JP2010038840A - 化学物質センシング素子、化学物質センシング装置、表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法、及び、化学物質センシング素子の製造方法 - Google Patents

化学物質センシング素子、化学物質センシング装置、表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法、及び、化学物質センシング素子の製造方法 Download PDF

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倫久 川田
Mieko Otonashi
美恵子 音無
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幹宏 山中
Keita Hara
圭太 原
Atsushi Kudo
淳 工藤
Hideki Masuda
秀樹 増田
Tomohiro Ozawa
智宏 小澤
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Abstract

【課題】その目的は、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出できるとともに、装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成でき、更に、長期に渡って性能を維持できる化学物質センシング素子、化学物質センシング装置、及び、化学物質センシング素子に含まれる表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法、並びに、化学物質センシング素子の製造方法を提供する。
【解決手段】
化学物質センシング素子は、雰囲気中の特定物質である一酸化窒素(NO)76と選択的に反応する錯イオン72とイオン結合するカチオン性官能基73を有するカーボンナノ構造体74を含み、カーボンナノ構造体74は、錯イオン72によりイオン結合を介して表面修飾されるようにする。
【選択図】 図6

Description

本発明は、雰囲気中の特定物質を検出するための化学物質センシング素子に関し、特には、化学物質センシング素子の測定対象ガスに対する感度及び選択性を改善し、迅速かつ簡便な検出を可能にする技術に関する。
わが国は高齢化及び少子化が進んでおり、近い将来に国民の3人に1人が65歳以上になるという超高齢化社会の到来が予測されている。このような状況下において急務とされているのが、国民医療費の抑制である。このため、予防医療の充実が注目されている。予防医療が充実することで病気になる人が減少すれば、医療費を軽減させることができるからである。
予防医療を充実させるためには、身近な機器で測定した健康情報を活用して健康管理を行なうことができるシステムが必要である。手軽に個人の健康状態を把握するための指標として、血液、尿、汗、唾液及び呼気等の生体試料がある。このような生体試料中には、血液における血糖値のように、疾病又はその兆候に起因して数値が変化する物質(以下、「マーカ」と記す。)が複数含まれている。したがって、マーカの変化量を測定することによって個人の健康状態を把握できる可能性が高く、マーカの測定を常時行なうことで、健康管理及び疾病の早期発見が可能になる。上述の生体試料の中でも、呼気は、複数種のマーカを含む点、迅速かつ簡便にサンプリング及び測定ができる点、及び、測定対象がガス状であり非侵襲で測定できるため肉体的なダメージが小さい点等から、測定に最適な生体試料であると言える。
非特許文献1には疾病と呼気中のマーカとの関係が示されている。テーブル1にこの一部を引用する。
Figure 2010038840
呼気中のマーカの測定方法として、ガスクロマトグラフィー及び化学発光法が知られているが、これらの測定方法においては測定機器が大型かつ高額であり、また操作方法の習熟も必要であるため実用的ではない。また、酸化物半導体ガスセンサによる測定も知られているが、検出限界が10ppmレベルと感度が低く、ppbからppmオーダーの濃度である呼気中のマーカの測定には適していない。更に、ガスセンサとして作動するためには300℃に加熱する必要があるため実用的ではない。
このような問題を解決するための一方法として、非特許文献2には、カーボンナノチューブ(以下、「CNT(Carbon Nano Tube)」と記す場合がある。)を利用したガスセンサが提案されている。CNTは直径がナノオーダーのチューブ状炭素材料であり、グラフェンシートを円筒状に丸めた構造によりなる。このグラフェンシートとは、6つの炭素原子が正六角形の板状構造を形成して結合したグラファイト構造が二次元に連続して形成されたものである。CNTは高い導電性を有し、かつナノオーダーの材料であるため、非特許文献2に開示されるガスセンサは、超小型化、低消費電力及び可搬性を実現可能であり、簡便で実用的な健康チェック機器として最適である。しかしながら、測定対象ガスに対する選択性が低いために、どのようなガス分子が接近しても同じように抵抗変化を起こしてしまい、雰囲気中に存在する物質の定性分析ができないという問題がある。
呼気中のマーカの1つである一酸化窒素(NO)は、テーブル1に示すように、喘息患者の呼気中において高濃度で検出される。また、生体内の神経伝達物質の一つであり、免疫反応及び血圧調整等においても重要な役割を果たすことが知られている。そのため、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を検出することで疾病の予測及び程度等を知ることが可能であり、高性能な一酸化窒素センサ(以下「NOセンサ」と記す。)の実現が望まれている。
非特許文献3には、CNTを利用したNOセンサが提案されている。非特許文献3に開示されるNOセンサは、CNT表面を特定の物質と反応する物質で修飾することにより、測定対象ガスに対する選択性を向上させている。すなわち、二酸化窒素(NO)と反応するポリエチレンイミンにより表面を修飾されたCNTを利用し、更に一酸化窒素から二酸化窒素へと変換する触媒を設けることによって、呼気内の特定のマーカである一酸化窒素(NO)を検出している。
ウェンチン・ツァオら、「呼気分析:臨床診断及び曝露評価の可能性」、クリニカル・ケミストリ、第52巻:5、p.800−p.811、2006年(Wenqing Cao et al.、"Breath Analysis:Potential for Clinical Diagnosis and Exposure Assessment"、Clinical Chemistry、vol.52:5、p.800−p.811、2006) 齋藤理一郎、「カーボンナノチューブの概要と課題」、機能材料、vol.21、No.5、p.6−p.14、2001年5月号 アレクサンダー スターら、「呼気成分のためのカーボンナノチューブセンサ」、ナノテクノロジー、第18巻、p.375502(7pp)、2007年(Alexander Star et al.、"Carbon nanotube sensors for exhaled breath components"、Nanotechnology、vol.18、p.375502(7pp)、2007)
一般的に、健康な人の呼気中における一酸化窒素濃度は10ppb程度であり、喘息患者の呼気中における一酸化窒素濃度は50ppb程度であるため、呼気中の一酸化窒素(NO)を検出するためのNOセンサは、検出下限がppbレベルと高感度のものが要求される。非特許文献3に開示されるNOセンサでは、このような呼気中の一酸化窒素(NO)を検出できるレベルの高感度化は達成されていない。
また、非特許文献3に開示されるNOセンサは、使用される触媒が湿度15%〜30%程度の環境下でなければ正常に作動しないため、測定対象ガスの湿度を調整しなければならない。また、正確な一酸化窒素量を検出するためには、測定対象ガスに含まれている二酸化窒素(NO)を予め除去しなければならない。したがって、非特許文献3に開示されるNOセンサによって呼気中の一酸化窒素(NO)を測定する場合には、触媒だけなく、呼気内に4%程度含まれている二酸化窒素(NO)の除去及び湿度の調整等の前処理に必要な構成を設けなければならず、装置が大型化してしまうという問題がある。また、測定に多段階の工程を必要とするため測定時間が長くなってしまうという問題がある。
