JP2010082741A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

表面被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP2010082741A
JP2010082741A JP2008253697A JP2008253697A JP2010082741A JP 2010082741 A JP2010082741 A JP 2010082741A JP 2008253697 A JP2008253697 A JP 2008253697A JP 2008253697 A JP2008253697 A JP 2008253697A JP 2010082741 A JP2010082741 A JP 2010082741A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coating
content
cutting tool
cutting edge
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008253697A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5240608B2 (ja
Inventor
Naoya Omori
直也 大森
Yoshio Okada
吉生 岡田
Shuko Kojima
周子 小島
Shinya Imamura
晋也 今村
Hideaki Kaneoka
秀明 金岡
Hiroyuki Morimoto
浩之 森本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Electric Hardmetal Corp
Original Assignee
Sumitomo Electric Hardmetal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Electric Hardmetal Corp filed Critical Sumitomo Electric Hardmetal Corp
Priority to JP2008253697A priority Critical patent/JP5240608B2/ja
Publication of JP2010082741A publication Critical patent/JP2010082741A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5240608B2 publication Critical patent/JP5240608B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)
  • Drilling Tools (AREA)

Abstract

【課題】切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用してもいずれの切れ刃部も欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】基材とその基材の一部または全部を覆う被膜とを備える表面被覆切削工具であって、その被膜は、少なくとも1層または2層以上の被覆層を含み、その被覆層のうち少なくとも1層は、Zrを含有するZr含有被覆層であって、さらに表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、この切れ刃部のうち1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量は、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量と実質的に等しい表面被覆切削工具である。
【選択図】図5

