JP2010117646A - 機能性グリッド構造体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高いアスペクト比をもち、多様な目的に応用できる形状のグリッド構造体、及びそのグリッド構造体を簡易に作製でき、グリッド構造体がウエハーサイズを越える大きさであっても作製することのできるグリッド構造体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 例えば、光透過性支持体1の表面に、複数の細い直線状の凸部2を、互いに平行に一定のピッチで並ぶように形成する。斜め方向から機能性材料として金属材料を堆積させ、凸部2の上面および側面を被覆する機能性部材として金属細線6を形成し、グリッド構造体としてワイヤグリッド回折格子10を作製する。このような機能性部材は、中身のない、凸部2を被覆する薄い層にすぎないが、実効的には中身のつまった機能性部材と同様に機能し、中身のつまった機能性部材よりも容易に作製することができる。金属材料以外にも機能性材料として種々の材料を用いることで、様々な機能性素子を実現できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 例えば、光透過性支持体1の表面に、複数の細い直線状の凸部2を、互いに平行に一定のピッチで並ぶように形成する。斜め方向から機能性材料として金属材料を堆積させ、凸部2の上面および側面を被覆する機能性部材として金属細線6を形成し、グリッド構造体としてワイヤグリッド回折格子10を作製する。このような機能性部材は、中身のない、凸部2を被覆する薄い層にすぎないが、実効的には中身のつまった機能性部材と同様に機能し、中身のつまった機能性部材よりも容易に作製することができる。金属材料以外にも機能性材料として種々の材料を用いることで、様々な機能性素子を実現できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、光学部材や電極集合体として用いることの可能な機能性グリッド構造体及びその製造方法に関するものである。
ワイヤグリッド偏光子、波長板、および波長フィルタなど、多数の直線状の部材が互いに平行に一定のピッチで並んだ構造(以下、グリッド構造と略記することがある。)をもつ構造体が知られている。例えば、ワイヤグリッド偏光子を構成するワイヤグリッドがその例である。ワイヤグリッド偏光子は、入射光のうち、特定の向きの直線偏光成分を効率よく透過させるとともに、それに直交する直線偏光成分を効果的に反射する偏光子である。以下、ワイヤグリッドを例として、従来のグリッド構造体及びその製造方法について説明する。
図9は、基本的なワイヤグリッド偏光子100の構造を示す斜視図および部分拡大断面図である。ワイヤグリッド偏光子100では、透明基板101の上に、多数の直線状金属細線102が、互いに平行に一定のピッチ(隣り合う2本の細線の中心間の距離)Pで並んでいる。図9に細線と破線で示したように、光の入射面は、通常、金属細線102の長手方向に垂直な面である。ワイヤグリッド偏光子100にピッチPよりも十分に長い波長の光を入射させると、偏光方向が金属細線102の長手方向に平行な偏光成分(TE偏光)はワイヤグリッド偏光子100によって反射されやすく、偏光方向が長手方向に垂直な偏光成分(TM偏光)はワイヤグリッド偏光子100を透過しやすい。
ワイヤグリッド偏光子100の性能を決める最も重要な因子は、金属細線102のピッチPと入射光の波長λとの関係である。ピッチPが波長のほぼ1/2以下である範囲で、図9に示した素子は偏光子として機能する。ピッチPが波長のほぼ2倍より大きい範囲では、図9に示した素子は回折格子として機能する。ピッチPが波長のほぼ1/2倍〜2倍である範囲では、反射特性と透過特性が著しく変化する。これは、「レイリー共鳴」として知られており、入射光が図9に示した素子を通過するときに高次の回折光が生じることによって起こる。レイリー共鳴が起こる波長の前後において、ワイヤグリッド偏光子としての性能は著しく低下する。
従って、図9に示した素子をワイヤグリッド偏光子100として用いるためには、レイリー共鳴が起こるのを避けるために、金属細線102のピッチPは入射光の波長の1/2以下にすることが必要である。例えば、波長が400〜800nmである可視光を偏光分離するためには、ピッチPは400nm/2=200nm以下であることが求められる。
その他に、ワイヤグリッド偏光子100の性能を決める要因として、金属細線102のピッチP、ピッチPに対する金属細線102の幅Wの比率W/P、光の透過方向における金属細線102の厚さT、および金属細線を構成する金属材料の種類などがある。一般的な傾向としては、ピッチPが小さい方が、とくに短波長領域においてTM偏光の透過率が向上する。ピッチPが一定であれば、金属細線102の厚さTが大きい方が、透過光の偏光度が大きくなる。また、金属細線102の幅Wが小さい方が、TM偏光の透過率が大きくなる。従って、ワイヤグリッド偏光子100の性能向上のためには、幅Wに対する厚さTの比T/W、すなわち金属細線102の断面のアスペクト比をある程度以上に大きくする必要がある。金属材料としては、反射率が大きい金属、例えばアルミニウムや銀などを用いることが望ましい。
さて、ワイヤグリッド偏光子の作製には、通常、半導体素子の製造に用いられるのと同様の、フォトリソグラフィ法およびエッチング法が用いられるが、後述の特許文献1には、表面にウェーブ形状の微細凹凸を有する透明樹脂基板を用いることにより、フォトリソグラフィ法を用いずに、リフトオフ法によって作製するワイヤグリッド型偏光子が提案されている。
図10は、特許文献1に示されているワイヤグリッド偏光子110の作製方法のフローを示す断面図である。この作製方法では、まず、図10(a)に示した、一方の表面にウェーブ形状の微細な凹部111aおよび凸部111bを有する透明樹脂基板111を用意する。透明樹脂基板111は、例えば、ウェーブ形状の微細凹凸を有するスタンパーが取り付けられた金型を用いて、ポリカーボネート樹脂を射出成形法によって成形することによって作製する。スタンパーの微細凹凸のサイズは、例えば、凹部111aを基準とした凸部111bの高さが270nm、ピッチが300nmである。
そして、この透明樹脂基板111の微細凹凸面全体に、図10(a)に示すように、真空蒸着法、スパッタリング法、または化学気相成長法(CVD)などによって、ポリスチレンなどからなるマスキング層112を形成する。