非特許文献3に開示されるようなポリエチレンイミン等の高分子化合物により表面修飾されたCNTを利用するNOセンサ以外に、一酸化窒素(NO)と反応する金属錯体により表面修飾されたCNTを利用するNOセンサが考えられる。これらの金属錯体を従来技術と同様の方法でCNT表面に物理的に修飾すると、金属錯体のCNTに対する付着力が不充分であるため、金属錯体がCNTから脱離し易く、NOセンサの性能を長期間に渡って維持することが困難であるという問題がある。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出できるとともに、装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成でき、更に、長期に渡って性能を維持できる化学物質センシング素子、化学物質センシング装置、及び、化学物質センシング素子に含まれる表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法、並びに、化学物質センシング素子の製造方法を提供することである。
本発明の第1の局面に係る化学物質センシング素子は、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンとイオン結合するカチオン性官能基を有するカーボンナノ構造体を含み、カーボンナノ構造体は、錯イオンによりイオン結合を介して表面修飾されている。
これにより、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出できる。また、雰囲気中の特定物質を他の物質へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質センシング素子の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。また、錯イオンとカチオン性官能基とによるイオン結合を介した表面修飾により、錯イオンは、カーボンナノ構造体表面に強固に固定されるので、長期間に渡って化学物質センシング素子の高選択性及び高感度を維持することができる。
好ましくは、錯イオンは、下記一般式(1)で表される。これにより、一酸化窒素を高選択的かつ高感度に検出できる。また、一酸化窒素を二酸化窒素へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質センシング素子の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
Figure 2010038840
(式中、Mは鉄原子及びコバルト原子からなるグループから選択される金属原子であり、nは2〜3の整数であり、mは0〜1の整数である。)
より好ましくは、カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなる。このようなグループから選択されるカーボンナノ構造体は、その形状がナノオーダーの微細構造であることから、応答性及び検出下限が大幅に向上する。したがって、従来のセンシング素子では困難であったppbオーダー程度の微量の特定物質の検出が可能になる。
更に好ましくは、カチオン性官能基は、アンモニウム基である。アンモニウム基は、カーボンナノ構造体に対する導入が容易であるので、化学物質センシング素子の利便性をより一層向上させることができる。
本発明の第2の局面に係る化学物質センシング装置は、上述の化学物質センシング素子と、化学物質センシング素子に電気的に接続され、化学物質センシング素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段とを含む。このように、化学物質センシング装置は上述の化学物質センシング素子を含むので、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出でき、更に装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
本発明の第3の局面に係る表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法は、第1のステップにおいて、表面にカチオン性官能基が導入されたカーボンナノ構造体であるカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製し、第2のステップにおいて、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンを含む金属錯体と、第1の溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製し、第3のステップにおいて、調製した表面修飾用溶液に対して、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射することで、上述の錯イオンにより表面修飾されたカーボンナノ構造体である表面修飾カーボンナノ構造体を製造する。このように、超音波を用いることでカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を表面修飾用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面を錯イオンによって均一に修飾できる。したがって、雰囲気中の特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる表面修飾カーボンナノ構造体を製造することができる。また、錯イオンはイオン結合を介してカーボンナノ構造体を表面修飾するので、錯イオンをカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。したがって、長期間に渡って高選択性及び高感度を維持可能な表面修飾カーボンナノ構造体を製造することができる。
好ましくは、第1のステップは、カチオン性官能基を有する芳香族性分子と第2の溶剤とを含むカチオン性官能基導入用溶液を調製するステップと、カチオン性官能基導入用溶液に対してカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射するステップとを含む。このように、超音波を用いることでカーボンナノ構造体をカチオン性官能基導入用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面にカチオン性官能基を均一に導入することができる。また、カチオン性官能基は、π−πスタッキング相互作用による静電気的な化学吸着によってカーボンナノ構造体表面に導入されるので、カチオン性官能基をカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。
好ましくは、第1のステップは、カチオン性官能基を共有結合によってカーボンナノ構造体に導入することで、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製する。このように、カチオン性官能基は共有結合によってカーボンナノ構造体表面に導入されるので、カチオン性官能基をカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。
本発明の第4の局面に係る化学物質センシング素子の製造方法は、上述の表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法によって製造された表面修飾カーボンナノ構造体を含むシート状の基体を作製するステップを含む。これにより、表面修飾カーボンナノ構造体を、雰囲気中の特定物質に対して均一な状態で反応させることができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質センシング素子を製造することができる。
本発明によれば、化学物質センシング素子は、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンとイオン結合するカチオン性官能基を有するカーボンナノ構造体を含み、カーボンナノ構造体は、錯イオンによりイオン結合を介して表面修飾されている。したがって、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出できる。また、雰囲気中の特定物質を他の物質へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質センシング素子の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。また、錯イオンとカチオン性官能基とによるイオン結合を介した表面修飾により、錯イオンは、カーボンナノ構造体表面に強固に固定されるので、長期間に渡って化学物質センシング素子の高選択性及び高感度を維持することができる。
以下の説明及び図面においては、同一の部品には同一の参照符号及び名称を付してある。それらの機能も同様である。したがって、それらについての詳細な説明をその都度繰返すことはしない。
