JP2009167296A - セルロース繊維複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロース繊維と、マトリクス材料としての、脂環構造中に酸素原子を含有していてもよい脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有する脂環式ポリカーボネートとを含有する複合材料であって、線膨張係数が50ppm/K以下であるセルロース繊維複合材料。脂環式ポリカーボネートを130〜270℃の温度範囲で加熱溶融してセルロース繊維と一体化することにより、このセルロース繊維複合材料を製造する方法。
【選択図】なし
Description
PCは一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造されるが、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたポリカーボネートが開発されている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたポリカーボネートの開発が注目されている。
しかしながら、この特許文献1では、セルロースとポリカーボネートは混練方法によりコンポジット化されており、本発明者らの検討により、このコンポジットの線膨張係数は高い(悪い)ことが判明した。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、この実施例の方法で得られる複合材料は、芳香族ポリカーボネートの特徴を反映して、靭性(例えば曲げても折れにくい性質、耐衝撃性)はある程度維持しているが、透明性と耐光性が不十分であることが判明した。特に、木質由来のセルロースとの複合材料にした場合には、黄ばみがあり、しかも紫外線の照射により更に黄ばみが増す(耐光性の不足)という欠点があった。
即ち、透明性と耐熱性を発現するためには、非晶状態で、高いガラス転移点(高Tg)を有することが必要である。ISのようなジヒドロキシ化合物を原料として得られる工業利用可能な高分子としてはポリエステルとポリカーボネートが考えられるが、このような高Tgを達成するにはポリカーボネートが有利である。
そして、本発明者らは、脂環式ポリカーボネートの製造、セルロース繊維の製造、並びに両者の複合化について検討した結果、脂環式ポリカーボネートのTgと溶融流動性の双方を実用的に好ましい範囲に収めるには、後述する特定の共重合組成とすることが好ましいことを見出した。また、かかる特定の共重合組成の脂環式ポリカーボネートを用いることにより、セルロース繊維との複合材料の透明性がより一層顕著に改善されることを見出した。この理由の詳細は、現段階では定かでないが、脂環式ポリカーボネートの高分子鎖の可動性が、かかる共重合組成により適度に増大すること、並びにセルロース繊維との相溶性が向上することにより、樹脂とセルロース繊維との密着性が向上して透明性の向上をもたらしたものと推測される。
セルロース繊維とは、主としてセルロースからなる繊維である。
セルロース繊維の繊維径は細いことが好ましい。具体的には1500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、さらに好ましくは1000nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましく、特に好ましくは500nm以上の繊維径のものを含んでいないことが好ましい。1500nm以上の繊維径のものを含んでいないものであれば、樹脂と複合化した場合、透明性が高く、線膨張係数が低いものが得られる点において好ましい。
なお、セルロース繊維の繊維径はSEM観察により確認することができる。
セルロース繊維の原料としては、針葉樹や広葉樹等の木質、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、コットンリンターやコットンリント等のコットン、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高く、セルロース繊維の集合体や不織布ひいてはそれを含有する複合材料の線膨張係数を低下させることができるので、好ましい。バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましく、さらに原料が得やすい点で好ましい。さらには針葉樹や広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源あることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
