間には一般に、次式(97)が成立する。この式(97)から明らかなように、第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2は、互いに共線関係にある。
Nr2=(Nmf1+Nr1)/2 ……(97)
以上から、上述した第1ロータ回転数Nr1が値0のときには、Nr2=Nmf1/2が成立し、このときの第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間の関係は、例えば図49(a)のように表される。上記の式(97)から明らかなように、図49(a)に示す速度共線図において、第1磁界回転数Nmf1を表す縦線と第2ロータ回転数Nr2を表す縦線との間の距離と、第1ロータ回転数Nr1を表す縦線と第2ロータ回転数Nr2を表す縦線との間の距離との比は、1:1である。このことは、第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間の関係を表す他の速度共線図についても同様である。
また、この場合、第2ロータ伝達トルクTr2は、第1ステータ72への供給電力および第1磁界回転数Nmf1と等価のトルクを第1駆動用等価トルクTse1とすると、この第1駆動用等価トルクTse1の2倍になる。すなわち、次式(98)が成立する。以上のように、第1ロータ71を回転不能にした状態で第1ステータ72に電力を供給した場合には、この電力はすべて、第2ロータ73に動力として伝達される。
Tr2=−2・Tse1 ……(98)
次に、第2ロータ73を回転不能にした状態で、第1ステータ72への電力供給により第1および第2の回転磁界を発生させた場合の動作について説明する。
この場合にも、図51(a)に示すように、各第1コア73aが各第1磁石部に対向するとともに、各第2コア73bが隣り合う各2つの第2磁石部の間に位置した状態から、第1および第2の回転磁界を同図の下方に回転させるように発生させる。その発生の開始時においては、各第1回転磁極の極性を、それに対向する各第1磁極の極性と異ならせるとともに、各第2回転磁極の極性をそれに対向する各第2磁極の極性と同じにする。
図51(a)〜図52(c)に示すように、仮想磁石VMが回転するのに伴い、第1コア73aと第1磁極の間の第1磁力線L1による磁力と、第2コア73bと第2磁極の間の第2磁力線L2による磁力によって、第1および第2の磁石部がそれぞれ、仮想磁石VMの回転方向、すなわち磁界回転方向と逆方向(図51の上方)に駆動され、ひいては、第1ロータ71が磁界回転方向と逆方向に回転する。この場合、第1および第2の回転磁界の回転に伴い、第1磁極と第1コア73aの間の第1磁力線L1による磁力と、第2コア73bと第2磁極の間の第2磁力線L2による磁力と、これらの磁力の差分に相当する磁力とが、永久磁石71aに、すなわち第1ロータ71に交互に作用し、それにより、第1ロータ71が磁界回転方向と逆方向に回転する。また、そのように磁力すなわち駆動力が第1ロータ71に交互に作用することによって、第1ロータ71に伝達されるトルク(以下「第1ロータ伝達トルク」という)Tr1は、ほぼ一定になる。
また、このときの第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間の関係は、Nr1=−Nmf1で表され、例えば図49(b)のように表される。このように、第1ロータ71は、第1および第2の回転磁界と同じ速度で逆方向に回転する。さらに、この場合、第1ロータ伝達トルクTr1は、第1駆動用等価トルクTse1と等しくなり、次式(99)が成立する。
Tr1=Tse1 ……(99)
また、第1回転機70では、第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2がいずれも値0でない場合、例えば、第1および/または第2のロータ71,73を動力により回転させた状態で、第1および第2の回転磁界を発生させた場合には、第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間に、前述した一般式(97)がそのまま成立し、三者間の速度関係は、例えば図50(a)のように表される。
また、第2ロータ73を動力により回転させるとともに、例えば第1ステータ72における相間短絡により第1磁界回転数Nmf1を値0に制御した場合には、第2ロータ73に入力された動力(エネルギ)は、第1ステータ72には伝達されず、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力を介して、第1ロータ71にすべて伝達される。同様に、第1ロータ71を動力により回転させるとともに、第1磁界回転数Nmf1を値0に制御した場合には、第1ロータ71に入力された動力(エネルギ)は、第1ステータ72には伝達されず、第1および第2の磁力線L1,L2による磁力を介して、第2ロータ73にすべて伝達される。
また、このときの第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間の関係は、Nr1=2・Nr2で表され、例えば図50(b)のように表される。また、第1および第2のロータ伝達トルクTr1,Tr2の間に、次式(100)が成立する。
Tr1=−Tr2/2 ……(100)
さらに、第1回転機70では、第1ステータ72への電力供給が行われていない場合でも、第1ステータ72に対して、第1ロータ71への動力の入力により永久磁石71aが回転したり、第2ロータ73への動力の入力により第1および第2のコア73a,73bが回転したときには、第1ステータ72において、誘導起電力が発生し、発電が行われる。この発電に伴って、第1および第2の回転磁界が発生した場合にも、第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間に、前記式(97)が成立する。また、発電した電力および第1磁界回転数Nmf1と等価のトルクを第1発電用等価トルクTge1とすると、この第1発電用等価トルクTge1と、第1および第2のロータ伝達トルクTr1,Tr2の間に、上記の式(98)および(99)のような関係が成立する。
また、式(97)で表されるような、第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間の関係は、遊星歯車装置のリングギヤおよびサンギヤの一方、他方、およびプラネタリギヤを支持するキャリアの回転数の関係に相当する。さらに、そのような関係が、第1ステータ72への電力供給時だけでなく、発電時にも同様に得られることから、第1回転機70は、第1実施形態の第1回転機11と同様、一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有する装置とみなすことができる。
ただし、第1実施形態の第1回転機11では、第1極対数比αの設定により、第1磁界回転数NMF1、第1および第2のロータ回転数NR1,NR2の間の関係と、第1駆動用等価トルクTSE1、第1および第2のロータ伝達トルクTR1,TR2の間の関係を自由に設定できる。これに対して、本実施形態の第1回転機70では、第1磁界回転数Nmf1、第1および第2のロータ回転数Nr1,Nr2の間の関係は、第1磁界回転数Nmf1と第2ロータ回転数Nr2の差、および第2ロータ回転数Nr2と第1ロータ回転数Nr1の差が互いに等しいという関係においてのみ成立する。また、第1駆動用等価トルクTse1(第1発電用等価トルクTge1)、第1および第2のロータ伝達トルクTr1,Tr2の間の関係は、Tse1(Tge1):Tr1:Tr2=1:1:2という関係においてのみ成立する。
また、ECU2は、第1PDU41を制御することによって、第1ステータ72に供給する電力と、電力の供給に伴って発生する第1および第2の回転磁界の第1磁界回転数Nmf1を制御する。さらに、ECU2は、第1PDU41を制御することによって、第1ステータ72で発電する電力と、発電に伴って発生する第1および第2の回転磁界の第1磁界回転数Nmf1を制御する。
また、第2回転機80は、第1回転機70と同様に構成されているので、その構成・動作について簡単に説明する。図39および図53に示すように、第2回転機80は、第3ロータ81と、第3ロータ81に対向するように配置された第2ステータ82と、両者81,82の間に所定の間隔を存した状態で設けられた第4ロータ83とを備えている。第3ロータ81は、第1回転機70の第1ロータ71と同様に構成されており、永久磁石81aや、取付部81b、フランジ81cを有している。この永久磁石81aの数や配置は、第1回転機70の永久磁石71aと同様であるので、その詳細な説明については省略する。また、フランジ81cは、回転軸4に一体に設けられており、それにより、永久磁石81aを含む第3ロータ81は、回転軸4を介して、第1ロータ71および第1キャリアC1に機械的に直結されており、両者71,C1と一体に回転自在になっている。
第2ステータ82は、第1回転機70の第1ステータ72と同様に構成されており、ケースCAに固定された電機子82aを有している。この電機子82aの数や構成、配置は、第1回転機70の電機子72aと同様であるので、その詳細な説明については省略する。また、第2ステータ82は、前述した第2PDU42を介してバッテリ44に電気的に接続されている。以上のように、第1回転機70の第1ステータ72と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されており、第2回転機80の第2ステータ82と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されている。さらに、第2ステータ82では、バッテリ44からの電力供給時・発電時に、第3ロータ81の左側の部分との間および右側の部分との間に、第3および第4の回転磁界が周方向に回転するようにそれぞれ発生する。
第4ロータ83は、第1回転機70の第2ロータ73と同様に構成されており、複数の第1コア83aおよび第2コア83bを有している。これらの第1および第2のコア83a,83bの数や構成、配置は、第1回転機70の第1および第2のコア73a,73bとそれぞれ同様であり、軸線方向において、第1コア83aは、第3ロータ81の左側の部分と第2ステータ82の左側の部分との間に配置され、第2コア83bは、第3ロータ81の右側の部分と第2ステータ82の右側の部分との間に配置されている。
また、第1および第2のコア83a,83bの左端部はそれぞれ、ドーナツ板状のフランジ83cや棒状の連結部83dを介して、前述した回転軸6の右端部に取り付けられている。これにより、第1および第2のコア83a,83bを含む第4ロータ83は、回転軸6を介して、前述した第1サンギヤS1に機械的に直結されており、第1サンギヤS1と一体に回転自在になっている。さらに、第1および第2のコア83a,83bの右端部はそれぞれ、円板状のフランジ83eや棒状の連結部83fを介して、前述した右駆動軸DSRに取り付けられている。これにより、第1および第2のコア83a,83bを含む第4ロータ83は、前述した右前輪WFRに機械的に連結されている。
以上のように、第2回転機80は、第1回転機70と同様に構成されているので、第1回転機70と同じ機能を有している。すなわち、第2ステータ82に供給された電力を動力に変換し、第3ロータ81や第4ロータ83から出力するとともに、第3ロータ81や第4ロータ83に入力された動力を電力に変換し、第2ステータ82から出力する。また、そのような電力および動力の入出力中、第3および第4の回転磁界と、第3および第4のロータ81,83が、前述した第1回転機70に関する式(97)に示すような回転数に関する共線関係を保ちながら回転する。
すなわち、第3および第4の回転磁界の回転数を第2磁界回転数Nmf2とし、第3および第4のロータ81,83の回転数をそれぞれ第3および第4のロータ回転数Nr3,Nr4とすると、これらの回転数Nmf2、Nr3およびNr4の間に、前記式(97)、図49および図50で表されるような関係が、第2ステータ82への電力供給時および発電時のいずれの場合にも成立する。また、第2ステータ82に供給された電力および第2磁界回転数Nmf2と等価のトルクを、第2駆動用等価トルクTse2とし、第2ステータ82で発電した電力および第2磁界回転数Nmf2と等価のトルクを、第2発電用等価トルクTge2とする。さらに、第3および第4のロータ81,83に伝達されるトルクをそれぞれ、第3ロータ伝達トルクTr3および第4ロータ伝達トルクTr4とする。これらの第2駆動用等価トルクTse2(第2発電用等価トルクTge2)、第3および第4のロータ伝達トルクTr3,Tr4の間に、前記式(98)〜(100)で表されるような関係が成立し、これらのトルクの比は、Tse2(Tge2):Tr3:Tr4=1:1:2で表される。
また、ECU2は、第2PDU42を制御することによって、第2ステータ82に供給する電力と、電力の供給に伴って発生する第3および第4の回転磁界の第2磁界回転数Nmf2を制御する。さらに、ECU2は、第2PDU42を制御することによって、第2ステータ82で発電する電力と、発電に伴って発生する第3および第4の回転磁界の第2磁界回転数Nmf2を制御する。
さらに、図41に示すように、ECU2には、第1、第2および第3の回転角センサ63,64,65が接続されており、これらのセンサ63〜65はそれぞれ、第1、第2および第4のロータ71,73,83の回転角度位置を検出するとともに、それらの検出信号をECU2に出力する。ECU2は、検出された第1、第2および第4のロータ71,73,83の回転角度位置に基づいて、第1、第2および第4のロータ回転数Nr1,Nr2,Nr4をそれぞれ算出する。また、第3ロータ81が第1ロータ71に直結されているため、ECU2は、検出された第1ロータ71の回転角度位置に基づいて、第3ロータ81の回転角度位置を算出するとともに、第3ロータ回転数Nr3を算出する。
以上のように、動力装置1Aでは、図39と前述した図2との比較から明らかなように、第1および第2の遊星歯車装置PS1,PS2とエンジン3の連結関係は、第1実施形態とまったく同じである。一方、第1実施形態と異なり、第1キャリアC1、第1および第3のロータ71,81が、互いに機械的に直結されるとともに、第2リングギヤR2に機械的に連結されており、第2リングギヤR2および第2キャリアC2を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、第2ロータ73および第1リングギヤR1が、互いに機械的に直結されるとともに、左前輪WFLに機械的に連結されており、第4ロータ83および第1サンギヤS1が、互いに機械的に直結されるとともに、右前輪WFRに機械的に連結されている。
以上の連結関係と、前述した第1および第2の回転機70,80の機能から、前述した各種のギヤによる変速を無視すれば、動力装置1Aにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図54のように表される。また、動力装置1Aの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。図54と前述した第1実施形態の動力装置1に関する図23との比較から明らかなように、これらの動作モードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、第1実施形態と同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。
なお、各種の動作モード中、第1〜第3の回転機70,80,31の制御は、前述した各種のセンサ51および55〜65からの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。この場合における制御は、前記式(38)〜(96)において、前述した第1実施形態における各種のパラメータNMF1、NMF2、TSE1、TSE2、TGE1、およびTGE2をそれぞれ、Nmf1、Nmf2、Tse1、Tse2、Tge1、およびTge2に、第1および第2の極対数比α,βを値1.0に、それぞれ置き換えて行われる。以上により、本実施形態によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、永久磁石71aが本発明における第1磁石に、第1および第2のコア73a,73bが本発明における第1軟磁性体に、それぞれ相当する。また、永久磁石81aが本発明における第2磁石に、第1および第2のコア83a,83bが本発明における第2軟磁性体に、それぞれ相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
なお、前述した第1および第2の実施形態では、第2サンギヤS2を第3回転機31のロータ33に直結するとともに、第2リングギヤR2を、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24、71,81に連結しているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、第2リングギヤR2をロータ33に直結(連結)するとともに、第2サンギヤS2を、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24、71,81に連結してもよい。また、第1および第2の実施形態では、第3回転機31は、3相ブラシレスDCモータであるが、各請求項で述べた機能を有するものであれば、これに限らず、例えば、他のタイプのDCモータや、ACモータでもよい。
さらに、第1および第2の実施形態では、本発明における第2差動装置は、シングルピニオンタイプの第2遊星歯車装置PS2であるが、請求項2で述べたような機能を有するものであれば、任意の装置で構成することが可能である。例えば、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置でもよい。あるいは、遊星歯車装置のギヤに代えて、表面間の摩擦によって動力を伝達する複数のローラを有し、遊星歯車装置と同等の機能を有するような装置でもよい。また、詳細な説明は省略するが、特開2008−39045に開示されるような複数の磁石や軟磁性体の組み合わせで構成された装置でもよい。さらに、第2遊星歯車装置PS2に代えて、歯数が互いに等しい第1および第2のサイドギヤと、両ギヤに噛み合う複数のピニオンギヤと、これらのピニオンギヤを回転自在に支持するデフケースを有するディファレンシャルギヤでもよい。
次に、図55を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力装置1Bについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Bは、第1実施形態と比較して、前述した第3回転機31および第2遊星歯車装置PS2に代えて、第3回転機91を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Bについて、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
第3回転機91は、前述した第1回転機11と同様に構成されているので、以下、その構成および動作について簡単に説明する。図55および図58に示すように、第3回転機91は、第3ステータ93と、第3ステータ93に対向するように設けられた第5ロータ94と、両者93,94の間に設けられた第6ロータ95を有している。これらの第3ステータ93、第6ロータ95および第5ロータ94は、回転軸96の径方向に、外側からこの順で並んでおり、互いに同軸状に配置されている。この回転軸96は、クランク軸3aと同軸状に配置されており、回転軸96には、ギヤ97が同軸状に一体に設けられている。このギヤ97は、前述したアイドラギヤ8に噛み合っている。
上記の第3ステータ93は、第3回転磁界を発生させるものであり、鉄芯93aと、この鉄芯93aに設けられたU相、V相およびW相のコイル93bを有している。鉄芯93aは、複数の鋼板を積層した円筒状のものであり、回転軸96の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に延びており、不動のケースCAに固定されている。また、鉄芯93aの内周面には、12個のスロット(図示せず)が形成されており、これらのスロットは、回転軸96の周方向(以下、単に「周方向」という)に等間隔で並んでいる。上記のU相〜W相のコイル93bは、スロットに分布巻き(波巻き)で巻回されている。図56に示すように、U相〜W相のコイル93bを含む第3ステータ93は、前述した第3PDU43を介して、バッテリ44に電気的に接続されている。すなわち、第1回転機11の第1ステータ13と第3回転機91の第3ステータ93は、互いに電気的に接続されており、第2回転機21の第2ステータ23と第3回転機91の第3ステータ93は、互いに電気的に接続されている。
以上の構成の第3ステータ93では、バッテリ44から電力が供給され、U相〜W相のコイル93bに電流が流れたときに、または、発電が行われたときに、鉄芯93aの第5ロータ94側の端部に、4個の磁極が周方向に等間隔で発生するとともに、これらの磁極による第3回転磁界が周方向に回転する。以下、鉄芯93aに発生する磁極を「第3電機子磁極」という。また、周方向に隣り合う各2つの第3電機子磁極の極性は、互いに異なっている。
第5ロータ94は、8個の永久磁石94a(2つのみ図示)から成る第3磁極列を有している。これらの永久磁石94aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第3磁極列は、第3ステータ93の鉄芯93aに対向している。各永久磁石94aは、軸線方向に延びており、その軸線方向の長さが、第3ステータ93の鉄芯93aのそれと同じに設定されている。
また、永久磁石94aは、リング状の取付部94bの外周面に取り付けられている。この取付部94bは、軟磁性体、例えば鉄または複数の鋼板を積層したもので構成されており、その内周面が、前述した回転軸96と一体の円板状のフランジ94cの外周面に、取り付けられている。以上により、永久磁石94aを含む第5ロータ94は、回転軸96と一体に回転自在になっており、回転軸96、ギヤ97、アイドラギヤ8およびギヤCGを介して、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24に機械的に連結されている。さらに、上記のように軟磁性体で構成された取付部94bの外周面に永久磁石94aが取り付けられているので、各永久磁石94aには、第2ステータ93側の端部に、(N)または(S)の1つの磁極が現れる。また、周方向に隣り合う各2つの永久磁石94aの極性は、互いに異なっている。
第6ロータ95は、6個のコア95a(2つのみ図示)から成る第3軟磁性体列を有している。これらのコア95aは、周方向に等間隔で並んでおり、この第3軟磁性体列は、第3ステータ93の鉄芯93aと第5ロータ94の第3磁極列との間に、それぞれ所定の間隔を隔てて配置されている。各コア95aは、軟磁性体、例えば複数の鋼板を積層したものであり、軸線方向に延びている。また、コア95aの軸線方向の長さは、永久磁石94aと同様、第3ステータ93の鉄芯93aのそれと同じに設定されている。
さらに、コア95aは、円板状のフランジ95bの外端部に、軸線方向に若干延びる筒状の連結部95cを介して取り付けられている。このフランジ95bは、フライホイールを介して、クランク軸3aに同軸状に直結されている。これにより、コア95aを含む第6ロータ95は、クランク軸3aに機械的に直結されており、クランク軸3aと一体に回転自在になっている。
以上のように、第3回転機91では、第3電機子磁極が4個、永久磁石94aの磁極(以下「第3磁石磁極」という)が8個、コア95aが6個である。すなわち、第3電機子磁極の数と第3磁石磁極の数とコア25aの数との比は、第1回転機11の第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比と同様、1:2.0:(1+2.0)/2に設定されている。また、第3電機子磁極の極対数に対する第3磁石磁極の極対数の比(以下「第3極対数比γ」という)は、第1回転機11の第1極対数比αと同様、値2.0に設定されている。以上のように、第3回転機91は、第1回転機11と同様に構成されているので、第1回転機11と同じ機能を有している。
すなわち、第3ステータ93に供給された電力を動力に変換し、第5ロータ94や第6ロータ95から出力するとともに、第5ロータ94や第6ロータ95に入力された動力を電力に変換し、第3ステータ93から出力する。また、そのような電力および動力の入出力中、第3回転磁界、第5および第6のロータ94,95が、前述した第1回転機11に関する式(27)に示すような回転数に関する共線関係を保ちながら回転する。すなわち、この場合、第3回転磁界の回転数(以下「第3磁界回転数NMF3」という)と、第5および第6のロータ94,95の回転数(以下、それぞれ「第5ロータ回転数NR5」「第6ロータ回転数NR6」という)の間には、次式(101)が成立する。
NMF3=(γ+1)NR6−γ・NR5
=3・NR6−2・NR5 ……(101)
また、第3ステータ93に供給された電力および第3磁界回転数NMF3と等価のトルクを、第3駆動用等価トルクTSE3とすると、第3駆動用等価トルクTSE3と、第5および第6のロータ94,95に伝達されるトルク(以下、それぞれ「第5ロータ伝達トルクTR5」「第6ロータ伝達トルクTR6」という)との間には、次式(102)が成立する。
