本発明の焼結機を用いた焼結鉱の製造方法は、装入工程、点火工程、気体燃料供給工程および焼結工程とから構成されている。この製造方法において、上記装入工程は、循環移動するパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して、パレット上に焼結原料の装入層を形成する工程であり、上記点火工程は、点火炉を使って装入層上表面の炭材に点火する工程である。また、上記気体燃料供給工程は、気体燃料供給装置から高濃度の気体燃料を装入層上方の空気中に高速で吐出して燃焼下限濃度以下の希釈気体燃料を得る工程であり、上記焼結工程は、パレット下に配置されたウインドボックスの吸引力により上記希釈気体燃料と空気とを装入層内に吸引し、該希釈気体燃料を装入層内において燃焼させると同時に、装入層内に吸引した空気により、該装入層内の炭材を燃焼させ、これらの燃焼によって発生する熱によって、焼結原料を焼結し、焼結ケーキを生成させる工程である。
そして、本発明の焼結機は、上述した気体燃料供給装置の気体燃料供給部における気体燃料への着火を防止するために、上記気体燃料供給部における着火を監視する着火監視装置と、上記気体燃料供給装置へ気体燃料を供給する配管に緊急遮断弁とを配設することにより、装入工程、点火工程、気体燃料供給工程および焼結工程から構成される焼結鉱の製造を、安全かつ安定して実現しようとするものである。
本発明において、上記のように装入層の上方で気体燃料を大気中に高速で吐出し、その気体燃料を燃焼下限濃度以下に希釈するのは、以下の理由による。
表1は、本発明で用いることができる代表的な気体燃料の燃焼下限濃度、供給濃度等を示したものである。焼結原料中に気体燃料を供給する時のガス濃度は、爆発や火災(着火)を防止するには、燃焼下限濃度より低いほど安全である。都市ガスは、Cガス(コークス炉ガス)と燃焼下限濃度が近似しているが、熱量がCガスよりも高いことから、供給濃度を低くできる。したがって、安全性を確保する観点からは、供給濃度を低くできる都市ガスの方がCガスよりも優位である。
表2は、気体燃料中に含まれる燃焼成分(水素,CO,メタン)と、それら成分の燃焼下限・上限濃度、層流、乱流時の燃焼速度等を示したものである。焼結中に気体燃料供給装置から供給している気体燃料への着火を防止するには、逆火防止を図る必要があるが、そのためには、気体燃料を、少なくとも層流燃焼速度以上、好ましくは乱流燃焼速度以上の高速で吐出させれば良いと考えられる。例えば、メタンを主成分とする都市ガスの場合には、3.7m/sを超える速度で吐出させれば、逆火のおそれはないわけである。一方、水素ガスは、乱流燃焼速度がCOやメタンと比較して速いため、逆火を防止するには、その分、高速で吐出させる必要がある。つまり、表1に示した気体燃料の中では、水素を含まない都市ガスは、水素を59vol%含有するCガスと比較して、吐出速度を遅くすることができる。しかも、都市ガスは、COを含まないので、ガス中毒を起こすおそれもない。したがって、安全性を確保する観点からは、都市ガスは、本発明において使用する気体燃料として好ましい特性を有するものであると言える。メタンを主成分とする天然ガスも同様である。もちろん、Cガスも、気体燃料として使用することができるが、その場合には、ガス吐出速度を高める(速める)こと、および、CO対策を別途講ずることが必要となる。
表3は、気体燃料を供給する形式による得失を評価した結果を示したものである。表中、直上吹込み形式とは、都市ガスやCガス等の気体燃料を、高濃度のまま吐出して周囲の大気を巻き込ませることにより所定の濃度に希釈し、装入層中に吸引(導入)させる形式のことであり、予混合吹込み形式とは、あらかじめ大気と気体燃料とを混合して所定の濃度まで希釈したものを装入層上に供給し、装入層中に吸引(導入)させる、いわゆるプレミックス形式のことである。直上吹込み形式では、上述した乱流燃焼速度以上の速度で気体燃料を吐出すれば、逆火防止は容易であるが、気体燃料を周囲の大気と混合し希釈させる際、濃度ムラが発生しやすいため、異常燃焼を起こす可能性が、予混合吹込み形式に比べて高い。しかし、設備コストを含めて総合的に評価した場合には、都市ガスの直上吹込みが最も優位である。
また、本発明では、気体燃料供給装置により、気体燃料を装入層の上方で大気中に高速で吐出させ、それによって周囲の空気と短時間で混合させて、その気体燃料の燃焼下限濃度以下の濃度に希釈し、その後、装入層中にその希釈気体燃料を導入するが、その理由は以下による。