本発明で用いるセルロース繊維は、化学修飾されていても化学修飾されていなくても良いが、化学修飾されていることが好ましい。即ち、化学修飾されているセルロース繊維の方が化学修飾されていないセルロース繊維よりも耐熱性が高く、複合化を行う際の加熱による着色等を抑えることができる。
なお、化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されているものである。
化学修飾によってセルロースに導入させる官能基としては、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基、チエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
修飾方法としては、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。この反応条件についても特に限定されるものではないが、必要に応じて溶媒、触媒等を用いたり、加熱、減圧等を行うこともできる。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
ここでいう化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
セルロース繊維0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C6O5H10)n=(162.14)n,繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
本発明で用いるセルロース繊維の製造方法は特に限定されるものではなく、セルロース原料を必要に応じて精製ないし微細化して製造される。
バクテリアセルロースをセルロース原料とする場合には、セルロースを産生するバクテリアを培養することによりセルロース繊維を得ることができる。この産生物を培地から取り出し、それを水洗、またはアルカリ処理などしてバクテリアを除去することにより、バクテリアを含まない含水バクテリアセルロースを得ることができる。バクテリアは微細なセルロースを産生するので微細化処理を行うことなく、そのまま用いることができる。
針葉樹や広葉樹等の木質、コットンリンターやコットンリント等のコットンは精製した後、微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。また、バロニアやシオグサ等の海草やホヤの被嚢等も微細化処理を行い微細化したセルロースを得る。
セルロース繊維の化学修飾は、後述のセルロース不織布の化学修飾と同様にして行うことができる。
本発明においては、セルロース繊維をセルロース不織布として用いることが好ましい。
セルロース不織布(以下「本発明のセルロース不織布」と称する場合がある。)とは、主としてセルロースからなる不織布であり、セルロース繊維の集合体である。セルロース不織布は前述のセルロース繊維の製造方法におけるセルロース分散液を抄紙又は塗布によって製膜する方法、あるいはゲル状膜を乾燥する方法などによって得られる。
本発明のセルロース不織布の厚みは特に制限されるものではないが、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上で、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは500μm以下、特に好ましくは250μm以下である。セルロース不織布の厚みは、製造の安定性、強度の点から上記下限以上で厚い方が好ましく、生産性、均一性、樹脂の含浸性の点から上記上限以下で薄い方が好ましい。
本発明のセルロース不織布は空隙率が35vol%以上であることが好ましく、さらには35vol%以上60vol%以下であることが好ましい。セルロース不織布の空隙率が小さいと、化学修飾を行う場合、後述の化学修飾が進行しにくかったり、マトリクス材料である脂環式ポリカーボネートが含浸しにくくなり、複合材料にしたときに未含浸部が残るため、その界面で散乱が生じてヘーズが高くなり好ましくない。また、セルロース不織布の空隙率が高いと複合材料としたとき、セルロース繊維による十分な補強効果が得られず、線膨張係数が大きくなるので、好ましくない。
空隙率(vol%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm2)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm3と仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo(株)製 IP65)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用する。
