以下、本発明の具体的ないくつかの実施態様を、図を参照しつつ説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その実施形態の他、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
<基本的態様の対基板作業システム>
i)システムの全体構成
図1(a)に、対基板作業システムの1つの基本的態様を示す。図1(a)に示すシステムは、電子回路部品装着作業を行う電子回路部品装着システム(以後、装着システムと略称する)であり、1つのシステムベース10の上に、装着ユニットとしての同じ構成の2つの装着モジュール12が互いに隣接して同じ向きに配置されている。なお、以下の説明の便宜を図るべく、装着モジュール12の並ぶ方向を左右方向とし、その方向に直角な水平の方向を前後方向と称することにする。
ii)装着装置の構成の概要
図2に、上記基本的態様のシステムにおける一方の装着モジュール12の外装部品の一部を取り除いた斜視図を示す。装着モジュール12の各々は、フレーム14部とフレーム部14に上架されたビーム部16とを含んで構成されたモジュール本体18を有している。また、装着モジュール12の各々は、モジュール本体18のフレーム部14の前方の部分に、部品供給部22を備えている。部品供給部22は、フィーダ型供給装置23とトレイ型供給装置25(図23および図37参照)とが選択的に取り付け可能な供給装置取付部27(図33ないし図35参照)を備えている。
フィーダ型供給装置23は、図33等に示すように、電子回路部品(以後、部品と略称する)がテーピング化された電子回路部品テーピングから部品を1つずつ供給する部品フィーダとしての複数のテープフィーダ(以後、フィーダと略称する)20と、それらフィーダ20を着脱可能に保持するフィーダ保持部材としてのフィーダパレット29とを含む。フィーダ型供給装置23は電子回路部品供給装置の1種であり、図示するものはリールに巻回されたテープ化電子部品から部品を供給するフィーダを主体として構成された装置である。複数のフィーダ20にはそれぞれ、一種類ずつの部品が収容され、予め定められた部品供給箇所から供給する。フィーダパレット29はフレーム部14に着脱可能に取り付けられ、部品の種類に応じた任意のフィーダ20を任意の順に配列可能である。トレイ型供給装置25,供給装置取付部27については、後に説明する。
さらに、各装着モジュール12には、回路基板の1種であるプリント配線板(以下、「配線板」と略す)を搬送するとともに、配線板を設定された位置に固定して保持する基板板保持装置としての機能をも有する配線板搬送装置24が、それぞれ配備されている。2つの装着モジュール12が所定の配置位置に位置する状態において、2つの配線板搬送装置24は、互いに揃うようにされ、互いに協働して配線板を搬送可能とされている。本態様のシステムにおいては、配線板は、装着モジュール12が並ぶ方向である左右方向に搬送される。すなわち、その方向が、本態様のシステムにおける配線板搬送方向(「基板搬送方向」と称することもできる)となる。配線板搬送装置24については、さらに後述する。
また、装着モジュール12の各々は、部品供給部22に取り付けられた部品供給装置から部品を取出し、配線板搬送装置24に保持された配線板にその部品を装着する装着ヘッド26(作業ヘッドの1種である)を有している。装着モジュール12の各々は部品装着部31を備えているのであり、装着ヘッド26は、各々のビーム部16に配備されたXYロボット型の移動装置である各々の装着ヘッド移動装置(以下、「ヘッド移動装置」と略す)28によって、部品供給部22(正確には、部品供給部22に取り付けられた部品供給装置)と配線板搬送装置24とにわたって移動させられる。これら装着ヘッド26およびヘッド移動装置28は部品装着装置33を構成している。装着ヘッド26およびヘッド移動装置28については、後に詳しく説明する。
また、各々の装着モジュール12には、フレーム部14に、部品供給部22と配線板搬送装置24との間に撮像デバイスとしてのCCDカメラを有する部品撮像装置30が配備されており、この部品撮像装置30は、装着ヘッド26によって保持された部品の姿勢等を撮像する。その他、装着モジュール12の各々は、外装部品の1種であるトップカバー32の前方に、入出力装置としての操作パネル34を有しており、また、本図では省略するが、各々の装着モジュール12は、部品供給部22に取り付けられた部品供給装置23あるいは25を始めとする自らに配備された各種装置を制御するためのコンピュータを主体とした装着装置制御装置36(図12参照)、部品撮像装置30等によって得られた画像データを処理する画像処理ユニット38(図12参照)等を有している。
このように各々の装着モジュール12は、部品供給部22,部品装着部および基板保持部をそれぞれ備えてモジュール化されたモジュール化装置である。また、配線板搬送装置24までが装着モジュール12内に配備されていることから、装着モジュール12は、搬送装置配備モジュール化装置とされている。また、後に詳しく説明するが、各々の装着モジュール12は、システムベース10から容易に分離可能な構造とされ、各々の入れ替えて配置することも可能となっている。また、各々の装着モジュール12は、システムベース12に対して、配線板搬送方向に直角な方向でありかつ略水平な方向である前後方向に、移動可能とされた可動装置である。この移動可能となるための構造についても、後述する。
iii)システムベースの構成の概要
図3に、システムベース10の斜視図を示す。2つの装着モジュール12が配置されるシステムベース10は、フレーム50と、外装板52と、天板54とを含んで構成されるベース本体56を有する。ベース本体56の内部には、装着モジュール12の共用装置,共用デバイスとしての、電源ユニット58、外部正圧,負圧エア源からの配管装置60,62等が備えられており、これらにより各装着モジュール12への駆動力を供給する駆動力供給部が構成されている。また、ベース本体56の内部には、図示は省略するが、各装着モジュール12間および各装着モジュール12とシステムを統括制御するシステム制御装置(後述)との間の制御信号,情報をやり取りするための通信ケーブル,そのターミナル等も配設されている。天板54には、これらのメンテナンスのための開口が設けられており、その開口を塞ぐ天蓋64が取り付けられている。また、前部に近い上部には、もう一つの開口66が設けられており、この開口66に通ずるベース本体56の内部には、部品供給装置22から排出される電子部品テーピングのキャリアテープ,トップカバーテープ等を回収するテープ回収容器68が設けられている。説明は省略するが、装着モジュール12は、キャリアテープ等を切断するカッタ装置が設けられており、任意に切断されたキャリアテープが、テープ回収容器62に排出されるように構成されている。開口66、テープ回収容器68等を含んで、装着モジュール12の共用装置であるテープ回収装置が構成されているのである。なお、図示は省略するが、回収されたそれらのテープは、システムベース10の外部へ取出すことが可能となっている。先に述べたように、各々の装着モジュール12が可動装置とされるための装置構成、および、容易に分離可能となるための装置構成については後述する。
iv)配線板搬送装置の構成
図4に、配線板搬送装置24の全体を示す。配線板搬送装置24は、コンベア装置であり、配線板搬送方向(左右方向)に延びて互いに平行に位置する4つのコンベアレール(以下、単に「レール」と略す)100〜106を有する。最前方に位置するレール100は、その後方に位置するレール102とが対になって互いに向き合っており、また、さらに後方に位置するレール104とその後方に位置するレール106とが対になって互いに向き合っている。本配線板搬送装置24は、フロントコンベア部110およびリアコンベア部112の2つコンベア部を有し、レール100およびレール102によってフロントコンベア部110が形成され、レール104およびレール106によってリアコンベア部112が形成される。つまり、レール100,レール102の各々がフロントコンベア部110のそれぞれ基準レール,従属レールとして機能し、レール104,レール106の各々がリアコンベア部112のそれぞれ基準レール、従属レールとして機能する。
レール100は、ベース114の前方に固定して設けられた固定レールであり、レール102,104,106は、ベース114に配設された2本のガイド116に沿って前後方向に移動可能に設けられた可動レールである。装置の右側には、3本の可動のレール102,104,106の各々に設けられたナットに噛合する、3本のボールねじ118が配設され、また装置後方には、それらボールねじ118の各々の駆動源となる3つ電動モータ(ステッピングモータ)であるレール位置変更モータ120が配設され(1つは隠れている)、それら3つのレール位置変更モータ120を独立して駆動させることにより、3本の可動のレール102,104,106は独立して前後方向に移動させられる。これにより、フロントコンベア部110およびリアコンベア部112のコンベア幅が任意に変更可能とされている。各レール100〜106の上部の中央部には基準マーク122が設けられており、装着ヘッド26とともにヘッド移動装置28に設けられたマーク撮像装置(後述する)を用いて、各レールの装着モジュール12における位置が撮像され、その画像の認識結果に基づいてコンベア幅が調整される。すなわち、本配線板搬送装置24は、搬送する配線板の幅(配線板搬送方向に直角な方向の長さ)に応じた幅に対応してコンベア部110,112の幅を変更する基板幅対応変更装置を備えており、その基板幅対応幅変更装置は、可動のレール102,104,106,レール位置変更モータ120等を含んで構成されているのである。
配線板搬送装置24は、幅の狭い配線板を搬送する場合、フロントコンベア部110とリアコンベア部112との両方を使用することができる。すなわち2ラインの搬送装置として使用されるのである。その場合、リアコンベア部112の基準レールであるレール104の位置を設定された位置に固定して、2つのコンベア部110,112のそれぞれのコンベア幅を調整する。これに対して、幅の広い配線板を搬送する場合は、フロントコンベア部110とリアコンベア部112との一方のみを用い、1ラインの搬送装置として使用することができる。その場合、レール104を装置後方あるいは前方に移動させ、使用する一方のコンベア幅を調整する。
レール100〜106の構造を、レール102を例にとって説明する。図5に、レール102を示す。図5(a)は正面から見た図であり、図5(b)は、A−Aでの断面図である。レール102は、2つのブラケット130と、2つのブラケット130の間に渡されたレール本体板132と、レール本体板132の上部に設けられたガイドロッド134とを含んで構成されている。ブラケット130の一方には、駆動プーリ136が配設されている。配線板搬送装置24の左側には前後に延びるスプライン軸138(図4参照)が配設されており、図では省略しているが、駆動プーリ136はスプライン軸138とスプライン嵌合しており、レール102が前後方向においてどの位置に位置する場合であっても、スプライン軸138の回転が駆動プーリ136に伝達可能とされている。さらに、ブラケット130およびレール本体板132には、複数の従動プーリ140が回転可能に配設され、これら駆動プーリ136および従動プーリ140に、コンベアベルト142が、図に示すような状態に巻き掛けられている。スプライン軸138は、装置後方に配設された電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)である配線板移送モータ(図4参照)144に連結されており、配線板移送モータ144を駆動させることで、コンベアベルト142が周回する。他のレール100,104,106も同様の構造となっているため、それらについての説明は省略する。
配線板150は、コンベアベルト142の上方において水平に張られた部分に支承され、ガイドロッド134に前後方向の位置を規制されながら、コンベアベルト142の周回によって左右方向である配線板搬送方向に移送される。なお、4つのレール100〜106に設けられたコンベアベルト142は、一斉に周回するため、フロントコンベア部110の搬送動作とリアコンベア部112の搬送動作とは、独立して制御できない構造となっている。
配線板搬送装置24は、配線板150を部品装着作業のために設定された位置に固定して保持する基板保持部としての機能をも果たす。配線板搬送装置24は、2つの支持板152を備える。支持板152の上面には、バックアップピン154を備えた複数のバックアップ器具156が任意の位置に取り付け可能な構造となっている。コンベアベルト142に支承されて移送されてきた配線板150は、コンベアベルト142の周回を停止することにより、配線板の種類および部品装着作業の形態等に応じて設定された位置に停止させられる。その状態において、支持板152を、図示を省略する支持板昇降装置158(図12参照)によって所定距離だけ上昇させる(図5(a)の2点鎖線参照)。そうすれば、バックアップピン154の先端が配線板150の裏面に当接してその配線板150が持ち上げられ、コンベアベルト142による支承が解かれるとともに、配線板150の端部の表面がガイドロッド134の係止部158に適切な力で係止される。つまり、その状態において、配線板150は、部品装着作業のために設定された位置に固定して保持されるのである。
なお、コンベアベルト142の周回の開始,停止は、当該配線板搬送装置24、あるいは、それの上流側、下流側につながる搬送装置に設けられた配線板検知器(基板検知器の一種)としての光電センサ160(図4,図5では省略、図12,図24参照)の検知信号に基づいて制御される。これについては、詳しく後述する。また、先に述べたように、本配線板搬送装置24では、フロントコンベア部110の搬送動作とリアコンベア部112の搬送動作とは、独立して制御できない構造となっているが、フロントコンベア部110とリアコンベア部112の一方において上記配線板150を保持した状態となっている場合に、他方による搬送動作を行うようにすれば、2つのコンベア部を使用した効率のよい2ラインでの作業を実行することができる。
v)ヘッド移動装置の構成
図6に、装着ヘッド26およびヘッド移動装置28の斜視図を、図7に、Xスライド装置(後述)の水平断面図を示し、理解の容易のために、図8に、ヘッド移動装置28の模式的斜視図を示す。ヘッド移動装置28は、装着ヘッド26を、直交する2方向に移動させる2つの直線移動装置を含んで構成されている。その1つが、配線板搬送方向に直角な水平方向である前後方向(以下、「Y軸方向」と称す)の移動装置であるYスライド装置200であり、もう1つが、配線板搬送方向に平行な方向である左右方向(以下、「X軸方向」と称す)の移動装置であるXスライド装置202である。これら2つの直線移動装置によって、装着ヘッド26が一平面内を移動させられる。すなわち、装着モジュール12は、作業ヘッド平面移動型装置とされている。
Yスライド装置200は、Y軸方向に平行にビーム部16に設けられた2本のY軸方向ガイド(以下「Yガイド」と略す)210と、Yガイド210を摺動する4つの摺動部材(リニアベアリング)212を有してY軸方向に移動するYスライド214と、ビーム部16に設けられてY軸方向に延びるYボールねじ216と、Yボールねじに螺合して回転可能にかつ位置を固定されてYスライド214に設けられたYナット218と、後方に設けられてYボールねじ216を回転させる電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるY軸モータ220を駆動源として有するY軸駆動装置222とを含んで構成されている。
Xスライド装置202は、複段式移動装置すなわち2段式移動装置であり、互いに平行な方向に装着ヘッド26を移動させる第1Xスライド装置230と、第2Xスライド装置232との2つのスライド装置を含んで構成されている。第1Xスライド装置230は、X軸方向に平行な2本の第1X軸方向ガイド(以下、「X1ガイド」と略す)240を有する第1Xスライド242と、Yスライド214に固定的に設けられX1ガイド240を摺動させる4つの摺動部材(リニアベアリング)244と、Yスライド214に設けられてX軸方向に延びるX1ボールねじ246と、X1ボールねじ246に螺合して回転可能にかつ位置を固定されて第1Xスライド242に設けられたX1ナット248と、Yスライド214に設けられてX1ボールねじ246を回転させる電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるX1軸モータ250を駆動源として有するX1軸駆動装置252とを含んで構成され、第2Xスライド装置232は、X軸方向に平行に第1Xスライド242に設けられた2本の第2X軸方向ガイド(以下「X2ガイド」と略す)260と、X2ガイド260を摺動する2つの摺動部材(リニアベアリング)262をする第2Xスライド264と、第1Xスライド242に設けられてX軸方向に延びるX2ボールねじ266と、X2ボールねじ266に螺合して回転可能にかつ位置を固定されて第2Xスライド264に設けられたX2ナット268と、X1スライド244に設けられてX2ボールねじ266を回転させる電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるX2軸モータ270を駆動源として有するX2軸駆動装置272とを含んで構成されている。
Xスライド装置202は、上記構成の複段式詳しくは2段式の直線移動装置である。X1ガイド240を摺動させる摺動部材244を備えたYスライド214は、第1の軌道を形成する第1軌道形成部として機能し、X2ガイド260を備えた第1Xスライド242は、第1の軌道に沿って移動しかつその第1の軌道に平行な第2の軌道を形成する第2軌道形成部として機能し、X2ガイド260に沿って移動する第2Xスライド264は、第2軌道に沿って移動する移動部として機能する。すなわち、Xスライド装置202は、伸縮型(テレスコピック型)の移動装置とされているのである。そして、その移動部である第2Xスライド264に装着ヘッド26が保持されているのである。複段式移動装置による装着ヘッド26の移動方向を特定方向とすれば、装着モジュール12では、X軸方向が特定方向に該当する。Y軸モータ220,X1軸モータ250,X2軸モータ270の回転を制御することにより、装着ヘッド26は、一平面内を移動し、作業領域内の任意の位置に位置させられる。
vi)装着ヘッドの構成
図9に、装着ヘッド26の斜視図を示す。第2Xスライド264に保持された装着ヘッド26は、ヘッドの躯体となるヘッド本体280と、ヘッド本体280の各所に配設された種々の構成部品,構成装置と、それら構成部品等を覆うヘッドカバー282(図6参照)とを含んで構成されている。図9は、このヘッドカバー282を除いたものである。
装着ヘッド26は、複数、詳しくは8つの部品保持具である吸着ノズル288を先端部に保持するノズルホルダ290を備えている。吸着ノズル288を保持した状態でのノズルホルダ290をノズル付ホルダ291と称する。吸着ノズル288の各々は、図示は省略するが、正負圧選択供給装置292(図12参照)を介して負圧エア,正圧エア通路に通じており、負圧にて部品を先端部に吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持した部品が離脱する構造となっている。概して軸状をなすノズルホルダ290は、保持具保持部を構成し、間欠回転するホルダ保持体294の外周部に、等角度ピッチで、軸方向が垂直となる状態に保持されている。また、それぞれのノズルホルダ290は、自転可能に、かつ、軸方向に移動可能とされている。ホルダ保持体294は、電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)である保持体回転モータ296を有するホルダ保持体回転装置298によって駆動され、ノズルホルダ290の配設角度ピッチに等しい角度ずつ間欠回転させられることで、ノズル付ホルダ291は間欠回転させられる。間欠回転におけるノズル付ホルダ291の1つの停止位置であるホルダ昇降ステーション(最も前方に位置するステーション)において、そのステーションに位置するノズル付ホルダ291は、電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるホルダ昇降モータ300を駆動源として有するホルダ昇降装置302によって昇降させられる。部品供給装置22からの部品の取出動作、および、配線板搬送装置24に保持された配線板への部品の装着動作は、この昇降ステーション位置するノズル付ホルダ291によって行われ、その際にノズル付ホルダ291が設定された距離下降させられる。また、各々のノズルホルダ290は、吸着保持した部品の装着方位の調整等を目的として、電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるホルダ自転モータ304を駆動源として有するホルダ自転装置306によって自転させられる。なお、複数ノズルのホルダ290は、一斉に自転させられる構造とされている。以上が装着ヘッド26の主要な構成である。なお、第2Xスライド264には、その下部に、配線板の表面に付された基準マーク等を撮像するための装置であって、撮像デバイスとしてのCCDカメラを含むマーク撮像装置308が設けられている(図6参照)。
vii)Xスライド装置による装着ヘッドの移動
図10に、Xスライド装置206による装着ヘッド26の移動について模式的に示す。図では、第1軌道形成部としてのYスライド214と、第2軌道形成部としての第1Xスライド242と、移動部としての第2Xスライド264に保持された装着ヘッド26のみを示している。実線で示すAAは、装着モジュール12の側面を示す線であり、AA−AAは、装着モジュール12の装置領域を示している。Yスライド214は、X軸方向には移動せずに特定方向であるX軸方向における装置領域の中央位置を保ったまま、Y軸方向にのみ移動する。第1Xスライド242は、Yスライド214により形成された第1軌道に沿って、X軸方向に一定範囲の移動が許容されている。また、装着ヘッド26は、第1Xスライド242により形成された第2軌道に沿って、第1Xスライド242の全範囲にわたって移動する。
Yスライド214および第1Xスライド242は、ともに、特定方向であるX軸方向における長さがモジュール幅より小さくされている。図の実線で示す状態では、第1Xスライド242はX軸方向の中央の位置に存在しており、その状態において、第1Xスライド242は、装置領域AA−AA内に収まっている。装着ヘッド26は、概ね、その端が第1Xスライド242の端に位置するまで第2軌道に沿った移動が可能とされている。図では省略しているが、第1Xスライド242が中央位置に位置する状態で装着ヘッド26を移動させても、装着ヘッド26の端は、装置側面AAからある程度の間隔を残した位置までしか到達しない状態とされている。第1Xスライド242を中央位置から所定距離だけ移動させることにより、第1Xスライド242が装置側面AAから進出しない程度の装置側面AAの近傍位置させられ、それによって、装着ヘッド26の移動可能範囲を、それの端が装置側面AAから飛び出さない範囲まで拡大させることができる。その拡大した状態において、図に示すWA1−WA1の範囲の装着作業が可能となる。第1Xスライド242をさらに中央位置から離れるように移動させれれば、第1Xスライド242の端部が装置領域外に進出する。それによって、装着ヘッド26も装置領域外に進出し、装着ヘッド26の移動可能範囲が、装置領域AA−AAを超えて、WA2−WA2の範囲までさらに拡大する。このように、装着モジュール12は、複段式移動装置を採用することで、コンパクトでありながら作業領域の広い装置とされているのである。
