JP2009536028A - 遺伝子発現制御用のエピジェネティック調節複合体 - Google Patents

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Abstract

部位特異的DNA結合活性を有する第1ドメインとアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2ドメインとを少なくとも含む、エピジェネティック調節ポリペプチド複合体であって、第2ドメインは、ヒストンH2Aの尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能である。複合体は、ヒストンH2AおよびH4の尾部領域におけるR3のメチル化を制御することによって、細胞、特に哺乳類幹細胞における遺伝子発現を調節可能である。複合体の例として、Blimp1のDNA結合活性とPrmt5のアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性とを含むポリペプチド複合体が挙げられる。

Description

本発明は、遺伝子発現のエピジェネティックな調節の分野に関する。本発明は特に、インヴィヴォおよびインヴォトロでの遺伝子発現を制御するように標的化したヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を含む組成物および方法に関する。
エピジェネティックスは、遺伝子のヌクレオチド配列にコードされない情報の、単細胞又は多細胞生物からその子孫への伝達に関するものである。エピジェネティックな制御は通常、DNA又はクロマチン構造の化学修飾を介して確立される。遺伝子発現は、例えば、ゲノムDNAに関連するヒストンのメチル化およびアセチル化を介して調節されうる。ヒストンのメチル化およびアセチル化は、表面に露出し、アルギニン(R)やリシン(K)等のアミノ酸残基に富んでいるため正味の正電荷を有するドメインである、ヒストン尾部において起こりやすい。ヒストン尾部の化学修飾は、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素(HMTase)やヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性(HAT)を有する酵素によって、調節されている。
エピジェネティックな修飾は、生物の正常な発達の様々な段階において、また正常細胞から癌性細胞へ形質転換する間に、起こりうる。この修飾により、多くの場合は特定の遺伝子が発現停止するか活性化されることとなる。癌においては、腫瘍細胞のほとんどが、異常なDNAエピジェネティックなインプリンティングを示すことが文献に詳しく示されている(Feinberg AP & Vogelstein B, (1983) Nature 1(5895):89-92)。
幹細胞は、高頻度の自己再生と前駆細胞への分化とが可能な細胞である。従って幹細胞も癌の原発部位の有力候補である。幹細胞の寿命は長く、その間に悪性腫瘍となる傾向を高める遺伝的突然変異やエピジェネティック修飾を獲得しうる。幹細胞は、増殖と分化との間での競合する利益において細微なバランスを成り立たせているニッチにあるので、小さくても深刻なエピジェネティック変化が起こることで、そのバランスが失われて癌幹細胞表現型を取り易くなっているということが仮定される。エピジェネティック修飾の制御が起こる理由と機構を解明することが、癌の理解、検出および治療、特に癌幹細胞の治療にとって重要である。実際のところ、再発癌および侵襲性癌の症例において治療を困難としている一要因が、腫瘍には、従来の治療に応答しない癌幹細胞が含まれるということにあると考えられている。
体細胞核移植(SCNT)は、家畜生産用(クローニング用又は幹細胞治療用)、タンパク質のバイオマニュファクチャリング(biomanufacturing)用、および疾患モデル用の動物を得るのに用いられている(Wilmut I, Beaujean N, de Sousa PA, DinnyesA, King TJ, Paterson LA, Wells DN, Young LE. (2002) Nature. Oct 10;419(6907):583-6)。SCNTを得る効率かつ成功率に関する問題の1つとして、体細胞ゲノムが、正常な再プログラム化を阻害するエピジェネティックマークを、広範かつ安定的に含んでいることが挙げられる。またレシピエントの卵細胞が、エピジェネティック効果を呈する因子を含みうるので、これも前記手順の失敗の一因となっている。従って、SCNTの効率を改善する組成物および方法と、この手順によって促進されるバイオプロセス用途を提供することが必要とされている。
マウスにおける始原生殖細胞(PGC)の特異化に基づいて、インヴィヴォでのエピジェネティック修飾の効果を分析する良好な実験モデルが提供されている。約45個のPGCからなる初代集団が、マウス胚においてまずE7.5で検出される(Ginsburg, M., Snow, M. H.およびMcLaren, A. (1990) Development 110, 521-8)。その後、これらPGCは移動してE10.5から生殖***に入り、そこで生殖細胞の更なるエピジェネティックなプログラム化が継続する。E13.5には、生殖細胞はメスでは減数***前期に入り、オスの性腺では有糸***停止に入る。
PGCの特異化の直後、HMTaseおよびHATそれぞれによるヒストン尾部のメチル化およびアセチル化などの顕著なエピジェネティック修飾が起きる(Surani他, 2004 (CSH Symposium); Seki他, 2004; Lachner, M., O'Sullivan, R. J.およびJenuwein, T. (2003) J Cell Sci116, 2117-24,ならびにVaquero, A., Loyola, A.およびReinberg, D. (2003) Sci Aging Knowledge Environ 2003, RE4)。PGCにおけるこれらのエピジェネティックな変化を調節する役割を担っていることが仮定される候補遺伝子としては、保存SET/PRドメインタンパク質ファミリーに属するHMTaseが挙げられる。
従って、細胞内におけるエピジェネティック調節機構の制御を向上する試薬および方法を提供することが必要とされている。特に、幹細胞および癌細胞の細胞運命決定に影響を与えるように遺伝子発現を大きく制御することが可能な、組成物および方法が必要とされている。
本発明の第1の側面において、部位特異的DNA結合活性を有する第1ドメインとアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2ドメインとを少なくとも含む単離ポリペプチド複合体であって、前記第2ドメインは、ヒストンH2Aの尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能であるポリペプチド複合体が提供される。
本発明の特定の態様において、前記第2ドメインは、アルギニン残基の対称性NG,N’Gジメチル化を供するアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有し、好適にはヒストンH2Aの尾部領域の第3位に位置するアルギニン残基(H2A R3)をメチル化する。あるいは任意に、前記第2ドメインはさらに、ヒストンH4の尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能であり、好適にはヒストンH4の尾部領域の第3位に位置するアルギニン残基(H4R3)をメチル化する。本発明のある態様において、アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性は、Prmt5アルギニンメチルトランスフェラーゼドメインもしくはその誘導体又は相同体が呈する。
本発明によると、前記第1ドメインは、哺乳類のゲノムDNAにおける遺伝子発現の制御に必要な1以上のコンセンサス配列への結合を特異的に対象としていてもよい。通常(ただし例外もある)、そのような部位は、非コードプロモーター領域、非翻訳領域又はイントロン内に位置していてもよい。特定の態様において、本発明のDNA結合ドメインは、4個のGGGAAAGモチーフ(2個が標的遺伝子の5’プロモーター領域内に、2個が転写開始点の下流に位置する)のコンセンサス配列を有するPRDI/Blimp1型結合部位に結合可能である。好適にはDNA結合ドメインは、Blimp1タンパク質、PRDI/Blimp1ポリペプチドのDNA結合部、その相同体又は誘導体を含む。
本発明の第2の側面において、哺乳類細胞におけるポリペプチド複合体の発現を誘導するのに好適な核酸発現ベクター構築体であって、前記ベクターは、プロモーター配列に操作可能に連結した1以上のコード配列を備え、前記1以上のコード配列は、部位特異的DNA結合活性を有する第1のポリペプチドドメインとアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2のポリペプチドドメインとを少なくともコードし、前記第1ドメインは、哺乳類のゲノムDNAにおける遺伝子発現の制御に必要な1以上のコンセンサス配列への結合を特異的に対象とし、前記第2ドメインは、ポリペプチド基質内に位置するアルギニン残基の対称性NG,N’Gジメチル化を呈するアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有してなるベクターが提供される。
本発明の特定の態様によると、前記ポリペプチド基質はヒストンである。任意に、前記第2のポリペプチドドメインは、ヒストンH2Aの尾部領域の第3位に位置するアルギニン残基(H2A R3)をメチル化することができ、またヒストンH4の尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化することができる。
好適な発現ベクターの例としては、プラスミド、コスミド、ウイルスベクターおよび人工染色体(YAC等)が挙げられる。任意に、前記プロモーター配列は、構成的プロモーター又は誘導性プロモーターのいずれかから選択することができる。好適な誘導性プロモーターの例としては、特徴が詳細に知られるTet又はタモキシフェン調節システムが挙げられる。別のシステムとして、熱ショック感受性プロモーターが挙げられる。