図5(a)に示したような内径300mmφ×高さ400mmの焼結鍋に焼結ケーキを充填し、その焼結ケーキの中央部の上から深さ90mmの位置にノズルを埋め込み、対空気で1vol%となるよう100%濃度のメタンガスを吹き込み、焼結ケーキ内の円周方向および深さ方向におけるメタンガス濃度を測定し、その結果を表4に示した。一方、図5(b)に示したように、同じノズルを用いて、焼結ケーキの上方350mmの位置からメタンガスを大気中に供給して上記と同じ濃度となるよう希釈した場合について、上記と同様にして焼結ケーキ内のメタンガス濃度の分布を測定し、その結果を表5に示した。これらの結果から、メタンガスを焼結ケーキ中に直接導入した場合には、メタンガスの横方向への拡散が不十分であるのに対して、メタンガスを焼結ケーキ上方で希釈して供給した場合には、焼結ケーキ内のメタンガス濃度はほぼ均一化していることがわかる。以上の結果から、気体燃料は、焼結ケーキの上方で空気中に供給することにより、装入層内に導入される前に、均一に希釈しておくことが好ましいことがわかる。
本発明において、装入層中に供給する気体燃料としては、高炉ガス(Bガス)、コークス炉ガス(Cガス)、高炉ガスとコークス炉ガスとの混合ガス(Mガス)、都市ガス、天然ガス(LNG)またはメタン、エタン、プロパン、ブタンガス、あるいはこれらの混合ガスのいずれかを用いることができる。本発明では、これらの気体燃料のいずれかを空気中に高速で吐出し、空気と混合させて希釈気体燃料とし、装入層中に供給(導入)する。
上記希釈気体燃料は、その中に含まれる可燃性ガス(燃焼成分)の濃度を、大気中の常温における燃焼下限濃度の75%以下まで希釈した気体燃料であることが好ましく、より好ましくは燃焼下限濃度の60%以下、さらに好ましくは燃焼下限濃度の25%以下の濃度にまで希釈したものであるのが好ましい。燃焼下限濃度以下の75%以下に希釈した可燃性ガスを使用する理由は、下記の二つである。
(a)装入層上部への高濃度の可燃性ガスの供給は、時として、爆発的燃焼を招くおそれがあり、少なくとも常温では、火種があっても燃焼しない状態としておく必要がある。
(b)装入層中で完全に燃焼せず、未燃焼のままウインドボックスの下流にある電気集塵器等に到達したとしても、電気集塵器の放電によって燃焼するおそれがないことが必要である。
さらに、希釈気体燃料の濃度は、その希釈気体燃料の燃焼による酸素の消費によって、焼結原料用に含まれる総燃料(固体燃料+気体燃料)の燃焼に必要な酸素の不足を招いて燃焼不足を起こさない程度に希釈されたものであることが必要である。
ただし、希釈気体燃料の濃度は、燃焼下限濃度の2%以上であるのが好ましい。濃度が2%未満では、燃焼による発熱量が不足し、焼結鉱の強度向上と歩留まりの改善が得られないからである。また、希釈気体燃料は、その濃度を炭材量(固体燃料)に応じて調節するのが好ましい。さらに、希釈気体燃料は、濃度を調整することにより、装入層中の所定の位置で燃焼させることが好ましい。
また、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層中の炭材に点火した後に、希釈された気体燃料を装入層中へ供給(導入)する。その理由は、点火直後の位置で希釈気体燃料を供給しても、希釈気体燃料は、装入層の表層上で燃焼するだけであり、焼結層に何ら好ましい影響を与えることはないからである。したがって、本発明では、装入層表層部の焼結原料が焼成されて焼結ケーキ層が形成された後に、希釈気体燃料を装入層に供給する必要がある。また、希釈気体燃料の供給は、装入層の上層表面に焼結ケーキの層が形成されていれば、焼結が完了するまでの任意の位置で行うことができる。
希釈気体燃料の供給を焼結ケーキ層が形成された後に行うことが好ましい他の理由は、焼結ケーキが生成していない状態で装入層の上部に希釈気体燃料の供給を行うと、該装入層上で爆発的な燃焼を起こす危険性があるからである。この危険性は、気体燃料の供給を検討した当初から想定された問題点であった。しかし、気体燃料を装入層上方で供給して大気と混合させて装入層表面に達するまでの間に燃焼下限濃度以下の希釈気体燃料とする気体燃料の供給形態では、希釈された気体燃料が燃焼(着火)を起こす可能性は低い。むしろ、注意しなければならないのは、高濃度の気体燃料が、気体燃料供給部すなわち気体燃料供給配管に設けられたスリットや噴出穴あるいはノズル等の吹出口で燃焼(着火)を起こす可能性の方が高いことである。
さらに、点火後の装入層中に希釈気体燃料を供給し、装入層内の最高到達温度と高温域保持時間のいずれかまたは両方を制御するためには、燃焼・溶融帯の厚みが少なくとも15mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上となった状態において、希釈気体燃料の供給を行うことが好ましい。燃焼・溶融帯の厚みが15mm未満では、焼結層(焼結ケーキ)を通して吸引される空気と希釈気体燃料による冷却効果によって、気体燃料を燃焼させてもその効果が不十分となり、燃焼・溶融帯の厚みの拡大を図れない。一方、前記燃焼・溶融帯の厚みが15mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm以上となる段階で希釈気体燃料を供給すると、燃焼・溶融帯の厚みの拡大や高温域保持時間の延長を実現することができ、ひいては高強度の焼結鉱を得ることができるからである。なお、前記燃焼・溶融帯の厚みの確認は、例えば、後述する図8に示したような、透明石英製窓付き竪型管状試験鍋を用いて行うことができる。この試験鍋は、希釈気体燃料の供給位置を決定するのに極めて有効である。
