JP2010008342A - 保湿力測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】周囲の環境の変化により水分を含有しうる量が変化する毛髪などの対象物質の保湿力、すなわち該対象物質の含有する水分量を保つ力を簡易に測定する方法を提供する。
【解決手段】測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、得られた各基準水分データの水分量w(mol/kg)の対数
lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とするによる保湿力測定方法。
【選択図】図4
【解決手段】測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、得られた各基準水分データの水分量w(mol/kg)の対数
lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とするによる保湿力測定方法。
【選択図】図4
Description
本発明は保湿力測定方法に関するもので、殊に近赤外分光分析法を用いて非破壊的に保湿力を測定することのできる保湿力測定方法に関するものである。
皮膚や毛髪あるいは繊維、紙など周囲の環境の変化により水分を含有しうる量が変化する物質は、その表面の柔軟性および弾力性等の性質が、該物質に含まれている水分量に依存し、水分保持能により調節されている。
例えば毛髪は、キューティクルと細胞膜複合体(CMC:Cell Membrane Complex)を含むキューティクル領域(5〜10μm)、コルテックスとCMCを含むコルテックス領域(40〜140μm)、メデュラ(0〜8μm)と呼ばれる三層に分けられる。キューティクルはケラチンを主成分とした無色透明なウロコ状の薄い細胞が4〜8枚重なったものである。キューティクル領域にあるCMCはキューティクル同士を接着し、外部からの物理的・化学的刺激からキューティクルを守って毛髪成分の流出を防いでいる。
このうちコルテックスは葉巻状の形をしており、縦方向につながり比較的規則正しく並んでいる。主成分はケラチンである。コルテックス同士はコルテックス領域にあるCMCで接着されており、またCMCは水分を保持し水や薬剤の通り道となっている。このコルテックス領域が毛髪全体の85〜90%を占め、水分を保持し毛髪の強度や髪色(コルテックス内にあるメラニン色素による)を決定している。毛髪の「しっとり」という好ましい性質はこのコルテックス領域に適度な水分(10〜15%)を含んだ状態といわれている。
このような皮膚や毛髪あるいは繊維、紙など周囲の環境の変化により水分を含有しうる量が変化する物質の性質に関して、それらの水分量を測定することにより分析することが重要とされる。その測定方法として、測定対象となる物質について一定環境下での質量を測定した後、高温(100℃以上)で乾燥させた物質の質量を測定し、乾燥物質に対する水質量の割合を算出する質量法(質量法)が従来より広く採用されてきている。
また、0.8μm〜2.5μmの波長域の近赤外線は、エネルギーの低い電磁波を用いるので、試料を損傷することがほとんどない。つまり、非破壊・無侵襲で測定が可能である、固体、粉体、繊維、フイルム、ペースト、液体、溶液、気体など色々な状態にある試料に適用することができる。近赤外光は、赤外光に比べ、水の吸収強度がかなり弱くなり、水溶液での研究や分析が容易になるなどの利点を有している
そのことから、皮膚水分測定装置を用いて複数のサンプル皮膚に対し基準水分データを求め、それから同じ複数のサンプル皮膚に対して近赤外線を照射して反射スペクトルを検出し、検出された反射スペクトルを任意抽出法により検量セットと検証セットに分離し、検量セットの反射スペクトルと基準水分データを多変量回帰分析して標準検量式を求め、この標準検量式を検証セットを用いて補正しメモリーに貯蔵する。この後被測定者の皮膚に近赤外線を照射して反射スペクトルを検出し、この検出スペクトルを既に貯蔵された標準検量式に代入し、被測定者の皮膚水分濃度を測定する(特許文献1参照)方法が提案されている。
あるいは水分量既知の複数の毛髪試料に対して近赤外線を照射して複数の拡散反射または透過反射スペクトルデータを求めて、毛髪の水分量の検量線を作成する検量線作成工程と、被験者の毛髪に対して近赤外線を直接照射して拡散反射または透過反射スペクトルデータを求めて、該検量線を用いて毛髪の水分量を測定する水分量測定工程とを有することを特徴とする毛髪水分の測定方法(特許文献2参照)などが提案されている。
特開2002−90298号
特開2003−344279号
