JP2010001347A - 顔料インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録画像 - Google Patents

顔料インク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録画像 Download PDF

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Abstract

【課題】顔料の含有量が低い場合においても、表面がコーティングされた記録媒体に形成した画像の耐擦過性を、シルボン紙などの表面の粗いもので擦っても色材が削れることがない程度に優れたものとできる顔料インクを提供すること。
【解決手段】少なくとも、樹脂及び顔料を含有してなり、前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として0.0質量%を超えて0.4質量%以下である顔料インクにおいて、前記顔料はその比表面積が250〜300m2/gでかつそのDBP吸油量が60〜100ml/100gであり、前記樹脂はその酸価が90〜150mgKOH/gでかつその樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0〜3.2cal0.5/cm1.5であり、インク全質量を基準とした前記樹脂の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対して、7.0〜20.0倍である顔料インク。
【選択図】なし

Description

本発明は、色材として顔料を用いた、インクジェット用にも好適な顔料インク、並びに、前記顔料インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録画像に関する。
従来より、インクジェット用インクの色材として、得られる画像の耐水性や耐候性に優れる顔料を含有するインク(顔料インク)が広く用いられている。また、近年のデジタルカメラなどの普及により、高画質な画像を印刷するなどの需要が高まってきたため、インクジェット用の記録媒体などのように、表面がコーティングされた記録媒体に、顔料インクを用いて画像を形成する機会が増えている。
しかし、表面がコーティングされた記録媒体に顔料インクを用いて形成した画像は、該画像を指などで擦ると画像を構成している色材が削れてしまう問題、すなわち画像の耐擦過性が低いという問題がある。このような問題を解決するために、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分とを有するポリエステル樹脂を添加してなるインクに関する提案がある(特許文献1参照)。また、顔料の特性に着目したインクに関する提案がある(特許文献2参照)。
特開2004−238477号公報 特開2001−348523号公報
本発明者らは、特許文献1に記載されたインクについて検討を行った。その結果、確かに、インク中の顔料の含有量を高くした場合においては、特許文献1に記載のインクを用いて、表面がコーティングされた記録媒体に形成した画像を指で擦ったとしても色材が削れてしまうことはなかった。しかし一方で、特許文献1に記載されたインクは、インク中の顔料の含有量を低くした場合に、表面がコーティングされた記録媒体に形成した画像を指で擦ると色材が削れてしまう問題があった。
また、特許文献2に記載されたインクも、特許文献1に記載のインクと同様に、インク中の顔料の含有量を低くした場合に、表面がコーティングされた記録媒体に形成した画像を指で擦ると色材が削れてしまう問題があった。
したがって、本発明の目的は、顔料の含有量が低い場合でも、表面がコーティングされた記録媒体に形成する画像の耐擦過性を、シルボン紙などの表面の粗いもので擦ったとしても色材が削れない程度に優れたものとできる顔料インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記顔料インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録画像を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、少なくとも、樹脂及び顔料を含有してなり、前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として0.0質量%を超えて0.4質量%以下である顔料インクにおいて、前記顔料は、その比表面積が250m2/g以上300m2/g以下で、かつ、そのDBP吸油量が60ml/100g以上100ml/100g以下であり、前記樹脂は、その酸価が90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下で、かつ、その樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.2cal0.5/cm1.5以下であり、さらに、インク全質量を基準とした前記樹脂の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対して、7.0倍以上20.0倍以下であることを特徴とする顔料インクである。
また、本発明の別の実施態様は、インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、前記インクとして上記の顔料インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法である。
また、本発明の別の実施態様は、インクを収容してなるインク収容部を備えてなるインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されているインクが、上記の顔料インクであることを特徴とするインクカートリッジである。