また、希釈気体燃料の装入層への導入は、燃焼前線が表層下に下がり、燃焼・溶融帯が表層から100mm以上、好ましくは200mm以上となった位置、すなわち、装入層の中・下層領域を対象として行うのがより効果的である。つまり、希釈気体燃料は、燃焼前線が表層下に達した段階から供給を開始し、装入層の表層に生成した焼結ケーキ領域(焼結層)を燃焼することなく通過させることが好ましい。その理由は、燃焼前線が表層下まで下がった位置であれば、焼結層を通して吸引される空気が焼結ケーキの余熱によって加熱されるため、冷却の悪影響が軽減され、燃焼・溶融帯の厚みを効果的に拡大することができるからである。また、気体燃料を、装入層上方で供給して大気と混合させることにより、装入層表面に達するまでの間に希釈する気体燃料供給形態では、逆火(着火)による爆発などのおそれは少なく、さらに、本発明のように、着火を監視しつつ焼結を行うことによって、着火による焼結操業への影響を回避できすることができる。
上記理由から、希釈気体燃料を生成する気体燃料供給装置は、焼結機の規模にもよって異なるが、例えば、気体燃料供給量が1000〜5000m3(標準)/hr、生産量が約1.5万t/日で、機長が90mの規模の焼結機では、点火炉の下流側約5m以降の位置に配置するのが好ましい。
上述したように、本発明に係る焼結機では、希釈気体燃料の供給位置(装入層への導入位置)は、パレット移動方向における点火炉下流で、焼結ケーキが生成した後のいわゆる燃焼前線が表層下に進行した位置から焼結が完了するまでの間の1ヶ所以上の任意の位置で行うことが好ましい。このことは、燃焼前線が装入層の表層下に移った段階で気体燃料の導入を開始すること、したがって、気体燃料の燃焼が装入層の内部で起り、次第に下層へ移行することになるので、爆発のおそれがなく、安全な焼結操業が可能になることを意味している。
また、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層中への希釈気体燃料の導入は、生成した焼結ケーキの再加熱を促進するものであることを意味している。即ち、この希釈気体燃料の供給は、もともと高温域保持時間が短いために熱不足となり、焼結鉱の冷間強度が低くなりやすい部分に対して、固体燃料に比べて反応性の高い気体燃料を供給することによって、不足している燃焼熱を補填し、燃焼・溶融帯の再生−拡大を図るという役割を担うものだからである。
さらに、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層上部からの希釈気体燃料の供給は、装入層内に導入された希釈気体燃料を未燃焼のまま燃焼・溶融帯にまで到達させ、そこで燃焼させることによって、燃焼熱の補填を図るようにするのが好ましい。それは、希釈気体燃料の装入層中への供給(導入)は、装入層上部のみならず、厚み方向中央部の燃焼・溶融帯にまで波及させることがより効果的と考えられるからである。つまり、気体燃料の供給が、熱不足(高温域保持時間不足)になりやすい装入層の上層部で行われると、この部分に十分な燃焼熱が提供されるので、焼結ケーキの品質改善を図ることができる。さらに、希釈気体燃料の作用効果を中層部以下の帯域にまで及ぶようにすると、本来の炭材によって形成された燃焼・溶融帯の上に希釈気体燃料による燃焼・溶融帯を形成するのと等しいことになり、結果として燃焼・溶融帯の上下方向の拡幅につながり、最高到達温度を上げることなく、高温域保持時間の延長を図ることができるので、パレットの移動速度を落すことなく十分な焼結効果を得ることができる。その結果、装入層全体にわたって品質が改善(冷間強度の向上)されるので、成品焼結鉱の歩留り向上と生産性の向上を図ることができる。
また、本発明は、前記希釈気体燃料の供給位置を、気体燃料供給の作用・効果を装入層中のどこに及ぼすかという観点から決定している。また、気体燃料の供給によって、装入層内における最高到達温度や高温域保持時間を、熱量一定基準の下で固体燃料の量に応じて制御している。従って、本発明において、希釈気体燃料を装入層中へ導入(供給)するに当っては、その供給位置を調整するだけでなく、燃焼・溶融帯自体の形態を制御し、燃焼・溶融帯における最高到達温度および/または高温域保持時間をも制御するようにすることが好ましい。