本発明のセルロース不織布の色目は、白いことが好ましい。本発明のセルロース不織布は、上述のように繊維径の細いセルロース繊維で構成されるが、空隙があるために、セルロース不織布自体は実質的には透明にならず、脂環式ポリカーボネートを含浸させて複合化した後に透明となる。その際、無色であることが好ましい。よって、不織布自体は白いことが好ましい。
本発明のセルロース不織布の製造方法は特に限定されるものではないが、化学修飾したセルロース不織布を製造する場合には、好ましくは、セルロースを不織布とした後に、化学修飾することにより、より好ましくは、セルロースを有機溶媒で洗浄した後に不織布とし、その後化学修飾することにより製造される。
具体的には孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリテトラフルオロエチレンの多孔膜、孔径0.1〜5μm、例えば1μmのポリエチレンテレフタレートやポリエチレンの織物等が挙げられる。
このようにして化学修飾を行った後は、反応を終結させるために水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。また、水で十分に洗浄した後、さらに残留する水をアルコール等の有機溶媒で置換することが好ましい。この場合、不織布をアルコール等の有機溶媒に浸漬しておくことで容易に置換することができる。
セルロース不織布は、化学修飾を行なわないのであれば、酸で洗浄することが好ましい。即ち、セルロースの精製過程で各種薬液を用いた場合、様々な塩が残留する恐れがある。特に、アルカリ金属や塩素は光カチオン重合を阻害する恐れがあるため、十分に酸等で洗浄する必要がある。使用する洗浄液としては、塩が残留しない物であればよく、酢酸水溶液が好適に用いられる。この酢酸水溶液の酢酸濃度は好ましくは1重量%以上50重量%以下、より好ましくは5重量%以上35重量%以下である。酢酸濃度が薄い場合は洗浄効果が弱く、濃い場合はセルロース繊維が変質するなど悪影響を与える恐れがある。洗浄温度は室温から60℃程度が好ましい。洗浄温度が低いと洗浄効率が低下する。高いと洗浄液から酢酸が蒸発するなど、操作が困難になる。洗浄時間は1秒以上10時間以下が好ましい。洗浄時間が短いと洗浄効果が得られず、長いとセルロース繊維の変質を引き起こす可能性がある。この様に酢酸水溶液で洗浄した後、脱塩水にて十分に酢酸を洗浄除去する。その後、エタノールやイソプロピルアルコールのような有機溶剤に浸漬した後、上記に示したようなプレス加工(加圧乾燥)を行うことが出来る。
本発明における脂環式ポリカーボネートとは、酸素原子を脂環構造中に含有していてもよい脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有するポリカーボネートである。ここでいう脂環式ジヒドロキシ化合物とは、酸素原子を含有していても良い脂肪族環状構造を有するジオール分子であって、1分子中の水酸基数が2のものである。但しここで水酸基はアルコール性水酸基である。
ただし、かかる脂環式ポリヒドロキシ化合物に由来する構成単位が、脂環式ポリカーボネート中の全ヒドロキシ化合物に由来する構成単位中に占めるモル比は、通常0〜2モル%、好ましくは0〜1モル%であって、このモル比が2モル%を超えると脂環式ポリカーボネート分子の分岐構造が過多となり溶融流動性や機械的強度が悪化する。なお、前記脂環式ポリヒドロキシ化合物に由来する構成単位のモル%は、与えられた脂環式ポリカーボネートを含有する複合材料から脂環式ポリカーボネート成分をジクロロメタン等の溶剤で抽出し、1Hや13Cの核磁気共鳴(NMR)スペクトルを中心とする化学分析により決定することができる。
なお、イソソルビドの蟻酸含有量の測定方法は、具体的には後述の実施例の項で示す通りである。
HOCH2−R1−CH2OH (II)
HO−R2−OH (III)
(式(II),(III)中、R1,R2は、炭素数4〜20のシクロアルキル基、又は炭素数6〜20のシクロアルコキシル基を表す。)
例えば、柔軟性が必要とされるフィルム用途では、ポリカーボネートのガラス転移温度が45℃以上、例えば45〜100℃に、また、ある程度の耐熱性が求められるボトルやパックといった成形体用途では、ポリカーボネートのガラス転移温度は90℃以上、例えば90〜130℃に調整することが好ましい。さらにガラス転移温度が120℃以上であると、レンズ用途やディスプレイ、基板、パネル、グレージング等の窓材、内装材、外板、パソコン筺体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他工業用資材等に好適となる。