−構成−
図1は、本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子32を含む化学物質センシング装置20の構成図である。図1を参照して、化学物質センシング装置20は、直流電源30と、直流電源30のプラス端子に一端が接続された、本実施の形態に係る化学物質センシング素子32と、化学物質センシング素子32の他端と直流電源30のマイナス端子との間に接続された負荷抵抗34と、化学物質センシング素子32と負荷抵抗34との間の接点に入力が接続され、この接点の電位変化を増幅するための増幅器36とを含む。雰囲気中の化学物質の検出時には、この電位変化を測定するために、増幅器36の他方の端子に直流電圧計(図示せず。)が接続される。
図2は、化学物質センシング素子32の構成を示す図であり、図2(A)は側面図であり、図2(B)は上面図である。図2を参照して、化学物質センシング素子32は、基板48と、基板48の表面に形成され、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンによりイオン結合を介して表面修飾されたカーボンナノ構造体の集合体からなる化学物質センシング部42と、化学物質センシング部42の両端に配置される電極44及び電極46とを含む。
以下、化学物質センシング素子32を構成する化学物質センシング部42、電極44及び電極46、並びに、基板48について詳細に説明する。
[化学物質センシング部42]
化学物質センシング部42は、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンによりイオン結合を介して表面修飾されたカーボンナノ構造体(以下「表面修飾カーボンナノ構造体」と記す場合がある。)の集合体からなる。カーボンナノ構造体の表面に化学物質が付着すると、電子移動が起こり起電力が発生する。言い換えれば、カーボンナノ構造体の2点間に電位差又は電気抵抗の変化が生じる。この電気抵抗の変化を検出すれば、化学物質の検出(センシング)が可能となる。また、ある特定物質と選択的に反応する錯イオンによりカーボンナノ構造体の表面を修飾すると、上述の電気抵抗の変化は、表面に修飾された錯イオンの挙動に連動するようになるので、特定物質のみを検出できる化学物質センシング素子32を得ることができる。
錯イオンとしては、雰囲気中の特定物質と選択的に反応するものであれば特に限定されないが、例えば、上記一般式(1)で表されるもの、及び、中心金属原子として鉄原子(Fe)又はコバルト原子(Co)を含む錯イオン等からなるグループから選択されるものを使用できる。これらの中でも、雰囲気中の特定物質である一酸化窒素分子(NO)に対して高い選択能を有する点から、上記一般式(1)で表される錯イオンを使用することが好ましい。
以下、上記一般式(1)で表される錯イオンについて詳細に説明する。上記一般式(1)を参照して、錯イオンは、中心金属原子(M)及びこの中心金属原子(M)に配位する配位子からなる。中心金属原子(M)は、鉄原子(Fe)及びコバルト原子(Co)からなるグループから選択される金属原子であり、特には3価の金属原子、すなわちFe(III)又はCo(III)であることが好ましい。配位子は、平面四配位型の配位構造を形成する。この配位子において、中心金属原子(M)に配位する四つの原子(以下「配位原子」と記す場合がある。)のうち隣接する二つの原子はアミド性窒素原子(N)であり、それ以外の二つの原子はチオール性硫黄原子(S)である。ここで、アミド性窒素原子(N)とは、カルボニルとアミンとにより構成される二級アミド基(−CONH−)からプロトン(H)を除いた基を構成する窒素原子、すなわち、−CON−で表される基を構成する窒素原子のことを示す。また、チオール性硫黄原子とは、チオール基(−SH)からプロトン(H)を除いた基を構成する硫黄原子、すなわち、−Sで表される基を構成する硫黄原子のことを示す。配位原子は、それぞれが有する非共有電子対を中心金属原子(M)に対して供与する電子対供与体であり、これらの配位原子が平面四配位型の配位構造をとることにより、中心金属原子(M)に対する電子対の供与がより効果的になされている。また、一般式(1)において、nは2〜3の整数であり、mは0〜1の整数である。
このような錯イオンは、雰囲気中の一酸化窒素分子(NO)と選択的に反応する性質、すなわち、一酸化窒素分子(NO)に対する反応性に比べて、他の化学種に対する反応性が著しく低い性質を有する。そのため、他の化学種は錯イオンに吸着しにくい。これは、上述の錯イオンが、電子供与性の大きい4つの配位原子を有し、かつ平面四配位型の配位構造を形成しており、中心金属原子(M)に対する電子対の供与が効果的になされているためであると考えられる。また、外因性分子により配位子のカルボニル酸素に対して形成される水素結合も、一酸化窒素分子(NO)に対する選択的な反応性を示すための一因であると考えられる。
このような、上記一般式(1)で表される錯イオンにより表面修飾されたカーボンナノ構造体の集合体からなる化学物質センシング部42は、一酸化窒素(NO)を高選択的かつ高感度に検出できる。また、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質センシング素子32の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
以下、一般式(1)で表される錯イオンの代表的なものについて具体的な構造を記す。
例示化合物(1)
Figure 2010038840
例示化合物(2)
Figure 2010038840
例示化合物(3)
Figure 2010038840
例示化合物(4)
Figure 2010038840
カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなることが好ましく、更にはCNTからなることが好ましい。このようなカーボンナノ構造体は、従来の方法を用いて生成したものを使用できる。また、不純物除去のために塩酸により処理されたものを使用することもできる。上述のグループから選択されるカーボンナノ構造体は、その形状がナノオーダーの微細構造であるので、カーボンナノ構造体の集合体からなる化学物質センシング部42は、応答性及び検出下限が大幅に向上する。すなわち、化学物質がカーボンナノ構造体表面に付着してからカーボンナノ構造体の電気抵抗変化が発生するまでの時間は、カーボンナノ構造体の導電性及びナノ構造に起因して非常に短くなる。また、カーボンナノ構造体における、表面積が大きいという特徴点、及び、全ての構成原子が表面を構成しているという特徴点に起因して、化学物質による付着の影響が電気抵抗に反映される際の電子散乱等による損失が非常に小さくなる。したがって、上述のグループから選択されるカーボンナノ構造体によれば、従来のセンシング素子では困難であった、ppbオーダー程度の微量の特定物質、例えば、一酸化窒素(NO)の存在確認が可能になる。カーボンナノ構造体がカーボンナノチューブからなる場合には、上述の効果がより顕著に発現する。このように、ppbオーダーの微量の特定物質を検出できるようになることにより、呼気中のマーカの測定が可能な化学物質センシング素子32を得ることができる。したがって、手軽に個人の健康状態を把握することができるようになる。
また、化学物質センシング部42として、このような導電性を有するカーボンナノ構造体に錯イオンが表面修飾されたものを使用するので、その導電性の変化、すなわち抵抗の変化を測定することで雰囲気中の特定物質の検出が可能になる。したがって、錯イオンを含む電解液の電気化学的挙動の変化を利用する化学物質センシング素子等と比較して、電解質等の構成を設ける必要がないため、より素子の小型化を達成できる。カーボンナノ構造体に対する錯イオンの表面修飾量は、錯イオンの種類等に応じて、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出できるように適宜調整されればよい。
カーボンナノ構造体は、表面に錯イオンとイオン結合するカチオン性官能基を有する。カチオン性官能基としては、錯イオンとイオン結合を形成可能なものであれば特に限定されないが、例えば、アンモニウム基、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、グアニジウム基、ホスホニウム基等を使用できる。これらの中でも、カーボンナノ構造体に対する導入が容易であるため化学物質センシング素子32の利便性をより一層向上させることが可能なアンモニウム基を使用することが好ましい。このように、錯イオンとカチオン性官能基とによるイオン結合を介した表面修飾により、錯イオンは、カーボンナノ構造体表面により一層強固に固定されるので、より一層長期間に渡って化学物質センシング素子32の高選択性及び高感度を維持することができる。