本発明の一態様において、前記発現ベクターは、第1のコード配列が第1のポリペプチドドメインをコードし、第2のコード配列が第2のポリペプチドドメインをコードする発現カセットを含む。任意に、前記第1のコード配列は、PRDI/Blimp1ポリペプチドをコードし、前記第2のコード配列は、Prmt5ポリペプチドをコードする。特定の態様において、前記第1および第2のコード配列は、1以上の介在配列によって隔てられていることが有利である。好適には、細胞内での第1および第2のコード配列のバイシストロニック性の発現を促進するように、前記1以上の介在配列は、少なくとも1個の内部リボソーム進入配列(IRES)を含んでいてもよい。本発明の発現ベクターはまた、選択マーカー、抗生物質耐性マーカーおよびレポーターから選択されるポリペプチドをコードする核酸配列1以上を含んでいてもよい。
本発明の第3の側面において、部位特異的DNA結合活性を有する第1ドメインと、ヒストンH2Aの尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能であるアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2ドメインと、を少なくとも含むポリペプチド複合体の形成を哺乳類細胞内で誘導する工程を含む、哺乳類細胞における遺伝子発現を制御する方法が提供される。特定の態様において、前記細胞内における前記ポリペプチド複合体の形成は、前記細胞内におけるPRDI/Blimp1ポリペプチド、もしくはその相同体又は誘導体の発現の誘導によって誘導される。
特定の態様において、細胞内における前記PRDI/Blimp1ポリペプチドの発現は、Blimp1ポリペプチド、もしくはその誘導体又は相同体をコードする発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクトすることによって誘導される。あるいは任意に、細胞内におけるPRDI/Blimp1ポリペプチドの発現は、上記発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクトすることによって誘導される。通常、前記哺乳類細胞は、組織由来の又は細胞株形状のヒト細胞である。本発明の特定の態様において、前記哺乳類細胞は、腫瘍性細胞又は癌性の細胞又は細胞株である。好適には、本発明の本側面の方法は、インヴィトロあるいはインヴィヴォで実施することができる。
本発明の特定の態様において、遺伝子発現を制御すると、c−Myc、Dhx38、Pcdh7、Q8C9T7、Xylt1、DnaH1、Baip2、Nek7、Dusp2、ENSMUSG00000027041、Sirt4およびBlimp1からなる群より選択される1以上の遺伝子の発現が制御される。細胞におけるポリペプチド複合体を誘導することで、これら遺伝子の1以上の発現を低減させることができる。
本発明の第4の側面において、幹細胞内でのBlimp1/Prmt5複合体の形成を阻害する工程を含む、幹細胞内における自己再生を促進し分化を阻害する方法が提供される。任意に、前記幹細胞は哺乳類幹細胞であり、好適にはヒト幹細胞である。本発明の特定の態様において、前記幹細胞は、成体幹細胞、幹細胞前駆体および多能性幹細胞からなる群より選択される。本発明は、ヒトの生殖型クローニング、あるいはヒト生殖型クローニングを促進する目的でのヒト胚の操作および使用を対象とするものではないことが理解されよう。
本発明の本則面の特定の態様において、前記幹細胞内におけるBlimp1/Prmt5複合体の形成の阻害は、前記細胞を、Blimp1阻害化合物、Prmt5阻害化合物および/又はBlimp1/Prmt5複合体阻害化合物に曝露することによって行われる。好適には、前記阻害化合物は、小分子阻害剤、Blimp1又はPrmt5mRNAに結合するsiRNA分子、Blimp1又はPrmt5mRNAに結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびBlimp1又はPrmt5ポリペプチドのドミナントネガティブ体からなる群より選択することができる。
本発明の更なる側面において、細胞内におけるBlimp1ポリペプチドの発現を誘導し、これにより前記細胞内におけるBlimp1/Prmt5複合体の形成を誘導する工程を含む、細胞内におけるPrmt5局在化、一般には内在性Prmt5局在化を制御する方法が提供される。細胞内で誘導されるBlimp1は、外来性Blimp1又は内在性Blimp1のどちらであってもよい。好適には、細胞は哺乳類幹細胞である。
本発明の更に別の側面において、本発明のポリペプチド複合体の癌治療における使用、および上記した発現ベクター構築体を含む細胞(好適には哺乳類/ヒト細胞)が提供される。
図1は、(a)E7.5−E12.5における、マウス生殖細胞特異化および発達時の主要な現象の概要と、(b)2種の代表的な初代PGC(灰色)および2種の体細胞(白)から得た単一細胞cDNAのPCRによる候補SET/PRドメイン遺伝子の発現分析を示す。黒色はPGCおよび体細胞における発現の検出を示す。
図2は、免疫沈降したマウスBlimp1複合体がアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を呈することを示す。(a)Myc標識マウスBlimp1又はその対照を、293T細胞において発現した。Myc抗体を用いるウエスタンブロッティングで、Myc免疫沈降物を分析した。(b)同じ免疫沈降物を用いて、精製ヒストンH3、H2Aおよび組換えH2A(rH2A)に対するHMTaseアッセイを行った。各々について、蛍光像(F)およびポンソー染色膜(P)を示す。(c)放射標識rH2Aのマイクロシークエンシングを示す。x軸はrH2Aのアミノ酸1〜14、y軸は1分あたりの各アミノ酸残基の[H]取り込み(cpm)を表す。(d)H4およびH2AのN最末端の配列保存の配列比較を示す。
図3は、生殖細胞におけるBlimp1およびPrmt5の重複発現がH2A/H4R3meの特有パターンとなることを示す。(a、b、c)発達の様々な段階でのPGCにおいてBlimp1、Prmt5およびPrmt1の発現パターンが、Blimp1(a)、Prmt5(b)およびPrmt1(c)特異的抗体を用いた免疫染色によって検出された。生殖細胞は、図示するように、stella/PGC7、Oct4又はTG1/SSEA1に対する抗体を用いて検出した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。(d、e)Myc標識マウスBlimp1又はその対照を293T細胞において発現し、図示するように、Prmt5、Myc又はPrmt1抗体を用いるウエスタンブロッティングで、Myc、Prmt5又はPrmt1免疫沈降物を分析した。星印は非特異的シグナルを示す。(f)生殖細胞におけるH2A/H4R3メチル化を、発達の様々な段階でのPGCにおいて、H4R3me2s抗体を用いる免疫染色によって評価した。生殖細胞を、段階特異的なマーカー、すなわちOct4又はTG1/SSEA1に対する抗体で共染色した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。スケールバーは10μmである(各画像のスケールは同一)。
図4は、Dhx38のゲノム遺伝子座内のBlimp1/Prmt5結合因子のインヴィヴォ同定を示す。(a)Dhx38転写開始(TS)および開始コドン(ATG)、ChIPアッセイの増幅配列近傍の推定Blimp1結合部位の位置を示す(A、B、C、D)。(b)ChIPアッセイによる、内在性Prmt5とDhx38遺伝子座のゲノムDNAとの相互作用を示す。E10.5胚から単離した生殖***細胞からの細胞抽出物としての上澄み液(s)又は核画分(n)をPrmt5又はIgG抗体のいずれかで免疫沈降した。尾部ゲノムDNA(+)および水(−)を対照として用いた。
図5は、核から細胞質へBlimp1およびPrmt5が移行する際に、生殖細胞においてDhx38が発現上昇し、その結果H2A/H4R3me2s修飾のレベルが低下したことを示す。(a)Dhx38、(b)Blimp1およびPrmt5ならびに(c)H2A/H4R3me2sの免疫染色を、図示する発達段階における生殖***の凍結切片について行った。生殖細胞を、特異的抗体stella/Pgc7、Oct4又はTG1/SSEA1を用いて検出した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。スケールバーは10μmである(各画像のスケールは同一)。
図6は、多能性EGおよび胚性癌腫(EC)細胞におけるBlimp1、Prmt5およびDhx38の分析を示す。(a)Blimp1、Prmt5およびDhx38の免疫染色を、EG細胞について行った。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。なお、Dhx38およびBlimp1の発現に逆相関関係がある。(b)Blimp1およびOct4についてのES、EG又はEC(P19)抽出物のウエスタンブロット分析を示す。(c)Myc標識マウスBlimp1をP19多能性EC細胞において発現した。Prmt5免疫沈降物を、図示するようにPrmt5、Blimp1又はDhx38抗体を用いるウエスタンブロッティングによって分析した。入力レーンの充填量が同等であることを示すチューブリンレベルが、抗チューブリン抗体を用いて検出された。なお、Blimp1がEC(P19)細胞に導入された場合、Dhx38は抑制される。(d)Myc−Blimp1トランスフェクトEC(P19)細胞におけるDhx38遺伝子座上のH4R3me2s量の増加を、ChIPにより検定した。P19細胞由来の細胞抽出物をMyc又はH4R3me2s抗体のいずれかで免疫沈降した。A、B、C、Dは、図4で説明した、Blimp1結合部位を含むDhx38遺伝子座における領域を意味する。
図7は、(a)図1に示したE7.5でのPCR発現スクリーニングで得た候補SET/PRドメイン遺伝子の免疫蛍光分析を示す。図示するように特定のヒストンメチルトランスフェラーゼに特異的な抗体を用いて、E8.5胚からの単離細胞の免疫染色を行った。生殖細胞特異的抗体Oct4又はStella/PGC7を用いて生殖細胞を検出した。(b)E8.5でのPGCにおいて対応する抗体を用いたBlimp1およびPrmt5の免疫共染色を示す。組織非特異的アルカリホスファターゼ(AP)によって生殖細胞を標識した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。スケールバーは10μmである(各画像のスケールは同一)。
