本発明の実施形態について説明すると以下の通りである。
<概要>
図1において、本発明にかかる立体映像表示装置1の概要を示す。図1(a)および(b)は、バララックスバリア2の前面に照明用の光を照射し、外部光が弱い場合でもバララックスバリア2の前面に描画された画像3が画像提示対象者に対し視認可能にする投光部(投光手段)4および4bと、表示部(表示手段)5との位置関係を示す図である。
投光部4および4bは、外部光が少ない場合であり、かつ、バララックスバリア2の前面に描画された画像3を画像提示対象者が視認可能なように点灯させて用いる。
図1(a)に示す例では、投光部4は、表示部5の上部に配置された横長の光源である。横長の光源としては、点光源状のライトを並べたものを用いてもよいし、蛍光灯のような線状のライトを用いてもよいし、有機ELのような面状のライトを用いてもよい。
図1(b)に示す例では、投光部4bは、点光源状のライトを並べたものである。投光部4および4bの形状、個数、および配置は、外部光の変化に応じて画像提示対象者が効果的に画像3を視認できるものであれば、どのような形状、個数、および配置でもよく、これらの例に限られるものではない。
なお、投光部4と投光部4bとの違いを説明すると以下のとおりである。すなわち、投光部4は、単に点光源ライト型の投光部4bを覆う形として、投光部4bの目隠しをしているに過ぎない。大きな屋外看板の場合、コスト面から投光部4bを用いることが多い。
投光部4および4bは、表示部5の上下左右どちらの側に設置してもよい。片側のみに設置してもよいし、両側に設置してもよい。
投光部4の形状は、屋内用か屋外用かを問わず、中小規模の立体映像表示装置1において、見てくれにこだわる場合にライトの目隠しを行う目的で用いることが好ましい。
図1(c)において、本発明にかかる立体映像表示装置1の構成の概要を示す。立体映像表示装置1は、投光部4と、表示部5と、制御部(制御手段)6と、照度センサ(外部光検知手段)7とを含んで構成される。
表示部5は、通常の裸眼立体ディスプレイとして機能するものと同様の機能を有し、映像の表示を行う画像発光部5dとその前面に配置されるパララックスバリア2とを含んで構成される。パララックスバリア2の前面には、広告などの画像3が描画されている。
なお、パララックスバリア2の前面に画像3を描画する場合、通常は黒色であるバリア面に白色の塗装を行ってから、描画のための彩色を行うとよい。
表示部5の基本的な動作としては、制御部6から送出される映像信号に基づき、パララックスバリア2の背後にある液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイなどの画像発光部5dが2D/3D表示用映像を表示する。表示により発光し、パララックスバリア2のスリットを通過した光が、3D映像適視位置内の画像提示対象者により知覚される。そして、裸眼立体映像が画像提示対象者に対して提示される。
なお、表示される映像は、3D表示用映像ではなくてもよく、例えば、パララックスバリア2に描画された画像3を補完するための2D映像でもよい。もちろん、3D映像により画像3を補完してもよい。補完を目的として映像を表示する場合、映像の輝度を抑え、画像3の質感を損傷しない様にしつつ、画像3を補完する色を表示してもよい。
表示部5の詳細な構造については後述する。
投光部4は、点灯時にパララックスバリア2の前面に対して光を照射出来る構造の光源である。制御部6からの制御信号に基づき、パララックスバリア2の前面に照射する光の強度を調整する。もちろん、制御部6からの制御信号に基づき、照射方向および照射方法などを調整してもよい。
照射方法としては、立体映像表示装置1の周りの照明環境および/または画像提示対象者の位置により、光源を所定の間隔をもって点滅させたり、照射する光の色調を変更したりしてもよい。
照度センサ7は、パララックスバリア2の前面に当たる外部光の強度を測定し、測定結果を制御部6に送る。照度センサ7は、無指向性のセンサ1個または複数個により構成されてもよいし、外部光の入射する方向を検知出来るように、指向性のセンサ1個または複数個により構成されてもよいし、これらセンサを適宜組み合わせて構成されてもよい。
制御部6は、照度センサ7から受け取った測定結果に基づき、表示部5に送出する映像信号および投光部4を制御する。どのような制御を行うかについての詳細は、後述する。
なお、制御部6が表示部5に送出する映像は、予め制御部6内に蓄積されているものでもよいし、外部から入力されたものでもよい。外部から入力する映像は、独立した記憶部(図示せず)を設け、そこに映像を蓄積しておいてもよいし、ネットワーク経由の通信または放送などの無線通信により、受信してもよい。
<立体映像表示装置1の表示モードについて>
図2は、立体映像表示装置1が、大きく分けて「マルチビュー立体表示モード」および「描画・印刷閲覧モード」の2つのモードを有することを示す図である。図2(a)に示すマルチビュー立体表示モードでは、立体映像表示装置1は、パララックスバリア方式の裸眼立体ディスプレイとして動作する。図2(b)に示す描画・印刷閲覧モードでは、立体映像表示装置1は、バララックスバリア2の前面に描画された画像3を表示する表示板として動作する。
図2(a)に示す「マルチビュー立体表示モード」の例では、表示部5には、携帯電話機の広告が表示されている。この例では、立体画像により制作された奥行きのある部屋を背景として、宙に浮いた携帯電話機と、「ケイタイNo.1」の文字とが部屋の奥から手前に迫ってくる立体映像として表示されている。
図2(b)に示す「描画・印刷閲覧モード」の例では、パララックスバリア2の前面には、画像3として樹木と人物とが描かれている。
もちろん、表示モードは、「マルチビュー立体表示モード」および「描画・印刷閲覧モード」が完全に切り替わる構成でもよいし、後述するように、両方の表示モードを混在させた「混合モード」を用いて、画像提示対象者に対し2D画像/3D映像を組み合わせた効果的な広告を行う構成でもよい。
図2(c)に示す「混合モード」の例では、表示部5には、パララックスバリア2の前面に画像3として山と花とが描かれている。そして、蝶のみが立体画像として表示され、蝶は、花を起点として3次元空間を飛んでいる。
なお、図3(a)に示すとおり、パララックスバリア2の前面は、鏡面状になっていてもよい。この構成では、従来技術と同じように位置センサ8(図示せず)を設けると、自分の姿が別の画像に変換されることによる驚きを画像提示対象者に与えることが出来る。
すなわち、立体映像表示装置1に接近する画像提示対象者は、最初、バララックスバリア2の前面に自分の姿が映るので、バララックスバリア2の前面を通常の鏡であると認識する。
また、パララックスバリア2の前面を簡易に鏡面状にするために、画像発光部5dが発光する際には、マジックミラーを透過する分だけ、画像が暗くなってしまうが、パララックスバリア2の、スリット部を含んだ全面を、マジックミラーとする構成としてもよい。
この構成では、表示部5の製造時に、パララックスバリア2の前に、マジックミラーを設置すればよいので、スリット部を避けてパララックスバリア2の前面のみを鏡面とする工作を行うよりも、より簡単に全面を均一な鏡とすることが出来る。
次いで、位置センサ8により、画像提示対象者が3D映像適視位置に入ったことを検知した制御部6は、画像提示対象者に対し3D映像(例えば、骸骨など)を提示するので、画像提示対象者は、鏡に映った自分の姿に代わり、3D映像を認識する。
この構成を採る場合、表示部5からの光の強度は、パララックスバリア2の前面に写った画像提示対象者の姿が実質的に消え、3D映像のみが認識される程度以上の強度であってもよい。
なお、パララックスバリア2のスリットの形状は、図3(a)または図3(b)に示すように、斜めの直線状のスリットでもよいし、図3(c)に示すように、斜めの階段状のスリットでもよい。スリット形状の詳細については、後述する。
<表示部および投光部の制御方法>
制御部6が行う、表示部5および投光部4の制御方法の詳細は、以下のとおりである。
制御部6は、外部光の位置および光量などを考慮して、画像提示対象者に対し2D画像/3D映像を組み合わせた効果的な広告を行うことが出来るように、投光部4および表示部5の制御を行う。具体的には、以下のとおりである。
例えば、外部光として太陽光を想定する場合、太陽は、東からの日の出から西への日没まで位置が変化するので、その位置と入射光の強度を照度センサ7により測定し、その位置と強度に合わせて、表示部5に表示する2D/3D映像と投光部4の照明方法とを制御してもよい。
太陽の位置に関しては、画素毎に点灯/消灯が制御できるLEDディスプレイなどの場合、パララックスバリア2のスリットから進入した直射日光が当たる箇所の画素は消灯し、パララックスバリア2の影になり直射日光が当たらない箇所の画素は点灯することにより、消費電力を削減することも出来る。
また、太陽光の強度も、朝および夕方は弱く、昼間は強い。
そこで、昼間は表示部5の点灯を行わず、パララックスバリア2上の画像3を見せるだけの屋外広告とする構成でもよい。この構成を採ることにより、立体映像表示装置1が昼間に消費する電力を削減することが出来る。
昼間であっても、パララックスバリア2のスリット部を黒く見せないために、表示部5に映像を表示させ、画像3を補完する構成でもよい。
朝および夕方は、投光部4からの照明により、パララックスバリア2の前面を照らす制御を行ってもよい。照度センサ7による外部光の測定結果に基づき、表示部5が表示する映像の輝度も制御を行い、立体映像表示装置1の周囲の明るさに応じて裸眼立体映像を表示するか否か判断する制御を行ってもよい。
画像提示対象者に対し裸眼立体映像を提示可能な時間帯および外部光の条件である事と、立体に見せたい映像であるという事との両方の条件が揃った場合のみ、3D映像を表示し、それ以外の場合は、画像3を表示するように自動制御を行ってもよい。
外部光など周囲のわずかな変化に対しても、中間的なライティングを行うなど、細かい制御を行う構成でもよい。
すなわち、本発明にかかる立体映像表示装置1のポイントは、光を与えることと、それに対する反射光、そして液晶ディスプレイなどの発光体を制御対象とし、これらを切り替えることである。
もちろん、天気により太陽光の強度は変動するので、昼間であっても曇りであれば、表示部5の発光強度に関し、朝および夕方と同じ制御を行えばよい。
描画または印刷された画像3と同じ画像を表示部5により表示することにより、太陽光が少ない時でも画像3を強調して画像提示対象者に見せることが出来る。
なお、照度センサ7は、外部光の強度を測定する際に、光の周波数帯域ごとに強度を測定してもよい。例えば、この構成を採ることにより、朝および夕方に、太陽光に占める赤色成分が多くなった時に、最も効果的な色調を用いて、表示部5が2D/3D映像を表示する制御方法でもよい。
また、従来技術と同じように位置センサ8を設け、画像提示対象者の位置により表示部5に映し出す映像および投光部4の照明を制御することにより、画像提示対象者に対し効果的な広告を行うことも出来る。
また、カメラ(撮像手段)を用いて、立体映像表示装置1近傍の物体(人物、動物、自動車など)を撮影し、制御部6において、撮影した画像を解析し、撮影した画像と共に、解析結果に応じた立体映像(他の人物、動物、キャラクター、骸骨など)を表示部5に表示する制御を行ってもよい。
例えば、立体映像表示装置1の前を歩いている画像提示対象者が、表示部5を見ると、自分の姿に加えて、その周りに、春は蝶、秋はトンボが、立体映像として知覚される制御を行う構成でもよい。
<適した利用方法について>
裸眼立体ディスプレイにおいて、最も立体が効果的に見えるのは、パララックスバリア2の前面が黒く、パララックスバリア2のスリットからの光のみが、画像提示対象者に知覚される場合である。それ故、画像3の色調をなるべく暗い色とすることが望ましい。
また、立体表示用に、パララックスバリア2のスリットから視認される画素の輝度は非常に低いので、昼間の屋外において裸眼立体表示を行うことは困難である。それ故、昼間に裸眼立体を表示させる場合には、立体映像表示装置1を屋内に置き、屋内または屋外に居る画像提示対象者に対して裸眼立体表示を行うようなショールームに向いている。
また、立体映像表示装置1を屋内に置き、画像提示対象者も屋内に居る場合、室内照明を投光部4として制御することにより、立体映像を効果的に表示することも出来る。なお、この場合も、立体映像を鮮明に見せるために、少なくとも表示内容が立体映像となる時点に合わせて、室内照明を弱める制御を行うことが望ましい。
<2D画像と3D映像との組み合わせについて>
パララックスバリア2の前面に描かれた2Dの画像3と、裸眼立体として表示される3D映像とに関し、画像提示対象者が知覚する2D画像/3D映像の前後関係について説明すると、以下のとおりである。
例えば、夕方、投光部4を用いて印刷した画像3をライティングしながら、表示部5により裸眼立体映像を表示することにより、裸眼立体映像を浮き出させることが出来る。画像提示対象者は、印刷画像3よりも裸眼立体映像の立体が手前にあることを明確に知覚できる。その理由は、人間の目は、反射光により知覚される描画されたリアルな画像と、素子の発光により知覚される映像による立体効果とを区別できるからである。
このように、描画されたリアルな2D画像とその画像の描画面より前に出して浮かべられた立体との組み合わせでは、映像による2D画像とその画像の表示面より前に出して浮かべられた立体との組み合わせに較べ、画像提示対象者に対し、立体をよりリアルに提示することが出来る。
すなわち、3D映像に慣れてしまっている画像提示対象者に対しても、本物の絵や写真の前に、裸眼立体効果により立体表示対象物を飛び出させて提示できるので、画像提示対象者に驚きと感動とを与えることが出来る。
また、黒い背景と明るい前景を有する3D映像を用いれば、画像提示対象者に対し、明るい前景を手前に見せると共に、黒い背景部分に、画像3である下絵や看板を見せることが出来る。