カーボンナノ構造体に対するカチオン性官能基の導入量は、カーボンナノ構造体に対する錯イオンの表面修飾量が所望の量となるように適宜調整されればよい。カーボンナノ構造体に対するカチオン性官能基の導入方法、及び、導入量の算出方法については、後述する。
−表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法−
以下、表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法の一例である第1の製造方法と、他の一例である第2の製造方法とについて説明する。
(第1の製造方法)
図3は、第1の製造方法の手順を示す工程図である。図3を参照して、第1の製造方法は、この順で進行するステップS100〜ステップS103を含む。このステップS100〜ステップS103によって、表面修飾カーボンナノ構造体を製造できる。
ステップS100では、カチオン性官能基を有する芳香族性分子と溶剤とを含むカチオン性官能基導入用溶液を調製し、ステップS101では、カチオン性官能基導入用溶液に対してカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する。このステップS100及びステップS101によって、表面にカチオン性官能基が導入されたカーボンナノ構造体(以下「カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体」と記す。)を作製できる。
ステップS100及びステップS101において、カーボンナノ構造体の表面にカチオン性官能基が導入されるのは、以下の理由による。すなわち、カチオン性官能基を有する芳香族性分子の有する芳香環と、カーボンナノ構造体が有する炭素6員環とが、π−πスタッキング相互作用により静電気的に化学吸着するためである。π−πスタッキング相互作用とは、平面構造を有し、かつ、π電子系により非局在化した電子が豊富に存在する芳香環及び炭素6員環等の間に働く分散力により生じる作用であって、芳香環及び炭素6員環等をコインを積み重ねるように配置して安定化させる作用のことを示す。
カチオン性官能基を有する芳香族性分子としては、上述のカチオン性官能基、及び、カーボンナノ構造体が有する炭素6員環とπ−πスタッキングが可能な芳香環等の構造を有する分子であれば特に限定されない。例えば、カチオン性官能基としてアンモニウム基を有する場合には、1−ピレンメチルアミン、1−アミノピレン、ジメチル−ピレン−1−イル−メチルアミン、又は、ジエチル−ピレン−1−イル−アミン等から生成される有機アンモニウムイオンと、塩化物イオン等のハロゲン化物イオン、又は、水酸化物イオン等の対アニオンとからなる有機アンモニウム塩等を使用できる。これらの中でも、塩の状態で比較的容易に入手可能な点から、1−ピレンメチルアミン塩酸塩を使用することが好ましい。
カチオン性官能基導入用溶液に使用される溶剤としては、カチオン性官能基を有する芳香族性分子を可溶なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール等のアルコール、又は、これらの混合溶剤等を使用できる。これらの中でも、安全性及び溶解性に優れる点から、水を使用することが好ましく、特には、導電率0.067μS/cm以下の純水を使用することが好ましい。カチオン性官能基導入用溶液の濃度及び使用量、並びに、カーボンナノ構造体の投入量は、カーボンナノ構造体に対するカチオン性官能基の導入量が所望の値となるように適宜調整されればよい。なお、カーボンナノ構造体に対する錯イオンの表面修飾量は、カーボンナノ構造体に対するカチオン性官能基の導入量に依存するので、カチオン性官能基の導入量は、錯イオンの所望の表面修飾量に基づいて決定されることが好ましい。
ステップS101において、超音波の照射は、一般的に用いられる超音波洗浄器(例えば、市販品(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製))等の超音波発生装置を用いて行なうことができる。照射する超音波の周波数としては、カチオン性官能基導入用溶液中にカーボンナノ構造体が均一に分散する程度に適宜設定されればよいが、40kHz〜60kHzであることが好ましい。超音波を照射する時間としては、カチオン性官能基の導入が確実になされるように適宜設定されればよいが、例えば、溶剤が全て蒸発しない程度である0.1時間〜1時間であることが好ましい。
上述のようにして作製されたカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体は、カチオン性官能基導入用溶液から取出された後、風乾等により乾燥されることが好ましい。得られたカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体において、カチオン性官能基が導入されているか否かの確認は、X線光電子分光法(XPS(X−ray photoelectron spectroscopy))によって得られるXPSスペクトル、及び、赤外分光法(IR(Infrared spectroscopy))によって得られるIRスペクトル等において、導入したカチオン性官能基、例えば、アンモニウム基由来のピークが確認できるか否かに基づいて行なうことができる。
このように、第1の製造方法は、ステップS100及びステップS101を経てカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製する。すなわち、ステップS100において、カチオン性官能基を有する芳香族性分子と溶剤とを含むカチオン性官能基導入用溶液を調製し、ステップS101において、調製したカチオン性官能基導入用溶液に対してカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する。このように、超音波を用いることでカーボンナノ構造体をカチオン性官能基導入用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面にカチオン性官能基を均一に導入することができる。また、カチオン性官能基は、π−πスタッキング相互作用による静電気的な化学吸着によってカーボンナノ構造体表面に導入されるので、カチオン性官能基をカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。
第1の製造方法において、ステップS102では、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する上述の錯イオンを含む金属錯体と、溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製し、ステップS103では、調製した表面修飾用溶液に対して、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する。
金属錯体は、上述した錯イオンと、その対カチオンとを含む。対カチオンとしては、カーボンナノ構造体に対する錯イオンによる表面修飾を促進可能なものであれば特に限定されず、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、及び、カリウムイオン等からなるグループから選択されるものを使用できる。これらの中でも、特に、ナトリウムイオンを使用することが好ましい。対カチオンがこのようなグループから選択されるものである場合、カチオン性官能基と対カチオンとのイオン交換反応がより一層進行し易くなる。すなわち、錯イオンは一般的に嵩高く大きいイオンであるため、上述したカチオン性官能基等のような比較的大きい対カチオンと安定したイオン結合を形成する。これに対し、錯イオンと、上述のグループから選択されるもの等のような比較的小さい対カチオンとから形成されるイオン結合は不安定である。イオン交換反応は、より安定なイオン結合を形成するように進行するので、金属錯体における対カチオンとして上述のグループから選択されるものを使用することによって、イオン交換反応をより一層進行し易くすることができ、表面修飾カーボンナノ構造体をより一層容易に製造することができる。
表面修飾用溶液に使用される溶剤としては、金属錯体を可溶なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール若しくはエタノール等のアルコール、又は、これらの混合溶剤等を使用できる。これらの中でも、イオン交換反応が進行し易い点から、水を使用することが好ましく、特には、純水を使用することが好ましい。
