JP2009303361A - 磁束分流制御回転電機システム - Google Patents

磁束分流制御回転電機システム Download PDF

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Abstract

【課題】
磁石励磁回転電機に於いて,エネルギー効率の良い磁束分流制御回転電機システムを提供する。
【解決手段】
磁性体突極延長部に界磁磁石を配置して界磁磁石の他端に主磁極及びバイパス磁極を相対偏倚可能に対向させ,界磁磁石からの磁束を電機子側を通る主磁路,及び電機子を通らないバイパス磁路に分流させて主磁路の磁束量を偏倚に応じて変える。界磁磁石からの界磁磁束総量を一定に保つように主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を設定する最小磁気力条件として上記偏倚を妨げる磁気力を抑制或いは最小磁気力条件から外して現れる磁気力を利用して磁束量制御可能な回転電機システム,磁束量制御方法を提供している。
【選択図】 図1

Description

本発明は,永久磁石界磁を持つ回転電機に関し,特に弱め界磁制御により出力を最適に制御する回転電機システムに関する。
永久磁石界磁と電機子との相対的回転によって電磁的に生ずる電力を取り出す発電機或いは電機子に供給する電流によって生ずる磁界と永久磁石界磁との相互作用により永久磁石界磁と電機子との相対的回転を生ずる電動機等の回転電機はエネルギー効率に優れ,永久磁石の技術的進歩に伴い日常的に広く使われている。しかしそのような回転電機は、永久磁石界磁からの磁束が一定であるので電動機として用いられるにしても発電機として用いられるにしても広い回転速度範囲で常に最適の出力が得られる訳ではない。すなわち,電動機の場合は高速回転域では逆起電力(発電電圧)が高すぎる結果となって制御が困難となり,弱め界磁制御として界磁強度を弱める種々の手段が提案されている。また発電機の場合,広い回転速度範囲に於いて発電電圧を所定のレベルとする為に専ら界磁電流制御による定電圧発電或いは半導体による発電電圧の定電圧化回路が用いられている。
電動機では進み位相電流による弱め界磁制御が広く採用されているが,回転に直接寄与しない電流を流す為にエネルギー損失を大とする。永久磁石励磁に制御用電流励磁を併用する場合は回転電機の構造を複雑にし,その上にエネルギー損失を伴う。さらに発電機の場合,大電力での定電圧化電子回路のコスト負担が大であるとの問題があった。したがって,回転電機装置の構成を工夫して電子回路制御を最小限に留めて装置全体としてのコストを低減する方策は以前から求められ,種々の提案が為されてきた。
上記提案例に界磁回転子を二分し,二つの界磁回転子を周方向に相対偏倚させて実効的に界磁強度を制御する方法がある(特許文献1)。前記相対偏倚は機構的に保持出来るので制御の為のエネルギー損失は少ない長所はあるが,電機子に流入する界磁強度の絶対値は変わらないので高速回転域で渦電流損が大きい欠点がある。他の提案例に界磁磁石を含む磁気回路の磁気抵抗を変えて磁束を制御する装置がある(特許文献2,3)。更に他の提案例として界磁磁石を短絡制御する装置がある(特許文献4,5,6)。一般に磁石を含む磁気回路に可動部分が存在する場合,磁気回路を流れる磁束を大にする方向(磁気抵抗を小にする方向)に可動部分を偏倚させようとする磁気力が存在する。界磁磁石は回転電機装置に於いて,力を発生し或いは電力を発生する源泉である。機械的な偏倚により磁気回路の磁気抵抗を制御する或いは界磁磁石を短絡する回転電機装置の提案例に於いて上記磁気力は回転電機の出力に比例し,偏倚制御に大きな力を要すると共に部材の振動或いはハンチング等を招来して精密な制御を困難にする。さらに大出力のアクチュエータ,過分な機械強度を伴う機構等を必要として実現には困難を伴っている。
米国特許3713015「ALTERNATING CURRENT GENERATOR HAVING A TWIN PM ROTOR WHICH IS ADJUSTABLE IN RESPONSE TO OUTPUT VOLTAGE」 特開2004−320864「同期回転電機及びその制御方法」 特開2004−328944「磁束制御型発電機」 米国特許4885493「Output voltage control apparatus of a permanent magnet alternator」 特開2004−357357「永久磁石形モータ及び洗濯機」 特開2006−246662「永久磁石式回転機」
したがって,本発明が解決しようとする課題は,(1)界磁磁石を減磁させる懸念が少ない事,(2)磁束量制御に必要な力を小さく抑える事等の条件を考慮して磁束量制御を容易として出力を最適に制御できる回転電機システム及び磁束量制御方法を提供する事である。
本発明による回転電機システム及び磁束量制御方法は,電機子側に流入させる磁束量を機械的偏倚により変える事が出来る。その具体的な内容は以下の通りである。
請求項1の発明による回転電機システムは,電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する界磁部とを有する回転電機であって,界磁部には表面磁極部と分流磁極部とが配置され,表面磁極部は電機子との対向面に複数の磁性体突極が周方向に配置されると共に分流磁極部との対向面に磁性体突極延長部に接続された界磁磁石の磁極が配置され,分流磁極部は前記界磁磁石に対向して配置された主磁極及びバイパス磁極を有し,界磁磁石の一方の磁極から主磁極に流入した磁束が隣り合う磁性体突極および電機子を介して界磁磁石の他方の磁極に環流する主磁路と,界磁磁石の一方の磁極からバイパス磁極に流入した磁束が主として界磁部内で磁性体突極延長部を介して界磁磁石の他方の磁極に環流するバイパス磁路とが界磁磁石に並列に磁気的に接続され,表面磁極部或いは分流磁極部の何れかを可動磁極部として界磁磁石が主磁極と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和が一定に保たれながら前記それぞれの対向面積を変える事が出来るよう可動磁極部が残余に対して相対偏倚可能に構成され,回転電機システムの出力が最適化されるように前記出力に応じて可動磁極部が偏倚して電機子に流れる磁束量が制御される事を特徴とする。
上記構成に於いて,界磁磁石に主磁極及びバイパス磁極が微小間隙を介して対向し,磁束は界磁磁石及び磁性体近傍ではそれらの境界面にほぼ直交するので界磁磁石からの磁束はほぼ層流状に主磁極及びバイパス磁極に流入し,主磁極に分流される磁束量は主磁極と界磁磁石の対向面積に比例する。前記微小間隙を可能な限り小にし,さらに界磁磁石との対向面では主磁極とバイパス磁極間の間隙も微小に設定すれば前記磁束分布はさらに完全な層流状に近くなり,磁束量の精密な制御が可能になる。また,バイパス磁路の接続により界磁磁石に繋がる磁気抵抗の変動は小さくなるので可動磁極部の偏倚を妨げる磁気力は抑制され,主磁路に流入する磁束量を変更しても界磁磁石にはバイパス磁路が接続されているので界磁磁石が減磁されるリスクは避けられる。
可動磁極部の偏倚手段には種々の手段が適用可能である。例えば,半固定機構として予め手動で設定する機構手段,遠心力を利用するガバナ機構,回転子内にアクチュエータを有する機構手段或いは回転子外からの外力により偏倚させる機構手段等がある。
回転電機には,界磁部が回転し電機子が静止する構造及びその逆の構造,さらに円筒状の電機子と界磁部が径方向に空隙を介して対向する構造,或いは略円盤状の電機子と界磁部が軸方向に空隙を介して対向する構造等のいずれの構造も存在する。本発明は永久磁石励磁の界磁部を持つ上記何れの構造の回転電機システムにも適用される。また,回転電機は電機子コイルへの電流を入力として回転力を出力とすれば電動機であり,回転力を入力として電機子コイルから電流を出力すれば発電機である。電動機或いは発電機に於いて最適の磁極構成は存在するが,可逆的であり,上記の回転電機システムは電動機,発電機の何れにも適用される。
請求項2の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,バイパス磁路の磁気抵抗をバイパス磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値及び主磁路の磁気抵抗を主磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値が互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定されている事を特徴とする。主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯との相対位置により変動するが,本発明で主磁路の磁気抵抗は磁性体突極と磁性体歯間の各相対位置に関して平均化された値としている。バイパス磁路内には磁気的な空隙或いは狭隘部等で構成する磁気抵抗調整部分を有してバイパス磁路の磁気抵抗を設定する。両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に等しく設定することで界磁磁石から両磁路に流入する磁束量は一定に保たれるので可動磁極部の偏倚を妨げる磁気力は最小となる。「ほぼ等しい」の意味は前記偏倚に用いるアクチュエータの出力以下に前記偏倚を妨げる磁気力を抑制するよう両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に近く設定する事である。
前記両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定する事で両磁路間の磁束漏洩を小さく抑制し,前記偏倚を妨げる磁気力を小さく抑制する事が出来るが,磁路の磁気抵抗を変動させる要因は多い。すなわち,量産段階で部品寸法は設定公差内でばらついて各磁路の磁気抵抗を変動させ,磁路間の磁束漏洩が無視できない場合は可動磁極部の偏倚位置が各磁路の磁気抵抗に影響し,磁性体の透磁率は温度の影響を受けやすいので各磁路の磁気抵抗は変化する。更にまた電機子コイルに電流が流れると主磁路の磁気抵抗は実効的に変動する。このように各磁路の磁気抵抗は変動するので回転電機システムの仕様に合わせて回転子の静止状態或いは平均的な運転条件に於いて両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定する。
請求項3の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石から磁性体突極に至る磁路は等方性の磁性体を含んで構成される事を特徴とする。界磁磁石の一方の磁極は磁性体突極延長部に接続される構成であるのでバイパス磁路に流入した磁束は磁性体突極延長部を介して界磁磁石に環流する。磁束の環流する磁路の磁気抵抗を可能な限り小さく構成する為に等方性の磁性体で界磁磁石から磁性体突極に至る磁路を構成する。磁性体突極をケイ素鋼板の積層体で構成すると,ケイ素鋼板の積層方向の磁気抵抗は大となる。磁束がケイ素鋼板の積層方向に流れる構成で特に有効である。
請求項4の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,分流磁極部に配置された主磁極及びバイパス磁極は周方向に並んで配置され,表面磁極部或いは分流磁極部の何れかを可動磁極部として残余に対して周方向に偏倚可能に構成される事を特徴とする。
