JP2010007120A - 高強度浸炭部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 結晶粒が微細で、従来にない優れた衝撃強度および曲げ強度を有する浸炭部品を製造する。
【解決手段】 質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.20%以下、Cr:0.30〜3.0%、Cu:0.30%以下、Al:0.001〜0.10%、N:0.01〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる機械構造用鋼を機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上の高周波焼入れを行なった後、これを焼戻しして浸炭部品を製造することにより衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品を製造する。
【選択図】 図3

Description

この発明は、はだ焼鋼から浸炭焼入・焼戻し処理してなる浸炭部品の製造、例えば、自動車、建設機械、工作機械などのギア、CVJやシャフトなどのはだ焼鋼から浸炭処理して形成の浸炭部品の製造方法に関する。
近年、自動車の高出力・小型軽量化に伴い、ギアや等速ジョイント部品やシャフトなどの浸炭焼入れ・焼戻し処理してなる自動車用部品では、一層の高強度化や長寿命化が要求されている。そこで、JIS規格のSNCMなどのニッケルクロムモリブデン鋼のようにNi、Cr、Moなどの合金元素を添加して高強度化を図っている。しかし、このように合金元素を添加して高強度化を図った場合、素材コストが高くなり、冷間加工性が劣るため冷間鍛造ができず、さらに熱間鍛造後にそのままでは、切削の際に切削バイト寿命が短くなる。このため、これらの鋼材は焼鈍などの熱処理が必要となる問題がある。
一方、結晶粒の微細化により鋼の強度が向上することが知られている。この結晶粒の微細化による方法は、コストの高い合金元素の添加をすることなく、鋼材を高強度化できる。すなわち、素材の鍛造性や切削性といった加工性も低下させず、かつ、延性や靭性を損なわずに高強度化できることから極めて有効な方法であると言える。
結晶粒を微細化させる方法として加工熱処理による方法がある。しかし、この場合、成形加工と熱処理を組み合わせるため、成形加工の難しい形状のものには適用できない。このために、部品形状が限定され、自動車のギアやCVJやシャフトなどには適用が難しいという問題がある。
これらの問題点を解消するために、浸炭後に繰返し焼入れを行なうことにより、積極的に旧オーステナイト粒を微細化して強度を向上させることができる高強度はだ焼鋼が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかし、特許文献1の方法では、浸炭前のはだ焼鋼をJIS G0551で規定されているNo.11以上まで微細化したマルテンサイト組織とする必要があり、コストが高いという問題がある。
また、特許文献1や2の方法では、浸炭焼入れ後、繰返し焼入れを行なうことによって旧オーステナイト粒径を微細化しているが、これらの方法では強度向上が十分とはいえないという問題がある。
特開2003−34843号公報 特開平8−92690号公報
従来の特許文献1や2の技術に対し、鋼材をより一層高強度化する方法を検討したところ、従来のガス浸炭した鋼において結晶粒径を小さくしても、ある粒径で強度は飽和してしまうことを発明者は見いだした。この原因はガス浸炭時に部品表面に浸炭異常層や粒界酸化層が生成し、その深さ以上に旧オーステナイト粒径を微細化しても、浸炭異常層や粒界酸化層が初期欠陥として作用し、旧オーステナイト粒の微細化効果がなくなったものと推定された。そこで、真空浸炭することにより浸炭異常層を無くしたところ、強度の飽和現象は見られず、結晶粒径が小さくなればなるほど強度は向上することを見いだした。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、浸炭した鋼において従来に比して結晶粒を超微細化するとともに、真空浸炭を行うことにより、表面欠陥として作用する浸炭異常層を防止したことの相乗作用により、従来にもまして優れた衝撃強度および曲げ強度を有する浸炭部品を製造する方法を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、機械構造用鋼を機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上の高周波焼入れを行った後、これを焼戻しすることにより浸炭部品を製造することからなる衝撃強度、曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。