次に、図10(b)に示すように、透明樹脂基板111の凹部111aに形成されたマスキング層112を残しつつ、凸部111bに形成されたマスキング層112を除去し、凸部111bの表面を露出させる。このマスキング層112の選択的な除去は、逆スパッタリング法や物理的エッチング法などを用いて行う。
次に、図10(c)に示すように、真空蒸着法、スパッタリング法、またはCVD法などによって、透明樹脂基板111の表面全体にわたって、アルミニウムや銀などの金属層113を形成する。
次に、マスキング層112が可溶な溶媒、例えば、ポリスチレン層であればイソプロピルアルコールなどの溶媒に透明基板111を浸漬し、マスキング層112とともに凹部111aに堆積した金属層113を除去し、図10(d)に示すように、凸部111bに堆積した金属層113のみを残す。この際、超音波を照射して、超音波による振動によって、凹部111aと凸部111bの中間で金属層113を切断するのがよい。
以上のようにして、透明樹脂基板111の表面の凸部111bのみに金属層113が形成され、凹部111aにおいては基板111の表面が露出した構造のワイヤグリッド型偏光子110が得られる。特許文献1には、このようにして、明るく、また偏光特性に優れたワイヤグリッド型偏光子110を容易に作製することが可能であると述べられている。
また、後述の特許文献2には、同様に表面にウェーブ形状の微細凹凸を有する透明基板を用い、斜め方向から金属材料を堆積させることによって、フォトリソグラフィ法を用いずにワイヤグリッド型偏光子を作製する方法が提案されている。
また、後述の特許文献3には、透明基板の上部に複数の直線状の凹凸構造が形成されており、凸部の上面及び/又は側面に接して導電体が設けられているワイヤグリッド偏光子が提案されている。図11は、特許文献3の図9〜11に示されているワイヤグリッド偏光子120a〜120cの構造を示す断面図である。
図11(a)は、凸部122の上面から側面の一部(上部)にかけて上部導電体層124と側部導電体層125aとが連設されている偏光素子120aを示し、図11(b)は、凸部122の側面の一部(上部)にのみ側部導電体層125bが形成されている偏光素子120bを示している。特許文献3には、偏光素子120aの上部導電体層124および側部導電体層125aは、凸部122の上方からスパッタリング法やCVD法などによって導電体材料を堆積させることによって形成すると記されている。また、偏光素子120bは、偏光素子120aと同様に上部導電体層124および側部導電体層125aを形成した後、研磨などによって上部導電体層124を除去することで形成すると記されている。
図11(c)は、凸部122の側面全面に側部導電体層125cが形成されている偏光素子120cを示している。特許文献3には、側部導電体層125cは、凹凸構造の全面に無電解メッキなどにより導電体層を形成し、その後、指向性の高い、非等方性エッチング(例えば、反応性イオンエッチング)を用いて、凸部122の上面と凹部123の底面に堆積した導電体層を選択的に除去することによって形成すると記されている。
特許文献3の主旨は、側部導電体層125bや125cのように、透明基板121の表面に直交する方向に主面をもつ導電体層によって、ワイヤグリッド偏光子を構成することにある。凸部122の上面に形成される上部導電体層124は、無用で、TM偏光の透過率を低下させる邪魔なものとみなされている。従って、ワイヤグリッド偏光子120bおよび120cの例のように、作製工程の途中で形成される上部導電体層124は、最終的には研磨や非等方性エッチングによって除去されるのが原則である。ワイヤグリッド偏光子120aのように上部導電体層124が残されている場合でも、それは偏光子を構成する導電体層として上部導電体層124を活用しようという意図からではなく、除去する手間を惜しんでのことに過ぎない。実際、特許文献3には、偏光素子120bでは、上部導電体層124を除去することによって、偏光素子120aに比べて挿入損失が向上すると述べられている。また、上部導電体層124の幅を最適化するといった記述は全くない。同様なワイヤグリッド偏光子は、後述の特許文献4にも提案されている。
既述したように、ワイヤグリッド偏光子などのグリッド構造体の製造には、通常、リソグラフィ法とエッチング法とが用いられる。この場合、高いアスペクト比をもつグリッド構造体の作製には高い加工精度が必要になり、アスペクト比が大きくなるほど、製造時に発生する面内加工ばらつきが大きくなったり、長い加工時間が必要になったりするなどの問題が発生し、製造コストが上昇する。
また、半導体素子の製造に用いられる半導体プロセスは、適用できる基板サイズがウエハーと同じ程度のサイズまでに限定される。従って、半導体プロセスは、ウエハーサイズを越える大面積のグリッド構造体の作製には対応できない。
特許文献1〜4には、表面に複数の直線状の微細な凹凸構造が形成された透明基板を用いて、ワイヤグリッド偏光子を形成する方法が提案されている。とくに、特許文献1、2および4は、フォトリソグラフィ法などの微細加工方法を用いないでワイヤグリッド偏光子を形成している点で注目される。しかし、特許文献1および2のように、ウェーブ形状の凹凸構造を有する基板にグリッド構造体を形成した場合、応用範囲が極めて限定される。また、高いアスペクト比をもつグリッド構造体を作製することはできない。
特許文献3および4では、断面が矩形状の凹凸構造の凹部や凸部側面に薄膜状の導電体を堆積させることによって、透明基板の表面に直交する方向に主面をもつ導電体層を形成し、これを金属細線として用いてワイヤグリッド偏光子を構成する例が示されている。この方法では、高いアスペクト比を有する金属細線を容易に形成できる利点がある。しかし、導電体層の成膜膜厚が、ワイヤグリッド偏光子を構成する金属細線の幅になるので、金属細線の幅を大きくするには、導電体層を成膜する際の膜厚を厚くするしかなく、成膜できる膜厚によってワイヤグリッド偏光子の設計が制約される。
