次に、本願発明にかかるナノファイバ製造装置の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本願発明を実施可能とするナノファイバ製造装置を模式的に示す断面図である。
同図に示すように、ナノファイバ製造装置100は、ナノファイバを製造し製造されたナノファイバを放出する放出装置200と、放出装置200から放出されたナノファイバを収集する収集装置110とを備えている。
放出装置200は、原料液流出手段201と、原料液帯電手段202と、案内手段206と、気体流発生手段203とを備えている。
ここで、ナノファイバを製造するための原料液については原料液300と記し、製造されたナノファイバについてはナノファイバ301と記すが、製造に際しては原料液300が静電爆発しながらナノファイバ301に変化していくため、原料液300とナノファイバ301との境界は曖昧であり、明確に区別できるものではない。
原料液流出手段201は、原料液300を空間中に流出させる装置であり、本実施の形態では、原料液300を遠心力により放射状に流出する装置が原料液流出手段201として採用されている。原料液流出手段201は、図2や図3に示すように、流出容器211と、回転軸体212と、モータ213とを備えている。
流出容器211は、原料液300を内方に注入されながら自身の回転による遠心力により空間中に原料液300を流出させることのできる容器であり、一端が閉塞された円筒形状となされ、周壁には流出孔216を多数備えている。流出容器211は、貯留する原料液300に電荷を付与するため、導電体で形成されており、原料液帯電手段202の構成要素としても機能している。流出容器211は支持体(図示せず)に設けられるベアリング(図示せず)により回転可能に支持されており、高速で回転してもぶれないものとなされている。
具体的には、流出容器211の直径は、10mm以上300mm以下の範囲から採用されることが好適である。あまり大きすぎると気体流により原料液300やナノファイバ301を集中させることが困難になるからであり、また、流出容器211の回転軸が偏心するなど、重量バランスが少しでも偏ると大きな振動が発生してしまい、当該振動を抑制するために流出容器211を強固に支持する構造が必要となるからである。一方、小さすぎると遠心力により原料液300を流出させるための回転を高めなければならず、モータの負荷や振動など問題が発生するためである。さらに流出容器211の直径は、20mm以上、100mm以下の範囲から採用することが好ましい。また、流出孔216の形状は円形が好ましく、その直径は、0.01mm以上3mm以下の範囲から採用することが好適である。
なお、流出容器211の形状は、円筒形状に限定するものではなく、側面が多角形状の多角柱形状のようなものや円錐形状のようなものでもよい。流出孔216が回転することにより、流出孔216から原料液300が遠心力で、流出するようにできればよい。また、流出口216の形状は、円形に限定することなく、多角形状や星形形状などであってもよい。
回転軸体212は、流出容器211を回転させ遠心力により原料液300を流出させるための駆動力を伝達するための軸体であり、流出容器211の他端から流出容器211の内部に挿通され、流出容器211の閉塞部と一端部が接合される棒状体である。また、他端はモータ213の回転軸と接合されている。回転軸体212は、流出容器211と後述のモータ213とが導通しないように絶縁体の部分である絶縁体部(図示せず)を備えている。
モータ213は、遠心力により原料液300を流出孔216から流出させるために、回転軸体212を介して流出容器211に回転駆動力を付与する装置である。なお、流出容器211の回転数は、流出孔216の口径や使用する原料液300の粘度や原料液内の高分子物質の種類などとの関係により、数rpm以上、10000rpm以下の範囲から採用することが好ましく、本実施の形態のようにモータ213と流出容器211とが直動の時はモータ213の回転数は、流出容器211の回転数と一致する。
原料液帯電手段202は、原料液300に電荷を付与して帯電させる装置である。本実施の形態の場合、原料液帯電手段202は、誘導電荷を発生させ当該電荷を原料液300に付与する装置であり、誘導電極221と、誘導電源222と、接地手段223とを備えている。また、流出容器211も原料液帯電手段202の一部として機能している。
