ところで、特許文献1に開示の冷凍装置のようにして、圧縮機の圧縮行程中の冷媒を冷却するためには、油分離器で分離した油を多量に圧縮機へ供給する必要がある。つまり、圧縮機へ供給する油の量が多ければ多いほど、油による冷媒の冷却効果が大きくなるので、これに伴って冷媒の圧縮に要する動力も小さくなる。しかしながら、このようにして圧縮機構へ供給される油の量が多くなると、圧縮機では、供給された油の昇圧に要する動力も増大してしまう。その結果、圧縮機では、油の昇圧に要した動力(エネルギー)を無駄に消費してしまうという問題が生ずる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機構の動力を効果的に削減できる冷凍装置を提供することである。
第1の発明は、圧縮機構(20)と室内熱交換器(13)と膨張機構(16)と室外熱交換器(12)とが接続されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備え、上記室内熱交換器(13)で冷媒を放熱させて上記室外熱交換器(12)で冷媒を蒸発させる暖房運転を少なくとも行う冷凍装置を対象とし、上記冷媒回路(11)には、上記圧縮機構(20)で圧縮した高圧冷媒中から油を分離する油分離手段(60)と、該油分離手段(60)で分離した油を冷却する冷却手段(73)が設けられて該冷却手段(73)で冷却した油を圧縮機構(20)へ供給する油供給回路(70)と、該油供給回路(70)を流れる油のエネルギーを回収する回収機構(40)とが設けられ、上記冷却手段(73)は、上記暖房運転中に、上記室外熱交換器(12)を流れる冷媒と上記油供給回路(70)を流れる油とを熱交換させる熱交換器で構成されていることを特徴とする。
第1の発明の冷媒回路(11)では、冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。例えば暖房運転時には、圧縮機構(20)で圧縮された高圧冷媒が室内熱交換器(13)で放熱する。これにより、室内空気が冷媒によって加熱される。室内熱交換器(13)で放熱した冷媒は、膨張機構(16)で減圧された後、室外熱交換器(12)で蒸発し、圧縮機構(20)に吸入される。
本発明の冷媒回路(11)では、圧縮機構(20)で圧縮された高圧冷媒中から、油分離手段(60)によって高圧の油が分離される。分離後の油は、冷却手段(73)によって冷却された後、圧縮機構(20)へ供給される。その結果、圧縮機構(20)の圧縮行程では、冷媒の温度上昇が抑制され、これにより、圧縮機構(20)での冷媒の圧縮に要する動力が低減される。
一方、上述のように、圧縮機構(20)の圧縮行程中の冷媒を油によって冷却しようとするためには、油供給回路(70)から圧縮機構(20)へ多量の油を供給する必要がある。このため、従来の圧縮機構では、油の昇圧に要する動力が増大してしまうという問題が生じていた。
そこで、本発明では、油供給回路(70)を流れる油のエネルギーを回収する回収機構(40)が設けられている。具体的には、油分離手段(60)によって高圧冷媒中から分離された油は、圧縮機構(20)において油を昇圧させるために使われた動力を、運動エネルギー、位置エネルギー、圧力エネルギー等のエネルギーとして保有している。回収機構(40)は、分離後の油の動力(即ち、油の持つエネルギー)を回収する。このため、油供給回路(70)を介して圧縮機構(20)へ多量の油が供給されて油の昇圧に要する動力が増大しても、この油の昇圧に要した動力を回収機構(40)で回収することができる。従って、本発明では、圧縮機構(20)へ多量の油を供給することで冷媒の圧縮に要する動力を低減でき、且つ多量の油の昇圧に要する動力が無駄となってしまうこともない。
また、第1の発明の冷却手段(73)は、暖房運転中において、膨張機構(16)を通過した低圧冷媒と油供給回路(70)を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器によって構成される。つまり、第1の発明の冷却手段(73)は、比較的低温の状態の冷媒と、比較的高温の油とを熱交換させる。その結果、油は冷媒によって冷却される一方、冷媒に油の熱が付与される。
第2の発明は、第1の発明において、上記冷却手段(73)は、上記暖房運転中に、上記室外熱交換器(12)を流れる冷媒と上記油供給回路(70)を流れる油とを熱交換させる熱交換器で構成されていることを特徴とする。
第2の発明の冷却手段(73)は、暖房運転中において、室外熱交換器(12)を流れる冷媒と油供給回路(70)を流れる油とを熱交換させる。その結果、油は冷媒によって冷却される一方、室外熱交換器(12)での冷媒の蒸発が促進される。
第3の発明は、第1の発明において、上記冷却手段(73)は、上記暖房運転中に、上記圧縮機構(20)の吸入管(22)を流れる冷媒と上記油供給回路(70)を流れる油とを熱交換させる熱交換器で構成されていることを特徴とする。
第3の発明の冷却手段(73)は、暖房運転中において、圧縮機構(20)の吸入管(22)を流れる冷媒と油供給回路(70)を流れる冷媒とを熱交換させる。その結果、油は冷媒に放熱して冷却される一方、冷媒が加熱される。これにより、圧縮機構(20)へ吸入される冷媒の過熱度が増大する。
第4の発明は、圧縮機構(20)と室内熱交換器(13)と膨張機構(16)と室外熱交換器(12)とが接続されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備え、上記室内熱交換器(13)で冷媒を放熱させて上記室外熱交換器(12)で冷媒を蒸発させる暖房運転を少なくとも行う冷凍装置を対象とし、上記冷媒回路(11)には、圧縮機構(20)で圧縮した高圧冷媒中から油を分離する油分離手段(60)と、該油分離手段(60)で分離した油を冷却する冷却手段(73)が設けられて該冷却手段(73)で冷却した油を圧縮機構(20)へ供給する油供給回路(70)と、該油供給回路(70)を流れる油のエネルギーを回収する回収機構(40)とが設けられ、上記室外熱交換器(12)の下側にはドレンパン(80)が設けられ、上記冷却手段(73)は、上記暖房運転中に、上記油供給回路(70)を流れる油の熱を上記ドレンパン(80)内に放出するように構成されていることを特徴とする。
第4の発明では、第1の発明と同様、油分離手段(60)で分離された油が、冷却手段(73)によって冷却された後、圧縮機構(20)へ供給される。その結果、圧縮機構(20)の圧縮行程では、冷媒の温度上昇が抑制され、これにより、圧縮機構(20)での冷媒の圧縮に要する動力が低減される。同時に、回収機構(40)は、油供給回路(70)を流れる油のエネルギーを回収する。このため、油供給回路(70)を介して圧縮機構(20)へ多量の油が供給されて油の昇圧に要する動力が増大しても、この油の昇圧に要した動力を回収機構(40)で回収することができる。従って、本発明では、圧縮機構(20)へ多量の油を供給することで冷媒の圧縮に要する動力を低減でき、且つ多量の油の昇圧に要する動力が無駄となってしまうこともない。
また、第4の発明の冷凍装置では、室外熱交換器(12)の下側にドレンパン(80)が設けられる。ドレンパン(80)には、暖房運転時において、室外熱交換器(12)の表面に発生したドレン水や霜(氷塊等も含む)が回収される。ここで、ドレンパン(80)内のドレン水が凍結して氷塊が成長していくと、ドレンパン(80)内からドレン水を適切に排出できなくなる虞がある。そこで、第4の発明の冷却手段(73)は、油供給回路(70)の油の熱をドレンパン(80)内に放出する。その結果、ドレンパン(80)内での氷塊の成長が抑制される一方、油供給回路(70)の油が冷却される。
