JP2009248366A - レーザー彫刻用印刷原版及びこの印刷原版を用いた印刷版の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体(A)と感光性樹脂層(B)とを有するレーザー彫刻用印刷原版であって、前記感光性樹脂層が、ケン化度75〜90モル%、平均重合度800〜1700のポリビニルアルコール(b1)と、少なくとも1種の水溶性モノマー(b2)と、光重合開始剤(b3)とを含むレーザー彫刻用印刷原版による。
【選択図】図1
Description
支持体(A)として、オフセット印刷、グラビア印刷並びにレタープレス印刷及びフレキソ印刷等の凸版印刷等において通常使用される従来公知の印刷原版用の支持体が挙げられる。例えば、本発明における支持体としては、用いる印刷条件に必要とされる機械的強度などの物理性能を満たす、公知の金属、プラスチックフィルム及びこれらの複合化された形態のすべての支持体が使用できる。このような支持体は可撓性を有していてもいなくてもよいが、レタープレス印刷用の支持体が好ましい。
感光性樹脂層(B)は、支持体(A)上に積層され、後述するようにレーザーにより彫刻される層である。この感光性樹脂層(B)は、ケン化度75〜90モル%、平均重合度800〜1700のポリビニルアルコール(b1)と、少なくとも1種の水溶性モノマー(b2)及び光重合開始剤(b3)を含む感光性樹脂組成物とから形成される。なお、本明細書中においては、上記のポリビニルアルコール(b1)と、少なくとも1種の水溶性モノマー(b2)及び光重合開始剤(b3)を含む感光性樹脂組成物とを含む感光性樹脂層(B)の形成成分を「感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物」と称することがある。
ポリビニルアルコール(以下、(b1)成分ともいう。)は、印刷原版に対しUVインキや油性インキ中の成分に対する化学物質耐性を向上させ、特にUVインキに対する化学物質耐性を向上させる。これにより、良好な印刷寿命が得られる。また、ケン化度80〜85モル%の(b1)成分を用いることが好ましい。このような(b1)成分を用いることにより、彫刻残渣の水に対する洗浄性が向上する。(b1)の平均重合度としては、平均重合度800〜1700が好ましい。平均重合度を上記範囲内とすることで、彫刻時に発生する残渣が優れた水溶性を有することができる。
水溶性モノマー(以下、(b2)成分ともいう)は、N‐メチロール基を有するアクリル系化合物と多価アルコールとの縮合反応物、ポリエチレングリコール鎖を有するアクリレート化合物及び少なくとも1つのメチロール基を有するアクリレート化合物からなる群から選ばれることが好ましい。このような(b2)成分を用いることにより、印刷原版の強度が向上し、印刷耐性(印刷寿命)が向上する。N−メチロール基を有するアクリル系化合物と多価アルコールとの配合量は、N−メチロール基を有するアクリル系化合物100質量部に対し、多価アルコール10〜500質量部が好ましく、100〜300質量部の範囲がより好ましい。上記範囲内であることで印刷耐性(印刷寿命)がより向上する。
光重合開始剤(以下、(b3)成分ともいう)は、従来公知のものでよく、例えばベンゾフェノンのような芳香族ケトン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチロールベンゾインメチルエーテル、α−メトキシベンゾインメチルエーテル、2,2−ジエトキシフェニルアセトフェノン、メトキシフェニルアセトフェノン(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のベンゾインエーテル類;置換及び非置換の多核キノン類;その他米国特許第4,460,675号明細書及び同第4,894,315号明細書に開示されている開始剤などが挙げられる。(b3)成分は単独でもまた組み合わせて使用してもよい。
感光性樹脂層(B)は様々な方法により形成することができるが、例えば、配合される原料を適当な溶剤、例えば、クロロホルム、テトラクロロエチレン、メチルエチルケトン、トルエン等の溶剤に溶解させて混合し、支持体(A)上に塗布してもよいし、離型フィルム上に感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物を積層したドライフィルムを形成し、支持体(A)上に従来公知の方法により貼り付けてもよい。
