JP2010018723A - 切込プリプレグ基材、プリプレグ積層体、および繊維強化プラスチック - Google Patents
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Abstract
【課題】良好な流動性、複雑な形状の成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、構造材に適用可能な優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現するプリプレグ基材、ならびに該プリプレグ基材の積層体、該積層体を固化せしめた繊維強化プラスチックを提供すること。
【解決手段】一方向に引き揃えられた炭素繊維と、熱硬化性樹脂を主成分とするマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材の全面に、所定の角度、投影長さをもって炭素繊維を横切る方向に複数の断続的な切込が挿入され、実質的にすべての炭素繊維が前記切込により所定の炭素繊維長さになるように分断された切込プリプレグ基材であり、所定のCAI強度、デント深さ、引張強度を備えている切込プリプレグ基材である。
【選択図】 図1
【解決手段】一方向に引き揃えられた炭素繊維と、熱硬化性樹脂を主成分とするマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材の全面に、所定の角度、投影長さをもって炭素繊維を横切る方向に複数の断続的な切込が挿入され、実質的にすべての炭素繊維が前記切込により所定の炭素繊維長さになるように分断された切込プリプレグ基材であり、所定のCAI強度、デント深さ、引張強度を備えている切込プリプレグ基材である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、良好な流動性、成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、構造材に適用可能な優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現するプリプレグ基材、およびその積層体、ならびに該積層体を固化させた繊維強化プラスチックに関する。さらに詳しくは、例えば航空機部材等に好適に用いられる繊維強化プラスチックの中間基材であるプリプレグ基材、およびその積層体、ならびに該積層体を固化して得た繊維強化プラスチックに関する。
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから産業用途においても注目され、その需要は年々高まりつつある。
高機能特性を有する繊維強化プラスチックの成形方法としては、プリプレグ基材と称される連続した強化繊維にマトリックス樹脂を含浸せしめた半硬化状態の中間基材を積層し、オートクレーブ(高温高圧釜)で加熱加圧することによりマトリックス樹脂を固化させ繊維強化プラスチックを成形するオートクレーブ成形が最も一般的に行われている。また、近年では生産効率の向上を目的として、あらかじめ部材形状に賦形した連続繊維基材にマトリックス樹脂を含浸および固化させるRTM(レジントランスファーモールディング)成形等も行われている。これらの成形法により得られた繊維強化プラスチックは、連続繊維である所以優れた力学物性を有する。また、連続繊維は規則的な配列であるため、基材の配置により必要とする力学物性に設計することが可能であり、力学物性のバラツキも小さい。しかしながら、一方で連続繊維であるが故に3次元形状等の複雑な形状を形成することは難しく、主として平面形状に近い部材に限られる。また、異物が前記繊維強化プラスチックに衝突した場合、繊維強化プラスチック内部には損傷が生じるが、損傷箇所に凹みが生じにくく、目視で外観を検査するのみでは損傷箇所を発見しづらいという問題点があった。
一方、3次元形状等の複雑な形状に適した成形方法として、SMC(シートモールディングコンパウンド)成形等がある。SMC成形は、通常25mm程度に切断したチョップドストランドに熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂を含浸せしめ半硬化状態としたSMCシートを、加熱型プレス機を用いて加熱加圧することにより成形を行う。多くの場合、加圧前にSMCシートを成形体の形状より小さく切断して成形型上に配置し、加圧により成形体の形状に引き伸ばして(流動させて)成形を行う。そのため、その流動により3次元形状等の複雑な形状にも追従可能となる。また、短繊維とすることにより、連続繊維を用いた繊維強化プラスチックに比べ異物衝突箇所の凹み量は増加する。しかしながら、SMCはそのシート化工程において、チョップドストランドの分布ムラ、配向ムラが必然的に生じてしまうため、力学物性が低下し、あるいはその値のバラツキが大きくなってしまう。さらには、そのチョップドストランドの分布ムラ、配向ムラにより、特に薄物の部材ではソリ、ヒケ等が発生しやすくなり、構造材としては不適な場合がある。
上述のような材料の欠点を埋めるべく、連続繊維と熱可塑性樹脂からなるプリプレグ基材に切込を入れることにより、流動可能で力学物性のバラツキも小さくなるとされる基材が開示されている(例えば、特許文献1,2)。しかしながら、SMCと比較すると力学特性が大きく向上し、バラツキが小さくなるものの、構造材として適用するには十分な強度とは言えない。連続繊維基材と比較すると切込という欠陥を内包した構成であるために、応力集中点である切込が破壊の起点となり、特に引張強度、引張疲労強度が低下する、という問題があった。
特開昭63−247012号公報
特開平9−254227号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、良好な流動性、複雑な形状の成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、異物衝突箇所が視覚的に確認し易く、構造材に適用可能な優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現するプリプレグ基材、およびその積層体、ならびに該積層体を固化した繊維強化プラスチックを提供することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、一方向に引き揃えられた炭素繊維と、熱硬化性樹脂を主成分とするマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材において、該プリプレグ基材の全面に炭素繊維を横切る方向に複数の断続的な切込が挿入されており、前記切込と炭素繊維とのなす角度の絶対値Θが2〜25°の範囲内であり、前記切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWsが0.1〜1.5mmの範囲内であり、実質的にすべての炭素繊維が前記切込により分断され、前記切込により分断された炭素繊維の繊維長さLが10〜100mmの範囲内であって、前記切込が挿入されたプリプレグ基材の厚みHが30〜300μmであり、繊維体積含有率Vfが45〜65%の範囲内あり、該切込が挿入されたプリプレグ基材をASTM D7137/D7137M−05に従う積層構成で、オートクレーブを用いて、圧力6kg/cm2、昇温速度1.5℃/分で25℃から昇温して180℃に達してから2時間保持して樹脂を硬化させ、ASTM D7137/D7137M−05に記載される平板状の繊維強化プラスチックに成形された場合、ASTM D7137/D7137M−05に従い測定したCAI強度が200〜400MPa、かつ、デント深さが0.18〜2mmを発現し、さらにJIS−7073(1988)に従い測定した引張強度が450〜850MPaを発現する切込プリプレグ基材、である。
また、かかる切込プリプレグ基材の少なくとも一部に有してなり、炭素繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材が複数枚積層され、前記炭素繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材が、該プリプレグ基材の繊維方向が少なくとも2方向以上に配向して一体化されているプリプレグ積層体、該切込プリプレグ基材または該プリプレグ積層体を用いて、所定の形状に成形し、繊維強化プラスチックとすることが好ましい。
本発明によれば、良好な流動性、複雑な形状の成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、異物衝突箇所が視覚的に確認し易く、構造材に適用可能な優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現するプリプレグ基材、およびその積層体、ならびに該積層体を固化した繊維強化プラスチックを得ることができる。
本発明者らは、良好な流動性、複雑な形状の成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現するプリプレグ基材を得るため、鋭意検討を重ねてきた。その結果、プリプレグ基材として、一方向に引き揃えられた強化繊維とマトリックス樹脂から構成されるプリプレグ基材という特定の基材に特定な切込パターンを挿入し、該プリプレグ基材を積層し、加圧成形することにより、構造材に適用可能な優れた力学物性を有し、そのバラツキも小さく、寸法精度も安定した繊維強化プラスチックが得られることを究明した。また、本発明の繊維強化プラスチックは、異物衝突箇所の凹み量が大きくなり易く、損傷箇所を視覚的に特定し易いという特徴があり、このような特徴が特に要求される航空機部材として適用可能であることを見出した。
本発明では、一方向に引き揃えられた炭素繊維と熱硬化性樹脂を主成分とするマトリックス樹脂からなるプリプレグ基材を用いる。なお、本発明で用いられるプリプレグ基材は、一方向に引き揃えられた強化繊維や強化繊維基材に樹脂が完全に含浸した基材に加え、樹脂シートが繊維内に完全に含浸していない状態で一体化した樹脂半含浸基材(セミプレグ:以下、半含浸プリプレグ基材を称することもある。)を含むものとする。本発明に係るプリプレグ基材は、強化繊維が一方向に引き揃えられているので、繊維方向の配向制御により任意の力学物性を有する成形体の設計が可能となる。