請求項5の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁部及び電機子は径方向に対向し,周方向磁化を有する界磁磁石と分流磁極部を周方向に隣り合う磁性体突極延長部間に配置され,分流磁極部に配置された主磁極及びバイパス磁極は径方向に並んで配置され,分流磁極部を可動磁極部として周方向と直交する面内に偏倚可能に構成される事を特徴とする。
請求項6の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁部及び電機子は軸方向に対向し,周方向磁化を有する界磁磁石と分流磁極部を周方向に隣り合う磁性体突極延長部間に配置され,分流磁極部に配置された主磁極及びバイパス磁極は軸方向に並んで配置され,分流磁極部が可動磁極部として軸方向に偏倚可能に構成される事を特徴とする回転電機システム
請求項7の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,可動磁極部の偏倚に必要な力を小とするよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗が調整される事を特徴とする。本発明は磁気抵抗調整手段を有して回転電機の運転中に主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して可動磁極部の偏倚制御時に前記偏倚に必要な力を小として精密な磁束量制御を可能にしている。磁気抵抗調整手段により可動磁極部の偏倚制御時に前記偏倚に必要な力を小とする方法は,主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に調整する事,或いは可動磁極部の偏倚をアシストする方向の磁気力を発生させるよう主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件からずらして調整する事がある。具体的に磁路の磁気抵抗を調整するには磁路を形成する寸法諸元の変更制御及び磁路に巻回したコイルへの通電制御等による磁気抵抗調整手段,方法,温度或いは磁気飽和等を利用して磁性体の磁気特性を制御する方法がある。
請求項8の発明は,請求項7記載の回転電機システムに於いて,
可動磁極部を偏倚させる際に磁気抵抗調整手段によりバイパス磁路の磁気抵抗と主磁路の磁気抵抗とは最小磁気力条件にほぼ等しくなるよう調整される事を特徴とする。可動磁極部を偏倚させる際にバイパス磁路と主磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に調整すれば,偏倚を妨げる磁気力を最小に出来る。前記偏倚に用いるアクチュエータの出力以下に偏倚を妨げる磁気力を抑制して回転電機の運転条件により各磁路の磁気抵抗が初期値から変動する場合でも精密な磁束量制御を可能にする。
請求項9の発明は,請求項7記載の回転電機システムに於いて,電機子を流れる磁束量を増加する場合に最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗は小に或いはバイパス磁路の磁気抵抗は大に磁気抵抗調整手段によって調整され,電機子を流れる磁束量を減少させる場合に最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗は大に或いはバイパス磁路の磁気抵抗は小に磁気抵抗調整手段によって調整され,同時に可動磁極部が偏倚される事を特徴とする。主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗差に応じて現れる磁気力は最小磁気力条件を境に方向が変わる。関係するパラメータを最小磁気力条件を基準に所定量ずらして磁気力を発生させる事により偏倚をアシストする磁気力を安定的に得る事が出来る。最小磁気力条件は回転電機の運転状態によって変わり,運転中に学習的に取得する或いは予め設定されたマップデータから取得する。
請求項10の発明は,請求項7記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,間歇的に変えられた磁気抵抗調整手段に関係するパラメータ,或いは通常の運転中に変わる前記パラメータと前記磁気力との関係を監視し,前記磁気力を小とする前記パラメータが最小磁気力条件パラメータとして設定される事を特徴とする。主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗は,可動磁極部の偏倚位置の影響を受け,温度による磁気特性変化,さらに経時的な磁気特性変化等の影響を受ける。本発明は主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事で現れる磁気力の検知手段を有し,最小磁気力条件となるパラメータを学習的に取得してそれらのパラメータを更新する。
請求項11の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,表面磁極部が分流磁極部に対して周方向に偏倚されるよう構成され,表面磁極部が分流磁極部に対して回転子の回転方向に相対偏倚する時に界磁磁石と主磁極との対向面積が増大するよう構成されている事を特徴とする。表面磁極部を回転方向に加速するよう電機子コイルに電流を供給して偏倚させると,界磁磁石と主磁極との対向面積が増大する方向の磁気力が発生されるので前記偏倚に要する力を小さく設定できる。
請求項12の発明は,請求項1記載の回転電機システムに於いて,表面磁極部が分流磁極部に対して周方向に偏倚されるよう構成され,表面磁極部の分流磁極部に対する位置を保持する位置保持機構を更に有し,表面磁極部を分流磁極部に対して回転偏倚させる際に位置保持機構による表面磁極部の保持力を一時的に緩めると共に回転子を回転駆動するよう電流を電機子コイルに供給して表面磁極部を周方向に偏倚させる事を特徴とする。表面磁極部を偏倚させる手段として回転電機システムの駆動力を利用できるので特に大出力のアクチュエータを要せずに迅速な偏倚を実現できる。
請求項13の発明は,請求項1から請求項12記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,回転力を入力とし,発電電力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により電機子コイルに誘起される発電電圧が所定の値より大の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を小とされ,発電電圧が所定の値より小の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を大とされ,発電電圧が所定の値に制御される事を特徴とする。広範な回転速度範囲で定電圧の発電電圧を得る事が出来,高価な電圧制御装置を不要とし,エネルギー効率を向上出来る。
請求項14の発明は,請求項1から請求項12記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により回転速度が所定の値より大で電機子を流れる磁束量を減少させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を小とされ,回転速度が所定の値より小で電機子を流れる磁束量を増大させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を大として回転力が最適に制御される事を特徴とする。広範な回転速度範囲で電動機システムとしての出力を最適に制御する。
請求項15の発明は,請求項1から請求項12記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,回転速度を減少させる場合には制御装置により電機子を流れる磁束量を大とされるよう可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積が大とされて回転エネルギーが発電電力として取り出される事を特徴とする。回生制動の能力を改善して総合的なエネルギー効率を向上させる事が出来る
請求項16の発明は,電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する表面磁極部と,磁性体突極延長部に結合された界磁磁石に対向して配置された分流磁極部とを有する回転電機の電機子を流れる磁束量を制御する磁束量制御方法であって,分流磁極部は主磁極及びバイパス磁極を前記界磁磁石に対向して有し,界磁磁石の一方の磁極から主磁極に流入した磁束が電機子および隣り合う磁性体突極を介して界磁磁石の他方の磁極に環流する主磁路と,界磁磁石の一方の磁極からバイパス磁極に流入した磁束が主として界磁部内で磁性体突極延長部を介して界磁磁石の他方の磁極に環流するバイパス磁路とを界磁磁石に並列に磁気的に接続し,表面磁極部或いは分流磁極部の何れかを可動磁極部として界磁磁石が主磁極と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和が一定に保たれながら前記それぞれの対向面積を変えるよう可動磁極部が残余に対して相対偏倚可能に構成し,可動磁極部を偏倚させて電機子を流れる磁束量を制御する。
磁石励磁回転電機システムに於ける磁束量制御方法であって,磁性体突極を励磁する界磁磁石に磁性体突極及び電機子側を通る主磁路及び電機子側を通らないバイパス磁路とが並列に接続され,主磁路に接続される主磁極及びバイパス磁路に接続されるバイパス磁極と界磁磁石の磁極との対向面積を機構偏倚により変えて主磁路,すなわち電機子側を流れる磁束量を制御する。界磁磁石に主磁極及びバイパス磁極が対向しているので界磁磁石からの磁束は層流状に主磁極及びバイパス磁極に流入し,主磁極に分流される磁束量はほぼ主磁極と界磁磁石の対向面積に比例する。バイパス磁路の接続により界磁磁石に繋がる磁気抵抗の変動は小さくなるので可動磁極部の偏倚を妨げる磁気力は抑制され,主磁路を流れる磁束量を変更しても界磁磁石には常に磁路が接続されているので界磁磁石が減磁される懸念は少ない。
請求項17の発明は,請求項16記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。バイパス磁路の磁気抵抗をバイパス磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値及び主磁路の磁気抵抗を主磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値が互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定する。両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に等しく設定することで界磁磁石から両磁路に流入する磁束量は一定に保たれるので可動磁極部の偏倚を妨げる磁気力は最小となる。「ほぼ等しい」の意味は前記偏倚に用いるアクチュエータの出力以下に前記偏倚を妨げる磁気力を抑制するよう両磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に近く設定する事である。各磁路の磁気抵抗は回転電機の運転条件によって変動し,界磁制御の仕様により静止状態或いは平均的な運転条件に於いてバイパス磁路及び主磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定する。バイパス磁路の磁気抵抗と主磁路の磁気抵抗とが最小磁気力条件に近い状態では主磁路とバイパス磁路間の磁束短絡を小としてさらに精密な磁束分流制御を実現できる。