表面修飾用溶液の濃度及び使用量、並びに、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体の投入量は、カーボンナノ構造体に対する錯イオンの表面修飾量が所望の値となるように適宜調整されればよい。ここで、表面修飾量とは、1mgのカーボンナノ構造体に対して表面修飾される錯イオンの量(mg/mg)のことである。
ステップS103において、超音波の照射は、一般的に用いられる超音波洗浄器(例えば、市販品(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製))等の超音波発生装置を用いて行なうことができる。照射する超音波の周波数としては、イオン交換反応が円滑に進行する程度に適宜設定されればよいが、40kHz〜60kHzであることが好ましい。超音波を照射する時間としては、イオン交換反応が確実に完了する時間であれば特に限定されないが、例えば、溶剤が全て蒸発しない程度である1時間〜3時間であることが好ましい。
上述のようにして作製された表面修飾カーボンナノ構造体は、表面修飾用溶液から取出された後、風乾等による乾燥とともに、減圧下で一定時間乾燥させることが好ましい。減圧条件としては、溶剤が完全に除去できる程度であれば特に限定されないが、1.0×10−6MPa〜1.0×10−5MPaで1時間〜3時間乾燥させることが好ましい。
得られた表面修飾カーボンナノ構造体において、錯イオンによる表面修飾がなされているか否かの確認は、蛍光X線元素分析法(XRF(X−ray Fluorescence Analysis))によって得られるXRFスペクトル等において、錯イオン由来のピークが確認できるか否かに基づいて行なうことができる。また、カーボンナノ構造体に対する錯イオンの表面修飾量は、ステップS103前後の表面修飾用溶液のUV−visスペクトルにおける、錯イオンに由来する吸光度の差に基づいて算出することができる。UV−visスペクトルは、紫外・可視分光法によって得ることができる。
(第2の製造方法)
図4は、第2の製造方法の手順を示す工程図である。図4を参照して、第2の製造方法は、この順で進行するステップS200〜ステップS202を含む。このステップS200〜ステップS202によって、表面修飾カーボンナノ構造体を製造できる。第2の製造方法において、ステップS201及びステップS202は、第1の製造方法におけるステップS102及びステップS103と同じである。以下、第1の製造方法とは異なるステップS200について説明する。
ステップS200では、カチオン性官能基を共有結合によってカーボンナノ構造体に導入することで、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製する。カチオン性官能基を共有結合によってカーボンナノ構造体に導入する方法としては、当該分野において一般的に使用される方法であれば特に限定されない。例えば、カチオン性官能基をカーボンナノ構造体表面に直接導入してもよいし、エチレン基等のアルキレン基等のスペーサーを介して導入してもよい。
例えば、カチオン性官能基としてアンモニウム基をカーボンナノ構造体表面に直接導入する場合には、カーボンナノ構造体の表面にカルボン酸を導入した後、アンモニウム基に変換する方法等がある。より詳細には、例えば、硫酸:硝酸=3:1の混酸中にカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する方法等によってカーボンナノ構造体の表面にカルボン酸を導入し、導入されたカルボン酸をリチウムアルミニウムハイドライド(LAH)等の還元剤によって還元することでアルコールに変換し、更に、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)及びトリフェニルホスフィン等を使用した光延反応条件下において、得られたアルコールをフタルイミドに変換した後、トリフルオロ酢酸等によって加水分解する方法等がある。上述の還元反応及び光延反応条件下において用いる溶剤としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等を使用できる。溶剤の量は、原料等の使用量に応じて、適宜調整されればよい。
カチオン性官能基としてアンモニウム基をアルキレン基等のスペーサ−を介してカーボンナノ構造体表面に導入する場合には、カーボンナノ構造体の表面に導入されたカルボン酸とアルキレンジアミンとを縮合剤を用いて縮合させてアミド結合を形成させる方法等がある。縮合剤としては、ペプチド合成等のアミド結合形成反応においてカップリング剤として一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等のN−ヒドロキシベンゾトリアゾール類、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等のカルボジイミド類、及び、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート(HATU)等からなるグループから選択されるものを使用できる。これらの中でも、取扱いの容易さ及び安全性の点から、HATUを使用することが好ましい。縮合剤の含有量としては、当該分野において一般的に使用される量であれば特に限定されないが、例えば、アミド結合を形成するための所望のカルボン酸1molに対して、1mol〜1.5molであることが好ましい。
アミド結合形成反応には、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤としては、当該分野において一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)又はテトラヒドロフラン(THF)等を使用できる。溶剤の量は、カルボン酸が導入されたカーボンナノ構造体の使用量に応じて、適宜調整されればよい。上述のアミド結合形成反応は、反応系内を塩基性条件にして反応をより一層促進するにするために、必要に応じてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)等の塩基を適当量添加して行なってもよい。
なお、カーボンナノ構造体に対する錯イオンの表面修飾量は、カーボンナノ構造体に対するカチオン性官能基の導入量に依存するので、カチオン性官能基の導入量は、錯イオンの所望の表面修飾量に基づいて決定されることが好ましい。
このように、第2の製造方法は、ステップS200において、カチオン性官能基を共有結合によってカーボンナノ構造体に導入することで、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製する。このように、カチオン性官能基は、共有結合によってカーボンナノ構造体表面に導入されるので、カチオン性官能基をカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。
上述したように、本実施の形態に係る表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法は、ステップS100及びステップS101、又は、ステップS200において、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製し、ステップS102又はステップS201において、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンを含む金属錯体と、溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製し、ステップS103又はステップS202において、調製した表面修飾用溶液に対して、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射することで、表面修飾カーボンナノ構造体を製造する。このように、超音波を用いることでカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を表面修飾用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面を錯イオンによって均一に修飾できる。したがって、雰囲気中の特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる表面修飾カーボンナノ構造体を製造することができる。また、錯イオンはイオン結合を介してカーボンナノ構造体を表面修飾するので、錯イオンをカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。したがって、長期間に渡って高選択性及び高感度を維持可能な表面修飾カーボンナノ構造体を製造することができる。
