JP2010003999A - 太陽電池を利用した太陽光発電システム - Google Patents
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Abstract
【課題】太陽光の反射損失を低下させることで光/電変換効率を向上させた太陽電池を利用した太陽光発電システムを提供する。
【解決手段】ホルダー12と、このホルダー12に保持され、入射太陽光線に対して一部吸収・一部反射の表面を形成するシート状の第1の太陽電池11とから成り、長手方向に延長される焦点線と鏡軸面とを有する2次元反射鏡10と、太陽の方向を検出して前記2次元反射鏡10の姿勢を制御することにより、前記光軸面を太陽に向ける太陽追尾ユニットと、前記2次元反射鏡10の焦点線に沿って延長される熱伝導性の管20と、この管の外部表面上に受光面を上向きにして保持される第2の太陽電池21と、前記管20の内部に流体を循環させ、得た熱を外部に供給する冷却・給熱ユニットとを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】ホルダー12と、このホルダー12に保持され、入射太陽光線に対して一部吸収・一部反射の表面を形成するシート状の第1の太陽電池11とから成り、長手方向に延長される焦点線と鏡軸面とを有する2次元反射鏡10と、太陽の方向を検出して前記2次元反射鏡10の姿勢を制御することにより、前記光軸面を太陽に向ける太陽追尾ユニットと、前記2次元反射鏡10の焦点線に沿って延長される熱伝導性の管20と、この管の外部表面上に受光面を上向きにして保持される第2の太陽電池21と、前記管20の内部に流体を循環させ、得た熱を外部に供給する冷却・給熱ユニットとを備えている。
【選択図】図1
Description
本発明は、太陽電池を用いた太陽光発電システムに関するものであり、特に、入射太陽光の反射損失を減らすことにより、総合的な光/電変換効率の向上を図った反射・集光型の太陽電池を利用した太陽光発電システムに関するものである。
太陽電池を用いた太陽光発電システムは、風力発電と共に、二酸化炭素を排出しないクリーンな発電システムとして期待されている。最近のアモルファス・シリコンの太陽電池などの製造コストの低廉化も進んでおり、太陽光発電は、従来の火力発電の代替システムとして有望である。発電に必要な入射太陽熱量は十分存在するが、この太陽熱発電はエネルギー変換効率が低いため、高コストになるという欠点がある。また、天候による発電量の変動を平滑化するため、高価な化学的蓄電装置を必要とするなどの欠点もある。
しかしながら、今日、大型の風車の建設が困難な過密な都市部などでは、採算を度外視してでも、太陽光発電に転換しなければならない時期にさしかかっている。後述するように、地球温暖化がこれ以上進むと、地球の熱暴走が開始されるおそれがあるからである。
太陽電池を用いた太陽光発電を大別すると、太陽光線をそのまま太陽電池に受けて電力に変換する直接変換式のものと、太陽光線をレンズや反射鏡を使用して一旦濃縮してから電力に変換する濃縮変換式のものとがある。濃縮変換式のもの(特許文献1,2)は、製造費用の大きな部分を占める太陽電池の表面積が小さくて済むという点で、低コストを実現できる可能性がある。
特開2005−217224 特開2006−313810
従来の太陽光発電システムについては、光/電変換効率の向上、特に、反射で生ずる光/電変換効率の低下を防ぐという大きな課題が残されている。今後、太陽光発電システムの普及に伴い、人口密集地帯の家屋の屋根や、公共の空間、工場など限られた面積の空間で最大限の電力を得ることが必要になる。そのため、光/電変換効率の向上は、単に発電コストの軽減という点だけでなく、設置空間の節減という点からも、また、製造に必要な電力も含めた資源の有効利用という点からも重要な課題である。従って、本発明の第1の解決課題は、太陽光発電システムで生じる太陽光線の反射損失を減少させて、光/電変換効率の改良を図ることにある。
前述したように、太陽光線を反射鏡やレンズで一旦濃縮し、電力に変換する濃縮変換式では、製造費用のかさむ太陽電池の面積が少なくて済むため、製造費用が安価になる可能性がある。この利点は、濃縮倍率を高めるほど、顕著になる。しかしながら、濃縮倍率を高め過ぎると、太陽電池の冷却が困難になるという問題が生じる。また、冷却の問題が解決できたとしても、太陽光線の密度が過大になると、出力電力が飽和して光/電変換効率が低下するというおそれもある。従って、本発明の第2の解決課題は、直接変換式と濃縮変換式の双方の利点を活かすことにより、高い光/電変換効率を維持しつつ製造費用の低廉化を可能にしたハイブリッド方式の太陽光発電システムを提供することにある。