このように、描画された画像3である看板の絵と裸眼立体として表示する映像との組み合わせにより、立体を看板より手前に浮き上がらせる効果を得たり、映像の光を強めて看板からの反射光の知覚を防ぎ看板が消えてしまう効果を得たりと、様々な効果を演出させることが出来る。
さらに、2D画像および3D映像の明暗を調整することにより、画像提示対象者に対し、像を結ぶ立体の位置が2D画像より手前にあるように知覚させたり、2D画像より後ろにあるように知覚させたりすることが出来る。
<表示部5の構造の詳細につて>
図4において、表示部5の構造の詳細を断面図として示す。
図4(a)に示す例では、表示部5は、画像提示対象者に近い側から、強化ガラスと、グラフィック印刷と、マスク印刷層と、空隙部と、画像発光部5dとを含んで構成される。
図4(b)に示す例では、表示部5は、画像提示対象者に近い側から、保護シートと、グラフィック印刷と、マスク印刷層と、透明材と、画像発光部5dとを含んで構成される。
これらの図から分かるように、強化ガラスと空隙部との組み合わせを用いる場合、強化ガラスには強度を持たせるために適度な厚みを持たせる必要がある。また、保護シートと透明材との組み合わせを用いる場合、表示部5の強度は、透明材により保たれるので、保護シートを薄くすることが出来る。もちろん、表示部5の構成は、薄い強化ガラスと透明材との組み合わせでもよい。
グラフィック印刷として、画像3が描画される。グラフィック印刷部分は、鏡面でもよい。
マスク印刷層は、画像発光部5dから発光された光を遮断し光の進行方向を制限する不透過部と光が透過する透過部(スリット)とから構成される。
画像発光部5dは、2D映像および/または3D映像を表示する画素の配列、すなわちディスプレイである。
図5において、他の表示部5の構成例を断面図として示す。
図5(a)に示すものは、画像発光部5dを、バックライトおよび立体印刷部により構成し、マスク印刷層と立体印刷部との間を透明材により充填した例である。もちろん、透明材と保護シートとの組み合わせに代えて、空隙部と強化ガラスの組み合わせでもよい。
図5(b)は、画像発光部5dに、液晶、プラズマ、またはLEDを用いて、画像発光部5dとマスク印刷層との間に、空隙部を設けた例である。
図5(c)は、図5(b)に示す構成例の空隙部を透明材に置換した例である。空隙部を透明材に置換することにより、強度を持たせることが出来るので、厚い強化ガラスを薄い保護シートに置換することが出来る。
図6において、表示部5のさらなる変形例を示す。
図6(a)は、立体印刷部、透明材、マスク印刷層、グラフィック印刷、保護シートなどが、脱着可能またはローリング可能な構成を示す図である。
図6(a)における構成は、一見すると図5(a)に示す例と同様であるが、立体印刷部のみ、または立体印刷部に加えて透明材、マスク印刷層、グラフィック印刷、保護シートなどが、脱着可能またはローリング可能なように構成されている。
脱着可能とする場合、立体印刷部などは柔軟性を有する必要は無いが、ローリング可能とする場合、立体印刷部などはローラーによる巻き取りが可能なように、柔軟性を持たせる必要がある。
なお、透明材の部分を空隙部とする構成でもよい。
図6(b)は、立体印刷部のみ、または立体印刷部と透明材とマスク印刷層とグラフィック印刷と保護シートとがロール状である構成を示す図である。図6(a)に示す立体印刷部、マスク印刷層、グラフィック印刷層、保護/強化シートのうち、少なくとも立体印刷部が、表示部5の筐体の端に設けられたローラーの間を、ローラーの回転により移動する構成を示す図である。
なお、ローリング可能な構成とする場合、前記のとおり、立体映像表示装置1の前面からのみ画像が視認できる構成でもよいし、図6(b)に示すように、背面からも画像が視認できる構成でもよい。
<モーションをトリガーとした実施形態について>
画像提示対象者の動きをトリガーとして、表示制御を行う点について説明すると、以下のとおりである。
前記の構成では、画像提示対象者が所定の3D映像適視位置に入ったことを位置センサ8により検知し、効果的な映像表示を行う点について説明した。さらに、各種センサを用いることにより、画像提示対象者が、乗る、触る、近づくなどの動作を行うと、その動作をトリガーとして、立体が飛び出すアトラクションなどの表示制御を行うことが出来る。計時手段により時間を計測し、表示内容を制御してもよい。
例えば、立体映像表示装置1を床の一部とする構成としてもよい。この構成によると、通常は強化ガラスの、大理石またはタイルの様に見える床だが、人が近づくと立体が飛び出したり、池になったり、池の鯉が出てきたりするような制御をすることが出来る。
立体映像表示装置1の手前に感圧式センサを備える構成でもよい。この構成では、画像提示対象者が感圧式センサに乗ると、画像提示対象者の進行方向前方にある立体映像表示装置1に、画像提示対象者が歩いていく方向に、川など、立体を見せることも出来る。
また、レストランなどにおいて、客(画像提示対象者)を席まで案内するために、客の前方に、立体的に案内表示を行うことも出来る。この場合、横方向からは、立体表示が見えないので、他の客を混乱させることがない。複数の分岐路がある通路において用いてもよいし、広い部屋の中を案内するために用いてもよい。
例えば、立体映像表示装置1を扉の一部とする構成としてもよい。この構成によると、人が扉のノブを握った瞬間に立体を飛び出させるような制御をすることが出来る。
例えば、立体映像表示装置1を鏡として用いる構成でもよい。この構成によると、通常は自分の姿が映るが、人が鏡を覗き込んだり、鏡を触ったりすると、骸骨が飛び出すような制御をすることが出来る。
例えば、センサとしてマイクを用いる構成としてもよい。この構成によると、人が出す音に反応して、壁が迫ってくるような制御をすることが出来る。
例えば、立体映像表示装置1を自動販売機の一部とする構成でもよい。この構成によると、人がそばに来ると立体が飛び出るような制御をすることが出来る。
例えば、立体映像表示装置1をからくり時計の一部とする構成でもよい。この構成によると、予め定められた時刻になると、立体が飛び出すような制御をすることが出来る。
例えば、立体映像表示装置1をゲーム機の一部とする構成でもよい。この構成によると、ゲームのシナリオによって、手前の画面がいきなり立体になるような制御をすることが出来る。
例えば、立体映像表示装置1をエレベータの一部とする構成でもよい。この構成によると、エレベータに人が乗ると、エレベータ内に立体が表示されるような制御をすることが出来る。
例えば、立体映像表示装置1を電車の中に組み込んでもよい。エレベータと同様に人が乗ったことを検知して映像の制御を行ってもよいし、電車では車両の移動に伴い外部光の入射方向が変わるので、その変化に応じて表示する裸眼立体映像を制御してもよい。
<パララックスバリアへのドットパターン形成>
特許3706385号および特許3771252号に開示されているような、情報を持たせたドットパターンをテキストや写真と重ねて媒体面上に形成し、ユーザがスキャナを用いてそのテキストや写真をタッチすると、重なったドットパターンから情報が取り出される仕組みを、立体映像表示装置1と組み合わせる構成でもよい。
具体的には、図7に示すように、パララックスバリア2の前面に描画された画像3上にドットパターンを重ねて形成する。ドットパターンに保持させる情報としては、立体映像表示装置1のパララックスバリア2の表面上の位置を表すXY座標値を用いることが好ましい。
また、他の具体例として、パララックスバリア2の全面、すなわち、画像3を描画する不透明部と、背後の画像発光部5dからの光を透過させる透明なスリット部とを区別せずに、ドットパターンを形成する構成でもよい。
この構成は、パララックスバリア2を形成する際に、透明な部材の上に、パララックスバリア2の不透明部を、描画、印刷等により形成する工程を用いる場合に有効である。つまり、ドットパターンを形成する際に、透明なスリット部と、画像3が形成される不透明部とを区別する事なく、通常のドットパターン形成方法を用いて、ドットパターンの形成が出来るので、製造工程を簡略化することが出来る。
例えば、透明なシートの前面、すなわち画像発光部5dとは反対側の面に対し、パララックスバリア2の不透明部を形成し、その上から、スリット部も含めてドットパターン層を形成し、そのシートを、さらに前面に配置される強化ガラスまたは保護シートの背面、すなわち、画像発光部5d側の面に貼り付けるような製造方法では有効である。
さらに、画像3上のみにドットパターンを形成する構成に較べ、ユーザがスキャナを用いてタッチする場所が、スリット部の上であったとしても、スリット部にもドットパターンが形成されているため、確実に、ドットパターンを読み取ることが出来る。
なお、ドットパターンを形成する透明な部材を赤外線反射シートとし、ノンカーボン(赤外線を吸収しない)材料を用いてパララックスバリア2の不透明部を形成し、ドットパターンの各ドットをカーボンブラック(赤外線吸収材料)により形成すること構成でもよい。不透明部には、ドットパターン形成前に、白色を塗装し、その上に画像3を描画してもよい。
また、塗装が厚くなりすぎる場合は、ノンカーボンのブラックによりパララックスバリア2の不透明部(マスク部)を形成し、その上に白い下地を塗り、その上にカーボンブラックによりドットパターンを全面に形成し、その上にノンカーボンのインクを用いて画像3を描画する構成でもよい。
これらの構成では、スキャナにより最適なドットパターンの読み取り行うことが出来る。
なお、ドットパターンが表す情報としては、上述したように、XY座標を表す構成でもよいし、画像3の内容(例えば、描いたそれぞれのキャラクタ)に対応した情報を表す構成でもよいし、両方を表す構成でもよい。
例えば、画像3として、熊さんとわんことが描かれている場合、ユーザが、ブルートゥース等のスキャナペンによりわんこをタッチすると、画像3の内容(犬)が指示されたと解釈し、犬に関する映像が表示されてもよいし、ユーザが、わんこの後方をタッチすると、犬の後方に位置するXY座標が取得され、表示された犬が後方に移動するように表示制御を行ってもよい。
この構成を用いると、例えば、画像提示対象者がスキャナを用いてパララックスバリア上の所望の位置をタッチすると、タッチ位置のXY座標値およびタッチ時に表示されていた映像から、画像提示対象者が映像中の何をタッチしたかが分かる。それにより、次に表示する映像を変更するなどの画像制御を行うことが出来る。
<タッチパネルと組み合わせた実施形態について>
前記の説明では、パララックスバリア2の前面にドットパターンを形成し、画像提示対象者がスキャナを用いて画像/映像をタッチすることにより、立体映像表示装置1をインタラクティブなインタフェースとして用いる構成を示した。
これ以外に、画像提示対象者が指などで、立体映像表示装置1に描画された画像および表示された映像をタッチすることにより、表示内容、投光部4による投光方法などを制御する構成でもよい。
この構成では、表示部5の前面、すなわち画像提示対象者に向けられた側の全領域に光学式タッチパネル(図示せず)を取り付ける。この光学式タッチパネルの一部領域に裸眼立体表示用のパララックスバリア(立体マスク)2が取り付けられている。
このように、タッチパネルの領域を、パララックスバリア2の領域よりも大きく取り、パララックスバリア2の前面に描画された画像3と関連する画像であって、パララックスバリア2の領域外に描かれた画像を覆う領域とすることにより、画像3および裸眼立体映像に加えて、パララックスバリア2の領域外の画像も用いたインタラクティブなインタフェースを実現することが出来る。
なお、パララックスバリア2の領域外の画像は、印刷等により描画された画像でもよいし、他の映像表示装置により表示された映像でもよい。
もちろん、パララックスバリア2の前面には、画像3が描かれていてもよいし、描かれていなくてもよい。画像3が描かれていない場合、画像提示対象者は、表示された2D/3D映像のみを知覚して光学式タッチパネルをタッチし、所望の入力操作を行う。
なお、タッチパネルは、光学式でも圧力式でもよい。
<表示部の一部のみにタッチパネルを設けた実施形態について>
前記の説明では、表示部5の全面にタッチパネルが設けられ、タッチパネルがパララックスバリア2の全面を覆う構成について説明した。この構成以外に、タッチパネルを表示部5の一部のみに設ける構成でもよい。
図8において、パララックスバリア2およびタッチパネル9が表示部5の一部のみに設けられた例を示す。
図8(a)に示す例では、表示部5の右側は、立体表示領域であり、パララックスバリア2が設けられている。表示部5の左側は、メニュー領域であり、パララックスバリア2は設けられておらず、光学式または圧力式のタッチパネル9が設けられている。なお、タッチパネル9は、立体表示領域にも設けられていてもよい。
このように、表示部5の領域を立体表示領域とメニュー領域とに分割することにより、立体を表示することが可能になると同時に、細かい文字などをメニューとして表示することが可能になる。
多視点のパララックスバリア方式の表示部5では、水平方向に複数視点用の画素を並べる必要があり、1個の視点用の画素は少なくなり、立体効果は得られるものの解像度が低下してしまう。写真など、解像度が低下しても違和感無く綺麗に見えるものは立体として表示することが好ましいが、細かい文字など、解像度の低下により判読が困難になるものは立体表示領域とは分けて表示することが望ましい。
そこで、細かい文字を用いて表されることが多いメニュー領域には、パララックスバリア2を設けず、画像表示も2D映像または印刷とする。
なお、図8(b)に示す例のように、表示部5を覆うタッチパネル9と、メニューなどを表示させる、表示部5の左側の通常モニタ領域と、表示部5の右上側の立体映像表示領域と、「立体映画」などの文字が印刷されている、表示部5の右下側の印刷領域とから構成してもよい。