ヘッド移動装置28の実際の制御においては、第1Xスライド242について、第1の軌道上の移動範囲内において複数の停止位置(第2軌道形成部の停止位置である軌道部停止位置に相当)が設定されており、それらの停止位置のいずれかに第1Xスライド242を停止させつつ、装着ヘッド26を第1Xスライドにより形成された第2軌道に沿って移動させている。図11に、第1Xスライド242を所定の停止位置に停止させて行う装着ヘッド26の移動について、模式的に示す。Xスライド装置202において、第1Xスライド242の第1軌道上の停止位置は4つ設定されている。それぞれの、停止位置はST1〜ST4と番号付けられている。図11(b),(c)に示すように、第1Xスライド242がST2,ST3に位置する状態は、それぞれ、右方向,左方向において、第1Xスライド242が装置領域外に進出しない状態であり、装着ヘッド26を第2軌道上のいかなる位置に位置させたとしても、装着ヘッド26が装置領域外に進出しない状態である。これに対して、図11(a),(d)に示すように、第1Xスライド242がST1,ST4に位置する状態は、それぞれ、右方向,左方向において、第1Xスライド242が装置領域外に進出した状態であり、それに応じて装装着ヘッド26が装置領域外に進出可能とされた状態である。
装着モジュール12の装置領域をはみだす配線板に部品装着作業を行う場合について説明すれば、例えば、配線板の装置領域内に位置する装着位置に部品を装着する場合、その装着位置が装置中央より右側に存在するときにはST2の停止位置に第1Xスライド242を停止させ、その装着位置が装置中央より左側に存在するときにはST3の停止位置に第1Xスライド242を停止させて、装着ヘッド26を移動させるように制御を行う。そして、配線板の装置領域外に位置する装着位置に部品を装着する場合には、その装着位置が装置領域外の右側に存在するときにはST1の停止位置に第1Xスライド242を停止させ、その装着位置が装置領域外の左側に存在するときにはST4の停止位置に第1Xスライド242を停止させて、装着ヘッド26を移動させるように制御を行う。このように、装着位置がどの位置に存在するかというシチュエーションに応じて、装着ヘッド26の移動可能領域を複数の区分領域に分割し、装着ヘッド26をいずれの区分領域に停止させるかに基づいて、第1Xスライド242の停止位置を決定するような制御が行われる。なお、第1Xスライド242の位置は、X1軸モータ250が備えるエンコーダの信号に基づいて、後に説明する装着装置制御装置36によって把握されている。
装着モジュール12においては、装着ヘッド26の移動に関し、ヘッド移動装置28に対して上述のヘッド移動制御が行われる。ヘッド移動制御では、具体的には、第2軌道形成部である第1Xスライド242を、複数の停止位置のいずれかに停止させた状態で、第2軌道に沿って装着ヘッド26を移動させる軌道部停止ヘッド移動制御が行われており、また、第1Xスライド242を第2軌道の一部が装置領域外に進出する位置に移動させることによって、装着ヘッド26を装置領域外にまで進出可能とする進出制御が行われているのである。
以上のように、第1Xスライド242および装着ヘッド26が装置側面から進出することが可能とされた装着作業が行われるのであるが、装着モジュール12の側面外装板320には、右側面,左側面いずれにも、側配線板搬送装置24が存在する部分に開口322が設けられており、装着ヘッド26が、装置領域外に進出する場合には、その開口322を通って、第1Xスライド242および装着ヘッド26が装置領域外に進出させられる(図1(a)参照)。なお、本装着モジュール12において、装着ヘッド26の移動可能領域が装置領域外まで拡大されるのは、部品の装着動作を行う場合とされており、部品供給装置22からの部品の取出動作等の場合には、第1Xスライド242は、ST2,ST3またはそれらの中間に設定された別の停止位置に位置させられており、装着ヘッド26は、装置領域内を移動させられる。
viii)装着装置制御装置
図12に、本発明に関係の深い部分を中心とした装着モジュール12の制御ブロック図を示す。基本的態様の装着システムでは、2つの装着モジュール12を有しており、それらのそれぞれが自身に装着装置制御装置36を備える。図は、一方の装着モジュール12およびその装着モジュール12が備える装着装置制御装置36を中心したブロック図である。装着装置制御装置36は、コンピュータ350を主体とする制御装置であり、コンピュータ350は、PU(プロセッシングユニット)352と、ROM354と、RAM356と、入出力インターフェース358と、それらを互いに接続するバス360を有している。入出力インターフェース358には、装着装置制御装置36が備えるそれぞれの駆動回路362を介して、部品供給装置22の各テープフィーダ20、配線板搬送装置24の3つのレール位置変更モータ120,配線板移送モータ144,支持板昇降装置158、装着ヘッド26の正負圧選択供給装置292,保持体回転モータ296,ホルダ昇降モータ300,ホルダ自転モータ304、ヘッド移動装置28のY軸モータ220,X1軸モータ250,X2軸モータ270が、それぞれ接続されている。また、部品撮像装置30およびマーク撮像装置308が、それらによって得られた撮像データから種々の認識結果を得るまでのデータ処理を行う画像処理ユニット38を介して接続されている。さらに、入出力インターフェース358には、配線板搬送装置24に備えられた光電センサ160が接続されている。
2つの装着モジュール12の一方は、他方の動作と関連して作動する。また、本基本的態様のシステムは、システムベース10および装着モジュール12とは別体をなしてシステム全体を統括制御するシステム制御装置370(図1、図2等では省略)を備えている。そのため、入出力インターフェース358には、他方の装着モジュール12およびシステム制御装置370が、通信ケーブル372を介して接続されている。なお、システム制御装置370は、本システムが他の対基板作業システムと連結してさらに大きなシステムを構成する等の場合においては、他の対基板作業システムのシステム制御装置と兼用される。さらに、装着モジュール12はモジュール化されており、他の別のシステム内に配置されることがある。その場合において、本装着装置制御装置36は、その別のシステムにおける他の対基板作業装置が備える制御装置、その別のシステムのシステム制御装置とも接続可能とされている。
ROM354には、装着モジュール12の基本動作プログラム等が記憶されており、また、RAM356には、作業形態に応じた動作制御,他の対基板作業装置との協調動作,協働動作制御等に関する動作プログラム、配線板の保持位置ずれ,部品の吸着保持位置のずれ等に応じた装着位置補正プログラム等のアプリケーションプログラム、部品装着作業が行われる配線板に応じて設定されている装着順序データ,装着位置データ、装着位置に装着される部品のデータ,装着される部品に関する部品固有データ、どの部品がどのテープフィーダ20から供給されるかといった部品供給装置関連データ等の各種データ等が記憶されている。これらのデータ等は、システム制御装置370のコンピュータであるシステム制御コンピュータ980においても記憶されている。
ix)部品装着作業の概要
次に、1つの装着モジュール12による部品装着作業を、その装着モジュール12の装置領域内に収まる大きさの配線板に対する作業を例にとって、簡単に説明する。上流側から移送されてきた配線板は、配線板搬送装置24によって、装置領域内の設定された作業位置に停止させられる。停止させられた配線板は、その位置において、支持板昇降装置158が上昇させられることにより、配線板保持装置24よって固定保持される。次いで、ヘッド移動装置28によって、マーク撮像装置308が、配線板に付された基準マークの上方に移動させられ、基準マークを撮像する。その撮像データから、保持された配線板の保持位置のずれが検出される。なお、後に説明する2つの装着モジュール12による協働作業の場合、それぞれの装着モジュール12が備える配線板保持装置24のそれぞれが協働し、1つの配線板が固定保持される。その場合、それぞれの装着モジュール12の装置領域内に存在する基準マークを、それぞれの装着モジュール12のマーク撮像装置308が撮像し、撮像データを処理した結果を相互に受け渡すことによって、それぞれの装着モジュール12における配線板の保持位置のずれが検出される。
次に、装着ヘッド26が部品供給装置22の上方に移動させられ、設定された取出順序に従って、部品が吸着ノズル288に吸着保持される。詳しくは、昇降ステーションに位置するノズル付ホルダ290が、保持対象とされた部品を供給するテープフィーダ20の部品取出部の上方に位置させられて、その位置でそのノズル付ホルダ290が下降させられ、先端に保持された吸着ノズル288に負圧が供給されて、その部品を吸着保持する。そしてノズル付ホルダ290が間欠回転させられ、次のノズル付ホルダ290に関する同様の部品取出動作が行われる。このようにして、装着ヘッド26が備えるノズル付ホルダ290について、順次、部品取出動作(多くの場合は8回)が行われる。
次に、部品を保持した装着ヘッド26は、部品撮像装置30の上方に移動させられる。その位置において、部品撮像装置30は、保持された部品を一視野内に収めて撮像する。得られた撮像データにより、それぞれの部品の保持位置のずれが検出される。装着ヘッド26は、配線板の上方に移動させられるのであるが、その移動の途中で、ノズル付ホルダ291がホルダ自転装置306によって自転させられ、それが保持する部品に設定された装着方位,検出された配線板保持位置ずれ量,部品の保持位置ずれ量に基づいて、適正な回転位置まで自転させらる。最初に装着される部品を保持するノズル付ホルダ290が昇降ステーションに位置するまでホルダ保持体294ないしノズル付ホルダ290の間欠回転を繰り返し、その間欠回転の間に、部品を装着するノズル付ホルダ290が自転させられる。
続いて、装着ヘッド26は、配線板の上方まで移動させられ、設定された装着順序に従って、配線板の表面に保持された部品が装着される。詳しくは、まず、ホルダ昇降ステーションに位置するノズル付ホルダ290が適正な装着位置の上方に位置させられる。このとき、検出された配線板保持位置ずれ量,部品の保持位置ずれ量に基づいて、装着ヘッド26の移動位置が適正化される。その位置において、ノズル付ホルダ290が所定距離下降させられ、吸着ノズル288に正圧が供給されて、保持した部品が配線板の表面に装着される。続いてノズル付ホルダ290が間欠回転させられ、次のノズル付ホルダ290に関する同様の部品装着動作が行われる。このようにして、部品を保持するノズル付ホルダ290について、順次、部品装着動作が行われる。
予定されたすべての部品の装着が終了するまで、装着ヘッド26が部品供給装置22と配線板との間を往復させられて、部品取出動作、部品装着動作が繰り返し行われる。すべての部品の装着が終了した後、配線板搬送装置24の支持板昇降装置158が下降させられ、配線板の固定保持が解除される。その配線板は、配線板保持装置24によって、下流側へ移送される。このようにして、その配線板に予定された部品装着作業が終了する。説明を省略した配線板搬送装置24による配線板の搬送については、後に詳しく説明する。なお、基本的態様のシステムに配置された2つの装着モジュール12は、両方に跨がる大きさの配線板に対しても、部品装着作業を行うことができる。これについては、後述する。
<システムベースに対する装着装置の移動等>
i)装着装置移動許容装置
図3に示すように、システムベース10の上部には、複数本のガイドレール470が一直線上に並んで構成される4つのレール列472が設けられている(図1,図2等では図示を省略)。前方から見て左右外側のレール列472は、それぞれ2本ずつのガイドレール470により構成されており、内側の2列のレール列472は、それぞれ3本のガイドレール470から構成されている。4つのレール列472は、互いに平行に配設されている。4つのレール列472は、2つのレール対に分けることができる。右側の2列のレール列472によって構成されるレール対が、右側の装着モジュール12に関係し、左側の2列のレール列472によって構成されるレール対が、左側の装着装置に関係するものとなっている。なお、2つのレール対は互いに、それぞれのレール対を構成するレール列472の間隔は互いに等しくされている。
図13に、上記基本的態様のシステムの右側面一部断面図を、図14に、部品供給装置22を除外した状態における正面一部断面図を示す。装着モジュール12は、フレーム部14の下部に、4つずつ2列に並んだ合計8つの車輪474を軸受を介して回転自在に保持する車輪装置を有し、その車輪474が、係合部材として、対をなすそれぞれのレール列472を構成する軌道形成部材としてのガイドレール470にそれぞれ係合する。これにより、装着モジュール12は、システムベース10に対する前後方向への相対的な移動が可能とされる。つまり、装着モジュール12は、前後方向に延びる装置軌道に沿って移動可能な可動装置とされている。装置軌道は、配線板搬送方向である左右方向に直角に交差する直線的な軌道であり、かつ、水平に延びるものとなっている。また、本システムは、可動装置とされた装着モジュール12の移動を上記移動を許容する可動装置移動許容装置としての2つの装着装置移動許容装置を備えているのであり、各々の装着装置移動許容装置は、システムベース10に位置が固定されて設けられた装置軌道形成部としての対をなすレール列472と、装着モジュール12に位置を固定して設けられ、ガイドレール470に対して移動可能に係合する対軌道係合部としての車輪装置を含んで構成されているのである。なお、装着モジュール12が前方に移動した場合、1つのレール列472において、ガイドレール470の存在しない箇所(レールの隙間)にいずれかの車輪474が位置する場合があるが、その場合でも、複数の車輪474が対をなすレール列472を構成するいずれかのガイドレール470に係合するようになっている。車輪装置は、可動装置移動容易化手段として機能し、装着モジュール12は人力にて容易に移動可能である。したがって、例えば、配線板150の種類の変更等により、前記バックアップピン154の支持板152に対する配置の変更やバックアップピン154の交換等の必要が生じた場合、装着モジュール12をシステムベース10から引き出して、配線板搬送装置24がシステムベース10から外れた状態となる位置へ移動させ、システムベース10の手前の広いスペースで配置変更等の作業を容易に効率良く行うことができる。
なお、図14に示すように、車輪474の外周部は平たくされているが、1対のレール列472を構成するガイドレール70は、左右方向の外側の部分が車輪474の脱輪を防止するように上方に突出する形状とされており、そのことにより、可動装置とされた装着モジュール12が装置軌道を外れないようになっている。ガイドレール470および車輪474の互いに係合する部分の形状は、上記形状に限られない。例えば、平板な上部形状を有するガイドレールと脱輪防止の鍔部を設けた車輪とを係合させる(鉄道車両におけるレールと車輪との関係に類似)、山形の断面を有するガイドレールとそれに勘合するV形の断面形状の溝を有する車輪とを係合させる、1対のガイドレールの上面を互いに反対方向に傾斜させる(例えば「ハ」の字となるように傾斜させる)とともにそれに勘合するテーパ形状の外周面を有する車輪を採用するといった態様とすることもできる。
ii)装着装置固定装置
図3に示すように、システムベース10には、装着モジュール12の下部後方に固定的に設けられた被係止部材としての当接部材480を係止する係止部材としてのストッパ482が、上部後方であって2つのレール対のそれぞれの中間部に、それぞれ1つずつ設けられている。装置軌道に沿って装着モジュール12を移動させた場合、当接部材480の一部分がストッパ482の一部分に当接して、装着モジュール12のそれ以上の後方への移動が禁止される。また、システムベース10には、付勢力発生デバイスとしてのシリンダ装置486を有して、リンク機構を介して装着モジュール12の下部に固定的に設けられた被付勢部材488を付勢可能な付勢装置490が、前後方向の中央部付近であってレール対を構成する2つのレール列472の中間部に、2つのレール対のそれぞれ対して設けられている。図3においては、付勢装置490が有する付勢具492が非付勢位置にある状態を、図13においては、付勢具492が天板54より上方に突出するように回動した状態つまり付勢位置にある状態を示している。上述の当接部材480をストッパに482に当接した状態で付勢装置490によって被付勢部材488を後方に向かって付勢することによって、当接部材480のストッパ482への当接状態が維持され、装着モジュール12の前方への移動が阻止される。つまり、本システムは、装置軌道上の一定位置に可動装置を固定する可動装置固定装置としての装着装置固定装置を備えるものであり、当接部材480およびストッパ482が、装着モジュール12の装置軌道に沿った一方向の移動を禁止すべく装着モジュール12およびシステムベース10の各々に設けられた当接部として機能し、付勢装置490および被付勢部材488が上記当接部の当接状態が解除されることを禁止する当接状態解除禁止部として機能し、これら当接部および当接状態解除禁止部を含んで装着装置固定装置が構成されているのである。この装着装置固定装置による装着モジュール12の固定位置が、システムベース10に対する装着モジュール12の所定の配置位置となる。
iii)テーブル装置
装着装置固定装置による固定を解除して、装着モジュール12を装置軌道に沿って前方に移動させた場合、装着モジュール12をシステムベース10よりオーバーハングするように移動可能であるが、移動距離が大きい時には、装着モジュール12がシステムベース10から落下する可能性がある。そこで本システムには、装着モジュール12の少なくとも一部が載置可能なテーブル装置が準備されている。図15に、テーブル装置と、そのテーブル装置を使用状態を示す。テーブル装置500は、装着モジュール12の左右方向における幅(配線板搬送方向における幅)よりもやや大きな幅で、装着モジュール12の前後方向における長さと略同じ長さで、システムベース10の上面とほほ同じ高さの上面を有する台部502を主体として構成されている。台部502の上面には、前述のガイドレール470と同じ断面形状を有する2本のガイドレール504が設けられている。2本のガイドレール504は互いに平行に配設されており、それらの間隔は、上記1つのレール対を構成する2つのレール列472の間隔と等しくされている。テーブル装置500は、2本ガイドレール504のそれぞれが、移動させようとする装着モジュール12が係合している対をなすレール列472のそれぞれを延長する状態となるように、システムベース10の前方の傍らに位置決めされて配置される。
テーブル装置500を配置した後、前述の装着装置固定装置を操作して装着モジュール12の固定を解除し、その装着モジュール12を前方に移動させる。ある程度の距離を移動させた状態で、装着モジュール12の一部はテーブル装置500に載置される。詳しくは、装着モジュール12の複数の車輪474の一部がテーブル装置500が備えるガイドレール504に係合するのである。この状態では、移動させられた装着モジュール12の一部は隣接するもう一方の装着モジュール12に対して前方にずれた状態となるため、メンテナンス、調整等の作業が容易に行える。つまり、テーブル装置500は、システムにおける補助的なベースユニットとして機能するのである。そして、装着モジュール12をさらに前方に移動させることで、その装着モジュール12は、テーブル装置500に移載する状態となる。この移載した状態を図15は示している。なお、図15において一点鎖線で示す状態が、装着モジュール12の一部がテーブル装置500に載置された状態である。装着モジュール12がテーブル装置500に移載した状態において、その装着モジュール12は、システムベース10から分離された状態となる。テーブル装置500を本システムに利用することで、延長軌道形成部材としてのガイドレール504と、それに係合する係合部材としての車輪474とを含んで、テーブル装置側可動装置移動許容装置が構成されるのである。
テーブル装置500には、台部502の上面前方部であって2本のガイドレールの中間部に、テーブル側係止部材としてストッパ506が設けられている。また、システムベース10に設けられている付勢装置490と類似の構造の付勢装置508を有している。ストッパ506は、装着モジュール12に固定的に設けられた前述のものとは別の当接具(図示を省略)を係止し、また、付勢装置508は、装着モジュール12に固定的に設けられた前述のものとは別の被付勢部材(図示を省略)を付勢する。すなわち、ストッパ506、付勢装置508等を含んで、テーブル装置側可動装置固定装置が構成されているのである。先に説明したシステム側の装着装置固定装置と同様の機能であるため説明は省略するが、このテーブル側の固定装置によって、装着モジュール12は、延長軌道上の一定位置に位置が固定される。本テーブル装置500では、装着モジュール12がシステムベース10から分離されてテーブル装置500に移載した状態の位置で固定可能とされている。
また、テーブル装置500は、下部に移動容易化手段としてのキャスタ510を有しており、人力で容易に移動可能な可動式テーブルとされている。装着モジュール12を上面に載置した状態でテーブル装置を移動させることにより、その装着モジュール12を例えば実装ライン外に存在するメンテナンスエリア等にまで運搬することが可能である。すなわち、テーブル装置500は、システムベース10に配置される対基板作業装置を運搬する対基板作業装置運搬装置としての機能をも果たしているのである。
本システムでは、装置軌道を延長する位置にテーブル装置500を位置決めすることを容易化すべく、システムベース10とテーブル装置500とを連結する連結装置を採用する。図16に、その連結装置を示す。図16(a)に示すように、システムベース10の前面には、ベース側連結部としての連結ブロック520が、1つの装着モジュール12あたり1対設けられている(図では片方のみを示す)。また、図16(b)に示すように、テーブル装置500のシステムベース10の前面と向きあう面には、嵌合ピン522を上方に向かって突出させるピン突出装置524が、1対の連結ブロック520に対応して1対設けられている(図では片方のみを示す)。テーブル装置500を概略の位置にまで移動させた状態で、それぞれのピン突出装置524のレバー526を押し下げれば、それぞれの嵌合ピン522が対応するそれぞれの連結ブロック520の嵌合穴528に嵌入する。この状態において、テーブル装置500のガイドレール504とシステムベース10のレール列472とが一直線上に位置するように、テーブル装置500が位置決めされる。そのような状態となるように、互いの連結部の位置が適正化されているのである。なお、2つの装着モジュール12のうちのいずれのものを移動させる場合でも同じテーブル装置が使用できるように、本システムベース10では、連結ブロック520が両方の装着モジュール12のそれぞれに対応して2対設けられている。
iv)装置相互間相対移動制限装置
基本的態様として例示する本システムでは、2つの装着モジュール12のいずれもが可動装置とされており、システムベース10に対して単独で移動可能であり、また、単独で分離可能である。さらに、本システムでは、2つの装着モジュール12の装置軌道が互いに平行であることから、それらを一緒に移動、一緒に分離させることも可能である。つまり、2つの装着モジュール12の相対位置を略一定に維持しつつ、システムベース10に対する相対移動が可能なのである。その場合、前述のテーブル装置500に代え、2つの装着モジュール12が載置可能なテーブル装置、詳しくは、互いに平行な2対のガイドレールを有するテーブル装置を採用することができる。
2つの装着モジュール12の相対位置関係を維持しつつそれらを一緒に移動させる場合に有効な手段として、本システムでは、装着モジュール12相互の相対移動を制限する装置相互間相対移動制限装置を、それぞれの装着モジュール12が有している。図13および図14を参照しつつ、それについて説明する。装着モジュール12には、その前方の部分、詳しくは、フレーム部14の部品供給装置22が設けられる部分の下部に、装置の左側面から嵌合ピン540を突出させるピン突出装置542が設けられており、また、対応する装置のフレーム部14の右側面の部分に、嵌合ピン540が嵌入する嵌合穴544が設けられている。ピン突出装置542は、シリンダ装置546を主体とするものである。嵌合ピン540は、フレーム部14の左側面に位置する部分に設けられた支持穴548によって、左右方向に延びる向きに、前後,上下方向に移動不能にかつ左右方向に移動可能に支持されている。嵌合ピン540の後端部はシリンダ装置546のロッド先端部に連結されており、シリンダ装置546が操作されることによって、装着モジュール12の左側面から嵌合ピン540が突出する状態と突出しない状態とを選択的に切替可能とされている。