Description

本発明は、長期間の使用にも欠損を起こしにくい切れ刃部を有し、かつ切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきが少ない表面被覆切削工具に関する。
近年の市場のニーズとして、交換回数を減らすことができる切削工具、すなわち長期間の使用にも欠損を起こしにくい長寿命な切れ刃部を有する表面被覆切削工具の登場が望まれている。
一般に、表面被覆切削工具をはじめとする切削工具の基材として用いられる超硬合金やサーメットは、耐熱亀裂性、耐酸化性、高温硬度、破壊靭性などの特性に優れていることが要求され、現状の切削工具の基材に用いられる超硬合金およびサーメットは、耐熱亀裂性や破壊靭性を改善するために、多くの研究者により様々な工夫がなされてきている。
この超硬合金やサーメットのような粉体をプレスして焼結する方法で製造された基材を用いる表面被覆切削工具は、基材上に数層の被覆層を有しており、その被覆層中に含まれる硬質材料により、その耐熱亀裂性や破壊靭性を変えることができるので、切削工具の使用用途に併せて硬質材料の量を適宜調整して製造される。たとえば、高強度の被削材を断続切削する場合には硬度の高い合金が用いられ、高硬度の被削材を連続切削する場合には強度の高い合金が用いられるのが一般的である。
一方、切削工具の部位によって耐熱亀裂性や破壊靭性の特性を変える試みは、従来からなされており、たとえば特開2006−236447号公報(特許文献1)では部位によって硬質材料からなる被覆層の厚みを変える技術が提案されている。本技術による切削工具の場合、硬質材料からなる被覆層の厚みが薄い部位は耐熱亀裂性を有するため高強度の被削材の断続切削に対応することができ、硬質材料からなる被覆層の厚みが厚い部位は破壊靭性を有するため高硬度の被削材の連続切削に対応することができる。しかし、この切削工具を用いて断続切削する場合、硬質材料からなる被覆層の厚みの厚い部位が欠損しやすく、結果として切削工具の交換回数が多くなり、工具の管理コストがかかるという問題があった。
そこで、工具の交換回数を減らすため、長く安定した工具寿命を有する切削工具の登場が望まれており、そのような要求に応える切削工具、特に表面被覆切削工具の開発が望まれている。
特開2006−236447号公報
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用してもいずれの切れ刃部も欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するべく種々の検討を重ねた結果、表面被覆切削工具のあらゆる箇所で同等の硬度や強度を有していることが長く安定した工具寿命を実現するための理想的状態であるとの知見を得、この知見に基づきさらに鋭意検討を重ねることにより、被膜に含まれるZrの分布に注目し、表面被覆切削工具の切削に関与する部位においてZrの分布を可能な限り均一な状態とすることが上記目的に対して最も効果的であるとの更なる知見を得、この知見の下、更に鋭意検討を重ねることによりついに本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、該被膜は、少なくとも1層の被覆層を含み、該被覆層のうち少なくとも1層は、Zrを含有するZr含有被覆層であり、上記表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、この切れ刃部のうち、1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量は、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量と実質的に等しいことを特徴とする。
また、本発明の表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、上記被膜のZr含有量は、下記式(I)を満たす、表面被覆切削工具であることが好ましい。
(X1−X2)/Xave<0.04 ・・・(I)
(式中X1は、いずれかの切れ刃部における被膜のZr含有量であって、そのZr含有量が最大となるZr含有量であり、X2は、いずれかの切れ刃部における被膜のZr含有量であって、そのZr含有量が最小となるZr含有量であり、Xaveは、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値である。)
また、本発明の表面被覆切削工具は、2のすくい面を有し、該すくい面は、いずれも少なくとも2本の対角線を有し、その対角線は、該対角線の両端が切れ刃部に含まれ、上記すくい面のうち、面積が広い方のすくい面を第1すくい面とし、面積が狭い方のすくい面を第2すくい面とする場合、被膜のZr含有量は、下記式(II)を満たすことが好ましい。
|Y1−Y2|/Yave<0.04 ・・・(II)
(式中Y1は、上記第1すくい面の対角線のうち、いずれか1の対角線である第1対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であり、Y2は、上記第2すくい面の対角線のうち、上記第1対角線に平行な対角線である第2対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であり、Yaveは、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値である。)
また、本発明の表面被覆切削工具は、少なくとも2の逃げ面を有し、該逃げ面のうち1の逃げ面は、他の逃げ面のうちの少なくとも1の逃げ面と交差する1の稜を共有稜として有し、該共有稜は、上記表面被覆切削工具において複数存在し、かつ該共有稜の両端は切れ刃部に含まれる場合、被膜のZr含有量は、下記式(III)を満たすことが好ましい。
(Z1−Z2)/Zave<0.04 ・・・(III)
(式中Z1は、上記共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第1共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であって、第1共有稜を含む全ての共有稜の各両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最大となる値であり、Z2は、上記共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第2共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であって、第2共有稜を含む全ての共有稜の各両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最小となる値であり、Zaveは、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値である。)
また、上記第1共有稜は、上記第1すくい面にある対角線のうち、いずれか1の対角線と交差し、さらにこの対角線は上記第2共有稜とも交差することが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、ネガティブチップであれば、本発明の効果が顕著となる。
ここで、上記被膜は、酸化アルミニウムを主体として含む酸化アルミニウム層またはチタン化合物を主体として含むチタン化合物層のいずれか一方または両方を含むことが好ましい。
また、上記Zr含有被覆層は、上記酸化アルミニウム層または上記チタン化合物層のいずれか一方または両方であることが好ましい。
また、上記被膜は、Zr含有被覆層以外に、少なくとも1層の硬質化合物層を含んでおり、この硬質化合物層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層であることが好ましく、チタンと、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層であることがさらに好ましい。
本発明によれば、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間の使用にも欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を提供することができる。
以下、本発明の表面被覆切削工具の各部位についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明では図面を用いて説明しているが、本発明の図面において、同一の参照符号を付したものは同一部分または相当部分を示している。また、各図面はあくまでも説明用の模式的なものであって、表面被覆切削工具本体と切れ刃部のサイズ比は実際のものとは異なり得る。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜を含んでおり、その被膜は少なくとも1層の被覆層を含み、さらに2以上の切れ刃部を備えるものである。このような構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、上面およびそれに平行な断面が多角形または円形(好ましくは、菱形、正方形、三角形、長方形、丸形など)をなす形状を有している。
図1に、本発明の表面被覆切削工具の好ましい一例の模式的な斜視図を示している。この表面被覆切削工具101は、切削加工時において被削材の切り屑と接触するすくい面と、被削材自体に接触する逃げ面とを有している。図1においては通常、菱型の2つの面がすくい面102a,102bとなり、菱型以外の4つの面が逃げ面103となる。
また、逃げ面103のうちの1の逃げ面と、他の1の逃げ面とが交わる稜を共有稜104といい、1の逃げ面と1のすくい面とが交わる稜を刃先稜線106というが、この共有稜104および刃先稜線106は、各々面とりされていてもよい。このように面とり加工がされ、明確な稜を構成しなくなっても、本発明では、刃先稜線あるいは共有稜と呼ぶものとする。また、このような表面被覆切削工具101は、上面の中央に下面まで貫通する孔が設けられていてもよい。
また、本発明の表面被覆切削工具は、すくい面にチップブレーカと呼ばれる凹凸形状が形成されていても差し支えなく、また、表面被覆切削工具の形状はネガティブチップの形状またはポジティブチップの形状のいずれの形状もとることができるが、使用用途において、どちらの形状を用いてもよい場合は両面使用できるためチップ1個あたりの使用可能な切れ刃数が多い、ネガティブチップを用いることが好ましい。
<切れ刃部>
本発明の表面被覆切削工具101において、「切れ刃部」とは、表面被覆切削工具101のコーナー部分であって切削に関与する部分をいう。本発明において「切れ刃部」という場合は、基材のコーナー部分または被膜のコーナー部分のいずれか一方または両方のことをいうものとする。
たとえば、図1に示される表面被覆切削工具101において、切れ刃部とは、表面被覆切削工具101の斜線を付した部分を指す。なお、図1において、斜線部分は1つの切れ刃部分にのみ付されているが、表面被覆切削工具101の頂点にある、8つのコーナー部分すべてが切れ刃部となる(便宜的に他の7つの切れ刃部には斜線を付していない)。
ここで、上記「コーナー部分」とは、図1に示されるように2つの刃先稜線106a,106bと1つの共有稜104とが交差する交点から1つの刃先稜線106a方向に延びる所定長さ(t1mm)と、他の刃先稜線106bの方向に延びる所定長さ(t2mm)と、その共有稜104から所定長さ(hmm)とを各辺とする四角柱の部分をいう。なお、本発明でいう交点は、各々面とりがされていてもよく、このように面とり加工がされていても交点と呼ぶものとする。
ここで、上記切れ刃部の範囲(t1mm)、(t2mm)および(hmm)を具体的な数値によって特定することは困難である。これは、表面被覆切削工具の形状、被削材の種類等により切削に関与する部分の範囲が異なるためである。よって、この切れ刃部を定義する場合、上述のように「切削に関与する部分」とするのが最も好適であるが、あえてこの切れ刃部の範囲を規定するならば、それは上記共有稜および刃先稜線の長さの0.5%以上40%以下とすることができる(この長さは多角形の形状により必ずしも各稜で同じ長さとなるものではない)。なお、上記の「切削に関与する部分」とは、被削材と接触する部分および被削材と接触はしないが切り屑と接触する部分をいう。
<被膜>
本発明の表面被覆切削工具101において基材上に形成される「被膜」とは、基材の一部または全部を覆う膜であって、少なくとも1層の被覆層を含むものである。本発明の表面被覆切削工具101の被膜は、Zrを含有することを特徴とし、被膜にZrを含有することによって、従来よりも表面被覆切削工具の靭性と耐摩耗性とをより高度に両立させることができる。
このような被膜の合計厚み(被覆層を2以上含む場合は、各被覆層の合計厚み)は、0.1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜25μmであり、さらに好ましくは、1〜20μmである。被膜の合計厚みが0.1μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、被膜の合計厚みが30μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
なお、膜厚の測定方法としては、切削工具を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察することにより求めることができる。以下に被膜を構成する被覆層の各層について説明する。
<Zr含有被覆層>
被膜を構成する被覆層の少なくとも1層である「Zr含有被覆層」は、被膜に含まれる被覆層のうちの1の被覆層であって、Zrを含有する層である。この被膜にZr含有被覆層を含むことによって、従来よりも表面被覆切削工具の靭性と耐摩耗性とをより高度に両立させることができる。
なお、本発明において、「被膜に含まれるZr」と表現することがあるが、これは必ずしも被膜にZrが均一に含まれている必要はなく、Zrの含有量が部分的に高い部分や低い部分を有することがあってもよい。
この被膜に含まれるZrの含有量と切れ刃部の耐摩耗性および靭性との関係は、被膜に含まれるZrの含有量が多くなるにつれ靭性が向上する傾向にあり、被膜に含まれるZrの含有量が少なくなるにつれ耐摩耗性が向上する傾向にある。