上記従来技術の課題を解決する本第1の発明に係わる太陽電池を使用した太陽光発電システムは、ホルダーと、このホルダーに保持され、入射太陽光線に対して一部吸収・一部反射の表面を形成するシート状の第1の太陽電池とから成り、長手方向に延長される焦点線と鏡軸面とを有する2次元反射鏡と、太陽の方向を検出し、前記2次元反射鏡の姿勢を制御して前記光軸面を太陽に向ける太陽追尾ユニットと、前記2次元反射鏡の焦点線に沿って延長される熱伝導性の管と、前記管の外部表面上に受光面を上向きにして保持される第2の太陽電池と、前記管に流体を循環させ、この管の冷却によって得た熱を外部に供給する冷却・給熱ユニットとを備えている。
上記従来技術の課題を解決する本第2の発明の太陽電池を使用した太陽光発電システムは、ホルダーと、このホルダーに保持され、入射太陽光線に対して一部吸収・一部反射の表面を形成するシート状の第1の太陽電池とから成り、長手方向に延長される焦点線と鏡軸面とを有する2次元反射鏡と、太陽の方向を検出し、前記2次元反射鏡の姿勢を制御して前記光軸面を太陽に向ける太陽追尾ユニットと、前記2次元反射鏡の焦点線に沿って延長される透明な管と、前記透明な管の内部に受光面を上向きにして保持される第2の太陽電池と、前記管に流体を循環させ、第2の太陽電池の冷却によって得た熱を外部に供給する冷却・給熱手段とを備えている。
本第1の発明の太陽光発電システムによれば、2次元反射鏡の反射面を構成するシート状の第1の太陽電池に入射し、そこに吸収された太陽光の成分は、この第1の太陽電池によって電気エネルギーに変換される。これに対して、この第1の太陽電池の表面で反射された反射光成分は、この2次元反射鏡の焦点線に沿って配置された金属などの熱の良導体のパイプの外壁面に保持された第2の太陽電池に入射し、それに吸収され、電力に変換される。2次元反射鏡の反射面で正規反射されて第2の太陽電池に入射する太陽光線は、熱の良導体のパイプの中心に向う。この第2の太陽電池は、このパイプの外周面に沿って平行に配置されている。その結果、第1の太陽電池の表面で正規反射された太陽光線は、第2の太陽電池の受光面にほぼ垂直に入射する。このため、入射角がブリュスター角を超えたことによって全反射などを受けることがなくなり、入射成分が増大する。
この第2の太陽電池の表面で発生した正規反射成分は、入射経路を逆向きにたどって再度、シート状の第1の太陽電池に入射し、ここに吸収される機会を生じさせる。つまり、この太陽光発電装置に入射した太陽光線は、第1,第2の太陽電池のいずれかに吸収される機会が全部で3度にわたって与えられる。3度とも反射されたわずかな成分のみが、この太陽電池を利用した太陽光発電装置の外部に飛び去り、わずかな反射損失を生じる。
第2の太陽電池の内部で発生した熱は、金属など熱の良導体の管を介してその内部を流動せしめられる水などの冷却用の流体に伝達され、この流体が得た熱エネルギーは、熱交換機構などを介して発電機や、暖房機や、給湯機などの熱利用装置に供給される。このように、第1の太陽電池による光/電変換に供されなかった反射光は、金属管などの外周面に保持された第2の太陽電池によって電力に変換され、さらに、この第2の太陽電池の冷却に利用された冷却用の流体の熱は、他の発電機や冷暖房機や給湯機などの熱利用装置で利用される。このような構成であるから、反射光や太陽電池内の発熱によるエネルギー変換効率の低下を実質的に回避することができる。
シート状の第1の太陽電池の表面は、2次元反射鏡に入射した太陽光線の主要部分を吸収して電力に変換する直接変換式の太陽光発電システムの光/電変換機能を果たす。この第1の太陽電池の表面は、同時に、入射太陽光線の一部を反射して濃縮する濃縮変換式の太陽光発電システムの反射鏡の機能を兼ねる。この第1の太陽電池の表面の反射率を適宜な範囲に設定することによって、高いエネルギー変換効率を保ったまま第2の太陽電池の過熱や入出力特性の飽和を有効に防止できるハイブリッド式の太陽光発電システムを提供できる。