一方、特許文献3および4では、作製工程の途中で凸部の上面に形成される上部導電体層は無用なものとみなされ、わざわざ手間をかけて除去されるのが原則である。偏光子を構成する導電体層として上部導電体層を活用しようという意図や提案は、特許文献3および4には示されていない。このため、凹凸構造に厚さむらのない導電体層を形成する工程と、凸部の上方および凹部底面に形成された導電体層を選択的に除去する工程が必要になり、製造工程が多く複雑になることでコスト高になる。また、導電体層を形成する際の導電体層の膜質や膜厚のばらつきと、導電体層の一部を選択的に除去する際のばらつきが二重に重なるため、グリッド構造の均一性が低下する。特に大面積のグリッド構造を形成する際に、均一性を確保することが困難になる。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、高いアスペクト比をもち、多様な目的に応用できる形状のグリッド構造体、及びそのグリッド構造体を簡易に作製でき、しかも、そのグリッド構造体がウエハーサイズを越える大きさであっても作製することのできるグリッド構造体の製造方法を提供することにある。
即ち、本発明は、
複数の細い直線状の凸部が互いに平行に一定のピッチで並んでいる表面構造を有する 基体と、
前記凸部の上面に配置された、細い直線状の上部機能性材料層と、
前記凸部の側面全体及び側方に、前記上部機能性材料層に連接して配置され、前記上 部機能性材料層とともに細線状の機能性部材を構成する、細い直線状の側部機能性材料 層と
からなり、隣り合う前記凸部間の凹部底面には前記基体が実質的に露出している、機能性グリッド構造体に係わるものである。
複数の細い直線状の凸部が互いに平行に一定のピッチで並んでいる表面構造を有する 基体と、
前記凸部の上面に配置された、細い直線状の上部機能性材料層と、
前記凸部の側面全体及び側方に、前記上部機能性材料層に連接して配置され、前記上 部機能性材料層とともに細線状の機能性部材を構成する、細い直線状の側部機能性材料 層と
からなり、隣り合う前記凸部間の凹部底面には前記基体が実質的に露出している、機能性グリッド構造体に係わるものである。
また、
基体の表面に、複数の細い直線状の凸部が互いに平行に一定のピッチで並んでいる表 面構造を形成する工程と、
前記凸部の上面、並びに側面全体及び側方に、それぞれ、細い直線状の上部機能性材 料層並びに側部機能性材料層を形成する工程と
を有する、機能性グリッド構造体の製造方法に係わるものである。
基体の表面に、複数の細い直線状の凸部が互いに平行に一定のピッチで並んでいる表 面構造を形成する工程と、
前記凸部の上面、並びに側面全体及び側方に、それぞれ、細い直線状の上部機能性材 料層並びに側部機能性材料層を形成する工程と
を有する、機能性グリッド構造体の製造方法に係わるものである。
本発明の機能性グリッド構造体では、基体の表面に、複数の細い直線状の凸部が互いに平行に一定のピッチで並ぶように形成されている。そして、前記凸部の上面に細い直線状の上部機能性材料層が配置されているばかりでなく、前記凸部の側面全体及び側方にも、前記上部機能性材料層に連接して細い直線状の側部機能性材料層が配置され、これらの層によって機能性部材が構成されている。前記機能性部材は、中身のない、前記凸部の上面と側面とを被覆する薄い層にすぎないが、実効的には中身のつまった機能性部材と同様に機能する。
前記機能性部材の有効な幅は、前記凸部の幅に、側方にはみ出して形成される2つの前記側部機能性材料層の成膜膜厚を加算した大きさになる。また、前記機能性部材の有効な厚さは、前記基体の表面に垂直な方向における凸部の厚さに、前記上部機能性材料層の成膜膜厚を加算した大きさになる。そして、前記機能性部材は、これと同じ幅と厚さとを有する、中身のつまった機能性部材よりも、はるかに容易に作製することができる。従って、本発明の機能性グリッド構造体では、大きな有効厚さを有する前記機能性部材を作製することができ、隣り合うこれらの前記機能性部材によって挟まれる、厚さの大きい空間領域を、前記機能性部材の機能が発現する空間領域として利用することができる。
しかも、本発明の機能性グリッド構造体では、前記機能性部材の寸法が、予め形成されている前記凸部のピッチ、幅、及び厚さと、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層の成膜膜厚などの成膜条件とによって定まるので、前記機能性部材の形成に際してフォトリソグラフィなどの微細加工方法が不要である。
本発明の機能性グリッド構造体の製造方法は、本発明の機能性グリッド構造体を製造するための工程を有し、予め形成する前記凸部のピッチ、幅、及び厚さと、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層の成膜膜厚などの成膜条件とによって、前記機能性部材の寸法を定めることができる。このため、前記機能性部材の形成に際し、成膜工程のみを行えばよく、フォトリソグラフィ手段などの大がかりな設備を要する微細加工工程が不要である。従って、フォトリソグラフィなどの微細加工方法を適用できない、ウエハーサイズを越える大きさであっても、簡易に、生産性よく、低コストで、本発明の機能性グリッド構造体を製造することができる。
本発明の機能性グリッド構造体において、前記基体の前記表面構造が、前記基体の主部を構成する材料とは異なる材料によって形成されているのがよい。前記基体の前記表面構造と前記主部とで材料を使い分けることによって、多様な材質の前記主部を用いて、本発明の機能性グリッド構造体を作製することができる。例えば、前記基体の前記主部として有機樹脂フィルムを用いれば、軽量で、フレキシブルで、耐衝撃性のある機能性グリッド構造体を作製することができる。また、前記凸部の構成材料として紫外線硬化樹脂または熱可塑性樹脂を用い、モールドに形成された凹凸構造をナノインプリント法によって転写すれば、フォトリソグラフィなどの微細加工技術を用いずに、容易に、生産性よく凸部を形成することができる。
また、光学素子として構成されているのがよい。例えば、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層が金属層からなり、これらの金属層によって光が反射されるワイヤグリッド回折格子として構成されているのがよい。
この際、前記上部金属層及び前記側部金属層を構成する材料は、光を反射しやすい材料が好ましく、例えば、アルミニウムや銀がよい。ただし、純アルミニウムを用いて成膜を行うと、成膜粒子の粒径が数10nm程度に大きくなり、nmサイズの金属細線を形成する場合には、ラインエッジに凹凸を生じたり、アルミニウム膜の膜質が場所ごとに変化したりする原因になることがある。このようなばらつきは、アルミニウム膜の光反射率を低下させる。