図13では、右側の装着モジュール12に設けられたピン突出装置542について示されており、その図が示すように、2つの装着モジュール12がともに所定の配置位置に位置するときに突出状態とすれば、嵌合ピン540の先端部が、左側の装着モジュール12の嵌合穴544に嵌入する状態となる。つまり、嵌合ピン540が一方の装着モジュール12の係合部として機能し、嵌合穴544が他方の装着モジュール12の係合部として機能するのである。嵌合ピン540の外寸は、嵌合穴544の内寸に対して、若干の隙間を有するように小さくされている(装着モジュール12における嵌合ピン540および嵌合穴544の配設精度を考慮するものである)。一方の装着モジュール12の嵌合ピン540と他方の装着モジュール12の嵌合穴544とが互いに係合している状態では、装置軌道の延びる方向において、2つの装着モジュール12の相対移動は制限され、両者の相対位置関係が維持されたままで、両者を装置軌道に沿って一緒に移動させることが可能となる。逆に、嵌合ピン540が非突出状態である場合には、隣の装着モジュール12との相対位置の制限はなくなり、いずれの装着モジュール12も、単独で、装置軌道に沿って移動させることができるのである。
基本的な態様として例示した本システムでは、2つの装着モジュール12の位置を入れ替えて、つまり、右のものを左側に、左のものを右側に配置することも可能である。本システムでは2つの装着モジュール12の各々にピン突出装置542および嵌合穴544が設けられており、2つの装着モジュール12を入れ替えた場合でも、入れ替えない状態において使用されていなかった側のピン突出装置542および嵌合穴544を使用することにより、2つの装着モジュール12を両者の相対位置関係を維持したままで移動させることが可能である。
後に詳しく説明するが、装着モジュール12は、隣の装着モジュール12と協働して、両装置に跨って位置する1つの配線板に対する部品装着作業を行うことが可能である。その場合、例えば、協働作業中にいずれかの装着モジュール12に不具合が発生した場合には、両装置が備える配線板搬送装置24に1つの配線板を保持させたままで、装着モジュール12を移動させる必要が生じる。このような必要が生じた場合に、装置相互間相対移動制限装置は、有効な手段となる。
<対基板作業システムのバリエーション等>
対基板作業システムは、上述した基本的態様の装着システムに限定されず、それを始めとして、バリエーションに富んだ数多くの種類のものが存在する。それらのいくつかを、以下に説明する。
i)対基板作業装置の配置数に関するバリエーション
図1(b)〜(d)に示すものは、装着モジュール12の配置数がそれぞれに異なる装着システムである。図1(a)に示す基本的な態様のシステムにおいては、装着モジュール12が2つであるが、図1(b)に示すものでは4つの装着モジュール12が、図1(c)に示すものでは6つの装着モジュール12が、図1(d)に示すものでは8つの装着モジュール12が、それぞれ配線板搬送方向である左右方向に整列して配置されたシステムである。なお、装着モジュール12は、図1(a)〜(d)のいずれのものも同じ構成のものである。それら各システムは、装着モジュール12の配置数に応じて、システムベースの幅(配線板搬送方向における長さ)が異なり、図1(b),(c),(d)に示すシステムのそれぞれのシステムベース570,572,574は、それぞれ、図1(a)に示すシステムのシステムベース10の約2倍,約3倍,約4倍の幅のものとされている。
図1に示すいずれの装着モジュール12も上述の可動装置とされており、システムベース570,572,574の上面には、先に説明したところの図1(a)に示す基本的態様ものと同様のレール列472が、配置される装着モジュール12の数に応じてそれぞれ4対,6対,8対配設されている。それらのレール列472によって形成される装置軌道は、いずれも配線板搬送方向に直角に交差し、前後方向に水平に延びるものである。つまり、すべての装着モジュール12について、前述の装着装置移動許容装置が設けられているのである。また、前述したのと同様の構成の装着装置固定装置も、装着モジュール12の配置数に応じた数設けられている。さらに、いずれの装着モジュール12にも装置相互間相対移動制限装置が設けられており、1つの装着モジュール12を単独で、あるいは、互い隣接する2以上の装着モジュール12を互いの相対位置関係を維持しつつ、システムの前方に向かって移動させることができる。
ii)システムベースのモジュール化と対基板作業構成体
図17に、装着システムについて、前記態様との別のいくつかの態様を示す。図17(a)〜(c)に示すシステムは、複数の図1(a)に示す基本的態様のシステムを、配線板搬送方向に整列させたシステムである。図13および図14に示すように、基本的態様のシステムは、システムベース10が複数のキャスタ580を有しており、システム自体が容易に移動可能とされている。また、システムの設置にあたっては、ジャッキ装置582,584を利用して、高さを調整しつつ、任意の位置に設置可能である。図17(a)〜(c)に示すシステムは、基本的態様のシステムをそれぞれ2つ,3つ,4つ配置したものであり、外観上は、図1(b)〜(d)のシステムと近似している。異なるのは、前者が、同じシステムベース10を複数並べて設置してあるのに対して、後者は、幅の異なる1つのシステムベース570,572,574により構成されていることである。つまり、図17に示す態様のシステムでは、システムベース10の1つ1つがモジュール化されたベースモジュールとして機能し、それらのシステムは、そのベースモジュールが複数集合して構成されたシステムベース590,592,594を有するシステムとみなすことができるのである。このように、対基板作業システムにおいては、システムベースは、複数のベースモジュールを含んで構成されるものであってもよい。例示したシステムベース590,592,594は、ベースモジュールとしてのシステムベース10を並べて設置するだけでもよく、また、専用の連結装置を用いて、それらを一体的に連結するものであってもよい。
図17に示す態様の場合、ベースモジュールとしての1つのシステムベース10と、それに配置された2つの装着モジュール12とを含んで、電子回路部品装着構成体(対基板作業構成体の一種)が構成されているとみなすこともできる。つまり、前述の基本的態様のシステムは、ここでは1つの電子回路部品装着構成体として取り扱うことができるのである。電子回路部品装着構成体としての基本的態様のシステムは、それ自体で独立して移動させることができ、また、その構成体ごとの交換も自由に行えることから、システムの汎用性が高いものとなる。
iii)対基板作業装置のモジュール幅に関するバリエーション
上述の装着モジュール12と異なる装着装置を配置した装着システムについて説明する。図18(a)に示すものは、先の基本的態様のシステムにおいて用いられているシステムベース10上に、配線板搬送方向におけるモジュール幅が異なる装着モジュール600を配置したシステムである。具体的には、装着モジュール12の約2倍のモジュール幅を有している。装着モジュール600に配備されている配線板搬送装置602は、モジュール幅に応じて装着モジュール12に配備された配線板搬送装置24の約2倍の搬送長さ(配線板搬送方向の装置長さ)を有している。したがって、装着モジュール12のモジュール領域内に収まる配線板よりも大きな(約2倍近い長さの)配線板を、モジュール領域内に位置させて部品を装着することが可能となっている。また、部品供給装置604も、装着モジュール12の部品供給装置22と比較して、数多くのテープフィーダ20を搭載することが可能とされ、装着モジュール600は、より多品種の部品が装着可能である。装着ヘッドおよびヘッド移動装置は、先に説明した装着モジュール12のものと同様の構成であるが、モジュール幅が大きくなっているのに伴って、X軸方向(配線板搬送方向)のヘッド移動可能領域が大きくされている。他の配備装置等も装着モジュール12と同様の構成とされている。
図18(b)に示す装着システムは、図18(a)に示すシステムを1つの電子回路部品装着構成体とし、その構成体と、それとは別の構成体となる前述の基本的態様のシステムとを並べて配置することによって構成されたシステムである。2つのシステムベース10は、それぞれがベースモジュールとなり、図17(a)に示すものと同様、1つのシステムベース590を構成する。このシステムは、そのシステムベース590上に、2つの装着モジュール12と1つの装着モジュール600とが配線板搬送方向に整列して配置されたシステムとなる。後に詳しく説明するが、2つの装着モジュール12は、両者に跨って位置する配線板に対して、協働して装着作業を行うことができる。したがって、上流側から下流側に向かって(左右いずれを上流側としてもよい)配線板を搬送し、装着装置200の装置領域内に配線板を位置させて1つの装着ヘッドによる部品装着作業と、2つの装着モジュール12に跨って配線板を位置させて2つの装着ヘッドによる部品装着作業とを、任意の順で順次行うようなシステムとすることができる。例えば、2つの装着モジュール12によって少品種多量の部品を装着し、装着モジュール600により多品種少量の部品を装着するといった作業形態を採用することもでき、柔軟性に富んだシステムの活用が可能となる。
図19に、モジュール幅の異なる装着装置を配置した装着システムの別の態様を示す。図19(a)に示すものは、基本的態様のシステムにおいて用いられている装着モジュール12が6つ配置可能なシステムベース572(図1(c)に示すシステムのものと同じもの)上に、その装着モジュール12が4つ整列して配置され、それらに隣接して、前述の装着モジュール12の約2倍の幅の装着モジュール600が配置されたシステムである。また、図19(b)に示すものは、装着モジュール12が8つ配置可能なシステムベース574(図1(d)に示すシステムのものと同じもの)上に、その装着モジュール12が3つ整列して配置され、それらに隣接して、前述の装着モジュール12の約2倍の幅の装着モジュール600が配置され、さらにそれに隣接して、装着モジュール12の約3倍の幅の装着装置610が配置されたシステムである。このように、配線板搬送方向の幅の異なる装着装置を整列して配置する態様も採用可能である。
iv)対基板作業装置のモジュール化
これまでに列挙した数々の態様の装着システムは、複数の装着装置が配置されるものであるが、それらすべての装着装置はモジュール化されたものである。つまり、システムは、システムベースに対して分離可能なモジュール化装置を配置して構成されていることから、例えば、1つのモジュール化装置が故障等した場合であっても、その装置と同構成の別のモジュール化装置が準備されていれば、短時間でそれらの装置の交換が可能であり、システムの復旧が容易に行える。また、システム構成の変更、例えば、装着装置の配置位置を変更、入れ替え等の際にも迅速に対処可能である。特に、図1および図17に示すシステムは、1種の装着モジュール12によって構成されたシステムであり、単一のモジュール化装置によって構成されていることから、より利便性に優れるシステムとなる。
いずれの装着装置も、部品供給装置、配線板搬送装置、装着ヘッド、装着ヘッド移動装置等の各種装置を配備する形でモジュール化されている。さらに、上記システムでは、それらの配備装置を制御する制御装置(前述の装着装置制御装置36に相当するもの)を、装着装置ごとに有しており、その制御装置をも配備してモジュール化されたシステムなのである。また、システムベースには、前述したところの、各装着装置についての各種共用装置,専用装置等が配備されている。モジュール化された装着装置を所定の配置位置に固定した場合において、それら共用装置,専用装置等と、装着装置との連結は規格化されており、利便性に優れるシステムが実現されている。例えば、装着装置とシステムベースとをつなぐ電源線、正圧,負圧供給路、制御装置間の信号のやり取りをする信号線等は、システムの背面側において、ワンタッチで接続・分離可能な継手を介して、接続される(図示は省略)。
v)対基板作業装置の隣接配置とモジュール幅の規格化
上記各態様のシステムにおいて、複数の装着装置は、互いに隣接して配置されている。つまり、装着装置の各々が相互隣接配置装置とされており、それらの装置が互いに隣接して配置された隣接装置群を構成している。その結果、コンパクトなシステムが実現されている。各装着装置の配線板搬送方向のおける側面(左右の側面)は、略平坦にされており、各装置間の隙間が殆どない状態で、各装着装置が配置されている。上記各態様のシステムにおいては、隣接装置群を構成する各装着装着は、そのモジュール幅が規格化されたモジュール化装置とされている。前述の基本的態様のシステムにおいて用いられる装着モジュール12のモジュール幅を単位幅として、その単位幅の略整数倍のモジュール幅を有する装置だけで、隣接装置群が構成されているのである。例えば、図19(b)に示すシステムを例にとって説明すれば、装着モジュール12は単位幅の約1倍のモジュール幅、装着モジュール600は約2倍のモジュール幅、装着装置610は約3倍のモジュール幅の装置とされている。このようにモジュール幅が規格化されたモジュール化装置で隣接配置群を構成することで、その隣接装置群全体の幅、上記態様のシステムの場合はシステム全体の幅が規格化されている。
上記システムでは、装着装置の幅が規格化されていることに加え、装着装置の配置位置、配置方式も規格化されている。図20に、単位幅の装着モジュール12を8つ整列して配置可能なシステムベース574を示し、図21に、そのシステムベース174を例にとって、各種幅の装着装置の配置方式を説明するための概念図を示す。システムベース574には、単位幅の装着モジュール12が隣接して配置可能なように、互いに平行なレール列472が対となって構成されたレール対(前記基本的態様のシステムのものと同様の構成)が、互いに平行に8つ設けられている。レール対を構成する2つのレール列472の間隔は、いずれのレール対においても相等しく、また、8つのレール対は単位幅に等しいピッチで配設されている。
単位幅の装着モジュール12である場合には、図21(a)に示すように、装着モジュール12の車輪474が係合して配置される。これに対して、単位幅の約2倍の装着モジュール600が配置される場合は、図21(b)に示すように、互いに並ぶ2つのレール対の各々を構成する4つのレール列472のうちの外側の2つのレール列472に、装着モジュール600の車輪474が係合する。同様に、単位幅の約3倍の装着装置610が配置される場合は、図21(c)に示すように、互いに並ぶ3つレール対を構成する6つのレール列472のうちの外側の2つのレール列472に、装着装置610の車輪474が係合する。いずれの装着装置も、配線板搬送方向におけるモジュール幅を決定するところの装置の両側面のそれぞれが、隣り合うレール対どうしの略中央に位置するように車輪474が設けられることによって、規格化されており、いずれの装着装置を並べて配置しても、装置側面どうしが殆ど隙間のない状態で、隣り合う装着装置どうしを隣接させることが可能とされている。なお、モジュール幅が単位幅の約4倍以上の装着装置であっても、それが略整数倍の装着装置であれば、同様の方式で、隣接して配置させることが可能である。ここで説明した装着装置のいずれのものも、左右の外側に存在する2つのレール列472に車輪474が係合する構成とされているが、単位幅の2倍以上の装着装置の場合、装着装置の下部に存在する他のレール列472の一部またはすべてに車輪474が係合するような構成とすることもできる。
1つのレール対を構成する2つのレール列472の中間部には、先に説明したところの、装着装置固定装置を構成するストッパ482、付勢装置490が、それぞれ設けられている。詳しい説明は省略するが、単位幅の約2倍以上の装着装置の場合は、その装着装置の下方に複数のストッパ482、付勢装置490等が存在することになる。その場合、それら複数のストッパ482等のいずれか1以上のものによって、前後方向の配置位置を決定させればよい。
以上の説明から理解できるように、本システムは、相互隣接配置装置とされた装着装置の配置位置を決定する複数の配置位置決定装置を備えるものとされている。その配置位置決定装置は、配線板搬送方向における配置位置を決定する搬送方向位置決定部と、配線板搬送方向と交差する方向における配置位置を決定する交差方向位置決定部とを含むものであり、搬送方向位置決定部は、装着装置移動許容装置を構成する1対のレール列472を含んで構成され、また、交差方向位置決定部は、装着装置固定装置を構成するストッパ482を含んで構成されている。また、隣接装置群を構成する装着装置は、それらがすべて可動装置とされており、いずれの装着装置も配線板搬送方向に直交する方向に移動可能となっている。そられの装着装置は、互いに隣接して配置されているが、隣接するものとの干渉なくそれらのもののうちの1つ以上のものを容易に移動させることができるのである。なお、相互隣接配置装置とされた装着装置の各々には、前述した装置相互間相対移動制限装置を規格化して設けてもよい。
vi)補助的な作業を行う対基板作業装置を配置したシステム
これまでに例示した、装着システムは、装着装置のみをシステムベース上に配置して構成されている。それらの態様の他に、配線板の搬送、搬入、搬出、待機、ストック、搬送方向・経路の変更、配線板の向きの変更といった基板搬送関連作業のうちの少なくともいずれかの作業をを行う装置を、補助作業装置として、配置させることも可能である。図22に、主として配線板の搬送作業を行う搬送作業装置を装着装置の間に配置した態様の装着システムを示す。このシステムは、図1(d)に示すシステムにおいて、右から3番目の装着モジュール12に代えて、その位置に配線板の搬送作業を主目的とする搬送作業装置620を配置したものである。搬送作業装置620は、装着モジュール12に配備されている配線板搬送装置24を主たる配備装置とし、装着ヘッド26、ヘッド移動装置28、部品供給装置22等の配備装置を除外した装置である。このような搬送作業装置220は、例えば、装着モジュール12のいずれかが故障したとき等に便利に活用できる。その場合、配置されていた装着モジュール12に割当てられていた部品装着作業を他の装着モジュール12が分担する等すれば、システムの大幅な稼動ロスを回避できる。同じ装着モジュール12を予備として保有しておくことによっても稼動ロスを回避できるが、搬送作業装置620は装置構成が単純で装着モジュール12よりも低コストな装置であるため、設備全体のコストを低く抑えることができるというメリットもある。なお、搬送作業装置620は、故障等の場合だけでなく、システムベース上に装着装置が配置されない空きスペースができるようなシステムを構築する際に、その空きスペースを補完する装置として利用可能である。この搬送作業装置220のような基板搬送関連作業装置は、システムのフレキシビリティ、利便性の向上に役立つ装置となる。
vii)対基板作業の種類についてのバリエーション
これまでに例示したシステムは、部品装着作業を行うシステムであるが、他の種類の対基板作業を行うシステムを構築することもできる。図23に、対基板作業の種類が異なる各種対基板作業装置を配置した対基板作業システムを示す。本システムのシステムベース630は、2つのベースモジュールから構成されている。その1つは、単位幅の対基板作業装置を8つ隣接して配置可能なシステムベース574であり、他の1つは、単位幅の対基板作業装置を2つ隣接して配置可能なシステムベース10である。システムベース574が上流側(左側)に位置し、システムベース10が下流側(右側)に位置して、互いに隣接して配置されている。システムベース574上には、上流側から順に、配線板に対して高粘性塗布作業の1種であるクリームはんだ印刷作業を行うはんだ印刷装置632、別の高粘性塗布作業の1種である接着剤塗布作業を行う接着剤塗布装置634、先に説明した単位幅の2つの装着モジュール12および装着モジュール600、部品の装着結果の検査を行う装着結果検査装置636が、互いに隣接して配置されている。2つの装着モジュール12を除く他の装置は、単位幅の約2倍のモジュール幅を有する装置とされている。見方を変えれば、本システムは、(A)システムベース574とそれの上に配置されたはんだ印刷装置632、接着剤塗布装置634、2つの装着モジュール12および装着モジュール600とを含む第1の対基板作業構成体と、(B)システムベース10とそれの上に配置された装着結果検査装置636とを含む第2の対基板作業構成体とを含んで本システムが構成されているといえる。なお、第1の対基板作業構成体および第2の対基板作業構成体は、それぞれ単独で対基板作業システムとなるものである。
viii)その他
上記例示した各種の対基板作業システムへの配線板の搬入は、例えば、上流側の対基板作業装置に配備されている配線板搬送装置に、搬入機(例えば、搬入コンベア等を主体とする設備)をつなげ、その搬入機によって行えばよく、また、システムからの搬出は、、例えば、下流側の対基板作業装置に配備されている配線板搬送装置に、搬出機(例えば、搬出コンベア等を主体とする設備)をつなげ、その搬出機によって行えばよい。搬入装置、搬出装置をシステムが備える対基板作業装置の一種として、モジュール化する等して、システムベース上に配置することも可能である。また、上記対基板作業システムは、他のシステム、対基板作業機等とつなげて用いることで、実装ラインの一部を担うような態様で使用されてもよい。
<配線板の搬送>
図1に示すところの、モジュール幅が単位幅である装着モジュール12が互いに隣接して配置された態様の装着システムを例にとって、以下に、配線板の搬送について説明する。
i)システム搬送装置の構成
本態様の回路基板装着システムでは、複数の装着モジュール12は互いに隣接して配置される。配線板搬送装置24は、装着モジュール12のモジュール幅と略等しい幅(搬送長さであり配線板搬送方向における長さである)を有しており、複数の装着モジュール12が所定の配置位置に配置された場合、各装着モジュール12に配備された各配線板搬送装置24は、互いに隣接して位置する。また、配線板搬送装置24は、装着モジュール12内の一定位置に配備されおり、複数の装着モジュール12が所定の配置位置に配置された場合、各配線板搬送装置24は、一直線上に並ぶ状態となる。各配線板搬送装置24が連なって並ぶことにより、システム全体にわたって配線板を搬送する装置が構成される。その装置は、システムにおける基板搬送装置となるものであり、各配線板搬送装置と区別すべく、「システム搬送装置」と呼ぶことにする。このシステム搬送装置は、部分々々がモジュール化された搬送モジュールが連なって構成されたものと考えることができる。すなわち、各装着モジュール12に配備搬送装置として配備された配線板搬送装置24の1つずつが、システム搬送装置における搬送モジュールに相当するものとなる。また、各装着モジュール12は、搬送装置をも配備してモジュール化された装置であることから、搬送装置配備モジュール化装置と称することができる。なお、配線板搬送装置24の構成については、先の説明を参照することとし、ここでの説明は省略する。
本実施例の装着システムは、単位幅の装着モジュール12のみを配置したシステムである。先に説明したように、単位幅の2倍以上の略整数倍のモジュール幅を有する装着装置を配置したシステムも存在する。その場合でも、その装着装置に配備された配線板搬送装置を、上記モジュール幅に応じた幅のものとすれば、同様のシステム搬送装置を構成することができる。また、上記単位幅の2倍以上の略整数倍のモジュール幅を有する装着装置内に、単位幅の装着モジュール12において用いた配線板搬送装置24を、モジュール幅に応じた数だけ直列に並ぶように配備することによっても、同様のシステム搬送装置が得られる。
ii)配線板の存在位置の認識
上記システム搬送装置は、互いに隣り合う配線板搬送装置24が協働し合って配線板を移送するとともに、少なくとも配線板の一部分を装着モジュール12の作業領域の定められた作業位置に位置させるものである。例えば、互いの配線板搬送装置24のコンベア動作を協調させて搬送を行う。すなわち、搬送協調制御が行われるのである。搬送協調制御を行う前提として、配線板が現在どの位置に存在するかを把握する必要がある。本システム搬送装置は、各配線板搬送装置24の各々が、配線板検知器としての光電センサ160を備えており、その光電センサ160による検知結果に基づいて、配線板の存在位置が認識される。以下に、その配線板の存在位置の認識の方法について説明する。なお、前述したように(図4参照)、本例の装着システムでは、前記フロントコンベア部110とリアコンベア部112との両方による配線板の搬送が可能であるが、以下の説明は、理解の容易さを考慮して、フロントコンベア部110にのみ着目した説明とする。また、コンベア動作とは、配線板の搬送、停止等を目的とするコンベアルト142(図5参照)の周回の開始、周回の停止、周回速度の変更等を意味するが、説明を簡単にするため、単に、それらを、コンベアの始動、停止、速度変更と称することにする。