ここで、本発明において「Zrを含有する」とは、不可避不純物として含まれる程度以上に含まれていることをいい、この不可避不純物として被膜に含まれる量を具体的な数値で示すことは困難であるが、あえて規定するならば被膜に対しZrを0.001質量%以上の割合で含んでいることをいう。
また、被膜に含まれるZrは、被膜に固溶状態で含まれていてもよいし、Zr含有被覆層のマトリックス成分の結晶中に置換型もしくは侵入型のいずれか一方もしくは両方の型で含まれていてもよい。なお、このZr含有被覆層は、後述する酸化アルミニウム層またはチタン化合物層のいずれか一方もしくは両方を兼ねていてもよい。
また、このようなZr含有被覆層の厚みは、0.01〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜15μmであり、さらに好ましくは、0.2〜12μmである。Zr含有被覆層の厚みが0.01μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、Zr含有被覆層の厚みが20μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
本発明は、その基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、該被膜は、少なくとも1層の被覆層を含み、この被覆層のうち少なくとも1層は、Zrを含有するZr含有被覆層であり、また表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、この切れ刃部のうち1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量は、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量と実質的に等しい場合、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を提供することができる。
ここで、切れ刃部における被膜のZr含有量が「実質的に等しい」とは、第1切れ刃部における被膜に含まれるZr含有量と第1切れ刃部以外の1の切れ刃部における被膜に含まれるZr含有量とが、完全に同一である場合はもちろんであるが、同一とみなせる程度の微差を含んでいてもよいことを意味する。
上記のように、切れ刃部における被膜のZr含有量を実質的に等しく調整することによって、表面被覆切削工具の切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間の使用にも欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を提供することができる。表面被覆切削工具の長期間使用しても欠損を起こしにくくするには、表面被覆切削工具の切れ刃部ごとの靭性の不均一を防止することが必要であり、表面被覆切削工具のいずれの切れ刃部でも同等の硬度や強度を有していることが理想的である。
しかしながら、あらゆる箇所で同等の硬度や強度を付与された表面被覆切削工具を工業的に生産することは困難が予想されるため、本発明者は表面被覆切削工具の各部位の中で特に切削に関与する切れ刃部に注目し、各切れ刃部における被膜のZr含有量を可能な限り均一な状態とすることにより、表面被覆切削工具の切れ刃部ごとによる寿命の長短をなくすことができ、もって切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきを少なくし、欠損の少ない表面被覆切削工具を可能としたものである。
このように各切れ刃部における被膜のZr含有量が均一化されたということは、換言するといずれか1の切れ刃部において欠損が生じやすいという問題を効果的に防止したものであり、このような強度の低下部分が起点となって生じる表面被覆切削工具の破壊を極めて有効に防止することにより、上述のように長期間使用してもいずれの切れ刃部も欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を実現したものである。
本発明でいう、表面被覆切削工具の各切れ刃部における被膜のZr含有量が実質的に等しいとは、各切れ刃部ごとにおける被膜のZr含有量を可能な限りに均一にしたものであるが、以下のような条件を満たす場合も本発明と同様の効果を得ることができる。
本発明の表面被覆切削工具の被膜のZr含有量は、いずれか1の切れ刃部における被膜のZr含有量のうち、Zr含有量が最大となるZr含有量をX1とし、いずれか1の切れ刃部における被膜のZr含有量のうち、Zr含有量が最小となるZr含有量をX2とし、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をXaveとした場合、下記式(I)を満たすことによっても、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を得ることができる。また、式(I)の左辺が小さい値を示すほど、切れ刃部ごとのZr含有量の差が小さくなるので、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間の使用にも欠損を起こしにくい表面被覆切削工具とすることができる。このため、式(I)の左辺は0.036未満であることがより好ましく、0.03未満であることがさらに好ましく、式(I)の左辺が0となることが理想的である。
(X1−X2)/Xave<0.04 ・・・(I)
また、本発明の表面被覆切削工具は、2のすくい面を有し、該すくい面は、いずれも少なくとも2本の対角線を有し、該対角線は、該対角線の両端が切れ刃部に含まれ、該すくい面のうち、面積が広い方のすくい面を第1すくい面とし、面積が狭い方のすくい面を第2すくい面とし、第1すくい面の対角線の第1対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY1とし、該第1対角線に平行な対角線である第2対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY2とし、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をYaveとした場合、被膜のZr含有量が、下記式(II)を満たすことによっても、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を得ることができる。
また、式(II)の左辺が小さい値を示すほど、切れ刃部ごとのZr含有量の差が小さくなるので、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具とすることができる。このため、式(II)の左辺は0.036未満であることが好ましく、0.03未満であることがより好ましく、式(II)の左辺が0となることが理想的である。
|Y1−Y2|/Yave<0.04 ・・・(II)
ここで、本発明の表面被覆切削工具101において、図1においては上側の面を第1すくい面102aといい、もう一方のすくい面を第2すくい面102bという。本発明において、第1すくい面102aは、2のすくい面のうち面積の広い方のすくい面のことをいう。なお、この2のすくい面の面積が等しい場合は、第1すくい面102aはいずれのすくい面であってもよい。
また、この第1すくい面102aに含まれる2の対角線のうち、1の対角線を第1対角線105aといい、第2すくい面102bに含まれる2の対角線のうち、第1対角線105aに平行な1の対角線を第2対角線105bという。
ここで、第1対角線105aと第2対角線105bとが「平行」であるとは、表面被覆切削工具101の立体構造において、第1すくい面102aの第1対角線105aと第2すくい面102bの第2対角線105bとが実質的にねじれの位置関係にないことをいう。
また、本発明の表面被覆切削工具は、少なくとも2の逃げ面を有し、該逃げ面のうち1の逃げ面は、他の逃げ面のうちの少なくとも1の逃げ面と交差する1の稜を共有稜として有し、該共有稜は表面被覆切削工具において複数存在し、かつ該共有稜の両端は切れ刃部に含まれ、全ての共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第1共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であって、第1共有稜を含む全ての共有稜の各両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最大となる値をZ1とし、いずれか1の共有稜である第2共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であって、第2共有稜を含む全ての共有稜の各両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最小となる値をZ2とし、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をZaveとした場合、被膜のZr含有量は、下記式(III)を満たすことによっても、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間の使用にも欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を得ることができる。
また、式(III)の左辺が小さい値を示すほど、切れ刃部ごとのZr含有量の差が小さくなるので、より切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具とすることができる。このため、式(III)の左辺は0.036未満であることが好ましく、0.03未満であることがより好ましく、式(III)の左辺が0となることが理想的である。
(Z1−Z2)/Zave<0.04 ・・・(III)
また、第1共有稜は、前記第1すくい面にある対角線のうち、いずれか1の対角線と交差し、さらにこの対角線は前記第2共有稜とも交差していることが好ましい。すなわち、図1のような表面被覆切削工具101の立体構造の場合、第1共有稜と第2共有稜とが互いに対角の位置にある共有稜104であることが好ましい。
<酸化アルミニウム層>
被膜を構成する被覆層の少なくとも1層である「酸化アルミニウム層」は、被膜に少なくとも1層以上含まれる被覆層であって、酸化アルミニウムを主体として含む層である。この酸化アルミニウム層は、主にすくい面の耐溶着性を向上させるとともに、高速切削時の耐摩耗性をも向上させる作用をなすものである。そして、この酸化アルミニウムに含まれるアルミニウムに、α−アルミナを用いることによりこれらの作用効果は顕著となる。なお、この酸化アルミニウム層がZrを含む場合は、Zr含有被覆層となる。
また、酸化アルミニウム層が表面被覆切削工具の表面に露出していてもよいし、酸化アルミニウム層が表面被覆切削工具の刃先稜線部においてのみ露出していてもよい。また「主体として含む」とは、酸化アルミニウム層に酸化アルミニウムを少なくとも20質量%含有し、かつ酸化アルミニウム以外の成分が単一成分で酸化アルミニウムの含有量を超える量を含まないことをいう。
また、このような酸化アルミニウム層の厚みは、0.01〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜15μmであり、さらに好ましくは、0.2〜12μmである。酸化アルミニウム層の厚みが0.01μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、酸化アルミニウム層の厚みが20μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
<チタン化合物層>
被膜を構成する被覆層の少なくとも1層である「チタン化合物層」は、被膜に少なくとも1層以上含まれる被覆層であって、チタン化合物を主体として含む層である。このチタン化合物層は、汎用切削に用いるときの耐摩耗性を向上させるために設ける層であり、MT−CVD(Medium Temperature Chemical Vapor Deposition)法で形成されることが好ましく、チタン化合物にはTiCNを用いることが好ましい。なお、このチタン化合物層がZrを含む場合は、Zr含有被覆層となる。
また「主体として含む」とは、チタン化合物層に、チタン化合物を少なくとも20質量%含有し、かつチタン化合物以外の成分が単一成分でチタン化合物の含有量を超える量を含まないことをいう。ここで、チタン化合物層に含まれるチタン化合物の含有量とは、単一種類のチタン化合物の含有量で20質量%以上のチタン化合物を含んでいてもよいし、複数種類のチタン化合物の含有量の合計で20質量%以上のチタン化合物を含んでいてもよい。
また、このようなチタン化合物層の厚みは、0.01〜25μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜18μmであり、さらに好ましくは、0.2〜15μmである。チタン化合物層の厚みが0.01μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、チタン化合物層の厚みが25μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
<硬質化合物層>
本発明の表面被覆切削工具101の被膜は、上記Zr含有被覆層以外に、少なくとも1層の硬質化合物層を含んでいてもよい。この硬質化合物層は、周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層であることが好ましい。また、耐摩耗性等の諸特性を向上させつつ基材との密着性の低下を防止する観点から、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、チタンとからなる化合物を主体として含む層であることがさらに好ましい。
また、2以上の硬質化合物層を含む場合、1の硬質化合物層を構成する化合物と、他の硬質化合物層を構成する化合物とが異なることが好ましい。なお、その硬質化合物層のうちの一層の厚みは、1〜100nmであることが好ましい。
また「主体として含む」とは、硬質化合物層に、周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を少なくとも20質量%含有し、かつこの化合物以外の成分が単一成分でこの化合物の含有量を超える量を含まないことをいう。
