JP2010029990A - 負熱膨張率材料および該負熱膨張率材料を含む複合材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来に比してさらに絶対値の高い負熱膨張率をもつ低熱膨張率材料を提供する。
【解決手段】本発明に係る負熱膨張率材料は、磁性および強誘電性を有するナノ粒子からなる負熱膨張率材料であって、上記ナノ粒子は、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、負熱膨張率を有するものである。上記負熱膨張率材料は、従来の負熱膨張率材料に比して非常に絶対値が大きな負熱膨張率を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、負熱膨張率材料および該負熱膨張率材料を含む複合材料に関するものである。
負熱膨張率、低熱膨張率または零熱膨張率を持つ材料は、他の材料と共に製品を構成することによって、温度変化による製品の膨張率の変化を抑制し、製品の品質安定性を実現することができる。このため、従来、負熱膨張率、零熱膨張率または低熱膨張率を持つ材料は、構造材料、薄膜基板、耐熱被覆剤、ガラス、セラミックス、コンクリート等の複合材料に広く利用されている。
一般的に多くの固体は加熱されると熱振動の振幅によって膨張する。特に、非調和格子の振動から生じる固体の熱膨張は、電子吸引力よりもパウリの斥力の方が速く増加するため、距離に応じた結合ポテンシャルの変化が非対称に現れる。
しかしながら、この熱膨張を打ち消すように、インバー効果が生じるため、磁気転移温度以下における磁気転移合金では熱膨張の効果は妨げられることとなる。したがって、ある種の化合物では熱膨張が負の値をとることができる。
高い負熱膨張率を有する物質としては、例えば、ZrWがよく知られている。該物質は、磁気転移温度以下の温度域において、10−5/℃程度の体積熱膨張率βを示すことが確認されている(非特許文献1〜3)。
また、ZrWと同様に高い負熱膨張率を有する化合物としては、ZnCd1−X(CN)で示される構造が提案されている(非特許文献4および5)。
また、Ag[Co(CN)]に係る金属−シアン構造−金属からなる結合についての報告がなされている(非特許文献6)。上記結合によれば、可撓性、および、巨大な正または負の熱膨張率を生じさせることが可能である。このような正または負の熱膨張率が生じる効果を利用し、複合材料を設計できることが知られている(非特許文献7)。
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しかしながら、近年、さらなる材料開発のため、さらに負熱膨張率の高い材料を開発することが求められているが、適切な材料は未だ見出されていない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、さらに高い負熱膨張率(絶対値の大きな負熱膨張率)をもつ低熱膨張率材料を提供することにある。
本発明は、発明者らが、磁性および強誘電性を有するナノ粒子を負熱膨張率材料に応用できることを見出し、完成されたものである。なお、本明細書において、ナノ粒子とは、対象となる化合物の平均粒子径がナノオーダーの粒子であることを示す。具体的には、化合物の1nm以上、1000nm未満である。また、マイクロ粒子とは、対象となる化合物の平均粒子径がマイクロオーダーの粒子であることを示す。具体的には、化合物の1μm以上、1000μm未満である。
ナノ粒子の熱膨張に関する研究は既になされており、大きな正の熱膨張(α=1.2×10−4−1)は、磁性を有するFeのナノ粒子について観測されている。しかしながら、Feのナノ粒子について負の熱膨張(負熱膨張)は報告されていない(Nikolaev, V.I. & Shipilin, A.M. On the Thermal Expansion of Nanoparticles. Phys Solid State 42. 112-113 (2000). を参照)。
しかしながら、本発明者らは数ある化合物の中でもCuOに注目し、その物性を精査した。その結果、本発明者らは、低温状況下におけるCuOのナノ粒子について、負熱膨張が発現することを発見した。図1は、CuOのナノ結晶の各温度におけるX線回折ピークを示すグラフである。同図は加工していない生データを示すものであり、CuOのナノ結晶を冷却していくにつれ、回折ピーク角度の減少を通じて負熱膨張が直接的に観察されたことが分かる。具体的には、CuOのナノ粒子(ナノ結晶)について、磁気転移以下の200K程度において負熱膨張が観測された。驚くべきことに、この負熱膨張率は−10−4−1の負熱膨張率をもつZrW(負熱膨張率β=−10−5−5)よりも1桁大きい。