第5の発明は、圧縮機構(20)と室内熱交換器(13)と膨張機構(16)と室外熱交換器(12)とが接続されて冷凍サイクルを行う冷媒回路(11)を備え、上記室内熱交換器(13)で冷媒を放熱させて上記室外熱交換器(12)で冷媒を蒸発させる暖房運転を少なくとも行う冷凍装置を対象とし、上記冷媒回路(11)には、上記圧縮機構(20)で圧縮した高圧冷媒中から油を分離する油分離手段(60)と、該油分離手段(60)で分離した油を冷却する冷却手段(73)が設けられて該冷却手段(73)で冷却した油を圧縮機構(20)へ供給する油供給回路(70)と、該油供給回路(70)を流れる油のエネルギーを回収する回収機構(40)とが設けられ、上記冷却手段(73)は、上記暖房運転中に、上記油供給回路(70)を流れる油の熱を蓄熱する蓄熱部材で構成され、該蓄熱部材に蓄熱した熱を利用して上記室外熱交換器(12)を除霜するデフロスト運転を行うことを特徴とする。
第5の発明では、第1の発明と同様、油分離手段(60)で分離された油が、冷却手段(73)によって冷却された後、圧縮機構(20)へ供給される。その結果、圧縮機構(20)の圧縮行程では、冷媒の温度上昇が抑制され、これにより、圧縮機構(20)での冷媒の圧縮に要する動力が低減される。同時に、回収機構(40)は、油供給回路(70)を流れる油のエネルギーを回収する。このため、油供給回路(70)を介して圧縮機構(20)へ多量の油が供給されて油の昇圧に要する動力が増大しても、この油の昇圧に要した動力を回収機構(40)で回収することができる。従って、本発明では、圧縮機構(20)へ多量の油を供給することで冷媒の圧縮に要する動力を低減でき、且つ多量の油の昇圧に要する動力が無駄となってしまうこともない。
また、第5の発明の冷却手段(73)は、暖房運転中において、油供給回路(70)の油の熱を蓄熱する蓄熱部材で構成される。つまり、第5の発明の冷却手段(73)は、油供給回路(70)の油から吸熱してこの熱を蓄えることで油を冷却する。そして、本発明では、冷却手段(73)に蓄熱された熱が室外熱交換器(12)の除霜に利用される。
第6の発明は、第1乃至第5のいずれか1つの発明において、室外熱交換器(12)で冷媒を放熱させて室内熱交換器(13)で冷媒を蒸発させる冷房運転と、上記暖房運転とを切り換えて行うように構成され、上記油供給回路(70)には、上記冷房運転中に、該油供給回路(70)を流れる油と室外空気とを熱交換させる空気熱交換器(72)が上記冷却手段として設けられていることを特徴とする。
第6の発明では、冷房運転時において、油分離手段(60)で分離された油が空気熱交換器(72)で冷却される。ここで、空気熱交換器(72)では、油供給回路(70)の油が室外空気へ放熱して冷却される。このため、油供給回路(70)の油の熱が、室内へ伝わってしまうことが回避される。
第7の発明は、第1乃至第6のいずれか1つの発明において、上記油供給回路(70)は、上記圧縮機構(20)の圧縮行程の少なくとも一部の期間で冷媒が等温圧縮されるように圧縮機構(20)へ油を供給することを特徴とする。
第7の発明の油供給回路(70)は、圧縮機構(20)の圧縮行程の少なくとも一部の期間で冷媒が等温圧縮されるように圧縮機構(20)へ油を供給する。その結果、圧縮機構(20)の圧縮行程では、冷媒の温度がほとんど上昇せず、これにより圧縮機構(20)での冷媒の圧縮に要する動力が低減される。一方、このように圧縮機構(20)の圧縮行程の少なくとも一部の期間で冷媒を等温圧縮させるためには、油供給回路(70)から圧縮機構(20)へ多量の油を供給する必要があり、これに伴い圧縮機構(20)での油の昇圧に要する動力が増大してしまう。しかしながら、本発明では、回収機構(40)が油供給回路(70)の油のエネルギーを回収するので、圧縮機構(20)で油の昇圧に要した動力が無駄となってしまうことはない。
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記冷媒回路(11)は、上記圧縮機構(20)によって冷媒を臨界圧力まで圧縮する冷凍サイクルを行うように構成されていることを特徴とする。
第8の発明の冷媒回路(11)では、高圧冷媒が臨界圧力以上となる冷凍サイクルが行われる。このような冷凍サイクル(以下、超臨界サイクルという)では、上述の圧縮機構(20)への低温油の導入による冷媒の圧縮動力の低減効果が大きくなる。
具体的には、上記超臨界サイクルでは、圧縮機構(20)の圧縮行程で冷媒を冷却しても、この冷媒が過熱蒸気のまま昇圧されて凝縮することがない。つまり、超臨界サイクルの圧縮行程では、冷媒を冷却しても、この冷媒が気液二相領域(凝縮領域)に至ることがない。従って、本発明では、一般的な冷凍サイクル(冷媒を臨界圧力よりも小さい範囲で圧縮する冷凍サイクル)と比較して、いわゆる等温圧縮による冷媒の圧縮動力の低減効果を向上できる。
第9の発明は、第1乃至第8のいずれか1つの発明において、上記油供給回路(70)は、上記圧縮機構(20)の圧縮行程の途中に油を供給するように構成されていることを特徴とする。
第9の発明では、冷却手段(73)で冷却されて比較的低温となった油が、圧縮機構(20)の圧縮行程の途中(即ち、冷媒が吸入圧力と吐出圧力との間の中間圧力となる箇所)へ供給される。ここで、圧縮機構(20)の圧縮行程の途中では、既に冷媒が圧縮(断熱圧縮)されて昇温されている。従って、この箇所に低温の油を導入することで、冷媒が油よりも低温になることを回避できる。これにより、その後の圧縮行程では、冷媒が油によって加熱されて過熱圧縮されることを回避できる。従って、このような過熱圧縮に起因して、冷媒の圧縮動力の低減効果が損なわれるのを回避できる。
第10の発明は、第1乃至第9のいずれか1つの発明において、上記回収機構(40)は、油によって回転駆動される可動部(50)と、該可動部(50)に連結する出力軸(42)とを有することを特徴とする。
第10の発明では、回収機構(40)に可動部(50)と出力軸(42)とが設けられる。回収機構(40)では、高圧冷媒中から分離された油によって可動部(50)が回転駆動される。その結果、可動部(50)と連結する出力軸(42)も回転する。このような出力軸(42)の回転動力は、例えば発電機や他の機器の駆動動力として利用される。
第11の発明は、第10の発明において、上記回収機構(40)の出力軸(42)と連結して駆動される発電機(45)を備えていることを特徴とする。
第11の発明では、回収機構(40)で回収された油のエネルギーが、出力軸(42)を介して発電機(45)の駆動動力として利用される。その結果、本発明では、発電機(45)で電力を発生することができ、この電力を他の要素機械等の動力源として利用できる。
本発明によれば、油供給回路(70)によって圧縮機構(20)へ油を供給して圧縮行程中の油を冷却することで、圧縮機構(20)での冷媒の圧縮に要する動力を低減すると共に、油供給回路(70)を流れる油のエネルギーを回収機構(40)によって回収している。これにより、本発明によれば、圧縮行程中の冷媒を油によって確実に冷却して冷媒の圧縮動力を低減でき、且つ油の昇圧に要する圧縮機構(20)の動力を回収することができる。つまり、圧縮機構(20)の冷媒を冷却するために油を積極的に圧縮機構(20)へ供給すると、圧縮機構(20)では、油の昇圧に要する動力も増大してしまうが、本発明では、このように昇圧された油のエネルギーを動力として回収しているので、冷凍装置全体としての動力を大幅に低減することが可能となる。