本発明の切込プリプレグ基材に用いられる強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維、ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維、その他、ボロン繊維、天然繊維、変性した天然繊維などを繊維として用いた強化繊維などが挙げられる。その中でも特に炭素繊維は、これら強化繊維の中でも軽量であり、しかも比強度および比弾性率において特に優れた性質を有しており、さらに耐熱性や耐薬品性にも優れていることから、軽量化が望まれる航空機、自動車などの部材に好適である。なかでも、高強度の炭素繊維が得られやすいPAN系炭素繊維が好ましい。なお、本明細書では、特に断らない限り、繊維あるいは繊維を含む用語(例えば“繊維方向”等)において、繊維とは炭素繊維を表すものとする。
本発明の切込プリプレグ基材に用いられるマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスルフォン、ABS、ポリエステル、アクリル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、塩ビ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、シリコーンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。その中でも特に熱硬化性樹脂主成分とするマトリックス樹脂を用いるのが好ましい。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂を主成分とすることにより、切込プリプレグ基材は室温においてタック性を有し、該基材を積層した際に上下の該基材と粘着により一体化され、意図したとおりの積層構成を保ったままで成形することができる。一方、室温においてタック性のない熱可塑性樹脂プリプレグ基材では、プリプレグ基材を積層した際に該基材同士が滑るため、成形時に積層構成がずれてしまい、結果として繊維の配向ムラの大きい繊維強化プラスチックとなる。特に、凹凸部を有する型で成形する際は、その差異が顕著に現れる。
さらに、熱硬化性樹脂から構成される本発明の切込プリプレグ基材は、室温において優れたドレープ性を有するため、例えば、凹凸部を有する型を用いて成形する場合、予めその凹凸に沿わした予備賦形を容易に行うことが出来る。この予備賦形により成形性は向上し、流動の制御も容易になる。
さらに、本発明のプリプレグ基材は、前記プリプレグ基材の全面に炭素繊維を横切る方向に複数の断続的な切込が挿入されており、実質的にすべての炭素繊維が前記切込により分断され、前記切込により分断された炭素繊維の繊維長さLが10〜100mmの範囲内であって、前記切込と炭素繊維とのなす角度の絶対値Θが2〜25°の範囲内であり、前記切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWsが0.1〜1.5mmの範囲内であり、前記切込が挿入されたプリプレグ基材の厚みHが30〜300μmであり、繊維体積含有率Vfが45〜65%の範囲内ある。なお、本発明において“実質的にすべての炭素繊維が切込により分断され”とは、本発明の切込により分断されていない連続繊維が引き揃えられている面積が、プリプレグ基材面積に占める割合の5%より小さいことを示す。以降、断らない限り、本発明の全面に切込を有するプリプレグ基材を切込プリプレグ基材と記す。
本発明において、繊維長さLとは、任意の切込と、任意の切込と同等の切込が、炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWsを有する繊維方向に最近接の切込(対になる切込)とにより分断される繊維の長さを指している。ここで、“切込が、炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWs”とは図1に示すとおり、切込を炭素繊維の垂直方向(炭素繊維の垂直方向2)を投影面として、切込から該投影面に垂直(繊維長手方向1)に投影した際の長さを指す。プリプレグ基材の全面に切込が挿入され、基材中の炭素繊維の繊維長さLをすべて100mm以下とすることにより、成形時に繊維は流動可能、特に繊維長手方向にも流動可能となり、複雑な形状の成形追従性にも優れる。該切込がない場合、すなわち連続繊維のみの場合、繊維長手方向には流動しないため、複雑形状を形成することは出来ない。繊維長さLを10mm未満にすると、さらに流動性が向上するが、他の用件を満たしても構造材として必要な高力学特性は得られない。流動性と力学特性との関係を鑑みると、さらに好ましくは20〜60mmの範囲内である。対になる切込以外に切り込まれて分断される繊維長さLより短い繊維も存在するが、10mm以下の繊維は少なければ少ないほどよい。さらに好ましくは、10mm以下の繊維が引き揃えられている面積が、プリプレグ基材面積に占める割合の5%より小さいのがよい。
また、切込と炭素繊維とのなす角度Θの絶対値が2〜25°の範囲内であることが本発明の大きな特徴である。Θの絶対値が25°より大きくても流動性は得ることができ、従来のSMC等と比較して高い力学特性は得ることができるが、特にΘの絶対値が25°以下であることで力学特性の向上が著しい。一方、Θの絶対値は2°より小さいと流動性も力学特性も十分得ることが出来るが、切込を安定して入れることが難しくなる。すなわち、繊維に対して切込が寝てくると、切込を入れる際、繊維が刃から逃げやすく、また、繊維長さLを100mm以下とするためには、Θの絶対値が2°より小さいと少なくとも切込同士の最短距離が0.9mmより小さくなるなど、生産安定性に欠ける。また、このように切込同士の距離が小さいと積層時の取り扱い性が難しくなるという問題がある。切込の制御のしやすさと力学特性との関係を鑑みると、さらに好ましくは5〜15°の範囲内である。なお、本発明におけるΘとは、切込上の任意の点を点Xとしたとき、点Xにおける繊維長手方向と切込とのなす角をθ(X)とすれば、Θはθ(X)の切込上の平均値、すなわち(式1)によって与えられる値とする。ここで、図8に示すように、切込の端点をそれぞれ点A、点Bとし、点Aと点Bを結び、切込に沿った曲線をCとしており、また点Xにおける曲線Cの微小線分をdsとしている。
炭素繊維の垂直方向に投影した長さWsは30μm〜100mmの範囲内であるのがよい。Wsが30μm以下となると、切込の制御が難しく、プリプレグ基材層全面に渡ってLが10〜100mmとなるよう、保障することが難しい。すなわち、切込により切断されていない繊維が存在すると基材の流動性は著しく低下するが、多めに切込を入れるとLが10mmを下回る部位が出てきてしまう、という問題点がある。さらに、プリプレグ基材に刃を押し当てることによって切込を挿入しようとする場合、裁断時に炭素繊維が繊維垂直方向に蛇行し刃から逃げるために、繊維をうまく裁断できないことがある。このような繊維逃げの影響を小さくするためには、Wsは0.1mm以上であることが好ましい。より好ましくはWsを0.2mm以上とすることで、より連続繊維を残すことなくプリプレグ基材に切込を挿入することが可能となる。
一方、力学特性の観点から好ましくは、炭素繊維の垂直方向に投影した長さWsが1.5mm以下であることが好ましい。本発明においては、切込と炭素繊維とのなす角度の絶対値Θの絶対値が2〜25°であることにより、切込長さに対して投影長さWsを小さくすることができる。そのため、1.5mm以下という極小の切込であっても、工業的に安定して設けることが可能である。Wsを小さくすることにより、一つ一つの切込により分断される繊維量が減り、強度向上が見込まれる。特に、Wsが1.5mm以下とすることで、大きな強度向上が見込まれる。また、切込長さが長ければ長いほど、積層作業時に基材の切込が開口し易くなり、基材の取り扱い性が大幅に低下する。切込が1.5mm以下であれば、積層作業時に切込が開口しにくく、基材の取り扱い性の良い切込プリプレグ基材となる。
また、本発明の切込プリプレグ基材はテープ状支持体に密着されていてもよい。テープ状支持体に密着された切込プリプレグ基材は、全ての繊維が切込により切断されてもその形態を保持することが可能となり、賦形時に繊維が脱落してバラバラになってしまうという問題はない。マトリックス樹脂がタック性を有する熱硬化性樹脂であるとさらに好ましい。ここで、テープ状支持体とは、クラフト紙などの紙類やポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリマーフィルム類、アルミなどの金属箔類などが挙げられ、さらに樹脂との離型性を得るために、シリコーン系や“テフロン(登録商標)”系の離型剤や金属蒸着等を表面に付与しても構わない。
本発明の切込プリプレグ基材を複数枚積層し、加圧しながら成形することによって得られた繊維強化プラスチックにおいては、切込開口部が非常に小さいか、または切込開口部が形成されない。この点が本発明の最大の特徴である。
本特徴を、図2、3を用いて説明する。本発明の比較として図2には、切込4と繊維3とのなす角度Θの絶対値が90°である切込プリプレグ基材7を積層した積層体10をa)、その積層体10を成形した繊維強化プラスチック11をb)に、それぞれ切込プリプレグ基材7由来の層をクローズアップした平面図と平面図のA−A断面を切り出した断面図を示した。a)に示すとおり、切込プリプレグ基材7は、繊維に垂直な切込を全面に設けられており、切込4は層の厚み方向を貫いている。繊維長さLを100mm以下とすることで、流動性が確保され、プレス成形などにより、容易に積層体10より面積が伸長した繊維強化プラスチック11を得ることができる(ただし、厚みは減る)。b)のように、伸長した繊維強化プラスチック11を得た際、切込プリプレグ基材7由来の短繊維層12は、繊維の垂直方向に伸長すると共に、繊維が存在しない領域(切込開口部)13が生成される。これは一般的に炭素繊維が成形程度の圧力では伸長しないためであり、図2のケースでは、伸張した長さ分だけ切込開口部13が生成され、例えば250×250mmの積層体10から300×300mmの繊維強化プラスチック11を得た際には、300×300mmの繊維強化プラスチック11の表面積に対して、切込開口部13の総面積は50×300mm、すなわち1/6(約16.7%)が切込開口部となる計算である。この領域13は断面図に示すとおり、隣接層14が侵入してきて、略三角形の樹脂リッチ部16と隣接層が侵入している領域とで占められる。従って、切込プリプレグ基材7を用いた積層体10を伸長して成形した場合、繊維束端部15では層のうねり17や樹脂リッチ部16が発生し、これが力学特性の低下や表面品位の低下に影響を与える。また、繊維がある部位とない部位で剛性が異なるため、面内異方性の繊維強化プラスチック11となり、ソリなどの問題から設計が難しい。また、強度の面では、荷重方向から±10°以下程度に向いている繊維が大部分の荷重を伝達しているが、その繊維束端部15では隣接層14に荷重を再分配しなければならない。その際、図2b)のように、繊維束端部15が荷重方向に垂直となっていると、応力集中が起きやすく、剥離も起こりやすい。そのため、強度向上はあまり期待できない。
