JP2010006658A - 塩基性炭酸銅の製造方法及びこの方法により製造した塩基性炭酸銅 - Google Patents
塩基性炭酸銅の製造方法及びこの方法により製造した塩基性炭酸銅 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】炭酸塩の水溶液と銅塩の水溶液とからなる反応溶液の反応によって塩基性炭酸銅を製造するにあたり、この反応溶液に水酸化アルカリ水溶液を加えて、この水酸化アルカリ水溶液により炭酸塩と銅塩との反応により生成する二酸化炭素を吸収して炭酸塩を生成させ、この炭酸塩を上記の塩基性炭酸銅の反応に再利用することによって、原料として供給される炭酸塩の量に対して塩基性炭酸銅の生成量を増やす。
【選択図】図2
Description
2Na2CO3+2CuCl2+H2O→CuCO3・Cu(OH)2+4NaCl + CO2↑・・・・(1)
この時、塩基性炭酸銅の原料となる炭酸イオン(CO3 2−)に着目すると、この反応式(1)の左辺における炭酸ナトリウム中の炭酸イオンのうち、半分が塩基性炭酸銅に取り込まれ、残りの半分が二酸化炭素(CO2)として大気に放出されていることが分かる。即ち、この反応では1モルの塩基性炭酸銅を得るために、塩基性炭酸銅の生成に直接使用されない(塩基性炭酸銅に取り込まれない)炭酸イオン源つまり炭酸ナトリウムを過剰に(1モル多く)供給していることになり、従ってこの反応に用いられる炭酸ナトリウムのうち、半分が無駄に消費されていると言える。
2NaOH+CO2→Na2CO3+H2O・・・・・(2)
このように、反応式(1)により生成した二酸化炭素を回収して、塩基性炭酸銅の原料として再利用することによって、原料の炭酸ナトリウムの使用量を抑えながら塩基性炭酸銅の生成量を増やすことができると考えられる。また、二酸化炭素を回収することにより、地球温暖化への悪影響を抑えることができる。
しかし、このように二酸化炭素を再利用するためには、塩基性炭酸銅を製造する設備とは別に、反応式(2)を行うための吸収塔などの設備が必要となってしまうので、塩基性炭酸銅のコストアップに繋がってしまう。
炭酸塩の水溶液と、銅塩水溶液と、水酸化アルカリ水溶液と、を混合して塩基性炭酸銅を製造することと、
銅副生成物が生成しないように、前記炭酸塩に対する前記水酸化アルカリのモル比を調整して前記各水溶液を反応させることと、を備えたことを特徴とする。
炭酸塩は炭酸ナトリウムであり、水酸化アルカリは水酸化ナトリウムであっても良い。
反応槽内の希釈液を塩基性炭酸銅が生成する温度範囲に予め加熱しておく工程を含むことが好ましい。
炭酸塩の水溶液及び水酸化アルカリ水溶液の少なくとも一方の供給量を調整することにより反応槽内の水溶液を、塩基性炭酸銅が生成するpHの範囲に維持することが好ましい。あるいは、銅塩水溶液の供給量を調整することにより反応槽内の水溶液を、塩基性炭酸銅が生成するpHの範囲に維持することが好ましい。
前記炭酸塩に対する水酸化アルカリのモル比xは、0<x≦1.0であることが好ましい。
前記前記塩基性炭酸銅の反応温度は、50℃以上90℃以下であることが好ましい。
前記塩基性炭酸銅が生成するpHの範囲は、7以上9以下であることが好ましい。
水溶液から塩基性炭酸銅を回収し、次いで塩基性炭酸銅を乾燥する工程を行う工程を含み、
前記塩基性炭酸銅の乾燥温度は、80℃以上であることが好ましい。
本発明の塩基性炭酸銅は、
上記の塩基性炭酸銅の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これらの水溶液の濃度については特に制限はないが、例えば塩化銅水溶液として塩化銅エッチング廃液を用いる場合には、例えば銅イオン濃度10重量%、遊離塩酸濃度8重量%程度の水溶液を用いることが好ましい。また、炭酸ナトリウム水溶液の濃度は、例えば2重量%〜30重量%程度であることが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は例えば5重量%〜48重量%程度であることが好ましい。
Na2CO3+2NaOH+2CuCl2→CuCO3・Cu(OH)2+4NaCl・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