図2は、280KにおけるCuOのナノ粒子に対し、リートベルト精密化を行った結果を示すグラフである。上記結果からCuOのナノ粒子の格子定数が算出される。
なお、高温において、CuOのナノ粒子はCuOのマイクロ粒子と同様の熱膨張率を示す。このため、CuOのナノ粒子に係る負熱膨張は、単にその格子が軟化したことを起因とする単純な現象ではない。また、同様の事象はMnFの磁気ナノ粒子においても観測された。
上述のように負熱膨張が観測されたが、負熱膨張は反強磁性を有する物質であってもNiOでは生じない。図3は、NiOのナノ粒子(4nm以下)に対する格子定数aの温度依存性を示すグラフである。同図において、縦軸はNiOのナノ粒子の格子定数a(Å)を、横軸は測定温度(K)を示している。また、同図の上方の○でプロットされた点グラフは、NiOのナノ粒子に関するものであり、同図の下方の破線で示された点グラフは、NiOのバルク粒子に関するものである。上記バルク粒子の平均粒子径は約10μmである。また、後述するバルク粒子についても同様のサイズである。同図に示すように、バルクのNiOと同様に、ナノ結晶のNiOは正の熱膨張率を示すことが分かる。
本発明者らは、これらの結果等を鋭意検討した結果、以下のナノ粒子について、磁気転移温度以下における負熱膨張が示されることを見出した。さらに、発明者らはこの事実に基づき負熱膨張率材料および該負熱膨張率材料を含む複合材料を創作した。
本発明の低熱膨張率材料は、上記課題を解決するために、磁性および強誘電性を有するナノ粒子からなる低熱膨張率材料であって、上記ナノ粒子は、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、負熱膨張率を有することを特徴としている。
上記の発明によれば、上記ナノ粒子が磁性および強誘電性を有しているため、磁気転移温度以下の温度において、非常に大きな負熱膨張率を有することができる。このため、高い負熱膨張率をもつ負熱膨張率材料を提供できる。
また、本発明の低熱膨張率材料は、上記課題を解決するために、磁性および強誘電性を有するナノ粒子からなる負熱膨張率材料であって、上記ナノ粒子は、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、誘電率の増大を生じることを特徴としている。
上記の発明によれば、上記ナノ粒子が磁性および強誘電性を有しているため、磁気転移温度以下の温度において、誘電率の増大を生じることができる。上記の負熱膨張率材料は、従来よりも高い負熱膨張率を有し、誘電率が増大されているため、高誘電率材料として好ましく用いることができる。
また、本発明に係る負熱膨張率材料は、上記ナノ粒子が、CuO、MnF、Cr、BiMnO、BiFeO、CoCr、CoCu、LuCr、LuCo、BiMnO、LaMnO、BiMn、LaMn、BiFeO、LuFe、(Ba,Sr)(Zn,Mg)Fe1222、BaMgF、BaMnF、BaFeF、BaCoF、BaNiF、BaZnF、NiおよびCoからなる群から選ばれる少なくとも1種の物質であることが好ましい。
上記の物質は入手が容易であり、本発明に係る負熱膨張率の材料をより簡便に提供することが可能である。
また、本発明に係る複合材料は、上記負熱膨張率材料を含むものである。
上記複合材料は、本発明に係る負熱膨張率材料を含んでいるため、他の化合物との配合比率によって、負熱膨張率、零熱膨張率または低熱膨張率を実現することが可能である。
本発明の負熱膨張率材料は、以上のように、磁性および強誘電性を有するナノ粒子を含む負熱膨張率材料であって、上記ナノ粒子は、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、負熱膨張率を有するものである。
それゆえ、上記ナノ粒子が磁性および強誘電性を有しているため、磁気転移温度以下の温度において、非常に大きな負熱膨張率を有することができる。このため、高い負熱膨張率をもつ負熱膨張率材料を提供できるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について図4ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本発明に係る負熱膨張率材料は、磁性および強誘電性を有するナノ粒子を含むものであり、上記ナノ粒子は、ナノ粒子の磁気転移温度以下において負熱膨張率を有する。また、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、誘電率の増大を生じる。ナノ粒子の粒子サイズについては上述した通りである。