本発明の脂環式ポリカーボネートは、酸素原子を脂環構造中に含有していてもよい脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有するが、前述の如く、酸素原子を脂環構造中に含有していてもよい脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位は、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構成単位を含有することが好ましく、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構成単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物(X)に由来する構成単位とを含有することがさらに好ましい。
ここでは、ジヒドロキシ化合物(1)に由来する構成単位と、脂環式ジヒドロキシ化合物(X)に由来する構成単位とを含有する脂環式ポリカーボネートの製造方法について説明する。
酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
その他のジヒドロキシ化合物及び脂環式ポリヒドロキシ化合物についても同様である。
本発明の複合材料は、前述のセルロース繊維と脂環式ポリカーボネートとを複合化してなるものである。
本発明のセルロース繊維複合材料中のセルロース繊維間の空隙は、脂環式ポリカーボネートが充填されている。基本的にはセルロース繊維間又は不織布を作成した際の空隙が保たれ、そこに脂環式ポリカーボネートが充填されている。
本発明の複合材料において、セルロース繊維と脂環式ポリカーボネートの複合割合は特に制限はなく、通常、セルロース繊維が1重量%以上99重量%以下であり、脂環式ポリカーボネートが1重量%以上99重量%以下である。低線膨張性を発現するにはセルロース繊維含有量が1重量%以上、脂環式ポリカーボネート含有量が99重量%以下であること必要であり、透明性を発現するにはセルロース繊維含有量が99重量%以下、脂環式ポリカーボネート含有量が1重量%以上であることが必要である。好ましい範囲はセルロース繊維含有量が2重量%以上90重量%以下であり、脂環式ポリカーボネート含有量が10重量%以上98重量%以下であり、さらに好ましい範囲はセルロース繊維含有量が5重量%以上80重量%以下であり、脂環式ポリカーボネート含有量が20重量%以上95重量%以下である。
本発明のセルロース繊維複合材料は、セルロース繊維及び脂環式ポリカーボネート以外のその他の材料を含んでいてもよい。本発明のセルロース繊維複合材料がセルロース繊維及び脂環式ポリカーボネート以外に含有し得るその他の材料としては、脂環式ポリカーボネートに一般的な各種の添加剤が挙げられ、このような添加剤としては、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するための熱安定剤、酸化防止のための酸化防止剤、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるための離型剤、光安定剤、ブルーイング剤、紫外線吸収剤、滑剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、難燃剤等が挙げられる。
熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
離型剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
本発明の脂環式ポリカーボネートには、重合体や紫外線吸収剤に基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
本発明において複合材料の厚みは、好ましくは20μm以上10mm以下である。このような厚みの複合材料にすることで強度を保つことができる。複合材料の厚みは好ましくは25μm以上、特に好ましくは30μm以上で、好ましくは8mm以下、特に好ましくは5mm以下である。
本発明の複合材料は、複数枚を重ねて積層体とすることができる。この積層体に加熱プレス処理等を加えることで厚膜化することができる。
厚膜の複合材料は、グレージングや構造材料として用いることができる。
本発明のセルロース繊維複合材料の製造方法としては、特に限定されるものではないが、前記脂環式ポリカーボネートを、130〜270℃の温度範囲で加熱して溶融させて、前記セルロース繊維と一体化する方法が好ましい。なお、ここで、脂環式ポリカーボネートとは、脂環式ポリカーボネートに必要に応じて用いられる上述のその他の材料を配合した脂環式ポリカーボネート組成物をも包含するものである。以下においても同様である。
(a) セルロース不織布に、脂環式ポリカーボネート(或いは脂環式ポリカーボネート組成物)溶液を含浸させて乾燥後、加熱プレス等で密着させる方法