図8は、H4R3me2s抗体の特徴検討を示す。アルギニンは、1個のメチル基で修飾することができ(a)、あるいは対称的に配置した2個のメチル基(b)、非対称的に配置した2個のメチル基(c)で修飾することもできる。H4R3me2sに対する抗体(Abcam(登録商標))は、R3対称性脱メチル化したH4合成ペプチドを用いて作成されており、その特異性を調べるためにウエスタンブロット分析を行った。(d)免疫沈降したMyc−Blimp1と共に、あるいは無しで、ウシ胸腺ヒストン(H4、H3、H2A、H2B)を保温した。(e)非修飾、R3me2sおよびR3me2aのH4ペプチドについて競合アッセイを行ったところ、抗体は対称性ジメチル化ペプチドを顕著に認識した。
本発明の詳細な説明に先立って、本発明の理解を助ける一連の定義を示しておく。本明細書に引用する全ての参考文献は、参照することで本明細書に全体が含まれるものとする。特に定義しない限りは、本明細書で用いる全ての技術用語・科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を持つものとする。
本明細書で用いる「再プログラム化」の語は、細胞核のエピジェネティックな修飾を改変又は除去する工程のことをいう。再プログラム化によって、細胞運命への拘束の減少、従って細胞全体のそして特に核の分化状態の減少が促進される。本質的には再プログラム化は、分化したあるいは運命決定した体細胞核を、胚細胞、生殖細胞又は幹細胞に特徴的な遺伝子発現、エピジェネティックおよび機能状態に戻すことから構成される。体細胞核の再プログラム化は、SCNT等の処理において最初に行う工程として好ましいが、細胞分化状態すなわち能力の制御が重要である他の処理においても用途が期待される。
本明細書で用いる「癌」の語は、新生物内に存在する、あるいは新生物に関連する特性を有する、組織又は細胞のことをいう。新生物は一般に、正常組織および正常細胞から区別される特徴を有する。そのような特徴の例としては、一定の退形成、細胞形態の変化、形状の不整、細胞付着性の低下、転移能、血管形成レベルの増加、細胞感染度の増加、細胞アポトーシスレベルの低下、細胞悪性度の全体的な増加などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。「癌」に関連し、しばしば同義に用いられる語の例として、肉腫、癌腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、形質転換、新生物などがある。
「エピジェネティックな修飾」の語は、ゲノムの化学的マーキングをいう。エピジェネティックマークとしては、DNAメチル化(インプリンティング)や、DNAに関連するタンパク質、例えばヒストン等の、メチル化およびアセチル化が挙げられる。由来する親に特有の遺伝子発現(母系又は父系染色体のいずれかに由来するもの)は、哺乳類でしばしば観察され、これはエピジェネティックな修飾によるものである。親の生殖系列において、エピジェネティックな修飾によって遺伝子の発現停止又は活性化が安定したものとなっている。
「バイオプロセス化」の語は、生細胞又はその構成要素を用いて所望の最終産物を得る技術をいう。本発明に照らしていうと、細胞をエピジェネティックに修飾して、バイオプロセスで使用されるこれらの細胞の能力を強化することに使用ができる。一般にバイオプロセス技術にはSCNTが含まれる。
本明細書においてDNA結合ドメインおよび/又はアルギニンメチルトランスフェラーゼについて用いる「誘導体又は相同体」の語は、本発明の分子それぞれと実質的に同様の配列同一性を有するmRNAおよびポリペプチドをいう。誘導体および相同体は、他の種に由来する配列のオルソログや突然変異であって、にもかかわらずかつ高レベルの機能的同等性を示すものを含むものとする。実質的に同様の配列同一性とは、配列類似性のレベルが、約50%から、60%、70%、80%、90%、95%、約99%まで同一であることをいう。配列同一性のパーセントは従来法を用いて調べることができる(HenikoffおよびHenikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1992; 89:10915、およびAltschul他、Nucleic Acids Res. 1997; 25:3389-3402)。あるいは本発明のポリペプチドの相同体は、高、中又は低程度のストリンジェントな条件下での、本明細書で説明する配列とのハイブリダイズ能を発揮する配列であってもよい。
「発現ベクター」の語は、適当なサイズの他のDNA配列断片を組み込むことができる、線形又は環状のDNA分子をいう。このDNA断片は、DNA配列断片にコードされる遺伝子の転写をもたらす追加領域を含んでいてもよい。追加領域の例としては、プロモーター、転写終結因子、エンハンサー、内部リボソーム進入部位、非翻訳領域、ポリアデニル化シグナル、選択可能マーカー、複製起点などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。発現ベクターの例としては、プラスミド、コスミド、ウイルスベクターおよび酵母菌人工染色体に由来するものが挙げられる。またベクターは、複数の供給源に由来するDNA配列を含む組換え分子であってもよい。
「操作可能に連結した」の表現は、DNA配列について(例えば発現ベクターにおいて)いう場合、企図する目的を達するために配列が協働して機能するように配置されていることをいう。すなわちプロモーター配列が転写開始し、連結したコード配列から終止コドンまで進行することができることをいう。
「ポリヌクレオチド」とは、各ヌクレオチドの3’および5’末端がリン酸ジエステル結合によって連結した、一本鎖又は二本鎖の共有結合したヌクレオチド配列をいう。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基で構成されていてもよいし、リボヌクレオチド塩基で構成されていてもよい。ポリヌクレオチドの例としてDNAおよびRNAが挙げられ、インヴィトロで合成してもよいし、あるいは自然の供給源から単離してしてもよい。ポリヌクレオチドのサイズは通常、二本鎖ポリヌクレオチドの塩基対数(bp)で表され、あるいは一本鎖ポリヌクレオチドの場合は、ヌクレオチド数(nt)で表される。1000bp(又はnt)はキロベース(kb)に等しい。ヌクレオチド長が約40未満のポリヌクレオチドは通常、「オリゴヌクレオチド」と呼ばれる。
本明細書における「プロモーター」の語は、関連コード配列の発現を制御するように転写因子および/又はRNAポリメラーゼが結合する、遺伝子内の領域をいう。プロモーターは通常、ただし常にではないが、遺伝子の、翻訳開始コドンの上流の5’非コード領域に位置している。遺伝子のプロモーター領域は、DNA結合タンパク質の配列特異的DNA結合ドメインに対する認識可能結合部位として作用する1以上のコンセンサス配列を含んでいてもよい。とはいえ、このような結合部位は、プロモーター外の領域(例えばイントロン内又はコード配列の下流に位置するエンハンサー領域)に位置していてもよい。
「単離」の語は、ポリペプチド又はポリペプチドの複合体についていう場合、由来する天然生物から取り出したポリペプチドをいう。単離ポリペプチドは、由来する生物のプロテオームに本来的に含まれる他のポリペプチドを実質的に含まないことが好ましい。単離ポリペプチドが、少なくとも95%の純度、より好ましくは99%を超える純度の形態であることが最も好ましい。本明細書に照らしていうと、「単離」の語は、天然型、変性型、二量体/多量体、グリコシル化されたもの、結晶化されたもの、あるいは誘導体化されたものなど、様々な物理的形状をとる同一のポリペプチドを含むことを企図している。本明細書でいう「複合体」の語は、例えば第1および第2のポリペプチドドメインがポリペプチド単鎖内に含まれるもの、第1および第2ドメインが、互いに非共有結合的に関連する別々のポリペプチド鎖内に含まれるもの、翻訳後共有結合が形成されて別々のドメインが連結して関連機能ユニットを形成するものなどが含まれる。
本発明のある態様において、エピジェネティックな制御機構を通じて哺乳類細胞における遺伝子発現を調節することのできる、Blimp1とPrmt5との新規な複合体が提供される。
体細胞は通常、分化経路に沿って進むにつれ、特殊化の低い状態から、特殊化の高い、あるいは運命決定された状態へと発達する。特殊化の低い体細胞は、数種の細胞型を生じる前駆幹細胞として作用する能力を発揮することができる。所与の幹細胞がその前駆細胞として作用しうる異なる細胞型の量は、一般にその幹細胞の「能力」と称される。従って多能性幹細胞は、非常に多くの異なる分化細胞型の前駆細胞として作用することができる。ある細胞が体の全ての細胞に分化できる場合、その細胞は全能性である。細胞がほとんどの細胞型に分化できる場合、その細胞は多能性である。胚幹細胞は、胚外組織(すなわち栄養外胚葉)を除く哺乳類のほとんどの細胞型を生じるため、一般に多能性であると称される。本発明は、遺伝子発現制御レベルで細胞運命決定を制御する手段を提供する。本発明のタンパク質複合体を発現した場合、あるいは哺乳類細胞内に導入した場合、細胞運命決定を多能性から遠ざけるように作用する。逆に、幹細胞における本発明のタンパク質複合体(又はBlimp1成分のみでも)の活性を阻害することで、細胞運命決定を多能性および自己再生に偏向させることができる。
本発明用途の別の関連分野として、癌治療が挙げられる。全てではないにせよ、ほとんどの癌は、腫瘍抑制遺伝子のダウンレギュレーションおよび発現停止、癌遺伝子のアップレギュレーションなどのエピジェネティックな変化を経る。腫瘍抑制遺伝子を再活性化することによって、癌の表現型を改善させ、また癌遺伝子の発現を低下させることができる。従って、インヴィヴォで遺伝子発現および細胞運命決定を制御する方法は、癌治療の非常に有望な手段である。
Bリンパ球誘導成熟タンパク質(Blimp1)
Blimp1は、5個のDNA結合ジンクフィンガーモチーフを有する100kDaのタンパクである(GENBANK受入番号:NM_007548)。Blimp1のヒト相同体は、PRDI−BF1又はPRDM1のいずれかで表される(GENBANK受入番号:NM_000198)。Blimp1のcDNAは元来、B細胞リンパ腫細胞株(BCL)をサブアトラクティブスクリーニングにかけ、サイトカインIL−2およびIL−5で処理して単離されていた。Blimp1を異所性発現すると、BCL細胞の最終分化が十分に引き起こされる。Blimp1は最終B細胞発達の「主要制御因子」であると考えられている(Yu J.他 (2000) MoI. Cell. Biol. 20(7): 2592-2603)。
ヒトの場合、マウスBlimp1のヒトオルソログであるPRDI−BF1は、H3リシンメチルトランスフェラーゼG9aと複合体を形成することができる。この複合体は、遺伝子のプロモーター領域におけるクロマチン媒介機構を通じて、ヒトインターフェロンβ(IFN−β)遺伝子を発現停止可能であることが示されている(Gyory I.他(2004) Nat. Imm. 5: 299-308)。