請求項18の発明は,請求項16記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,可動磁極部の偏倚に必要な力を小とするよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する。本発明は回転電機の運転中に主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整して可動磁極部の偏倚制御時に前記偏倚に必要な力を小として精密な磁束量制御を可能にする。磁気抵抗調整手段の具体的な構成には磁路を形成する寸法諸元の変更制御,磁路に巻回したコイルへの通電制御,温度或いは磁気飽和等を利用する磁性体の磁気特性制御等がある。磁気抵抗調整手段により可動磁極部の偏倚制御時に前記偏倚に必要な力を小とする方法は,主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を偏倚を妨げる磁気力を最小にする最小磁気力条件に調整する,或いは可動磁極部の偏倚をアシストする方向の磁気力を発生させるよう主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件から外して調整する。後者は偏倚に必要な力をさらに小と出来るが,偏倚制御手段の駆動方向切換と共に磁気抵抗調整手段の調整方向切換を同期させる必要があり,磁束量制御方法の仕様に応じて選択する。
請求項19の発明は,請求項18記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。可動磁極部を偏倚させる際に磁気抵抗調整手段によりバイパス磁路の磁気抵抗と主磁路の磁気抵抗とを最小磁気力条件にほぼ等しくなるよう調整する。可動磁極部を偏倚させる際にバイパス磁路と主磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に調整すれば,偏倚を妨げる磁気力を最小に出来る。前記偏倚に用いるアクチュエータの出力以下に偏倚を妨げる磁気力を抑制して回転電機の運転条件により各磁路の磁気抵抗が初期値から変動する場合でも精密な磁束量制御を可能にする。
請求項20の発明は,請求項18記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。電機子を流れる磁束量を増加する時に磁気抵抗調整手段は最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗を小に或いはバイパス磁路の磁気抵抗を大に調整し,電機子を流れる磁束量を減少させる時に磁気抵抗調整手段は最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗を大に或いはバイパス磁路の磁気抵抗を小に調整し,同時に可動磁極部を偏倚させる。主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗差に応じて現れる磁気力は最小磁気力条件を境に方向が変わる。関係するパラメータを最小磁気力条件を基準に所定量ずらして磁気力を発生させる事により偏倚をアシストする磁気力を安定的に得る事が出来る。最小磁気力条件は回転電機の運転状態によって変わり,運転中に学習的に取得する或いは予め設定されたマップデータから取得する。
請求項21の発明は,請求項18記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,間歇的に変えられた磁気抵抗調整手段に関係するパラメータ,或いは通常の運転中に変わる前記パラメータと可動磁極部に加わる磁気力との関係を監視し,可動磁極部に加わる磁気力を小とする前記パラメータを最小磁気力条件パラメータとして設定する。主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗は,可動磁極部の偏倚位置の影響を受け,温度による磁気特性変化,さらに経時的な磁気特性変化等の影響を受ける。本発明は主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事で現れる磁気力の検知手段を有し,磁気抵抗調整手段に係わるパラメータを学習的に取得して最小磁気力条件としてそれらのデータを更新する。
永久磁石励磁の界磁部を有する回転電機システムに於いて,機械的偏倚により界磁磁石の磁束を主磁路及びバイパス磁路に分流制御させるとして,機械的偏倚の障害となる磁気力を抑制し,或いは磁気力を利用して磁束量を制御可能とした。本発明の磁束分流制御回転電機に於いて弱め界磁制御が容易となり,高エネルギー効率で出力を最適に制御する回転電機システムを実現出来る。
以下に本発明による回転電機システムについて,その実施例及び原理作用等を図面を参照しながら説明する。
本発明による回転電機システムの第一実施例を図1から図7を用いて説明する。第一実施例は,磁束量制御に際して回転子を加速或いは減速させる方向の電流を電機子コイルに供給する事で主磁路の磁気抵抗調整及び表面磁極部を偏倚させる手段としている。図1は回転電機の縦断面図,図2は電機子と回転子とを示す断面図,図3は回転子の構成を示す分解斜視図,図4は回転子と表面磁極部との係合部を示す斜視図,図5は磁石トルク及びリラクタンストルクと駆動電流位相の関係を示す図,図6は回転電機システムのブロック図,図7はサンプリング的に表面磁極層の偏倚制御を行って磁束量を制御するタイミングチャートをそれぞれ示す。
図1はラジアルギャップ構造の回転電機に本発明を適用した実施例を示し,回転軸11がベアリング13を介してハウジング12に回動可能に支持されている。電機子はハウジング12に固定された円筒状磁気ヨーク15と,磁性体歯14と,電機子コイル16とから構成されている。回転子の界磁部は磁性体歯14と径方向に対向して界磁磁石を有する表面磁極部17,表面磁極部17と微小間隙を介して対向する分流磁極部とから成り,分流磁極部は主要部を主磁極,バイパス磁極とより構成されて回転子支持体19に固定され,表面磁極部17は表面磁極部支持体1aと共にベアリング1kを介して回転子支持体19及び分流磁極部に回動可能に支持されている。番号18は回転子の左側端部に延長されたバイパス磁極の延長部を代表して示し,番号1rは円筒状磁気コアを示し,番号1pはバイパス磁極延長部18に接続された環状磁気コアを示している。
回転軸11は中空構造として,中空部1d内に軸方向に摺動可能に配設された摺動棒1hを有し,摺動棒1hはプッシュロッド1eを介してアクチュエータ1fにより軸方向に駆動される構成としている。スプリング1gとクラッチ板1bが回転子支持体19に配置され,スプリング1gがクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接するよう付勢されている。クラッチ板1bは内周側に3個の突部1jを持ち,その突部1jは回転軸11の円筒壁に設けられたスリット部1cを貫通係合して回転軸11とクラッチ板1b間で相互に回転力を伝達している。さらにクラッチ板1bの内周側突部1jが摺動棒1hの端部と接する構成である。回転子支持体19に設けた凹部1mと表面磁極部支持体1aに固定した偏倚規制突部1nは表面磁極部17の偏倚規制の為の係合部を構成する。
図2は図1のA−A’に沿う電機子及び回転子の断面図を示し,相互の関係を説明する為に構成部分の一部に番号を付して示している。電機子はハウジング12に固定された円筒状磁気ヨーク15と,円筒状磁気ヨーク15から径方向に延び,周方向に磁気空隙を有する複数の磁性体歯14と,磁性体歯14に巻回された電機子コイル16とから構成されている。本実施例では9個の電機子コイル16より構成され,それらは三相に結線されている。
電機子の磁性体歯14先端には径方向に短い可飽和磁性体結合部2dを隣接する磁性体歯14の先端部間に設けてある。磁性体歯14及び可飽和磁性体結合部2dはケイ素鋼板を型で打ち抜いて積層し,電機子コイル16を巻回した後,円筒状磁気ヨーク15と組み合わせて電機子としている。可飽和磁性体結合部2dは磁性体歯14と一体として磁性体歯14の支持強度を向上させ,磁性体歯14の不要な振動を抑制させる。可飽和磁性体結合部2dの径方向の長さは短く設定して容易に磁気的に飽和する形状としたので電機子コイル16が発生させる磁束或いは界磁磁束によって容易に飽和し,その場合に電機子コイル16が発生させる磁束及び界磁磁束の短絡を僅かな量とする。電機子コイル16に電流が供給されると,時間と共に可飽和磁性体結合部2dは磁気的に飽和させられて周辺に磁束を漏洩させるが,磁気飽和した可飽和磁性体結合部2dに現れる実効的な磁気空隙の境界はクリアではないので漏洩する磁束の分布は緩やかとなり,可飽和磁性体結合部2dはこの点でも磁性体歯14に加わる力の時間変化を緩やかにして振動抑制に寄与する。
図2に於いて,回転子の界磁部は表面磁極部17と分流磁極部に区分され,微小間隙を介して配置されている。磁性体歯14と対向する表面磁極部17の側には周方向に等しいピッチで配置された磁性体突極が磁気空隙部を挟んで配置され,隣接する磁性体突極を番号21,22で,磁気空隙部を番号23で代表させて示している。分流磁極部と対向する表面磁極部17の側には磁性体突極21の延長部24に界磁磁石26,磁性体突極22の延長部25に界磁磁石27がそれぞれ結合され,隣接する界磁磁石26,27は互いに径方向磁化を反転させて隣接する磁性体突極21,22を互いに異極に磁化するよう配置されている。界磁磁石26,27に図示された矢印はそれぞれの磁化方向を示す。分流磁極部には界磁磁石26,27に対向して主磁極28,バイパス磁極2aの組み合わせと主磁極29,バイパス磁極2bの組み合わせとがそれぞれ配置され,主磁極28,29は円筒状磁気コア1rと一体化されている。バイパス磁極2a,2bは軸方向に延長され,図1にバイパス磁極延長部18として代表されて示されている。番号2cは回転子の回転方向を示す。
磁性体突極21,22は径方向に微小幅を持つ可飽和磁路部分により連結され,ケイ素鋼板を所定の型で打ち抜いて軸方向に積層して形成され,磁性体突極延長部24,25には軟鉄製ブロックが挿入され,界磁磁石26,27の部分には界磁磁石ブロックが挿入され,磁気空隙部23には樹脂を充填して表面磁極部支持体1aに固定されている。分流磁極部は回転子支持体19に固定された円筒状磁気コア1r及び主磁極28,29は軟鉄製ブロックより構成され,バイパス磁極2a,2bは軟鉄製ブロックより構成されて回転子支持体19に固定されている。番号2eは磁気空隙部を示し,非磁性のステンレススチールで構成されている。
主磁極28,29の周方向角度長はバイパス磁極2a,2bの周方向角度長と等しく設定され,界磁磁石26,27それぞれの周方向角度長を主磁極28の周方向角度長及び主磁極28,バイパス磁極2a間間隙の周方向角度長の和に等しくなるよう設定し,表面磁極部17及び分流磁極部間の相対偏倚量は主磁極28の周方向角度長以下としている。この構成により界磁磁石26は常に主磁極28とバイパス磁極2aとに対向し,表面磁極部17の偏倚に応じてそれぞれの対向面積は変わるが,それぞれの対向面積の和は一定に保たれる。