また、本発明の別の実施態様は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなる記録ユニットであって、前記インク収容部に収容されているインクが、上記の顔料インクであることを特徴とする記録ユニットである。
また、本発明の別の実施態様は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなるインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に収容されているインクが、上記の顔料インクであることを特徴とするインクジェット記録装置である。
また、本発明の別の実施態様は、上記の顔料インクを用いたインクジェット記録方法によって形成されたことを特徴とするインクジェット記録画像である。
本発明によれば、顔料の含有量が低い場合でも、表面がコーティングされた記録媒体に形成する画像の耐擦過性を、シルボン紙などの表面の粗いもので擦っても色材が削れることがない程度に優れたものとできる顔料インクを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、前記顔料インクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録画像を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。なお、以下の記載においては、顔料インクのことを単に「インク」と呼ぶことがある。
最初に、本発明者らが、本発明のインクを開発するに至った経緯を説明する。先ず、本発明者らは、インクを用いて形成した画像の耐擦過性を向上させるために、インク中に含有させる樹脂について検討を行った。その結果、以下の酸価及び樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)の特性を有する樹脂が、画像の耐擦過性を向上させるのに最適であることがわかった。具体的には、前記酸価が、90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下の樹脂である。また、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が、1.0cal0.5/cm1.5以上3.2cal0.5/cm1.5以下の樹脂である。
しかし、本発明者らが検討を進める過程で、インク中の顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.0質量%を超えて0.4質量%以下である場合、インク中に上記の特性を有する樹脂を含有させたとしても、以下の課題があることがわかった。すなわち、このように顔料の含有量が低いインクを用いる場合においては、上記の特性を有する樹脂を含有させたとしても、表面がコーティングされた記録媒体に形成する画像の耐擦過性が十分に得られない場合があることがわかった。
そこで、本発明者らは、上記のような課題を解決するために、先ず、インクを記録媒体に付与した後における、記録媒体上に存在する樹脂及び顔料の状態と、画像の耐擦過性との関係について検討を行った。その結果、インク中の樹脂の含有量が、画像の耐擦過性に影響を与えることがわかった。すなわち、インク中の顔料の含有量が低い場合においては、インク中の樹脂の含有量をある一定量以上とすることで、ある程度の画像の耐擦過性が得られることがわかった。しかし、この場合には、インク中の顔料の含有量をある一定量以上にした場合でも、ある程度の量を境として、その後に幾らインク中の樹脂の含有量を増加させたとしても、画像の耐擦過性は向上しないことがわかった。
上記で述べたことを、図面を用いてより詳細に説明する。図1は、樹脂の含有量が、記録媒体上に形成された顔料凝集体を十分包含するには至らない程度の量であるインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した後の状態を示す模式図である。この場合、図1からわかるように、樹脂は顔料凝集体の周辺にしか存在していないため、顔料凝集体が記録媒体と対面している箇所及びその周辺部分でしか顔料凝集体と記録媒体は結着しておらず、画像の耐擦過性はかなり低くなる。
図2は、樹脂の含有量が、記録媒体上に形成された顔料凝集体を包含するのに十分な量であるインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した後の状態を示す模式図である。図2からわかるように、インク中の樹脂の含有量を高くすることで、顔料凝集体と記録媒体の対面箇所及びその周辺部分でこれらが結着するだけでなく、顔料凝集体間も樹脂で結着されて、顔料及び樹脂を含む層が形成されるようになる。これにより、顔料及び樹脂を含む層は強固になり、画像の耐擦過性は向上する。このことは、顔料及び樹脂を含む層における顔料が、充填剤として機能していることを示している。
図3は、図2で説明されるインクよりも、さらに樹脂の含有量を高くしたインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した後の状態を示す模式図である。図3に示したように、図2の場合と比べて、記録媒体上に存在する顔料凝集体を包含している樹脂の量は格段に増えている。しかし、本発明者らが検討した結果、この場合は、記録媒体上に存在する顔料凝集体を包含している樹脂の量が増えているにもかかわらず、図3で説明されるインクは、図2で説明されるインクに比べて、画像の耐擦過性の程度がやや低下することがわかった。このように、インク中の樹脂の含有量を増やしたにもかかわらず、画像の耐擦過性の程度が低下した原因を本発明者らは以下のように推測している。具体的には、インク中の樹脂の含有量が増えると、顔料及び樹脂を含む層の単位体積当たりに存在する顔料の比率が小さくなるため、層の強度は樹脂のみで形成される層の強度に近づいていく。そして、樹脂のみで形成される層の強度は、充填材として機能する顔料が適度に存在した状態で形成されている層の強度よりも低いため、画像の耐擦過性が低下したものと本発明者らは推測している。これらのことから、顔料凝集体間が樹脂で十分に結着してさえいれば足り、それ以上にインク中の樹脂の含有量を増やしたとしても、顔料凝集体間の結着力が高まることはなく、画像の耐擦過性をより向上させることにはならないことがわかる。