Blimp1は、エピジェネティック修飾に必要な因子と複合体を形成することが示されている。Blimp1とヒストンデアセチラーゼ(HDAC)とを含む複合体は、ヒストン尾部のリシン残基を脱アセチル化することで、ヌクレオソーム構造を変化させ、遺伝子の転写を阻害すると考えられている。リシン残基のアセチル化は効率的に正荷電を中和するが、脱アセチル化は荷電を回復させて立体(stearic)効果およびその他の効果によりヌクレオソーム構造を変化させる。
Blimp1の標的として公知なものの例として、c−Myc、IFN−β、CD23、CD22、MHCクラスII、BSAP(Pax5)、初期B細胞因子およびCIITAが挙げられる。これらの遺伝子はすべてBlimp1により転写抑制される。c−Myc遺伝子の転写は、B細胞分化の間にBlimp1によって抑制され、BCLリンパ腫細胞におけるBlimp1の重要な標的となっている。Blimp1がc−Mycプロモーターを抑制するのには、Blimp1分子の複数領域(例えばN末端酸性ドメインやアミノ酸90と464との間の領域)が必要である(Yu J.他、上記参照)。
c−Myc腫瘍性タンパク質は、成長制御、アポトーシスおよび/又は分化の調節に重要であり、その異常調節は、様々な新生物において一般的な役割を担っている。B細胞におけるc−Myc発現の異常調節は、しばしば発癌性となる。Ig遺伝子座へのc−Myc遺伝子の染色体転座は、ヒトバーキットリンパ腫およびマウス形質細胞腫のほとんどに存在している(Lin K.I.他 (2000) MoI. Cell Biol. (20)23: 8684-8695)。
LIF/STAT3依存性シグナルによって、マウスES細胞を、多能性で自己再生する集団として維持することができる。STAT3は、Myc転写因子の発現を調節することが示されている。さらに成体幹細胞は、Myc活性化を必要とすると考えられている。RT−PCR分析の結果、ES細胞においてMyc転写が増加していることが示されている。通常、ES細胞はLIFを含む培地を必要としており、含まない場合にはES細胞は自己再生ではなく分化する傾向がある。ES細胞におけるMycレベルは、培養条件からLIFを無くすと急速に低下することが判明しており、これがES細胞分化の必要条件であろうことを意味している。実験の結果は、MycのみでLIFに匹敵するレベルでES細胞状態(すなわち多能性表現型)を維持でき、Mycを不活化すると、幹細胞プールが減少することを示唆している(Cartwright P.他(2005) Development 132: 885-896)。
タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ5(Prmt5)
ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMTase)は、2種類あることが知られており、リシン特異的メチラーゼ活性を有するタンパク質に主に見られるSET(Suvar3−9、zesteのエンハンサーおよびTrithorax)ドメイン、あるいはPRMTに見られるアルギニン特異的メチラーゼ触媒ドメインのいずれかを有する。PRMTにはI型とII型がある。I型のPRMTは、アルギニン残基のモノメチル化と非対称脱メチル化を触媒し、一方II型のPRMTは、モノメチル化と対称性ジメチル化アルギニンの形成を触媒する。公知の6種のPRMTのうち、PRMT5(GENBANK受入番号:NM_006109(ヒト);NM_013768(マウス))のみが、ヒストンを標的とするII型PRMTとして挙動する。具体的には、PRMT5は、H3およびH4N末端尾部の特定のアルギニン残基を標的とすることが示されている。
PRMT5は、BRG1およびhBRMを含むhSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体と結合させることができる。このような複合体において、PRMT5は、ヒストンH3のアルギニン8残基(H3R8)をメチル化することによって細胞成長と足場非依存性増殖とを刺激する能力があり、これによって腫瘍抑制における役割を果たすことが知られるST7やNM23などの遺伝子発現を低減する(Richard S.他(2005) Biochem. J. 388: 379-386)。PRMT5は、CYCLIN EおよびCADの転写抑制にも関係があると考えられている。
Blimp1/Prmt5複合体
これまでのところBlimp1自体による特定のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性が存在しないため、本発明者らは、Blimp1SET/PRドメインが有しうる活性の同定に着手した。本発明者らは、Blimp1がPRMT5と新規な複合体を形成可能であることを実証した。この複合体はマウス生殖細胞系列においてPGCが生殖***に入るまでにインヴィヴォに存在しており、Blimp1が初期の哺乳類生殖細胞系列において継続して役割を果たしていることを示唆している。さらなる分析の結果(後に詳述する)、新規なBlimp1/Prmt5複合体は、ヒストンH2AおよびH4をメチル化することによって独特のエピジェネティックなサインを与えることが示された。これは、ヒストンH2A尾部のメチル化がエピジェネティック調節機構であることを示した最初の例であると思われる。さらに、実験の結果(後に詳述する)、Prmt5は多能性EGおよびES細胞に存在するが、Blimp1は存在しないことが示された。
多能性EC細胞株P19においてBlimp1が発現すると、多能性細胞において高レベルで発現することが知られる遺伝子が抑制される。実験の結果は、Blimp1/Prmt5複合体は遺伝子発現の重要な制御因子であり、(特に多能性および分化に関する)細胞運命の選択において、重要な効果を及ぼすことが可能であることを示唆している。このように、本発明のある態様は、インヴィトロ又はインヴィヴォでのBlimp1/Prmt5複合体によって示される生物学的活性の利用に基づく遺伝子制御機構を提供する。
理論に拘泥するわけではないが、5個のジンクフィンガーDNA結合ドメインを有することから、Blimp1は複合体中で遺伝子標的機能を賦与すると考えられる。Prmt5は、DNAに局在化した場合にHMTaseとして作用するアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を賦与し、これによって遺伝子発現を抑制する。Blimp1のヒトオルソログは、ヒトIFN−βプロモーター領域内のPRDI部位に結合することが知られている(Keller A. D.およびManiatis T.(1991) Genes Dev. 5:868-879)。上述したように、Blimp1にc−Myc発現の抑制能があることも知られている。本発明によるBlimp1/Prmt5複合体の特異的標的であることが示されており、この新規な複合体によって発現が制御される、新規な遺伝子サブセットを同定した。このサブセットは、様々な機能を有する遺伝子を含むが、作用強度、細胞周期、分化、細胞付着性、エピジェネティックな再プログラム化、およびおそらくは腫瘍抑制の調節において、重要な役割を果たすと考えられる。
本発明によるBlimp1/Prmt5抑制複合体の存在は、生殖細胞におけるH2A/H4R3me2sが高レベルで存在することに関連している。しかし、B細胞が形質細胞に分化する間、Blimp1はG9a依存性H3K9me2を導く。従ってBlimp1は、様々な結合パートナーとの関連によって、様々な細胞運命決定と性質を方向付けることが可能であり、クロマチンリモデリングがこれら過程の中心にあると思われる。マウスの生殖細胞特異化の初期段階におけるBlimp1の明らかな重要性に加えて、本発明は、PGC特異化後の生殖細胞に見られるような、独特のエピジェネティックなクロマチンサインの形成において、Blimp1がさらに関与していることを実証している。しかし、ゲノム全域でのプログラム化が生殖細胞において検出されるE10.5より後で、Blimp1/Prmt5はPGC核から出て細胞質に入る。生殖細胞における、Blimp1/Prmt5複合体、H2A/H4上のアルギニン3の対称性ジメチル化、およびそれに続くゲノム全域でのエピジェネティックな再プログラム化の関係を理解することで、この重要な過程の元になる機構についてと、どのように核再プログラム化が細胞内において制御されているかを洞察することができる。
本発明はまた、PGCから誘導するとBlimp1が明らかに喪失する、多能性胚性性腺(EG)細胞におけるBlimp1/Prmt5の役割の洞察を提供する。本発明は、新生および移動PGCによる明らかな多能性幹細胞様表現型の獲得を抑制するのに、Blimp1が不可欠であるということの直接的な証拠を提供する。従ってBlimp1/Prmt5活性のアゴニストおよびアンタゴニストはそれぞれ、多能性表現型を喪失させる又は獲得させる細胞運命決定の調節において、重要な役割を果たしうる。さらに、細胞内でのBlimp1発現は、Prmt5アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を核内で捕捉して、潜在的な細胞質基質から遠ざける機構を提供する。このような効果は、幹細胞分化の間、および所望の細胞又は細胞株における一般的な細胞周期進行の間において、望ましいものである。
Blimp1および/又はPrmt5の阻害剤として本発明に用いられる特定の小核酸分子は、低分子干渉RNA(siRNA)として知られる短い二本鎖RNAである。これらの干渉RNA(RNAi)法によって、インヴィヴォでの遺伝子機能の選択的不活化が可能になる。本発明において、RNAiを用いて、細胞内でのBlimp1および/又はPrmt5発現をノックダウンすることができる。この方法では、二本鎖mRNAがダイサーRNaseによって認識され切断されて、21−23ヌクレオチド長のRNAiが得られる。これらのRNAiを、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に導入してほどく。アンチセンス一本鎖は、相補的配列を含むmRNAにRISCを誘導し、その結果mRNAのヌクレオチド鎖が切断される(Elbashir他(2001) Nature 411; 494-498)。従ってこの方法は、バイオプロセスの用途で、あるいは自己再生する多能性表現型の促進が望ましい場合の、体細胞におけるBlimp1および/又はPrmt5mRNAを標的化し分解する手段を提供する。Prmt5に対するsiRNAを作成する方法は、当分野の文献に記載がある(Richard S.、上記参照)。ヒトPRMT5を標的化する好適なsiRNA配列の例として、下記が挙げられる。