図3には、本発明の切込プリプレグ基材の一例を積層した積層体10をa)、その積層体10を成形した繊維強化プラスチック11をb)に、それぞれ切込プリプレグ基材7由来の層をクローズアップした平面図を示した。a)に示すとおり、切込プリプレグ基材7は、繊維3となす角度Θの絶対値が25°以下の断続的な切込4が全面に設けられており、切込4は層の厚み方向を貫いている。切込4により繊維長さLを切込プリプレグ基材7の全面で100mm以下とすることで、流動性が確保され、プレス成形などにより、容易に積層体7より面積が伸長した繊維強化プラスチック11を得ることができる。切込長さ、切込と炭素繊維とのなす角度の絶対値を小さくすることにより、切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWsを1.5mm以下とすることができる。b)のように、伸長した繊維強化プラスチック11を得た際、切込プリプレグ基材7由来の短繊維層12は、繊維の垂直方向に伸長する際、繊維方向に繊維が伸張しないため、繊維が存在しない領域(切込開口部)13が生成されるが、隣接する短繊維群が繊維の垂直方向に流動することで、切込開口部13を埋め、切込開口部13の面積が小さくなる。この傾向は特に、切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWsを1.5mm以下とすることで顕著となり、実質的に切込開口部13が生成せず、切込開口部の層の表面における面積が層の表面積と比較して0.1〜10%の範囲内とすることができる。従って、厚み方向に隣接層が侵入することもなく、層のうねりや樹脂リッチ部のない高強度で品位の高い繊維強化プラスチック11を得ることが出来る。面内全体にくまなく繊維3が配されているため、面内での剛性差がなく、設計も従来の連続繊維強化プラスチックと同様、簡易に適用できる。この切込開口部を繊維の垂直方向の流動により埋め、層うねりのない繊維強化プラスチックを得るという画期的効果は切込と炭素繊維とのなす角度の絶対値Θの絶対値が25°以下であり、かつ切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWsを1.5mm以下とすることで初めて得ることができる。さらに好ましくはWsが1mm以下であることにより、より高強度、高品位とすることができる。
さらに好ましくは、繊維強化プラスチックの最外層において、前記切込開口部の面積が実質的に0であるのがよい。なお、切込開口部の面積が“実質的に0”とは、開口部は存在しないことが望ましいが、最外層において切込開口部の面積が繊維強化プラスチックの表面積と比較して1%以下であれば差支えが無いことを意味する。Θの絶対値が25°よりも大きければ、樹脂リッチ部やその層における繊維がない領域、すなわち隣接層の炭素繊維がのぞいている領域が最外層に生成されるため、外板部材としては適用が難しい。一方で本発明では、樹脂リッチ部や繊維がない領域が生成されにくいため、外板部材としての適用も可能となる。
プリプレグ基材の厚みHは300μmより大きくても変わらず良い流動性を得ることが出来るが、本発明は切込を有するため、分断される層厚みが大きければ大きいほど強度が低下する傾向があり、構造材に適用することを前提とするならば、300μm以下とする必要がある。一方、Hは30μmより小さくても流動性を保ち、高強度を得ることが出来るが、極めて薄いプリプレグ基材を安定的に製造するのは非常に困難であるため、低コストに本発明の効果を得るには30μm以上である必要がある。力学特性とコストとの関係を鑑みると、好ましくは50〜200μmである。
繊維体積含有率Vfは65%以下で十分な流動性を得ることができる。Vfが低いほど流動性は向上するが、Vfが45%より小さくなると、構造材に必要な高力学特性は得られない。流動性と力学特性との関係を鑑みると、さらに好ましくは55〜60%の範囲内である。
さらに本発明の切込プリプレグ基材の少なくとも一方の表面には、切込プリプレグ基材中のマトリックス樹脂より引張伸度が高い追加樹脂層を設けることが好ましい。図5に、切込プリプレグの両面に熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂からなる追加樹脂層を設けた例を示す。本発明の切込プリプレグ基材を積層、成形して得た繊維強化プラスチックは、層内から発生したクラックが層間剥離によりつながると最終破壊が起こるため、伸度の高い追加樹脂層を層間に設けることにより層間剥離が劇的に抑えられ、強度が向上する。
追加樹脂層を形成する追加樹脂としては、マトリックス樹脂として用いる熱硬化性樹脂より引張伸度の高いものなら何でもよいが、特に熱可塑性樹脂を用いるのがよい。熱可塑性樹脂は、伸度や破壊靱性値が一般的な熱硬化性樹脂に比べ高いことが知られており、効果的に本発明の強度向上効果を奏する。さらに、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフォンが樹脂特性とコストとのバランス、樹脂粘度の設計自由度の点で好ましい。追加樹脂はマトリックス樹脂との相溶性が高いほど、本発明の効果を奏するため、成形温度と同等以下の融点を持つものがよい。とりわけ、共重合等により100〜200℃程度に低融点化したポリアミドは熱硬化性樹脂との相溶性に優れており、かつ、伸引張度、引張強度、破壊靱性値も高く、好ましい。炭素繊維として炭素繊維を用い、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂、追加樹脂としてポリアミド樹脂を用いた際、最も軽量で高強度、高剛性な繊維強化プラスチックを得ることが出来る。
追加樹脂層の配置については、炭素繊維が形成する層内に入り込まず切込プリプレグ基材表面上に層状に配置されているのがよい。炭素繊維が形成する層内とは、あらかじめマトリックス樹脂を一方向に引き揃えた炭素繊維中に含浸して得た切込プリプレグ基材を示す。層間に集中的に追加樹脂層を設けることにより、より層間剥離現象を抑えることができる。また、追加樹脂が炭素繊維により形成される層内に入りこまずに層状に配置されているとは、追加樹脂が炭素繊維により形成される層中にアンカー効果が得られるような態様で配置されていないことを意味するが、少量の追加樹脂(例えば、全追加樹脂の20体積%以下)が溶融等により炭素繊維により形成される層内に入り込んでいても(つまり、一部の炭素繊維の周りにマトリックス樹脂ではなく、全追加樹脂の20体積%以下の追加樹脂が存在していても)よいことを意味する。なお、追加樹脂層の形態は、フィルム状または不織布状などいずれの形態であってもよく、プリプレグ基材の全面に均一に追加樹脂層を設けてもよいし、切込を覆う領域に集中的に追加樹脂を配してもよい。また、樹脂層を含まないプリプレグ基材の表面に粒子状の追加樹脂を散布するのみでも追加樹脂層を配することが可能である。この際、追加樹脂の厚みは炭素繊維単糸より大きく層厚みHの半分より小さいのが好ましい。
前記切込プリプレグ基材をASTM D7137/D7137M−05に従う積層構成で、オートクレーブを用いて、圧力6kg/cm2、昇温速度1.5℃/分で25℃から昇温して180℃に達してから2時間保持して樹脂を硬化させ、ASTM D7137/D7137M−05にて規定される平板状の繊維強化プラスチックに成形した場合、ASTM D7137/D7137M−05に従い測定したCAI強度が200〜400MPa、かつ、デント深さが0.18〜2mmを発現し、さらにJIS−7073(1988)に従い測定した引張強度が450〜850MPaを発現させることが可能となる。なお、CAI強度およびデント深さは、ASTM D7137/D7137M−05に従い測定し、引張強度はJIS−7073(1988)に従い測定する。切込を挿入せず、連続繊維からなる繊維強化プラスチックでは、CAI強度は高くなるが、デント深さが小さくなり易い。一方、短繊維強化プラスチックであるSMC成形品では、デント深さは大きくなるが、CAI強度は低く、構造部材として使用するのは難しい。本発明の切込プリプレグ基材を積層し、硬化させた繊維強化プラスチックは、CAI強度が高く、またデント深さも大きくなるといった両利点を兼ね備えており、従来材料には見られない特徴を有している。ここで、軽量化が求められる自動車や飛行機の部材として使用するためには、引張強度が450〜850MPa、CAI強度が200〜400MPaの範囲内であることが好ましい。さらに生産安定性を鑑みると、引張強度が500〜800MPa、CAI強度が220〜320MPaの範囲内である。
CAI強度が高く、デント深さが大きくなる材料は、特に航空機部材としての需要が高い。例えば、部材を組立中の衝撃による損傷や、航空機の運用中に受ける衝撃による損傷を目視(非破壊)で認識するためには、衝撃を受けた箇所が目視で識別できるレベルに凹部が形成される必要がある。凹部が目視できるレベルに形成されており、その時の圧縮強度が予測でき、その圧縮強度が運用に耐えうるほど充分に高いものであると、組立中の検査や運用中のメンテナンスサービス時に衝撃を受けたか否か、運用に耐えうるか否かを判断することが可能となり、航空機の品質保証・メンテナンスに極めて大きな寄与を果たす。すなわち、落錘衝撃によりデント深さが深く発現し、かつ、その状態で衝撃後圧縮強度CAIが高く発現する材料は、航空機部材として極めて高い適合性を有するといえる。
本発明における切込プリプレグ基材を製造する手法としては、プリプレグ基材を刃で裁断する方法、レーザーカッター、あるいはウォーターカッターを用いる方法など幾つか考えられるが、安価かつ生産性よく切込プリプレグ基材を製造するのであれば、複数の刃が一体化した抜き型を作製し、それをプリプレグ基材に刃を押し当てることにより切込を挿入する手法が有力である。
また、切込プリプレグ基材に断続的な切込を挿入する具体的な手段としては、特に次の2つが有用であると考えられる。
1つ目は、プレス機(昇降機)を用いて、プリプレグ基材に刃を配置した抜き型を押し当てることによって、プリプレグ基材に切込を挿入する押し切り法である。図6に、押し切り法の模式図を示す。押し切り法は、1回のプレスにより多量の切込を一度にプリプレグ基材に挿入することができるなど生産効率もよい。また、抜き型の加工も容易であり、安価に抜き型を作製することも可能である。なお、押し切り法において抜き型をプレス機に取り付ける方法としては、例えば、刃を土台となる木型などに埋め込み、抜き型としてプレス機に取り付けるのが好ましい。この手法を用いれば、抜き型の作製が容易であり、また刃の突出量などを簡単に調整することもできる。