本第2の発明によれば、上記第1の発明とほぼ同様の動作が行われ、ほぼ同様の効果が発揮される。最近、日本では、温水貯蔵型の給電システムが普及しつつある。このシステムでは、大規模な火力発電所や原子力発電所で発生される夜間の安価な余剰電力を利用して、家庭で温水が作られる。この温水を家庭内の保温容器の中に貯蔵しておき、風呂や、冷暖房に利用するというものである。本第1,第2の集光型太陽光発電装置は、熱の良導体や透明な管内で暖められた水を、そのような温水貯蔵型の給電システムに供給できる。本発明の太陽電池を利用した太陽光発電装置は、そのような点で、既存のエネルギー供給装置との整合性が良いという大きな利点もある。
従来、この種の太陽光発電システムを構成する太陽電池や、保持体などの各種の構成部品は、火力発電所や原子力発電所で発生させた安価な電力を利用して製造・加工されてきた。このため、これまでは、構造が簡単で受光面が広めの太陽電池を安価な電力を消費して余裕を持たせて大きめ、あるいは多めに製造してきた。つまり、光/電変換効率よりも経済性が重視されてきた。しかしながら、今後は、地球温暖化を防止するうえで、従来の火力発電や、原子力発電そのものが継続できなくなるおそれがある。このため、自然エネルギーを利用した比較的高価な電力を節約しながら利用することにより、なるべく小型で限られた数の部品や、装置や、システムを製造し、これらをいかに高いエネルギー変換効率の下で運用して従来と同量の電力を確保することが必要になる。この観点に立脚すると、従来、コスト低減の見地から適用の可能性が薄かった太陽追尾ユニットなども、資源や空間の利用効率を高めるという観点から適用可能になる。
〔太陽光発電が必要になる理論的な根拠〕
少々遠回りになるかも知れないが、まずは、太陽光発電システムを必要とする危険な地球環境の現状を是非とも明確にしておくことが必要である。
少々遠回りになるかも知れないが、まずは、太陽光発電システムを必要とする危険な地球環境の現状を是非とも明確にしておくことが必要である。
今から20年ほど前、天体物理学者のジョン・グリビンは、水蒸気を温室効果ガスとする危険な温室効果について解説し、これを「湿った温室効果」と呼んだ(“HOTHOUS EARTH:THE GREENHOUS EFFECT & GAIA”John Gribbin,BANTAM PRESS,London・NEW YORK・TORONTO・SYDNEY・AUCKLAND(日本語訳「地球が熱くなる―人為的温室効果の脅威」地人書館1990年6月20日発行)。彼は、この湿った温室効果による熱暴走こそが、太古の金星を表面温度480℃の今日の灼熱の惑星に変えてしまった原因であったと解説した。彼は、地球の軌道があと5%ほど太陽に近かったら、つまり、地球の太陽定数(太陽から受ける輻射熱の密度)があと10%ほど大きかったら、湿った温室効果による熱暴走が地球でも起きるであろうとするNASAエームズ・リサーチ・センターの、ジェームズ・カスティングら3人の科学者の数値計算結果についても紹介した。
金星は太陽に近いため地球の2倍も強い密度の太陽熱を受ける。天文学者によれば、この太陽定数は太陽系の誕生以来、1億年に4%の割で増え続けている。つまり、地球の太陽定数は、金星のあとを18億年遅れて追いかけている。太陽定数が増え続けた結果、太古の金星では、熱暴走の臨界状態を越え、水蒸気の温室効果による熱暴走が開始された。天体物理学者の間では、もう数十年も前から、水蒸気が温室効果ガスであると考えられてきた。東京天文台編の理科年表にも、水蒸気の「構造化学・分子分光学的性質」と題して、赤外線の吸収帯のデータが掲載されている。人工衛星ニンバス4号が記録した地球の放射スペクトルにも、水蒸気の吸収帯が、二酸化炭素のそれと共に現れている。
太古の金星では、温度が上がって水蒸気の大気中濃度が増加し、温室効果が強まった。すると、ますます温度が上がって水蒸気の大気中濃度が増加し、温室効果が強まった。その結果、水蒸気の大気中濃度と気温が限りなく上昇しはじめた。この現象は、正帰還(ポジティブ・フィードバック)による温度の際限ない上昇で、「熱暴走」と呼ばれる。太古の金星では、表面を覆う海水がすべて蒸発する「全球蒸発」が起きた。先程のカスティングらの計算結果が正しければ、地球では、熱暴走の開始までまだ2億5000万年のマージンがあることになる。しかし、地球には、太陽定数が実質的に数%増えたと同等の結果を招く自然現象は多数存在する。例えば、北極海に浮かぶ氷山や、シベリアやアラスカの氷雪面は、正帰還のプロセスに従って加速度的に溶けつつある。すべて溶けると、太陽光線に対する地球の反射率が数%低下する。これは、太陽定数が実質的に数%増えたのと同じ結果を招く。カスティングらによる10%のマージンの何分の1かを、この現象だけで食いつぶしてしまうことになる。
