JP2010082740A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができ、かつ表面被覆切削工具の交換回数を減らすことのできる表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、該被膜は、少なくとも1層の被覆層を含み、該被覆層のうち少なくとも1層は、Zrを含有するZr含有被覆層であり、さらに上記表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、この切れ刃部のうち1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量は、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量と異なることを特徴とする表面被覆切削工具である。
【選択図】図5

Description

本発明は、広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができ、かつ表面被覆切削工具の交換回数を減らすことのできる表面被覆切削工具に関する。
近年の市場のニーズとして、1つの切削工具であらゆる硬度の被削材を切削することができるような切削工具であって、しかも長期間使用しても表面被覆切削工具の摩耗が少なく、表面被覆切削工具の交換する回数を少なくすることができる表面被覆切削工具の登場が望まれている。
一般に、表面被覆切削工具をはじめとする切削工具の基材として用いられる超硬合金やサーメットは、耐熱亀裂性、耐酸化性、高温硬度、破壊靭性などの特性に優れていることが要求され、現状の切削工具の基材に用いられる超硬合金およびサーメットは、耐熱亀裂性や破壊靭性を改善するために、多くの研究者により様々な工夫がなされてきている。
この超硬合金やサーメットのような粉体をプレスして焼結する方法で製造された基材を用いる表面被覆切削工具は、基材上に複数の被覆層を有しており、その被覆層に含まれる硬質材料の結晶構造を変えることや被覆層に含まれる硬質材料の含有量を変えることにより、その耐熱亀裂性や破壊靭性を調整することができる。
これらの被覆層に含まれる硬質材料の結晶構造や含有量を適宜変えることによって、部位ごとに耐熱亀裂性や破壊靭性の調整するような試みは、従来からなされており、たとえば特開2003−82432号公報(特許文献1)では部位によって硬質材料の被覆層の結合相量を変える技術が提案されている。本技術の表面被覆切削工具によれば、硬質材料の被覆層の結合相量が低い部位は耐熱亀裂性を有し、硬質材料の被覆層の結合相量が高い部位は破壊靭性を有することから、様々な強度や硬度を有する各種の被削材に対応できる点で優れていた。
しかし、その表面被覆切削工具の対応できる被削材の硬度や強度の範囲は、十分とはいえず、さらに広範囲の硬度や強度に対応できる表面被覆切削工具の登場が望まれていた。
このような状況の中、表面被覆切削工具の部位によって耐熱亀裂性や破壊靭性の特性を変える別の試みとして特開2006−236447号公報(特許文献2)に、部位によって硬質材料の被覆層の厚みを変える表面被覆切削工具が提案されている。本技術による表面被覆切削工具によれば、硬質材料の被覆層の厚みが薄い部位は耐熱亀裂性を有し、硬質材料の被覆層の厚みが厚い部位は破壊靭性を有することから、広範囲の硬度や強度を有する被削材に対応することが一応可能であった。
しかし、この表面被覆切削工具を長期間使用すれば、硬質材料の被覆層に摩耗減少が起こり、特に硬質材料の被覆層の厚みが薄い部位に摩耗減少が起こると、表面被覆切削工具の耐熱亀裂性の性能が損なわれ、結果として表面被覆切削工具を交換する頻度が多くなってしまうという新たな問題が生じていた。
以上のことから、現状では広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができる表面被覆切削工具であって、かつ表面被覆切削工具の交換回数を減らすことのできる表面被覆切削工具の登場が望まれている。
特開2003−82432号公報 特開2006−236447号公報
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができ、かつ表面被覆切削工具の交換回数を減らすことのできる表面被覆切削工具を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するべく種々の検討を重ねた結果、表面被覆切削工具の部位によって異なる硬度や強度を有していることが広範囲の被削材を切削する上で理想的状態であるとの知見を得、この知見に基づきさらに鋭意検討を重ねることにより、被膜に含まれるZrの分布に注目し、表面被覆切削工具の切削に関与する部位によってZrの含有量を変えることが上記目的に対して最も効果的であるとの更なる知見を得、この知見の下、更に鋭意検討を重ねることによりついに本発明を完成したものである。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、該被膜は、少なくとも1層の被覆層を含み、該被覆層のうち少なくとも1層は、Zrを含有するZr含有被覆層であり、さらに上記表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、この切れ刃部のうち1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量は、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量と異なることを特徴とする。
また、本発明の表面被覆切削工具において、被膜のZr含有量は、いずれか1の切れ刃部における被膜のZr含有量のうち、そのZr含有量が最大となるZr含有量をX1とし、そのZr含有量が最小となるZr含有量をX2とし、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をXaveとする場合、X1、X2およびXaveが下記式(I)を満たすことが好ましい。
(X1−X2)/Xave≧0.04・・・(I)
また、本発明の表面被覆切削工具は、2のすくい面を有し、該すくい面は、いずれも少なくとも2本の対角線を有し、該対角線は、該対角線の両端が上記切れ刃部に含まれ、該すくい面のうち、面積が広い方のすくい面を第1すくい面とし、面積が狭い方のすくい面を第2すくい面とし、この第1すくい面の対角線のうち、いずれか1の対角線である第1対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY1とし、該第2すくい面の対角線のうち、上記第1対角線に平行な対角線である第2対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY2とし、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をYaveとする場合、Y1、Y2およびYaveが下記式(II)を満たすことが好ましい。
(Y1−Y2)/Yave≧0.04・・・(II)
また、本発明の表面被覆切削工具は、少なくとも2の逃げ面を有し、該逃げ面のうち1の逃げ面は、他の逃げ面のうちの少なくとも1の逃げ面と交差する1の稜を共有稜として有し、この共有稜は、上記表面被覆切削工具において複数存在し、かつ該共有稜の両端は、上述の切れ刃部に含まれ、該共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第1共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Z1が、他の共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最大となり、該共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第2共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Z2が、他の共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最小となり、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をZaveとする場合、Z1、Z2およびZaveが下記式(III)を満たすことが好ましい。
(Z1−Z2)/Zave≧0.04・・・(III)
上述の第1共有稜は、上記第1すくい面にある対角線のうち、いずれか1の対角線と交差し、該対角線は上述の第2共有稜とも交差することが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、ネガティブチップであれば、本発明の効果が顕著となる。
ここで、上記被膜は、酸化アルミニウムを主体として含む酸化アルミニウム層またはチタン化合物を主体として含むチタン化合物層のいずれか一方または両方を含むことが好ましい。
また、上記Zr含有被覆層は、上記酸化アルミニウム層または上記チタン化合物層のいずれか一方または両方であることが好ましい。
また、上記被膜は、Zr含有被覆層以外に、少なくとも1層の硬質化合物層を含んでおり、この硬質化合物層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層であることが好ましく、チタンと、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層であることがさらに好ましい。
本発明によれば、広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができ、かつ表面被覆切削工具の交換回数を減らすことのできる表面被覆切削工具を提供することができる。