上記のような従来の水分量の測定方法により、測定対象物質の水分量はその置かれた温度、湿度などの環境において実用的に測定可能となっている。また測定対象物質の水分量を環境の変化に応じて個々に測定することにより、水分量の多寡を保湿力として捉えるという試みも行われている。
しかしながら、上記従来の水分量の測定方法では個々の測定から、その環境における水分量を測定対象物質のその時の保湿力と捉えており、測定対象物質個々がその特性として有する保湿力を定量的に表現するものではなかった。
そこで、本発明者らは、温度によって変化する測定対象物質の水分量が、環境の変化によって水分を失いにくい性質と一定の関係を有する可能性に着目し、本発明に至ったものであり、その目的は測定対象物質固有の保湿力を定量的に測定することを可能にさせるところにある。
上記のような目的を達成するため、本発明の保湿力測定方法は、測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、得られた各基準水分データの水分量w(mol/kg)の対数lnw(mol/kg)を、1/T
(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とする。上記単位(K-1)は絶対温度T(K)の逆数を示す。
(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とする。上記単位(K-1)は絶対温度T(K)の逆数を示す。
ここで、本発明の保湿力測定方法は、近赤外分光分析法を用い、測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、上記各基準水分データに対してスムージング、Kubelka-Munk変換、正規標準化からなる前処理計算を行う段階、上記前処理を行った各基準水分スペクトルデータから重回帰分析を用いて検量線を作成する段階、測定対象物質に対して近赤外線を照射し少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分スペクトルデータを求め上記検量線を用いて測定対象物質の水分量を算出する段階、得られた各基準水分データの水分量w(mol/kg)の対数
lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを含む。
lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを含む。
以上に説明したとおり、本発明の測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、得られた各基準水分データの水分量w
(mol/kg)の対数lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることにより、測定対象物質固有の保湿力を定量的に測定することができる。
(mol/kg)の対数lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることにより、測定対象物質固有の保湿力を定量的に測定することができる。
また、近赤外分光分析法を用い、測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、上記各基準水分データに対してスムージング、Kubelka-Munk変換、正規標準化からなる前処理計算を行う段階、上記前処理を行った各基準水分スペクトルデータから重回帰分析を用いて検量線を作成する段階、測定対象物質に対して近赤外線を照射し少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分スペクトルデータを求め上記検量線を用いて測定対象物質の水分量を算出する段階、得られた各基準水分データの水分量w(mol/kg)の対数lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることにより、小型携帯用近赤外分光分析器により温度や湿度のような外部環境にも安定して再現性良く、何処でも迅速かつ簡便な保湿力の測定ができる。
本発明を適用できる測定対象物質としては、毛髪、皮膚、紙、繊維、食品など水分量によって好ましい性質を保持することのできる物質があげられる。中でも近赤外分光分析法による保湿力測定方法は、非破壊的に用いることができるので、毛髪や皮膚などの生体を構成する物質や、近赤外線に対して透明な包装体中の食品などに好ましく適用できる。
本発明における少なくとも2水準の絶対温度T(K)とは、通常273K(0℃)から373K(100℃)、好ましくは293K(20℃)から353K(80℃)の範囲から選ぶことができる。
