以下、本発明を具体化した防蟻部材の第一の実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。この第一の実施形態に係る防蟻部材10、40は、立ち上がり部となる布基礎200と、土間コンクリート300との間の隙間を遮蔽するものである。
一般的に、布基礎200は同一幅を有する一定高さのコンクリート壁を連続して無端状に形成し、例えば矩形状の壁面を形成するものであり、地面をいくらか掘り下げた位置からコンクリートを打設して下側に位置する広幅のベース部とその上に立ち上がり部である立壁とからなる断面凸状を形成する。そして、打設した布基礎200が硬化した後は掘り下げ部分を埋め戻して、布基礎200にて囲まれた領域に土間コンクリートを打設する。このような布基礎200の基本的な打設方法は本発明においても従来方法として図17(a)〜(d)に示した手順と異なるものではなく、本発明は、一実施形態として立ち上がり部となる布基礎200の立壁と土間コンクリート300の境界部分となる打ち継ぎ部分に防蟻部材を配置することを特徴とする。このため、布基礎200のベース部についての説明は省略する。なお、第一の実施形態において境界部分とは立ち上がり部である布基礎200に土間コンクリート300が打ち継がれる部分を意味し、打ち継ぎ後に両者の間に隙間が形成されるか否かは問わない。また、単に布基礎200と記載する場合は布基礎200の立壁を意味する。布基礎用として説明する型枠パネル100、105とは布基礎200の立壁の形成に使用される布基礎用型枠パネルを意味し、型枠とは型枠パネルを形成する布基礎200の形状に沿って組み立てた集合体を意味する。
図1に直線用の型枠パネル100に使用する防蟻部材10の斜視図を示す。型枠パネル100は全体として矩形状に形成されており、型枠パネル100の左右両端部には一定幅の側壁101が形成されている。型枠パネル100の一方の面には打設したコンクリートが当接し打設面を形成する型枠面102が配置されている。型枠パネル100の側壁101にはその長手方向に沿って複数の連結孔103が形成されており、隣接する型枠パネル100の側壁101同士を対向させて連結孔103同士を重ね合わせ、両連結孔103にUピン104(先端のみ図示)を挿通させて固定することにより、型枠パネル100同士を連結することができる(図2(a)(b))。
防蟻部材10は全体としてアングル材に似たL字形状をなしており、その長さは固定対象となる型枠パネル100の型枠面102の長さよりも少し長く延長して形成されている。防蟻部材10は、板状かつ長尺状の鋼材を原料とし、その幅方向における略中心位置から板材の長手方向に沿って折り曲げ加工することにより形成されている。したがって、防蟻部材10には防蟻部材10の長さ方向に沿って折曲部11が形成されている。防蟻部材10は、この折曲部11を境界として幅方向に長い側(図1中上下に向かう側)が土間側部材12となり、幅方向に短い側が立ち上がり部となる布基礎200側の布基礎側部材13となる。なお、防蟻部材10及び防蟻部材10を構成する各要素において防蟻部材10の長手方向(図1の左右方向)における端部分を端部といい、長手方向に直交する方向である幅方向における端部分を側縁部という。
土間側部材12は、布基礎200と土間コンクリート300との打ち継ぎの際に土間コンクリート300に埋設される部分である。この土間側部材12において折曲部11から幅方向に一定の領域には、防蟻部材10の長さ方向に沿って、言い換えれば布基礎200と土間コンクリート300との境界部分である打ち継ぎ部分に沿って、穴など布基礎側部材13の表裏を貫通する間隙が形成されていない土間側遮蔽部14が形成されている。そして、土間側遮蔽部14の幅方向外側には、土間側部材12の表裏を貫通する円形の連通孔15が長さ方向に沿って一定間隔で穿設された土間コン埋設部16が形成されている。すなわち、土間側遮蔽部14の側縁部14aに連続して土間コン埋設部16が形成されている。土間コン埋設部16の外側の側縁部16aは土間側部材12の側縁部12aでもある。図1では、土間側遮蔽部14と土間コン埋設部16との境界でもある土間側遮蔽部14の側縁部14aを一点鎖線で示している。
また、土間側部材12において、防蟻部材10の長さ方向における一方側の端部17からはさらに長さ方向外側に向けて突出する凸片18が形成されている。なお、防蟻部材10において主として凸片18が形成されている側の端部を雄端部17という。これに対して、長さ方向における雄端部17の他方側となる端部19から少し長さ方向内側の位置には、土間側部材12の表裏を貫通し、防蟻部材10の幅方向に長い矩形状の挿入孔20が形成されている。主としてこの挿入孔20が形成されている側の端部を雌端部19という。この雌端部19から挿入孔20までの長さは、防蟻部材10が型枠パネル100の型枠面102の長さに対して延長形成されている長さよりも少し長い距離となっている。挿入孔20は、隣接する防蟻部材10の雄端部17に形成されている凸片18を挿入するための孔部であり、その幅は凸片18を挿入した際にも十分な余裕がある大きさに形成されている。また、この挿入孔20は土間側部材12のうち土間コン埋設部16となる領域に形成されており、凸片18もこの挿入孔20に対応する位置に形成されている。