以下の説明では、海面と接する高度ゼロの大気の気温は、海面水温に等しいと近似する。海面水温が30℃から40℃に上昇すると、海面から赤外線の輻射によって逃げ出す熱量は14%増える。つまり、上がった海面水温を下げようとする負帰還が働き、熱暴走の開始を阻止する。ところが、同じ海面水温の増加で、大気中の水蒸気の濃度、従って温室効果の強さは67%も増える。いずれは、ある海面水温を境に、輻射で逃げ出す熱量が、水蒸気の温室効果の増大によって海面水温の上昇とともにかえって減りはじめる。すると、正帰還のプロセスに従って、表面温度は人間の介入なく自動的に、際限なく上昇し始める。それが、湿った温室効果による熱暴走の臨界状態である。
水蒸気は、二酸化炭素の弱い温室効果を強める「増幅機能」を果たす。二酸化炭素が増えると、その温室効果で海面水温がわずかに上昇する。すると、水蒸気の大気中濃度が増えて温室効果が強まり、二酸化炭素単独の場合よりも気温が上る。すると、発端となる最初のわずかな温度上昇は、二酸化炭素の温室効果に限らないということになる。二酸化炭素を排出しない原子力発電によっても、人為的な発熱と水蒸気の増幅作用とにより、温暖化は進行する。エネルギー源を太陽光や、太陽熱から派生した風力や、波力や、あるいはバイオエタノールなどの種々の自然エネルギー源に転換しない限り、温暖化は進行し、海面水温は熱暴走の臨界値に向けて上昇し続ける。ちなみに、二酸化炭素やメタンガスなどの微量の温室効果ガスについての最大の関心事は、湿った温室効果による熱暴走の起爆剤となり得るほどの量が存在するか否かという点に尽きる。
近い将来、地球の熱暴走が起こるとすれば、その引金を引く現象は、「高温多湿の大気の対流の弱まり」である。以下、これについて説明する。図4を参照すると、左側の(A)中の点線は、水蒸気をまったく含まない相対湿度ゼロの1気圧の乾燥空気の密度(Kg/cm3)と気温(℃)との関係を示している。次に、(A)中の実線は、相対湿度100%の完全に湿った1気圧の空気の密度を示している。つまり、下方の点線で示す1気圧の乾燥空気の密度に飽和水蒸気量と称される1気圧の水蒸気の各気温における密度(Kg/cm3)の上限値を加算した値である。
乾燥空気自体の密度は、気温の上昇につれて下方の点線で示すように、ほぼ直線的に減少する。膨張して希薄になったぶん軽くなるからである。しかし、湿った空気では、乾燥空気自体の密度の減少分が、気温の上昇につれて急増する水蒸気の密度によって打ち消されてしまう。特に、気温が、45℃付近を超えると、水蒸気の密度の増分のほうが上回るため、全体の密度は逆に増加しはじめる。乾燥しているか湿っているか、つまり、内陸部か海洋上かで、気温の上昇に伴う空気の密度の変化の様子が大きく異なる。
高度ゼロのある気温の点の気圧は、その点の上空に存在する1cm2あたりの大気の密度の総和(ほぼ、1キログラム/cm2)である。この気圧の算定は、概ね以下のようにして行われる。まず、高度の増加につれて気圧が低下するので、空気の密度は減少する。同時に、気温も低下するので、空気の密度はわずかに増加する。気圧は高度が5000メートル増加するごとにほぼ半減する。気温は、高度が1000メートル増加するごとにほぼ6℃〜8℃ずつ低下する。この値は、気温減率と呼ばれており、上昇気流の断熱冷却によって生じる。理論値は−9.8℃/1000メートルである。まず、高度ゼロの1気圧の任意の点について、そこの気温における乾燥空気の密度を(A)の点線から読み取り、これを出発点とする。
この密度に、高度の増加に伴う密度の増減を反映させる上述の係数を乗算することにより、各高度の空気の密度を算定する。このように算定した各高度における空気の密度を高度ゼロから十分な高度まで積算してゆくと、その高度ゼロのある気温の点の上空に存在する空気の密度の総和が得られる。まったく同様に、同じ点の高度ゼロ、1気圧の水蒸気の密度を(A)中の実線と点線との縦軸方向の間隔から読み取り、これを出発点として、上空の水蒸気の密度の総和を算定する。この値は、通常、空気の密度の総和の数%、つまり、数十ヘクトパスカル(hPa)となる。最後に、上空の空気の密度の総和(空気の分圧)と水蒸気の密度の総和(水蒸気の分圧)とを加算すれば、高度ゼロのある気温の点の気圧(全圧)が得られる。