そこで、顔料インクにより形成される画像の耐擦過性をより高いものとするために、本発明者らが、さらに検討を行った。その結果、インク中に含有させる顔料の種類によって、得られる画像の耐擦過性の程度が異なることがわかった。具体的には、ストラクチャー(詳細は後述する)が低い顔料をインクに用いることで、画像の耐擦過性が向上することがわかった。この理由を本発明者らは以下のように推測している。
一般的なインクジェット用のインクに用いられている顔料の一次粒径は、平均粒径で10nm乃至40nmである。しかし、インク中において、顔料は、一次粒子の状態で個々に分散されているのではなく、これらの一次粒子が、数個から数十個で連なって房状のストラクチャーを形成し、平均粒径で100nm乃至200nmの二次粒子の状態で分散している。このようにインク中の顔料は二次粒子の状態で分散しているため、ストラクチャーの低い顔料は顔料の二次粒径が小さくなり、ストラクチャーの高い顔料は顔料の二次粒径が大きくなる。
図4は、ストラクチャーが高い顔料、又は、ストラクチャーが低い顔料を含有するインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した後の状態を示す模式図である。図4からわかるように、ストラクチャーが低い顔料を用いたインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した場合、ストラクチャーが高い顔料を用いたインクを付与した場合に比べて、記録媒体と結着する顔料凝集体の数が多くなる。さらに、記録媒体上において、ストラクチャーが低い顔料は、顔料の表面積に対する記録媒体又は他の顔料との結着面積の比率が高くなることから、ストラクチャーが高い顔料と比べて記録媒体や他の顔料とより強く結着できる。
このような顔料のストラクチャーは、顔料の比表面積及びDBP吸油量の特性により規定することができる。本発明者らの検討の結果、画像の耐擦過性に特に優れる顔料は、その比表面積が250m2/g以上300m2/g以下であり、かつ、そのDBP吸油量が60ml/100g以上100ml/100g以下のものであることがわかった。
以上述べてきたように、顔料の含有量が0.0質量%を超えて0.4質量%以下であるインクを用いて、表面がコーティングされた記録媒体に形成した画像の耐擦過性を向上させるためには、以下の構成を有するインクが最適であるという結論に至った。すなわち、酸価、及び、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が特定された樹脂、並びに、比表面積及びDBP吸油量が特定された顔料を用い、かつ、インク中のこれらの含有量比を特定の比率にすることを要する。具体的には、下記の樹脂及び顔料によってインクを構成する。樹脂は、酸価が90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下で、かつ、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.2cal0.5/cm1.5以下のものとする。また、顔料は、比表面積が250m2/g以上300m2/g以下で、かつ、DBP吸油量が60ml/100g以上100ml/100g以下のものとする。また、先に述べたように、インク中の顔料の含有量が低い場合において、十分な画像の耐擦過性を得るには、インク中の樹脂の含有量を一定量以上にする必要がある。そして、本発明者らが検討した結果、インク全質量を基準とした前記樹脂の含有量(質量%)は、前記顔料の含有量(質量%)に対して、7.0倍以上である必要があることがわかった。一方、インク中の樹脂の含有量が多すぎると、記録ヘッドのフェイス面(インクを吐出するための吐出口を有する面)が濡れることにより、インクの飛行曲がりが発生し、インクの着弾点がずれる現象が生じる場合がある。また、上述したように、インク中の樹脂の含有量を一定量以上増加させたとしても、ある程度の量を境として、画像の耐擦過性がさらに向上することはない。そして、本発明者らが検討した結果、インク全質量を基準とした前記樹脂の含有量(質量%)は、前記顔料の含有量(質量%)に対して、20.0倍以下であることが必要があることを見出した。
なお、本発明で使用する樹脂を規定する「樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)」について説明する。先ず、溶解度パラメーターについて説明する。溶解度パラメーターは、化合物中の官能基の種類によって影響を受ける。そして、溶解度パラメーターは複数の化合物の溶解性、すなわち、それらの化合物同士の親和性の強さを判断する因子の一つとなるものであり、複数の化合物それぞれの溶解度パラメーターが近いと、これらの化合物同士の溶解性が高くなる傾向がある。溶解度パラメーターは、電子分布の一次的な偏りに起因する分散力項(δd)、双極子モーメントより発生する引斥力に起因する極性項(δp)、活性水素や孤立電子対により発生する水素結合に起因する水素結合項(δh)にわけられる。本発明においては、溶解度パラメーターを樹脂に適用するが、樹脂の水素結合項(δh)の値が大きい程、樹脂と水との親和性は大きくなる。樹脂の水素結合項(δh)は、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターから算出することができる。その場合、Krevelenの提案した有機分子を原子団として取り扱った原子団総和法を利用して求めることができる(Krevelen、Properties of Polymer 2nd Edition、New York,154(1976)参照)。この方法は以下のようなものである。先ず、有機分子の各原子団の、モルあたりの分散力パラメーターFdi、モルあたりの極性力パラメーターFpi、モルあたりの水素結合力パラメーターFhiから、溶解度パラメーターの、分散力項(δd)、極性項(δp)及び水素結合項(δh)を求める。そして、これらの値を用いることで、下記式のようにして溶解度パラメーター(δ)を求めることができる。本発明では、後述するように、上記の考え方を利用し、樹脂を構成する各モノマーにおける固有の溶解度パラメーターを用いて樹脂の水素結合項(δh)を算出した。