こういった場合には、少量の添加物を添加した合金を用いるのがよい。例えば、アルミニウムに対してケイ素及び/又は銅を微量(例えば、0.5〜1質量%)添加した材料を用いることによって、成膜粒子の粒径を小さくし、金属細線のラインエッジに生じる凹凸や、アルミニウム膜の膜質の場所ごとの変化を小さく抑え、アルミニウム膜の光反射率を高くすることができる。また、構成材料として銀を用いる場合にも、同様の現象が生じた場合には、銀に対してパラジウム及び/又は銅を微量(例えば、0.5〜1質量%)を添加した材料を用いることが有効である。構成材料としてその他の金属を用いる場合にも、大きな成膜粒子の発生を抑えるために、微量の別材料を添加した材料を用いることが望ましい。
また、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層が金属層からなり、電極集合体として構成されているのがよい。
本発明の機能性グリッド構造体の製造方法において、前記基体の前記表面に垂直な方向から前記凸部の配列方向へ所定の角度θだけ傾いた所定の方向から、前記凸部の上面及び側方にかけて機能性材料を堆積させることによって、隣り合う前記凸部間の凹部底面に前記機能性材料を実質的に堆積させることなく、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層を形成するのがよい。
この際、前記所定の方向から所定の期間成膜した後、前記表面に垂直な方向に関して前記所定の方向と左右対称の方向から所定の期間成膜する一連の工程を、必要回数繰り返して行うのがよい。また、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層の厚さの増加に対応して、前記所定の角度θを徐々に小さくしていくのがよい。
或いはまた、前記基体の前記表面に機能性材料を堆積させた後、エッチバックすることにより、隣り合う前記凸部間の凹部底面に堆積した前記機能性材料を除去し、かつ、前記凸部の上面及び側方にかけて堆積した前記機能性材料の一部を残して、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層を形成するのがよい。
また、前記基体の前記表面に、前記基体の主部を構成する材料とは異なる材料によって前記凸部を形成するのがよい。
この際、
凹凸パターンが形成されたモールドを作製する工程と、
前記凸部の構成材料に前記モールドを押し当て、前記凹凸パターンを転写して前記凸 部を形成する工程と
を有するのがよい。
凹凸パターンが形成されたモールドを作製する工程と、
前記凸部の構成材料に前記モールドを押し当て、前記凹凸パターンを転写して前記凸 部を形成する工程と
を有するのがよい。
詳しくは、
前記基体の前記表面に、前記凸部の構成材料として樹脂層を配置する工程と、
前記樹脂層に前記モールドを押し当て、前記樹脂層を前記凹凸パターンに相補的な形 状に成形する工程と、
前記成形中、及び/又は前記成形後、前記樹脂層を硬化させ、前記凸部を形成する工 程と、
前記モールドを剥離させる工程と
を有するのがよい。
前記基体の前記表面に、前記凸部の構成材料として樹脂層を配置する工程と、
前記樹脂層に前記モールドを押し当て、前記樹脂層を前記凹凸パターンに相補的な形 状に成形する工程と、
前記成形中、及び/又は前記成形後、前記樹脂層を硬化させ、前記凸部を形成する工 程と、
前記モールドを剥離させる工程と
を有するのがよい。
この際、前記樹脂層として紫外線硬化性樹脂層を塗布法又は印刷法によって配置し、紫外線透過性のモールドによって成形後、前記モールドを通して紫外線を照射して前記紫外線硬化性樹脂層を硬化させるのがよい。
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
実施の形態1
実施の形態1では、主として、請求項1、3〜5に記載した機能性グリッド構造体、および請求項7〜10に記載した機能性グリッド構造体の製造方法の例として、ワイヤグリッド回折格子およびその製造方法について説明する。
実施の形態1では、主として、請求項1、3〜5に記載した機能性グリッド構造体、および請求項7〜10に記載した機能性グリッド構造体の製造方法の例として、ワイヤグリッド回折格子およびその製造方法について説明する。
図1は、実施の形態1に基づくワイヤグリッド回折格子10の構造を示す断面図および部分拡大図である。ワイヤグリッド回折格子10では、前記基体である光透過性支持体1の表面上に、複数の細い直線状の凸部2が互いに平行に一定のピッチPで並ぶように形成されている。この例では光透過性支持体1と凸部2とは同じ材料からなり、例えば、ガラス板の表面にフォトリソグラフィと反応性イオンエッチングとによって凸部2が形成されている。
凸部2の上面には、細い直線状の上部金属層4が配置され、凸部2の側面全体および側方にも、細い直線状の側部金属層5が上部金属層4に連接して配置されている。これら、上部金属層4と側部金属層5とによって金属細線6が構成され、ワイヤグリッド回折格子10が形成されている。上部金属層4、側部金属層5、および金属細線6は、それぞれ、前記上部機能性材料層、前記側部機能性材料層、および前記機能性部材に相当する。上部金属層4および側部金属層5は、斜め方向から蒸着法またはスパッタリング法によって金属材料を堆積させることによって形成される。金属材料は、光を反射しやすい材料が好ましく、例えば、アルミニウムや銀がよい。ただし、純アルミニウムや純銀を用いて成膜を行うと、成膜粒子の粒径が大きくなり過ぎる場合には、既述したように、アルミニウムに対しては、ケイ素及び/又は銅を微量(例えば、0.5〜1質量%)添加し、銀に対しては、パラジウム及び/又は銅を微量(例えば、0.5〜1質量%)を添加する。
金属細線6は、中身のつまった真の金属細線ではなく、実体は、凸部2の上面と側面とを被覆する薄い金属層にすぎない。しかしながら、この中身のない金属細線6が、中身のつまった真の金属細線と同様に、ワイヤグリッド回折格子10を構成できることを、本発明者は発見した(特願2008−291932参照。)。ワイヤグリッド回折格子10を構成する金属細線の中身がつまっている必要がないことは、金属と光の相互作用が金属の表面を占めている自由電子の働きによって起こることを考えると、当然のことと考えられる。従って、上部金属層4および側部金属層5の膜厚としては、光が透過してしまわない程度の厚さがあれば十分である。ここでは、金属細線6を中身のつまった金属細線と同様に考えることができると仮定して、ワイヤグリッド回折格子10の性能を決める諸量について検討する。以下、説明を簡単にするために、入射光を光透過性支持体1の表面に垂直に入射させる場合を考えることにする。