2つ目は、予め刃を配置した回転ローラーを連続的にプリプレグ基材に押し当てることにより、プリプレグ基材に切込を挿入する回転刃法である。図7に、回転刃法の模式図を示す。回転刃法では、ローラーの回転速度を早く設定することができ、前述の押し切り法よりも速く切込プリプレグ基材を作製することができるため、有用である。
なお、押し切り法と回転刃法のいずれの手法を用いたとしても、プリプレグ基材を作製しているラインと同一ライン上、すなわちオンラインで切込の挿入を行うことが可能である。そのため、本発明の切込プリプレグ基材を作製する場合は、例えば既存のプリプレグ基材生産ラインの最終工程に切込挿入装置を配置するのみでよく、少ない投資で切込プリプレグ基材を作製することが可能である。
また、切込プリプレグ基材に挿入される切込の形状は直線状、かつ切込長さWは0.5mm〜1.5mmの範囲内であるのがよい。切込の形状を直線状とすることで、切込の挿入に必要な刃の形状が平面状となるため、抜き型の加工に要する手間が少なくなり、抜き型の製造コストが低下する。また、前述のように、切込長さを小さくすれば小さくするほど切込プリプレグ基材の力学強度も向上するが、同時に刃の長さも小さくなり、刃の耐久性が低下する。また、切込長さを0.5mm以下とすると、刃の加工費が高くなり、現実的ではない。刃の耐久性を鑑みると、切込長さは0.5mm以上であることが好ましい。一方、力学的に高強度であり、成形時に切込が開口しない程度に切込長さを小さくしようとすれば、切込長さは1.5mm以下であることが好ましい。刃の耐久性と力学強度の両側面を鑑みると、より好ましくは切込長さが0.8〜1.2mmの範囲内であるのがよい。
本発明の切込プリプレグ基材においては、前記切込により分断されたすべての炭素繊維が実質的に同一の繊維長さLであることが好ましい。繊維長さが場所毎に異なっていたとしても本発明の効果は得られるが、繊維長さを一定とすることにより、さらに力学物性のバラツキを軽減し、均一な基材流動特性を発揮することが出来る。なお、本発明における“実質的に同一の繊維長さLである“とは、切込プリプレグ基材内に含まれる炭素繊維のうち、重量にして3/4以上の炭素繊維の繊維長さがLとなることを意味する。
また、切込プリプレグ基材に連続繊維が残らないようにする工夫として、切込プリプレグ基材の切込パターンにおいて、図1に示すように切込同士で互いに切込んだ幅8を持たせることで、連続繊維が残らないようにするという手法も効果的である。このとき、切込プリプレグ基材の一部にその繊維長さがL以下となる炭素繊維が存在することになるが、切込プリプレグ基材内に含まれる炭素繊維のうち、その繊維長さがL以下となる炭素繊維が重量にして1/4以下であれば、力学物性のバラツキは小さくなり、均一な基材流動特性を発揮できると期待される。
さらに、本発明の切込プリプレグ基材を少なくとも一部に有してなる積層体であって、炭素繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材が複数枚積層され、前記炭素繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材が、該プリプレグ基材の繊維方向が少なくとも2方向以上に配向して一体化させた積層体を作製し、これを成形用基材として用いるのがよい。プリプレグ基材を積層体とすることで、成形型に基材を配置するのが容易となる。なお、本発明の切込プリプレグ基材を繊維長手方向が同一となるように複数枚積層し、この積層体をプレス成形によって繊維強化プラスチックとした場合でも本発明の効果は期待できる。ただし、この繊維強化プラスチックにおいては、繊維長手方向の強度は高強度となる一方で、炭素繊維の垂直方向の強度は低強度となる。なぜなら本発明の繊維強化プラスチックにおいては、炭素繊維の引張強度に比べ、樹脂・繊維界面の接着強度のほうがはるかに低い。そのため、すべての層が同一方向に配向している繊維強化プラスチックに対して炭素繊維の垂直方向に荷重が負荷された場合、繊維・樹脂界面において両者を引き剥がす力が発生し、繊維強化プラスチックはより低荷重で破壊に至る。そこで、荷重の負荷方向に寄らず高強度を発現しようとすれば、前記プリプレグ基材の繊維方向が少なくとも2方向以上に配向して一体化されている積層体とするのがよい。好ましい積層体の具体例としては、まず各層のプリプレグ基材の繊維長手方向が、互いに直交する2方向に分類される積層体が考えられる。この積層体では、積層枚数が少ない場合であっても等方的な力学物性を発現できるため有用である。また、もうひとつの好ましい積層体の具体例としては、プリプレグ基材積層体に含まれる任意の層の繊維長手方向を0°としたとき、他層の含まれるプリプレグ基材の繊維長手方向が45°、−45°、90°のいずれかに含まれるプリプレグ基材積層体である。45°刻みで繊維長手方向を変化させることにより、より等方的な力学物性を発揮することができる。
さらに、前述の積層体、あるいは本発明の切込プリプレグ基材を複数枚積層したものを、加熱した金型に配置し、加圧加熱することで樹脂を硬化させ、繊維強化プラスチックとするのがよい。樹脂を硬化し、繊維強化プラスチックとすることによりはじめて、軽量でありながら高強度かつ高剛性な部材として使用することが可能となる。
本発明の繊維強化プラスチックは、その形状が平滑面であったり、ゆるやかな曲面であったりした場合にも適用可能である。さらに、繊維強化プラスチックの一部に立ち面あるいはリブ形状を含む部材を成形する場合は、切込プリプレグ基材を使用するメリットが大きい。仮に連続繊維プリプレグ基材の積層体を加熱加圧し、立ち面、あるいはリブ形状を含む部材を単純にプレス成形しようとすれば、繊維が金型形状に沿うことができず、あるいは金型キャビティの端部まで繊維が充填されず、良好な品位の成形体を得るのが非常に困難である。本発明の切込プリプレグ基材を使用すれば、立ち面、あるいはリブ形状を含む部材であっても、プレス成形時に基材が高い流動性を発揮するために容易に良好な品位の成形体を得ることが可能である。
前述の通り、本発明の繊維強化プラスチックは、航空機部材として極めて高い適合性を有すると考えられる。特に、その厚みが5mm以下である薄物の繊維強化プラスチックにおいては異物衝突箇所のCAI強度が低下し易く、いかにして異物衝突箇所を検出するかが非常に重要とされるため、本発明の繊維強化プラスチックが非常に有用であると期待される。航空機部材の中でも、比較的薄物であり、本発明の繊維強化プラスチックの適用が期待される航空機部材の一例としては、スキン、ストリンガー、スティフナー、スパー、フロアビーム、リブ、フレーム、さらにはダブラーなどが挙げられる。特にこれらの部材では、その形状の一部にリブ、立ち面形状を含む場合が多く、プリプレグ基材に切込を挿入することにより高流動化した効果が大きいと期待される。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるというものではない。
<機械特性評価方法>
本実施例では、引張強度とCAI強度の2つの力学強度を測定し、本発明における繊維強化プラスチックの強度の指標としている。
本実施例では、引張強度とCAI強度の2つの力学強度を測定し、本発明における繊維強化プラスチックの強度の指標としている。
(引張試験法)
平板状の繊維強化プラスチックより、長さ250±1mm、幅25±0.2mmの引張試験片を切り出した。JIS K−7073(1998)に規定する試験方法に従い、標点間距離を150mmとし、クロスヘッド速度2.0mm/分で引張強度を測定した。なお、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)万能試験機4208型を用いた。測定した試験片の数はn=5とし、平均値を引張強度とした。さらに、測定値より標準偏差を算出し、その標準偏差を平均値で除することにより、バラツキの指標である変動係数(CV値(%))を算出した。
平板状の繊維強化プラスチックより、長さ250±1mm、幅25±0.2mmの引張試験片を切り出した。JIS K−7073(1998)に規定する試験方法に従い、標点間距離を150mmとし、クロスヘッド速度2.0mm/分で引張強度を測定した。なお、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)万能試験機4208型を用いた。測定した試験片の数はn=5とし、平均値を引張強度とした。さらに、測定値より標準偏差を算出し、その標準偏差を平均値で除することにより、バラツキの指標である変動係数(CV値(%))を算出した。
(CAI試験法)
平板状の繊維強化プラスチックより、長さ150±0.25mm、幅100±0.25mmのCAI試験片を切り出した。ASTM D7137/D7137M−05に規定する試験方法に従い、デント深さ、CAI強度を測定した。なお、パネルに与えたインパクトのエネルギーは270in・lbとし、デント深さの測定はインパクトを与えてから一日後に測定した。また、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)万能試験機4208型を用いた。測定した試験片の数はn=3とし、平均値をCAI強度とした。さらに、測定値より標準偏差を算出し、その標準偏差を平均値で除することにより、バラツキの指標である変動係数(CV値(%))を算出した。
平板状の繊維強化プラスチックより、長さ150±0.25mm、幅100±0.25mmのCAI試験片を切り出した。ASTM D7137/D7137M−05に規定する試験方法に従い、デント深さ、CAI強度を測定した。なお、パネルに与えたインパクトのエネルギーは270in・lbとし、デント深さの測定はインパクトを与えてから一日後に測定した。また、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)万能試験機4208型を用いた。測定した試験片の数はn=3とし、平均値をCAI強度とした。さらに、測定値より標準偏差を算出し、その標準偏差を平均値で除することにより、バラツキの指標である変動係数(CV値(%))を算出した。
<CFRPの評価の判断基準>
本実施例、比較例では、基材の取扱い性、表面品位(切込開口)、基材流動性の3つの指標を用いた。それぞれの判断基準は以下の通りとする。
本実施例、比較例では、基材の取扱い性、表面品位(切込開口)、基材流動性の3つの指標を用いた。それぞれの判断基準は以下の通りとする。
(基材の取り扱い性)
○:切込プリプレグ基材を両手で持ち上げ、さらにその基材を平らな面に置いたとき、基材端部がほぼ原形を保っているもの。
