JP2009249512A - 構造体および磁気バイオセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】夾雑物や標的物質の非特異吸着を良好に防止できる構造体、及びその構造体を用いて標的物質のみを感度良く検出する磁気バイオセンサを提供する。
【解決手段】捕捉分子を含む高分子化合物2からなる高分子膜5を基体上に備えた構造体であって、高分子化合物は一般式(1)で示される主鎖と側鎖とを有する重合体からなり、基体1には前記高分子化合物の一端がグラフト化され、高分子化合物の側鎖に捕捉分子を結合できる官能基3を有し、官能基のうちの少なくとも一部に捕捉分子が結合している構造体を用いたバイオセンサ。
Figure 2009249512

【選択図】図1

Description

本発明は、高分子膜に標的物質を捕捉する捕捉分子を含む構造体、前記捕捉分子と相互作用する標的物質を高感度に測定する為の磁気バイオセンサに関するものである。
従来から、検体中の標的物質を検出する手段として分子間の相互作用が用いられてきた。相互作用を用いた手段としては、一方の分子を捕捉分子として基体表面上に固定し標的物質を含む検体を接触させることによって反応を行わせる方法が一般的である。
固定した捕捉分子と相互作用する標的物質を定量的に測定するとき、基体表面の性質もしくは固定方法によっては、捕捉分子と相互作用した標的物質以外に、基体表面に非特異的に吸着した物質も同時に検出してしまう恐れがある。このことが、微量検出を必要とするセンサでは、最小検出感度を低下させる原因となる。そのため、非特異吸着を抑制しつつ、標的物質のみのが検出される手法が必要とされている。
基体表面への非特異吸着を防止する技術として、非特許文献1には、OEGMA(オリゴエチレングリコールメタクリレート)をモノマーとして原子移動ラジカル重合によりSPR(Surface plasmon resonance)センサ表面にOEGMAポリマーを高密度に形成し、タンパク質の非特異吸着を防止する技術が開示されている。しかし、OEGMAポリマーに捕捉分子を固定化するような工夫はなされていない。
一方、特許文献1には、バイオセンサ表面に生適合性多孔質マトリックスを形成した後、更に前記マトリックス上に存在するカルボキシル基に捕捉分子を固定化し、夾雑物の非特異吸着を防止して標的物質を検出する技術が開示されている。
特許第02815120号公報 "ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS"、2006,16,640から648頁
非特許文献1において、基体表面への生体分子の非特異吸着を防止する膜の形成方法とその非特異吸着防止の効果が報告されているが、しかしながら、その膜へ捕捉分子を固定化する方法は記載されていない。
一方、特許文献1においては、バイオセンサ表面への生体分子の非特異吸着を防止した上で、捕捉分子を固定し、標的物質のみを検出する方法が報告されているが、非特異吸着を防止する効果は非特許文献1ほど高くない。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、基体上に高分子化合物からなる高分子膜を形成し、その上に標的物質を捕捉する捕捉分子を固定化することにより、夾雑物や標的物質の非特異吸着を良好に防止すると共に標的物質を特異的に捕捉できる構造体を提供するものである。
また、本発明は、上記の構造体を用いて、標的物質のみを感度良く検出する磁気バイオセンサを提供するものである。
上記の課題を解決する構造体は、捕捉分子を含む高分子化合物からなる高分子膜を基体上に備えた構造体であって、前記高分子化合物は下記一般式(1)で示される主鎖と側鎖とを有する重合体からなり、前記基体には前記高分子化合物の一端がグラフト化され、前記高分子化合物の側鎖に捕捉分子を結合できる官能基を有し、前記官能基のうちの少なくとも一部に捕捉分子が結合していることを特徴とする。
Figure 2009249512
(式中、Rは水素原子またはメチル基である。Rは酸素原子またはNH基である。Rはカルボキシル基、アルデヒド基、スクシンイミド基、アミノ基、マレイミド基、グリシジル基のいずれかである。Xは1以上の整数である。nは10以上100000以下の整数である。)
前記高分子化合物の側鎖に有する捕捉分子を結合できる官能基が、前記一般式(1)のRであることが好ましい。
上記の課題を解決する磁気バイオセンサは、磁気バイオセンサの検出領域近傍に位置する磁気マーカーの有無又は数を検知する事により検体中の標的物質の有無又は濃度を検出する磁気バイオセンサであって、前記磁気マーカーは標的物質を捕捉する第二の捕捉分子を含み、上記の標的物質を捕捉する第一の捕捉分子を含む高分子化合物からなる高分子膜を有する構造体が磁気バイオセンサの検出領域に配置され、前記第一の捕捉分子と前記第二の捕捉分子により標的物質を捕捉して磁気マーカーの有無又は数を検知することを特徴とする。
本発明は、夾雑物や標的物質の非特異吸着を良好に防止すると共に標的物質を特異的に捕捉できる構造体を提供することができる。
また、本発明は、上記の構造体を用いて、夾雑物や標的物質の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、高感度に標的物質を検出することができる磁気バイオセンサを提供することができる。
まず、本発明に係る構造体の構成について説明する。
(構造体)
図1は本発明に係る構造体の一実施態様を示す概略図である。同図1に示す様に、本発明に係る構造体は、図1に示すように、標的物質を捕捉する第一の捕捉分子4を含む高分子化合物2からなる高分子膜5を基体1上に備えた構造体であって、前記高分子化合物2は下記一般式(1)で示される主鎖と側鎖とを有する重合体からなり、前記基体には前記高分子化合物の一端がグラフト化され、前記高分子化合物の側鎖に捕捉分子を結合できる官能基3を有し、前記官能基のうちの少なくとも一部に捕捉分子4が結合していることを特徴とする構造体である。
