本発明の1つの態様によれば、癌または前悪性の病変を診断する方法が提供され、この方法は、それを必要とする対象の循環CD24の存在および/またはレベルを決定することを含み、所定の閾値より高い循環CD24の存在および/またはレベルは、癌または前悪性の病変の指標である。
本発明の別の態様によれば、包装材、および対象の循環CD24の存在および/またはレベルを決定するための少なくとも1つの試薬を含む、癌または前悪性の病変を診断するためのキットが提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、癌治療の有効性を監視する方法が提供され、この方法は、癌治療後の対象の生物学的サンプルにおける循環CD24のレベルを決定することを含み、癌治療後の循環CD24のレベルにおける所定の閾値からの低下は癌細胞の低減の指標であり、それによって癌治療の有効性を監視する。
本発明のさらに別の態様によれば、対象が胃腸癌の素因をもっているかどうかを決定する方法が提供され、この方法は、対象のCD24核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型の同型接合形態または異型接合形態での存在または非存在を決定することを含み、それによって対象が胃腸癌の素因をもっているかどうかを決定する。
本発明のさらなる態様によれば、包装材、および対象のCD24核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型の同型接合形態または異型接合形態での存在または非存在を決定するための少なくとも1つの試薬を含む、対象が胃腸癌の素因をもっているかどうかを決定するためのキットが提供される。
本発明のなおさらなる態様によれば、包装材、および対象の循環CD24の存在および/またはレベルを決定するための少なくとも1つの試薬を含む、癌治療の有効性を監視するためのキットが提供される。
以下に記載される本発明の好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前記前悪性の病変は腺腫である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、決定は生体外で行われる。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、決定は生体内で行われる。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、CD24は脱け落ちたCD24を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、CD24は泡状突起中のCD24を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、CD24は可溶性CD24を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前悪性の病変は固形腫瘍に関連する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、癌は固形腫瘍である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、癌は胃腸管の癌である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前悪性の病変は胃腸管の癌に関連する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、胃腸管の癌は結腸直腸癌である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、前悪性の病変は、リンパ腫、神経膠腫、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、肝細胞癌、腎細胞癌、鼻咽腔癌、膀胱癌、子宮癌、上皮卵巣癌、乳癌、前立腺癌および膵癌からなる群から選択される癌に関連する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、循環CD24は、糞便サンプル、血清サンプル、血液サンプル、尿サンプル、および唾液サンプルからなる群から選択される生物学的サンプルに関連する。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、決定はタンパク質レベルで行われる。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つの試薬はCD24特異的抗体を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1つの試薬は、CD24核酸配列に特異的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、CD24核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの280位にチミジンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、方法は、対象のAPC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型の同型接合形態または異型接合形態での存在または非存在を決定することをさらに含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、キットは、対象のAPC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型の同型接合形態または異型接合形態での存在または非存在を決定するための少なくとも1つの試薬をさらに含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、APC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、配列番号7に記載のポリヌクレオチドの3977位にアデノシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、APC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、配列番号7に記載のポリヌクレオチドの4006位にシトシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、APC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、配列番号7に記載のポリヌクレオチドの3977位にアデノシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子および配列番号7に記載のポリヌクレオチドの4006位にシトシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、癌治療は放射線療法を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、癌治療は化学療法を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、癌治療は抗体療法を含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、キットは、癌治療の有効性の監視に使用するための指示書をさらに含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、キットは、癌治療の有効性の監視に使用するための指示書をさらに含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、キットは、対象が胃腸癌の素因をもっているかどうかの決定に使用するための指示書をさらに含む。
記載される好ましい実施形態におけるさらなる特徴によれば、キットは、対象における癌または前悪性の病変の診断に使用するための指示書をさらに含む。
本発明は、生物学的サンプルにおいて前悪性の病変を診断するための方法およびキットを提供することによって、現在知られている構成の欠点に対処することに成功している。
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
本明細書において使用される用語「含む(comprising)」および「含む(including)」またはその文法上の変化形は、記述されている特徴、数値、工程または成分を特定しているとみなすべきであるが、1つ以上の追加の特徴、数値、工程、成分またはそれらの群を追加することを妨げない。この用語は、用語「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
語句「から本質的になる」またはその文法上の変化形は、本明細書中で使用する場合、記述された特徴、数値、工程または成分を特定しているとみなすべきであるが、1つ以上の追加の特徴、数値、工程、成分またはそれらの群を追加することを妨げない。しかし追加の特徴、数値、工程、成分またはそれらの群が、特許請求されている組成物、装置または方法の基本的な新規の特徴を著しく変えない場合だけである。
用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、バイオテクノロジーの分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
図面の簡単な記述
本明細書では本発明を単に例示し図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の好ましい実施形態を例示考察することだけを目的としており、本発明の原理や概念の側面の最も有用でかつ容易に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示していることを強調するものである。この点について、本発明を基本的に理解するのに必要である以上に詳細に本発明の構造の詳細は示さないが、図面について行う説明によって本発明のいくつもの形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
図1は、CRC細胞株のCD24−免疫沈降(IP)分析である。(CD24を発現しない)HCT116 CRC細胞株または(CD24を発現する)HT29 CRC細胞株の抽出物は、CD24ーIPに供され、その後SWA11 CD24抗体を使用するウェスタンブロット分析に供された。レーン1:HCT116 CRC細胞の全溶解物(IPなし);レーン2:HT29 CRC細胞の全溶解物(IPなし);レーン3〜8:抗マウス結合体化セファロースビース(Sigma)を使用する、HCT116細胞(レーン3〜5)またはHT29細胞(レーン6〜8)の溶出生成物:IP抗体(第1結合剤)がない場合(レーン3および6)、またはML5 Ab(レーン4および7)もしくはSWA11 Ab(レーン5および8)を使用するIP後。CD24に対するSWA11 Abを使用する効果的なIP(レーン8)は、SWA11が、低いバックグラウンドをもたらす好適なIP抗体であることを実証していることに注意されたい。
図2a〜cは、腫瘍の外科的除去の前後、または化学療法の前後にCRC患者から得られた糞便サンプルのCD24ウェスタンブロット分析である。結腸直腸腫瘍(腺腫または腺癌(CRC))と診断された12人の患者(P−1、P−2、P−3・・・P−12で示される)の糞便サンプルからのタンパク質抽出物(等量)は、SWA11 Abを使用するウェスタンブロット分析に供された。外科的除去前の患者の臨床的徴候は以下の通りである:患者1(P−1)−ポリープ 15mm;患者2(P−2)−広範囲のポリープ;患者3(P−3)−ポリープ 20mm;患者4(P−4)−ポリープ 5mm、低度の形成異常;患者5(P−5)−腺癌;患者7(P−7)−腺癌;患者8(P−8)−腺癌;患者9(P−9)−ポリープ 15mm;患者10(P−10)−高度のポリープ;患者11(P−1l)−腺癌;患者12(P−12)−腺癌;患者6(P−6)直腸の癌−この患者のサンプルは、腫瘍除去後であるが放射線療法前(レーン13)または放射線療法後(レーン14)の両方で採取された。図2a−レーン1〜9:レーン1−HT29細胞(ポジティブコントロール);レーン2〜3−P−1;レーン4〜5−P−2;レーン6〜7−P−3;レーン8〜9−P−4;図2b−レーン10〜18:レーン10−HT29細胞;レーン11〜12−P−5;レーン13〜14−P−6;レーン15〜16−P−7;レーン17〜18−P−8;図2c−レーン19〜27:レーン19−HT29細胞;レーン20〜21−P−9;レーン22〜23−P−10;レーン24〜25−P−1l;レーン26〜27−P−12。レーン2、4、6、8、11、15、17、20、22、24および26−サンプルは、腫瘍の外科的除去前に採取された。レーン3、5、7、9、12、13、14、16、18、21、23、25および27−サンプルは、腫瘍の外科的除去後に採取された。11人の患者のうち少なくとも9人の患者における腫瘍の外科的除去後のCD24レベルの有意な減少(例えば、レーン3におけるタンパク質バンドの強度をレーン2のタンパク質バンドの強度と比べる)は、糞便におけるCD24の存在が少なくとも部分的に腫瘍に由来することを実証することに注意されたい。さらに、ポリープまたは腫瘍の外科的除去前に採取された糞便サンプルにおいてCD24タンパク質種は約20kDa〜約60kDa(例えば、レーン4、17、20および24)のような種々の大きさのタンパク質を含むが、ポリープまたは腫瘍の外科的除去後に採取された糞便サンプルにおいてCD24タンパク質種は約37kDa〜約50kDa(例えば、レーン11、18、21)のような高分子量のタンパク質を含むことに注意されたい。また、放射線療法前に得られた糞便サンプル(レーン13)に比べて、放射線療法後に得られた糞便サンプル(レーン14)におけるCD24レベルの有意な減少は、CRCの悪性細胞に由来する糞便におけるCD24のレベル、つまり処置後のレベルにおける減少が処置の有効性(例えば、癌細胞の排除)を示すことができることを実証していることに注意されたい。
図3は、血清サンプルにおけるCD24の免疫沈降分析を示す。進行性のCRC(レーン3)または非進行性のCRC(レーン4)を有する患者から採取された血清サンプルは、抗マウス結合体化セファロースビーズ(Sigma、イスラエル)をSWA11 抗CD24モノクローナル抗体で予めインキュベートすることによって形成された複合体で免疫沈降された。免疫沈降された複合体は、SWA11 抗CD24モノクローナル抗体を使用するウェスタンブロット分析に供された。レーン1−CD24を過剰発現するHT29細胞;レーン2−非進行性のCRCを有する患者からの血清;レーン3−進行性CRCを有する患者からの血清。レーン3における〜40kDaのタンパク質バンドおよびレーン2におけるそのようなタンパク質バンドの非存在は、進行性CRCを有する患者の血清におけるCD24の存在および非進行性CRCを有する患者におけるCD24の消失を実証することに注意されたい。
図4は、CD24タンパク質(配列番号2)におけるVal57Ala多型(配列番号1の280位のC/T)のRFLP分析である。ゲノムDNAは、フォワードプライマー(配列番号3)およびリバースプライマー(配列番号4)を使用するPCR増幅に供され、得られた520bpのPCR産物は、BstXI制限酵素を使用して消化された(消化されたものについて「D」で示す レーン1、3および5)か、または消化されないままにされ(消化されていないものについて「N」で示す レーン2、4および6)、そして1%アガロースゲル上で電気泳動に供された。レーン1および2−高レベルのCD24を発現するcolo357膵癌細胞株のDNA;レーン3および4−中レベルのCD24を発現するPanc1膵癌細胞株のDNA;レーン5および6−高レベルのCD24を発現するHT29 結腸癌細胞株のDNA;レーン7−100bpの分子量マーカー。520bpの消化されていないPCR産物のみの存在によって証明されるように、中レベルのCD24を発現するPanc1細胞は、配列番号1の280位(これは配列番号2の57位のAla多型に相当する)にC/C遺伝子型を示すが、レーン1(Colo357)における消化されたPCT産物と消化されていないPCR産物の両方の存在およびレーン5(HT29)における消化されたPCR産物のみの存在によって証明されるように、高レベルのCD24を発現するcolo357細胞またはHT29細胞はそれぞれ、配列番号1の280位(57位のAla/Val多型またはVal/Val多型に相当する)にC/T遺伝子型またはTT遺伝子型を示すことに注意されたい。
図5は、ヒト血清からのCD24の精製を示す。進行性のCRCに罹患する患者からの血清サンプル中のCD24は、DEAEセルロース(DE52)ミニカラムを使用する陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製された。分画の前に、血清は残存する残骸を除くために12000×gで遠心分離(30分間、4℃)され、アルブミンは、既に発表されている方法(Colantonio DAら、2005、Proteomics,5(15):3831−5)から改変されたDAC(アルブミン成分の枯渇)プロトコルを使用して血清から枯渇されられた。アルブミン枯渇の後、血清は10mM TrisーHCl pH7.4中に希釈され、同じ緩衝液で予め平衡にされたDE52ミニカラムに充填された。透過物(FT)および沈殿物(W)は別個に収集され、結合されたタンパク質はTris−HCl pH7.4中のNaClの濃度を増大させて(0.05〜0.3M)溶出された。溶出されたタンパク質は、SDS−PAGEおよびSWA11 モノクローナル抗体を使用するウェスタンブロッティングによって分析された。レーン1−CD24の分子量に対するポジティブコントロールとしてのHT29細胞株の全溶解物;レーン2−遠心分離後であるがアルブミン枯渇前の血清サンプル;レーン3〜8は、異なる溶出画分である。0.1〜0.2M NaClを含有する画分において溶出されかつ抗CD24抗体によって認識されるレーン6および7における35〜40kDaの見掛け分子量を有するタンパク質の存在に注意されたい。
本発明は、循環CD24を用いる癌または前悪性の病変の早期かつ非侵襲的な診断の方法に関する。さらに、本発明は、CD24およびAPC遺伝子における遺伝子型を胃腸癌と高度に関連づけた発明であり、これは胃腸癌に対する素因の検出のために使用されることができる。
本発明による前悪性の病変を診断する方法およびキットの原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解することができる。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部または実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
結腸直腸癌(CRC)を含む胃腸(GI)管の癌は、遺伝的および後成的な変化が獲得される段階的なプロセスを経て数年にわたって発現し、最終的には正常な上皮の新生物への変換に至る。例えば、CRCの発癌は、癌遺伝子(例えば、k−Ras)および腫瘍抑制遺伝子(例えば、p53)における変異、メチル化パターンの変化、およびDCCおよびSMADの欠失を伴う。しかしながら、現在の遺伝子に関する知識および現在利用可能な内視鏡検査手順(例えば、結腸内視鏡検査)にもかかわらず、診断時にはGI管に関連する癌の大半はすでに広がっており、処置がより難しい。
