JP2010073639A - 膜電極接合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高分子電解質膜3と第1、第2の触媒電極11A、11Bとを接合するに際して、第1のロールプレス7にて第1の触媒電極11Aを接合した後、第2のロールプレス8にて第2の触媒電極11Bを接合することにより、第1、第2の触媒電極11A、11Bの材料変更を必要とせずに高分子電解質膜3の表裏に設けられた第1、第2の触媒電極11A、11Bに異なる特性を持たせることを可能とする。
【選択図】図2
Description
近年、燃料電池のなかでも、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜を電解質として使用する固体高分子型燃料電池は、作動温度が低く、出力密度が高く、かつ、小型化が容易に可能なため、車載用電源や家庭据置用電源などへの使用が有望視されている。
単セルは、図1に示すように、アノード側のセパレータ1、アノード側電極2、水素イオン伝導性を有する高分子電解質膜3、カソード側電極4及びカソード側のセパレータ5を、この順に積層して構成されている。
アノード側電極2は、電極基材21と触媒電極22とで構成されており、カソード側電極4は電極基材41と触媒電極42とで構成されている。
アノード側電極基材21とカソード側電極基材41とは、いずれも、ガス拡散性と電子伝導性を有する材質から構成されており、例えば、カーボンペーパーあるいはカーボンクロス等が利用されている。
また、アノード側触媒電極22とカソード側触媒電極42とは、いずれも、カーボン粒子に白金触媒を担持させて粒子状とし、これを水素イオン伝導性高分子電解質で電極基材21、41に固定して構成されている。
アノード反応(燃料極): H2 → 2H+ + 2e−
カソード反応(酸素極):2H+ + 2e− + (1/2)O2 → H2O
燃料電池の発電においては上記の反応がアノード、カソードにおいて進行するが、当然のことながら両者の反応は異なるのでアノードとカソードの触媒電極に求められる性能は異なる。
一般的に、アノード側と比較してカソード側の方が反応速度は遅いため、カソード側の触媒電極はより高い触媒活性が必要となるほか、水の管理という観点ではアノード側の触媒電極は水分保持能力、カソード側の触媒電極には水分排出能力が必要といった事柄が望まれる。
したがって、アノード側とカソード側で異なる性能の触媒電極を設計する必要がある。
ホットプレスは比較的簡便な装置で触媒電極と高分子電解質膜を接合できるというメリットを有する一方、触媒電極の作成工程が一般的に連続的に行われるのに対してホットプレスが原理上枚葉での処理となるため、触媒電極作成工程と高分子電解質膜との接合工程を分離する必要が生じ、生産性に優れる工法であるとは必ずしも言えない。
また、加圧面内でのプレス圧力にばらつきが生じやすいため均一な触媒電極を高分子電解質膜上に形成しにくい、局所的に高い圧力が印加された部分が破損する危険性があるといった問題点がある。
また、特許文献2では、支持体上に形成した触媒層、ガス拡散層、ガスケットを転写により積層してMEAを製造する際、支持体と上記支持体上の被接着物との接着力を加熱、活性光線照射、支持体の延伸、超音波照射により小さくして転写を円滑に行う方法が記載されている。
これらの要素は材料自体の変更、材料配合比の変更、あるいは生産時の条件変更などで制御することができるが、このうち材料関連の変更に関しては燃料電池を生産することを考えた場合、他の全ての製造工程に影響する要素であり、その影響把握には多大な時間と労力を要する。
例えば触媒電極の材料構成を変えることでアノードおよびカソードへの要求特性に対応しようとすると、2種の触媒電極を作成する必要性が生じるため、触媒電極を作成するための設備を2組以上用意するか、同じ設備を2回使用して触媒電極を作成するかをしなければならない。いずれの方法で対応する場合にも、設備投資、生産タクトの観点では大きな負担となる。
その性質としては触媒電極内の微細構造、具体的には空孔容積とその分布、触媒電極の厚みなどがあげられる。各種材料の触媒電極内の微細構造を制御することで膜電極接合体の高性能化および低コスト化をはかることができる。