なお、このような硬質化合物層を構成する化合物としては、たとえば、TiAl、TiSi、AlCr、TiN、TiON、TiCN、TiCNO、TiBN、TiCBN、TiAlCN、AlN、AlCN、AlCrCN、AlON、CrN、CrCN、TiSiN、TiSiCN、Ti23、TiAlON、ZrN、ZrCN、AlZrN、TiAlN、TiAlSiN、TiAlCrSiN、AlCrN、AlCrSiN、TiZrN、TiAlMoN、TiAlNbN、TiSiN、TiSiCN、AlCrTaN、AlTiVN、TiB2、TiCrHfN、CrSiWN、TiAlCN、TiSiCN、AlZrON、AlCrCN、AlHfN、CrSiBON、TiAlWN、AlCrMoCN、TiAlBN、TiAlCrSiBCNO等を挙げることができる。
とりわけ、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素と、チタンとからなる化合物としては、TiN、TiBN、TiON、TiCN、TiCNO、TiCBN等を挙げることができる。
なお、上記の化学式において、各元素の原子比が特に記載されていないものは必ずしも等比となるものではなく、従来公知の原子比が全て含まれるものとする。たとえば単にTiNと記す場合、TiとNとの原子比は1:1が含まれる他、2:1、1:0.95、1:0.9等が含まれる(特に断りのない限り、以下において同じ)。
なお、この硬質化合物層を2層以上含む場合は、これらの化合物からなる層を2nm〜5μmの厚みで積層してもよい。そして、特に炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、チタンとからなる化合物によって構成される2種以上の層が、各層の厚みを1〜100nmの厚みとして周期的に積層される超多層を1以上含むことが好ましい。このように上記各層を周期的に積層させることにより、耐酸化性および耐熱性がさらに向上し極めて優れた耐摩耗性が示される。
ここで、周期的に積層させるとは、たとえば2種の層を上下交互に積層させるなど、一定の周期性をもって積層させることをいう。なお、各層の厚みが1nm未満となる場合や100nmを超える場合には積層による耐摩耗性の向上効果が示されない場合があるが、その場合であってもこれらの元素や化合物によってもたらされる固有の耐摩耗性の向上効果は示される。各層の厚みはより好ましくは4〜60nmである。
また、このような硬質化合物層は、0.3〜10μmの厚み(超多層で形成される場合はその全体の厚み)を有することが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。その厚みが0.3μm未満の場合には、十分な耐摩耗性が示されなくなるとともに十分な靭性を示さなくなる場合があり、10μmを超えると耐欠損性が低下することがあるため好ましくない。
<被膜の応力>
本発明の被膜を構成する被覆層の少なくとも1層には、圧縮残留応力のある層または応力のない層のうちのいずれか一方または両方を含んでいてもよい。この圧縮残留応力のある層または応力のない層のいずれか一方または両方を含むことによって、表面被覆切削工具を長時間使用した場合の疲労寿命による切れ刃部の欠損を効果的に防止することができる。上述した酸化アルミニウム層がこの圧縮残留応力のある層または応力のない層を兼ねていてもよい。
<基材の組成>
本発明の表面被覆切削工具の基材に用いられる組成としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知の組成物を特に限定なく用いることができる。たとえば、超硬合金(たとえば、WC基超硬合金、WCのほか、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびこれらの混合体等)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。また、本発明の基材は、必要に応じてさらに砥石、ブラシ等で加工することにより所定の形状や寸法精度に整えられていてもよいし、基材上に脱β層が設けられていてもよい。
<用途>
本発明の表面被覆切削工具は、この種のチップにより切削が可能なあらゆる種類の被削材に対して用いることができ、またその用途もドリル、エンドミル、ドリル加工用刃先交換型チップ、エンドミル加工用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削加工用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップまたはクランクシャフトのピンミーリング加工用刃先交換型チップ等の極めて広範囲の用途に用いることができる。
<製造方法>
本発明の表面被覆切削工具は、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)により、その基材上に各種の被覆層を形成することができるが、これらの方法に限定されるものではなく、このような被覆層を形成することができる方法であればいかなる方法をも採用することができ、いかなる方法でも本発明の上記効果は発揮される。
ここで、本発明の各種の被覆層をCVD法によって形成する場合、基材の表面の一部または全部に反応ガスを蒸着させることによって被覆層を形成する。この反応ガスに用いられるガスは、単独成分のガスであってもよいが、2種以上の成分を有する混合ガスであることが好ましい。
本発明に用いられる反応ガスとしては、ハロゲン化鉱物ガス、非金属元素の単体ガス等のように、従来公知の反応ガスを用いることができ、たとえば、TiCl4、ZrCl4、BCl3、HCl、AlCl3、N2、H2、CH3CN、CH4、CO、CO2、H2S等からなる群から選択された少なくとも1種を用いられるが、これらの反応ガスに限られるものではなく、これらと同等の一般的な反応ガスを用いることができる。また、この反応ガスを基材に蒸着する際に必要な条件としては、たとえば、温度や圧力等が挙げられ、温度に関していえば700〜1300℃の範囲に設定することがあり、圧力に関していえば3〜100kPaの範囲に設定することがある。
本発明の表面被覆切削工具の被膜に含まれる被覆層は、物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)により形成することもできる。このような物理蒸着法としては、たとえばバランストマグネトロンスパッタリング法、アンバランストマグネトロンスパッタリング法、アークイオンプレーティング法、これらを各組み合せた方法等を挙げることができる。
本発明の表面被覆切削工具は、たとえば次のようなCVD法によって製造される。すなわち、図2に示されるように基材130をセットした基材セット用治具131を準備し、この基材130と基材セット用治具131を、図3に示されるように反応容器134内に入れて、反応容器内の温度を高温ヒータ133によって840℃〜1020℃の範囲に設定し、さらに反応容器内の圧力を6〜60kPaに設定して、原料ガス投入口136より反応容器134内に原料ガスを投入する。そして、この原料ガス投入口136より投入された原料ガスは、反応管138内を通って、反応管138のノズル穴135から放出され、一部の原料ガスは基材130の表面に付着し、基材130上に被覆層が形成され、基材130に被覆層として付着しなかった残りのガスは、排気口137を通って放出される。
この方法による被覆層の形成においては、図4に示されるように基材130とノズル間中央高さ139との距離であるノズル間距離140が被覆層に含まれる原料の分布と関係する。すなわち、基材130とノズル間中央高さ139とのノズル間距離140が短いほど原料ガスが基材130に蒸着しやすく、基材130とノズル間中央高さ139との距離が長いほど原料ガスが基材130に蒸着しにくい。したがって、原料ガスにZrを含む場合において、ノズル間距離140を適切に調節することは、切れ刃部における被膜のZr含有量の分布を決める上で極めて重要である。
また、上記のノズル間距離を調節する方法以外に、切れ刃部における被膜のZr含有量の分布を調節する方法としては、たとえば、基材130の第2すくい面と基材セット用治具131との距離を調節する方法、基材セット用治具131とノズル間中央高さ139との距離を調節する方法、反応容器134へのガスの導入の仕方を調節する方法、触媒ガスの使用量を調節する方法およびこれらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。ここで、「触媒ガス」にはたとえばH2Sを用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、Co粉末およびWC粉末を混合した混合粉末(TaC粉末の質量:NbC粉末の質量:TiC粉末の質量:Co粉末の質量:WC粉末の質量=0.8:0.4:2.0:9.0:87.8)を真空中、1450℃の温度で1時間焼結した焼結体を作製した。
次に、その焼結体のそれぞれについて23μmの厚さの脱β層が形成されるように処理し、次に刃先処理としてSiCブラシですくい面から見て0.06mmのホーニングを行ない、住友電工ハードメタル(株)社製のCNMG120408EGUと同一形状の超合金製の基材を作製した。こうして得られた基材130を、図2に示すように基材セット用治具131上に、基材セット用治具131の表面と基材130の第2すくい面とが接し、第1すくい面が上面となるように設置した。
次いで図3に示されるように、基材セット用治具131をCVD装置132にセットした上で、CVD装置132の反応容器134の条件を以下の表1に示される温度(℃)および圧力(kPa)に設定して、表1に示される原料ガス組成の原料ガスを原料ガス投入口136より投入することによって、基材130の表面上にTiN層(下)、MT−TiCN層(*)、α−Al23層(*)、α−Al23層(**)およびTiN層を表2に示す膜厚のとおりに順次積層して被覆層を形成し、実施例1の表面被覆切削工具を作製した。なお、表2に示す各層の層厚の単位はμmであり、「−」の記号は、該当欄の層が被覆層に形成されていないことを意味する。
なお、表1において、MT−TiCN層とは、MT−CVD法で形成されたTiCN層のことであり、「MT−TiCN層(*)」、「MT−TiCN層(**)」、「α−Al23層(*)」および「α−Al23層(**)」のように、被覆層の名称の後に(*)または(**)を付して示している被覆層は、原料ガスの一部にZrを含有することを示しており、Zr含有被覆層である。なお、(**)を付した被覆層は、(*)を付した被覆層のZr含有量の2倍のZrを含有している。また、「TiN層(下)」のように表される被覆層は、被膜に含まれる複数のTiN層のうち、基材130の一部もしくは全部が接しているTiN層である。
Figure 2010082741
ここで、表2に示されるノズル間距離(mm)とは、図4に示されるように、反応管138のノズル間中央高さ139と基材130の第1すくい面との距離のことである。このノズル間中央高さ139の高さが基材130の第1すくい面の高さよりも高い場合のノズル間距離140を正の数で表し、ノズル間中央高さ139の高さが基材130の第1すくい面の高さよりも低い場合のノズル間距離140を負の数で表している。
実施例1においては表2に示されるように、ノズル間距離140が−5mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.101とし、ノズル間距離140が−3mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.102とし、ノズル間距離140が0mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.103とし、ノズル間距離140が3mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.104とした。
Figure 2010082741
このようにして得られた表面被覆切削工具No.101〜104は、図5に示すように、上面のすくい面を第1すくい面202とし、第1すくい面202と異なる1のすくい面を第2すくい面(図示せず)とし、それ以外の表面である側面を逃げ面203とするネガティブチップであった。この表面被覆切削工具201は、第1すくい面202の第1対角線205aの両端に挟角(隣り合う2本の刃先稜線206aおよび刃先稜線206bが為す角度)が80°である切れ刃部207aおよび切れ刃部207bを有し、さらにその第2すくい面(図示せず)の第2対角線(図示せず)の両端に挟角が80°である切れ刃部207cおよび切れ刃部207dを有していた。
<断続切削試験>
表面被覆切削工具No.101〜104を以下の条件による断続切削試験を行ない、逃げ面摩耗量(VB)、欠損数および欠損率を測定し、その結果を以下の表3に示した。
ここで、逃げ面摩耗量(VB)は、表面被覆切削工具No.101〜104を各々10個ずつ用意し、表面被覆切削工具の1個につき切れ刃部207a、切れ刃部207b、切れ刃部207cおよび切れ刃部207dの4の切れ刃部ずつを計10個の断続切削試験を行ない、計40切れ刃部の断続切削試験を行なった。断続切削試験を行なった切れ刃部のうち、欠損しなかった切れ刃部の逃げ面摩耗量を平均して逃げ面摩耗量(VB)の平均値を求めた。この逃げ面摩耗量(VB)は、数値が小さいほど、耐摩耗性に優れていることを示している。
また、欠損数は、断続切削試験の終了時において全40切れ刃部のうちの欠損した切れ刃部の個数を指し、欠損率は、断続切削試験をした40の切れ刃部に対する欠損した切れ刃部の個数の割合を百分率で表した値であり、いずれも数値が小さいほど耐欠損性に優れていることを示している。
(断続切削試験の条件)
被削材:SCM415、直径250mmの1本溝が入っている丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:300m/min
送り:0.30mm/rev.
切り込み:2.0mm
切削時間:7分
切削油:水溶性油
<Zr含有量の測定>
表面被覆切削工具No.101〜104の各々について、隣り合う刃先稜線206aと刃先稜線206bとのなす挟角の二等分線を含む面で各切れ刃部を切断し、その切断面の被膜の部分を電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ2μmの範囲で10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部における被膜のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yave(質量%)と、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1(質量%)と、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2(質量%)とを得、これらの値Yave、Y1およびY2を表3に示した。