5’CTCATTTGCTGACAATGAA 3’[配列番号1]
5’GGACCTGAGAGATGATATA 3’[配列番号2]
5’GTTTCAAGAGGGAGTTCAT 3’[配列番号3]
本発明のBlimp1/Prmt5複合体を用いて、細胞環境中でその複合体と相互作用する他のタンパク質やポリペプチドを同定することができる。タンパク質−タンパク質相互作用を調べる従来法(例えば酵母ツーハイブリッドスクリーニング)を用いて、Blimp1/Prmt5複合体相互作用についての潜在的なアゴニストおよびアンタゴニストを同定することができる。例えば、他のタンパク質と直接に相互作用することが知られるBlimp1のドメイン(Yu J.他、上記参照)との相互作用を遮蔽又は撹乱することによって、Blimp1とPrmt5との関連を阻害する小分子を同定することも、本発明の検討事項内である。Blimp1、Prmt5および/又はBlimp1/Prmt5複合体のタンパク質−タンパク質相互作用又はタンパク質−小分子相互作用は、表面プラズモン共鳴を用いた分子相互作用を検出するBIAcore(登録)等の技術(BIAcore社、ニュージャージー州ピスカタウェイ。www.biacore.comも参照)を用いて調べることができる。
Blimp1/Prmt5複合体に対する結合能についての、分子およびタンパク質のスクリーニングは、自動高処理スクリーニング法によって行うことができる。従って本発明は、Blimp1/Prmt5複合体と標的分子との正の結合相互作用を検出することで、Blimp1/Prmt5複合体と相互作用する分子を同定する方法を提供する。さらにスクリーニング工程を用いて、同定した正の結合相互作用が薬理学的に重要であるか否か、すなわち標的分子が、Blimp1、Prmt5および/又はBlimp1/Prmt5複合体の生物学的活性又は機能を緩和することができるか否かを調べることができる。正の緩和効果を有する分子が同定されれば、その分子を「的中(ヒット)」として分類し、有力候補薬物として評価することができる。その他の要因として、これまでのところ、例えば分子の吸収・分布・代謝・***(ADME)、生物学的利用可能性および毒性プロフィール等が考慮されうる。潜在的な薬物分子が、薬理学的必要条件を満たせば、薬学的に適合性があると考えられる。好適な組成物を調合して、当分野で公知の標準的手順に従ってインヴィトロおよびインヴィヴォでの活性を調べることができる。
方法および試薬
胚の単離。発達の様々な段階で、非近交系のMF1マウスの胚から始原生殖細胞を単離した。膣栓形成の日をE0.5とした。出版されている文献(Saitou, M., Barton, S. C.およびSurani, M. A. (2002) Nature 418, 293-300)に従って単一細胞cDNAライブラリーを作成した。
免疫染色。生殖細胞を含む胚切片をトリプシンで処理し、単一細胞懸濁液を調製した。次いで細胞をポリ−L−リシンでコーティングしたスライド上に置き、2%PFAで固定してPBSで3回洗浄し、更なる処理を行った。E11.5の全胚性生殖***を切り出し、PBS中で洗浄し、4%PFA中で4℃にて2時間固定し、PBS中で洗浄し、20%スクロース中で4℃にて一晩静置した。OCT(BDH社)に包理し、凍結切片とした。単一細胞又は切片をIF緩衝液(PBS;0.1%トリトン;10mg/ml BSA)中で透過処理した。一次抗体保温を4℃にて一晩行い、次いでIF緩衝液中で3回洗浄し、二次抗体(Alexa564、Alexa488;Molecular Probes)で室温にて2時間保温し、PBS中で洗浄した。スライドを、DAPI染色を用いるvectashield(Vector laboratories社)にセットした。免疫蛍光をradiance2000共焦点顕微鏡(BioRad社)上で可視化した。以下の抗体および希釈率を用いた。PGC7(T.Nakano氏より入手、1:2500)、Oct4(BD Transduction Laboratories、1:200)、TG1(マウス生殖細胞特異的抗SSEA1モノクローナル抗体、1:1)、Blimp1(K.Calame氏より入手、1:10)、Prmt5(Upstate社、1:250)、Prmt1(Upstate社、1:200)、H4R3me2s(Abcam、1:1000)、Dhx38/Prp16(ProteintechGroup社、1:200)、Ezh2(Upstate社、1:50)、G9a(Abcam(登録商標)、1:100)、Pfm1(Abcam(登録商標)、1:50)、Set1(W.Herr氏より入手、1:200)。
免疫沈降分析および核抽出物の調製。マウスBlimp1のコード領域をRT−PCRで増幅し、産物をpcDNA3−MycHisA内にクローニングし、構築体pCMV−MycBlimp1を得た。元のベクター(pCMV−Mycと称する)又はpCMV−MycBlimp1のいずれかでトランスフェクトした293T細胞又はP19細胞を、PBSで洗浄し、150mM NaCl、1%NP40、0.1%トリトン、50mMトリスpH8.0および完全プロテアーゼ阻害剤混合物(Roche社)を含むIP緩衝液中で溶解した。2×10個の細胞を用いて通常の免疫沈降反応を行った。全細胞抽出物を、2μgのMyc抗体(New England Biolabs社)と共に保温した。それとは別に、Prmt5又はPrmt1抗体(Upstate社)のいずれかを用い、4℃にて一晩保温した。次いで30μlのタンパク質A/Gセファロースビーズを4℃で2時間添加した。ビーズをIP緩衝液で5回洗浄した。結合したタンパク質をLaemli試料緩衝液中で沸騰して溶出した。製品(核抽出物キット;Active Motif)のマニュアルに従って、ES、EG又はP19細胞の核抽出物を調製し、1充填(loading)あたり25μgの核画分を用いた。
インヴィトロメチルトランスフェラーゼアッセイ。pCMV−Myc又はpCMV−MycBlimp1のいずれかでトランスフェクトした293T細胞の免疫沈降分析で得たビーズを、HMTase緩衝液(25mM NaCl、25mMトリスpH8.8)でさらに2回洗浄し、文献16に記載の方法をわずかに変更してHMTaseアッセイを行った。以下、簡単に述べると、基質としての1μgのH3又はH2A(Roche社)又は組換えH2A(A.Brehmより提供していただいたもの)と、メチル供与体としての2μCiのSアデノシル−L[メチル−H]メチオニン([H]SAM;Amersham Biosciences社)とを、20μlのHMTase緩衝液の混合液中、37℃で3時間保温した。タンパク質を18%SDS−PAGEゲル上で分離し、PDVF膜上に転写し、ポンソー染色およびフルオログラフィーによって可視化した。インヴィトロメチル化rH2Aを連続エドマン分解(Protein and Nucleic acid Chemistry Facility、ケンブリッジ大学、英国)によってマイクロシークエンシングし、次いでシンチレーションカウントによって各アミノ酸のH取り込みを調べた。H2A/H4特異的メチル化を調べるために、H4、H3、H2AおよびH2B(Roche社)を、上記したように免疫沈降したBlimp1複合体およびSAMと共に保温し、競合アッセイで特異性を調べた(図8の補足データ参照)H4R3me2s抗体(Abcam(登録商標)、英国ケンブリッジ)を用いてウエスタンブロット分析を行った。
クロマチン免疫沈降(ChIP)クローニングおよびChIP。単一細胞懸濁液を、1%ホルムアルデヒド中にて室温で10分間架橋した。次いで細胞を破壊し、核を50mMトリスpH8.0、10mM EDTA、1%SDS中で溶解し、さらに超音波処理を行った。上記したように抽出物を免疫沈降にかけた(負の対照として精製IgG(Santa Cruz社)を添加した)。ビーズを50mM NaHCO、1%SDS中で2回溶出し、上澄みを65℃にて5時間プロテイナーゼKで処理し、続いてフェノール/クロロフォルム精製およびエタノール沈殿を行った。次いでPRMT5(Upstate社)又はH4R3m32(Abcam(登録商標))ChIP試料を、以下のプライマーを用いた標準的なPCR反応によって分析した(フォワード1−ccaggaggggtttcatcaactg[配列番号4]およびリバース1−tgttaccgtctcacttggtgtttg[配列番号5];フォワード2−acctcacaactgctgggattac[配列番号6]およびリバース2−ttcgttttctgcgtccgtg[配列番号7];フォワード3−tttgtcgcagtgtcttatcgtaac[配列番号8]およびリバース3−taggaaggtgttggggaggg[配列番号9];フォワード4−atgaggtttgagaagtgtggc[配列番号10]およびリバース4−atcagcggtggtggtgacagc[配列番号11])。ChIPクローニングアッセイでは、抗Myc抗体を用いる免疫沈降を2回連続して行った。その後DNAを沈降し、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化し、アニールしたJW102およびJW103に連結した(文献25)。JW102を用いて連結産物をPCR増幅した(55℃で2分間、72℃で5分間、94℃で2分間を1サイクル、94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間を20サイクル、最後に72℃で5分間を1サイクル)。PCR産物をpGEM−T(Promega社)内にクローニングし、PCRによりコロニー内の挿入物の有無を調べ、標準法によって産物の配列決定をした。次いでオンラインのバイオインフォマティクスリソース(Ensembl(http://www.ensembl.org)等)を用いてBLAST検索を行った。
実施例1:Blimp1活性の同定
マウスPGCの特異化の直後、メチルトランスフェラーゼ(HMTase)およびアセチルトランスフェラーゼ(HAT)それぞれによるヒストン尾部のメチル化およびアセチル化などの顕著なエピジェネティック修飾が起きる。PGCにおけるこれらのエピジェネティックな変化の調節で役割を担うと思われる候補遺伝子の1つとして、保存SET/PRドメインタンパク質ファミリーに属するHMTaseが挙げられる。遺伝子を含む25個の候補SET/PRドメインを、E7.5でのPGCとその周辺の体細胞の発現について分析したところ、Blimp1、G9a、Set1、Ezh2およびPfm1は、PGCを含む胚性領域において発現することが判明した(図1bおよび図7)。しかし、Blimp1発現のみがE7.5のPGCに限定されており、その発現はその後、生殖細胞において持続した。