TSE3=TR5/γ=−TR6/(γ+1)
=TR5/2=−TR6/3 ……(102)
さらに、第3ステータ93で発電した電力および第3磁界回転数NMF3と等価のトルクを、第3発電用等価トルクTGE3とすると、第3発電用等価トルクTGE3と、第5および第6のロータ伝達トルクTR5,TR6との間には、次式(103)が成立する。以上のように、第3回転機91は、第1回転機11と同様、遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機とを組み合わせた装置と同じ機能を有する。
TGE3=TR5/γ=−TR6/(1+γ)
=TR5/2=−TR6/3 ……(103)
また、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、第3回転機91の第3ステータ93に供給される電力と、電力の供給に伴って第3ステータ93で発生する第3回転磁界の第3磁界回転数NMF3を制御する。さらに、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、第3ステータ93で発電する電力と、発電に伴って第3ステータ93で発生する第3回転磁界の第3磁界回転数NMF3を制御する。
さらに、図57に示すように、ECU2には、第4回転角センサ66が接続されており、第4回転角センサ66は、第5ロータ94の回転角度位置を検出するとともに、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、検出された第5ロータ94の回転角度位置に基づいて、第5ロータ回転数NR5を算出する。また、第6ロータ95がクランク軸3aに直結されているため、ECU2は、検出されたクランク角度位置に基づいて、第6ロータ95の回転角度位置を算出するとともに、第6ロータ回転数NR6を算出する。
以上の構成の動力装置1Bでは、図55と前述した図2との比較から明らかなように、第1遊星歯車装置PS1、第1および第2の回転機11,21と、左右の前輪WFL,WFRの連結関係は、第1実施形態とまったく同じである。また、クランク軸3aおよび第6ロータ95は、互いに直結されており、エンジン回転数NEと第6ロータ回転数NR6は、互いに等しい。さらに、第5ロータ94は、ギヤ97や、アイドラギヤ8、ギヤCGを介して、第1キャリアC1、第1および第3のロータ11,21、すなわち第2メンバに連結されており、これらのギヤ97,CGによる変速を無視すれば、第5ロータ回転数NR5と第2メンバの回転数は、互いに等しい。また、第3回転機91において、第3磁界回転数NMF3、第5および第6のロータ回転数NR5,NR6の間の関係は、前記式(101)で表される。以上から、動力装置1Bにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図59のように表される。以下、動力装置1Bの各種の動作について、同図に示すような速度共線図を参照しながら説明する。
動力装置1Bの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。これらの動作モードにおける各種の制御は、前述した各種のセンサ51〜54、56〜62および66からの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。以下、これらの動作モードについて、停車中ENG始動モードから順に、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
・停車中ENG始動モード
停車中ENG始動モードでは、バッテリ44から第3回転機91の第3ステータ93に電力を供給するとともに、第3回転磁界を正転させる。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図60のように表される。同図から明らかなように、第3ステータ93で発生した第3駆動用等価トルクTSE3は、第6ロータ95に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第5ロータ94や、第2メンバ、左右の前輪WFL,WFRを逆転させるように作用する。このため、図60に示すように、そのような左右の前輪WFL,WFRの逆転を防止すべく、左右の前輪WFL,WFRを静止状態に保持するために、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給し、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2をそれぞれ、第1および第2の回転磁界を正転させるように発生させる。
これにより、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2は、第2メンバを介して第5ロータ94に伝達され、第5ロータ94の逆転を阻止するように作用する。第3駆動用等価トルクTSE3は、第5ロータ伝達トルクTR5を反力として、クランク軸3aに伝達され、その結果、クランク軸3aが正転する。
また、停車中ENG始動モードでは、第3磁界回転数NMF3は、エンジン回転数NEがエンジン3の始動に適した所定の始動時用回転数NSTになるように、制御される。具体的には、この場合、第6ロータ回転数NR6がエンジン回転数NEと等しいことと、第5ロータ回転数NR5が値0になることと、前記式(101)から、第3磁界回転数NMF3は、次式(104)が成立するように制御される。
NMF3=(γ+1)NST ……(104)
以上により、停車中ENG始動モードでは、第1実施形態と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが値0に、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTに、それぞれ制御される。その状態で、検出されたクランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。また、エンジン3の始動に伴って、左右の前輪WFL,WFRを駆動することがなく、両者WFL,WFRを静止状態に保持することができる。
・ENG発進モード
ENG発進モード中、エンジン3から第6ロータ95に伝達される動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。ENG発進モードの開始時における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図61のように表される。同図に示すように、ENG発進モードの開始時、第5ロータ回転数NR5が左右の前輪回転数NWFL,NWFRとともに値0の状態にあるため、両者の関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、正転方向になる。このため、エンジン3から第6ロータ95に伝達された第6ロータ伝達トルクTR6の一部は、第3発電用等価トルクTGE3を反力として、第5ロータ94に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。換言すれば、第6ロータ伝達トルクTR6は、第3ステータ93と第5ロータ94に分配される。
また、第1実施形態と同様、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、エンジン3から第2メンバに上記のように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
この場合、第3回転機91で発電する電力を制御することによって、第3発電用等価トルクTGE3を漸増させるとともに、第3磁界回転数NMF3を低下させる。前述した第3回転機91の機能から明らかなように、上記のように第3発電用等価トルクTGE3を漸増させることによって、エンジン3から第5ロータ94を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTが、漸増する。また、上記のように第3磁界回転数NMF3を低下させることによって、エンジン3から第3ステータ93に電力の形態で伝達される動力が低下し、第5ロータ94を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力が増大する。
以上の結果、図62に示すように、左右の前輪WFL,WFRが駆動され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。以上のように、ENG発進モードでは、第3回転機91での発電電力を制御することによって、エンジン3から左右の前輪WFL,WFRに伝達されるトルクを漸増させることができるので、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRからエンジン3に急激に大きな負荷が作用するのを防止でき、エンジンストールを発生させることなく、車両Vを発進させることができる。したがって、車両Vの発進用の発進クラッチが不要になる。
また、ENG発進モード中、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、第1実施形態と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように制御されるとともに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御される。以上により、ENG発進モード中、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、第3磁界回転数NMF3は、エンジン回転数NEに応じて制御される。以下、この場合における第1〜第3の回転機11〜91の制御について、具体的に説明する。
上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、第1実施形態と同様、前記式(39)が成立するように制御される。
また、図62から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。この場合にも、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(41)が得られる。また、第5ロータ伝達トルクTR5が第2メンバに伝達されることと、前述した第3回転機91の機能から、第2メンバ伝達トルクT2Tは次式(105)で表される。
T2T=−TR5=−γ・TGE3 ……(105)
これらの式(40)、(41)および(105)から、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(106)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(106)が成立するように制御される。
TSE1=-{(2・β・G1+G1+1)TREQ/2-(β・G1+G1)γ・TGE3}/(β・G1+G1+1+α)
……(106)
さらに、図62から明らかなように、第2駆動用等価トルクTSE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(44)で表される。上記の式(41)、(44)および(105)から、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(107)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(107)が成立するように制御される。
TSE2=-{(2・α+1+G1)TREQ/2-(α+1)γ・TGE3}/(α+1+G1+β・G1) ……(107)
また、第5ロータ回転数NR5が左前輪回転数NWFLと、第6ロータ回転数NR6がエンジン回転数NEと、それぞれ等しいことと、前記式(101)から、第3磁界回転数NMF3は次式(108)で表される。したがって、第3磁界回転数NMF3は、この式(108)が成立するように制御される。
NMF3=(γ+1)NE−γ・NWFL ……(108)
なお、ENG発進モード中、第1実施形態と同様、車両Vの緩発進時や下り坂での発進時には、要求トルクTREQが小さいため、第3回転機91で発電した電力の一部を第1および第2の回転機11,21に供給し、残りをバッテリ44に充電する。一方、車両Vの急発進時や上り坂での発進時には、要求トルクTREQが大きいため、第3回転機91で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する。
・ENG直進モード
ENG直進モードでは、第1実施形態と同様、通常直進モード、充電直進モードおよびアシスト直進モードが、要求動力に応じて選択される。以下、これらの運転モードについて、通常直進モードから順に説明する。
・通常直進モード
通常直進モードでは、ENG発進モードと同様、エンジン3から第6ロータ95に伝達される動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。
通常直進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図63のように表される。図63から明らかなように、エンジントルクTENGは、第6ロータ95にすべて伝達され、第6ロータ95に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3発電用等価トルクTGE3を反力として、第5ロータ94に伝達される。換言すれば、エンジントルクTENGの一部が、第3ステータ93に電気エネルギとして分配され、残りが第5ロータ94に分配される。この場合の分配比は、前述した第3回転機91の機能から明らかなように、1:γである。また、エンジン3から第5ロータ94に伝達された第5ロータ伝達トルクTR5は、第2メンバに伝達される。さらに、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、ENG発進モードと同様、エンジン3から上記のように第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。以上の結果、第1実施形態と同様、通常直進モードでは、左右の前輪伝達動力は、エンジン3の動力と等しくなる。
また、通常直進モードでは、第1実施形態と同様、第1〜第3の回転機11〜91を後述するように制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜91の制御によって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。したがって、車両Vの良好な直進性を得ることができる。
この場合、第1実施形態と同様、第1〜第3の回転機11〜91は、無段変速装置として機能し、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達する。以下、第1〜第3の回転機11〜91の制御について、具体的に説明する。
通常直進モードでは、ENG発進モードと同様、上述したように左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するので、両者を代表して、左前輪回転数NWFLを用いると、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、前記式(39)が成立するように制御される。
また、図63から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。さらに、ENG発進モードと同様、前述したように左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(41)が成立する。また、第5ロータ伝達トルクTR5が第2メンバに伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、第3ステータ93と第5ロータ94に1:γの分配比で分配されることから、第2メンバ伝達トルクT2Tは次式(109)で表される。
T2T=−TR5=γ・TENG/(1+γ) ……(109)
また、エンジン3の動力と左右の前輪伝達動力が互いに等しいので、エンジントルクTENGおよび目標エンジン回転数NEOBJと、要求トルクTREQおよび左前輪回転数NWFLの関係は、前記式(48)で表される。
これらの式(40)、(41)、(48)および(109)から、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(110)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(110)が成立するように制御される。
TSE1=-TREQ{(2・β・G1+G1+1)/2-(β・G1+G1)γ・NWFL/(1+γ)NEOBJ}
/(β・G1+G1+1+α) ……(110)
さらに、図63から明らかなように、第2駆動用等価トルクTSE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(44)で表される。上記の式(41)、(44)、(48)および(109)から、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(111)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(111)が成立するように制御される。
TSE2=-TREQ{(2・α+1+G1)/2-(α+1)γ・NWFL/(1+γ)NEOBJ}/(α+1+G1+β・G1)
……(111)
また、第5ロータ回転数NR5が左前輪回転数NWFLと、第6ロータ回転数NR6がエンジン回転数NEと、それぞれ等しいことと、上述したようにエンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することと、前記式(101)から、第3磁界回転数NMF3は次式(112)で表される。したがって、第3磁界回転数NMF3は、この式(112)が成立するように制御される。
NMF3=(γ+1)NEOBJ−γ・NWFL ……(112)
さらに、エンジントルクTENGが、第3ステータ93と第5ロータ94に、1:γの分配比で分配されることから、第3発電用等価トルクTGE3とエンジントルクTENGの関係は、次式(113)で表される。
TGE3=−TENG/(1+γ) ……(113)
この式(113)と式(48)から、第3発電用等価トルクTGE3は次式(114)で表される。したがって、第3回転機91で発電する電力は、この式(114)が成立するように制御される。
TGE3=TREQ・NWFL/(1+γ)NEOBJ ……(114)
以上の第1〜第3の回転機11〜91の制御により、左右の前輪回転数NWFL,NWFRに対して、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように制御され、ひいては、エンジン3の動力が無段階に変速され、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜91による増速度合が大きいほど、前記式(39)および(112)から明らかなように、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、より高速側に制御されるとともに、第3磁界回転数NMF3はより低速側に制御される。また、前記式(110)および(111)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも高いほど、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2は、より小さな値に制御される。以上により、図63に一点鎖線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に上昇し、エンジン3の動力が無段階に増速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
上記とは逆に、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、すなわち、第1〜第3の回転機11〜91による減速度合が大きいほど、前記式(39)および(112)から明らかなように、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、より低速側に制御されるとともに、第3磁界回転数NMF3はより高速側に制御される。また、前記式(110)および(111)から明らかなように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが目標エンジン回転数NEOBJよりも低いほど、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2は、より大きな値に制御される。以上により、図63に破線で示すように、目標エンジン回転数NEOBJに制御されるエンジン回転数NEに対して、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが無段階に低下し、エンジン3の動力が無段階に減速された状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
なお、上述した第1〜第3の回転機11〜91を用いた変速動作は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NMF3=(γ+1)NEOBJ−γ・NWFL>0で、NEOBJ>γ・NWFL/(γ+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<γ・NWFL/(γ+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力を第3回転機91に供給し、第3回転磁界を逆転させる。この場合にも、第1および第2の回転機11,21で発電する電力や、第1〜第3の磁界回転数NMF1〜NMF3を制御することによって、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。この場合、図63から明らかなように、エンジン3の動力を、より大きく増速した状態で、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができる。
・充電直進モード
充電直進モード中、第1実施形態と同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも大きな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行い、発電した電力の一部をバッテリ44に充電するとともに、残りを第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電される。また、第1〜第3の回転機11〜91を後述するように制御することによって、通常直進モードと同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、充電直進モード中、左右の前輪伝達動力(左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和)は、要求動力と等しくなるとともに、この左右の前輪伝達動力と、バッテリ44に充電される電力(エネルギ)との和は、エンジン3の動力と等しくなる。また、充電直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図63と同様である。
充電直進モード中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、通常直進モードと同様、エンジントルクTENGがすべて、第3ステータ93と第5ロータ94に分配されることから、第3発電用等価トルクTGE3とエンジントルクTENGの関係は、前記式(113)で表される。このことと、上述したようにエンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3発電用等価トルクTGE3は、次式(115)で表される。したがって、第3回転機91で発電する電力は、この式(115)が成立するように制御される。
TGE3=−TEOBJ/(1+γ) ……(115)
また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3磁界回転数NMF3は、前記式(112)が成立するように制御される。
さらに、バッテリ44の充電に用いられるトルクを充電トルクTGとすると、第3回転機91で発電した電力の一部を充電し、残りを第1および第2の回転機11,21に供給することから、次式(116)が成立する。
(TGE3−TG)NMF3=−(TSE1+TSE2)NWFL ……(116)
また、通常直進モードと同様、図63に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、前記式(56)が成立する。