布基礎側部材13は、布基礎200となるコンクリートを打設する際に布基礎200内に埋設される部分であり、折曲部11から幅方向に一定の領域には穴など布基礎側部材13の表裏を貫通する間隙が形成されていない布基礎側遮蔽部21が形成されている。そして、布基礎側遮蔽部21の幅方向外側は、布基礎側部材13の表裏を貫通する円形の連通孔22が布基礎側部材13の長さ方向に沿って一定間隔で穿設された布基礎埋設部23となっている。すなわち、布基礎側遮蔽部21の側縁部21aに連続して布基礎埋設部23が形成されていることとなり、布基礎埋設部23の外側の側縁部23aは布基礎側部材13の側縁部13aでもある。図1では、布基礎側遮蔽部21と布基礎埋設部23との境界でもある布基礎側遮蔽部21の側縁部21aを一点鎖線で示している。
したがって、土間側遮蔽部14と布基礎側遮蔽部21とを足した領域、すなわち、防蟻部材10の折曲部11を中心として土間側遮蔽部14の側縁部14aから布基礎側遮蔽部21の側縁部21aまでの領域が防蟻部材10のうち穴など防蟻部材10の表裏を連通する間隙が形成されていない遮蔽部24となる。つまり、防蟻部材10の幅方向において、土間側遮蔽部14の側縁部14aが遮蔽部24の土間コンクリート300側の側縁部14aに相当し、布基礎側遮蔽部21の側縁部21aが遮蔽部24の立ち上がり部側となる布基礎200側の側縁部21aに相当する。そして、この遮蔽部24は一定幅のまま防蟻部材10の長さ方向全域にわたって形成されており、遮蔽部24の両側縁部14a、21aには遮蔽部24に連続してそれぞれ土間コン埋設部16及び布基礎埋設部23が形成されていることとなる。
なお、布基礎200と土間コンクリート300との打ち継ぎ部分の収縮は、布基礎200の長さ3600ミリメートル角の場合におよそ1ミリメートル程度である。このため、実際の建築物の施工においてコンクリートの収縮により布基礎200と土間コンクリート300との間に隙間が生じた場合でも、数ミリメートル程度と考えられる。したがって、遮蔽部24の幅も布基礎200の直線延設距離と土間コンクリート300の収縮量との関係からある程度の余裕を見て決定すればよい。この場合でも、収縮は主に土間コンクリート300側において生じるため、土間側遮蔽部14を大きく採っておく方がこのましい。
また、布基礎側部材13において長さ方向における一方側の端部である雄端部17にはさらに長さ方向外側に向けて突出する凸片18が形成されており、他方側の端部である雌端部19から少し長さ方向内側の位置には、布基礎側部材13の表裏を貫通し、防蟻部材10の幅方向に長い矩形状の挿入孔20が形成されている。この凸片18及び挿入孔20が布基礎埋設部23の領域に形成されていること、雌端部19から挿入孔20までの長さ及び挿入孔20の幅が凸片18を挿入した際に余裕がある大きさに形成されていることは土間側部材12におけるこれらの構造と同様である。一方、布基礎側部材13の雌端部19には防蟻部材10を型枠パネル100に固定させるための型枠支持部25が形成されている。
図1及び図2(a)に示すように、型枠支持部25は、布基礎側部材13と略同じ幅に形成され、雌端部19から土間側部材12と反対方向に向けて略直角に折り曲げられた支持部本体26を備えている。また、この支持部本体26の型枠パネル100側には隣接する型枠パネル100同士の側壁101間に挿入される挿入片27が形成されており、この挿入片27には支持孔28が形成されている。支持孔28は、型枠パネル100の側壁101に形成された連結孔103に重ねた場合に土間側部材12が型枠パネル100の型枠面102に沿って配置され、両者の隙間がほぼなくなる状態にて防蟻部材10を型枠パネル100に支持させることができる位置に形成されている。また、支持部本体26の端部には布基礎側部材13と平行となる方向に延びる型枠当接部29が形成されている。
すなわち、防蟻部材10は、型枠支持部25を型枠パネル100に支持させることにより型枠パネル100の型枠面102の所定位置に位置決めするものであり、防蟻部材10は型枠パネル100に対して片持ちの状態で取り付けられることとなる。なお、防蟻部材10の長さは型枠パネル100一枚の長さよりも少し長く形成されているため、図2(b)に示すように、型枠パネル100を複数枚連続して並べて配置したときには隣接する防蟻部材10の雄端部17と雌端部19とを一定長さ重ねることができ、隣接する防蟻部材10間からのシロアリの侵入を防止することができる。
図3はコーナー用の型枠パネル105に設置する防蟻部材40である。図4に示すようにコーナー用の型枠パネル105は、コーナー部106を有し直交する型枠面102が形成されている角パネル107、並びにその両側にそれぞれ配置される右パネル108及び左パネル109からなる3つの部材を組み合わせて形成されるユニットとなっている。なお、図4中の角パネル107の右側に配置される部材が右パネル108、左側に配置される部材が左パネル109である。これら、角パネル107に対する右パネル108及び左パネル109の接合は直線用の型枠パネル100と同様に各パネルの側壁101同士を接合させて連結孔103同士を重ね合わせ、Uピン104を挿通して固定する。
防蟻部材40は、図3(a)に示す第一コーナー部材40aと、図3(b)に示す第二コーナー部材40bの2つの部材から構成されており、これら第一コーナー部材40aと第二コーナー部材40bとを組み合わせることによりコーナー用の型枠パネル105に設置する防蟻部材40を形成することができる。なお、直線用の型枠パネル100に設置される防蟻部材10との共通構成について同じ符号を図面中に付して説明を省略し、相違点を中心に説明する。