図2に示すように、接合装置6は、第1のロールプレス7と、第2のロールプレス8と、剥離ローラ10などを含んで構成されている。
第1、第2のロールプレス7、8は同一の搬送ライン上に配置され、第1のロールプレス7は上流側に配置され、第2のロールプレス8は下流側に配置されている。
第1のロールプレス7は、2つのロール本体7A、7Bを有し、各ロール本体7A、7Bは、互いの回転軸を平行させた状態で互いの外周面が近接する方向に付勢される。
第2のロールプレス8は、2つのロール本体8A、8Bを有し、各ロール本体8A、8Bは、互いの回転軸を平行させた状態で互いの外周面が近接する方向に付勢される。
剥離ローラ10は、前記搬送ライン上で第1のロールプレス7と第2のロールプレス8との間に配置されている。
すなわち、本発明方法は、第1のロールプレス7で第1の支持体12Aと高分子電解質膜3とをそれらの厚さ方向に加圧することにより高分子電解質膜3の一方の面に第1の触媒電極11Aを転写する第1のロールプレス工程と、第2のロールプレス8で第2の支持体12Bと高分子電解質膜3とをそれらの厚さ方向に加圧することにより高分子電解質膜3の他方の面に第2の触媒電極11Bを転写する第2のロールプレス工程とによって膜電極接合体を製造する。
より詳細には、第1のロールプレス工程では、高分子電解質膜3の一方の面に第1の触媒電極11Aが接触するように第1の支持体12Aが配置され、加圧は、第1のロールプレス7を構成する2つのロール本体7A、7Bで挟んで行われる。
また、第2のロールプレス工程では、高分子電解質膜3の他方の面に第2の触媒電極11Bが接触するように第2の支持体12Bが配置され、加圧は、第2のロールプレス8を構成する2つのロール本体8A、8Bで挟んで行われる。
そして、第2のロールプレス工程では、第1の支持体12A、第1の触媒電極11A、高分子電解質膜3、第2の触媒電極11B、第2の支持体12Bとが同時に加圧される。
この工程により、高分子電解質膜3の片側に第1の触媒電極11Aが接着される。
高分子電解質膜3の一方の面に第1の触媒電極11Aが接着された後、高分子電解質膜3の他方の面に第2の触媒電極11Bを接着するため、搬送用フィルム基材9を剥離ロール10を介して、搬送ラインの延在方向とは異なる方向へと巻き取り、搬送用フィルム基材9を高分子電解質膜3から除去する。
続いて第2の支持体12Bの一方の面に第2の触媒電極11Bが形成されてなる触媒電極フィルムを、第1の触媒電極11Aが接着されている側と反対側の高分子電解質膜3の他方の面に接触させる向きに(図2では第2の触媒電極11Bが上向きとなるように)巻き出して設置し、第2のロールプレス8を通過させる。
この工程により、高分子電解質膜3の他方の面に第2の触媒電極11Bが接着され、膜電極接合体が形成される。
高分子電解質膜3は、その厚みから搬送フィルム(搬送用フィルム基材9)無しで搬送することが困難となる場合があり、搬送フィルムが好適に用いられる。
搬送用フィルムは、第2の触媒電極11Bを高分子電解質膜3に設ける前に高分子電解質膜3から剥離される。
なお、以下、説明の便宜上、第1、第2の触媒電極11A、11Bを総称して触媒電極11といい、第1、第2の支持体12A、12Bを総称して支持体12という。
図2において、触媒電極11は支持体12上にパターン形成されているが、触媒電極11は支持体12上全面に形成されていてもよい。
言い換えると、触媒電極11は、支持体12上に、MEAを構成するに足る大きさと形状を有する複数のパターンがそれぞれ離間して形成されているが、それら複数のパターンが隙間を空けずに支持体12上全面に形成されていてもよい。
触媒電極11の形成には、例えば分散媒に触媒材料とバインダーとなる水素イオン伝導性高分子を分散させた分散液を、支持体12上に塗工し、それを乾燥させるといった方法がとられる。
分散媒としてはアルコール、エーテル、ケトン等の溶媒を、単体もしくは水等との混合液のような形で用いることができ、中でもメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールと言った炭素数1〜4程度のアルコール類と水との混合溶液が材料の分散性や溶液の安定性、安全性、材料コストの観点より好ましい。