誘導電極221は、自身がアースに対し高い電圧となることで、近傍に配置され接地されている流出容器211に電荷を誘導するための部材であり、流出容器211の先端部分を取り囲むように配置される円環状の部材である。また、誘導電極221は、気体流発生手段203からの気体流を案内手段206に案内する風洞体209としても機能している。
誘導電極221の大きさは、流出容器211の直径よりも大きい必要があるが、その直径は、20mm以上、800mm以下の範囲から採用されることが好適である。なお、誘導電極221の形状は、円環状に限ったものではなく、多角形状を有する多角形環状の部材であってもよい。
誘導電源222は、誘導電極221に高電圧を印加することのできる電源である。なお、誘導電源222は、直流電源であり、誘導電極221に印加する電圧(接地電位を基準とする)や、その極性を設定することができる装置である。
誘導電源222が誘導電極221に印加する電圧は、10KV以上、200KV以下の範囲の値から設定されるのが好適である。特に、流出容器211と誘導電極221との間の電界強度が重要であり、1KV/cm以上の電界強度になるように印加電圧や誘導電極221の配置を行うことが好ましい。なお、誘導電極221の形状は、円環状に限ったものではなく、多角形状を有する多角形環状の部材であってもよい。
接地手段223は、流出容器211と電気的に接続され、流出容器211を接地電位に維持することができる部材である。接地手段223の一端は、流出容器211が回転状態であっても電気的な接続状態を維持することができるようにブラシとして機能するものであり、他端は大地と接続されている。
本実施の形態のように原料液帯電手段202に誘導方式を採用すれば、流出容器211を接地電位に維持したまま原料液300に電荷を付与することができる。流出容器211が接地電位の状態であれば、流出容器211に接続される回転軸体212やモータ213などの部材は、流出容器211との間で高電圧に対する対策をする必要が無くなり、原料液流出手段201として簡単な構造を採用しうることになり好ましい。
なお、原料液帯電手段202として、流出容器211に直接電源を接続し、流出容器211を高電圧に維持し、誘導電極221を接地することで原料液300に電荷を付与してもよい。また、流出容器211を絶縁体で形成すると共に、流出容器211に貯留される原料液300に直接接触する電極を流出容器211内部に配置し、当該電極を用いて原料液300に電荷を付与するものでもよい。
気体流発生手段203は、流出容器211から流出される原料液300の飛行方向を案内手段206で案内される方向に変更するための気体流を発生させる装置である。気体流発生手段203は、モータ213の背部に備えられ、モータ213から流出容器211の先端に向かう気体流を発生させる。気体流発生手段203は、流出容器211から径方向に流出される原料液300が誘導電極221に到達するまでに前記原料液300を軸方向に変更することができる風力を発生させることができるものとなっている。図2において、気体流は矢印で示している。本実施の形態の場合、気体流発生手段203として、放出装置200の周囲にある雰囲気を強制的に送風する軸流ファンを備える送風機が採用されている。
気体流発生手段203は、発生した気体流を発散させることなく流出容器211の近傍に案内する導管である風洞体209を備えている。風洞体209により案内された気体流が流出容器211から流出された原料液300と交差し、原料液300の飛行方向を変更する。
さらにまた、気体流発生手段203は、気体流制御手段204と、加熱手段205とを備えている。
気体流制御手段204は、気体流発生手段203により発生する気体流が流出孔216に当たらないよう気体流を制御する機能を有するものであり、本実施の形態の場合、気体流制御手段204として、気体流を所定の領域に流れるように案内する風洞体が採用されている。気体流制御手段204により、気体流が直接流出孔216に当たらないため、流出孔216から流出される原料液300が早期に蒸発して流出孔216を塞ぐことを可及的に防止し、原料液300を安定させて流出させ続けることが可能となる。なお、気体流制御手段204は、流出孔216の風上に配置され気体流が流出孔216近傍に到達するのを防止する壁状の防風壁でもかまわない。
加熱手段205は、気体流発生手段203が発生させる気体流を構成する気体を加熱する加熱源である。本実施の形態の場合、加熱手段205は、風洞体209の内方に配置される円環状のヒータであり、加熱手段205を通過する気体を加熱することができるものとなっている。加熱手段205により気体流を加熱することにより、空間中に流出される原料液300は、蒸発が促進され効率よくナノファイバを製造することが可能となる。