結腸直腸癌(CRC)のような胃腸管(GI管)の癌に対する現在利用可能なスクリーニング方法は、糞便の潜血検査(FOBT)を含む。しかしながら、臨床試験は、連続的なFOBTによるスクリーニングがCRCの死亡率を低減したことを示したが、FOBTの感度は制限されている(60%;McMahon PM、2001(前出))。数種のマーカーが、非侵襲的な診断ツールとして最近提案されている。これらは、糞便サンプルにおいて検出されることができるタンパク質(例えば、糞便のカルプロテクチン、ラクトフェリン、リソチーム、アルブミン、α−1−抗トリプシン、癌胚抗原(CEA)、崩壊加速因子(DAF)、小染色体維持タンパク質(MCM2))またはmRNA(例えば、糞便のCOX−2)、および血清サンプルにおいて検出されることができるニコチンアミドN−メチルトランスフェラーゼ(NNMT)またはプロテアソーム活性化因子複合体サブユニット3(PSME3)のようなタンパク質を含む。しかしながら、それらの低い感度および特異性のために、これらのマーカーは臨床で使用されていない。直腸内触診(DRE)、PET−CT(陽電子放射断層撮影法)、および仮想結腸内視鏡検査のような他の診断方法は、限定された特異性および/または感度を示す。従って今日まで、CRCの診断は、結腸の内視鏡検査(結腸内視鏡検査またはS字結腸内視鏡検査)、その後の腺腫の外科的除去および組織学的染色のような侵襲的な手順に基づく。
CD24は、高度にグリコシル化された、フォスファチジルイノシトール固定されたムチン様細胞表面タンパク質であり、それは主にBリンパ球の造血小集団、種々の上皮細胞、筋肉細胞および神経細胞上で発現される。CD24は、B細胞リンパ腫、神経膠腫、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、肝細胞癌、腎細胞癌、鼻咽腔癌、膀胱癌、子宮癌、上皮卵巣癌、乳癌、前立腺癌および膵癌を含む種々の悪性組織において過剰発現される(Kristiansenら、2004によって概説される)。そのうえ、CD24の発現は、数種の器官に由来する癌細胞株の増大された増殖率、運動性および生存性と相関し(Baumann Pら、2005;Smith SCら、2006)、癌のより攻撃的な経過と相関する。さらに、Weichert W.ら(2005)は、細胞質におけるCD24の増大された発現がより高い腫瘍の病期、進行度および転移の存在と相関することを見出し、(細胞における過剰生成または分布の妨害の結果としての)細胞質におけるCD24の過剰発現が悪い予後のマーカーであると結論づけた。さらに、血小板凝集におけるCD24の役割は、癌の転移およびより悪い予後へのその関与を説明することができる(Sammar,M.ら、1994;Aigner,S.ら、1997;Aigner,S.ら、1998)。
Li J.らの米国特許出願第20040005596号は、疑わしい前癌組織または癌組織から得られたサンプルにおいてその場でのCD24のレベルを決定することによって癌を診断する方法を開示しており、従ってこの方法もまた、癌の検出のために侵襲的な手順を必要とする。
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、胃腸管の前悪性の病変においてCD24が過剰発現されていること、および脱け落ちたCD24、泡状突起中のCD24、または分泌されたCD24が前悪性および悪性の病変を有する対象の生物学的サンプルにおいて検出されることができることを発見した。
以下の実施例の節において示されるように、本発明者らは、CD24転写物のレベルがras変異−形質転換細胞株において上方制御されること(実施例1)、およびそのレベルが、特異的COX−2阻害剤であるCelecoxibでのそのような細胞の処理後に、通常レベルに逆転されることを発見した。さらに、本発明者らは、種々のCRC細胞株におけるCD24の発現レベルがCD24におけるVal57Ala SNPの遺伝子型と相関し、従って、高レベルのCD24タンパク質を発現する細胞はCD24v/v遺伝子型(Val−57多型)を担持するが、CD24タンパク質をほとんど発現しない細胞はCD24a/a遺伝子型(Ala−57多型)を担持することを発見した(実施例3)。さらに、本発明者らは、CD24がGI管の前悪性の病変において過剰発現され、それが発癌の早期段階と相関することを発見した(表1、実施例2)。そのうえ、以下の実施例の節においてさらに例示されるように、本発明者らは、可溶性のCD24、脱け落ちたCD24、泡状突起中のCD24または分泌されたCD24が、結腸直腸のCRC発癌または前悪性の病変に罹患する患者の血清サンプル(図3および5、実施例4)、糞便サンプル(図2a〜c、実施例4)、および尿サンプルにおいて検出されることができること、および糞便におけるCD24のレベルが前悪性または悪性の病変の(例えば手術による)除去後(図2a〜c)に、ならびにCRCが非進行性であるとき(例えば、放射線療法後;図2bおよび3、実施例4)に減少することを発見した。要するに、これらの結果は、たとえ前悪性の段階でも、CD24が癌の早期診断のための優れたマーカーであること、および可溶性CD24(例えば、分泌されたもの)、泡状突起中のCD24および/または脱け落ちたCD24が糞便、血清、および尿のような生物学的サンプルにおいて検出されることができ、従って、癌の診断において使用されることができることを実証している。
従って、本発明の1つに態様によれば、癌および/または前悪性の病変を診断する方法が提供される。この方法は、それを必要とする対象の循環CD24の存在および/またはレベルを決定することによって行われ、そこでは所定の閾値より高い前記循環CD24の存在および/またはレベルは、癌および/または前悪性の病変の指標である。
本明細書において使用される表現「前悪性の病変」は、悪性腫瘍への変換の増大した確率を有する細胞および/または組織の塊を示す。好ましくは、本発明の前悪性の病変において、CD24は非悪性の組織または細胞と比べて過剰発現される。前悪性の病変の例は、限定されないが、腺腫様ポリープ、バレット食道、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)、胸部のDCIS(非浸潤性乳管癌)、白斑症、および紅板症を含む。従って、本発明のこの態様の方法によって診断される前悪性の病変は、悪性の固形または非固形の(例えば、血液の悪性疾患)CD24に関連した癌(または腫瘍)へと変換することができる。好ましくは、本発明のこの態様の方法によって診断される前悪性の病変は、結腸の腺腫様ポリープ、直腸の腺腫様ポリープ、小腸の腺腫様ポリープ、およびバレット食道である。
本発明のこの態様の方法によって診断されることができるCD24に関連した癌の非限定的な例は、胃腸管の腫瘍(結腸癌、直腸癌、肛門領域の癌、結腸直腸癌、小腸および/または大腸の癌、食道癌、胃癌(stomach cancer)、膵癌、胃癌(gastric cancer)、小腸癌、小腸に起こる腺癌、小腸に起こるカルチノイド腫瘍、小腸に起こるリンパ腫、小腸に起こる間葉性腫瘍、胃腸間質性腫瘍)、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺癌、腎臓癌(例えば、ウイルム腫瘍)、肝臓癌(例えば、肝芽腫、肝細胞癌)、肝胆道癌、胆道系癌、胆嚢の腫瘍、膀胱癌、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、栄養膜の腫瘍、精巣の胚細胞腫瘍、卵巣、子宮、上皮性卵巣の未熟型奇形腫、仙尾部の腫瘍、絨毛癌、胎盤性絨毛腫瘍、成人上皮性腫瘍(epithelial adult tumor)、卵巣癌、子宮頸癌、膣の癌、陰門の癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、鼻咽腔癌、乳癌、扁平上皮細胞癌(例えば、頭部および頸部)、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞、バーキット、皮膚T細胞性、組織球、リンパ芽球、T細胞、胸腺、皮膚T細胞性リンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫)、神経膠腫、甲状腺髄様癌、睾丸癌、脳腫瘍および頭部/頸部癌、婦人科癌、子宮内膜癌、胚細胞腫瘍、間葉腫瘍、神経原性腫瘍、膀胱の癌、尿管の癌、腎盂の癌、尿道の癌、陰茎の癌、精巣の癌、子宮体の癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、腹膜癌およびファローピオ管癌、卵巣の胚細胞腫瘍、性索間質腫瘍、内分泌系の癌、甲状腺腫瘍、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫、上皮小体腫瘍、副腎腫瘍、膵内分泌腫瘍、軟組織および骨の肉種、良性および悪性の中皮腫、悪性の腹膜中皮腫、精巣鞘膜の悪性中皮種、心膜の悪性中皮種、皮膚癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、中枢神経系の新生物、髄芽細胞腫、髄膜腫、末梢神経腫瘍、松果体領域腫瘍、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、聴神経腫、頸静脈球腫瘍、脊索腫および軟骨肉腫、血管芽細胞腫、脈絡叢乳頭腫および脈絡叢乳頭癌、脊髄軸腫瘍、白血病および慢性白血病を含む。
本明細書において使用される表現「診断する」は、病状(例えば、CD24に関連した癌または前悪性の病変)または症状を分類すること、病状の重篤度を決定すること、病状の経過を監視すること、病状の結果および/または回復の見通しを予測することを示す。
本明細書において使用される表現「必要とする対象」は、癌を有する危険性のあるヒト対象(例えば、遺伝的に素因をもつ対象、癌の病歴をもつ対象およびまたは癌家系の対象、発癌物質、職業上の危険、環境的な危険に曝されていた対象)、および/または疑わしい癌の臨床的症状(例えば、糞便中の血液または下血、原因不明の疼痛、発汗、原因不明の発熱、食欲不振に至るまでの原因不明の体重減少、排便習慣の変化(便秘および/または下痢)、テネスムス(特に、直腸癌に対する、完了していない排便の感覚)、貧血、および/または全体的な衰弱)を示す対象を示す。追加的にまたは代替的に、必要とする対象は、普通の健康診断を受けている健康なヒト対象であることができる。
本明細書において使用される用語「CD24」は、染色体6q21上のゲノム配列によってコードされるフォスファチジルイノシトール固定されたムチン様細胞表面タンパク質(例えば、CD24タンパク質−配列番号2、GenBankアクセッション番号NP_037362.1;CD24転写物−配列番号1、GenBankアクセッション番号NM_013230.2)の少なくとも機能的部分の核酸配列および/またはアミノ酸配列を示す。
表現「循環CD24」は、その場で固定されているCD24ではない、対象の生物学的サンプル中に存在するいかなるCD24分子も示す。表現「その場で固定されているCD24」は、本明細書において上に記載されるような前悪性の病変(例えば、腺腫)または癌性の腫瘍の細胞のような、それが生成される場所で(その場で)無傷の細胞に固定される、組織に固定されたCD24アミノ酸配列または核酸配列を示す。従って、表現「循環CD24」は、全身で検出されることができるいかなるCD24分子も示す。循環CD24は、可溶性形態でも非可溶性形態(GPI部分によって膜に固定される形態)でも良い。このような循環CD24の例は、限定されないが、分泌されたCD24(例えば、CD24スプライス変異体)、(例えば、PIPLCのようなホスホリパーゼの作用によって)膜成分を欠く脱け落ちたCD24(例えば、配列番号2のアミノ酸配列27〜80)、泡状突起中のCD24(すなわち、基底となる細胞骨格からの原形質膜の破裂後に細胞内液による分離した膜の膨張によって形成される細胞泡状突起中に存在するCD24)または脱け落ちた細胞(すなわち、組織から分離した細胞)上に存在するCD24を含む。
従って、本発明の循環CD24は、癌性の組織または癌を含まない組織から隔離された生物学的サンプルにおいて存在することができる。例えば、生物学的サンプルは、癌がCRCのようなGI管の癌であるときは、糞便、血清または尿であることができる。
本明細書において使用される表現「生物学的サンプル」は、本明細書において上で記載されるような循環CD24を含有することができるいかなる細胞性または非細胞性の生物学的サンプルも示す。その例は、限定されないが、血液サンプル(例えば、血清)、唾液サンプル、糞便サンプル、尿サンプル、パプ塗抹標本、子宮頸管サンプル、骨髄サンプル(特に、マクロファージを含有するもの)、リンパ液、皮膚サンプル、上皮細胞、気道、腸管および尿生殖路の種々の外分泌物、涙、乳液、組織生検、脳脊髄液(CSF)サンプル、***サンプル、羊水、および絨毛サンプル(CVS)、神経細胞のサンプル、樹状細胞、器官を含み、生体内の細胞培養成分のサンプルもまた含む。
好ましくは、本発明のこの態様の方法によって使用される生物学的サンプルは、血液サンプル(例えば、血清)、糞便サンプル、および/または尿サンプルである。
生物学的サンプルは、針付の注射器、外科用メス、細針吸引(FNA)、カテーテル、胃腸内視鏡検査(例えば、結腸直腸内視鏡検査、胃内視鏡検査)などを使用するような、当該分野で公知の方法を使用して得られることができる。好ましくは、本発明の生物学的サンプルは、血液のサンプリング、糞便の収集または尿の収集によって得られることができる。可溶性CD24のレベルおよび/または存在の決定は、生体外(対象に由来するサンプル)で、ならびに生体内(対象内)で行われることができる。
本明細書において使用される表現「循環CD24の存在および/またはレベル」は、生物学的サンプルにおけるCD24遺伝子の遺伝子発現および/または遺伝子産物活性の程度を示す。従って、CD24の存在および/またはレベルは、タンパク質検出方法を使用してアミノ酸レベルで決定されることができる。
従って、CD24アミノ酸配列(CD24タンパク質)の存在および/またはレベルは、免疫複合体(すなわち、生物学的サンプル中に存在するCD24抗原(CD24アミノ酸配列)とCD24特異的抗体との間で形成される複合体)の形成によってCD24特異的抗体を使用して決定されることができる。
本発明の免疫複合体は、使用される方法および生物学的サンプルに依存して変化しうる種々の温度、塩濃度、およびpH値で形成されることができ、当業者は各免疫複合体の形成に好適な条件を調整することができる。
本発明において使用される用語「抗体」は、無傷の分子、ならびに、その機能的フラグメント、例えば、Fab、F(ab’)2、Fvまたは単一ドメイン分子(例えば、抗原のエピトープに対するVHおよびVLなど)を含む。これらの機能的な抗体フラグメントは、下記のように定義される:(1)Fab、これは、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含有するフラグメントであり、全長抗体を酵素パパインで消化して、無傷の軽鎖と、1つの重鎖の一部分とを生じさせることによって作製することができる;(2)Fab’、これは、全長抗体をペプシンで処理し、その後、還元して、無傷の軽鎖と、重鎖の一部分とを生じさせることによって得ることができる、抗体分子のフラグメントである;1分子の抗体分子につき2つのFab’フラグメントが得られる;(3)(Fab’)2、これは、全長抗体を、その後の還元を伴うことなく、酵素ペプシンで処理することによって得ることができる、抗体のフラグメントである;(Fab’)2は、2つのジスルフィド結合によってつながれる2つのFab’フラグメントの二量体である;(4)Fv、これは、2つの鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作されたフラグメントとして定義される;(5)単鎖抗体(「SCA」)、これは、遺伝子融合された単鎖分子として好適なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子である;および(6)単一ドメイン抗体は、抗原に対する十分な親和性を示す1種だけのVHドメインまたはVLドメインから構成される。
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびにそれらのフラグメントを製造する様々な方法が、当該分野でよく知られている(例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1988(これは参考として本明細書中に組み込まれる)を参照のこと)。
本発明による抗体フラグメントは、抗体のタンパク質分解的加水分解によって、あるいは、フラグメントをコードするDNAの大腸菌細胞または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養または他のタンパク質発現系)における発現によって調製されることができる。抗体フラグメントは、従来の方法による全長抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得られることができる。例えば、抗体フラグメントは、F(ab’)2と呼ばれる5Sフラグメントを提供するためにペプシンによる抗体の酵素的切断によって製造されることができる。このフラグメントはさらに、チオール還元剤、および、場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基のための保護基を使用して切断して、3.5SのFab’一価フラグメントを生じさせることができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素的切断により、2つの一価のFab’フラグメントと、1つのFcフラグメントとが直接に生じる。これらの方法が、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および同第4331647号、ならびに、それらに含まれる参考文献に記載される(これらの特許は本明細書によりその全体が参考として組み込まれる)。Porter,R.R.[Biochem.J.73:119−126(1959)]もまた参照のこと。フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、あるいは、他の酵素的技術、化学的技術または遺伝学的技術などもまた使用することができる。
Fvフラグメントは、VH鎖およびVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbarら[Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 69:2659−62(1972)]に記載されるように非共有結合性である場合がある。あるいは、可変鎖を分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、グルタルアルデヒドのような化学物質によって架橋することができる。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによってつながれたVH鎖およびVL鎖を含む。このような単鎖の抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによってつながれたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。そのような構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、続いて、発現ベクターが宿主細胞(例えば、大腸菌など)に導入される。組換え宿主細胞により、リンカーペプチドが2つのVドメインを架橋する単一ポリペプチド鎖が合成される。scFvを製造する方法が、例えば、WhitlowおよびFilpula、Methods 2:97−105(1991);Birdら、Science 242:423−426(1988);Packら、Bio/Technology 11:1271−77(1993);および米国特許第4946778号によって記載される(これらは本明細書によりその全体が参考として組み込まれる)。
抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得られることができる。そのような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して可変領域を抗体産生細胞のRNAから合成することによって調製される。例えば、LarrickおよびFry[Methods、2:106−10(1991)]を参照のこと。
抗体はまた、当該技術分野で既知の様々な技術を使用して製造することができ、そのような技術には、ファージ呈示ライブラリー[HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、227:381(1991);Marksら、J.Mol.Biol.、222:581(1991)]が含まれる。ColeらおよびBoernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用することができる(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985);およびBoernerら、J.Immunol.、147(1):86−95(1991))。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウス)に導入することによって作製されることができる。抗原による攻撃を受けたとき、ヒト抗体の産生が認められ、これは、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含めて、すべての点でヒトにおいて見られ得る抗体産生と非常に類似する。この方法が、例えば、米国特許第5545807号、同第5545806号、同第5569825号、同第5625126号、同第5633425号および同第5661016号において、また、下記の科学的刊行物において記載される:Marksら、Bio/Technology 10;779−783(1992);Lonbergら、Nature 368:856−859(1994);Morrison、Nature 368:812−13(1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14、845−51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology 14:826(1996);ならびにLonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.13、65−93(1995)。
本発明のこの態様の方法によれば、免疫複合体形態の検出は、癌または前悪性の病変の診断の指標である。種々の方法が、本発明のCD24免疫複合体の形成を検出するために使用されることができ、当業者らは免疫複合体および/または診断のために使用される細胞のタイプの各々について好適な方法を決定することができる。
本発明の免疫複合体において使用されるCD24抗体は、当該分野において公知の方法で標識されることができる。標識された抗体は、一次抗体(すなわち、特異的な抗原、例えば、CD24特異的抗原に結合する抗体)、または一次抗体に結合する二次抗体(例えば、標識されたヤギ抗ウサギ抗体、標識されたマウス抗ヒト抗体)のいずれかであることができることを理解されたい。抗体は、標識に直接的に結合体化されることができるか、または酵素に結合体化されることができる。
本発明の抗体は、(抗体に結合体化した蛍光色素を使用して)蛍光標識されるか、(放射能標識された抗体、例えば、125Iで標識された抗体を使用して)放射能標識されるか、または酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)に結合体化されて発色性基質とともに使用されて比色反応を生成することができる。本発明の酵素−結合体化抗体によって利用される発色性基質は、限定されないが、アルカリホスファターゼ酵素については、AEC、Fast red、ELF−97基質[2−(5’−クロロ−2−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4(3H)−キナゾリノン]、p−ニトロフェニルリン酸(PNPP)、フェノールフタレイン二リン酸、およびELF 39−リン酸、BCIP/INT、Vector Red(VR)、サーモンおよびマゼンタリン酸(salmon and magenta phosphate)(Avivi Cら、1994,J Histochem.Cytochem.1994;42:551−4)、および、ペルオキシダーゼ酵素については、Nova Red、ジアミノベンジジン(DAB)、Vector(R) SG基質、ルミノールベースの化学発光基質を含む。これらの酵素基質は、Sigma(St Louis,MO,USA)、Molecular Probes Inc.(Eugene,OR,USA)、Vector Laboratories Inc.(Burlingame,CA,USA)、Zymed Laboratories Inc.(San Francisco,CA,USA)、Dako Cytomation(Denmark)から市販されている。
循環CD24を含有しうる血清、糞便、または尿のような生物学的サンプルにおけるCD24免疫複合体の検出は、蛍光活性化細胞分取(FACS)、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロットおよび放射性免疫測定(RIA)分析、免疫沈降(IP)、または分子量に基づく方法を使用して行われることができる。
ウェスタンブロットのために、タンパク質は、細胞サンプルから抽出され、電気泳動(例えば、SDS−PAGE)および膜(例えば、ナイロンまたはPVDF)に対するブロッティングに供される。次いで膜は、直接的に標識されるか、またはさらに標識された二次抗体に供されることができるCD24抗体と相互作用させられる。検出は、オートラジオグラフィー、比色反応、または化学発光によるものであることができる。この方法は、基質の量の定量、および電気泳動時のアクリルアミドゲルにおける移動距離の指標である膜上の相対位置による基質の正体の決定の両方を可能にする。
生物学的サンプルにおける抗原の濃度が低い場合、抗原(CD24アミノ酸配列)の検出は、以下の実施例の節において本質的に記載されるように、免疫沈降(IP)によって行われることができる。免疫沈降分析のために、CD24抗体は、CD24を含むサンプル(例えば、細胞溶解物)と直接的に相互作用し、形成された複合体はさらに、ビーズに結合体化された二次抗体(例えば、もしCD24抗体がマウスモノクローナル抗体であれば、二次抗体は、例えばセファロースビーズに結合体化された抗マウス抗体であることができる)を使用して検出されることができる。ビーズは次いで、遠心分離によって沈降され、続いて沈降されたタンパク質(例えば、CD24および抗CD24抗体)は、(例えば、95℃での変性を使用して)ビーズから分離されることができ、さらにCD24特異的抗体を使用するウェスタンブロット分析に供されることができる。あるいは、抗CD24抗体およびビーズと結合体化された二次抗体は、抗原(CD24)を含有する生物学的サンプルに添加され、それによって免疫複合体を形成することができる。あるいは、CD24は高度にグリコシル化されたタンパク質であるので、それはまた、ビーズと結合体化することができるコンカナバリンA(GE Healthcare Bio−Sciences、Uppsala、Sweden)のような、グリコシル化されたポリペプチドに結合することができる基質を使用して沈降されることができ、その後に抗CD24抗体でのウェスタンブロット分析に供されることができる。
FACS分析は、CD24のような細胞膜上に存在する抗原の検出を可能にする。簡単に記載すると、CD24特異的抗体はフルオロフォアに連結され、検出は、それぞれの細胞が光ビームを通過する際にそれぞれの細胞から放出される光の波長を読み取る細胞分取装置によって行われる。この方法は2つ以上の抗体を同時に用いることができる。
CD24の存在および/またはレベルはまた、ELISAを使用して決定されることができる。簡単に記載すると、CD24抗原を含有するサンプルは、マイクロタイタープレートのウエルのような表面に固定される。酵素に結合された抗原特異的抗体(CD24抗体)が適用され、抗原に結合される。抗体の存在は次いで、抗体に結合された酵素を利用する比色反応によって検出および定量される。この方法において一般に用いられる酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。十分に校正され、かつ、反応の直線範囲に含まれるならば、サンプルに存在する基質の量は、生じた色の量に比例する。量的精度を改善するために、基質標準物が一般に用いられる。
CD24の存在および/またはレベルはまた、放射性免疫測定(RIA)を使用して決定されることができる。1つの方式では、この方法は、特異的抗体およびアガロースビーズのような沈降性キャリア上に固定化された放射能標識された抗体結合タンパク質(例えば、I125で標識されたプロテインA)による所望の抗原(CD24)の沈降を含む。沈降されたペレットのカウント数は抗原の量に比例する。
RIAの代替方式では、標識された抗原および標識されていない抗体結合タンパク質が用いられる。未知量の抗原を含有するサンプルが様々な量で加えられる。標識された抗原からの沈降されたカウント数の減少は、添加されたサンプルにおける抗原の量に比例する。
CD24の存在および/またはレベルはまた、分子量に基づく方法を使用して決定されることができる。免疫複合体は、その成分よりも大きい分子量を示すので、分子量におけるそのような変化を検出することができる方法もまた用いることができる。例えば、免疫複合体は、ゲル遅延アッセイによって検出されることができる。簡単に記載すると、非変性アクリルアミドゲルは、サンプルを負荷される。タンパク質生成物のサイズ(分子量)におけるその成分と比較したシフトが、免疫複合体の存在の指標である。高分子量へのそのようなシフトは、非特異的なタンパク質染色(例えば、銀染色またはクーマシーブルー染色)を使用して調べられることができる。
脱け落ちた細胞またはそのフラグメント(泡状突起中の細胞としても示される)はまたmRNA分子を含むかもしれないので、生物学的サンプルにおける循環CD24の検出はまた、CD24の過剰発現を検出することができるmRNA検出方法を使用して行われることができることが理解される。遺伝子のDNA増幅の場合、循環CD24の検出はまた、生物学的サンプルにおいてDNAレベルで行われることができる。
RNAまたはDNAの検出方法は、配列番号1またはその一部によって記載されるCD24転写物のようなCD24核酸配列にハイブリダイズすることができる単離されたポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチドプローブ、オリゴヌクレオチドプローブ/プライマー)を使用して行われることができる。そのようなポリヌクレオチドは、任意の大きさ、例えば短いポリヌクレオチド(例えば、15〜200塩基のもの)、100〜2000塩基の中間のポリヌクレオチド、および2000塩基より多い長いポリヌクレオチドであることができる。
本発明によって使用される単離されたポリヌクレオチドプローブは、いかなる直接的または間接的に標識された、RNA分子(例えば、RNAオリゴヌクレオチド(例えば、17〜50塩基のもの)、生体外で転写されたRNA分子)、DNA分子(例えば、15〜50塩基のオリゴヌクレオチド、cDNA分子、ゲノム分子)および/または本発明のCD24 RNA転写物に特異的なそれらの類似体(例えば、ペプチド核酸(PNA))であることもできる。
本発明の教示によって設計されるオリゴヌクレオチドは、酵素合成または固相合成のような当該分野で公知のいかなるオリゴヌクレオチド合成方法によっても生成されることができる。固相合成を行うための装置および試薬は、例えば、Applied Biosystemsから市販されている。そのような合成のための他のいかなる方法もまた利用されることができる;オリゴヌクレオチドの実際の合成は、十分に当業者の能力の範囲内であり、例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻 Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley and Sons,バルチモア、メリーランド(1989);Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley & Sons,ニューヨーク(1988)および「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984)に詳しく記載されるような確立された方法論によって成し遂げることができ、固相化学(例えば、シアノエチルホスホルアミダイト)、それに続く脱保護、脱塩および精製(例えば、自動化されたトリチル−オン法またはHPLCによる精製)を利用して成し遂げることができる。
本発明によって使用される単離されたポリヌクレオチドは、タグまたは標識分子を使用して直接的にかまたは間接的にかのいずれかで標識されることができる。そのような標識は、例えば、蛍光分子(例えば、フルオレセインまたはTexas Red)、放射性分子(例えば、32P−γ−ATPまたは32P−α−ATP)および発色性基質(例えば、(ABCAM,ケンブリッジ,MA)から市販されているFast Red、BCIP/INT)であることができる。直接的な標識付けは、(例えば、固相合成を使用して)標識分子をポリヌクレオチドに共有結合することによって、または(例えば、生体外転写反応またはランダムに起こる標識付けを使用して)重合化によって組み込むことによって達成されることができる。間接的な標識付けは、非標識タグ分子(例えば、Digoxigeninまたはビオチン)をポリヌクレオチドへ共有結合するか、または非標識タグ分子をポリヌクレオチドへ組み込み、続いて、ポリヌクレオチドを、非標識のタグを特異的に認識することができる標識された分子(例えば、抗Digoxigenin抗体またはストレプトアビジン)に供することによって達成されることができる。
上に記載されるポリヌクレオチドは、以下のような種々のRNA検出方法で利用されることができる:ノーザンブロット分析、逆転写PCR(RT−PCR)(例えば、Light CyclerTM(Roche)を使用する半定量的RT−PCT、定量的RT−PCR)、RNAのインシトゥハイブリダイゼーション(RNA−ISH)、インシトゥRT−PCR染色(例えば、Nuovo GJら、1993、「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅されたC型肝炎cDNAの細胞内局在」Am J Surg Pathol.17:683−90およびKomminoth Pら、1994,「保存用肝生検におけるC型肝炎ウイルス検出方法の評価。組織学、免疫組織化学、インシトゥハイブリダイゼーション、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)およびインシトゥRT−PCRの比較」Pathol Res Pract.,190:1017−25に記載されるようなもの)、および(例えば、Affymetrix マイクロアレイ(Affymetrix(登録商標),サンタクララ,CA)を使用する)オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析。
本発明と共に使用されることができるDNA検出方法は、限定されないが、サザンブロット分析、PCR、定量的PCR、および制限フラグメント長多型(RFLP)を含む。
本明細書において使用される表現「所定の閾値」は、サンプル中の循環CD24の既知のレベルを示す。そのようなレベルは、正常なサンプル(例えば、健康な対象から得られたサンプル)を、CRCのような癌を発症していることが知られている対象に由来するサンプルと比べることによって実験的に決定されることができる(例えば、表1および以下の実施例の節の実施例2を参照のこと)。あるいは、そのようなレベルは、科学文献から得られることができる。
従って、所定の閾値より高い、生物学的サンプルにおけるCD24の存在および/またはレベルは、癌または前悪性の病変の指標である。
癌または前悪性の病変の存在は、さらなるアッセイを使用してさらに確認されることができることが理解される。例えば、対象の糞便において検出されるCD24のレベルが所定の閾値より高い場合、結腸内視鏡検査の後の組織学的な評価(CD24の免疫染色を含む)のようなさらなるアッセイが(腺腫が存在する場合)同定された腺腫に対して行なわれることができる。
従って、本発明の教示は、初めて、血清、尿および糞便のような生物学的サンプルを使用して胃腸管の前悪性または悪性の病変を診断する信頼性の高い(80%より高い精度)、非侵襲的な方法を提供する。
本発明の教示は、癌治療の有効性または疾患の進行/緩解を監視するためにさらに使用されることができることが理解される。図2bおよび以下の実施例の節の実施例4において示されるように、糞便におけるCD24のレベルは、CRCに罹患している対象において放射線療法後に、おそらく対象における癌細胞の有意な低減の結果として、減少した。
従って、本発明の別の態様によれば、癌治療の有効性を監視する方法が提供される。この方法は、癌治療後の対象の生物学サンプルにおける循環CD24のレベルを決定することによって行なわれ、癌治療後の循環CD24のレベルにおける所定の閾値からの低下は癌細胞の低減の指標であり、それによって癌治療の有効性を監視する。
本発明のこの態様の方法によって有効性が監視される癌治療は、放射線療法、化学療法(例えば、CHOP、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、アザチオプリン、メルカプトプリン、ビンカアルカロイド、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩、テニポシド、およびダクチノマイシン)、抗体療法(例えば、トラスツズマブ(Herceptin)およびリツキシマブ(Rituxan))または上記のいずれかの組み合わせであることができる。
従って、循環CD24のレベルにおける所定の閾値からの低下は、癌治療が有効であることの指標である。他方では、低下がない場合、または処置後に循環CD24のレベルにおける所定の閾値からの増加がある場合、その癌治療は処置される対象から癌細胞を除くこと(例えば、癌細胞を死なせること、癌細胞を激減させること)においては有効でなく、追加のおよび/または代替的な治療(例えば、処置計画)が使用されることができる。
所定の閾値は、治療の結果が判明している一部の対象において決定されることができることが理解される。
好ましくは、癌治療後の循環CD24のレベルにおける所定の閾値からの低下は、少なくとも10倍、より好ましくは15倍、好ましくは20倍、好ましくは50倍、または少なくとも100倍(例えば、少なくとも1000倍)である。
本発明をさらに実施に移しているとき、本発明者らは、CD24遺伝子における多型が胃腸癌に対する対象の素因についてのマーカーとして使用されることができることを発見した。