−化学物質センシング素子32の製造方法−
以下、化学物質センシング素子32の製造方法について説明する。図5(A)及び図5(B)は、化学物質センシング部42の製造方法の一例を説明するための図である。図5(A)及び図5(B)を参照して、化学物質センシング部42の製造方法の一例では、上述の第1の製造方法又は第2の製造方法において製造された表面修飾カーボンナノ構造体が分散された分散液58を調製するステップと、分散液58をろ過するステップとによって、表面修飾カーボンナノ構造体を含むシート状の基体56を作製する。
分散液58において表面修飾カーボンナノ構造体を分散させるための分散用溶剤としては、表面修飾カーボンナノ構造体を分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、エタノール又はジメチルホルムアミド(DMF)等を使用できる。これらの中でも、安全性及びコストの点から水が特に好ましい。このような分散用溶剤を用いて表面修飾カーボンナノ構造体を分散させることにより、均一に表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む基体56を、均一な厚みで形成することができる。表面修飾カーボンナノ構造体が分散しにくい溶剤を分散用溶剤として用いた場合には、表面修飾カーボンナノ構造体が局所的に凝集するために、均一な厚みの基体56が形成されないおそれがある。分散液58に使用する分散用溶剤の量は、分散させる表面修飾カーボンナノ構造体の使用量に応じて、適宜調整されればよい。
ろ過に用いるろ材60としては、絶縁性を有し、かつ適度な機械的強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、フッ素樹脂等の高分子材料からなるメンブレンフィルタ、銀メンブレンフィルタ、ガラス繊維ろ紙又はろ紙等を使用できる。これらの中でも、コスト面や取扱いの容易さから、テフロン(登録商標)製のメンブレンフィルタを使用することが特に好ましい。ろ過方法としては、減圧ろ過又は自然ろ過等の一般的な方法を使用できるが、ろ過速度が速く、かつ、均一な厚みの基体56を形成しやすい点から減圧ろ過を使用することが好ましい。自然ろ過を用いる場合には、ろ過速度が遅いため基体56の形成に長時間を要するおそれがあり、また均一な厚みの基体56を形成できないおそれがある。減圧ろ過は、ブフナー漏斗62及び吸引瓶(図示せず。)等からなる減圧ろ過装置を用いて行なうことが好ましく、更には、分散液58をブフナー漏斗62内に注入した後減圧することが好ましい。減圧後に分散液58を注入した場合には、中央部の厚みが他の部分の厚みよりも大きい基体56が形成されてしまうおそれがある。上述のようにして作製された基体56は、乾燥させることが好ましい。なお、基体56は、基板48及び化学物質センシング部42からなり、この場合、基板48はろ材60であり、化学物質センシング部42はろ材上に残るろ物64である。
このように、化学物質センシング部42の製造方法の一例では、上述の第1の製造方法又は第2の製造方法によって製造された表面修飾カーボンナノ構造体を含むシート状の基体56を作製する。これにより、表面修飾カーボンナノ構造体を、雰囲気中の特定物質に対して均一な状態で反応させることができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質センシング素子32を製造することができる。更には、表面修飾カーボンナノ構造体を含む基体56を、表面修飾カーボンナノ構造体が分散された分散液58を調製し、この分散液58を減圧ろ過等によって乾燥させることで作製する。これにより、均一に表面修飾されたカーボンナノ構造体を含む基体56を、均一な厚みで、かつ短時間で形成することができる。
表面修飾カーボンナノ構造体を含む基体56は、必要に応じて、短冊状等の所望の形状及び所望の大きさになるようにカッティングされる。その後、化学物質センシング部42表面の両端部に蒸着法又は導電性ペーストを塗布する方法等の公知の方法によって、所望の電極間距離となるように電極44及び電極46が形成され、これにより、本実施の形態に係る化学物質センシング素子32を製造できる。
−動作−
図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る化学物質センシング装置20は以下のように動作する。直流電源30により、化学物質センシング素子32と負荷抵抗34とを直列接続したものの両端に一定電圧をかけながら、特定物質を含む測定対象ガスを化学物質センシング素子32表面に導入する。化学物質センシング素子32に含まれる、化学物質センシング部42を構成する表面修飾カーボンナノ構造体の表面に測定対象ガス中の何らかの物質が付着すると、電極44,46間の電気抵抗が変化する。その変化を増幅器36の出力電圧の変化として直流電圧計(図示せず。)により検出する。このように出力電圧変化を知ることによって、測定対象ガス中の何らかの物質の存在を確認することができる。
これは以下に示す理由による。化学物質センシング部42においては、個々のカーボンナノ構造体同士が隣接して互いに接触し合っているので、全体として導電性材料の集合体となっている。このような化学物質センシング部42を構成する、個々のカーボンナノ構造体の表面に何らかの物質が付着すると、それぞれの電気抵抗が変化し、それらの総和が出力電圧変化として出力される。したがって、化学物質センシング部42の両端の電気抵抗の変化を知ることにより、化学物質センシング部42に何らかの物質が付着したことが判るので、測定対象ガス中に何らかの物質が存在することを確認することができる。
図6は、錯イオン72によりイオン結合を介して表面修飾されたカーボンナノ構造体74表面に一酸化窒素(NO)76が吸着する様子を示す図である。図6を参照して、雰囲気中の一酸化窒素(NO)76と選択的に反応する例示化合物(4)に示す錯イオン72がカチオン性官能基73とのイオン結合により表面修飾されたカーボンナノ構造体74に対して一酸化窒素(NO)76が接近すると、錯イオン72による選択能によって、一酸化窒素(NO)76が選択的に錯イオン72に吸着される。このように、カーボンナノ構造体74に表面修飾された錯イオン72は、一酸化窒素(NO)76を選択的に捕捉するので、一酸化窒素(NO)76が吸着されたときとそうでないときとの差が、化学物質センシング部42の全体の電気抵抗の変化として顕著に現れる。したがって、化学物質センシング部42の電気抵抗の変化を測定することによって、特定物質である一酸化窒素(NO)76の存在の有無、及び、その存在量を他の物質と比較してより高感度に検出することができる。
〈作用・効果〉
本実施の形態によれば、化学物質センシング素子32は、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンとイオン結合するカチオン性官能基を有するカーボンナノ構造体を含み、カーボンナノ構造体は、錯イオンによりイオン結合を介して表面修飾されている。これにより、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出できる。また、雰囲気中の特定物質を他の物質へ変換することなく直接検出できるので、変換に要する構成及び工程、並びに、変換に伴う前処理に要する構成及び工程を省くことができる。したがって、化学物質センシング素子32の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。また、錯イオンとカチオン性官能基とによるイオン結合を介した表面修飾により、錯イオンは、カーボンナノ構造体表面に強固に固定されるので、長期間に渡って化学物質センシング素子32の高選択性及び高感度を維持することができる。
また本実施の形態によれば、化学物質センシング装置20は、化学物質センシング素子32と、化学物質センシング素子32に電気的に接続され、化学物質センシング素子32の電気抵抗の変化を検出するための増幅器36及び直流電圧計とを含む。このように、化学物質センシング装置20は化学物質センシング素子32を含むので、雰囲気中の特定物質を高選択的かつ高感度に検出でき、更に装置の小型化及び測定時間の短縮化を達成できる。
