JP2009228094A - 混合菌を用いた硫化銅鉱の浸出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】実操業レベルで汎用性のある条件で黄銅鉱を主体とする一次硫化銅鉱から銅を効率良くかつ経済的に採取する方法を提供すること。
【解決手段】黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を浸出するに際し、pHを1.6以上2.5未満に調整した浸出液を用い、該浸出液に浸出開始時に接種した硫黄酸化細菌が1.0×108個/mLまで増殖した後、鉄酸化細菌を該浸出液に接種して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の浸出方法。
【選択図】図1
【解決手段】黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を浸出するに際し、pHを1.6以上2.5未満に調整した浸出液を用い、該浸出液に浸出開始時に接種した硫黄酸化細菌が1.0×108個/mLまで増殖した後、鉄酸化細菌を該浸出液に接種して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の浸出方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌とを用いて、硫化銅鉱、特に黄銅鉱などの一次硫化銅鉱から銅を効率良く採取する方法に関する。
銅鉱石から銅を回収する方法の一つとして知られるSX−EW法(SX−EW:溶媒抽出・電解採取)は、銅鉱石から銅を硫酸などで浸出し、その溶液から銅を有機溶媒で濃縮した後、電解採取により電気銅を得る湿式製錬法である。銅鉱石の湿式製錬に使用される溶媒は硫酸が主流であるため、湿式製錬の対象鉱は硫酸などで容易に溶解する酸化銅鉱に限られていた。しかしながら、酸化銅鉱は硫化銅鉱に比べて一般に鉱量が少ないため、鉱量の多い硫化銅鉱を湿式製錬の対象鉱として用いることが検討されている。
湿式製錬による硫化銅鉱の浸出形態としては、硫酸または塩酸を用いた回分攪拌反応による浸出形態、積層体を形成しその頂部から硫酸または塩酸を供給して重力により滴り落ちる液を回収する浸出形態(ヒープリーチング法)などが知られている。しかし、ヒープリーチング法では、浸出に数年を要し、しかも浸出率は非常に低く効率が悪い。また、鉄酸化細菌などの微生物の力を借りて銅を効率よく浸出し、回収する方法(バクテリアリーチング法)も採用されている。バクテリアリーチング法では、鉄酸化細菌によって浸出液中の鉄(II)イオンが強力な酸化剤である鉄(III)イオンに酸化され、この鉄(III)イオンによって鉱石中に含まれる硫黄が酸化されて硫酸が生成し、生成した硫酸によって鉱石中の銅が硫酸銅として溶出される。
バクテリアリーチング法は、既に斑岩銅鉱床の二次富化帯に存在する輝銅鉱(Cu2S),銅藍(CuS)等の二次硫化銅鉱に対しては実用化されているが、現在、技術開発の主体は銅資源の中で最も大量に存在する黄銅鉱(CuFeS2)を含有する一次硫化銅鉱である。
しかしながら、黄銅鉱は硫酸にはほとんど溶けず、銅の浸出速度が極端に遅いため、浸出速度を上げるため様々な技術が提案されている。例えば、高温加圧処理(特許文献1〜3)、鉄量や3価鉄と2価鉄の比率の調整による一定の酸化還元電位の維持(特許文献4)、浸出液に活性炭と鉄を添加することによる一定の酸化還元電位の維持(特許文献5)、塩化ナトリウムと高塩化物濃度耐性硫黄細菌の添加(特許文献6)などが報告されている。しかしながら、上記の方法はいずれも浸出速度の改善に効果はあるもの、エネルギーや試薬の点でコスト高になるという問題がある。従って、黄銅鉱を含有する一次硫化銅鉱に対する湿式製錬は実用化に至る技術がないのが現状である。
本発明の課題は、上記のような事情に鑑み、実操業レベルで汎用性のある条件で黄銅鉱を主体とする一次硫化銅鉱から銅を効率良くかつ経済的に採取する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、黄銅鉱を含有する一次硫化銅鉱から湿式製錬により銅を採取するに際して、開始時に硫黄酸化細菌のみを浸出液に接種し、接種した硫黄酸化細菌が増殖した後に鉄酸化細菌を接種することによって、銅の浸出率が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を浸出するに際し、pHを1.6以上2.5未満に調整した浸出液を用い、該浸出液に浸出開始時に接種した硫黄酸化細菌が1.0×108個/mLまで増殖した後、鉄酸化細菌を該浸出液に接種して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の浸出方法の発明に関する。
