JP2010065164A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物並びにそれらからなる成形体及び照明用部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、光拡散剤(B)0.1〜10重量部と、RSiO1.5で示される単位(Rは炭素数1〜12の一価の炭化水素基を表す。)を全体のシロキサン単位(R0〜3SiO2.0〜0.5)に対して50モル%以上含有し、かつ含有する全炭化水素基(R)のうちアリール基が50モル%以上を占めるシリコーンレジン(C)1.8〜7.5重量部と、有機金属塩化合物(D)0.01〜1重量部とを含有させる。
【選択図】なし
Description
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、光拡散性、難燃性及び流動性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、並びに、それを成形してなる成形体及び照明用部材を提供することを目的とする。
また、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1)80〜10重量%及び分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A−2)20〜90重量%からなることが好ましい。さらに、該分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A−2)は、溶融エステル交換法によって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
また、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が14000〜24000であることが好ましい。
さらに、該光拡散剤(B)の含有量が、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜5重量部であることが好ましい。
さらに、該シリコーンレジン(C)が、前記のRSiO1.5で示される単位を全体のシロキサン単位(R0〜3SiO2.0〜0.5)に対して80モル%以上含有し、かつ含有する全炭化水素基のうちアリール基が80モル%以上を占めるシリコーンレジンであることが好ましい。
さらに、該光拡散剤(B)が、アクリル系微粒子及び/又はシリコーン系微粒子であることが好ましい。
さらに、該紫外線吸収剤(F)が、ベンゾトリアゾール化合物及び/又はトリアジン化合物であることが好ましい。
本発明の照明用部材は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書において各種化合物が有する「基」は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、置換基を有していてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と、光拡散剤(B)と、シリコーンレジン(C)と、有機金属塩化合物(D)とを含有する。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、更にフルオロポリマー(E)及び紫外線吸収剤(F)を含有することが好ましい。さらに、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない限り、これら以外にその他の成分を含んでいても良い。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の構成成分の末尾に付した(A)、(A−1)、(A−2)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)との符号は、各構成成分を明確に区別するために付した符号である。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限は無いが、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、芳香族ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。通常、このような芳香族ポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
なかでも、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂として、少なくとも直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を含有することが好ましい。
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
まず、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによって直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
次に、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物、ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を含有していてもよい。分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂は滴下防止剤として機能し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時に着火・溶融した樹脂が垂れ落ち(ドリップ)するのを抑制することができる。
また、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法には特に制限はなく、公知の任意の製造方法を用いることができる。具体例を挙げると、特開平8−259687号公報、特開平8−245782号公報等に記載の方法が挙げられる。これらの文献に記載の方法では、溶融エステル交換法により芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸のジエステルとを反応させる際、触媒の条件または製造条件を選択することにより、分岐剤を使用することなく、構造粘性指数Nが高く、加水分解安定性に優れた分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を得ることができる。
なお、多官能性芳香族化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
例えば、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂は、単重合と共重合のいずれでもよく、通常は熱可塑性樹脂である。
本発明に係る芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]は、通常10000以上、好ましくは12000以上、より好ましくは14000以上、特に好ましくは14500以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下、より好ましくは24000以下、特に好ましくは23000以下である。粘度平均分子量を前記範囲の下限値以上とすることにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができ、機械的強度の要求の高い用途に用いる場合により好ましいものとなる。一方、粘度平均分子量を前記範囲の上限値以下とすることにより本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して改善でき、成形加工性を高めて成形加工を容易に行えるようになる。なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
ただし、再生された芳香族ポリカーボネート樹脂は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂のうち、80重量%以下であることが好ましく、中でも50重量%以下であることがより好ましい。再生された芳香族ポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このような芳香族ポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械物性を低下させる可能性があるためである。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は光拡散剤を含有する。このように光拡散剤を含有することにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物、及びこれを成形してなる成形体の光拡散性を高めることができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は所定のシリコーンレジンを所定の量だけ含有する。このシリコーンレジンは流動化剤として作用するものであり、また、後述する有機金属塩化合物と組み合わせて用いることにより芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に高度な難燃性を付与する難燃剤として作用するものである。難燃化の仕組みは、シリコーンレジンと有機金属塩化合物とを芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含有させると、シリコーンレジンが気化し、発泡により芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中に微小な気泡が多数生じるため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が燃焼し難くなっているものと推察される。