以下、本発明の表面被覆切削工具の各部についてさらに詳細に説明する。なお、以下の説明では図面を用いて説明しているが、本発明の図面において、同一の参照符号を付したものは同一部分または相当部分を示している。また、各図面はあくまでも説明用の模式的なものであって、表面被覆切削工具本体と切れ刃部のサイズ比は実際のものとは異なり得る。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜を含んでおり、その被膜は少なくとも1層の被覆層を含み、さらに2以上の切れ刃部を備えるものである。このような構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、上面およびそれに平行な断面が多角形または円形(好ましくは、菱形、正方形、三角形、長方形、丸形など)をなす形状を有している。
図1に、本発明の表面被覆切削工具の好ましい一例の模式的な斜視図を示している。この表面被覆切削工具101は、切削加工時において被削材の切り屑と接触するすくい面と、被削材自体に接触する逃げ面とを有している。図1においては通常、菱型の2つの面がすくい面102a,102bとなり、菱型以外の4つの面が逃げ面103となる。
また、逃げ面103のうちの1の逃げ面と、他の1の逃げ面とが交わる稜を共有稜104といい、1の逃げ面と1のすくい面とが交わる稜を刃先稜線106というが、この共有稜104および刃先稜線106は、各々面とりされていてもよい。このように面とり加工がされ、明確な稜を構成しなくなっても、本発明では、刃先稜線あるいは共有稜と呼ぶものとする。また、このような表面被覆切削工具101は、上面の中央に下面まで貫通する孔が設けられていてもよい。
また、本発明の表面被覆切削工具は、すくい面にチップブレーカと呼ばれる凹凸形状が形成されていても差し支えなく、また、表面被覆切削工具の形状はネガティブチップの形状またはポジティブチップの形状のいずれの形状もとることができるが、使用用途において、どちらの形状を用いてもよい場合は両面使用できるためチップ1個あたりの使用可能な切れ刃数が多い、ネガティブチップを用いることが好ましい。
<切れ刃部>
本発明の表面被覆切削工具101において、「切れ刃部」とは、表面被覆切削工具101のコーナー部分であって切削に関与する部分をいう。本発明において「切れ刃部」という場合は、基材のコーナー部分または被膜のコーナー部分のいずれか一方または両方を含むものとする。
たとえば、図1に示される表面被覆切削工具101において、切れ刃部は、表面被覆切削工具101の斜線を付した部分を指す。なお、図1において、斜線部分は1つの切れ刃部分にのみ付されているが、表面被覆切削工具101の頂点にある、8つのコーナー部分すべてが切れ刃部107となる(便宜的に他の7つの切れ刃部には斜線を付していない)。
ここで、上記「コーナー部分」とは、図1に示されるように2つの刃先稜線106a,106bと1つの共有稜104とが交差する交点から1つの刃先稜線106a方向に延びる所定長さ(t1mm)と、他の刃先稜線106bの方向に延びる所定長さ(t2mm)と、その共有稜104から所定長さ(hmm)とを各辺とする四角柱の部分をいう。なお、本発明でいう交点は、各々面とりがされていてもよく、このように面とり加工がされていても交点と呼ぶものとする。
ここで、上記切れ刃部の長さ(t1mm)、(t2mm)および(hmm)を具体的な数値によって特定することは困難である。これは、表面被覆切削工具の形状、被削材の種類等により切削に関与する部分の範囲が異なるためである。よって、この切れ刃部を定義する場合、上述のように「切削に関与する部分」とするのが最も好適であるが、あえてこの長さ(t1mm)、(t2mm)および(hmm)を規定するならば、それは上記共有稜および刃先稜線の長さの0.5%以上40%以下とすることができる(この長さは多角形の形状により必ずしも各稜で同じ長さとなるものではない)。なお、上記の「切削に関与する部分」とは、被削材と接触する部分および被削材と接触はしないが切り屑と接触する部分をいう。
<被膜>
本発明の表面被覆切削工具101において基材上に形成される「被膜」とは、基材の一部または全部を覆う膜であって、少なくとも1層の被覆層を含むものである。本発明の表面被覆切削工具101の被膜は、Zrを含有することを特徴とし、被膜にZrを含有することによって、従来よりも表面被覆切削工具の靭性と耐摩耗性とをより高度に両立させることができる。
このような被膜の合計厚み(被覆層を2以上含む場合は、各被覆層の合計厚み)は、0.1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜25μmであり、さらに好ましくは、1〜20μmである。被膜の合計厚みが0.1μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、被膜の合計厚みが30μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
なお、膜厚の測定方法としては、切削工具を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて観察することにより求めることができる。以下に被膜を構成する被覆層の各層について説明する。
<Zr含有被覆層>
被膜を構成する被覆層の少なくとも1層である「Zr含有被覆層」は、被膜に含まれる被覆層のうちの1の被覆層であって、Zrを含有する層である。このZr含有被覆層を含むことによって、従来よりも表面被覆切削工具の靭性と耐摩耗性とをより高度に両立させることができる。
なお、本発明において、「被膜に含まれるZr」と表現することがあるが、これは必ずしも被膜にZrが均一に含まれている必要はなく、Zrの含有量が部分的に高い部分や低い部分を有することがあってもよい。
この被膜に含まれるZrの含有量と切れ刃部の耐摩耗性および靭性との関係は、被膜に含まれるZrの含有量が多くなるにつれ靭性が向上する傾向にあり、被膜に含まれるZrの含有量が少なくなるにつれ耐摩耗性が向上する傾向にある。
ここで、本発明において「Zrを含有する」とは、不可避不純物として含まれる程度以上に含まれていることをいい、この不可避不純物として被膜に含まれる量を具体的な数値で示すことは困難であるが、あえて規定するならば被膜に対しZrを0.001質量%以上の割合で含んでいることをいう。
また、被膜に含まれるZrは、被膜に固溶状態で含まれていてもよいし、Zr含有被覆層のマトリックス成分の結晶中に置換型もしくは侵入型のいずれか一方もしくは両方の型で含まれていてもよい。なお、このZr含有被覆層は、後述する酸化アルミニウム層またはチタン化合物層のいずれか一方もしくは両方を兼ねていてもよい。
また、このようなZr含有被覆層の厚みは、0.01〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜15μmであり、さらに好ましくは、0.2〜12μmである。Zr含有被覆層の厚みが0.01μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、Zr含有被覆層の厚みが20μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
本発明の表面被覆切削工具の切れ刃部において、該切れ刃部のうち1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量と、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量とが異なる場合、広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができ、かつ表面被覆切削工具の交換回数を減らすことのできる表面被覆切削工具を提供することができる。
ここで、被膜のZr含有量が「異なる」とは、1の切れ刃部における被膜のZr含有量と他の切れ刃部における被膜のZr含有量とがいずれかの分析方法によって異なることが明らかに示される場合はもちろん、実質的に異なるとみなせる程度の微差の場合であってもよいことを意味する。
上記のように、切れ刃部における被膜のZr含有量を切れ刃部ごとに異なるように調整することによって、広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができる表面被覆切削工具を提供することができる。表面被覆切削工具を広範囲の硬度や強度を有する被削材の切削に対応できるようにするには、表面被覆切削工具の切れ刃部ごとに異なる靭性や耐熱亀裂性を有することが必要であり、そのためには表面被覆切削工具のあらゆる箇所の硬度や強度が異なることが理想的である。
しかしながら、表面被覆切削工具のあらゆる箇所で異なる硬度や強度が付与された表面被覆切削工具を工業的に生産することは困難が予想されるため、本発明者は表面被覆切削工具の各部位の中で特に切削に関与する切れ刃部に注目し、各切れ刃部における被膜のZr含有量を可能な限り不均一な状態とすることにより、表面被覆切削工具の切れ刃部ごとに異なる靭性や耐熱亀裂性を有することができ、もって広範囲の硬度や強度を有する被削材に対応できる表面被覆切削工具を可能としたものである。
本発明でいう、表面被覆切削工具の各切れ刃部における被膜のZr含有量が切れ刃部ごとに異なるとは、各切れ刃部ごとにおける被膜のZr含有量を不均一にしたものであり、より具体的には、以下のような条件を満たすことが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具の被膜のZr含有量は、いずれか1の切れ刃部における被膜のZr含有量のうち、そのZr含有量が最大となるZr含有量をX1とし、そのZr含有量が最小となるZr含有量をX2とし、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をXaveとする場合、X1、X2およびXaveが下記式(I)を満たすことによって、広範囲の被削材を切削することができる表面被覆切削工具を得ることができる。また、式(I)の左辺が大きな値を示すほど、切れ刃部ごとのZr含有量の差が大きくなるので、切れ刃部ごとの硬度や強度の性能の差がより大きくなり、より広範囲の被削材を切削することができる表面被覆切削工具とすることができる。このため、式(I)の左辺は0.08以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。またこの上限は0.5とすることが好ましい。