また、このように多量の油を圧縮機構(20)へ導入すると、圧縮機構(20)から吐出される冷媒の温度を低く抑えることができる。その結果、吐出冷媒の温度上昇に起因する冷凍装置のシステム異常や、圧縮機構(20)の損傷を未然に回避できる。また、圧縮機構(20)の各摺動部の温度上昇も抑えることができ、各摺動部の焼き付きを確実に防止できると共に油(冷凍機油)の劣化も防止できる。その結果、冷凍装置の信頼性を更に向上できる。
加えて、圧縮機構(20)へ油を多量に導入することで、圧縮機構(20)のモータの周囲の温度も低く抑えることができる。その結果、モータの効率を向上させて、圧縮機構(20)の入力を更に削減することができる。
また、第1の発明では、暖房運転時において、膨張機構(16)を通過した低圧冷媒によって、油供給回路(70)の油を冷却するようにしている。このため、本発明によれば、低圧冷媒に油の熱を付与することができる。その結果、低圧冷媒の蒸発温度を高くすることができ、暖房運転時のCOP(成績係数)の向上を図ることができる。特に、第2の発明では、室外熱交換器(12)での冷媒の蒸発効率を向上できる。また、室外熱交換器(12)を油によって加熱することで、室外熱交換器(12)の表面での霜の発生を防止できる。更に、第3の発明では、暖房運転時に圧縮機構(20)の吸入管(22)を流れる冷媒によって、油供給回路(70)の油を冷却するようにしている。このため、第3の発明によれば、圧縮機構(20)に吸入される冷媒の過熱度を増大させることができ、圧縮機構(20)でのいわゆる液圧縮を回避することができる。
また、第4の発明では、油供給回路(70)の油の熱を暖房運転時のドレンパン(80)内へ放出するようにしている。このため、本発明によれば、ドレンパン(80)内での氷塊の成長を防止してドレン水をドレンパン(80)から速やかに排出することができる。
更に、第5の発明では、油供給回路(70)の油から奪った熱を蓄えて、この熱を暖房運転時の室外熱交換器(12)の除霜(デフロスト)に利用している。このため、本発明によれば、デフロスト運転での省エネ性の向上、及びデフロスト時間の短縮化を図ることができる。
第6の発明では、冷房運転時において、室外空気によって油供給回路(70)の油を冷却するようにしている。このため、本発明によれば、油の熱が室内へ伝わってしまうことを回避しながら油を冷却でき、所望とする冷房能力を得ることができる。
第7の発明では、圧縮機構(20)の圧縮行程の少なくとも一部の期間で冷媒が等温圧縮されるように油を供給しているので、比較的多量の油を圧縮機構(20)へ供給する必要がある。しかしながら、本発明によれば、回収機構(40)が、このような多量の油からエネルギーを動力として回収しているので、等温圧縮によって冷媒の圧縮動力を効果的に低減でき、且つ回収機構(40)によって回収される動力(即ち、エネルギー)を増大させることができる。
第8の発明では、高圧冷媒を臨界圧力以上まで圧縮する、超臨界サイクルを行いながら、低温油を圧縮機構(20)へ導入するようにしている。これにより、圧縮機構(20)の圧縮行程では、冷媒を凝縮させることなく、等温変化に近い状態で圧縮でき、冷媒の圧縮動力を効果的に削減できる。
更に、第9の発明では、低温油を圧縮機構(20)の圧縮途中へ供給するようにしている。これにより、本発明では、圧縮機構(20)で冷媒を有る程度昇温させてから、昇温後の冷媒を油で冷却することができる。その結果、低温の油によって冷媒を確実に冷却することができ、等温圧縮による圧縮動力の低減効果を更に向上させることができる。
第10の発明では、回収機構(40)で回収した油のエネルギーによって出力軸(42)を回転させることができ、この回転動力を所定の動力源として利用できる。更に、第11の発明によれば、出力軸(42)の回転動力を利用して、発電機(45)で電力を発生させることができ、この電力を冷凍装置の各要素機械の動力源として適宜利用できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1ついて説明する。本発明に係る冷凍装置は、室内の空調を行う空気調和装置(10)を構成している。空気調和装置(10)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行うように構成されている。
図1に示すように、空気調和装置(10)は、冷媒回路(11)を備えている。冷媒回路(11)では、冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素(CO2)が充填されている。そして、冷媒回路(11)では、冷媒が臨界圧力以上まで圧縮される冷凍サイクル(いわゆる超臨界サイクル)が行われる。更に、冷媒回路(11)には、ポリアルキレングリコール(PAG)から成る油(冷凍機油)が混在している。
冷媒回路(11)には、圧縮機(20)と室外熱交換器(12)と膨張弁(16)と室内熱交換器(13)と第1四方切換弁(14)と油分離器(60)とが設けられている。
圧縮機(20)は、ロータリ式の容積型の圧縮機構を構成している。圧縮機(20)は、インバータの出力周波数を変更することで回転速度が可変となる、いわゆるインバータ式に構成されている。圧縮機(20)には、吸入管(22)と吐出管(23)とインジェクション管(24)とが設けられている。吸入管(22)は、圧縮機(20)の圧縮室の吸入側(低圧側)と繋がっている。吐出管(23)は、圧縮機(20)の圧縮室の吐出側(高圧側)と繋がっている。インジェクション管(24)は、圧縮機(20)の圧縮室の圧縮途中(低圧と高圧との間の中間圧側)に繋がっている。
室外熱交換器(12)は、室外に設置されている。室外熱交換器(12)は、冷媒と室外空気とを熱交換させる空気熱交換器を構成している。室内熱交換器(13)は、室内に設置されている。室内熱交換器(13)は、冷媒と室内空気とを熱交換させる空気熱交換器を構成している。室外熱交換器(12)及び室内熱交換器(13)は、例えばフィンアンドチューブ式に構成されている。膨張弁(16)は、開度が調節自在な電子膨張弁で構成されている。
第1四方切換弁(14)は、第1から第4までのポートを有している。第1四方切換弁(14)では、第1のポートが吐出管(23)と繋がり、第2のポートが吸入管(22)と繋がり、第3のポートが室外熱交換器(12)の一端と繋がり、第4のポートが室内熱交換器(13)の一端と繋がっている。第1四方切換弁(14)は、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する第1状態(図1に示す状態)と、第1のポートと第4のポートとが連通し且つ第2のポートと第3のポートとが連通する第2状態(図2に示す状態)とに切り換わるように構成されている。
油分離器(60)は、吐出管(23)の流出側に設けられている。油分離器(60)は、縦長の略円筒形状の密閉容器から成り、高圧冷媒中から油を分離する油分離手段を構成している。油分離器(60)には、胴部に吐出管(23)の端部が接続され、頂部に冷媒排出管(61)が接続され、底部に油排出管(62)が接続されている。油分離器(60)では、吐出管(23)から流入した冷媒中から油が分離される。なお、油分離器(60)での油の分離方法としては、旋回流を利用して油を遠心分離する方法や、冷媒と油との比重差を利用して油を沈降分離する方法等が挙げられる。油分離器(60)では、油が分離された後の冷媒が冷媒排出管(61)を流出し、分離後の油が油排出管(62)を流出する。