(b) セルロース不織布に、脂環式ポリカーボネート(或いは脂環式ポリカーボネート組成物)の溶融体を含浸させ、加熱プレス等で密着させる方法
(c) 脂環式ポリカーボネート(或いは脂環式ポリカーボネート組成物)フィルムとセルロース不織布とを重ねて加熱プレスする方法
(d) セルロース繊維分散液を脂環式ポリカーボネート(或いは脂環式ポリカーボネート組成物)フィルムに塗布して加熱プレスする方法
また、加熱プレスで加圧する前に、脱気することが好ましい。脱気は通常、加圧と脱圧を繰り返すことで行う。また、この際真空にすることも効果的である。
<ヘーズ>
本発明のセルロース繊維複合材料は、セルロース繊維と脂環式ポリカーボネートとを複合化したことにより、透明性の高い、すなわちヘーズの小さい複合材料となる。本発明のセルロース繊維複合材料のヘーズ値は、JIS規格K7136に従って測定した値として、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、特にこの値は5以下であることが各種透明材料として用いる場合に好ましい。セルロース繊維複合材料のヘーズは、例えば、膜厚100±10μmの複合材料を使用し、スガ試験機製ヘーズメータで測定することができ、C光の値を用いる。
本発明のセルロース繊維複合材料は、セルロース繊維と脂環式ポリカーボネートとを複合化したことで、線膨張係数の低い材料を実現することができ、特にセルロース繊維を不織布にして用いることで、従来のポリカーボネートに対して線膨張係数を大きく低減させることができる。本発明の複合材料の線膨張係数(1K当りの伸び率)は50ppm/K以下であり、好ましくは45ppm/K以下であり、より好ましくは40ppm/K以下である。
即ち、例えば、窓材として用いる場合、周辺部材、例えば金属等の枠材に対して成形や使用環境における温度変化に追従する面方向の寸法変化が小さいことが求められ、50ppm/K以下さらには40ppm/K以下であることが好ましい。基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であるため、セルロース繊維複合材料の線膨張係数が50ppm/Kを超えると無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張係数差が大きくなり、クラック等が発生する。従って、本発明のセルロース繊維複合材料の線膨張係数は、特に5〜40ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定される。
本発明のセルロース繊維複合材料は、セルロース繊維と脂環式ポリカーボネートとを複合化したことで、着色の小さい複合材料を実現することができる。
セルロース繊維複合材料においては、セルロースを用いることで原料由来で黄色味がつく場合、後の化学修飾によって黄色味が着く場合、複合化の際の加熱で黄色味がつく場合がある。特に木質由来の原料を用いる場合、精製度合いによって黄色味が着くことがある。不織布に黄色味が着くと、複合化した際、透明であっても黄色味を示し、好ましくない。
本発明で用いる脂環式ポリカーボネートは、従来のポリカーボネートと比べて樹脂の溶融粘度が低いために、複合化の際の加熱温度を低温にすることができるため、このような複合化の際の加熱に起因する着色を防止することができる。
本発明のセルロース繊維複合材料は、JIS規格K7105に準拠して測定した黄色度(YI値)が20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。セルロース繊維複合材料の黄色度は例えば、膜厚100±10μmの複合体を使用し、スガ試験機製カラーコンピューターを用いて測定することができる。
本発明のセルロース繊維複合材料は、通常引張弾性率が0.2〜100GPaであり、より好ましくは1〜50GPaである。引張弾性率が0.2GPaより低いと、十分な強度が得られず、構造材料等、力の加わる用途への使用に影響を与えることがある。
本発明におけるセルロース繊維はセルロースの伸びきり鎖結晶が故に低線膨張係数、高弾性を発現する。またセルロース繊維を微細化することで脂環式ポリカーボネートと複合化した際、透明性が高く、着色、ヘーズの小さい複合材料を得ることができる。
本発明のセルロース繊維複合材料は、このように光学特性に優れるため、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイや基板やパネルとして好適である。これらの用途においては、フレキシブルな材料としてガラス代替が可能であり、軽量化、柔軟性、成形性、意匠性等の向上効果が得られる。
なお、以下において、作製した試料の物性等は、下記の評価方法及び測定方法により行った。