(X1−X2)/Xave≧0.04・・・(I)
また、本発明の表面被覆切削工具は、2のすくい面を有し、該すくい面は、いずれも少なくとも2本の対角線を有し、該対角線は、該対角線の両端が上記切れ刃部に含まれ、該すくい面のうち、面積が広い方のすくい面を第1すくい面とし、面積が狭い方のすくい面を第2すくい面とし、該第1すくい面の対角線のうち、いずれか1の対角線である第1対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY1とし、該第2すくい面の対角線のうち、第1対角線に平行な対角線である第2対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY2とし、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をYaveとする場合、Y1、Y2およびYaveが下記式(II)を満たすことによって、広範囲の被削材を切削することができる表面被覆切削工具を得ることができる。また、式(II)の左辺が大きな値を示すほど、切れ刃部ごとのZr含有量の差が大きくなるので、切れ刃部ごとの硬度や強度の性能の差がより大きくなり、より広範囲の被削材を切削することができる表面被覆切削工具とすることができる。このため、式(II)の左辺は0.08以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。またこの上限は0.5とすることが好ましい。
(Y1−Y2)/Yave≧0.04・・・(II)
ここで、本発明の表面被覆切削工具101は、図1においては上側の面を第1すくい面102aといい、もう一方のすくい面を第2すくい面102bというが、通常第1すくい面102aは、2のすくい面のうち面積の広い方のすくい面のことをいう。なお、この2のすくい面の面積が等しい場合は、第1すくい面102aはいずれの面とすることもできる。
また、この第1すくい面102aに含まれる2の対角線のうち、1の対角線を第1対角線105aといい、第2すくい面102bに含まれる2の対角線のうち、第1対角線105aに平行な1の対角線を第2対角線105bという。
ここで、第1対角線105aと第2対角線105bとが「平行」であるとは、表面被覆切削工具101の立体構造において、第1すくい面102aの第1対角線105aと第2すくい面102bの第2対角線105bとが実質的にねじれの位置関係にないことをいう。
また、本発明の表面被覆切削工具は、全ての共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第1共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Z1が、他の共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最大となり、全ての共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第2共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Z2が、他の共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最小となり、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をZaveとする場合、Z1、Z2およびZaveが下記式(III)を満たすことによって、広範囲の被削材を切削することができる表面被覆切削工具を得ることができる。また、式(III)の左辺が大きな値を示すほど、切れ刃部ごとのZr含有量の差が大きくなるので、切れ刃部ごとの硬度や強度の性能の差がより大きくなり、より広範囲の被削材を切削することができる表面被覆切削工具とすることができる。このため、式(III)の左辺は0.08以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。またこの上限は0.5とすることが好ましい。
(Z1−Z2)/Zave≧0.04・・・(III)
また、第1共有稜は、前記第1すくい面にある対角線のうち、いずれか1の対角線と交差し、さらにこの対角線は前記第2共有稜とも交差していることが好ましい。すなわち、図1のような表面被覆切削工具101の立体構造の場合、第1共有稜と第2共有稜とが互いに対角の位置にある共有稜104であることが好ましい。
<酸化アルミニウム層>
被膜を構成する被覆層の少なくとも1層である「酸化アルミニウム層」は、被膜に少なくとも1層以上含まれる被覆層であって、酸化アルミニウムを主体として含む層である。この酸化アルミニウム層は、主にすくい面の耐溶着性を向上させるとともに、高速切削時の耐摩耗性をも向上させる作用をなすものである。そして、この酸化アルミニウムに含まれるアルミニウムに、α−アルミナを用いることによりこれらの作用効果は顕著となる。なお、この酸化アルミニウム層がZrを含む場合は、Zr含有被覆層となる。
また、酸化アルミニウム層が表面被覆切削工具の表面に露出していてもよいし、酸化アルミニウム層が表面被覆切削工具の刃先稜線部においてのみ露出していてもよい。また「主体として含む」とは、酸化アルミニウム層に酸化アルミニウムを少なくとも20質量%含有し、かつ酸化アルミニウム以外の成分が単一成分で酸化アルミニウムの含有量を超える量を含まないことをいう。
また、このような酸化アルミニウム層の厚みは、0.01〜20μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜15μmであり、さらに好ましくは、0.2〜12μmである。酸化アルミニウム層の厚みが0.01μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、酸化アルミニウム層の厚みが20μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
<チタン化合物層>
被膜を構成する被覆層の少なくとも1層である「チタン化合物層」は、被膜に少なくとも1層以上含まれる被覆層であって、チタン化合物を主体として含む層である。このチタン化合物層は、汎用切削に用いるときの耐摩耗性を向上させるために設ける層であり、MT−CVD(Medium Temperature Chemical Vapor Deposition)法で形成されることが好ましく、チタン化合物にはTiCNを用いることが好ましい。なお、このチタン化合物層がZrを含む場合は、Zr含有被覆層となる。
また「主体として含む」とは、チタン化合物層に、チタン化合物を少なくとも20質量%含有し、かつチタン化合物以外の成分が単一成分でチタン化合物の含有量を超える量を含まないことをいう。ここで、チタン化合物層に含まれるチタン化合物の含有量とは、単一種類のチタン化合物の含有量で20質量%以上のチタン化合物を含んでいてもよいし、複数種類のチタン化合物の含有量の合計で20質量%以上のチタン化合物を含んでいてもよい。
また、このようなチタン化合物層の厚みは、0.01〜25μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜18μmであり、さらに好ましくは、0.2〜15μmである。チタン化合物層の厚みが0.01μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、チタン化合物層の厚みが25μmを超えると残留応力が大きくなり、基材との密着性が低下する虞があり好ましくない。
<硬質化合物層>
本発明の表面被覆切削工具101の被膜は、上記Zr含有被覆層以外に、少なくとも1層の硬質化合物層を含んでいてもよい。この硬質化合物層は、周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層であることが好ましい。また、耐摩耗性等の諸特性を向上させつつ基材との密着性の低下を防止する観点から、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、チタンとからなる化合物を主体として含む層であることがさらに好ましい。
また、2以上の硬質化合物層を含む場合、1の硬質化合物層を構成する化合物と、他の硬質化合物層を構成する化合物とが異なることが好ましい。なお、その硬質化合物層のうちの一層の厚みは、1〜100nmであることが好ましい。
また「主体として含む」とは、硬質化合物層に、周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を少なくとも20質量%含有し、かつこの化合物以外の成分が単一成分でこの化合物の含有量を超える量を含まないことをいう。
なお、このような硬質化合物層を構成する化合物としては、たとえば、TiAl、TiSi、AlCr、TiN、TiON、TiCN、TiCNO、TiBN、TiCBN、TiAlCN、AlN、AlCN、AlCrCN、AlON、CrN、CrCN、TiSiN、TiSiCN、TiO、TiAlON、ZrN、ZrCN、AlZrN、TiAlN、TiAlSiN、TiAlCrSiN、AlCrN、AlCrSiN、TiZrN、TiAlMoN、TiAlNbN、TiSiN、TiSiCN、AlCrTaN、AlTiVN、TiB、TiCrHfN、CrSiWN、TiAlCN、TiSiCN、AlZrON、AlCrCN、AlHfN、CrSiBON、TiAlWN、AlCrMoCN、TiAlBN、TiAlCrSiBCNO等を挙げることができる。
とりわけ、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素と、チタンとからなる化合物としては、TiN、TiBN、TiON、TiCN、TiCNO、TiCBN等を挙げることができる。
なお、上記の化学式において、各元素の原子比が特に記載されていないものは必ずしも等比となるものではなく、従来公知の原子比が全て含まれるものとする。たとえば単にTiNと記す場合、TiとNとの原子比は1:1が含まれる他、2:1、1:0.95、1:0.9等が含まれる(特に断りのない限り、以下において同じ)。