Figure 2009249512
(式中、Rは水素原子またはメチル基である。Rは酸素原子またはNH基である。Rはカルボキシル基、アルデヒド基、スクシンイミド基、アミノ基、マレイミド基、グリシジル基のいずれかである。Xは1以上の整数である。nは10以上100000以下の整数である。)
(基体)
本発明における基体とは、基体の表面に、捕捉分子を含む高分子化合物からなる高分子膜を形成することが可能なものである。
本発明における基体の材質は、本発明の構造体を形成しうるものであれば、いかなる材質でもよいが、好ましくは、アミノ基もしくはチオール基が結合可能である金、銀、銅、白金、アルミニウム等の金属、CdS、ZnS等の半導体、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物、もしくは、シラノール基が結合可能なガラス、シリコン、酸化チタン、セラミック、もしくは、カルボキシル基が結合可能なセラミック、カーボンが好適である。酸素プラズマ処理、UV処理等により表面を酸化することによりカルボキシル基を提示することが可能なプラスチックでもよい。上記の理由は基体表面への高分子化合物からなる高分子膜の形成方法が深く関与する。高分子化合物からなる高分子膜の形成方法については後に説明する。
また、本発明における基体の形状は、平板もしくは粒子、微小構造体などいかなる形状でもよい。特に、平板上に数nm程度の凹凸がある場合、本発明の構造体では凹凸に応じて隙間を埋めるように高分子膜を形成することが可能である。そのため、他の方法で形成した非特異吸着防止のための層よりも有効であり、層表面に捕捉分子を固定する方法としても有効である。また、基体の形状が粒子や微小構造体の場合、従来の方法では基体表面の微小な空間に対してポリマー層を薄く形成した上に捕捉分子を固定することが困難である。しかし、本発明では基体の微小な変化を有する表面形状に沿って高密度の高分子膜を構築することが可能であり、また、その表面に捕捉分子を固定化することができる。
(高分子膜)
本発明における高分子膜は、高分子化合物からなる膜である。前記高分子化合物は下記一般式(1)で示される主鎖と側鎖とを有する重合体からなり、前記高分子化合物は一端が基体に固定されており、高分子化合物の側鎖には生体分子の非特異吸着を防止するエチレングリコール鎖が存在し、更にその末端に捕捉分子を固定化する為の官能基(R)を有する。
Figure 2009249512
(式中、Rは水素原子、またはメチル基である。Rは酸素原子、またはNH基である。Rはカルボキシル基、アルデヒド基、スクシンイミド基、アミノ基、マレイミド基、グリシジル基のいずれかである。Xは1以上の整数である。nは10以上100000以下の整数である。)
本発明において、高分子化合物は、下記反応式1に示すように一般式(2)のモノマーを重合した後、側鎖末端の水酸基を酸化することによって、官能基(R)がカルボキシル基やアルデヒド基である高分子化合物を得ることができる。
側鎖末端の水酸基をカルボキシル基へ酸化する方法として、ジョーンズ酸化を挙げることができる。
また、側鎖末端の水酸基をアルデヒド基へ酸化する方法として、コリンズ酸化、PCC酸化、PDC酸化等を挙げることができる。
Figure 2009249512
あるいは、下記反応式2に示すように一般式(3)のモノマーを重合した後、ターシャリーブチル基を脱保護することによって、官能基(R3)がカルボキシル基である高分子化合物を得ることができる。
Figure 2009249512
あるいは、下記反応式3に示すように一般式(4)のモノマーを重合して、官能基(R3)がカルボキシル基である高分子化合物を得ることができる。
Figure 2009249512
あるいは、下記反応式4で示すように一般式(5)のモノマーを重合して、官能基(R3)がアミノ基である高分子化合物を得ることができる。更に、アミノ基に無水マレイン酸を反応させて、R3がマレイミド基である高分子化合物を得ることができる。
Figure 2009249512
あるいは、下記反応式5で示すように一般式(6)のモノマーを重合して、官能基(R3)がグリシジル基である高分子化合物を得ることができる。
Figure 2009249512
前記基体上における前記高分子化合物の数平均分子量は5000以上1000000以下であり、好ましくは10000以上1000000以下である。分子量分布は1以上2未満が好ましい。また、前記高分子膜における高分子化合物の密度は0.1分子/nm以上が好ましい。
高分子化合物からなる高分子膜の一端を基体へ固定化する方法として、既に合成された高分子高分子化合物を基体表面に接触させて固定させても良いが、好ましくは重合によって合成されるものであり、より好ましくは、重合がリビングラジカル重合であるものである。リビングラジカル重合については後に説明する。
また、本発明の高分子化合物の官能基において、前記官能基の少なくとも一部に第一の捕捉分子が固定化されている。捕捉分子の固定化に関しては、後に説明する。
(リビングラジカル重合)
一般的にリビングラジカル重合は、合成されるポリマーの分子量分布が狭く、かつ基体上に高密度にポリマー層をグラフト化できる。よって、本発明においては、一般式(1)に相当するモノマーを重合すれば、基体上に高密度な高分子化合物からなる高分子膜を設けることが可能であり、その重合体の官能基の少なくとも一部に第一の捕捉分子を固定することが可能である。