Figure 2010082741
表3より明らかな通り、本発明の実施例1の表面被覆切削工具No.101の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.916質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.921質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.911質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.005であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例1の表面被覆切削工具No.102の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.907質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.916質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.898質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.009であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例1の表面被覆切削工具No.103の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.887質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.911質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.862質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.026であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たしていた。
これに対して、比較例1の表面被覆切削工具No.104の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.911質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.997質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.824質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.091であり、これは式(II)の右辺に示される0.04を超えており、式(II)の条件を満たさなかった。
また、断続切削試験において、実施例1の表面被覆切削工具No.101およびNo.102は、いずれの切れ刃部においても折損することがなかったが、表面被覆切削工具No.103は、断続切削試験開始後3分から6分の間に1の切れ刃部が折損した。一方、比較例1の表面被覆切削工具No.104は、断続切削試験開始後3分以内に15の切れ刃部が折損し、断続切削試験開始後3分から6分の間に5の切れ刃部が折損した。
以上のことから、切れ刃部における被膜のZr含有量が式(II)の条件を満たさない表面被覆切削工具は、断続切削試験を行なった場合に、多数の切れ刃部に欠損が生じたことから、切れ刃部ごとによって工具寿命が異なり、欠損を起こしやすい切れ刃部を有する表面被覆切削工具である。しかも、この表面被覆切削工具は欠損が生じなかった切れ刃部の逃げ面摩耗量は大きくなっている。一方、切れ刃部における被膜のZr含有量が式(II)の条件を満たす表面被覆切削工具は、断続切削試験を行なったところ、ほとんどの切れ刃部において欠損が生じなかったことから、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具であるといえる。しかも、欠損が生じなかった切れ刃部の逃げ面摩耗量も小さいため、より長期間使用することができる。
<実施例2>
実施例1で製造された基材130を用いて、実施例1と同様の方法で、基材130の表面上に被覆層を形成した。実施例2においては、TiN層(下)、MT−TiCN層(*)、MT−TiCN層(**)、MT−TiCN層、TiBN層、α−Al23層(*)、α−Al23層(**)、κ−Al23層、TiCN層およびTiN層より選択された少なくとも4層の被覆層を表4に示す膜厚のとおりに順次積層して被覆層を形成した。なお、表4に示す各層の層厚の単位はμmであり、「−」の記号は、該当欄の層が被覆層に形成されていないことを意味する。
Figure 2010082741
ここで、表4に示されるノズル間距離は実施例1と同様の方法によって決められ、ノズル間距離140が−2mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.201、No.202およびNo.203とし、ノズル間距離140が4mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.204、No.205およびNo.206とした。
<断続切削試験>
上記のようにして製造された表面被覆切削工具No.201〜206の各々10個を用意し、以下の条件による断続切削試験を行ない、逃げ面摩耗量(VB)、欠損数および欠損率を測定し、実施例1と同様の方法で逃げ面摩耗量(VB)、欠損数および欠損率を求め、その結果を以下の表5に示した。
(断続切削試験の条件)
被削材:S45C、直径250mmの1本溝が入っている丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:320m/min
送り:0.32mm/rev.
切り込み:2.0mm
切削時間:6分
切削油:水溶性油
<Zr含有量の測定>
表面被覆切削工具No.201およびNo.204について、隣り合う刃先稜線206aと206bとのなす挟角の二等分線を含む面で各切れ刃部を切断し、その切断面の被膜の部分を電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmの範囲で10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部における被膜のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yave(質量%)と、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1(質量%)と、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2(質量%)とを得、これらの値Yave、Y1およびY2を表5に示した。
また、表面被覆切削工具No.202およびNo.205については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にMT−TiCN層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10点測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yave(質量%)、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1(質量%)、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2(質量%)の値を得、これらの値Yave、Y1およびY2を表5に示した。
また、表面被覆切削工具No.203およびNo.206については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にα−アルミナ層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10点測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yave(質量%)、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1(質量%)および第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2(質量%)の値を得、これらの値Yave、Y1およびY2を表5に示した。
Figure 2010082741
表5より明らかな通り、本発明の実施例2の表面被覆切削工具No.201の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.837質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.855質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.818質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.020であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例2の表面被覆切削工具No.202の全ての切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、1.762質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、1.778質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、1.746質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.018であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例2の表面被覆切削工具No.203の全ての切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.507質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1は、0.516質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2は、0.498質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.036であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たしていた。
これに対して、比較例2の表面被覆切削工具No.204の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.845質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、2.072質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.618質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.246であり、これは式(II)の右辺に示される0.04を超えており、式(II)の条件を満たさなかった。
また、比較例2の表面被覆切削工具No.205の全ての切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、1.741質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、1.969質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、1.512質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.263であり、これは式(II)の右辺に示される0.04を超えており、式(II)の条件を満たさなかった。
また、比較例2の表面被覆切削工具No.206の全ての切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.508質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1は、0.534質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2は、0.482質量%であることから、式(II)の左辺に示される|Y1−Y2|/Yaveの値は、0.102であり、これは式(II)の右辺に示される0.04を超えており、式(II)の条件を満たさなかった。
断続切削試験において、実施例2の表面被覆切削工具No.201およびNo.202は、いずれの切れ刃部においても折損することがなかったが、表面被覆切削工具No.203は、断続切削試験開始後3分から4分の間に2の切れ刃部が折損した。また、比較例2の表面被覆切削工具No.204は、断続切削試験開始後2分以内に7の切れ刃部が折損し、断続切削試験開始後3分から4分の間に6の切れ刃部が折損した。また、比較例2の表面被覆切削工具No.205は、断続切削試験開始後2分以内に14の切れ刃部が折損し、断続切削試験開始後3分から4分の間に4の切れ刃部が折損した。また、比較例2の表面被覆切削工具No.206は、断続切削試験開始後2分以内に18の切れ刃部が折損し、断続切削試験開始後2分から3分の間に4の切れ刃部が折損した。