本発明において基準水分データを求める方法としては、前記2水準の絶対温度T(K)における水分量を測定できる方法であればよく、質量法、電気伝導法、インピーダンス法、発色分析法、近赤外分光分析法などを使用することができ、特に好ましくは近赤外分光分析法を使用することができる。
本発明において基準水分データは水分量で表され、水分量は絶対温度T(K)における湿潤状態の質量A(g)と絶対乾燥状態の質量B(g)を測定し、次の算式により求める。
(数1)
水分量w(mol/kg)=((A−B)÷水の分子量)÷(B÷1000)
上記単位(mol/kg)は水以外の毛髪成分全て(ケラチン、油分など)の重さ、つまりマトリックス内の水のモル数を表す。
(数1)
水分量w(mol/kg)=((A−B)÷水の分子量)÷(B÷1000)
上記単位(mol/kg)は水以外の毛髪成分全て(ケラチン、油分など)の重さ、つまりマトリックス内の水のモル数を表す。
本発明の保湿力測定方法により測定対象物質の保湿力を特定できる理由は、毛髪を例にとると以下のように考えられる。毛髪内の水分と毛髪から蒸発した水分が一定温度下で平衡に達することを基に、蒸発エンタルピーΔH(kJ/mol)を保湿力と考えると、
(数2)
∂(ln[w])/∂(1/T)=ΔH/R
上記の式より、毛髪内に存在する水分の濃度w(mol/kg)の対数lnw
(mol/kg)を1/T(K-1)に対してプロットし、その傾きにR
(=0.0083145kJ/(K・mol))を乗算することでΔH(kJ/mol)を求めることができる。
(数2)
∂(ln[w])/∂(1/T)=ΔH/R
上記の式より、毛髪内に存在する水分の濃度w(mol/kg)の対数lnw
(mol/kg)を1/T(K-1)に対してプロットし、その傾きにR
(=0.0083145kJ/(K・mol))を乗算することでΔH(kJ/mol)を求めることができる。
∂(lnw(mol/kg))/∂(1/T(K-1))の、つまりlnw(mol/
kg)vs.1/T(K-1)プロットの傾きは蒸発エンタルピーに相当する。よって、得られた傾きΔH(kJ/mol)は常温における純水の蒸発エンタルピー値
(43.991kJ/mol)と比較して保湿力の大小を議論できるものと考えられる。
kg)vs.1/T(K-1)プロットの傾きは蒸発エンタルピーに相当する。よって、得られた傾きΔH(kJ/mol)は常温における純水の蒸発エンタルピー値
(43.991kJ/mol)と比較して保湿力の大小を議論できるものと考えられる。
また、一般的に用いられる水分量w(%)からのw(mol/kg)への換算は次の算式により求める。
(数3)
水分量w(%)=((A−B)÷A)×100
(数4)
水分量w(mol/kg)=(w(%)×10)÷水の分子量
近赤外分光分析法においては、重回帰分析により水分量w(%)を算出し、w(mol/kg)に換算して蒸発エンタルピーΔH(kJ/mol)を求める。
(数3)
水分量w(%)=((A−B)÷A)×100
(数4)
水分量w(mol/kg)=(w(%)×10)÷水の分子量
近赤外分光分析法においては、重回帰分析により水分量w(%)を算出し、w(mol/kg)に換算して蒸発エンタルピーΔH(kJ/mol)を求める。
本発明において近赤外分光分析法とは、光源に近赤外光を発するものを用い、この光を分光してサンプルに照射し、透過光又は反射光を検出し、透光度、反射率などに変換する分析方法である。
本発明において近赤外分光分析法で得られた上記各基準水分データに対してスムージングを行う手順としては、近赤外線スペクトルは多数の倍音や結合音によるピークが重なって観測されるため、ブロードなピークとなりバンドの帰属は容易ではない。その原スペクトルに対して二次微分を行うことで、シャープなピークが得られ、ピークの帰属および定量が可能となる。しかし、原スペクトルをそのまま二次微分しても意味を持つピークが現れない場合がある。これは、二次微分処理が小さなノイズを強調することや、試料の整列状態、密度などの物理的影響が拡散反射に影響することによる。このような影響を取り除くために、まず移動平均を用いてスムージングを行いノイズを除去した。
次いで本発明においては、拡散反射法における吸光度の非線形性を線形近似するための
Kubelka-Munkの式から導かれる式により原スペクトルの吸光度を変換した。
(数5)
K(λ)/S(λ)=coshA(λ)−1
ここで、K(λ)は散乱物質の吸光係数、S(λ)は散乱係数、A(λ)は吸光度を示している。
Kubelka-Munkの式から導かれる式により原スペクトルの吸光度を変換した。
(数5)
K(λ)/S(λ)=coshA(λ)−1
ここで、K(λ)は散乱物質の吸光係数、S(λ)は散乱係数、A(λ)は吸光度を示している。