上記ナノ粒子の材料としては、磁性および強誘電体を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、具体的には、単一金属化合物である:CuO、MnF、Cr、スピネル構造を有する金属化合物である:CoCr、CoCu、LuCr、LuCo、マンガン酸化物である:BiMnO、LaMnO、BiMn、LaMn、鉄酸化物である:BiFeO、LuFe、ヘキサフェライトである(Ba,Sr)(Zn,Mg)Fe1222、フッ化物である:BaMgF、BaMnF、BaFeF、BaCoF、BaNiF、BaZnF、バナジウム酸化物である:NiおよびCoからなる群から選ばれる少なくとも1種の物質を用いることができる。上記の物質は入手が容易であり、本発明に係る負熱膨張率の材料をより簡便に提供することが可能である。
上記の物質の磁気転移温度Tは同定が困難な場合があり、以下の数値は前後する場合もあるが、具体的な数値を以下に示すと、CuOがT≦230K、MnFがT<70K、CrがT<320K、スピネル構造を有する金属化合物である:CoCr、CoCu、LuCrおよびLuCoがT≦300K、マンガン酸化物である:BiMnO、LaMnO、BiMnおよびLaMnがT≦900K、鉄酸化物である:BiFeOがT≦1100K、LuFeがT≦350K、ヘキサフェライトである(Ba,Sr)(Zn,Mg)Fe1222がT≦320K、フッ化物である:BaMgF、BaMnF、BaFeF、BaCoF、BaNiFおよびBaZnFがT≦1300K、バナジウム酸化物である:NiおよびCoがT<10Kである。
これらの物質は2種以上を併用してもよい。この中でもより高い磁気転移温度を有する材料を用いることが好ましく、600K以上の磁気転移温度を有するBiMnO、LaMnO、BiMn、LaMnおよびBiFeOを好ましく用いることができる。また、フッ化物である:BaMgF、BaMnF、BaFeF、BaCoF、BaNiFおよびBaZnFは非常に高い磁気転移温度Tを有するため、非常にこのましく用いることができる。これらの材料を用いることにより、高温において負熱膨張を発現でき、高温領域で利用可能な負熱膨張率材料を提供できる。
上記ナノ粒子を得る方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、ナノ粒子のサイズを超えるバルク粒子を粉砕する物理的方法を用いることができ、ボールミル、エネルギーボールミル、振動ミル、ローラーミル、ジェットミルなどを用いる公知の粉砕方法を例示することができる。
また、ゾルゲル法などの公知の化学的手法を用いることもできる。
ナノ粒子が得られたことは、例えば、図4の電子線回折パターンのデバイリングが観測されるように、高分解能の電子顕微鏡画像によって判断できる。上記画像は、CuOのバルク結晶からエネルギーボールミルによって得られたCuOのナノ粒子(ナノ結晶、平均粒子径5nm以下)を撮像したものである。
本発明の負熱膨張率材料は上記ナノ粒子からなるため、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、負熱膨張率を発現することができる。さらに、上記負熱膨張率材料はバルク状態の粒子に比較して誘電率の増大が確認されている。具体的には、例えば、ナノ粒子としてCuOを用いた場合、磁気転移温度以下の60K〜80Kの温度範囲にて、誘電率の増大が確認されている。上記温度範囲において、CuOナノ粒子からなる負熱膨張率材料は誘電率が11.50以上、11.75以下であり、高い誘電率を示すため、高誘電率材料として好ましく用いることができる。
また、本発明の複合材料は、上記負熱膨張率材料を含むものである。上記複合材料は負熱膨張率材料と共に、各種有機化合物または無機化合物を含む。上記有機化合物または無機化合物は特に限定されないが、有機化合物としては、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂(PET樹脂)およびポリ塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。また、無機化合物としては、二酸化ケイ素、グラファイト、サファイア、各種のガラス材料、コンクリート材料などを挙げることができる。