なお、この硬質化合物層を2層以上含む場合は、これらの化合物からなる層を2nm〜5μmの厚みで積層してもよい。そして、特に炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、チタンとからなる化合物によって構成される2種以上の層が、各層の厚みを1〜100nmの厚みとして周期的に積層される超多層を1以上含むことが好ましい。このように上記各層を周期的に積層させることにより、耐酸化性および耐熱性がさらに向上し極めて優れた耐摩耗性が示される。
ここで、周期的に積層させるとは、たとえば2種の層を上下交互に積層させるなど、一定の周期性をもって積層させることをいう。なお、各層の厚みが1nm未満となる場合や100nmを超える場合には積層による耐摩耗性の向上効果が示されない場合があるが、その場合であってもこれらの化合物によってもたらされる固有の耐摩耗性の向上効果は示される。各層の厚みはより好ましくは4〜60nmである。
また、このような硬質化合物層は、0.3〜10μmの厚み(超多層で形成される場合はその全体の厚み)を有することが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmであり、さらに好ましくは1〜5μmである。その厚みが0.3μm未満の場合には、十分な耐摩耗性が示されなくなるとともに十分な靭性を示さなくなる場合があり、10μmを超えると耐欠損性が低下することがあるため好ましくない。
<被膜の応力>
本発明の被膜を構成する被覆層の少なくとも1層には、圧縮残留応力のある層または応力のない層のうちのいずれか一方または両方を含んでいてもよい。この圧縮残留応力のある層または応力のない層のいずれか一方または両方を含むことによって、表面被覆切削工具を長時間使用した場合の疲労寿命による切れ刃部の欠損を効果的に防止することができる。上述した酸化アルミニウム層がこの圧縮残留応力のある層または応力のない層を兼ねていてもよい。
<基材の組成>
本発明の表面被覆切削工具の基材に用いられる組成としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知の組成物を特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえば、WC基超硬合金、WCのほか、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムおよびこれらの混合体等)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等からなる群から選択された少なくとも1種とすることができる。
このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。また、本発明の基材は、必要に応じてさらに砥石、ブラシ等で加工することにより所定の形状や寸法精度に整えられていてもよいし、基材上に脱β層が設けられていてもよい。
<用途>
本発明の表面被覆切削工具は、この種のチップにより切削が可能なあらゆる種類の被削材に対して用いることができ、またその用途もドリル、エンドミル、ドリル加工用刃先交換型チップ、エンドミル加工用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削加工用刃先交換型チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップまたはクランクシャフトのピンミーリング加工用刃先交換型チップ等の極めて広範囲の用途に用いることができる。
<製造方法>
本発明の表面被覆切削工具は、化学蒸着法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)により、その基材上に各種の被覆層を形成することができるが、これらの方法に限定されるものではなく、このような被覆層を形成することができる方法であればいかなる方法をも採用することができ、いかなる方法でも本発明の上記効果は発揮される。
ここで、本発明の各種の被覆層をCVD法によって形成する場合、基材の表面の一部または全部に反応ガスを蒸着させることによって被覆層を形成する。この反応ガスに用いられるガスの種類は、単独成分のガスであってもよいが、2種以上の成分を有する混合ガスであることが好ましい。
本発明に用いられる反応ガスとしては、ハロゲン化鉱物ガス、非金属元素の単体ガス等のように、従来公知の反応ガスを用いることができ、たとえば、TiCl4、ZrCl4、BCl3、HCl、AlCl3、N2、H2、CH3CN、CH4、CO、CO2、H2S等からなる群から選択された少なくとも1種を用いられるが、これらの反応ガスに限られるものではなく、これらと同等の一般的な反応ガスを用いることができる。また、この反応ガスを基材に蒸着する際に必要な条件としては、たとえば、温度や圧力等が挙げられ、温度に関していえば700〜1300℃の範囲に設定することがあり、圧力に関していえば1〜100kPaの範囲に設定することがある。
本発明の表面被覆切削工具の被膜に含まれる被覆層は、物理蒸着法(PVD:Physical Vapor Deposition)により形成することもできる。このような物理蒸着法としては、たとえばバランストマグネトロンスパッタリング法、アンバランストマグネトロンスパッタリング法、アークイオンプレーティング法、これらを各組み合せた方法等を挙げることができる。
本発明の表面被覆切削工具の基材上の被覆層は、たとえば次のようなCVD法によって製造される。すなわち、図2に示されるように基材130をセットした基材セット用治具131を準備し、この基材130と基材セット用治具131を、図3に示されるように反応容器134内に入れて、反応容器内の温度を高温ヒータ133によって840℃〜1020℃の範囲に設定し、さらに反応容器内の圧力を6〜60kPaに設定して、原料ガス投入口136より反応容器134内に原料ガスを投入する。そして、この原料ガス投入口136より投入された原料ガスは、反応管138内を通って、反応管138のノズル穴135から放出され、一部の原料ガスは基材130の表面に付着し、基材130上に被覆層が形成され、基材130に被覆層として付着しなかった残りのガスは、排気口137を通って放出される。
この方法による被覆層の形成においては、図4に示されるように基材130とノズル間中央高さ139との距離であるノズル間距離140が被覆層の原料の分布と関係する。すなわち、基材130とノズル間中央高さ139とのノズル間距離140が短いほど原料ガスが基材130に蒸着しやすく、基材130とノズル間中央高さ139との距離が長いほど原料ガスが基材130に蒸着しにくい。したがって、原料ガスにZrを含む場合において、ノズル間距離140を適切に調節することは、切れ刃部における被膜のZr含有量の分布を決める上で極めて重要である。
また、上記のノズル間距離を調節する方法以外に、切れ刃部における被膜のZr含有量の分布を調節する方法としては、たとえば、基材130の第2すくい面と基材セット用治具131との距離を調節する方法、基材セット用治具131とノズル間中央高さ139との距離を調節する方法、反応容器134へのガスの導入の仕方を調節する方法、触媒ガスの使用量を調節する方法およびこれらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。ここで、「触媒ガス」にはたとえばH2Sを用いることができる。
以下、実施例1〜4を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、Co粉末およびWC粉末を混合した混合粉末(TaC粉末の質量:NbC粉末の質量:TiC粉末の質量:Co粉末の質量:WC粉末の質量=1.0:1.2:2.0:8.0:87.8)を真空中、1450℃の温度で1時間焼結した焼結体を作製した。
次に、その焼結体のそれぞれについて23μmの厚さの脱β層が形成されるように処理し、次に刃先処理としてSiCブラシですくい面から見て0.06mmのホーニングを行ない、住友電工ハードメタル(株)社製のCNMG120408EMUと同一形状の超合金製の基材を作製した。こうして得られた基材130を、図2に示すように基材セット用治具131上に、基材セット用治具131の表面と基材130の第2すくい面とが接し、第1すくい面が上面となるように設置した。
次いで図3に示されるように、CVD装置132の反応容器134の条件を下記の表1に示される温度(℃)および圧力(kPa)に設定して、表1に示される原料ガス組成の原料ガスを原料ガス投入口136より投入することによって、基材130の表面上にTiN層(下)、MT−TiCN層(*)、α−Al23層(*)およびTiN層を表2に示す膜厚のとおりに順次積層して被覆層を形成し、実施例1の表面被覆切削工具を作製した。なお、表2に示す各層の層厚の単位はμmである。
なお、表1において、MT−TiCN層とは、MT−CVD法で形成されたTiCN層のことであり、「MT−TiCN層(*)」および「α−Al23層(*)」のように、被覆層の名称の後に(*)を付して示している被覆層は、原料ガスの一部にZrを含有することを示しており、Zr含有被覆層である。また、「TiN層(下)」と表される被覆層は、被膜に含まれる複数のTiN層のうち、基材130の一部もしくは全部が接しているTiN層である。
Figure 2010082740
ここで、表2に示されるノズル間距離(mm)とは、図4に示されるように、反応管138のノズル間中央高さ139と基材130の第1すくい面(基材上面)との距離のことである。このノズル間中央高さ139の高さが基材130の第1すくい面の高さよりも高い場合のノズル間距離140を正の数で表し、ノズル間中央高さ139の高さが基材130の第1すくい面の高さよりも低い場合のノズル間距離140を負の数で表している。
そして、上記のノズル間中央高さ139を示す直線との距離が短い切れ刃部ほどZr含有量が多くなる。すなわち、たとえば図4の表面被覆切削工具130の上面(第1すくい面)側の切れ刃部のZr含有量は、表面被覆切削工具130の下面(第2すくい面)側の切れ刃部のZr含有量よりも多くなる。そして、Zr含有量の多い第1すくい面側の切れ刃部は靭性に優れたものとなり、Zr含有量の少ない第2すくい面側の切れ刃部は耐摩耗性に優れたものとなる。