感光性樹脂層(B)を支持体(A)上に塗布により形成する場合には、例えば、溶剤を用いて混合した感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物を液状のまま支持体(A)表面に、例えば従来公知であるスクリーン印刷、ディップコーター、ロールコーター、スピンコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等を用いて塗布する。さらに、塗布した感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物を乾燥することにより、支持体(A)表面に感光性樹脂層(B)を形成することができる。
感光性樹脂層(B)を離型フィルム上に積層したドライフィルムを利用する場合には、離型フィルム上に感光性樹脂層(B)を形成する感光性樹脂組成物を公知の手段より塗布して感光性樹脂層を形成し、乾燥後、離型フィルム上に感光性樹脂層が積層されたドライフィルムとし、該感光性樹脂層の表面が支持体(A)表面に接するように該支持体(A)表面に貼り付け、公知の方法で圧着することにより、支持体(A)表面に感光性樹脂層(B)を形成することができる。この際、離型フィルム上に従来公知のスティッキング防止層を設けておき、該スティッキング防止層上に感光性樹脂層(B)を積層してもよい。このようなスティッキング防止層を設けることにより、離型フィルムを剥離する際に感光性樹脂層(B)に悪影響を与えることなく離型フィルムのみを剥離することができる。
塗布により感光性樹脂層(B)を支持体(A)上に形成した際は、感光性樹脂層(B)表面を保管中の汚染や損傷から保護するために、感光性樹脂層(B)表面を更に剥離フィルムにより従来公知方法により貼り付けることが好ましい。剥離フィルムを感光性樹脂層(B)に貼り付ける際には、ゼラチン等を用いることにより貼り付けを容易にすることができる。ドライフィルムを用いた場合には、ドライフィルム形成時に使用した離型フィルムを剥離フィルムとして利用することができる。このような剥離フィルム(又は離型フィルム)としては特に限定はされないが、具体的には、例えば、シリコーンをコーティング又は焼き付けしたPETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。また、後述する光硬化に付すため、紫外線に対して透明であることが好ましい。剥離フィルムの厚さは15〜125μmであることが好ましく、15〜110μmがより好ましく、15〜100μmが更に好ましい。剥離フィルムは、レーザー彫刻を行う直前に感光性樹脂層(B)から剥離することが好ましい。
上記により製造したレーザー彫刻用印刷原版は、レーザー彫刻の都度感光性樹脂層(B)を後述する方法により強化させて供用しても、予め硬化させておいて保管し供用に付してもよい。このようにして強化又は硬化させることにより、感光性樹脂層(B)の硬度を、レタープレス印刷用原版に適したJIS K6253に規定のショアA硬度70〜99度及びJIS K6253に規定のショアD硬度50〜90度の範囲とすることができる。
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。レーザー彫刻に用いるレーザーは、感光性樹脂層(B)が吸収する波長を含むものであれば従来公知のものを用いることができるが、彫刻を高速度で行なうためには出力の高いものが好ましい。このようなレーザーには、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー等の赤外線あるいは近赤外線領域に発振波長を有するレーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3あるいは第4高調波へ波長変換したYAGレーザー、銅蒸気レーザー、フェムト秒レーザーが挙げられる。なかでも、炭酸ガスレーザーが好ましい。レーザーは連続照射でも、パルス照射でもよい。
彫刻終了後にはレーザーの照射によって生じた感光性樹脂層(B)が焼け焦げた残渣が印刷版に存在するため、印刷版を洗浄する必要がある。本発明では、感光性樹脂層(B)の材料として、ケン化度75〜90モル%、平均重合度800〜1700のポリビニルアルコールと水溶性モノマーとを用いるため、水で洗浄するだけで生じた残渣を除去することができる。洗浄方法は、浸漬、スプレー洗浄、スチーム洗浄等の従来公知の方法を用いることができる。このようにして製造した印刷版は、オーブン等により乾燥して印刷に供することができる。
(1)レーザー彫刻用印刷原版の製造