△:切込プリプレグ基材を両手で持ち上げ、さらにその基材を平らな面に置いたとき、基材端部の変形量が2%未満のもの。
×:切込プリプレグ基材を両手で持ち上げ、さらにその基材を平らな面に置いたとき、基材端部の変形量が2%以上のもの。
○:切込プリプレグ基材を両手で持ち上げ、さらにその基材を平らな面に置いたとき、基材端部がほぼ原形を保っているもの。
△:切込プリプレグ基材を両手で持ち上げ、さらにその基材を平らな面に置いたとき、基材端部の変形量が2%未満のもの。
×:切込プリプレグ基材を両手で持ち上げ、さらにその基材を平らな面に置いたとき、基材端部の変形量が2%以上のもの。
(表面品位(切込開口))
○:切込の開口がほとんど観察されない、切込が確認できない、あるいは開口部の面積が5mm2以下である。
△:平板表面に存在する全切込のうち、20%以下の切込が若干開口している、あるいは20%以上の切込の開口部の面積が5mm2未満となる。
×:平板表面に存在する全切込のうち、20%以下の切込が若干開口している、あるいは20%以上の切込の開口部の面積が5mm2以上となる。
○:切込の開口がほとんど観察されない、切込が確認できない、あるいは開口部の面積が5mm2以下である。
△:平板表面に存在する全切込のうち、20%以下の切込が若干開口している、あるいは20%以上の切込の開口部の面積が5mm2未満となる。
×:平板表面に存在する全切込のうち、20%以下の切込が若干開口している、あるいは20%以上の切込の開口部の面積が5mm2以上となる。
(基材流動性)
○:金型のキャビティ端部まで基材が到達している。
△:金型のキャビティ端部において未充填部が存在しており、その体積は金型のキャビティの1%未満である。
×:金型のキャビティ端部において未充填部が存在しており、その体積は金型のキャビティの1%以上である。
○:金型のキャビティ端部まで基材が到達している。
△:金型のキャビティ端部において未充填部が存在しており、その体積は金型のキャビティの1%未満である。
×:金型のキャビティ端部において未充填部が存在しており、その体積は金型のキャビティの1%以上である。
(実施例1)
まず、プリプレグ基材の作製を行った。具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(MY720、ハンツマン アドバンストマテリアル(株)製)100部、ポリエーテルスルホン(PES5003P、住友化学工業(株)製)15部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(ハンツマン アドバンストマテリアル(株)製)45部を混練し、得られた樹脂組成物をマトリックス樹脂として使用した。まず、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンにポリエーテルスルホンを加熱後溶解し、70℃まで冷却後、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを分散させた。前記手段により調整した樹脂を、リバースロールコーターを用いて塗布量が45g/m2となるように離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを作製した。さらに一方向に引き揃えた炭素繊維(引張弾性率290GPa、引張強度5900MPa)を両側から前記樹脂フィルムで挟み、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付(CF目付)が190g/m2、炭素繊維の体積含有量が56%となるプリプレグ基材を作製した。
まず、プリプレグ基材の作製を行った。具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(MY720、ハンツマン アドバンストマテリアル(株)製)100部、ポリエーテルスルホン(PES5003P、住友化学工業(株)製)15部、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(ハンツマン アドバンストマテリアル(株)製)45部を混練し、得られた樹脂組成物をマトリックス樹脂として使用した。まず、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンにポリエーテルスルホンを加熱後溶解し、70℃まで冷却後、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを分散させた。前記手段により調整した樹脂を、リバースロールコーターを用いて塗布量が45g/m2となるように離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを作製した。さらに一方向に引き揃えた炭素繊維(引張弾性率290GPa、引張強度5900MPa)を両側から前記樹脂フィルムで挟み、加熱加圧して樹脂を含浸させ、炭素繊維目付(CF目付)が190g/m2、炭素繊維の体積含有量が56%となるプリプレグ基材を作製した。
次にプリプレグ基材の表面に粒子状の熱可塑性樹脂を散布し、追加樹脂層を設けた。具体的には、4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタンを含有するポリアミド(エムザベルケ社製“グリルアミド(登録商標、以下同じ)”−TR55)90重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製“jER(登録商標、以下同じ)”828)8重量部およびジアミノジフェニルメタン(三井武田ケミカル(株)製“MDA−220”)2重量部をクロロホルム300重量部とメタノール100重量部の混合溶媒中に添加して均一溶液を得た。次に該溶液を塗装用のスプレーガンを用いて霧状にして、よく攪拌した3000重量部のn−ヘキサンの壁面に向かって吹き付けて溶質を析出させた。析出した固体を濾別し、n−ヘキサンでよく洗浄した後、100℃24時間の真空乾燥を行い、粒子状の熱可塑性樹脂(ポリアミドの粒子)を得た。この粒子状の熱可塑性樹脂を、前記プリプレグ基材の両側に7g/m2散布した。このようにして、プリプレグ基材の両面に熱可塑性樹脂を含む追加樹脂層を設けた。得られたプリプレグ基材の厚みをデジタルマイクロノギスで測定したところ、0.19mmであった。
さらに前記プリプレグ基材に切込を挿入した。まず、500mm×500mm、厚さ5mmの金属板から、刃を多数削り出し、プリプレグ基材に切込を挿入するための抜き型を作製した。図4に抜き型の刃の配置図を示す。抜き型18の中央部400×400の領域に、長さ1.5mmの刃19が間隔1.5mmで複数並んでおり、刃からなる列20を形成している。この刃からなる列と抜き型の基準方向21とのなす角α(23)は20°である。さらに、隣接する刃からなる列は、抜き型の基準方向に15mmの間隔24で配置されており、隣接する刃からなる列は互いに基準方向と垂直な方向22に半位相ずれている。次に、この抜き型をプレス機に取り付け、抜き型の基準方向と基材の送り方向(プリプレグ基材の繊維長手方向)が一致するようにプリプレグ基材を送りつつ、抜き型をプリプレグ基材に押し当て、プリプレグ基材に切込を挿入した。得られた切込プリプレグ基材の切込パターンは、図4の刃の配置図がそのまま転写されたパターンとなった。得られた切込プリプレグ基材の表面を、デジタルマイクロスコープを用いて撮影し、倍率が100倍となるようにプリントアウトし、曲線定規を用いて切込長さW、繊維長さL、投影長さWsを計測したところ、それぞれ、W=1.5mm、L=30mm、Ws=0.51mmであった。また、切込の中心線を20等分し、各微小線分と繊維長手方向とのなす角を分度器で計測し、その平均値を切込と炭素繊維とのなす角度の絶対値Θとすると、Θは20°であった。
さらに、前述の切込プリプレグ基材を積層し、切込プリプレグ積層体を得た。まず、前述の手順により作製した切込プリプレグ基材に、繊維長手方向(0°方向)と、繊維長手方向から右に45度ずらした方向(45°方向)に、それぞれ250×250mmの大きさに切り出した。該基材はタック性を有していた。次に、切り出した切込プリプレグ基材を、16層疑似等方([−45/0/+45/90]2S)に積層し、250×250mmの切込プリプレグ積層体を得た。このとき、積層体の厚みを、デジタルノギスを用いて計測すると3.1mmであった
この切込プリプレグ積層体をプレス成形することにより、引張試験用平板を作製した。前記積層体を300×300mmのキャビティを有する平板金型上の中央部に配置した後、加熱型プレス成形機により、6MPaの加圧のもと、180℃×120分間の条件により硬化せしめ、300×300mmの平板状の繊維強化プラスチックを得た。金型を上から見たときの金型面積に対する基材の面積の割合をチャージ率と定義すると、チャージ率は70%に相当する。得られた繊維強化プラスチックは繊維のうねりがなく、その端部まで繊維が均等に流動していた。全体的にソリもなく、最外層の切込においても、炭素繊維が存在せずに樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。また、この平板の厚みを、デジタルノギスを用いて計測すると2.2mmであった。プレス成形により基材が伸張したために、積層体の厚みよりも成形板の厚みのほうが小さくなることが確認できた。
この切込プリプレグ積層体をプレス成形することにより、引張試験用平板を作製した。前記積層体を300×300mmのキャビティを有する平板金型上の中央部に配置した後、加熱型プレス成形機により、6MPaの加圧のもと、180℃×120分間の条件により硬化せしめ、300×300mmの平板状の繊維強化プラスチックを得た。金型を上から見たときの金型面積に対する基材の面積の割合をチャージ率と定義すると、チャージ率は70%に相当する。得られた繊維強化プラスチックは繊維のうねりがなく、その端部まで繊維が均等に流動していた。全体的にソリもなく、最外層の切込においても、炭素繊維が存在せずに樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。また、この平板の厚みを、デジタルノギスを用いて計測すると2.2mmであった。プレス成形により基材が伸張したために、積層体の厚みよりも成形板の厚みのほうが小さくなることが確認できた。
さらに前述の手段に従い、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックの引張試験を行った。引張弾性率は51GPaとほぼ理論値通り発現し、また、引張強度に関しても650MPaと高い値が発現し、そのCV値も5%ときわめてバラツキの小さい結果となった。これらの結果から構造材としての適用、外板部材への適用が可能な力学特性と品位が得られたことがわかった。また、得られた繊維強化プラスチックを切り出し、切り出し面が0°である層に注目すると、層うねりや繊維が存在しない部位がなく、樹脂リッチ部もほとんど存在しなかった。