2Na2CO3+2CuCl2+H2O→CuCO3・Cu(OH)2+4NaCl + CO2↑・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
と、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に二酸化炭素(CO2)を通じて炭酸ナトリウム(Na2CO3)を生成させる反応式
2NaOH+CO2→Na2CO3+H2O・・・・(5)
と、において、反応式(4)、(5)の右辺同士及び左辺同士を夫々足し合わせて組み合わせたものである。つまり(3)式の反応では、図2のイメージ図に示すように、(4)式の反応と(5)式の反応とが並行して進行しており、(4)式において塩基性炭酸銅と共に生成した二酸化炭素が水酸化ナトリウム水溶液に溶け込み、この二酸化炭素と水酸化ナトリウムとが(5)式に従って反応して炭酸ナトリウムが生成し、この炭酸ナトリウムが再度(4)式により反応している。そのため、(3)式では、見かけ上二酸化炭素あるいは炭酸イオンが系外に放出されないことになる。
2NaOH+CuCl2 → Cu(OH)2+2NaCl・・・(6)
また、例えば60℃〜80℃程度の高温つまり上記の(3)式や(4)式において塩基性炭酸銅が生成する温度範囲においては、以下の(7)式により銅塩の水溶液とアルカリ水溶液とが反応して酸化銅(CuO)が生成することが知られている。
2NaOH+CuCl2 → CuO+2NaCl+H2O・・・(7)
更に、この反応槽1の上部側には、反応槽1内に水蒸気を供給して反応水溶液を加熱するための水蒸気供給管30が加熱手段として接続されている。この水蒸気供給管30の上流側には、バルブ31を介して例えば130℃程度に加熱された水蒸気が貯留された水蒸気貯槽32が接続されている。
更に、塩基性炭酸銅と共に生成する二酸化炭素を回収することにより、地球温暖化への悪影響を抑えることができる。
更にまた、従来から上記の塩基性炭酸銅の製造装置と(5)式の反応を行うための吸収塔などの設備とを持ち、この吸収塔において得られた炭酸ナトリウムを原料として(4)式により塩基性炭酸銅を製造している場合には、(4)式に代えて(3)式を採用することにより、塩基性炭酸銅の原料として水酸化ナトリウム水溶液を用いることができるので、炭酸ナトリウムの製造量を減らすことができるといったメリットがある。
また、上記の例では炭酸塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを混合して反応槽1内に供給したが、夫々別々に供給するようにしても良い。この例について、塩基性炭酸銅の製造方法のフローチャートの一例を図4に、製造装置の一例を図5に夫々示す。この場合には、炭酸塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とが別々に供給される以外には、既述の例と同じフローチャート及び装置構成となっており、塩基性炭酸銅製造装置においては、炭酸塩水溶液供給管16及び水酸化アルカリ水溶液供給管17が水溶液混合手段15を介さずに夫々直接反応槽1の上部側に接続されている。
このように炭酸塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを別々に供給した場合においても、既述の例と同様に(3)式に従って、不純物濃度が低く、また粒径の大きな塩基性炭酸銅が生成することとなる。
この場合においても、銅塩水溶液を一定の供給量で供給すると共に、炭酸塩水溶液及び水酸化アルカリ水溶液の供給量を調整することによって反応水溶液のpHを調整するようにしても良いし、あるいは銅塩水溶液を一定の供給量で供給して炭酸塩水溶液及び水酸化アルカリ水溶液のいずれかにより反応水溶液のpHを調整するようにしても良い。
また、反応水溶液のpHとしては、塩基性炭酸銅のみが生成するpH7.0以上9.0以下であることが好ましい。また、反応水溶液の温度は、塩基性炭酸銅の生成量を多くするために、50℃〜90℃であることが好ましい。
また、反応水溶液の加熱方法としては、水蒸気以外にも、例えばヒーターを反応槽1の周囲に設けて、このヒーターにより反応水溶液を加熱するようにしても良い。更に、固液分離後の塩基性炭酸銅を乾燥するにあたっては、粉末内の水分をできるだけ除去するために、80℃以上で乾燥することが好ましい。
また、本発明の塩基性炭酸銅は、銅メッキ用の原料以外にも、例えば農薬や木材用の防腐剤の原料として用いても良い。