なお、気体流発生手段203は、シロッコファンなど他の送風機により構成してもかまわない。また、高圧ガスを導入することにより流出された原料液300の方向を変更するものでもかまわない。また、後述の第二気体流発生手段232や収集装置110などにより案内手段206内方に気体流を発生させるものでもかまわない。この場合、ナノファイバ製造装置100は、積極的に気体流を発生させる装置を有しないこととなるが、本願発明の場合、風洞体209の内方に気体流が発生していることをもって気体流発生手段203が存在しているものとする。
案内手段206は、製造されたナノファイバ301を収集装置110の近傍に案内する風洞を形成する導管である。案内手段206の端部は、風洞体209の端部に接続され、原料液流出手段201から流出し製造されるナノファイバ301と気体流との全てを案内することのできる管状の部材である。本実施の形態の場合、後述の圧縮手段230もナノファイバ301を案内するという意味においては案内手段206に含まれる。
圧縮手段230は、気体流により搬送されるナノファイバ301が存在する空間(案内手段206の内方部分)を圧縮し、ナノファイバ301が空間中に存在する密度を上昇させる機能を備える装置であり、第二気体流発生手段232と、圧縮導管234とを備えている。
圧縮導管234は、案内手段206内方を搬送されるナノファイバ301が存在する空間を徐々に狭くしていく筒状の部材であり、第二気体流発生手段232で発生する気体流を圧縮導管234内方に導入することが可能な気体流導入口233を周壁に備えている。圧縮導管234の案内手段206と接続される部分は、案内手段206の導出側端部の面積に対応する面積で構成されており、圧縮導管234の導出側端部は、前記導出側端部の面積より小さくなっている。従って、圧縮導管234は、全体として漏斗形状となっており、圧縮導管234に導入されたナノファイバ301を気体流と共に圧縮できる形状となっている。
また、圧縮手段230の上流側(導入側)の端部形状は、案内手段206の端部形状と合致する円環状である。一方、圧縮手段230の下流側(吐出側)の端部形状も円環状である。
第二気体流発生手段232は、高圧ガスを圧縮導管234内部に導入することで気体流を発生させる装置である。本実施の形態では、第二気体流発生手段232は、高圧ガスを貯留しうるタンク(ボンベ)と、タンク内の高圧ガスの圧力を調節するバルブ235を有するガス導出手段を備える装置が採用されている。なお、圧縮導管234の周壁には気体流導入口233が複数箇所設けられており、それぞれの気体流導入口233に第二気体流発生手段232が接続されているが、図1、図5においては、一部だけを示し、他の記載を省略している。
また、圧縮導管234の内方には帯電状態調整手段207が取り付けられている。
帯電状態調整手段207は、帯電しているナノファイバ301の帯電を増強する機能を備え、一方、帯電しているナノファイバ301の帯電を除電する機能も合わせて備える装置である。帯電状態調整手段207としては、帯電しているナノファイバ301の極性と同極性を備えるイオンや粒子を空間中に放出することでナノファイバ301の帯電を増強させ、一方、逆極性を備えるイオンや粒子を空間中に放出することでナノファイバ301の帯電を弱化することができる装置を挙示することができる。具体的には、コロナ放電方式や電圧印加方式、交流方式、定常直流方式、パルス直流方式、自己放電式、軟X線方式、紫外線式、放射線方式など任意の方式からなる帯電状態調整手段207が例示できる。
また、案内手段206の内方には帯電状態検出手段114が設けられ、帯電状態検出手段114からの信号に基づき帯電状態調整手段207を制御する帯電制御手段115が備えられている。
帯電状態検出手段114は、空間中を気体流により搬送されるナノファイバの帯電状態を電位として測定する装置であり、帯電制御手段115に測定結果を送信する装置である。帯電状態検出手段114は、いわゆる静電気の状態(電位)を極性も含めて非接触で測定することのできる装置であり、電位を測定することによってナノファイバ301の表面電位に極力影響が及ばないものとなっている。
帯電制御手段115は、帯電状態検出手段114により検出されたナノファイバ301の帯電電位の絶対値が閾値未満であればナノファイバ301の帯電量が減少するように帯電状態調整手段207を制御し、帯電状態検出手段114により検出されたナノファイバ301の帯電電位の絶対値が前記閾値以上であればナノファイバ301の帯電量が増加するように帯電状態調整手段207を制御する処理装置である。帯電制御手段115は、コンピュータとプログラムなどにより実現されるものである。