また、冷媒回路(11)には、油供給回路(70)が接続されている。油供給回路(70)は、油分離器(60)で分離した油を圧縮機(20)へ供給するための回路である。油供給回路(70)には、第2四方切換弁(71)と冷房側クーラ(72)と暖房側クーラ(73)と回収機構(40)とが設けられている。
第2四方切換弁(71)は、第1から第4までのポートを有している。第2四方切換弁(71)では、第1のポートが油分離器(60)の油排出管(62)と繋がり、第2のポートが圧縮機(20)の吸入管(22)と繋がり、第3のポートが冷房側クーラ(72)の一端と繋がり、第4のポートが暖房側クーラ(73)の一端と繋がっている。第2四方切換弁(71)は、第1のポートと第3のポートとが連通し且つ第2のポートと第4のポートとが連通する第1状態(図1に示す状態)と、第1のポートと第4のポートとが連通し且つ第2のポートと第3のポートとが連通する第2状態(図2に示す状態)とに切り換わるように構成されている。
冷房側クーラ(72)は、冷房運転時において、油供給回路(70)を流れる油を冷却する冷却手段を構成している。また、冷房側クーラ(72)は、室外に設置されており、内部を流れる油と室外空気とを熱交換させる空気熱交換器を構成している。冷房側クーラ(72)の他端には、第1油通路(74)が接続している。第1油通路(74)には、インジェクション管(24)側への油の流通のみを許容する第1逆止弁(75)が設けられている。
暖房側クーラ(73)は、暖房運転時において、油供給回路(70)を流れる油を冷却する冷却手段を構成している。実施形態1の暖房側クーラ(73)は、室外熱交換器(12)の伝熱管と接触するように配設された熱交換器で構成されている。つまり、実施形態1の暖房側クーラ(73)では、その内部を流れる油と室外熱交換器(12)を流れる冷媒(膨張弁(16)を通過した後の低圧冷媒)とが熱交換する。暖房側クーラ(73)の他端には、第2油通路(76)が接続している。第2油通路(76)には、インジェクション管(24)側への油の流通のみを許容する第2逆止弁(77)が設けられている。
回収機構(40)は、縦長の密閉状のケーシング(40a)の内部に収容されている(図3を参照)。回収機構(40)は、油の動力(即ち、油の持つエネルギー)を回収するものである。つまり、高圧冷媒と分離された油は、圧縮機(20)において油を昇圧させるために使われた動力を、運動エネルギー、位置エネルギー、圧力エネルギー等のエネルギーとして保有している。そこで、回収機構(40)は、このような油のエネルギーを動力として回収する。回収機構(40)は、本体部(41)と出力軸(42)とを有している。
回収機構(40)の本体部(41)は、いわゆる揺動ピストン型のロータリ式の流体機械で構成されている。また、出力軸(42)は、その一端が本体部(41)と連結し、その他端が発電機(45)と連結している。つまり、回収機構(40)では、油の持つエネルギーによって発電機(45)が駆動される。発電機(45)で発生した電力は、圧縮機(20)の動力に利用される。また、出力軸(42)には、主軸部(42a)と偏心部(42b)とが形成されている。偏心部(42b)は、主軸部(42a)に対して所定量だけ偏心し、且つ主軸部(42a)よりも大径に構成されている。
回収機構の本体部(41)には、その下部から上部へ向かって順に、フロントヘッド(46)、シリンダ(47)、及びリアヘッド(48)が設けられている。シリンダ(47)は、上下に出力軸(42)が貫通する筒状に形成されている。シリンダ(47)は、その下端がフロントヘッド(46)に閉塞され、その上端がリアヘッド(48)に閉塞されている。
図4にも示すように、シリンダ(47)の内部(シリンダ室)には、可動部としてのピストン(50)が収容されている。ピストン(50)は、円環状あるいは円筒状に形成されている。ピストン(50)の内部には、出力軸(42)の偏心部(42b)が係合して連結している。ピストン(50)は、その外周面がシリンダ(47)の内周面に、一方の端面がフロントヘッド(46)に、他方の端面がリアヘッド(48)にそれぞれ摺接している。シリンダ(47)内には、その内周面とピストン(50)の外周面との間に油室(49)が形成される。油室(49)は、上記油流入管(43)及び油流出管(44)が連通している。
ピストン(50)には、ブレード(51)が一体に設けられている。ブレード(51)は、ピストン(50)の半径方向へ延びる板状に形成されており、ピストン(50)の外周面から外側へ突出している。このブレード(51)はシリンダ(47)のブレード溝(52)に挿入されている。シリンダ(47)のブレード溝(52)は、シリンダ(47)を厚み方向へ貫通すると共に、シリンダ(47)の内周面に開口している。
シリンダ(47)には、一対のブッシュ(53)が設けられている。各ブッシュ(53)は、内側面が平面となって外側面が円弧面となるように形成された小片である。シリンダ(47)において、一対のブッシュ(53)は、ブッシュ孔(54)に挿入されてブレード(51)を挟み込んだ状態となる。ブッシュ(53)は、その内側面がブレード(51)と摺接し、その外側面がシリンダ(47)と摺動する。そして、ピストン(50)と一体のブレード(51)は、ブッシュ(53)を介してシリンダ(47)に支持され、シリンダ(47)に対して回動自在で且つ進退自在となっている。
シリンダ(47)内の油室(49)は、ピストン(50)及びブレード(51)によって仕切られている。そして、図4におけるブレード(51)の左側の部屋が油流入管(43)と連通し、右側の部屋が油流出管(44)と連通している。油流入管(43)の流入端には、上述した第1油通路(74)と第2油通路(76)とが接続している。また、油流出管(44)の流出端には、インジェクション管(24)が接続している。
以上のような構成の油供給回路(70)は、圧縮機(20)の圧縮行程中の冷媒を冷却するように、油分離器(60)で分離した油を供給する。また、油供給回路(70)は、圧縮機(20)の圧縮行程の少なくとも一部の期間で冷媒が等温圧縮されるように圧縮機(20)へ油を供給する。
−運転動作−
実施形態1に係る空気調和装置(10)の運転動作について説明する。空気調和装置(10)は、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)の設定に応じて、冷房運転と暖房運転とが可能となっている。
〈冷房運転〉
まず、空気調和装置(10)の冷房運転時の運転動作について説明する。冷房運転時には、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)が第1状態(図1に示す状態)に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。その結果、冷房運転時には、室外熱交換器(12)で冷媒を放熱させて室内熱交換器(13)で冷媒を蒸発させる冷凍サイクルが行われる。また、この冷凍サイクルは、高圧側の圧力が二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値となる、いわゆる超臨界サイクルとなる。