さらに本発明において上記変換後、正規標準化を行う必要がある。これは、加算的、乗算的散乱因子の影響を除去し、スペクトル全範囲の吸光度値が平均0、標準偏差1にする処理方法である。
(数6)
正規標準化吸光度=(吸光度An−吸光度平均)/吸光度標準偏差
(数6)
正規標準化吸光度=(吸光度An−吸光度平均)/吸光度標準偏差
以上のような原スペクトルの前処理を行ったスペクトルは、ピークが分離でき帰属が可能であることを示した。
以下、本発明の保湿力測定方法について、毛髪を例にとり、質量法を用いて測定した実施例に関し、図1〜図4を、また近赤外分光法を用いて測定した実施例に関し、図5〜
図10を参照して詳細に説明する。
図10を参照して詳細に説明する。
図1は本発明が適用された質量法による保湿力測定方法の手順を示すフロー図であり、図2は一定温度下での毛髪内の水分量w(g)を乾燥時間(h)に対してプロットしたグラフであり、図3は乾燥温度(℃)と水分量(g)との関係を測定対象A〜Jにつき個別にグラフ化したものであり、図4は水分量w(mol/kg)の対数lnw(mol/
kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線と、傾きから算出した測定対象別の蒸発エンタルピー値と純水の蒸発エンタルピー値を示した表である。
kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線と、傾きから算出した測定対象別の蒸発エンタルピー値と純水の蒸発エンタルピー値を示した表である。
図5は近赤外分光法による保湿力測定方法の手順を示すフロー図であり、図6は本発明が適用された保湿力測定装置の近赤外分光装置であるIFSジャパン(株)製の
PlaScan−Wの構成を概略的に示した構成図であり、図7は測定対象A〜Jについての毛髪の原スペクトルであり、図8は前記原スペクトルにスムージング、Kubelka-Munk変換、正規標準化、二次微分処理を施した毛髪の正規標準化二次微分スペクトルである。
PlaScan−Wの構成を概略的に示した構成図であり、図7は測定対象A〜Jについての毛髪の原スペクトルであり、図8は前記原スペクトルにスムージング、Kubelka-Munk変換、正規標準化、二次微分処理を施した毛髪の正規標準化二次微分スペクトルである。
図9は正規標準化二次微分スペクトルに重回帰分析を適用し、毛髪内の水分量w(%)を求める予測式とその選択波長、実測値(%)とNIR予測値(%)の相関を示したグラフであり、図10はNIRスペクトルから求められた水分量w(mol/kg)の対数
lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線と、傾きから算出した測定対象別の蒸発エンタルピー値を示した表であり、図11は質量法から求めたΔHの実測値(kJ/mol)と、近赤外分光法から求めたNIR予測値(kJ/mol)との相関を示したグラフである。
lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線と、傾きから算出した測定対象別の蒸発エンタルピー値を示した表であり、図11は質量法から求めたΔHの実測値(kJ/mol)と、近赤外分光法から求めたNIR予測値(kJ/mol)との相関を示したグラフである。
図1に示すとおり毛髪の水分量はまず以下イ〜ヘで示す手順で、いわゆる質量法によって測定した。(この質量法による測定が基本的なデータとなり実測値と言う場合がある。また、この実測値に対して近赤外分光分析法による測定値を予測値ということがある。)毛髪はランダムに10本以上をカットし採取した。測定対象としたのは21〜23歳の男性A〜E5名、女性F〜J5名(ヘアカラーやパーマネント、ウェーブ履歴の無い対象B、Fを含む)である。
次いで、イ)毛髪の水分量の測定は、純水で軽く洗浄し乾燥させた後にスライドガラスに乗せ、ロ)一定温度下に一時間静置して質量を測定した。静置は内寸が縦30cm×横30cm×高さ30cmの定温乾燥器内に入れて行った。一時間静置温度は20℃(常温)から10℃ずつ上げていき、100℃まで測定した。最高温度を100℃としたのは、 100〜130℃において質量の変化が見られなかったためである。このとき室内の温度は18℃60%RHと変化なく、庫内の相対湿度は20℃で56.4%RH、30℃で 37.5%RH、40℃で20.6%RH、50℃で13.4%RHであった。また、乾燥時間を一時間としたのは、図2に示すように、一定温度下で乾燥中の毛髪内の水分量w
(g)が一定になる時間、つまり蒸発した水分と毛髪内の水分が平衡に達する乾燥時間
(h)が一時間であったためである。
(g)が一定になる時間、つまり蒸発した水分と毛髪内の水分が平衡に達する乾燥時間
(h)が一時間であったためである。