ナノファイバ製造装置100は、電界でナノファイバ301を誘引する第一の収集装置110と、気体流でナノファイバ301を誘引する第二の収集装置110とを備えている。
第一の収集装置110は、図1および図4に示すように、堆積部材101と、供給手段111と、回収手段104と、誘引手段としての誘引電極112と、誘引手段としての誘引電源113と、基体117とを備えている。
堆積部材101は、静電爆発により製造され飛来するナノファイバ301が堆積される対象となる部材である。堆積部材101は、堆積したナノファイバ301と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材である。具体的には、堆積部材101として、アラミド繊維からなる長尺の布を例示することができる。さらに、堆積部材101の表面にテフロン(登録商標)コートを行うと、堆積したナノファイバ301を堆積部材101から剥ぎ取る際の剥離性が向上するため好ましい。
供給手段111は、巻付部材に巻き付けられた状態の堆積部材101を順次供給することのできる装置であり、所定のテンションで堆積部材101を供給できるようテンショナーが設けられている。
回収手段104は、長尺の堆積部材101を巻き取りながら供給手段111から引き出し、堆積するナノファイバ301と共に堆積部材101を回収する装置である。回収手段104は、不織布状に堆積しているナノファイバ301を堆積部材101とともに巻き取ることができるものとなっている。
誘引電極112は、誘引電源113によりアースに対し所定の電位に維持される導体の部材である。誘引電極112に電位が印加されると、空間中に電界が発生する。誘引電極112は、矩形の板状の部材であり、放電防止のため突起部分がなく、また、角は全て丸められている。
誘引電源113は、誘引電極112をアースに対し所定の電位に維持することができる直流電源である。また、誘引電源113は、誘引電極112に印加する電位の正負(接地電位を含む)を変更することが可能である。
基体117は、堆積部材101と供給手段111と回収手段104と誘引電極112と誘引電源113とが一体となるように取り付けられる部材である。本実施の形態の場合、基体117は、堆積部材101と供給手段111と回収手段104と誘引電極112と誘引電源113とを内方に収容しうる箱状の部材となっている。
また、基体117の内方には拡散手段240が取り付けられており、基体117の下部には車輪118が設けられている。
拡散手段240は、圧縮手段230により一端圧縮されて高密度状態となったナノファイバ301を広く拡散させ分散させる導管であり、圧縮手段230で加速したナノファイバ301の速度を減速させるフード状の部材である。拡散手段240は、気体流が導入される上流端側の開口部と、気体流を放出する下流端側の矩形の開口部とを備え、下流端側の開口部の開口面積は、上流端側の開口部の開口面積よりも大きい設定となっている。拡散手段240は、上流端側の開口部から下流端側の開口部に向けて徐々に面積が大きくなるような形状が採用されている。下流端側の開口部は、堆積部材101の幅とほぼ同等の幅を備え、誘引電極112よりも長さが長い形状となっている。
拡散手段240の小面積の導入端側から大面積の導出端側に向かって気体流が流れると、高密度状態のナノファイバ301が一気に低密度状態となって分散すると共に、気体流の流速は拡散手段240の断面積に比例して落ちていく。従って、気体流に乗って搬送されるナノファイバ301も、気体流と共に速度が減速される。この際、ナノファイバ301は、拡散手段240の断面積の拡大に従い徐々に均等に拡散していく。従って、ナノファイバ301を堆積部材101上に均等に堆積させることが可能となる。また、気体流によってナノファイバ301が搬送されない状態、つまり、気体流とナノファイバ301とが分離された状態となるため、帯電しているナノファイバ301は、気体流に影響されることなく逆極性の状態にある誘引電極112に誘引される。
なお、拡散手段240は、収集装置110に備えられるのではなく、放出装置200側に設けられていても良い。
車輪118は、第一の収集装置110を移動可能とするために設けられる車輪であり、基体117の下部に回転可能に取り付けられている。本実施の形態の場合車輪118はレールの上で回転するものとなされている。