このように、表示部5の前面を、機能領域毎に分割することにより、各機能に最適化された表示方法を採用することが出来る。また、大きい表示部5であっても、分割することにより、廉価な小さい部品を組み合わせることが可能になり、表示部5の製造コストを低減させることが出来る。
<着脱可能なタッチパネルと共に用いる実施形態について>
なお、タッチパネル9は、モニタータイプの他、印刷タイプでもよい。タッチパネル9としては、光学式タッチパネル、または加圧式タッチパネル(印刷タイプに使用)を用いる。
モニタータイプのタッチパネル9は、透明であり、表示部5により表示されるメニューの上に重ねて用いられる。印刷タイプのタッチパネル9は、透明なタッチパネル9の前面または背後にメニューの写真を印刷して用いられるか、タッチパネル9自体にメニューの写真を描画して用いられる。
モニタータイプのタッチパネル9を用いる場合、特願2007ー230776に開示されているグリッドシートを用いてもよい。このグリッドシートは、モニタ画面に重ねて用いられる透明なシート上に形成された、目に見えない微少なドットパターンを、スキャナを用いてタッチすることにより、タッチパネルとしての機能を実現するものである。
印刷タイプのタッチパネル9を用いる場合、タッチパネル9は、表示部5に固定されている構成でもよいし、取り外しが出来る構成でもよい。
例えば、特許4019114号、特許4042065号などに開示されている、ペーパーキーボード、ペーパーコントローラを用いることにより、取り外し可能なタッチパネル9を構成してもよい。
これらのペーパーキーボードおよびペーパーコントローラは、紙などの媒体上に、キーボードのキーやリモートコントローラのボタンを、ドットパターンと重ねて印刷したものである。ペーパーキーボードおよびペーパーコントローラ上のボタンやキーをペン型のスキャナによりタッチすることにより、ボタンやキーに割り当てられた情報が読み取られ、読み取られた情報に対応した、画像切り替えなどの機能が実行される。
なお、本発明にかかるペーパーキーボードおよびペーパーコントローラでは、前記に加え、商品写真などを並べて印刷または描画したものでもよい。ペーパーキーボードおよびペーパーコントローラは、写真やグラフィックにより、アイコン等が描画または印刷された媒体でもよい。
この構成では、画像提示対象者が、詳細を知りたい商品を選択すると、その詳細が立体として表示される。
<グリッドシートとパララックスバリアの兼用>
立体映像表示装置1は、パララックスバリアと従来のグリッドシートとを兼用させた構成でもよい。
なお、パララックスバリアと兼用させるグリッドシートの構成部材として、どのように、赤外線反射層、赤外線拡散層、赤外線拡散反射層を用いるかは、従来のグリッドシートにおける構成方法と同じである。
前記の構成では、グリッドシートとパララックスバリアを兼用するので、別々の部材として製造する構成に較べ、製造コストを低減させることが出来る。
<パララックスバリアのスリット形状について>
図9において、パララックスバリア2のスリット形状(全体配置の形状およびエッジ形状)の例を示す。
図9(a)は、スリットのエッジが直線状であり、スリットの配置全体の形状がジグザグ形状のスリットの例である。
図9(b)は、スリットのエッジが曲線状であり、スリットの配置全体の形状、すなわちスリットの中心線の形状が曲線状のスリットの例である。中心線の形状は、例えば、正弦波の形状でよい。図に示すように、スリットの形状は、線路の2本のレールと同じく、1個のスリットの左右両側のエッジ間の距離が等しい形状となる。もちろん、片方のエッジを、そのまま通常のスリット分だけ、水平方向にずらした形状でもよい。
図9(c)は、エッジが階段状であり、スリット全体の配置形状がジグザグ形状のスリットの例である。
また、図9(c)のスリットは、図3(c)に示すスリットとスリットのエッジ形状が階段状である点では同じであるが、図3(c)に示すスリットの配置全体の形状が斜めの直線状であるのに対し、ジグザグ形状である点が異なる。
従来からエッジが直線状であり、全体が垂直線形状のスリットがあったが、画像提示対象者の視点の移動に伴い、ジャンプポイントが知覚されるという問題点があった。この問題を解決するために、スリットの全体形状を斜めの直線状とすることにより、ジャンプポイントの緩和を行った従来技術もある。
なお、ジャンプポイントとは、映像提示対象者が、例えば、第6の視点用の右目用映像を右目により、また左目用映像を左目により、視認し、適切な立体効果が得られている場所から、さらに例えば右方向に移動し、第6の視点用の右目用映像を左目により、また第1の視点用の左目用映像を右目により、視認し、不適切な立体効果が得られてしまう場所のことである。すなわち、視点の逆転現象である。
しかし、全体形状を斜めの直線状とするだけでは、画像提示対象者が画面を下または上の方から覗き込む場合に、本来見るべき画素ではない画素を知覚してしまうという問題があった。
スリットの全体形状をジグザグ形状とする構成により、画像提示対象者が画面を下または上の方から覗き込む場合でも、本来見るべき画素ではない画素を知覚してしまう問題を回避出来る。
図9(d)、図9(e)、図9(f)は、全て、エッジが楕円弧状であるスリットの例である。これらの例の違いは、全体形状が垂直な直線状か、斜めの直線状か、ジグザグ形状かの違いである。もちろん、図9(b)に示す様な、楕円弧の中心点が正弦波曲線上に位置するスリット形状でもよい。
エッジを楕円弧状にすることにより、エッジが直線状であるスリットに較べ、本来見せるべき画素以外の画素も、一部、画像提示対象者に知覚させること(以下、ビューミックスという)が出来るので、ジャンプポイントにおける画像の立体感の急激な切り替えを緩和することが出来る。
なお、エッジが円弧状であるスリットの詳細については、後述する。
<裸眼立体ディスプレイの製造方法について>
まず、図10において、パララックスバリア方式の裸眼立体ディスプレイの製造に関わる構造を示す。図に示すように、裸眼立体ディスプレイは、画像を表示する通常のディスプレイ(画像発光部)5dの前面に、スペーサを設け、そのさらに前面に、背後にパララックスバリア2が形成された強化ガラスを設けて製造される。
スペーサを用いてディスプレイ5dの画像表示面とパララックスバリア2との間に適切な間隔を設定することにより、予め設定された立体視可能エリアにおいて、適切な立体効果を得ることが出来る。
パララックスバリア2のスリット配置とディスプレイ5d上の一視点用の画素の配置とを適切に調整した後、ディスプレイ5dとスペーサと強化ガラスとを固定することにより、裸眼立体ディスプレイを製造することが出来る。
次に、図11において、具体的な裸眼立体ディスプレイ製造用の治具の概要を示す。図11(a)に示す例では、3D映像最適視位置が、非常に長く、例えば2m以上ある裸眼立体ディスプレイ(表示部)5の場合を示している。
まず、ディスプレイ5dと、スペーサと、パララックスバリアを形成した強化ガラスとが、強化ガラスを上にした順序で重ねられて水平に置かれている。水平に置くことにより、重力の影響による歪みを考慮せずに、容易に、ディスプレイ5dとパララックスバリアとの配置を調整することが出来る。
強化ガラスの上には、鏡が垂直方向から45度の傾きを持たせて設置されている。そして、強化ガラス面から鏡での反射も含めて2m先には、水平方向にカメラが設置されている。このカメラは、2m先のパララックスバリア2のスリットとディスプレイの適切な画素とのずれが検知できるだけの解像度を有することが好ましい。
なお、カメラは、一度にパララックスバリア2の全ての領域を撮影できる必要はなく、一度に撮影できる面積は、例えば、パララックスバリア2上の5cm角の領域でよい。この構成でも、カメラの位置を変更することにより、パララックスバリア2の全面について配置調整を行うことが出来る。
鏡は、カメラからパララックスバリアの全領域が見える大きさであればよい。また、鏡の反射面に求められる平滑性は、カメラが、パララックスバリア2のスリットとディスプレイの適切な画素とのずれが検知できるだけの平滑性があればよい。
鏡を用いる理由は、主に、治具の高さを抑える為である。水平に置かれたディスプレイ5dの上方にカメラを設置してもよいが、3D映像適視位置がディスプレイ5dから離れていると、治具の高さが非常に高くなってしまうので、鏡により、カメラの設置位置を水平方向に移動させる構成が好ましい。
3D映像適視位置が、1.5m程度の裸眼立体ディスプレイであれば、鏡を用いず、カメラを、治具の上方に設置する構成でもよい。
なお、図11(b)に示すように、カメラを2台用いる構成でもよい。これらのカメラは、人間の左右の目の間隔に合わせて配置される。カメラにより撮影された映像は、ヘッドマウントディスプレイに出力される。ヘッドマウントディスプレイを装着することにより、人が立体効果を確認することが出来る。
2台のカメラの間隔を変更できるので、ヘッドマウントディスプレイを装着する人の両目の間隔に制約されることなく、左右の目の間隔が狭い子供の視点から立体効果を確認したりすることも出来る。
もちろん、立体効果を確認する際のカメラの撮影範囲、焦点距離などは、パララックスバリア2のスリットと画素とのずれを検知する為の撮影条件ではなく、カメラ位置において人が肉眼により立体画像を視認する場合と同じ条件とする必要がある。
<タッチパネルと組み合わせた別の実施形態について>
図12において、裸眼立体ディスプレイとタッチパネルを組み合わせた、他の実施形態について説明する。
図12(a)は、この構成の正面図である。全体がショーウィンドウの窓であり、その一部に、タッチパネルが設置されている。ショーウィンドウの内側から、タッチパネルに対してメニューなどの映像が投影される。ショーウィンドウの右側奥には、裸眼立体ディスプレイが設置されている。
図12(b)は、この構成の上面図であり、画像提示対象者と、タッチパネルと、裸眼立体ディスプレイとの位置関係を示した図である。この図は、裸眼立体ディスプレイの3D映像適視位置が裸眼立体ディスプレイの前面から2m先にある例である。
前述の、一つの表示部5の領域を、立体映像表示領域とメニュー領域とに分け、メニュー領域にタッチパネルを設ける実施形態では、画像提示対象者の手が届く範囲に表示部5を置かなければならず、3D映像適視位置が裸眼立体ディスプレイの前面から50cm程度先になる裸眼立体ディスプレイを用いる必要がある。
裸眼立体ディスプレイから、3D映像適視位置が近ければ近いほど、立体の飛び出し量が少なくなり、立体による効果が半減する。タッチパネル操作者以外の画像提示対象者に立体映像を見せるためには、大画面の裸眼立体ディスプレイが必要である。そのため、裸眼立体ディスプレイの設置位置は、人だまりから一定の距離が必要である。
しかし、タッチパネルと裸眼立体ディスプレイとの配置を完全に分離する構成であれば、3D映像適視位置に、裸眼立体ディスプレイを設置することが出来る。
<タッチパネルの詳細について>
ショーウィンドウ等において用いられるタッチパネルの詳細を以下に説明する。
タッチパネルとして、液晶ディスプレイなどに被せて用いるタイプのタッチパネルを用いることも出来るが、センサおよび配線をガラス表面に設置しなければならず、ショーウィンドウの美観を損ねてしまうという問題がある。
そこで、図13(a)に示すような、IRーLEDおよびIRカメラを用いたタッチパネルを使用した構成が望ましい。
この構成では、プロジェクタからショーウィンドウの所定領域(タッチパネル領域)に対して、可視光を用いて映像(メニューなど)が投影される。さらに、IR−LEDからタッチパネル領域に対して、赤外線(IR)が照射される。照射された赤外線は、タッチパネルを透過するので、IR−カメラでは、黒い画像が撮影される。
なお、プロジェクタとIR−LEDとを兼用させる構成でもよい。兼用する構成では、プロジェクタから赤外線をショーウィンドウの所定領域に照射する。
タッチパネル操作者がタッチパネル上をタッチすると、タッチ位置のみ赤外線が拡散反射する。この拡散反射をIR−カメラにより撮影する。
図13(b)において、タッチパネル操作者がタッチパネル上をタッチした際にIRカメラにより撮影される画像の例を示す。全体は黒い画像だが、タッチした位置のみが白くなっている。もちろん、タッチパネル面に接している指以外にも、タッチパネルの近傍にある他の指などにより拡散反射する赤外線も画像には含まれるが、焦点距離を調整するなどの方法により、誤認識を防ぐことが出来る。
IR−カメラが撮影した画像を解析することにより、タッチパネル上における、タッチ位置を検出することが出来る。
このようにして、画像の出力とタッチ操作の検出とを、タッチパネル(またはタッチパネルを設置した透明材料)の表面または周囲にセンサおよび配線などを設けること無しに行うことが出来る。
なお、タッチパネルは、図14に示すように、三角測量の原理を用いた、通常の画像認識方式により実現してもよい。この方式を用いる場合、例えば左上方および右上方の角に設置したカメラにより指の位置を撮影するが、指と、指の背景とが判別し易いように、ショーウィンドウの周りに、反射板等を設ける構成が好ましい。
なお、本構成のタッチパネルは、グリッドシートであってもよい。この構成とすると、博物館、美術館、水族館、動物園など、展示物の前面にガラスがある場合、ガラス面に張られたグリッドシートにスキャナを用いてタッチすることにより、展示物の詳細な説明を見学者に行ったり、立体映像を見学者に見せたりすることが出来る。スキャナは、音声出力可能なブルートゥースのペンであってもよい。
例えば、動物園において、暑さのためにシロクマが動かない時でも、代わりに、活発に動くシロクマの立体映像を見学者に見せることにより、見学者の満足度を向上させ、確実にリピータとなる入園者を増やすことが出来る。
<円弧状スリットの詳細(その1)について>
図15において、上述した、パララックスバリア2のスリットのエッジ形状が円弧状である構成について、また、図16において、エッジ形状が楕円弧状である構成について、詳細に説明する。