先ず、既述の(3)式と(4)式とにおいて、同じ化合物が生成するかどうか確認する実験を行った。実験には、原料である炭酸塩及び水酸化アルカリとして、夫々試薬の炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを用いて、以下の表1に示す2種類の水溶液を調整した。
(表1)
そして、上記のようにこれらの2種類の水溶液を用いて塩基性炭酸銅の生成反応を行い、得られた粉末に対して以下に説明する測定を行うことにより生成物の同定を行った。
1.生成した固体中の銅濃度測定
滴定法を用いて、生成した固体中の銅濃度を測定した。つまり、以下の表2に示すように、塩基性炭酸銅と(6)式や(7)式にて生成する銅副生成物とでは式量が違うので、銅濃度が塩基性炭酸銅の濃度の理想値である57.5%よりも高くなるかどうかを測定することによって、(6)式の反応(あるいは(7)式の反応)が起こっているかどうかを確認した。固体中の銅濃度が57.5%と同程度であれば塩基性炭酸銅の生成量が多く、あるいは塩基性炭酸銅の単一相であり、一方銅濃度が57.5%よりも高くなるにつれて、(6)式の反応(あるいは(7)式の反応)による銅副生成物の生成量が多くなっていることが分かる。
(表2)
塩基性炭酸銅と銅副生成物とではXRDパターンにおけるピーク位置が異なることから、銅副生成物の有無によって(6)式や(7)式の反応が起こっているかを確認した。
(3)式や(4)式において生成する塩基性炭酸銅の50%径(メジアン径)は数10μmであるが、(6)式や(7)式で生成する銅副生成物は数μm程度であるため、粒子径によりどちらの反応が起こっているかを確認した。
(3)式や(4)式において生成する塩基性炭酸銅に取り込まれる塩化物イオンや硫酸イオンといった不純物の濃度は例えば数10〜100ppm程度と極めて低いが、(6)式や(7)式で生成する銅副生成物ではこれらの不純物の濃度が1,000ppm以上と高くなるため、この不純物濃度によってどちらの反応が起こっているか確認した。
次に、水酸化ナトリウム/炭酸ナトリウムのモル比xを変えることにより、どのような生成物が生成するかを確認する実験を行った。実験には、上記の実験と同じ原料を用いて、以下の表4に示すように各混合水溶液を調整した。
(表4)
そして、同様にこれらの水溶液を用いて塩基性炭酸銅の生成反応を行い、得られた粉末に対して生成物の同定を行った。その結果を表5及び図6に示す。
また、上記のように反応水溶液のpHを高くしても、反応に悪影響は見られなかった。
上記の実験から、モル比xが0.5≦x≦1.0では単一相の塩基性炭酸銅が得られ、モル比x=1.5では塩基性炭酸銅と共に銅副生成物の生成することが分かったが、単一相の塩基性炭酸銅が生成する(銅副生成物の生成しない)モル比xの上限及び下限を更に明確化するための実験を行った。具体的には、原料や実験条件、実験方法などは上記の実験例2−1と同じとして、モル比xが0.1及び1.2となるように夫々調整した混合水溶液を用いた。
以上の実験から、混合水溶液が(3)式に従って反応していることが分かった。そのため、この実験では、(3)式において(5)式により再利用されている二酸化炭素の量がどの程度なのか、つまり混合水溶液((3)式の反応)ではブランク((4)式の反応のみ)と比較してどの程度塩基性炭酸銅の生成量が増えているのか確認する実験(計算)を行った。
具体的には、上記の実験例2−1、2−2において、実際にビーカー内に供給した混合水溶液の量(A)から、ビーカー内に供給した炭酸ナトリウムの量(B)を計算した。また、生成した塩基性炭酸銅の量(C)を測定して、原料として投入した炭酸ナトリウムの量に対して生成した塩基性炭酸銅の量の比(D)を計算した。そして、この塩基性炭酸銅の量の比(D)がブランクに対してどの程度変化したかを求めるために、ブランクに対する比(E)を求めた。その結果を表7に示す。
(表7)
また、このように混合水溶液ではこのブランクよりも塩基性炭酸銅の生成量が増えているので、既述のように(3)式に従って反応が起こっていることが再確認できた。更に、塩基性炭酸銅の単一相が生成するモル比xの範囲は、0<x≦1.0であり、好ましくは0.5≦x≦1.0であることが確認できた。