セルロース繊維0.05gを精秤しこれにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌しさらに室温で一日攪拌する。これをフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)=0.05(N)×10(ml)/1000
−0.02(N)×Z(ml)/1000
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される(セルロース=(C6O5H10)n=(162.14)n,繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17)。なお、以下において、Tは置換基の分子量である。
セルロース不織布の面積、厚み、重量から、下記式によって求めた。
空隙率(vol%)={(1−B/(M×A×t)}×100
ここで、Aは不織布の面積(cm2)、t(cm)は厚み、Bは不織布の重量(g)、Mはセルロースの密度であり、本発明ではM=1.5g/cm3と仮定する。セルロース不織布の膜厚は、膜厚計(Mitutoyo(株)製 IP65)を用いて、不織布の種々な位置について10点の測定を行い、その平均値を採用した。
イソソルビドに含まれる蟻酸量をイオンクロマトグラフで次の通り測定した。
イソソルビド約0.5gを精秤し、50mlのメスフラスコに採取して純水で定容した。標準試料にはギ酸ナトリウム水溶液を用い、標準試料とリテンションタイムの一致するピークを蟻酸として、ピーク面積から絶対検量線法で定量した。
イオンクロマトグラフは、Dionex社製のDX−500型を用い、検出器には電気伝導度検出器を用いた。測定カラムとして、Dionex社製ガードカラムにAG−15、分離カラムにAS−15を用いた。測定試料を100μlのサンプルループに注入し、溶離液に10mM−NaOHを用い、流速1.2ml/min、恒温槽温度35℃で測定した。サプレッサーには、メンブランサプレッサーを用い、再生液には12.5mM−H2SO4水溶液を用いた。
アッベ屈折計(アタゴ社製「DR−M4」)で、波長656nm(C線)、589nm(d線)546nm(e線)、486nm(F線)の干渉フィルターを用いて、各波長の屈折率、nC、nD、ne、nFを測定した。
測定試料は樹脂を200℃でプレス成形し、厚み約200μmのフィルムを作製し、得られたフィルムを幅約8mm、長さ10から40mmの短冊状に切り出し、測定試験片とした。
測定は、界面液として1−ブロモナフタレンを用い、20℃で行った。
アッベ数νdは次の式で計算した。
νd=(1−nD)/(nC−nF)
アッベ数が大きいほど、屈折率の波長依存性が小さくなり、例えば単レンズにした際の波長による焦点のずれが小さくなる。
示差走査熱量計(メトラー社製「DSC822」)に試料約10mgを用いて、10℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JIS K 7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた折線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度Tigを求めた。
中央理化製DT−504型自動粘度計にてウベローデ型粘度計を用い、溶媒として、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンの1:1混合溶媒を用い、温度30.0℃±0.1℃で測定した。濃度は1.00g/dlになるように、精密に調整した。
サンプルは120℃で攪拌しながら、30分で溶解し、冷却後測定に用いた。
溶媒の通過時間t0、溶液の通過時間tから相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t0(g・cm-1・sec-1)
相対粘度ηrelから比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η0)/η0=ηrel−1
比粘度ηspを濃度c g/dlで割って還元粘度(換算粘度)ηredを求めた。
ηred=ηsp/c
この数値が高いほど分子量が大きい。
セイコー電子製「TG−DTA」(SSC−5200、TG/DTA220)を用い、資料10mgをアルミニウム製容器に載せ、窒素雰囲気下(窒素流量200ml/分)で昇温速度10℃/分で30℃から450℃まで測定し、5%重量が減少した際の温度を求めた。
この温度が高いほど、熱分解しにくい。