図1から明らかなように、金属細線6のピッチは、凸部2の並びのピッチPと同じになる。また、部分拡大図に示したように、金属細線6の有効な幅Wは、凸部2の幅Wgに、側方にはみ出して形成される2つの側部金属層5の成膜膜厚Tsを加算した大きさになる。
W = Wg+2Ts
また、金属細線6の有効な厚さTは、光が金属細線6間を通り抜ける際に、透過方向において感じる金属細線6の厚さである。部分拡大図から、これは、光の透過方向における側部金属層5の厚さに等しい。ただし、側部金属層5の厚さと言っても、その実体は、光の透過方向において側部金属層5が占めている幅である。図1に示すように、側部金属層5は凸部2の側面全面および上部金属層4の側方に設けられているので、金属細線6の有効な厚さTは、光の透過方向における凸部の厚さ(凹部3の底面を基準とする、凸部2の高さ)Tgに上部金属層4の成膜膜厚Tuを加算した大きさになる。
T = Tg+Tu
W = Wg+2Ts
また、金属細線6の有効な厚さTは、光が金属細線6間を通り抜ける際に、透過方向において感じる金属細線6の厚さである。部分拡大図から、これは、光の透過方向における側部金属層5の厚さに等しい。ただし、側部金属層5の厚さと言っても、その実体は、光の透過方向において側部金属層5が占めている幅である。図1に示すように、側部金属層5は凸部2の側面全面および上部金属層4の側方に設けられているので、金属細線6の有効な厚さTは、光の透過方向における凸部の厚さ(凹部3の底面を基準とする、凸部2の高さ)Tgに上部金属層4の成膜膜厚Tuを加算した大きさになる。
T = Tg+Tu
上記のように、ワイヤグリッド回折格子10では、金属細線6の有効厚さTは、上部金属層4の膜厚Tuに、光の透過方向における凸部2の厚さTgを加算した大きさになる。従って、図9に示した従来のワイヤグリッド偏光子100のように、光の透過方向における金属細線102の厚さTを金属層の膜厚のみで実現する素子に比べて、凸部2の厚さTgの分だけ上部金属層4の膜厚Tuを薄くすることができ、容易に作製することができる。この際、凸部2の側面全面に側部金属層5が形成されるので、特許文献3に提案されているワイヤグリッド偏光子120a(図11(a)参照。)のように、凸部122の側面の一部(上部)にのみ側部導電体層125aが形成される素子に比べて、凸部2の側面をより有効に利用することができる。また、特許文献3または4に提案されているワイヤグリッド偏光子のように、金属細線を側部金属層のみで実現する素子(図11(c)参照。)に比べて、上部金属層4の膜厚Tuの分だけ凸部2の厚さTgを薄くすることができるので、凸部2の作製が容易になる。
また、金属細線6の幅Wは、凸部2の幅Wgと2つの側部金属層5の膜厚Tsとを加算した大きさになるので、凸部2の幅Wgを適切に選択することによって、側部金属層5の膜厚Tsとは独立に、金属細線6の幅Wを所定の大きさに定めることができる。従って、ワイヤグリッド回折格子10は、特許文献3または4に提案されているワイヤグリッド偏光子のように、金属細線の幅が側部金属層の膜厚と同じ大きさに決まってしまう素子(図11(c)参照。)に比べて、設計の自由度がはるかに大きく、作製が容易になる。
しかも、ワイヤグリッド回折格子10の性能を決める諸量が、予め形成されている凸部2のピッチP、幅Wg、および厚さTgと、上部金属層4の成膜膜厚Tuおよび側部金属層5の成膜膜厚Tsなどの成膜条件によって定まるので、金属細線6の形成に際してリソグラフィなどの微細加工方法が不要である。従って、その大きさがウエハーサイズを越える大きさであっても作製することができる。また、上部金属層4および側部金属層5の成膜膜厚を薄くすることにより、成膜時間の短縮や膜厚のばらつきの縮小を可能とし、歩留まり向上につながる。
図2は、ワイヤグリッド回折格子10の作製工程のフローを示す断面図である。
まず、図2(a)に示すように、光透過性支持体1を用意する。光透過性支持体1はガラス板や有機樹脂板である。この表面に、例えばフォトリソグラフィと反応性イオンエッチングとによって、複数の細い直線状の凸部2が互いに平行に一定のピッチPで並んでいる表面構造を形成する。
次に、図2(b)に示すように、斜め方向から蒸着法またはスパッタリング法によって金属材料を堆積させることによって、凸部2の上面、並びに一方の側面全面および側方に、選択的に上部金属層4および側部金属層5aを形成する。
金属材料を出射する蒸着源またはターゲットは、光透過性支持体1の表面に垂直な方向から、凸部2の配列方向へ所定の角度θだけ傾いた方向に配置する。角度θは、凸部2が作る影に、隣り合う凸部2間の凹部3の底面がちょうど収まり、凹部3の底面に金属材料が堆積することのない角度とする。別の言い方をすると、凸部2の最下部と凹部3との境界の位置Aから、凹部3を挟んで隣り合う凸部2の上端の角Bを見上げる方向に蒸着源またはターゲットを配置する。すなわち、角度θは次式
θ=arc tan((P−Wg)/Tg)
で与えられる。
θ=arc tan((P−Wg)/Tg)
で与えられる。
角度をθよりも大きくすると、凸部2の最下部に金属材料が堆積しない領域が生じる。逆に、角度をθよりも小さくすると、凹部3の底面の一部に金属材料が堆積する。角度をθとすることで、凹部3の底面に金属材料を実質的に堆積させることなく、凸部2の上面および一側面の全領域に選択的に、それぞれ細い直線状の上部金属層4および側部金属層5aを形成することができる。
実際の成膜では、散乱などによって単純な直線運動では考えられない振る舞いをする成膜粒子も現れてくる。このような複雑な現象に対処するために、所定の角度θの前後に角度を少し変えて成膜したワイヤグリッド回折格子10をいくつか試作し、断面の透過電子顕微鏡(TEM)解析などによって凹部3への金属材料の堆積状況を観察して、求める特性に最も近い特性が得られる成膜角度を選ぶことが望ましい。なお、上記「凹部3の底面に金属材料を実質的に堆積させず」の「実質的に堆積させず」とは、「散乱などによって凹部3の底面に少量の金属材料が堆積するとしても、光の透過を妨げ、ワイヤグリッド回折格子10の性能を本質的に変化させてしまうほどの堆積はない」という意味である。
上記のようにして所定の方向から所定の期間成膜した後、図2(c)に示すように、表面に垂直な方向に関して前記所定の方向と左右対称の方向から所定の期間成膜する。このようにして、凸部2の上面および左右反対側の一側面に選択的に、それぞれ細い直線状の上部金属層4および側部金属層5bを形成する。