触媒材料は各種炭素材料に白金もしくは白金系合金との金属微粒子を分散担持させたものを用いることができる。炭素材料としてはカーボンブラック、バルカン、ケッチェンブラックなどの多孔質粉末が適しており、また金属微粒子には白金単体、もしくは白金とルテニウム、鉄、コバルト、パラジウム、ニッケルなどとの合金を使用することができる。
バインダーとしての水素イオン伝導性高分子には、ナフィオン(デュポン社)に代表されるパーフルオロカーボン骨格にスルホン酸基が導入されたものが一般的に用いられるが、触媒材料同士の結合力、触媒電極内の微細構造保持力を維持、強化する目的で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが添加されたものを用いても良い。
支持体12には安価で、取扱いが容易であり、さらに触媒電極11を高分子電解質膜3へ接着後剥離する必要があるため剥離性に優れるといった性質が求められることから、コスト、取扱いを重視するのであればポリエチレンテレフタレートなど入手しやすいもの、一方剥離性を重視するのであればポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系高分子材料が好ましい。
また、ポリエチレンテレフタレート表面に剥離材をコートして剥離性を向上させたものなどを支持体12に用いても良い。
本発明にあっては、最初に形成される触媒電極(第1の触媒電極11A)の組成と次に形成される触媒電極(第2の触媒電極11B)の組成が同一であってもよいし、異なっていても構わない。
この場合には、ロールプレスにより高分子電解質膜3と触媒電極11を接合後に、支持体12は剥離されない。
水素イオン伝導性の高さのほか、取り回しのしやすさや機械強度などが特性としては求められるが、水素イオン伝導性は膜厚に反比例し、機械強度は膜厚に比例するため、水素イオン伝導性と機械強度はトレードオフの関係にある。
したがって取り回しを考慮すると膜厚としては50〜100μm程度が好ましいが、より薄い電解質膜に補強材としてポリテトラフルオロエチレン、超高分子量ポリエチレン(UHPE)などが添加されたものを用いても良い。補強材が添加された電解質膜の厚みは、例えば25〜50μm程度である。
したがって、1.5MPa以上、100℃以上の加圧力および温度で接着を行うことが望ましい。さらには、2.0MPa以上、120℃以上の加圧力および温度で接着を行うことがより好ましい。
そのような要求特性を満たすMEAを作成する場合には、第1のロールプレス7で接着した電極をアノード側触媒電極に用い、第2のロールプレス8で接着した電極をカソード側触媒電極に用いることが有用である。
また、例えば各ロールプレス7、8の設定条件としては、加圧力1.5〜3.5MPa、温度100〜140℃、ロール材質は上下ともショア硬度A70程度のゴムロールを使用するという形が好ましい。
その場合、第1のロールプレス7の加圧力を第2のロールプレス8の加圧力よりも大きな値とすることが望ましい。
言い換えると、第1のロールプレス7において、第1の触媒電極11Aと高分子電解質膜3とが加熱され、第2のロールプレス8において、第1、第2の触媒電極11A、11Bと高分子電解質膜3とが加熱され、この際の加熱の温度を、第1のロールプレス7と第2のロールプレス8とでは個別に設定することも、第1、第2の触媒電極11A、11Bの特性に差を持たせる上では有用である。
その場合、第1のロールプレス7の温度を第2のロールプレス8の温度よりも高い値とすることが望ましい。
また逆に、第1のロールプレス7の温度を100℃程度、第2のロールプレス8の温度を130℃程度とすることで、片側の触媒電極(第1の触媒電極11A)にのみ予熱を施すということも可能である。
その場合、例えば第1のロールプレス7におけるロール材質の硬度を高く、第2のロールプレス8におけるロール材質の硬度を低く設定することにより、第1のロールプレス7での加圧力を高く、第2のロールプレス8での加圧力を低くした場合と同様の効果が得られる。
ロール本体7A、7B、8A、8Bの材質としては、スチール、ステンレス、アルミ、カーボンファイバーなどが使用できる。