以上のことから、切れ刃部における被膜のZr含有量が式(II)の条件を満たす表面被覆切削工具は、断続切削試験を行なってもほとんどの切れ刃部において欠損が生じなかったことから、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具であるといえる。しかも、欠損が生じなかった切れ刃部の逃げ面摩耗量も小さいため、より長期間使用することができる。また、被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量が式(II)の条件を満たしても、同様の効果を得られることがわかり、被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量が式(II)の条件を満たしても、同様の効果を得られることがわかった。
<実施例3>
まず、TaC粉末、NbC粉末、ZrCN粉末、Co粉末およびWC粉末を混合した混合粉末(TaC粉末の質量:NbC粉末の質量:ZrCN粉末の質量:Co粉末の質量:WC粉末の質量=0.4:1.2:0.4:11.0:87.0)を真空中、1450℃の温度で1時間焼結した焼結体を作製した。
次に、その焼結体のそれぞれについて15μmの厚さの脱β層が形成されるように処理し、つづいて刃先処理としてSiCブラシですくい面から見て0.06mmのホーニングを行ない、住友電工ハードメタル(株)社製のCNMG120408EUXと同一形状の超合金製の基材を作製した。こうして得られた基材130を、図6に示すように基材130の第2共有稜204bをセット用治具131にある孔にはめこみ、基材130の第1共有稜204aが上に向くように設置した。
次いで図7に示されるように、基材セット用治具131をCVD装置132にセットした上で、CVD装置132の反応容器134の条件を表1に示される温度(℃)および圧力(kPa)に設定した。そして、表1に示される原料ガス組成の原料ガスを原料ガス投入口136より投入することにより、基材130の表面上にTiN層(下)、MT−TiCN層(*)、MT−TiCN層、TiBN層、TiBNO層、α−Al23層(*)、α−Al23層(**)、κ−Al23層、TiCN層およびTiN層より選択された少なくとも4層の被覆層を表6に示す膜厚のとおりに順次積層して被覆層を形成した。なお、表6に示す各層の層厚の単位はμmであり、「−」の記号は、該当欄の層が被覆層に形成されていないことを意味する。
Figure 2010082741
表6に示されるノズル間距離(mm)とは、図8に示されるように、反応管138のノズル間中央高さ139と基材130の第1共有稜との距離のことである。このノズル間中央高さ139の高さが基材130の第一共有稜よりも高い場合のノズル間距離141を正の数とし、ノズル間中央高さ139の高さが基材130の第一共有稜の高さよりも低い場合のノズル間距離141を負の数としている。
実施例3においては表6に示されるように、ノズル間距離141が−5mmで焼結されて得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.301、No.302およびNo.303とし、ノズル間距離141が4mmで焼結されて得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.304、No.305およびNo.306とした。
<断続切削試験>
表面被覆切削工具No.301〜306の各々10個ずつを用意し、以下の条件による断続切削試験を行ない、逃げ面摩耗量(VB)、欠損数および欠損率を測定し、実施例1と同様の方法で逃げ面摩耗量(VB)、欠損数および欠損率を求め、その結果を以下の表7に示した。
(断続切削試験の条件)
被削材:SCr420H、直径250mmの1本溝が入っている丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:350m/min
送り:0.34mm/rev.
切り込み:2.0mm
切削時間:5分
切削油:水溶性油
<Zr含有量の測定>
表面被覆切削工具No.301およびNo.304について、隣り合う刃先稜線206aと刃先稜線206bとのなす挟角の二等分線を含む面で各切れ刃部を切断し、その切断面の被膜の部分を電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmの範囲で10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部における被膜のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Zave(質量%)と、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜のZr含有量の平均値Z1(質量%)と、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Z2(質量%)とを得、これらの値Zave、Z1およびZ2を表7に示した。
また、表面被覆切削工具No.302およびNo.305については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にMT−TiCN層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10点測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Zave(質量%)と、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z1(質量%)と、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z2(質量%)とを得、これらの値Zave、Z1およびZ2を表7に示した。
また、表面被覆切削工具No.303およびNo.306については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にα−アルミナ層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10点測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Zave(質量%)と、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z1(質量%)と、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z2(質量%)とを得、これらの値Zave、Z1およびZ2を表7に示した。
Figure 2010082741
表7より明らかな通り、本発明の実施例3の表面被覆切削工具No.301の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Zaveは、0.912質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜のZr含有量の平均値Z1は、0.928質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Z2は、0.895質量%であることから、式(III)に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.036であり、これは式(III)の右辺に示される0.04未満であり、式(III)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例3の表面被覆切削工具No.302の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、0.909質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z1は、0.923質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z2は、0.895質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.031であり、これは式(III)の右辺に示される0.04未満であり、式(III)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例3の表面被覆切削工具No.303の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.422質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z1は、0.429質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z2は、0.415質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.033であり、これは式(III)の右辺に示される0.04未満であり、式(III)の条件を満たしていた。
これに対して、比較例3の表面被覆切削工具No.304の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、0.911質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜のZr含有量の平均値Z1は、0.969質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Z2は、0.852質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.129であり、これは式(III)の右辺に示される0.04を超えており、式(III)の条件を満たさなかった。
また、比較例3の表面被覆切削工具No.305の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、0.907質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z1は、0.957質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z2は、0.856質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.111であり、これは式(III)の右辺に示される0.04を超えており、式(III)の条件を満たさなかった。
また、比較例3の表面被覆切削工具No.306の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.423質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z1は、0.447質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z2は、0.399質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.113であり、これは式(III)の右辺に示される0.04を超えており、式(III)の条件を満たさなかった。
断続切削試験において、実施例3の表面被覆切削工具No.301およびNo.302は、いずれの切れ刃部においても折損することがなかったが、実施例3の表面被覆切削工具No.303は、断続切削試験開始後2分から3分の間に2の切れ刃部が折損した。一方、比較例3の表面被覆切削工具No.304は、断続切削試験開始後2分以内に5の切れ刃部が折損し、断続切削試験開始後2分から3分の間に7の切れ刃部が折損した。また、表面被覆切削工具No.305は、断続切削試験開始後2分以内に12の切れ刃部が折損し、断続切削試験開始後3分から6分の間に4の切れ刃部が折損した。また、表面被覆切削工具No.306は、断続切削試験開始後2分以内に19の切れ刃部が折損し、断続切削試験開始後2分から3分の間に4の切れ刃部が折損した。
以上のことから、切れ刃部における被膜のZr含有量が式(III)の条件を満たす表面被覆切削工具は、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、断続切削試験を行なっても、ほとんどの切れ刃部において欠損が生じなかったことから、長期間の使用しても欠損を起こしにくい表面被覆切削工具であるといえる。しかも、欠損が生じなかった切れ刃部の逃げ面摩耗量も小さいため、より長期間使用することができる。また、被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量が式(III)の条件を満たしても、同様の効果を得られることがわかり、また被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量が式(III)の条件を満たしても、同様の効果を得られることがわかった。
以上のように、本発明の実施例について説明を行なったが、上述の実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、切れ刃部ごとの工具寿命のバラつきがより少なく、長期間の使用にも欠損を起こしにくい表面被覆切削工具を提供することができる。
本発明の表面被覆切削工具の好ましい一例の模式的な斜視図である。 基材セット用治具の表面と基材の第2すくい面とを接するように設置した後の基材セット用治具を真上から見た模式図である。 基材セット用治具を設置した後のCVD装置の模式的な断面図である。 基材セット用治具と基材の第2すくい面とが接するように設置した場合の、ノズル間中央高さと基材との位置関係を示すCVD装置の拡大断面図である。 本発明の実施例の表面被覆切削工具を示す模式的な斜視図である。 基材の共有稜を基材セット用治具の孔にはめこんだ基材セット用治具を真上から見た模式図である。 基材の共有稜を基材セット用治具の孔にはめこんだ基材セット用治具を設置した後のCVD装置を示す模式的な断面図である。 基材の共有稜を基材セット用治具の孔にはめこむように設置した場合の、ノズル間中央高さと基材との位置関係を示すCVD装置の拡大断面図である。
符号の説明
101,201 表面被覆切削工具、102a,202 第1すくい面、102b 第2すくい面、103,203 逃げ面、104 共有稜、105a,205a 第1対角線、105b 第2対角線、106,106a,106b,206,206a,206b 刃先稜線、107,207a,207b,207c,207d 切れ刃部、130 基材、131 基材セット用治具、132 CVD装置、133 高温ヒータ、134 反応容器、135 ノズル穴、136 原料ガス投入口、137 排気口、138 反応管、139 ノズル間中央高さ、140,141 ノズル間距離、204a 第1共有稜、204b 第2共有稜。