圧縮機(20)で圧縮された冷媒は吐出管(23)より吐出され、油分離器(60)内へ流入する。油分離器(60)の内部では、冷媒中から油が分離され、油が分離された後の冷媒が上部に溜まり、分離後の油が底部に溜まり込む。分離後の冷媒は、冷媒排出管(61)を流出し、室外熱交換器(12)を流れる。室外熱交換器(12)では、高圧冷媒が室外空気へ放熱する。室外熱交換器(12)を流出した冷媒は、膨張弁(16)で減圧された後、室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。その結果、室内空気が冷やされて冷房が行われる。室内熱交換器(13)を流出した冷媒は、吸入管(22)を通じて圧縮機(20)へ吸入されて再び圧縮される。
このような冷房運転時には、空気調和装置(10)の成績係数(COP)を改善するために、油インジェクション動作が行われる。具体的には、油分離器(60)で分離した油は、油排出管(62)を流出して第2四方切換弁(71)を通過した後、冷房側クーラ(72)を流れる。冷房側クーラ(72)では、油の熱が室外空気へ放出され、油が所定温度まで冷却される。冷却された油は、第1油通路(74)及び油流入管(43)を通じて、回収機構(40)の本体部(41)へ流入する。
回収機構(40)の本体部(41)では、油室(49)を流れる油によってピストン(50)が回転駆動され、ピストン(50)がシリンダ(47)内を、図3の(A)→(B)→(C)→(D)→(A)→…という順に偏心回転する。このピストン(50)の偏心回転に伴い、偏心部(42b)、更には主軸部(42a)が回転駆動される。その結果、この回転動力が出力軸(42)を介して発電機(45)の駆動動力として利用される。以上のように、回収機構(40)では、油のエネルギーが発電機(45)の駆動動力として回収され、発電機(45)で発電された電力が圧縮機(20)の動力として利用される。その結果、圧縮機(20)の動力が軽減される。
油室(49)でエネルギーが回収された油は、所定圧力まで減圧された後、油流出管(44)を通じて回収機構(40)の本体部(41)から流出する。流出後の油は、インジェクション管(24)を通じて圧縮機(20)へ供給される。これにより、圧縮機(20)では、圧縮室の圧縮行程の途中へ低温の油が供給され、油インジェクション動作が行われる。
この油インジェクション動作により、冷房運転時の圧縮機(20)では、冷媒がP−h線図上の等温線に近づくように圧縮され、いわゆる等温圧縮が行われる。この点について、図5(A)及び(B)を参照しながら説明する。ここで、図5(A)は、理想的な等温圧縮での冷凍サイクルを示すP−h線図であり、図5(B)は、図5(A)の冷凍サイクルに対応するP−V線図である。
冷房運転時の冷媒回路(11)では、圧縮機(20)の吸入側の冷媒が所定温度だけ過熱されるようなスーパーヒート制御が行われる。この吸入冷媒は、図5のA点より圧縮機(20)で圧縮され、所定量だけ昇圧/昇温されてからB点で油と混合する。圧縮機(20)で冷媒と油とが混合されると、低温の油によって冷媒が冷却される。つまり、圧縮行程では、B点以降において冷媒が油によって冷やされながら、更に圧縮される。その結果、冷媒は、図5(A)に示す等温線(例えば約40℃)に沿うように圧縮されて、目標の高圧圧力(C点)に至る。このように、A点→B点→C点のような挙動で冷媒を圧縮させることで、圧縮機(20)で冷媒を圧縮するのに要する動力が効果的に低減される。以上のように、本実施形態の圧縮機(20)では、低圧冷媒が圧縮されてから高圧冷媒に至るまでの圧縮行程(即ち、A点からC点に至るまでの行程)において、その一部のB点からC点の期間で冷媒が等温圧縮される。
ところで、例えば圧縮行程で一般的な断熱圧縮が行われると、冷媒は図5に示すA→B→C’のような挙動で圧縮される。その結果、この冷凍サイクルでは、冷媒の圧縮動力が大きくなってしまう。これに対し、本実施形態のように、油インジェクション動作により圧縮行程中に冷媒を冷却すると、一般的な断熱圧縮と比して、図5(B)のB点−C点−C’点で囲まれる面積ΔS分だけ圧縮機(20)での冷媒の圧縮動力を削減できる。
また、本実施形態のように、冷媒として二酸化炭素を用いて超臨界サイクルを行うもので、上記の油インジェクション動作を行うと、圧縮機(20)の圧縮動力の削減効果が向上する。この点について以下に説明する。
まず、本実施形態の冷媒回路(11)では、上述のように、二酸化炭素を臨界圧力(図5(A)のcP点に示す圧力)以上となるように、圧縮行程で冷媒を圧縮している。このため、圧縮行程ではB点→C点で冷媒を冷却しながら圧縮する際、冷媒が気液二相領域(凝縮領域)に至ることを回避できる。つまり、超臨界サイクルでは、油の冷熱が冷媒の凝縮に利用されることを回避できるので、冷媒を効果的に低温化することができ、冷媒の挙動を等温線に近づけることができる。
これに対し、例えば図6に示す、通常の蒸気圧縮式冷凍サイクル(ここでは、冷媒をR410Aとした場合)の圧縮行程では、冷媒が臨界圧力よりも小さい範囲で圧縮される。このため、この冷凍サイクルに上記油インジェクション動作を適用した場合、A1点で冷媒が圧縮されてB1点から冷媒が油で冷却される際に、冷媒が気液二相領域(凝縮領域)に至ってしまう。その結果、この冷凍サイクルでは、B1点→C1点の範囲でしか等温圧縮を行うことができない。
以上のような理由により、図6の冷凍サイクルに油インジェクション動作を適用した場合には、圧縮機の圧縮動力の削減量が図6(B)のB1点−C1点−C1’点で囲まれるΔS’となってしまう。これに対し、本実施形態の超臨界サイクルに油インジェクション動作を適用した場合には、圧縮機(20)の圧縮動力の削減量がΔSとなり、圧縮動力の削減効果が高いものとなる。
更に、本実施形態では、上述のように、回収機構(40)によって油の動力を回収している。これにより、油インジェクション動作による冷媒の圧縮動力の低減効果を図りつつ、更に油の昇圧に必要な圧縮動力も低減される。この点について図7を参照しながら説明する。
上記油インジェクション動作を行うと、圧縮機(20)では、冷媒の圧縮動力(図7のWr)に加えて、油の昇圧に要する動力(図7のWo)を費やすことになる。ここで、冷媒の圧縮動力Wrは、上述のように、油インジェクション動作による等温圧縮の効果により小さくなる。従って、冷媒の圧縮動力Wrは、圧縮機(20)へ供給される低温の油の量(油インジェクション量Goil)が多ければ多いほど、小さくなっていく。一方、このように油インジェクション量Goilが多くなると、圧縮機(20)では、油の昇圧に要する圧縮動力Woが増大していく。従って、圧縮機(20)では、その全体としての動力Wt(即ち、Wr+Wo)と、油インジェクション量Goilとの関係が、図7で示すような関係となり、油インジェクション量Goilが所定値(Gb)よりも大きくなると、かえって圧縮機(20)の全体の動力Wtが増大してしまう虞がある。
そこで、本実施形態では、油の昇圧に要する圧縮動力Woを回収するべく、回収機構(40)を用いるようにしている。具体的に、例えば油インジェクション量Goilを所定値より大きいGbとして油インジェクション動作を行った場合、油の昇圧に要する圧縮動力Woも増大するが、油動力回収型圧縮ユニット(C/O)では、昇圧後の油の動力が、圧縮機(20)の駆動動力として回収される。その結果、本実施形態では、油インジェクション量Goilを多量としても、この空気調和装置(10)で比較的高いCOPの改善率(等温圧縮による効果)を得ることができる。