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマックス射出成形機「CS−183MMX」を用いて、温度245℃、金型温度90℃、長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ3.2mmの試験片(平行部長さ9mm、平行部直径1.5mmの引張試験片)を射出成形し、深さ1.2mmのノッチをノッチングマシンで付け、試験片とした。
この試験片について、カスタム・サイエンティフィック社製ミニマックスアイゾット衝撃試験機「CS−183TI型」を用いて、23℃におけるノッチ付きのアイゾット衝撃強度を測定した。
この数値が大きいほど、耐衝撃強度が大きく、割れにくい。
<サンプル作製>
80℃で5時間真空乾燥をしたポリカーボネート樹脂サンプル4.0gを、幅8cm、長さ8cm、厚さ0.5mmのスペーサーを用いて、熱プレスにて熱プレス温度200〜250℃で、予熱1〜3分、圧力20MPaの条件で1分間加圧後、スペーサーごと取り出し、水管冷却式プレスで圧力20MPaで3分間加圧冷却してシートを作製した。このシートから幅5mm、長さ20mmにサンプルを切り出した。
<測定>
He−Neレーザー、偏光子、補償板、検光子、及び光検出器からなる複屈折測定装置と振動型粘弾性測定装置(レオロジー社製DVE−3)を組み合わせた装置を用いて測定した。(詳細は、日本レオロジー学会誌Vol.19,p93−97(1991)を参照。)
切り出したサンプルを粘弾性測定装置に固定し、25℃の室温で貯蔵弾性率E’を周波数96Hzにて測定した。同時に、出射されたレーザー光を偏光子、試料、補償板、検光子の順に通し、光検出器(フォトダイオード)で拾い、ロックインアンプを通して角周波数ω又は2ωの波形について、その振幅とひずみに対する位相差を求め、ひずみ光学係数O’を求めた。このとき、偏光子と検光子の方向は直交し、またそれぞれ、試料の伸長方向に対してπ/4の角度をなすように調整した。
光弾性係数Cは、貯蔵弾性率E’とひずみ光学係数O’を用いて次式より求めた。
C=O’/E’
<サンプル作製>
100℃で5時間真空乾燥をしたポリカーボネート樹脂サンプル8gを、幅8cm、長さ8cm、厚さ0.5mmのスペーサーを用いて、熱プレスにて熱プレス温度200〜250℃で、予熱1〜3分、圧力20MPaの条件で1分間加圧後、スペーサーごと取り出し、水管冷却式プレスを用いて圧力20MPaで3分間加圧冷却しシートを作製した。このシートから幅1cm長さ2cmのサンプルを切り出した。厚さは1mmであった。
<測定>
加熱脱着−ガスクロマトグラフ/質量分析法(TDS−GC/MS)にて発生ガスを測定した。測定装置として、GERSTEL社製 TDS2を用い、加熱脱着温度を250℃、10分、トラップ温度を−130℃、で実施した。
サンプルをガラスチャンバーに入れ、110℃で30分間、ヘリウム60mL/分で発生するガスを捕集管Tenax−TAで捕集した。
GC/MSとしてAgilent社製 HP6890/5973N、カラムとしてHP−VOC 0.32×60m 1.8μmdfを用い、40℃、5分保持した後、8℃/分で280℃まで昇温後、280℃で25分保持して、測定した。キャリアガスとしてヘリウム1.3mL/分で測定した。
ガス発生量は製造時に留出するフェノール及びフェノールに由来するベンズアルデヒドを除いた単位面積当たりのトータル発生量としてトルエンによる換算値にて求めた。
JIS規格K7136に準拠し、スガ試験機製ヘーズメータを用いてC光によるヘーズ値を測定した。
SII社製DMS6100を用いて引張モードでDMA(動的粘弾性)測定を行い、周波数10Hz、23℃における貯蔵弾性率E’(単位;GPa)を測定した。
得られた複合材料をレーザーカッターにより、3mm幅×40mm長にカットした。これをSII製TMA120を用いて引っ張りモードでチャック間20mm、荷重10g、窒素雰囲気下、室温から120℃まで5℃/min.で昇温、120℃から25℃まで5℃/min.で降温、25℃から120℃まで5℃/min.で昇温した際の2度目の昇温時の60℃から100℃の測定値から線膨張係数を求めた。
木粉((株)宮下木材製「米松100」)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。これを脱塩水で洗浄した後、亜塩素酸ナトリウムを用いて酢酸酸性下、80℃にて5.5時間浸漬してリグニン除去を行った。脱塩水洗浄した後、濾過し、回収した精製セルロースを脱塩水で洗浄後、5重量%の水酸化カリウム水溶液に16時間浸漬してヘミセルロース除去を行った。更に、脱塩水洗浄した後に、0.5重量%の水懸濁液とし、超高圧ホモジナイザー(アルティマイザー;スギノマシーン社製)に圧力245MPaで、10回通して微細化した。
また、SEM観察により繊維径500nm以上のものが含まれていないことを確認した。任意に抽出した20箇所の平均繊維径は14nmであった。