リビングラジカル重合法としては、有機ハロゲン化物などを開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)、ニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるニトロキシド媒介重合(Nitroxide Mediated Polymerization:NMP)や、ジチオカルバメイトなどのラジカル捕捉剤を用いる光イニシエーター重合などが挙げられる。本発明においてはいずれの方法により前記構造体を製造してもよい。
基体表面への高分子膜の形成方法を説明する。
(原子移動ラジカル重合)
リビングラジカル重合が原子移動ラジカル重合の場合、化学式1から3に示すような有機ハロゲン化物、又は化学式4に示すようなハロゲン化スルホニル化合物を重合開始剤として用いることができる。
Figure 2009249512
原子移動ラジカル重合開始剤が導入された基体を反応溶媒に加えた後、高分子膜となる一般式(1)に相当するモノマー、遷移金属錯体を添加し、反応系を不活性ガスで置換して原子移動ラジカル重合を行う。これによって、グラフト密度を一定に保持しながら重合を進行させることができる。つまり、重合をリビング的に進行させ、全ての高分子膜を基体上にほぼ均等に成長させることができる。
反応溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピリジン、水、メタノール、エタノール、プロパノ−ル、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、トリオキサン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。これらは単独で使用しても良いし、又は2種以上を併用しても良い。
不活性ガスとして、窒素ガスやアルゴンガスを使用することができる。
使用する遷移金属錯体はハロゲン化金属とリガンドからなる。ハロゲン化金属の金属種としては、原子番号22番のTiから30番のZnまでの遷移金属が好ましく、特にFe、Co、Ni、Cuが好ましい。その中でも、塩化第一銅、臭化第一銅が好ましい。
リガンドとしては、ハロゲン化金属に配位可能であれば特に限定されないが、例えば、2,2’−ビピリジル、4,4’−ジ−(n−ヘプチル)−2,2’−ビピリジル、2−(N−ペンチルイミノメチル)ピリジン、(−)−スパルテイン、トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン、エチレンジアミン、ジメチルグリオキシム、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,10−フェナントロリン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミン等を使用することができる。
遷移金属錯体の添加量は、高分子膜となるモノマーに対して、0.001重量%から10重量%、好ましくは0.05重量%から5重量%である。
重合温度は、0℃から100℃の範囲であり、好ましくは10℃から80℃の範囲である。
また、重合を行う際、基体に固定されていないフリーな重合開始剤を添加しても良い。フリーな重合開始剤から生成するフリーポリマーは、基体にグラフト化された高分子膜の分子量及び分子量分布の指標とすることができる。
フリーな重合開始剤としては、基体に固定している原子移動ラジカル重合開始剤と同種のものを選択することが好ましい。つまり、化学式1(X=Br)の重合開始剤に対して、フリーな重合開始剤は2−ブロモイソ酪酸エチルであることが好ましい。また、化学式2(X=Br)の重合開始剤に対して、フリーな重合開始剤は2−ブロモプロピオン酸エチルであることが好ましい。
重合終了後、基体を前記した反応溶媒で十分に洗浄して、高分子化合物からなる高分子膜がグラフト化された基体を得ることができる。
(ニトロキシド媒介重合)
リビングラジカル重合がニトロキシド媒介重合である場合、化学式5から7に示すようなニトロキシド化合物を重合開始剤として用いることができる。
Figure 2009249512
ニトロキシド媒介重合開始剤が導入された基体を反応溶媒に加えた後、高分子膜となる一般式(1)に相当するモノマーを添加し、反応系を不活性ガスで置換してニトロキシド媒介重合を行う。これによって、グラフト密度を一定に保持しながら重合を進行させることができる。つまり、重合をリビング的に進行させ、全ての高分子膜を基体上にほぼ均等に成長させることができる。
反応溶媒としては特に限定されないが、前記した同様の溶媒を使用することができる。また、それらを単独で使用しても良いし、又は2種以上を併用しても良い。
不活性ガスとして、窒素ガスやアルゴンガスを使用することができる。
重合温度は、40℃から120℃の範囲であり、好ましくは、40℃から100℃の範囲である。重合温度が40℃未満では、形成される高分子化合物が低分子量であったり、あるいは重合が進行し難いので好ましくない。
また、重合を行う際、基体に固定されていないフリーな重合開始剤を添加しても良い。
フリーな重合開始剤から生成するフリーポリマーは、基体にグラフト化された高分子化合物の分子量及び分子量分布の指標とすることができる。
フリーな重合開始剤としては、基体に固定しているニトロキシド媒介重合開始剤と同種のものを選択することが好ましい。つまり、化学式5の重合開始剤に対して、フリーな重合開始剤は化学式8に示されるニトロキシド化合物であることが好ましい。化学式8に示されるニトロキシド化合物は、反応溶媒に溶解する為に、ベンゼン環に置換基が導入されていても良い。
Figure 2009249512
重合終了後、基体を前記した反応溶媒で十分に洗浄して、高分子膜がグラフト化された基体を得ることができる。
(光イニシエーター重合)