表2、図4において示され、以下の実施例の節の実施例3において記載されるように、CD24タンパク質(配列番号2)の57位にVal多型を担持する個体は、胃腸癌を発症する危険の素因を増大した。さらに、以下の実施例の節の実施例3においてさらに例示されるように、CD24タンパク質(配列番号2)の57位にVal多型を担持する個体、ならびにAPC(配列番号8)の1317Qおよび/または1307K多型を担持する個体は、胃腸癌を発症する危険の素因を増大した。これらの結果は、胃腸癌の素因を決定するための、CD24タンパク質の57位におけるVal/Ala多型と、APCタンパク質のE1317Qおよび/またはI1307Kの組合せの使用を示唆する。
従って、本発明の別の態様によって、対象が胃腸癌の素因をもっているかどうかを決定する方法が提供される。この方法は、対象のCD24核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型の同型接合形態または異型接合形態での存在または非存在を決定することによって行われ、それによって対象が胃腸癌の素因をもっているかどうかを決定する。
本明細書において使用される用語「素因をもつ」は、胃腸癌に関して使用される場合、素因をもたない対象よりも胃腸癌を発症しやすい対象を示す。
用語「同型接合」または「異型接合」はそれぞれ、特定の多型の2つの同一の対立遺伝子または2つの異なる対立遺伝子を示す。
用語「多型」は、より稀な(または最も稀な)形態が反復突然変異のみによっては維持されることができない頻度での特定の核酸の2つ以上の遺伝的に決定された異型(対立遺伝子)の発生を示す。単一ヌクレオチド多型(SNP)は、同じ遺伝子座での関連する対立遺伝子間の単一塩基の違いから生じる。多型の非限定的な例は、CD24ポリペプチド(配列番号2;GenBankアクセッション番号NP_037362.1)の57位にAla/Valの非同義的ミスセンス変異を生じるCD24コード配列(配列番号1;GenBankアクセッション番号NM_013230.2)の280位におけるシトシンヌクレオチドまたはチミジンヌクレオチドの存在である。
本明細書において遺伝子型に関して使用される用語「非存在」は、特定の遺伝子型決定試験の否定的な結果を記載する。例えば、もし遺伝子型決定試験が配列番号1の280位にチミジンヌクレオチドを含有する対立遺伝子の同定に適しており、そして試験が行われる対象が配列番号1の280位にシトシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子について同型接合であるなら、試験結果は「遺伝子型の非存在」となるだろう。
好ましくは、CD24核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、配列番号1に記載のポリヌクレオチドの280位にチミジンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
以下の実施例の節の実施例3においてさらに示されるように、本発明者らは、(CD24のVal−57多型をコードする)配列番号1に記載のポリヌクレオチドの280位にチミジンヌクレオチドを含有する対立遺伝子、および(APCのLys(K)−1307多型をコードする)配列番号7に記載のポリヌクレオチドの3977位にアデノシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子および/または(APCのGln(Q)−1317多型をコードする)配列番号7に記載のポリヌクレオチドの4006位にシトシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子の両方を担持する個体が、胃腸癌に対する素因を増大することを発見した(p値は、Val−57とLys(K)−1307について0.024、Val−57とGln(Q)−1317について0.028である)。
従って、本発明の好ましい実施形態によって、対象が胃腸癌の素因をもっているかどうか決定する方法は、対象のAPC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型の同型接合形態または異型接合形態での存在または非存在を決定することをさらに含む。
好ましくは、APC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、(配列番号8に記載のAPCポリペプチドのリジン−1307多型をコードする)配列番号7に記載のポリヌクレオチドの3977位にアデノシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
好ましくは、APC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、(配列番号8に記載のポリペプチドのグルタミン−1317多型をコードする)配列番号7に記載のポリヌクレオチドの4006位にシトシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
好ましくは、APC核酸配列における少なくとも1つの癌関連遺伝子型は、配列番号7に記載のポリヌクレオチドの3977位にアデノシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子および配列番号7に記載のポリヌクレオチドの4006位にシトシンヌクレオチドを含有する対立遺伝子である。
胃腸癌に対する素因は、遺伝子型相対危険(GRR)値を生成して使用することによって定量化されることができる。GRRは、特定の遺伝子型を有する個体が疾患を発症する増大された可能性である。従って、保護遺伝子型G0に関して、危険遺伝子型GのGRRは、遺伝子型Gを担持する個体が疾患を発症する危険と遺伝子型G0を担持する個体が疾患(例えば、CRC)を発症する危険との間の比率である。本明細書において使用されるGRRは、ケースおよびコントロールにおけるG対G0適正なオッズ比(OR)の観点から表される。そのうえ、ハプロタイプのGRRの計算は、同型接合個体のGRRが異型接合個体のGRRの二乗である乗法モデルに基づく。さらに詳細については、RischおよびMerikangas、1996(「複雑なヒト疾患の遺伝学研究の未来」Science 273:1516−1517)を参照のこと。
いったん計算されると、GRRは、CD24核酸配列および/またはAPC核酸配列において特定の癌関連遺伝子型を有する個体の、胃腸癌を発症する危険の増大された素因を反映することができる。
従って、本発明は、CD24およびAPCの遺伝子および/またはタンパク質において特定の遺伝子型を検出することによって、胃腸癌に対する対照の素因を予測する方法を提供する。そのような遺伝子型はDNAレベルで、ならびに特定のタンパク質多型を検出することができる抗体を用いてタンパク質レベルで検出されることができることが理解される。
DNAサンプルまたはタンパク質サンプルは、対象の細胞または細胞含有物のいかなる供給源からも得ることができ、そのような供給源は、限定されないが、末梢血液細胞(注射器を使用して得られる;例えば、白血球)、皮膚細胞(皮膚生検から得られる)、口腔上皮細胞(口腔洗浄から得られる)、脳脊髄液、尿、リンパ液、呼吸器、腸管および尿生殖路の種々の外分泌物、涙、唾液、および乳汁、ならびに悪性組織、羊水、および絨毛膜、組織切片(例えば、凍結切片またはパラフィン包埋切片)などを含む。
いったんサンプルが得られると、DNAは好ましくは、当該分野で周知の方法を使用して抽出され、そのような方法は、組織を刻むこと、細胞溶解、タンパク質抽出、および2〜3容量部の100%エタノールを使用するDNA析出、70%エタノールでのすすぎ、ペレット化、乾燥、および水または任意の他の好適な緩衝液(例えば、Tris−EDTA)における再懸濁を含む。好ましくは、そのような手順の後に、例えば、260nmでサンプルの光学濃度(OD)を測定することによってDNAの濃度が決定される(ここで、1単位OD=50μg/ml DNA)。あるいは、DNAは、タンパク質消化酵素(例えば、プロテイナーゼK)を添加した後、変性(例えば、5〜10分間の95℃での煮沸)によって得られることができる。さらに代替的には、DNAは、既に記載されるように(Arber N,Shapira Iら、2000,「ヒトの胃腸管腫瘍におけるc−K−ras変異の活性化」Gastroenterology,118:1045−50)、組織切片(例えば、保存用のパラフィン包埋切片)から単離されることができる。
好ましくは、DNAサンプルは、末梢血液サンプルから得られる。血液サンプルからDNAを抽出する方法は当該分野において周知である。
いったん得られると、DNAサンプルは好ましくは、本発明のCD24および/またはAPC核酸配列における少なくとも1つ以上の癌関連遺伝子型の存在または非存在について特徴付けられる。
本発明のSNPは、配列改変を同定するのに好適な種々の方法を使用して同定されることができる。1つの選択肢は、PCR反応産物の全遺伝子配列を決定することである。あるいは、核酸の所定のセグメントは、いくつかの他のレベルで特徴付けられることができる。最も低い分解能では、分子の大きさが、電気泳動によって同じゲル上で泳動させた既知の標準物との比較によって決定されることができる。分子のより詳細な像は、電気泳動の前に制限酵素の組合せで切断し、順序づけられたマップの構築を可能にすることによって得られることができる。フラグメント内の特定の配列の存在は、標識されたプローブのハイブリダイゼーションによって検出されることができるか、または正確なヌクレオチド配列は、部分的な化学消化によってか、または連鎖停止ヌクレオチドアナログの存在下でのプライマー伸長によって決定されることができる。
多くの遺伝子型決定方法が目的の配列改変を担持するDNA領域の増幅を必要とするので、DNAサンプルは好ましくは、配列改変を決定する前に増幅される。
いずれの場合においても、CD24遺伝子またはAPC遺伝子における配列改変(例えば、SNP)の存在は、本明細書において上で記載されるような、CD24遺伝子またはAPC遺伝子における核酸配列の改変と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの使用を典型的に伴う方法を使用して決定される。
用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの模倣体の一本鎖または二本鎖のオリゴマーまたはポリマーを示す。この用語は、天然に存在する塩基、糖および共有結合性ヌクレオチド間連結(例えば、バックボーン)から構成されるオリゴヌクレオチド、ならびに、天然に存在するそれぞれの部分と同様に機能する、天然に存在しない部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。
本発明の教示に従って設計されるオリゴヌクレオチドは、酵素的合成または固相合成のような、この分野で知られている任意のオリゴヌクレオチド合成方法に従って作製されることができる。固相合成を実行するための設備および試薬が、例えば、Applied Biosystemsから市販されている。そのような合成のための任意の他の手段もまた用いることができる:オリゴヌクレオチドの実際の合成は十分に当業者の能力の範囲内であり、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」第I巻〜第III巻 Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、バルチモア、メリーランド(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley&Sons、ニューヨーク(1988)および「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984)に詳しく記載されるような確立された方法論によって成し遂げることができ、固相化学(例えば、シアノエチルホスホルアミダイト)、それに続く脱保護、脱塩および精製(例えば、自動化されたトリチル−オン法またはHPLCによる精製)を利用して成し遂げることができる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、本明細書において上に記載される配列改変と特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも17塩基、少なくとも18塩基、少なくとも19塩基、少なくとも20塩基、少なくとも22塩基、少なくとも25塩基、少なくとも30塩基または少なくとも40塩基のものである。
本発明のオリゴヌクレオチドは、プリン塩基およびピリミジン塩基からなり、3’→5’ホスホジエステル結合中に結合された複素環式ヌクレオシドを含むことができる。
好ましくは、使用されるオリゴヌクレオチドは、当該分野において知られているように、バックボーン、ヌクレオシド間結合、または塩基のいずれかにおいて変化させられるオリゴヌクレオチドである。
以下は、上で記載されたSNPの1つまたは複数を同定するために使用されることができるSNP検出方法の非限定的な列挙である。
制限フラグメント長多型(RFLP):この方法は、RFLPの生成または破壊をもたらす、制限酵素のための認識部位を変化させる単一ヌクレオチド(SNPヌクレオチド)での変化を使用する。DNAヘテロ二重鎖における単一ヌクレオチドのミスマッチはまた、いくつかの化学物質によって認識および切断され、「ミスマッチ化学的切断」(MCC)と一般に呼ばれる、単一塩基置換を検出する代わりの方法を提供する(Gogos,J.A.ら(1990)「テトラアルキルアンモニウム塩の存在下の、過マンガン酸カリウムおよびヒドロキシルアミンによるチミン残基およびシトシン残基の単一塩基ミスマッチの検出」Nucl Acids Res 18:6807−6814)。しかしながら、この方法は、四酸化オスミウムおよびピペリジン(臨床研究室での使用には適さない2つの非常に有害な化学物質)の使用を必要とする。
配列決定分析−単離されたDNAは、色素−ターミネーター(標識されていないプライマーおよび標識されたジデオキシヌクレオチド)または色素−プライマー(標識されたプライマーおよび標識されていないジデオキシヌクレオチド)サイクルの配列決定プロトコルを使用して、自動化されたジデオキシターミネーター配列決定反応に供される。色素−ターミネーター反応のために、PCR反応は、標識されていないPCRプライマーを使用して行われ、その後に、プライマー、デオキシヌクレオチド、および標識されたジデオキシヌクレオチド混合物のうちの1つの存在下での配列決定反応が行われる。色素−プライマー反応のために、ユニバーサルプライマーまたはリバースプライマー(各方向において1つ)に結合体化されたPCRプライマーを使用してPCR反応が行われ、その後に、各々がユニバーサル配列またはリバース配列に特異的な標識されたプライマーおよび対応する標識されていないジデオキシヌクレオチドを含有する4つの別個の混合物(A、G、CおよびTヌクレオチドに対応する)の存在下での配列決定反応が行われる。
マイクロ配列決定分析−この分析は、本明細書において上記で言及されるように、増幅反応(PCR)によって得られることができるCD24遺伝子またはAPC遺伝子の特定の領域でマイクロ配列決定反応を実施することによって行われることができる。ゲノムDNA増幅産物またはcDNA増幅産物は次いで、(各々のddNTPに対して特異的な蛍光発光を使用する)ddNTP、および目的の改変部位のすぐ上流にハイブリダイズすることができる適当なオリゴヌクレオチドマイクロ配列決定用プライマーを使用して、自動化されたマイクロ配列決定反応に供される。いったん相補的な蛍光ジデオキシヌクレオチドアナログを使用するDNAポリメラーゼによって(例えば、熱サイクルによって)3’端で特異的に伸長されると、プライマーは、組み込まれていない蛍光ddNTPを除去するために沈降される。蛍光ddNTPが中に組み込まれた反応生成物は、次いで、組み込まれた塩基の正体を決定するために配列決定機(例えば、ABI377)上で電気泳動によって分析され、それによって本発明のCD24遺伝子またはAPC遺伝子における配列改変を同定する。
伸長されたプライマーが、MALDI−TOF質量分析法によっても分析できることが理解される。この場合、改変部位の塩基は、マイクロ配列決定用プライマー上に加えられた質量によって同定される(Haff,L.A.およびSmirnov,I.P.(1997)「質量タグで標識されたプライマーによるPCR産物の多重遺伝子型決定」Nucl Acids Res 25(18),3749−3750を参照のこと)。
最近開発された固相マイクロ配列決定反応は、本明細書において上に記載されるマイクロ配列決定方法に代わるものとして使用されることができる。固相マイクロ配列決定反応は、オリゴヌクレオチドマイクロ配列決定用プライマー、または目的のDNAフラグメントのPCR増幅産物を利用し、これらは固定されている。固定化は、例えば、ビオチニル化DNAと、ストレプトアビジンで覆われたマイクロタイターウエルまたはアビジンで覆われたポリスチレン粒子との間の相互作用によって実行されることができる。
固相マイクロ配列決定反応において、組み込まれたddNTPは、放射能標識されるか(Syvanen,A.C.(1994)「固相ミニ配列決定法によるヒト遺伝子における点変異の検出」Clin Chim Acta 226,225−236)またはフルオレセインに連結されるか(Livak,K.J.およびHainer,J.W.(1994)「アポリポタンパク質E遺伝子型の決定および希少な対立遺伝子の発見のためのマイクロタイタープレートアッセイ」Hum Mutat 3(4),379−385)のいずれかであることができる。放射能標識されたddNTPの検出は、シンチレーションに基づく技術によって達成されることができる。フルオロセインに連結したddNTPの検出は、アルカリホスファターゼと結合体化した抗フルオロセイン抗体の結合と、その後の発色性基質(例えば、p−ニトロフェニルホスフェート)でのインキュベーションに基づく。
他のリポーター検出結合体は、ジニトロフェニル(DNP)に連結されたddNTPおよび抗DNPアルカリホスファターゼの結合体(Harju,L.ら(1993)「α−1−抗トリプトシンZ変異の検出のための比色固相ミニ配列決定アッセイ」Clin Chem 39(2),2282−2287を参照のこと)、およびビオチニル化ddNTPと基質としてo−フェニレンジアミンを有する西洋ワサビペルオキシダーゼに結合体化されたストレプトアビジンを含む(WO 92/15712を参照のこと)。
アルカリホスファターゼと結合体化した抗フルオレセイン抗体でフルオレセインに連結されたddNTPに基づく診断キットは、GamidaGen Ltd(PRONTO)から市販されている。
マイクロ配列決定プロトコルの他の変更は、Nyren,P.B.ら(1993)「酵素的照度測定無機ピロリン酸検出アッセイによる固相DNAミニ配列決定」Anal Biochem 208(1),171−175;およびPastinen,T.ら(1997)「ミニ配列決定:DNA分析およびオリゴヌクレオチドアレイでの診断のための特異的ツール」Genome Research 7,606−614によって記載される。