一般に、点火後の装入層内では、燃焼(火炎)前線が、パレットの移動に伴って次第に前方(下流側)かつ下方に拡大していくため、燃焼・溶融帯の位置は、図4(a)に示すように変化する。そして、図4(b)に示すように、焼結過程で受ける焼結層上層、中層、下層の熱履歴は大きく異なり、したがって、上層〜下層間では、高温域保持時間(約1200℃以上となる時間)も大きく異なる。その結果、パレット内の焼結鉱の位置別歩留まりは、図4(c)に示すような分布を示す。即ち、表層部(上層部)の歩留は低く、中層、下層部で高い歩留となる。そこで、本発明に従って、前記気体燃料を供給すると、燃焼・溶融帯の上下方向の厚みやパレット進行方向の幅が拡大し、これが成品焼結鉱の品質向上につながる。そして、高い歩留分布となる中層部や下層部は、さらに高温域保持時間を制御(延長)できるため、歩留がより向上する。
上記のように、本発明では、気体燃料の供給(導入)位置を調整することにより、燃焼・溶融帯の形態、即ち、燃焼・溶融帯の高さ方向の厚さおよび/またはパレット移動方向の幅を制御できると共に、最高到達温度や高温域保持時間を制御することができる。そして、これらの制御を通じて、常に十分な焼成を達成し、ひいては成品焼結鉱の冷間強度を高め、品質向上を実現することができる。
また、本発明における装入層中への希釈気体燃料の供給(導入)は、成品焼結鉱全体の強度を制御するためであると言うこともできる。すなわち、本発明において、希釈気体燃料を供給するそもそもの目的は、焼結ケーキ(焼結鉱)の冷間強度を向上させることにあり、具体的には、気体燃料の供給位置制御や、焼結原料が燃焼・溶融帯に滞在する時間である高温域保持時間の制御、最高到達温度の制御を通じて、焼結鉱の冷間強度(シャッターインデックスSI)を75〜85%程度、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上にすることである。なお、実機焼結機によって製造された焼結鉱の冷間強度(SI値)は、鍋試験で得られる値よりもさらに10〜15%高い値を示すのが一般的である。
この強度レベルは、本発明によれば、前記希釈気体燃料の濃度、供給量、供給位置および供給範囲を、好ましくは焼結原料中の炭材量をも考慮した上で(投入熱量を一定にする条件下で)調整することによって、安価に達成することができる。焼結鉱の冷間強度の向上は、一方で、通気抵抗の増大と生産性の低下を招くことがあるが、本発明では、そうした問題を、最高到達温度や高温域保持時間を制御することによって解消することができる。
したがって、本発明の焼結鉱の製造方法において、希釈気体燃料の装入層中への導入位置は、装入層中に生成した焼結ケーキから湿潤帯までの間の任意の帯域における焼結鉱の冷間強度をどのように制御するかという観点も考慮して決定される。そして、この観点から、本発明では、気体燃料供給装置の規模(大きさ)、数、位置(点火炉からの距離)、ガス濃度を、好ましくは焼結原料中の炭材量(固体燃料)に応じて調整することによって、燃焼・溶融帯の大きさ(上下方向の厚さおよびパレット移動方向の幅)だけでなく、高温到達温度、高温域保持時間をも制御し、もって、生成する焼結ケーキ(焼結鉱)の強度の向上を図っている。
また、本発明の方法によって焼結鉱を製造するに当たっては、循環移動するパレットと、そのパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して装入層を形成する原料供給装置と、その焼結原料中の炭材に点火する点火炉と、上記パレットの下方に、空気を吸引するウインドボックスとを備える焼結機において、上記点火炉の下流側には、装入層上方で気体燃料を空気中に供給して燃焼下限濃度以下の希釈気体燃料とする気体燃料供給装置が配設され、かつ、その気体燃料供給装置には、気体燃料供給部の着火を監視する着火監視装置と、気体燃料供給配管からの燃料供給を停止する緊急遮断弁とが配設されてなることを特徴とする焼結機を用いる。
本発明の焼結機における気体燃料供給装置は、焼結機の幅方向に沿って、パレットの両サイドウォールを跨がるように配設されるのが好ましい。すなわち、上記気体燃料供給装置は、パレットの両サイドウォールを跨がるようにフードが配設され、その内部には気体燃料を供給する配管を、単数または複数本、好ましくは2〜15本、パレット進行方向に対して平行に、あるいは垂直に配列し、そのそれぞれの配管には、気体燃料を大気中に高速で供給するためのスリットや噴出穴あるいはノズルを複数取り付けたものにて構成されることが好ましい。
前記気体燃料供給装置は、点火炉の下流側でかつ燃焼・溶融帯が装入層内を進行中の過程(状態)にある、パレット進行方向のいずれかの位置に1以上配設され、その位置において、希釈気体燃料の装入層中への供給が行われるのが好ましい。即ち、この装置は、点火炉の下流側で、燃焼前線が表層下に進行した以降の任意の位置に1ないし複数配設されるものであり、目標とする成品焼結鉱の冷間強度を調整する観点から、大きさ、位置、数が決められる。