第二の収集装置110は、図5および図6に示すように、堆積部材101と、供給手段111と、回収手段104と、誘引手段としての吸引手段102と、基体117とを備えている。
堆積部材101は、静電爆発により製造され飛来するナノファイバ301が堆積される対象となる部材である。堆積部材101は、堆積したナノファイバ301と容易に分離可能な材質で構成された薄く柔軟性のある長尺のシート状の部材である。具体的には、堆積部材101として、アラミド繊維からなる長尺の布を例示することができる。さらに、堆積部材101の表面にテフロン(登録商標)コートを行うと、堆積したナノファイバ301を堆積部材101から剥ぎ取る際の剥離性が向上するため好ましい。
また、堆積部材101は、気体流発生手段203が発生させた気体流の通気性を確保するための通気孔(図示せず)を多数備えており、ナノファイバ301は堆積するが気体流は通過するメッシュ状のフィルタである。
供給手段111は、巻付部材に巻き付けられた状態の堆積部材101を順次供給することのできる装置であり、所定のテンションで堆積部材101を供給できるようテンショナーが設けられている。
回収手段104は、長尺の堆積部材101を巻き取りながら供給手段111から引き出し、堆積するナノファイバ301と共に堆積部材101を回収する装置である。回収手段104は、不織布状に堆積しているナノファイバ301を堆積部材101とともに巻き取ることができるものとなっている。
吸引手段102は、堆積部材101通過する気体流を原料液300から蒸発した溶媒と共に、強制的に吸引する装置である。本実施の形態では、吸引手段102として、シロッコファンや軸流ファンなどの送風機が採用されている。また、吸引手段102は、原料液300から蒸発した溶媒が混ざったほとんどの気体流を吸引し、吸引手段102に接続される溶剤回収装置106まで前記気体流を搬送することができるものとなっている。
領域規制手段103は、堆積部材101側に拡散手段240の導出側開口端と同じ形状、同じ面積の開口部を備え、吸引手段102に接続される側の開口部は、吸引手段102に対応する円形となっている。これにより、拡散手段240で拡散されたナノファイバ301全体を堆積部材101の上に誘引すると共に、全ての気体流を吸引するものとなっている。
基体117は、堆積部材101と供給手段111と回収手段104と吸引手段102とが一体となるように取り付けられる部材である。本実施の形態の場合、基体117は、堆積部材101と供給手段111と回収手段104とを内方に収容しうる箱状の部材となっている。
また、基体117の内方には拡散手段240が取り付けられており、基体117の下部には車輪118が設けられている。
拡散手段240は、圧縮手段230により一端圧縮されて高密度状態となったナノファイバ301を広く拡散させ分散させる導管であり、圧縮手段230で加速したナノファイバ301の速度を減速させるフード状の部材である。拡散手段240は、気体流が導入される上流端側の開口部と、気体流を放出する下流端側の矩形の開口部とを備え、下流端側の開口部の開口面積は、上流端側の開口部の開口面積よりも大きい設定となっている。拡散手段240は、上流端側の開口部から下流端側の開口部に向けて徐々に面積が大きくなるような形状が採用されている。下流端側の開口部は、堆積部材101の幅とほぼ同等の幅を備える。
拡散手段240の小面積の導入端側から大面積の導出端側に向かって気体流が流れると、高密度状態のナノファイバ301が一気に低密度状態となって分散すると共に、気体流の流速は拡散手段240の断面積に比例して落ちていく。従って、気体流に乗って搬送されるナノファイバ301も、気体流と共に速度が減速される。この際、ナノファイバ301は、拡散手段240の断面積の拡大に従い徐々に均等に拡散していく。従って、ナノファイバ301を堆積部材101上に均等に堆積させることが可能となる。また、堆積部材101の面上には、吸引手段102により収集されたナノファイバが堆積する。
車輪118は、第一の収集装置110を移動可能とするために設けられる車輪であり、基体117の下部に回転可能に取り付けられている。本実施の形態の場合車輪118はレールの上で回転するものとなされている。
次に、上記構成のナノファイバ製造装置100を用いたナノファイバ301の製造方法を説明する。
所定の材質からなるナノファイバ301を製造する。ここで、搬送中に帯電を維持できるナノファイバ301であれば、ナノファイバ製造装置100に第一の収集装置110を取り付けておき、搬送中に帯電を維持し難いナノファイバ301であれば、ナノファイバ製造装置100に第二の収集装置110を取り付けておく。