この後、図2(b)および図2(c)に示した一連の工程を、必要回数繰り返して行い、図2(d)に示すように、凹部3の底面に金属材料を実質的に堆積させることなく、凸部2の上面および両側方に選択的に、それぞれ細い直線状の上部金属層4および側部金属層5を形成する。
この際、凸部2の最下部近辺の側面では、成膜が進行すると、上部金属層4および側部金属層5の成膜膜厚の増加にともない、上部金属層4および側部金属層5が作る影に入り、金属材料が入射して来ない領域が次第に大きくなる。側部金属層5の膜厚のうち、凸部2の最下部近辺の側面に形成される側部金属層5の膜厚が、上部側面に形成される側部金属層5の膜厚に比べて小さいのはこのためである。上部金属層4が作る影の影響を小さくするには、上部金属層4および側部金属層5の膜厚の増加に対応して、成膜角度を初期の値から徐々に小さくしていくのがよい。
図1の拡大図に示したように、斜め方向から成膜を行うと、側部金属層5が形成されるため、金属細線6の幅Wは、2つの側部金属層5の膜厚分2Tsだけ、凸部2の幅Wgよりも大きくなる(W=Wg+2Ts)。従って、凸部2の幅Wgは、成膜後に金属細線6の間に必要な隙間が残るように、側部金属層5の膜厚Tsを考慮して設定する(Wg=W−2Ts)。
上部金属層4の膜厚Tuと側部金属層5の膜厚Tsとの間には下記の関係がある。
Ts=Tu×tanθ
θ一定の下で上部金属層4の膜厚Tuを大きくしようとすると、これにつれて側部金属層5の膜厚Tsも大きくなるので、結果的に凸部2の幅Wgをより狭めることが必要になり、凸部2の形成が困難になる場合がある。このような場合には、凸部2の高さTgをできるだけ大きくするのがよい。このようにすると、成膜角度θを小さくすることができるので、凸部2の側方に堆積する金属材料を減らすことができ、側部金属層5の膜厚Tsを小さく抑えたまま、上部金属層4の膜厚Tuを大きくすることができる。
Ts=Tu×tanθ
θ一定の下で上部金属層4の膜厚Tuを大きくしようとすると、これにつれて側部金属層5の膜厚Tsも大きくなるので、結果的に凸部2の幅Wgをより狭めることが必要になり、凸部2の形成が困難になる場合がある。このような場合には、凸部2の高さTgをできるだけ大きくするのがよい。このようにすると、成膜角度θを小さくすることができるので、凸部2の側方に堆積する金属材料を減らすことができ、側部金属層5の膜厚Tsを小さく抑えたまま、上部金属層4の膜厚Tuを大きくすることができる。
図3は、ワイヤグリッド回折格子10の作製工程で用いられる成膜方法を示す説明図である。図3(a)は、図2(b)および(c)に対応しており、光透過性支持体1の傾斜角度を変えることによって、成膜角度を変える方法を示している。図3(b)は、コリメータ12によって成膜粒子の運動方向を制御することによって、成膜角度を設定する方法を示している。この方法によれば、凸部2の両側面にそれぞれ側部金属層5aおよび側部金属層5bを同時に形成することができる。
図4は、ワイヤグリッド回折格子10の作製工程で用いられる成膜方法を示す別の説明図である。先述したように、成膜が進行すると、上部金属層4および側部金属層5の成膜膜厚の増加にともない、凸部2の最下部近辺の側面には、上部金属層4および側部金属層5が作る影に入り、金属材料が入射して来ない領域が次第に大きくなる。この影響を小さくするには、上部金属層4および側部金属層5の膜厚の増加に対応して、成膜角度を初期の値から徐々に小さくしていくのがよい。図4は、その際の変化を示しており、成膜の進行(a)→(b)→(c)→(d)→(e)とともに、成膜角度をθa→θb→θc→θd→θe(θa>θb>θc>θd>θe)と変えていくことを示している。
以上に説明したように、本実施の形態のワイヤグリッド回折格子10の製造方法では、予め形成する凸部2のピッチ、幅Wg、および厚さTgと、上部金属層4の膜厚Tu、側部金属層5の膜厚Ts、および成膜角度θなどの成膜条件によって、ワイヤグリッド回折格子の仕様を支配する諸量を定めることができる。とくに、上部金属層4および側部金属層5の形成に際し、成膜工程のみを行えばよく、フォトリソグラフィなどの微細加工工程が不要である。従って、フォトリソグラフィなどの微細加工方法を適用できない、ウエハーサイズを越える大きさであっても、簡易に、生産性よく、低コストで、ワイヤグリッド回折格子10を製造することができる。
実施の形態2
実施の形態2では、主として、請求項2に記載した機能性グリッド構造体、および請求項12〜15に記載した機能性グリッド構造体の製造方法の例として、ワイヤグリッド回折格子およびその製造方法の例について説明する。
実施の形態2では、主として、請求項2に記載した機能性グリッド構造体、および請求項12〜15に記載した機能性グリッド構造体の製造方法の例として、ワイヤグリッド回折格子およびその製造方法の例について説明する。
図5は、実施の形態2に基づくワイヤグリッド回折格子の構造を示す断面図である。ワイヤグリッド偏光子20aおよび20bでは、光透過性支持体の凸部が、光透過性支持体の主部21を構成する材料とは別の材料によって形成されている。図5(a)は、凸部22だけが別材料である例を示し、図5(b)は、光透過性支持体の上部23と凸部24とが別材料である例を示している。
これらの例のように、光透過性支持体の主部21と凸部22または24とで材料を使い分けることによって、多様な材質の光透過性支持体主部21を用いて、ワイヤグリッド回折格子20aまたは20bを形成することができる。例えば、光透過性支持体主部21として有機樹脂フィルムを用いれば、軽量で、フレキシブルで、耐衝撃性のあるワイヤグリッド回折格子を作製することができる。
また、凸部22または24の構成材料として紫外線硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を用い、モールドに形成された凹凸構造をナノインプリント法によって転写すれば、容易に、生産性よく、フォトリソグラフィなどの微細加工技術を用いずに、凸部22または24を形成することができる。
図6は、実施の形態2に基づくワイヤグリッド回折格子の作製工程のフローの一部を示す断面図である。この例では凸部22をナノインプリント法によって形成する。