図15(a)は、一つの画素における、R、G、Bの各サブピクセルの並びを示したものである。
なお、ピクセル、画素、絵素は、通常、同じ意味において用いられ、1個のピクセルは、複数個のサブピクセルから構成されるが、以下の説明においては、単色の単位領域をサブピクセルと呼び、R、G、およびBの各サブピクセルをまとめた単位領域を、ピクセルまたは画素と呼ぶこととする。すなわち、1画素は、RGBの3サブピクセルから構成されるとする。
すなわち、図15(a)に示す例は、1画素を、R、G、Bの3つのサブピクセルを水平方向に並べて構成するものである。左の例は、左からR、G、Bの順にサブピクセルが並び、中心の例は、左からG、B、Rの順であり、右の例は、左からB、R、Gの順に並んでいる。1画素の大きさは、高さhおよび幅Wとする。
図15(b)において、スリットを形成する各円の位置を説明すると、以下のとおりである。
まず、各円の中心点の、各行内における垂直方向の位置は、各行の中心線上となり、各行の境目からの高さ方向の距離は、高さhの半分、すなわち、0.5hとなる。
なお、各円の中心点の、水平方向の位置は、どのような立体効果を得るように表現するかにより、1画素に対する配置が異なるので、一概には特定できない。図の例では、各行の円の中心点は、傾きθを用いてずらしてある。ただし、水平方向の円同士の中心点間の距離は、1画素の幅Wに対して、ビューポイントがn個ある設定では、Wxnとなる。
また、各円の半径rも、パラメータであり、得ようとする立体効果を計算した上で、決定される必要があり、一概には特定できない。ビューミックスを多くするのであれば、半径rも大きくなり、ビューミックスを少なくするのであれば、半径rも小さくなる。もちろん、画素の大きさにも依存する。画素の大きさとビューミックスの度合い(立体効果の度合い)が関係する。
各行の円弧は、各行の境目となる直線により接続されている。各行の境目となる水平方向の直線、すなわち各行の分割線において、各行の画素を分離することが望ましい。この構成により、ビューミックスを適切に制御し、視点の移動およびジャンプポイントによる違和感を緩和しつつ、立体効果の高い画像を、画像提示対象者に提示することが出来る。
なお、ある行の片側の円弧だけが他の行に延びた構成では、左右の目に見える可視領域においてビューミックスの為に用いる他視点用の画素が、左右不釣り合いになり、立体画像が捻れて見える。
図16(a)において、スリットのエッジが円弧状である、別のスリットの例を示す。この例では、スリットのエッジは、円弧同士を、行の境目となる水平方向の分割線上において、直接接続した形である。図15(b)の、円弧の間を、直線により接続する例とは、分割線の一部を、エッジを構成する線分として、含んでいるか否かが異なる。
円弧同士を分割線上において接続するためには、各行において、スリットの右側のエッジを構成する円弧の中心点と、スリットの左側のエッジを構成する円弧の中心点とをずらす必要がある。
そのため、右側の円弧の中心点は、各行の中心線とスリットの中心線との交点よりも、スリットの中心線上において上にずれ、左側の円弧の中心点は、スリットの中心線上において下にずれる。
図16(b)において、スリットのエッジが楕円弧状である、別のスリットの例を示す。この例では、スリットのエッジは、楕円弧同士を、行の境目となる水平方向の分割線上において、直接接続した形である。
この例では、各行の中心線と楕円の長軸との交点を、楕円の中心として示している。立体効果の度合いを定めるパラメータには、前記の円の場合のパラメータに加えて、楕円の離心率(0<離心率<1、離心率=焦点間の距離/長径)も考慮する。楕円の離心率は、求める立体効果に基づき計算されるものであり、一概には定められない。
円弧を接続する場合と同様に、楕円弧を定める2個の焦点は、右側の楕円弧ではスリットの中心線上を、上方にずれ、左側の楕円弧では、下側にずれる。
なお、図16(b)では、楕円弧同士を、行の分割線上において直接接続しているが、図15(b)に示した例と同様に、各行の分割線を介して、楕円弧同士を接続する構成でもよい。
本発明の特徴は、ディスプレイを構成する画素の配列の各行において、各行の中心線上が水平方向に最もふくらんでいるスリットを用いると、さらに滑らかな水平方向の視点移動が得られることである。
図16(c)および図16(d)は、この特徴を有する他のスリットの構成例を示した図である。
図16(c)において、スリットのエッジが楕円弧状である、別のスリットの例を示す。この例では、スリットのエッジ形状は、予め定められた4点により形成される平行四辺形に内接する楕円の楕円弧同士を、行の境目となる水平方向の分割線上において、直接接続した形である。
その4点とは、すなわち、ある行において、該行の上側の分割線とスリットの中心線との交点から所定の距離Aだけ、該分割線上を、右方向にずらした点と、左方向にずらした点と、該行の下側の分割線と該スリットの中心線との交点から所定の距離Aだけ、該分割線上を、右方向にずらした点と、左方向にずらした点とである。
なお、図においては、楕円の長軸がスリットの中心線とは異なる傾きを有する事と、楕円の2個の焦点の位置とを示している。
なお、図16(c)では、楕円弧同士を、行の分割線上において直接接続しているが、図15(b)に示した例と同様に、各行の分割線を介して、楕円弧同士を接続する構成でもよい。
図16(d)に示す構成では、スリットのエッジ形状は、各行の分割線上において接続されたスプライン曲線である。このスプライン曲線は、予め定められた3点を通るスプライン曲線として求められる。
その3点とは、すなわち、ある行において、該行の上側の分割線とスリットの中心線との交点から所定の距離Aだけ、該分割線上を、右方向にずらした点と、該行の中心線と該スリットの中心線との交点から所定の距離B(B>A)だけ、該中心線上を、右方向にずらした点と、該行の下側の分割線と該スリットの中心線との交点から所定の距離Aだけ、該分割線上を、右方向にずらした点である。
この3点により、右側のスプライン曲線が構成され、左側のスプライン曲線は、右側のスプライン曲線を、スリットの中心線と該行の中心線との交点を中心として、点対称なスプライン曲線として構成される。
本発明の特徴は、楕円孤またはスプライン曲線を用いたスリットにおいて、その連結の接続点は、必ず行の分割線上に位置することである。これにより、前記と同様に立体画像の捻れを解消し、また、垂直方向の視点移動においても、連続的なビューミックスにより、次の行の画素まで滑らかに立体視することが可能となる。
<楕円弧状スリットの詳細(その2)について>
図17において、楕円弧状スリットの他の例を示す。前記の例とは、画素を構成する各サブピクセルの配置位置が異なる。すなわち、前記の例では、各サブピクセルが水平方向に並んでいたが、この例では、図17(a)に示すように、一画素を構成する各サブピクセルが、斜め方向に並んでいる。
なお、1行の高さhは、1サブピクセルの高さhとなり、1サブピクセルの幅mの3倍が1画素の幅となる。この構成では、水平方向の解像度は、3倍にすることが出来る。
この構成では、1画素が斜め方向に長いので、円をつないだスリットを用いることは出来ず、図17(b)に示すように、3サブピクセルで構成される1画素全体を囲む楕円をつないだスリットを用いる事になる。
また、図17(c)に示すような、1画素を構成する各サブピクセルをそれぞれ囲む楕円をつなぐ形状でもよい。
なお、図17(b)および図17(c)においては、発明の理解のために、本来パララックスバリア2の不透明部により隠され、画像提示対象者には視認されない部分についても、記載を行っている。本明細書の他の図面についても同様である。
また、いずれの図においても、パララックスバリア2のスリットを通して視認されるサブピクセルを、視認される状態を正確に再現するように、全て図示することも考えられるが、特徴点を強調するため、本来視認されるサブピクセルの一部を図示していなかったり、サブピクセルの配置を、説明に支障のない範囲において、ずらしていたり、どのサブピクセル同士が組になり画素を構成しているかを示したりしている点に注意が必要である。
<円弧状スリットの詳細(その3)について>
図18(a)において、各サブピクセルの配置の別の例を示す。この例では、Rのサブピクセルが左下にあり、GおよびBのサブピクセルが並んでRの右上にある。このようなサブピクセル配置に対して、複数の水滴状の曲線を接続した形状のスリットを採用してもよい。
図18(b)において、2個の画素を組み合わせた場合に用いる楕円弧スリットのうち、1個の楕円を用いて2個の画素をカバーする配置を示す。
また、図18(c)において、2個の画素を組み合わせた場合に用いる楕円スリットのうち、3個の楕円を用いて2個の画素をカバーする配置を示す。
なお、図18(b)および図18(c)に示すスリットのエッジは、図15(b)と同様に、接続する弧の間を、水平方向の行の境目となる直線を介して接続する構成でもよい。
<ジャンプポイントの緩和(スリットと画素並びとのずれ)について>
ジャンプポイントとは、少なくとも第1視点用の画像と、少なくとも第n視点用(n=視点の数)の画像とを、左右別の目により見る際に生じる逆転現象(手前の物が奥に見え、奥の物が手前に見える現象)である。
この逆転現象を緩和するには、スリットを通して、正常に見える画素の並びと逆転現象を生じさせる画素の並びとが混在して見えるようにすればよい。これによりビューミックスが生じ、見える画像が平均化されるので、多少見づらくなるものの、完全な逆転現象が回避できる。なお、ジャンプポイントの数を減らすには、視点の数を増やせばよい。
図19に示すように、斜め直線状スリットの場合は、スリットの傾き(θ1)と同一の視点からの画像を構成する画素の上下方向の傾き(θ2)とを一致させ、θ1=θ2にする必要がある。
なぜなら、θ1≠θ2とすると、スリットに沿って同一の視点用の画像を視認できなくなるからである。
ここで、画素は周期的に規則正しく配置してθ1=θ2とするが、RGBの少なくとも1行毎のずれ方を異ならせることにより、ジャンプポイントを効果的に低減できる。
なお、図20に示すように、各視点用の画素の配置がジグザグ形状か正弦波状の曲線形状であれば、RGBの1行毎のずれ方を同一にし、スリットの傾き(θ1)と同一の視点からの画像を構成する画素の上下方向の傾き(θ2)とを異ならせ、θ1≠θ2として、ジャンプポイントを効果的に低減する事も出来る。
この構成において、スリットに沿って同一の視点用の画像を概ね視認できるのは、スリットの形状がジグザグ形状または正弦波曲線形状なので、1/4周期点でジグザグ形状の角または正弦波の最大振幅点を通過する半周期分の間に、ずれを制御することが出来るからである。
なお、画素の並びは、画像提示対象者から見て不連続にならなければ、図21に示すように、途中で変化するように構成してもよい。
この図は、1本の傾きθ1のスリットにおいて、上から垂直に画素が並び、途中で画素の並びの傾きがθ2(θ2>θ1)となり、再度、画素の並びの傾きが垂直になる様子を示している。図に示すように、丸印をつけた一定の傾きの画素の並びの長さは、同じ長さである。
但し、画像発光部5dの画素の並びとパララックスバリア2のスリットの並びとは、後の設置調整する際の手間を考慮すると、ある一定の傾きを有するスリットのほうが、施工、調整は行いやすい。
注意すべき点は、スリットかまたは画素の並びか、どちらかがずれていかないと、ジャンプポイントの緩和を行うことは出来ない点である。
<ジャンプポイントを緩和する条件について>
ジャンプポイントを緩和するために必要な点は、以下の3点である。
第1の点は、行毎の画素を構成するサブピクセルの数を異ならせる点である。
第2の点は、1画素を構成するサブピクセルの数が、行方向に同じ数である場合でも、複数の行に渡り1画素を構成するサブピクセルを配置する際に、階段状にして、1サブピクセル分ずらしたり、2サブピクセル分ずらしたりして、ずらし方を異ならせて配置する点である。
第3の点は、スリット形状(スリット全体の配置形状およびスリットのエッジ形状)である。
<各種エッジ形状におけるビューミックス発生率について>
まとめると、ビューミックス発生時には、以下の2つの事が同時に行われている。
すなわち、(1)ジャンプポイントを解消する為に、スリットに沿って上下に異なる視点用の画素を、同時に目視し、平均化して見ることにより逆転現象をなくす事(厳密に言うと、スリットに沿って見える同一視点用の画素を、画像提示対象者が上から見る場合と下から見る場合とでずらすか、または、スリット全体の配置形状により、スリットに沿って見える画素を、別の視点用の画素として異ならせる)により、上下方向のビューミックスを行っている事と、(2)ジャンプポイントが解消するわけではないが、水平方向のビューミックスを発生させている事である。
水平方向に移動するときは、当然ながら、画像提示対象者の位置に対応する視点用の画素だけを見ている訳ではないので、隣り合っている画素もビューミックスにより平均化して見えているので、画像が滑らかに変化していく。
斜めのスリット形状の不利な点は、次のとおりである。
すなわち、斜めスリットの配置方向が右上から左下の場合、左下および右上(スリットの方向が左上から右下の場合は、左上および右下)の、サブピクセルの三角形の部分の領域(以下、三角領域という)が見える。
水平方向の視点移動では、三角領域がビューミックスに現れ、または、消えていく。
特に、目の位置によって、上下の行にまたがって画素が視認される場合、注視点の左右に位置する、異なる行の三角領域に起因するビューミックスにより、少し大きめの視差が生じ、画像が二重に見えることがある。
なお、注視点とは、画像提示対象者の左右それぞれの目から、スリットの中心を通り、画像表示面に達する直線を引いた場合、左目から引いた直線と画像表示面との交点が、左目の注視点となり、右目から引いた直線と画像表示面との交点が、右目の注視点となる。
ところが、階段状のスリットでは、サブピクセルの幅に渡り均一にビューミックスが生じる。水平方向の視点移動では、新たに視認できるサブピクセルの面積が線形に増加し、一定の比率において、ビューミックスが発生していく。