ポリメラーゼおよびリガーゼに基づくミスマッチ検出アッセイ−オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)は、標的分子の一本鎖の隣接する配列にハイブリダイズすることができるように設計される2つのオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドのうちの一方はビオチニル化され、他方は検出可能に標識される。もし標的分子において正確な相補配列が見つけられたなら、オリゴヌクレオチドは、それらの末端が隣接し、捕捉かつ検出されることができるライゲーション基質を作るように標的にハイブリダイズするだろう。OLAは、単一ヌクレオチド多型を検出することができ、Nickerson,J.A.ら(1990)「ELISAに基づくオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイを使用する自動化DNA診断」Proc Natl Acad Sci U.S.A.87,8923−8927によって記載されるように、PCRと有利に組み合わせられることができる。この方法において、PCRは、標的DNAの指数関数的な増幅を達成するために使用され、それは次いで、OLAを使用して検出される。
単一ヌクレオチド多型の検出のために特に好適な他の増幅方法は、LCR(リガーゼ連鎖反応)、およびGap LCR(GLCR)を含む。LCRは、特定の標的を指数関数的に増幅するための2対のプローブを使用する。オリゴヌクレオチドの各対の配列は、その対が標的の同じ鎖の隣接する配列にハイブリダイズすることを可能にするように選択される。このようなハイブリダイゼーションは、テンプレート依存性リガーゼのための基質を形成する。本発明に従って、LCRは、2対立遺伝子マーカー部位の同じ鎖の近位配列および遠位配列を有するオリゴヌクレオチドで行われることができる。1つの実施形態において、いずれのオリゴヌクレオチドも2対立遺伝子マーカー部位を含むように設計される。そのような実施形態において、反応条件は、標的分子がオリゴヌクレオチド上の2対立遺伝子マーカーに相補的な特異的ヌクレオチドを含有するかまたは欠いているかのいずれかの場合にのみ、オリゴヌクレオチドがともにライゲーションされることができるように選択される。代替的な実施形態において、WO 90/01069に記載されるように、オリゴヌクレオチドは2対立遺伝子マーカーを含まず、従って、それらが標的分子にハイブリダイズするときに「ギャップ」が作られる。このギャップは、次いで、(DNAポリメラーゼによって媒介される)相補的dNTPで、またはオリゴヌクレオチドのさらなる対によって「満たされる」。従って、各サイクルの終わりに、各々の一本鎖は、次の増幅サイクル時に標的として作用することができる相補体を有し、所望の配列の指数関数的な対立遺伝子特異的増幅が得られる。
リガーゼ/ポリメラーゼ媒介Genetic Bit AnalysisTM−これは、核酸分子において予め選択された部位でヌクレオチドの正体を決定するための別の方法である(WO 95/21271)。この方法は、予め選択された部位に存在するヌクレオチドに相補的なヌクレオシド三リン酸の、プライマー分子の末端上への組み込み、および第2のオリゴヌクレオチドへのそれらの続くライゲーションを含む。反応は、溶液中の検出によって、または反応の固相に結合された特定の標識を検出することによって監視される。
ハイブリダイゼーションアッセイ方法−単一塩基の改変の検出を可能にするハイブリダイゼーションに基づくアッセイは、オリゴヌクレオチドの使用に依存し、そのようなオリゴヌクレオチドは、10、15、20、または30〜100ヌクレオチド長、好ましくは10〜50のヌクレオチド長、より好ましくは40〜50ヌクレオチド長であることができる。典型的には、オリゴヌクレオチドは、CD24遺伝子またはAPC遺伝子の多型部位に相補的な中心ヌクレオチド、および多型部位の各々の端をつなぐCD24遺伝子またはAPC遺伝子のヌクレオチド配列に実質的に相補的な中心ヌクレオチドの各々の端をつなぐフランキングヌクレオチド配列を含む。配列改変は、本発明のオリゴヌクレオチドのストリンジェントなハイブリダイゼーション反応下でのテンプレート配列へのハイブリダイゼーションによって検出されることができる。
例として、短い核酸(200bpより短い長さ、例えば、17〜40bp長)のハイブリダイゼーションは、所望のストリンジェンシーに依存して、以下のハイブリダイゼーションプロトコルのいずれかによって行うことができる:(i)6×SSCおよび1%SDSまたは3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)、0.5%SDS、100μg/ml変性サケ***DNA、および0.1%脱脂粉乳のハイブリダイゼーション溶液、Tmを1〜1.5℃下回るハイブリダイゼーション温度、3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)および0.5% SDSのTmを1〜1.5℃下回る温度の最終洗浄溶液;(ii)6×SSCおよび0.1% SDSまたは3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)、0.5% SDS、100μg/ml変性サケ***DNAおよび0.1%脱脂粉乳のハイブリダイゼーション溶液、Tmを2〜2.5℃下回るハイブリダイゼーション温度、3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)および0.5% SDSのTmを1〜1.5℃下回る温度の洗浄溶液、および22℃の6×SSCの最終洗浄溶液;ならびに(iii)6×SSCおよび1% SDSまたは3M TMACI、0.01Mリン酸ナトリウム(pH6.8)、1mM EDTA(pH7.6)、0.5%SDS,100μg/ml変性サケ***DNA、および0.1%脱脂粉乳のハイブリダイゼーション溶液、ハイブリダイゼーション温度。
ハイブリッド二本鎖の検出は、多くの方法によって実行されることができる。典型的には、ハイブリダイゼーション二本鎖は、ハイブリダイズしていない核酸から分離され、次いで二本鎖に結合された標識が検出される。そのような標識は、放射能標識、蛍光標識、生物学的標識、酵素タグ、または当該分野において標準的に使用される標識を示す。標識は、生物学的サンプル(標的)に由来するオリゴヌクレオチドプローブまたは核酸のいずれかと結合体化されることができる。例えば、本発明のオリゴヌクレオチドは、合成後、ビオチニル化dNTPまたはrNTPを組み込むことによって、または類似の手段(例えば、ビオチンのソラレン誘導体をRNAに光架橋すること)によって、その後の標識されたストレプトアビジン(例えば、フィコエリトリン結合体化ストレプトアビジン)またはその等価物の添加によって標識されることができる。あるいは、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプローブが使用されるとき、フルオレセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン(Perkin Elmer Cetus)、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、FluorX(Amersham)および/または他のもの(例えば、Kricka,J.D.(1992)、「Nonisotopic DNA Probe Techniques」Academic Press,San Diegoを参照のこと)がオリゴヌクレオチドに結合されることができる。
伝統的なハイブリダイゼーションアッセイは、PCR分析、RT−PCR分析、RNase保護分析、インシトゥハイブリダイゼーション分析、プライマー伸長分析、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析、およびドットブロット分析を含む。
当業者は、洗浄工程が、過剰な標的DNAまたはプローブ、ならびに結合していない結合体を洗い流すために使用されることができることを理解するだろう。さらに、標準的な異種アッセイ形式は、オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブ上に存在する標識を使用するハイブリッドの検出のために好適である。
2つの最近開発されたアッセイは、分離または洗浄の必要が無く、ハイブリダイゼーションに基づく対立遺伝子の識別を可能にする(Landegren,U.ら(1998)「少量の遺伝情報の読み取り:単一ヌクレオチド多型分析のための方法」Genome Res 8(8),769−776を参照のこと)。TaqMan(登録商標)アッセイは、Taq DNAポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性をうまく利用して、累積する増幅産物に特異的にアニーリングしたDNAプローブを消化する。TaqManプローブは、蛍光エネルギー移行によって相互作用する供与体−受容体色素対で標識される。増幅時に進むポリメラーゼによるTaqManプローブのC1切断は、クエンチする受容体色素から供与体色素を分離し、供与体の蛍光を大いに増大させる。2つの対立遺伝子の変異体を検出するために必要な全ての試薬は、反応の開始時に集められることができ、結果は実時間で監視される(Livak,K.J.およびHainer,J.W.(1994)「アポリポタンパク質E遺伝子型の決定および希少対立遺伝子の発見のためのマイクロタイタープレートアッセイ」Hum Mutat 3(4),379−385を参照のこと)。代替的な同種ハイブリダイゼーションに基づく手順において、分子ビーコンは、対立遺伝子を識別するために使用される。分子ビーコンは、ヘアピン形のオリゴヌクレオチドプローブであり、それは同種溶液における特定の核酸の存在を報告する。分子ビーコンがそれらの標的に結合したとき、分子ビーコンは、内部でクエンチされたフルオロフォアの蛍光を回復させる構造の再編成を経験する(Tyagi,S.ら(1998)「対立遺伝子識別のための多色分子ビーコン」Nat Biotechnol 16(1),49−53)。
ハイブリダイゼーションアッセイの精度を改善するために、種々のコントロールが有用に利用されることができることが理解される。例えば、サンプルは、誤ったハイブリダイゼーションを評価するために、不適切なプローブにハイブリダイゼーションさせられ、ハイブリダイゼーションの前にRNase Aで処理されることができる。
米国特許第5451503号は、テンプレートDNAまたはRNAにおいてSNPを検出するために利用されることができるオリゴヌクレオチド構造のいくつかの例を提供する。
オリゴヌクレオチドアレイに対するハイブリダイゼーション−チップ/アレイ技術は、既に多数のケースにおいて成功裏に適用された。例えば、変異のスクリーニングは、S.セレビシアエ変異株におけるBRCA1遺伝子およびHIV−1ウイルスのプロテアーゼ遺伝子において行なわれた(Hacia,JGら(1996)「高密度オリゴヌクレオチドアレイおよび二色蛍光分析を用いるBRCA1における異型接合変異の検出」Nat Genet 14(4),441−447;Shoemaker,D.D.ら(1996)「高度に類似している分子バーコード戦略を用いる酵母の欠失変異体の定量的表現形分析」Nat Genet 14(4),450−456;およびKozal,M.J.ら(1996)「高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いてHIV−1クレードBプロテアーゼ遺伝子において観察される広範囲の多型」Nat Med 2(7),753−759を参照のこと)。
分析される候補領域を含む核酸サンプルは、単離され、増幅され、そしてリポーター基で標識される。このリポーター基は、フィコエリトリンのような蛍光基であることができる。標識された核酸は、次いで、Fluidics Stationを用いてチップ上に固定されたプローブでインキュベートされる。例えば、Manzらは、シリコン基板およびガラス基板における、流体工学装置と特定のマイクロキャピラリー装置の組み立てを記載する(Manz,A.ら(1993)「分離システムの小型化のための平面チップ技術」Adv in Chromatogr 33,1−66)。
いったん反応が完了すると、チップはスキャナ中に挿入され、ハイブリダイゼーションのパターンが検出される。ハイブリダイゼーションのデータは、核酸中に既に組み込まれ、今はチップに付着されたプローブに結合されたリポーター基から放射されるシグナルから集められる。核酸サンプルの配列に完全にマッチするプローブは一般的に、ミスマッチを有するプローブよりも強いシグナルを生成する。チップ上に固定化される各々のプローブの配列および位置は既知であるので、所定のプローブにハイブリダイズした核酸の正体は決定されることができる。
単一ヌクレオチド多型分析のために、4個のオリゴヌクレオチドプローブ(各塩基型について1個)のセット、好ましくは2個のオリゴヌクレオチドプローブ(2対立遺伝子マーカーの各塩基型について1個)のセットは一般的に、核酸サンプルにおいて見出される候補領域の一部分の各位置にわたり、多型塩基の正体においてのみ異なるように設計される。特定の位置での各々の一連のプローブに対するハイブリダイゼーションの相対的な強度は、プローブの多型塩基に対応する塩基の同定を可能にする。
直接電場コントロールの使用が単一塩基変異の決定を改善することが理解される(Nanogen)。正の電場は、負に荷電された核酸の移動速度を増大し、ハイブリダイゼーション速度の10倍の増大を生じる。この技術を使用すると、単一塩基対ミスマッチは、15秒未満で検出される(Sosnowski,R.G.ら(1997)「直接電場コントロールによるDNAハイブリッドにおける単一塩基ミスマッチの迅速な決定」Proc Natl Acad Sci USA 94(4),1119−1123を参照のこと)。
統合システム−配列改変を分析するために使用されることができる別の技術は、多成分統合システムを含み、それは単一機能装置においてPCRおよびキャピラリー電気泳動反応のようなプロセスを小型化かつ区分化する。このような技術の一例は、米国特許第5589136号に開示されており、それはチップにおけるPCR増幅とキャピラリー電気泳動の統合を記載する。
統合システムは好ましくは、マイクロ流体工学システムと共に使用される。これらのシステムは、マイクロチップ上に含まれるガラス、シリコン、石英、またはプラスチックのウエハ上に設計されるマイクロチャネルのパターンを含む。サンプルの移動は、部品を動かすことなく機能的微細弁およびポンプを作成するために、電気的に、電気−浸透圧的に、またはマイクロチップの異なる領域を横切って適用される静水力によって制御される。電圧を変えることは、微細に機械加工されたチャネル間の交差部分での流体の流れを制御し、マイクロチップの異なる区域を横切ってポンプ輸送するための流体の流速を変える。
配列の改変を同定するとき、マイクロ流体工学システムは、核酸増幅、マイクロ配列決定、キャピラリー電気泳動、およびレーザー誘導蛍光検出のような検出方法を統合することができる。最初の工程において。DNAサンプルは、好ましくはPCRによって増幅される。増幅産物は次いで、(各ddNTPについて特定の蛍光を有する)ddNTP、および標的多型塩基のすぐ上流にハイブリダイズする適切なオリゴヌクレオチドマイクロ配列決定用プライマーを使用する自動化マイクロ配列決定反応に供される。いったん3’端での伸長が完了すると、プライマーは、キャピラリー電気泳動によって、組み込まれていない蛍光ddNTPから分離される。キャピラリー電気泳動において使用される分離媒体は、例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、またはデキストランであることができる。単一ヌクレオチドプライマー伸長産物において組み込まれたddNTPは、蛍光検出によって同定される。このマイクロチップは、96〜384個のサンプルを並列に処理するために使用されることができる。それは、ddNTPの典型的な4色のレーザー誘導蛍光検出を使用することができる。
自動化された機器と共に使用されるとき、上記の検出方法が、本発明のCD24またはAPC改変について複数のサンプルをスクリーニングするために迅速かつ容易に使用されることが理解される。
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)−この方法では、プライマー伸長またはライゲーション事象がマッチまたはミスマッチの指標として使用されることができるように、対立遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド(ASO)が、多型ヌクレオチドの近くでハイブリダイズするように設計される。放射能標識されたASOとのハイブリダイゼーションはまた、特定のSNPの検出にも適用された(Conner,B.J.ら(1983)Proc Natl Acad Sci USA、80,278−282)。この方法は、単一ヌクレオチドだけ異なる短いDNAフラグメントの融解温度が異なることに基づいている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件および洗浄条件により、変異型対立遺伝子と野生型対立遺伝子を識別することができる。
変性/温度勾配ゲル電気泳動(DGGE/TGGE)−2つの他の方法は、小さな配列変化に対する応答における電気泳動移動度の変化を検出することに依る。これらの方法の1つは「変性勾配ゲル電気泳動」(DGGE)と呼ばれており、これは、わずかに異なる配列が、勾配ゲルで電気泳動により分離されたとき、局所的融解の異なるパターンを示すという観察結果に基づいている。このように、ホモ二重鎖に対する単一ヌクレオチドが異なるヘテロ二重鎖の融解特性の違いは、対応する電気泳動移動度の変化によって標的配列におけるSNPの存在を検出するために使用されることができるので、変異体は区別されることができる。分析されるフラグメント(通常の場合にはPCR産物)は、鎖の完全な解離を伴うことなく目的とする配列の完全な変性を可能にするために長い領域のG−C塩基対(30〜80)によって一方の端部で「固定」される。DNAフラグメントへのGC「クランプ」の結合は、DGGEによって認識されうる変異の割合を増大させる(Abrams,E.S.ら(1990)「変性勾配ゲル電気泳動およびGCクランプを使用する、ヒトゲノムDNAにおける単一塩基変化の総合的検出」Genomics、7:463−475)。GCクランプを1つのプライマーに結合することは、増幅された配列が低い解離温度を有すること確保するために重要である(Sheffield,V.C.ら(1989)「ポリメラーゼ連鎖反応によるゲノムDNAフラグメントへの40塩基対のG+Cリッチ配列(GC−クランプ)の付着は、単一塩基変化の改善された検出をもたらす」Proc Natl Acad Sci 86,232−236;ならびにLerman,L,S.およびSilverstein,K,(1987)「DNA融解の計算シミュレーションおよび変性勾配ゲル電気泳動へのその適用」Meth Enzymol 155:482−501)。この技術の改変が、温度勾配を使用して開発されており(Wartell,R.M.ら(1990)「温度勾配ゲル電気泳動によるDNAフラグメントにおける塩基対置換の検出」Nucl Acids Res、18(9):2699−2705)、この方法はまた、RNA:RNA二重鎖にも適用されることができる(Smith,F.I.ら(1988)「溶液中の融解挙動の差異によってRNA分子における単一塩基の置換を検出する新規な方法」Genomics 3(3):217−223)。
DGGEの有用性に対する制限は、変性条件が、試験されるDNAの各タイプについて最適化されなければならない要件を含む。さらに、この方法は、ゲルを調製し、かつ、必要となる高い温度を電気泳動期間中に維持するための特別な設備を要求する。試験されるそれぞれの配列のための1つのオリゴヌクレオチドでの固定用テールの合成に関連する費用もまた、大きな検討事項である。さらに、長い泳動時間がDGGEのために要求される。DGGEの長い泳動時間は、「定常変性ゲル電気泳動」(CDGE)と呼ばれるDGGEの改変法では短縮された(Borrensen,A.ら(1991)「p53変異についての迅速なスクリーニング技術としての定常変性ゲル電気泳動」Proc Natl Acad Sci USA 88(19):8405−8409)。CDGEは、SNPの検出のための高い効率を達成するために、ゲルが種々の変性条件のもとで電気泳動されることを要求する。