Figure 2010001347
<樹脂>
本発明のインクに用いる樹脂は、上述の通り、酸価及び樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が特定された樹脂である必要がある。具体的には、酸価が90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下で、かつ、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.2cal0.5/cm1.5以下の樹脂である。これらの要件を満たせば、本発明のインクに用いる樹脂を構成するモノマーや、その組成比などは特に限定されるものではなく、いずれのものも用いることができる。
なお、本発明で規定する「樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)」は、具体的には、下記のようにして求めた値である。先ず、対象となる樹脂を構成する各モノマーについて、モノマー固有の溶解度パラメーターより、樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)を算出する。次いで、上記で得られた樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)に、樹脂を構成する各モノマーの組成(質量)比(合計を1とした組成比)をかけた値をそれぞれ求める。さらに、このようにして得られた値を足し合わせることによって、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)は得られる。
本発明のインクに用いる樹脂を構成するモノマーは、上記で述べたような酸価及び樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)の特性を有する樹脂とすることができるものであれば、いずれのものも用いることができる。具体的には、樹脂を構成するモノマーとしては、以下に挙げるモノマーなどを用いることができる。
スチレン、α−メチルスチレンなど。n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなど。アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸などのカルボキシル基を有するモノマーなど。スチレンスルホン酸、スルホン酸−2−プロピルアクリルアミド、アクリル酸−2−スルホン酸エチル、メタクリル酸−2−スルホン酸エチル、ブチルアクリルアミドスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマーなど。メタクリル酸−2−ホスホン酸エチル、アクリル酸−2−ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有するモノマーなど。なお、本発明においては、エチレンオキサイドなどのノニオン性基を有するモノマーを樹脂を構成するモノマーとして用いると、記録媒体上に形成された膜の強度が小さくなる場合があるため、あまり好ましくない。
本発明のインクを構成する樹脂は、少なくとも、ベンジルメタクリレート又はn−ブチルアクリレートのいずれかのモノマーを用いて合成されたものであることが好ましい。さらには、スチレンとn−ブチルアクリレートとを共に用いて合成された樹脂をインク中に含有させることで、形成した画像の耐擦過性をより向上させることができる。また、このとき、スチレンを基準としたn−ブチルアクリレートの質量比率(n−ブチルアクリレート/スチレン)が、0.1以上0.5以下であるモノマー比率で、合成してなる樹脂を用いることが特に好ましい。
本発明のインクを構成する樹脂の重量平均分子量は、5,000以上15,000以下、さらには6,000以上9,000以下であることが好ましい。樹脂の重量平均分子量が5,000未満であると、画像の十分な耐擦過性が得られない場合がある。一方、樹脂の重量平均分子量が15,000を超えると、インクの粘度が高くなるなどして、インクジェット用インクに求められる、インクの吐出安定性などが十分に得られなくなるおそれがある。なお、上記の特性を有する樹脂は、インクに個別に含有させてもよいし、顔料を水性媒体中に分散するための樹脂分散剤(高分子分散剤)として用いることもできる。
<顔料>
本発明のインクに用いる顔料は、その比表面積が250m2/g以上300m2/g以下で、かつ、そのDBP吸油量が60ml/100g以上100ml/100g以下である必要がある。また、本発明において、インク中の顔料の含有量(質量%)は、0.0質量%を超えて0.4質量%以下であり、さらに、樹脂の含有量(質量%)は、前記顔料の含有量(質量%)に対して、7.0倍以上20.0倍以下である必要がある。なお、これらの含有量はいずれも、インク全質量を基準とした含有量(質量%)であり、インク中に占める顔料の割合を意味する。本発明のインクに用いる顔料は、これらの要件を満たせば、特に限定されるものではなく、いずれのものも用いることができる。
ブラックインクには、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。具体的には、例えば、以下の市販品などを用いることができる。