Claims (10)

  1. 基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
    前記被膜は、少なくとも1層の被覆層を含み、
    前記被覆層のうち少なくとも1層は、Zrを含有するZr含有被覆層であり、
    前記表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、
    前記切れ刃部のうち1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量は、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量と実質的に等しい、表面被覆切削工具。
  2. 前記表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、
    前記被膜のZr含有量は、下記式(I)を満たす、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
    (X1−X2)/Xave<0.04 ・・・(I)
    (式中X1は、いずれかの切れ刃部における被膜のZr含有量であって、そのZr含有量が最大となるZr含有量であり、X2は、いずれかの切れ刃部における被膜のZr含有量であって、そのZr含有量が最小となるZr含有量であり、Xaveは、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値である。)
  3. 前記表面被覆切削工具は、2のすくい面を有し、
    前記すくい面は、いずれも少なくとも2本の対角線を有し、
    前記対角線は、該対角線の両端が切れ刃部に含まれ、
    前記すくい面のうち、面積が広い方のすくい面を第1すくい面とし、面積が狭い方のすくい面を第2すくい面とする場合、
    前記被膜のZr含有量は、下記式(II)を満たす、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
    |Y1−Y2|/Yave<0.04 ・・・(II)
    (式中Y1は、前記第1すくい面の対角線のうち、いずれか1の対角線である第1対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であり、Y2は、前記第2すくい面の対角線のうち、前記第1対角線に平行な対角線である第2対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であり、Yaveは、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値である。)
  4. 前記表面被覆切削工具は、少なくとも2の逃げ面を有し、
    前記逃げ面のうち1の逃げ面は、他の逃げ面のうちの少なくとも1の逃げ面と交差する1の稜を共有稜として有し、
    前記共有稜は、前記表面被覆切削工具において複数存在し、かつ該共有稜の両端は切れ刃部に含まれ、
    前記被膜のZr含有量は、下記式(III)を満たす、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
    (Z1−Z2)/Zave<0.04 ・・・(III)
    (式中Z1は、前記共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第1共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であって、第1共有稜を含む全ての共有稜の各両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最大となる値であり、Z2は、前記共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第2共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値であって、第2共有稜を含む全ての共有稜の各両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最小となる値であり、Zaveは、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値である。)
  5. 前記第1共有稜は、前記第1すくい面にある対角線のうち、いずれか1の対角線と交差し、前記対角線は前記第2共有稜とも交差する、請求項4に記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記表面被覆切削工具は、ネガティブチップである、請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記被膜は、酸化アルミニウムを主体として含む酸化アルミニウム層またはチタン化合物を主体として含むチタン化合物層のいずれか一方または両方を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記Zr含有被覆層は、前記酸化アルミニウム層または前記チタン化合物層のいずれか一方または両方である、請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  9. 前記被膜は、Zr含有被覆層以外に、少なくとも1層の硬質化合物層を含んでおり、
    前記硬質化合物層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層である、請求項1〜8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  10. 前記硬質化合物層は、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、チタンとからなる化合物を主体として含む層である、請求項9に記載の表面被覆切削工具。
JP2008253697A 2008-09-30 2008-09-30 表面被覆切削工具 Active JP5240608B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008253697A JP5240608B2 (ja) 2008-09-30 2008-09-30 表面被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008253697A JP5240608B2 (ja) 2008-09-30 2008-09-30 表面被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2010082741A true JP2010082741A (ja) 2010-04-15
JP5240608B2 JP5240608B2 (ja) 2013-07-17