Blimp1SET/PRドメインの活性を調べるために、最初に、Myc標識マウスBlimp1が、293T細胞において一過性発現された場合、Myc抗体を用いて効率的に免疫沈降することを確認した(図2a)。免疫沈降物を、ヒストンH3に関する標準的放射ヒストンメチルトランスフェラーゼアッセイに供した(Rea、 S. 他 (2000) Nature 406, 593-9)。H3に対応する比較的弱い信号が観察されたが、驚くべきことに、ヒストンH2AおよびH4に対応する顕著なバンドも検出された(図2b)。ウエスタンブロッティングで調べたところ、後者はH3調製物中で低レベルの混入として存在していた(データ示さず)。インヴィトロでのH3の弱い信号は、これまでにB細胞について報告されているBlimp1関連G9a(Gyory他、上記参照)によるものであると考えるのが妥当である。しかし生殖細胞は、G9aに寄与する主な修飾である、ヒストンH3リシン9ジメチル化(H3K9me2)を顕著に示しておらず、PGC特異化はG9a機能の喪失による検出可能な影響を受けてもいない。従って、H2AおよびH4ヒストンに関して免疫沈降したBlimp1の、観察された活性に焦点をあてることにした。
H2A尾部メチル化の発見が新規であるため、まずウシ胸腺H2A調製物と組換えH2A調製物とについて免疫沈降物のメチルトランスフェラーゼ活性を調べることにした。その結果、このヒストンについて強いメチル化活性を有していた(図2b)。H2A尾部上の標的アミノ酸残基を同定するために、メチルトランスフェラーゼアッセイの放射標識組換えタンパク質産物を、連続エドマン分解にかけた。放出アミノ酸画分のシンチレーション測定を行ったところrH2A R3の放射標識を検出した(図2c)。ウシ胸腺H4調製物と組換えH4調製物とで同じ結果が得られた(データ示さず)。これは、ヒストンH2AとH4との間での第1のN末端残基のアミノ酸配列が保存されている(図2d)ことに矛盾しない知見である。H4R3メチル化は、転写調節において重要な役割を果たすことが知られている。しかし、これらの結果は、ヒストンH2A上のR3の新規なメチル化がさらに存在することを示唆している。
実施例2:Blimp1/Prmt5複合体の同定
SET/PRドメインが、リシン残基のみにおいてヒストンメチルトランスフェラーゼ活性に関連しているので、上記で検出されたアルギニンメチル化活性はBlimp1によるものではなく、免疫沈降物に存在する他のHMTaseに関係があるとするのが妥当である。2個のタンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼである、Prmt1およびPrmt5は、ヒストンH4R3メチル化を媒介することがこれまでに報告されている。Prmt1は、多様な種類の基質上でNGモノメチルアルギニン(Rme1)および非対称性NG,N’Gジメチルアルギニン(Rme2a)を導くクラスIアルギニンメチルトランスフェラーゼである。上記したように、Prmt5は、アルギニンのモノメチル化(Rme1)および対称性NG,N’Gジメチル化(Rme2s)を導くクラスIIアルギニンメチルトランスフェラーゼに属している(図8)20。これらのタンパク質がインヴィヴォでBlimp1に関連しているかを調べるために、新生PGCおよびその周辺の体細胞中でのそれらの発現を、上記したように単一細胞cDNAライブラリーを用いて分析した。Prmt1はE7.5のPGCには見られず、一方Prmt5はPGCおよび体細胞の両方に存在することが判明した(データ示さず)。しかしタンパク質レベルについては、Prmt5は核染色を示し、E8.5以降の体細胞と比較して、PGCにおいて高レベルで存在している(図3a、b;図S1bおよび下記参照)。一方Prmt1は、これらの段階において、主に生殖細胞の細胞質において検出された(図3c)。
次に、Blimp1と相互作用するのはPrmt5とPrmt1とのいずれかであるかを調べた。実際に、Myc標識Blimp1は、293T細胞における内在性Prmt5を効率的に免疫共沈降することが可能であると判明した(図3d)。逆に、Prmt5もMyc標識Blimp1のプルダウンが可能であった(図3d)。これに対して、Myc標識Blimp1と内在性Prmt1との相互作用(図3e)は見られなかった。これらの実験により、Blimp1とPrmt5とは293T細胞において複合体を形成できることが確認された。PGCにおけるこれらタンパク質の重複発現(図3a、b;図S1b)を考慮すると、Blimp1およびPrmt5はPGCにおける同じタンパク質複合体の一部であり、この複合体が、発達の間にどこか別の場所で、又は正常のおよび腫瘍性の成体組織で生じる、と考えるのが妥当である。
実施例3:インヴィヴォでのBlimp1/Prmt5複合体活性
H4R3me2sに対して作成した抗体の特異性を調べたところ、ウシ胸腺由来のヒストンH2AとH4との両方を効果的に認識することが示された(図8b)、図面左側。H2AおよびH4は、H3およびH2B調製物中の混入物としても存在する)。競合アッセイにおいて、この抗体はR3me2sを含むH4(1−9C)ペプチドによって効率的に滴定された(図S2c)。その上この抗体は、H4とH2Aとの両方のBlimp1/Prmt5HMTaseアッセイの産物を認識し(図S2b、図面右側)、従って複合体に寄与するのは、Prmt5の対称性ジメチル化活性であってPrmt1の非対称性ジメチル化活性ではない、ということの更なる証拠となっている。
H2/H4R3me2s改変体特異的抗体を用いて、初期胚から単離したPGCを免疫細胞化学法によって分析した。E8.5において、H2A/H4R3me2sはPGCと体細胞との両方で明確に見られた(図3f)が、E10.5において、より高いレベルのH2A/H4R3me2sの蓄積が生殖細胞において顕著に観察された(図3f)。しかし、H4R3のモノメチル化および/又は非対称性ジメチル化(H4R3me1およびH4R3me2a)を認識する別の抗体を用いた場合、PGCにおけるこの修飾がE8.5で起きたが、E10.5では起きなかったことが観察された(データ示さず)。これら2種の抗体についてのデータを併せると、E8.5からE10.5まで、PGCにおいてH2A/H4R3me2sへと進行することがわかる。これらの結果は、生殖細胞分化の間に特異的クロマチンサインが存在することを実証しており、これはPrmt5とBlimp1とが併せて存在するためであると考えられる。重要なことに、生殖細胞の特異的クロマチン状態に寄与するヒストン尾部修飾は、更に複数存在する。Blimp1の機能を喪失させると、初代PGC様細胞が増殖を停止して異常な発達をすることが近年示されている(Ohinata, Y.他(2005)Nature 5, 5)。
実施例4:Blimp1/Prmt5複合体のインヴィヴォ標的の同定
これまでに示したように、Blimp1は、相互作用因子を特定部位に補充することで、細胞分化中に遺伝子制御を引き起こすことができる。推定Blimp1標的を同定するために、クロマチン免疫沈降クローニング法を用い、まずMyc標識化したBlimp1を293T細胞で過発現した。これら293T細胞からの核抽出物をMyc抗体で免疫沈降し、免疫沈降したDNAを抽出し、精製し、連結リンカーにより平滑末端化し、PCR増幅してクローニングした。多数のクローンを選択して配列決定で分析し、次いでBLAST分析によりクローン挿入片をマッピングした。32個のクローンのうち11個が、公知遺伝子の制御配列と思しき配列の近辺およびその内部に位置する領域に対応していた(表1参照)。
Figure 2009536028
実施例5:Blimp1/Prmt5複合体によるDhx38遺伝子発現制御の特徴検討
同定された推定Blimp1標的のうち、さらなる研究用にDhx38を選択した。Dhx38は、DEAHボックス含有RNAヘリカーゼをコードする保存遺伝子(Prp16としても知られる)で、線虫においては、***から卵母細胞への切換え間に性決定遺伝子の翻訳後調節に必須なものである(Graham, P. L.およびKimble, J. (1993). Genetics 133, 919-31)。
Dhx38遺伝子座を詳細に調べたところ、Blimp1コンセンサス結合部位に対応する4個のGGGAAAGモチーフを含んでいることが判明した。うち2個は5’領域内に、2個は転写開始点の下流に存在していた(図4a)。現在入手可能なBlimp1抗体は免疫染色処理に有効であるが、Blimp1の免疫沈降には効率的ではない(データ示さず)。従ってPrmt5を用いて、Dhx38が生殖細胞におけるBlimp1/Prmt5複合体の標的であるかを調べた。Blimp1およびPrmt5が生殖細胞核において同時発現される段階であるE10.5(上記参照)での胚に由来する生殖***の細胞懸濁液に含まれるPGCについて、Prmt5抗体を用いたChIPアッセイを行った。実際にPrmt5は、Dhx38遺伝子のエクソン11を含むヌクレオチド+71652〜+7541にわたる選択配列(Blimp1コンセンサス結合部位を含む)を特異的にプルダウンできることが判明した(図4b)。本ChIPアッセイでは、他の3個の推定結合部位はPrmt5に関連していなかった。これらの結果は、Prmt5がBlimp1標的(Dhx38等)に補充されることを示しており、従ってBlimp1/Prmt5複合体が生殖細胞におけるそのような標的遺伝子の発現を調節することを示唆している。
Dhx38が生殖細胞におけるBlimp1/Prmt5複合体の標的であるということを元に、PGCにおけるDhx38の発現/抑制を調べた。Dhx38はE10.5およびE11.5では検出されないことが判明した(図5a)。しかしE12.5までに、Dhx38はメスおよびオス両方のPGCにおいて上方制御されており(図5a)、顕著なことに、これはE11.5での生殖細胞における核から細胞質へのPrmt5およびBlimp1の非局在化と同時に起こっていた(図5b)。E12.5では、Prmt5とBlimp1のいずれもPGC核に存在しなかった(データ示さず)。メスおよびオス生殖細胞それぞれの減数***停止および有糸***停止の直前にDhx38アップレギュレーションが起きる。従って、Blimp1/Prmt5およびDhx38の発現には逆相関の関係がある。これらの結果は、Blimp1およびPrmt5が、生殖系列においてDhx38等の標的遺伝子の転写を抑制する機能を有する可能性を示している。この抑制は、生殖細胞が生殖***に入り、またBlimp1とPrmt5との両方が核から細胞質へ輸送された場合に無くなるようである。なお、ヒストンアルギニンメチル化はこれまで主に転写活性化に関連付けられてきたが、近年、Prmt5関連H3R8me活性は、遺伝子発現の低減に関連付けられている(Pal S.他、上記参照)。さらに、Blimp1およびPrmt5の両方が転写抑制因子であるとこれまでに報告されているので、本明細書で説明する生殖細胞におけるBlimp1/Prmt5複合体関連対称性アルギニンジメチル化が、遺伝子抑制に有利に作用する可能性が高い。