図3(a)に示すように、第一コーナー部材40aは、直線用の型枠パネル100に用いる防蟻部材10に対して、雌端部19側の構造が異なっている。すなわち、土間側部材12の雌端部19側は、その位置がコーナー部106で終わるように形成されており、幅方向において雄端部17に形成されている凸片18に対応する位置には切れ込み41が形成され、切れ込み41の幅方向外側には土間側部材12の側縁部12aに沿って長さ方向に向かう凸片18が形成されている。一方、布基礎側部材13の雌端部19側は、コーナー部106に対応してその向きを90度変更して延びる延長部42を有し、この延長部42の先が雌端部19となる。雌端部19は角パネル107の側壁101に対応する位置に形成され(図4参照)、角パネル107に対する右パネル108との接合面となる側壁101間に挿入される型枠支持部25を備えている。また、この延長部42の基端となる角部分には向きが90度変更された挿入孔20が形成されている。
一方、図3(b)に示すように、第二コーナー部材40bも、基本構造は直線用の型枠パネル100に用いる防蟻部材10と共通しているが、特に雄端部17側の構造が相違している。第二コーナー部材40bは、角パネル107と右パネル108とを組み付けた状態において右パネル108に対して直線用の型枠パネル100が当接する側の側壁101からコーナー部106までの長さに形成されており、その土間側部材12の雄端部17には凸片18が形成されておらず、向きが90度変更された挿入孔20が形成されている。
第一コーナー部材40aと第二コーナー部材40bとを組付けると、図4に示すように第二コーナー部材40bの布基礎側部材13が第一コーナー部材40aの布基礎側部材13の延長部42の上に重なる。そして、第二コーナー部材40bの布基礎側部材13における凸片18を、第一コーナー部材40aの布基礎側部材13の角部分に形成された挿入孔20に挿入させる。この際、挿入された凸片18を折り返すことにより第一コーナー部材40aと第二コーナー部材40bとの仮止めが可能となる。特にコーナー用の型枠パネル105に設置する前に両者を組み付けておく方が装着作業性からも好ましい。
次に、この防蟻部材10、40を用いた布基礎200と土間コンクリート300の打ち継ぎ部分における遮蔽方法(建物基礎の製造方法)について説明する。
まず、防蟻部材10を直線用の型枠パネル100へ固定させる方法について説明する。既に述べたように布基礎200のベース部については説明を省略し、地面の掘り下げ、ベース部用の型枠は配置されていることを前提とする。布基礎用型枠の配置には型枠パネル100、105を隣接して配置し、接合面となる側壁101同士を当接させ、両者に形成された連結孔103同士にUピン104を挿通して固定していき型枠パネル100、105を例えば矩形状等の無端状に連結する。あわせて、これと対向する側の型枠パネルも同様に無端状に形成する。すなわち、平面視矩形状の布基礎200を形成する場合には、回字状に型枠パネルを配置する必要がある。そして、対向する型枠面の間に上部が開放された布基礎200用のコンクリート打設空間を形成する。
本発明の防蟻部材10は、布基礎200の内周側(布基礎200に土間コンクリート300が打ち継がれる側)に配置される型枠パネル100に固定される。型枠パネル100は一枚ずつ所定位置に配置されて隣接する型枠パネル100との間で連結されるが、一枚の型枠パネル100を配置する毎に一台の防蟻部材10を使用する。すなわち、所定位置に一枚の型枠パネル100を配置すると、これに隣接する型枠パネル100を固定する前に、図2(a)に示すように型枠パネル100の側壁101に防蟻部材10の挿入片27を当接させて、側壁101の連結孔103と挿入片27の支持孔28とを重ね合わせ、連結孔103側から両孔にUピン104を通す。防蟻部材10は、支持孔28がUピン104によって仮止めされた状態で同支持孔28を中心として雌端部19から見て反時計回りに回転しようとするが、型枠支持部25に形成された型枠当接部29が型枠面102に当接することにより回転が阻止され、型枠パネル100に対して仮止めされることとなる。なお、防蟻部材10は土間コンクリート300に埋設される必要があることから、型枠パネル100に対する防蟻部材10の取り付け高さは土間コンクリート300の打設高さよりも低い位置とする。
次に、防蟻部材10を仮止めした型枠パネル100の雌端部19側に対して隣接する型枠パネル100を配置する。型枠パネル100は接合面となる側壁101同士を当接させて連結するため、隣接する型枠パネル100を当接すると型枠パネル100の側壁101と側壁101との間に防蟻部材10の挿入片27が挟まれた状態となる。この状態で型枠パネル100の側壁101同士の連結孔103間に通したUピン104を固定すると型枠パネル100同士が連結され、防蟻部材10は型枠パネル100に固定されることとなる。なお、図2(a)では、型枠支持部25を挟んだ連結孔103のみにUピン104を図示しているが、型枠パネル100の側壁101に形成されている複数の連結孔103全てに対してUピン104を挿通し固定する。
続けて、新たに配置した型枠パネル100(図2(b)中の右側に示されている型枠パネル100)に対しても防蟻部材10を支持させる。このとき、まず布基礎側部材13の凸片18を先に固定した防蟻部材10の布基礎側部材13に形成されている挿入孔20に挿入させてから型枠支持部25を型枠パネル100の側壁101に対し、既に説明した手順に従って仮止めする。この仮止めでは、隣接する防蟻部材10同士が連結され、また防蟻部材10の長さは型枠パネル100の幅より少し長めに形成されているため、一方の防蟻部材10の雌端部19に他方の防蟻部材10の雄端部17が乗り上げる形で防蟻部材10、10間に重なり部31が形成される(図2(b)参照)。すなわち、防蟻部材10は、重なり部31の長さの分だけ型枠パネル100よりも長く形成されている。なお、土間側部材12の凸片18はまだ挿入孔20に挿入させる必要はない。