上記複合材料は、本発明に係る負熱膨張率材料を含んでいるため、他の化合物との配合比率によって、負熱膨張率、零熱膨張率または低熱膨張率を実現することが可能である。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
<ナノ粒子の平均粒子径の計測方法>
得られたナノ粒子の平均粒子径の測定は、透過電子顕微鏡等を用いて測定した。
<粉末回折データ>
本発明に係る負熱膨張率材料に関する、400Kから10Kまでの各温度における粉末回折データは、0.01°のステップ角単位にて2θが0°〜68°の範囲内となる条件下で取得される。上記温度設定は、サンプルである負熱膨張材料の温度偏差が1K未満となるよう、低温保持装置を流れるヘリウムガスによって制御される。
2結晶分光器によってモノクロ化された入射X線束は、各実施例において、約0.5Åの波長に変化した。全ての粉末回折データは、コンピュータプログラムRIETAN-2000を用いたリートベルト解析によって分析を行った(Izumi, F. & Ikeda, T. A Rietveld-analysis program RIETAN-98 and its applications to zeolites. Mater. Sci. Forum 321-324, 198-204 (2000).を参照)。
〔実施例1〕
磁性および強誘電性を有するナノ粒子(平均粒子径約4nm)である、CuO、MnF、CoCr、Cr、BiMnOおよびBiFeOのそれぞれを、バルク粒子をボールミルによって粉砕することによって得た。
得られたナノ粒子のそれぞれを、低温保持装置を用い、400Kから10Kまでの各温度における負熱膨張率および誘電率の増大を観察した。MnFのナノ粒子に関する負熱膨張率の測定結果を図5および図6に、CuOのナノ粒子に関する負熱膨張率の測定結果を図6および図7に示す。
さらに、CuOのナノ粒子をプレスして得られたサンプルを、2MHzにて誘電率の測定を行った。結果を図8に示す。
〔実施例2〕
磁性および強誘電性を有するナノ粒子(平均粒子径約4nm)である、CuO、MnF、CoCr、Cr、BiMnOおよびBiFeOのそれぞれを、公知のゾルゲル法を用いて製造した。
具体的には、まず、負熱膨張率材料の原料物質に対応する水酸化物を生成した後、上記水酸化物を乾燥、焼成、さらに粉砕することによって負熱膨張率材料を得た。CuOの負熱膨張率材料を得る場合には、CuClにNHOHを加え、水酸化銅Cu(OH)を生成した後に、これを500℃、1時間の条件下で焼成した。得られた焼成物をボールミルによって粉砕し、CuOのナノ粒子を得た。同様に、MnF、CoCr、Cr、BiMnOおよびBiFeOのそれぞれをゾルゲル法によって製造した。
得られたナノ粒子のそれぞれについて、実施例1と同様に、低温保持装置を用い400Kから10Kまでの各温度における負熱膨張率および誘電率の増大を観察したところ、実施例1と同様の結果が観測された。
〔比較例1〕
CuO、MnFのバルク粒子をメノウ乳鉢にて粉砕し、CuOおよびMnFのマイクロ粒子(平均粒子径約10μm)を得た。さらに、NiOのナノ粒子をボールミルによって粉砕することによって得た。
CuOおよびMnFのマイクロ粒子を、実施例1と同様に、低温保持装置を用い400Kから10Kまでの各温度における熱膨張率および誘電率の挙動を観察した。
MnFのマイクロ粒子に関する熱膨張率の測定結果を図5および図6に、CuOのマイクロ粒子に関する熱膨張率の測定結果を図6および図7に示す。さらに、CuOのマイクロ粒子をプレスおよび900℃にて焼成して得られた焼結体サンプルを、2MHzにて誘電率の測定を行った。得られた結果を図8に示す。
図5において、黒丸および黒四角の符号はMnFのナノ粒子に関するグラフであり、aは格子定数が4.881Åであり、cは格子定数が3.299Åである。一方、白丸および白四角の符号はMnFのマイクロ粒子に関するグラフであり、aは格子定数が4.887Åであり、cは格子定数が3.302Åである。さらに、さらに、MnFのナノ粒子およびマイクロ粒子の体積Vについても比率の変化を示している。
同図に示されるように、熱膨張は、MnFの反強磁性転移温度である67K付近から消失することが確認された。このように、MnFのナノ粒子は反強磁性転移温度において、磁気歪が促進されたために、負熱膨張が発現したと考えられる。なお、MnFのマイクロ粒子について、負熱膨張は発現しなかった。