図24に、本態様のシステムにおいて、システム搬送装置を構成する配線板搬送装置24が複数並んだ状態を模式的に示す。図には、複数の配線板搬送装置24のうち4つのものの全体が示されており、それらの配線板搬送装置24は、上流側(左側)から順に番号付けして、装置〔X〕と呼ぶことにする。図では、上流側から順に装置〔1〕,装置〔2〕,装置〔3〕,装置〔4〕となる。基準レールとなるレール100(図4参照)の上流端部および下流端部には、配線板検知器(基板検知器の一種)としての反射型の光電センサ160がそれぞれ設けられている。光電センサ160(以下単に「センサ」という)は、配線板の検知信号を発することが可能なものであり、配線板搬送装置24の番号Xと関連付けて、それぞれ上流側のものをセンサ〔X〕U、下流側のものセンサ〔X〕Lと呼ぶことにする。ある装置〔X〕の上流側の装置〔X−1〕の下流側のセンサ〔X−1〕Lが、配線板150の下流側端がそのセンサ〔X−1〕Lの位置を通過することによって、ONの状態(検出状態)となる。それにより、その装置〔X〕に配線板350が入るものとして認識される。また、その装置〔X〕の下流側の装置〔X+1〕の上流側のセンサ〔X+1〕Uが、配線板150の上流側端がそのセンサ〔X+1〕Uの位置を通過することによって、OFFの状態(非検出状態)となる。それにより、その装置〔X〕から配線板150が出たものとして認識される。それらの認識結果により、ある装置〔X〕に配線板350の少なくとも一部が存在しているか否かの配線板有無情報が取得されるのである。配線板の存在の有無の管理は、対象となる装置〔X〕が配備されている装着モジュール12に配備された制御装置36によって行われ、上流側装置〔X−1〕のセンサからの認識信号および下流側装置〔X+1〕のセンサからの認識信号、配線板有無情報等は、それらの装置が配備されている装着モジュール12に配備された装着装置制御装置36との間でやり取りされる。
iii)1つの装着装置の装置領域内に収まる配線板の搬送
図25に、配線板の搬送方法の第1例を模式的に示す。本例の搬送方法は、配線板搬送装置24の幅よりも短い長さ(配線板搬送方向における長さ)の配線板、平たく言えば、1つの装着モジュール12の装置領域内に収まる大きさの配線板(実際には、装置の構造上、モジュール幅より所定の長さだけ短い配線板である)を、搬送するのに適した搬送方法である。まず、図25(a)に示す状態では、配線板150は、装置〔1〕の配線板搬送方向における中央の位置に固定して保持され、装置〔1〕を配備する装着モジュール12による部品装着作業に供されている状態である。その部品装着作業が終了した場合に、配線板の固定が解除される。続いて、装置〔2〕に配線板が存在しないことが確認された後、装置〔1〕のコンベアが始動する。配線板150が移動して図25(b)に示す位置に到達したときに、センサ〔1〕LがONとなり、装置〔2〕のコンベアが始動する。なお、装置〔1〕のコンベア速度と装置〔2〕のコンベア速度は等しくされている。続いて、図25(c)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔2〕UがONとなり、その時点を始点とする搬送距離の制御が開始される。搬送距離の制御は、前述の電動モータ344の回転量(回転角度)の制御によって行う。配線板350の長さは把握されており、配線板350の下流端を、センサ〔2〕Uの位置から設定された距離まで移動させるように、上記回転量が制御されるのである。この制御により、配線板150を任意の位置で停止させることが可能となる。なお、本例では、配線板150の中心が、配線板搬送方向における中心の位置に停止するように設定されている。次いで、配線板150が図25(d)に示す位置まで到達したときに、センサ〔2〕UがOFFとなり、装置〔1〕のコンベアが停止する。そして、図25(e)に示すように、上記設定された位置まで配線板350が到達した場合に、装置〔2〕のコンベアが停止するとともに、上記搬送距離の制御を終了する。この位置において、配線板150は固定されて保持され、装置〔2〕を配備する装着モジュール12による部品装着作業が開始される。
以上のような搬送を各配線板搬送装置24が順次繰り返し、配線板150は、各装着モジュール12を順次移動していく。多くの場合、各装着モジュール12は、並行して部品装着作業を実施しており、システム内に存在する配線板搬送装置24ごとに配線板150が存在している。したがって、実際の搬送においては、まず、下流側の配線板搬送装置24を空の状態(配線板150が存在しない状態)とし、その上流側から配線板を移送してその空の状態を埋めるという1つの搬送動作を、下流側から上流側に向かって順に行って、システム搬送装置に存在するすべての配線板150の搬送が行われる。なお、別の方法として、すべての配線板搬送装置24のコンベア動作を一斉に行って、システム搬送装置内の配線板を同時に搬送するようにしてもよい。また、システムのへの搬入(最上流に位置する配線板搬送装置への搬入)、システムからの搬出(最下流に位置する配線板搬送装置24からの搬出)も、システム外部のコンベア装置に前述の光電センサ160を設ける等して、上記と同様の方法で、協働して搬送動作を行わせることも可能である。また、上記光電センサ160の検知信号に基づき、あるいは、別の光電センサを設けてその光電センサの検知信号に基づいて、コンベアベルト142の周回速度を変更することで、配線板の移送速度を変更する態様の搬送協調制御を行わせることもできる。
iv)複数の装着装置に跨る配線板の搬送方法1
図26に、配線板の搬送方法の第2例を模式的に示す。本例の搬送方法は、配線板搬送装置24の幅よりも長い長さの配線板、すなわち、複数の装着装置に跨る大きさの配線板を搬送するのに適した搬送方法である。互いに隣り合う複数の装着モジュール12に跨る配線板を、それらの装着モジュール12が互いに協働して部品装着作業を行う場合に効果的である。本例では、2つの装着モジュール12に跨る大きさの配線板を搬送する場合について説明する。
まず、図26(a)に示す状態では、配線板150は、中心が装置〔1〕と装置〔2〕とのちょうど中間位置に位置して、それら両装置に固定して保持され、それらの両装置の各々を配備する2つの装着モジュール12による部品装着作業に供されている状態である。その部品装着作業が終了した場合に、両装置による配線板の固定が解除される。続いて、装置〔3〕および装置〔4〕に配線板が存在しないことが確認された後、装置〔1〕および装置〔2〕のコンベアが始動する。配線板150が移動して図26(b)に示す位置に到達したときに、センサ〔2〕LがONとなり、装置〔3〕のコンベアが始動する。続いて、図26(c)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔2〕UがOFFとなり装置〔1〕のコンベアが停止する。続いて、図26(d)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔3〕LがONとなり装置〔4〕のコンベアが始動する。次に、図26(e)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔4〕UがONとなり、その時点を始点とする搬送距離の制御(前述のものと同様の制御)が開始される。次いで、配線板150が図26(f)に示す位置まで到達したときに、センサ〔3〕UがOFFとなり、装置〔2〕のコンベアが停止する。そして、図26(g)に示すように、配線板150の中心が装置〔3〕と装置〔4〕との中間位置まで到達した場合に、装置〔3〕および装置〔4〕の2つのコンベアが同時に停止するとともに、搬送距離の制御を終了する。この位置において、配線板150は、固定されて保持され、装置〔3〕および装置〔4〕の各々を配備する2つの装着モジュール12による部品装着作業が開始される。
本例の搬送方法では、配線板150は、配線板搬送装置24の2つ分の幅だけ一度に送られる。多くの配線板がシステム内に存在する場合の搬送方法、システムへの配線板の搬入、システムからの配線板の搬出の方法、移送速度の変更等は、前述の第1例と同様に実施可能である。なお、先に例示したように、単位幅の約2倍のモジュール幅を有する装着装置がいずれかの位置に配置されている場合には、その部分について、上記2つの搬送方法から類推される同様の搬送方法(具体的な説明は省略する)を適用ればよい。本例の搬送方法が利用される場合において、本態様のシステムでは、装置〔1〕と装置〔2〕とが1つの作業装置群を構成しており、また、装置〔3〕と装置〔4〕とが別の1つの作業装置群を構成している。本例の搬送方法によれば、それら作業装置群を一単位とした配線板の搬送が実現される。この搬送形態を群単位搬送形態と称する。
iv)複数の装着装置に跨る配線板の搬送方法2
図27に、配線板の搬送方法の第3例を模式的に示す。本例の搬送方法は、前記第2例と同様、配線板搬送装置24の幅よりも長い長さの配線板、すなわち、複数の装着装置に跨る大きさの配線板を搬送するのに適した搬送方法である。互いに隣り合う複数の装着モジュール12に跨る配線板を、それらの装着モジュール12が互いに協働して部品装着作業を行う場合に効果的である。本例では、2つの装着モジュール12に跨る大きさの配線板を搬送する場合について説明する。
まず、図27(a)に示す状態では、配線板150は、中心が装置〔1〕と装置〔2〕とのちょうど中間位置に位置して、それら両装置に固定して保持され、それらの両装置の各々を配備する2つの装着モジュール12による部品装着作業に供されている状態である。その部品装着作業が終了した場合に、配線板150の固定が解除される。続いて、装置〔3〕に配線板が存在しないことが確認された後、装置〔1〕および装置〔2〕のコンベアが始動する。配線板150が移動して図27(b)に示す位置に到達したときに、センサ〔2〕LがONとなり、装置〔3〕のコンベアが始動する。続いて、図27(c)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔3〕UがONとなり、その時点を始点とする前述の搬送距離の制御が開始される。次いで、配線板150が図27(d)に示す位置まで到達したときに、センサ〔2〕UがOFFとなり、装置〔1〕のコンベアが停止する。そして、図27(e)に示すように、配線板150の中心が装置〔2〕と装置〔3〕との中間位置まで到達した場合に、装置〔2〕および装置〔3〕の2つのコンベアが同時に停止するとともに、搬送距離の制御を終了する。この位置おいて、配線板150は、固定されて保持され、装置〔2〕および装置〔3〕の各々を配備する2つの装着モジュール12による部品装着作業が開始される。
本例の搬送方法では、前記第2例と異なり、配線板150は配線板搬送装置24の1つ分ずつしか搬送されない。多くの配線板がシステム内に存在する場合の搬送方法、システムへの配線板の搬入、システムからの配線板の搬出の方法、移送速度の変更、単位幅の約2倍のモジュール幅の装着装置が配置されている場合の搬送等は、前述の第2例と同様である。本例の搬送方法が利用される場合において、本態様のシステムでは、装置〔1〕と装置〔2〕とが1つの作業装置群を構成しており、また、装置〔3〕と装置〔4〕とが別の1つの作業装置群を構成している。また見方を変えれば、装置〔2〕と装置〔3〕とが1つの作業装置群を構成しているともいえる。本例の搬送方法によれば、それら作業装置群を一単位とした配線板の搬送ではなく、作業装置群を構成する1つの装着装置を一単位としたの送りが実現される。すなわち装着装置ごとに順送りされるのである。この搬送形態を装置単位搬送形態と称する。本態様のシステムでは、この装置単位搬送形態と、前述の群単位搬送形態とを、本システムの作業形態に応じて、選択的に採用することが可能とされている。
<複数の装着装置による協働作業>
図1に示すところの、モジュール幅が単位幅とされた装着モジュール12が互いに隣接して配置された態様の装着システムを例にとって、以下に、複数の装着装置による協働作業について説明する。本システムは、複数の装着モジュール12が、隣接して配置されており、それらののうちの隣り合う複数のものの装置領域に跨って位置する配線板に対して、それら複数のものが、協働して部品の装着を行うことができる。装着モジュール12は、いずれも同じ構成の装置であり、いずれの装着モジュール12に跨る配線板に対しても、その装着モジュール12と隣り合ういずれの装着モジュール12との間で協働作業が可能である。以下の説明は、2つの装着モジュール12に跨る配線板への部品装着に関して行うが、特に、通常の装着ヘッド26の移動動作において存在するところの、2つの装着モジュール12の境界部分に位置する配線板の装着領域におけるデッドゾーンを解消するための、装着ヘッド26の移動動作を中心に行う。なお、装着ヘッド26およびヘッド移動装置28の構成とその動作については、図10,図11を用いて行った前述の説明を、適宜参照するものとする。
i)装置領域を超えない装着ヘッドの移動と特定領域
図28に、1つの装着装置を着目対象装置とし、それの一方の側に隣接する装着装置を並設装置として、2つの装置の装着ヘッド等の動作を模式的に示す。図において、左側の装着モジュール12が着目対象装置であり、右側の装着モジュール12が並設装置である。着目対象装置を装置〔M〕とし、並設装置を装置〔N〕とする。配線板は、配線板搬送方向における中心が装置〔M〕と装置〔N〕との中央に位置する位置に保持されている。なお、装置〔M〕と装置〔N〕は、各々の第1Xスライドの移動方向であるX軸方向、つまり各々の装置における特定方向が互いに同じ方向となるように配置されている。
先に説明したように、ヘッド移動装置28は、第2軌道形成部である第1Xスライド242を、第1軌道上のST1〜ST4のいずれかのステーションに停止させた状態で、装着ヘッド26を移動させる。図11に示すように、第1Xスライド242がST2およびST3に位置する場合は、装着ヘッド26ないし第1Xスライド242は、自身の装置領域から進出しない。したがって、1つの配線板を自身の装置領域内に収めて部品装着作業を行う場合には、通常、第1Xスライド242をST2またはST3に位置させて装着ヘッド26移動させることで、部品を装着が可能である。
図28(a)は、装置〔M〕の第1Xスライド242をST2に位置させ、装置〔N〕の第1Xスライド242をST3に位置させた状態を示している。この状態では、互いの装着ヘッド26を第2軌道上のいずれの位置に位置させたとしても、両装置の装着ヘッド26ないし第1Xスライド242は、互いに干渉することはない。(以下、これら干渉の可能性のある装着装置の構成部分を「装着ヘッド等」と略す。)ところが、この状態では、配線板の装着領域(部品が装着される部品装着位置に関する領域)内において、両装置の装着ヘッド26のいずれもが装着不可能なデッドゾーンとなる特定領域666(図における斜線の領域)が存在する。この特定領域666の存在により、上述した通常の装着ヘッド26の移動動作では、満足な協働作業ができない。
ii)装置領域を超える装着ヘッドの移動と干渉回避制御
そこで、本システムでは、装置〔M〕および装置〔N〕の両者のヘッド移動可能領域すなわち作業領域を拡大すべく、互いに相手の装置領域への装着ヘッド26の進出を可能とし、互いに相手側の装着ヘッド26の自身の装置領域への進出を許容している。この際、両装置の作業ヘッド等の干渉を避けつつ、互いの装着ヘッド26移動させる干渉回避制御が行われる。着目対象装置である装置〔M〕についていえば、具体的には、図28(b)に示すように、並設装置である装置〔N〕の第1Xスライド242がST2に位置するときに、装置〔M〕の第1Xスライド242をST1に位置させることで、互いの装着ヘッド等の干渉を避けつつ、装置〔M〕による特定領域666への部品の装着を可能としている。また、逆に、図28(c)に示すように、装置〔N〕の第1Xスライド242がST4に位置するときあるいは位置しようとするときには、装置〔M〕の第1Xスライド242をST3に位置させることで、互いの装着ヘッド等の干渉を避けつつ、装置〔N〕による特定領域666への部品の装着を可能としている。
さらに詳しく説明すれば、以下のようになる。一方の装置の装着ヘッド26が第2軌道上のいずれの位置に位置させられるときであっても、その一方の装置の作業ヘッド等が他方の装置の装置領域に進出しない状態となる範囲において、その一方の第1Xスライド242が位置させられる第1軌道上の限界位置が、一方の装置についての非進出限界位置として定められている。そして、装置〔M〕のST1,装置〔N〕のST4は、両装置の関係において、その非進出限界位置を超えて設定された停止位置である進出停止位置として設定されている。また、他方の装置の作業ヘッド等が一方の装置の装置領域内に最も進出する状態において、その一方の装置の作業ヘッド26が第2軌道上のいずれの位置に位置させられるときであっても、一方の装置の作業ヘッド等と他方の装置の作業ヘッド等とが互いに干渉しない状態となる範囲において、一方の装置の第1Xスライド242が位置させられる第1軌道上の限界位置が、一方の装置についての非干渉限界位置として定められている。そして、装置〔M〕のST3,装置〔N〕のST2は、両装置の関係において、非干渉限界位置を超えない位置に存在する1つ以上の非干渉停止位置として設定されている。
干渉回避制御は、主に、第2軌道形成部である第1Xスライド242の位置を制御することにより行われる。着目対象装置である装置〔M〕についていえば、装置〔N〕の第1Xスライド242が非干渉限界位置を超えない位置に位置する状態となる場合において、装置〔M〕の第1Xスライド242が非進出限界位置を超えて位置することを許容される。つまり、装置〔M〕の第1Xスライド242が、進出停止位置であるST1に停止することを許容されるのである。また、装置〔N〕の第1Xスライド242が非進出限界位置を超えた位置に位置する状態となる場合において、装置〔M〕の第1Xスライド242が非干渉限界位置を超えて位置することを禁止される。つまり、装置〔M〕の第1Xスライド242が、非干渉停止位置であるST3に停止させられるのである。並設装置である装置〔N〕についても、装置〔M〕との関係において同様の制御が行われる。このようにして、本態様のシステムでは、干渉回避制御において、第1Xスライド242位置の制御、すなわち第2軌道形成部の位置制御が行われている。
本態様のシステムでは、着目対象装置である装置〔M〕の図における左側にも装着モジュール12が配置される場合もある。その場合、その左側の装着モジュール12との間で、上記干渉回避制御を行うようにされている。左側の装着モジュール12との関係においては、装置〔M〕に設定されているST4が、上記進出停止位置とされており、ST2が上記非干渉停止位置とされている。干渉回避制御は、隣合う一方の装着モジュール12との間でのみ行うものであってもよく、隣合う両側の装着モジュール12との間で、同時期に行うものであってもよい。
<複数の装着装置に跨る配線板についての作業形態>
図1に示すところの、モジュール幅が単位幅とされた装着モジュール12が互いに隣接して配置された態様の装着システムを例にとって、以下に、複数の装着装置に跨る配線板に部品装着作業を行う際の作業形態について説明する。
i)配線板と作業装置群
図29に、部品装着作業に供される配線板を模式的に示す。図に示す配線板150は、2つの装着モジュール12に跨る大きさのものであり、説明を簡単にするために、2種の部品690が装着されるものとする。2種の部品のうちの1種のものを部品aとし、便宜的に、配線板150の左側より順に部品a1〜a9と番号付けする。同様に、もう1種の部品を、部品bとし、便宜的に、配線板150の左側より順に部品b1〜b8と番号付けする。配線板150の被作業領域である装着領域を略中央で2つに分ければ、部品a1〜a5および部品b1〜b4が左側の部分領域694に、部品a6〜a9および部品b5〜b8が右側の部分領域694に位置している。なお、部品a5,a6および部品b4,b5は、前述の特定領域666に装着される。装着システムは、複数の装着モジュール12のうち、互いに隣接する2つのもので構成される作業装置群を構成する。装着モジュール12の配置数により、当該システムが有する作業装置群の数が異なるが、説明は、そのうちの1つの作業装置群について行う。したがって、上記部品690は、その1つの作業装置群において装着されることとする。本装着システムは、2つの作業形態を選択可能とされており、上記のことを前提として、それら2つの作業形態を順に説明する。
ii)一括作業制御による作業形態
図30に、2つの作業形態のうちの1つの作業形態を模式的に示す。図において、配線板は、上流側である左側から、下流側である右側に向かって搬送される。作業装置群を構成する2つの装着モジュール12を、それぞれ、上流側のものを装置〔A〕、下流側のものを装置〔B〕とする。なお、装着装置は、コンベアのみが図示され、他の部分は省略されている。本作業形態では、配線板150は、作業装置群を一単位として搬送される。詳しくは、装置〔A〕および装置〔B〕に先の配線板150が存在しない状態において、配線板150が、装置〔A〕の上流側より移送され、中心が装置〔A〕と装置〔B〕との中間位置に停止させられ、その位置において部品690の装着がなされた後、装置〔A〕および装置〔B〕にその配線板150が存在しなくなるように装置〔B〕の下流側に移送されるのである。具体的には、先に説明した配線板の搬送形態のうちの群単位搬送形態での搬送が行われる。なお、ここで説明する作業形態を、一括作業形態とよび、その形態の作業を実行するためのの制御を一括作業制御と呼ぶ。
図30(a)は、部品690が装着される前の状態を、図30(b)は、部品690が装着された後の状態を示している。本作業形態では、前述の左側の部分領域694に対して、装置〔A〕によって、部品a,部品bがともに装着され、右側の部分領域696に対して、装置〔B〕によって、部品a,部品bがともに装着される。具体的には、装置〔A〕によって部品a1〜a5,部品b1〜b4が、装置〔B〕によって部品a6〜a9,部品b5〜b8が、それぞれ装着される(図29参照)。なお、特定領域666に対する部品の装着は、前述の進出制御および干渉回避制御によって装着ヘッド26を移動させることにより行われる。このように行われる本作業形態においては、装置〔A〕,装置〔B〕のそれぞれに定められた部品装着作業は、一定の作業とされている。つまり、装置〔A〕,装置〔B〕ともに、各々が作業する配線板150の装着領域および装着する部品690が、装置ごとに一定とされている。
なお、上記一括作業形態においては、部分領域を694,696を、1つのパターンとして設定している。これに代えて、部分領域を、装着する部品の種類等に応じた複数のパターンとすることも可能である。つまり、例えば、部品690の種類にごとに、各装置が作業する装着領域を変更するといった態様で、部品装着作業を行うこともできる。一括作業形態では、各種類の部品690が配線板の装着領域の全域にわたって装着される場合に、複数の装着モジュール12ごとに各種類の部品を準備しなければならない。つまり、同じ種類の部品690を供給するテープフィーダ20を、各装着モジュール12が備える部品供給装置22に配備しなければならい。このことは、若干のデメリットとなるが、次に説明する作業形態と比較して、本作業形態は、配線板の搬送のための時間を短縮でき、迅速な部品装着作業を行い得るというメリットがある。
iii)順送作業制御による作業形態