イソソルビド(蟻酸含有量5ppm)(ロケットフルーレ社製)26.9重量部(0.483モル)に対して、トリシクロデカンジメタノール(セラニーズ社製)15.8重量部(0.211モル)、ジフェニルカーボネート(三菱化学(株)製)57.4重量部(0.709モル)、及び触媒として、炭酸セシウム(和光純薬社製)2.14×10−4重量部(1.73×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaに40分で減圧し、加熱槽温度を190℃まで40分で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、加熱槽温度を220℃まで、30分で上昇させた。昇温に入ってから10分後に、反応容器内の圧力を30分で0.200kPa以下とし、発生するフェノールを溜出させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、脂環式ポリカーボネートのペレットを得た。
還元粘度:0.640dl/g
ガラス転移温度Tig:126℃
アイゾット衝撃強度:48J/m2
屈折率(nD):1.5095
アッベ数:62
5%熱減量温度:348℃
光弾性係数:9×10−12Pa−1
発生ガス量
フェノール成分以外の成分由来の発生ガス量:4.5ng/cm2
ジヒドロキシ化合物(1)を除くジヒドロキシ化合物由来の発生ガス:検出されず
製造例1で得られたセルロース不織布を、製造例2で得られた脂環式ポリカーボネートをジクロロメタンに10重量%濃度で溶解させた溶液に、不織布面を溶液面に対して垂直にして、4回ディップした。ディップ時間は5秒間で、ディップ間の間隔は5分であった。これを120℃の真空下にて一晩乾燥させた後、210℃にて5分予備加熱した後1分間脱気して、同温度で1分間0.4MPaにて加熱プレスして複合材料を得た。得られた複合材料のセルロース繊維含有量は45重量%であった。また、この複合材料の厚みは100μmであった。
この複合材料のヘーズは5、引張弾性率(E’)は4.4GPa、線膨張係数は37ppm/Kであった。
製造例2の脂環式ポリカーボネートをビスフェノールA−ポリカーボネートに変えた以外は実施例1と同様にして、複合材料を得た。得られた複合材料のセルロース繊維含有量は45重量%であった。また、この複合材料の厚みは100μmであった。
この複合材料のヘーズは11、引張弾性率(E’)は5.9GPa、線膨張係数は30ppm/Kであった。
製造例1において、微細化により得られたセルロース分散液を凍結乾燥した後、凍結粉砕してセルロースを得た。
製造例2で得られた脂環式ポリカーボネートを210℃で加熱して溶融させ、この脂環式ポリカーボネート融液中に、攪拌下、得られる複合材料のセルロース含有量が45重量%となるように、上記のセルロースを混合した後、210℃でプレス成形して厚み100μmの複合材料を得た。
この複合材料のヘーズは91、引張弾性率(E’)は4.0GPa、線膨張係数は62ppm/Kであった。
また、実施例1と比較例2の結果から、セルロースを脂環式ポリカーボネートに溶融混練した複合材料では、透明性が低く、線膨張係数が高くなることがわかる。
これに対して、本発明によれば、高透明性で引張弾性率が高く、線膨張係数が低い高性能複合材料を得ることができる。
Claims (6)
- セルロース繊維と、マトリクス材料としての、脂環構造中に酸素原子を含有していてもよい脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有する脂環式ポリカーボネートとを含有する複合材料であって、線膨張係数が50ppm/K以下であるセルロース繊維複合材料。
- 前記脂環式ジヒドロキシ化合物が、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物以外の脂環式ジヒドロキシ化合物を含有する請求項2に記載のセルロース繊維複合材料。
- 前記セルロース繊維が、化学修飾されたセルロース繊維である請求項1ないし3のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料。
- 前記セルロース繊維がセルロース不織布である請求項1ないし4のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料。
- 前記脂環式ポリカーボネートを130〜270℃の温度範囲で加熱溶融して前記セルロース繊維と一体化する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のセルロース繊維複合材料の製造方法。
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