また本実施の形態によれば、表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法は、ステップS100及びステップS101、又は、ステップS200において、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製し、ステップS102又はステップS201において、雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンを含む金属錯体と、溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製し、ステップS103又はステップS202において、調製した表面修飾用溶液に対して、カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射することで、表面修飾カーボンナノ構造体を製造する。このように、超音波を用いることでカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を表面修飾用溶液に均一に分散させることができるので、カーボンナノ構造体表面を錯イオンによって均一に修飾できる。したがって、雰囲気中の特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる表面修飾カーボンナノ構造体を製造することができる。また、錯イオンはイオン結合を介してカーボンナノ構造体を表面修飾するので、錯イオンをカーボンナノ構造体表面に強固に固定しておくことができる。したがって、長期間に渡って高選択性及び高感度を維持可能な表面修飾カーボンナノ構造体を製造することができる。
また本実施の形態によれば、化学物質センシング部42の製造方法は、上述の表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法によって製造された表面修飾カーボンナノ構造体を含むシート状の基体56を作製する。これにより、表面修飾カーボンナノ構造体を、雰囲気中の特定物質に対して均一な状態で反応させることができるので、特定物質をより一層高選択的かつ高感度に検出することができる化学物質センシング素子32を製造することができる。
なお、上記実施の形態では、表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法におけるステップS103及びステップS202において超音波照射を行なったが、本発明はそのような実施の形態に限定されず、例えば、超音波照射を行なわず、攪拌する構成であってもよい。
以下に上記実施の形態を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、上記実施の形態はその要旨を超えない限り特に本実施例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り、実施例及び比較例において、XPSスペクトルの測定には、X線光電子分光装置(商品名:MICRO LAB 300A、VG SCIENTIFIC社製)を使用し、IRスペクトルの測定には、赤外線分光光度計(商品名:20D FTIR SPECTROMETER、Nicolet社製)を使用し、XRFスペクトルの測定には、蛍光X線分析装置(商品名:ZSX100s、株式会社リガク製)を使用し、UV−visスペクトルの測定には、紫外可視分光光度計(商品名:U−3310 spectrometer、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を使用した。
−試験例1−
(実施例1)
[アンモニウム基導入CNTの作製]
以下のようにして、カーボンナノ構造体であるCNTの表面にカチオン性官能基であるアンモニウム基を導入した。1−ピレンメチルアミン塩酸塩(アルドリッチ社製)を3mmol/Lの濃度となるように純水に溶解し、カチオン性官能基導入用溶液を調製した。このカチオン性官能基導入用溶液25mLに対してSWCNT(商品名:Single−wall nanotube、本荘ケミカル株式会社製)2mgを加えた後、超音波洗浄器(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製)にて46kHzの超音波を照射し、純水中におけるCNTの分散を確認した後、更に30分間超音波を照射した。超音波照射後、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルタ(商品名:OMNIPORETM MEMBRANE FILTERS 0.2μm(孔径) JG、MILLIPORE社製)を用いて減圧ろ過装置により減圧ろ過を行ない、ろ物を回収して乾燥させることで、表面にアンモニウム基が導入されたCNTであるアンモニウム基導入CNTを得た。なお、得られたアンモニウム基導入CNTにおいて、XPSスペクトルではN1s領域にアンモニウム基由来のピーク(404eV)を確認し、更に、IRスペクトルでは1−ピレンメチルアミン由来のピーク(850cm−1)を確認した。
[表面修飾CNTの製造]
以下のようにして、アンモニウム基導入CNTに対するコバルト錯イオンの表面修飾を行なった。例示化合物(4)に示されるコバルト錯イオンとナトリウムイオンとからなるコバルト錯体(Na[CoIII(MMPPA)])を0.05mmol/Lの濃度となるように純水に溶解し、表面修飾用溶液を調製した。この表面修飾用溶液10mLに対して、上述のようにして得られたアンモニウム基導入CNT2mgを加えた後、超音波洗浄器にて46kHzの超音波を30分間照射した。超音波照射後、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルタを用いて減圧ろ過装置により減圧ろ過を行ない、ろ物を回収して乾燥させた後減圧下9.3×10−6MPaで2時間乾燥させることで、コバルト錯イオンが表面修飾されたCNT(以下「表面修飾CNT」と記す。)を得た。
図7は、調製時における表面修飾用溶液のUV−visスペクトル、及び、減圧ろ過後におけるろ液のUV−visスペクトルを示すグラフである。図7を参照して、調製時における表面修飾用溶液のUV−visスペクトル(グラフ中Aに示す。)においてコバルト錯イオンに由来する654nmにおける吸光度は0.1387であり、減圧ろ過後におけるろ液のUV−visスペクトル(グラフ中Bに示す。)において654nmにおける吸光度は0.0792であり、その差は0.0595であった。得られた差の値と、下記式(1)に示すランベルト−ベールの式とに基づいて算出した、実施例1の表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量は、3.79×10−2mg/mgであった。なお、モル吸光係数(ε)として、水のモル吸光係数であるε=2800を使用し、セル長さ(l)として1cmを使用した。
A=εcl…(1)
(上記式(1)中、Aは吸光度、εはモル吸光係数、cは濃度、lはセル長さを示す。)
(実施例2)
0.0125mmol/Lの濃度の表面修飾用溶液を調製し、この表面修飾用溶液10mLに対してアンモニウム基導入CNTを0.5mg加えた以外は、実施例1と同様にして実施例2の表面修飾CNTを得た。この実施例2の表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量は、3.26×10−2mg/mgであった。
(実施例3)
0.025mmol/Lの濃度の表面修飾用溶液を調製し、この表面修飾用溶液10mLに対してアンモニウム基導入CNTを0.5mg加えた以外は、実施例1と同様にして実施例3の表面修飾CNTを得た。この実施例3の表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量は、4.68×10−2mg/mgであった。
(実施例4)
0.05mmol/Lの濃度の表面修飾用溶液を調製し、この表面修飾用溶液10mLに対してアンモニウム基導入CNTを0.5mg加えた以外は、実施例1と同様にして実施例4の表面修飾CNTを得た。この実施例4の表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量は、4.63×10−2mg/mgであった。
実施例1〜実施例4における表面修飾CNTにおける、使用した表面修飾用溶液の濃度、アンモニウム基導入CNTの使用量、及び、コバルト錯イオンの表面修飾量についてテーブル2に示す。図8は、実施例1〜実施例4における表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量を示す棒グラフである。
Figure 2010038840
テーブル2及び図8を参照して、実施例1〜実施例4の表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量は、いずれの条件においても4×10−2mg/mg程度であった。この結果から、コバルト錯イオンの表面修飾量は、アンモニウム基導入CNTにおけるアンモニウム基の導入量に依存することが判る。