リビングラジカル重合が光イニシエーター重合である場合、化学式9に示すようなN,N−ジチオカルバミン系化合物を重合開始剤として用いることができる。
Figure 2009249512
光イニシエーター重合開始剤が導入された基体を反応溶媒に加えた後、高分子膜となる一般式(1)に相当するモノマーを添加し、反応系を不活性ガスで置換して光照射することによって光イニシエーター重合を行う。これによって、グラフト密度を一定に保持しながら重合を進行させることができる。つまり、重合をリビング的に進行させ、全ての高分子化合物を基体上にほぼ均等に成長させることができる。
反応溶媒としては特に限定されないが、前記した同様の溶媒を使用することができる。また、それらを単独で使用しても良いし、又は2種以上を併用しても良い。
不活性ガスとして、窒素ガスやアルゴンガスを使用することができる。
照射する光の波長は、使用する光イニシエーター重合開始剤の種類によって異なる。化学式9に例示する光イニシエーター重合開始剤を有する基体表面に高分子膜をグラフト化する場合、反応系に300nmから600nmの波長を示す光を照射することによって光イニシエーター重合が良好に進行する。
重合温度は、副反応を抑制するため、室温あるいはそれ以下の温度であることが好ましい。但し、同様の効果が得られる範囲においてこの温度領域に限定されるわけではない。
また、重合を行う際、基体に固定されていないフリーな重合開始剤を添加しても良い。フリーな重合開始剤から生成するフリーポリマーは、基体にグラフト化された高分子化合物の分子量及び分子量分布の指標とすることができる。
フリーな重合開始剤としては、基体に固定している光イニシエーター重合開始剤と同種のものを選択することが好ましい。つまり、化学式9の重合開始剤に対して、フリーな重合開始剤は下記化学式10に示されるジチオカルバメイト系化合物であることが好ましい。化学式10に示されるジチオカルバメイト系化合物は、反応溶媒に溶解する為に、ベンゼン環に置換基が導入されていても良い。
Figure 2009249512
重合終了後、基体を前記した反応溶媒で十分に洗浄して、高分子膜がグラフト化された基体を得ることができる。
基体表面に重合開始剤を固定する方法は特に限定されるものではないが、基体が金属であれば、チオール化合物を含む重合開始剤を基体表面に結合するか、又は、前記基体をチオール化合物で前処理した後、続いて重合開始剤を結合する方法が好ましい。
基体が酸化膜を有する金属であれば、シランカップリング剤を含む重合開始剤を結合するか、又は、前記基体をシランカップリング剤で前処理した後、続いて重合開始剤を結合する方法が好ましい。
基体がプラスチックであれば、酸素プラズマ処理、UV処理等により表面を酸化してカルボキシル基を発現させた後、アミノ化合物を含む重合開始剤を結合するか、又はアミノ化合物で前処理した後、続いて重合開始剤を結合する方法が好ましい。
(捕捉分子)
本発明における捕捉分子とは、標的物質と相互作用することにより捕捉、あるいは変換を行う分子であってもよく、具体的には核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体などが挙げられる。具体的には、DNA、RNA、アプタマー、遺伝子、染色体、細胞膜、ウイルス、抗原、抗体、抗体フラグメント、レクチン、ハプテン、ホルモン、レセプター、酵素、ペプチド、スフィンゴ糖、スフィンゴ脂質などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは生体物質を捕捉、あるいは変換することができる抗体、抗体フラグメント、あるいは酵素である。
(捕捉分子の固定)
本発明において捕捉分子を固定化する方法として、高分子化合物の官能基に第一の捕捉分子を共有結合させる方法を使用することができる。即ち、一般式(1)で示される高分子化合物からなる高分子膜を形成した場合、側鎖の官能基に第一の捕捉分子を固定化することができる。
下記反応式6に示すように、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド(NHS)や1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等を使用して、高分子化合物の側鎖カルボキシル基をスクシンイミド基に置換して活性エステル化する。このスクシンイミド基(活性エステル基)に第一の捕捉分子のアミノ基を反応させて、高分子化合物の側鎖に捕捉分子を固定化することができる。
上記の捕捉分子の固定化後、高分子化合物の未反応のスクシンイミド基に対して、エタノールアミン、末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコールと反応させてスクシンイミド基を失活させる。
Figure 2009249512
あるいは、下記反応式7に示すように、高分子化合物の側鎖アルデヒド基に第一の捕捉分子のアミノ基を反応させて、高分子化合物の側鎖に捕捉分子を固定化することができる。上記の捕捉分子の固定化後、高分子膜の未反応のアルデヒド基に対して、エタノールアミン、末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコールと反応させてアルデヒド基を失活させる。
Figure 2009249512
あるいは、反応式4において、官能基としてアミノ基を有する高分子化合物の場合、捕捉分子をアミノ基に固定化することができる。即ち、グルタルアルデヒド架橋剤等を用いて、前記アミノ基と捕捉分子のアミノ基を反応させて、捕捉分子を高分子化合物の側鎖に固定化することができる。捕捉分子の固定化後、高分子化合物の未反応のアミノ基に対して、エタノールアミン、末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコールと反応させてアミノ基を失活させる。