上記計算結果を図4の(B)に示す。パラメータは気温減率(℃/km)である。点線は相対湿度0%、気温減率−6℃/Kmの乾燥空気の気圧である。3本の実線は、相対湿度100%、気温減率−6℃/Km〜−1℃/Kmの完全に湿った空気の気圧である。各気温の点について算定された気圧は、対流の発生に伴って各点間の気圧差が縮小されることがないと仮定した場合の気圧、例えば、大気と海面との摩擦抵抗を無限大と仮定した場合の、仮想的な静的状態のもとでの気圧である。この近似は、対流の強さの気温依存性を分析するには十分な精度を持つ。高度ゼロの異なる気温の2点間の気圧差ΔPは、2点間に発生する対流の原動力である。南北方向に想定した2点間の地理上の距離ΔLが増加すると、横軸の気温の差ΔTも増加する。従って、(B)の横軸上の距離ΔTは、南北方向に想定した地理上の距離ΔLの尺度でもある。
横軸上の距離ΔTが増すと、対流の原動力である高度ゼロの2点間の気圧差ΔPも増加する。しかし、同時に地理上の距離ΔLも増加するので、高温多湿の大気を海面などから受ける摩擦力に逆らっても高気圧の点から低気圧の点まで運搬するのに必要な力も増大する。結局、ΔP/ΔL、従って、ΔP/ΔT、すなわち、任意の気温で実線や点線に引いた接線の勾配は、空気の対流の強さ(活発さ)を示す指標である。この対流は、典型的には、低空と高空を水平方向に逆向きに吹く風、低気圧の箇所で生じる上昇気流、高気圧の箇所で生じる下降気流から成る閉ループを形成する。高温多湿の大気の対流の弱まりは、駆動力(ΔP/ΔT)の弱まりにより、気温が上昇するにつれて顕著になる。陸上の乾燥した空気では、その傾向がほとんど見られない。つまり、海面上の湿った大気では、気温の増加とともに対流が急激に弱まり始める。
初夏の日本に梅雨空けと猛暑をもたらすのは、その南東の太平洋上に発生する強い高気圧である。フィリピン東方海上で発生した上昇気流が、1000kmほど北上したのち下降することにより、下降時の断熱圧縮で高温になった強い高気圧をそこに発生させ、梅雨前線を北方に押し上げて日本列島を覆うせいだ。ここ10年、日本の梅雨明けの遅れが目立ちはじめた。気象庁は、「その原因は温暖化の進行に伴うフィリピン東方海上の対流(上昇気流)の不活発化であるが、その原因は不明」と長年にわたって、公表し続けてきた。上述したように、海面水温が高まって湿った大気が軽くならなくなり、対流が弱まったと説明できる。これは、フィリピン近海の海面水温が例年より2℃ほど高まるラ・ニーニャの年に限って、この遅れが顕在化するという事実とも符合する。
これまで、湿った温室効果による地球の熱暴走は発生しないとする極めて強力な根拠が存在した。それは、大気中の水蒸気が増えると上空の雲の量が増加するというものであった。すなわち、増えた雲によって海面に達する太陽光線が遮られ、海面水温が低下して上空への水蒸気の供給量が減少する。その結果、気温と上空の水蒸気量の限りない増加の悪循環が絶ち切られるというものである。すると、大気中の水蒸気が増えても上空の雲の量が増えないとしたら、熱暴走が起こり得るということになる。そもそも、上空に雲が形成されるのは、水蒸気が低温の高空で凝結して水滴に変わるからである。そして、高空が低温になるのは、前述したように、断熱冷却のためである。すなわち、大気が強い上昇気流によって短時間で低圧の高空に達するため、外界から熱膨張に必要なエネルギーを受け取る暇もなく自身の熱を消費して膨張するからである。これは断熱膨張による断熱冷却の現象として良く知られている。
詳述したように、湿った大気は、軽くなりにくくなり、上昇気流が弱まる。すると、高空に達するまでに、半日、一昼夜、あるいは数日もの従来に比べて長い時間を要するようになる。大気中の水蒸気や二酸化炭素は、高温の海面から昼夜を分かたず放射され続ける赤外線や、昼間の太陽光線中の赤外線や、水蒸気が凝結熱として空中に放射した赤外線などを、上昇中に吸収して高温になり、分子どうしの衝突時の運動エネルギーの授受を通じて周辺の空気を暖める。つまり、大気は、上昇中に外界から赤外線の熱を受取り、膨張に必要な運動エネルギーに変換しながらゆっくりと膨張する。すると、従来、高空を寒冷化させてきた断熱膨張と断熱冷却の機能が弱まり、気温減率の絶対値が減少する。図4の(B)において、通常起こり得ない小さな気温減率を想定したのはこのためである。つまり、水蒸気が断熱冷却を受けない暖い大気とともに結露せずに上空に達し、その層が上空に厚くなり、温室効果が一段と強まる。この上空の温暖化と気温減率の平坦化は正帰還のプロセスに従って加速度的に進行する。