直線用の型枠パネル100についてはこれらの作業を繰り返し、コーナー用の型枠パネル105については、予め第一コーナー部材40aと第二コーナー部材40bとを組み付けてコーナー用の防蟻部材40とした上でコーナー用の型枠パネル105に固定すればよい。また、コーナー用の防蟻部材40では第一コーナー部材40aと第二コーナー部材40bにそれぞれ型枠支持部25が形成されている。このうち、第一コーナー部材40aに形成されている型枠支持部25は、コーナー用の型枠パネル105を構成する角パネル107と右パネル108との側壁101間に固定させる。また、第二コーナー部材40bに形成されている型枠支持部25は、コーナー用の型枠パネル105を構成する右パネル108と隣接する型枠パネル100の側壁101間に固定させる。このように型枠パネル100、105の配置、連結と、これに対応する防蟻部材10、40の固定とを繰り返していくことにより、図5に示すように布基礎用型枠の内周側に配置される型枠パネル100、105に固定された防蟻部材10、40が連続して設置され、無端状に連結されることとなる。あわせて、対向する型枠パネル(図5において外形のみ示す)も順次配置し布基礎用の型枠が完成する。
型枠パネル100、105に固定された防蟻部材10、40について、布基礎200となるコンクリートの打設以降の手順を図6、図7に沿って説明する。なお、図6は、直線用の型枠パネル100とこれに固定された防蟻部材10の断面を示す説明図であり、防蟻部材10の厚みを誇張して示している。図6(a)は型枠パネル100の型枠面102に防蟻部材10が固定された状態を示すものであり、布基礎200のコンクリート打設前である。この状態で、図6(b)に示すように型枠の内部に防蟻部材10を覆う位置までコンクリートを打設し硬化させる。コンクリートを打設することにより、防蟻部材10のうち布基礎側部材13は布基礎200中に埋設されることとなる。また、布基礎埋設部23に形成されている連通孔22内にもコンクリートが浸入する。この連通孔22内に浸入したコンクリートは防蟻部材10の抜け防止として機能する。一方、土間側部材12は型枠面102に沿って配置されているため土間側部材12と型枠面102との間にはコンクリートが全く入らないか或いは僅か入るにすぎない。また、土間側部材12に形成されている連通孔15内にはコンクリートが流入するが土間側部材12と型枠面102との間にはコンクリートは流入しない。
次に、コンクリートの硬化後に型枠パネル100を取り外す作業を行う。型枠パネル100の脱型時には防蟻部材10の型枠支持部25を挟んで型枠パネル100同士を固定していたUピン104が外されるが、布基礎側部材13が布基礎200中に埋設されているため型枠パネル100の脱型に伴って防蟻部材10が抜け外れることはない。一方、防蟻部材10のうち土間側部材12は型枠面102に沿って配置されているため、脱型により土間側部材12が立ち上がり部となる布基礎200の立壁から露出することとなる(図6(c))。
そして、この布基礎200から露出した土間側部材12を折曲部11から折り曲げて、布基礎200から突出する向き(布基礎側部材13と同じ向き)に変更する(図6(d))。この作業はハンマー等の工具を使用すればよく、埋設されている全ての防蟻部材10に対して行う。また、土間側部材12を折り曲げる際には、防蟻部材10間において隙間の形成を防ぐためにも雄端部17と隣接する防蟻部材10の雌端部19とが重なりあった状態を維持できるようにする。このため、折り曲げ前の状態で重なり部31において外側(型枠パネルに近い側、図2(b)参照)に位置している雌端部19を先に折り曲げ、続けて雄端部17を折り曲げるにあたり、雄端部17の凸片18を雌端部19の挿入孔20に挿入して折り返すことによって確実に雄端部17と雌端部19とを面接触させて重なり合わせる。これにより、突出後にも再び重なり部31を形成することができる。
なお、コーナー用の型枠パネル105に支持させていた防蟻部材40にあっては、図7(a)に示すように土間側部材12の折り曲げ前は第一コーナー部材40aと第二コーナー部材40b同士の重なりはない。そして、先に第二コーナー部材40bの土間側部材12を折り曲げ(図7(b))、続けて第一コーナー部材40aの土間側部材12を折り曲げてその側縁部12aに沿って形成されている凸片18を、第二コーナー部材40b側の土間側部材12における挿入孔20に挿入する(図7(c))。挿入した凸片18は折り曲げて第一コーナー部材40aと第二コーナー部材40bの端部同士に隙間が生じないよう重なり合わせる。
埋設された全ての防蟻部材10、40の土間側部材12についてこの折り曲げ作業を行うと、布基礎200の内周側には連続して土間側部材12が突出することとなる。そして、布基礎200の周囲の掘り下げ部分を必要に応じて埋め戻し、布基礎200にて囲われた領域内に土間コンクリート300を土間側部材12が隠れる高さまで打設する(図6(e))。この打設により土間側部材12は土間コンクリート300中に埋設されることとなる。また、土間コン埋設部16に形成されている連通孔15内にもコンクリートが浸入する。この連通孔15内に浸入したコンクリートは防蟻部材10の抜け防止として、また、土間コンクリート300が硬化する際の収縮防止としても機能する。したがって、防蟻部材10は、布基礎200と土間コンクリート300との打ち継ぎ部分に遮蔽部24を位置させた状態で打ち継ぎ部分全域、すなわち布基礎200の内周全域にわたって布基礎200と土間コンクリート300とに完全に埋設されることとなる。