図1から図3を用いて界磁磁石26,27からの磁束を制御する構成及び動作原理を説明する。図3は図1,図2に示した回転子31の構成を示す分解斜視図であり,理解を容易にする為に環状磁気コア1pを離して示してある。図3及び図1及び図2に示されるように,軸方向に延長されたバイパス磁極2a,2bはバイパス磁極延長部18で代表されて環状磁気コア1pに結合され,環状磁気コア1pの外周部は磁性体突極延長部24,25に微小間隙を介して対向する構成である。
図2に於いて,界磁磁石26の一方の磁極には主磁極28とバイパス磁極2aが微小間隙を介して対向し,磁束は界磁磁石26,主磁極28,バイパス磁極2aの表面にほぼ直交するのでそれらの間隙に於ける磁束はほぼ層流状であり,界磁磁石26と主磁極28の対向面積,界磁磁石26とバイパス磁極2aの対向面積に比例して磁束はそれぞれ主磁極28,バイパス磁極2aに分流される。主磁極28に流入した磁束は円筒状磁気コア1r,主磁極29,界磁磁石27,磁性体突極延長部25,磁性体突極22,磁性体歯14,磁性体突極21,磁性体突極延長部24を介して界磁磁石26に環流する主磁路を構成する。バイパス磁極2aに流入した磁束はバイパス磁極延長部18,環状磁気コア1p,磁性体突極延長部24を介して界磁磁石26に環流するバイパス磁路を構成する。主磁路には界磁磁石26及び界磁磁石27が含まれ,バイパス磁路には界磁磁石26のみが含まれるのでバイパス磁路の磁気抵抗を主磁路の磁気抵抗の半分となるよう環状磁気コア1pの外周部と磁性体突極延長部24間の間隙長を磁気抵抗調整部分として設定する。環状磁気コア1pの外周部と磁性体突極延長部25間の間隙長も同様に設定する。
上記設定に於いて,表面磁極部17が周方向に偏倚しても界磁磁石26が主磁極28,バイパス磁極2aそれぞれと対向する面積の和は一定であるので主磁路を流れる磁束量とバイパス磁路を流れる磁束量の和は一定となり,この条件が本実施例に於いて表面磁極部17の偏倚を妨げる磁気力を最小とする最小磁気力条件である。主磁路を流れる磁束量は界磁磁石26と主磁極28の対向面積に比例し,表面磁極部17の偏倚を妨げる磁気力は小に抑制されるので本実施例により精密な磁束量制御が可能である。主磁路は磁性体突極21と磁性体歯14間,磁性体歯14と磁性体突極22間に空隙を有する。それら空隙に於ける対向面積はバイパス磁極延長部18と磁性体突極延長部24間の対向面積より大であるが,環状磁気コア1p,磁性体突極延長部24間の間隙を微小として主磁路の磁気抵抗とバイパス磁路の磁気抵抗とを最小磁気力条件に設定出来る。さらに磁性体突極延長部24,環状磁気コア1pは,飽和磁束密度が大きい軟鉄のブロックで構成したので環状磁気コア1p,磁性体突極延長部24間の対向面積を小さくしても磁気的に飽和し難い。本実施例では平均的な運転条件に於いて,主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗は最小磁気力条件にほぼ等しくなるように諸元を設定する。
表面磁極部17と分流磁極部間の相対偏倚量の最大値は主磁極28の周方向角度長である。それ以上の偏倚量でも磁束量制御は可能であるが,主磁路を流れる磁束量と表面磁極部17と分流磁極部間の相対偏倚量の比例関係とが不定と成って磁束量制御を複雑にする。本実施例では図1に示したように回転子支持体19に設けた凹部1m,表面磁極部支持体1aに固定した偏倚規制突部1nとにより表面磁極部17と分流磁極部間の偏倚を界磁磁石26に対向している主磁極28の周方向角度長以下となるよう規制している。
図4は回転子支持体19の端面に設けられた凹部1m,表面磁極部支持体1aに固定した偏倚規制突部1nを拡大して示す斜視図である。同図に於いて,凹部1mには偏倚規制突部1nが配置され,表面磁極部17と分流磁極部間の偏倚量を規制している。偏倚規制突部1nが凹部1m内の右側壁面に当接した場合が界磁磁石26と主磁極28の対向面積を最小とする場合に,偏倚規制突部1nが凹部1m内の左側壁面に当接した場合が界磁磁石26と主磁極28の対向面積を最大とする場合にそれぞれ対応している。本実施例では図2に示すように,主磁路の磁束量を増加させるには表面磁極部17を時計回り方向に相対偏倚させて界磁磁石26と主磁極28と対向する周方向角度長を増加させ,主磁路の磁束量を減少させるには表面磁極部17を反時計回り方向に相対偏倚させて界磁磁石28と主磁極28と対向する周方向角度長を減少させる。主磁路の界磁磁束の増減方向と表面磁極部17の偏倚方向の関係が常に定まって磁束量制御をシンプルに出来る。
表面磁極部17の偏倚制御は図1を用いて説明する。同図に於いて,クラッチ板1bはスプリング1gにより表面磁極部支持体1aに圧接され,クラッチ板1bの内周側突部1jは回転軸11のスリット部1cに貫通係合しているので表面磁極部支持体1a及び表面磁極部17は回転軸11,回転子支持体19と共に回転している。
表面磁極部17を回転子支持体19に対して回転偏倚させる場合にはアクチュエータ1fによりプッシュロッド1e及び摺動棒1h及びクラッチ板1bの内周側突部1jを左方向に偏倚させてスプリング1gを縮めてクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aから離して表面磁極部支持体1a及び表面磁極部17をフリー回転状態にさせる。同時に図示していない駆動回路により,電機子コイル16に駆動電流を流して表面磁極部17を偏倚方向に回転駆動させる。表面磁極部支持体1a及び表面磁極部17はフリー回転状態でその質量は小さいので駆動回路に駆動されて加速或いは減速回転して分流磁極部に対して偏倚する。表面磁極部17の偏倚駆動終了後はアクチュエータ1fがプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に偏倚駆動させ,スプリング1gによりクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接させる。
回転子を加速或いは減速駆動する場合には主磁路を流れる磁束量をそれぞれ大,小とする方向に表面磁極部17を偏倚させようとする磁気力が現れる。図2に示されるように表面磁極部17が分流磁極部に対して回転子の回転方向に相対偏倚すると,界磁磁石26と主磁極28との対向面積が増大するよう表面磁極部17及び分流磁極部を配置したので上記磁気力を有効に利用出来る。表面磁極部17を加速或いは減速方向に回転駆動するに際しては磁性体歯14と磁性体突極21との相対位置により制御された駆動電流を電機子コイル16に供給する。電動機の駆動方法として周知であり,駆動電流の供給方法及びタイミング等の説明は省略する。この構成で表面磁極部17を加速或いは減速方向に回転駆動する事が主磁路の磁気抵抗調整手段及び表面磁極部17の偏倚制御手段として機能している。アクチュエータ1fは表面磁極部17をフリー回転状態とする時のみプッシュロッド1eを左方向に駆動するのでソレノイドコイルによる構成が適している。
本実施例は表面磁極部17に於いて図2に示されるように周方向に磁性体突極と磁気空隙部とが交互に並ぶ構成であり,磁石トルク及びリラクタンストルクを利用して回転子を回転駆動出来る構成である。表面磁極部17の偏倚駆動には磁石トルク及びリラクタンストルクの双方を利用出来るが,リラクタンストルクを主に利用して表面磁極部17を駆動するよう電機子コイル16に供給する駆動電流のタイミングを調整する事が望ましい。表面磁極部17の偏倚駆動にリラクタンストルクを主に利用する理由は,例えば,主磁路に於ける界磁磁束がゼロ近傍である場合には磁石トルクを利用出来ない事による。
回転電機が電動機の場合に回転子を回転駆動するには磁性体歯14と磁性体突極21との相対位置に応じて電機子コイル16に適切な電流を供給する。図5は電機子コイル16に流す駆動電流を正弦波とした場合の駆動電流位相と磁石トルク,リラクタンストルクとの関係を示す図である。縦軸54は回転子を駆動するトルクを,横軸55は駆動電流位相を示している。番号51は磁石トルクを,番号52はリラクタンストルクを,番号53は磁石トルクとリラクタンストルクの合成トルクをそれぞれ示す。同図に於いて,重要な点は磁石トルク51を最大にする駆動電流位相を基準とし,リラクタンストルク52が最大になる駆動電流位相は電気角にして45度進めた位置にあり,合成トルク53の最大値は0から45度迄の間にある事である。図5は正弦波駆動の場合を示しているが,パルス電流を電機子コイル16に供給して回転子を駆動する場合に於いてもリラクタンストルクを利用するには駆動電流の位相を進める事には変わりはなく,パルス通電の時間をリラクタンストルクを期待出来るタイミングに調整してリラクタンストルクを主として表面磁極部17の偏倚駆動に利用する。
以上,図1から図5に示した回転電機に於いて,表面磁極部17を分流磁極部に対して相対偏倚させる事で電機子に流れる磁束量を制御できることを説明し,さらに表面磁極部17を分流磁極部に対して偏倚させる手段方法を説明した。本実施例はさらにサンプリング制御的に電機子に流れる磁束量を制御するシステムであり,図6に示す回転電機システムのブロック図及び図7に示すタイミングチャートを用いて回転電機システムとしての制御を説明する。図6は磁束量制御を行う回転電機システムのブロック図を示している。図6に於いて,回転電機61は入力62,出力63を有するとし,制御装置65は回転電機61の出力63及び可動磁極部の位置を含む状態信号64を入力として制御信号66を介して回転電機61の電機子を流れる磁束量を制御する。番号67は電機子コイル16の駆動回路を示す。回転電機61が発電機として用いられるのであれば,入力62は回転力であり,出力63は発電電力となる。回転電機61が電動機として用いられるのであれば,入力62は駆動回路67から電機子コイル16に供給される駆動電流であり,出力63は回転トルク,回転速度となる。
回転電機が電動機として用いられる場合において,弱め界磁制御を行って回転力を最適に制御する電動機システムを説明する。本実施例では磁束量制御を必要とする時のみ所定の周期で磁束量制御と回転駆動制御とを交互に繰り返している。図7は,横軸7bは時刻,番号71は磁束量制御を行う時間帯,番号72は回転駆動制御を行う時間帯としてサンプリング的に磁束量制御を行うタイムチャートを示している。番号73で示す時間帯では磁束量制御を行わず,回転駆動制御のみを行っている。制御装置65は出力63である回転速度が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1h及びクラッチ板1bを左方向に駆動して表面磁極部17をフリー回転状態とし,同時に駆動回路67により表面磁極部17を回転方向2cと逆方向(図2に於いて,反時計回り方向)に駆動し,界磁磁石26と主磁極28とが対向する周方向角度長を小とさせる。番号71で示す時間帯の終了と共に駆動回路67は通常の回転駆動制御に復帰し,アクチュエータ1fはプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動してクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接させる。