さらに、この場合にも、第5ロータ伝達トルクTR5が第2メンバに伝達されることと、エンジントルクTENGがすべて、第3ステータ93と第5ロータ94に1:γの分配比で分配されることから、第2メンバ伝達トルクT2Tは前記式(109)で表される。このことと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第2メンバ伝達トルクT2Tは、次式(117)で表される。これらの式(56)および(117)から、次式(118)が得られる。
T2T=−TR5=γ・TEOBJ/(1+γ) ……(117)
TSE1+TSE2=−TREQ−γ・TEOBJ/(1+γ)……(118)
また、以上の式(112)、(115)、(116)および(118)から、充電トルクTGは次式(119)で表される。したがって、バッテリ44に充電される電力は、この式(119)が成立するように制御される。
TG=−(TREQ・NWFL+TEOBJ・NEOBJ)
/{(γ+1)NEOBJ−γ・NWFL} ……(119)
また、この場合にも、図63に示すようなトルクの関係が各種の回転要素の間に成立することから、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。この式(40)と、第2メンバ伝達トルクT2Tに関する上記の式(117)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は、次式(120)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(120)が成立するように制御される。
TSE1=-{(2・β・G1+G1+1)TREQ/2+(β・G1+G1)γ・TEOBJ/(1+γ)}
/(β・G1+G1+1+α) ……(120)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(44)で表される。この式(44)と、第2メンバ伝達トルクT2Tに関する式(117)と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(121)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(121)が成立するように制御される。また、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。
TSE2=-{(2・α+1+G1)TREQ/2+(α+1)γ・TEOBJ/(1+γ)}/(α+1+G1+β・G1)
……(121)
なお、上述した充電直進モード中における第1〜第3の回転機11〜91の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NMF3=(γ+1)NEOBJ−γ・NWFL>0で、NEOBJ>γ・NWFL/(γ+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<γ・NWFL/(γ+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が逆転方向の場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部をバッテリ44に充電し、残りを第3回転機91に供給し、第3回転磁界を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電されるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・アシスト直進モード
アシスト直進モード中、エンジン3の動力を、要求動力よりも小さな最良燃費動力になるように制御する。また、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力に加え、バッテリ44の電力を、第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給によって補われる。また、第1〜第3の回転機11〜91を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTEOBJは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、アシスト直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、バッテリ44からの電力(エネルギ)とエンジン3の動力の和と等しくなる。また、アシスト直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図63と同様である。
アシスト直進モード中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。この場合にも、充電直進モードと同様、第3発電用等価トルクTGE3とエンジントルクTENGの関係が、前記式(113)で表されることと、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3回転機91で発電する電力は、前記式(115)が成立するように制御される。また、通常直進モードと同様、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御することから、第3磁界回転数NMF3は、前記式(112)が成立するように制御される。
また、アシスト直進モード中、充電直進モードと同様、図63に示すようなトルクの関係が成立し、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御するとともに、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御する。以上から、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2に関する前記式(120)および(121)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。
さらに、第1実施形態と同様、要求トルクTREQのうち、バッテリ44からの電力供給によるアシストトルクに対応する分を、アシスト対応トルクTREQ_Aとし、エンジントルクTENGに対応する分を、エンジン対応トルクTREQ_0とすると、これらのトルクの間に、前記式(62)が成立する。また、第3回転機91で発電した電力を第1および第2の回転機11,12に供給することで第1および第2のステータ13,23で発生するトルクをそれぞれ、第1および第2のトルクTSE1_0,TSE2_0とし、バッテリ44からの電力供給により第1および第2のステータ13,23で発生するトルクをそれぞれ、第1および第2のアシストトルクTA1,TA2とする。第1駆動用等価トルクTSE1、第1トルクTSE1_0および第1アシストトルクTA1の間に、前記式(63)が成立するとともに、第2駆動用等価トルクTSE2、第2トルクTSE2_0および第2アシストトルクTA2の間に、前記式(64)が成立する。
さらに、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(120)から明らかなように、第1トルクTSE1_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(122)が成立する。また、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給がないとすれば、前記式(121)から明らかなように、第2トルクTM2_0、エンジン対応トルクTREQ_0および目標エンジントルクTEOBJの間に、次式(123)が成立する。
TSE1_0=-{(2・β・G1+G1+1)TREQ_0/2+(β・G1+G1)γ・TEOBJ/(1+γ)}
/(β・G1+G1+1+α) ……(122)
TSE2_0=-{(2・α+1+G1)TREQ_0/2+(α+1)γ・TEOBJ/(1+γ)}/(α+1+G1+β・G1)
……(123)
以上の式(62)、(63)、(120)および(122)から、前記式(67)が得られるとともに、式(62)、(64)、(121)および(123)から、前記式(68)が得られる。また、アシスト対応トルクTREQ_Aは、前記式(69)で表される。
上記の式(67)および(69)から、第1アシストトルクTA1は、前記式(70)で表され、式(68)および(69)から、第2アシストトルクTA2は、前記式(71)で表される。したがって、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、これらの式(70)および(71)がそれぞれ成立するように制御される。
なお、上述したアシスト直進モード中における第1〜第3の回転機11〜91の制御は、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が正転方向の場合、すなわち、NMF3=(γ+1)NEOBJ−γ・NWFL>0で、NEOBJ>γ・NWFL/(γ+1)が成立している場合に、行われる。
一方、NEOBJ<γ・NWFL/(γ+1)で、左右の前輪回転数NWFL,NWFRと目標エンジン回転数NEOBJの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が逆転方向の場合において、要求トルクTREQが小さいときには、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力とバッテリ44の電力の双方を、第3回転機91に供給し、第3回転磁界を逆転させる。また、要求トルクTREQが大きいときには、第1〜第3の回転機11〜91に電力を供給し、第1および第2の回転磁界を正転させるとともに、第3回転磁界を逆転させる。この場合にも、エンジン3の動力が最良燃費動力に制御され、エンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44からの電力供給によって補われるとともに、要求動力と同じ大きさの動力が左右の前輪WFL,WFRに伝達される。
・ENG旋回モード
ENG旋回モードには、第1実施形態と同様、第1および第2の右旋回アシストモードが含まれる。まず、第1右旋回アシストモードについて説明する。
・第1右旋回アシストモード
第1右旋回アシストモード中、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜91を後述するように制御することによって、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。このようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、第1実施形態と同様、第1右旋回アシストモード中、左前輪伝達トルクTWLTが右前輪伝達トルクTWRTよりも大きくなり、その結果、小さな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。
以下、第1右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図64のように表される。同図に示すように、低車速走行中における右旋回時、前述した図28の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的大きく、それにより、両者の関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的低いことと、第5ロータ回転数NR5がエンジン回転数NEよりも高くなることによって、両者の関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1および第3の回転機11,91に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第3回転磁界を逆転させる。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行うとともに、発電した電力を第1および第3の回転機11,91にさらに供給する。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図64のように表される。
図64から明らかなように、エンジントルクTENGは、第6ロータ95に伝達され、第3駆動用等価トルクTSE3を反力として、第5ロータ94に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。すなわち、第3回転機91に供給された電力は、動力に変換された後、エンジン3の動力と合成され、第2メンバに伝達される。その結果、第1実施形態と同様、第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24が正転する。また、第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転磁界が逆転し、第2発電用等価トルクTGE2は、逆転している第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を低下させるように作用する。
さらに、第1実施形態と同様、第1駆動用等価トルクTSE1と、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tと、第2発電用等価トルクTGE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。この場合、図64から明らかなように、第1磁界回転数NMF1と、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、前記式(72)で表される。したがって、この式(72)が成立するように、第1磁界回転数NMF1は制御される。
また、図64から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。それに加え、この場合、充電直進モードと同様、第2メンバ伝達トルクT2Tが前記式(117)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(124)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(124)が成立するように制御される。
TSE1=-{(β・G1+G1+1)TLREQ+(β・G1+G1)γ・TEOBJ/(1+γ)+β・G1・TRREQ}
/(β・G1+G1+1+α) ……(124)
さらに、図64から明らかなように、第2磁界回転数NMF2と左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係は、前記式(74)で表される。したがって、第2磁界回転数NMF2は、この式(74)が成立するように制御される。
また、図64から明らかなように、第2発電用等価トルクTGE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(75)で表される。この式(75)と、第2メンバ伝達トルクT2Tが式(117)で表されることと、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御することから、第2発電用等価トルクTGE2は、次式(125)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(125)が成立するように制御される。
TGE2=-{(α+1+G1)TRREQ+(α+1)γ・TEOBJ/(1+γ)+α・TLREQ}/(α+1+G1+β・G1)
……(125)
さらに、図64から明らかなように、第3駆動用等価トルクTSE3とエンジントルクTENGの関係は、次式(126)で表される。この場合、エンジントルクTENGを目標エンジントルクTEOBJになるように制御することから、第3駆動用等価トルクTSE3は、次式(127)で表される。したがって、第3回転機91に供給する電力は、この式(127)が成立するように制御される。さらに、第3磁界回転数NMF3は、通常直進モードと同様、前記式(112)が成立するように制御される。
TSE3=−TENG/(1+γ) ……(126)
TSE3=−TEOBJ/(1+γ) ……(127)
また、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21に電力を供給し、第2回転磁界を正転させるとともに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(125)において第2発電用等価トルクTGE2を第2駆動用等価トルクTSE2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第1右旋回アシストモード中でかつ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に(第2回転磁界が正転する場合には、第1および第2の回転機11,21に)供給する。この場合、第3回転機91で発電する電力は、第3発電用等価トルクTGE3に関する前記式(115)が成立するように制御される。
次に、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図65のように表される。同図に示すように、この場合、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的小さいため、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEが比較的高いことによって、第5ロータ回転数NR5とエンジン回転数NEの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、基本的には、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。さらに、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まる要求動力が、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力よりも小さいときには、その余剰分が、第3回転機91での発電により電力としてバッテリ44に充電され、逆に、大きいときには、その不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給することによって補われる。以上により、左右の前輪伝達動力は、要求動力になるように制御される。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図65のように表される。また、この場合における各種の回転要素におけるトルク(動力)の伝達は、図65と前述した図63との比較から明らかなように、通常直進モードの場合と同様に行われ、それにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。すなわち、図65と前述した低車速走行中の図64との比較から明らかなように、第1磁界回転数NMF1は、前記式(72)が成立するように制御されるとともに、第1回転機11に供給する電力は、第1駆動用等価トルクTSE1に関する前記式(124)が成立するように制御される。
また、第2磁界回転数NMF2は、前記式(74)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21に供給する電力は、前記式(125)における第2発電用等価トルクTGE2を第2駆動用等価トルクTSE2に置き換えた次式(128)が成立するように、制御される。また、第3磁界回転数NMF3は、前記式(112)が成立するように制御されるとともに、第3回転機91で発電する電力は、前記式(115)が成立するように制御される。
TSE2=-{(α+1+G1)TRREQ+(α+1)γ・TEOBJ/(1+γ)+α・TLREQ}/(α+1+G1+β・G1)
……(128)
以上の第1〜第3の回転機11〜91の制御において、エンジン3の動力の一部を用いて第3回転機91で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する場合には、エンジン3の動力が、第1遊星歯車装置PS1および第1〜第3の回転機11〜91を介して、左右の前輪WFL,WFRに分配され、左前輪WFLに分配されるエンジン3の動力は、右前輪WFRのそれよりも大きくなる。
・第2右旋回アシストモード
この第2右旋回アシストモード中、基本的には、第1右旋回アシストモードと同様、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、第1〜第3の回転機11〜91を後述するように制御することによって、第1実施形態と同様、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御し、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御するとともに、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上のようなエンジン3の動力およびエンジン回転数NEの制御によって、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。
以上により、第2右旋回アシストモード中、左前輪WFLには駆動力が、右前輪WFRには制動力が、それぞれ作用し、その結果、大きな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左前輪WFLに伝達される動力と、右前輪WFRに作用する制動力との差が、要求動力になる。
以下、第2右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図66のように表される。同図に示すように、前述した図64の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第5ロータ回転数NR5の関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。
このような場合には、バッテリ44から第1〜第3の回転機11〜91に電力を供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第2および第3の回転磁界をいずれも逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図66のように表される。
図66から明らかなように、前述した図64の場合と同様、エンジントルクTENGは、第6ロータ95に伝達され、第6ロータ95に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3駆動用等価トルクTSE3を反力として、第5ロータ94に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。すなわち、第3回転機91に供給された電力は、動力に変換された後、エンジン3の動力と合成され、第2メンバに伝達される。また、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2駆動用等価トルクTSE2は、左前輪WFLから第1メンバに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。この場合、第1〜第3の磁界回転数NMF1〜NMF3は、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(72)、(74)および(112)がそれぞれ成立するように制御される。また、第3回転機91に供給する電力も、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(127)が成立するように制御される。
さらに、図66から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左前輪伝達トルクTWLTと、右前輪トルクTWRと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(80)で表される。
この場合、上述したように、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御するとともに、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御する。また、右前輪WFRから第3メンバに右前輪トルクTWRが伝達されており、そのことは、第3メンバから右前輪WFRに制動力が作用していることと同じである。さらに、第2メンバ伝達トルクT2Tは、第1右旋回アシストモードと同様、前記式(117)で表される。以上のことと、上記の式(80)から、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(129)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(129)が成立するように制御される。
TSE1=-{(β・G1+G1+1)TLREQ+β・G1・BRREQ+(β・G1+G1)γ・TEOBJ/(1+γ)}