ハ)重量測定により2水準以上の温度下での重量を取得する。ここで、一時間静置したサンプルは質量と近赤外スペクトルの両方を測定後、すぐに次の温度下に一時間静置して次の測定を行い、100℃まで測定した後、質量が元に戻るまで常温に静置させた
(100℃まで温度を上げても毛髪は水分の蒸発だけで質量が変わっており、常温に戻すと水分を吸い元の質量に戻る)。その温度での水分量は、100℃での水分量を0gとし、その温度での測定質量との差とした。毛髪の水分量を測定し、測定対象の性別(年齢)、(一時間静置)測定温度(℃)、水分量(g)を図3に示す。
(100℃まで温度を上げても毛髪は水分の蒸発だけで質量が変わっており、常温に戻すと水分を吸い元の質量に戻る)。その温度での水分量は、100℃での水分量を0gとし、その温度での測定質量との差とした。毛髪の水分量を測定し、測定対象の性別(年齢)、(一時間静置)測定温度(℃)、水分量(g)を図3に示す。
図1ニ)に示される手順において、図3に示される水分量w(g)から、(数1)に示す式により、質量モル濃度(mol/kg)を求め、図1ホ)に示される手順において、その対数lnw(mol/kg)をとってこれらを縦軸とし、横軸として前記測定温度を絶対温度T(K)に換算したものの逆数1/T(K-1)をとって、図4に示した。図4に示されるように、各測定対象A〜Jによって異なる傾きの直線を引くことができる。
図1へ)に示される手順において、(数2)に示される式によりこの直線の傾きにR
(=0.0083145kJ/(K・mol))を乗算し、ΔH(kJ/mol)を算出したところ、測定対象A〜Jについて25〜48kJ/molの間に分布した。これらの
ΔH(kJ/mol)を、常温における純水の蒸発エンタルピー値(43.991kJ/
mol)と比較することにより保湿力の大小を議論することができる。つまり、常温での水分量が多いほど毛髪はしっとりしていると考えられるが、それだけでなく純水の蒸発エンタルピー値より小さい値であるほど蒸発しにくく、保湿力があると言える。
(=0.0083145kJ/(K・mol))を乗算し、ΔH(kJ/mol)を算出したところ、測定対象A〜Jについて25〜48kJ/molの間に分布した。これらの
ΔH(kJ/mol)を、常温における純水の蒸発エンタルピー値(43.991kJ/
mol)と比較することにより保湿力の大小を議論することができる。つまり、常温での水分量が多いほど毛髪はしっとりしていると考えられるが、それだけでなく純水の蒸発エンタルピー値より小さい値であるほど蒸発しにくく、保湿力があると言える。
ついで、本発明の近赤外分光分析法による保湿力測定方法を図5から図11を参照して詳細に説明すれば次のとおりである。
図5は近赤外分光分析法による測定手順をイ〜トで示すものである。図6は本発明が適用された近赤外分光分析法による保湿力測定装置の構成を概略的に示したブロック構成であり、本発明ではIFSジャパン(株)製のPlaScan−Wを用いておりそのスペックは次のとおりである。
本体寸法:220長×110幅×40厚(単位mm)
質量:0.6kg
分光方式1:音響光学可変波長フィルター(AOTF:acousto optic tunable filter)
波長範囲:1200〜2400nm
測定時間:0.1〜1秒
測定方法:透過反射法又は拡散反射法による測定。測定対象2に接触計測(反射が僅かな黒色のものは測定困難、透明・半透明なものは反射板3として白色セラミック板を使用)
質量:0.6kg
分光方式1:音響光学可変波長フィルター(AOTF:acousto optic tunable filter)
波長範囲:1200〜2400nm
測定時間:0.1〜1秒
測定方法:透過反射法又は拡散反射法による測定。測定対象2に接触計測(反射が僅かな黒色のものは測定困難、透明・半透明なものは反射板3として白色セラミック板を使用)
スポット径:0.8〜2mm
受光素子4:受光格子がPbS
光源5:タングステン・ハロゲンランプ
分解能:0.6nm
方式:Bragg回折(Raman-Nath回折の2束分光に対して1束光)
結晶体:二酸化テルル
振動子:ピエゾ素子
振動数:約30〜90MHz
受光素子4:受光格子がPbS
光源5:タングステン・ハロゲンランプ
分解能:0.6nm
方式:Bragg回折(Raman-Nath回折の2束分光に対して1束光)
結晶体:二酸化テルル
振動子:ピエゾ素子
振動数:約30〜90MHz
本実施例2では実施例1の質量法による測定と同じ測定対象A〜Jの毛髪について測定したが、この近赤外分光分析法は測定対象物質に対する前処理がほぼ必要なくしかも非接触で近赤外線を照射する方法なので非破壊分析法と言える。本実施例2では図5に従って以下の手順で測定できる。
透過反射の参照物質(ブランク)として白色セラミック板(PlaScan−Wの付属