あるいは、反応式4において、官能基としてマレイミド基を有する高分子化合物の場合、捕捉分子をマレイミド基に固定化することができる。即ち、前記マレイミド基と捕捉分子のチオール基を反応させて、捕捉分子を高分子化合物の側鎖に固定化することができる。捕捉分子の固定化後、高分子化合物の未反応のマレイミド基に対して、メルカプトエタノール、末端にチオール基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコールと反応させてマレイミド基を失活させる。
あるいは、反応式5において、官能基としてグリシジル基を有する高分子化合物の場合、捕捉分子のアミノ基をグリシジル基に固定化することができる。捕捉分子の固定化後、高分子化合物の未反応のグリシジル基に対して、エタノールアミン、末端にアミノ基を有するオリゴエチレングリコールやポリエチレングリコールと反応させてアルデヒド基を失活させる。
(高分子膜の吸着防止能)
本発明における高分子化合物からなる高分子膜の吸着防止能は、高分子化合物の側鎖が基体表面への物質の非特異的な吸着を防止することにより発揮される。即ち、一般式(1)の側鎖はエチレングリコール鎖であり、このようなエチレングリコール鎖は、検体中の夾雑物や標的物質の非特異吸着を防止するのに優れた機能を有している。また、高分子化合物の官能基へ捕捉分子を反応させると捕捉分子を固定化できる。また、未反応の官能基に対して、前記したように適切な化合物で失活させると、検体中の夾雑物や標的物質の非特異吸着を防止することできる。
以下に、本発明に関わる磁気バイオセンサについて説明する。
本発明に係る磁気バイオセンサは、磁気バイオセンサの検出領域近傍に位置する磁気マーカーの有無又は数を検知する事により検体中の標的物質の有無又は濃度を検出する磁気バイオセンサであって、前記磁気マーカーは標的物質を捕捉する第二の捕捉分子を含み、上記の標的物質を捕捉する第一の捕捉分子を含む高分子化合物からなる高分子膜を有する構造体が磁気バイオセンサの検出領域に配置され、前記第一の捕捉分子と前記第二の捕捉分子により標的物質を捕捉して磁気マーカーの有無又は数を検知することを特徴とする。
図2は本発明に関わる磁気バイオセンサ一例を示す概略図である。
本発明の磁気バイオセンサ6は、図2に示すように、標的物質10を捕捉する第一の捕捉分子4を含む高分子化合物2の一端が検出領域に結合している。また、該高分子化合物の側鎖官能基3の少なくとも一部に第一の捕捉分子が結合し、該高分子膜が一般式(1)で示される高分子化合物の重合体からなることを特徴とする磁気バイオセンサである。
また、本発明の磁気バイオセンサは、磁気バイオセンサの検出領域近傍に位置する磁気マーカー9の有無、数を検知する事により検体中の標的物質10の有無、濃度を検出する磁気バイオセンサであって、前記磁気マーカー9は第二の捕捉分子8を含み、検出領域近傍に位置する第一の捕捉分子4に標的物質10が反応し、更に、第二の捕捉分子8を含む磁気ビーズ7が標的物質10と反応することによって伴う磁気的な変化量を検出する。
以下に、本発明に関わる磁気バイオセンサおよび標的物質について説明する。
(検出方法)
本発明では、磁気マーカーの磁気的な変化量を検出する手段として、磁界効果を利用する方式が好ましく、特に、磁気抵抗効果素子、ホール効果素子、超電導量子干渉計素子が好適に用いることができる。
(磁気マーカー)
本発明に用いる磁気マーカー9は、図2に示すように、磁気ビーズ7の表面に第二の捕捉分子8が固定化されている。
磁気マーカー9を構成する磁気ビーズ7としては、例えばフェライトを使用することができる。フェライトは、生理活性条件下で十分な磁性を有し、溶媒中で酸化等の劣化が起こりにくいことから好ましい。フェライトは、マグネタイト(Fe)、マグヘマイト(γ−Fe)、及びこれらのFeの一部を他の原子で置換した複合体から選択される。他の原子としては、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Ta、Wの少なくともいずれかが挙げられる。
磁気ビーズの平均粒径は、数十nmから数百μmが好ましく、更に20nmから10μmが好ましい。尚、磁気ビーズの平均粒径は、動的光散乱法で測定できる。
本発明に用いる磁気マーカーとして、例えば、Dynal社から市販されているダイナビーズ、micromod社から市販されているmicromer−M、nanomag−D、メルク社から市販されているエスタポール等を使用することができる。
このような磁気マーカーの大きさは、磁気バイオセンサの形状、大きさ、或いは用途によって様々に選択する事が可能であるが、数十nmから数百μmが好ましく、更に20nmから10μmが好ましい。
(標的物質)
本発明の標的物質は、前記捕捉分子と反応する物質であればいかなるものでもよい。より好ましくは生体物質である。生体物質としては、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質及びそれらの複合体から選択される生体物質が含まれ、更に詳しくは、核酸、タンパク質、糖鎖、脂質から選択される生体分子を含んでなるものであり、具体的には、DNA、RNA、アプタマー、遺伝子、染色体、細胞膜、ウイルス、抗原、抗体、レクチン、ハプテン、ホルモン、レセプタ、酵素、ペプチド、スフィンゴ糖、スフィンゴ脂質の何れかから選択された物質を含むものであれば、如何なる物質にも本発明を適用することができる。更には、前記の「生体物質」を産生する細菌や細胞そのものも、本発明が対象とする「生体物質」として標的物質となり得る。