本発明によれば、黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を常温にて効率よく浸出することが出来る。本発明の方法は、硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌の接種量と接種時期を調整することで銅の浸出を高めることが出来るため、簡便かつ経済性に優れ、かつ浸出液から溶媒を用いて銅を採取する際に阻害となる試薬などの添加剤を除去する必要がない。
また、硫黄酸化細菌は硫黄を硫酸に酸化することができるため、初期から接種することで、硫化銅鉱の浸出反応において副生する硫黄が鉱物表面をコーティングし、鉱石と浸出液の接触を妨げる現象を防ぐことを出来る。さらに、硫黄を硫酸に酸化することで浸出液のpHを維持することができるため、pHの上昇による鉄酸化細菌の増殖の阻害を防ぐと共に、pHの上昇に伴い発生する鉄明礬石を代表とする鉄の沈澱を防ぐことがことができる。
本発明の硫化銅鉱からの銅を浸出方法は、黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を浸出するに際し、pHを1.6以上2.5未満に調整した浸出液を用い、該浸出液に浸出開始時に接種した硫黄酸化細菌が1.0×108個/mLまで増殖した後、鉄酸化細菌を該浸出液に接種して銅の浸出を行うことを特徴とする。
本発明の方法の対象鉱である黄銅鉱を含有する硫化銅鉱は、黄銅鉱を主体とする硫化銅鉱であっても、黄銅鉱を一部に含有する硫化銅鉱であってもいずれでもよく、その含量は特に限定はされない。
本発明の方法は、硫酸溶液を浸出液とする銅の湿式製錬であれば、いずれの浸出形態にも用いることができ、例えば、回分攪拌浸出のみならず、鉱石を堆積させた上から硫酸を散布して、銅を硫酸中に浸出させるヒープリーチング、ダンプリーチングのいずれであってもよい。また、浸出は常温で行い、特に加熱などは必要としないが、加熱によって浸出速度を促進させることも可能である。
ここで用いられる硫黄酸化細菌は、水系(地下水、排水、海水、河川水、湖沼水等)や土壌において硫黄を酸化して硫酸を産生させる能力を有し、かつ鉄を酸化する能力を持たない菌であれば特に限定されないが、例えば、アシディチオバチルス・チオオキシダンス(Acidithiobacillus thiooxidans)、アシディチオバチルス・カルダス(Acidithiobacillus caldus)が挙げられ、好適には、アシディチオバチルス・スピーシーズ(Acidithiobacillus sp.)TTH-19A株(NITE BP-164)を用いることができる。
硫黄酸化菌は硫酸を生成することにより浸出液のpHを維持することができるため、pHの上昇による鉄酸化細菌の増殖の阻害を防ぐと共に、pHの上昇に伴い発生する鉄明礬石を代表とする鉄の沈澱を防ぐことがことができる。
上記硫黄酸化細菌の浸出液への添加量は、特に限定されないが、一般的には、菌濃度が1×106〜1×107cells/mLになるように添加する。次いで、該浸出液に浸出開始時に接種した硫黄酸化細菌が1.0×108個/mLまで増殖した後、鉄酸化細菌を該浸出液に接種してさらに浸出を行う。
ここで用いられる鉄酸化細菌は、水系(地下水、排水、海水、河川水、湖沼水等)や土壌において鉄(II)イオンを酸化し、鉄(III)イオンを産生させる能力を有する菌であれば特に限定されないが、例えばアシディチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、レプトスピリラム・フェロオキシダンス(Leptospirillum ferrooxidans)、スルフォバシラス・アシドフィラス(Sulfobacillus acidophilus)などが挙げられ、好適には、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans) DSM14882株を用いることができる。また、鉄酸化細菌の浸出液への添加量は、特に限定されないが、一般的には菌濃度が1×106〜1×107cells/mLになるように添加する。
本発明の方法ではまた、上記の硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌の接種量と接種時期の調整に加え、浸出液のpHを1.6以上2.5未満に調整する。pH1.6より低い場合は、硫黄酸化細菌の硫黄酸化能力が阻害され、また、pH2.5より高い場合は、鉄明礬石(jarosite)の生成などによる浸出反応の阻害が起こるので好ましくない。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
対象鉱として、黄銅鉱を主成分とするカンデラリア産の銅精鉱を用いた。この品位はCu:28mass%、Fe:28mass%、S:32mass%であった。
対象鉱として、黄銅鉱を主成分とするカンデラリア産の銅精鉱を用いた。この品位はCu:28mass%、Fe:28mass%、S:32mass%であった。