「温度勾配ゲル電気泳動」(TGGE)と呼ばれる、DGGEに類似する技術は、化学的な変性勾配ではなく、温度勾配を使用する(Scholz,R.B.ら(1993)「温度勾配ゲル電気泳動によるTp53変異についての迅速なスクリーニング:SSCP分析との比較」Hum Mol Genet 2(12),2155−2158)。TGGEは、電場に対して直交的に配向する温度勾配を生じさせることができる特別な設備を使用することを要求する。TGGEは、DNAの比較的小さいフラグメントにおいて変異を検出することができ、従って、大きい遺伝子セグメントを走査することは、ゲルを泳動する前に、多数のPCR産物の使用を要求する。
一本鎖高次構造多型(SSCP)−「一本鎖高次構造多型」(SSCP)と呼ばれる別の一般的な方法が、Hayashi、Sekyaおよび共同研究者らによって開発され(Hayashi,K(1991)「PCR−SSCP:ゲノムDNAにおける変異を検出するための、単純で感度の高い方法」PCR Meth Appl 1,34−38)によって総説される)、これは、核酸の一本鎖が非変性条件では特徴的な立体配座をとることができ、このような立体配座が電気泳動度に影響を及ぼすという観察結果に基づいている。相補的な鎖は、一方の鎖が反対側の鎖から分離しうるような十分に異なる構造をとる。フラグメント内の配列の変化は立体配座をも変化させ、その結果として、移動度を変化させ、かつ、このことを配列変化についてのアッセイとして使用することを可能にする(Orita,M.ら(1989a)「ポリメラーゼ連鎖反応を使用する点変異およびDNA多型の迅速かつ感度の高い検出」Genomics 5:874−879;Orita,M.ら(1989b)「一本鎖高次構造多型としてのゲル電気泳動によるヒトDNAの多型の検出」Proc Natl Acad Sci USA 86:2766−2770)。
SSCPプロセスは、両方の鎖において標識されるDNAセグメント(例えば、PCR産物)を変性させること、その後、分子内相互作用が泳動期間中に形成され、かつ、破壊され得ないように非変性ポリアクリルアミドゲルでのゆっくりとした電気泳動分離を行うことを含む。この技術は、ゲルの組成および温度における変動に対して極めて敏感である。この方法の一連の制限は、明らかに類似する条件のもとでも、異なる研究室で得られたデータを比較する際に直面する相対的な困難である。
ジデオキシフィンガープリンティング(ddF)−ジデオキシフィンガープリンティング(ddF)は、変異の存在について遺伝子を走査するために開発された別の技術である(Liu,Q.およびSommer,S.S.(1994)「ジデオキシフィンガープリンティングおよびSSCPの感度に影響するパラメータ」PCR Methods Appl 4:97−108)。ddF技術は、Sangerジデオキシ配列決定の構成要素をSSCPと組み合わせたものである。まず、ジデオキシ配列決定反応が、1つのジデオキシターミネーターを使用して行われ、次に、反応生成物が、SSCP分析でのように停止セグメントの移動度の変化を検出するために非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動される。ddFは、増大した感度の点でSSCPを上回る改善である一方で、ddFは、高価なジデオキシヌクレオチドの使用を要求し、また、この技術は依然として、変異の最適な検出のためには、SSCPのために好適なサイズのフラグメント(すなわち、200塩基〜300塩基のフラグメント)の分析に限定されている。
上記の制限に加えて、単一変異を検出するためのこれらの方法のすべては、分析することができる核酸フラグメントのサイズに関して制限される。直接的な配列決定法については、600塩基対を超える配列は、フラグメント全体を覆うために、クローン化を必要とし、その結果としての遅延、および、欠失サブクローニングまたはプライマーウォーキングのいずれかの負担を伴う。SSCPおよびDGGEは、さらに一層厳しいサイズ制限を有する。配列変化に対する低下した感度のために、これらの方法は、より大きなフラグメントには適していないと考えられる。SSCPは、報告によれば、200塩基対のフラグメントにおいて90%の一塩基置換を検出することができるが、その検出は400塩基対のフラグメントについては50%未満に低下する。同様に、DGGEの感度は、フラグメントの長さが500塩基対に達するにつれて低下する。ddF技術は、直接的な配列決定およびSSCPの組合せとして、スクリーニングされることができるDNAの比較的小さいサイズによっても制限される。
PyrosequencingTM分析−この技術(Pyrosequencing,Inc.、Westborough、Massachusetts、USA)は、DNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼおよびアピラーゼの各酵素ならびにアデノシン5’ホスホスルファート(APS)およびルシフェリン基質の存在下での一本鎖のPCR増幅されたDNAテンプレートに対する配列決定用プライマーのハイブリダイゼーションに基づいている。第2工程において、4つのうちの最初のデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)が反応に加えられ、そのデオキシヌクレオチド三リン酸がテンプレート鎖において塩基に対して相補的であるならば、DNAポリメラーゼがDNA鎖内へのそのデオキシヌクレオチド三リン酸の取り込みを触媒する。それぞれの取り込み事象には、取り込まれたヌクレオチドの量に対して等モル量でのピロリン酸(PPi)の放出が付随する。最後の工程において、ATPスルフリラーゼは、アデノシン5’ホスホスルファートの存在下でPPiをATPに定量的に変換する。このATPは、ATPの量に比例する量で可視光を生じさせるオキシルシフェリンへのルシフェリンのルシフェラーゼ媒介の変換を行わせる。ルシフェラーゼにより触媒される反応で生じた光は、電荷結合素子(CCD)カメラによって検出され、pyrogramTMにおけるピークとして見られる。それぞれの光シグナルの強さは、取り込まれたヌクレオチドの数に比例している。
AcycloprimeTM分析−この技術(PerkinElmer、Boston、Massachusetts、USA)は、蛍光分極化(FP)検出に基づいている。目的のSNPを含有する配列のPCR増幅後、過剰なプライマーおよびdNTPは、エビアルカリホスファターゼ(SAP)およびエキソヌクレアーゼIでのインキュベーションにより除かれる。いったんこれらの酵素が熱により不活化されると、Acycloprime−FPプロセスは、熱安定ポリメラーゼを、2つの蛍光ターミネーターの一方を、SNP部位のすぐ上流側で停止するプライマーに付加するために使用する。添加されたターミネーターは、その増大したFPによって同定され、元のDNAサンプルに存在する対立遺伝子を表す。Acycloprimeプロセスでは、AcycloPolTM(Archeon科から得られる新規な変異型熱安定ポリメラーゼ)、ならびに、目的のSNPについての可能性のある対立遺伝子を表す、R110およびTAMRAで標識された1対のAcycloTerminatorsTMが使用される。AcycloTerminator非ヌクレオチドアナログは、種々のDNAポリメラーゼとともに生物学的に活性である。2’,3’−ジデオキシヌクレオチド−5’−三リン酸と同様に、非環状アナログは鎖ターミネーターとして機能する。このアナログは、DNA鎖の3’末端に塩基特異的な様式でDNAポリメラーゼによって取り込まれ、そして、3’−ヒドロキシルが存在しないので、ポリメラーゼは鎖のさらなる伸張において機能することができない。AcycloPolは、種々のTaq変異体が誘導体化2’,3’−ジデオキシヌクレオチドターミネーターに対して有するよりも、誘導体化されたAcycloTerminatorに対する大きな親和性および特異性を有することが見出されている。
リバースドットブロット−この技術は、標識された配列特異的なオリゴヌクレオチドプローブと、標識されていない核酸サンプルとを使用する。活性化された第一級アミン結合体化オリゴヌクレオチドは、カルボキシル化ナイロン膜に共有結合される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄の後、標識されたプローブまたはプローブの標識されたフラグメントは、オリゴマー制限(すなわち、制限酵素による二重鎖ハイブリッドの消化)を使用して放出されることができる。円形のスポットまたは線が、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼでのインキュベーション、それに続く、テトラメチルベンジジンおよび過酸化水素を使用する発色によって、または、アビジンアルカリホスファターゼ結合体と、酵素活性化に敏感な発光性基質(例えば、CSPDなど)でのインキュベーションの後での化学発光、それに続く、X線フィルムへの感光によって、インキュベーションの後で比色的に可視化される。
SNP検出の分野における進歩により、下記のようなさらに正確で、容易で、かつ、費用のかからない大規模なSNP遺伝子型決定技術が提供されていることが理解される:例えば、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)(Howell,W.M.ら(1999)「動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)」Nat Biotechnol 17:87−88);マイクロプレートアレイ対角ゲル電気泳動(MADGE)(Day,I.N.ら(1995)「マイクロプレートアレイ対角ゲル電気泳動(MADGE)のために配置されたウエルを伴う水平ポリアクリルアミドゲルを使用するハイスループット遺伝子型決定」Biotechniques、19,830−835);TaqMan(登録商標)システム(Holland,P.M.ら(1991)「Thermus aquaticusのDNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を利用することによる特異的なポリメラーゼ連鎖反応生成物の検出」Proc Natl Acad Sci USA 88:7276−7280);種々のDNA「チップ」技術、例えば、米国特許第6300063号(Lipshutzら、2001)(これは参照として全てが本明細書中に組み込まれる)に開示されるGeneChip(登録商標)マイクロアレイ(例えば、SNPチップ、Affymetrix、USA);Goelet,P.ら(PCT出願番号92/15712)によって記載されるGenetic Bit Analysis(GBA(登録商標));ペプチド核酸(PNA)プローブ(Ren,B.ら(2004)「エキソヌクレアーゼ III/ヌクレアーゼ S1/PNAシステムを使用することによる二重鎖DNAにおけるSNPの直接的な検出」Nucleic Acids Res.32(4),e42)およびロックド核酸(LNA)プローブ(Latorra,D.ら(2003)「3’ロックド核酸(LNA)プライマーを使用するSNP遺伝子型決定における増強された対立遺伝子特異的PCR識別」Hum Mutat 22(1),79−85);分子ビーコン(Abravaya,K.ら(2003)「診断ツールとしての分子ビーコン;技術および応用」Clin Chem Lab Med 41,468−474);インターカレーション色素(Germer,S.およびHiguchi,R.(1999)「オリゴヌクレオチドプローブを用いないシングルチューブでの遺伝子型決定」Genome Res 9,72−78);FRETプライマー(Solinas,A.ら(2001)「SNP分析およびFRET適用における二重スコーピオンプライマー」Nucleic Acids Res 29(20),E96);AlphaScreenTM(Beaudet,L.ら(2001)「AlphaScreenを使用する単一ヌクレオチド多型タイプ決定のための同種アッセイ」Genome Res 11(4),600−608);SNPstream(登録商標)(Bell,P.A.ら(2002)「SNPstream UHT:薬理ゲノム学および薬物発見のための、超高スループットSNP遺伝子型決定」Biotechniques Supplement 70−72,74,76−77);多重ミニ配列決定(Curcio,M.ら(2002)「キャピラリー電気泳動および液体コア蛍光検出による、多重高スループット固相ミニ配列決定」Electrophoresis 23(10),1467−1472);SnaPshotTM多重システム(Turner,D.ら(2002)「SNaPshotを用いるサイトカインおよびレセプター遺伝子における複数の単一ヌクレオチド多型のタイプ決定」Hum Immunol 63(6),508−513);MassEXTENDTM(Cashman,J.R.ら(2001)「ヒトのフラビンを含有するモノオキシゲナーゼ形態の個体群分布3:遺伝子多型」Drug Metab Dispos 29,1629−1637);GOODアッセイ(Sauer,S.およびGut,I.G.(2003)「マトリックス支援レーザー脱着/イオン化質量分析による単一ヌクレオチド多型を遺伝子型決定するためのGOODアッセイの拡張」Rapid Commun Mass Spectrom 17,1265−1272);マイクロアレイミニ配列決定(Liljedahl,U.ら(2003)「抗高血圧薬物応答の薬理遺伝学的プロファイリングのためのマイクロアレイミニ配列決定システム」Pharmacogenetics 13,7−17);アレイ型プライマー伸張(APEX)(Tonisson,N.ら(2000)「アレイ型プライマー伸張による遺伝的データの解明」Clin Chem Lab Med 38,165−170);マイクロアレイプライマー伸長(O’Meara,D.ら(2002)「DNAマイクロアレイ上でのアピラーゼ媒介対立遺伝子特異的プライマー伸長によるSNP型決定」Nucleic Acids Res 30,e75);Tagアレイ(Fan,J.B.ら(2000)「遺伝的高密度オリゴヌクレオチドタグアレイを使用するヒトSNPの平行遺伝子型決定」Genome Res 10(6),853−860);テンプレート誘導取り込み(TDI)(Akula,N.ら(2002)「単一ヌクレオチド多型を検出するための、蛍光分極化検出を伴うテンプレート誘導色素−ターミネーター取り込みの有用性および精度」Biotechniques 32,1072−1076,1078);蛍光分極化(Hsu,T.M.ら(2001)「蛍光分極化検出を用いる汎用SNP遺伝子型決定アッセイ」Biotechniques 31,560,562,564−568、各所);比色法オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)(Nickerson,D.A.ら(1990)「ELISAベースのオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイを使用する自動化DNA診断」Proc Natl Acad Sci USA 87,8923−8927);配列コード化OLA(Gasparini,P.ら(1999)「嚢胞性線維症についての4476人の新生児のパイロットスクリーニングにおける、ポリメラーゼ連鎖反応/オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイによる31 CFTR変異の分析」J Med Screen 6,67−69);マイクロアレイライゲーション;リガーゼ連鎖反応;Padlockプローブ;ローリングサークル増幅;Invaderアッセイ(Shi,M.M.(2001)「ハイスループットな変異検出技術および遺伝子型決定技術による大規模な薬理遺伝学研究が可能になる」Clin Chem 47,164−172);コード化マイクロスフェア(Rao,K.V.ら(2003)「マイクロスフェア上での侵襲的切断反応による、ゲノムDNAからの直接的な単一ヌクレオチド多型の遺伝子型決定」Nucleic Acids Res 31,e66);MassARRAYTM(Leushner,J.およびChiu,N.H.(2000)「自動化質量分析:臨床診断のための革命的技術」Mol Diagn 5,341−348);ヘテロ二本鎖分析;ミスマッチ切断検出;エキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体(米国特許第4656127号);および以下に記載されるような他の慣例的技術:Sheffieldら(1989);White,M.B.ら(1992)「ヘテロ二本鎖多型としての単一ヌクレオチド置換の検出」Genomics 12,301−306;Grompe,M.ら(1989)「化学的ミスマッチ切断による、ヒトオルニチントランスカルバモイラーゼにおける変異の走査検出」Proc Natl Acad Sci USA 86(15),5888−5892;およびGrompe,M.(1993)「核酸における未知の変異の迅速な検出」Nat Genet 5,111−117など。
本明細書において上で言及されるように、配列改変(例えば、配列番号2に記載のCD24ポリペプチドの57位のVal/Ala、配列番号8に記載のAPCポリペプチドの1307位のIle/Lys、および/または配列番号8に記載のAPCポリペプチドの1317位のGlu/Gln)はまた、タンパク質レベルで決定されることができる。
簡単に記載すると、タンパク質は、(本明細書において上で記載されるように)対象の細胞または細胞含有物のいかなる供給源のサンプルからでも抽出され、CD24タンパク質およびAPCタンパク質の特定の多型の存在が検出される。CD24またはAPCの配列改変から生成された切断されたCD24タンパク質またはAPCタンパク質の検出のような、CD24の分子量における大きな変化を検出するためには、クロマトグラフィー法および電気泳動法が使用されることが好ましいが、点変異および分子量におけるわずかな変化を検出するためには、CD24またはAPCの配列改変に特異的な抗体を使用して行われうる免疫検出アッセイ(例えば、ELISAおよびウェスタンブロット分析)、免疫組織化学などが使用されることが好ましい。
従って、本発明はまた、タンパク質レベルの配列改変(例えば、配列番号2に記載のCD24ポリペプチドの57位のVal/Ala多型;および/または配列番号8に記載のAPCポリペプチドの1307位のIle/Lys;および/または配列番号8に記載のAPCポリペプチドの1317位のGlu/Gln)を検出するための、血清免疫グロブリン、ポリクローナル抗体またはそのフラグメント(すなわち、その免疫反応性の誘導体)、モノクローナル抗体または(本明細書において下に記載されるフラグメントを含む)少なくとも抗原結合領域の一部を有するそのフラグメント、キメラ抗体またはヒト化抗体、および相補性決定領域(CDR)の使用を考慮する。
(例えば、生物学的サンプルにおいてCD24の存在および/またはレベルを決定するための)免疫複合体形成または(例えば、対象の特定のCD24遺伝子型(例えば、配列番号1の280位のチミジンヌクレオチド)またはAPC遺伝子型(例えば、配列番号7の3977位のアデノシンヌクレオチドおよび/または配列番号7の4006位のシトシンヌクレオチド)を検出するための)オリゴヌクレオチドが使用されるときのハイブリダイゼーションを検出するための本明細書において上に記載される試薬は、好ましくは、使用についての適切な指示書、および癌または前悪性の病変の診断における使用、癌治療の有効性を監視すること、および/または胃腸癌に対する対象の素因を決定することについてFDAの承認を示すラベルと共に診断キット/製品に含まれることができる。