回転速度が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には制御装置65が番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,クラッチ板1bを表面磁極部支持体1aから離して表面磁極部17をフリー回転状態とし,同時に駆動回路67により表面磁極部17を回転方向2c(図2に於いて,時計回り方向)に駆動し,界磁磁石26と主磁極28とが対向する周方向角度長を大とさせる。番号71で示す時間帯の終了と共に駆動回路67は通常の回転駆動制御に復帰し,アクチュエータ1fはプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動してクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接させる。図7に於いて,番号74は回転速度,番号75は電機子に流れる磁束量を示し,磁束量制御の時間帯71では回転子には駆動力が伝えられないので回転速度74が僅かに低下し,磁束量75が変化させられている事が示されている。
回転電機が発電機として用いられる場合において,弱め界磁制御を行って発電電圧を所定の電圧となるよう制御する定電圧発電機システムを説明する。駆動回路67により表面磁極部17を偏倚駆動する場合には発電電力を取り出せないが,本実施例では磁束量制御を必要とする時のみ所定の周期で磁束量制御を行うとし,さらに表面磁極部17を回転方向に偏倚駆動させる時のみ駆動回路67から電機子コイル16に電流を供給するとして発電電力を取り出せる時間を最大にしている。図7に於いて,横軸7bは時刻を示し,番号71は磁束量制御を行う時間帯を示す。番号73で示す時間帯では磁束量制御を行わず,発電電力の出力のみを行っている。
制御装置65は出力63である発電電圧が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,クラッチ板1bを表面磁極部支持体1aから離して表面磁極部17をフリー回転状態とし,電機子と表面磁極部17間に働く反発力により表面磁極部17を回転方向2cと逆方向(図2に於いて,反時計回り方向)に相対偏倚させ,界磁磁石26と主磁極28とが対向する周方向角度長を小とさせる。番号71で示す時間帯の終了と共にアクチュエータ1fはプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動してクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接させる。図7に於いて,番号76は所定の電圧を,番号77は発電電圧を示し,番号78は電機子に流れる磁束量を示す。番号79は電機子に流れる磁束量78を減少させる例を示し,駆動回路67は接続されていないので発電電力の出力は可能であり,発電電圧77が磁束量78に比例しては減少している事が示されている。ただし,表面磁極部17の偏倚位置が主磁極28の周方向角度長に近い場合は電機子に働く反発力は小さいので駆動回路67により表面磁極部17を回転方向2cと逆方向に回転偏倚させる。
発電電圧が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には制御装置65が番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fによりプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,クラッチ板1bを表面磁極部支持体1aから離して表面磁極部17をフリー回転状態とし,同時に駆動回路67により表面磁極部17を回転方向2c(図2に於いて,時計回り方向)に駆動し,界磁磁石26と主磁極28とが対向する周方向角度長を大とさせる。番号71で示す時間帯の終了と共にアクチュエータ1fはプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動してクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接させ,駆動回路67を休止させる。図7に於いて,番号7aで示す時間帯が電機子に流れる磁束量78を増加させる場合であり,この時間帯は駆動回路67により電機子コイル16に駆動電流が供給されるので発電電力の出力は出来ず,発電電圧77は途切れている事が示されている。
上記に示した磁束量のサンプリング制御に於いて,磁束量制御の時間帯71の幅は,可動部の質量,すなわち表面磁極部17及び表面磁極部支持体1aの質量,さらに偏倚させるアクチュエータの出力,この場合は回転電機で偏倚駆動に利用出来るトルクの大きさ等を考慮して設定する。磁束量制御の時間帯71の周期は制御の対象である電機子に流れる磁束量の許容精度により決める。実際に磁束量を直接に把握するのは困難であるので電機子コイル16に誘起される電圧(発電電圧)の目標値からのずれ量の許容精度から時間帯71の周期を選定する。
本実施例に於いて,磁束量制御のサンプリング周期は時間間隔で設定したが,これは回転子の回転周期を基準にする事も可能である。この場合にサンプリング周期は回転速度の変動によって変るが,回転子上の座標系から考えればこの方が妥当な場合がある。この場合に回転子の特定の周方向位置で磁束量制御を実施するとして,クラッチ板1bを制御するアクチュエータ1fの代わりにリンク機構を用いて回転子の特定位置でクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aから離す構成を採用してもよい。
本実施例では表面磁極部の励磁部に対する位置を保持する位置保持機構としてクラッチ板を含む機構を用いたが,これは一例であってブレーキ機構或いはメカニカルディテントを含む機構等を使用する事も出来る。
一般に磁石を含む磁気回路の一部に可動部分が有る場合には磁束量を大にする方向(磁気回路の磁気抵抗を小にする方向と同じ意味である)に可動部分を動かそうとする磁気力が現れる。本発明に先行して界磁磁束を制御する目的で磁気回路の一部を偏倚させて界磁磁石を短絡し或いは磁路の磁気抵抗を変えようとする提案は多い。しかし,界磁磁石はその回転電機に於いて,磁石トルク或いは電力を発生させる源泉であり,前記偏倚を妨げる磁気的な力は大きく,精密な磁束量制御を困難にしていた。上記に説明した本発明の構成により磁気力は小さく抑制され,精密な磁束量制御が可能となる。
本実施例では界磁磁石が微小間隙を介して主磁極及びバイパス磁極に対向する構成である。主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を厳密に等しく構成するのは困難であり,両者の磁気抵抗に差があるとして界磁磁石から磁性体を介して主磁極及びバイパス磁極に対向させると,界磁磁石からの磁束はそれぞれの磁路の磁気抵抗に応じて前記磁性体内で分流して主磁路を流れる磁束は界磁磁石と主磁極間の対向面積には比例しない事になり,磁束量の制御は困難となる。構造上の制約から界磁磁石から磁性体を介して主磁極及びバイパス磁極に対向させる場合には,磁性体として異方性の強い磁性体或いは磁気飽和で分流できない程度に厚みの薄い磁性体として磁性体内で磁束が分流し難い構成とする。この構成は実質的に界磁磁石の端面で磁束を分流させる点で本発明の趣旨に含まれる。
本発明による回転電機システムの第二実施例を図8から図12までを用いて説明する。第二実施例は,ラジアルギャップ構造の回転電機システムであり,分流磁極部を周方向と直交する面内に偏倚制御して電機子を流れる磁束量を制御する。分流磁極部の偏倚制御時に電機子コイルに最小磁気力電流を供給して磁気力を最小とし,最小磁気力電流は運転中に学習的に取得する。図8は回転電機の縦断面図,図9,10は電機子と回転子との構成を示す断面図,図11は分流磁極部の偏倚手段を示す縦断面図,図12は最小磁気力電流を学習的に取得するタイムチャートを示す。
図8はラジアルギャップ構造の回転電機に本発明を適用した実施例を示し,回転軸11がベアリング13を介してハウジング12に回動可能に支持されている。電機子はハウジング12に固定された円筒状磁気ヨーク15と,磁性体歯14と,電機子コイル16とから構成されている。回転子は回転子支持体81に固定された表面磁極部と表面磁極部内に配置された分流磁極部を有し,分流磁極部は主磁極82及びバイパス磁極83及び非磁性体部84を有し,分流磁極部は可動磁極部として周方向と直交する面内に偏倚するよう構成されている。分流磁極部を偏倚制御する手段は,回転アーム,スライドプレート85,連結棒88,スプリング86,回転軸11に設けられたスリット1c,プッシュロッド1e,摺動棒1h,ハウジング12に固定されたアクチュエータ1f等から構成されている。
図9,10はそれぞれ図8のB−B’,C−C’に沿う電機子及び回転子の断面を示し,相互の関係を説明する為に構成部分の一部に番号を付して示している。電機子の構成は第一の実施例と同じであり,説明は省略する。
図9に於いて,表面磁極部は電機子との対向面に磁性体突極と磁気空隙部とを周方向に交互に有する構造である。磁性体突極は周方向に等間隔に配置され,隣接する磁性体突極を番号91,92で,磁気空隙部を番号93で代表して示している。各磁性体突極の延長部の周方向側面には周方向磁化を持つ界磁磁石を配置し,隣接する磁性体突極の延長部と界磁磁石の間には主磁極,バイパス磁極とが配置されている。界磁磁石は番号94で示され,隣接ずる界磁磁石94は周方向の磁化を反転されて隣接する磁性体突極91,92を互いに異極に磁化している。界磁磁石94内に記載した矢印は磁化方向を示す。主磁極は番号82で,バイパス磁極は番号83で示され,番号84は非磁性体部を示している。主磁極82,バイパス磁極83,非磁性体部84が分流磁極部を構成し,分流磁極部は番号95で示された空間内を偏倚するよう構成されている。図10は界磁磁石94が配置されていない部分であり,図8に示す位置では分流磁極部が現れていない部分の断面を示している。
図9に於いて,界磁磁石94の一方の磁極は磁性体突極91延長部の側面に配置されると共に他方の磁極は主磁極82及びバイパス磁極83と微小間隙を介して対向している。さらに主磁極82は磁性体突極92延長部の側面に微小間隙を介して対向し,バイパス磁極83は磁性体突極91延長部と常に間隙を介して対向するよう構成されている。界磁磁石94と主磁極82及びバイパス磁極83間の間隙に於いて界磁磁石94からの磁束は層流状に流れ,主磁極82,バイパス磁極83に流入する磁束量は界磁磁石94と主磁極82との対向面積,界磁磁石94とバイパス磁極83との対向面積にそれぞれ比例する。主磁極82に流入した磁束は磁性体突極92延長部,磁性体突極92,磁性体歯14,磁性体突極91,磁性体突極91延長部を介して界磁磁石94に環流して主磁路を形成し,バイパス磁極83に流入した磁束は磁性体突極91延長部を介して界磁磁石94に環流してバイパス磁路を形成している。
主磁路及びバイパス磁路に含まれる界磁磁石は一つであるので両磁路の磁気抵抗を等しく設定することが最小磁気力条件であり,バイパス磁極83と磁性体突極91延長部間の間隙を磁気抵抗調整部分として対向面積及び間隙長を静止時に於いて両磁路の磁気抵抗が等しくなるよう設定している。分流磁極部の偏倚に際し,界磁磁石94は主磁極82及びバイパス磁極83と常に対向し,それぞれとの対向面積の和は一定であり,主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗はほぼ等しく設定されるので界磁磁石94から両磁路に流入する磁束量の和は一定であり,分流磁極部の偏倚に抗する磁気力は小に抑制される。