実施例1においては、表2に示されるように、ノズル間距離140が6mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.101とし、ノズル間距離140が4mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.102とし、ノズル間距離140が2mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.103とし、ノズル間距離140が−2mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.104とした。
Figure 2010082740
このようにして得られた表面被覆切削工具No.101〜104は、図5に示すように、上面のすくい面を第1すくい面202とし、第1すくい面202と異なる1のすくい面を第2すくい面とし、それ以外の表面である側面を逃げ面203とするネガティブチップであった。この表面被覆切削工具201は、第1すくい面202の第1対角線205aの両端に挟角(隣り合う2本の刃先稜線206aおよび刃先稜線206bが為す角度)が80°である切れ刃部207aと切れ刃部207bとを有し、さらにその第2すくい面の第2対角線の両端に挟角が80°である切れ刃部207cと切れ刃部207dとを有していた。
<断続切削試験>
上記のようにして製造された表面被覆切削工具No.101〜104を各々10個ずつ用意し、各工具ごとに製造時にノズル間中央高さ139を示す直線との距離が短い第1すくい面側の切れ刃部、すなわち第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと207bとについて下記に示す断続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の欠損率を求め、表3に示した。ここで、欠損率とは断続切削試験を行なった切れ刃部(各々の工具当たり計20の切れ刃部)に対する欠損した切れ刃部の個数の割合を百分率で表した値であり、数値が小さいほど耐欠損性に優れていることを示している。
(断続切削試験の条件)
被削材:SCM435、直径250mmの4本溝が入っている丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:100m/min
送り:0.40mm/rev.
切り込み:2.5mm
切削時間:30秒
切削油:なし
<連続切削試験>
また、表面被覆切削工具No.101〜104を各々10個ずつ用意し、各工具ごとに製造時にノズル間中央高さ139を示す直線との距離が長い第2すくい面側の切れ刃部、すなわち第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとについて下記に示す条件で連続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の逃げ面摩耗量(VB)の平均値を求め、表3に示した。逃げ面摩耗量(VB)は、数値が小さいものほど、耐摩耗性に優れていることを示している。
(連続切削試験の条件)
被削材:SCM415、直径250mmの丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:320m/min
送り:0.32mm/rev.
切り込み:1.5mm
切削時間:5分
切削油:水溶性油
<Zr含有量の測定>
表面被覆切削工具No.101〜104の各々について、隣り合う刃先稜線206aと刃先稜線206bとのなす挟角の二等分線を含む面で各切れ刃部を切断し、その切断面の被膜の部分を電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ2μmの範囲で10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部における被膜のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yave(質量%)と、切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1(質量%)と、切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2(質量%)とを得、これらの値Yave、Y1およびY2を表3に示した。
Figure 2010082740
表3より明らかな通り、本発明の実施例1の表面被覆切削工具No.101の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.218質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.422質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.013質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.336であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例1の表面被覆切削工具No.102の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.352質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.437質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.266質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.127であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例1の表面被覆切削工具No.103の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.418質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.449質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.386質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.044であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
これに対して、比較例1の表面被覆切削工具No.104の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.899質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.912質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.885質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.014であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、連続切削試験による表3の逃げ面摩耗量VB(mm)から明らかなように、実施例1の表面被覆切削工具No.101、No.102およびNo.103は、比較例1の表面被覆切削工具No.104に比して、逃げ面摩耗量VBが優れていることがわかった。
一方、断続切削試験による表3の欠損率から明らかなように、実施例1の表面被覆切削工具No.101、No.102およびNo.103は、比較例1の表面被覆切削工具No.104に比して、耐欠損性も優れていることがわかった。
以上のことから、切れ刃部における被膜のZr含有量が式(II)の条件を満たす表面被覆切削工具は、式(II)の条件を満たさない表面被覆切削工具と比べて、切れ刃部ごとの硬度や強度が異なることから、より広範囲の被削材に対応できる。また、耐摩耗性や耐欠損性が向上していることから、表面被覆切削工具の交換回数を減らすことができる表面被覆切削工具である。
<実施例2>
実施例1で製造された基材130を用いて、実施例1と同様の方法で、基材130の表面上に被覆層を形成した。実施例2においては、TiN層(下)、MT−TiCN層(*)、MT−TiCN層、TiBN層、α−Al23層、κ−Al23層、TiCN層およびTiN層の群より選択された少なくとも4層の被覆層を表4に示す膜厚のとおりに順次積層して被覆層を形成した。なお、表4に示す各層の層厚の単位はμmであり、「−」の記号は、該当欄の層が被覆層に形成されていないことを意味する。
Figure 2010082740
ここで、表4に示されるノズル間距離は実施例1と同様の方法によって決められ、ノズル間距離140が5mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.201、No.202およびNo.203とし、ノズル間距離140が−1mmで焼結して得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.204、No.205およびNo.206とした。
<断続切削試験>
上記のようにして製造された表面被覆切削工具No.201〜206の各々10個ずつを用意し、各工具ごとに製造時にノズル間中央高さ139を示す直線との距離が短い第1すくい面側の切れ刃部、すなわち第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとについて下記に示す断続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の欠損率を求め、それぞれの欠損率を表5に示した。
(断続切削試験の条件)
被削材:SCM435、直径250mmの4本溝が入っている丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:105m/min
送り:0.40mm/rev.