気体流発生手段203と第二気体流発生手段232とにより、案内手段206や風洞体209の内部に気体流を発生させる。
次に、原料液流出手段201の流出容器211に原料液300を供給する。原料液300は、別途タンク(図示せず)に蓄えられており、供給路217(図2参照)を通過して流出容器211の他端部から流出容器211内部に供給される。
なお、ナノファイバ301を構成する高分子物質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−m−フェニレンテレフタレート、ポリ−p−フェニレンイソフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステルカーボネート、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ酢酸ビニル、ポリペプチド等およびこれらの共重合体を例示できる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記高分子物質に限定されるものではない。
また、帯電を維持しにくい高分子物質としては、高分子型帯電防止材を添加する場合を例示することができる。高分子型帯電防止材としてはエンティラ(登録商標、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)を例示できる。また、帯電を維持しにくい高分子物質としては、無機高分子(ケイ素などを骨格とする)、天然高分子(二酸化ケイ素(水晶、石英)、雲母、長石、石綿)、合成高分子(シリコン樹脂(シリコンゴム、シリコンオイル)、ガラス、合成ルビー)も例示できる。
原料液300に使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジルアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、o−クロロトルエン、p−クロロトルエン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロペンタン、o−キシレン、p−キシレン、m−キシレン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキシド、ピリジン、水等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記溶媒に限定されるものではない。
さらに、原料液300に骨材や可塑剤などの添加剤を添加してもよい。当該添加剤としては、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、珪化物、弗化物、硫化物等を挙げることができるが、耐熱性、加工性などの観点から酸化物を用いることが好ましい。当該酸化物としては、Al2O3、SiO2、TiO2、Li2O、Na2O、MgO、CaO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、SnO2、ZrO2、K2O、Cs2O、ZnO、Sb2O3、As2O3、CeO2、V2O5、Cr2O3、MnO、Fe2O3、CoO、NiO、Y2O3、Lu2O3、Yb2O3、HfO2、Nb2O5等を例示することができる。また、上記より選ばれる一種でもよく、また、複数種類が混在してもかまわない。なお、上記は例示であり、本願発明は上記添加剤に限定されるものではない。
溶媒と高分子物質との混合比率は、溶媒と高分子物質により異なるが、溶媒量は、約60%から98%の間が望ましい。
次に、誘導電源222により流出容器211に貯留される原料液300に電荷を供給しつつ(原料液帯電工程)、流出容器211をモータ213により回転させて、遠心力により流出孔216から帯電した原料液300を流出する(原料液流出工程)。
流出容器211の径方向放射状に流出された原料液300は、気体流により飛行方向が変更され、気体流に乗り風洞体209により案内される。原料液300は静電爆発によりナノファイバ301を製造しつつ(ナノファイバ製造工程)案内手段206へ放出される。また、前記気体流は、加熱手段205により加熱されており、原料液300の飛行を案内しつつ、原料液300に熱を与えて溶媒の蒸発を促進している。以上のようにしてナノファイバ301は、案内手段206の内方を気体流によって搬送される(搬送工程)。