ケン化度80モル%のポリビニルアルコール(平均重合度1000、日本合成化学社製)50重量部と、ポリエチレングリコール♯200ジアクリレート(新中村化学社製)5重量部と、N−メチロールアクリルアミドおよびテトラヒドロフルフリルアルコール(4:1(モル比))をp−トルエンスルホン酸存在下で縮合させた縮合生成物10重量部と、光重合開始剤として1重量部のベンジルメチルケタール(チバスペシャルティーケミカルズ社製)と、可塑剤としてポリグリセリン(阪本薬品工業社製)32重量部とを、固形分濃度が50質量%となる量の水/メタノール(4/1)溶液に溶解した。この溶液をTダイを用いて、ポリエステルシート上にウエット状態で3mm厚となるように感光性樹脂組成物層を作成し、60℃のオーブン中で4時間乾燥した。乾燥後、1.5mm厚になったシートを、片面に接着層を設けた188μm厚のポリエステルシートに積層し、レーザー彫刻用印刷原版を製造した。
次に、上記のレーザー彫刻用印刷原版をDupont Cyrel(R) FAST(Dupont社製)を用いて光化学的に強化し、フレキソ直彫用炭酸ガスレーザー(FlexPose!75、Luscher製)を用いてパターンを彫刻した。彫刻後の印刷版を圧力1.0Kg/cm2、液温30℃で1分間流水洗浄した。洗浄後の印刷版を、オーブンを用いて80℃で10分間乾燥した。こうして製造した印刷版の版面のショアA硬度及びショアD硬度を、ショア硬度計(TECLOCK社製)を用いてJIS K6253に従って測定した。また、得られた印刷版の版面を目視で観察した。さらに、UVインクを用いてレタープレス印刷に付し、得られた印刷物を目視で検査した。ここで、残渣の印刷、印刷擦れ、印刷イメージの線の太り又は欠け、網点部の太り又は欠け、マージナルゾーンの発生があれば、「不良」とし、これらの発生がない明瞭な印刷物である場合を「良好」とした。結果を表1に示す。また、こうして得られた印刷版の状態を図1に示す。
ポリエチレングリコール♯200ジアクリレートに代えて、2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いた以外は実施例1と同様にレーザー彫刻用印刷原版を作成し、このレーザー彫刻用印刷原版を用いて印刷版を製造した。
ポリビニルアルコールのケン化度及び平均重合度を表1に記載のとおりとした以外は実施例1と同様にレーザー彫刻用印刷原版を作成し、このレーザー彫刻用印刷原版を用いて印刷版を製造した。比較例1により得られた印刷版の状態を図2に示す。
ポリエチレングリコール♯200ジアクリレートに代えて、エチレングリコールジメタクリレート♯100(新中村化学社製)を用いた以外は実施例1と同様にレーザー彫刻用印刷原版を作成し、このレーザー彫刻用印刷原版を用いて印刷版を製造した。
実施例1と、比較例1及び比較例2とを比較することにより、ポリビニルアルコールのケン化度が75モル%〜95モル%の範囲にあるレーザー彫刻用印刷原版では、残渣の被洗浄性が向上することがわかる。また、実施例1と比較例3とを比較することにより、ポリビニルアルコールの平均重合度が800〜1700の範囲にあるレーザー彫刻用印刷原版では、印刷品質が向上することがわかる。さらに、実施例1及び2と比較例4とを比較することにより、N−メチロールアクリルアミドと多価アルコールとの縮合反応物、ポリエチレングリコール鎖を有するアクリレート化合物及び少なくとも1つのメチロール基を有するアクリレート化合物以外の化合物を用いると、残渣の被洗浄性が向上することがわかる。
Claims (6)
- 支持体(A)と感光性樹脂層(B)とを有するレーザー彫刻用印刷原版であって、前記感光性樹脂層が、ケン化度75〜90モル%、平均重合度800〜1700のポリビニルアルコール(b1)と、少なくとも1種の水溶性モノマー(b2)と、光重合開始剤(b3)とを含むレーザー彫刻用印刷原版。
- 前記水溶性モノマー(b2)が、N−メチロールアクリルアミドと多価アルコールとの縮合反応物、ポリエチレングリコール鎖を有するアクリレート化合物及び少なくとも1つのメチロール基を有するアクリレート化合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載のレーザー彫刻用印刷原版。
- 光化学的に強化させた請求項1又は2に記載のレーザー彫刻用印刷原版。
- 前記印刷原版の感光性樹脂層(B)のJIS K6253に規定のショアA硬度が70〜99度である、請求項3に記載のレーザー彫刻用印刷原版。
- 前記印刷原版の感光性樹脂層(B)のJIS K6253に規定のショアD硬度が50〜90度である、請求項4に記載のレーザー彫刻用印刷原版。
- 請求項1に記載のレーザー彫刻用印刷原版の感光性樹脂層(B)を光化学的に強化した後、該感光性樹脂層(B)をレーザー彫刻することを特徴とする印刷版の製造方法。
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