そして、既に硬化した布基礎200に対して土間コンクリート300を打ち継いだ場合には、土間コンクリート300が硬化する際にわずかながら収縮し、この収縮によって強度的に弱い布基礎200と土間コンクリート300との境界部分となる打ち継ぎ部分に隙間が生じる場合がある。しかし、この打ち継ぎ部分には防蟻部材10、40の遮蔽部24が配置されているため、打ち継ぎ部分に隙間が生じた場合であってもその隙間に沿ってシロアリが移動してきても遮蔽部24が隙間を横断する形で配置されているため遮蔽部24によってそれ以上の移動を行うことができなくなる。したがって、打ち継ぎ部分におけるシロアリの通行を阻止することができる(図6(f))。
上記実施形態の防蟻部材10、40及び防蟻部材を使用した建物基礎の製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、防蟻部材10、40の遮蔽部24を布基礎200と土間コンクリート300と打ち継ぎ部分に沿って連続して位置させた。したがって、土間コンクリート300の打設後の収縮等により打ち継ぎ部分に隙間ができた場合でもその隙間を遮蔽部24が横断して遮蔽するため隙間を通じたシロアリの侵入を防止することができ、境界部分における防蟻薬剤の散布が不要になる。
(2)土間側遮蔽部14の側縁部14aは土間コンクリート300に、また布基礎側遮蔽部21の側縁部21aは布基礎200に埋設される。このため、土間側遮蔽部14と布基礎側遮蔽部21によって構成される遮蔽部24は両側縁部14a、21aが布基礎200と土間コンクリート300に埋設されることとなる。したがって、布基礎200及び土間コンクリート300と遮蔽部24との間にも隙間は生じない。
(3)防蟻部材10、40は既存の型枠パネル100、105に対して設置固定するため、型枠パネル100、105として既存の型枠パネルを使用することができる。
(4)遮蔽部24の両側縁部14a、21aにはそれぞれ土間コン埋設部16と布基礎埋設部23とが遮蔽部24に連続して形成されている。したがって、遮蔽部24の両側縁部14a、21aの埋設をより確実なものとすることができる。また、土間コン埋設部16と布基礎埋設部23とに複数の連通孔15、22を形成した。コンクリート打設時にはこの連通孔15、22内にもコンクリートが浸入し、防蟻部材10、40の抜け防止、また土間コンクリート300の硬化時の収縮防止に機能する。
(5)防蟻部材10、40には、型枠パネル100、105に固定するための型枠支持部25が備えられている。このため、防蟻部材10、40を型枠パネル100、105に位置決めして固定することができる。
(6)防蟻部材10、40は型枠パネル100、105の長さよりも少し長く形成されている。このため、防蟻部材10、40を隣接して使用する際に防蟻部材10、40の雄端部17と雌端部19とを重ねて重なり部31を形成することができ、複数の防蟻部材10、40を設置した場合でも連続して遮蔽部を形成することができ、防蟻部材10、40間の隙間の形成を防止することができる。
(7)防蟻部材10、40の雄端部17には凸片18を、また雌端部19には挿入孔20を形成している。このため、隣接する防蟻部材10、40の雄端部17と雌端部19との連結を確実なものとすることができる。
(8)防蟻部材10、40をL字状に形成して土間側部材12と布基礎側部材13とし、土間側部材12を型枠面102に沿わせて配置して防蟻部材10、40を布基礎200に埋設したあと、土間側部材12を布基礎200から突出させ、その後に土間コンクリート300を打設している。このため、防蟻部材10、40を布基礎200と土間コンクリート300との双方に確実に埋設させることができる。
(9)遮蔽部24により防蟻部材10、40を介した湿気も遮断されるため、建物基礎部分の防湿にも寄与することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 布基礎200から突出させた土間側部材12の雄端部17と雌端部19の重なり部31に対し、土間コンクリート300の打設前に樹脂等を注入してもよい。これにより雄端部17と雌端部19間での隙間をより簡単に防止することができる。
○ 防蟻部材10、40同士の重なり部31において雌端部19を雄端部17の下となるように配置したが、これは逆でもよい。この場合、土間側部材12の向き変更は重なり部31において先に雄端部17の向きを変更し、続けて雌端部19の向きを変更する。また、雌端部19の向きを変更する際に雄端部17に形成されている凸片18を挿入孔20に向けておく。
○ 防蟻部材10、40を型枠パネル100、105に固定させる際に、土間側部材12の側縁部12aと型枠面102とをテープ或いはシート状磁石等により封止してもよい。これにより土間側部材12と型枠面102との間に隙間がある場合でもコンクリートの流入を防止することができる。
○ 土間コン埋設部16及び布基礎埋設部23の何れか一方或いは両方を省略してもよい。防蟻部材10、40の遮蔽部24が打ち継ぎ部分に確実に位置することができるのであればよい。ただし、土間コン埋設部16及び布基礎埋設部23を省略すると防蟻部材10、40の幅方向における長さが短くなり、脱型後の折り曲げが難しくなることから、遮蔽部24の幅をある程度長くすることが好ましい。