図31に、2つの作業形態のうちの別の1つの作業形態を模式的に示す。配線板の搬送方向、作業装置群およびそれを構成する装着モジュール12に関する名称は、上記一括作業形態と同様である。本作業形態では、配線板150は、作業装置群を構成する装着装置ごとに順送りに搬送される。詳しくは、まず、配線板150は、上流側から移送され、装置〔A〕の装置領域内に配線板150の下流側の略半分が収まる位置に停止させられる。その位置においてその配線板150に対する装置〔A〕による部品690の装着が終了後、その配線板150は移送され、中心が装置〔A〕と装置〔B〕との中間位置となる位置に停止させられる。次に、その位置において、装置〔A〕と装置〔B〕とによるその配線板150に対する装着が終了後、その配線板150は移送され、装置〔B〕の装置領域内に配線板150の上流側の略半分が収まる位置に停止させられる。その位置において装置〔B〕によるその配線板150への装着が終了した後、その配線板150は装置〔B〕の下流側に移送されるのである。具体的には、先に説明した配線板の搬送形態のうちの装置単位搬送形態での搬送が行われる。実際には、いくつかの配線板150が連なって搬送されており、装置〔A〕の装置領域内に配線板150の下流側の略半分が位置するときに、装置〔B〕の装置領域内に先の配線板150の上流側の略半分が位置させられる。図31(a),(b)は、その状態を示しており、図31(c),(d)は、配線板150が、その中心が装置〔A〕と装置〔B〕との中間位置となる位置に停止している状態を示している。なお、ここで説明する作業形態を、順送作業形態とよび、その形態の作業を実行するためのの制御を順送作業制御と呼ぶ。
図31(a),(c)は、部品690が装着される前の状態を、図30(b),(d)は、部品690が装着された後の状態を、それぞれ示している。1つの配線板150に対する作業を順に説明すれば、以下のようになる。まず、図31(a),(b)に示すように、配線板150の右側の部分領域696に対して、装置〔A〕によって、部品a6〜a9が装着される(部品番号は図29参照のこと、以下同様)。このとき、特定領域666への部品a6の装着は、前述の進出制御および必要な場合には干渉回避制御によって行われる。次に、配線板150が1つの装置分搬送された後、図31(c),(d)に示すように、配線板150の左側の部分領域694に対して、装置〔A〕によって、部品a1〜a5の装着が行なわれ、右側の部分領域696に対して、装置〔B〕によって、部品b5〜b8の装着が行われる。特定領域666への、部品a5および部品b5の装着は、一括作業形態の場合と同様、前述の進出制御および干渉回避制御によって装着ヘッド26を移動させることにより行われる。そして、さらに配線板150が1つの装置分搬送された後、図31(a),(b)に示すように、配線板150の左側の部分領域694に対して、装置〔b〕によって、部品b1〜b4が装着される。同様に、特定領域666への部品a6の装着は、前述の進出制御および必要な場合には干渉回避制御によって行われる。なお、このとき、装置〔A〕において、次の配線板150の右側の部分領域696に対する装着が行われる。
前述の一括作業形態では、装置〔A〕,装置〔B〕のそれぞれに定められた部品装着作業は、一定の作業とされている。これに対して、本作業態様では、装置〔A〕,装置〔B〕ともに、配線板150に対する部品装着作業が都度変更される。すなわち、本態様では、両装置とも、異なる2つの部品装着作業が順次繰り返されるように変更される。その2つの部品装着作業は、対象となる配線板150の装着領域も順次変更され、それに応じて、その領域に装着される部品690の種類およびその装着位置も異なるのである。(注:本例では、簡略化のため、2種の部品のみを示しており、1つの装着装置が1種のの部品しか装着しない。そのため、見かけ上、装着装置ごとに同種の部品を装着しているが、そのことをもって、装着される部品が同じとされるものではない。)なお、部分領域を1つのパターンとせずに、複数のものに変更しつつ作業を行うことは、前記一括作業形態の場合と同様に可能である
本作業形態では、装置〔A〕と装置〔B〕との関係において、装置〔A〕のみが部品aを装着し、装置〔B〕のみが部品bを装着するようにされている。したがって、部品aを装置〔A〕に準備する必要がなく、また、部品bを装置〔A〕に準備するする必要がない。すなわち、部品aを供給するテープフィーダ20を装置〔A〕の部品供給装置22にのみ配備し、部品bを供給するテープフィーダ20を装置〔B〕の部品供給装置22にのみ配備する態様のシステムを構築することができるのである。このことは、システムが備えるテープフィーダ20の数の減少につながり、システム自体の配線板搬送方向における幅の減少,コストの低減を可能にする。
<装着システムの制御に関する機能ブロック>
以上、装着システムにおける部品装着作業についてのいくつかの形態と、それに応じた装着モジュール12を中心とした動作とについて説明した。上記装着システムは、先に説明したように、制御装置として、システム全体を統括して制御するシステム制御装置376と、各々の装着モジュール12に備えられた対基板作業装置制御装置としての装着装置制御装置36とを含んでいる。上記装着システムは、分散型の制御が行われ、主として、各装着装置制御装置36が、互いに情報,信号等を通信にてやり取りして、各装着モジュール12の制御を行うことで、システム全体が制御される。そこで、制御の中心的存在である装着装置制御装置36に関しての機能を、以下に説明する。
図32に、装着装置制御装置36の機能ブロック図を、本発明に関係の深い部分について示す。装着装置制御装置36は、装着モジュール12に配備された種々の配備装置等の制御を行う種々の制御部を有する。その1つとして、装着ヘッド26の移動制御すなわちヘッド移動装置28の制御を行うヘッド移動制御部710が存在する。ヘッド移動制御部710は、軌道部停止ヘッド制御部712と、進出制御部714と、干渉回避制御部716とを有しており、その中の干渉回避制御部716は、第2軌道形成部位置制御部718を有している。それぞれは、前述した装着ヘッド26の移動に関する様々な制御を行う部分であり、それぞれを簡単に説明すれば、軌道部停止ヘッド制御部712は、第2軌道形成部である第1Xスライド242を第1軌道上の所定の停止位置に停止させたままで装着ヘッド26を移動させる制御を行う部分であり、進出制御部714は、第1Xスライド242を自身の装置領域外に進出させて装着ヘッド26を装置領域外にさせる制御を行う部分である。干渉回避制御部716は、隣り合う装着モジュール12作業ヘッド等と自らの作業ヘッド等が干渉しあわないように制御する部分であり、第2軌道形成部位置制御部は718、干渉回避制御において、第1Xスライド242の位置を制御する部分である。これらの各制御部が奏合して、装着ヘッド26の移動を司っている。
また、装着装置制御装置36は、基板搬送モジュールとしての配線板搬送装置24を制御する配線板搬送制御部720を備えている。配線板搬送装置24は、コンベアを主体とするものであり、各配線板搬送装置24が協調して動作することにより、基板搬送装置としてのシステム全体にわたるシステム搬送装置が動作させられるのである。具体的には、先に説明したように、各コンベアの始動・停止等を協調させる搬送協調制御を行う。この搬送協調制御を行う部分が、配線板搬送制御部720が有する基板搬送協調制御部としての配線板搬送協調制御部722である。
上記装着システムでは、先に説明したように、複数の装着モジュール12に跨る配線板に対して、作業形態を選択し得る。その1つの作業形態として、一括作業形態があり、装着装置制御装置は36は、一括作業制御を行う場合の制御部として、一括作業制御部724を有している。この一括作業制御部724は、ヘッド移動制御部710および配線板搬送制御部720を統括して制御する部分として存在する。同様に、もう1つの作業形態として、順送作業形態があり、順送作業制御を行う場合の制御部として、順送作業制御部726を有している。 順送作業制御部726も、同様に、ヘッド移動制御部710および配線板搬送制御部720を統括して制御する部分として存在する。そしてさらに、装着装置制御装置36は、一括作業制御と順送作業制御とのいずれを行うかを選択し、その選択した方の制御を実行させる部分として、作業形態選択制御部728を有している。
本装着システムにおいては、装着モジュール12等の各々は、前述のように、部品供給部22が供給装置取付部27を有し、フィーダ型供給装置23とトレイ型供給装置25とを選択的に取付け可能である他、ヘッド取付部750(図6参照)を備え、複数種類の装着ヘッド26を選択的に取付け可能である。また、前記吸着ノズル288はノズル収容装置752に収容されており、複数種類のノズル収容装置752を装着モジュール12等の各々に設けられた収容装置取付部754(図43参照)に選択的に取付け可能である。本実施形態においては、部品フィーダ20,後述するトレイ810,部品供給装置23,25,装着ヘッド26,ノズル収容装置752が変更可能な構成であり、それらの少なくとも一つの変更により装着モジュールの構成が変更される。装着モジュール12等は、これら構成変更の可能な部分以外の構成を互いに同じくする。以下、供給装置23,25、装着ヘッド26およびノズル収容装置752のそれぞれの取付けを説明する。
<部品供給装置の取付け>
供給装置取付部27を説明する。
供給装置取付部27は、図33に示すように、前記フレーム部14に設けられており、フレーム14部の左右方向(X軸方向)に隔たった2箇所にそれぞれ設けられた一対の取付部材としての取付台760を有する(図33には1つのみ図示されている)。取付台760は、図34および図35に示すように、前後方向(Y軸方向)に長く、前後方向に延びる案内溝762が設けられている。
また、供給装置取付部27の左右方向の中間部には、フィーダ型供給装置23の前記フィーダパレット29を着脱可能に固定する固定装置766(図34参照)が設けられている。固定装置766は、本実施形態においてはエアシリンダ768を駆動源とし、そのピストンロッド770は、エアシリンダ768へのエアの供給によって、前後方向に伸縮させられるとともに回転させられる。それにより、ピストンロッド770に固定して設けられた係合部材772が前進,後退させられつつ、ピストンロッド770の軸線まわりに正方向あるいは逆方向に回動させられ、図34に示すように、係合部材772の自由端部に設けられた係合部774がフィーダパレット29の後述する係合部に係合してフィーダパレット29を供給装置取付部27に固定する作用位置と、係合部から外れてフィーダパレット29の固定を解除する解除位置とに移動させられる。
フィーダ型供給装置23は、フィーダパレット29において供給装置取付部27に取り付けられる。フィーダパレット29には、図35に示すように、フィーダ搭載部ないしフィーダ取付部としての複数のスロット780が等間隔に設けられ、フィーダ20が取り付けられるようにされている。フィーダ20は、供給する部品の寸法に応じて幅が複数種類に異ならされており、スロット780は、幅が最も狭いフィーダ20に合わせた間隔で設けられている。したがって、幅が広いフィーダ20は、スロット複数分のスペースを使ってフィーダパレット29に取り付けられる。
フィーダパレット29にはまた、図34および図35に示すように、その左右方向に隔たった両側にそれぞれ取付部784が設けられている(図34および図35には1つのみ図示されている)。これら取付部784にはそれぞれ、複数の案内ローラ786が水平軸線まわりに回転可能に設けられ、案内ローラ786より外側に別の案内ローラ788が垂直軸線まわりに回転可能に設けられるとともに、案内ローラ786より内側に複数の係合ローラ790が垂直軸線まわりに回転可能に設けられている。
一対の取付部784にはそれぞれ、図34に示すように、その後部から下方に延び出させられた脚部794が設けられるとともに、上下方向に隔たった2箇所にそれぞれ、係合部796が突設されている。フィーダパレット29にはさらに、その左右方向の中央部に前記固定装置766の係合部材772が係合する係合部798(図34参照)が設けられている。
フィーダ型供給装置23において複数のフィーダ20は、フィーダパレット29に対して個々に取付け,取外しし、フィーダパレット29に搭載されるフィーダ20を変更することができる。また、フィーダパレット29をフィーダ20が搭載されたままの状態で供給装置取付部27に対して取付け,取外しすることができる。フィーダ型供給装置23を装着モジュール12に対して取付け,取外しすることができるのであり、この取付け,取外しは、本装着システムにおいては、図33に示すように、台車800を用いて行われる。
台車800は、図33(a)に示すように、左右方向の両側においてそれぞれ前方に延び出させられた一対の把持部としての把持アーム802を有する。フィーダ型供給装置23は、装着システムの稼動中であって、装着モジュール12に取り付けられた状態では、台車800から降ろされ、フィーダパレット29の前記一対の取付部784に設けられた案内ローラ786が取付台760の案内溝762に嵌合されて下方から支持されるとともに、係合ローラ790が取付台760の側面に係合した状態で固定装置766によって供給装置取付部27に固定されている。
フィーダ型供給装置23を装着モジュール12から取り外す際には、図33(b)に示すように、台車800が前進させられ、把持アーム802がフィーダパレット29の係合部796に係合させられて台車802がフィーダ型供給装置23を保持する。そして、固定装置766による固定が解除された状態で、図33(c)に示すように台車800が後退させられれば、フィーダ型供給装置23が供給装置取付部27から外される。
フィーダ型供給装置23を装着モジュール12に取り付ける際には、フィーダ型供給装置23を保持した台車800を前進させ、案内ローラ786を案内溝762に嵌合させるとともに、案内ローラ788と複数の係合ローラ790とによって取付台760を挟ませてフィーダ型供給装置23を前進させ、取付台760に支持させる。そして、フィーダ型供給装置23が所定の位置まで前進させられた状態において固定装置766にフィーダパレット29を取付台760に固定させ、フィーダ型供給装置23をフレーム部14に固定させる。
<トレイ型供給装置の構成の説明>
トレイ型供給装置25を図36ないし図39に基づいて説明する。
トレイ型供給装置25は、図37に示すように、トレイ810と、トレイ810が収容される多段ラック812とを含む。トレイ810は、例えば、部品収容部としての複数の収容凹部(図示省略)を有し、各収容凹部にそれぞれ部品が位置決めして収容される。トレイ810には一種類ずつの部品が収容される。トレイ810は、トレイ保持部としてのトレイパレット814に収容されて多段ラック812に保持される。多段ラック812には2本を一対とするパレット支持部材としてのレール816が複数対、上下方向に等間隔に設けられており、複数の棚818が上下方向に設けられ、トレイパレット814を多段に収容することが可能である。部品の大きさによっては、トレイパレット814の深さが大きく、棚複数分のスペースによって一つのトレイパレット814を収容することも可能である。トレイパレット814には少なくとも一つのトレイ810が重ねて収容される。ここでは、トレイパレット814にはトレイ810が一つ、収容されていることとする。
本トレイ型供給装置25は、台車820に搭載されたままの状態で装着モジュール12に取り付けられて部品を供給する。そのため、台車850には、多段ラック812に収容された複数のトレイパレット814のうちの一つを高さ方向において予め設定された部品供給位置に位置決めし、トレイ810を位置決めするトレイ位置決め装置822(図37参照)と、部品供給位置に位置決めされたトレイパレット814を多段ラック812から引き出して装着ヘッド26によるトレイ810からの部品の受取りを可能とする部品渡し位置と、多段ラック812内に収容された収容位置とに移動させるトレイ移動装置824(図38および図39参照)とが設けられている。トレイ移動装置824はトレイパレット移動装置でもある。
トレイ位置決め装置852は、図39に示すように、駆動源としての電動モータ840,装置本体842に垂直軸線まわりに回転可能に設けられた一対のねじ軸844および多段ラック812に固定の一対のナット846を含み、ねじ軸844が電動モータ840によって回転させられることにより、多段ラック812が案内部材としての複数のガイドレール848(図38に1個が代表的に図示されている)により案内されて昇降させられる。トレイ位置決め装置852はトレイ昇降装置でもある。
トレイ移動装置854は、図36,図38および図39に示すように、トレイ位置決め装置822から前方へ突出して設けられたコンベア844を有する。コンベア844は、本実施形態においてはベルトコンベアとされており、図38および図39に示すように、一対のコンベアベルト846を有する。これら一対のコンベアベルト846はそれぞれ、一対の支持部材848にそれぞれ設けられた複数のプーリ850に巻き掛けられている。これらコンベアベルト846およびプーリ850はそれぞれ、タイミングベルトおよびタイミングプーリとされている。複数のプーリ850の一つである駆動プーリ850が駆動源としての電動モータ852によって回転させられることによりコンベアベルト846が長手方向に移動させられ、一対のコンベアベルト846に両端部が固定された移動部材854が前後方向に移動させられる。移動部材854の移動は、移動部材854に設けられた被案内部材としての案内ローラ856および支持部材848に設けられたガイドレール858によって案内される。
移動部材854には、図38に示すように、トレイパレット814を把持する把持装置864が設けられている。把持装置864は、一対の把持部材866および把持部材駆動装置868を備え、一対の把持部材866は、移動部材854の移動により、トレイパレット814の前部に突設された被把持部872の下方に進入させられた状態で把持部材駆動装置914により駆動され、各把持部材866にそれぞれ設けられた一対の爪部870によって被把持部872を把持する。その状態で移動部材854がコンベア844によって移動させられれば、トレイパレット814が移動させられ、多段ラック812から引き出されて部品渡し位置へ移動させられ、あるいは多段ラック812内に戻される。
トレイパレット814は、その左右方向の両縁部がそれぞれ、コンベアベルト846によって下方から支持されるとともに、図39に示すように、前記一対の支持部材848にそれぞれ設けられた複数ずつのクランプ部材872(図39には一方のクランプ部材872のみが図示されている)によって左右方向において位置決めされて移動させられる。一方の支持部材848に設けられた複数のクランプ部材872は、図39に示すように可動クランプ部材とされ、付勢装置としてのばね874の付勢によりトレイパレット814の前後方向に延びる側面に係合する向きに付勢され、他方の支持部材848に設けられた複数のクランプ部材872は、図示は省略するが、固定のクランプ部材872とされている。したがって、トレイパレット814は移動部材854に把持されて移動させられるとき、複数の可動のクランプ部材872がトレイパレット814を押して固定のクランプ部材872に押し付け、左右方向から挟んで位置決めする。
コンベア844の一対の支持部材848にはそれぞれ、図36に示すように、取付部880が設けられている。これら取付部880は、前記フィーダ型供給装置23のフィーダパレット29に設けられた取付部784と同様に構成されており、トレイ移動装置824が前記供給装置取付部27の取付台760に固定されることにより、トレイ型供給装置25がフィーダ型供給装置23と同様に供給装置取付部27に固定される。トレイ型供給装置25は台車820の前進,後退により装着モジュール600に接近,離間させられて、取付部880において供給装置取付部27に取付け、取外しされ、部品供給時には台車820に搭載されたままの状態で供給装置取付部27に固定される。
このようにフィーダ型供給装置23およびトレイ型供給装置25はいずれも、フレーム部14に設けられた供給装置取付部27に共通に取付け,取外しされ、例えば、装着モジュール600においてフィーダ型供給装置23とトレイ型供給装置25とを容易に交換し、変更することができる。例えば、台車800にフィーダ型供給装置23を保持させて供給装置取付部27から外し、台車820に搭載されたトレイ型供給装置25を供給装置取付部27に取り付けるのである。
本装着システムにおいて配線板150に装着される部品は、上記のようにフィーダ型供給装置23あるいはトレイ型供給装置25によって供給される。フィーダ型供給装置23によって供給される部品であるフィーダ供給部品は小さいことが多く、トレイ型供給装置23によって供給される部品であるトレイ供給部品は比較的大きい。
<装着ヘッドの構成、脱着方法等>
本実施形態において、装着ヘッド26は、装着ヘッド移動装置28に対して着脱可能とされ、互いに構成の異なる複数のものの中から選択して装着可能とされる。つまり、部品装着部は、装着ヘッド26を種類の違うものに交換することが可能とされているのである。図40に、装着可能な装着ヘッド26の一例として、3つの装着ヘッド26A,26B,26Cを示す。
3つの装着ヘッド26A,26B,26Cを簡単に説明する。図40(a)に示す装着ヘッド26Aは、先に図9に基づいて説明した装着ヘッドであり、比較的小形の部品の高速実装に適した装着ヘッド26である。装着ヘッド26はフィーダ20により供給される部品であって、そのうちでも小さい部品を装着し、装着可能な部品の種類は少ないが、装着能率が高い装着ヘッドである。以下、装着ヘッド26Aを高能率装着ヘッド26Aと称する。なお、装着ヘッド26Aにおいて複数、例えば8個の吸着ノズ288はそれぞれ、ノズルホルダ290によって着脱可能に保持されているが、この保持の構成は、例えば、特開平11−220294号公報に記載の吸着ノズルと同様とされており、ノズルホルダ290とノズル収容装置752に収容された吸着ノズル288との軸方向に相対移動に基づいて吸着ノズル288がノズルホルダ290により機械的に保持され、あるいは保持が解除される構成とされている。
図40(b)に示す装着ヘッド26Cは、ノズルホルダ290を1つ備えた装着ヘッド26であり、フィーダ20の上方および配線板の上方において、ノズル付ホルダ291を下降させ、フィーダ20と配線板150の1往復において、1つの部品が装着されるようにされている。装着ヘッド26Cは、ノズルホルダ290がホルダ昇降装置およびホルダ自転装置によってそれぞれ昇降および回転させられるが、高能率装着ヘッド26Aが備えるところのホルダ保持体回転装置298を有していない。装着ヘッド26Cは、装着速度は比較的遅いものの、比較的大きな吸着ノズル288をも装備することができ、大きな部品、特殊形状の部品の実装が可能であり、装着可能な部品の種類は多いが装着能率の低い汎用性に優れた装着ヘッド26である。以下、装着ヘッド26Cを汎用装着ヘッド26Cと称する。汎用装着ヘッド26Cは、フィーダ20により供給される部品もトレイ810により供給される部品もすべて装着可能である。なお、汎用装着ヘッド26Cにおいて吸着ノズル288はノズルホルダ290によって着脱可能に保持されているが、例えば、特許第2824378号公報に記載されているように、ノズルホルダ290は負圧によって吸着ノズル288を吸着して保持するものとされている。
図40(b)に示す装着ヘッド26Bは、2つのノズルホルダ290を有する装着ヘッドであり、装着ヘッド26Aと装着ヘッド26Cとの中庸的な特性を有する装着ヘッド26である。装着ヘッド26Bは、ノズルホルダ290が2つあってそれらが単独で昇降可能とされているため、ホルダ昇降装置を2つ有している。また、2つのノズルホルダ290は共通の回転装置により回転させられる。
なお、2つのノズルホルダ290のうち、前方側のノズルホルダ290は、そのノズルホルダ290の軸線に直角な軸線まわりに放射状に配置された複数の吸着ノズル288を保持し、それら吸着ノズル288は、その軸線まわりに回転させられることによって、使用されるノズルが選択される構造とされている。そのため、装着ヘッド26Bには、一方のノズルホルダ290において、吸着ノズル288を選択するためのノズル選択装置が設けられている。この構成は、特開平6−342998号公報に記載されており、説明を省略する。装着ヘッド26Bは、一つのノズルホルダ290によって保持された複数の吸着ノズル288によって比較的小形の部品を保持し、一つのノズルホルダ290により1本のみ保持された吸着ノズル288により、汎用装着ヘッド26Cと同様に大きな部品を装着することができ、装着し得る部品の種類が多い。装着ヘッド26は2種類のノズルホルダ290を備えているのであり、フィーダ20により供給される部品およびトレイ810により供給される部品も装着可能であるが、装着速度は高能率装着ヘッド26Aより遅い。以下、装着ヘッド26Bを中間装着ヘッド26Bと称する。中間装着ヘッド26Bは、フィーダ20により供給される部品であって、高能率装着ヘッド26Aにより装着されない部品を装着することができる。中間装着ヘッド26Bにおいて吸着ノズル288は、例えば、2種類のノズルホルダ290のうち、複数の吸着ノズル288を保持するノズルホルダ290により、高能率装着ヘッド26Aにおけると同様に保持され、1本の吸着ノズル288を保持するノズルホルダ290により、汎用装着ヘッド26Cにおけると同様に保持される。