請求項2の発明では、焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.20%以下、Cr:0.30〜3.0%、Cu:0.30%以下、Al:0.001〜0.10%、N:0.01〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1に記載の衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。
請求項3の発明では、焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、請求項2の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ni:0.20〜5.0%、Mo:0.05〜3.0%のいずれか1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1に記載した衝撃強度、曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。
請求項4の発明では、焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、請求項2の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ti:0.01〜0.50%、V:0.02〜0.50%、Nb:0.02〜0.50%、B:0.0010〜0.0050%のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した衝撃強度、曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。ただし、TiもしくはBを添加した場合は、3.4N[%]<Ti[%]を満足するものとする。
請求項5の発明では、焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、請求項3の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ti:0.01〜0.50%、V:0.02〜0.50%、Nb:0.02〜0.50%、B:0.0010〜0.0050%のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した衝撃強度、曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法である。ただし、TiもしくはBを添加した場合は、3.4N[%]<Ti[%]を満足するものとする。
上記の方法における請求項2〜5の方法で、機械構造用鋼の成分を限定した理由を説明する。なお、%は質量%を示す。
C:0.10〜0.45%、望ましくは、C:0.10〜0.25%
Cは機械構造用部品として浸炭処理後の芯部強度を確保するために必要な元素である。Cが0.10%未満では、その効果は十分に得られず、0.45%を超えると加工性を低下し、かつ靱性を低下させる。そこでCは0.10〜0.45%、望ましくは0.10〜0.25%とする。
Si:0.05〜2.00%
Siは脱酸に必要な元素で、0.05%未満では脱酸が十分に得られず、2.00%を超えると加工性を低下させる。そこでSiは0.05〜2.00%とする。
Mn:0.10〜2.00%
Mnは焼入性を確保するために必要な元素であるが、0.10%未満ではその効果は十分に得られず、2.00%を超えると加工性を低下させる。そこでMnは0.10〜2.00%とする。
P:0.030%以下
Pはスクラップから含有される不可避な元素であるが、オーステナイト粒界に偏析して衝撃強度や曲げ強度などの靱性を低下するので、含有量の上限を0.030%とする。
S:0.20%以下
Sは被削性を向上させる元素であるが、非金属介在物であるMnSを生成して、横方向の靱性および疲労強度を低下する。そこで、Sは0.20%以下とする。なお、Sはなくても良いが、被削性を要する場合にはSは0.001〜0.20%の範囲で添加する。
Ni:0.20〜5.0%
Niは焼入性および靱性を向上させる元素であるが、0.20%未満ではその効果が十分ではなく、5.0%を超えて含有すると加工性を著しく低下させ、かつ、コストアップとなる。そこでNiは0.20〜5.0%とする。
Cr:0.30〜3.0%
Crは焼入性および浸炭性を向上させる元素であるが、0.30%未満ではその効果が十分ではなく、3.0%を超えて含有すると加工性を低下する。そこでCrは0.30〜3.0%とする。
Mo:0.05〜3.0%
Moは焼入性および靱性を向上させる元素であるが、0.05%未満ではその効果が十分ではなく、3.0%を超えて含有すると加工性を低下させる。そこでMoは0.05〜3.0%とする。
Cu:0.30%以下