ところが本発明者の検討によれば、シリコーンレジンの量がある低濃度範囲に収まっている場合には前記のようにシリコーンレジンの量が多くなると難燃性が低下するが、その範囲よりも更に多くのシリコーンレジンを含有させた場合、意外なことに難燃性が向上することが判明した。これは、シリコーンレジンの気化作用とSi−C形成反応による表面硬化作用が著しく促進されたためと推察される。したがって、シリコーンレジンを従来よりも多量に含有する本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、高度な難燃性を発揮できるのである。
以下、このシリコーンレジンの構成について詳細に説明する。
中でも、前記のRは、炭素数が通常1〜12のアルキル基、炭素数が通常2〜12のアルケニル基、及び、炭素数が通常6〜12のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜12のアルキル基の例を挙げると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等が挙げられ、この中でメチル基が特に好ましい。炭素数2〜12のアルケニル基の例を挙げると、ビニル基、ブテニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基の例を挙げると、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基等が挙げられ、この中では安全面、工業的入手のし易さからフェニル基が特に好ましい。
なお、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基等が挙げられるが、中でもメトキシ基が好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は有機金属塩化合物を含有する。ここで有機金属塩化合物とは、有機酸の金属塩化合物である。このように有機金属塩化合物を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
有機金属塩化合物が有する金属の種類としては、アルカリ金極又はアルカリ土類金属であることが好ましい。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時の炭化を促進して難燃性をより高めることができると共に、芳香族ポリカーボネート樹脂が有する耐衝撃性等の機械物性、耐熱性、電気的特性などの性質を良好に維持できるからである。したがって、本発明に係る有機金属塩化合物としては、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機金属塩化合物が好ましく、中でもアルカリ金属塩がより好ましい。
この中でも、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸カリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウムが特に好ましい。
なお、有機金属塩化合物は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物はフルオロポリマーを含有することが好ましい。フルオロポリマーは滴下防止剤として機能するものである。このようにフルオロポリマーを含有することにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の燃焼時に着火・溶融した樹脂が垂れ落ち(ドリップ)するのを抑制することができる。
フルオロオレフィン樹脂としては、例えば、フルオロエチレン構造を含む重合体や共重合体が挙げられる。その具体例を挙げると、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられる。中でもテトラフルオロエチレン樹脂等が好ましい。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が好ましい。
また、フルオロエチレン樹脂の水性分散液として、例えば、三井デュポンフロロケミカル社製のテフロン(登録商標)30J、ダイキン化学工業社製フルオンD−1等も挙げられる。
さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も、フルオロポリマーとして使用することができる。その具体例を挙げると、三菱レイヨン社製メタブレンA−3800等が挙げられる。
さらに、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物はフルオロポリマー以外にも滴下防止剤として作用する成分を含んでいてもよい。その例を挙げると、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することが好ましい。このように紫外線吸収剤を含有することにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性及び耐光性を向上させ、本発明の成形体を製品の部材として用いた場合の耐久性を向上させることができる。
X1のうちアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、通常1以上であり、通常8以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下である。また、アルキル基又はアルコキシ基におけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。このアルキル基の例を挙げると、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
また、X1のうちアルケニル基は、置換基としてエステル基を有するものが好ましい。このアルケニル基の炭素数は、置換基の炭素数も含めて、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、通常10以下、好ましくは8以下である。中でもX1自身が、上述の式(9)のマロン酸エステル部分である、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類であるものが好ましく、中でも、式(9)のベンゼン環を中心として、同じマロン酸エステル類残基を有するものがより好ましく、これらをパラ位に有するものが特に好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性(例えば、光拡散性、難燃性、流動性等)を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上述したもの以外の他の樹脂や各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂等が挙げられる。なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
樹脂添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、染顔料、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
以下、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に好適な添加剤の例について具体的に説明する。
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。これらの中でも、下記式(10)で表される有機ホスフェート化合物及び/又は下記式(11)で表される有機ホスファイト化合物が好ましい。
上記式(10)中、Rはアルキル基またはアリール基を表す。中でもRは、炭素数が通常1以上、好ましくは2以上であり、通常30以下、好ましくは25以下のアルキル基、又は、炭素数が通常6以上であり、通常30以下のアリール基であることが望ましい。さらに、Rはアリール基よりもアルキル基が好ましい。なお、Rが2以上存在する場合、R同士はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、式(10)において、mは通常0以上、好ましくは1以上であり、また、通常2以下の整数を表す。
なお、熱安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル(即ち、脂肪族カルボン酸エステル)、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられる。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、200以上が好ましく、5000以下が好ましい。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であっても、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であればよい。
染顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、有機染料などが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;酸化チタン、亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられる。
なお、染顔料は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