このようなキットは、例えば上記の診断用薬剤(例えば、CD24特異的抗体、特定のCD24多型にハイブリダイズすることができるCD24オリゴヌクレオチド)のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの容器、および別の容器に詰められた造影試薬(例えば、酵素、二次抗体、緩衝液、発色性基質、蛍光発光材料)を含むことができる。キットはまた、キットの保管期限を改善するための適切な緩衝液および保存剤も含むことができる。
本明細書において使用される用語「約」は、±10%を示す。
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を例示する。なおこれら実施例によって本発明は限定されない。
本願で使用される用語と、本発明で利用される実験方法には、分子生化学、微生物学および組み換えDNAの技術が広く含まれている。これらの技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、以下の諸文献を参照されたい。「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrookら、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」I〜III巻 Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons,バルチモア,メリーランド(1989);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons,ニューヨーク(1988);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら編「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998);米国特許第4666828号、同第4683202号、同第4801531号、同第5192659号および同第5272057号に記載される方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I〜III巻 Cellis,J.E.編(1994);「Current Protocols in Immunology」I〜III巻 Coligan,J.E.編(1994);Stitesら編、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、ノーウォーク,CT(1994);MishellおよびShiigi編、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980);利用可能な免疫検定法は、例えば以下の特許と科学文献に広範囲にわたって記載されている:米国特許第3791932号、同第3839153号、同第3850752号、同第3850578号、同第3853987号、同第3867517号、同第3879262号、同第3901654号、同第3935074号、同第3984533号、同第3996345号、同第4034074号、同第4098876号、同第4879219号、同第5011771号および同第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.(1984)および「Methods in Enzymology」1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、サンディエゴ,CA(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996);なおこれらの文献類は、あたかも本願に完全に記載されているように援用されるものである。その他の一般的な文献は、本明細書を通じて提供される。本明細書に記載の方法は当業技術界で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。本明細書に含まれるすべての情報は本願に援用するものである。
実施例1
ras変異形質転換細胞株においてCD24発現が調節される
マイクロアレイを用いる示差的遺伝子発現分析は、相対的なmRNAレベルの総合的なプロファイルを提供し、従って、疾患の病因、進行、および治療に対する反応に関与する種々の生物学的経路への新しい見識を提供している。この技術は、組織学的に類似の腫瘍を、個々の患者における臨床的な結果を予測しうる分子学的に特定の亜類型へと分類するための価値のある潜在的なツールとして浮上している。マイクロアレイ技術は、CRCを含む多くの悪性腫瘍の研究において成功裏に適用された(12〜16)。
CRCの進行に関与する遺伝子を同定するために、本発明者らは、正常な腸細胞を種々の癌遺伝子で形質導入し、以下のように、ラットのAffymetrix発現アレイを用いて、特異的COX−2阻害剤であるCelecoxib(Pfizer,NY,USA)への曝露の前後に、形質転換された細胞の遺伝子発現パターンを評価した。
材料および実験方法
生体外細胞モデル−本発明者らは、種々の正常および形質転換された腸の細胞株からなる生体外モデルを開発した。ラット回腸に由来する正常な腸細胞(IEC 18細胞)は、種々の癌遺伝子を形質導入された。それらのうち、ras形質転換された変異腸細胞(R1細胞で示す)は、非常に攻撃的な表現型を有する。これらの細胞は、薬物耐性選択可能マーカーtk−neoおよびプラスミドpMIKcysを同時に形質導入することによって産生され、このプラスミドは、コドン12にシステイン変異を含有するミニヒトc−K−ras遺伝子(15kb)をコードする。ras変異は、CRC患者の大部分において見出される。この細胞株に基づくシステムは、発現マイクロアレイの新しい技術の適用が望まれるときに、より整合性がありかつ有用である。なぜなら、それは正常細胞および悪性細胞のみからなっており、悪性の形質転換の真の効果を妨げたり覆い隠したりしてしまうかもしれない炎症細胞、壊死細胞、および間質性細胞を欠いているからである。
遺伝子発現研究は、生体外細胞モデルからのRNAを使用して、製造者の指示書に従って、Affymetrixラット(RG−U34)Genechip(登録商標)を使用して行われた。
実験結果
CD24は、Ras変異で形質転換された腸の細胞において上方制御され、その発現レベルはCelecoxibでの処理後に逆転する−腸の上皮細胞における悪性の形質転換後の改変された遺伝子発現パターンを特徴付けるために、種々の癌遺伝子で形質転換された腸の細胞株から抽出されたRNAは、ラットの発現アレイ(Affymetrixラット(RG−U34)Genechip(登録商標))を使用する分析に供された。具体的には、特異的COX−2阻害剤であり、かつ結腸における化学的予防薬であると確認されているCelecoxib(Pfizer,NY,USA)への短い持続時間および長い持続時間の曝露の前後に、IEC−18とR1細胞を比較するために示差的遺伝子発現が分析された(Sutter T,Miyake M,Kahn SM,Venkatraj VS,Sobrino A,Warburton D,Holt PR,Weinstein IB「c−K−ras形質転換されたラット腸細胞におけるサイクリンD1およびRb腫瘍抑制遺伝子の増大された発現」Oncogene 2;12(9):1903−8,1996)。走査された出力ファイルが分析され、各遺伝子の発現値が決定された。Affymetrixチップ上に存在する約20000個の遺伝子のうち、1081個の遺伝子が腫瘍細胞において示差的に発現(>2倍)された(Sagiv E.ら、2006、Gastroenterology,131:630−639;データは示されていない)。これらのうち、71個の遺伝子のクラスターはCelecoxibでの短期および長期の処理後に正常な発現レベルへの逆転を示した。正常な発現への逆転を示す遺伝子の1つは、CD24をコードする遺伝子である(GenBankアクセッション番号NM_013230;配列番号1)。
実施例2
CD24はCRC発癌の早期事象で過剰発現される
本明細書において上記の背景技術の節に記載されるように、Weichert W.ら(Clin.Cancer Res.2005,11:6574−6581)は、146個の結腸直腸癌(CRC)においてCD24の発現パターンを試験し、そして腫瘍の68.7%においてCD24が膜性の染色を示すのに対し、腫瘍の84.4%においてCD24が細胞質中で発現されることを見出した。さらに、症例の10%において、例外的に強い細胞質性のCD24発現が観察され、それはより進んだ腫瘍の病期およびより不良な予後と相関した。しかしながら、現在まで、GI管の前悪性腫瘍におけるCD24の発現レベルは一度も試験されてこなかった。
ras変異で形質転換された細胞株におけるCD24の調節された発現パターン(上記の実施例1を参照のこと)に基づき、そしてGI管の発癌に至る早期事象におけるCD24の関与を決定するために、以下のように、GI管全体の正常組織、前悪性腫瘍、および悪性腫瘍を含む398個のサンプルの幅広い群において、免疫組織学的分析が行われた。
材料および実験方法
免疫組織学的分析−免疫組織学的分析は、アビジン−ビオチン複合体免疫ペルオキシダーゼ技術(Umansky M.,Rattan J.ら、Oncogene 2001;20:7987−7991)を使用して行われた。4μmの組織切片が、ポリ−L−リジン被覆されたスライドにマウントされた。Americlear(Baxter,McGaw Parl,IL)および無水エタノールにおける脱パラフィン処理の後に、切片は一連の段階的なアルコール、蒸留水、およびpH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)によって水和された。スライドは次いで、10mMのクエン酸緩衝液(pH6)に浸漬され、合計10分間750Wでレンジ加熱された。ヤギ血清での20分間のブロッキングの後に、一次抗体である抗CD24モノクローナル抗体(Ab−2、クローン24Co2;Neomarkers、フレモント、CA)が適用され、高湿度チャンバにおいて4℃で一晩インキュベートされた。全ての濃度の一次抗体は良好な膜性の染色を生じたが、最小のバックグラウンドを有する理想的な濃度は20μg/mlであった。ネガティブコントロールとして、選択された組織サンプルの二重切片が一次抗体の非存在下で免疫染色された。それに続く工程は、製造者の指示書に従ってVectastain rabbit Elite ABCキット(Vector Laboratories,バーリンゲーム,CA)を使用した。顕色は、0.0003%の過酸化水素を含有する0.375mg/dLの3,3’−ジアミノベンジジン テトラヒドロクロライド溶液(Sigman Chemical,Co,セントルイス,MO)で達成された。スライドは、ヘマトキシリンで対比染色され、そして脱水され、カバーグラスはAcrytol封入剤(Surgipath Medical Industries,リッチモンド,IL)を用いて適用された。
実験結果
CD24は、結腸、直腸およびGI管全体の種々の腺腫および癌において過剰発現される−以下の表1に示されるように、免疫組織化学的分析は、細胞のタンパク質環境に対するこの遺伝子(CD24)の過剰発現に関するアレイ結果、ならびにヒトCRC組織へのラットモデルから得られた結果の投影を実証した。この目的のために、CD24発現は、GI管全体に及ぶ398個のサンプル(良性および悪性)において決定され、それらのうちの66個はCRCサンプルであった。
CD24についての陽性の管腔膜染色が、54個の結腸直腸の腺腫様ポリープ(前悪性腫瘍)のうち49個(90.7%)で見られ、66個の腺癌のうち57個(86.3%)で見られた(表1)。前悪性の腫瘍(腺腫)における陽性の膜染色が、悪性腫瘍における陽性の膜染色と同程度であったことに注意されたい。他方、膜染色は、CRCサンプルに隣接する54個の正常に見える粘膜のうちわずかに9個(16.6%)において陽性であった。陽性の膜染色は、患者の性別または年齢に関連せず、腺腫様ポリープにおける形成異常の大きさまたは程度にも関連しなかった(データは示されていない)。さらに、陽性の膜染色は、GI管全体の前悪性の腺腫の77.9%、およびGI管全体の癌の71.2%で見られた(表1)。
表1:正常な隣接した粘膜およびGI管全体(食道、胃、膵臓、小腸および大腸)の腫瘍から得られた398個の正常試料および腫瘍試料は、モノクローナル抗CD24抗体(Ab−2,クローン 24C02;Neomarkers,フレモント,CA)を用いてCD24について染色され、そして膜の染色は、0、1、2および3の増大する強度の尺度の強度スコアに従って記録された。示されるのは、(結腸および直腸を含む)GI管全体ならびに別の群としての結腸および直腸の、正常組織、腺腫(前悪性の病変)、および癌における(「1」より高い強度スコアの)陽性の膜染色の頻度である。
CD24が、腺腫(癌の前悪性の段階)ならびにCRCまたはGI管全体の癌の全ての病期において同程度発現されたという事実は、CD24の発現が、CRC発癌の多工程プロセスにおける早期事象であることを示す。従って、癌(CRCおよびGI管全体)だけではなく、例えば腺腫様ポリープのような前悪性の病変においてもCD24が発現されることは、GI管全体の発癌プロセスの早期マーカーとしてのCD24の使用を示唆する。
実施例3
CD24遺伝子の多型は臨床的に重要である
CD24遺伝子の多型についてはほとんど知られていない。Zhou Q.ら、2003(Proc.Natl.Acad.Sci.100:15041−15046)は、ヒトCD24遺伝子における単一ヌクレオチド多型(SNP)(GenBankアクセッション番号NM_013230;配列番号1の280位でのC→T置換)が、GPIアンカーの推定上の切断部位の直後にミスセンス変異(配列番号2;GenBankアクセッション番号NP_037362に記載のCD24タンパク質の57位でのGCC(Ala)→GTG(Val))を生じ、それが多発性硬化症の増大された危険およびより急速な進行と関連することを記載する。
APC遺伝子(タンパク質−GenBankアクセッション番号NP_000029.2(配列番号8)、mRNA−GenBankアクセッション番号NM_000038.3(配列番号7))は腫瘍抑制タンパク質をコードしており、結腸および直腸の発癌プロセスにおける最初の事象として広く変異される。Lakenら(Laken SJ,Petersen GM,Gruber SB,Oddoux,Vogelstein B.「APCの超変異可能な域に起因するAshkenazimにおける家族性の結腸癌」Nat Genet 17:79−83,1997)は、タンパク質のコドン1307においてイソロイシン(I)のリジン(K)への置換を生じるI1370Kを同定した。その変化は、タンパク質の機能性には影響を及ぼさないが、遺伝子中に連続する8個のアデノシンを作り、それはDNAポリメラーゼ活動において誤りの危険性を増大し、従って易変性の危険性が高い500bpの領域が作られる(Laken SJら、1997)。本発明者らによって行われたこれまでの研究(H.Strulら、2003)は、この多型がCRCに対する危険の評価に寄与しないことを実証した。
APCタンパク質におけるE1317Q多型は、既知の機能または表現型の影響を有さないが、それは、ミスマッチ修復活性を引き起こし、結腸直腸の腫瘍形成に対して高い危険に関連する。
材料および実験方法
遺伝子型決定−ゲノムDNAは、末梢血リンパ球から抽出された。約200ngのDNAが、以下のように、(APC SNPについての)実時間PCR反応、または(CD24 SNPについての)RFLP分析のために採取された。
CD24タンパク質の57位でのAla/Val多型の決定−50℃のアニーリング温度で、ゲノムDNAは、以下のプライマーを使用してPCR増幅された:フォワード:5’−TTGTTGCCACTTGGCATTTTTGAGGC(配列番号3)およびリバース:5’−GGATTGGGTTTAGAAGATGGGGAAA(配列番号4)。生じたCD24 PCR産物は、520bpである。配列番号1の280位でのC→T変化は、PCR産物のヌクレオチド327にBstXI制限酵素部位をもたらし、それは制限フラグメント長分析による2つのCD24対立遺伝子の区別を可能にする。従って、Val−57多型をコードするDNAは、BstXIによって320bpおよび200bpに消化され、Ala−57多型をコードするDNAは、BstXIによって消化されないので、520bpである。
APC遺伝子におけるI1307K多型の決定−I1307多型は、GenBankアクセッション番号NP_000029.2;配列番号8の1307位でのイソロイシン(I)(一般的対立遺伝子)のリジン(K)(希少対立遺伝子)での置換であり、それはNM_000038.3;配列番号7のヌクレオチド3977でのT→A置換から生じる。簡単に記載すると、ゲノムDNAは、以下のプライマーを使用してPCR増幅された:フォワード5’−GATTCTGCTAATACCCTGCAAATAGCA−3’(配列番号5)プライマーおよびリバース5’−CCCTGCAGTCTGCTGGATTTGG−3’(配列番号6)プライマー。実時間PCRのために、センサープライマーが野生型対立遺伝子に従って設計され、その下流にアンカープライマーが設計される。センサープライマーがDNAに結合しかつアンカープライマーと会合する温度によって、明反応は変化する;温度は時間とともに上昇し、反応時間は測定される。特定の多型性ヌクレオチド(配列番号7の3977位のT/A)の検出のために、アンカープライマーは:LC−Red640−TTTGCAGGGTATTAGCAGAATCTGCTTCCTGTG−ph(配列番号9)であり、そしてセンサープライマーは:CCAATCTTTTCTTTTTTTTCT−FL(配列番号10)であった。
APC遺伝子におけるE1317Q多型の決定−E1317Q多型は、GenBankアクセッション番号NP_000029.2;配列番号8の1317位でのグルタミン酸(E)(一般的対立遺伝子)のグルタミン(Q)(希少対立遺伝子)での置換であり、それはNM_000038.3;配列番号7のヌクレオチド4006でのG→C置換から生じる。簡単に記載すると、ゲノムDNAは、以下のプライマーを使用してPCR増幅された:フォワード5’−GATTCTGCTAATACCCTGCAAATAGCA−3’(配列番号5)プライマーおよびリバース5’−CCCTGCAGTCTGCTGGATTTGG−3’(配列番号6)プライマー。そして特定の多型性ヌクレオチド(配列番号7の4006位のG/C)の検出は、アンカープライマー:TGCTGTGACACTGCTGGAACTTCGC−FL(配列番号11)およびセンサープライマー:ph−LC−Red705−CACAGGATCTTGAGCTGACCTAG(配列番号12)を使用して実時間PCRによって行われた。
実験結果
CD24発現は、57位でのCD24遺伝子型(Ala/Val57)に依存している−CD24 RFLP試験を使用して、本発明者らは、高レベルのCD24タンパク質を発現するHT29細胞がCD24v/v(CD24タンパク質の57位でのVal/Val)遺伝子型を示し、一方、CD24タンパク質をほとんど発現しないPanc1細胞およびHCT116細胞がCD24a/a(CD24タンパク質の57位でのAla/Ala)遺伝子型を担持することを見出した。これらの結果は、CD24タンパク質の過剰発現がCD24タンパク質のVal−57多型と関連することを示唆する。さらに、CRCを生じるCD24の大部分は、a/a遺伝子型を有さない。この仮説を確認するために、CD24遺伝子型が末梢血DNAから分析され、そして3つの遺伝子型の頻度が決定された。