上述したように、装着ヘッド26は、第2Xスライド264に脱着可能に取り付けられて、装着ヘッド移動装置28に装着される。以下に、装着ヘッド26の装着機構について説明する。図41に、装着ヘッド26の背面側からの斜視(図41(a))および第2Xスライド264の正面側からの斜視(図41(b))を示す。
装着ヘッド26において、前記ヘッド本体280の背面部892が被取付部を構成し、第2Xスライド264の正面部894が前記ヘッド取付部750を構成する。ヘッド本体の背面部892は、下部に2つの脚部896を有するとともに、上部に係合ブロック898が設けられている。一方、第2Xスライド264の正面部894は、下部に、脚部896を支承する脚部支承部900を有し、脚部支承部900のやや上方に、2つの下部係合ローラ908を有している。また、第2Xスライド264の正面部894の上部には、係合ブロック898の一部分を掛止させて固定するヘッド固定装置906(図41参照)が設けられ、また、ヘッド固定装置906のやや下方には、2つの上部係合ローラ908を有して係合ブロック898を入り込ませるための係合穴910が設けられている。これら脚部支承部900等は正面部894と共にヘッド取付部750を構成している。装着ヘッド26が装着された状態において、ヘッド本体280の背面部892と第2Xスライド264の正面部894とは略ぴったりと合わさるようにされている。
脚部896は、先端が楔形状とされており、V字状とされた脚部支承部900に嵌め合わされる。これにより、装着ヘッド26の上下方向の位置が規定される。また、脚部896上部の間隔が小さくされた部分の対向する側面が、2つ下部係合ローラ908の各々の外周面にぴったりと係合するようにされおり、また係合ブロック898の両側面が、2つの上部係合ローラ908の間にぴったりと嵌りこむようにされており、こららによって、装着ヘッド26の左右方向の位置が規定される。
図42に、ヘッド固定装置906の断面を示す。図42(a)は、第2Xスライド264の左右方向の中央において切断した断面であり、図42(b)は、図42(a)におけるA−A面における断面である。ヘッド固定装置906は、係合ブロック898の上部に設けられた掛止ローラ914(図41参照)に掛止ピン916を掛合させる構造とされている。詳しく説明すれば、ヘッド固定装置906は、正面部894の上部に設けられたピン穴918に上下移動可能に支持された掛止ピン916と、掛止ピン916を上下させる掛止ピン作動装置920とを含んで構成されている。掛止ピン作動装置920は、若干の可撓性のあるロッド922と、そのロッド922の一端部に偏心して設けられた円盤状のカム板924と、ロッド922を回転可能に支持する概ねパイプ状のロッド支持部材926と、ロッド922の他端部に設けられてロッド922を回転させるためのグリップ928とを含んで構成される。掛止ピン作動装置336は、ロッド支持部材926において第2Xスライド264の正面部894の上部に取り付けられる(図41参照)。掛止ピン916の上部には、カム板924の外径より若干大きな幅の溝930が形成され、この溝930にカム板924が係合するようにされている。グリップ928を回転させれば、掛止ピン916が上下に作動する。
装着ヘッド26を装着する場合、グリップ928を一方向(本実施形態では正面から見て反時計回り)に回転させ、掛止ピン916を上方に移動させた状態で、装着ヘッド26の背面部892を第2Xスライド264の正面部にぴったりと係合させ、その状態で、グリップ928を反対方向(本実施形態では正面から見て時計周り)に回転させる。このグリップ928の操作により、掛止ピン916は下降し、最下降端の手前で掛止ピン916の下端部に形成された傾斜面932が掛止ローラ914の外周に当接する。さらに、グリップ928を回転させることにより、掛止ピン916は、傾斜面932の作用により、装着ヘッド26を下方に押付けるとともに後方に押付ける状態で、掛止ローラ914を掛止する。その状態はカム板924の外周と溝930の下側面との間に生じる摩擦力によって維持されるが、その状態維持をより確実なものとするため、掛止ピン作動装置336は、捻りバネ934を有して、掛止ピン916が下方に向かう方向にその捻りバネ934がロッド922を付勢する構造とされている。装着ヘッド26を離脱させるには、逆方向にグリップ928を回転させればよい。
本実施形態において、作業モジュール12は、種々の装着ヘッド26を配備可能とされているが、いずれの装着ヘッド26も、装着機構に関する構造は同じものとされており、装着されている装着ヘッド26をワンタッチで離脱可能であるとともに、任意の装着ヘッド26をワンタッチで装着可能とされているのである。
<ノズル収容装置,収容装置取付部の説明>
装着に使用される吸着ノズル288は前記ノズル収容装置752に収容されて装着モジュール12等に取り付けられる。前述のように、装着ヘッド26の種類に応じて装着する部品の種類が異なり、装着に用いられる吸着ノズル288の種類,数も異なり、装着ヘッド26の種類,装着ヘッド26が装着する部品の種類等に応じた種類,数の吸着ノズル288を収容するノズル収容装置752が複数種類用意され、装着モジュール12等に選択的に取り付けられて装着ヘッド26との間で吸着ノズル288の交換を行う。そのため、装着モジュール12等にそれぞれ、前記収容装置取付部754が設けられている。これらノズル収容装置752および収容装置取付部754は、本実施形態においては、特開平11−220294号公報に記載のノズル収容装置および収容装置取付部と同様に構成されており、簡単に説明する。
ノズル収容装置752は、図43および図44に示すように、ノズル保持部材940を備えている。ノズル保持部材940には、多数のノズル保持穴942が設けられ、吸着ノズル288が1個ずつ収容されるようにされている。ノズル保持部材940には離脱防止部材944が移動可能に設けられている。離脱防止部材944は板状を成し、ノズル保持穴942に対応する複数の開口946が設けられており、離脱防止部材移動装置948によって板面に平行な方向に移動させられることにより、ノズル保持穴942の開口を覆って吸着ノズル288のノズル保持穴942からの離脱を防止する離脱防止位置と、ノズル保持穴942の開口を解放して吸着ノズル288のノズル保持部材940からの取出しを許容する解放位置とに移動させられる。本実施形態では、ノズル収容装置752の構成は、吸着ノズル288が、ノズルホルダ290によって負圧によって供給されるものであっても、ノズルホルダ290との軸方向の相対移動によってノズルホルダ290に機械的に着脱されるものであっても同じであり、同様にノズル保持穴942に収容される。
収容装置取付部754は、図43に示すように、フレーム部14に設けられている。収容装置取付部754は、ノズル保持部材940を保持する保持部材保持装置956を備え、保持部材保持装置956は保持部材受台958を備えている。保持部材受台958には、ノズル保持部材940を位置決めする位置決め装置960および固定する固定装置としての留め具962が設けられるとともに、昇降装置964によって昇降させられるようにされている。吸着ノズル288が収容されたノズル保持部材940は、保持部材受台958上に位置決め装置960によって位置決めされて載置されるとともに、留め具962によって着脱可能に固定される。留め具962は、オペレータによって操作される。
装着ヘッド26はノズル保持部材940上へ移動させられ、ノズルホルダ290の昇降および保持部材受台958の昇降等に基づいて、ノズルホルダ290がノズル保持部材940に保持された吸着ノズル288を保持し、あるいはノズルホルダ290が保持した吸着ノズル288をノズル保持部材940に戻す。吸着ノズル288がノズルホルダ290によって負圧により保持されている場合には、吸着ノズル288の戻し時に負圧の供給が遮断され、保持時に負圧が供給される。
ノズル保持部材940には装着ヘッド26の種類に応じた種類,数の吸着ノズル288が収容される。そして、保持した吸着ノズル288の種類,数等が異なる複数種類のノズル収容装置752は、収容装置保持装置である保持部材保持装置956に選択的に取り付けられる。取付け時にはノズル保持部材940が保持部材受台958上に位置決め装置960により位置決めされて載置されるとともに、留め具962によって保持部材受台958に固定される。取外し時には留め具962による固定が解除され、ノズル保持部材940が保持部材受台958から外され、ノズル収容装置752が収容装置取付部754から取り外される。離脱防止部材944は、ノズル収容装置750の搬送時に吸着ノズル288のノズル保持部材940からの脱落を防止する役割も果たす。
ノズル収容装置752は、収容される吸着ノズル288の種類,数等に応じてノズル保持部材940のノズル収容数,寸法等が異なる複数種類のものがあり、収容装置取付部754に選択的に取り付けられる。収容装置取付部754は、装着モジュール12等、各種装着モジュールのそれぞれに少なくとも一つ設けられる。複数設ける場合、それら収容装置取付部754は、同じものでもよく、例えば、大きさが異なるものとし、ノズル収容装置752の種類の大幅な変更に対応し得るようにしてもよい。ノズル収容装置752は、吸着保持型吸着ノズルと機械的保持型吸着ノズルとをそれぞれ専用に収容するものとしてもよい。
<装着モジュールの構成変更の説明>
以下、部品装着の対象である対象配線板の種類の変更時における装着モジュール12等の構成の変更を説明する。
部品が装着される配線板150の種類が変わる場合、装着システムにおいて段取替えが行われる。例えば、装着モジュールの交換,追加,減少による装着システムの構成の変更、装着モジュールの構成変更,配線板搬送装置24における配線板搬送幅の変更,基板保持部におけるバックアップピン154の配置の変更等、種々の作業が行われる。装着モジュールの構成は、本実施形態では、装着ヘッド26の交換,ノズル収容装置752の交換,フィーダパレット29に搭載されるフィーダ20の変更,多段ラック812に収容されるトレイ810の変更およびフィーダ型供給装置23とトレイ型供給装置25との交換によって変更される。そのため、本装着システムにおいては、構成変更ルーチンがシステム制御装置370のコンピュータであるシステム制御コンピュータ980により実行され、設定された目標サイクルタイム内で部品の装着が行われるとともに、段取替えができる限り少なくて済むように装着モジュールの構成が自動で決定される。図45に構成変更ルーチンをフローチャートで表すが、このフローチャートは、構成変更の内容および順序を説明するためのものであって、実際にコンピュータにより実行される制御プログラムとは必ずしも一致しない。他のフローチャートについても同様である。
構成変更ルーチンのステップ1(以下、S1と略記する。他のステップについても同じ。)においては、構成変更を行うための情報である構成変更用情報が取得される。構成変更用情報には、例えば、装着システム全体の現時点における構成,本装着システムのユーザが保有する装着モジュールの種類,数,次に生産されるプリント回路板に関する情報および目標サイクルタイム等がある。プリント回路板は、プリント配線に部品が搭載されるとともに、はんだ付け接合を終えて実装が完了したものであり、プリント回路板に関する情報には、例えば、プリント回路板(配線板150)の種類,生産枚数,部品の装着位置,装着される部品に関する情報等がある。サイクルタイムは、当該装着システムの出口から、全部の装着モジュールによる部品の装着が終了した配線板150が搬出される時間間隔であり、目標サイクルタイムは、例えば、プリント回路板の種類に応じて設定され、例えば、S1の実行時にオペレータにより入力装置982(図12参照)を用いて入力され、記憶される。入力装置982は、例えば、マウス等のポインティングデバイスやキーボード等を含んで構成される。プリント回路板の種類に応じて予め設定され、入力されて記憶部に記憶され、読み出されるようにしてもよい。
装着システム全体の現時点における構成には、例えば、装着システムを構成する複数の装着モジュールの種類,数,各装着モジュールにおける部品供給部22の部品供給形態、すなわちフィーダ型供給装置23およびトレイ型供給装置25のいずれによって部品を供給するか、各供給装置23,25が供給する部品の種類,数,フィーダ20のフィーダパレット29における搭載位置あるいはトレイ810(トレイパレット814)の多段ラック812への収容位置,部品装着部31に取り付けられた装着ヘッド26の種類、ノズル収容装置752に収容された吸着ノズル288の種類,数等である。
装着モジュールには、例えば、前述のように、モジュール幅が最も狭く、単位幅である装着モジュール12、モジュール幅が装着モジュール12の2倍である装着モジュール600,3倍である装着モジュール610がある。本装着システムでは、装着モジュール12にはフィーダ型供給装置23のみが取り付けられるが、装着モジュール600,610にはフィーダ型供給装置23とトレイ型供給装置25とを選択的に取り付けることができる。本装着システムの基本ライン構成は、複数の装着モジュール12および少なくとも一つの装着モジュール600を直列に含み、装着モジュール600が配線板配線方向において最も下流側に設けられる構成とされている。配線板150への部品の装着は、配線板150に既に装着されている既装着部品と吸着ノズル288あるいは吸着ノズル288に吸着された部品との干渉を回避するために、高さが小さい部品から先に装着されることが多いが、装着モジュール600に取り付けられるトレイ型供給装置25によって供給される部品は大きく、フィーダ型供給装置23であっても供給される部品が比較的大きく、終わりの方で装着されることが望ましいからである。以下、必要に応じて、装着モジュール12を小装着モジュール12、装着モジュール600を大装着モジュール600と称する。なお、本実施形態においては、説明を簡単にするために、1つの装着モジュールの部品供給部22が有する部品供給装置は1種類であり、フィーダ型あるいはトレイ型であるとする。また、装着モジュール610が使用されることは少なく、ここでは使用されないこととして説明するが、装着モジュール610等、装着モジュール12,600以外の種類の装着モジュールの使用に基づいて構成変更を行ってもよい。
構成変更用情報は、例えば、システム制御コンピュータ980の構成変更用情報記憶部等の記憶部からの情報の読み出しによって取得される。また、入力装置982を用いたオペレータによる情報入力によっても取得される。オペレータによる情報入力が予め行われている場合、その入力情報は、例えば、構成変更用情報記憶部に記憶され、読み出される。構成変更用情報記憶部に、例えば、ユーザが有する装着モジュールの種類,数等が記憶され、装着モジュールの追加に使用されるのであれば、構成変更用情報記憶部が予備構成要素記憶部および予備装着モジュール記憶部を構成する。システム制御コンピュータ980とは別の制御装置のコンピュータや外部記憶装置から情報が読み込まれることによって取得されてもよい。現時点での装着システムの構成は、例えば、1種類の配線板150への部品の装着が行われる毎にシステム制御コンピュータ980に設けられた前システム構成記憶部に記憶され、本装着システムの稼動開始時でなければ、前システム構成記憶部から読み出される。装着システムの稼動開始時であれば、例えば、装着システムを構成する装着モジュール数は装着システムの基本構成として予め設定されたデータが、それが記憶された記憶部から読み出されるが、各装着モジュールについて変更可能な構成については、装着モジュールに何も取り付けられていないことが初期状態とされる。
次いでS2が実行され、段取替え時間短縮型構成変更が実行される。本装着システムにおいては、大,小の各装着モジュール12,600の各々において装着ヘッド26,部品供給装置23,25,フィーダ20,トレイ810,ノズル収容装置752がそれぞれ変更可能であるが、これら変更可能な構成の変更優先順位が、本実施形態では、フィーダ20およびトレイ810が一位、ノズル収容装置752が二位、装着ヘッド26が三位に予め設定され、順序が上位の構成変更により目標サイクルタイムが達成されない場合に次の構成変更が行われ、できるだけ短い段取替え時間で構成変更が行われるようにされている。部品供給装置が変更されるのは、部品の供給形態が変わる場合であり、フィーダ20あるいはトレイ810の変更と共に行われる。
段取替え時間短縮型構成変更を概略的に説明する。
段取替え時間短縮型構成変更は、図46にフローチャートで示す順序で行われる。S21ないしS23に示すように、まず、部品供給部22について構成が変更されるが、この変更は、本実施形態においては3段階に行われる。第一段階においては、現に部品供給部22に搭載されているフィーダ20あるいはトレイ810をすべて搭載したままとし、次に生産されるプリント回路板に装着される部品であって、部品供給部22に搭載されていない部品(以後、未搭載部品と称する。未搭載部品は、次に生産されるプリント回路板に固有の部品である。)を保持したフィーダ20を空いているスロット780に搭載し、あるいはトレイ810が収容されたトレイパレット814を多段ラック812の空いている棚818に収容する。追加により、搭載されるフィーダ20あるいはトレイ810を変更するのである。全部の未搭載部品の割り振り後、フィーダ20あるいはトレイ810の配置および装着順序について最適化を行ってサイクルタイムを演算し、目標サイクルタイムが得られるか否かを調べる。この変更を部品追加型変更と称する。部品追加型変更をフィーダ20を例に取って図47(a)に示す。
第一段階において目標サイクルタイムが達成されなければ、S22に示す第二段階が実行される。第二段階においては、現に部品供給部22に搭載されているフィーダ20あるいはトレイ810のうち、次に生産されるプリント回路板への部品の装着にも使用される部品(以後、共通部品と称する)を保持したフィーダ20あるいはトレイ810は搭載したままとし、使用されない部品(以後、非使用部品と称する)を保持したフィーダ20をフィーダパレット29から外し、あるいはトレイ810を保持したトレイパレット814を多段ラック812から外し、未搭載部品を保持したフィーダ20あるいはトレイパレット814をフィーダパレット29あるいは多段ラック812の空いている箇所に配置する。未搭載部品を保持するフィーダ20,トレイ810の追加ないしは非使用部品を保持するフィーダ20,トレイ810との交換により装着モジュールの構成を変更するのである。全部の未搭載部品の割り振り後、最適化を行ってサイクルタイムを演算し、目標サイクルタイムが得られるか否かを調べる。この構成変更を非使用部品取外し型変更と称する。非使用部品取外し型変更ををフィーダ20を例に取って図47(b)示す。
第二段階において目標サイクルタイムが達成されなければ、S23に示す第三段階が実行される。第三段階においては、現に部品供給部22に搭載されているフィーダ20あるいはトレイ810をすべて部品供給部22から外し、次に生産されるプリント回路板に装着される部品を保持したフィーダ20をフィーダパレット29に搭載し、あるいはトレイ810を収容したトレイパレット814を多段ラック812に収容する。全部のフィーダ20,トレイ810の交換により、構成を変更するのである。全部の未搭載部品の割り振り後、最適化を行ってサイクルタイムを演算し、目標サイクルタイムが得られるか否かを調べる。この構成変更を全部品取外し型変更と称する。
第三段階において目標サイクルタイムが達成されなければ、S24に示すノズル収容装置752の構成変更が行われ、ノズル収容装置752に収容される吸着ノズル288の種類および数等が部品,装着ヘッド26等に応じて設定される。ここでは、設定された吸着ノズル288の種類等も含めて最適化を行ってサイクルタイムを演算し、目標サイクルタイムが達成されないのであれば、S25に示す装着ヘッド26の変更を行い、装着ヘッド26の変更も含めて最適化を行ってサイクルタイムを演算する。ここでも目標サイクルタイムが達成されないのであれば、構成変更ルーチンのS4およびS5において別の態様の構成変更が行われる。
各ステップにおいて目標サイクルタイムが達成されれば、すなわちサイクルタイムが目標サイクルタイム以下になれば、その段階において段取替え時間短縮型構成変更が終了され、サイクルタイムおよび段取替え内容がシステム制御コンピュータ980の段取替え内容等記憶部ないし構成変更内容記憶部に記憶される。プリント回路板の生産には、それに応じた部品の配置が必要であり、まず、フィーダ20,トレイ810の変更による構成の変更が為されるのであるが、始めはできるだけ変更が少なく、段階的に変更が多くなるようにされており、これらフィーダ20等の変更により目標サイクルタイムが達成されなければ、更に変更項目が増やされる。早い段階で目標サイクルタイムが達成されるほど、構成の変更が少なく、段取替え時間が短くて済むようにされているのである。なお、各段階において目標サイクルタイムが達成されなかった場合にも、得られたサイクルタイムおよび段取替え内容が記憶される。
なお、装着システムの稼動開始時における初期状態は、本実施形態では、前述のように、変更可能な構成はいずれも装着モジュールに取り付けられていないとされるが、装着モジュール数は設定され、それに基づいて構成変更が行われる。上流側の装着モジュールから順に割り振りを行い、それに合わせて装着ヘッド26,ノズル収容装置752を設定する。S25が実行されると考えてもよい。
以下、各ステップを詳細に説明する。まず、S21の部品追加型変更を説明する。
装着システムを構成する複数の装着モジュール12等における各部品供給部22の部品供給形態の組合わせは、次の2種類である。図48(a)に示すように、フィーダ型供給装置23が取り付けられた装着モジュールとトレイ型供給装置25が取り付けられた装着モジュールとの両方である場合、図48(b)に示すように各部品供給部22がそれぞれ有する部品供給装置がいずれもフィーダ型供給装置23である場合である。なお、大装着モジュール600に取り付けられる部品供給装置がフィーダ型供給装置23であれば、そのフィーダ型供給装置23は大装着モジュール600に応じた大きさの装置とされる。また、図48に示す装着ヘッド26の設定は例であり、図示の態様に限られるものではない。モジュール数も同様である。図50等、他の部品供給装置の設定を示す図においても同様である。装着システムにおける複数の装着モジュール12等の各部品供給部22が有する部品供給装置の組合わせの現状と、次のプリント回路板生産時に複数の装着モジュール12等の各部品供給部22が有すべき部品供給装置の組合わせとの関係を図49に示す。
現状における部品供給装置の組合わせは、例えば、S1における構成変更用情報の入力により得られ、次生産時における組合わせは、例えば、次に生産されるプリント回路板についての情報のうち、例えば、部品の種類により得られる。部品は、その種類に応じて供給形態が設定されて、部品固有データとして記憶されており、装着される全部の部品がフィーダ型供給装置23のみによって供給されるか、フィーダ型供給装置23およびトレイ型供給装置25の両方によって供給されるかがわかる。S21ないしS23における構成変更は、現状と次生産時とにおける部品供給装置の組合わせに応じて行われる。
段取替え時間短縮型構成変更を、まず、現状と次生産時とにおいていずれも、装着システムの全部の装着モジュール12,600にフィーダ型供給装置23が取り付けられる場合を例に取って説明する。装着システムは稼動開始後であって定常稼動状態にあるとする。
S21の部品追加型変更は、前述のように、装着モジュール12,600の各部品供給部22にフィーダ20あるいはトレイ810を追加して部品を追加する変更であるため、フィーダ型供給装置23に現にフィーダ20を搭載する空きがあることが必要である。そのため、まず、全部の装着モジュール12,600の各々について空いているスロット780の数が取得され、その和が、未搭載部品を供給するフィーダ数以上であるか否かが調べられる。装着モジュール12,600の各フィーダ供給装置23におけるフィーダ20の配置位置,数,未搭載部品の種類および数は、現時点におけるフィーダ型供給装置23の構成および次に生産されるプリント回路板に関する情報とに基づいて得られる。なお、部品が大形であり、フィーダ20の幅が広く、フィーダパレット29への搭載にスロット複数分のスペースが必要な場合もあり、その場合にはフィーダ20は1つでもスロット780は複数個として数えられる。また、一連の装着作業に必要な部品の種類毎の供給数も考慮して調べられる。供給数が多い場合にはフィーダ20やトレイ810が複数必要な場合があるからである。そして、空スロット数が不足し、未搭載部品を供給する全部のフィーダ20の搭載が不可能であれば、S21は行われず、S22が実行される。