ところで、本発明においては、気体燃料を使用しているが、装入層中に供給する気体燃料は、前述したように燃焼下限濃度以下に希釈され、通常、装入層外では燃焼することがない濃度に制御されている。しかし、前述したように、高濃度の気体燃料は、供給部においては着火するおそれがある。また、上記気体燃料が装入層の裂け目や装入層とパレット内壁の間隙を通り、パレット下のウインドボックスに未燃焼のまま流出する可能性がある。ウインドボックスから排気経路に流れた空気は、その後、電気集塵機で集塵されて清浄化されるが、気体燃料が未燃焼のままでは、電気集塵機での放電により爆発や燃焼を起こすおそれがある。
そこで、上記2つの問題点に対する対応策について詳細に説明する。まず、前者の問題点、即ち、気体燃料供給部における着火問題に対しては、気体燃料供給部への着火を監視する着火監視装置を設置し、着火が確認された場合には、気体燃料の供給を停止して消化を図ることとした。
図6に示したような実験装置を用いて、LNG(CH4:89%)を気体燃料として焼結原料充填層に供給したときにおける焼結原料充填層内のCH4濃度を測定した。ここで、上記焼結原料充填層は、厚さ400mm×幅800mm×長さ400mmの大きさであり、また、LNGガスの供給は、孔径3mmφのノズルを下向きに1個,3個および5個取り付けた3種の気体供給配管を準備し、これらの気体供給配管を焼結原料充填層の上方約300mmの高さに設置し、そのノズルから焼結原料層に向けて供給した。この際、実焼結操業と同じように焼結原料充填層の下方で空気を吸引し、LNG供給量は、この時の空気流量に対してLNG濃度が1%となるよう制御した。また、CH4濃度の測定は、図6に示したように、5つのノズルを配設したときのノズル直下位置(幅方向)の充填層の厚さ方向上層、中層、下層の3層(合計15箇所)で行った。
上記測定の結果を、図7に示した。図7の最下段は、気体供給配管にノズルを1本配置しただけ場合であり、この場合には、幅方向ではノズル設置部位の1箇所のみでCH4が検出され、他の箇所では検出されていない。また、充填層の厚さ方向の変化もほとんどなく、また、この傾向は、充填層の厚さ方向でほとんど変わらない。また、図7の中段は、配管にノズルを3本配設した場合であり、この場合でも、ノズル設置部位の3箇所のみでCH4が検出され、その他の位置ではCH4はほとんど検出されず、また、この傾向は、充填層の厚さ方向でもほとんど変わらない。
これらの結果から、焼結原料充填層内では気体燃料の拡散はほとんどないこと、したがって、焼結原料充填層内に希釈した気体燃料を供給するためには、気体燃料が原料充填層表層に達するまでの間に十分に拡散させて希釈する必要があることがわかった。また、重要なことは、もし、何らかの原因で、斯かる希釈されていない気体燃料に引火し、それが気体燃料供給部に逆火して着火(燃焼)を起こした場合には、気体燃料の燃焼によって酸素が消費された空気がそのまま焼結原料充填層内に吸引されることになるため、焼結原料内に添加されている本来の燃料としての炭材の燃焼にも重大な支障をきたすことになる。これが、本発明が、気体燃料供給装置の気体燃料供給部における着火を監視する着火監視装置を設ける主な所以である。
さらに、着火状態で焼結操業を継続すると、上記酸素不足の空気が、着火位置下方の焼結原料充填層(装入層とも記載)の表層からそのまま吸引され、それが拡散せずに中層、下層へと流れる。そのため、酸素不足の空気が通過した領域では、焼結原料中に添加された本来の燃料としての炭材が十分に燃焼できなかったり緩慢燃焼を起こしたりする。その結果、装入層内の最高到達温度が低下したり装入層内の高温域保持時間が不足したりして、焼結操業自体が成立しない領域が発生し、ついには、正常な焼結鉱を得ることができず、焼結鉱の品質低下や歩留まりの大幅低下を招くことになる。
図8は、本発明の気体燃料供給装置に、気体燃料供給部の着火を監視する着火監視装置と、その気体燃料供給部に気体燃料を供給する気体燃料供給配管に緊急遮断弁を配設した例を示したものである。この図の例では、気体燃料供給装置は、焼結機パレットに充填された焼結原料装入層の上方に、かつ、供給された気体燃料が装入層表面に達するまでの間に所定の濃度の希釈気体燃料となる位置(高さ)に設置されている。すなわち、気体燃料供給部の供給口からは、気体燃料としてLNG(都市ガス)が吹き出されており、吹き出されたLNGは、主排気ブロワーで吸引されて図中矢印で示す方向に焼結原料充填層内を流れる大気に誘導されて表層部分に達するが、その間に周囲の大気を巻き込みながら所定の濃度に希釈される。その後、この希釈気体燃料は、焼結原料充填層内に吸引されて、焼結層内の焼結反応帯において燃焼し、焼結充填層(装入層)内の最高到達温度を高めたり、装入層内の高温域保持時間を延長したりして、焼結鉱の品質を向上する。