/(β・G1+G1+1+α) ……(129)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(130)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(130)が成立するように制御される。
TSE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・TLREQ+(α+1)γ・TEOBJ/(1+γ)}/(α+1+G1+β・G1)
……(130)
また、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第3の回転機11,91に供給する。この場合、第2回転機21で発電する電力は、上記の式(130)における第2駆動用等価トルクTSE2を第2発電用等価トルクTGE2に置き換えた式が成立するように、制御される。
さらに、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に(第2回転磁界が正転する場合には、第1回転機11のみに)供給する。この場合、第3回転機91で発電する電力は、前記式(115)が成立するように制御される。
次に、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図67のように表される。同図に示すように、高車速走行中における右旋回時、前述した図65の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第5ロータ回転数NR5の関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、正転方向になる。
このような場合には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行う。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行う。さらに、第2および第3の回転機21,91で発電した電力を、基本的には、第1回転機11に供給し、第1回転磁界を正転させる。また、この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図67のように表される。
図67から明らかなように、前述した図63に示す通常直進モードの場合と同様、エンジントルクTENGは、第6ロータ95に伝達され、第6ロータ95に伝達されたエンジントルクTENGの一部は、第3発電用等価トルクTGE3を反力として、第5ロータ94に伝達され、さらに、第2メンバに伝達される。すなわち、エンジン3の動力は、第3回転機91と第2メンバに分配される。その結果、第1実施形態と同様、第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24が正転する。また、第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転磁界が正転し、第2発電用等価トルクTGE2は、正転している第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を低下させるように作用する。
また、第1実施形態と同様、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2発電用等価トルクTGE2は、左前輪WFLに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。この場合、図67と前述した図64との比較から明らかなように、第1〜第3の磁界回転数NMF1〜NMF3は、前記式(72)、(74)および(112)がそれぞれ成立するように制御される。また、第1回転機11に供給する電力は、第1駆動用等価トルクTSE1に関する前記式(129)が成立するように制御される。さらに、第2回転機21で発電する電力は、前記式(130)における第2駆動用等価トルクTSE2を第2発電用等価トルクTGE2に置き換えた次式(131)が成立するように、制御される。また、第3回転機91で発電する電力は、前記式(115)が成立するように制御される。
TGE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・TLREQ+(α+1)γ・TEOBJ/(1+γ)}/(α+1+G1+β・G1)
……(131)
一方、車両Vの左旋回中には、左旋回アシスト力を生じさせる第1および第2の左旋回アシストモードが選択される。これらの第1および第2の左旋回アシストモードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、上述した第1および第2の右旋回アシストモードとそれぞれ同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。なお、第1実施形態と同様、第1および第2の左右の旋回アシストモード中、バッテリ44の充電・放電が行われる場合があるため、各モードの選択の可否は、バッテリ44の過充電・過放電を防止するために、バッテリ44の充電状態に応じて決定される。
・ENG後進モード
ENG後進モード中、第1実施形態と同様、基本的には、第1および第2の回転機11,21の動力を用いて、車両Vを後進させる。ENG後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図68のように表される。この場合、エンジン3の動力を増大させるとともに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機91で発電を行う。また、第3回転機91で発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、第1および第2の回転磁界を逆転させる。これにより、図68から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。その結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが逆転方向に上昇し、ひいては、車両Vが後方に発進する。
また、ENG後進モード中、図68に示すように、第5ロータ回転数NR5およびエンジン回転数NEの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が正転方向になるため、第6ロータ95に伝達されたエンジントルクTENGの一部が、第3発電用等価トルクTGE3を反力として、第5ロータ94に伝達され、さらに、第2メンバに伝達され、ひいては、左右の前輪WFL,WFRを正転させるように作用する。このため、車両Vの後進を支障なく行うべく、第3回転機91で発電する電力は、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2が、第3発電用等価トルクTGE3により定まる第2メンバ伝達トルクT2Tを上回るように、制御される。
さらに、この場合、第1および第2の回転機11,21は、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御される。具体的には、図68から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。また、上述した各種の要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第2メンバ伝達トルクT2Tは、前記式(105)で表される。
これらの式(40)および(105)と、上述したように、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は、前記式(106)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(106)が成立するように制御される。同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は、前記式(107)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(107)が成立するように制御される。
また、ENG後進モード中、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、車両Vが直進しているときには、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御され、車両Vが旋回しているときには、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)がそれぞれ成立するように、制御される。さらに、第3回転機91で発電した電力のみでは不足する場合には、バッテリ44の電力が、第1および第2の回転機11,21に供給される。
また、ENG後進モード中、第3回転機91の機能から明らかなように、エンジン3に作用する負荷は、第3発電用等価トルクTGE3が大きいほどより大きくなる。このため、停車中の車両Vを後方に発進させる場合には、エンジンストールを防止するために、第3発電用等価トルクTGE3を漸増させる。さらに、第3磁界回転数NMF3は、前記式(108)が成立するように制御される。
・減速運転モード
この減速運転モードには、第1実施形態と同様、減速直進モードおよび減速旋回モードが含まれる。まず、減速直進モードについて説明する。
・減速直進モード
この減速直進モード中、車両Vの慣性エネルギを用いて、第1〜第3の回転機11〜91で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。また、減速直進モードは、バッテリ44の過充電を防止するために、バッテリ44の充電状態が第1所定値よりも小さいときに選択される。減速直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図69のように表される。
図69から明らかなように、減速直進モード中、第1実施形態と同様、第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2はそれぞれ、正転している第1および第2の回転磁界の第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2を低下させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2発電用等価トルクTGE2は、第2メンバに後述するように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第2メンバを介して、第5ロータ94に伝達され、第5ロータ回転数NR5とエンジン回転数NEの関係から、第3回転磁界の回転方向は逆転方向になる。このため、第3発電用等価トルクTGE3は、第6ロータ95に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第5ロータ回転数NR5を低下させるように作用する。その結果、第2メンバには、第5ロータ94を介して、第3発電用等価トルクTGE3に基づく制動トルクが作用する。
また、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜91を後述するように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、要求制動トルクBREQになるように制御する。これにより、車両Vを、その良好な直進性を確保しながら、減速させることができる。
さらに、減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜91の制御によって、エンジン回転数NEを非常に低い所定回転数NELになるように制御する。これにより、クランク軸3aを回転させることによる損失が抑えられるので、第1〜第3の回転機11〜91で発電し、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。それに加え、排気管への新気の導入を抑えることができ、それにより、触媒が活性状態に維持され、したがって、減速直後のエンジン3の運転の再開時、排ガスを触媒で十分に浄化することができる。
減速直進モード中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。すなわち、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。また、図69から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(84)で表される。
また、上述した各種の要素におけるトルクの伝達から明らかなように、第2メンバ伝達トルクT2Tと第3発電用等価トルクTGE3の間の関係は、前記式(105)で表される。これらの式(84)および(105)と、上述したように左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ要求制動トルクBREQになるように制御することから、第1発電用等価トルクTGE1は次式(132)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(132)が成立するように制御される。
TGE1=-{(2・β・G1+G1+1)BREQ-(β・G1+G1)γ・TGE3}/(β・G1+G1+1+α)
……(132)
同様に、第2発電用等価トルクTGE2は次式(133)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(133)が成立するように制御される。
TGE2=-{(2・α+1+G1)BREQ-(α+1)γ・TGE3}/(α+1+G1+β・G1) ……(133)
さらに、前述したようにエンジン回転数NEを所定回転数NELになるように制御することから、第3回転機91で発電する電力と、第3磁界回転数NMF3は、次式(134)が成立するように制御される。
NMF3=(γ+1)NEL−γ・NWFL ……(134)
・減速旋回モード
減速旋回モードには、第1実施形態と同様、減速右旋回モードおよび減速左旋回モードが含まれる。これらのモードの動作は互いに同様にして行われるので、以下、両者を代表して、減速右旋回モード中の動作についてのみ説明する。
・減速右旋回モード
この減速右旋回モード中、第1〜第3の回転機11〜91を後述するように制御することによって、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRに制動トルクを作用させるとともに、両者WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御する。以上により、減速右旋回モード中、オーバーステアを抑制しながら、車両Vを安定的に旋回させることができる。
以下、減速右旋回モード中の動作について、まず、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図70のように表される。同図に示すように、この場合、前述した図34の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。また、エンジン回転数NEと第5ロータ回転数NR5の関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。このような場合には、第1および第3の回転機11,91で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第2回転機21に供給するとともに、第2回転磁界を逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図70のように表される。
図70から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1実施形態と同様、第1発電用等価トルクTGE1は、第1磁界回転数NMF1を低下させるように作用し、第2駆動用等価トルクTSE2は、第2磁界回転数NMF2を逆転方向に上昇させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、第2メンバに後述するように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、減速直進モードと同様、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、減速直進モードと同様、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力の一部は、第5ロータ94に伝達され、第5ロータ回転数NR5とエンジン回転数NEの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、逆転方向になる。このため、第3発電用等価トルクTGE3は、第6ロータ95に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第5ロータ回転数NR5を低下させるように作用する。その結果、第2メンバには、第5ロータ94を介して、第3発電用等価トルクTGE3に基づく制動トルクが作用する。
減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。この場合、図70と図69の比較から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1と、左右の前輪トルクTWL,TWRと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(84)で表される。また、第2メンバ伝達トルクT2Tと第3発電用等価トルクTGE3の関係は、前記式(105)で表される。これらの式(105)および(84)と、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御することから、第1発電用等価トルクTGE1は次式(135)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(135)が成立するように制御される。
TGE1=-{(β・G1+G1+1)BLREQ+β・G1・BRREQ-(β・G1+G1)γ・TGE3}
/(β・G1+G1+1+α) ……(135)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(136)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(136)が成立するように制御される。また、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)が成立するように制御される。
TSE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・BLREQ-(β・G1+G1)γ・TGE3}/(α+1+G1+β・G1)
……(136)
さらに、図70から明らかなように、第3発電用等価トルクTGE3は、エンジン回転数NEを上昇させるように作用するので、第3回転機91で発電する電力と、第3磁界回転数NMF3は、より大きな電力をバッテリ44に充電するとともに、触媒を活性状態に維持するために、エンジン回転数NEが高くならないように、制御される。この場合、第3回転機91で発電する電力と、第3磁界回転数NMF3を、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
次に、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図71のように表される。同図に示すように、この場合には、前述した図35の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。また、エンジン回転数NEと第5ロータ回転数NR5の関係によって定まる第3回転磁界の回転方向は、正転方向になる。このような場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第3回転機91に供給するとともに、第3回転磁界を正転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図71のように表される。
図71から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1実施形態と同様、第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2はそれぞれ、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2を低下させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2発電用等価トルクTGE2は、第2メンバに後述するように伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、この場合にも、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、この場合、第3回転磁界が正転するため、第3駆動用等価トルクTSE3は、第6ロータ95に作用するエンジン3のフリクションを反力として、第5ロータ回転数NR5を低下させるように作用する。その結果、第2メンバには、第5ロータ94を介して、第3駆動用等価トルクTSE3に基づく制動トルクが作用する。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜91は、具体的には、次のように制御される。すなわち、図71と図69の比較から明らかなように、第1回転機11で発電する電力は、前記式(135)において第3発電用等価トルクTGE3を第3駆動用等価トルクTSE3に置き換えた次式(137)が成立するように、制御される。
TGE1=-{(β・G1+G1+1)BLREQ+β・G1・BRREQ-(β・G1+G1)γ・TSE3}
/(β・G1+G1+1+α) ……(137)
同様に、第2回転機21で発電する電力は、前記式(136)における第2駆動用等価トルクTSE2を第2発電用等価トルクTGE2に置き換えるとともに、第3発電用等価トルクTGE3を第3駆動用等価トルクTSE3に置き換えた次式(138)が成立するように、制御される。さらに、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)が成立するように制御される。
TGE2=-{(α+1+G1)BRREQ+α・BLREQ-(β・G1+G1)γ・TSE3}/(α+1+G1+β・G1)
……(138)
また、図71から明らかなように、第3駆動用等価トルクTSE3がエンジン回転数NEを上昇させるように作用することから、第3回転機91に供給する電力と、第3磁界回転数NMF3は、エンジン回転数NEが高くならないように制御される。この場合、第3回転機91に供給する電力と、第3磁界回転数NMF3を、減速直進モードと同様、エンジン回転数NEが所定回転数NELになるように制御してもよい。
さらに、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、エンジン回転数NEと左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が、逆転方向になる場合がある。その場合には、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を、バッテリ44に充電する。この場合における第3回転機91で発電する電力と、第3磁界回転数NMF3の制御は、上述した手法によって行われ、その詳細な説明については省略する。
・EV発進モード
EV発進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図72のように表される。EV発進モード中、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給するとともに、第1および第2の回転磁界を正転させる。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。
また、図72から明らかなように、EV発進モード中、第1および第2の回転機11,21の動力は、第2メンバを介して第5ロータ94に伝達され、それにより、第5ロータ94が第2メンバとともに正転する。それに伴い、第3回転機91で発電が行われていなくても、第3回転機91において第3回転磁界が発生し、その場合には、それによる回転抵抗(以下「第3磁界回転抵抗DMF3」という)が、第5ロータ94や第6ロータ95に作用する。この場合、この第3磁界回転抵抗DMF3を反力として、第1および第2の回転機11,21から第5ロータ94に伝達された第5ロータ伝達トルクTR5が、第6ロータ95を介してクランク軸3aに伝達され、エンジン回転数NEが上昇するおそれがある。
このため、EV発進モード中には、上記の第3磁界回転抵抗DMF3を打ち消すように、第3回転機91に電力を供給し、第3回転磁界を逆転させる。この場合、第3回転機91に供給する電力は、第3駆動用等価トルクTSE3が第3磁界回転抵抗DMF3と等しくなるように制御される。