○ 図1では同図中右側に型枠支持部25と挿入孔20を形成した雌端部19とし、左側に凸片18を形成した雄端部17としたが、これらの配置を左右逆にしてもよい。また、その双方を混在して使用するのでもよい。これにより使い勝手が向上する。なお、双方を混在して使用する場合には図8(a)に示す両端が雌端部19となった防蟻部材10aや図8(b)に示す両端が雄端部17となった防蟻部材10bをアダプターとして使用することができる。なお、両端が雌端部19となった防蟻部材10aは、両端に型枠支持部25が形成されているため、型枠パネル100の長さと同じ長さに形成されている。一方、図8(b)に示す両端が雄端部17となった防蟻部材10bは、両隣の防蟻部材10、40の雌端部19との間に重なり部31を形成する必要があるため、通常の防蟻部材10に比して更に重なり部31一つ分の長さだけ長く形成する。
○ 防蟻部材10、40は鋼材を使用し、遮蔽部24は防蟻部材10、40の表裏を連通する間隙が形成されていない状態となっている。シロアリは直径0.8ミリメートル以上の隙間があればその隙間を通過することができるとされているため、土間コンクリート300硬化後に残存する短径が0.8ミリメートル未満の穴、スリット等であれば防蟻部材10、40の表裏を連通する間隙が形成されていてもよい。
○ 折曲部11として隙間が形成されないヒンジ部材を用い、このヒンジに土間側部材12と布基礎側部材13とを固定してもよい。これにより土間側部材12を布基礎200から突出させるため折り曲げ作業が容易となる。
○ 型枠支持部25を布基礎側部材13から下に向けて形成したが、これに限られず、反対に型枠支持部25を上に向けて形成したり、布基礎側部材13から延びる長さを変更してもよい。例えば、型枠パネル100、105の側壁101に形成された連結孔103の位置が土間コンクリート300の打設高さよりも高い位置にある場合は防蟻部材10の位置もその連結孔103よりも低い位置としなければならない。このような場合に、防蟻部材10の型枠支持部25が上に向かうものであれば、防蟻部材10を型枠パネル100の連結孔103より低い位置に固定することができる。
○ 1つの型枠パネル100、105に一つの防蟻部材10、40を固定することとしたが、これに限られず、2つ以上の型枠パネル100、105に対応する長さの一つの防蟻部材を形成してもよく、また1つの型枠パネル100、105に複数の防蟻部材を使用するように防蟻部材の長さを設定してもよい。
○ 防蟻部材10、40を型枠支持部25を介して型枠パネル100、105に固定していたが、型枠支持部25を省略してもよい。なお、例えば、防蟻部材10を型枠面102へ固定するためには、防蟻部材10と同じ程度の長さのシート状磁石30を準備し、図9(a)に説明図を示すように、型枠面102の所定位置に防蟻部材10を手などで当接させ、土間側部材12の側縁部12aと型枠面102の間にシート状磁石30を取り付ける。そうすると、防蟻部材10はシート状磁石30を介して型枠面102に固定されることとなる。そして、上記実施形態と同様の手順で布基礎200を打設し、硬化後に脱型するとシート状磁石30と土間側部材12とが布基礎200の打設面に露出するため、図9(b)に示すように土間側部材12を布基礎200から突出するように向きを変更すればよい。この構成では、型枠面102に対する防蟻部材10の取り付け高さを自由に設定することができるという利点があり、また、防蟻部材10のみを後付で型枠パネル100に支持させることができるため、防蟻部材10の固定と型枠パネル100の配置と同時に進める必要がないという利点がある。
○ また、磁石を用いて型枠へ固定する場合には、上記変形例のようにシート状磁石に限らず、複数個のブロック状の磁石を一定間隔で土間側部材12の側縁部12aと型枠面102に掛かるように取り付けてもよい。
○ 磁力により防蟻部材10、40を型枠パネル100、105に固定するには、防蟻部材10、40自体に磁性を帯びさせて磁石化させることにより、防蟻部材10、40をそれ自身の磁力により型枠パネル100、105の型枠面102に固定させてもよい。
次に、上記実施形態の第二の実施形態を図10〜図13に従って、第一の実施形態との相違点を中心として説明する。また、第一の実施形態と同じ構成については第一の実施形態にて使用した名称、符号を使用する。
第二の実施形態は型枠パネル100に対して別体のインサート金具43を固定させ、そのインサート金具43に防蟻部材50を支持させる構成である。図10(a)に斜視図を、また図10(b)に側面図を示すように、インサート金具43は、型枠パネル100の側壁101を挟んで弾性的に挟持する一対の挟持片44を有する先端部45と、先端部45から布基礎200の打設空間側に向かって延び、表面に複数の円孔46が形成されたインサート部47とから構成される。このインサート金具43は先端部45において型枠面102に沿う位置に脆弱部48が形成されており、型枠パネル100の脱型後は布基礎200から突出している先端部を脆弱部48から折り外すことができる。
一方、図11に示すように、防蟻部材50は型枠支持部51の形状が第一の実施形態と異なっている。この防蟻部材50では雌端部19から土間側部材12の向きと反対方向に向けて直角に折り曲げられた幅狭の支持片52が形成されており、支持片52の先端は内側に向けて折り曲げられた係止片53となっている。防蟻部材50の支持片52の長さはインサート金具43の上縁から円孔46の中心までの長さと同じに形成されている。