気体燃料供給部から吹き出される上記気体燃料(LNG)は、本発明の希釈気体燃料の濃度まで希釈された場合、通常であれば常温では爆発も燃焼も起こさないが、気体燃料が十分に希釈される前や偏在している場合には、焼結層表層の火種などによって気体燃料供給部の供給口位置まで逆火し、吹き出している気体燃料が燃焼状態になる(着火)おそれがある。そこで、本発明では、この燃焼状態(着火)を監視する着火監視装置を気体燃料供給装置に併設する。この着火監視装置は、気体燃料供給部の気体燃料供給口を撮像する撮像装置と画像処理装置と遮蔽弁の開閉を制御する制御装置とから構成されている。撮像装置としては、気体燃料供給口での気体燃料の燃焼(着火)が検出できるものであればよく、例えば、工業用監視カメラ(ITV)、赤外線監視カメラなどが使用できる。この撮像装置から得られた画像データを処理して着火の有無の判定するのが画像処理装置である。そして、着火していると判定された場合には、制御装置を介して、気体燃料の供給配管に設けられた遮断弁を閉鎖して気体燃料供給部からの気体燃料の供給を一旦遮断し、燃焼を中断させる(消火する)。
消火を確認後は、所定時間そのままとし、気体燃料供給装置内に充満している気体燃料が拡散放逸し、燃焼下限濃度以下の所定の濃度になるのを待ってから、制御装置を介して気体燃料供給配管の遮断弁を開放し、気体燃料の供給を再開する。本発明では、かかる操作により、気体燃料供給口での着火を防止する。なお、上記気体燃料の供給を停止する時間は、気体燃料供給装置内のガス濃度を測定し、気体燃料が爆発等の危険のない十分な濃度以下に低下するまでの時間とするか、あるいは、上記時間を予め測定しておき、その時間をタイマーにセットしておく方法などで管理することができる。また、気体燃料供給装置内に滞留する気体燃料を、気体燃料供給装置内から排気する排気ブロワーを設置しておき、これによる排気終了後、所定時間経過してから気体燃料の供給を再開する方法を採用してもよい。
また、図9は、本発明の着火監視装置における、着火検出から、その着火検出の判定に基いて気体燃料の供給を遮断し、その後、供給を再開するまでの処理フローの一例を示したものであり、気体燃料供給口の着火を監視する撮像装置の画像データを画像処理装置に取り込み、輝度レベルから画像データを輝度大小に2値化し、輝度大と判定した画素数から着火の有無の判定を行う例を示している。そして、着火判定時には、遮断弁を閉鎖して気体燃料の供給を遮断し(消火し)、その後、タイマーにセットした所定時間経過後、遮断弁を開けて気体燃料供給を再開する。なお、着火の判定は、上記のように輝度レベルを2値化し、輝度大として検知した画素数と予め設定された閾値の画素数とを比較し、閾値以上の画素数が検知された段階で着火と判定する方法でもよいし、輝度レベル自体を予め設定された閾値の輝度レベルと比較し、あるレベル以上の輝度が確認された時点で着火と判定する方法でもよい。
なお、気体燃料供給口への着火が確認されて、気体燃料の供給が停止されている間、即ち、緊急遮断弁は閉止されている間は、焼結機の操業を停止してもよいが、継続して操業しても構わない。気体燃料の供給を停止しても、焼結機パレット内へ供給される空気は、着火中のような酸素不足の状況ではないことから、希釈気体燃料供給による焼結鉱の品質向上作用が中断されるのみで、炭材燃焼のみの通常の焼結操業に戻るだけだからである。
次に、上述した後者の問題点、即ち、排気経路に未燃焼の気体燃料が流出する問題点に対しては、本発明では、ウインドボックスに接続された排気経路に、前記未燃焼の気体燃料の流出を検知する手段を配設して気体燃料の濃度を監視することで、電気集塵機での放電による爆発や燃焼を防止することとした。
上記気体燃料の検知手段としては、気体燃料自体を検知可能な検知器、あるいは、気体燃料を構成するガス成分の1または複数の成分の濃度を検出することができるガス検知器であればよく、用いるガスの種類(例えば、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉−コークス炉混合ガス、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、あるいはこれらの混合ガス等)に応じて、ガス検知器の検出可能なガス成分(例えば、水素(H2),CO,メタン成分等)を選択すればよい。具体的には、高炉ガスや高炉−コークス炉ガスの混合ガスでは、CO成分が多いためCO濃度を検出することができるガス検知器が有効であり、また、コークス炉ガス単体では、水素成分またはメタン成分を検出することができるガス検知器が有効であり、天然ガスや天然ガスを利用した都市ガスでは、メタン成分を検出することができるガス検知器が有効である。
また、本発明は、ウインドボックスの下流に接続された排気経路に配設された気体燃料の検知手段が、気体燃料を構成する1または2以上の成分の濃度が所定値以上であることを検知したときは、焼結機の運転を停止し、気体燃料の供給経路および/またはウインドボックスに接続した排気経路を不活性ガス雰囲気とする運転方法を採用してもよい。