また、オートクレーブ成形によってCAI試験用平板を成形し、前述の手段に従いCAI試験を行った。前記積層体をオートクレーブ内にて、6kg/cm2の加圧下で、昇温速度2℃/分でオートクレーブの内部温度を上昇させ、前記内部温度が180℃に達してから120分温度を保持し、樹脂を硬化させることにより、250×250mmの平板状の繊維強化プラスチックを得た。このときの板厚は、4.5mmであった。このようにして得られた平板に対してCAI強度、デント深さを測定したところ、デント深さは0.24mmと大きい値となり、数メートル離れた箇所から試験片表面を目視で観察するのみでも損傷箇所を特定することができた。衝撃部の断面観察を行うと、後述する比較例1の連続繊維プリプレグ基材を用いた繊維強化プラスチックでは、層間剥離が広域的に進展していたが、今回の繊維強化プラスチックでは層間剥離した領域は小さいが、面外方向に大きな変形を生じていることが確認できた。プリプレグ基材に切込を挿入することによって、衝撃によって吸収したエネルギーが層間剥離ではなく、面外方向の変形に使用されるようになり、層間剥離を抑制できたものと示唆される。また、CAI強度は270MPaと非常に高い値となり、後述する比較例1の切込を含まない繊維強化プラスチックと比較しても遜色のない強度を発揮した。したがって本発明の繊維強化プラスチックは、大きなデント深さを発生させながらも、高いCAI強度を発揮できるという特有な利点があることが確認でき、航空機部材として十分に適用可能であることが確認できた。
(実施例2〜4)[切込長さ(投影長さ)比較(表1)]
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。具体的には、実施例1では、抜き型の刃の長さと刃の間隔を共に1.5mmとしたが、実施例2では共にW=1mm(Ws=0.34mm)、実施例3では共にW=3mm(Ws=1.0mm)、実施例4では共に4.4mm(Ws=1.5mm)とした。
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。具体的には、実施例1では、抜き型の刃の長さと刃の間隔を共に1.5mmとしたが、実施例2では共にW=1mm(Ws=0.34mm)、実施例3では共にW=3mm(Ws=1.0mm)、実施例4では共に4.4mm(Ws=1.5mm)とした。
プレス成形によって得られた繊維強化プラスチックは、実施例2〜4のいずれにおいても繊維のうねりがなく、その端部まで繊維が均等に流動していた。全体的にソリもなく、最外層の切込においても、樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。引張弾性率は50〜51GPaとほぼ理論値通り発現し、また、引張強度に関しては、実施例2では660MPa、実施例3では610MPa、実施例4では580MPaといずれも高い値となり、引張強度のCV値も4〜6%ときわめてバラツキの小さい結果となった。この結果より、切込長さを小さくすれば小さくするほど、引張強度が向上することが確認できた。また、CAI強度、デント深さに関しては、実施例1とほぼ同等のレベルであった。
(実施例5〜7)[切込角度の比較(表2)]
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。抜き型に配置された前記刃からなる列と抜き型の基準方向とのなす角αを、実施例5は角度が5°(Ws=0.13mm)、実施例6は10°(Ws=0.26mm)、実施例7は25°(Ws=0.63mm)とした。
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。抜き型に配置された前記刃からなる列と抜き型の基準方向とのなす角αを、実施例5は角度が5°(Ws=0.13mm)、実施例6は10°(Ws=0.26mm)、実施例7は25°(Ws=0.63mm)とした。
プレス成形により得られた繊維強化プラスチックはいずれも繊維のうねりがなく、その端部まで繊維が均等に流動していた。また、ソリもなく、最外層の切込においても、炭素繊維が存在せずに樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。いずれの水準においても、引張弾性率は50〜51GPa、引張強度は600〜700MPaと高い値であり、引張強度のCV値は5〜6%とバラツキの小さい結果であった。特に切込角度の小さな実施例5、6では650MPa以上の引張強度を発現した。また、CAI強度、デント深さに関しては、実施例1とほぼ同等のレベルであった。
(実施例8〜10)[繊維長さの比較(表3)]
実施例1の切込パターンにおいて、切込の間隔を変えることにより繊維長さLを変えた以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれLは、実施例8では10mm、実施例9では60mm、実施例10では100mmとした。
実施例1の切込パターンにおいて、切込の間隔を変えることにより繊維長さLを変えた以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれLは、実施例8では10mm、実施例9では60mm、実施例10では100mmとした。
プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは実施例8を除いて繊維のうねりなく、その端部まで繊維が充分に流動していた。実施例8は若干の繊維のうねりと金型との摩擦を受ける表面部で端部まで繊維が十分流動してない部位があった。その他、いずれの繊維強化プラスチックもソリがなく、最外層の切込においても、炭素繊維が存在せずに樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。引張弾性率49〜50GPa、引張強度は600〜700MPaと高い値であり、引張強度のCV値も4〜6%とバラツキの小さい結果であった。また、CAI強度、デント深さに関しては、実施例1とほぼ同等のレベルであった。
(実施例11、12)[基材厚みの比較(表4)]
実施例1のプリプレグ基材の炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量を変えることにより切込プリプレグ基材厚みを変え、それ以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。実施例11では炭素繊維目付を50g/m2、樹脂フィルム目付を12g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を2g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.05mmとなる切込プリプレグ基材を得た。実施例12では単位面積あたりの炭素繊維重さを300g/m2、樹脂フィルム目付を71g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を11g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.3mmとなる切込プリプレグ基材を得た。なお、実施例11、12において、炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量の比は実施例1と同じとしている。
実施例1のプリプレグ基材の炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量を変えることにより切込プリプレグ基材厚みを変え、それ以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。実施例11では炭素繊維目付を50g/m2、樹脂フィルム目付を12g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を2g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.05mmとなる切込プリプレグ基材を得た。実施例12では単位面積あたりの炭素繊維重さを300g/m2、樹脂フィルム目付を71g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を11g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.3mmとなる切込プリプレグ基材を得た。なお、実施例11、12において、炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量の比は実施例1と同じとしている。
プレス成形により得られた繊維強化プラスチックはいずれも繊維のうねりなく、その端部まで繊維が充分に流動しており、ソリもなく、最外層の切込においても、炭素繊維が存在せずに樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。引張弾性率はいずれも50〜51GPaであり、引張強度は実施例11では790MPaと高く、引張強度のCV値は5%とバラツキの小さい結果であった。切込プリプレグ基材厚みを薄くすることで引張強度が向上することがわかった。一方、実施例12では引張強度は510MPaと他の実施例と比較すると若干低い値となったが、本来プリプレグ基材の厚みが厚ければ厚いほど引張強度は低くなる傾向にあり、基材厚みが0.3mmと厚いプリプレグ基材としては高強度である。厚みのある繊維強化プラスチックを少ない積層回数で作製しようと考えた場合、実施例12で作製した切込プリプレグ基材も有用である。
(実施例13、14)[繊維含有率の比較(表5)]
実施例1のプリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることにより繊維体積含有率Vfを変えた以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれ実施例13が単位面積あたりの炭素繊維重さが221g/m2、Vfが65%、実施例14が153g/m2、Vfが45%とした。
実施例1のプリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることにより繊維体積含有率Vfを変えた以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれ実施例13が単位面積あたりの炭素繊維重さが221g/m2、Vfが65%、実施例14が153g/m2、Vfが45%とした。