スリットのエッジ形状が楕円弧状の場合、注視点の左右に位置する、ビューミックスを発生させる領域の面積は、エッジ形状が階段状である場合に較べて小さいので、立体効果が高い。水平方向の視点移動では、最もふくらんだ部分からビューミックスが生じるので、新たに視認されるサブピクセルの面積は、カーブを描いて徐々に増加し、ビューミックスが発生していくという利点がある。
エッジ形状が楕円弧のスリットにおいて、楕円弧同士を分割線上において接続した構成と、楕円弧同士を分割線の一部を含んで接続した構成との違いは、上下方向に視点が移動して見た時に、楕円弧が連続的である前者の構成のほうが、綺麗に、滑らかにビューミックスを発生させられる点である。
<ビューミックスの詳細について>
まず、斜めにずらして並べた画素の並びに対して、斜めの階段状のスリットを用いることにより、1視点分の画素の幅以上を可視領域とし、スリットの幅を調整することにより容易にビューミックスを起こさせ水平方向の視点移動を滑らかにできる構成が考えられる。
次に、斜めにずらして並べた画素の並びに対して、斜めの直線状のスリットを用いることにより、スリットの左右のどちらかの上部および下部(スリットの方向により異なる)からビューミックスが起こるようにした構成が考えられる。
さらに、斜めにずらして並べた画素の並びに対して、楕円弧を斜めに繋げた形状のスリットを用いることにより、楕円の左右の腹部からビューミックスが起こるようにした構成が考えられる。この構成では、水平方向1行に一個の楕円弧が対応する配置とすると、ビューミックスの量を制御しやすい。
<斜めスリットについて>
斜めスリットの使用時には2つの方法がある。
一つの方法は、一つの画素を表現するために、水平方向に、異なる数とする方法である。具体的には、サブピクセルが、水平方向に、2個であったり、1個であったりする。1個のところは、別の視点用のサブピクセルが見えるので、ビューミックスが起こり、ジャンプポイントが緩和される。
もう一つの方法は、前記と同じことを行っているが、スリットのエッジ形状を工夫することにより、一つのサブピクセルが徐々に見える様にする方法である。
<ジグザグスリットと画素の並びについて>
図9(a)、図9(c)、および図9(f)に示す、ジグザグ形状のスリットの傾きと、斜め方向の画素の並びの傾きとをずらす構成も考えられる。
図22に示すように、スリットの傾きと画素の並びの傾きとをずらすことにより、ビューミックスを発生させることが出来る。
図22(a)は、一つの画素が、斜めに並べられたサブピクセルから構成される例である。この例では、1個の画素が、上から1行目の2個のサブピクセルと、2行目、左下の1個のサブピクセルと、3行目、左下の1個のサブピクセルとから構成されている。
1個の画素内におけるサブピクセルの傾きは、スリットの傾きより大きいので、上から4行目の画素では、その画素を表すサブピクセルを、サブピクセル2個分だけ左にずらすことにより、スリットの傾きに対応させている。
このように、サブピクセルの傾きと、各視点用の画素の水平方向のずらし方と、スリットの傾きとを制御する事により、適切なビューミックスを得ることが出来る。
図22(b)に示す例では、1画素が水平方向に並んだ3個のサブピクセルから構成され、1個の視点用の各行の画素が水平方向に1サブピクセル分ずつずれている。
この例に示すような配置では、1つの視点用の画素と別の視点用の画素が混ざって視認され、ビューミックスが発生し、ジャンプポイントが緩和される。常にビューミックスを起こさせると共に、何個かおきに、大きなビューミックスを起こすことが出来る。ずれは元の量に戻るので、ビューミックスの制御が行いやすい。
なお、前記では、ジグザグ形状を例に挙げて説明したが、図9(b)に示すような、スリットの中心線が正弦波曲線上に乗るようなスリットに対応させて、各視点用の画素の配置も、各画素の配置がほぼ正弦波曲線上に乗るように配置された、曲線形状でもよい。
<裸眼立体用の画像圧縮の方法について(その1)>
一つの圧縮方法として、以下のものがある。
まず着目すべき点として、2D画像と3D画像とでは、違いがあり、異なる圧縮方法を用いることが出来る点が挙げられる。
第1の圧縮方法として、次の方法がある。
モニタ面上に配置されているとして知覚される2Dの画像(3Dでは無いので、必然的に、モニタ面にある画像として知覚される。多くは実写画像。)は、視差がないので、通常の圧縮方法を用いて、完全に圧縮して構わない。第1の視点用から、例えば第6の視点用まで同じものを表示すればよい。
第2の圧縮方法として、次の方法がある。
飛び出して知覚される3D部分の画像に関しては、従来は、非圧縮ファイルしか扱えなかったので、別々に作成された画像を、リアルタイムでブレンドしていた。しかし、この方法では、計算用のリソースを多く必要とする欠点があった。特にハイビジョン映像の扱いが大変であった。
なお、ブレンドとは、1つのフレームバッファの中に、全ての視点用の画像データを混ぜて配置し、パララックスバリアのスリットから見ると、立体に見えるように配置する方法のことである。RGBマッピングともいう。
そこで、ブレンドした画像を適切に圧縮すればよい。そうすれば、リアルタイムでブレンドする必要は無くなる。本願にかかる発明は、圧縮済みのファイルを再生する際に用いる方法の発明である。
通常、2D実写映像をモニタ面に表示し、3Dのコンピュータグラフィックス(CG)映像をモニタ面より前に表示する。すなわち、モニタ面上の位置に知覚される2D実写映像は、視差を考える必要が無い。そこで、2D映像とする映像に関しては、視差がないので、普通に圧縮して、解凍した時に、全ての視点用の画素の表示内容として同じ表示内容を並べればよい。それ故、画像の圧縮が出来る。
3D部分については、ある視点用の画像を基準として、他の視点用の画像は、基準とした画像との差分を取っていく。
差分の取り方としては、第1の視点用画像と第2の視点用画像との差分をとり、第2の視点用画像と第3の視点用画像との差分をとる、隣の画像同士の差分をとる方法がよい。常に第1の視点用との差分を取ると、例えば、第1と第6の視点用画像の差分は大きくなり過ぎるからである。
基準とする画像は、第1の視点用を用いてもよいし、例えば全部で6視点ある場合は、第6の視点用を用いてもよいし、中間の第3の視点用を用いて第1の視点方向および第6の視点方向に、隣り合う視点用同士の差分を取っていってもよい。
次に着目すべき点として、3D部分の画素数が少ないことが挙げられる。すなわち、3D部分とする領域が小さい。
そこで、以下に説明する第3の圧縮方法を用いることが出来る。
例えば、画素数が300X300であるとすると、全部で9万画素になる。また、カラーを24ビットで表現しているので、1700万色ある。9万画素であれば、24ビット使う必要は無い。
例えば、画素数が200×200であるとすると、全部で4万画素になる。40000という数字は65000という数字よりも小さい。65000という数字は、16ビットである。
すなわち、どれだけ色数が多くても、16ビット分である。各画素が表す色が異なっていたとしても、16ビットしか使用しない。
通常、200×200の画素が全て異なることはあり得ない。また、近い色は同じ色を用いて近似することが出来る。
そこで、色情報は8ビットのみを用いて表現し、カラールックアップテーブルを用いる。このテーブルの各エントリに、色番号と用いるR、G、B値との対応を登録しておく。
例えば、カラー番号1は、R値が20、G値が36、B値が120となる。そして、RGB値が近い色は、このカラー番号1を用いて近似する。
このようにして、3D部分のデータを圧縮することが出来る。
さらに、第4の圧縮方法として、3D部分の時間軸方向における圧縮が考えられる。
表示されている3D画像が、時間と共に変化するものでなければ、たとえ各視点用の画像の視差が大きくても、時間方向にデータを圧縮することが出来る。圧縮方法は、例えば、MPEGと同様の方法を用いることが出来る。
前記の各圧縮方法を用いて圧縮した2Dおよび3Dの画像データは、再生時に解凍され、次いで合成され、再生される。
<画像フォーマットについて(その1)>
立体映像の構成は、大部分の2D映像の上に、一部、3D映像を重ねて構成されている。2Dの画像と3Dの画像とを区別して処理するためには、どの部分が2Dであり、どの部分が3Dであるかを判断するための情報が必要である。その為に、マスクを用いることが出来る。
マスクは、1ビットでよい。以下、マスクビットと呼ぶ。
例えば、図23(a)に示すように、表示する1枚の画像のうち、3Dの立体画像となる部分は、各画素のマスクビットを1とし、2Dの画像部分では、各画素のマスクビットを0とする。この例では、中央の携帯電話機の部分および右上のロゴの部分が3D画像となっている。
すなわち、マスクビットが0であれば、第1視点用から、例えば第5視点用まで、同じ画素情報を持たせればよいので、ブレンド処理が簡単になる。マスクビットが1であれば、該当する領域に対し、第1視点から第5視点までの各視点用の画像データをブレンドする必要がある。
例えば、図23(b)に示すように、記録に用いるAVIファイルの1画面分のフレームを、3×3の領域に分け、上から1行目、左から、第1の視点用、第2の視点用、第3の視点用の画像を格納し、上から2行目、左から、第4の視点用、第5の視点用の画像を格納する。
そして、これら5個の画像のうち、マスクビットが1である部分のみ、ブレンドを行えばよい。
なお、図23(c)において示すように、例えば、第1の視点から、第5の視点まで有る場合、各視点用のカメラを水平方向に5個配置し、撮影することにより、各視点用の画像を得ることが出来る。
携帯電話がカメラ側に置いてあれば、手前に飛び出す画像となり、中央であれば、立体感は無く、カメラから遠い側に置いてあれば、奥に引っ込む画像となる。
撮影データは、例えばAVIファイルとし、各視点用のAVIデータを図23(b)の分割された各領域に割り当てることにより、お互いに干渉しない、立体映像用のAVIデータを作成することが出来る。
前記のマスクビットがあれば、各視点用の画像内の、どの部分が3Dであるかを、画素あたり1ビットの情報量のみで判断出来る。
<画像フォーマットについて(その2)>
前記の画像フォーマットでは、1フレーム内の各視点用の画像領域に、2D画像と3D画像とマスクビットとを有していたが、1フレーム内の、分割された各画像領域に、3D用画像と、2D画像とを分けて保持してもよい。
例えば、図24(a)に示すように、2行3列に領域分割して、各視点用の領域には、3D部分の画像のみを格納し、背景(2D)となる部分は、右下の領域にマスクを兼用させて格納するフォーマットがある。なお、マスク情報を保持する領域を背景部分の画像領域と兼用させ、全てを1枚の画像に格納する以外に、1枚の画像とマスク情報のみが格納されたマスク用画像とを、別に用意する構成でもよい。
なお、3D部分と2D部分とを区別するために、マスク情報を用いる以外に、3D部分のみの画像領域においては、3D以外の箇所は、例えば、RGB値が全て0である黒とし、3D部分の黒は、RGB値がそれ以外の黒を用いるようにして、区別してもよい。
図24(c)は、2D画像用を別ファイルとし、3D画像ファイルの、フレームを分割した各領域に、3D画像とマスクを兼ねた黒色領域とを持たせるフォーマットの例である。
また、マスク情報は、前記のように、背景となる2D画像部分と兼用させてもよいし、各視点用の3D画像に持たせてもよい。
2Dと兼用する部分には、各視点用に共通する、最大公約数的なマスク情報のみを記録し、視点毎に異なるマスク情報は、それぞれの視点用の画像領域に持たせるフォーマットでもよい。
各視点用の3D画像にマスク情報も持たせることにより、より正確な画像合成、ブレンドを行うことが出来る。
背景画像部分では、例えば5視点分のマスク情報を保持するので、1画素あたり5ビットがマスク情報用に用いられる。
もし、5ビット分のマスク情報と、本来の背景画像の情報とを同じ画像領域に保持することが難しい場合は、「画像フォーマットについて(その1)」において説明したフォーマットを応用し、図24(b)に示すように、5視点分の2Dおよび3D画像の領域と、右下の5視点分(5ビット)のマスク情報のみを保持する領域とからなるフォーマットを用いてもよい。
なお、動かす3D部分のみ、CGにより作成し、リアルタイムでブレンドする構成でもよい。3Dのリアルタイムとは、1/30秒あるいは1/60秒で絵を計算し、表示するものである。この場合、通常のCGエンジンを用いて3DのCGをリアルタイムで作成した後、前記の6分割のフォーマットの3D画像部分の分割領域に流し込めばよい。
1フレームを9分割し、8視点分の画像を入れることも出来る。その際、残りの分割領域が無駄になるので、3行を等分割するのではなく、例えば、1行目および2行目の高さを1とすると、3行目の高さを2/3とすることにより、全ての領域に8視点分の画像を格納することが出来る。9視点であれば、等分割すればよい。
このように、視点の数が分割の数より少ない場合でも、空いた分割領域に、2D画像を入れたり、マスク情報を入れたりすると、画像領域を有効に使うことが出来る。
<画像フォーマットについて(その3)>
マスクを使う場合、実写の画像が有るほうが好ましい。前記の分割された各領域のそれぞれに2D画像が入っていた場合、3D部分とのすれがそれぞれの視点用画像において異なる。それ故、異なったずれの部分は、各視点用の画像を参照しなければならない。
例えば、第1の視点用画像において、本来ならば見える箇所が見えなくなっている事が考えられる。最大公約数的なマスクをかける場合、本来は必要である「ずれ」の部分を考慮する必要がある。
そこで、2D画像を分割した領域の中に置いておいたほうがよい。しかもマスクもあったほうがよい。
図25は、4視点のフォーマット例である。6分割し、4視点用の3D画像と、スクリーン面の位置に表示される画像として知覚される2D画像と、4視点分のマスク情報(2D画像用のマスク情報を含んでもよい)とが格納される。