即ち、例えば図8に示すように、回収機構(40)で油の動力を回収しないもの(図8の破線L-0)では、油インジェクション量が所定値Gbよりも多くなると、等温圧縮の効果に起因する冷媒の圧縮動力Wrの削減量よりも油の昇圧に要する動力Woの方が大きくなってしまい、COP改善率がかえって低くなってしまう。しかしながら、回収機構(40)で油の動力を回収するようにすると、油の昇圧に要する動力Woの増大に伴い、圧縮機(20)へ回収される油の動力が大きくなる。その結果、例えば回収機構(40)の動力回収率が50%のもの(図8の実線L-50)では、油インジェクション量を多くしても、高いCOP改善率を得ることができる。そして、このCOP改善率は、回収機構(40)の動力回収率が高ければ高いほど(例えば図8の実線L-80(油動力回収率80%)や実線L-100(油動力回収率100%)を参照)、特に油インジェクション量Goilが多い条件下で増大することになる。
〈暖房運転〉
次に、空気調和装置(10)の暖房運転時の運転動作について説明する。暖房運転時には、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)が第2状態(図2に示す状態)に設定され、冷媒回路(11)で冷媒が循環して蒸気圧縮冷凍サイクルが行われる。その結果、暖房運転時には、室内熱交換器(13)で冷媒を放熱させて室外熱交換器(12)で冷媒を蒸発させる冷凍サイクルが行われる。また、この冷凍サイクルは、高圧側の圧力が二酸化炭素の臨界圧力よりも高い値となる、いわゆる超臨界サイクルとなる。
圧縮機(20)で圧縮された冷媒は吐出管(23)より吐出され、油分離器(60)内へ流入する。油分離器(60)の内部では、冷媒中から油が分離され、油が分離された後の冷媒が上部に溜まり、分離後の油が底部に溜まり込む。分離後の冷媒は、冷媒排出管(61)を流出し、室内熱交換器(13)を流れる。室内熱交換器(13)では、高圧冷媒が室外空気へ放熱する。その結果、室内空気が加熱されて暖房が行われる。室内熱交換器(13)を流出した冷媒は、膨張弁(16)で減圧された後、室外熱交換器(12)を流れる。室外熱交換器(12)では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。
また、室外熱交換器(12)の近傍では、暖房側クーラ(73)を油が流通している(詳細は後述する)。このため、室外熱交換器(12)では、その内部を流れる冷媒が暖房側クーラ(73)を流れる油から吸熱する。その結果、暖房運転時には、室外熱交換器(12)での冷媒の蒸発が促進される。室外熱交換器(12)を流出した冷媒は、吸入管(22)を通じて圧縮機(20)へ吸入されて再び圧縮される。
このような暖房運転時にも、空気調和装置(10)の成績係数(COP)を改善するために、油インジェクション動作が行われる。具体的には、油分離器(60)で分離した油は、油排出管(62)を流出して第2四方切換弁(71)を通過した後、暖房側クーラ(73)を流れる。暖房側クーラ(73)では、室外空気と、室外熱交換器(12)内の冷媒との双方によって油が冷却される。冷却された油は、第2油通路(76)及び油流入管(43)を通じて、回収機構(40)の本体部(41)へ流入する。
回収機構(40)では、上記の冷房運転と同様にして、油のエネルギーが発電機(45)の電力、ひいては圧縮機(20)の動力として回収される。回収機構(40)でエネルギーが回収されて減圧した油は、圧縮機(20)のインジェクション管(24)を通じて圧縮室へ供給される。圧縮機(20)では、冷媒が油によって冷却されることで、冷媒が等温線に近づくように圧縮される。その結果、冷媒の圧縮に要する動力が軽減される。以上のように、暖房運転においても、油インジェクション量を比較的多めに設定することで、等温圧縮の効果によって冷媒の圧縮動力が低減され、且つ昇圧後の油から回収される油のエネルギーも多くなる。
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、冷房運転や暖房運転において、油分離器(60)で高圧冷媒中から油を分離し、この油のエネルギーを回収機構(40)で回収して圧縮機(20)の駆動動力として利用するようにしている。このため、圧縮機(20)で油の昇圧に要した動力を回収機構(40)で回収でき、空気調和装置(10)の省エネルギー性を向上できる。
また、上記実施形態1では、油分離器(60)で分離した油を冷却し、低温とした油を圧縮機(20)へ供給している。このため、圧縮機(20)では、図5に示すような等温圧縮の挙動(即ち、A点→B点→C点)に近づくように、冷媒を圧縮することができ、冷媒の圧縮動力を大幅に削減することができる。しかも、油インジェクション量Goilを多くすることで、冷媒の冷却効果が向上して冷媒の圧縮動力が更に低減される一方、回収機構(40)で回収される油のエネルギーも増大する。その結果、空気調和装置(10)のCOP改善率を大幅に向上でき、省エネ性を更に向上できる。なお、ここで、空気調和装置(10)のCOP改善率を効果的に向上させるための、油インジェクション量(質量流量)は、圧縮機(20)への吸入冷媒の量(質量流量)の約0.5倍以上約6.0倍以下の範囲であることが好ましい。
加えて、このように油インジェクション量を多くして、圧縮機(20)へ低温の油を積極的に導入することで以下のような副次的な効果も得られる。具体的には、まず、圧縮機(20)の吐出冷媒の昇温を防止でき、空気調和装置(10)のシステム異常や、圧縮機(20)の機械的な損傷を回避できる。また、圧縮機(20)では、ピストンや軸受け等の摺動部の潤滑が充分図られ、且つ摺動部の放熱効果も向上する。その結果、これらの摺動部での機械損失の増大や焼き付きを防止できる。更に、圧縮機(20)では、油も比較的低い温度に抑えられるために、油の温度が過剰となって劣化することも回避できる。加えて、圧縮機(20)では、その周囲温度も比較的低温に抑えられる。その結果、圧縮機(20)のモータの周囲温度も低くでき、モータ効率の低下を防止することができる。
また、上記実施形態1では、高圧冷媒を臨界圧力以上まで圧縮する、超臨界サイクルを行いながら、低温油を圧縮機(20)へ導入するようにしている。これにより、圧縮機(20)の圧縮行程では、冷媒を放熱させることなく等温線に近づくように圧縮でき(例えば図5参照)、通常の冷凍サイクル(例えば図6参照)と比較して、冷媒の圧縮動力を効果的に削減できる。
更に、上記実施形態1では、低温とした油を圧縮機(20)の圧縮途中へ供給するようにしている。これにより、圧縮機(20)で冷媒をある程度昇温させてから、昇温後の冷媒を油で冷却することができる。このため、油と混合する冷媒が、油よりも低い温度になるのを回避でき、冷媒が油によって加熱されてしまうのを防止できる。その結果、低温油によって冷媒を確実に冷却することができ、等温圧縮による圧縮動力の低減効果を更に向上させることができる。
また、上記実施形態1では、暖房運転時に暖房側クーラ(73)において、室外熱交換器(12)を流れる冷媒によって油供給回路(70)の油を冷却するようにしている。このため、暖房運転時の室外熱交換器(12)での冷媒の蒸発効率を向上でき、COP(成績係数)の向上を図ることができる。また、室外熱交換器(12)を油によって加熱することで、室外熱交換器(12)の表面での霜の発生を防止できる。