レイヴァン:1170、1190ULTRA−II、1200、1250、1255、1500、2000、3500、5000ULTRA、5250、5750、7000(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:330R、400R、660R、モウグルL、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。
また、新たに調製したカーボンブラックを用いることもできる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではなく、従来のカーボンブラックをいずれも用いることができる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子や、チタンブラックなどを顔料として用いてもよい。
カラーインクには、有機顔料を顔料として用いることが好ましい。具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。
トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなど。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、例えば、以下のものを用いることができる。C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128。137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185など。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61、71など。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175など。同:176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272など。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50など。C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64など。C.I.ピグメントグリーン7、36など。C.I.ピグメントブラウン23、25、26など。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のインクに用いる顔料の分散方式としては、以下に挙げるような方式とすることができる。分散剤を用いる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、水不溶性色材自体の分散性を高めて分散剤などを用いることなく分散可能としたマイクロカプセル型顔料を用いることができる。また、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)や、高分子を含む有機基が顔料粒子の表面に化学的に結合した顔料(樹脂結合型自己分散顔料)を用いることもできる。もちろん、これらの分散方式の異なる顔料を組み合わせて用いることもできる。
本発明のインクには、水性媒体中に顔料を分散させるため分散剤を用いることができる。分散剤としては、先に説明した、特定の酸価及び樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)をもつ樹脂が分散剤としても機能するものであれば、これを用いることが好ましい。しかし、本発明はこれに限定されず、これ以外の樹脂を分散剤として用いることもできる。本発明においては、水溶性を有する樹脂であればいずれのものも分散剤として用いることができるが、重量平均分子量が1,000以上30,000以下である樹脂を用いることがより好ましい。
分散剤(樹脂)を構成するモノマーは、具体的には、以下のものが挙げられ、これらのうち少なくとも2つのモノマーで構成される樹脂が挙げられる。このとき、少なくとも1つは親水性のモノマーであることが好ましい。スチレン、ビニルナフタレン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、又はこれらの誘導体など。また、樹脂の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩などが挙げられる。さらに、ロジン、シェラック、デンプンなどの天然樹脂を用いてもよい。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。
<水性媒体>
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、以下に挙げるようなものを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、以下の水溶性有機溶剤を用いることができる。メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール。1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類。2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルモルホリンなどの複素環類。ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物など。
水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
<その他の成分>
本発明のインクには、上記成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
さらに、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有してもよい。
[インクジェット記録方法]