品)を使用した。測定対象2をセラミック製の反射板3上に置き、セラミック製の反射板3とPlaScan−W窓部を密着させて測定を行った。
品)を使用した。測定対象2をセラミック製の反射板3上に置き、セラミック製の反射板3とPlaScan−W窓部を密着させて測定を行った。
髪の毛の測定は、図5のイ)で示すように純水で軽く洗浄し乾燥させた後にスライドガラスに乗せ、ロ)で示す手順で前記電熱乾燥庫を用い、一定温度下に一時間静置して実施例1の質量と同時に近赤外スペクトルを測定した。
ハ)で示す手順において近赤外スペクトルを測定する際は、上からカバーガラスを乗せて測定した。また、毛髪10本を重ならないように、隙間ができないように束ねて、真っ直ぐに張った状態で測定した。
図7は図1のハ)の手順で測定した測定対象A〜Jに関する毛髪の原スペクトルであり、吸光度Aを縦軸に、波長λ(nm)を横軸にとっている。本発明において近赤外分光分析法で得られた前記原スペクトルに対してスムージングを行う手順としては、原スペクトルに対して二次微分を行うが、二次微分処理が小さなノイズを強調することや、試料の整列状態、密度などの物理的影響が拡散反射に影響することがある。このような影響を取り除くために、まず移動平均を用いてスムージングを行ってノイズを除去する。
ニ)で示す手順においては、図7に示す原スペクトルにスムージング、Kubelka-Munk変換、正規標準化、二次微分処理を施して二次微分吸光度d2A/dλ2を縦軸にとり、波長λ(nm)を横軸にとって図8に示すような毛髪の正規標準化二次微分スペクトルが得られる。
さらに、正規標準化二次微分スペクトルをホ)で示す手順において重回帰分析のデータ処理を行うが、Excelなどで解析しやすくするため、PlaScan−Wの800データポイントをそれぞれ移動平均(n=4)をとり、200データポイントしたものを用いた。重回帰分析にはフリーソフト重回帰変数選択1(栃木県農業試験場森聖二)をダウンロードして用いた。
こうして得られた毛髪内の水分量w(%)を求める予測式とその選択波長、実測値
(%)とNIR予測値(%)の相関を示したグラフを図9に示す。両者の相関はr2=
0.96となり、重回帰分析によって良好な検量線が得られ、NIRスペクトルから毛髪の水分量w(%)を予測できることがわかった。
前記検量線から質量法によって求めた実測値に対するNIR予測値w(%)を(数4)に示される式によりw(mol/kg)に換算し、へ)その対数lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線を図10に示す。測定対象A〜Jについて直線を引くことができる。ト)に示される手順において、この直線の傾きにR
(=0.0083145kJ/(K・mol))を乗算し、ΔH(kJ/mol)を算出する。
(%)とNIR予測値(%)の相関を示したグラフを図9に示す。両者の相関はr2=
0.96となり、重回帰分析によって良好な検量線が得られ、NIRスペクトルから毛髪の水分量w(%)を予測できることがわかった。
前記検量線から質量法によって求めた実測値に対するNIR予測値w(%)を(数4)に示される式によりw(mol/kg)に換算し、へ)その対数lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線を図10に示す。測定対象A〜Jについて直線を引くことができる。ト)に示される手順において、この直線の傾きにR
(=0.0083145kJ/(K・mol))を乗算し、ΔH(kJ/mol)を算出する。
図11において質量法から求めたΔHの実測値(kJ/mol)と、近赤外分光法から求めたNIR予測値(kJ/mol)との相関を示したグラフが得られ、両者の相関が
r2=0.99となり、NIRスペクトルから蒸発エンタルピーΔH(kJ/mol)を予測できることがわかった。実測値w(%)と、重回帰分析で求めた検量線の予測値w
(%)との相関が良いためw(mol/kg)の相関も良いものと考えられる。このことから測定対象物質固有の保湿力を定量的に測定することができ、非破壊検査に好適なNIR法を用いて保湿力測定が可能になるものと考えられる。
r2=0.99となり、NIRスペクトルから蒸発エンタルピーΔH(kJ/mol)を予測できることがわかった。実測値w(%)と、重回帰分析で求めた検量線の予測値w
(%)との相関が良いためw(mol/kg)の相関も良いものと考えられる。このことから測定対象物質固有の保湿力を定量的に測定することができ、非破壊検査に好適なNIR法を用いて保湿力測定が可能になるものと考えられる。
以上に説明したとおり、本発明は測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、得られた各基準水分データの水分量w