また、図6に示されるように、CuOのナノ粒子は、200K以下の付近において、体積熱膨張率βが−10−4−1であることが観測され、大きな負熱膨張率が示されることが分かる。一方、CuOのマイクロ粒子では、このような負熱膨張は全く観測されなかった。これは、MnFのナノ粒子およびマイクロ粒子についても同様であった。
さらに、図7には、ナノ結晶とミクロン単位でのCuOの両方に係るグラフである。右上部に示されるグラフは、CuOのナノ粒子とマイクロ粒子との体積の温度依存性を示している。また、左下部に示されるグラフは、CuOのナノ粒子に関するグラフであり、a〜c、βは格子定数(βはa軸とc軸が成す角度)を、vは体積変化を示している。
さらに、図8に示すように、実施例1にてCuOのナノ粒子をプレスしたサンプルでは、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度である90K付近から誘電率ε’の増大が観測され、誘電率ε’は最も高い値を示すことが観測された。一方、比較例1にてCuOのマイクロ粒子から成る焼結体サンプルでは、誘電率の増加は全く観測されず、温度の低下に伴い、誘電率は緩やかに減少した結果が得られたのみであった。上記両サンプルの結果を比較すると、誘電率ε’の増大は本発明に係る負熱膨張率材料に特有の効果であることが明確に理解できる。
上記のデータから、CuOのナノ結晶における大きな負熱膨張が発現したメカニズムが導かれる。すなわち、CuOの格子定数の振る舞いは、磁気秩序温度以下において、熱膨張を打ち消すような磁気歪が顕著となる。同時に誘電率の増大もナノ粒子において新たに発生する。これは、磁気歪の効果がナノ結晶において大きくなるため、結果として大きな負熱膨張および誘電率の増大が発現したと考えられる。また、負熱膨張は、ナノサイズの粒子において、強い磁気・格子カップリングを有する材料にて生じることが推定される。
本発明の負熱膨張率材料は高い負熱膨張率を有し、それ自体または該負熱膨張率材料を含む複合材料は、負熱膨張率、零熱膨張率または低熱膨張率を持つ構造材料、薄膜基板、耐熱被覆剤、ガラス、セラミックス、コンクリート等として用いることができる。このため、これらを用いる各種産業分野において利用が可能である。また高誘電率材料としても有望である。
本発明のCuOのナノ粒子に係る各温度におけるX線回折ピークを示すグラフである。 CuOのナノ粒子に対しリートベルト精密化を行った結果を示すグラフである。 NiOのナノ粒子とバルクに対する格子定数aの温度依存性を示すグラフである。 CuOのナノ粒子のサイズとデバイリングを示す電子顕微鏡画像である。 実施例1および比較例1に係るMnFの粒子に関する測定結果を示すグラフである。 実施例1および比較例1に係るCuO、NiO、およびMnFの粒子に関する測定結果を示すまとめグラフである。 実施例1および比較例1に係るCuOのナノ粒子およびマイクロ粒子に関するグラフである。 実施例1および比較例1に係るCuOのナノ粒子およびマイクロ粒子をプレスおよび焼成した焼成物に対する誘電率の測定結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 磁性および強誘電性を有するナノ粒子からなる負熱膨張率材料であって、
    上記ナノ粒子は、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、負熱膨張率を有することを特徴とする負熱膨張率材料。
  2. 磁性および強誘電性を有するナノ粒子からなる負熱膨張率材料であって、
    上記ナノ粒子は、ナノ粒子の磁気転移温度以下の温度において、誘電率の増大を生じることを特徴とする負熱膨張率材料。
  3. 上記ナノ粒子が、CuO、MnF、Cr、CoCr、CoCu、LuCr、LuCo、BiMnO、LaMnO、BiMn、LaMn、BiFeO、LuFe、(Ba,Sr)(Zn,Mg)Fe1222、BaMgF、BaMnF、BaFeF、BaCoF、BaNiF、BaZnF、NiおよびCoからなる群から選ばれる少なくとも1種の物質であることを特徴とする請求項1または2に記載の負熱膨張率材料。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載の負熱膨張率材料を含むことを特徴とする複合材料。
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