図26は、5視点のフォーマット例である。1行目の高さを「1」とすると、2行目および3行目の高さは、「2/3」となっている。そして、2行目および3行目の中央の領域は、上下に分割され、「1/3」の高さとなる。これら「1/3」の高さの部分を、それぞれ、両側の領域に足すことにより、5視点分の領域と、スクリーン面に位置する2D画像と、5視点分のマスク情報(2D画像のマスク情報を含んでもよい)とが揃う。
図27に示す6視点用フォーマット例、図28に示す7視点用フォーマット例、図29に示す8視点用フォーマット例も同様である。なお、全てが3D画像である場合は、スクリーン面に位置する2D画像は不要である。
このようなフォーマットを用いることにより、手間をかけずにブレンドを行うことが出来る。
<マスク情報の圧縮時の注意点について>
前記各フォーマットは、各分割された領域に、各視点用の画像のAVIファイルを納めた、統合AVIファイルである。AVIファイルは、データ圧縮を行っているため、圧縮処理および解凍処理により、マスク位置がずれてしまう。
そこで、解凍処理後に、正常なマスク情報となるように、元の画像を作成する事が重要である。そして、解凍した時に、各ビットがマスクになるように、処理前の情報を作成しておけばよい。
なお、前記の説明は、不可逆圧縮に適用されるものであり、可逆圧縮の場合は、正常なマスク情報をそのまま圧縮および解凍すればよい。
<マスク内のフラグについて>
映像によっては、3D画像が無い部分がある。その場合、例えば5視点のフォーマットであれば、第1から第5の視点用の3D画像部分と、5視点分のマスク情報が不要である。
そこで、マスク内に、3Dの画像が無い事を示すフラグを設け、そのフラグを立てる事により、3D画像部分に関する、解凍処理、ブレンド処理などを省略することが出来る。そして、2D画像部分のみを映像として表示すればよい。
<裸眼立体用の画像圧縮の方法について(その2)>
マスクを用いて、映像を時間方向に圧縮する方法について説明する。このマスクを以下では、時間方向圧縮マスクと呼ぶ。
画像内において、各画素につき、時間方向に比較し、1フレーム前と同じ画素値(R、G、B)である事を示す、各視点用の時間方向圧縮マスクを用いる圧縮方法である。
前記では、2D画像についてマスクを用いることを述べた。さらに、3D画像部分であっても、背景であれば、時間の経過にかかわらず変化しない場合がある。例えば、珊瑚礁の海(奥行きがあるが動かない3D映像)の中を、魚(動く3D映像)が泳ぐ場合などである。
この圧縮方法により、時間方向圧縮マスクに、時間方向に変化がないという情報を示すフラグを入れておけば、前のフレームの画素情報をそのまま流用出来るので、新たに画素情報を持たせる必要がない。
例えば、ある画素につき、時間方向圧縮フラグとして1が立っていれば、画素情報は変化していることを表し、0であれば、その部分については、フレームバッファを更新する必要は無い。
<時間方向圧縮マスクの圧縮について(その1)>
以下において、時間方向圧縮マスク自体を圧縮する方法について説明する。スキャンライン方向の圧縮である。
所定のスキャンラインにおいて、マスク領域の先頭に、マスク画素数を定義するものである。
図30に示すように、時間方向圧縮マスクは、魚の部分は1であり、それ以外の部分は全て0である。魚の部分のみが動くので、魚の部分の画素のみを更新すればよい。
図31に示すように、上からn番目のスキャンラインでは、左からスキャンしていくと、左を向いた魚の部分に当たる。当たった箇所には、値として1を設定する。そして、右方向にスキャンを継続していくと、下を向いた魚の部分に当たる。当たった箇所には、値として2を設定する。
そして、図32(a)に示すように、左向きの魚の、n番目のスキャンラインに含まれる画素数がm1個であることを数え、同様に下向きの魚ではm2個であることを数える。
次に、図32(b)に示すように、時間方向圧縮テーブルを作成する。項目は、「ライン数」、「マスクスタート」、および「画素数」である。
この時間方向圧縮テーブルの値の例では、上からn番目のスキャンラインにおいては、時間方向圧縮マスクのフラグが1となる領域は2箇所あり、それぞれ、連続する画素数は、m1個およびm2個であることを示している。
時間方向圧縮マスクの各画素のフラグが、1であるか0であるかをコンペアする処理は非常に時間がかかるので、このような時間方向圧縮テーブルを用意し、時間方向圧縮マスク情報をこの時間方向圧縮テーブルの形式を用いて表す事により、処理時間を短縮する事が出来る。
なお、別の時間方向圧縮テーブル例として、図33に示すように、スキャンライン上において、左からのスキャンが各魚の領域と当たった箇所(時間方向圧縮フラグの値が1である領域のスタートポイント)をそれぞれK1、K2として、「ラインNo.」、「ラインマスクNo.」、「スタート画素No.」、「ラインマスク画素数」を項目とした時間方向圧縮テーブルを作成してもよい。
この時間方向圧縮テーブルの値の例では、上からn番目のスキャンラインにおいては、時間方向圧縮マスクの時間方向圧縮フラグが1となる領域は2箇所あり、それぞれの領域は、画素K1およびK2からスタートし、それぞれの領域内において連続する画素数(ラインマスク画素数)は、m1個およびm2個であることを示している。
<時間方向圧縮マスクの圧縮について(その2)>
さらに、「時間方向圧縮マスクの圧縮について(その1)」において説明したテーブルを圧縮する方法を説明する。この圧縮を行うのは、前記のテーブルには、各スキャンラインが、エントリとして登録されるため、大きいテーブルになってしまうからである。
そこで、マスクのあるラインを示すラインテーブルを用いる。
図34に示すように、ラインテーブルは、垂直方向にマスクの有無を示す「ラインマスク出現No.」と、「ラインNo.」と、「ラインマスク・ライン数」とを項目とする。
この例におけるラインテーブルの意味は、上から各ラインを見ていくと、ラインNo.がn1番目であるラインにおいて、マスク値が1である領域を含んだ最初のラインが出現し、このラインに続くL本のラインそれぞれに、マスク値が1である領域を含む、という意味である。
この例におけるマスクとしての状態を図35に示す。魚の上端がn1ラインから始まり、魚は(n1+L)ラインまで続いている。
このテーブルを用いれば、ラインマスク出現No.1であるラインは、上からn1番目のラインなので、上から数えて、1番目から、(n1ー1)番目までのラインに関しては、マスクの中身、すなわち時間方向圧縮テーブルのエントリを調べる手間を省くことが出来るし、その部分のデータを圧縮することも出来る。
このラインテーブルを用いる場合は、前記において説明した時間方向圧縮テーブルの構成を変更する必要がある。
図36において、変更した時間方向圧縮テーブルの例を示す。このテーブルでは、「マスクライン・シーケンシャルNo.」と、「1ライン中のマスクラインの数」と、「ラインマスクNo.」と、「スタート画素No.」と、「ラインマスク画素数」とが項目となる。
「マスクライン・シーケンシャルNo.」の項目には、1から順に番号を設定する。この番号は、ラインテーブルにおいてラインの番号を計算した後に、参照する。例えば、上からn番目のラインが、マスク値が1である領域を含んだ最初のラインなので、シーケンシャルNo.が1となり、「マスクライン・シーケンシャルNo.」が1である行が参照される。
この「マスクライン・シーケンシャルNo.」が1の行では、次の項目として「「1ライン中のマスクラインの数」がある。この値が2である場合、そのラインには、マスク値が1である領域が2個あることを示している。
「ラインマスクNo.」以下の項目は、既述のものと同様なので、説明を省略する。
<時間方向圧縮テーブルおよびラインテーブルの作成方法について>
前記の時間方向圧縮テーブルおよびラインテーブルは、フレーム毎に設けられるので、各フレームに連番を付けて、識別する。例えば、1秒間に30フレームであれば、10秒間で300フレームになるので、1番から300番の各フレームに対し、1番のフレーム用の時間方向圧縮テーブルから、300番用のラインテーブルまでが用意される。
時間方向圧縮テーブルのみを用いる場合も同様である。
なお、前記の各テーブルは、予め作成しておいてもよいし、画像ファイルのみを用意しておき、再生する際に、プレ処理として、前記の各テーブルを作成してから再生する方法でもよい。
<ブレンドについて>
ブレンド、すなわち各視点用の画素をどのようにディスプレイ表面上に配置するかは、パララックスバリアのスリットの形状と共に、ジャンプポイント緩和のために重要である。
いくつかのブレンドの例について、以下に示す。
図37に示す例では、上から1番目の行では、左の3個の長方形が第1の視点用の画素を表し、長方形それぞれがR、G、およびBのサブピクセルを表している。右側の3個の長方形が、第2の視点用の画素を表している。
行が下に行くに従い、第1の視点用の画素は、2サブピクセル分、そして、1、2、3、2、1とずれ方が変化しながらずれていく。
これに対し、スリットは、一定の傾斜の斜めスリットである。
このようにすると、スリットから知覚される画素が第1の視点用であるべきところ、他の視点用の画素も、行毎に変化するビューミックスの割合で、視認されるので、適切なジャンプポイントの緩和を行うことが出来る。
図38に示す例では、上から1行目では、第1、第3、および第5の視点用の画素が2サブピクセル分ある。そして、2行目では、第2、第4、および第1の視点用の画素が2サブピクセル分並んでいる。
これに対し、スリットは、通常の斜めの直線である。
図39に示す例では、画素の配置は図38に示すものと同じであるが、スリットのエッジの形状として、斜めに、円弧を接続したものを用いる例である。
円弧は、各行の中心となる画素を中心とした半径rの円であり、中心の画素を隠蔽しないとともに、水平方向に隣り合う他の視点用の画素の一部のみを隠蔽するように形成する。この円は、各行の中心となる画素またはサブピクセルの中心と、中心点を共用していることが望ましく、この中心点は、斜め左下に伸びる直線上にあり、円弧は、これらの円の重なりの外側となる円弧のみを接続したものであり、行の境目において接続されている。
例えば、図39に示す例では、一番上の円弧においては、1行目の第3の視点用のサブピクセルは全て見え、さらに、1行目の第2の視点用および第4の視点用のサブピクセルの一部も見えている。
図40に示す例は、水平方向に3個のサブピクセルを並べることにより1画素を構成し、第1の視点用の画素と第2の視点用の画素とが同じ行の中で隣り合って並んでいるものである。
行が下に行くに従い、最初、ある視点用の画素は、左に2サブピクセル分ずつずれていくが、途中から、右に2サブピクセル分ずつずれていく。
それ故、ある視点用の画素に注目すると、全体としては、ジグザグ形状が形成される。
スリットの中心線の傾きは、画素の配列の傾きと異なる。例えば、一番上の円弧の中心点は、第2の視点用の画素の上にあり、第2の視点用の画素が最もよく見えるが、その4行下の行では、円弧の中心点は、第2の視点用の画素の左隣にある第1の視点用の画素の上にあり、第1の視点用の画素が最もよく見える。
図41において、1行当たり2サブピクセルを用いて構成するジグザグ形状の画素配置と、円弧の中心点を結んだ中心線がジグザグ形状のスリットとを組み合わせた例を示す。
スリットの中心線の配置方法は、図40に示すものと同じであるが、1個の画素を、1行当たり2個、合計2行のサブピクセルを用いて表す関係上、円弧の半径rは、図40の半径rに較べ、より大きいものとなっている。
図42において、1行あたり、1視点あたり、1個のサブピクセルを配置し、各サブピクセルが垂直方向にジグザグに配置された、画素配置を示す。1つの長方形が1サブピクセルを表す。
スリットの全体配置の形状(スリットの中心線の形状)は、サブピクセルのジグザグ配置に合わせたジグザグ形状である。スリットのエッジは、各行のサブピクセルが縦に長いので、楕円を用いた楕円弧を連続的に接続した形状となる。楕円弧の接続は、行の境目において行われる。
スリットから見えるサブピクセルは、上から2行目においては、第2および第3の視点用のサブピクセルである。しかし、サブピクセルの配置の傾きに対し、スリットの中心線の傾きは大きいので、6行下の行においては、スリットから見えるサブピクセルは、第3および第4の視点用のサブピクセルとなる。
図43は、1画素を構成する3サブピクセルのうち、2個を1つの行に配置し、残りを隣り合う上下いずれかの行に配置する例である。各視点用の画素のジグザグ配置に合わせて、スリットの形状もジグザグ形状とする。
図では、楕円弧を用いたスリットのエッジ形状を示しているが、スリットのエッジの形状は、直線でもよいし、円弧を接続した形状でもよい。
図44は、1視点用の1画素を3個のサブピクセルにより構成し、その3個が垂直方向に連続した3行に分散され、かつ水平方向に1サブピクセル分ずつずれている配置を表したものである。そして3行毎の画素の水平方向のずれ方を変則的なものとしている。
スリットのエッジ形状としては、同一半径の円弧を繰り返し接続した形状となっている。スリットの中心線の傾きは一定である。
3行毎の、全ての視点用の画素およびサブピクセルの集合(以下、サブピクセルグループと呼ぶ)の中では、各視点用の画素の配置は同じである。
しかし、この図に示す例では、上から2番目のサブピクセルグループは、一番上のサブピクセルグループより1サブピクセル分だけ左にずれている。3番目のサブピクセルグループは、2番目のサブピクセルグループより2サブピクセル分だけ左にずれている。そして、4番目のサブピクセルグループは、3番目のサブピクセルグループより3サブピクセル分だけ左にずれている。
このように、サブピクセルグループの水平方向のずれが、1、2、3、2、1と変化し、スリットの傾きが一定なので、1つの場所から視認される各視点用の画素が変化する。