切り込み:2.2mm
切削時間:30秒
切削油:なし
<連続切削試験>
また、No.201〜206の各々10個ずつを用意し、各工具ごとに製造時にノズル間中央高さ139を示す直線との距離が長い第2すくい面側の切れ刃部、すなわち第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとについてを下記に示す条件で連続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の逃げ面摩耗量(VB)の平均値を求め、それぞれの逃げ面摩耗量(VB)を下記の表5に示した。
(連続切削試験の条件)
被削材:SCM415、直径250mmの丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:260m/min
送り:0.30mm/rev.
切り込み:1.5mm
切削時間:5分
切削油:水溶性油
<Zr含有量の測定>
表面被覆切削工具No.201およびNo.204について、隣り合う刃先稜線206aと刃先稜線206bとのなす挟角の二等分線を含む面で各切れ刃部を切断し、その切断面の被膜の部分を電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmの範囲で10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部における被膜のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yave(質量%)と、切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1(質量%)と、切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2(質量%)とを得、これらの値Yave、Y1およびY2を表5に示した。
また、表面被覆切削工具No.202およびNo.205については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にMT−TiCN層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yave(質量%)、切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1(質量%)および切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2(質量%)の値を得、これらの値Yave、Y1およびY2を表5に示した。
また、表面被覆切削工具No.203およびNo.206については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にα−アルミナ層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yave(質量%)、切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1(質量%)および切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2(質量%)の値を得、これらの値Yave、Y1およびY2を表5に示した。
Figure 2010082740
表5より明らかな通り、本発明の実施例2の表面被覆切削工具No.201の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.272質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおける被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.432質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.112質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.252であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例2の表面被覆切削工具No.202の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、1.228質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、1.385質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、1.071質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.256であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例2の表面被覆切削工具No.203の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.352質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1は、0.396質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2は、0.307質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.253であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
これに対して、比較例2の表面被覆切削工具No.204の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、1.835質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bと切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Y1は、1.852質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、1.818質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.019であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、比較例2の表面被覆切削工具No.205の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、1.760質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、1.775質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、1.745質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.017であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、比較例2の表面被覆切削工具No.206の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.505質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1は、0.513質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2は、0.496質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.034であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、連続切削試験による表5の逃げ面摩耗量VB(mm)から明らかなように、実施例2の表面被覆切削工具No.201、No.202およびNo.203は、比較例2の表面被覆切削工具No.204、No.205およびNo.206に比して、逃げ面摩耗量VBが優れていることがわかった。一方、断続切削試験による表5の欠損率から明らかなように、実施例2の表面被覆切削工具No.201、No.202およびNo.203は、比較例2の表面被覆切削工具No.204、No.205およびNo.206に比して、耐欠損性も優れていることがわかった。
以上のことから、切れ刃部における被膜のZr含有量が式(II)の条件を満たす表面被覆切削工具は、式(II)の条件を満たさない表面被覆切削工具と比べて、切れ刃部ごとの硬度や強度が異なることからより広範囲の被削材に対応できる。また、耐摩耗性や耐欠損性が向上していることから、表面被覆切削工具の交換回数を減らすことができる表面被覆切削工具である。これにより被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量が式(II)の条件を満たしても、同様の効果が得られ、被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量が式(II)の条件を満たしても、同様の効果が得られることがわかった。
<実施例3>
まず、TaC粉末、NbC粉末、ZrCN粉末、Co粉末およびWC粉末を混合した混合粉末(TaC粉末の質量:NbC粉末の質量:ZrCN粉末の質量:Co粉末の質量:WC粉末の質量=0.5:1.5:0.5:10.0:87.5)を真空中、1450℃の温度で1時間焼結した焼結体を作製した。
次に、その焼結体のそれぞれについて15μmの厚さの脱β層が形成されるように処理し、つづいて刃先処理としてSiCブラシですくい面から見て0.06mmのホーニングを行ない、住友電工ハードメタル(株)社製のCNMG120408EUXと同一形状の超合金製の基材を作製した。こうして得られた基材130を、図6に示すように基材130の第2共有稜204bをセット用治具131にある孔にはめこみ、基材130の第1共有稜204aが上に向くように設置した。
次いで図7に示されるように、CVD装置132の反応容器134の条件を表1に示される温度(℃)および圧力(kPa)に設定して、表1に示される原料ガス組成の原料ガスを原料ガス投入口136より投入することによって、基材130の表面上にTiN層(下)、MT−TiCN層(*)、MT−TiCN層、TiBN層、TiBNO層、α−Al23層、κ−Al23層、TiCN層およびTiN層の群より選択された少なくとも4層の被覆層を表6に示す膜厚のとおりに順次積層して被覆層を形成した。なお、表6に示す各層の層厚の単位はμmであり、「−」の記号は、該当欄の層が被覆層に形成されていないことを意味する。
Figure 2010082740
表6に示されるノズル間距離(mm)とは、図8に示されるように、反応管138のノズル間中央高さ139を示す直線と基材130の第1共有稜との距離のことである。このノズル間中央高さ139の高さが基材130の第1共有稜よりも高い場合のノズル間距離141を正の数とし、ノズル間中央高さ139の高さが基材130の第1共有稜の高さよりも低い場合のノズル間距離141を負の数としている。
実施例3においては表6に示されるように、ノズル間距離141が3mmで焼結されて得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.301、No.302およびNo.303とし、ノズル間距離141が−4mmで焼結されて得られる表面被覆切削工具を表面被覆切削工具No.304、No.305およびNo.306とした。
<断続切削試験>
表面被覆切削工具No.301〜306の各々10個ずつを用意し、各工具ごとに製造時に表面被覆切削工具の上側に位置する稜線、すなわち第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとについて下記に示す断続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の欠損率を求め、それぞれの欠損率を表7に示した。
(断続切削試験の条件)
被削材:S50C、直径250mmの4本溝が入っている丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:80m/min
送り:0.38mm/rev.
切り込み:2.0mm
切削時間:30秒
切削油:なし
<連続切削試験>
表面被覆切削工具No.301〜306の各々10個ずつを用意し、各工具ごとに製造時に基材セット用治具の孔に位置する側、すなわち第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとについてを下記に示す条件で連続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の逃げ面摩耗量(VB)の平均値を求め、それぞれの逃げ面摩耗量(VB)を下記の表7に示した。
(連続切削試験の条件)
被削材:S50C、直径250mmの丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:270m/min
送り:0.32mm/rev.