また、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、車両Vの良好な直進性を得ることができる。この場合、第1および第2の回転機11,21は、第1実施形態と同様に制御される。
・EV走行中ENG始動モード
EV走行中ENG始動モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図73のように表される。同図に示すように、EV走行中ENG始動モードでは、上述したEV発進モードと同様、第1および第2の回転機11,21から第3回転機91の第5ロータ94に動力が伝達され、第5ロータ94が正転する。この動力を用いて、第3回転機91で発電を行うとともに、発電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。これにより、第1および第2の回転機11,21から第5ロータ94に伝達された第5ロータ伝達トルクTR5は、第3発電用等価トルクTGE3を反力として、第6ロータ95に伝達され、さらに、クランク軸3aに伝達される。換言すれば、第5ロータ94に伝達された第1および第2の回転機11,21の動力(エネルギ)が、クランク軸3aと第3ステータ93に分配される。また、第3磁界回転数NMF3を値0になるように制御し、それにより、第1および第2の回転機11,21から第3ステータ93に分配されるエネルギを減少させるとともに、クランク軸3aに分配される動力を増大させ、それにより、クランク軸3aが正転する。その状態で、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。
また、EV走行中ENG始動モードでは、前述した停車中ENG始動モードと同様、第3磁界回転数NMF3を、エンジン回転数NEが始動時用回転数NSTになるように制御する。具体的には、第3磁界回転数NMF3は、次式(139)が成立するように制御される。
NMF3=(γ+1)NST−γ・NWFL ……(139)
この場合において、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが低いときには、第5ロータ回転数NR5と始動時用回転数NSTの関係によって定まる第3回転磁界の回転方向が、正転方向になる場合がある。その場合には、バッテリ44から第3回転機91に電力を供給するとともに、第3回転磁界を正転させ、第3磁界回転数NMF3を制御することによって、エンジン回転数NEを始動時用回転数NSTになるように制御する。したがって、EV走行中ENG始動モードでは、停車中ENG始動モードと同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
さらに、図73から明らかなように、第3発電用等価トルクTGE3(または第3駆動用等価トルクTSE3)は、左右の前輪WFL,WFRに対し、制動トルクとして作用する。このため、EV走行中ENG始動モードでは、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTの急減を防止し、良好なドライバビリティを確保するために、第3回転機91で発電する電力(第3回転機91に供給する電力)は、第3発電用等価トルクTGE3(第3駆動用等価トルクTSE3)が漸増するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが直進しているときには、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。すなわち、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、通常直進モードと同様、前記式(39)が成立するように制御される。
さらに、この場合、図73から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表される。また、第2メンバ伝達トルクT2Tと第3発電用等価トルクTGE3の関係は、前記式(105)で表される。これらの式(40)および(105)と、EV発進モードと同様、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御することから、第1駆動用等価トルクTSE1は前記式(106)で表される。したがって、第1回転機11に供給する電力は、この式(106)が成立するように制御される。同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は前記式(107)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(107)が成立するように制御される。
また、EV走行中ENG始動モードにおいて、車両Vが旋回しているときには、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2はそれぞれ、ENG旋回モードと同様、前記式(72)および(74)が成立するように制御される。さらに、第1および第2の回転機11,21に供給する電力はそれぞれ、基本的には、上記の式(106)および(107)が成立するように制御される。この場合、ENG旋回モードと同様、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに左右の旋回アシスト力を作用させてもよい。
・EV後進モード
EV後進モードにおける各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図74のように表される。同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したEV発進モードを示す図72における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、EV後進モード中、第1〜第3の回転機11〜91の制御は、第1および第2の回転磁界を逆転させるとともに、第3回転磁界を正転させる以外は、EV発進モードと同様に行われる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、永久磁石94aおよびコア95aが、本発明における第3磁石および第3軟磁性体にそれぞれ相当する。また、第1遊星歯車装置PS1が、本発明における差動装置に相当する。その他の対応関係については、第1実施形態と同様である。
以上のように、本実施形態によれば、第1回転機11の第2ロータ15および第1リングギヤR1が、左前輪WFLに機械的に連結されており、第2回転機21の第4ロータ25および第1サンギヤS1が、右前輪WFRに機械的に連結されている。また、第1回転機11の第1ロータ14、第2回転機21の第3ロータ24、および第1キャリアC1が、第3回転機91の第5ロータ94に機械的に連結されており、第3回転機91の第6ロータ95が、エンジン3のクランク軸3aに機械的に連結(直結)されている。さらに、第1および第3の回転機11,91が互いに電気的に接続されており、第2および第3の回転機21,91が互いに電気的に接続されている。
また、図64〜図67を用いて説明したように、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させ、車両Vの左右の旋回アシストを行うことができる。この場合、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRに連結された第1および第3のメンバ(第2ロータ15、第1リングギヤR1、第4ロータ25、第1サンギヤS1)が、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の前輪WFL,WFRの回転(回転数・トルク)を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。さらに、図63などを用いて説明したように、エンジン3の動力を無段階に変速して、左右の前輪WFL,WFRに伝達することができ、エンジン回転数NEを、より良好な燃費が得られる目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するので、動力装置1Bの効率を高めることができる。
また、充電および放電可能なバッテリ44が、第1〜第3の回転機11〜91に電気的に接続されており、充電直進モードなどで説明したように、エンジン3の動力を最良燃費動力に制御するとともに、要求動力に対するエンジン3の動力の余剰分が、電力としてバッテリ44に充電される。さらに、アシスト直進モードなどで説明したように、要求動力に対するエンジン3の動力の不足分が、バッテリ44に充電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給することで補われる。以上により、エンジン3の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置1Bの効率をさらに高めることができる。
また、第1〜3の回転機11〜91が一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有しているので、そのような遊星歯車装置および回転機を用いた場合と比較して、動力装置1Bの小型化を図ることができる。この場合、第1実施形態で述べたエンジン3の動力を変速するための第2遊星歯車装置PS2は不要であるので、その分、動力装置1Bのさらなる小型化を図ることができる。さらに、第1〜第3の回転機11〜91を作動させる上で、コア15a〜95aから成る単一の軟磁性体列をそれぞれ用いればよいので、第2実施形態で述べた第1および第2の回転機70,80を用いる場合と比較して、第1〜第3の回転機11〜91の構成を単純化でき、ひいては、動力装置1Bの構成の単純化とコストの削減を図ることができる。
また、第1〜第3の回転機11〜91において、第1〜第3の極対数比α〜γが値2.0に設定されている。これにより、前述した第1〜第3の回転機11〜91の機能から明らかなように、第2実施形態の第1および第2の回転機70,80と比較して、第1〜第3の駆動用等価トルクTSE1〜TSE3(第1〜第3の発電用等価トルクTGE1〜TGE3)を低減できるので、第1〜第3のステータ13〜93や第1〜第3のPDU41〜43の小型化を図ることができ、ひいては、動力装置1Bのさらなる小型化およびコストの削減を図ることができる。
さらに、図63から明らかなように、第3極対数比γが値1.0よりも大きい場合において、エンジン回転数NEが第5ロータ回転数NR5よりも高いときには、第3磁界回転数NMF3が過大になり、第3回転機91の駆動・発電効率が低下する場合がある。このため、第3極対数比γを値1.0よりも小さな値に設定することによって、図63から明らかなように、値1.0よりも大きな値に設定した場合よりも第3磁界回転数NMF3を低下させることができ、それにより、上述した第3磁界回転数NMF3の過大化による第3回転機91の駆動・発電効率の低下を防止することができる。
次に、図75を参照しながら、本発明の第4実施形態による動力装置1Cについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Cは、第2実施形態と比較して、前述した第2遊星歯車装置PS2および第3回転機31に代えて、第3回転機100を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Cについて、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
図75および図78に示す第3回転機100は、前述した第1回転機70と同様に構成されているので、その構成・動作について、図75および図78の左側を「左」、右側を「右」として簡単に説明する。これらの図75および図78に示すように、第3回転機100は、第5ロータ101と、第5ロータ101に対向するように配置された第3ステータ102と、両者101,102の間に所定の間隔を存した状態で設けられた第6ロータ103とを備えている。
第5ロータ101は、第1回転機70の第1ロータ71と同様に構成されており、2n個の永久磁石101aや、取付部101b、フランジ101cを有している。これらの永久磁石101aは、取付部101bおよびフランジ101cを介して、回転軸104に取り付けられており、その周方向に等間隔で並んでいる。これにより、永久磁石101aを含む第5ロータ101は、回転軸104と一体に回転自在になっている。また、回転軸104は、クランク軸3aと同軸状に配置されており、回転軸104には、ギヤ105が一体に設けられている。このギヤ105は、前述したアイドラギヤ8に噛み合っている。以上により、第5ロータ101は、第1キャリアC1、第1および第3のロータ71,81に機械的に連結されている。
第3ステータ102は、第1回転機70の第1ステータ72と同様に構成されており、3n個の電機子102aを有している。各電機子102aは、第1回転機70の電機子72aと同様に構成されているので、その詳細な説明については省略する。また、電機子102aは、ケースCAに固定されており、回転軸104の周方向に等間隔で並んでいる。さらに、図76に示すように、第3ステータ102は、前述した第3PDU43を介してバッテリ44に電気的に接続されている。以上のように、第1回転機70の第1ステータ72と第3回転機100の第3ステータ102は、互いに電気的に接続されており、第2回転機80の第2ステータ82と第3回転機100の第3ステータ102は、互いに電気的に接続されている。また、第3ステータ102では、バッテリ44からの電力供給時・発電時に、第5ロータ101の左側の部分との間、および右側の部分との間にそれぞれ、第5および第6の回転磁界が回転軸104の周方向に回転するように発生する。
第6ロータ103は、第1回転機70の第2ロータ73と同様に構成されており、2n個の第1コア103aおよび第2コア103bを有している。これらの第1および第2のコア103a,103bはそれぞれ、第1回転機70の第1および第2のコア73a,73bと同様に構成されているので、その詳細な説明については省略する。また、第1および第2のコア103a,103bは、回転軸104の周方向に等間隔で互い違いに並んでおり、ドーナツ板状のフランジ103cや棒状の連結部103dを介して、クランク軸3aに同軸状に機械的に直結されている。これにより、第1および第2のコア103a,103bを含む第6ロータ103は、クランク軸3aに機械的に連結されており、クランク軸3aと一体に回転自在になっている。さらに、回転軸104の軸線方向において、第1コア103aは、第5ロータ101の左側の部分と第3ステータ102の左側の部分との間に配置され、第2コア103bは、第5ロータ101の右側の部分と第3ステータ102の右側の部分との間に配置されている。
以上のように、第3回転機100は、第1回転機70と同様に構成されているので、第1回転機70と同じ機能を有している。すなわち、第3ステータ102に供給された電力を動力に変換し、第5ロータ101や第6ロータ103から出力するとともに、第5ロータ101や第6ロータ103に入力された動力を電力に変換し、第3ステータ102から出力する。また、そのような電力および動力の入出力中、第5および第6の回転磁界と、第5および第6のロータ101,103が、前述した第1回転機70に関する式(97)で表されるような回転数に関する共線関係を保ちながら回転する。
すなわち、第5および第6の回転磁界の回転数を第3磁界回転数Nmf3とし、第5および第6のロータ101,103の回転数をそれぞれ、第5および第6のロータ回転数Nr5,Nr6とすると、これらの回転数Nmf3、Nr5およびNr6の間に、前記式(97)、図49および図50で表されるような関係が、第3ステータ102への電力供給時および発電時のいずれの場合にも成立する。また、第3ステータ102に供給された電力および第3磁界回転数Nmf3と等価のトルクを、第3駆動用等価トルクTse3とし、第3ステータ102で発電した電力および第3磁界回転数Nmf3と等価のトルクを、第3発電用等価トルクTge3とする。さらに、第5および第6のロータ101,103に伝達されるトルクをそれぞれ、第5ロータ伝達トルクTr5および第6ロータ伝達トルクTr6とする。これらの第3駆動用等価トルクTse3(第3発電用等価トルクTge3)、第5および第6のロータ伝達トルクTr5,Tr6の間に、前記式(98)〜(100)で表されるような関係が成立し、これらのトルクの比は、Tse3(Tge3):Tr5:Tr6=1:1:2で表される。
また、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、第3ステータ102に供給する電力と、電力の供給に伴って発生する第5および第6の回転磁界の第3磁界回転数Nmf3を制御する。さらに、ECU2は、第3PDU43を制御することによって、第3ステータ102で発電する電力と、発電に伴って発生する第5および第6の回転磁界の第3磁界回転数Nmf3を制御する。
また、図77に示すように、ECU2には、第4回転角センサ67が接続されており、第4回転角センサ67は、第5ロータ101の回転角度位置を検出するとともに、その検出信号をECU2に出力する。ECU2は、検出された第5ロータ101の回転角度位置に基づいて、第5ロータ回転数Nr5を算出する。また、第6ロータ103がクランク軸3aに直結されているため、ECU2は、検出されたクランク軸3aの回転角度位置に基づいて、第6ロータ103の回転角度位置を算出するとともに、第6ロータ回転数Nr6を算出する。
以上のように、動力装置1Cでは、図75と前述した図39との比較から明らかなように、第1遊星歯車装置PS1、第1および第2の回転機70,80と、左右の前輪WFL,WFRの連結関係は、第2実施形態とまったく同じである。一方、第2実施形態と異なり、クランク軸3aおよび第6ロータ103が、互いに機械的に直結されるとともに、第5ロータ101が、第1キャリアC1、第1および第3のロータ71,81に機械的に連結されている。
以上の連結関係から、前述した各種のギヤによる変速を無視すれば、動力装置1Cにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図79のように表される。また、動力装置1Cの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。図79と前述した第1実施形態の動力装置1に関する図23との比較から明らかなように、これらの動作モードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、第1実施形態と同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。
なお、各種の動作モード中、第1〜第3の回転機70〜100の制御は、前述した各種のセンサ51、56〜65および67からの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。この場合における制御は、前記式(38)〜(96)において、前述した第1実施形態における各種のパラメータNMF1、NMF2、NM3、TSE1、TGE1、TSE2、TGE2、TM3、およびTG3をそれぞれ、Nmf1、Nmf2、Nmf3、Tse1、Tge1、Tse2、Tge2、Tse3、およびTge3に置き換えるとともに、第1および第2の極対数比α,βを値1.0に、第2ギヤ比G2を値1.0に、それぞれ置き換えて、行われる。以上により、本実施形態によれば、第3実施形態による効果を同様に得ることができる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、永久磁石101aが本発明における第3磁石に、第1および第2のコア103a,103bが本発明における第3軟磁性体に、それぞれ相当する。また、第1遊星歯車装置PS1が、本発明における差動装置に相当する。その他の対応関係については、第2実施形態と同様である。
なお、前述した第3および第4の実施形態では、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24、71,81は、互いに直結されているが、第5ロータ94,101に連結されていれば、必ずしも互いに直結されていなくてもよい。
次に、図80を参照しながら、本発明の第5実施形態による動力装置1Dについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Dは、第1実施形態と比較して、第2遊星歯車装置PS2に代えて、エンジン3の動力を変速して前述した第2メンバ(第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24)に伝達するための変速装置111を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Dについて、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図80に示す変速装置111は、ギヤ式の有段自動変速装置であり、入力軸(図示せず)および出力軸112と、これらの入力軸および出力軸112に設けられた複数の遊星歯車装置と、入力軸と出力軸112の間を接続・遮断する摩擦式のクラッチ(いずれも図示せず)を有している。変速装置111では、前進用の第1速、第2速および第3速と後進用の1つの変速段から成る計4つの変速段が設定されており、上記のクラッチの接続中、入力軸に入力された動力は、これらの4つの変速段の1つの変速比により変速された状態で、出力軸112に出力される。また、図81に示すように、変速装置111はECU2に接続されており、その変速段の変更やクラッチの接続・遮断動作は、ECU2によって制御される。
また、図80に示すように、動力装置1Dでは、第1実施形態と異なり、第3回転機31のロータ33は、フライホイールを介してクランク軸3aに機械的に直結されている。また、変速装置111の入力軸は、ロータ33と一体になっており、クランク軸3aに機械的に直結されている。さらに、変速装置111の出力軸112には、ギヤ113が一体に設けられており、このギヤ113は、前述したアイドラギヤ8に噛み合っている。以上のように、前述した第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24は、アイドラギヤ8、ギヤ113および変速装置111を介して、クランク軸3aに機械的に連結されており、第3回転機31のロータ33は、クランク軸3aに機械的に直結されている。
なお、図示しないが、第1ステータ13や、第2ステータ23、ステータ32、第1〜第3のPDU41〜43の接続関係は、第1実施形態と同様であり、動力装置1Dにおいても、第1回転機11の第1ステータ13と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されており、第2回転機21の第2ステータ23と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されている。
以上の構成の動力装置1Dでは、図80と前述した図2との比較から明らかなように、第1遊星歯車装置PS1、第1および第2の回転機11,21と、左右の前輪WFL,WFRの連結関係は、第1実施形態とまったく同じである。一方、第1実施形態と異なり、クランク軸3aおよび第3回転機31のロータ33は、互いに直結されており、エンジン回転数NEと第3回転機回転数NM3は、互いに等しい。また、変速装置111の出力軸112は、ギヤ113や、アイドラギヤ8、ギヤCGを介して、第2メンバに連結されており、第2メンバの回転数と変速装置111の出力軸112の回転数は、これらのギヤ113,CGによる変速を無視すれば、互いに等しい。以上から、動力装置1Dにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図82のように表される。以下、動力装置1Dの各種の動作について、同図に示すような速度共線図を参照しながら説明する。
動力装置1Dの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。これらの動作モードにおける各種の制御は、第1実施形態と同様、前述した各種のセンサ51〜62からの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。以下、これらの動作モードについて、停車中ENG始動モードから順に、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
・停車中ENG始動モード
停車中ENG始動モードでは、変速装置111のクラッチにより入力軸と出力軸112の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよび第3回転機31のロータ33と第2メンバとの間を遮断する。その状態で、第3回転機31に電力を供給し、ロータ33をクランク軸3aとともに正転させる。この場合、第3回転機回転数NM3を、エンジン回転数NEが前述した始動時用回転数NSTになるように制御し、その状態で、クランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、第1実施形態と同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