すなわち、気体燃料を検知したときは、気体燃料の供給を停止し、気体燃料の供給経路および/またはウインドボックスに接続した排気経路を不活性ガス雰囲気とする。あるいは、排気経路を不活性ガス雰囲気にしつつ気体燃料の供給を停止し、気体燃料の供給経路を不活性ガス雰囲気としてもよい。あるいは、両者を行い、さらに、排気中の気体燃料の除去操作を行ってもよい。何らかの火種により、爆発や燃焼事故が起こるのを防止するための処置である。供給する不活性ガスとしては、製鉄所で大量に得ることができる窒素ガス、アルゴンガス、または各種燃焼設備の排ガスなどを用いることができる。ただし、気体燃料の供給を停止し、気体燃料の供給経路やウインドボックスに接続した排気経路を不活性ガス雰囲気として安全が確保できれば、気体燃料供給を伴わない通常の焼結機操業で運転を継続することは可能である。
また、焼結機の運転開始あるいは運転再開に当たっても、フード内に残留している気体燃料を、焼結機建屋外に排出し、気体燃料供給経路および排気経路内を一旦不活性ガス雰囲気としてから焼結機の運転を再開する運転方法を採用することが好ましい。これにより、運転開始時における希釈気体燃料の濃度不安定を防止したり、気体燃料と残存する残留気体燃料との接触を防止したりすることができるので、爆発や燃焼事故を確実に抑止することができる。
なお、このような検知手段や運転方法を採用するのは、以下の理由による。一般的な焼結機の有効火格子面積は200m2以上であり、日産1万トン(焼結鉱)を超える規模のものでは400m2、500m2以上のものもある。このように大きな火格子面積の一部あるいはかなりの部分に希釈された気体燃料を供給しようとした場合、気体燃料の濃度偏析が生じたり、気体燃料が滞留して局部的濃度上昇を生じたりするおそれがある。また、本発明では、希釈気体燃料を装入層中の任意の位置で燃焼させるため、希釈気体燃料の装入層への導入を、燃焼前線が装入層表層下に移動してから行うが、この際、希釈気体燃料が、装入層形成時に生じた亀裂や、焼結原料の焼き締まりで発生した亀裂などを通過して、あるいは、装入層とパレット内壁に生じる間隙を通過して、燃焼することなくそのままウインドボックスに流出する可能性もある。したがって、これらによる危険性を払拭する必要がある。
図10は、本発明に係る焼結機の一実施形態の一部を示したものであり、点火炉10のパレット移動方向下流側に当たる装入層の上辺に、高炉ガスやコークス炉ガスあるいはこれらの混合ガス(Mガス)等の気体燃料を大気中に吐出し、所望の濃度の希釈気体燃料とするための気体燃料供給装置12を1基だけ配設した例を示したものである。その気体燃料供給装置12は、装入層の上方にフード12´が設置され、そのフードの内部には、パレットの幅方向に沿って複数の気体燃料供給パイプ12aが配設されており、そのパイプには、気体燃料を高速で大気中に吐出するノズル12bを下向きにかつパレット幅方向に複数個配列させたものを、図示していないサイドウォールの上から装入層を覆うように配設したものである。この気体燃料供給装置12のフード12´内に供給された気体燃料は、フード12´内の周辺の空気と混合して希釈気体燃料となり、その後、パレット8下の図示されていないウインドボックスの吸引力を利用して、装入層表層に生成した焼結ケーキを経て、装入層の深部(下層)にまで導入される。
図11は、図10の製造装置に、本発明に係る防災装置を付加した例を示したものである。図中、点火炉10および気体燃料供給装置12と、ウインドボックス11の間に、焼結原料を堆積した装入層を載せた図示されていないパレットがあり、これが図の右方向に移動する。この際、点火炉によって装入層表面の炭材に点火され、パレットの移動に伴って炭材の燃焼が装入層の上層から下層に向けて進行し、焼結ケーキ(焼結鉱)が得られる。さらに、本発明では、点火炉10の後方(下流)において、気体燃料供給装置12で気体燃料をフード12´内の大気中に吐出して燃焼下限濃度以下の所定濃度に希釈された気体燃料とし、この希釈気体燃料を装入層中に吸引導入して、装入層内で燃焼させる。気体燃料供給装置12から供給する気体燃料は、点火炉10とは別途に独立した配管系で供給してもよく、また、点火炉用燃料配管と同じ系として、点火炉10へのガス供給管(図示せず)の延長上に接続するように構成してもよい。
なお、図中、12として示した気体燃料供給装置において、実線で示したAの気体燃料供給装置は、焼結機進行方向の略中央域において気体燃料を供給し、装入層中層領域の焼結鉱の品質改善を行う場合の例であり、また、破線で示したBの気体燃料供給装置は、焼結機進行方向の後方域まで気体燃料を供給し、装入層中層・下層領域の焼結鉱の品質改善を行う場合の例を示している。
気体燃料供給装置12においては、気体燃料をフード12´内の大気中に高速で吐出して空気と混合し、常温下では燃焼を起こさない燃焼下限濃度以下まで希釈された気体燃料とする。この希釈気体燃料は、その後、ウインドボックス11を介して、装入層の上から下に向けて吸引されて、高温の装入層中の所定の位置で燃焼が始まるように濃度が調整されている。この希釈気体燃料は、ウインドボックス11を通過した後は、高温領域が存在しないため、通常では燃焼や爆発のおそれはない。