難燃剤としては、例えば、ブロム化ビスフェノール系エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、ブロム化ポリスチレンなどのハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、有機金属塩系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機化合物系難燃(助)剤などが挙げられる。
なお、難燃剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、上述した芳香族ポリカーボネート(A)、光拡散剤(B)、シリコーンレジン(C)、及び有機金属塩化合物(D)、並びに、必要に応じてフルオロポリマー(E)、紫外線吸収剤(F)及びその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどで溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度他の成分と混合し、溶融混練することによって本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。この場合、シリコーンレジン(C)や有機金属塩化合物(D)を、予め芳香族ポリカーボネート樹脂(A)等の樹脂成分と混合してマスターバッチを調製してから、他の成分と混合、溶融混練すると、分散性に優れ、更には押出作業性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られるため、好ましい。また、上述した有機金属塩化合物(D)の分散性を向上させる観点から、予め水や有機溶剤等の溶媒に有機金属塩化合物(D)を溶解してから、混練することもできる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、光拡散性に優れるため、光源からの光を十分に拡散しうる性質を有する。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、これに加えて、優れた難燃性及び流動性を兼ね備えるため、薄肉の成形体とした場合も十分な難燃性、及び優れた流動性を有する。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、通常、芳香族ポリカーボネート樹脂が有する優れた機械的特性、熱的特性、及び電気的特性を損なわずに、上述した光拡散性、難燃性及び流動性を実現できる。
さらに、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、通常、耐熱性、耐衝撃性、剛性に優れるという利点も有している。
上述した本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、通常、何らかの形状に成形して成形体(芳香族ポリカーボネート樹脂組成物成形体)として用いる。この成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて任意に設定すればよい。
これらの部材の中でも特に、光源を背後に有し、その光源を被覆する形状の部材に適用した場合、光源が透けにくくかつ、視認性が得られる程度の輝度が確保できるため、好適に用いることができる。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐熱性も高い為、光源にLEDを使用した部材にも好適に用いることができる。
後述する表2に記した各成分を、表3に記した割合(重量比)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所製のJ50−EP型射出成形機を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm、幅13mm、厚さ1.58mmの試験片、及び2mm×50mm×90mmのシート状成形体を成形した。得られた成形体はUL試験用サンプルとして、後述する要領で難燃性の評価を行った。
各芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性の評価は、UL試験用試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリー(UL)ULが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から難燃性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の難燃性を有するためには、以下の表1に示す基準を満たすことが必要となる。
高化式フローテスター(島津製作所製)を使用して、温度280℃、荷重160kgf/cm2、直径1mm×長さ10mmのオリフィスを使用した条件下で、乾燥したペレット状の樹脂組成物について、単位時間あたりの流出量Q値を測定した。単位は、(×10−2cc/s)であり、この値が大きい方が流動性に優れることを示す。
前記の2mm×50mm×90mmのシート状成形体の裏側から10cm離して0.6カンデラのLEDを10個置き、シート状成形体の表面側より30cm離れたところからのLEDのぎらつき具合、明るさを目視観察した。ぎらつきがあるものを×、ぎらつきは殆どないものの明るさがわずかに暗いものを△、全くないものを○とした。
しかし、これに対して実施例を見ると、シリコーンレジンの量を更に増やしたことによって、意外なことに難燃性が向上することが確認できる。
また、実施例の結果より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、光拡散性及び流動性にも優れることが分かる。
Claims (15)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部と、
光拡散剤(B)0.1〜10重量部と、
RSiO1.5で示される単位(前記式中、Rは炭素数1〜12の一価の炭化水素基を表す。)を全体のシロキサン単位(R0〜3SiO2.0〜0.5)に対して50モル%以上含有し、かつ含有する全炭化水素基(R)のうちアリール基が50モル%以上を占めるシリコーンレジン(C)1.8〜7.5重量部と、
有機金属塩化合物(D)0.01〜1重量部と
を含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 - フルオロポリマー(E)を、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜1重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A−1)80〜10重量%及び分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A−2)20〜90重量%からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(A−2)が、溶融エステル交換法によって得られた芳香族ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該シリコーンレジン(C)の含有量が、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、1.8〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が14000〜24000であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該光拡散剤(B)の含有量が、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.5〜5重量部であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該シリコーンレジン(C)の該アリール基がフェニル基であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該シリコーンレジン(C)が、前記のRSiO1.5で示される単位を全体のシロキサン単位(R0〜3SiO2.0〜0.5)に対して80モル%以上含有し、かつ含有する全炭化水素基のうちアリール基が80モル%以上を占めるシリコーンレジンであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該有機酸金属塩化合物(D)が、含フッ素アルキルスルホン酸及び/又は芳香族スルホン酸の、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該光拡散剤(B)が、アクリル系微粒子及び/又はシリコーン系微粒子であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 紫外線吸収剤(F)を、該芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜3重量部含有することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 該紫外線吸収剤(F)が、ベンゾトリアゾール化合物及び/又はトリアジン化合物であることを特徴とする請求項12に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜13の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
- 請求項1〜13の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする照明用部材。
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