本発明のインクは、インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行う本発明のインクジェット記録方法に適用することが特に好ましい。インクジェット記録方法には、インクに力学的エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法や、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録方法などがある。特に、本発明のインクは、熱エネルギーを利用したインクジェット記録方法に好ましく適用することができる。
[インクカートリッジ]
本発明のインクカートリッジは、インクを収容してなるインク収容部を備えてなり、前記インク収容部に収容されているインクが、上記した本発明のインクであることを特徴とする。
[記録ユニット]
本発明の記録ユニットは、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなり、前記インク収容部に収容されているインクが、上記した本発明のインクであることを特徴とする。特に、前記記録ヘッドが、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出する記録ユニットであることがより好ましい。
[インクジェット記録装置]
本発明のインクジェット記録装置は、インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなり、前記インク収容部に収容されているインクが、上記した本発明のインクであることを特徴とする。特に、前記記録ヘッドが、インクに熱エネルギーを作用させることによりインクを吐出するインクジェット記録装置であることがより好ましい。
以下、インクジェット記録装置の一例について以下に説明する。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図5及び図6に示す。図5は、インク流路に沿った記録ヘッド13の断面図であり、図6は図5のA−B線での切断面図である。記録ヘッド13はインク流路(ノズル)14を有する部材と発熱素子基板15とで構成される。発熱素子基板15は、保護層16、電極17−1及び17−2、発熱抵抗体層18、蓄熱層19、基板20で構成される。
記録ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生する。そして、気泡の圧力でメニスカス23が突出し、インク21はインク滴24として、ノズル14の吐出口22から記録媒体25に向かって吐出される。
図7は、図5に示した記録ヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図である。マルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図5と同様の記録ヘッド28で構成される。
図8は、記録ヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。ブレード61はワイピング部材であり、その一端はブレード保持部材によって保持されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
62は記録ヘッド65の吐出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様に、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。吐出回復部64は、ブレード61、キャップ62、及びインク吸収体63で構成される。ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃などの除去が行われる。
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びそれに隣接した領域の移動が可能となる。
51は記録媒体を挿入する給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を有する排紙部へ排紙される。記録ヘッド65による記録が終了して、記録ヘッド65がホームポジションへ戻る際に、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。このようにして、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
キャップ62が記録ヘッド65の吐出口面に当接してキャッピングを行う際には、キャップ62は記録ヘッド65の移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する際には、キャップ62及びブレード61は、上述のワイピングの際と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面がワイピングされる。記録ヘッド65のホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッド65が記録のために記録領域を移動する間にも、所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴ってもワイピングが行われる。
図9は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクを記録ヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。