図4は、BstXI制限酵素を使用する、CD24遺伝子のAla57Val多型の制限フラグメント長多型(RFLP)を使用して行われた遺伝子型分析の例を示す。
Val−57多型は、CRC発癌に対する増大した危険と関連する−平均年齢58.68歳(標準偏差:14.78)の1064個体(正常な健康な対象およびCRC患者)のデータセットは、母集団の61.75%がイスラエルのアシュケナジ系ユダヤ人であり、25.47%がイスラエルのセファルディ系ユダヤ人であることを示した(残りは混血または他の人種の個体である)。試験された母集団の中で、セファルディ系ユダヤ人は一般的なA/A(Ala)遺伝子型を持つことに対する有意な関連を示した:OR1.3(1.0〜1.8)p=0.04。セファルディ系ユダヤ人におけるCRCの罹患率が、アシュケナジ系ユダヤ人における罹患率よりも低いことに注意されたい(Darwish H,Trejo IEら、2002「結腸直腸癌と闘う:アシュケナジ系ユダヤ人、セファルディ系ユダヤ人、およびパレスチナ人の間で異なる分子的疫学」Ann Oncol.,13:1497−501;Rozen P,Lynch HT,Figer Aら Israel Cancer Registry,Cancer in Israel,Ministry of Health,Jerusalem,1987「テル−アビブ地域における家族性の結腸癌および民族的起源の影響」Cancer;60:2355−2362)。従って、これらの結果は、CD24タンパク質の57位でのAla多型が、特にその同型接合状態においてCRCに対する保護的遺伝子型であり、他方CD24タンパク質のVal−57多型が、CRCに対する危険遺伝子型であることを示唆する。
下記の表2および表3にさらに示されるように、392人がCRCと診断され、498人が健康な対象であった890人の対象のスクリーニングは、Val/Val遺伝子型(表2)およびVal対立遺伝子(表3)がCRCに罹患する対象において健康なコントロールにおけるよりも多く見られることを示し、従ってVal−57多型とCRCとの関連を示唆する。
CD24遺伝子およびAPC遺伝子における組み合わせた遺伝子型は、結腸直腸の腫瘍形成または癌に対する増大された危険と高度に関連する−CD24遺伝子およびAPC遺伝子における組み合わせた遺伝子型の関連をさらに試験するために、CD24タンパク質の(57位に)A/V遺伝子型を有する375人の対象は、APCタンパク質におけるE1317Q多型の存在について試験された。375人の対象のうち7人は、E1317Q多型について陽性であった(すなわち、APCタンパク質における1317Q多型の1つの対立遺伝子を示した)。CD24 A/VおよびAPC E1317Qである、7人のうち6人の対象(85.7%)は、結腸直腸の腫瘍形成を有した。他方、368人の対象は、APCタンパク質における1317Q多型について陰性であった(すなわち、E1317のみを示した)。368人のうち162人の対象(44%)は、結腸直腸の腫瘍形成を有し、それは7.62963のオッズ比(OR)(カイ2乗=4.83、p値=0.028)を生じる。従って、これらの結果は、APC E1317Qのような発癌開始遺伝子における変異を担持する個体の中で、CD24タンパク質のVal−57多型の存在が結腸直腸癌に対する増大された素因の危険の指標となることを実証する。
CD24タンパク質の(57位に)A/V遺伝子型を有する405人の対象は、APCタンパク質におけるI1307K多型の存在について試験された。405人の対象のうち31人は陽性であった(すなわち、APCタンパク質における1307K多型の少なくとも1つの対立遺伝子を示した)。CD24 A/VおよびAPC I1307Kである、31人のうち21人の対象(67.7%)は、結腸直腸の腫瘍形成を有した。他方、APCタンパク質におけるI1307K多型について陰性である(すなわち、APCタンパク質におけるI1307多型のみを示した)374人の対象のうち、175人(46%)は、腫瘍形成を有し、それは2.388のOR(カイ2乗=5.03、p値=0.0249)を生じる。従って、これらの結果は、APC I1307Kのような発癌開始遺伝子における変異を担持する個体の中で、CD24タンパク質のVal−57多型の存在が結腸直腸癌に対する増大された素因の危険の指標となることを実証する。
実施例4
GI管悪性腫瘍についての早期マーカーとしての、糞便、血清、または尿におけるCD24検出
本明細書において上記の実施例2において記載されたように、CD24は、GI管の前悪性腫瘍(例えば、結腸直腸の腺腫様ポリープおよびGI管全体の腺腫様ポリープ)において有意に過剰発現された。これらの結果は、CD24発現が前悪性の腺腫の悪性腺癌への変換に先行しうることを示唆する。もしCD24が細胞表面で発現されて、GPIアンカーによって結合体化されるとするならば、本発明者らは、脱け落ちたか、または細胞泡状突起または死細胞からの膜残留物において見出されるCD24が、前悪性の腫瘍を有する対象に由来する種々の生物学的サンプルにおいて検出されることができ、そしてその検出がGI管の発癌の早期マーカーとして作用することができると仮説を立てた。
非侵襲的方法を使用して得られた生物学的サンプル(例えば、糞便、尿および血清)におけるCD24の存在を決定するために、本発明者らは、以下のようにCD24免疫沈降の実験条件を設定した。
材料および実験方法
血清(ならびに糞便または尿)サンプルの免疫沈降(IP)分析−血清サンプル(500μl)は、等量(500μl)の溶解緩衝液(40mM Tris−HCl,pH7.4,4mM EDTA,2% NP40,0.2% SDS)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と混合された。抗マウス結合体化セファロースビーズ(Sigma,Cat.No.A6531)(20μl)は、〜2−5μgのモノクローナル抗CD24抗体(SWA11)で1時間インキュベートされ、ビーズ−抗体複合体のアリコート(20μl)は、次いで、溶解された血清サンプルと混合され、そして回転させられながら冷温室において一晩インキュベートされた。血清サンプルのCD24タンパク質を含む、得られたビーズ−免疫複合体は、(短い遠心分離によって)回収され、Hepes生理食塩水緩衝液(20mM HEPES,150mM NaCl,0.1%Tritonおよび10%グリセロール)で6回洗浄され、次いで、CD24免疫沈降物が、4×タンパク質サンプル緩衝液(200mM Tris−HCl pH6.8,40%グリセロール,8%SDS,0.2%ブロモフェノールブルー,100mM DTT)によって90〜95℃で(5分間)溶出され、その後、CD24タンパク質および抗CD24抗体からビーズを分離するために短い遠心分離に供された。溶出物は次いで、SWA11抗CD24抗体を使用するウェスタンブロット分析に供された。
あるいは、血清サンプルは、溶解緩衝液または(本明細書において上記に記載されるような)PBSでインキュベートされ、免疫沈降は、グリコシル化されたタンパク質に結合するコンカナバリンAに結合体化したビーズで実行された。ビーズ−免疫複合体は、次いで、(短い遠心分離によって)サンプルから分離され、その後、90〜95℃の溶出に供された。(CD24タンパク質を含有する)溶出物は、次いで、SDS−PAGEに供され、その後、SWA11 CD24抗体を使用するウェスタンブロット分析に供された。
ウェスタンブロット分析−以下の溶解緩衝液を使用して調製された細胞溶解物に対して実行した:20mM Tris−HCl,pH7.4,2mM EDTA,1% NP40,0.1%SDS、またはIP分析の後に実行されるウェスタンブロット分析と同様にSWA11抗体を使用してPBSの存在下で実行した。簡単に記載すると、細胞抽出物中のタンパク質の量は、(例えば、ブラッドフォード分析を使用して)決定され、そして全タンパク質のうちの16μgが各ウエルに充填される。
実験結果
CD24 IPアッセイの校正−CD24抗体であるML5およびSWA11(Jackson D,Waibel R,Weber E,Bell J,Stahel RA.「ヒトB細胞上で発現されるシグナル伝達分子であるCD24は、小細胞肺癌上の主要な表面抗原である」Cancer Res.1992;52:5264−7)は、IPアッセイを校正するために使用された。(CD24を発現しない)HCT116または(CD24を発現する)HT29 CRC細胞株の抽出物は、(抗マウスセファロースビーズを使用する)CD24−IPに供され、その後、ML5またはSWA11抗体のいずれかを使用するウェスタンブロット分析に供された。図1に示されるように、SWA11抗体は、低いバックグラウンドをもたらす、IP分析のために有効な抗体であることが見出された。
CD24 IP分析の感度の決定−方法の感度について知るために、CD24を発現するHT29細胞からの溶解物が、正常な血清の増大する濃度で均質化され、その後、IP分析に供された。CD24タンパク質は、1mg、100μg、および10μgの溶解物が1mlの血清中に混合されている場合は認識できたが、1μgおよびそれより少ない場合は認識できなかった(データは示されていない)。感度を増大させ、かつバックグラウンド信号を低減するために、サンプルとのビーズ−Ab複合体のインキュベーション時間を各回で変えて、実験は2回繰り返された。
血清サンプルにおけるCD24 IP分析−GI腫瘍(前悪性および悪性)におけるCD24の過剰発現が血清におけるCD24の存在と関連するかどうかを決定するために、腫瘍生検が先にCD24 IHCによって陽性に染色されている患者からの血清のサンプルが、CD24モノクローナル抗体またはコンカナバリンA結合体化ビーズ(コンカナバリンAはグリコシル化タンパク質に結合する)を使用するIP分析に供された。簡単に記載すると、血清サンプル(0.5ml)は、SWA11抗CD24モノクローナル抗体と共に抗マウス結合体化セファロースビーズ(Sigma,Israel)を予めインキュベートすることによって調製された沈降ビーズで一晩インキュベートされた。CRCが進行性のときに血清が採取された患者において、患者のCD24タンパク質に対応する35〜40kDaタンパク質のシグナルが観察された。他方、CRCが非進行性(寛解)のときに血清が採取された患者において、CD24の発現は見られないか、または有意に低減されているかのいずれかであった(図3、データは示されていない)。CD24はまた、DEAE−セルロース(DE52)ミニカラムおよびアルブミン枯渇を使用する陰イオン交換クロマトグラフィー、それに続くSWA11モノクローナル抗CD24抗体を使用するウェスタンブロット分析によって、進行性のCRCを有する患者の血清サンプルから精製された(図5)。これらの結果は、進行性のCRCを有する患者の血清におけるCD24タンパク質の存在を実証し、そしてGI悪性腫瘍についてのマーカーとしての血清におけるCD24タンパク質の検出を示唆している。
糞便サンプルおよび尿サンプルにおけるCD24ウェスタンブロット分析−Integrated Cancer Prevention Center(Sorasky Medical Center,Tel Aviv,Israel)に所属しているCRC患者および健康な対象からの90個を超える糞便および尿のサンプルが収集され、−80℃で保存された。全ての対象は、病院のIRBおよび厚生省の承認の下でインフォームド・コンセントに署名し、適合する内視鏡的な報告が記録された。糞便サンプルにおけるCD24の存在を分析するために、少量(0.3〜0.5ml)が凍結サンプルから折り取られ、プロテアーゼ阻害剤と共に1mlのタンパク質溶解緩衝液で均質化された。ホモジェネートの遠心分離(20分、14,000rpm)後に、上清相から溶解物が収集された。結腸内視鏡検査を受けて、良性または悪性の腫瘍と診断された26人の対象のうちの21人において、糞便中にCD24が見出された(データは示されていない)。
(膜の成分を除去する)溶解緩衝液または(膜の成分には影響すべきでない)PBSのいずれかを使用することによって、IP分析またはウェスタンブロット分析によって検出されたCD24のレベルにおける有意な差は無く(データは示されていない)、従って、血清において検出されたCD24の大部分は膜に固定されていないことを示唆していることに注意されたい。
糞便におけるCD24のレベルは、腫瘍の除去後に減少する−少なくとも部分的に、糞便サンプルにおいて検出されるタンパク質が腫瘍に由来することを確認するために、腫瘍の外科的/内視鏡的な除去の前後で、11人の患者から糞便サンプルが収集された。CD24発現レベルにおける差は、対にされたサンプルの間で明らかであり(図2a〜c;繰り返された実験からのデータは示されていない)、糞便におけるCD24の存在が少なくとも部分的に腫瘍に由来することを実証している。
糞便におけるCD24のレベルは、放射線療法後に減少する−糞便におけるCD24と癌細胞(進行性CRC疾患)の存在との間の関係をさらに実証するために、CD24のレベルは、腫瘍の外科的除去後であるが放射線療法前または放射線療法後にCRC患者において検出された。図2b(レーン13および14)において示されるように、CD24のレベルにおける有意な減少が処置前に比較して放射線療法後にみられた。従って、これらの結果は、糞便におけるCD24のレベルが癌細胞の存在と相関し、処置の有効性を監視するために使用されることができることを実証する。
低分子量CD24タンパク質種の存在は、前癌性または癌性の結腸直腸病変の指標である−図2a〜cにおいて示されるように、腫瘍またはポリープの外科的除去の前に患者から採取された糞便サンプルにおいて、約25〜37kDaの種々の低分子量CD24反応性バンドが存在し、それらはポリープまたは腫瘍の外科的除去の後に同じ患者から採取された糞便サンプルには存在しない。理論に縛られることなく、これらの結果は、前悪性または悪性の病変を有する対象の糞便、尿、または血清サンプル中に存在する循環CD24が、CD24アミノ酸配列の一部分のみを含むか、またはよりグリコシル化されていない形態(従って、より少ない分子量のタンパク質種)のCD24を表すかのいずれかであることを示すことができる。
結局、これらの結果は、生物学的サンプルにおける循環CD24の検出が、GI悪性腫瘍のような癌の早期検出マーカーとして、および/または癌の処置有効性を監視するために使用可能であることを実証する。さらに、CD24の低分子量種(例えば、25〜37kDa)の存在、および/または(25〜60kDaの範囲のどのような大きさからでもよい)所定の閾値より高い、高レベルのCD24の存在は、前悪性または悪性の腫瘍の指標である。
分析および議論
本研究の知見は、結腸/直腸の腺腫および消化管の残部(小腸および上部GI管)を含む、GI管の前悪性および悪性腫瘍の明らかに高い割合の細胞の膜上でCD24が発現されることを示す。正常組織上にはめったに現れないが、腫瘍の進行の早期段階で発現される表面タンパク質として、本発明者らは、癌細胞に対する新規の、極めて信頼性の高いバイオマーカーとしてCD24を提案する。さらに、GI管の前悪性または悪性の病変を有する対象における、血清、糞便、および尿のような生物学的サンプルにおけるCD24の発見は、可溶性のCD24、抜け落ちたCD24、または泡状突起中のCD24(循環CD24)が前悪性および悪性の病変の診断において使用されることができることを初めて実証する。
もしCD24が、細胞の外側にありかつ膜貫通ドメインを有さないがGPIに対するアンカーのみを有する短いペプチドであるとすると、生体外において示されるように、タンパク質の一部が、発現されるときに過剰に生成され、腫瘍細胞から絶えず分泌されて血流に到達するか、または細胞外マトリクスにおいてリパーゼによって切断されると考えられることが適当である。さらに、壊死性腫瘍細胞、それらのフラグメント、または腫瘍細胞の泡状突起産物も、同様に血流に到達し、それらの中にGPI固定されたCD24タンパク質を含有するかもしれない。
抗CD24モノクローナル抗体の1つであるSWA11は、(抗マウス結合体化ビーズ(Sigma)と共に)IP分析を使用してまたは免疫ブロッティング抗体(例えば、図1に示される細胞溶解物)としてのいずれかで生物学的サンプルにおいてCD24を効果的に検出することが本発明者らによって見出された。従って、CD24を過剰発現する細胞(例えば、前悪性の腺腫細胞または悪性のCRC腫瘍細胞)から脱け落ちたCD24は、血清サンプルにおけるIP、その後のウェスタンブロット分析によって検出されることができる。さらに、CD24はまた、超遠心分離またはスクロース勾配分離によってそれらの媒質から分離される、より大きな非溶解物質(小胞および細胞フラグメント)の相において追跡されることができる。もしCD24が膜に固定されており、そのため細胞の泡状突起の産物である膜フラグメントまたは小胞に一体化されながら血流に存在するかもしれないとすると、これらの大きな本体はそれらの高い分子量のために言及されているように濃縮され、そして溶解緩衝液によって膜が溶解され、IPが記載されたように実行される。さらに、タンパク質に対する抗体もまた、高レベルのCD24を発現する対象の血清中に存在するかもしれない。それらの存在は、精製されたタンパク質で被覆されるか、または高レベルのCD24を発現する細胞で固定されたプレートを用いるELISA法を使用して検出可能であるだろう。高レベルのCD24を発現するHT29細胞は、5%ホルムアルデヒドで96ウェルタイタープレートに固定される。2時間のインキュベーションの間、血清がウエルに添加され、3回の洗浄後、抗ヒトHRP抗体がウエルに添加され、5回洗浄され、次いで、5分間HRPに基質を添加することによって呈色反応が実行される(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB),Sigma)。反応は硫酸で停止され、色強度(これは、血清中の抗CD24抗体の量を表す)が450nmでELISA読み取り機によって測定される。腫瘍細胞から血流に脱け落ちたかもしれないCD24 DNAは、末梢血からRT−PCTを実行することによって検出されることができる。探索される変異および多型は、このように検出されることができ、定量的PCR反応、腫瘍細胞内に現れるCD24遺伝子の増幅によっても見られることができる。
癌の早期診断のためのツールとして、対象の血清でCD24を検出するための方法は、CD24を過剰発現する傾向を有すると従来報告された全ての腫瘍に対して適用されることができる。これは、以下の腫瘍、ならびにそれらの前悪性の病変、およびCD24を過剰発現することが将来発見される他の腫瘍の全てを含む。これまでに報告されているCD24を過剰発現するリンパ腫の種類の大半は以下の通りである:急性白血病、ヴァルダイアー輪リンパ腫、共通急性リンパ芽球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞性白血病。また、CD24を発現する固形腫瘍は以下のようなものである:透明細胞肉腫、腎芽細胞腫、腎細胞癌、成人中胚葉性腎腫、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、神経芽細胞腫、神経節芽細胞腫、肉腫、扁平上皮細胞癌、胃癌および結腸直腸癌、鼻咽腔癌、膀胱癌、乳癌、神経膠腫、卵巣癌、前立腺癌、神経内分泌前立腺癌、メルケル細胞癌、および膵癌など。
明確にするため別個の実施形態で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。本願で挙げた刊行物、特許および特許願ならびにGenBankアクセッション番号はすべて、個々の刊行物、特許もしくは特許願またはGenBankアクセッション番号が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。