Cuはスクラップから含有される不可避な元素で、時効性を有し強度を上昇させるが、0.30%を超えると熱間加工性を低下する。そこで、Cuは0.30%以下とする。
Al:0.001〜0.10%、望ましくは0.02〜0.05%
Alは脱酸材として使用される元素であり、0.02%未満では脱酸効果は不十分であり、0.05%を超えるとアルミナ系酸化物が増加し疲労特性、加工性を低下する。そこでAlは0.001〜0.10%、望ましくは0.02〜0.05%とする。
Ti:0.05〜0.50%、望ましくはTi:0.10〜0.20%
Tiは鋼中のfree−Nを固定し、Bの焼入性の効果を向上させると共に、Ti炭化物、Tiを含有する複合炭化物、Ti窒化物を微細に析出させることによって、浸炭時のオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制するために必要な元素である。特に、鋼中に微細分散したナノオーダーのTiCが結晶粒の成長を抑制する。Tiが0.05%未満では、結晶粒粗大化防止効果は十分でなく、0.1%以上が望ましい。しかし、0.5%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Tiは0.05〜0.50%、望ましくは0.10〜0.20%とする。
N:0.01〜0.05%、望ましくは0.01〜0.03%
NはAl、Nb、Vと窒化物、炭窒化物を形成し、結晶粒粗大化の防止効果を有する元素であるが、Nが0.01%未満では結晶粒微細化の効果は小さく、0.05%を超えると、窒化物が増加し、疲労強度および加工性を低下する。そこで、Nは0.01〜0.05%、望ましくは0.01〜0.03%とする。ただし、Bを有する鋼材では、鋼中にfree−Nが存在すると、BNが生成され、固溶Bが減少し、焼入性の向上、浸炭部品の強度向上効果を阻害する。そこで、Bを添加する前にNをTiNとし、固定する必要がある。そのために、3.4N[%]<Ti[%]を満たさなければならない。
B:0.0010〜0.0050%
Bは極小量の含有によって鋼の焼入性を著しく向上させ、浸炭部品の強度を向上させる元素で選択的に含有される。しかし、0.0010%未満では焼入性、強度の向上効果が小さく、0.0050%を超えると強度を低下する。そこで、Bは0.0010〜0.0050%とする。
V:0.02〜0.50%
Vは炭化物あるいは炭窒化物を形成し、Ti同様にオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制する効果を有する。Vが0.02%未満ではその効果が十分得られず、0.50%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Vは0.02〜0.50%とする。
Nb:0.02〜0.50%
Nbは炭化物あるいは炭窒化物を形成し、Ti同様にオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制する効果を有する。Nbが0.02%未満ではその効果が十分得られず、0.50%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Nbは0.02〜0.50%とする。
繰返し高周波焼入れによる結晶粒微細化と真空浸炭の組合せの工程の限定理由について説明する。
繰返し高周波焼入れについて
本発明の方法における工程で、繰返し高周波焼入れする点について説明する。本発明は結晶粒の微細化手法として高周波繰返し焼入れ法を用いるが、1回の焼入れよりも2回の焼入れの方がその効果は大きい。ただし、鋼種によっては、3回以上の焼入れを繰り返すと逆に混粒が発生し、強度も低下するという問題がある。
結晶粒微細化と真空浸炭の組合せの必要性について
ガス浸炭処理を行なう場合、雰囲気中に含まれている酸素が鋼材表面から進入し、結晶粒界近傍のSi、Mn、Crと結びつき酸化物を形成する。これらの固溶合金が少なくなった近傍は焼入れ性が低下し、焼入れ時にマルテンサイトが生成せず、トルースタイトやベイナイトが生成する。特に酸素は結晶粒界に沿って進入し易く、結晶粒界にそって浸炭異常層が生成する。この浸炭異常層は特に粒界酸化層と呼ばれている。鋼材表面に粒界酸化層が生成すると、粒界酸化層は欠陥として作用する。そのため、粒界酸化層の深さが深いほど強度が低下する。
ところで、ガス浸炭した材料は結晶粒径を小さくしていった場合、ある程度までは、結晶粒径が小さくなるほど強度は向上するが、ある粒径以下に小さくしても、強度は飽和して向上しない。この理由としては、粒界酸化層が影響していると推定される。すなわち、結晶粒径が粒界酸化層より大きい場合は、結晶粒径が小さくなればなるほど強度は向上するが、結晶粒径が粒界酸化層より小さくなると、粒界酸化層の方が欠陥として大きくなり、結晶粒微細化の効果が得られないと考えられる。したがって、結晶粒微細化の効果を最大限に発揮させようとすれば、粒界酸化層を低減、もしくは防止することが必須である。一方、粒界酸化層を低減して強度を向上させる方法も知られているが、この方法でも結晶粒が大きければ粒界酸化層の低減の効果が十分に得られず、強度は大きく向上しない。この様に結晶粒の微細化、粒界酸化層の低減のいずれか一方では強度向上効果は小さく、強度向上効果を大きくするためには「結晶粒の微細化」と「粒界酸化層の低減、防止」の両方の組合わせが必要であると考えられる。