記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図10に示すように、それらが一体になったものも好適に用いることができる。図10において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、インク吸収体中のインクが複数の吐出口を有する記録ヘッド部71からインク滴として吐出される。また、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネなどを仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図8に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置について説明する。複数のノズルを有するノズル形成基板、圧電材料と導電材料で構成される圧力発生素子、圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インク滴を吐出口から吐出する記録ヘッドを有することが特徴である。図11は記録ヘッドの構成の一例を示す模式図である。記録ヘッドは、インク室に連通するインク流路80、オリフィスプレート81、インクに圧力を作用させる振動板82、振動板82に接合されて電気信号により変位する圧電素子83、オリフィスプレート81や振動板82などを支持固定する基板84で構成される。圧電素子83にパルス状の電圧を与えることで発生した歪み応力は、圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを加圧することで、オリフィスプレート81の吐出口85からインク滴を吐出する。このような記録ヘッドは、図8と同様のインクジェット記録装置に組み込んで用いることができる。
[インクジェット記録画像]
本発明のインクジェット記録画像は、上記した本発明のインクを用いたインクジェット記録方法によって形成されたことを特徴とする。
以下、実施例、及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
<樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)>
樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)は、下記のようにして求めた。先ず、樹脂を構成する各モノマー固有の溶解度パラメーターより、樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)を算出する。そして、樹脂を構成する各モノマーの水素結合項(δh)に、樹脂を構成する各モノマーの組成(質量)比(合計を1とした組成比)をかけた値を求める。次に、これらの値を足し合わせることにより、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項を求めることができる。表1に、後述する顔料分散液の調製で用いた各樹脂について、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出された各モノマーの水素結合項(δh)の値を示した。
Figure 2010001347
以下に、スチレン−ベンジルメタクリレート−アクリル酸(組成(質量)比=0.782:0.102:0.116)の共重合体である樹脂aを例に挙げて、樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項の求め方を説明する。上記表1より、樹脂aを構成するモノマーである、スチレン、ベンジルメタクリレート、及びアクリル酸の、溶解度パラメーターより算出されるモノマーの水素結合項(単位はcal0.5/cm1.5)は、それぞれ、0.00、3.21、及び5.81である。したがって、樹脂aを構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂aの水素結合項(δh)は、上記した各モノマーの水素結合項と組成から下記式のように求められる。
Figure 2010001347
<顔料分散体の調製>
各顔料分散体の調製に用いた顔料(C.I.ピグメントブラック7)及び樹脂の特性を、それぞれ表2にまとめて示した。
Figure 2010001347
Figure 2010001347
表2−1に示した各顔料A〜G(C.I.ピグメントブラック7)と、表2−2に示す各樹脂を分散樹脂として用いて、表3の組成の顔料分散体1〜14を調製した。具体的には、顔料を10部、樹脂を10部(固形分)、グリセリンを6部及び純水を74部の組成で混合し、これらをサンドミル(金田理化工業製)を用いて、1,500rpmでそれぞれ5時間分散処理し、顔料分散体1〜14を調製した。サンドミルによる分散処理の際の、分散条件は、0.6mm径のジルコニアビーズをポット内に充填率70%で充填させて行った。また、上記で用いた各樹脂には、予め、水及び各樹脂の酸価と当量の水酸化カリウムを加えて温度80℃で撹拌し、水溶液としたものを用いた。
Figure 2010001347
<インクの調製>
上記で調製した各顔料分散体1〜14と、その調製に用いた樹脂a〜hを用いて、下記の方法で実施例及び比較例のインク1〜18を作製した。インク1〜8は実施例のインクであり、インク9〜18は比較例のインクに該当する。表4の上段に示す成分をそれぞれ混合して、十分撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのフィルター(製品名:HDCII;ポール製)にて加圧ろ過を行ってインク1〜18を調製した。また、表4の下段には、各インク中における、顔料の含有量、樹脂の含有量、及び樹脂の含有量と顔料の含有量の質量比率(樹脂/顔料)、の値をそれぞれ示した。
Figure 2010001347
Figure 2010001347
Figure 2010001347
<評価>
上記で得られた実施例1〜8、比較例1〜10のインクを、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(BJF900;キヤノン製)にそれぞれ搭載して、以下の評価を行った。
[耐擦過性評価]