(mol/kg)の対数lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とするによる保湿力測定方法であるので、特に毛髪や肌などや、繊維、紙あるいは食品などの保湿力を定量的に測定することができる。
(mol/kg)の対数lnw(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とするによる保湿力測定方法であるので、特に毛髪や肌などや、繊維、紙あるいは食品などの保湿力を定量的に測定することができる。
1:音響光学可変波長フィルター(AOTF:acousto optic tunable filter)
2:測定対象
3:反射板(セラミック)
4:受光素子
5:光源
2:測定対象
3:反射板(セラミック)
4:受光素子
5:光源
Claims (2)
- 測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、得られた各基準水分データの水分量w(mol/kg)の対数lnw
(mol/kg)を、1/T(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とすることによる保湿力測定方法。 - 近赤外分光分析法を用い、測定対象物質に対して少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分データを求める段階、上記各基準水分データに対してスムージング、
Kubelka-Munk変換、正規標準化からなる前処理計算を行う段階、上記前処理を行った各基準水分スペクトルデータから重回帰分析を用いて検量線を作成する段階、測定対象物質に対して近赤外線を照射し少なくとも2水準の絶対温度T(K)における基準水分スペクトルデータを求め上記検量線を用いて測定対象物質の水分量を算出する段階、得られた各基準水分データの水分量w(mol/kg)の対数lnw(mol/kg)を、1/T
(K-1)に対してプロットした直線の傾きを求めることを特徴とする近赤外分光分析法による保湿力測定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008170547A JP2010008342A (ja) | 2008-06-30 | 2008-06-30 | 保湿力測定方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008170547A JP2010008342A (ja) | 2008-06-30 | 2008-06-30 | 保湿力測定方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2010008342A true JP2010008342A (ja) | 2010-01-14 |
Family
ID=41589018
Family Applications (1)
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JP2008170547A Pending JP2010008342A (ja) | 2008-06-30 | 2008-06-30 | 保湿力測定方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2010008342A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018136141A (ja) * | 2017-02-20 | 2018-08-30 | 株式会社トプコン | 測定装置、測定装置の制御方法及び測定装置の制御プログラム |
JP2018136142A (ja) * | 2017-02-20 | 2018-08-30 | 株式会社トプコン | 測定装置、測定方法及び測定装置の制御プログラム |
JP2022008658A (ja) * | 2017-02-20 | 2022-01-13 | 株式会社トプコン | 測定装置、測定方法及び測定装置の制御プログラム |
-
2008
- 2008-06-30 JP JP2008170547A patent/JP2010008342A/ja active Pending
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JP7331058B2 (ja) | 2017-02-20 | 2023-08-22 | 株式会社トプコン | 測定装置、測定方法及び測定装置の制御プログラム |
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