未搭載部品を保持する全部のフィーダ20の搭載が可能であれば、まず、複数の装着モジュール12,600の各々について、各部品供給部22が現に有するフィーダ20のうち、次生産回路板に装着される部品を有し、生産に使用可能なフィーダ20により供給される部品を配線板150に装着した場合におけるサイクルタイムが演算される。ここではサイクルタイムは、部品1個の装着に要する時間に、装着モジュール12,60の各々における供給部品数(部品装着数でもある)を掛けることにより求められる。部品1個の装着時間は、本実施形態においてはおおまかに演算され、次に示す装着時間演算式に従って行われる。
部品1個の装着時間=部品1個の装着時間×トレイ重み係数×装着ヘッド重み係数
ここにおいて部品1個の装着時間は、予め設定された固定値であり、それまでの部品装着の実績から得られる平均的な値であって、例えば、高能率装着ヘッド26Aがフィーダ20から部品を受け取って装着する場合の値に設定されている。トレイ型供給装置25によって部品が供給される場合には、例えば、部品のトレイ810における収容位置に応じて装着ヘッド26が部品を受け取る部品受取位置がX軸方向およびY軸方向の少なくとも一方において異なるため、フィーダ型供給装置23によって供給される場合より受取りに時間がかかり、また、多段ラック812の昇降によるトレイ810の部品供給位置への位置決めが必要であり、それらを考慮すべく、フィーダ20によって供給される場合の係数を1とし、トレイ重み係数は1より大きい値に設定されている。また、部品が高能率装着ヘッド26Aによって装着される場合、高能率装着ヘッド26Aは一度に複数個、例えば8個の部品を吸着して搬送し、装着するため、部品1個あたりの装着に要する時間が短くて済み、中間装着ヘッド26Bによる場合はそれより長い時間かかり、汎用装着ヘッド26Cによる場合は更に長い時間がかかる。この装着時間の違いを考慮するために、装着ヘッド重みを表す係数が、高能率装着ヘッド26Aの場合を1とし、中間装着ヘッド26Bおよび汎用装着ヘッド26Cについてそれぞれ、1より大きく、汎用装着ヘッド26Cの方が中間装着ヘッド26Bより大きい値に設定されている。
そして、複数の装着モジュール12,600のうち、サイクルタイムが最も短い装着モジュール12,600から部品が割り当てられる。
部品の割り振りは、予め設定された規則に従って行われ、例えば、部品の寸法、例えば、高さが低い部品から先に割り振られる。前述のように、配線板150への部品の装着は、高さが低い部品から先に行われることが多く、装着システムにおける配線板搬送方向において上流側の装着モジュール12ほど、装着する部品の高さが小さくされることが望ましいからである。
そのため、例えば、図50に示すように、未搭載部品であって、次生産回路板に固有の部品を高さが低い順に並べ、複数、例えば、2つのグループに分ける。そして、複数の装着モジュール12,600を配線板搬送方向において、未搭載部品のグループ数と同じ数のグループ、ここでは2つのグループに分け、配線板搬送方向において上流側のグループに属する装着モジュール12に小部品グループに属する部品を割り振り、下流側のグループに属する装着モジュール12,600には大部品グループに属する部品を割り振る。
この際、例えば、サイクルタイムが最短の装着モジュールが上流側グループに属するとともに、上流側グループの中で上流側に位置するのであれば、小部品グループの中で小さい方の部品を割り振り、上流側グループの中で下流側に位置するのであれば、小部品グループの中で大きい方の部品を割り振る。サイクルタイムが最短の装着モジュール12が下流側グループに属する場合も同様である。なお、部品の割り振りも、部品の種類毎の供給数を考慮して行われる。
なお、複数の装着モジュール12,600に部品を割り振る場合、未搭載部品および装着モジュールは12,600は更に多くの数のグループに分けてもよい。
未搭載部品を1つ、割り振る毎に、部品が割り振られた装着モジュールについて前述のようにサイクルタイムを演算し、全部の装着モジュール12,600のうち、サイクルタイムが最短の装着モジュールを求め、部品を割り振る。サイクルタイムの演算,部品割り振りモジュールの決定,未搭載部品の割り振りを、未搭載部品がなくなるまで繰り返し行う。なお、サイクルタイムが最短の装着モジュールのフィーダパレット29に空スロット780がない場合には、次にサイクルタイムが短い装着モジュールに空スロット780があれば部品を割り振る。また、空スロット780があってもフィーダ20を搭載不可能であれば、例えば、フィーダ20の幅が広く、その搭載にスロット複数個分のスペースを要するにもかかわらず、それより少ない数のスロット780しか空いていない場合にも搭載不可能とされ、次にサイクルタイムが短く、フィーダ20が搭載可能な装着モジュールに未搭載部品が割り振られる。さらに、上流側グループと下流側グループとの一方において、その一方のグループに属する装着モジュールの全部に空スロット780がなくなったが、対応する部品グループにまだ割り振られていない部品があれば、その未搭載部品は、他方のグループに属する装着モジュールに割り振られるようにされる。
全部の未搭載部品を装着モジュール12,600に割り振ったならば、装着モジュール毎に部品を保持したフィーダ20(トレイ型部品供給装置25が設けられる場合にはトレイ810も)の配置および装着順序の最適化が行われる。部品の配置の最適化は既に知られており、詳細な説明は省略するが、本実施形態では、例えば、フィーダ20により部品が供給される場合、装着ヘッド26の部品吸着位置ないし部品受取り位置から部品撮像装置30により撮像が行われる撮像位置までの部品毎の移動距離の総和ができる限り短くなるように行われる。さらに高能率装着ヘッド26Aにおいては、例えば、吸着ノズル288の配置に応じて部品の配置が設定される。高能率装着ヘッド26Aにおいては、異なる種類の吸着ノズル288(例えば、吸着管の直径を異にする吸着ノズル288)を複数ずつ保持する場合、例えば、種類毎にまとめて保持させるため、部品も同じ種類の吸着ノズル288によって供給される部品を保持するフィーダ20はまとめて配置されるようにされる。また、例えば、部品供給数の多いフィーダ20ほど部品撮像装置30に近い位置に配置する。これは汎用装着ヘッド26Cについても同様である。部品がトレイ810によって供給される場合、例えば、多段ラック812の昇降距離の総和ができるだけ短くなるように、トレイ810の多段ラック812における配置が最適化される。例えば、配線板150への装着位置の近い部品を保持したトレイ810を互いに近い位置に配置する。なお、ここでは、次の生産時に装着される部品の一部であって、前の生産時と共通の部品については配置位置が決まっており、また、フィーダ型供給装置23(トレイ型供給装置25が設けられる場合にはトレイ型供給装置25にも)には非使用部品が残っているため、それらを考慮して最適化が行われる。
また、部品配置の最適化後、複数の装着モジュール12,600の各々について装着順序の最適化が行われる。装着順序の最適化も既に知られており、詳細な説明は省略するが、配線板150への部品の装着は、配線板150に設けられた基準マークの読取り、部品の吸着、撮像、装着、吸着の順で行われ、その際に装着ヘッド26の移動距離の総和が最短となるように行われる。高能率装着ヘッド26Aであれば、例えば、配線板設計データに基づいて、装着位置の近い部品がまとめて装着されるように装着順序が設定される。但し、この場合にも部品配置の最適化と同様に、共通部品の配置位置が決まっており、非使用部品が残っていることを考慮して最適化が行われる。
最適化後、複数の装着モジュール12,600の各々についてサイクルタイムが演算され、それらのうちで最長のサイクルタイムが装着システムのサイクルタイムとされ、目標サイクルタイムと比較される。ここでは部品配置および装着順序の最適化が行われており、部品の配線板150への実際の装着時と同様に各種作業が行われたとしてサイクルタイムが演算される。すなわち、装着ヘッド26の水平平行の移動,吸着ノズル288の昇降,回転に要する時間,部品吸着時および装着時における吸着ノズル288の下降端停留時間,撮像および画像処理に要する時間,配線板150の基準マーク読取り時間および画像処理時間,トレイ型供給装置25におけるトレイパレット814の選択に要する時間等を含めて演算されるのである。
サイクルタイムが目標サイクルタイム以下であれば、目標が達成されたのであり、サイクルタイムおよび段取替えの内容であって、決定された構成変更が互いに対応付けて段取替え内容等記憶部に記憶され、段取替え時間短縮型構成変更が終了する。段取替えの内容は、ここでは、例えば、追加するフィーダ20が保持する部品の種類,数,フィーダ20が追加される装着モジュール,フィーダ20の搭載位置等である。装着システム全体の構成も記憶してもよい。
それに対し、サイクルタイムが目標サイクルタイムを超えるのであれば、部品追加型変更では目標は達成されなかったのであり、S22の非使用部品取外し型変更が行われる。まず、次生産時に使用されない非使用部品を保持するフィーダ20をすべてフィーダパレット29から外した状態を想定し、未搭載部品を保持したフィーダ20を空いているスロット780に割り振る。なお、非使用部品取外し型変更の実行時にも空のスロット780の数が求められて、未搭載部品を搭載するのに足りるか否かが判定され、不足する場合にはS23の全部品取外し型変更が実行される。
非使用部品取外し型変更においても、部品追加型変更時と同様に、サイクルタイムがおおまかに演算され、それが短い装着モジュール12から先に未搭載部品が割り振られる。割り振りも同様に、小さい部品から順に行われる。部品が1つ割り振られる毎にサイクルタイムが演算され、サイクルタイムが短い装着モジュール12,600から先に割り振られる。次生産時に使用されない部品を外せば、複数の装着モジュール12,600にそれぞれ割り振られる部品の数や種類が変わり、それによってサイクルタイムが変わる。そして、全部の未搭載部品が割り振られたならば、部品配置および装着順序の最適化が行われる。この場合にも、フィーダ型供給装置23において共通部品の配置位置は決まっていることに基づいて最適化が行われる。そして、最適化に基づくサイクルタイムの演算が行われ、装着システムのサイクルタイムが取得されてて目標サイクルタイムと比較される。目標サイクルタイム以下であれば、サイクルタイムおよび段取替え内容が記憶され、段取替え時間短縮型構成変更が終了する。
なお、非使用部品を保持したフィーダ20あるいはトレイ810を全部取り外すことは不可欠ではなく、取外しは、きめ細かく、多段階に行ってもよい。例えば、非使用部品を保持するフィーダ20,トレイ810を、未搭載部品が全部搭載されるまで、1つずつ取り外してもよく、複数の装着モジュールの各々について取外し数を予め設定し、その設定した数の非使用部品を一度に取り外してもよい。この場合、取外し数は、複数の装着モジュールについて同じにしてもよく、あるいは非使用部品の保持数が多い装着モジュールほど多くしてもよい。
非使用部品取外し型変更を行っても目標サイクルタイムを達成できないのであれば、S23の全部品取外し型変更が行われる。全部品取外し型変更の場合、全部の装着モジュール12,600において部品供給装置が空いているが、まず、全部の部品を割り振るのに足る空きスロット780があるか否かが調べられる。スロット780が不足するのであれば、段取替え時間短縮型構成変更は終了し、構成変更ルーチンのS4,S5が実行される。空きスロット780が不足せず、全部の部品の割り振りが可能であってプリント回路板の生産が可能であれば、部品を小さい順に、配線板搬送方向において上流側の装着モジュール12,600から順に割り振る。割り振り後、複数の装着モジュール12,600の各々について部品配置の最適化および装着順序の最適化が行われる。この場合には、フィーダ型供給装置23が空の状態で部品が割り振られており、共通部品や非使用部品の配置に左右されることなく、最適化が行われる。そして、各装着モジュール12,600において、最適化に基づいてサイクルタイムが演算され、目標サイクルタイム以下であれば、サイクルタイムおよび段取替え内容が記憶され、段取替え時間短縮型構成変更が終了する。
全部品取外し型変更を行ってもなお、目標サイクルタイムが達成されないのであれば、S24が実行され、ノズル収容装置752の構成変更が行われる。ノズル収容装置752には、先の配線板150への部品の装着に必要な吸着ノズル288が収容されるようにされているが、次生産のために部品を割り振れば、装着に必要な吸着ノズル288の数や種類が変わり、現に装着ヘッド26が保持している吸着ノズル288の全部を次生産時に使用し得るとは限らず、そのままでは、例えば、部品の装着に使用される吸着ノズル288の数が少なく、サイクルタイムが長くなることがある。そのため、複数の装着モジュール12,600の各々に割り振られた部品の装着に必要であって、装着ヘッド26に保持させることが可能な吸着ノズル288が得られるように、ノズル収容装置752に収容される吸着ノズル288の数および種類等を設定する。部品の装着に使用される吸着ノズル288の種類は、例えば、部品の形状,寸法等に基づいて設定される。また、吸着ノズル288の数は、例えば、装着ヘッド26の種類によって設定される。
そして、複数の装着モジュール12の各々について装着順序の最適化が行われる。部品の配置はS23において行われた配置と同じであり、その最適化により得られた配置が使用される。この場合、ノズル収容装置752の構成変更に基づいて、すなわち装着ヘッド26が装着に使用する吸着ノズル288の種類や数の変更も考慮して最適化が行われる。最適化後、サイクルタイムが演算され、装着システムのサイクルタイムが取得されて目標サイクルタイムと比較され、目標が達成されていれば、段取替え時間短縮型構成変更が終了する。目標が達成されれば、サイクルタイムおよび段取替え内容が記憶される。この場合、S23の実行により得られた複数の装着モジュール12,600への部品の割り振り等と共に、ノズル収容装置752における吸着ノズル288の収容数,種類等が記憶される。なお、吸着ノズル288のノズル収容装置752における配置位置は、例えば、オペレータが見てわかり易いように、ノズル種類毎にグループ分けをして決定する。
目標サイクルタイムがなお達成されないのであれば、S25が実行され、装着ヘッド26が変更される。例えば、ある装着モジュールにおいて使用されている装着ヘッド26が中間装着ヘッド26Bであり、高速装着ヘッド26Aに変更することが可能であれば、すなわちその装着モジュールに割り振られた部品のいずれもが高速装着ヘッド26Aによる装着が可能な部品であれば、装着ヘッド26が変更される。部品が高速装着ヘッド26Aによって装着が可能な部品であるか否かは、例えば、部品固有データにより得られる部品の種類,供給形態等からわかる。また、装着ヘッド26の種類が変更されれば、必要であれば、それに合わせてノズル収容装置752の構成を変更する。装着ヘッド26の変更後、複数の装着モジュールの各々について、装着ヘッド26の変更を考慮して装着順序の最適化が行われる。最適化後、サイクルタイムが演算され、装着システムのサイクルタイムが取得される。
装着ヘッド26の変更によって目標サイクルタイムが達成されたのであれば、サイクルタイムおよび段取替え内容が記憶されて段取替え時間短縮型構成変更が終了する。この場合、装着ヘッド26の種類およびそれに伴うノズル収容装置752の構成も段取替え内容として記憶される。
装着ヘッド26の変更を行ったにもかかわらず、サイクルタイムが目標サイクルタイム以下にならなかった場合には、段取替え時間短縮型構成変更が終了する。そして、構成変更ルーチンのS3の判定結果がYESになってS4およびS5が実行される。本実施形態では、目標サイクルタイムは比較的厳しく、すなわち短く、高い装着能率が得られる大きさに設定されており、目標サイクルタイムが達成されないことがあり、その場合、別の態様の構成変更が行われる。
段取替え時間短縮型構成変更において、現に、複数の装着モジュール12,600の各部品供給部22の一部がフィーダ型供給装置23を備え、残りがトレイ型供給装置25を備えており、次生産時も同様の場合を説明する。装着システムは、図51に示すように構成されているとする。この場合、トレイ810がフィーダ20に相当し、トレイ型供給装置25を含んでいても全部の部品供給装置がフィーダ型供給装置23である場合と同様にS21ないしS26が実行される。部品の割り振りは、未搭載部品(全部品取外し型においては次生産用の全部の部品)をフィーダ供給部品とトレイ供給部品とに分け、各グループにおいて小さい部品ほど配線板搬送方向において上流側の装着モジュール12,600に割り振られるようにされる。
現に、複数の装着モジュール12,600の各部品供給部22が有する部品供給装置がいずれもフィーダ型供給装置23であり、次生産時にフィーダ型供給装置23およびトレイ型供給装置25が必要な場合には、大装着モジュール600について部品供給装置をフィーダ型供給装置23からトレイ型供給装置25に変更して段取替え時間短縮型構成変更を実行する。
この場合、例えば、次生産時にトレイ810によって供給される部品の数から、必要なトレイ型供給装置25の数を求め、図52に示すように、フィーダ型供給装置23をトレイ型供給装置25に変更する。供給装置の変更に伴って、装着ヘッド26の種類を変更しなくてもよいのであれば、S21以下のステップが実行される。装着ヘッド26の種類の変更が必要であれば、装着ヘッド26の種類を変更するとともにノズル収容装置752の構成を変更してS21以下のステップを実行する。この際、各段階における構成変更の結果、サイクルタイムが最長の装着モジュールがトレイ型供給装置25を備えた装着モジュールであれば、その装着モジュールの構成はそれ以上、変更することができず、段取替え時間短縮型構成変更を終了する。なお、トレイ型供給装置25を配置する大装着モジュール600の数が不足する場合には、段取替え時間短縮型構成変更が終了する。
そして、未搭載部品(全部品取外し型においては次生産用の全部の部品)をフィーダ供給部品とトレイ供給部品とに分けて割り振りを行う。この割り振りは、部品追加型変更,非使用部品取外し型変更および全部品取外し型変更のいずれにおいても、フィーダ型供給装置23については前述の変更と同様に実行されるが、トレイ型供給装置25については、新たにトレイ810を搭載することとなるため、トレイ型供給装置25が複数あれば、上流側のトレイ型供給装置25から順にトレイ供給部品のうち小さい部品が割り振られる。そして、部品配置および装着順序の最適化およびそれに基づくサイクルタイムの演算が行われ、目標サイクルタイムが達成されないのであれば、S24およびS25が前述の場合と同様に実行される。なお、トレイ型供給装置25が配置された装着モジュール600において装着ヘッド26の種類が変更されなかった場合、S21の実行時にサイクルタイムが最長の装着モジュールがトレイ型供給装置25を有する大装着モジュール600であれば、それ以上、トレイ810の配置を変えることができないため、S22,S23は実行されず、S24以下の変更が実行される。
複数の装着モジュール12,600の各部品供給部22が有する供給装置がフィーダ型供給装置23およびトレイ型供給装置25であり、次生産時にフィーダ型供給装置23のみが必要な場合には、例えば、現に装着システムを構成しているフィーダ型供給装置23を有する小装着モジュール12のみによって部品追加型変更を実行する。そして、全部品取外し型変更まで行ってもフィーダ型供給装置23が不足するのであれば、トレイ型供給装置25の1つをフィーダ型供給装置23に変更して、再度、部品追加型変更から実行する。この場合、トレイ型供給装置25を有する大装着モジュール600が複数あれば、配線板搬送方向において最も上流側に位置する大装着モジュール600から先にトレイ型供給装置25をフィーダ型供給装置23に変更する。このフィーダ型供給装置23は、幅が大きく、大装着モジュール600用のフィーダ型供給装置23である。供給装置の変更を行ってはS21ないしS23を実行し、フィーダ型供給装置23が不足しなくなるまで、供給装置を変更する。トレイ型供給装置25の全部をフィーダ型供給装置23に変更してもなお、目標サイクルタイムが達成されないのであれば、S24以下の変更を実行する。また、フィーダ型供給装置23が不足するのであれば、段取替え時間短縮型構成変更を終了する。
段取替え時間短縮型構成変更によって目標サイクルタイムが達成されれば、構成変更ルーチンのS3の判定結果がYESになってS10が実行されるが、これについては後述する。また、S21ないしS25の各段階において目標サイクルタイムが達成されなかった場合でも、その際のサイクルタイムおよび段取替え内容が対応付けてコンピュータ980の目標未達成構成記憶部に記憶される。
段取替え時間短縮型構成変更の実行により目標サイクルタイムが達成されなければ、構成変更ルーチンのS3の判定結果がNOになってS4,S5が実行され、装着ヘッド選択型構成変更,装着モジュール数設定型構成変更が実行される。本装着システムにおいて装着ヘッド26は、前述のように3種類あり、装着ヘッド選択型構成変更では、複数の装着モジュールについてそれぞれ使用される装着ヘッド26の種類を予め定められた規則に従って決定する。装着ヘッド26の種類の決定時に部品の割り振りが為され、部品供給装置の種類およびノズル収容装置752の構成が決定される。
複数の装着モジュールの各々について装着ヘッド26の選択は、例えば、装着ヘッド26が装着を行う時間の比率に基づいて簡単に行うことできる。部品1個当たりの装着に要する時間に、各種類の装着ヘッド26が装着する部品数を掛けることにより、装着ヘッド26の種類毎の総装着時間を求める。配線板150に装着される全部の部品の形状,寸法,供給形態に基づいて、3種類の装着ヘッド26がそれぞれ装着する部品が設定され、部品数が得られる。例えば、次生産時に装着される部品が汎用装着ヘッド26Cおよび高能率装着ヘッド26Aによって装着される場合、小形で高能率装着ヘッド26Aにより装着される部品の方が多いのが普通であり、高能率装着ヘッド26Aによる総装着時間と、汎用装着ヘッド26Cによる総装着時間とを比較すれば、前者の方が圧倒的に長く、その装着時間の比率によって、複数の装着モジュール12に割り振る装着ヘッド26の種類を設定すれば、高能率装着ヘッド26Aが割り振られる装着モジュール数の方が多くなる。
しかし、汎用装着ヘッド26Cが割り振られる装着モジュール数が少ないのであれば、不具合が生じる。例えば、汎用装着ヘッド26Cのみによって装着される部品は大形であることが多く、フィーダ20によって供給されるのであれば、幅の広いフィーダ20であることとなる。そのため、1つの装着モジュールに設けることができるフィーダ20の数が少なく、フィーダ20数が不足し、生産が不可能な状態が発生する。
そのため、装着ヘッド選択型構成変更は、プリント回路板の生産が可能であること、すなわち配線板150への部品の装着作業を達成し得ることと、複数の装着モジュールのうち上流側のものに高能率装着ヘッド26Aを取り付け、下流側のものに汎用装着ヘッド26Cを取り付けることとを条件として、汎用装着ヘッド26Cの取付数が最も少なくて済むシステム構成を取得するように行われる。本装着システムの基本構成は、前述のように、配線板搬送方向において下流側に大装着モジュール600が配置され、トレイ型供給装置25を取り付けることが可能であって、汎用装着ヘッド26Cが取り付けられる構成とされており、この基本構成に基づいて装着ヘッド26の選択が行われる。また、装着システムを構成する小装着モジュール12および大装着モジュール600の数がそれぞれ設定されて装着ヘッド選択が行われる。
本実施形態においては、装着ヘッド選択型構成変更は、段取替え時間短縮型構成変更では目標サイクルタイムが得られなかった場合に行われるようにされており、目標サイクルタイムの達成を目指して、小装着モジュール数および大装着モジュール数が設定されている。例えば、段取替え時間短縮型構成変更の実行時に予想される装着システムを構成する小装着モジュール数および大装着モジュール数よりそれぞれ多く、サイクルタイムを短縮することが可能であるとともに、全く生産不可能な状態を生じさせない数であって、当該装着システムのユーザが保有する装着モジュール数より少ない数に設定されている。これは、後述する装着モジュール数設定型構成変更においても同じである。