上記の銅精鉱3gを硫酸にてpH1.8に調整した浸出液(硫酸アンモニウム3g/L、リン酸水素カリウム0.5g/L、硫酸マグネシウム七水和物0.5g/L、塩化カリウム0.1g/Lを含む)を300mLに混合し、500mL容量の坂口フラスコに注いだ。上記フラスコ内の浸出液に、硫黄酸化細菌(アシディチオバチルス スピーシーズTTH19A(NITE BP-164))をその菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種した。接種後12日目に、銅鉱石より単離した鉄酸化細菌(アシディチオバチルス フェロオキシダンス)DSM14882株をその菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種し、30℃にて振盪浸出した。浸出液の上澄みの銅濃度、pH、菌濃度を測定し、経時変化を調べた。
(比較例1〜4)
実施例1に記載の浸出液に、菌を接種しない以外は実施例1と同様にして振盪浸出した(比較例1)。また浸出開始時に鉄酸化細菌のみをその菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種(比較例2)、浸出開始時に硫黄酸化細菌のみをその菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種(比較例3)、浸出開始時に硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌をそれぞれの菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種(比較例4)する以外は実施例1と同様にして振盪浸出した。
実施例1に記載の浸出液に、菌を接種しない以外は実施例1と同様にして振盪浸出した(比較例1)。また浸出開始時に鉄酸化細菌のみをその菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種(比較例2)、浸出開始時に硫黄酸化細菌のみをその菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種(比較例3)、浸出開始時に硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌をそれぞれの菌濃度が1.0×107個/mLとなるように接種(比較例4)する以外は実施例1と同様にして振盪浸出した。
実施例1、及び比較例1〜4の試験結果のうち、銅濃度の推移を図1に、pHの推移を図2に、菌濃度の推移を図3に示す。
図1に示されるように、実施例1の銅濃度(47日後:1.50g/L)は比較例1(50日後:0.88g/L)に比べると高く、銅の浸出速度が速いことが確認できた。また、比較例2では浸出初期の銅濃度(6日目:0.58g/L)は実施例1(6日目:0.24g/L)に比べると高いが、最終的な銅濃度は50日目で1.0g/Lにとどまっており、鉄酸化細菌のみの接種の効果は小さい。また、実施例1の銅濃度(47日後:1.50g/L)は、比較例3(50日後:0.89g/L)に比べても高く、硫黄酸化細菌のみの接種の効果は小さい。硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌を浸出開始時に接種した比較例4は、初期の銅濃度(7日目:0.60g/L)が実施例1(6日目:0.24g/L)に比べると高いが、最終的な銅濃度は39日目で1.17g/Lにとどまり、硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌を浸出開始時に同時に接種する効果は小さい。
図2に示されるように、菌を接種していない比較例1の場合は、硫黄の酸化による硫酸の生成が起こらないため、pHが上昇し、試験開始43日目に2.5を超えた。
図3に示されるように、鉄酸化細菌を接種した12日目の硫黄酸化細菌の菌濃度は1.0×108個/mLであった。
以上の結果から、pH1.8において、試験開始時に浸出液へ接種された硫黄酸化細菌が1.0×108個/mL以上に増殖した後に鉄酸化細菌を接種することで、効率よい銅の浸出ができることがわかった。
Claims (1)
- 黄銅鉱を含有する硫化銅鉱から銅を浸出するに際し、pHを1.6以上2.5未満に調整した浸出液を用い、該浸出液に浸出開始時に接種した硫黄酸化細菌が1.0×108個/mLまで増殖した後、鉄酸化細菌を該浸出液に接種して銅の浸出を行うことを特徴とする、硫化銅鉱からの銅の浸出方法。
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2008
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