高空では、気温の低下が鈍っても、気圧が低下するため水蒸気の密度は減少する。その結果、高空に薄い雲が生成される。すると、低空の場合とは異なり、高空には太陽光線を強く反射・吸収するぶ厚い雲は形成されない。最近、ヒマラヤやアンデスなどの高山地帯で顕著になりはじめた氷河の急激な融解と、危険なせきとめ湖の形成は、高空の雲量の減少と高空の高温化によるものであろう。これに関する定期的な観測データは収集されていない。高空が温暖化して高温多湿の大気が海洋の上空に滞留しはじめると、対流と上昇気流、従って断熱冷却機能がますます弱まる。海面は依然として太陽光線で加熱され続け、正帰還の連鎖が持続される。このような危険な熱暴走に到る深刻な正帰還は、枚挙に暇がないほど存在する。
例えば、上昇気流が弱まると、雲形成時の核となるエアロゾルが上空に運ばれなくなり、雲量はますます減少し、海面の加熱は進む。海面水温が上昇すると、海中に溶け込む二酸化炭素の量が減って温室効果が強まり、海面水温が一層上昇する。大気の上昇気流が弱まると、塩分の濃度差による海水の対流が弱まって海面水温が上昇し、上昇気流が一層弱まる。北極周辺が温暖化すると、溶けた凍土から二酸化炭素やメタンガスが放出され、温室効果が強まり一層温暖化する。
そんな熱暴走が、局所的・一時的とは言え、真っ先に開始されるのは、赤道近辺の海域であろう。そこは、常夏のため海面水温が高く、しかも地球の自転によって発生する大気の流れを偏向させるコリオリの力(転向力)が弱過ぎるため、台風やハリケーンなどの暴風が発生しないとされてきた緯度5度以下の海域だからである。
以上、やや詳細に立ち至って説明した。要するに、これ以上温暖化が進むと、熱暴走開始の危険性が増大する。原子力発電は、二酸化炭素を排出しないぶん化石燃料よりはましであるが、前述したように、温暖化防止の究極的な解決策とはならない。早急に、太陽光発電や、風力発電や、波力発電や、バイオエタノールなどの太陽エネルギーまたはこれから派生する自然エネルギー源に転換する必要がある。とりわけ、太陽光発電は風力発電とともに地道な改良が積み重ねられて来た。しかも、前述したように、今後、地球温暖化が進行すると、上空の温暖化に伴って低空の雲量が減少し、日差しが強まると予想される。その点、太陽光発電は、風力発電に比べて優位に立つ可能性を秘めている。
図1は、本発明の太陽電池を利用した太陽光発電装置の一実施例の構成を示す断面図である。この実施例の太陽光発電装置は、樹脂製の保持体12と、この保持体の内面上に接着固定によって貼着され保持されるシート状の第1の太陽電池11とで構成される2次元反射鏡10を備えている。さらに、この太陽電池を利用した太陽光発電装置は、2次元反射鏡10の光軸面(mirror axis plane)を太陽の東西方向に向ける太陽追尾機構(図示せず)を備えている。
さらに、この太陽光発電システムは、この2次元反射鏡10の焦点線(focal line)に沿って延長され、2次元反射鏡10と一体に保持される金属パイプ20と、この金属パイプ20の外壁面に、受光面を上向にして保持される第2の太陽電池21と、金属パイプ20の内部に水などの冷却用の流体を流動させ、流体が得た熱を発電機、暖房機、給湯機などの熱利用装置に供給する給熱機構(図示せず)とを備えている。図中に描いた直線Lは、入射太陽光線である。
2次元反射鏡10は、紙面と垂直な長手方向に同一の断面形状を保ちながら所定の長さにわたって延長された樋形状を呈している。この2次元反射鏡10の表面の上記長手方向に垂直な面で切断した断面形状は、放物線など、焦点を有する滑らかな曲線状を呈している。この各断面内の焦点と光軸をそれぞれ連結することにより、紙面への鉛直方向に延長される焦点線と光軸面が、定義される。
この2次元反射鏡10の焦点線に沿って、金属チューブ20が延長され、保持脚23を介して保持されている。この金属管20の外壁面上に、第2の太陽電池21が熱的に良好な導通状態を保ちながら、かつ受光面を上向きにして保持されている。図示しない太陽追尾機構は、太陽の方向を検出し、この検出した太陽の方向に、光軸面を向けるよう、2次元反射鏡10の姿勢を制御する。
図2は、シート状の太陽電池11の一部分をその厚み方向に切断して示す部分断面図である。樹脂製の保護膜11eの上に、下部金属電極層11cが形成され、その上に、アモルファス・シリコン層の内部にPN接合が形成された半導体・光/電変換膜11aが保持されている。この半導体・光/電変換膜11aの表面には、透明電極層11bが形成され、この透明電極層の表面は、樹脂製の透明保護膜11dによって被覆されている。この半導体・光/電変換膜11aの内部で発生した光起電力は、適宜な間隔で形成されている出力電極(図示省略)を通して、この半導体光/電変換膜11の外部に、光起電力として出力される。