実施例6:多能性幹細胞におけるBlimp1−Prmt5複合体
Blimp1/Prmt5複合体の役割についてさらに洞察を得るために、多能性胚性生殖(EG)細胞を調べた。EG細胞は、インヴィトロでの単離PGCに由来するものであってもよく、従ってPGCに同等な、最も密接する細胞株であると考えられる。EG細胞はPrmt5について陽性であるが、PGCとは異なり、Blimp1を有していないことが判明した(図6a、b)。この観察結果と一致して、EG細胞はDhx38についても陽性であることが判明しており、この遺伝子の発現は、Blimp1が存在しないことによるものであることを示唆している(図6a、b)。Blimp1/Prmt5抑制複合体を再生するために、Myc標識Blimp1をEG細胞において過発現させた。しかしその結果、細胞トランスフェクションの僅か12時間後には強い細胞毒性が現れ、pCMV−Mycトランスフェクト対照EG細胞の細胞生存能力は阻害された(データ示さず)。同様の結果が、多能性胚性幹(ES)細胞についても得られた(データ示さず)。
EGおよびES細胞に似た多能性の特徴を有する多能性マウス胚性癌腫(EC)細胞株P19を選択した。実際にP19細胞は、ES/EG細胞と同様に、Prmt5およびDhx38を発現したが、Blimp1を発現しなかった(図6b、c)。しかし、これらの細胞はBlimp1の発現に対し許容性があることが判明し、従って免疫沈降を用いたところ、過発現されたMyc−Blimp1がマウスEC細胞において内在性Prmt5と相互作用することが実際に確認された(図6c)。とりわけ、この一過性Blimp1/Prmt5複合体は、続いてP19細胞におけるDhx38のダウンレギュレーションを引き起こした(図6c)。ChIP分析の結果、このDhx38のダウンレギュレーションには、Dhx38遺伝子座におけるH2A/H4R3me2sのレベル増加が伴われることが確認された(図6d)。これらの観察結果は、Blimp1/Prmt5複合体が、おそらくはPGCにおいても、Dhx38等の標的遺伝子の抑制の原因となっている、という考えを裏付けている。
本発明の特定の態様を詳細に説明したが、一例の説明に過ぎず、例証のみを目的とするものである。上記した態様は、添付した特許請求の範囲を限定することを企図していない。請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を様々に置換、変更、修正することが可能であることを本発明者らは意図している。
(a)E7.5−E12.5における、マウス生殖細胞特異化および発達時の主要な現象の概要を示し、(b)2種の代表的な初代PGC(灰色)および2種の体細胞(白)から単一細胞cDNAのPCRによる候補SET/PRドメイン遺伝子の発現分析を示す。黒色はPGCおよび体細胞における発現の検出を示す。 免疫沈降したマウスBlimp1複合体がアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を呈することを示す。(a)Myc標識マウスBlimp1又はその対応の対照を、293T細胞において発現した。Myc抗体を用いるウエスタンブロッティングで、Myc免疫沈降物を分析した。(b)同じ免疫沈降物を用いて、精製ヒストンH3、H2Aおよび組換えH2A(rH2A)に対するHMTaseアッセイを行った。各々について、蛍光像(F)およびポンソー染色膜(P)を示す。(c)放射標識rH2Aのマイクロシークエンシングを示す。x軸はrH2Aのアミノ酸1〜14、y軸は1分あたりカウントとしての各アミノ酸残基の[H]取り込み(cpm)を表す。(d)H4およびH2A.1のN最末端の配列保存の配列比較のアイラインメントを示す。 生殖細胞におけるBlimp1およびPrmt5の重複発現がH2A/H4R3meの特有パターンとなることを示す。(a、b、c)発達の様々な段階でのPGCにおけるBlimp1、Prmt5およびPrmt1の発現パターンを、Blimp1(a)、Prmt5(b)およびPrmt1(c)特異的抗体を用いた免疫染色によって検出した。生殖細胞は、図示するように、stella/PGC7、Oct4又はTG1/SSEA1に対する抗体を用いて検出した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。(d、e)Myc標識マウスBlimp1又はその対応の対照を293T細胞において発現し、図示するように、Prmt5、Myc又はPrmt1抗体を用いるウエスタンブロッティングで、Myc、Prmt5又はPrmt1免疫沈降物を分析した。星印は非特異的シグナルを示す。(f)生殖細胞におけるH2A/H4R3メチル化を、発達の様々な段階でのPGCにおいて、H4R3me2s抗体を用いる免疫染色によって評価した。生殖細胞を、段階特異的なマーカー、すなわちOct4又はTG1/SSEA1に対する抗体で共染色した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。スケールバーは10μmである(各画像のスケールは同一)。 Dhx38のゲノム遺伝子座内のBlimp1/Prmt5結合因子のインヴィヴォ同定を示す。(a)Dhx38転写開始(TS)および開始コドン(ATG)、ChIPアッセイの増幅配列近傍の推定Blimp1結合部位の位置を示す(A、B、C、D)。(b)ChIPアッセイによる、内在性Prmt5とDhx38遺伝子座のゲノムDNAとの相互作用を示す。E10.5胚から単離した生殖***細胞からの細胞抽出物としての上澄み液(s)又は核画分(n)をPrmt5又はIgG抗体のいずれかで免疫沈降した。尾部ゲノムDNA(+)および水(−)を対照として用いた。 核から細胞質へBlimp1およびPrmt5が移行する際に、生殖細胞においてDhx38が発現上昇し、その結果H2A/H4R3me2s修飾のレベルが低下したことを示す。(a)Dhx38、(b)Blimp1およびPrmt5ならびに(c)H2A/H4R3me2sの免疫染色を、図示する発達段階における生殖***の凍結切片について行った。生殖細胞を、特異的抗体stella/Pgc7、Oct4又はTG1/SSEA1を用いて検出した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。スケールバーは10μmである(各画像のスケールは同一)。 多能性EGおよび胚性癌腫(EC)細胞におけるBlimp1、Prmt5およびDhx38の分析を示す。(a)Blimp1、Prmt5およびDhx38の免疫染色を、EG細胞について行った。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。なお、Dhx38およびBlimp1の発現に逆相関関係がある。(b)Blimp1およびOct4についてのES、EG又はEC(P19)抽出物のウエスタンブロット分析を示す。(c)Myc標識マウスBlimp1をP19多能性EC細胞において発現した。Prmt5免疫沈降物を、図示するようにPrmt5、Blimp1又はDhx38抗体を用いるウエスタンブロッティングによって分析した。入力レーンの充填量が同等であることを示すチューブリンレベルが、抗チューブリン抗体を用いて検出された。なお、Blimp1がEC(P19)細胞に導入された場合、Dhx38は抑制される。(d)Myc−Blimp1トランスフェクトEC(P19)細胞におけるDhx38遺伝子座上のH4R3me2s量の増加を、ChIPにより検定した。P19細胞由来の細胞抽出物をMyc又はH4R3me2s抗体のいずれかで免疫沈降した。A、B、C、Dは、図4で説明した、Blimp1結合部位を含むDhx38遺伝子座における領域を意味する。 (a)図1に示したE7.5でのPCR発現スクリーニングで得た候補SET/PRドメイン遺伝子の免疫蛍光分析を示す。図示するように特定のヒストンメチルトランスフェラーゼに特異的な抗体を用いて、E8.5胚からの単離細胞の免疫染色を行った。生殖細胞特異的抗体Oct4又はStella/PGC7を用いて生殖細胞を検出した。(b)E8.5でのPGCにおいて対応する抗体を用いたBlimp1およびPrmt5の免疫共染色を示す。組織非特異的アルカリホスファターゼ(AP)によって生殖細胞を標識した。DAPIで染色したDNAとの合成像を示す。スケールバーは10μmである(各画像のスケールは同一)。 H4R3me2s抗体の特徴検討を示す。アルギニンは、1個のメチル基で修飾することができ(a)、あるいは対称的に配置した2個のメチル基(b)、非対称的に配置した2個のメチル基(c)で修飾することもできる。H4R3me2sに対する抗体(Abcam(登録商標))は、R3対称性脱メチル化したH4合成ペプチドを用いて作成されており、その特異性を調べるためにウエスタンブロット分析を行った。(d)免疫沈降したMyc−Blimp1と共に、あるいは無しで、ウシ胸腺ヒストン(H4、H3、H2A、H2B)を保温した。(e)非修飾、R3me2sおよびR3me2aのH4ペプチドについて競合アッセイを行ったところ、抗体は対称性ジメチル化ペプチドを顕著に認識した。

Claims (51)

  1. 部位特異的DNA結合活性を有する第1ドメイン、及びアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2ドメインとを少なくとも含む単離ポリペプチド複合体であって、前記第2ドメインは、ヒストンH2Aの尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能である、ポリペプチド複合体。
  2. 前記第2ドメインは、アルギニン残基の対称的なNG,N’Gジメチル化を供するアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する請求項1に記載のポリペプチド複合体。
  3. 前記第2ドメインは、ヒストンH2Aの尾部領域の第3位に位置するアルギニン残基(H2AR3)をメチル化可能である請求項1又は2に記載のポリペプチド複合体。
  4. 前記第2ドメインは、ヒストンH4の尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
  5. 前記第2ドメインは、ヒストンH4の尾部領域の第3位に位置するアルギニン残基(H4R3)をメチル化可能である請求項4に記載のポリペプチド複合体。