切り込み:2.0mm
切削時間:5分
切削油:水溶性油
<Zr含有量の測定>
表面被覆切削工具No.301およびNo.304について、隣り合う刃先稜線206aと刃先稜線206bとのなす挟角の二等分線を含む面で各切れ刃部を切断し、その切断面の被膜の部分を電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmの範囲で10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部における被膜のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Zave(質量%)と、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜のZr含有量の平均値Z1(質量%)と、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Z2(質量%)とを得、これらの値Zave、Z1およびZ2を表7に示した。
また、表面被覆切削工具No.302およびNo.305については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にMT−TiCN層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量の平均値Zave(質量%)と、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z1(質量%)と、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z2(質量%)とを得、これらの値Zave、Z1およびZ2を表7に示した。
また、表面被覆切削工具No.303およびNo.306については、上記と同様の方法で、測定対象を切断面の被膜の特にα−アルミナ層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ1μmで10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Zave(質量%)と、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z1(質量%)と、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z2(質量%)とを得、これらの値Zave、Z1およびZ2を表7に示した。
Figure 2010082740
表7より明らかな通り、本発明の実施例3の表面被覆切削工具No.301の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Zaveは、0.803質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜のZr含有量の平均値Z1は、0.854質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Z2は、0.751質量%であることから、式(III)に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.128であり、これは式(III)の右辺に示される0.04以上であり、式(III)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例3の表面被覆切削工具No.302の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、0.842質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z1は、0.887質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z2は、0.796質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.108であり、これは式(III)の右辺に示される0.04以上であり、式(III)の条件を満たしていた。
また、本発明の実施例3の表面被覆切削工具No.303の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.323質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z1は、0.342質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z2は、0.304質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.118であり、これは式(III)の右辺に示される0.04以上であり、式(III)の条件を満たしていた。
これに対して、比較例3の表面被覆切削工具No.304の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、0.906質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおける被膜のZr含有量の平均値Z1は、0.922質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Z2は、0.889質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.036であり、これは式(III)の右辺に示される0.04未満であり、式(III)の条件を満たさなかった。
また、比較例3の表面被覆切削工具No.305の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、0.905質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z1は、0.918質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Z2は、0.892質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.029であり、これは式(III)の右辺に示される0.04未満であり、式(III)の条件を満たさなかった。
また、比較例3の表面被覆切削工具No.306の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.417質量%であり、第1共有稜204aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207cとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z1は、0.424質量%であり、第2共有稜204bの両端にある切れ刃部207bと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Z2は、0.410質量%であることから、式(III)の左辺に示される(Z1−Z2)/Zaveの値は、0.034であり、これは式(III)の右辺に示される0.04未満であり、式(III)の条件を満たさなかった。
また、連続切削試験による表7の逃げ面摩耗量VB(mm)から明らかなように、実施例3の表面被覆切削工具No.301、No.302およびNo.303は、比較例3の表面被覆切削工具No.304、No.305およびNo.306に比して、逃げ面摩耗量VBが優れていることがわかった。一方、断続切削試験による表7の欠損率から明らかなように、実施例3の表面被覆切削工具No.301、No.302およびNo.303は、比較例3の表面被覆切削工具No.304、No.305およびNo.306に比して、耐欠損性も優れていることがわかった。
以上のことから、切れ刃部における被膜のZr含有量が式(III)の条件を満たす表面被覆切削工具は、式(III)の条件を満たさない表面被覆切削工具と比べて、切れ刃部ごとの硬度や強度が異なることからより広範囲の被削材に対応できる。また、耐摩耗性や耐欠損性が向上していることから、表面被覆切削工具の交換回数を減らすことができる表面被覆切削工具である。これにより被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量が式(III)の条件を満たしても、同様の効果が得られ、被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量が式(III)の条件を満たしても、同様の効果が得られることがわかった。
<実施例4>
まず、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、Co粉末およびWC粉末を混合した混合粉末(TaC粉末の質量:NbC粉末の質量:TiC粉末の質量:Co粉末の質量:WC粉末の質量=2.0:2.0:1.5:5.5:89.0)を真空中、1460℃の温度で1時間焼結した焼結体を作製した。
次に、その焼結体のそれぞれについて22μmの厚さの脱β層が形成されるように処理し、つづいて刃先処理を行なったのち、最後にSiCブラシですくい面から見て0.06mmのホーニングを行ない、住友電工ハードメタル(株)社製のCNMG120408ESUと同一形状の超合金製の基材を作製した。こうして得られた基材130を、図2に示すように基材セット用治具131上に、基材セット用治具131の表面と基材130の第2すくい面とが接し、第1すくい面が上面となるように設置した。
次いで図3に示されるように、CVD装置132に基材セット用治具131を設置し、CVD装置132の反応容器134の条件を表1に示される温度(℃)および圧力(kPa)に設定して、表1に示される原料ガス組成の原料ガスを原料ガス投入口136より投入することによって、基材130の表面上にTiN層(下)、MT−TiCN層(*)、α−Al23層(*)およびTiN層を表8に示す膜厚のとおりに順次積層して被覆層を形成し、実施例4の表面被覆切削工具を作製した。
Figure 2010082740
ここで、表8に示されるように、表1に示される被覆層の原料ガスの組成ごとにノズル間距離140を変更した。具体的には、表面被覆切削工具No.401は、ノズル間距離−1mmでTiN層(下)の被覆層を焼結し、ノズル間距離−1mmでMT−TiCN層(*)の被覆層を焼結し、その後ノズル間距離4mmでα−アルミナ層の被覆層を焼結し、さらにノズル間距離−1mmでTiN層の被覆層を焼結して製造した。
また、表面被覆切削工具No.402は、ノズル間距離−1mmでTiN層(下)の被覆層を焼結し、ノズル間距離4mmでMT−TiCN層(*)の被覆層を焼結し、その後ノズル間距離−1mmでα−アルミナ層の被覆層を焼結し、さらにノズル間距離−1mmでTiN層の被覆層を焼結して製造した。
また、表面被覆切削工具No.403は、ノズル間距離−1mmでTiN層(下)の被覆層を焼結し、ノズル間距離4mmでMT−TiCN層(*)の被覆層を焼結し、その後ノズル間距離4mmでα−アルミナ層の被覆層を焼結し、さらにノズル間距離−1mmでTiN層の被覆層を焼結して製造した。
また、表面被覆切削工具No.404は、ノズル間距離−1mmでTiN層(下)の被覆層を焼結し、ノズル間距離−1mmでMT−TiCN層(*)の被覆層を焼結し、その後ノズル間距離−1mmでα−アルミナ層の被覆層を焼結し、さらにノズル間距離−1mmでTiN層の被覆層を焼結して製造した。
<断続切削試験>
上記のようにして製造された表面被覆切削工具No.401〜404の各々10個ずつを用意し、各工具ごとに製造時にノズル間中央高さ139を示す直線との距離が短い第1すくい面側の切れ刃部、すなわち第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとについて下記に示す断続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の欠損率を求め、それぞれの欠損率を表9に示した。
(断続切削試験の条件)
被削材:SCr420H、直径250mmの4本溝が入っている丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:100m/min
送り:0.35mm/rev.
切り込み:2.0mm
切削時間:30秒
切削油:なし
<連続切削試験>
また、表面被覆切削工具No.401〜404の各々10個ずつを用意し、製造時にノズル間中央高さ139を示す直線との距離が長い第2すくい面側の切れ刃部、すなわち第2すくい面202の切れ刃部207cと切れ刃部dとについて下記に示す条件で連続切削試験を行ない、これらの切れ刃部の逃げ面摩耗量(VB)の平均値を求め、それぞれの逃げ面摩耗量(VB)を下記の表9に示した。
(連続切削試験の条件)
被削材:S35C、直径250mmの丸棒
使用ホルダ:PCLNR2525−43(住友電工ハードメタル(株)社製)
切削速度:300m/min
送り:0.28mm/rev.