まず、図6(a)に示す、凹凸パターンが形成されたモールド63を別途作製する。モールド63の作製方法は限定されるものではないが、例えば、フォトリソグラフィと反応性イオンエッチングによって形成する。一方、光透過性支持体主部21の表面に、凸部22の構成材料として樹脂層61を配置する。この樹脂層61として、例えば、紫外線硬化性樹脂層を塗布法または印刷法によって形成する。
次に、図6(b)に示すように、樹脂層61にモールド63を押し当て、モールド63の凹凸パターンに凹凸嵌合する形状に成形された樹脂層62を形成する。
そして成形中、及び/又は成形後に、樹脂材料を硬化させ、凸部22を形成する。この際、樹脂材料として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、図6(c)に示すように、紫外線透過性のモールド63によって成形後、波長が300〜400nm程度の紫外線をモールド63を通して照射して、紫外線硬化性樹脂層を硬化させるのがよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリレート系やエポキシ系の紫外線硬化性樹脂を用いることができる。紫外線硬化性樹脂を用いると、室温下で硬化処理を行うので、温度変化による寸法の変化がない利点がある。
樹脂材料として熱可塑性樹脂を用いる場合には、モールド63を押し当てる前に樹脂層61をガラス転移温度以上の温度に加熱して熱可塑性樹脂を軟化させておき、この状態でモールド63を押し当てて成形し、その後、ガラス転移温度以下の温度に冷却して硬化させた後、モールド63を剥離させる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂を用いる。
モールド63は、何度も繰り返して用いることができるので、光透過性支持体主部21に比べて小型でよい。従って、半導体微細加工技術を用いて精密に作製することができる。また、モールド63を、外周面に凹凸パターンが形成されたローラー形にすれば、このローラー形のモールド63を回転させながら樹脂層61に押し当てることによって、凹凸パターンを転写することができ、大面積の光透過性支持体主部21に対しても効率よく凸部22を形成することができる。
その他、上部金属層4および側部金属層5、並びにその作製方法などは、実施の形態1に基づくワイヤグリッド回折格子10と同様であるので、重複を避け、説明を省略する。
実施の形態3
実施の形態3では、請求項11に記載した機能性グリッド構造体の製造方法によって作製されるワイヤグリッド回折格子の例、および実施の形態1の変形例に相当するワイヤグリッド回折格子の例について説明する。
実施の形態3では、請求項11に記載した機能性グリッド構造体の製造方法によって作製されるワイヤグリッド回折格子の例、および実施の形態1の変形例に相当するワイヤグリッド回折格子の例について説明する。
図7は、実施の形態3に基づくワイヤグリッド回折格子の構造を示す断面図である。図7(a)および図7(b)にそれぞれ示すワイヤグリッド回折格子30および40は、凸部2の側面に膜厚がほぼ一定の側部金属層35および45が形成されている点が実施の形態1に基づくワイヤグリッド回折格子10と異なっているのみで、ワイヤグリッド回折格子10と同様の機能が得られる。ワイヤグリッド回折格子30および40は、凸部2が設けられた光透過性支持体1の表面全体に金属材料を堆積させた後、エッチバックすることにより、凹部3の底面に堆積した金属材料を除去し、かつ、凸部2の上面および側方にかけて堆積した金属材料の一部を残して、上部金属層4および側部金属層35または45を形成することによって得ることができる。金属材料を堆積させる方法としては、異方性の小さい成膜ができるCVD法が好ましい。
実施の形態4
実施の形態4では、請求項6に記載した機能性グリッド構造体の例として、隣り合う前記側部機能性材料層によって挟まれる空間領域に、別の機能性部材を充填して得られる機能性素子の例について説明する。
実施の形態4では、請求項6に記載した機能性グリッド構造体の例として、隣り合う前記側部機能性材料層によって挟まれる空間領域に、別の機能性部材を充填して得られる機能性素子の例について説明する。
図8(a)は、実施の形態4に基づく機能性グリッド構造体70からなるカラーフィルタ77を形成した例を示す断面図である。機能性グリッド構造体70は、ガラス基板などの光透過性基板71に凸部72が設けられ、凸部72の上面および側方に前記機能性部材として、黒色炭素材料などからなる光吸収性材料層73が形成されている。そして、光吸収性材料層73によって仕切られた機能性グリッド構造体70の凹部に、赤、緑、青の三原色に対応したカラーフィルタ材料が充填され、カラーフィルタ77が形成されている。
図8(b)は、実施の形態4に基づく機能性グリッド構造体80からなる発光素子集合体86を形成した例を示す断面図である。機能性グリッド構造体80は、光反射性基板81に凸部82が設けられ、凸部82の上面および側方に前記機能性部材として、金属などからなる電極83および84が形成されている。そして、電極83および84によって仕切られた機能性グリッド構造体80の凹部に発光材料85が充填され、発光素子集合体86が形成されている。電極83および84は一つおきに交互に配置され、陽極および陰極として用いられる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
本発明の機能性グリッド構造体およびその製造方法は、光学部材や電極集合体として用いることができ、従来作製できなかった大型の回折格子などを安価に作製可能であることから、従来では考えられない応用分野を創出することができる。
1…光透過性支持体、2…凸部、3…凹部、4…上部金属層、
5、5a、5b…側部金属層、6…金属細線、10…ワイヤグリッド回折格子、
11…蒸着源またはターゲット、12…コリメータ、
20a、20b…ワイヤグリッド回折格子、21…光透過性支持体主部、22…凸部、
23…光透過性支持体上部、24…凸部、30、40…ワイヤグリッド回折格子、
35、45…側部金属層、61…樹脂層、62…成形された樹脂層、63…モールド、
70…機能性グリッド構造体、71…光透過性基板、72…凸部、
73…光吸収性材料層、74…カラーフィルタ材料(赤)、
75…カラーフィルタ材料(緑)、76…カラーフィルタ材料(青)、
77…カラーフィルタ、80…機能性グリッド構造体、81…光反射性基板、
82…凸部、83…電極(陽極)、84…電極(陰極)、85…発光材料、
86…発光素子集合体、100…ワイヤグリッド偏光子、101…透明基板、