Family

ID=42247209

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008253697A Active JP5240608B2 (ja) 2008-09-30 2008-09-30 表面被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5240608B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000334605A (ja) * 1999-05-26 2000-12-05 Mitsubishi Materials Corp 硬質被覆層がすぐれた熱遮断性および層間密着性を有する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2001009604A (ja) * 1999-06-28 2001-01-16 Mitsubishi Materials Corp 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具
JP2002254204A (ja) * 2001-02-23 2002-09-10 Mmc Kobelco Tool Kk 切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000334605A (ja) * 1999-05-26 2000-12-05 Mitsubishi Materials Corp 硬質被覆層がすぐれた熱遮断性および層間密着性を有する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2001009604A (ja) * 1999-06-28 2001-01-16 Mitsubishi Materials Corp 硬質被覆層が高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆炭化タングステン基超硬合金製切削工具
JP2002254204A (ja) * 2001-02-23 2002-09-10 Mmc Kobelco Tool Kk 切粉に対する表面潤滑性にすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具

Also Published As

Publication number Publication date
JP5240608B2 (ja) 2013-07-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5618429B2 (ja) 表面被覆部材およびその製造方法
EP2072637B1 (en) Coated cutting tool and a method of making a coated cutting tool
KR101386328B1 (ko) 표면피복 절삭공구
JP6638936B2 (ja) 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP6699056B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5935125B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5074772B2 (ja) 表面被覆切削工具
CN107980013A (zh) 表面被覆切削工具及其制造方法
WO2014129273A1 (ja) 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP4970886B2 (ja) 表面被覆切削工具
WO2018070195A1 (ja) 表面被覆切削工具
JP5027491B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP6143158B2 (ja) 表面被覆部材およびその製造方法
JP5240607B2 (ja) 表面被覆切削工具
KR101386384B1 (ko) 표면피복 절삭공구
JP2008168364A (ja) 表面被覆切削工具
JP5240608B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2006082210A (ja) 表面被覆切削工具
JP2007319964A (ja) 刃先交換型切削チップ
JP7190111B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4878808B2 (ja) 刃先交換型切削チップ
JP2008006542A (ja) 刃先交換型切削チップ
JP2007253316A (ja) 刃先交換型切削チップ
WO2014054320A1 (ja) 表面被覆切削工具およびその製造方法
JP2006082208A (ja) 表面被覆切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A625 Written request for application examination (by other person)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A625

Effective date: 20110426

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121210

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121218

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130129

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130305

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130322

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160412

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5240608

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250