また、この場合、上述したクラッチによるロータ33と第2メンバの間の遮断によって、第3回転機31の動力は、左右の前輪WFL,WFRには伝達されない。それに加え、第1および第2の回転機11,21を例えば相関短絡させることによって、第2および第4のロータ15,25に静止状態に保持するようなトルクを発生させ、それにより、左右の前輪WFL,WFRを静止状態にそれぞれ保持する。以上により、図82に示すように、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが値0に保持され、車両Vが静止状態に保持される。なお、停車中、エンジン3が運転しているときには、変速装置111のクラッチによってクランク軸3aと左右の前輪WFL,WFRの間を遮断し、それにより、エンジン3の動力は、左右の前輪WFL,WFRに伝達されず、また、上述した第1および第2の回転機11,21の制御によって、左右の前輪WFL,WFRを静止状態にそれぞれ保持する。
・ENG発進モード
ENG発進モード中、エンジン3の動力を増大させるとともに、その一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給するとともに、第1および第2の回転磁界を正転させる。さらに、停車中ENG始動モードで述べたようにそれまで遮断されていた変速装置111のクラッチを、徐々に接続することによって、クランク軸3aと第2メンバの間を徐々に接続する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図83のように表される。
図83から明らかなように、ENG発進モード中、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、エンジン3から変速装置111を介して第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。この場合、上述したように、変速装置111のクラッチにより、クランク軸3aと第2メンバの間を徐々に接続するので、エンジン3から左右の前輪WFL,WFRに伝達される左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTを漸増させることができる。したがって、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRからエンジン3に急激に大きな負荷が作用するのを防止でき、エンジンストールを発生させることなく、車両Vを発進させることができる。
また、ENG発進モード中、第1実施形態と同様、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2を、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように、前記式(39)が成立するように制御する。また、第1および第2の回転機11,21に供給する電力を、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ要求トルクTREQの1/2になるように制御する。以上により、車両Vの良好な直進性を得ることができる。
以下、この場合における第1〜第3の回転機11〜31の制御について、具体的に説明する。図83と前述した図26との比較から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(40)で表されることから、第1駆動用等価トルクTSE1は次式(140)で表される。
TSE1=-{TREQ(2・β・G1+G1+1)/2+(β・G1+G1)T2T}/(β・G1+G1+1+α)
……(140)
また、上述したように、変速装置111のクラッチにより、クランク軸3aと第2メンバの間を徐々に接続することから、エンジン3から第2メンバに伝達される第2メンバ伝達トルクT2Tは、漸増する。このため、第2メンバ伝達トルクT2Tを算出するとともに、算出した第2メンバ伝達トルクT2Tに応じ、上記の式(140)が成立するように、第1回転機11に供給する電力を制御する。第2メンバ伝達トルクT2Tは、エンジン3のスロットル弁の開度、変速装置111の変速比、およびクラッチの接続度合に応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。
さらに、第2駆動用等価トルクTSE2と、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTと、第2メンバ伝達トルクT2Tの関係は、前記式(44)で表されることから、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(141)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、算出した第2メンバ伝達トルクT2Tに応じ、この式(141)が成立するように制御される。
TSE2=-{TREQ(2・α+1+G1)/2+(α+1)T2T}/(α+1+G1+β・G1) ……(141)
・ENG直進モード
ENG直進モードでは、第1実施形態と同様、通常直進モード、充電直進モードおよびアシスト直進モードが、要求動力に応じて選択される。以下、これらの運転モードについて、通常直進モードから順に説明する。
・通常直進モード
通常直進モードでは、エンジン3の動力を要求動力になるように制御し、ENG発進モードと同様、エンジン3から第3回転機31に伝達される動力の一部を用いて発電を行うとともに、発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図83と同様に表される。この場合にも、ENG発進モードの場合と同様、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
また、通常直進モードでは、変速装置111の変速比を、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NEOBJになるように、制御する。この場合、目標エンジン回転数NEOBJは、車速および要求トルクTREQに応じ、第1実施形態とは異なる所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップは、変速装置111の変速比、目標エンジン回転数NEOBJ、車速、および要求トルクTREQの間の関係を、実験によりあらかじめ求め、マップ化したものである。さらに、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。これにより、車両Vの良好な直進性を得ることができる。さらに、左右の前輪WFL,WFRに伝達される動力の和(以下「左右の前輪伝達動力」という)は、エンジン3の動力と等しくなる。
・充電直進モード
充電直進モード中、第1実施形態と同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも大きな最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置111の変速比を、通常直進モードと同様に制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行い、発電した電力の一部をバッテリ44に充電するとともに、残りを第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する余剰分が、バッテリ44に電力として充電される。また、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、通常直進モードと同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。
以上により、充電直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、この左右の前輪伝達動力と、バッテリ44に充電される電力(エネルギ)との和は、エンジン3の動力と等しくなる。また、充電直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図83と同様である。
・アシスト直進モード
アシスト直進モード中、第1実施形態と同様、エンジン3の動力を、要求動力よりも小さな最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置111の変速比を通常直進モードと同様に制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力に加え、バッテリ44の電力を、第1および第2の回転機11,21に供給する。この場合、上記のように最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力の要求動力に対する不足分が、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21への電力供給によって補われる。また、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御する。
以上により、アシスト直進モード中、左右の前輪伝達動力は、要求動力と等しくなるとともに、バッテリ44からの電力(エネルギ)とエンジン3の動力の和と等しくなる。また、アシスト直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、前述した図83と同様である。
・ENG旋回モード
ENG旋回モードには、第1実施形態と同様、第1および第2の右旋回アシストモードが含まれる。まず、第1右旋回アシストモードについて説明する。
・第1右旋回アシストモード
第1右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置111の変速比を通常直進モードと同様に制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTをそれぞれ、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQになるように制御する。前述したように、左前輪要求トルクTLREQは、右前輪要求トルクTRREQよりも大きな値に設定されている。
以上により、第1右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、左前輪伝達トルクTWLTが右前輪伝達トルクTWRTよりも大きくなり、その結果、小さな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左右の前輪伝達動力が要求動力になる。
以下、第1右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図84のように表される。同図に示すように、前述した図28の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。
このような場合には、基本的には、第2および第3の回転機21,31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に供給し、第1回転磁界を正転させる。この場合、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力が、左右の前輪要求トルクTLREQ,TRREQと左右の前輪回転数NWFL,NWFRによって定まる要求動力に対して余るときには、その余剰分は、第2および第3の回転機21,31で発電した電力をバッテリ44に充電することで、消費される。逆に、不足するときには、その不足分は、バッテリ44から第1回転機11に電力をさらに供給することで、補われる。それでも不足する場合には、その不足分は、第3回転機31で発電を行わずに、バッテリ44からの電力供給により第3回転機31から動力を出力することで、補われる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図84のように表される。
図84から明らかなように、第1実施形態と同様、エンジン3(および第3回転機31)から第2メンバに動力が伝達され、その結果、第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24が正転する。また、第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転磁界が逆転し、第2発電用等価トルクTGE2は、逆転している第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を低下させるように作用する。さらに、第1駆動用等価トルクTSE1と、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tと、第2発電用等価トルクTGE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
また、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21に電力を供給し、第2回転磁界を正転させる。
次に、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図85のように表される。同図に示すように、この場合、前述した図29の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの回転差は比較的小さいため、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。
このような場合には、基本的には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。また、最良燃費動力に制御されるエンジン3の動力が要求動力に対して余るときには、その余剰分は、第3回転機31で発電した電力をバッテリ44に充電することで、消費される。逆に、不足するときには、その不足分は、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給することで、補われる。それでも不足する場合には、その不足分は、第3回転機31で発電を行わずに、バッテリ44からの電力供給により第3回転機31から動力を出力することで、補われる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図85のように表される。
図85から明らかなように、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、エンジン3(および第3回転機31)から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tとともに、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRは、引き続き駆動され、正転する。
また、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31の制御において、エンジン3の動力の一部を用いて第3回転機31で発電した電力をそのまま、第1および第2の回転機11,21に供給する場合には、エンジン3の動力が、第1遊星歯車装置PS1および第1〜第3の回転機11〜31を介して、左右の前輪WFL,WFRに分配され、左前輪WFLに分配されるエンジン3の動力は、右前輪WFRのそれよりも大きくなる。
・第2右旋回アシストモード
第2右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、基本的には、エンジン3の動力を最良燃費動力になるように制御する。また、変速装置111の変速比を、通常直進モードと同様に制御することによって、エンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEOBJになるように制御する。以上により、エンジントルクTENGは、目標エンジントルクTEOBJになるように制御される。さらに、第1〜第3の回転機11〜31を制御することによって、左前輪伝達トルクTWLTを左前輪要求トルクTLREQになるように制御し、右前輪WFRに作用する制動トルクを右前輪要求制動トルクBRREQになるように制御する。
以上により、第2右旋回アシストモード中、第1実施形態と同様、左前輪WFLには駆動力が、右前輪WFRには制動力が、それぞれ作用し、その結果、大きな旋回アシスト力が左右の前輪WFL,WFRに作用し、車両Vの右旋回アシストが行われる。これにより、車両Vの向きを安定的かつ迅速に変更することができる。また、左前輪WFLに伝達される動力と、右前輪WFRに作用する制動力との差が、要求動力になる。
以下、第2右旋回アシストモード中の動作について、まず、低車速走行中の動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図86のように表される。同図に示すように、前述した図30の場合と同様、低車速走行中における右旋回時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。
このような場合には、基本的には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を第1および第2の回転機11,21に供給し、第1回転磁界を正転させるとともに、第2回転磁界を逆転させる。この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図86のように表される。
図86から明らかなように、図30の場合と同様、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。さらに、第2駆動用等価トルクTSE2は、左前輪WFLから第1メンバに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
また、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向がいずれも、正転方向になる場合がある。その場合には、第2回転機21で発電を行うとともに、発電した電力を、第1回転機11に供給する。
次に、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図87のように表される。同図に示すように、高車速走行中における右旋回時、前述した図31の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。
このような場合には、基本的には、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行う。また、第2回転機21において、後述するように伝達される動力を用い、発電を行う。さらに、第2および第3の回転機21,31で発電した電力を、第1回転機11に供給し、第1回転磁界を正転させる。また、この場合における各種の回転要素の間のトルクの関係は、例えば図87のように表される。
図87から明らかなように、第1実施形態と同様、エンジン3から第2メンバに動力が伝達され、その結果、第2メンバ、すなわち、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24が正転する。また、第2回転機21での発電に伴って発生した第2回転磁界が正転し、第2発電用等価トルクTGE2は、正転している第2回転磁界の第2磁界回転数NMF2を低下させるように作用する。
さらに、第1実施形態と同様、第1駆動用等価トルクTSE1は、エンジン3から第2メンバに伝達された第2メンバ伝達トルクT2Tを反力として、左前輪WFLに伝達され、左前輪WFLを引き続き正転させる。すなわち、駆動力が左前輪WFLに作用する。また、第2発電用等価トルクTGE2は、左前輪WFLから第1メンバに作用する走行抵抗を反力として、右前輪WFRに伝達され、右前輪WFRを逆転させるように作用する。すなわち、制動力が右前輪WFRに作用する。
また、前述したように、第2右旋回アシストモード中には、左前輪WFLに駆動力を作用させるとともに、右前輪WFRに制動力を作用させる。このため、左前輪要求トルクTLREQが比較的大きく、左前輪WFLに作用する駆動力が大きい場合には、車両Vがオーバーステア状態になるおそれがあり、これを回避するために、第2右旋回アシストモードによる運転は実行されない。
一方、車両Vの左旋回中には、左旋回アシスト力を生じさせる第1および第2の左旋回アシストモードが選択される。これらの第1および第2の左旋回アシストモードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、上述した第1および第2の右旋回アシストモードとそれぞれ同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。
・ENG後進モード
ENG後進モード中、変速装置111の変速段を、後進用の1つの変速段に設定し、エンジン3の動力の一部を用いて、第3回転機31で発電を行うとともに、発電した電力を、第1および第2の回転機11,21に供給し、第1および第2の回転磁界を逆転させる。ENG後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図88のように表される。
同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したENG発進モードを示す図83における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、ENG後進モード中、第1〜第3の回転機11〜31の制御は、第1および第2の回転磁界を逆転させる以外は、ENG直進モードやENG旋回モードと同様に行われる。また、車両Vの停止中から、ENG後進モードを開始する場合には、エンジンストールを防止するために、変速装置111のクラッチを徐々に接続する。
・減速運転モード
減速運転モードには、第1実施形態と同様、車両Vの直進中および旋回中にそれぞれ選択される「減速直進モード」および「減速旋回モード」が含まれる。まず、減速直進モードについて説明する。
・減速直進モード
減速直進モード中、変速装置111のクラッチによって、入力軸と出力軸112の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよびロータ33と第2メンバとの間を遮断する。その状態で、車両Vの慣性エネルギを用いて、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。減速直進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図89のように表される。
図89から明らかなように、この場合、第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2はそれぞれ、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2を低下させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2発電用等価トルクTGE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
また、減速直進モード中、第1および第2の回転機11,21を以下のように制御することによって、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを互いに等しくなるように制御するとともに、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、要求制動トルクBREQになるように制御する。これにより、車両Vを、その良好な直進性を確保しながら、減速させることができる。また、上述したように変速装置111のクラッチでクランク軸3aおよびロータ33と第2メンバとの間を遮断状態に保持するので、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力がクランク軸3aに伝達されるのを防止でき、それにより、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。
以下、減速直進モード中における第1および第2の回転機11,21の制御について、具体的に説明する。すなわち、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2は、第1実施形態と同様、前記式(39)が成立するように制御される。また、図89から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1と、左右の前輪トルクTWL,TWRの関係は、次式(142)で表される。
(β・G1+G1+1+α)TGE1+(β・G1+G1+1)TWL
+β・G1・TWR=0 ……(142)
この場合、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ要求制動トルクBREQになるように制御することから、第1発電用等価トルクTGE1は次式(143)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(143)が成立するように制御される。