−試験例2−
(実施例5)
以下に示す、アンモニウム基導入CNTの作製方法を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例5の表面修飾CNTを得た。
[アンモニウム基導入CNTの作製]
まず、以下のようにして、カーボンナノ構造体であるCNTの表面にカルボン酸を導入した後、カチオン性官能基であるアンモニウム基を導入した。硫酸1.5mLと硝酸0.5mLとからなる混酸に対してSWCNT(商品名:Single−wall nanotube、本荘ケミカル株式会社製)5mgを加えた後、超音波洗浄器(商品名:シュアー超音波洗浄器CS−20、株式会社石崎電機製作所製)にて46kHzの超音波を1時間照射した。超音波照射後、テフロン(登録商標)製メンブレンフィルタ(商品名:OMNIPORETM MEMBRANE FILTERS 0.2μm(孔径) JG、MILLIPORE社製)を用いて減圧ろ過装置により減圧ろ過を行ない、ろ物を回収して乾燥させることで、表面にカルボン酸が導入されたCNT(以下「カルボン酸導入CNT」と記す。)を得た。次いで、エチレンジアミン(商品名、和光純薬工業株式会社製)2mLに対して、上述のようにして得られたカルボン酸導入CNT2mgを加えた後、上述の超音波洗浄器にて46kHzの超音波を10分間照射し、エチレンジアミン中におけるカルボン酸導入CNTの分散を確認した。分散の確認後、HATU(縮合剤、シグマアルドリッチ社製)0.1mgを加え、更に4時間超音波を照射した。超音波照射後、メタノールで希釈して、上述のテフロン(登録商標)製メンブレンフィルタを用いて減圧ろ過装置により減圧ろ過を行ない、ろ物をメタノールで洗浄して残存するHATUを除去した。洗浄後のろ物を回収して風乾させた後減圧下9.3×10−6MPaで2時間乾燥させることで、アンモニウム基導入CNTを得た。なお、得られたアンモニウム基導入CNTにおいて、XPSスペクトルでは、N1s領域にアンモニウム基由来のピーク(404eV)を確認するとともに、O1s領域にカルボン酸由来のピーク(533eV)を確認した。IRスペクトルでは、カルボニル基由来のピーク(1720cm−1)を確認した。
図9は、調製時における表面修飾用溶液のUV−visスペクトル、及び、減圧ろ過後におけるろ液のUV−visスペクトルを示すグラフである。図9を参照して、調製時における表面修飾用溶液のUV−visスペクトル(グラフ中Cに示す。)においてコバルト錯イオンに由来する654nmにおける吸光度は0.055であり、減圧ろ過後におけるろ液のUV−visスペクトル(グラフ中Dに示す。)において654nmにおける吸光度は0.0001であり、その差は0.0549であった。得られた差の値と、上記式(1)に示すランベルト−ベールの式とに基づいて算出した、実施例5の表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量は、3.25×10−2mg/mgであった。なお、モル吸光係数(ε)として、水のモル吸光係数であるε=2800を使用し、セル長さ(l)として1cmを使用した。
た。
実施例1〜実施例5の表面修飾CNTのXRFスペクトルでは、コバルト錯イオン由来のピークを2θ角度である47.5degに確認した。
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
本発明の一実施の形態に係る化学物質センシング素子を含む化学物質センシング装置の構成図である。 化学物質センシング素子の構成を示す側面図及び上面図である。 表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法の一例である第1の製造方法の手順を示す工程図である。 表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法の他の一例である第2の製造方法の手順を示す工程図である。 化学物質センシング部の製造方法の一例を説明するための図である。 錯イオンによりイオン結合を介して表面修飾されたカーボンナノ構造体表面に一酸化窒素が吸着する様子を示す図である。 調製時における表面修飾用溶液のUV−visスペクトル、及び、減圧ろ過後におけるろ液のUV−visスペクトルを示すグラフである。 実施例1〜実施例4における表面修飾CNTにおけるコバルト錯イオンの表面修飾量を示す棒グラフである。 調製時における表面修飾用溶液のUV−visスペクトル、及び、減圧ろ過後におけるろ液のUV−visスペクトルを示すグラフである。
符号の説明
20 化学物質センシング装置
30 直流電源
32 化学物質センシング素子
34 負荷抵抗
36 増幅器
42 化学物質センシング部
44,46 電極
48 基板
56 基体
58 分散液
60 ろ材
62 ブフナー漏斗
64 ろ物
72 錯イオン
73 カチオン性官能基
74 カーボンナノ構造体
76 一酸化窒素

Claims (9)

  1. 雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンとイオン結合するカチオン性官能基を有するカーボンナノ構造体を含み、
    前記カーボンナノ構造体は、前記錯イオンにより前記イオン結合を介して表面修飾されていることを特徴とする化学物質センシング素子。
  2. 前記錯イオンは、一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1に記載の化学物質センシング素子。
    Figure 2010038840
    (式中、Mは鉄原子及びコバルト原子からなるグループから選択される金属原子であり、nは2〜3の整数であり、mは0〜1の整数である。)
  3. 前記カーボンナノ構造体は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン及びフラーレンからなるグループから選択される炭素系導電性材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化学物質センシング素子。
  4. 前記カチオン性官能基は、アンモニウム基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の化学物質センシング素子。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の化学物質センシング素子と、
    前記化学物質センシング素子に電気的に接続され、前記化学物質センシング素子の電気抵抗の変化を検出するための検出手段とを含むことを特徴とする化学物質センシング装置。
  6. 表面にカチオン性官能基が導入されたカーボンナノ構造体であるカチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製する第1のステップと、
    雰囲気中の特定物質と選択的に反応する錯イオンを含む金属錯体と、第1の溶剤とを含む表面修飾用溶液を調製する第2のステップと、
    前記表面修飾用溶液に対して、前記カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射する第3のステップとを含み、
    前記第1のステップ〜前記第3のステップによって、前記錯イオンにより表面修飾されたカーボンナノ構造体である表面修飾カーボンナノ構造体を製造することを特徴とする表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法。
  7. 前記第1のステップは、
    カチオン性官能基を有する芳香族性分子と第2の溶剤とを含むカチオン性官能基導入用溶液を調製するステップと、
    前記カチオン性官能基導入用溶液に対してカーボンナノ構造体を投入した後、超音波を照射するステップとを含むことを特徴とする請求項6に記載の表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法。
  8. 前記第1のステップは、前記カチオン性官能基を共有結合によって前記カーボンナノ構造体に導入することで、前記カチオン性官能基導入カーボンナノ構造体を作製することを特徴とする請求項6に記載の表面修飾カーボンナノ構造体の製造方法。
  9. 請求項6〜請求項8のいずれか1つに記載の方法によって製造された表面修飾カーボンナノ構造体を含むシート状の基体を作製するステップを含むことを特徴とする化学物質センシング素子の製造方法。
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