これら標的物質と捕捉分子との相互作用は、本発明の磁気バイオセンサにより結合前後の磁気的な変化量が検出可能であればいかなる相互作用でもよいが、より好ましくは、「抗原−抗体反応」、「抗原−アプタマー(特定構造を有するRNA断片)」「リガンド−レセプター相互作用」、「DNAハイブリダイゼーション」「DNA−タンパク質(転写因子等)相互作用」、「レクチン−糖鎖相互作用」等が挙げられる。
以下、実施例を用いて更に詳細に本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、材料、組成条件、反応条件等、同様な機能、効果を有するバイオセンサが得られる範囲で自由に変えることができる。
実施例1
本実施例は、第一の捕捉分子としてPSA(前立腺特異抗原)を捕捉する一次抗体を含む高分子化合物からなる高分子膜が検出領域に形成された磁気バイオセンサと、第二の捕捉分子としてPSAを捕捉する二次抗体を備えたマグネタイトからなる磁気マーカーを作製し、磁気バイオセンサとしてPSAを検出する例である。尚、磁気バイオセンサの検出方式としては、磁気抵抗効果素子を使用する。
(1)磁気マーカーの作製
まず、第二の捕捉分子としてPSAを捕捉する二次抗体を有する磁気マーカーを作製する。
マグネタイト粒子(平均粒径100nm)を乾燥窒素雰囲気下、加熱処理した後、無水トルエンに分散させる。このマグネタイト粒子/トルエン分散液に、シランカップリング剤であるアミノプロピルトリメトキシシランを添加し、マグネタイト粒子表面にアミノ基を導入する。次に、第二の捕捉分子としてPSAを捕捉する二次抗体を固定化する為にグルタルアルデヒド架橋剤を用いて、前記アミノ基と二次抗体のアミノ基を共有結合させ、第二の捕捉分子をマグネタイト粒子表面に固定化することができる。
以上の操作を経ることで、第二の捕捉分子を備えた磁気マーカーを得ることができる。
(2)磁気バイオセンサの作製
次に、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を有する高分子膜が検出領域に形成された磁気バイオセンサを作製する。
まず、図2のように、磁気バイオセンサの検出領域上面にAu膜を形成する。本実施例では、検出方式としては、磁気抵抗効果素子を使用するため、前記検出領域は磁気抵効果膜を意味する。
次に、検出領域であるAu表面に高分子膜を形成する。まず、化学式11で示される原子移動ラジカル重合開始剤を含むエタノール溶液にAu膜を侵漬し、前記開始剤とAu膜を反応させて、Au膜表面に原子移動ラジカル重合開始剤を導入することができる。
Figure 2009249512
次に、原子移動ラジカル重合開始剤を導入した検出領域を水−メタノール混合溶媒(体積比4:1)に浸漬させた後、フリーな重合開始剤として2−ブロモイソ酪酸エチルを加え、CuBr、2,2’−ビピリジルを加える。凍結真空脱気により反応系内の酸素を除去した後、窒素で置換し、化学式12で示されるモノマーを原子移動ラジカル重合により所定時間反応させる。重合後、メタノール洗浄、次いで水洗浄を経て、検出領域上に側鎖官能基が水酸基である高分子化合物(化学式12の重合体)を得ることができる。
また、フリーな重合開始種として加えておいた2−ブロモイソ酪酸エチルから生成したポリマーの分子量と分子量分布を測定すると、数平均分子量が90000で、分子量分布が1.14である。このことから、検出領域にグラフト化された高分子化合物は鎖長の揃ったポリマーであることを確認できる。
Figure 2009249512
検出領域にグラフト化された高分子化合物からなる高分子膜の膜厚と重量を測定することによって、高分子化合物のグラフト密度は、0.66分子/nmであることを確認できる。
次に、検出領域に形成された高分子膜の高分子化合物の側鎖末端の水酸基をアセトン中でJones酸化することによって、側鎖末端の水酸基がカルボキシル基へ変換された高分子化合物(化学式13)を得ることができる。
Figure 2009249512
次に、高分子膜の高分子化合物の側鎖カルボキシル基に第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化する。まず、N−ヒドロキシスルホスクシンイミド水溶液と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩水溶液を同様に塗布する。これらの操作により、高分子化合物の側鎖カルボキシル基にスクシンイミド基(活性エステル基)が露出することになる。前記スクシンイミド基と一次抗体のアミノ基を反応させ、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化することができる。その後、高分子膜上の未反応のスクシンイミド基は、エタノールアミンによって失活させる。
以上の操作により、検出領域において、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体が固定化された高分子化合物からなる高分子膜を備えた磁気バイオセンサを作製することができる。
(3)PSAの検出
上述の(1)、(2)において作製される磁気マーカーと磁気バイオセンサを用い、以下の操作を行うことで、前立腺癌のマーカーとして知られているPSAの検出を試みることができる。
1)標的物質(抗原)であるPSA、及び夾雑物であるBSAとIgGを含むリン酸緩衝液に上記磁気バイオセンサの検出領域を浸す。
2)未反応のPSAと夾雑物をリン酸緩衝生液で洗浄する。
3)磁気マーカーを含むリン酸緩衝生理食塩水に工程1)及び2)が終了した上記磁気バイオセンサの検出領域を浸し、5分間インキュベートする。
4)未反応の磁気マーカーをリン酸緩衝液で洗浄する。