実施例13において、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは若干の繊維のうねりと金型との摩擦を受ける表面部で端部まで繊維が十分流動してない部位があった。一方、実施例14において、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは繊維のうねりなく、その端部まで繊維が充分に流動していた。その他、どちらの繊維強化プラスチックもソリがなく、最外層の切込においても、炭素繊維が存在せずに樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。引張弾性率に関しては、実施例13では59GPa、実施例14では41GPaであった。また、引張強度に関しては、実施例13では710MPa、実施例14では540MPaと高い値であり、CV値も6〜7%とバラツキの小さい結果であった。Vfが大きくなるほど、引張弾性率も強度も向上するという結果となったが、あまりVfが大きいと流動性が落ちるという難点があった。
(実施例15)[裁断方法の比較]
実施例1の切込パターンにおいて、平板状の金属を削りだす代わりに、円柱状の金属を削りだし円周上に複数の刃を設けて回転刃ローラーとし、該回転刃ローラーをプリプレグ基材に押し当てることによって切込プリプレグ基材を得た。使用した金属ローラーは、軸方向長さ40cm、直径150mmの円柱状のローラーである。このローラーから実施例1と同様の切込パターンとなるように多数の刃を削りだし、回転刃ローラーを作製した。この回転刃ローラーと、これに対となるゴムローラーを、互いのローラーの軸が平行となるように、かつ互いに接するように配置した。さらに、両ローラーを回転させつつ、両ローラーの間に基材を送り込むことによって、プリプレグ基材に切込を挿入した。
実施例1の切込パターンにおいて、平板状の金属を削りだす代わりに、円柱状の金属を削りだし円周上に複数の刃を設けて回転刃ローラーとし、該回転刃ローラーをプリプレグ基材に押し当てることによって切込プリプレグ基材を得た。使用した金属ローラーは、軸方向長さ40cm、直径150mmの円柱状のローラーである。このローラーから実施例1と同様の切込パターンとなるように多数の刃を削りだし、回転刃ローラーを作製した。この回転刃ローラーと、これに対となるゴムローラーを、互いのローラーの軸が平行となるように、かつ互いに接するように配置した。さらに、両ローラーを回転させつつ、両ローラーの間に基材を送り込むことによって、プリプレグ基材に切込を挿入した。
得られた切込プリプレグ基材は、実施例1の切込プリプレグ基材とほぼ同等であり、両者の間に明確な差異は観察されなかった。実施例1〜14にて実施した押し切り法と同様に、本実施例の回転刃法も、切込を挿入する手法として有用であることが確認できた。
(実施例16) [追加樹脂層の有無(表6)]
プリプレグ基材表面に熱可塑性の粒子を散布しないこと以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。
プリプレグ基材表面に熱可塑性の粒子を散布しないこと以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。
オートクレーブを用いて成形された繊維強化プラスチックのCAI試験を実施すると、CAI強度は220MPaと、実施例1と比較して低強度となり、実施例1の方が航空機部材に適していることが確認できた。
以下、比較例を示す。
(比較例1)[切込なしプリプレグ基材との比較]
プリプレグ基材に切込を入れなかった他は、実施例1と同様とした。
プリプレグ基材に切込を入れなかった他は、実施例1と同様とした。
プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは、積層体の段階からほとんど流動することなく、ほぼ250×250mmの大きさであり、マトリックス樹脂が搾り出されて金型との隙間に樹脂バリが出来ていた。樹脂が搾り出されているため、表面ががさがさしており、製品には適用できなさそうだった。
オートクレーブ成形により得られた繊維強化プラスチックのCAI試験を実施した結果、CAI強度は300MPaと非常に高いものの、デント深さは0.15mmと小さかった。また、3メートルほど離れたところから試験片表面を目視で観察したところ、損傷箇所が確認しづらかった。
(比較例2、3)[切込長さ(投影長さ)比較(表1)]
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。具体的には、実施例1では、抜き型の刃の長さと刃の間隔を共に1.5mmとしたが、比較例2では共にW=10mm(Ws=3.4mm)とし、比較例3では共にW=0.25mm(Ws=0.086mm)とした。
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。具体的には、実施例1では、抜き型の刃の長さと刃の間隔を共に1.5mmとしたが、比較例2では共にW=10mm(Ws=3.4mm)とし、比較例3では共にW=0.25mm(Ws=0.086mm)とした。
比較例2において、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは繊維のうねりがなく、その端部まで繊維が均等に流動しており、全体的にソリもなかった。ただし、繊維強化プラスチック表面を観察すると、切込が開口しており、開口部には樹脂だまり、あるいは下層の炭素繊維を観察することができるなど、表面品位が悪かった。
また比較例3においては、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは、金型のキャビティ全面に繊維が流動しきっておらず、端部に樹脂リッチ部が見られた。そこで、切込プリプレグ基材を有機溶剤のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に浸漬し、樹脂部を溶解させ、残った繊維を観察すると、繊維長さが10cmを越える連続繊維が多く残っていた。繊維がうまく裁断されていなかったことが、流動性を悪化させた原因であると考えられた。
(比較例4,5)[切込角度(投影長さ)比較(表2)]
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。具体的には、実施例1では、抜き型の刃の長さと刃の間隔を共に1.5mmとしたが、比較例4では共にα=2°(Ws=0.05mm)、比較例5では45°(Ws=1.1mm)とした。
切込を挿入する際に使用した抜き型を変更する以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。具体的には、実施例1では、抜き型の刃の長さと刃の間隔を共に1.5mmとしたが、比較例4では共にα=2°(Ws=0.05mm)、比較例5では45°(Ws=1.1mm)とした。
比較例4については、切込角度が小さいため、切込同士の間隔が0.5mm程度と小さく、裁断や積層に難があった。プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは、若干繊維がうねっていたが、端部まで繊維が流動していた。ソリはなく、最外層の切込においても、炭素繊維が存在せずに樹脂リッチ部または隣接層の炭素繊維がのぞいている部位はほとんどなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。引張弾性率は51GPa、引張強度は720MPaと高かったが、引張強度のCV値が10%と高く、生産安定性に欠けていた。
一方、比較例5おいて、プレス成形によって得られた繊維強化プラスチックは繊維のうねりがなく、その端部まで繊維が均等に流動しており、全体的にソリもなかった。ただし、繊維強化プラスチック表面を観察すると、切込が開口しており、開口部には樹脂だまり、あるいは下層の炭素繊維を観察することができた。引張弾性率は49GPaとほぼ理論値通りの値であったが、引張強度は570MPaと実施例1と比べると低い値であった。
(比較例6,7)[繊維長さ比較(表3)]
隣接する刃からなる列の基準方向の間隔を変更する、すなわち切込プリプレグ基材の繊維長さLを変えた以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれLは、比較例6では7.5mm、比較例7では120mmとした。
隣接する刃からなる列の基準方向の間隔を変更する、すなわち切込プリプレグ基材の繊維長さLを変えた以外は、実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれLは、比較例6では7.5mm、比較例7では120mmとした。
比較例6においては、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは、その端部まで繊維が十分に流動していたが、場所によっては繊維がうねっていたり、切込が開口していたりする箇所が観察できた。また、引張強度は550MPaと高い値であったが、そのCV値は10%となりバラツキが大きく、生産安定性に欠けていた。
比較例7において、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは、金型のキャビティ全面に繊維が流動しきっておらず、端部に樹脂リッチ部が見られた。繊維長さが大きすぎたために十分な流動性が得られなかったものと考えられた。
(比較例8、9)[層厚みの比較(表4)]
実施例1のプリプレグ基材の炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量を変えることにより切込プリプレグ基材厚みを変え、それ以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。比較例8では炭素繊維目付を25g/m2、樹脂フィルム目付を6g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を1g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.025mmとなる切込プリプレグ基材を得た。比較例9では単位面積あたりの炭素繊維重さを400g/m2、樹脂フィルム目付を94g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を15g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.4mmとなる切込プリプレグ基材を得た。なお、比較例8、9において、炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量の比は、実施例1と同じとしている。