また、上記実施形態1では、冷房運転時に冷房側クーラ(72)において、室外空気によって油供給回路(70)の油を冷却するようにしている。このため、油の熱が室内へ伝わってしまうことを回避しながら油を冷却でき、所望とする冷房能力を得ることができる。
《発明の実施形態2》
実施形態2の空気調和装置(10)は、上記実施形態1と油供給回路(70)の構成が異なるものである。具体的には、図9に示すように、実施形態2の油供給回路(70)では、暖房側クーラ(73)が圧縮機(20)の吸入管(22)と接触するように配設されている。つまり、実施形態2の暖房側クーラ(73)は、その内部を流れる油と、圧縮機(20)の吸入管(22)を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器を構成している。また、暖房側クーラ(73)は、室外に設置されている。
実施形態2の空気調和装置(10)の冷房運転時には、上記実施形態1と同様、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)が第1状態(図9に示す状態)に設定される。これにより、冷媒回路(11)では、室外熱交換器(12)で冷媒が放熱して室内熱交換器(13)で冷媒が蒸発する冷凍サイクルが行われ、室内の冷房が行われる。
また、油供給回路(70)では、油分離器(60)で分離した油が冷房側クーラ(72)で冷却された後、回収機構(40)へ流入する。回収機構(40)では、油のエネルギーが圧縮機(20)の動力として回収される。また、回収機構(40)を流出した油は、上記実施形態1と同様、圧縮機(20)の圧縮途中の冷媒の冷却に利用される。
実施形態2の空気調和装置(10)の暖房運転時には、上記実施形態1と同様、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)が第2状態(図10に示す状態)に設定される。これにより、冷媒回路(11)では、室内熱交換器(13)で冷媒が放熱して室外熱交換器(12)で冷媒が蒸発する冷凍サイクルが行われ、室内の暖房が行われる。
また、油供給回路(70)では、油分離器(60)で分離した油が暖房側クーラ(73)を流れる。暖房側クーラ(73)では、その内部を流れる油が、吸入管(22)を流れる冷媒によって冷却される。このため、吸入管(22)を流れる冷媒は油から吸熱する。その結果、圧縮機(20)へ吸入される冷媒の過熱度が大きくなり、圧縮機(20)へ湿り気味の冷媒が吸入されてしまうことが回避される。
暖房側クーラ(73)で冷却された油は、回収機構(40)へ流入する。回収機構(40)では、油のエネルギーが圧縮機(20)の動力として回収される。また、回収機構(40)を流出した油は、上記実施形態1と同様、圧縮機(20)の圧縮途中の冷媒の冷却に利用される。
−実施形態2の効果−
以上のように、実施形態2においても、油インジェクション量を比較的多めに設定することで、等温圧縮の効果により、冷媒の圧縮動力が低減され、且つ昇圧後の油から回収される油の動力(即ち、油のエネルギー)も多くなる。その結果、空気調和装置(10)のCOPが効果的に向上する。
また、実施形態2では、暖房運転時に暖房側クーラ(73)において、圧縮機(20)の吸入管(22)を流れる冷媒によって油供給回路(70)の油を冷却するようにしている。このため、圧縮機(20)に吸入される冷媒の過熱度を増大させることができ、圧縮機(20)でのいわゆる液圧縮を回避することができる。
《発明の実施形態3》
実施形態3の空気調和装置(10)は、上記実施形態1や2と油供給回路(70)の構成が異なる。具体的には、図11に示すように、実施形態3の油供給回路(70)では、暖房側クーラ(73)が室外熱交換器(12)の下側近傍に配置されている。実施形態3では、室外熱交換器(12)の下側にドレンパン(80)が配設されている。ドレンパン(80)は、暖房運転時に室外熱交換器(12)の表面に付着した霜を回収する容器を構成している。暖房側クーラ(73)は、このドレンパン(80)の内部に配設されている。つまり、暖房側クーラ(73)は、ドレンパン(80)に回収された霜と、油供給回路(70)を流れる油とを熱交換させる熱交換器を構成している。つまり、暖房側クーラ(73)は、ドレンパン(80)内に油の熱を放出するように構成されている。また、暖房側クーラ(73)は、室外に設置されている。
実施形態3の空気調和装置(10)の冷房運転時には、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)が第1状態(図11に示す状態)に設定され、上記実施形態1や2と同様の動作が行われる(詳細な説明は省略する)。
実施形態3の空気調和装置(10)の暖房運転時には、上記実施形態1と同様、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)が第2状態(図12に示す状態)に設定される。これにより、冷媒回路(11)では、室内熱交換器(13)で冷媒が放熱して室外熱交換器(12)で冷媒が蒸発する冷凍サイクルが行われ、室内の暖房が行われる。
また、油供給回路(70)では、油分離器(60)で分離した油が暖房側クーラ(73)を流れる。ここで、暖房運転時には、室外熱交換器(12)から落下したドレン水や霜等が、ドレンパン(80)内に回収されている。このため、暖房側クーラ(73)では、その内部を流れる油が、ドレンパン(80)内のドレン水や霜によって冷却される。また、ドレンパン(80)では、内部に溜まった霜(氷塊等)が油によって加熱されて融解する。これにより、ドレンパン(80)内での氷塊の成長が抑制される。
暖房側クーラ(73)で冷却された油は、回収機構(40)へ流入する。回収機構(40)では、油のエネルギーが圧縮機(20)の動力として回収される。また、回収機構(40)を流出した油は、上記実施形態1や2と同様、圧縮機(20)の圧縮途中の冷媒の冷却に利用される。
−実施形態3の効果−
以上のように、実施形態3においても、油インジェクション量を比較的多めに設定することで、等温圧縮の効果により、冷媒の圧縮動力が低減され、且つ昇圧後の油から回収される油の動力(即ち、油のエネルギー)も多くなる。その結果、空気調和装置(10)のCOPが効果的に向上する。
また、実施形態3では、暖房運転時に暖房側クーラ(73)において、ドレンパン(80)に回収された霜によって、油供給回路(70)の油を冷却するようにしている。このため、ドレンパン(80)内での霜(氷塊)の成長を防止してドレン水をドレンパン(80)から速やかに排出することができる。
《発明の実施形態4》
実施形態4の空気調和装置(10)は、上記実施形態1〜3と冷媒回路(11)の構成が異なるものである。具体的には、実施形態4の冷媒回路(11)では、圧縮機(20)の吸入側に切換流路(90)が設けられている。
切換流路(90)は、第1分岐流路(91)と第2分岐流路(92)と三方切換弁(93)とで構成されている。第1分岐流路(91)と第2分岐流路(92)とは、圧縮機(20)の吸入管(22)から2手に分岐するように配設されている。三方切換弁(93)は、第1から第3までのポートを有している。三方切換弁(93)では、第1のポートが第1四方切換弁(14)の第2ポートと繋がり、第2のポートが第2分岐流路(92)を介して吸入管(22)と繋がり、第3のポートが第1分岐流路(91)を介して吸入管(22)と繋がっている。三方切換弁(93)は、第1のポートと第3のポートとが連通する第1状態(図13に示す状態)と、第1のポートと第2のポートとが連通する第2状態(図14に示す状態)とに切り換わるように構成されている。