表面がコーティングされた、光沢を有する記録媒体(UF120;キヤノン製)に、4パス双方向記録で、記録デューティを150%とした、4cm×6cmのインクジェット記録画像を形成した。得られた画像を一晩放置した後、画像の上にシルボン紙及び面圧100g/cm2の分銅を置き、記録物とシルボン紙を擦り合わせた。その後、シルボン紙及び分銅を取り除き、画像や非記録部の汚れを目視で観察して、耐擦過性の評価を行った。耐擦過性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表5に示した。
A:非記録部の汚れや画像の削れがない
B:画像に傷が付いているが、削れてはいない
C:非記録部の汚れ及び画像の削れが若干ある
D:非記録部の汚れ及び画像の削れが多くある
[吐出安定性評価]
A4サイズの記録媒体(オフィスプランナー;キヤノン製)に、記録デューティを50%とした画像を100枚形成した。その後、さらに、複数の罫線を含む画像を形成して、得られた画像にヨレが生じていないかを目視で確認して、吐出安定性の評価を行った。吐出安定性の評価基準は下記の通りである。評価結果を表5に示した。
A:画像にヨレがほとんどない
B:画像にヨレが著しく存在する
Figure 2010001347
樹脂の含有量が低いインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した後の状態を示す模式図である。 樹脂の含有量が適切であるインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した後の状態を示す模式図である。 樹脂の含有量が高いインクを、表面がコーティングされた記録媒体に付与した後の状態を示す模式図である。 顔料のストラクチャーと、表面がコーティングされた記録媒体にインクを付与した後の状態の関係を示す模式図である。 記録ヘッドの縦断面図である。 記録ヘッドの横断面図である。 図5に示した記録ヘッドをマルチ化した記録ヘッドの斜視図である。 インクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。 インクカートリッジの縦断面図である。 記録ユニットの一例を示す斜視図である。 記録ヘッドの構成の一例を示す模式図である。
符号の説明
13:記録ヘッド
14:ノズル
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出口
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:記録ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:記録ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口

Claims (8)

  1. 少なくとも、樹脂及び顔料を含有してなり、前記顔料の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として0.0質量%を超えて0.4質量%以下である顔料インクにおいて、
    前記顔料は、その比表面積が250m2/g以上300m2/g以下で、かつ、そのDBP吸油量が60ml/100g以上100ml/100g以下であり、
    前記樹脂は、その酸価が90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下で、かつ、その樹脂を構成するモノマーの溶解度パラメーターより算出される樹脂の水素結合項(δh)が1.0cal0.5/cm1.5以上3.2cal0.5/cm1.5以下であり、
    さらに、インク全質量を基準とした前記樹脂の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対して、7.0倍以上20.0倍以下であることを特徴とする顔料インク。
  2. 前記樹脂を構成するモノマーが、少なくとも、ベンジルメタクリレート又はn−ブチルアクリレートのいずれかを含む請求項1に記載の顔料インク。
  3. 前記樹脂を構成するモノマーが、スチレンとn−ブチルアクリレートとを含み、かつ、スチレンを基準としたn−ブチルアクリレートの質量比率(n−ブチルアクリレート/スチレン)が、0.1以上0.5以下である請求項2に記載の顔料インク。
  4. インクをインクジェット方法で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法であって、前記インクに、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料インクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
  5. インクを収容してなるインク収容部を備えてなるインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  6. インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなる記録ユニットであって、前記インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料インクであることを特徴とする記録ユニット。
  7. インクを収容してなるインク収容部と、インクを吐出する記録ヘッドとを備えてなるインクジェット記録装置であって、前記インク収容部に収容されているインクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料インクであることを特徴とするインクジェット記録装置。
  8. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の顔料インクを用いたインクジェット記録方法によって形成されたことを特徴とするインクジェット記録画像。
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