102…金属細線、110…ワイヤグリッド偏光子、111…透明樹脂基板、
111a…凹部、111b…凸部、112…マスキング層、113…金属層、
120a〜120c…ワイヤグリッド偏光子、121…透明基板、122…凸部、
123…凹部、124…上部導電体層、125a〜125c…側部導電体層、
P…金属細線のピッチ、W…金属細線の幅、T…金属細線の厚さ
5、5a、5b…側部金属層、6…金属細線、10…ワイヤグリッド回折格子、
11…蒸着源またはターゲット、12…コリメータ、
20a、20b…ワイヤグリッド回折格子、21…光透過性支持体主部、22…凸部、
23…光透過性支持体上部、24…凸部、30、40…ワイヤグリッド回折格子、
35、45…側部金属層、61…樹脂層、62…成形された樹脂層、63…モールド、
70…機能性グリッド構造体、71…光透過性基板、72…凸部、
73…光吸収性材料層、74…カラーフィルタ材料(赤)、
75…カラーフィルタ材料(緑)、76…カラーフィルタ材料(青)、
77…カラーフィルタ、80…機能性グリッド構造体、81…光反射性基板、
82…凸部、83…電極(陽極)、84…電極(陰極)、85…発光材料、
86…発光素子集合体、100…ワイヤグリッド偏光子、101…透明基板、
102…金属細線、110…ワイヤグリッド偏光子、111…透明樹脂基板、
111a…凹部、111b…凸部、112…マスキング層、113…金属層、
120a〜120c…ワイヤグリッド偏光子、121…透明基板、122…凸部、
123…凹部、124…上部導電体層、125a〜125c…側部導電体層、
P…金属細線のピッチ、W…金属細線の幅、T…金属細線の厚さ
Claims (15)
- 複数の細い直線状の凸部が互いに平行に一定のピッチで並んでいる表面構造を有する 基体と、
前記凸部の上面に配置された、細い直線状の上部機能性材料層と、
前記凸部の側面全体及び側方に、前記上部機能性材料層に連接して配置され、前記上 部機能性材料層とともに細線状の機能性部材を構成する、細い直線状の側部機能性材料 層と
からなり、隣り合う前記凸部間の凹部底面には前記基体が実質的に露出している、機能性グリッド構造体。 - 前記基体の前記表面構造が、前記基体の主部を構成する材料とは異なる材料によって形成されている、請求項1に記載した機能性グリッド構造体。
- 光学素子として構成されている、請求項1に記載した機能性グリッド構造体。
- 前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層が金属層からなり、これらの金属層によって光が反射されるワイヤ機能性グリッド回折格子として構成されている、請求項3に記載した機能性グリッド構造体。
- 前記金属層の材料がアルミニウムAl、銀Ag、又はこれらの金属に少量の添加物を添加した合金である、請求項4に記載した機能性グリッド構造体。
- 前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層が金属層からなり、電極集合体として構成されている、請求項1に記載した機能性グリッド構造体。
- 基体の表面に、複数の細い直線状の凸部が互いに平行に一定のピッチで並んでいる表 面構造を形成する工程と、
前記凸部の上面、並びに側面全体及び側方に、それぞれ、細い直線状の上部機能性材 料層並びに側部機能性材料層を形成する工程と
を有する、機能性グリッド構造体の製造方法。 - 前記基体の前期表面に垂直な方向から前記凸部の配列方向へ所定の角度θだけ傾いた所定の方向から、前記凸部の上面及び側方にかけて機能性材料を堆積させることによって、隣り合う前記凸部間の凹部底面に前期機能性材料を実質的に堆積させることなく、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層を形成する、請求項7に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。
- 前記所定の方向から所定の期間成膜した後、前期表面に垂直な方向に関して前記所定の方向と左右対称の方向から所定の期間成膜する一連の工程を、必要回数繰り返して行う、請求項8に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。
- 前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層の厚さの増加に対応して、前記所定の角度θを徐々に小さくしていく、請求項9に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。
- 前記基体の前期表面に機能性材料を堆積させた後、エッチバックすることにより、隣り合う前記凸部間の凹部底面に堆積した前期機能性材料を除去し、かつ、前記凸部の上面及び側方にかけて堆積した前期機能性材料の一部を残して、前記上部機能性材料層及び前記側部機能性材料層を形成する、請求項7に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。
- 前記基体の前記表面に、前記基体の主部を構成する材料とは異なる材料によって前記凸部を形成する、請求項7に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。
- 凹凸パターンが形成されたモールドを作製する工程と、
前記凸部の構成材料に前記モールドを押し当て、前記凹凸パターンを転写して前記凸 部を形成する工程と
を有する、請求項12に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。 - 前記基体の主部の表面に、前記凸部の構成材料として樹脂層を配置する工程と、
前記樹脂層に前記モールドを押し当て、前記樹脂層を前期凹凸パターンに相補的な形 状に成形する工程と、
前記成形中、及び/又は前記成形後、前記樹脂層を硬化させ、前期凸部を形成する工 程と、
前期モールドを剥離させる工程と
を有する、請求項13に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。 - 前記樹脂層として紫外線硬化性樹脂層を塗布法又は印刷法によって配置し、紫外線透過性のモールドによって成形後、前記モールドを通して紫外線を照射して前記紫外線硬化性樹脂層を硬化させる、請求項14に記載した機能性グリッド構造体の製造方法。
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