上記の実験例2−1におけるモル比x=1.0について、炭酸ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを混合せずに、既述の図4、図5のように別系統からビーカー内に供給して実験を行った。具体的には、10.0重量%の炭酸ナトリウム水溶液及び20.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液を作製し、モル比xが1.0となるように夫々の流量を調整してビーカー内に供給した。尚、供給方式以外は上記の実験例2−1と同じ条件とした。
そして、上記と同様に塩基性炭酸銅の生成反応を行い、同様に得られた粉末について測定を行った。その結果を表8に示す。
次に、銅塩として試薬の硫酸銅五水塩(CuSO4・5H2O)を用いて実験を行った。この硫酸銅五水塩を純水に溶解させて2重量%の水溶液として、以下の表9に示す混合水溶液と反応させた。その他の実験条件としては、実験例1と同じ条件とした。
(表9)
その結果、以下の表10に示すように、銅塩の原料が変わっても、また銅塩水溶液の濃度が上記のように低い場合でも、これまでの実験例と同様の性状の単一相の塩基性炭酸銅が得られた。
(表10)
この場合においても、濾母液を分析したところ、水酸化ナトリウムは検出されなかった。従って、混合水溶液は(3)式に従って反応したものと考えられる。
続いて、銅塩水溶液中の硫酸濃度の影響を確認するための実験を行った。銅塩としては、実験例3と同じ硫酸銅五水塩を用いて、この硫酸銅五水塩を純水に溶解させると共に、硫酸をこの純水と混合して、銅濃度2重量%、硫酸イオン濃度2.2重量%の水溶液とした。また、表11に示すモル比xの混合水溶液を作製し、実験例2と同様に反応水溶液のpHが8.0±0.3となるように銅塩水溶液の供給量を調整した。
(表11)
この実験から、(3)式の反応は原料の種類によらずに同じ反応機構に従って進み、またモル比xの範囲についても原料の種類が変わってもほぼ同じかあるいは極めて近い範囲となることが分かった。
尚、この場合においても、実験例2−3と同様に原料として投入した炭酸ナトリウムの量に対して生成した塩基性炭酸銅の量の比を計算したところ、モル比xが0.5ではブランクの1.2倍となり、モル比xが1.0ではブランクの1.6倍に増えていることが分かった。
5 pH制御計
6 温度制御計
12 銅塩水溶液供給手段
15 水溶液混合手段
18 炭酸塩水溶液供給手段
20 水酸化アルカリ水溶液供給手段
30 水蒸気供給管
Claims (7)
- 炭酸塩の水溶液と、銅塩水溶液と、水酸化アルカリ水溶液と、を混合して塩基性炭酸銅を製造することと、
銅副生成物が生成しないように、前記炭酸塩に対する前記水酸化アルカリのモル比を調整して前記各水溶液を反応させることと、を備えたことを特徴とする塩基性炭酸銅の製造方法。 - 希釈液が収容されている反応槽内に、炭酸塩の水溶液と銅塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液とを同時に供給しながら反応槽内を攪拌することを特徴とする請求項1記載の塩基性炭酸銅の製造方法。
- 反応槽内の希釈液を塩基性炭酸銅が生成する温度範囲に予め加熱しておく工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の塩基性炭酸銅の製造方法。
- 炭酸塩の水溶液及び水酸化アルカリ水溶液の少なくとも一方の供給量あるいは銅塩水溶液の供給量を調整することにより反応槽内の水溶液を、塩基性炭酸銅が生成するpHの範囲に維持することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の塩基性炭酸銅の製造方法。
- 前記炭酸塩に対する水酸化アルカリのモル比xは、0<x≦1.0であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の塩基性炭酸銅の製造方法。
- 塩基性炭酸銅を製造した後、
水溶液から塩基性炭酸銅を回収し、次いで塩基性炭酸銅を乾燥する工程を行う工程を含み、
前記塩基性炭酸銅の乾燥温度は、80℃以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の塩基性炭酸銅の製造方法。 - 請求項1ないし6のいずれか一つに記載の塩基性炭酸銅の製造方法により製造されたことを特徴とする塩基性炭酸銅。
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