また、これら剛体表面を加工したもの、例えばアルミナ、ジルコニア、窒化珪素などのコーティング、また鉄系材料表面への焼入れ、硬質クロム、ニッケル-クロム合金、ニッケル-炭化珪素等の各種めっきなどを施したロールを用いても良い。
一方で、前記剛体を本体とするロール本体に、弾性体としてクロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FPM)、シリコンゴム(Q)などを巻きつけたローラ本体を使用することもできる。
本発明の膜電極接合体の製造方法にあっては、最初に形成される第1の触媒電極11Aは、第1のロールプレス7と第2のロールプレス8との双方によって加圧がおこなわれる。一方、次に形成される第2の触媒電極11Bは、第2のロールプレス8のみによって加圧がおこなわれる。
本発明の膜電極接合体の製造方法にあっては、多段階で触媒電極層(触媒電極11)を設けるため、カソード側のロールプレス条件とアノード側のロールプレス条件を変更することができる。
最初に形成される触媒電極は2回ロールプレスがおこなわれることから次に形成される触媒電極と比較して密な構造を形成することができ、次に形成される触媒電極は1回ロールプレスがおこなわれることから最初に形成される触媒電極と比較して疎な構造を形成することができる。
本発明の製造方法により製造される膜電極接合体にあっては、最初に形成される触媒電極を保水性が要求されるアノード側の触媒電極とし、次に形成される触媒電極を排水性が要求されるカソード側の触媒電極とすることにより、高い発電特性を示す膜電極接合体、燃料電池を得る上で有利となる。
Claims (7)
- 第1の支持体の厚さ方向の一方の面に形成された第1の触媒電極と、第2の支持体の厚さ方向の一方の面に形成された第2の触媒電極とを、高分子電解質膜の厚さ方向の一方の面と他方の面とにそれぞれ転写することにより膜電極接合体を製造する方法であって、
第1のロールプレスで前記第1の支持体と前記高分子電解質膜とをそれらの厚さ方向に加圧することにより前記高分子電解質膜の一方の面に前記第1の触媒電極を転写する第1のロールプレス工程と、
第2のロールプレスで前記第2の支持体と前記高分子電解質膜とをそれらの厚さ方向に加圧することにより前記高分子電解質膜の他方の面に前記第2の触媒電極を転写する第2のロールプレス工程とを含む、
ことを特徴とする膜電極接合体の製造方法。 - 前記第1のロールプレス工程では、前記高分子電解質膜の一方の面に前記第1の触媒電極が接触するように前記第1の支持体が配置され、
前記加圧は、前記第1のロールプレスを構成する2つのロール本体で挟んで行われ、
前記第2のロールプレス工程では、前記高分子電解質膜の他方の面に前記第2の触媒電極が接触するように前記第2の支持体が配置され、
前記加圧は、前記第2のロールプレスを構成する2つのロール本体で挟んで行われる、
ことを特徴とする請求項1記載の膜電極接合体の製造方法。 - 前記第2のロールプレス工程では、前記第1の支持体、前記第1の触媒電極、前記高分子電解質膜、前記第2の触媒電極、前記第2の支持体とが同時に加圧される、
ことを特徴とする請求項1または2記載の膜電極接合体の製造方法。 - 前記第1のロールプレス工程と前記第2のロールプレス工程とは、同一の搬送ライン上で行われる、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の膜電極接合体の製造方法。 - 前記第1のロールプレスと前記第2のロールプレスにおける加圧力を個別に設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の膜電極接合体の製造方法。 - 前記第1のロールプレスにおいて、前記第1の触媒電極と前記高分子電解質膜とが加熱され、
前記第2のロールプレスにおいて、前記第1、第2の触媒電極と前記高分子電解質膜とが加熱され、
前記加熱の温度は、前記第1のロールプレスと前記第2のロールプレスとでは個別に設定される、
ことを特徴とする請求項1乃至5に何れか1項記載の膜電極接合体の製造方法。 - 前記第1のロールプレスと前記第2のロールプレスのロール材質は個別に設定される、
ことを特徴とする請求項1乃至6に何れか1項記載の膜電極接合体の製造方法。
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