この防蟻部材50の型枠パネル100への使用方法について説明する。まず、型枠パネル100を配置する際にインサート金具43だけを型枠パネル100の側壁101に挟持させる(図10(b))。続けて、隣接する型枠パネル100の側壁101を既に固定した型枠パネル100の側壁101に当接させて型枠パネル100、100同士を連結することによりインサート金具43は型枠パネル100間に挟まれて固定される。この状態で、図12(ただし、型枠パネルは図示略)に示すように防蟻部材50をインサート金具43上に載置し、係止片53の先端をインサート金具43の円孔46に挿入する。すると、防蟻部材50がインサート金具43に装着され、防蟻部材50はインサート金具43を介して型枠パネル100に固定されることになる(図13(a))。
その後は型枠パネル100の配置と、インサート金具43の型枠パネル100への固定及び防蟻部材50の装着を繰り返していけばよく、また、防蟻部材50の重なり部31は第一の実施形態と同様にすればよい。布基礎200を打設、脱型した後も第一の実施形態と同様に、土間側部材12を折曲部11から折り曲げて布基礎200から突出させればよい。また、インサート金具43は脆弱部48から折り取ることができるため、不要な場合には除去すればよい(図13(b))。なお、コーナー用の型枠パネル105に設置する防蟻部材については具体的説明を省略するが、第一の実施形態の防蟻部材10に対して型枠支持部25の形状を変更すればよい。この防蟻部材50では雌端部19の型枠支持部51の形状を変更したことにより、型枠パネル100へは軽量、小型なインサート金具43のみを固定し、その後に防蟻部材50を装着すればよいため作業が容易となる。
次に、第三の実施形態を図14〜図16にしたがって説明する。第三の実施形態は、立ち上がり部としての配管400に対して配設される防蟻部材60である。布基礎200で囲まれた領域内には地中に埋設されているガス管や上下水道管あるいは電気配線を収容した円筒形状の中空管等(これらをまとめて「配管」という。)400が上方向に立ち上がって延びていることがあり(図5参照)、土間コンクリート300を打設する場合にはこの立ち上がり部である配管400との境界部分にも隙間が生じる可能性がある。本実施形態の防蟻部材60は、この配管400と土間コンクリート300との境界部分における隙間を遮蔽するものである。
図14は、防蟻部材60の斜視図である。防蟻部材60は、全体として五円硬貨のように中央に円形の内孔61を有する円盤状に形成されている。防蟻部材60は内孔61に面する内周縁が配管400側の側縁部62となって配管400の外周面に当接し、この側縁部62から径方向外側における一定幅領域が遮蔽部63となっている。すなわち、この配管400側の側縁部62が遮蔽部63の立ち上がり部側の側縁部62に相当する。
遮蔽部63には、遮蔽部63に連続して土間コン埋設部64が形成されている。すなわち、遮蔽部63と土間コン埋設部64との間が遮蔽部63における土間コン埋設部64側の側縁部63aとなる。図14、図15では遮蔽部63における土間コン埋設部64側の側縁部63aを一点鎖線で示しており、遮蔽部63における土間コン埋設部64側の側縁部63aが遮蔽部63の土間コンクリート側の側縁部63aに相当する。
また、土間コン埋設部64には、防蟻部材60の表裏を貫通する連通孔65が周方向に沿って一定間隔で穿設されている。すなわち、中央に内孔61を有する円盤状の防蟻部材60においては、内周側の側縁部62から土間コン埋設部64に連続する側縁部63aまでの径方向における一定幅の円周部分が遮蔽部63となり、遮蔽部63の外周側に連続して土間コン埋設部64が形成されている。本実施形態の防蟻部材60は、第一及び第二の実施形態と異なり遮蔽部24が立ち上がり部である配管400に埋設されるのではなく当接するものである。このため、この遮蔽部63の幅は第一の実施形態にて説明した遮蔽部24に比して立ち上がり部に埋設されない分の幅を短くすることができる。
防蟻部材60は、一定の厚みを有する鋼材を打ち抜き形成等してC字状に形成された二枚の半円部材66を対向した状態で組み合わせて構成されており、両半円部材66は略対象形状に形成されている。以下、両半円部材66の構成について共通する構成はまとめて説明し、相違する構成については個別に説明する。
図15に示すように、半円部材66の内周縁は防蟻部材60における遮蔽部63の側縁部62を構成し、固定対象となる配管400の外周面の直径と同径の円弧面が形成されている。また、半円部材66における周方向の一端側の端部には半円形に突出する連結片67が形成され、この連結片67の中央には係止孔68が形成されている。連結片67同士が重なり合った状態で両係止孔68はボルト止めされ、両連結片67が面接触した状態で摺動することができ、両半円部材66は係止孔68を支点として相対回動可能となっている。各半円部材66の他端部のうち内周側の遮蔽部63を構成する領域では遮蔽部63の幅より僅かに大きな半円形状をなす突出片69が形成されている。この突出片69は防蟻部材60を配管400に装着した際の重なり部70となるものである。他方、各半円部材66の他端部のうち土間コン埋設部64を構成する領域では両端部に対向して第一起立片71と第二起立片72とがそれぞれ形成されており、これらの構成は各半円部材66にて相違している。