上記操作によって、標的物質(抗原)が第一の捕捉分子、第二の捕捉分子により捕捉され、磁気マーカーが図2に示すように磁気バイオセンサの検出領域に固定化される。つまり、検体中に抗原が存在しない場合には、磁気マーカーは磁気バイオセンサの検出領域上に固定化されないので、磁気マーカーの有無を検出することによって、抗原の検出が可能である。また、固定化された磁気マーカーの数を検出することによって、検体中に含まれる抗原の量を間接的に知ることも可能である。
本実施例の磁気バイオセンサにおける検出領域の高分子膜において、側鎖のエチレングリコール鎖が検体に含まれる夾雑物や標的物質(抗原)の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、標的物質を高感度に検出することができる。
実施例2
実施例1の化学式12で示されるモノマーからなる高分子化合物の側鎖末端の水酸基をジクロロメタン中クロロクロム酸ピリジニウムで酸化することによって、側鎖末端の水酸基がアルデヒド基へ変換された高分子化合物(化学式14)が得られる。
Figure 2009249512
実施例1と同様にして、高分子化合物のアルデヒド基と一次抗体のアミノ基を反応させ、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化することができる。その後、高分子化合物からなる高分子膜上の未反応のアルデヒド基は、エタノールアミンによって失活させる。
実施例1と同様にPSAの検出を行うと、磁気バイオセンサにおける検出領域の高分子化合物からな高分子膜において、側鎖のエチレングリコール鎖が検体に含まれる夾雑物や標的物質(抗原)の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、標的物質を高感度に検出することができる。
実施例3
実施例1の化学式12で示されるモノマーを化学式15で示されるモノマーに替えて重合すると、側鎖官能基がグリシジル基である高分子化合物膜が得られる。
Figure 2009249512
実施例1と同様にして、高分子化合物のグリシジル基と一次抗体のアミノ基を反応させ、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化することができる。その後、高分子化合物からなる高分子膜上の未反応のグリシジル基は、エタノールアミンによって失活させる。
実施例1と同様にPSAの検出を行うと、磁気バイオセンサにおける検出領域の高分子化合物からなる高分子膜において、側鎖のエチレングリコール鎖が検体に含まれる夾雑物や標的物質(抗原)の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、標的物質を高感度に検出することができる。
実施例4
実施例1の化学式11で示される原子移動ラジカル重合開始剤を化学式16で示される光イニシエーター重合開始剤に替えて、検出領域のAu表面に導入することができる。
Figure 2009249512
光イニシエーター重合開始剤を導入した検出領域を水−メタノール混合溶媒(体積比4:1)に浸漬させた後、化学式17で示されるモノマーを添加して反応系を窒素ガスで置換し、光照射することによってモノマーの光イニシエーター重合を室温にて所定時間行う。また、検出領域にグラフト化される高分子膜の分子量および分子量分布の指標となるように、フリーな重合開始種としてベンジルN、N−ジエチルジチオカルバメートを反応系内に予め加えておく。尚、光照射には400W高圧UVランプを使用し、照射波長は312nmから577nm、ピーク波長は365nmとする。
重合後、メタノール洗浄、次いで水洗浄を経て、検出領域上に側鎖官能基がアミノ基である高分子化合物を得ることができる。
また、フリーな重合開始種として加えておいたジN、N−ジエチルジチオカルバメートから生成したポリマーの分子量と分子量分布を測定すると、数平均分子量が80000で、分子量分布が1.16である。このことから、検出領域にグラフト化された高分子化合物は鎖長の揃ったポリマーであることを確認できる。
検出領域にグラフト化された高分子化合物からなる高分子膜の膜厚と重量を測定することによって、高分子化合物からなる高分子膜のグラフト密度は、0.61分子/nmであることを確認できる。
Figure 2009249512
第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化する為にグルタルアルデヒド架橋剤を用いて、高分子化合物の側鎖アミノ基と一次抗体のアミノ基を反応させ、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化することができる。その後、高分子化合物上の未反応のアミノ基は、エタノールアミンによって失活させる。
実施例1と同様にPSAの検出を行うと、磁気バイオセンサにおける検出領域の高分子化合物からなる高分子膜において、側鎖のエチレングリコール鎖が検体に含まれる夾雑物や標的物質(抗原)の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、標的物質を高感度に検出することができる。
実施例5
実施例4の高分子化合物の側鎖アミノ基を無水マレイン酸と反応させて、官能基がマレイミド基である高分子化合物に変換することができる。
次に、高分子化合物の側鎖マレイミド基と一次抗体のチオール基を反応させて、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化することができる。その後、高分子膜上の未反応のマレイミド基は、メルカプトエタノールによって失活させる。
実施例1と同様にPSAの検出を行うと、磁気バイオセンサにおける検出領域の高分子化合物からなる高分子膜において、側鎖のエチレングリコール鎖が検体に含まれる夾雑物や標的物質(抗原)の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、標的物質を高感度に検出することができる。