シート状の第1の太陽電池11は、入射太陽光線の入射角が臨界角(ブリュスター角)を超えないように、反射鏡10の形状や、太陽電池11の表面の誘電率などが配慮されている。第1の太陽電池11の表面に入射した太陽光線は、大部分が吸収されて電力に変換され、残りの一部が反射されて金属チューブ20上に保持された第2の太陽電池21の受光面に向かう。つまり、シート状の第2の太陽電池の表面は、入射太陽光線に対して、一部吸収・一部反射面として機能する。
第1の太陽電池11に吸収されることなく、その透明保護膜11dや、透明電極層11bや、あるいは、半導体光/電変換膜11aの表面で正規反射された反射光成分は、2次元反射鏡10の焦点に配置された金属パイプ20の外壁面上に保持された第2の太陽電池21の受光面に入射し、そこに吸収される。第2の太陽電池21は、濃縮された太陽光線の照射を受けて素子内部の動作温度が高くなることを想定して、ガリウム砒素等のIII−V族化合物半導体や、シリコンカーバイド(SiC)等のIV−IV族化合物半導体の広バンドギップの半導体材料で構成されている。
第1の太陽電池シート11の表面における入射太陽光線の反射率を0.3と見積もり、その表面積の第2の太陽電池21の表面積に対する倍率、つまり太陽光線の濃縮倍率を20倍と見積もる。すると、第2の太陽電池21の表面に形成された受光面に入射する太陽光線の密度は、第1の太陽電池シート11の表面に入射する太陽光線の密度の6倍と見積もられる。金属チューブ20と、その内部を循環される冷却水による冷却機能を考慮しても、素子内部の動作温度はかなり高まることが予想される。そこで、第2の太陽電池としては、シリコンの代わりに、高温のもとでも動作可能な広バンドギップの半導体材料を使用する。
特に、半導体素材としてのシリコンカーバイドは、シリコンに比べると、熱伝導率が3倍程度、絶縁破壊電圧が10倍程度、そして電子の飽和ドリフト速度が2倍程度と大きく、高温の動作環境のもとで高電圧・大電力を出力できる半導体材料として好適である。この第2の太陽電池21は、焦点線方向に沿って分割されたリング形状の、あるいは、円周方向に沿って分割された細長板状の形状を呈している。この第2の太陽電池21は、反射防止膜を兼ねた透明保護膜で被覆されたその受光面を外側に向けた状態で、金属パイプ20の外壁面上にハンダ付け層や、ロウ付け層など熱伝導性の良好な結合手段を介在させながら保持されている。
2次元反射鏡10の表面で反射され、第2の太陽電池21に向かう太陽光線は、焦点線に沿って配置される金属チューブ20の中心に向う。この第2の太陽電池21は、この金属チューブ20の中心軸に平行に配置されている。このため、この第2の太陽電池21に入射する太陽光線は、この第2の太陽電池21の受光面に対してほぼ垂直に入射する。このため、入射角がブリュスター角を超えることで全反射を受け、大きな反射損失を生ずるという問題を生じない。
さらに、この第2の太陽電池21のシート状の表面で発生したわずかな反射光成分が、元の入射経路をほぼ逆向きにたどって、再度シート状の第1の太陽電池11の受光面に入射する。この第1の太陽電池11に再度入射した太陽光線は、この太陽電池11に吸収される機会を再び与えられる。つまり、2次元反射鏡10に入射した太陽光線のうち、第1,第2の太陽電池11,21の表面において、連続3度にわたって反射を受けたごくわずかな成分のみが、2次元反射鏡10の外部、すなわち、この太陽光発電システムの外部に飛び去る。その結果、システム全体の反射損失は、わずかな値にとどまる。焦点線に沿って金属チューブ20を配置する代わりに、金属粉の混合などによって熱伝導性を高めたセラミックを素材とする薄いパイプなどを使用することもできる。
図3は、本第2の発明の一実施例の集光型太陽光発電装置の構成を示す断面図である。本図中、図1と同一の参照符号を付した構成要素は、図1に関して既に説明した構成要素と同一のものである。それらについては重複する説明を省略する。
この実施例の集光型太陽光発電装置が、図1の集光型太陽光発電装置と異なる点は、反射鏡10の焦点線に沿って、金属などの熱の良導体のパイプを20を配置する代わりに、ソーダ・ガラスやシリカ・ガラスなどの透明素材から成る透明チューブ22を配置し、その内壁面上に、反射防止膜で覆われた受光面を外側に向けて、第2の太陽電池21を保持している点である。また、チューブの内部を循環せしめられる熱媒体としては、高温で動作する第2の太陽電池21の表面の酸化を防止するために、水に替えて、窒素などの不活性ガスを圧縮状態で利用される。