それ故、変則的なビューミックスを発生させ、ジャンプポイントの発生を適切に分散させることが出来る。
<ビューミックス、飛び出し度、および鮮明度の関係について>
円弧(楕円弧)を形成する際には、以下の指針で行う。
まず第1に、円弧の直径を大きくすると、ビューミックスの領域が増え、ジャンプポイントにおける画像のずれが低下し、見えづらい位置が減少する。但し、飛び出し度が小さくなり、多少、全体的にボケた画像となる。
次に、直径を小さくすると、ビューミックスの領域が少なくなり、ジャンプポイントにおける画像のずれが大きくなり、見えづらい位置がはっきりする。但し、飛び出し度が大きくなり、鮮明な画像となる。
<ブレンドと圧縮について(その1)>
裸眼立体表示に、ハイビジョン(1920×1080)の解像度を持つディスプレイを用いる場合、各視点用の画素のブレンド方法として、以下のものを用いることが出来る。
なお、以下の説明では、例として、6個の視点を持つ場合を考えている。
まず、第1の、画素構成およびブレンド方法の例を説明する。
各視点用の画素を構成するR、G、Bの各サブピクセルの配置は、図45(a)に示す例のように、1行内に1画素を構成するR、G、Bのサブピクセルが配置された構成である。この例では、6視点分のサブピクセル配置が分かり易いように、各視点用の画素を水平方向に離して描いているが、実際には、水平方向に連続したものである。
なお、この図では、例えば、第1の視点用の画素を構成するサブピクセルの並びは、上から1行目では、左から、G、B、Rの順であるが、2行目では、左から、R、G、Bの順であり、3行目では、左から、B、R、Gの順である。
図45(b)において、圧縮前の第k視点用画像における画素の配置を示す。例えば、「11」という表示は、圧縮後の画像における第1行第1列に位置する画素を表す。
図45(c)において、図45(b)に示す画像から、第k視点以外の視点用である部分(図において斜線で示している)を省いて、圧縮した画像を示す。
このブレンド方法では、ブレンド前の圧縮映像の解像度は、以下の計算により求めることが出来る。
ディスプレイの水平方向の解像度は1920であり、視点数は6であり、1行あたり1つの画素を表すために、このブレンド方法では、3サブピクセルを用いるので、以下の計算式が成り立つ。
(1920×3)/(3×6) = 320
すなわち、圧縮画像の水平方向の解像度として、320を用いることが出来る。
また、ディスプレイの垂直方向の解像度は1080であり、垂直方向には視点数は1であり、1列あたり1つの画素を表すために、1行を用いるので、垂直方向の解像度は、1080のままである。
図45(c)に示すように、圧縮画像のm行n列の画素に対し、k番目の視点用の画素を、kPmnと表すとする。
図46において、具体的なサブピクセル単位の配置を示す。
第1の、画素構成およびブレンド方法の例と同様に、ずれを解消するために、図45(b)における第k視点用の画素の配置がなされている。例えば、「11」、「21」、「31」の画素が同じ列に配置され、「41」、「51」、「61」の画素が1列左側の列に配置されている。
<ブレンドと圧縮について(その2)>
次に、第2の、画素構成およびブレンド方法の例を説明する。
各視点用の画素を構成するR、G、Bの各サブピクセルの配置は、図47(a)に示す例のように、2行にまたがる配置をとり、第1の視点用の画素であれば、2行目にRのサブピクセル、その右上1行目にGのサブピクセル、その右のBのサブピクセルという配置を取る。右隣の第2の視点用は、左から、G、B、右上に行き、Rの順となる。
この例では、6視点分のサブピクセル配置が分かり易いように、各視点用の画素を水平方向に離して描いているが、実際には、水平方向に連続したものである。
図47(b)において、圧縮前の第k視点用画像における画素の配置を示す。
図47(c)において、図47(b)に示す画像から、第k視点以外の視点用である部分(図において斜線で示している)を省いて、圧縮した画像を示す。
このブレンド方法では、ブレンド前の圧縮映像の解像度は、以下の計算により求めることが出来る。
ディスプレイの水平方向の解像度は1920であり、視点数は6であり、1行あたり6つの画素を表すために、このブレンド方法では、9サブピクセルを用いるので、以下の計算式が成り立つ。
(1920×3)/9 = 640
すなわち、圧縮画像の水平方向の解像度として、640を用いることが出来る。
また、ディスプレイの垂直方向の解像度は1080であり、垂直方向には視点数は1であり、1列あたり1つの画素を表すために、2行を用いるので、垂直方向の解像度は、1/2になるので、以下の計算式が成り立つ。
1080/2 = 540
図47(c)に示すように、圧縮画像のm行n列の画素に対し、k番目の視点用の画素を、kPmnと表すとする。
図48において、具体的なサブピクセル単位の配置を示す。
また、図48は、圧縮画像の1つの画素と、ハイビジョンディスプレイ上においてブレンド処理された後の、その1つの画素に対応するサブピクセルグループとの対応も示している。
この図に示すように、圧縮画像の、ある列の画素の並びに対して、このブレンド方法では、1行目のサブピクセルグループの位置に対し、2行目のサブピクセルグループは、左に3サブピクセル分だけずれており、3行目のサブピクセルグループは、2行目のサブピクセルグループに対し、右に6サブピクセルだけすれている。
3行目のサブピクセルグループは、1行目のサブピクセルグループに対し、右方向に、3サブピクセルだけずれている。
このずれを解消するために、図47(b)における第k視点用の画素の配置がなされている。例えば、「11」の画素の2行下、1列左に「21」の画素が配置され、その2行下、2列右に「31」の画素が配置されている。
<ブレンドと圧縮について(その3)>
次に、第3の、画素構成およびブレンド方法の例を説明する。
図49(a)に示すように、各視点用の画素を構成するR、G、Bの各サブピクセルの配置は、3行にまたがる配置をとり、第1の視点用の画素であれば、上から3行目にRのサブピクセル、その右上2行目にGのサブピクセル、その右上にBのサブピクセルという配置を取る。隣の第2の視点用は、下から、G、B、Rの順となる。この例では、6視点分のサブピクセル配置が分かり易いように、各視点用の画素を水平方向に離して描いているが、実際には、水平方向に連続したものである。
図49(b)において、圧縮前の第k視点用画像における画素の配置を示す。例えば、「11」という表示は、圧縮後の画像における第1行第1列に位置する画素を表す。
図49(c)において、図49(b)に示す画像から、第k視点以外の視点用である部分(図において斜線で示している)を省いて、圧縮した画像を示す。
このブレンド方法では、ブレンド前の圧縮映像の解像度は、以下の計算により求めることが出来る。
ディスプレイの水平方向の解像度は1920であり、視点数は6であり、1行あたり1つの画素を表すために、以前は3サブピクセルを用いたが、このブレンド方法では、1サブピクセルのみを用いるので3倍である。以下の計算式が成り立つ。
1920×3/6 = 960
すなわち、圧縮画像の水平方向の解像度として、960を用いることが出来る。
また、ディスプレイの垂直方向の解像度は1080であり、垂直方向には視点数は1であり、1列あたり1つの画素を表すために、以前は1行で表現していたが、このブレンド方法では、3行を用いるので、垂直方向の解像度は、1/3になる。以下の計算式が成り立つ。
1080/3 = 360
すなわち、圧縮画像の垂直方向の解像度として、360を用いることが出来る。
図49(c)に示すように、圧縮画像のm行n列の画素に対し、k番目の視点用の画素を、kPmnと表すとする。
図50において、具体的なサブピクセル単位の配置を示す。
また、図50は、圧縮画像の1つの画素と、ハイビジョンディスプレイ上においてブレンド処理された後の、その1つの画素に対応するサブピクセルグループとの対応も示している。
この図に示すように、このブレンド方法では、1行目のサブピクセルグループの位置に対し、2行目のサブピクセルグループは、左に3サブピクセルだけずれており、3行目のサブピクセルグループは、2行目のサブピクセルグループに対し、右に3サブピクセルだけずれている。1行目および3行目のサブピクセルグループ同士は、水平方向のずれは無い。
このずれを解消するために、図49(b)における第k視点用の画素の配置がなされている。例えば、「11」の画素の3行下、1列左に「21」の画素が配置され、その3行下、一列右に「31」の画素が配置されている。
<ブレンドと圧縮について(その4)>
次に、第4の、画素構成およびブレンド方法の例を説明する。
図51(a)において、各視点用の画素を構成するサブピクセルの配置を示す。
図51(b)において、圧縮前の第k視点用画像における画素の配置を示す。
図51(c)において、図51(b)に示す画像から、第k視点以外の視点用である部分(図において斜線で示している)を省いて、圧縮した画像を示す。
このブレンド方法では、ブレンド前の圧縮映像の解像度は、前記と同様の計算により求めることが出来る。
ディスプレイの水平方向の解像度は、以下の計算式が成り立つ。
(1920×3)/6 = 960
また、ディスプレイの垂直方向の解像度は、以下の計算式が成り立つ。
1080/5 = 216
図52において、画素を構成するサブピクセル単位およびサブピクセルグループの具体的な配置を示す。
このブレンド方法でもずれが発生するので、そのずれを解消するために、図51(b)における第k視点用の画素の配置がなされている。例えば、「11」の画素の5行下、同じ列に「21」の画素が配置され、その5行下、同じ列に「31」の画素が配置されている。
<ブレンドと圧縮について(その5)>
次に、第5の、画素構成およびブレンド方法の例を説明する。
各視点用の画素の配置を、図49示す。
図53(a)において、圧縮前の第k視点用画像における画素の配置を示す。
図53(b)において、図53(a)に示す画像から、第k視点以外の視点用である部分(図において斜線で示している)を省いて、圧縮した画像を示す。
このブレンド方法では、ブレンド前の圧縮映像の解像度は、前記と同様の計算により求めることが出来る。
ディスプレイの水平方向の解像度は、以下の計算式が成り立つ。
(1920×3)/6 = 960
また、ディスプレイの垂直方向の解像度は、以下の計算式が成り立つ。
1080/2.5 = 532
図54において、画素を構成するサブピクセル単位およびサブピクセルグループの具体的な配置を示す。
このブレンド方法でもずれが発生するので、そのずれを解消するために、図53(a)における第k視点用の画素の配置がなされている。例えば、「11」の画素の2行下、1列左に「21」の画素が配置され、その3行下、1列右に「31」の画素が配置されている。
<関連パラメータ間の関係について>
裸眼立体表示装置における、視覚的な立体効果の度合いに関係する各パラメータ間の関係を以下において、図55を参照しながら、説明する。
画像表示面(画像発光部5d表面)からパララックスバリア面までの空隙距離Zを決定するには、後述する方法により行うとよい。
空隙距離Zを決定するために、画像提示対象者が概ね集まる位置を想定してベストビューポイントとし、裸眼立体表示装置のモニタ面(パララックスバリア面)からベストビューポイントまでの距離を、ベストビューポイント距離(BVP距離)Lとして設定する。
また、パララックスバリアのスリットの水平方向の幅である、スリット幅Sを決定するには、後述する方法により行うとよい。
空隙距離Zを決定するために、画像提示対象者の左右それぞれの目により、スリットを通して視認される、画像表示面上の表示画像の水平方向の領域を、水平方向可視領域長Vとして設定する。
左右の目の間隔を視差Wとする。視差Wは、欧米人であれば65mm、アジア人であれば70mm、また、子供であれば50から60mmとして設定すればよい。
図55(a)において、各パラメータである、空隙距離Z、BVP距離L、スリット幅S、水平方向可視領域長V、および視差Wの位置関係を示す。
さらに、注視点および注視点間距離V/2を、以下の方法により、決定する。
まず、画像提示対象者の両目の位置を、図55(a)に示す状態になるように、設定する。図55(a)に示す状態とは、右目により視認される水平方向可視領域と、左目により視認される水平方向可視領域とが、重ならずに連続している状態である。
例えば、画像提示対象者が、図55(a)に示す状態より、裸眼立体表示装置に接近すると、前記両方の水平方向可視領域は、連続せず、離れてしまう。また、画像提示対象者が、図55(a)に示す状態より、裸眼立体表示装置から離れると、前記両方の水平方向可視領域は、重なってしまう。
次に、図55(b)に示すように、画像提示対象者の左右それぞれの目から、スリットの中心を通り、画像表示面に達する直線を引く。左目から引いた直線と画像表示面との交点が、左目の注視点となり、右目から引いた直線と画像表示面との交点が、右目の注視点となる。注視点は、それぞれの目の水平方向可視領域の中央に位置する。
従って、左右の目の注視点間距離は、V/2となる。
以上により、各パラメータを定義したので、計算により、空隙距離Zおよびスリット幅Sを求める。
図55(b)から分かるように、Z:Lと(V/2):Wとの間には、以下の数式により表される関係がある。
従って、空隙距離Zは、以下の数式(1)により表される。
また、図55(a)から分かるように、S:WとZ:(L+Z)との間には、以下の数式により表される関係がある。
従って、スリット幅Sは、以下の数式(2)により表される。
数式(1)を数式(2)に代入すると、以下の式になる。
従って、スリット幅Sは、以下の数式(3)により表される。
水平方向可視領域長Vを設定するには、楕円弧スリットを用いる場合、左右それぞれの目により視認される、水平方向の可視領域において、1つまたは複数の走査線(行)上の1つまたは複数の視点を表現する、1つまたは複数のサブピクセルにより構成される、幅D、高さHの画素が、楕円弧にピッタリ収まる楕円弧式を求める。(図56参照)