実施例6
実施例4のモノマーを化学式18で示されるモノマーに替えて同様の操作を行い、検出領域上に側鎖官能基がアミノ基である高分子化合物を得ることができる。
Figure 2009249512
また、フリーな重合開始種として加えておいたジN、N−ジエチルジチオカルバメートから生成したポリマーの分子量と分子量分布を測定すると、数平均分子量が88000で、分子量分布が1.18である。このことから、検出領域にグラフト化された高分子化合物は鎖長の揃ったポリマーであることを確認できる。
検出領域にグラフト化された高分子化合物からなる高分子膜の膜厚と重量を測定することによって、高分子化合物からなる高分子膜のグラフト密度は、0.63分子/nmであることを確認できる。
第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化する為にグルタルアルデヒド架橋剤を用いて、高分子化合物の側鎖アミノ基と一次抗体のアミノ基を反応させ、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化することができる。その後、高分子化合物からなる高分子膜上の未反応のアミノ基は、エタノールアミンによって失活させる。
実施例1と同様にPSAの検出を行うと、磁気バイオセンサにおける検出領域の高分子膜において、側鎖のエチレングリコール鎖が検体に含まれる夾雑物や標的物質(抗原)の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、標的物質を高感度に検出することができる。
実施例7
実施例4のモノマーを化学式19で示されるモノマーに替えて同様の操作を行い、検出領域上に側鎖官能基がカルボキシル基である高分子化合物を得ることができる。
Figure 2009249512
また、フリーな重合開始種として加えておいたジN、N−ジエチルジチオカルバメートから生成したポリマーの分子量と分子量分布を測定すると、数平均分子量が91000で、分子量分布が1.19である。このことから、検出領域にグラフト化された高分子化合物は鎖長の揃ったポリマーであることを確認できる。
検出領域にグラフト化された高分子化合物からなる高分子膜の膜厚と重量を測定することによって、高分子化合物からなる高分子膜のグラフト密度は、0.65分子/nmであることを確認できる。
次に、高分子化合物の側鎖カルボキシル基の少なくとも一部に第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化する。実施例1と同様の操作により、第一の捕捉分子としてPSAを捕捉する一次抗体を固定化することができる。
実施例1と同様にPSAの検出を行うと、磁気バイオセンサにおける検出領域の高分子膜において、側鎖のエチレングリコール鎖が検体に含まれる夾雑物や標的物質(抗原)の非特異吸着を防止することによってノイズを抑え、標的物質を高感度に検出することができる。
比較例1
実施例1の高分子膜をデキストラン膜(生適合性多孔質マトリックス)に替え、デキストラン膜上のカルボキシル基を活性エステル化して一次抗体を固定化する。また、未反応のスクシンイミド基をエタノールアミンで失活させる。その後、実施例1と同様にPSAの検出を行うと、デキストラン膜に夾雑物や標的物質(抗原)が非特異的に吸着することによってノイズが大きくなり、実施例1から7のいずれの感度よりも劣ることが確認される。
本発明により、基体表面へ官能基を含む高分子化合物からなる高分子膜を構築し、更に前記高分子化合物の官能基の少なくとも一部に第一の捕捉分子を固定化した構造体を提供することができる。また、前記構造体の捕捉分子と相互作用する標的物質を高感度に測定するためのバイオセンサを提供することができる。本発明は、主に磁気バイオセンサの感度向上を目的とした反応場に使用することができる。
本発明に係る構造体の一実施態様を示す概略図である。 本発明に係る磁気バイオセンサ一例を示す概略図である。
符号の説明
1 基体
2 高分子化合物
3 官能基
4 第一の捕捉分子
5 高分子膜
6 磁気バイオセンサ
7 磁気ビーズ
8 第二の捕捉分子
9 磁気マーカー
10 標的物質
11 夾雑物

Claims (3)

  1. 捕捉分子を含む高分子化合物からなる高分子膜を基体上に備えた構造体であって、前記高分子化合物は下記一般式(1)で示される主鎖と側鎖とを有する重合体からなり、前記基体には前記高分子化合物の一端がグラフト化され、前記高分子化合物の側鎖に捕捉分子を結合できる官能基を有し、前記官能基のうちの少なくとも一部に捕捉分子が結合していることを特徴とする構造体。
    Figure 2009249512
    (式中、Rは水素原子またはメチル基である。Rは酸素原子またはNH基である。Rはカルボキシル基、アルデヒド基、スクシンイミド基、アミノ基、マレイミド基、グリシジル基のいずれかである。Xは1以上の整数である。nは10以上100000以下の整数である。)
  2. 前記高分子化合物の側鎖に有する捕捉分子を結合できる官能基が、前記一般式(1)のRである請求項1に記載の構造体。
  3. 磁気バイオセンサの検出領域近傍に位置する磁気マーカーの有無又は数を検知する事により検体中の標的物質の有無又は濃度を検出する磁気バイオセンサであって、前記磁気マーカーは標的物質を捕捉する第二の捕捉分子を含み、請求項1に記載の標的物質を捕捉する第一の捕捉分子を含む高分子化合物からなる高分子膜を有する構造体が磁気バイオセンサの検出領域に配置され、前記第一の捕捉分子と前記第二の捕捉分子により標的物質を捕捉して磁気マーカーの有無又は数を検知することを特徴とする磁気バイオセンサ。
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