切り込み:1.5mm
切削時間:20分
切削油:水溶性油
<Zr含有量の測定>
表面被覆切削工具No.401〜404について、隣り合う刃先稜線206aと刃先稜線206bとのなす挟角の二等分線を含む面で各切れ刃部を切断し、その切断面の被膜の特にMT−TiCN層の部分を電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ0.5μmの範囲で10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yave(質量%)と、切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1(質量%)と、切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2(質量%)とを得、これらの値Yave、Y1およびY2を表9に示した。
また、上記と同様の方法で、表面被覆切削工具No.401〜404について、測定対象を切断面の被膜の特にα−アルミナ層に限定して、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe MicroAnalyser)によりスポットサイズ0.5μmで10回測定し、その10回の測定値の平均をその切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量とした。
このようにして求めた切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量を用いて、全ての切れ刃部における被膜の特にα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yave(質量%)、切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1(質量%)および切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2(質量%)の値を得、これらの値Yave、Y1およびY2を表9に示した。
Figure 2010082740
表9より明らかな通り、本発明の実施例4の表面被覆切削工具No.401の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、2.117質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、2.117質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、2.117質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.000であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、表面被覆切削工具No.401の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.748質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1は、0.893質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2は、0.684質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.279であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、本発明の表面被覆切削工具No.402の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、1.948質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、2.073質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、1.823質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.128であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、表面被覆切削工具No.402の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.913質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1は、0.913質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2は、0.912質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.001であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、本発明の実施例4の表面被覆切削工具No.403の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、1.948質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、2.073質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、1.823質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.128であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
また、表面被覆切削工具No.403の全ての切れ刃部におけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Yaveは、0.748質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y1は、0.893質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるα−アルミナ層のZr含有量の平均値Y2は、0.684質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.279であり、これは式(II)の右辺に示される0.04以上であり、式(II)の条件を満たしていた。
これに対して、比較例4の表面被覆切削工具No.404の全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Yaveは、2.117質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bと切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Y1は、2.117質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおける被膜のZr含有量の平均値Y2は、2.118質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.000であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、表面被覆切削工具No.404の全ての切れ刃部におけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Yaveは、0.913質量%であり、第1対角線205aの両端にある切れ刃部207aと切れ刃部207bとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y1は、0.913質量%であり、第2対角線(図示せず)の両端にある切れ刃部207cと切れ刃部207dとにおけるMT−TiCN層のZr含有量の平均値Y2は、0.912質量%であることから、式(II)の左辺に示される(Y1−Y2)/Yaveの値は、0.001であり、これは式(II)の右辺に示される0.04未満であり、式(II)の条件を満たさなかった。
また、連続切削試験による表9の逃げ面摩耗量VB(mm)から明らかなように、実施例4の表面被覆切削工具No.401〜403は、比較例4の表面被覆切削工具No.404に比して、逃げ面摩耗量VBが優れていることがわかった。また、断続切削試験による表9の欠損率から明らかなように、実施例4の表面被覆切削工具No.401〜403は、比較例4の表面被覆切削工具No.404に比して、耐欠損性も優れていることがわかった。
以上のことから、切れ刃部における被膜の特にMT−TiCN層またはα−アルミナ層のいずれか一方もしくは両方のZr含有量が式(II)の条件を満たす表面被覆切削工具は、式(II)の条件を満たさない表面被覆切削工具と比べて、切れ刃部ごとの硬度や強度が異なることからより広範囲の被削材に対応できる。また、耐摩耗性や耐欠損性が向上していることから、表面被覆切削工具の交換回数を減らすことができる表面被覆切削工具である。
以上のように、本発明の実施例について説明を行なったが、上述の実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明によれば、広範囲の硬度や強度を有する被削材を切削することができ、かつ表面被覆切削工具の交換回数を減らすことのできる表面被覆切削工具を提供することができる。
本発明の表面被覆切削工具の好ましい一例の模式的な斜視図である。 基材セット用治具の表面と基材の第2すくい面とを接するように設置した後の基材セット用治具を真上から見た模式図である。 基材セット用治具を設置した後のCVD装置の模式的な断面図である。 基材セット用治具と基材の第2すくい面とが接するように設置した場合の、ノズル間中央高さと基材との位置関係を示すCVD装置の拡大断面図である。 本発明の実施例の表面被覆切削工具を示す模式的な斜視図である。 基材の共有稜を基材セット用治具の孔にはめこんだ基材セット用治具を真上から見た模式図である。 基材の共有稜を基材セット用治具の孔にはめこんだ基材セット用治具を設置した後のCVD装置を示す模式的な断面図である。 基材の共有稜を基材セット用治具の孔にはめこむように設置した場合の、ノズル間中央高さと基材との位置関係を示すCVD装置の拡大断面図である。
符号の説明
101,201 表面被覆切削工具、102a,202 第1すくい面、102b 第2すくい面、103,203 逃げ面、104 共有稜、105a,205a 第1対角線、105b 第2対角線、106,106a,106b,206,206a,206b 刃先稜線、107,207a,207b,207c,207d 切れ刃部、130 基材、131 基材セット用治具、132 CVD装置、133 高温ヒータ、134 反応容器、135 ノズル穴、136 原料ガス投入口、137 排気口、138 反応管、139 ノズル間中央高さ、140,141 ノズル間距離、204a 第1共有稜、204b 第2共有稜。

Claims (10)

  1. 基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
    前記被膜は、少なくとも1層の被覆層を含み、
    前記被覆層のうち少なくとも1層は、Zrを含有するZr含有被覆層であり、
    前記表面被覆切削工具は、2以上の切れ刃部を有し、
    前記切れ刃部のうち1の切れ刃部である第1切れ刃部における被膜のZr含有量は、該第1切れ刃部を除く他の切れ刃部のうちの少なくとも1の切れ刃部における被膜のZr含有量と異なる、表面被覆切削工具。
  2. 前記被膜のZr含有量は、
    いずれか1の切れ刃部における被膜のZr含有量のうち、そのZr含有量が最大となるZr含有量をX1とし、そのZr含有量が最小となるZr含有量をX2とし、
    全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をXaveとする場合、
    1、X2およびXaveが下記式(I)を満たす、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
    (X1−X2)/Xave≧0.04・・・(I)
  3. 前記表面被覆切削工具は、2のすくい面を有し、
    前記すくい面は、いずれも少なくとも2本の対角線を有し、
    前記対角線は、該対角線の両端が前記切れ刃部に含まれ、
    前記すくい面のうち、面積が広い方のすくい面を第1すくい面とし、面積が狭い方のすくい面を第2すくい面とし、
    前記第1すくい面の対角線のうち、いずれか1の対角線である第1対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY1とし、
    前記第2すくい面の対角線のうち、前記第1対角線に平行な対角線である第2対角線の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をY2とし、
    全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をYaveとする場合、
    1、Y2およびYaveが下記式(II)を満たす、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
    (Y1−Y2)/Yave≧0.04・・・(II)
  4. 前記表面被覆切削工具は、少なくとも2の逃げ面を有し、
    前記逃げ面のうち1の逃げ面は、他の逃げ面のうちの少なくとも1の逃げ面と交差する1の稜を共有稜として有し、
    前記共有稜は、前記表面被覆切削工具において複数存在し、かつ該共有稜の両端は、前記切れ刃部に含まれ、
    前記共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第1共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Z1が、他の共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最大となり、
    前記共有稜のうち、いずれか1の共有稜である第2共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値Z2が、他の共有稜の両端に位置する2の切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値のうちで最小となり、
    全ての切れ刃部における被膜のZr含有量の平均値をZaveとする場合、
    1、Z2およびZaveが下記式(III)を満たす、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
    (Z1−Z2)/Zave≧0.04・・・(III)
  5. 前記第1共有稜は、前記第1すくい面にある対角線のうち、いずれか1の対角線と交差し、前記対角線は前記第2共有稜とも交差する、請求項4に記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記表面被覆切削工具は、ネガティブチップである、請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記被膜は、酸化アルミニウムを主体として含む酸化アルミニウム層またはチタン化合物を主体として含むチタン化合物層のいずれか一方または両方を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記Zr含有被覆層は、前記酸化アルミニウム層または前記チタン化合物層のいずれか一方または両方である、請求項1〜7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  9. 前記被膜は、Zr含有被覆層以外に、少なくとも1層の硬質化合物層を含んでおり、
    前記硬質化合物層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Siおよび硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物を主体として含む層である、請求項1〜8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  10. 前記硬質化合物層は、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、チタンとからなる化合物を主体として含む層である、請求項9に記載の表面被覆切削工具。
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