装着ヘッド選択型構成変更では、まず、全部の装着モジュールにそれぞれ汎用装着ヘッド26Cが装着された初期状態においてラインバランスを行い、サイクルタイムを演算する。ラインバランスは、次生産時に配線板150に装着される全部の種類の部品を複数の装着モジュール12,600に割り振ることにより行われる。部品によって供給形態が予め設定されており、次生産時に装着される部品がいずれも、フィーダ型供給装置23により供給されるフィーダ供給部品であれば、複数の装着モジュール12,600の上流側から順に高さが小さい部品が割り振られる。部品がフィーダ供給部品およびトレイ供給部品の両方を含むのであれば、フィーダ供給部品は小装着モジュール12であって、上流側の小装着モジュール12から順に割り振られ、トレイ供給部品は大装着モジュール600であって、上流側の大装着モジュール600から順に割り振られる。
このように複数の装着モジュール12,600のすべてに汎用装着ヘッド26Cが選択された初期状態から、上流側の装着モジュールから順に設定数ずつ、本実施形態においては1つずつの装着モジュールの汎用装着ヘッド26Cが高能率装着ヘッド26Aに変更した状態が想定される。装着ヘッド26が変更されれば、装着し得る部品の種類も変わるため、装着ヘッド26の選択に応じて部品の割り振りが行われ、全部の部品の割り振りが可能であるか否か、すなわちプリント回路板の生産が可能であるか否かが判定される。生産可能であれば、すなわち全部の部品を装着モジュール12,600に割り振ることができるのであれば、判定がYESであり、複数の装着モジュール12,600の各々についてサイクルタイムが演算され、そのうちの最長のサイクルタイムが装着システムのサイクルタイムとされる。ここでは、サイクルタイムは、前記部品追加型変更において部品を割り振るための装着モジュールを得るために行ったサイクルタイムの演算と同様に演算され、部品供給形態および装着ヘッド26の種類を考慮して演算されることとする。そして、さらに、1つの汎用装着ヘッド26Cを高能率装着ヘッド26Aに変更した状態が想定される。なお、全部の部品の割り振りが不可能であれば、その際の装着ヘッド26の選択では生産不可能とされる。
図53に示すように、生産可能である限り(図53にOKで示す)、汎用装着ヘッド26Cが高能率装着ヘッド26Aに変更される。生産不可能になれば(図53にNGで示す)、その際に高能率装着ヘッド26Aに変更された汎用装着ヘッド26Cを中間装着ヘッド26Bに変更して生産可能であるか否かが判定され、可能であれば、サイクルタイムが演算される。そして、さらに汎用装着ヘッド26Cが設定されている装着モジュールについて、まず、高能率装着ヘッド26Aに変更した状態が想定され、生産不可能であれば中間ヘッド26Bに変更した状態が想定されて生産可能であるか否かが判定される。中間装着ヘッド26Bの方が汎用装着ヘッド26Cより装着時間が短く、より装着時間が短くて済む装着ヘッド26が選択されるように想定されるのである。装着ヘッド26の変更想定,生産可能であるか否かの判定および生産可能な場合のサイクルタイムの演算がすべて終了したならば、生産可能な装着ヘッド26の全部の組み合わせのうち、サイクルタイムが最短である組合わせが装着ヘッド26の最適な選択であって、高能率システム構成に決定され、サイクルタイムと共に、システム制御コンピュータ980に設けられた高能率システム構成記憶部に記憶される。なお、装着される全部の部品がフィーダ供給部品であれば、全部の装着モジュールについて装着ヘッド26が高能率装着ヘッド26Aとされることもあり得る。
S5に示す装着モジュール数設定型構成変更を説明する。装着モジュール数設定型構成変更時には、装着ヘッド選択型構成変更の実行時と同様に、装着システムを構成する小装着モジュール数および大装着モジュール数はそれぞれ予め設定されている。
装着モジュール数設定型構成変更の流れを図54に示す。まず、S51において配線板150に装着される部品が、部品を装着する装着ヘッド26の種類および部品の供給形態に基づいて複数種類、本実施形態では3グループに分類される。高能率装着ヘッド26Aによって装着される部品と、汎用装着ヘッド26Cによって装着される部品とに分け、後者を更に、フィーダ供給部品と、トレイ供給部品とに分ける。汎用装着ヘッド26Cによって装着されるフィーダ供給部品は、中間装着ヘッド26Bによって装着され、汎用装着ヘッド26Cはトレイ供給部品を装着することとする。高能率装着ヘッド26A,中間装着ヘッド26Bによってそれぞれ装着される部品を高能率装着部品,中間装着部品と称する。高能率装着ヘッド26Aおよび中間装着ヘッド26Bによって装着される部品はフィーダ供給部品であり、高能率装着ヘッド26Aおよび中間装着ヘッド26Bによる部品の装着は小装着モジュール12において行われ、汎用装着ヘッド26Cによる部品の装着は大装着モジュール600において行われる。
次いでS52が実行され、3グループの部品についてそれぞれ、各グループに属する部品の装着時間の合計が演算される。3グループの部品はそれぞれ、装着に使用される装着ヘッド26の種類が異なり、3種類の装着ヘッド26A,B,Cの各々の1個の部品の装着に要する時間(部品の部品供給部22からの受取りから配線板150への装着までに要する時間)は、実際には異なるが、ここではそれらのヘッド毎の装着時間の平均値を用いて装着時間の合計を演算することとする。平均装着時間は予め設定された固定値であり、この時間に、各グループに属する部品数を掛けることにより、ブループ毎の装着時間の合計が演算される。
次いでS53が実行され、3つのグループにそれぞれ属する部品を装着するのに必要な装着モジュール数が求められ、複数の装着モジュール12,600においてそれぞれ装着される部品の種類が設定される。S52において演算した部品のグループ毎の装着時間の合計の比率によって、グループ毎の装着モジュール数を設定してもよいが、そのようにすれば、トレイ供給部品を装着する装着モジュールが少なく、全部のトレイ供給部品を装着することができない恐れがある。そのため、S53では、3グループの各部品の数に基づいて、各グループの部品の全部を供給するために必要な最小の装着モジュール数が算出される。各グループの部品の供給形態に基づいて、供給に必要なフィーダ数およびトレイ数が求められ、それらから必要な最小の装着モジュール数が求められる。なお、フィーダ20は、部品の寸法によって幅が異なり、フィーダパレット29への搭載にスロット780を複数要するものがあり、トレイ810の場合もトレイパレット814の多段ラック812への収容に棚818を複数要するものがあり、それらを考慮して必要な装着モジュール数が求められる。高能率装着部品および中間装着部品はいずれもフィーダ20によって供給されるため、それらについては、その装着に必要な装着モジュールとして小装着モジュール12の数がそれぞれ求められる。トレイ供給部品については大装着モジュール600の数が求められる。前述のように、大,小各装着モジュール12,600の各設定数は比較的大きく設定されており、ここでは装着モジュールの不足が回避される。
そして、S54が実行され、S52において3つのグループについてそれぞれ演算された総装着時間を、S53においてグループ毎に求められた必要最小装着モジュール数で割った値が求められる。装着モジュール1つあたりの装着時間が演算されるのである。次いでS55が実行され、装着モジュールを設定数まで増加させることが可能であるか否かが判定される。この判定は、3つの部品グループの中から、S54において演算された装着モジュール1つあたりの装着時間が最も長いグループが求められるとともに、そのグループの装着が行われる装着モジュールの総必要数(高速装着部品グループあるいは中間装着部品グループであれば、それぞれに必要とされる小装着モジュール12の和)が設定数に達していないかが判定されるのである。設定数に達していなければ、S55の判定結果がYESになってS56が実行され、そのグループについて装着モジュールを1つ増やす。なお、装着時間が最長のグループが2つあれば、装着ヘッド26の平均装着時間が長い方について装着モジュールを1つ増やす。この事態は、高速装着部品グループおよび中間装着部品グループについて生じる。装着ヘッド26の平均装着時間は、高能率装着ヘッド26Aが最も短く、汎用装着ヘッド26Cが最も長い。
続いてS57が実行され、S56において装着モジュールを1つ増やした状態において、装着モジュール数が設定数に達したか否かが判定される。小装着モジュール12が増やされたのであれば、その総必要数が設定数と比較され、大装着モジュール600が増やされたのであれば、その必要数が設定数と比較される。大,小装着モジュール600,12の両方共に設定数以下でなければ、S57の判定結果がNOになってS54へ戻る。この場合には、先のS54の実行時より、装着モジュール数が1つ増やされており、その増やされた装着モジュール数に基づいてS54以下のステップが実行される。S54ないしS57は、必要装着モジュール数ないし使用装着モジュール数が設定数以上になるまで繰り返し実行される。1つの部品グループ当たりの装着モジュール数が多いほど、装着モジュール一つあたりの負担が軽減するため、可能な限り装着モジュール数を増やすのである。
小装着モジュール12と大装着モジュール600との一方の必要数が設定数になっても、他方について設定数に達していなければ、装着モジュールの増加が可能であり、S54ないしS57が実行される。装着時間が最も長くても、装着モジュールの増加が不可能であれば、S55の判定結果がNOになってS58が実行される。さらに、装着モジュールを増加させた結果、大,小装着モジュール600,12の必要数がいずれも設定数に達したならば、S57の判定結果がYESになってS58が実行される。なお、追加不可能になったとき大,小装着モジュール600,12のうちの一方については設定数に達していないことがあり得、その場合には、例えば、装着システムを構成する装着モジュール数が減らされる。
このように部品供給形態毎に装着モジュール数が決定されれば、装着システムのライン構成が決まる。装着モジュール12,600は、配線板配線方向において上流側から順に高能率装着部品の装着,中間装着部品の装着およびトレイ供給部品の装着が行われるように配置される。部品の分類に基づいて装着モジュール12,600の配置が決定されれば、装着モジュール毎に装着ヘッド26の種類も決まり、S58においてノズル収容装置752の種類が決定される。
そして、S59において装着モジュール12,600のそれぞれについて部品が割り振られる。同じグループに属する部品は、高さが小さい部品から順に上流側の装着モジュールに割り振られるとともに、均等に割り振られる。装着される部品の種類が決定されれば、装着に使用される吸着ノズル288の種類が決まり、S60においてノズル収容装置752の構成が設定される。ノズル収容装置752に収容される吸着ノズル288の種類,数等が設定されるのである。なお、S58におけるノズル収容装置752の種類の設定は、S60において行ってもよい。
このように装着モジュール数設定型構成変更が行われたならば、構成変更ルーチンのS6が実行され、装着モジュール12,600の各々について、フィーダ20およびトレイ810の配置の最適化が行われる。部品配置の最適化後、S7が実行され、複数の装着モジュール12,600の各々について装着順序の最適化が行われる。これら最適化については先に説明されており、ここでは説明を省略する。
次にS8が実行され、複数の装着モジュール12,600の各々について、サイクルタイムが演算される。ここでは部品配置および装着順序の最適化が行われており、部品の配線板150への実際の装着時と同様に各種作業が行われたとしてサイクルタイムが演算される。
そして、得られたサイクルタイムのうち最長のサイクルタイムが装着システムのサイクルタイムとされ、S9において目標サイクルタイムが達成されたか否かが判定される。この目標サイクルタイムは、本実施形態では、段取替え時間短縮型構成変更において用いた目標サイクルタイムと同じにされている。サイクルタイムが目標サイクルタイム以下であれば、S9の判定結果がYESになってS10が実行され、図55に示すように、演算されたサイクルタイム,段取替え時間(変更所要時間),段取替え時間と総稼動時間との和および図示は省略するが段取替え工数、例えば、交換,配置を必要とする構成要素の種類,数,装着モジュールの数,種類等(図示省略)がディスプレイ984に表示され、オペレータに選択されるようにされる。段取替えに要する時間は、段取替え工数に基づいて演算され、表示される。段取替えに要する時間は、複数の装着モジュール12,600のそれぞれにおける各段取替え時間の和である。
S8において演算されたサイクルタイムが目標サイクルタイムより大きいのであれば、装着モジュール12,600の追加により目標が達成されるようにされる。そのため、S11が実行され、装着モジュール12,600を追加するか否かが判定される。装着モジュール12,600の追加には、ユーザが余分の装着モジュール12,600を有していることが必要であり、また、オペレータが希望すれば追加が行われる。
ディスプレイ984への表示によってオペレータが装着モジュール12,600の追加を希望するか否かが問われ、余分の装着モジュール12,600があり、オペレータが追加を希望するのであれば、S11の判定結果がYESになってS12が実行され、装着モジュール12あるいは装着モジュール600が1つ追加され、S4からの処理を再度行う。この場合、複数の装着モジュールのうち、サイクルタイムが最長であった装着モジュールと同じ種類の装着モジュールが1つ追加され、再度、装着ヘッド選択型構成変更および装着モジュール数設定型構成変更が実行される。
ユーザが追加し得る余分の装着モジュール12,600を有するか否かは、S1において取得した構成変更用情報からわかる。これら余分の装着モジュール12,600は予備構成要素であり、構成変更に用いられれば、すなわち装着モジュールの追加に使用されれば、その装着モジュールについては、既にシステムに取り付けられたことを判別し得る情報が付与される。したがって、この情報が付与されていない装着モジュールが現時点において使用可能であって、追加可能な装着モジュールであることとなる。
目標サイクルタイムが達成されるまで、あるいは追加し得る装着モジュール12,600がなくなるまで、あるいはオペレータが装着モジュール12,600の追加を希望しなくなるまで、S4〜S9,S11,S12が繰り返し実行される。装着モジュールの追加が行われなくなれば、S11の判定結果がNOになってS10が実行され、目標サイクルタイムが達成されなくても、サイクルタイムおよび段取替え時間等がディスプレイ984に表示される。
S10においては、S2において実行された段取替え時間短縮型構成変更において目標サイクルタイムが達成された場合のサイクルタイム等および目標サイクルタイムが達成されなかった場合のサイクルタイム等も表示され、オペレータが選択可能とされる。段取替え時間短縮型構成変更においては、前述のように、優先順位を設定し、目標サイクルタイムが達成される範囲内で、できるだけ段取替えが少なくなるように構成変更が行われるようにされており、構成変更の各段階において目標サイクルタイムが達成されなくても、段取替えは少なくて済むシステム構成が得られる。したがって、それらも表示すれば、オペレータに、段取替え時間の短縮とサイクルタイムの短縮とのいずれを優先するかを選択させることができる。例えば、多品種少量生産の場合、プリント回路板の生産枚数が少ないため、サイクルタイムが多少長くても、全部の生産に要する時間はそれほど長くならず、目標サイクルタイムが達成されなくても、段取替え時間が短くて済むことをオペレータが選択することがあり得る。
総稼動時間は、サイクルタイムにプリント回路板の生産枚数を掛けることにより得られる。したがって、段取替え時間と総稼動時間との和は、1種類のプリント回路板の生産に関して行われる作業に要する全部の時間を表し、例えば、段取替え時間の短縮あるいはサイクルタイムの短縮よりも総作業時間が短いことをオペレータが望むのであれば、そのシステム構成を選択することができる。
オペレータがサイクルタイム等の組合わせを選択し、システム構成を選択したならば、そのサイクルタイム等を得るためのシステム構成,その変更内容および最適化により得られた装着モジュール毎の装着プログラム等が出力される。これらは、例えば、複数の装着モジュール12,600の各々のコンピュータ350へ出力される。プリンタに印刷させてもよい。そして、段取替えのため、選択したシステム構成に従って、フィーダ20,トレイ810の変更,部品供給装置23,25の交換,ノズル収容装置752の交換等が行われる。ノズル収容装置752には、例えば、装着システム外における作業エリアにおいて、設定された構成に応じたノズル保持部材940に設定された種類,数の吸着ノズル288が収容され、現に装着モジュールに取り付けられているノズル収容装置752と交換される。
なお、段取替え時間短縮型構成変更において用いられる目標サイクルタイムおよび構成変更ルーチンのS9において用いられる目標サイクルタイムは、短く、、実際には達成できないことが明らかな時間に設定してもよい。そのようにすれば、目標サイクルタイムが達成されなくても、最良のシステム構成をオペレータが知ることができ、本装着システムは最良システム構成取得手段を有することとなる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、システム制御コンピュータ980のS1を実行する部分が目標入力部および現構成情報取得部を構成し、S2を実行する部分が優先順位順変更部を構成し、S12を実行する部分がユニット数増加部を構成し、ディスプレイ984が出力部を構成し、S4を実行する部分が装着ヘッド選択部を構成するとともに、想定手段,判定手段および決定手段を含む高能率システム構成取得部を構成し、S24,S60等、装着ヘッド26の変更に伴ってノズル収容装置の構成を設定する部分がヘッド対応収容装置変更部を構成し、S21,S22を実行する部分がフィーダ順次追加部を構成し、S6,S7およびS21ないしS25の部品配置および装着順序の最適化を行う部分がプログラム変更部を構成し、S11を実行する部分が装着ユニット数増加決定部を構成している。また、システム制御コンピュータ980のS10を実行する部分および入力装置982が、実行装着システム構成選択手段を構成している。
なお、装着システムの構成を変更するに当たり、段取替え時間短縮型構成変更のみを行ってもよい。その場合、前記段取替え時間短縮型構成変更のS21〜S25を実行し、装着ヘッド26の種類を変更しても目標サイクルタイムを達成できない場合、装着モジュール12,600の追加を行うようにしてもよい。装着モジュールの追加は、例えば、ユーザが余分の装着モジュールを有しており、かつ、追加を希望する場合に行われる。ユーザが余分の装着モジュールを有しているか否かは、取得された構成変更用情報に基づいて調べられる。余分の装着モジュール12,600があり、追加が希望されるのであれば、装着モジュール12,600が追加される。例えば、複数の装着モジュール12,600のうち、装着ヘッド26の変更が終了した時点においてサイクルタイムが最も長い装着モジュールが求められ、その装着モジュールと同じ構成の装着モジュールを追加する。装着モジュールの大,小が同じであって、同じ種類の装着ヘッド26およびノズル収容装置752を備えた装着モジュールを追加するのであり、それにより、サイクルタイムが最長の装着モジュールによる部品の装着の分担が半分になる。なお、追加される装着モジュールが小装着モジュール12である場合、必要であれば、配線板コンベアも追加して配線板150が搬送されるようにする。
装着モジュールの追加により、それまでサイクルタイムが最長であった装着モジュールのサイクルタイムは半分になり、それにより複数の装着モジュール12,600についてサイクルタイムが目標サイクルタイムを超える装着モジュール12,600がなくなれば、目標が達成されたのであり、装着モジュールの追加を含む段取替え内容およびサイクルタイムが記憶されて段取替え時間短縮型構成変更が終了される。
装着モジュール12,600を追加してもなお、目標が達成されないのであれば、全部品取外し型変更に戻って構成変更が行われる。装着モジュール数が1つ増えた状態で部品の割り振りが行われるのである。そして、目標が達成されるのであれば、段取替え時間短縮型構成変更は終了し、目標が達成されないのであれば、ノズル収容装置752の構成変更が行われ、更に目標が達成されないのであれば、装着モジュールの追加が更に実行される。装着モジュールの追加により、直ちに全部品取外し型変更に戻って構成変更を行ってもよい。
追加する装着モジュール12,600がなくなり、あるいはあってもオペレータが追加を希望しなければ、段取替え時間短縮型構成変更は終了する。この場合、目標サイクルタイムは達成されなくても、現時点で可能な装着システムの構成は得られており、段取替え内容がサイクルタイムと対応付けて記憶される。
段取替え時間短縮型構成変更において、現に全部の装着モジュールがそれぞれ有する部品供給装置がフィーダ型供給装置であり、次生産時にフィーダ型供給装置およびトレイ型供給装置が必要な場合であって、トレイ型供給装置が不足する場合に大装着モジュールの追加を行ってもよい。あるいは全部品取外し型構成変更において装着モジュールが不足する場合に、装着モジュールを追加するようにしてもよい。
段取替え時間短縮型構成変更を単独で行う場合、最後まで構成変更を行っても目標が達成されない場合、その最後の構成変更により得られた構成をサイクルタイムが最良の最終的な構成変更としてもよく、システム制御コンピュータのそれを行う部分が最良構成選択部を構成する。段取替え時間短縮型構成変更の各段階において目標を達成できなかった構成変更およびサイクルタイム等をすべて記憶し、段取替え時間短縮型変更では目標を達成できないことが判明した時点において、記憶された複数種類の構成変更の中からサイクルタイムが最良のものを最終的な構成変更として選択してもよい。選択は、コンピュータが自動で行ってもよく、出力してオペレータに行わせてもよい。
上記実施形態におけるように、段取替え時間短縮型構成変更が他の構成変更と共に行われる場合、段取替え時間短縮型構成変更が最終段階まで実行され、それでも目標が達成されなくても構成変更およびサイクルタイムを対応付けて記憶することがサイクルタイムが最良のものを最終的な構成変更として選択する最良構成変更選択部を構成すると考えることもできる。
段取替え時間短縮型構成変更の終了後、装着ヘッド選択型構成変更と装着モジュール数設定型構成変更とのいずれか一方が行われるようにしてもよい。例えば、オペレータの選択に基づいて一方が行われるようにする。
装着システムの構成変更を行うにあたり、装着ヘッド選択型構成変更のみを行うようにしてもよく、その場合、装着システムを構成する装着モジュール数の設定数は、適宜に設定することができる。
装着モジュール数設定型構成変更において、装着モジュール数が不足するか否かを判定するようにし、不足するのであれば、装着モジュールを追加して構成変更を行うようにしてもよい。例えば、前記装着モジュール数設定型構成変更のS53において3つの部品グループ毎に必要最小装着モジュール数を演算した後、必要とされる小装着モジュール数の総和および大装着モジュール数をそれぞれ設定数と比較し、必要数が設定数を超えるのであれば、追加するのであり、追加後は、上記実施形態と同様に部品グループ毎の装着モジュール数の設定を行う。装着モジュールを追加する場合、追加する余分の装着モジュールがあるか否かの判定が行われる。
上記実施形態において装着モジュールは、フィーダ型供給装置とトレイ型供給装置とのいずれか一方を含むようにされていたが、両方を含むようにしてもよい。例えば、装着モジュールが大装着モジュールである場合、小装着モジュール用の大きさを有するフィーダ型供給装置と、そのフィーダ型供給装置と共に設置可能なトレイ型供給装置を設けるのである。
装着システムを構成する複数の装着モジュールは、すべて同じ種類の装着モジュールであってもよく、それら同じ種類の装着モジュールはフィーダ型供給装置とトレイ型供給装置とを選択的に取り付け得るものとしてもよい。