しかし、ウインドボックス11を通過した排気は、ウインドボックス11を結ぶ主ダクトから構成される排気経路13を経て、後方(下流)の集塵機14に導入され、除塵、排ガス処理されて煙突から排気される。上記集塵機14には、通常、電気集塵機が使用されており、電気集塵機では、放電を繰り返すことにより除塵している。通常、所定の濃度以下に希釈された気体燃料は、上記電気集塵機14でも爆発や燃焼を起こすことはない。
また、前述したように、焼結機は、有効火格子面積が大きいため、希釈気体燃料を供給する際に濃度の偏析が生じたり、気体燃料が滞留して局部的な濃度上昇を起こしたりするおそれがあり、また、装入層に導入した希釈気体燃料が、装入層形成時に生じた亀裂や、装入層の焼き締まりで発生した亀裂などから、あるいは、装入層とパレット内壁との間隙などから、燃焼することなくそのまま通過してウインドボックスに到達する可能性を完全に払拭することはできない。万一、電気集塵機14で爆発事故が発生した場合には、復旧に多大の時間を要し、月単位の操業停止を余儀なくされるため、焼結鉱生産に及ぼす影響は極めて大きい。したがって、電気集塵機の放電による気体燃料の燃焼・爆発を確実に阻止する必要がある。
そこで、本発明においては、排気経路13に前記気体燃料の検知手段15を配設し、排気中の気体燃料濃度が、電気集塵機14の放電で、爆発・燃焼を起こす値に達しないよう監視する。前記気体燃料の検知手段15としては、気体燃料自体を検知可能な検知器、あるいは、気体燃料を構成するガス成分の1または複数の成分の濃度を検出できるガス検知器であれば用いることができる。
また、本発明の焼結機には、前記気体燃料の検知手段15によって所定濃度を超える気体燃料が検知されたときには、安全を確保するため、焼結機自体の運転を停止するとともに、速やかに不活性ガスを排気経路13に供給し、爆発・燃焼を起こすおそれのない安全な濃度領域まで希釈するための不活性ガス供給手段16を配設されている。なお、図中の17は、排気経路13の排気を吸引する主排気ブロワーである。
さらに、本発明の焼結機は、前記気体燃料の検知手段15で所定濃度以上の気体燃料が検知されたときには、安全を確保するため、焼結機自体の運転を停止するとともに、気体燃料の供給ブロワー18を停止し、気体燃料供給配管内の気体燃料を排気し、不活性ガス雰囲気とするための不活性ガス供給手段19を備えている。この際、気体燃料供給装置の12内も、前記不活性ガス供給手段19により不活性ガスで満たしてもよいし、気体燃料供給装置12に別途不活性ガス供給手段を配設してもよい。
また、前記気体燃料の検知手段15によって所定濃度以上の気体燃料が検知され、焼結機が停止されたときには、主ダクトからなる排気経路13のほか、ウインドボックス11から排気経路13に延びる枝管20までを不活性ガス雰囲気とする不活性ガス供給手段16´を設置してもよい。すなわち、ウインドボックス11、枝管20、排気経路13にも不活性ガスを供給し、気体燃料を払拭してもよい。
つまり、前記気体燃料の検知手段により排気中に所定濃度以上の気体燃料が検知されたときには、焼結機を停止するとともに、前記気体燃料供給手段により供給されている気体燃料の供給を停止し、さらに、気体燃料供給経路や焼結機の排気経路内を一旦不活性ガス雰囲気とする運転方法が好ましい。設備上、何らかの火種によって、爆発・燃焼事故が発生するのを予防する処置である。
さらに、焼結機の排鉱部では、焼結鉱の破砕が行われるため、ここにも集塵装置21が設置されているが、気体燃料供給装置12を焼結機の焼結領域の後方まで延長した場合には、上記集塵機21にも気体燃料が吸引されるおそれがある。そのため、集塵機21の排気吸引経路にも、気体燃料の検知手段22や不活性ガス供給手段23を配設するのが好ましい。
なお、上記説明では、集塵機14、21の上流に気体燃料の検知手段15、22を配置した例を説明したが、集塵機14、21の下流側に気体燃料の検知手段を配置し、検知された気体燃料の濃度変化から濃度の上昇を予測したり、閾値を適正化したりすることにより、気体燃料濃度の異常を検知することは可能である。
さらに、焼結機は、一般に建屋内に収められているが、通常の焼結操業では、燃料(凝結材)として炭材が使用されており、操業条件によっては、COガスなどの有害ガスが発生するため、建屋は一部開放状態とされているのが普通である。しかし、建屋が開放されている場合でも、供給した希釈気体燃料が、気体燃料供給装置12とパレット上の装入層との間から機外に漏洩して建屋内の淀み易い部分に充満することがある。そこで、このような淀みが発生し易い部分にガス検知器(気体燃料の検知手段)24を配置し、気体燃料の滞留を検知したときには、気体燃料供給ブロワー18を停止したり、炭材(凝結材)のみの焼結操業に切り替えたり、あるいは、建屋内の換気を促進したりして、滞留した気体燃料による爆発事故等の防止を図ることが好ましい。