TGE1=−(2・β・G1+G1+1)BREQ/(β・G1+G1+1+α) ……(143)
同様に、第2発電用等価トルクTGE2は次式(144)で表される。したがって、第2回転機21で発電する電力は、この式(144)が成立するように制御される。
TGE2=−(2・α+1+G1)BREQ/(α+1+G1+β・G1) ……(144)
・減速旋回モード
この減速旋回モードには、第1実施形態と同様、減速右旋回モードおよび減速左旋回モードが含まれる。これらのモード中の動作は互いに同様にして行われるので、以下、両者を代表して、減速右旋回モード中の動作についてのみ説明する。
・減速右旋回モード
減速右旋回モード中、上述した減速直進モードと同様、変速装置111のクラッチによって、入力軸と出力軸112の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよびロータ33と第2メンバとの間を遮断する。その状態で、第1および第2の回転機11,21を後述するように制御することによって、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRに制動トルクを作用させるとともに、両者WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ、左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御する。これにより、減速右旋回モード中、オーバーステアを抑制しながら、車両Vを安定的に旋回させることができる。
以下、減速右旋回モード中の動作について、まず、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図90のように表される。同図に示すように、この場合、前述した図34の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はそれぞれ、正転方向および逆転方向になる。このような場合には、第1回転機11で発電を行うとともに、発電した電力の一部を、バッテリ44に充電し、残りを、第2回転機21に供給するとともに、第2回転磁界を逆転させる。この場合、上述したように、変速装置111のクラッチでクランク軸3aおよびロータ33と第2メンバとの間を遮断状態に保持するので、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力がクランク軸3aに伝達されるのを防止でき、それにより、バッテリ44により大きな電力を充電することができる。
また、図90から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1発電用等価トルクTGE1は、第1磁界回転数NMF1を低下させるように作用し、第2駆動用等価トルクTSE2は、第2磁界回転数NMF2を逆転方向に上昇させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、減速直進モードと同様、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
減速右旋回モード中で且つ低車速走行中、第1〜第3の回転機11〜31は、具体的には、次のように制御される。この場合、図90と、前述した減速直進モードの場合を示す図89との比較から明らかなように、第1発電用等価トルクTGE1と、左右の前輪トルクTWL,TWRの関係は、前記式(142)で表される。また、この式(142)と、上述したように、左右の前輪WFL,WFRに作用する制動トルクをそれぞれ左右の前輪要求制動トルクBLREQ,BRREQになるように制御することから、第1発電用等価トルクTGE1は次式(145)で表される。したがって、第1回転機11で発電する電力は、この式(145)が成立するように制御される。
TGE1=−{(β・G1+G1+1)BLREQ+β・G1・BRREQ}
/(β・G1+G1+1+α) ……(145)
同様に、第2駆動用等価トルクTSE2は次式(146)で表される。したがって、第2回転機21に供給する電力は、この式(146)が成立するように制御される。
TSE2=−{(α+1+G1)BRREQ+α・BLREQ}
/(α+1+G1+β・G1) ……(146)
また、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2はそれぞれ、第1実施形態と同様、前記式(72)および(74)が成立するように制御される。
次に、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中における動作について説明する。この場合における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図91のように表される。同図に示すように、この場合には、前述した図35の場合と同様、左右の前輪回転数NWFL,NWFRの関係によって定まる第1および第2の回転磁界の回転方向はいずれも、正転方向になる。このような場合には、第1および第2の回転機11,21で発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ44に充電する。
図91から明らかなように、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、減速直進モードと同様、第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2はそれぞれ、正転している第1および第2の回転磁界の第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2を低下させるように作用する。また、第1発電用等価トルクTGE1と第2発電用等価トルクTGE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達され、左右の前輪回転数NWFL,NWFRを低下させるように作用する。すなわち、この場合にも、制動力が左右の前輪WFL,WFRに作用する。
減速右旋回モード中で且つ高車速走行中、第1および第2の回転機11,21は、具体的には、次のように制御される。すなわち、この場合、図91と図90の比較から明らかなように、第1回転機11で発電する電力は、前記式(145)が成立するように制御される。同様に、第2回転機21で発電する電力は、前記式(146)における第2駆動用等価トルクTSE2を第2発電用等価トルクTGE2に置き換えた次式(147)が成立するように制御される。さらに、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2はそれぞれ、第1実施形態と同様、前記式(72)および(74)が成立するように制御される。
TGE2=−{(α+1+G1)BRREQ+α・BLREQ}
/(α+1+G1+β・G1) ……(147)
なお、減速直進モードおよび減速旋回モード中、変速装置111のクラッチを接続状態に保持するとともに、左右の前輪WFL,WFRから受ける慣性による動力を用いて、第3回転機31で発電を行ってもよい。
・EV発進モード
EV発進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図92のように表される。EV発進モード中、第1実施形態と同様、バッテリ44から第1および第2の回転機11,21に電力を供給し、第1および第2の回転磁界を正転させる。また、変速装置111のクラッチによって、その入力軸と出力軸112の間を遮断し、ひいては、クランク軸3aおよびロータ33と第2メンバとの間を遮断する。
EV発進モード中、図92から明らかなように、第1実施形態と同様、第1駆動用等価トルクTSE1と第2駆動用等価トルクTSE2は、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。これにより、左右の前輪WFL,WFRが駆動される結果、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが正転方向に上昇し、ひいては、車両Vが前方に発進する。
また、この場合、第1実施形態と異なり、上述したように、クラッチでクランク軸3aおよびロータ33と第2メンバとの間を遮断状態に保持するので、第1および第2の回転機11,21の動力がクランク軸3aに伝達されるのを防止でき、したがって、それによる損失が発生するのを防止することができる。さらに、EV発進モード中、図92と、前述した図36との比較から明らかなように、第1および第2の磁界回転数NMF1,NMF2や、第1および第2の回転機11,21に供給する電力は、第1実施形態と同様に制御される。
これにより、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、左右の前輪回転数NWFL,NWFRが互いに等しくなるように制御されるとともに、左右の前輪伝達トルクTWLT,TWRTがそれぞれ、要求トルクTREQの1/2になるように制御される。その結果、EV発進モード中で且つ車両Vの直進時、車両Vの良好な直進性を得ることができる。また、EV発進モード中で且つ車両Vの旋回時、第1および第2の回転機11,21を制御することによって、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させることが可能である。
・EV走行中ENG始動モード
EV走行中ENG始動モードでは、EV発進モード中に遮断していた変速装置111のクラッチを、引き続き遮断状態に保持し、その状態で、バッテリ44から第3回転機31に電力を供給し、そのロータ33をクランク軸3aとともに正転させる。この場合、停車中ENG始動モードの場合と同様、第3回転機回転数NM3を、エンジン回転数NEが前述した始動時用回転数NSTになるように制御し、その状態で、クランク角度位置に応じ、エンジン3の燃料噴射弁や点火プラグの点火動作を制御することによって、エンジン3が始動される。したがって、EV走行中ENG始動モードでは、第1実施形態と同様、エンジン3の振動やノイズの発生を防止でき、商品性を高めることができる。
そして、エンジン3が始動した後には、変速装置111のクラッチによって、その入力軸と出力軸112の間を接続し、ひいては、クランク軸3aと第2メンバの間を接続する。それにより、第1および第2の回転機11,21の動力に加え、第2メンバに伝達されたエンジン3の動力が、第1および第3のメンバをそれぞれ介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。なお、EV走行中ENG始動モードでは、上述したように、EV発進モードと同様、変速装置111のクラッチによりクランク軸3aと第2メンバの間が遮断状態に保持されることから、第1および第2の回転機11,21は、上述したEV発進モードと同様に制御される。
・EV後進モード
EV後進モード中における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係は、例えば図93のように表される。同図における各種の回転要素の回転方向およびトルクの向きは、前述したEV発進モードを示す図92における各種の回転要素のそれらに対し、それぞれ逆向きになっているだけである。したがって、EV後進モード中、第1および第2の回転機11,21の制御は、第1および第2の回転磁界を逆転させる以外は、EV発進モードと同様に行われる。
以上のように、本実施形態によれば、第1回転機11の第2ロータ15および第1リングギヤR1が、左前輪WFLに機械的に連結されており、第2回転機21の第4ロータ25および第1サンギヤS1が、右前輪WFRに機械的に連結されている。また、第1回転機11の第1ロータ14、第2回転機21の第3ロータ24、および第1キャリアC1が、変速装置111を介して、エンジン3のクランク軸3aに機械的に連結されており、第3回転機31のロータ33が、クランク軸3aに機械的に連結(直結)されている。さらに、第1および第3の回転機11,31が互いに電気的に接続されており、第2および第3の回転機21,31が互いに電気的に接続されている。
また、図84〜図87を用いて説明したように、左右の前輪WFL,WFRに旋回アシスト力を作用させ、車両Vの左右の旋回アシストを行うことができる。この場合、第1実施形態と同様、左右の前輪WFL,WFRに連結された第1および第3のメンバが、前述した従来の場合と異なり、互いに無関係に回転するのではなく、回転数に関する共線関係を保ちながら回転するので、左右の前輪WFL,WFRの回転(回転数・トルク)を容易に精度良く制御でき、それにより、ドライバビリティを向上させることができる。また、通常直進モードなどにおいて説明したように、変速装置111の変速比を制御することによって、エンジン回転数NEを、より良好な燃費が得られる目標エンジン回転数NEOBJになるように制御するので、動力装置1Dの効率を高めることができる。
さらに、第1実施形態と同様、充電および放電可能なバッテリ44が、第1〜第3の回転機11〜31に電気的に接続されており、充電直進モードなどで説明したように、エンジン3の動力を最良燃費動力に制御するとともに、要求動力に対するエンジン3の動力の余剰分が、電力としてバッテリ44に充電される。また、アシスト直進モードなどで説明したように、要求動力に対するエンジン3の動力の不足分が、上記のバッテリ44に充電した電力を第1回転機11や第2回転機21、第3回転機31に供給することで補われる。以上により、エンジン3の最良燃費を得ることができ、したがって、動力装置1Dの効率をさらに高めることができる。
さらに、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機11,21が一般的なシングルピニオンタイプの遊星歯車装置と一般的な1ロータタイプの回転機を組み合わせた機能を有しているので、そのような遊星歯車装置および回転機を用いた場合と比較して、動力装置1Dの小型化を図ることができる。また、第1および第2の回転機11,21を作動させる上で、コア15a,25aから成る単一の軟磁性体列をそれぞれ用いればよいので、第2実施形態で述べた第1および第2の回転機70,80を用いる場合と比較して、第1および第2の第3の回転機11,21の構成を単純化でき、ひいては、動力装置1Dの構成の単純化とコストの削減を図ることができる。
さらに、第1実施形態と同様、第1および第2の回転機11,21において、第1および第2の極対数比α,βが値2.0にそれぞれ設定されている。これにより、第2実施形態の第1および第2の回転機70,80と比較して、第1および第2の駆動用等価トルクTSE1,TSE2(第1および第2の発電用等価トルクTGE1,TGE2)を低減できるので、第1および第2のステータ13,23、ならびに第1および第2のPDU41,42の小型化を図ることができ、ひいては、動力装置1Dのさらなる小型化およびコストの削減を図ることができる。
なお、第1、第3および第5の実施形態では、第1回転機11における第1電機子磁極が4個、第1磁石磁極が8個、コア15aが6個であり、すなわち、第1電機子磁極の数と第1磁石磁極の数とコア15aの数との比が、1:2:1.5の例であるが、これらの数の比が1:m:(1+m)/2(m≠1.0)を満たすものであれば、第1電機子磁極、第1磁石磁極およびコア15aの数として、任意の数を採用可能である。また、第1、第3および第5の実施形態では、コア15aを鋼板で構成しているが、他の軟磁性体で構成してもよい。さらに、第1、第3および第5の実施形態では、第1ステータ13および第1ロータ14を、径方向の外側および内側にそれぞれ配置しているが、これとは逆に、径方向の内側および外側にそれぞれ配置してもよい。また、第1、第3および第5の実施形態では、第1ステータ13、第1および第2のロータ14,15を径方向に並ぶように配置し、いわゆるラジアルタイプとして第1回転機11を構成しているが、第1ステータ13、第1および第2のロータ14,15を軸線方向に並ぶように配置し、いわゆるアキシャルタイプとして第1回転機11を構成してもよい。
さらに、第1、第3および第5の実施形態では、1つの第1磁石磁極を、単一の永久磁石14aの磁極で構成しているが、複数の永久磁石の磁極で構成してもよい。例えば、2つの永久磁石の磁極が第1ステータ13側で近づき合うように、これらの2つの永久磁石を逆V字状に並べることにより、1つの第1磁石磁極を構成することによって、前述した磁力線MLの指向性を高めることができる。また、第1、第3および第5の実施形態における永久磁石14aに代えて、電磁石を用いてもよい。さらに、第1、第3および第5の実施形態では、コイル13c〜13eを、U相〜W相の3相コイルで構成しているが、第1回転磁界を発生できれば、このコイルの相数はこれに限らず、任意である。また、スロット13bの数として、第1、第3および第5の実施形態で示した以外の任意の数を採用してもよいことはもちろんである。さらに、第1、第3および第5の実施形態では、U相〜W相のコイル13c〜13eをスロット13bに分布巻きで巻回しているが、これに限らず、集中巻きでもよい。また、第1、第3および第5の実施形態では、スロット13bや、第1永久磁石14a、コア15aを等間隔に配置しているが、不等間隔に配置してもよい。
さらに、第1、第3および第5の実施形態において、以上の第1回転機11に関する変形例は、第2回転機21についても同様に適用することが可能である。このことは、第3実施形態における第3回転機91についても同様である。
次に、図94を参照しながら、本発明の第6実施形態による動力装置1Eについて説明する。同図に示すように、この動力装置1Eは、第2実施形態と比較して、第2遊星歯車装置PS2に代えて、前述した変速装置111を備える点が主に異なっている。換言すれば、動力装置1Eは、第5実施形態と比較して、第1および第2の回転機11,21に代えて、第1および第2の回転機70,80を備える点が主に異なっている。以下、動力装置1Eについて、第2および第5の実施形態と異なる点を中心に説明する。
図94に示すように、第1キャリアC1、第1および第3のロータ71,81は、ギヤCG、アイドラギヤ8、ギヤ113および変速装置111を介して、クランク軸3aに機械的に連結されている。また、図94と前述した図80との比較から明らかなように、クランク軸3aと、第3回転機31のロータ33と、変速装置111の連結関係は、第5実施形態とまったく同じである。また、図94と前述した図39との比較から明らかなように、第1遊星歯車装置PS1、第1および第2の回転機70,80と、左右の前輪WFL,WFRの間の連結関係は、第2実施形態とまったく同じである。以上から、動力装置1Eにおける各種の回転要素の間の回転数の関係は、例えば図96のように表される。
なお、図示しないが、第1ステータ72や、第2ステータ82、ステータ32、第1〜第3のPDU41〜43の接続関係は、第2実施形態と同様であり、動力装置1Eにおいても、第1回転機70の第1ステータ72と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されており、第2回転機80の第2ステータ82と第3回転機31のステータ32は、互いに電気的に接続されている。
また、動力装置1Eの動作モードには、第1実施形態と同様、停車中ENG始動モード、ENG発進モード、ENG直進モード、ENG旋回モード、ENG後進モード、減速運転モード、EV発進モード、EV走行中ENG始動モード、およびEV後進モードが含まれる。図96と前述した第5施形態の動力装置1Dに関する図82との比較から明らかなように、これらの動作モードにおける制御や、それに応じて得られる動作は、第5実施形態と同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。
また、図95に示すように、動力装置1EのECU2には、前述した各種のセンサ51、および55〜65からの検出信号が出力される。さらに、各種の動作モード中、第1〜第3の回転機70〜31、および変速装置111の制御は、これらの検出信号に応じ、ECU2によって行われる。この場合における制御は、前記式(140)〜(147)において、前述した第5実施形態における各種のパラメータNMF1、NMF2、TSE1、TSE2、TGE1、およびTGE2をそれぞれ、Nmf1、Nmf2、Tse1、Tse2、Tge1、およびTge2に、第1および第2の極対数比α,βを値1.0に、それぞれ置き換えて、行われる。以上により、本実施形態によれば、第5実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、第5および第6の実施形態では、変速装置111は、ギヤ式の有段自動変速装置であるが、エンジン3からの動力を変速し、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24、71,81に伝達可能な任意の変速装置でもよい。例えば、ベルト式やトロイダル式の無段自動変速装置や油圧式の自動変速装置でもよい。また、変速装置111を省略してもよい。
さらに、第2、第4および第6の実施形態では、第1および第2のコア73a,73bを鋼板で構成しているが、他の軟磁性体で構成してもよい。また、第2、第4および第6の実施形態では、第1ステータ72および第1ロータ71を、径方向の外側および内側にそれぞれ配置しているが、これとは逆に、径方向の内側および外側にそれぞれ配置してもよい。さらに、第2、第4および第6の実施形態では、第1ステータ72、第1および第2のロータ71,73を径方向に並ぶように配置し、いわゆるラジアルタイプとして第1回転機70を構成しているが、第1ステータ72、第1および第2のロータ71,73を軸線方向に並ぶように配置し、いわゆるアキシャルタイプとして第1回転機70を構成してもよい。
また、第2、第4および第6の実施形態における永久磁石71aに代えて、電磁石を用いてもよい。さらに、第2、第4および第6の実施形態では、コイル72cを鉄芯72bに集中巻きで巻回しているが、これに限らず、分布巻き(波巻き)でもよい。また、第2、第4および第6の実施形態では、コイル72cを、U相〜W相の3相コイルで構成しているが、第1および第2の回転磁界を発生できれば、このコイルの相数はこれに限らず、任意である。さらに、第2、第4および第6の実施形態では、鉄芯72bや、永久磁石71a、第1および第2のコア73a,73bを等間隔に配置しているが、不等間隔に配置してもよい。
また、第2、第4および第6の実施形態において、以上の第1回転機70に関する変形例は、第2回転機80についても同様に適用することが可能である。このことは、第4実施形態における第3回転機100についても同様である。
また、第1、第2、第5および第6の実施形態では、第1キャリアC1、第1および第3のロータ14,24、71,81は、互いに直結されているが、クランク軸3aに連結されていれば、必ずしも互いに直結されていなくてもよい。さらに、第1および第5の実施形態において、第1回転機11に代えて第1回転機70を、または、第2回転機21に代えて第2回転機80を、それぞれ用いてもよい。また、第2および第6の実施形態において、第1回転機70に代えて第1回転機11を、または、第2回転機80に代えて第2回転機21を、それぞれ用いてもよい。さらに、第3実施形態において、第1〜第3の回転機11,21,91の1つまたは2つに代えて、対応する第1〜第3の回転機70,80,100の1つまたは2つをそれぞれ用いてもよい。また、第4実施形態において、第1〜第3の回転機70,80,100の1つまたは2つに代えて、対応する第1〜第3の回転機11,21,91の1つまたは2つをそれぞれ用いてもよい。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、いずれの実施形態においても、第1リングギヤR1および第2ロータ15、73は、互いに直結されているが、左前輪WFLに連結されていれば、必ずしも互いに直結されていなくてもよい。また、実施形態では、第1サンギヤS1および第4ロータ25、83は、互いに直結されているが、右前輪WFRに連結されていれば、必ずしも互いに直結されていなくてもよい。
さらに、実施形態では、第1リングギヤR1および第2ロータ15、73が左前輪WFLに連結されるとともに、第1サンギヤS1および第4ロータ25、83が右前輪WFRに連結されているが、これらの連結関係を逆に、すなわち、第1リングギヤR1および第2ロータ15、73を右前輪WFRに連結するとともに、第1サンギヤS1および第4ロータ25、83を左前輪WFLに連結してもよい。また、実施形態では、第1サンギヤS1を、第4ロータ25、83および右前輪WFRに、第1リングギヤR1を、第2ロータ15、73および左前輪WFLに、それぞれ連結しているが、これとは逆に、第1リングギヤR1を、第4ロータ25、83および右前輪WFRに、第1サンギヤS1を、第2ロータ15、73および左前輪WFLに、それぞれ連結してもよい。