  6. 前記アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性は、Prmt5アルギニンメチルトランスフェラーゼドメイン、若しくはその誘導体又は相同体内で呈される請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
  7. 前記第1ドメインは、哺乳類のゲノムDNAにおける遺伝子発現の制御に関連する1以上のコンセンサス配列への結合を特異的に対象とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
  8. 前記第1ドメインは、PRDI/Blimp1型コンセンサス結合部位に特異的に結合する請求項7に記載のポリペプチド複合体。
  9. 前記第1ドメインは、PRDI/Blimp1ポリペプチド、前記PRDI/Blimp1ポリペプチドのDNA結合部、又はその誘導体を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリペプチド複合体。
  10. 部位特異的DNA結合活性を有する第1ドメインとアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2ドメインとを少なくとも含む単離ポリペプチドであって、前記第1ドメインは、哺乳類のゲノムDNAにおける遺伝子発現の制御に関与する1以上のコンセンサス配列への結合を特異的に対象とし、前記第2ドメインは、アルギニン残基の対称的なNG,N’Gジメチル化を供するアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する単離ポリペプチド。
  11. 前記第1ドメインは、PRDI/Blimp1型コンセンサス結合部位に特異的に結合する請求項10に記載の単離ポリペプチド。
  12. 前記アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性は、Prmt5アルギニンメチルトランスフェラーゼドメイン、若しくはその誘導体又は相同体内で呈される請求項10又は11に記載の単離ポリペプチド。
  13. 哺乳類細胞におけるポリペプチド複合体の発現を誘導するのに好適な核酸発現ベクター構築体であって、
    前記ベクターは、プロモーター配列に操作可能に連結した1以上のコード配列を備え、
    ここで、前記1以上のコード配列は、部位特異的DNA結合活性を有する第1のポリペプチドドメインとを少なくとも、そして、アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2のポリペプチドドメインを少なくともコードし、前記第1ドメインは、哺乳類のゲノムDNAにおける遺伝子発現の制御に必要な1以上のコンセンサス配列への結合を特異的に対象とし、前記第2ドメインは、ポリペプチド基質内に位置するアルギニン残基の対称性NG,N’Gジメチル化を呈するアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有してなる発現ベクター。
  14. 前記ポリペプチド基質は、ヒストンである請求項13に記載の発現ベクター。
  15. 前記第2のポリペプチドドメインは、ヒストンH2Aの尾部領域の第3位に位置するアルギニン残基(H2AR3)をメチル化可能である請求項13又は14に記載の発現ベクター。
  16. 前記第2のポリペプチドドメインはさらに、ヒストンH4の尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能である請求項13〜15のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  17. 前記第2ドメインは、ヒストンH4の尾部領域の第3位に位置するアルギニン残基(H4R3)をメチル化可能である請求項16に記載の発現ベクター。
  18. 前記アルギニンメチルトランスフェラーゼ活性は、Prmt5アルギニンメチルトランスフェラーゼドメイン、若しくはその誘導体又は相同体内で備える請求項13〜17のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  19. 前記第1ドメインは、遺伝子発現の制御に関連する哺乳類のゲノムDNAにおける1以上のコンセンサス配列への結合を特異的に対象とする請求項13〜18のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  20. 前記第1ドメインは、PRDI/Blimp1型コンセンサス結合部位に特異的に結合する請求項19に記載の発現ベクター。
  21. 前記第1ドメインは、PRDI/Blimp1ポリペプチド、前記PRDI/Blimp1ポリペプチドのDNA結合部、又はその誘導体を含む請求項20に記載の発現ベクター。
  22. 前記プロモーターは、誘導性プロモーターである請求項13〜21のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  23. 前記プロモーターは、構成的活性化プロモーターである請求項13〜21のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  24. 第1のコード配列が前記第1のポリペプチドドメインをコードし、第2のコード配列が前記第2のポリペプチドドメインをコードする発現カセットを含む請求項13〜23のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  25. 前記第1のコード配列は、PRDI/Blimp1ポリペプチドをコードし、前記第2のコード配列は、Prmt5ポリペプチドをコードする請求項24に記載の発現ベクター。
  26. 前記第1および第2のコード配列は、1個以上の介在配列によって隔てられている請求項13〜24のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  27. 前記1以上の介在配列は、少なくとも1の内部リボソーム進入配列(IRES)を含む請求項26に記載の発現ベクター。
  28. 選択マーカー、抗生物質耐性マーカーおよびレポーターから選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を1以上含む請求項13〜27のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  29. 部位特異的DNA結合活性を有する第1ドメインと、ヒストンH2Aの尾部領域に位置するアルギニン残基をメチル化可能であるアルギニンメチルトランスフェラーゼ活性を有する第2ドメインとを、少なくとも含むポリペプチド複合体の形成を哺乳類細胞内で誘導する工程を含む、哺乳類細胞における遺伝子発現を制御する方法。
  30. 前記細胞内における前記ポリペプチド複合体の形成は、前記細胞内におけるPRDI/Blimp1ポリペプチド、もしくはその相同体又は誘導体の発現の誘導によって誘導される請求項29に記載の方法。
  31. 前記細胞内における前記PRDI/Blimp1ポリペプチドの発現は、Blimp1ポリペプチド、もしくはその誘導体又は相同体をコードする発現ベクターを用いて前記細胞をトランスフェクトすることによって誘導される請求項30に記載の方法。
  32. 前記細胞内における前記PRDI/Blimp1ポリペプチドの発現は、請求項13〜28のいずれか一項に記載の発現ベクターを用いて前記細胞をトランスフェクトすることによって誘導される請求項30に記載の方法。
  33. 前記哺乳類細胞は、ヒト細胞である請求項29〜32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記哺乳類細胞は、腫瘍性細胞又は癌性細胞である請求項29〜33のいずれか一項に記載の方法。
  35. インヴィトロで行う請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法。
  36. インヴィヴォで行う請求項29〜34のいずれか一項に記載の方法。
  37. 前記遺伝子発現制御の結果、c−Myc、Dhx38、Pcdh7、Q8C9T7、Xylt1、DnaH1、Baip2、Nek7、Dusp2、ENSMUSG00000027041、Sirt4およびBlimp1からなる群より選択される1以上の遺伝子の発現が制御される請求項29〜36のいずれか一項に記載の方法。
  38. 前記細胞における前記ポリペプチド複合体の誘導は、請求項37に記載の遺伝子1以上の発現を低減させる請求項37に記載の方法。
  39. 幹細胞内でのBlimp1/Prmt5複合体の形成を阻害する工程を含む、幹細胞における自己再生を促進し分化を阻害する方法。
  40. 前記幹細胞は、哺乳類幹細胞である請求項39に記載の方法。
  41. 前記幹細胞は、ヒト幹細胞である請求項39又は40に記載の方法。
  42. 前記幹細胞は、成体幹細胞、幹細胞前駆体および多能性幹細胞からなる群より選択される請求項39〜41のいずれか一項に記載の方法。
  43. 前記幹細胞内におけるBlimp1/Prmt5複合体の形成の阻害は、前記細胞を、Blimp1阻害化合物、Prmt5阻害化合物および/又はBlimp1/Prmt5複合体阻害化合物に曝露することによって行われる請求項39〜42のいずれか一項に記載の方法。
  44. 前記阻害化合物は、小分子阻害剤、Blimp1又はPrmt5 mRNAに結合するsiRNA分子、Blimp1又はPrmt5mRNAに結合するアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびBlimp1又はPrmt5ポリペプチドのドミナントネガティブ体からなる群より選択される請求項43に記載の方法。
  45. 細胞内におけるBlimp1ポリペプチドの発現を誘導し、これにより前記細胞内におけるBlimp1/Prmt5複合体の形成を誘導する工程を含む、細胞内におけるPrmt5の局在化を制御する方法。
  46. 前記細胞は、哺乳類幹細胞である請求項45に記載の方法。
  47. 癌処置に用いる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド複合体。
  48. 癌処置用の薬物の作成における請求項1〜12のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド複合体の使用。
  49. 請求項13〜28のいずれか一項に記載の発現ベクターを含む細胞。
  50. 哺乳類細胞である請求項49に記載の細胞。
  51. ヒト細胞である請求項50に記載の細胞。
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