励磁部を偏倚制御する構成及び動作は図8,図11を用いて説明する。図8及び図11に示されるように分流磁極部は回転子支持体81に回転アーム111,112により支持されている。回転アーム111,112はピン113により回転子支持体81に,ピン114により分流磁極部に回動可能に支持され,分流磁極部は周方向と直交する面内で回転軸11と平行に偏倚可能に構成されている。更に分流磁極部は連結棒88によりスライドプレート85に連結されている。連結棒88はピン115により分流磁極部に,ピン116によりスライドプレート85に回動可能に結合され,スライドプレート85の軸方向への偏倚により分流磁極部が周方向と直交する面内で偏倚させられる構成である。
スライドプレート85の3つの突部は回転軸11に設けた3個のスリット1cを介して摺動棒1hに接し,摺動棒1hは回転軸11の中空部内を軸方向に摺動可能に構成されてアクチュエータ1fのプッシュロッド1eと接している。スプリング86は回転子支持体81とスライドプレート85との間に配置されてスライドプレート85を右方向に付勢し,アクチュエータ1fはプッシュロッド1eを軸方向左右に駆動させる構成であるのでスライドプレート85及び分流磁極部はアクチュエータ1fにより軸方向に偏倚させられる。アクチュエータ1fはステップモータとネジ機構で構成してステップモータを回転駆動する事でプッシュロッド1eを軸方向左右に駆動させ,ステップモータを駆動させない場合はプッシュロッド1eの軸方向位置を保持する構成としている。
図11(a),11(b)は分流磁極部を含む回転子の一部の縦断面を拡大して示した図であり,図11(a)は分流磁極部が径方向外方に偏倚して界磁磁石94が主磁極82に最大に面積で対向し,主磁路に流れる磁束量が最大となる状態を示している。この場合,アクチュエータ1fはスライドプレート85を軸と平行に左方向に偏倚させ,分流磁極部は軸と平行に左方向に偏倚されると共に径方向外方に偏倚させられている。図11(b)は分流磁極部が径方向内方に偏倚して界磁磁石94が主磁極82に最小の面積で対向し,主磁路に流れる磁束量が最小となる状態を示している。この場合,アクチュエータ1fはスライドプレート85を軸と平行に右方向に偏倚させ,分流磁極部は軸と平行に右方向に偏倚されると共に径方向内方に偏倚させられている。
分流磁極部は図11(a)の場合に図10に於ける番号95で示す空間内に現れないが,図11(b)の場合には現れる。主磁極82とバイパス磁極83の組み合わせは図11(b)に示されるように径方向及び軸方向に偏倚する。本発明の趣旨により界磁磁石94は常に主磁極82,バイパス磁極83それぞれと対向する面積の和を一定に保つ必要があるので界磁磁石94は図11(a)の主磁極82の右端及び図11(b)の主磁極82の左端の範囲内に配置されている。分流磁極部を支持する回転アーム111,112及びピン113,114が配置され,分流磁極部の偏倚に従って回転アーム111,112及びピン114も偏倚する。回転アーム111,112及びピン113,114が占有するスペースは分流磁極部の内径側及び非磁性体部84に配置されている。
主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に設定する事で両磁路間の磁束漏洩を小さく抑制し,前記偏倚を妨げる磁気力を小さく抑制する事が出来るが,磁路の磁気抵抗を変動させる要因は多い。すなわち,量産段階で部品寸法は設定公差内でばらついて各磁路の磁気抵抗を変動させ,磁路間の磁束漏洩が無視できない場合は可動磁極部の偏倚位置が各磁路の磁気抵抗に影響し,磁性体の透磁率は温度の影響を受けやすいので各磁路の磁気抵抗は変化する。更にまた電機子コイルに電流が流れると主磁路の磁気抵抗は実効的に変動する。
本実施例では以下のように回転電機の動作中に磁束量制御を間歇的に行っている。回転電機を電動機として電機子コイルに回転子を加速する方向の電流を供給する場合は界磁磁束を引き込み,電機子に流れる磁束量を大としようとし,回転子を減速駆動する場合はその逆になる。したがって,回転子を加速或いは減速駆動する場合は主磁路の磁気抵抗が実効的にそれぞれ小,大となる。主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を互いに等しくするよう電機子コイルに供給する電流を最小磁気力電流とし,可動磁極部の偏倚制御時に電機子コイルに最小磁気力電流を供給して回転子を加速或いは減速方向に駆動して実効的に主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を等しくさせ,同時にアクチュエータを駆動する。さらに最小磁気力電流は回転電機の運転中に学習的に取得する構成として種々の原因による主磁路の磁気抵抗変化に適応させている。
最小磁気力電流を学習的に取得する構成及び手順を図8及び図12を用いて説明する。図8に於いて,番号89はロードセルを示し,プッシュロッド1eに加えられる力を検出する。主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗に差があると,界磁磁石94が磁気抵抗の小さい側の磁極となる主磁極82或いはバイパス磁極83との対向面積を増す方向に分流磁極部は偏倚する磁気力を受ける。アクチュエータ1fは軸方向位置を保持しようとするので摺動棒1h,プッシュロッド1e内の圧力は変化し,ロードセル89により前記磁気力を検出する事が出来る。
図12は間歇的に磁束量を制御するタイムチャートであり,横軸126は時間を示す。番号121は学習区間を示し,番号122は磁束量制御区間を示している。それ以外の時間帯では回転電機が電動機であれば回転駆動を,発電機であれば発電電力の取り出しを行う。学習区間121では電機子コイル16に供給する電流の条件を変えて回転子を駆動し,その期間に於けるロードセル89の出力を監視する。ロードセル89の出力が小になる電流条件が主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗を実効的に互いに等しくする最小磁気力電流であり,この最小磁気力電流に係わるパラメータを制御装置に記憶或いは設定し直す。
番号122は磁束量を制御する区間であり,前記の学習過程で得られた最小磁気力電流を電機子コイル16に供給し,同時にアクチュエータ1fを制御して分流磁極部を軸方向に偏倚させる。主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗は実効的にほぼ等しくされるのでアクチュエータ1fによる上記制御は円滑に行われる。この場合,回転子は短時間であるが駆動されるので回転速度123は変化する。磁束量の制御区間122では回転子が減速され,僅かではあるが,減速されている状態が回転速度123に示されている。番号124は磁束量を示し,学習区間121ではアクチュエータ1fは軸方向位置を保持しているので磁束量124は変化しないが,磁束量制御区間122では磁束量124が変化する様子が示されている。
番号125は回転電機が発電機である場合に於ける発電電圧を示している。学習区間121及び磁束量制御区間122では発電電力を取り出せないので発電電圧125が途切れている状態を示し,磁束量制御区間122前後では発電電圧125が変化している状態が示されている。本実施例では静止時に於いてバイパス磁路の磁気抵抗を主磁路の磁気抵抗と等しくなるように設定されているので磁束量制御の際に電機子コイル16に供給する最小磁気力電流が回転子を加速或いは減速する程度は小さく抑えられる。
本実施例では学習区間121を設定して最小磁気力電流を取得したが,特に学習区間121を設定しない学習方法も可能である。例えば,回転電機が電動機である場合には回転子を駆動する為に電機子に供給される電流とロードセル89出力との関係を常時監視し,最もロードセル89出力が小になる電流を最小磁気力電流とする。
磁束量を制御して出力を最適に制御する第二の実施例の回転電機システムを,図6のブロック図を用いて説明する。回転電機が電動機として用いられる場合において,弱め界磁制御を行って回転力を最適に制御する電動機システムを説明する。制御装置65は出力63である回転速度が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には磁束量制御区間122の時間帯に電機子コイル16に駆動回路67を介して最小磁気力電流を電機子コイル16に供給して主磁路とバイパス磁路の磁気抵抗を最小磁気力条件に実効的に等しくし,同時に制御信号66によりアクチュエータ1fを駆動して分流磁極部を右方向に偏倚させて界磁磁石94と主磁極82とが対向する面積を小にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて分流磁極部の位置を保持する。回転速度が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には磁束量制御区間122の時間帯に電機子コイル16に駆動回路67を介して最小磁気力電流を電機子コイル16に供給し,同時に制御信号66によりアクチュエータ1fを駆動して分流磁極部を左方向に偏倚させて界磁磁石94と主磁極82とが対向する面積を大にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて分流磁極部の位置を保持する。
回転電機が発電機として用いられる場合において,弱め界磁制御を行って発電電圧を所定の電圧となるよう制御する定電圧発電機システムを説明する。制御装置65は出力63である発電電圧が所定の値より大となり電機子に流れる磁束量を小とする時には磁束量制御区間122の時間帯に電機子コイル16に駆動回路67を介して最小磁気力電流を電機子コイル16に供給し,同時に制御信号66によりアクチュエータ1fを駆動して分流磁極部を右方向に偏倚させて界磁磁石94と主磁極82とが対向する面積を小にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて分流磁極部の位置を保持する。発電電圧が所定の値より小となり電機子に流れる磁束量を大とする時には磁束量制御区間122の時間帯に電機子コイル16に駆動回路67を介して最小磁気力電流を電機子コイル16に供給し,同時に制御信号66によりアクチュエータ1fを駆動して分流磁極部を左方向に偏倚させて界磁磁石94と主磁極82とが対向する面積を大にする。偏倚制御後はアクチュエータ1fを停止させて分流磁極部の位置を保持する。
本実施例では分流磁極部の偏倚に際して電機子コイルに最小磁気力電流を供給して分流磁極部の偏倚を妨げる磁気力を最小に調整したが,さらに磁束量制御に際して,電機子コイルに予め定めた電流を供給して分流磁極部の前記偏倚をアシストさせる方向の磁気力を発生させ,偏倚に必要な力を小とする手段,方法を採用する事も出来る。回転子を加速,減速方向に駆動する電流を電機子コイルに供給すると,主磁路の磁気抵抗は実効的にそれぞれ小,大となる。それに伴い主磁路の磁気抵抗がバイパス磁路の磁気抵抗より小或いは大になると分流磁極部は界磁磁石と主磁極との対向面積をそれぞれ大,小とする方向の磁気力を受ける。電機子を流れる磁束量を増す場合に主磁極と界磁磁石との対向面積を増す方向に偏倚制御手段を駆動すると共に回転子を加速する方向に最小磁気力電流から所定量ずらした電流を電機子コイルに供給し,電機子を流れる磁束量を減じる場合には主磁極と界磁磁石との対向面積を減じる方向に偏倚制御手段を駆動すると共に回転子を減速する方向に最小磁気力電流から所定量ずらした電流を電機子コイルに供給して電機子を流れる磁束量を制御する。電機子コイルに流す電流により偏倚制御手段をアシストする磁気力を発生させる構成であって偏倚制御手段に過大なアクチュエータを要する事無く界磁制御を容易とする。