さらに、実施形態では、本発明における第1差動装置(差動装置)は、シングルピニオンタイプの第1遊星歯車装置PS1であるが、各請求項で述べたような機能を有するものであれば、任意の装置で構成することが可能である。例えば、ダブルピニオンタイプの遊星歯車装置でもよい。あるいは、遊星歯車装置のギヤに代えて、表面間の摩擦によって動力を伝達する複数のローラを有し、遊星歯車装置と同等の機能を有するような装置でもよい。また、詳細な説明は省略するが、特開2008−39045に開示されるような複数の磁石や軟磁性体の組み合わせで構成された装置でもよい。さらに、第1遊星歯車装置PS1に代えて、歯数が互いに等しい第1および第2のサイドギヤと、両ギヤに噛み合う複数のピニオンギヤと、これらのピニオンギヤを回転自在に支持するデフケースを有するディファレンシャルギヤでもよい。その場合には、第5および第6の実施形態において、エンジン3の動力を、第1〜第3の回転機11、21、70、80、31を用いることなく、左右の前輪WFL,WFRに1:1の分配比で分配できるので、前述したENG発進モードや通常直進モードにおける第1〜第3の回転機11、21、70、80、31に関する制御が不要になり、したがって、ECU2の演算負荷を軽減することができる。
また、実施形態における各種の回転要素の間を連結する手段は、本発明における条件を満たす限り、任意に採用でき、例えば実施形態で述べたギヤに代えて、プーリなどを用いてもよい。さらに、実施形態では、本発明における蓄電装置は、バッテリ44であるが、キャパシタでもよい。また、バッテリ44を省略してもよい。さらに、実施形態では、エンジン3や第1〜第3の回転機11、70、21、80、31、91、100を制御する制御装置を、ECU2および第1〜第3のPDU41〜43で構成しているが、マイクロコンピュータと電気回路の組み合わせで構成してもよい。
また、実施形態では、本発明の原動機としてのエンジン3は、ガソリンエンジンであるが、動力を出力可能な出力部を有する任意の原動機でもよい。例えば、ディーゼルエンジンや、クランク軸が鉛直方向に配置された船外機などのような船舶推進機用エンジンを含む様々な産業用の内燃機関でもよく、あるいは、外燃機関や、電動機、水車、風車、人力により駆動されるペダルなどでもよい。さらに、実施形態では、本発明における左右の被駆動部は、左右の前輪WFL,WFRであるが、左右の後輪WRL,WRRでもよい。また、実施形態では、本発明における輸送機関は、車両Vであるが、例えば船舶や航空機でもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
本発明の第1実施形態による動力装置を、これを適用した車両とともに概略的に示す図である。 第1実施形態による動力装置を左右の前輪とともに概略的に示す図である。 図1に示す動力装置におけるステータや第1PDU、バッテリなどの接続関係を示すブロック図である。 図1に示す動力装置のECUなどを示すブロック図である。 図2に示す第1回転機の拡大断面図である。 図2に示す第1回転機の第1ステータ、第1および第2のロータを周方向に展開し、概略的に示す図である 図2に示す第1回転機の等価回路を、第1電機子磁極を2個、第1磁石磁極を4個、コアを3個で構成した場合について示す図である。 図2に示す第1回転機における磁界電気角速度、第1および第2のロータ電気角速度の間の関係の一例を示す速度共線図である。 図2に示す第1回転機の第1ロータを回転不能に保持した状態で、第1ステータに電力を供給した場合における動作を説明するための図である。 図9の続きの動作を説明するための図である。 図10の続きの動作を説明するための図である。 図9に示す状態から、第1電機子磁極が電気角2πだけ回転したときにおける第1電機子磁極やコアの位置関係を説明するための図である。 図2に示す第1回転機の第2ロータを回転不能に保持した状態で、第1ステータに電力を供給した場合における動作を説明するための図である。 図13の続きの動作を説明するための図である。 図14の続きの動作を説明するための図である。 図2に示す第1回転機のU相〜W相の逆起電圧の推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁石磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第1ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。 図2に示す第1回転機の第1駆動用等価トルク、第1および第2のロータ伝達トルクの推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁石磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第1ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。 図2に示す第1回転機のU相〜W相の逆起電圧の推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁石磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第2ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。 図2に示す第1回転機の第1駆動用等価トルク、第1および第2のロータ伝達トルクの推移の一例を、第1電機子磁極、コアおよび第1磁石磁極の数を、16、18および20にそれぞれ設定するとともに、第2ロータを回転不能に保持した場合について示す図である。 図2に示す第2回転機の拡大断面図である。 (a)図2に示す第1回転機の第1磁界回転数、第1および第2のロータ回転数の間の関係の一例を示す速度共線図を、第1サンギヤ、第1キャリアおよび第1リングギヤの間の回転数の関係の一例を示す速度共線図とともに示す図、(b)第1回転機および第1遊星歯車装置の間の連結によって構成される4つの回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 (a)図2に示す第1回転機および第1遊星歯車装置の間の連結によって構成される4つの回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図を、第2磁界回転数、第3および第4のロータ回転数の間の関係の一例を示す速度共線とともに示す図、(b)第1遊星歯車装置、第1および第2の回転機の間の連結によって構成される5つの回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、停車中ENG始動モードについて示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG発進モードの開始時について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG発進モード中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、通常直進モード中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG後進モード中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速直進モード中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV発進モード中について示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV走行中ENG始動モードについて示す速度共線図である。 図1に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV後進モード中について示す速度共線図である。 本発明の第2実施形態による動力装置を左右の前輪とともに概略的に示す図である。 図39に示す動力装置におけるステータや第1PDU、バッテリなどの接続関係を示すブロック図である。 図39に示す動力装置のECUなどを示すブロック図である。 図39に示す第1回転機の拡大断面図である。 図42のA−A線の位置で周方向に沿って破断した断面の一部を、第1および第2の回転磁界の発生時において示す展開図である。 図43に示す展開図の構成と機能的に同じ構成を示す図である。 図39に示す第1回転機の第1ロータを回転不能にした状態で第1および第2の回転磁界を発生させた場合における動作を説明するための図である。 図45の続きの動作を説明するための図である。 図39に示す第1回転機の動作中に構成される磁気回路を示す図である。 図39に示す第1回転機の第1ロータを回転不能にした状態で第1および第2の回転磁界を発生させた場合に第2ロータに伝達されるトルクの一例を模式的に示す図である。 図39に示す第1回転機の第1磁界回転数、第1および第2のロータ回転数の間の関係の一例を示す速度共線図を、(a)第1ロータを回転不能にした場合、(b)第2ロータを回転不能にした場合について、それぞれ示す図である。 図39に示す第1回転機の第1磁界回転数、第1および第2のロータ回転数の間の関係の一例を示す速度共線図を、(a)第1および第2のロータがいずれも回転している場合、(b)第1磁界回転数が値0の場合について、それぞれ示す図である。 図39に示す第1回転機の第2ロータを回転不能にした状態で第1および第2の回転磁界を発生させた場合における動作を説明するための図である。 図51の続きの動作を説明するための図である。 図39に示す第2回転機の拡大断面図である。 図39に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 本発明の第3実施形態による動力装置を左右の前輪とともに概略的に示す図である。 図55に示す動力装置におけるステータや第1PDU、バッテリなどの接続関係を示すブロック図である。 図55に示す動力装置におけるECUなどを示すブロック図である。 図55に示す第3回転機の拡大断面図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、停車中ENG始動モードについて示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG発進モードの開始時について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG発進モード中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、通常直進モード中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG後進モード中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速直進モード中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV発進モード中について示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV走行中ENG始動モードについて示す速度共線図である。 図55に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV後進モード中について示す速度共線図である。 本発明の第4実施形態による動力装置を左右の前輪とともに概略的に示す図である。 図75に示す動力装置におけるステータや第1PDU、バッテリなどの接続関係を示すブロック図である。 図75に示す動力装置におけるECUなどを示すブロック図である。 図75に示す第3回転機の拡大断面図である。 図75に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 本発明の第5実施形態による動力装置を左右の前輪とともに概略的に示す図である。 図80に示す動力装置におけるECUなどを示すブロック図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG発進モード中について示す速度共線図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第1右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第1右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第2右旋回アシストモード中で且つ低車速走行中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、第2右旋回アシストモード中で且つ高車速走行中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、ENG後進モード中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速直進モード中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速右旋回モード中で且つ低車速走行中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、減速右旋回モード中で且つ高車速走行中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV発進モード中について示す図である。 図80に示す動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を、EV後進モード中について示す図である。 本発明の第6実施形態による動力装置を左右の前輪とともに概略的に示す図である。 図94に示す動力装置におけるECUなどを示すブロック図である。 図94に示す動力装置の各種の回転要素の間の回転数の関係の一例を示す速度共線図である。 請求項1に係る発明の動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。 請求項2に係る発明の動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。 請求項5に係る発明の動力装置における各種の回転要素の間の回転数の関係およびトルクの関係の一例を示す速度共線図である。
符号の説明
1 動力装置
1A 動力装置
1B 動力装置
1C 動力装置
1D 動力装置
1E 動力装置
V 車両(輸送機関)
WFL 左前輪(左被駆動部)
WFR 右前輪(右被駆動部)
2 ECU
3 エンジン(原動機)
3a クランク軸(出力部)
11 第1回転機
13 第1ステータ
14 第1ロータ
14a 永久磁石(第1磁石)
15 第2ロータ
15a コア(第1軟磁性体)
21 第2回転機
23 第2ステータ
24 第3ロータ
24a 永久磁石(第2磁石)
25 第4ロータ
25a コア(第2軟磁性体)
31 第3回転機
33 ロータ(第5ロータ)
PS1 第1遊星歯車装置(第1差動装置、差動装置)
S1 第1サンギヤ(第3要素、第1要素)
R1 第1リングギヤ(第1要素、第3要素)
C1 第1キャリア(第2要素)
PS2 第2遊星歯車装置(第2差動装置)
S2 第2サンギヤ(第6要素、第4要素)
R2 第2リングギヤ(第4要素、第6要素)
C2 第2キャリア(第5要素)
111 変速装置
44 バッテリ(蓄電装置)
70 第1回転機
71 第1ロータ
71a 永久磁石(第1磁石)
72 第1ステータ
73 第2ロータ
73a 第1コア(第1軟磁性体)
73b 第2コア(第1軟磁性体)
80 第2回転機
81 第3ロータ
81a 永久磁石(第2磁石)
82 第2ステータ
83 第4ロータ
83a 第1コア(第2軟磁性体)
83b 第2コア(第2軟磁性体)
91 第3回転機
93 第3ステータ
94 第5ロータ
94a 永久磁石(第3磁石)
95 第6ロータ
95a コア(第3軟磁性体)
100 第3回転機
101 第5ロータ
101a 永久磁石(第3永久磁石)
102 第3ステータ
103 第6ロータ
103a 第1コア(第3軟磁性体)
103b 第2コア(第3軟磁性体)

Claims (6)

  1. 直進・旋回可能な輸送機関を推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置であって、
    出力部を有し、当該出力部から動力を出力する原動機と、
    第1回転磁界を発生させるための不動の第1ステータと、第1磁石で構成され、前記第1ステータに対向するように設けられた第1ロータと、第1軟磁性体で構成され、前記第1ステータと前記第1ロータの間に設けられた第2ロータとを有し、前記第1ステータと前記第1ロータと前記第2ロータの間で、前記第1回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴い、前記第1回転磁界、前記第2および第1のロータが、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1回転機と、
    第2回転磁界を発生させるための不動の第2ステータと、第2磁石で構成され、前記第2ステータに対向するように設けられた第3ロータと、第2軟磁性体で構成され、前記第2ステータと前記第3ロータの間に設けられた第4ロータとを有し、前記第2ステータと前記第3ロータと前記第4ロータの間で、前記第2回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴い、前記第2回転磁界、前記第4および第3のロータが、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第2回転機と、
    第5ロータを有し、当該第5ロータに入力された動力を電力に変換可能な第3回転機と、
    互いの間で動力を伝達可能で、当該動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1要素、第2要素および第3要素を有する第1差動装置と、を備え、
    前記第1回転機の前記第2ロータおよび前記第1要素は、前記左右の被駆動部の一方に機械的に連結され、
    前記第1回転機の前記第1ロータ、前記第2回転機の前記第3ロータ、および前記第2要素は、前記原動機の前記出力部に機械的に連結され、
    前記第2回転機の前記第4ロータおよび前記第3要素は、前記左右の被駆動部の他方に機械的に連結され、
    前記第3回転機の前記第5ロータは、前記原動機の前記出力部に機械的に連結され、
    前記第1回転機と前記第3回転機、および、前記第2回転機と前記第3回転機はそれぞれ、互いに電気的に接続されていることを特徴とする動力装置。
  2. 互いの間で動力を伝達可能で、当該動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第4要素、第5要素および第6要素を有する第2差動装置をさらに備え、
    前記第1回転機の前記第1ロータ、前記第2回転機の前記第3ロータおよび前記第2要素は、前記第4および第5の要素を介して、前記原動機の前記出力部に機械的に連結されており、
    前記第3回転機の前記第5ロータは、前記第6および第5の要素を介して、前記原動機の前記出力部に機械的に連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の動力装置。
  3. 前記原動機からの動力を変速し、前記第1回転機の前記第1ロータ、前記第2回転機の前記第3ロータ、および前記第2要素に伝達するための変速装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の動力装置。
  4. 充電および放電可能に構成され、前記第1〜第3の回転機に電気的に接続された蓄電装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の動力装置。
  5. 直進・旋回可能な輸送機関を推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置であって、
    出力部を有し、当該出力部から動力を出力する原動機と、
    第1回転磁界を発生させるための不動の第1ステータと、第1磁石で構成され、前記第1ステータに対向するように設けられた第1ロータと、第1軟磁性体で構成され、前記第1ステータと前記第1ロータの間に設けられた第2ロータとを有し、前記第1ステータと前記第1ロータと前記第2ロータの間で、前記第1回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴い、前記第1回転磁界、前記第2および第1のロータが、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1回転機と、
    第2回転磁界を発生させるための不動の第2ステータと、第2磁石で構成され、前記第2ステータに対向するように設けられた第3ロータと、第2軟磁性体で構成され、前記第2ステータと前記第3ロータの間に設けられた第4ロータとを有し、前記第2ステータと前記第3ロータと前記第4ロータの間で、前記第2回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴い、前記第2回転磁界、前記第4および第3のロータが、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第2回転機と、
    第3回転磁界を発生させるための不動の第3ステータと、第3磁石で構成され、前記第3ステータに対向するように設けられた第5ロータと、第3軟磁性体で構成され、前記第3ステータと前記第5ロータの間に設けられた第6ロータとを有し、前記第3ステータと前記第5ロータと前記第6ロータの間で、前記第3回転磁界の発生に伴ってエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴い、前記第3回転磁界、前記第6および第5のロータが、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第3回転機と、
    互いの間で動力を伝達可能で、当該動力の伝達中、互いの間に回転数に関する共線関係を保ちながら回転するとともに、当該回転数の関係を示す共線図において順に並ぶように構成された第1要素、第2要素および第3要素を有する差動装置と、を備え、
    前記第1回転機の前記第2ロータおよび前記第1要素は、前記左右の被駆動部の一方に機械的に連結され、
    前記第1回転機の前記第1ロータ、前記第2回転機の前記第3ロータ、および前記第2要素は、前記第3回転機の前記第5ロータに機械的に連結され、
    前記第2回転機の前記第4ロータおよび前記第3要素は、前記左右の被駆動部の他方に機械的に連結され、
    前記第3回転機の前記第6ロータは、前記原動機の前記出力部に機械的に連結され、
    前記第1回転機と前記第3回転機、および、前記第2回転機と前記第3回転機はそれぞれ、互いに電気的に接続されていることを特徴とする動力装置。
  6. 充電および放電可能に構成され、前記第1〜第3の回転機に電気的に接続された蓄電装置をさらに備えることを特徴とする、請求項5に記載の動力装置。
JP2008297791A 2008-11-21 2008-11-21 動力装置 Withdrawn JP2010120574A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008297791A JP2010120574A (ja) 2008-11-21 2008-11-21 動力装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008297791A JP2010120574A (ja) 2008-11-21 2008-11-21 動力装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010120574A true JP2010120574A (ja) 2010-06-03

Family

ID=42322291

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008297791A Withdrawn JP2010120574A (ja) 2008-11-21 2008-11-21 動力装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2010120574A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5309220B2 (ja) 移動装置
JP5362840B2 (ja) ハイブリッド車両
JP4505524B2 (ja) 動力装置
JP4310361B2 (ja) 動力装置
JP4505521B2 (ja) 動力装置
JP4637136B2 (ja) 動力装置
JP5348808B2 (ja) ハイブリッド車両
JP5354818B2 (ja) ハイブリッド車両
JP5250523B2 (ja) 動力装置
JP5220196B2 (ja) 動力装置
JP4382118B2 (ja) 動力装置
JP2017202723A (ja) 駆動装置
JP5256351B2 (ja) 動力装置
JP5170781B2 (ja) ハイブリッド車両
JP5153587B2 (ja) 動力装置
JP2009166723A (ja) 動力装置
JP5171783B2 (ja) 動力装置
JP2010120574A (ja) 動力装置
JP4948618B2 (ja) 動力装置
JP5075219B2 (ja) 動力装置
JP2011084115A (ja) 動力装置
JP4948617B2 (ja) 動力装置
JP5075218B2 (ja) 動力装置

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20120207