実施例1のプリプレグ基材の炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量を変えることにより切込プリプレグ基材厚みを変え、それ以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。比較例8では炭素繊維目付を25g/m2、樹脂フィルム目付を6g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を1g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.025mmとなる切込プリプレグ基材を得た。比較例9では単位面積あたりの炭素繊維重さを400g/m2、樹脂フィルム目付を94g/m2、熱可塑性樹脂の散布量を15g/m2とすることにより、基材厚みがおよそ0.4mmとなる切込プリプレグ基材を得た。なお、比較例8、9において、炭素繊維目付、樹脂フィルム目付、熱可塑性樹脂の散布量の比は、実施例1と同じとしている。
比較例8において、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックはいずれも繊維のうねりなく、その端部まで繊維が充分に流動しており、ソリもなかった。しかしながら、基材厚みが極めて薄いため、炭素繊維を均一に配置することが難しく所々に目すきのある切込プリプレグ基材となった。そのため、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックも所々に目すきが生じており、外観品位が悪かった。
また、比較例9において、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは、繊維のうねりなく、その端部まで繊維が充分に流動しており、ソリもなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。しかしながら、引張強度は400MPaと実施例1や実施例11,12と比較してかなり低くなることがわかった。
(比較例10、11)[繊維含有率の比較(表5)]
実施例1の切込プリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることにより繊維体積含有率Vfを変えた以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれ比較例10が単位面積あたりの炭素繊維重さが237g/m2、Vfが70%、比較例11が135g/m2、Vfが40%とした。
実施例1の切込プリプレグ基材の単位面積あたりの炭素繊維重さを変えることにより繊維体積含有率Vfを変えた以外は実施例1と同様にして繊維強化プラスチックを得た。それぞれ比較例10が単位面積あたりの炭素繊維重さが237g/m2、Vfが70%、比較例11が135g/m2、Vfが40%とした。
比較例10において、プレス成形により得られた繊維強化プラスチックは繊維がうねり、金型との摩擦を受ける表面部で端部まで繊維が流動していなかった。表面部には樹脂リッチ部が存在し、外観品位は悪く、ソリも発生した。比較例11で得られた繊維強化プラスチックはソリがなく、良好な外観品位、平滑性を保っていた。しかしながら、引張弾性率36GPa、引張強度440MPaと実施例1や実施例13,14と比較してかなり低い値であった。
(比較例12)[短繊維ランダム配向シート]
実施例1と同様のエポキシ樹脂組成物を厚めに塗布した樹脂フィルムを作成した。次に、長さ25mmにカットされた炭素繊維束(引張弾性率290GPa、引張強度5900MPa、12,000本)を単位面積あたりの重量が125g/m2になるよう均一に樹脂フィルム上に落下、散布した。さらにもう一枚の樹脂フィルムを被せて、カットされた炭素繊維を挟んだ後、カレンダーロールを通過させ、繊維体積含有率Vf55%のSMCシートを作製した。このSMCシートを250×250mmに切り出し、16層積層して、積層体を得た後、実施例1と同様に成形し、繊維強化プラスチックを得た。
実施例1と同様のエポキシ樹脂組成物を厚めに塗布した樹脂フィルムを作成した。次に、長さ25mmにカットされた炭素繊維束(引張弾性率290GPa、引張強度5900MPa、12,000本)を単位面積あたりの重量が125g/m2になるよう均一に樹脂フィルム上に落下、散布した。さらにもう一枚の樹脂フィルムを被せて、カットされた炭素繊維を挟んだ後、カレンダーロールを通過させ、繊維体積含有率Vf55%のSMCシートを作製した。このSMCシートを250×250mmに切り出し、16層積層して、積層体を得た後、実施例1と同様に成形し、繊維強化プラスチックを得た。
得られた繊維強化プラスチックはその端部まで繊維が充分に流動していた。わずかながらソリが発生した一方、繊維分布の粗密から樹脂リッチ部でヒケが発生し、平滑性に劣った。引張弾性率は36GPaと繊維が真直でないためか理論値よりかなり低く、引張強度も250MPa、そのCV値は13%とバラツキが大きく、構造材には適用できそうになかった。
1:繊維長手方向
2:繊維の垂直方向
3:炭素繊維
4:炭素繊維の不連続端(切込)
5:切込と繊維方向のなす角度Θ
6:繊維方向に対になる切込で分断された繊維長さL
7:プリプレグ基材
8:切込同士で互いに切込んだ幅
9:切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWs
10:積層体
11:繊維強化プラスチック
12:短繊維層
13:炭素繊維の存在しない領域(切り込み開口部)
14:隣接層
15:繊維束端部
16:樹脂リッチ部
17:層うねり
18:抜き型
19:刃
20:刃からなる列
21:抜き型の基準方向
22:抜き型の基準方向に対して垂直な方向
23:角α
24:隣接する刃からなる列の抜き型の基準方向の間隔
25:追加樹脂層
26:切込プリプレグ基材
27:熱硬化性樹脂
28:熱可塑性樹脂
29:土台
30:回転ローラー
2:繊維の垂直方向
3:炭素繊維
4:炭素繊維の不連続端(切込)
5:切込と繊維方向のなす角度Θ
6:繊維方向に対になる切込で分断された繊維長さL
7:プリプレグ基材
8:切込同士で互いに切込んだ幅
9:切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWs
10:積層体
11:繊維強化プラスチック
12:短繊維層
13:炭素繊維の存在しない領域(切り込み開口部)
14:隣接層
15:繊維束端部
16:樹脂リッチ部
17:層うねり
18:抜き型
19:刃
20:刃からなる列
21:抜き型の基準方向
22:抜き型の基準方向に対して垂直な方向
23:角α
24:隣接する刃からなる列の抜き型の基準方向の間隔
25:追加樹脂層
26:切込プリプレグ基材
27:熱硬化性樹脂
28:熱可塑性樹脂
29:土台
30:回転ローラー
Claims (9)
- 一方向に引き揃えられた炭素繊維と、熱硬化性樹脂を主成分とするマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材において、該プリプレグ基材の全面に炭素繊維を横切る方向に複数の断続的な切込が挿入されており、前記切込と炭素繊維とのなす角度の絶対値Θが2〜25°の範囲内であり、前記切込を炭素繊維の垂直方向に投影した投影長さWsが0.1〜1.5mmの範囲内であり、実質的にすべての炭素繊維が前記切込により分断され、前記切込により分断された炭素繊維の繊維長さLが10〜100mmの範囲内であって、前記切込が挿入されたプリプレグ基材の厚みHが30〜300μmであり、繊維体積含有率Vfが45〜65%の範囲内あり、該切込が挿入されたプリプレグ基材をASTM D7137/D7137M−05に従う積層構成で、オートクレーブを用いて、圧力6kg/cm2、昇温速度1.5℃/分で25℃から昇温して180℃に達してから2時間保持して樹脂を硬化させ、ASTM D7137/D7137M−05に記載される平板状の繊維強化プラスチックに成形された場合、ASTM D7137/D7137M−05に従い測定したCAI強度が200〜400MPa、かつ、デント深さが0.18〜2mmを発現し、さらにJIS−7073(1988)に従い測定した引張強度が450〜850MPaを発現する切込プリプレグ基材。
- 前記切込の幾何形状がすべて直線状であり、前記切込長さWが0.5〜1.5mmの範囲内であり、かつ、前記切込により分断されたすべての炭素繊維が実質的に同一の繊維長さLである、請求項1に記載の切込プリプレグ基材。
- 前記切込プリプレグ基材の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂を含む層状の追加樹脂層を有している、請求項1または2に記載の切込プリプレグ基材。
- 前記切込プリプレグ基材に切込を挿入する手段が、一方向に引き揃えられた炭素繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材に、複数の刃が設けられた抜き型を押し当てることである、請求項1〜3のいずれかに記載の切込プリプレグ基材。
- 前記切込プリプレグ基材に切込を挿入する手段が、一方向に引き揃えられた炭素繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材に、回転ローラー上に刃が設けられた回転刃を押し当てることである、請求項1〜4のいずれかに記載の切込プリプレグ基材。
- 請求項1〜5のいずれか記載の切込プリプレグ基材を少なくとも一部に有してなる積層体であって、炭素繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材が複数枚積層され、前記炭素繊維が一方向に引き揃えられたプリプレグ基材が、該プリプレグ基材の繊維方向が少なくとも2方向以上に配向して一体化されているプリプレグ積層体。
- 請求項1〜5に記載の切込プリプレグ基材を複数枚積層したもの、または、請求項6に記載の積層体を所定の形状に成形して得られた繊維強化プラスチック。
- 前記繊維強化プラスチックの一部に立ち面あるいはリブ形状を含む、請求項7に記載の繊維強化プラスチック。
- 前記繊維強化プラスチックが航空機用部材として使用される、請求項7または8に記載の繊維強化プラスチック。
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