本実施例に於いては分流磁極部を軸方向及び径方向で構成する面内で偏倚させたが,径方向に偏倚させる構成も可能である。また,本実施例は電機子と回転子とが径方向に対向する構成であるが,電機子と回転子とを軸方向に対向させ,分流磁極部を軸方向に偏倚させる構成も可能であり,回転電機システムの仕様に沿って最適な構成とすることが出来る。
本発明による第三実施例を図13を用いて説明する。第三実施例は第一実施例の回転電機システムをハイブリッドカーの発電機兼電動機として用いた回転電機システムである。同図に於いて,番号131は第一の実施例で示した回転電機を示し,回転電機131はハイブリッドカーのエンジン132とベルトで回転力を伝達するよう結合された回転軸139を持ち,回転軸139の回転力はトランスミッション133を介して駆動軸13aに伝えられる。制御装置134は上位制御装置からの指令13bを受け,駆動回路135を介して回転電機131を電動機として駆動し,磁束量制御回路136を介して回転電機装置131の磁束量を制御する。更に制御装置134は上位制御装置からの指令13bを受け,電機子コイル16の引き出し線13cに現れる発電電力を整流回路137を介して整流し,バッテリー138を充電する構成としている。
制御装置134は指令13bの指示により駆動回路135を介して回転電機131を電動機として駆動し,エンジン132の回転をアシスト或いは単独で回転軸139を回転駆動させ,トランスミッション133,駆動軸13aを介してハイブリッドカーの駆動力に寄与する。低回転速度域で磁石トルクを強化する必要がある場合は制御装置134が番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1hを左方向に駆動し,クラッチ板1bを表面磁極部支持体1aから離して表面磁極部17をフリー回転状態とし,同時に駆動回路135により表面磁極部17を回転方向2c(図2に於いて,時計回り方向)に駆動し,界磁磁石26と主磁極28とが対向する周方向角度長を大とさせる。番号71で示す時間帯の終了と共に駆動回路135は通常の回転駆動動作に復帰し,アクチュエータ1fはプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動してクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接させる。
高回転速度域で弱め界磁とする場合には制御装置134が番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1h及びクラッチ板1bを左方向に駆動して表面磁極部17をフリー回転状態とし,同時に駆動回路135により表面磁極部17を回転方向2cと逆方向(図2に於いて,反時計回り方向)に駆動し,界磁磁石26と主磁極28とが対向する周方向角度長を小とさせる。番号71で示す時間帯の終了と共に駆動回路135は通常の回転駆動動作に復帰し,アクチュエータ1fはプッシュロッド1e及び摺動棒1hを右方向に駆動してクラッチ板1bを表面磁極部支持体1aに圧接させる。
エンジン132の回転力のみでハイブリッドカーを駆動できる時は,指令13bにより電機子コイル16の引き出し線13cに現れる発電電力を整流回路137を介して直流に変え,バッテリー138を充電させる。その場合に制御装置134は番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1h及びクラッチ板1bを左方向に駆動して表面磁極部17をフリー回転状態とし,同時に表面磁極部17をバッテリー138を充電する最適な電圧になるよう磁束量制御回路136,駆動回路135を介して表面磁極部17を偏倚制御する。バッテリー138を充電する場合に回転電機システムを定電圧発電機とする事で発電電圧を変換するコンバータは不要である。また,更にバッテリー138が電圧の種類の異なる複数種のバッテリーで構成される場合でも切り替え回路を付け加えてそれぞれのバッテリーに最適の発電電圧に制御する事で高価なコンバータを不要に出来る。
本実施例はまたハイブリッドカーの制動時に於けるエネルギー回収システムとしても有効に機能する。指令13bを通じて回生制動の指示を受けると,制御装置134は番号71で示す時間帯にアクチュエータ1fを介してプッシュロッド1e及び摺動棒1h及びクラッチ板1bを左方向に駆動して表面磁極部17をフリー回転状態とし,同時に磁束量制御回路136,駆動回路135を介して電機子に流れる磁束量を大とするよう表面磁極部17を偏倚させて主磁極28と界磁磁石26とが対向する面積を大とし,発電電力でバッテリー138に充電させる。複数のバッテリー138を有する場合には最も充電余力のあるバッテリー138の充電電圧に合わせた発電電圧が得られるよう磁束量制御回路136,駆動回路135を介して表面磁極部17を偏倚制御して電機子に流れる磁束量を制御する。回転電機131は駆動用電動機として用いられる体格であるので回生制動用の発電機として十分な制動力を発生できる。
本実施例は本発明をハイブリッドカーの発電機兼電動機として用いた回転電機システムであるが,電気自動車に於ける回転電機システムとする事も当然に可能である。その場合には上記実施例に於いてハイブリッドカーのエンジン132を取り除き,本発明による回転電機システムのみで駆動及び制動時に於けるエネルギー回収システムを構成する。
以上,本発明の回転電機システムについて,実施例を挙げて説明した。これらの実施例は本発明の趣旨,目的を実現する例を示したのであって本発明の範囲を限定するわけでは無い。上記実施例を組み合わせる,或いは実施例の一部を組み合わせて本発明の趣旨,目的を実現するシステムを完成させる等が可能な事は勿論である。例えば,上記の実施例に於いて電機子は磁性体歯を有する構造が示されたが,従来のアキシャルギャップ構成の回転電機では磁性体歯を配置しない構造例も存在する。また,ラジアルギャップ構成に於いても電機子構成を円筒状磁気ヨーク上に印刷配線された電機子コイルを配置して磁性体歯を持たない例も存在する。本発明は磁性体歯の有無に拘わらず適用可能であり,回転電機システムの仕様に沿って最適の電気子構成を採用する事が出来る。
本発明による回転電機システムは従来の磁石トルク,リラクタンストルクを利用する回転電機の磁石励磁近傍の構成を変えて電機子に流れる磁束量を容易に制御可能とした。同回転電機システムは従来の回転電機と同様に高出力の電動機として利用できる事に加えて実用出来る回転速度範囲を拡大し,更に発電機能を改善し,またその発電機能を制御できる。移動体の発電機兼電動機システムに用いて,駆動用電動機としては従来以上の回転速度範囲での使用が期待できる他に制動時のエネルギー回収を可能として総合的なエネルギー消費量を改善できる。更に定電圧発電機システムとして広い回転速度範囲で発電電圧を一定に制御できるので定電圧制御回路を不要とし,更に電圧の異なる複数種のバッテリー充電にもコンバータを不要に出来,全体のシステムコストを低減出来る。
第一の実施例による回転電機の縦断面図である。 図1に示された回転電機の電機子と回転子とを示す断面図である。 図1に示された回転電機の回転子構成を示す分解斜視図である。 図1に示された回転電機の表面磁極部と回転子との係合部を示す斜視図である。 回転電機の磁石トルク及びリラクタンストルクと駆動電流位相の関係を示す図である。 弱め界磁制御を行う回転電機システムのブロック図である。 サンプリング的に表面磁極部の偏倚制御を行って磁束量を制御するタイミングチャートである。 第二の実施例による回転電機の縦断面図である。 図8に示された回転電機の電機子と回転子とを示す断面図である。 図8に示された回転電機の電機子と回転子とを示す断面図である。 図8に示された回転電機の分流磁極部を偏倚させる構成を示し,(a)は分流磁極部が最外周に偏倚された場合,(b)は分流磁極部が最内周に偏倚された縦断面図をそれぞれ示す。 最小磁気力電流を学習的に取得するタイムチャートを示す図である。 第三の実施例による回転電機システムのブロック図である。
符号の説明
11・・・回転軸, 12・・・ハウジング,
13・・・ベアリング, 14・・・磁性体歯,
15・・・円筒状磁気ヨーク, 16・・・電機子コイル,
17・・・表面磁極部, 18・・・バイパス磁極延長部,
19・・・回転子支持体, 1a・・・表面磁極部支持体,
1b・・・クラッチ円板, 1c・・・スリット部,
1d・・・中空部, 1e・・・プッシュロッド,
1f・・・アクチュエータ, 1g・・・スプリング,
1h・・・摺動棒, 1j・・・突部,
1k・・・ベアリング, 1m・・・凹部,
1n・・・偏倚規制突部, 1p・・・環状磁気コア,
1r・・・円筒状磁気コア
21,22・・磁性体突極, 23・・・磁気空隙部,
24,25・・磁性体突極延長部, 26,27・・界磁磁石,
28,29・・主磁極, 2a,2b・・バイパス磁極,
2c・・・回転方向, 2d・・・可飽和磁性体結合部
31・・・回転子
51・・・磁石トルク, 52・・・リラクタンストルク,
53・・・合成トルク, 54・・・縦軸,
55・・・横軸
61・・・回転電機装置, 62・・・入力,
63・・・出力, 64・・・状態信号,
65・・・制御装置, 66・・・制御信号,
67・・・駆動回路
71・・・磁束量制御を行う時間帯, 72・・・回転駆動制御を行う時間帯,
73・・・回転駆動制御のみを行う時間帯,
74・・・回転速度, 75・・・界磁磁束量,
76・・・所定の電圧, 77・・・発電電圧,
78・・・界磁磁束量,
79・・・界磁磁束量78を減少させる場合,
7a・・・界磁磁束量78を増加させる場合
81・・・回転子支持体, 82・・・主磁極,
83・・・バイパス磁極, 84・・・非磁性体部,
85・・・スライドプレート, 86・・・スプリング,
87・・・突部, 88・・・連結棒
91,92・・磁性体突極, 93・・・磁気空隙部,
94・・・界磁磁石, 95・・・分流磁極部が偏倚する空間
111,112・・回転アーム, 113,114,115,116・・ピン
121・・・学習区間, 122・・・磁束量制御区間,
123・・・回転速度, 124・・・界磁磁束量,
125・・・発電電圧, 126・・・時間
131・・・第一の実施例で示した回転電機,
132・・・ハイブリッドカーのエンジン,
133・・・トランスミッション, 134・・・制御装置,
135・・・駆動回路, 136・・・磁束量制御回路,
137・・・整流回路, 138・・・バッテリー,
139・・・回転軸, 13a・・・駆動軸,
13b・・・上位制御装置からの指令, 13c・・・電機子コイルの引き出し線

Claims (21)