なお、ピッタリ収まるとは、画素の最外周部が楕円弧からはみ出さないように、楕円弧と接している状態である。
楕円弧式は、以下の数式(4)により表される。
ここで、b、aの比として、画素の縦横比を用いると、b=(H/D)aとなり、数式(4)に代入すると、以下の数式(5)が得られる。
P(D/2,H/2)を数式(6)に代入すると、以下のようになる。
これを、数式(5)に代入すると、以下の数式(8)が得られる。
ここで、水平方向の楕円弧の最大幅を示すK(x,y)は、y=0であるから、数式(8)より、以下のようになる。
図57(a)に示すように、可視領域の中央において、左右の目により視認される可視領域の楕円弧の最大幅が、画素に接するように設定する場合、数式(9)の結果より、以下の数式が得られる。
従って、水平方向可視領域長Vは、以下の数式(10)により求められる。
また、図57(b)に示すように、可視領域の中央において、左右の目により視認される可視領域の画素同士が接する場合、数式(9)の結果より、水平方向可視領域長Vは、以下の数式(11)により求められる。
図57(a)に示す構成例の特徴は、異なる視点用の画素を左右の目によりそれぞれしっかり視認することが出来るため、立体効果が大きいが、その結果、特に前に飛び出している画像については、わずかに見づらい場合がある点である。
一方、図57(b)に示す構成例の特徴は、異なる視点用の画素が、完全にそれぞれ左右の目により視認されるものの、一部が重なって視認されるため、立体効果がわずかに低減する点である。しかし、その分、飛び出ている画像も滑らかな画像として視認される。
いずれの構成例においても、ベストビューポイントに位置する画像提示対象者に対し、適切な立体効果を提供できることから、水平方向可視領域長Vの範囲は、以下の範囲が、最も適切な水平方向可視領域長Vの範囲である。
すなわち、
しかし、多少見づらくなるが、さらに立体効果を高めたい場合は、V≒1.41×2Dを上回る水平方向可視領域長Vを設定すればよい。
また、立体効果は多少低減するが、さらに見やすくしたい場合は、V≒1.205×2Dを下回る水平方向可視領域長Vを設定すればよい。
斜め直線状のスリットを用いた場合には、最も推奨される値として、前記2つの値の平均値となる、V≒1.3×2Dを用いることが好ましい。
当然であるが、いずれの場合でも、ベストビューポイントよりも裸眼立体表示装置に近づけば、立体効果は高くなり、見えづらくなる。さらに近づき、視差の限界点を超えれば、立体として認識できなくなる。また、ベストビューポイントよりも裸眼立体表示装置から遠ざかると、立体効果は低減し、さらに遠ざかると、完全に立体効果は無くなる。
楕円弧形状のエッジを有するスリット(楕円弧スリット)の特徴は、画像提示対象者が裸眼立体表示装置に向かって水平移動した時に、徐々に次の視点の画像が見えるようにして、極めて滑らかに、視点移動を行うことが出来る事である。
前記の水平方向可視領域長Vの算定方法は、楕円弧スリットの特徴を利用した方法であるが、従来の斜め帯状スリット(図3(b)参照)や斜め階段状スリット(図3(c)参照)においても、この水平方向可視領域長Vの算定方法を用いれば、同様に、前述した適切な立体効果を得ることが出来る。
なお、図58に示す例では、
隣り合う画素を左右の目により見る場合は、M=2Dであり、
次に、V≦3Dの場合を、図59に示す。
可視領域の両端に位置した画素を左右の目により見る場合は、M=V−Dであり、
次に、V>3Dの場合を、図60に示す。Lは、
<立体視可能な最大距離の算定>
次に、モニタ面(マスク面)からどの距離Lfまでであれば、適正な立体効果が得られるかを算定する。
図61に示すように、少なくとも視点の異なる画素が左右の目により見ることが出来る最小の水平方向可視領域長Vは、2×(画素の幅D)である。ここで左右の注視点を、Cr、Clとすると、Cr、Clから可視領域の左、右の近い方の端部までをα、左右の注視点間距離をβとすると、以下の式が成り立つ。
次に、数式(15)を数式(12)に代入すると、
この立体視適性距離Lfだけ離れた位置までが、左右の目が異なる視点の画素を見ることが出来る限界である。そして、この距離を超えると立体の効果が著しく低減し、2D画像に見えてくる。
ここで、設計視差Wより視差が大きい人では、モニタ面よりさらに離れても立体効果が得られるし、子供のように視差が小さいと、もっと手前までしか立体効果が得られないことは言うまでもない。
また、モニタ面に対して、顔が正面を向いていない場合、実効視差が小さくなり、同様に、もっと手前までしか立体効果が得られない。
以上の事から、パララックスバリアを設計する際に、この位置まで立体で見せたいという、立体視適正距離を基に、前述の式を逆算して設計することが出来る。
<立体視可能な最小距離の算定>
次に、モニタ面(マスク面)に対し、どの距離Lnまで近づいても適正な立体効果が得られるかを算定する。
本算定は、コンテンツの作成方法により、大きく異なる為、光学的に数式化することは難しい。画像提示対象者がモニタ面に対して水平に移動する際に、複数の視点の画素および/またはその一部を見て、1つの視点の画素として平均化して見えるビューミックスを生じながら視点移動するには、隣り合う異なる視点の画像に大きな視差があると、二重に見えてしまい、ビューミックスが生じない。
そのため、コンテンツを制作する際に、2眼の立体のように目前まで飛び出るように対象物を配置しないで、カメラの注視点より、少しだけ手前に配置して立体感を抑えて、実写撮影またはCGによりレンダリングする。
ところが、そのために被写体やカメラワークの演出が損なわれてしまう。2眼の立体撮影・レンダリングではカメラ間距離を人の視差と同様に65mm程度取るが、裸眼立体では、自然な演出に対応するため、隣り合うカメラ間距離を2〜3cm内外にして撮影する。
前述したように、撮影・レンダリング時の隣り合うカメラ間距離を2〜3cm内外にした場合、図62に示すように、可視領域の左右端部に幅Dの画素が配置された状態において、その画素の中心間の距離をβとすると、図63に示すように、モニタ面(マスク面)から画像提示対象者までの距離Lnは、
この算定結果は、撮影・レンダリング時の隣り合うカメラ間距離を2〜3cm内外にした場合の結果と概ね同一であり、本制作条件での立体視適性距離の算定式として、充分実用になる。
この距離より、さらにモニタ面に近づくと視差が強くなり、像を結ぶことができず、二重、三重に見えて、見づらい画像となる。
ここで、視差の小さい子供やモニタ面に対して少し左右どちらかに顔を振って見ると、さらにモニタ面に近づいても立体効果が得られる。
なお、この位置から立体として見せたいという条件でパララックスバリアを設計するには、当該距離を基にして、本算定式から逆算して設計することが出来る。
以上のことから、立体視適性範囲は、図64に示すように、立体視適性距離Lnから立体視適性距離Lfまでの範囲である。
<各パラメータを用いた実施例1>
解像度1920×1080のフルハイビジョン40インチディスプレイを対象とする。1インチは25.4mmなので、このディスプレイの表示面の幅は、以下のように計算される。
従って、R、G、Bの各サブピクセルの幅は、以下のように計算される。
BVP距離Lを、モニタ面から2.5mとし、視差Wを65mmとし、視点数を6とする。
図65に示すように、1行内に位置し、水平方向に連続したサブピクセル3個により、1つの視点用の画素を表現する場合、水平方向可視領域長Vの最適範囲は、以下の範囲となる。
V = 2×(1.205〜1.41)×(0.1537×3)
≒ 1.1113〜1.3003mm
従って、空隙距離Zは、以下の範囲となる。
Z = (1.1113〜1.3003)×2500/(2×65)
≒ 21.3712〜25.0058mm
スリット幅Sは、以下の範囲となる。
S = (1.1113〜1.3003)×65/
(2×65+(1.1113〜1.3003))
≒ 0.5509〜0.6437mm
視点数6であるから、単位当たりの、水平方向のマスク幅と水平スリット幅との合計は、以下の値になる。なお、マスク幅とは、スリット間の不透明部分の幅の事である。
6×0.1537×3 = 2.7666mm
従って、マスク幅は、以下の範囲となる。
2.7666 − (0.5509〜0.6437)
= 2.2157〜2.1229mm
ここで、V=1.3×2Dとした場合のモニタ面(マスク面)からの立体視適性範囲Ln〜Lfを求めると、以下のとおりである。
Vは、以下の計算により求まる。
すなわち、Lnは約2.0mであり、Lfは約4.6mである。
以上から、モニタ面(マスク面)から約2.0〜4.6mまでが、立体視適正範囲である。
<各パラメータを用いた実施例2>
図66に示すように、1行当たり水平方向に連続した2サブピクセルを2行分用いて、合計4個のサブピクセルにより、1つの視点用の画素を表現する場合、水平方向可視領域長Vの最適範囲は、以下の範囲となる。
V = 2×(1.205〜1.41)×(0.1537×2)
≒ 0.7408〜0.8669mm
従って、空隙距離Zは、以下の範囲となる。
Z = (0.7408〜0.8669)×2500/(2×65)
≒ 14.2462〜16.6712mm
スリット幅Sは、以下の範囲となる。
S = (0.7408〜0.8669)×65/
(2×65+(0.7408〜0.8669))
≒ 0.3683〜0.4306mm
視点数6であるから、水平方向のマスク幅と水平スリット幅との合計は、以下の値になる。
6×0.1537×2 = 1.8444mm
従って、マスク幅は、以下の範囲となる。
1.8444 − (0.3683〜0.4306)
= 1.4761〜1.4138mm
ここで、V=1.3×2Dとした場合のモニタ面(マスク面)からの立体視適性範囲Ln〜Lfを求めると、以下のとおりである。
Vは、以下の計算により求まる。
すなわち、Lnは約2.0mであり、Lfは約4.6mである。
以上から、モニタ面(マスク面)から約2.0〜4.6mまでが、立体視適正範囲である。
<各パラメータを用いた実施例3>
図67に示すように、第1の行の、1行当たり水平方向に連続した2サブピクセルと、第2の行の、1行当たり1サブピクセルと、合計2行、合計3個のサブピクセルにより、1つの視点用の画素を表現する場合、水平方向可視領域長Vの最適範囲は、以下の範囲となる。
なお、この場合、水平方向に用いられるサブピクセルの個数は、平均1.5個である。
V = 2×(1.205〜1.41)×(0.1537×1.5)
≒ 0.5556〜0.6502mm
従って、空隙距離Zは、以下の範囲となる。
Z = (0.5556〜0.6502)×2500/(2×65)
≒ 10.6846〜12.5038mm
スリット幅Sは、以下の範囲となる。
S = (0.5556〜0.6502)×65/
(2×65+(0.5556〜0.6502))
≒ 0.2766〜0.3235mm
視点数6であるから、水平方向のマスク幅と水平スリット幅との合計は、以下の値になる。
6×0.1537×1.5 = 1.3833mm
従って、マスク幅は、以下の範囲となる。
1.3833 − (0.2766〜0.3235)
= 1.1067〜1.0598mm
ここで、V=1.3×2Dとした場合のモニタ面(マスク面)からの立体視適性範囲Ln〜Lfを求めると、以下のとおりである。
Vは、以下の計算により求まる。
すなわち、Lnは約2.0mであり、Lfは約4.6mである。
以上から、モニタ面(マスク面)から約2.0〜4.6mまでが、立体視適正範囲である。
<各パラメータを用いた実施例の補足事項>
以上、楕円弧スリットの特徴を利用した、水平方向可視領域長Vの算定に基づき、パララックスバリアの設計計算を行った。
なお、スリットのエッジ形状としては、楕円弧だけではなく、斜め帯状または斜め階段状の各種スリットのいずれかを用いてもよい。
<楕円弧のエッジ形状の特徴点について>
パララックスバリアのエッジ形状に楕円弧を用いることにより、画像提示対象者が視点を移動させない場合、本来の視点用の画素が視認されると共に、ビューミックスを意図的に発生させる為に、本来の視点用の画素の両側にある、他の視点用の画素も、一部視認される。
特に、右目では本来の視点用の画素の左側に位置する他の視点用の画素(左目では、その逆)が視認され、注視点から遠くなり、左右の目で視差が出る画像ほど、他の視点用の画素が視認される面積が小さくなるように、楕円弧を形成している点である。
エッジ形状が階段状であれば、注視点から遠い位置の他の視点用の画素まで視認される場合では、その影響が大きく出てしまう。
注視点から離れた、他の視点用の画素によるビューミックスは、楕円弧の形状により、少なくなるので、極端な場合であれば、立体視に影響があるような視差を生じさせないようにしつつ、ビューミックスを発生させる点がポイントである。
前記において説明したように、モニタ面の近くから、画像提示対象者が画像を見る場合、本来見える画素より外側の画素が、多く見えてしまう。
すなわち、特に近くから見た場合に、注視点の左右の、他の視点用の画素が視認されてしまうので、像が結像しなくなってしまう場合がある。それ故、そのような場合に、スリットのエッジ形状が楕円弧であれば、注視点から遠い他の視点用の画素に関しては、ビューミックスへの影響が少なくなる。
従来、ある一定の距離Lnから一定の距離Lfまでの範囲であれば、画像提示対象者は、立体を視認することが出来、距離Lfよりモニタ面から離れると、立体感は無くなるが、2次元画像が視認されるので、画像が視認できないということは無かった。しかし、画像提示対象者が、距離Lnよりモニタ面に近づくと、画像は見えなくなってしまう。
以上のことより、本発明の、エッジ形状が楕円弧形状であるスリットは、モニタに一定程度近い場所でも画像提示対象者が画像を見る場合に、有効な技術である。
<補足事項>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。