次に圧縮手段230内方を通過するナノファイバ301は、高圧ガスの噴流により加速されつつ、圧縮手段230の内方が狭くなるにつれて徐々に圧縮され高密度状態となって拡散手段240に到達する(圧縮行程)。
ここで、帯電状態検出手段114により、気体流で搬送されるナノファイバ301の帯電電位を検出する(帯電状態検出工程)。
帯電制御手段115は、帯電状態検出手段114により検出されたナノファイバ301の帯電電位の絶対値が閾値未満であればナノファイバ301の帯電量が0、すなわち完全に中和するように帯電状態調整手段207を制御する(帯電状態調整工程)。この場合、気体流でナノファイバ301を誘引する第二の収集装置110を用いる。
一方、帯電状態検出手段114により検出されたナノファイバ301の帯電電位の絶対値が前記閾値以上であれば、ナノファイバ301の帯電電位が所定の電位になるように帯電状態調整手段207を制御する(帯電状態調整工程)。この場合、電界でナノファイバ301を誘引する第一の収集装置110を用いる。
なお、原料液300の状態(溶媒の種類や高分子物質の種類など)により、ナノファイバ301の帯電状態の傾向が事前に把握できている場合は、原料液300に基づき第一の収集装置110、または、第二の収集装置110に切り替えておけばよい(切換工程)。
拡散手段240にまで搬送されたナノファイバ301は、ここで急速に速度が低下すると共に、均一に分散状態となる(拡散工程)。
この状態において、第二の収集装置110がナノファイバ製造装置100に取り付けられている場合には、ナノファイバ301は、吸引手段102により吸引される気体流により誘引される(誘引工程)。気体流は堆積部材101を通過して吸引されているため、ナノファイバ301は堆積部材101上に堆積していく(堆積工程)。
一方、第一の収集装置110がナノファイバ製造装置100に取り付けられている場合に、拡散手段240の開口部に配置されている誘引電極112は、ナノファイバ301の帯電極性とは逆極性に帯電されており、ナノファイバ301を引きつける(誘引工程)。ナノファイバ301と誘引電極112との間には堆積部材101が存在しているため、誘引電極112に引きつけられるナノファイバ301は、堆積部材101上に堆積していく(堆積工程)。
以上の方法において、搬送中に帯電を維持できるナノファイバ301であれば、搬送中のナノファイバ301の電位を検出した上で帯電状態を調整できるため、ナノファイバ301の帯電電位を一定に維持することができる。これにより、電界によるナノファイバ301の誘引を安定して行うことができ、堆積部材101上に均等にナノファイバ301を堆積することが可能となる。さらに、維持する帯電電位を高い状態に維持するものとすれば、堆積部材101に効率的に堆積し、しかも、分厚い状態でナノファイバ301を堆積させることが可能となる。
一方、搬送中に帯電を維持し難いナノファイバ301であれば、ナノファイバ301を搬送中に中和することで、気体流でナノファイバ301を誘引する際に、ナノファイバ301同士の反発によるナノファイバ301の空間密度の乱れを抑えて、堆積部材101上に均等にナノファイバ301を誘引することが可能となる。
なお、帯電状態調整手段207や帯電状態検出手段114の配置は、これに限定するものではなく、堆積部材101にナノファイバが堆積する前の工程が実現されるいずれかの場所に配置をすればよい。
なお、本願実施の形態においては、第一の収集装置と第二の収集装置は、別々の基体117の中に内蔵されていたが、図7に示すように、電界でナノファイバ301を誘引する手段と、気体流でナノファイバ301を誘引する手段とを、一つの収集装置の中に並存させてもよい。すなわち、誘引電極112と誘引電源113並びに吸引手段102を同じ収集装置の中に配置し、使用する原料液や高分子物質の状況により、帯電状態検出手段114の検出状況に基づき、電界でナノファイバ301を誘引する手段と、気体流でナノファイバ301を誘引する手段とで切り替えるようにしてもよい(切換工程)。具体的には、帯電状態検出手段114により検出されたナノファイバ301の帯電電位の絶対値が閾値未満であれば気体流でナノファイバ301を誘引するように吸引手段102を制御し、帯電状態検出手段114により検出されたナノファイバ301の帯電電位の絶対値が前記閾値以上であれば電界でナノファイバ301を誘引するように誘引電源を制御すればよい。この場合、誘引電極112を、図8に示すように、気体流が通気可能な形状としておけば、電界による誘引と気体流による誘引との切換を容易に行うことが出来る。この方法を採用することでナノファイバ301の堆積をスムーズに行うことが可能な場合がある。