また、実施形態4では、暖房側クーラ(73)が、第2分岐流路(92)に跨るように配設されている。また、実施形態4の暖房側クーラ(73)は、いわゆる蓄熱部材で構成されている。つまり、暖房側クーラ(73)には、第2分岐流路(92)を流れる冷媒の熱が吸収されて蓄熱される。実施形態4の空気調和装置(10)では、暖房側クーラ(73)に蓄熱された熱を利用して室外熱交換器(12)を除霜するデフロスト運転が行われる(詳細は後述する)。
実施形態4の空気調和装置(10)の冷房運転時には、図13に示すように、第1四方切換弁(14)、第2四方切換弁(71)、及び三方切換弁(93)が第1状態に設定される。これにより、冷媒回路(11)では、室外熱交換器(12)で冷媒が放熱して室内熱交換器(13)で冷媒が蒸発する冷凍サイクルが行われ、室内の冷房が行われる。また、室内熱交換器(13)で蒸発した冷媒は、第1分岐流路(91)を流通してから圧縮機(20)に吸入される。
実施形態4の空気調和装置(10)の暖房運転時には、図14に示すように、第1四方切換弁(14)、第2四方切換弁(71)、及び三方切換弁(93)が第2状態に設定される。これにより、冷媒回路(11)では、室内熱交換器(13)で冷媒が放熱して室外熱交換器(12)で冷媒が蒸発する冷凍サイクルが行われ、室内の暖房が行われる。また、室外熱交換器(12)で蒸発した冷媒は、第2分岐流路(92)を流通してから圧縮機(20)に吸入される。
また、油供給回路(70)では、油分離器(60)で分離した油が暖房側クーラ(73)を流れる。暖房側クーラ(73)では、油の熱が蓄熱部材に吸収される。その結果、暖房側クーラ(73)では、油が冷却される。また、暖房側クーラ(73)に蓄熱された熱は、第2分岐流路(92)を流れる冷媒に伝達する。これにより、第2分岐流路(92)を流れる冷媒が加熱され、この冷媒の過熱度が大きくなる。従って、圧縮機(20)へ湿り気味の冷媒が吸入されてしまうことが回避される。
暖房側クーラ(73)で冷却された油は、回収機構(40)へ流入する。回収機構(40)では、油のエネルギーが圧縮機(20)の動力として回収される。また、回収機構(40)を流出した油は、上記実施形態1〜3と同様、圧縮機(20)の圧縮途中の冷媒の冷却に利用される。
また、実施形態4の空気調和装置(10)では、暖房運転時において、室外熱交換器(12)の表面に発生した霜を融かすためのデフロスト運転が実行される。このデフロスト運転は、例えば上記の暖房運転が所定時間継続して行われると実行される。
デフロスト運転では、図15に示すように、第1四方切換弁(14)及び第2四方切換弁(71)が第1状態に設定され、三方切換弁(93)が第2状態に設定される。冷媒回路(11)では、暖房運転とは冷媒の循環方向が逆転する、いわゆる逆サイクルデフロストが行われる。このデフロスト運転では、圧縮機(20)で圧縮された高温/高圧の冷媒が、室外熱交換器(12)へ供給される。このため、室外熱交換器(12)は、冷媒によって内部から加熱される。その結果、室外熱交換器(12)の表面に付着した霜が融解する。室外熱交換器(12)で放熱した冷媒は、室内熱交換器(13)で蒸発した後、第2分岐流路(92)を流れる。ここで、暖房側クーラ(73)には、暖房運転時に吸収された油の熱が蓄熱材に蓄えられている。このため、暖房側クーラ(73)に蓄えられた熱が、第2分岐流路(92)を流れる冷媒に付与され、この冷媒が加熱される。加熱された冷媒は、圧縮機(20)に吸入された後、室外熱交換器(12)へ供給されて除霜に利用される。以上のように、デフロスト運転では、暖房側クーラ(73)に蓄えられた熱が、室外熱交換器(12)の除霜に利用される。このため、デフロスト運転時における室外熱交換器(12)の除霜能力が向上し、デフロスト運転の短縮化、省エネ性の向上が図られる。
−実施形態4の効果−
以上のように、実施形態4においても、油インジェクション量を比較的多めに設定することで、等温圧縮の効果により、冷媒の圧縮動力が低減され、且つ昇圧後の油から回収される油の動力(即ち、油のエネルギー)も多くなる。その結果、空気調和装置(10)のCOPが効果的に向上する。
また、実施形態4では、暖房運転時に暖房側クーラ(73)において、油供給回路(70)の油から奪った熱を蓄え、この熱を室外熱交換器(12)の除霜(デフロスト)に利用している。このため、デフロスト運転での省エネ性の向上、及びデフロスト時間の短縮化を図ることができる。
《その他の実施形態》
上記の各実施形態については以下のような構成としても良い。
上記各実施形態では、圧縮行程中において、冷媒が等温線に沿って圧縮されるように、冷媒を油によって冷却している(例えば図5を参照)。しかしながら、この例はあくまで理想的な等温圧縮を例示したものに過ぎない。従って、例えば図16に示すように、本発明の等温圧縮は、油によって冷却される冷媒が等温線に対して少しずつ離れてしまうような挙動で圧縮されるものであっても良い。つまり、本発明の「等温圧縮」とは、圧縮行程中の冷媒が油によって冷却されることで、圧縮行程において、一般的な断熱圧縮と比較して冷媒が等温線に近づくように圧縮されること(つまり、いわゆる擬似的な等温圧縮)を含むものである。
また、上記各実施形態において、油分離器(60)で冷媒中から分離した油を圧縮機(20)の圧縮途中ではなく、圧縮機(20)の吸入側(低圧側)へ供給するようにしても良い。即ち、上記各実施形態の油供給回路(70)は、分離後の油を圧縮機(20)の吸入側(低圧側)へ供給するように構成しても良い。これにより、圧縮機(20)で圧縮された冷媒を同時に冷却することができ、上述のような等温圧縮の効果を得ることができる。また、上述した各実施形態において、冷却手段で冷却した油を回収機構(40)へ供給するのではなく、回収機構(40)でエネルギーを回収した油を冷却手段で冷却しても良い。
また、上記各実施形態では、回収機構(40)の本体部(41)に出力軸(42)を連結し、この出力軸(42)を回転させて発電機(45)を回転駆動させるようにしている。しかしながら、出力軸(42)に回転式の圧縮機構(20)を連結し、油のエネルギーを利用して圧縮機構(20)を回転駆動するようにしても良い。
また、上記各実施形態の膨張弁(16)に換えて、膨張室内で膨張する冷媒によってピストン等の可動部を回転させ、該可動部に連結する出力軸を回転駆動する膨張機構を採用しても良い。この場合、上記圧縮機構(20)と回収機構(40)と膨張機構とを出力軸で連結し、回収機構(40)で回収したエネルギーと、膨張機構で回収したエネルギー(膨張する冷媒のエネルギー)との双方によって、圧縮機構(20)を回転駆動させることもできる。
また、上述した各実施形態において、冷媒回路(11)に充填される冷媒として、他の冷媒を用いるようにしても良い。また、冷媒回路(11)の冷媒中に混在する油(冷凍機油)として他の油を用いるようにしても良い。
また、上述した各実施形態では、室内の空調を行う空気調和装置(10)について本発明を適用しているが、例えば冷蔵庫や冷凍庫内を冷却する冷凍装置や、他の冷凍装置に本発明を適用しても良い。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。