シート状の第1の太陽電池11に吸収されることなく、その表面で正規反射された反射光成分は、2次元反射鏡10の焦点線に沿って配置された透明チューブ22を通過し、その内壁面上に保持された第2の太陽電池21の受光面に入射し、そこに吸収される。この透明チューブ22と、その内側の第2の太陽電池21に入射する太陽光線は、その受光面に対してほぼ垂直に入射し、ブリュスター角による制約などを受けることなく、反射成分を最小にする。
この第2の太陽電池21は、前述した第1の発明の場合と同様に、濃縮された高密度の太陽光線の照射によって素子内部が高温になることを想定して、ガリウム砒素等のIII−V族半導体や、シリコンカーバイド(SiC)等のIV−IV族半導体などの広エネルギーギップの半導体材料で構成されている。
透明チューブ22の表面や、第2の太陽電池21の受光面で反射された太陽光線の反射成分は、第1の太陽電池11の表面に戻り、そこに吸収される機会が再び与えられる。太陽電池11、又は21に吸収される機会を3度にもわたって逸したわずかな反射光成分のみが、この反射鏡の外部、すなわちこの太陽光発電システムの外部に飛び去る。このため、反射損失は低減され、光/電変換効率が大幅に向上する。
以上説明した第2の実施例では、第2の太陽電池21を透明チューブ22の内壁面上に保持させる構成を例示した。しかしながら、第2の太陽電池21の受光面を透明チューブ22の内壁面から離した状態で保持させることもできる。この構成では、第2の太陽電池21の上下両面が冷却媒体に接触せしめられる。
10 2次元反射鏡
11 シート状の第1の太陽電池
11a 半導体・光/電変換膜
11b 透明電極
11c 金属電極
11d 樹脂製の透明保護膜
12 保持体
20 金属チューブ
21 第2の太陽電池
22 透明チューブ
23 保持脚
11 シート状の第1の太陽電池
11a 半導体・光/電変換膜
11b 透明電極
11c 金属電極
11d 樹脂製の透明保護膜
12 保持体
20 金属チューブ
21 第2の太陽電池
22 透明チューブ
23 保持脚
Claims (2)
- ホルダーと、このホルダーに保持され、入射太陽光線に対して一部吸収・一部反射の表面を形成するシート状の第1の太陽電池とから成り、長手方向に延長される焦点線と鏡軸面とを有する2次元反射鏡と、
太陽の方向を検出し、前記2次元反射鏡の姿勢を制御して前記光軸面を太陽に向ける太陽追尾ユニットと、
前記2次元反射鏡の焦点線に沿って延長される熱伝導性の管と、
前記熱伝導性の管の外部表面上に受光面を上にして保持される第2の太陽電池と、
前記熱伝導性の管の内部に流体を循環させ、この管の冷却によって得た熱を外部に供給する冷却・給熱手段とを備えたことを特徴とする太陽電池を利用した太陽光発電システム。 - ホルダーと、このホルダーに保持され、入射太陽光線に対して一部吸収・一部反射の表面を形成するシート状の第1の太陽電池とから成り、長手方向に延長される焦点線と鏡軸面とを有する2次元反射鏡と、
太陽の方向を検出し、前記2次元反射鏡の姿勢を制御して前記光軸面を太陽に向ける太陽追尾ユニットと、
前記2次元反射鏡の焦点線に沿って延長される透明な管と、
前記透明な管の内部に受光面を上にして保持される第2の太陽電池と、
前記透明な管の内部に流体を循環させ、この第2の太陽電池の冷却によって得た熱を外部に供給する冷却・給熱手段とを備えたことを特徴とする太陽電池を利用した太陽光発電システム。
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JP2008187895A JP2010003999A (ja) | 2008-06-23 | 2008-06-23 | 太陽電池を利用した太陽光発電システム |
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KR101191476B1 (ko) | 2010-08-02 | 2012-10-15 | (주)티엠테크 | 솔라에너지 집적장치 |
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2008
- 2008-06-23 JP JP2008187895A patent/JP2010003999A/ja active Pending
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