  1. 電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する界磁部とを有する回転電機であって,界磁部には表面磁極部と分流磁極部とが配置され,表面磁極部は電機子との対向面に複数の磁性体突極が周方向に配置されると共に分流磁極部との対向面に磁性体突極延長部に接続された界磁磁石の磁極が配置され,分流磁極部は前記界磁磁石に対向して配置された主磁極及びバイパス磁極を有し,界磁磁石の一方の磁極から主磁極に流入した磁束が隣り合う磁性体突極,電機子を介して界磁磁石の他方の磁極に環流する主磁路と,界磁磁石の一方の磁極からバイパス磁極に流入した磁束が主として界磁部内で磁性体突極延長部を介して界磁磁石の他方の磁極に環流するバイパス磁路とが界磁磁石に並列に磁気的に接続され,表面磁極部或いは分流磁極部の何れかを可動磁極部として界磁磁石が主磁極と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和が一定に保たれながら前記それぞれの対向面積を変える事が出来るよう可動磁極部が残余に対して相対偏倚可能に構成され,回転電機システムの出力が最適化されるように前記出力に応じて可動磁極部が偏倚して電機子に流れる磁束量が制御される事を特徴とする回転電機システム
  2. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,バイパス磁路の磁気抵抗をバイパス磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値及び主磁路の磁気抵抗を主磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値が互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定されている事を特徴とする回転電機システム
  3. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁磁石から磁性体突極に至る磁路は等方性の磁性体を含んで構成される事を特徴とする回転電機システム
  4. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,分流磁極部に配置された主磁極及びバイパス磁極は周方向に並んで配置され,表面磁極部或いは分流磁極部の何れかを可動磁極部として残余に対して周方向に偏倚可能に構成される事を特徴とする回転電機システム
  5. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁部及び電機子は径方向に対向し,周方向磁化を有する界磁磁石と分流磁極部を隣り合う磁性体突極延長部間に配置され,分流磁極部に配置された主磁極及びバイパス磁極は径方向に並んで配置され,分流磁極部が可動磁極部として周方向と直交する面内に偏倚可能に構成される事を特徴とする回転電機システム
  6. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,界磁部及び電機子は軸方向に対向し,周方向磁化を有する界磁磁石と分流磁極部を隣り合う磁性体突極延長部間に配置され,分流磁極部に配置された主磁極及びバイパス磁極は軸方向に並んで配置され,分流磁極部が可動磁極部として軸方向に偏倚可能に構成される事を特徴とする回転電機システム
  7. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,可動磁極部の偏倚に必要な力を小とするよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗が調整される事を特徴とする回転電機システム
  8. 請求項7記載の回転電機システムに於いて,可動磁極部を偏倚させる際に磁気抵抗調整手段によりバイパス磁路の磁気抵抗と主磁路の磁気抵抗とは最小磁気力条件にほぼ等しくなるよう調整される事を特徴とする回転電機システム
  9. 請求項7記載の回転電機システムに於いて,電機子を流れる磁束量を増加する場合に最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗は小に或いはバイパス磁路の磁気抵抗は大に磁気抵抗調整手段によって調整され,電機子を流れる磁束量を減少させる場合に最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗は大に或いはバイパス磁路の磁気抵抗は小に磁気抵抗調整手段によって調整され,同時に可動磁極部が偏倚される事を特徴とする回転電機システム
  10. 請求項7記載の回転電機システムに於いて,さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,間歇的に変えられた磁気抵抗調整手段に関係するパラメータ,或いは通常の運転中に変わる前記パラメータと前記磁気力との関係を監視し,前記磁気力を小とする前記パラメータが最小磁気力条件パラメータとして設定される事を特徴とする回転電機システム
  11. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,表面磁極部が分流磁極部に対して周方向に偏倚されるよう構成され,表面磁極部が分流磁極部に対して回転子の回転方向に相対偏倚する時に界磁磁石と主磁極との対向面積が増大するよう構成されている事を特徴とする回転電機システム
  12. 請求項1記載の回転電機システムに於いて,表面磁極部が分流磁極部に対して周方向に偏倚されるよう構成され,更に表面磁極部の分流磁極部に対する位置を保持する位置保持機構を有し,表面磁極部を分流磁極部に対して回転偏倚させる際に位置保持機構による表面磁極部の保持力を一時的に緩めると共に回転子を回転駆動するよう電流を電機子コイルに供給して表面磁極部を周方向に偏倚させる事を特徴とする回転電機システム
  13. 請求項1から請求項12記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,回転力を入力とし,発電電力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により電機子コイルに誘起される発電電圧が所定の値より大の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を小とされ,発電電圧が所定の値より小の時は可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を大とされ,発電電圧が所定の値に制御される事を特徴とする回転電機システム
  14. 請求項1から請求項12記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,制御装置により回転速度が所定の値より大で電機子を流れる磁束量を減少させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を小とされ,回転速度が所定の値より小で電機子を流れる磁束量を増大させる時には可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積を大として回転力が最適に制御される事を特徴とする回転電機システム
  15. 請求項1から請求項12記載の何れかの回転電機システムに於いて,さらに制御装置を有し,電機子コイルへの供給電流を入力とし,回転力を出力とする回転電機システムであって,回転速度を減少させる場合には制御装置により電機子を流れる磁束量を大とされるよう可動磁極部が偏倚されて界磁磁石と主磁極とが対向する面積が大とされて回転エネルギーが発電電力として取り出される事を特徴とする回転電機システム
  16. 電機子コイルを有する電機子と,電機子と対向して相対回転可能で且つ電機子と対向して周方向に配置された複数の磁性体突極を有する表面磁極部と,磁性体突極延長部に結合された界磁磁石に対向して配置された分流磁極部とを有する回転電機の電機子を流れる磁束量を制御する磁束量制御方法であって,分流磁極部は主磁極及びバイパス磁極を前記界磁磁石に対向して有し,界磁磁石の一方の磁極から主磁極に流入した磁束が電機子および隣り合う磁性体突極を介して界磁磁石の他方の磁極に環流する主磁路と,界磁磁石の一方の磁極からバイパス磁極に流入した磁束が主として界磁部内で磁性体突極延長部を介して界磁磁石の他方の磁極に環流するバイパス磁路とを界磁磁石に並列に磁気的に接続し,表面磁極部或いは分流磁極部の何れかを可動磁極部として界磁磁石が主磁極と対向する面積及びバイパス磁極と対向する面積の和が一定に保たれながら前記それぞれの対向面積を変えるよう可動磁極部が残余に対して相対偏倚可能に構成し,可動磁極部を偏倚させて電機子を流れる磁束量を制御する。
  17. 請求項16記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。バイパス磁路の磁気抵抗をバイパス磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値及び主磁路の磁気抵抗を主磁路内に含まれる直列界磁磁石の数で除した値が互いにほぼ等しいとする最小磁気力条件に設定する。
  18. 請求項16記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。さらに主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する磁気抵抗調整手段を有し,可動磁極部の偏倚に必要な力を小とするよう主磁路或いはバイパス磁路の磁気抵抗を調整する。
  19. 請求項18記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。可動磁極部を偏倚させる際に磁気抵抗調整手段によりバイパス磁路の磁気抵抗と主磁路の磁気抵抗とを最小磁気力条件にほぼ等しくなるよう調整する。
  20. 請求項18記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。電機子を流れる磁束量を増加する場合に磁気抵抗調整手段は最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗を小に或いはバイパス磁路の磁気抵抗を大に調整し,電機子を流れる磁束量を減少させる場合に磁気抵抗調整手段は最小磁気力条件より主磁路の磁気抵抗を大に或いはバイパス磁路の磁気抵抗を小に調整し,同時に可動磁極部を偏倚させる。
  21. 請求項18記載の磁束量制御方法に於いて以下のステップを含む。さらに主磁路及びバイパス磁路の磁気抵抗が最小磁気力条件から外れる事により可動磁極部に加わる磁気力の検知手段を有し,間歇的に変えられた磁気抵抗調整手段に関係するパラメータ,或いは通常の運転中に変わる前記パラメータと可動磁極部に加わる磁気力との関係を監視し,可動磁極部に加わる磁気力を小とする前記パラメータを最小磁気力条件パラメータとして設定する。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106016577A (zh) * 2015-03-31 2016-10-12 阿自倍尔株式会社 涡轮式流量控制装置
WO2022233189A1 (zh) * 2021-05-05 2022-11-10 胡小杰 一种大型永磁电动机

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