すなわち、第一起立片71には挿通孔73が形成され、一方、第二起立片72には、各半円部材66の連結片67と突出片69とをそれぞれ重ね合わせて面接触させた状態(図14に示す状態)で挿通孔73に対向する位置に挿通孔73よりも少し小さな径のネジ穴74が形成され、ネジ75が挿通孔73を通ってネジ穴74に螺合されている。このため、ネジ穴74に対するネジ75の進退によって第一起立片71と第二起立片72の採り得る間隔が変化し、これに伴い両半円部材66によって形成される内孔61の形状も変化する。そして、この内孔61の形状は、ネジ75がネジ穴74に螺合した状態でネジ75の進退に伴う形状変化の過程で支持対象となる配管400の外周面に合致し、遮蔽部63の側縁部62が配管400の外周面に沿って当接する形状を採ることができる。
以下、この防蟻部材60を用いて地中から上に向かって延びる配管400に対する土間コンクリート300の境界部分における防蟻方法について説明する。
まず、防蟻部材60の第一起立片71、第二起立片72においてネジ穴74に対するネジ75の螺合を解除させ、図15(a)に示すように両半円部材66を相対回動させていわゆる口を開いた状態とする。そして、このまま支持対象とする配管400に対して土間コンクリート300によって埋設される高さ部分を半円部材66の一方の内周側に当接させ、一方の半円部材66を回動させて口を閉じる。そして、第一起立片71、第二起立片72においてネジ75を挿通孔73を介してネジ穴74に螺合させ締め付けていく。各半円部材66の内周は配管400の直径と同じ径の円弧面が形成されており、ネジ75を締め付けていくと両半円部材66の内周、すなわち、防蟻部材60の遮蔽部63の側縁部62が配管400の外周に沿ってその全周にわたり当接された状態となる。また、各半円部材66の突出片69同士が重なり合って重なり部70が形成される(図15(b)、(図16(a))。
このように、防蟻部材60を配管400に固定させた状態で土間コンクリート300を打設すると、防蟻部材60は土間コンクリート300中に埋設される(図16(b))。そして、土間コンクリート300が硬化する際に収縮が生じ、配管400と土間コンクリート300の間に隙間が形成された場合でも、配管400の外周には防蟻部材60の遮蔽部63が配管400の外周面に沿って当接しているため、配管400と防蟻部材60との間にシロアリの侵入を許容するような隙間が生じさせない(図16(c))。なお、防蟻部材60の内周側の側縁部62と配管400の外周との間に隙間が生じる場合があっても(例えば、配管400の変形、傷等)、打設した土間コンクリート300がその隙間に入るため、実質的に隙間はほとんど埋められることとなる。
また、防蟻部材60の遮蔽部63は径方向に一定幅を有して形成されているため、土間コンクリート300が収縮してもなお遮蔽部63は土間コンクリート300に埋設された状態を維持する。したがって、配管400の外周面と土間コンクリート300との境界部分に土間コンクリート300の収縮に伴う隙間が形成されても、その隙間は防蟻部材60の遮蔽部63が横断して遮蔽することとなる。
上記第三の実施形態の防蟻部材によれば、第一、第二の実施形態による効果に加えて以下のような効果を得ることができる。
(1)第三の実施形態では、防蟻部材60を立ち上がり部となる配管400の外周に沿って配管400の全周にわたり当接することができる形状に形成した。このため、配管400と土間コンクリート300との境界部分に生じる隙間も遮蔽部63が横断して遮蔽することができる。
(2)半円部材66を2つ組み合わせて一端を支点として他端を開閉可能に構成している。このため、配管400への組み付けが容易となる。また、半円部材66同士の他端をネジ75で締め付けて配管400に固定するため、防蟻部材60の配管400への固定が容易となる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 突出片69は先端側から基端側に向けて厚みが太くなるテーパ形状としてもよい。これにより、ネジ75の締め付けによって重なり部70の面接触をより確実なものとすることができる。
○ 予めあるいは防蟻部材60を配管400に当接した後に、半円部材66の内周側の円弧面に弾性のある樹脂等を塗布してもよい。これにより、土間コンクリート300の打設前に遮蔽部63と配管400との間に僅かな隙間も生じなくさせることができる。
○ 遮蔽部63の土間コン埋設部64を省略してもよい。遮蔽部63が径方向に一定幅に形成されていることにより遮蔽部63の外周側の側縁部63aが全周にわたって土間コンクリート300に埋設されていればよい。
○ 防蟻部材60は、土間コンクリート300の表面と直交する方向に延びる配管400に対して固定する構成としたが、土間コンクリート300の表面に対して斜め方向に延びる配管400に対して固定する構成としてもよい。この場合、防蟻部材60は土間コンクリート300の表面と平行になるように配管400に固定することが望ましいため、防蟻部材60の内孔61は楕円となり、内孔61に面する内周縁となる側縁部62も楕円となる。
10,10a,10b,40,50,60…防蟻部材、14a…側縁部(遮蔽部の土間コンクリート側の側縁部)16,64…土間コン埋設部、17…端部(雄端部)19…端部(雌端部)、21a…側縁部(遮蔽部の立ち上がり部側の側縁部)、24,63…遮蔽部、25…型枠支持部(支持部)、31,70…重なり部、100,105…型枠パネル(布基礎用型枠パネル)、102…型枠面、200…布基礎(立ち上がり部)、300…土間コンクリート、400…配管(立ち上がり部)。