また、真空浸炭は減圧下で高温に加熱された炉内に炭化水素系のガスを供給し炉内に挿入された被処理物を浸炭する方法で粒界酸化などの浸炭異常層が生成しないという特長がある。つまり、真空浸炭により粒界酸化層を生成させず、その後に繰返し焼入れにより結晶粒微細化を行うことにより衝撃強度、曲げ強度を大きく向上させることができる。
本発明は、真空浸炭焼入れにより粒界酸化などの浸炭異常層を防止することと、真空浸炭焼入れ後に1回以上の高周波焼入れを行なった後、これを焼戻すことにより結晶粒を微細化することの両手段でもって、自動車、建設機械、工作機械などのギアやシャフトなどの機械部品の浸炭鋼材による高強度浸炭部品を、従来の鋼材に比して加工性を低下することなく、低コストで、製造可能とするなど、本発明は、従来にない優れた効果を奏するものである。
本発明を実施するための最良の形態について、表および図面を参照して説明する。先ず、表1に示す本発明の実施例のNo.1〜17の化学成分を含有するそれぞれの鋼を100kg真空誘導溶解炉で溶製してインゴットに鋳造した。これらの鋼において、Al、Nb、V、Tiの析出物をいったん固溶させ、その後に熱処理で微細に析出させるため、このインゴットを1250℃に加熱し、5時間保持して溶体化処理を行い、析出物を微細に析出させた鋼材を得た。

Figure 2010007120
上記の溶体化処理した鋼材を角40mmの素材に鍛伸した。この素材を900℃に加熱し1時間保持した後空冷することにより焼きならしを行なった。さらに、この素材から図1に示す2mm10RCノッチ2のシャルピー衝撃試験片1と、図2に示す2mmVノッチ4の静曲げ試験片3を作製した。これらの試験片を、それぞれ図3に示すように950℃に加熱して0.5時間予熱し真空浸炭を1時間行い、2.5時間保持して拡散し、850℃に下げて0.5時間保持し、次いで20℃の油に焼入れし、180℃に焼戻した。また、真空浸炭の効果を比較確認するために、図4に示すように930℃に加熱して0.5時間予熱しガス浸炭を3時間行い、2.5時間保持して拡散し、830℃に下げて0.5時間保持し、次いで60℃の油に焼入れ条件でガス浸炭焼入れを行い180℃に戻した試験片も作製した。さらに、繰返し焼入れを行うものは、真空浸炭またはガス浸炭によるそれぞれの浸炭焼入れ後、上記の焼戻しを行うことなく、1回以上の高周波焼入れを行った後、180℃に焼戻した。これらは、表2に、「ガス浸炭焼入れまま」、「真空浸炭焼入れまま」、「高周波焼入れ1回」または「高周波焼入れ2回」と示す。このようにそれぞれの浸炭方法に対し3種の焼入れ・焼戻しを実施した。なお、高周波焼入れは、最高到達点温度:850〜950℃、加熱時間:2秒で、水冷により焼入れした。
以上のように、それぞれの浸炭方法に対し焼入れ・焼戻し条件を3種に変化させることによって、結晶粒の異なる試験片を作製し、その衝撃強度および静曲げ強度と、それらに及ぼす結晶粒径の影響を調査した。
上記のように作製したシャルピー衝撃試験片を、シャルピー衝撃試験機を用いて衝撃試験し、そのき裂発生エネルギーにより衝撃値を評価し、この評価をシャルピー衝撃試験片の浸炭層表面の平均結晶粒径とあわせて、表2に示して衝撃試験結果とした。表2で、シャルピー衝撃試験片の浸炭層表面の平均結晶粒径はμmを単位として示し、衝撃値は比較例のNo.1のガス浸炭焼入れ・焼戻しの試験片のき裂発生エネルギーを1.0とし、この値を基準として対比したそれぞれのき裂発生エネルギーの値により示した。なお、衝撃試験は室温で行った。
Figure 2010007120
表2に示すように、実施例の鋼は浸炭焼入れ後に高周波焼入れを行なうと、いずれの鋼も旧オーステナイト粒径が小さくなり、高周波焼入れ回数が1回よりも2回の方が小さくなった。
実施例の鋼は、ガス浸炭したものも、真空浸炭したものも、浸炭焼入れ後に高周波焼入れを繰り返すことで、旧オーステナイト粒径は小さくなっている。しかし、ガス浸炭したものが旧オーステナイト粒径が小さくなっても、衝撃強度は大きく向上していないのに対し、真空浸炭したものは、旧オーステナイト粒径の微細化により衝撃強度が大きく向上した。以上の様に、実施例の鋼を用いて、真空浸炭焼入れ後に1回以上の高周波焼入れを行なうことにより大幅に衝撃値が向上した。
さらに、上記で熱処理を行った静曲げ試験片3を、図5に示すように、支点間距離50mmの3点曲げにより、中心のクロスヘッドを2mm/minの移動速度で、すなわち静曲げ試験片3の両端部を下方から支持して中心5を下方の矢印方向に荷重を掛けて押し、静曲げ試験を実施した。この試験により、静曲げ試験片3の表面層にき裂が生じた時点における荷重をき裂発生荷重として静曲げ強度を評価し、浸炭層表面の平均結晶粒径とあわせて、表3に静曲げ試験の結果を示す。表3において、比較例のNo.1のガス浸炭焼入れままのき裂発生荷重を1.0とし、この値を基準に対比した値で、それぞれのき裂発生荷重を示した。なお、この静曲げ試験は室温で行った。
Figure 2010007120
表3に示すように、実施例の鋼は衝撃試験片と同様に浸炭焼入れ後の高周波焼入れにより旧オーステナイト粒が小さくなり、高周波焼入れ回数が1回よりも2回の方が小さくなった。実施例の鋼は、ガス浸炭したものも、真空浸炭したものも、浸炭焼入れ後に高周波焼入れを繰り返すことで、旧オーステナイト粒径は小さくなっている。しかし、ガス浸炭したものが、旧オーステナイト粒径が小さくなっても静曲げ強度は大きく向上していないのに対し、真空浸炭したものは、旧オーステナイト粒径の微細化により静曲げ強度が大きく向上した。以上の様に、実施例の鋼を用いて、真空浸炭焼入れ後に1回以上の高周波焼入れを行なうことにより大幅に静曲げ強度が向上した。
以上に説明したように、本発明の方法により真空浸炭焼入れ後に1回以上の高周波焼入れを行うことで、結晶粒の微細な衝撃強度および静曲げ強度に優れた浸炭部品を製造することができた。
シャルピー衝撃試験片の形状・大きさを示す図である。 静曲げ試験片の形状・大きさを示す図である。 真空浸炭焼入れ焼戻し条件を示す図である。 。 ガス浸炭焼入れ焼戻し条件を示す図である。 試験片に静曲げ試験方法を示す図である。
符号の説明
1 シャルピー衝撃試験片
2 10R2mmCノッチ
3 静曲げ試験片
4 2mmVノッチ
5 中心

Claims (5)

  1. 機械構造用鋼を機械加工もしくは鍛造によって部品形状に成形した後、真空浸炭焼入れを行い、その後に1回以上の高周波焼入れを行なった後、これを焼戻しすることにより浸炭部品を製造することを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。
  2. 焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、質量%で、C:0.10〜0.45%、Si:0.05〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.030%以下、S:0.20%以下、Cr:0.30〜3.0%、Cu:0.30%以下、Al:0.001〜0.10%、N:0.01〜0.03%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする衝撃強度および曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。
  3. 焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、請求項2の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ni:0.20〜5.0%、Mo:0.05〜3.0%のいずれか1種または2種を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した衝撃強度、曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。
  4. 焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、請求項2の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ti:0.05〜0.50%、V:0.02〜0.50%、Nb:0.02〜0.50%、B:0.0010〜0.0050%のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した衝撃強度、曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。ただし、TiもしくはBを添加した場合は、3.4N[%]<Ti[%]を満足するものとする。
  5. 焼戻しした浸炭部品を形成する機械構造用鋼は、請求項3の鋼成分に加え、さらに質量%で、Ti:0.05〜0.50%、V:0.02〜0.50%、Nb:0.02〜0.50%、B:0.0010〜0.0050%のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した衝撃強度、曲げ強度に優れた浸炭部品の製造方法。ただし、TiもしくはBを添加した場合は、3.4N[%]<Ti[%]を満足するものとする。
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