JP2009155569A - インクジェット記録用水分散体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】〔1〕着色剤、ポリマー粒子、水100g(20℃)に溶解しうる最大重量が5g以下である特定の水不溶性有機化合物、及び水を含有する水分散体を、40℃以上で加熱処理するインクジェット記録用水分散体の製造方法、及び〔2〕得られた水分散体を含有するインクジェト記録用水系インクである。
【選択図】なし
Description
その中でも、印字物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料系インクを用いるものが主流となってきている。(例えば、特許文献1〜3参照)
特許文献1には、インク製造後に粘度変化が少なく、保存安定性に優れたインクジェット記録用水系インクを提供するために、水、着色剤、水不溶性ポリマー、及び有機溶媒を含有する混合物を分散処理した後、該有機溶媒を除去して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得る工程(1)、及び前記水分散体を40℃以上で加熱処理する工程(2)を有するインクジェット記録用水系インクの製造方法が開示されている。
特許文献2には、印字濃度が高く、光沢性、写像性に優れたインクジェット記録用水系インクを提供するために、水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、及び水を含有する混合物を得る工程(1)、得られた混合物を分散処理する工程(2)、得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得る工程(3)を有し、いずれかの工程中又は工程後に、水不溶性有機化合物を存在させてなるインクジェット記録用水分散体の製造方法が開示されている。
特許文献3には、水不溶性有機化合物を水不溶性ポリマー粒子中に安定に存在させるために、水不溶性ポリマー、顔料、有機溶媒及び水を混合し、分散処理して、顔料分散体を得る工程、得られた分散体と水不溶性有機化合物とを混合し、分散処理する工程とを有する、水不溶性有機化合物を含有する顔料分散体の製造方法が記載されている。
しかしながら、上記の顔料分散体は吐出性において満足できるものではない。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔2〕を提供する。
〔1〕着色剤、ポリマー粒子、水100g(20℃)に溶解しうる最大重量が5g以下であって、エステル化合物、エーテル化合物、及びスルホン酸アミド化合物からなる群から選ばれる一種以上である水不溶性有機化合物、及び水を含有する混合物を、40℃以上で加熱処理する工程を有する、インクジェット記録用水分散体の製造方法。
〔2〕前記〔1〕の方法によって得られたインクジェット記録用水分散体を含有する、インクジェト記録用水系インク。
本発明において、水100g(20℃)に溶解しうる最大重量が5g以下であって、エステル化合物、エーテル化合物、芳香族アルコール及びスルホン酸アミド化合物からなる群から選ばれる一種以上の水不溶性有機化合物(以下、単に、「水不溶性有機化合物」ともいう)を用いる。本発明で用いられる、水不溶性有機化合物は、少なくともその一部がポリマー粒子に含有されてその運動性を改良する機能を有すると考えられる。そこで、水不溶性有機化合物が存在する中で加熱処理を行うことにより、ポリマー粒子の運動性がさらに向上し、分散体がより安定な状態になると考えられる。
水100gに対する水不溶性有機化合物の溶解量(20℃)は5g以下であり、好ましくは3g以下、更に好ましくは1g以下である。
水不溶性有機化合物は、ポリマーの柔軟性を向上させるため、そのLogP値が−1〜11であることが好ましく、1〜9がより好ましく、1.5〜8が更に好ましく、2〜7が特に好ましい。
また、水不溶性有機化合物とポリマー粒子との相互作用の観点から、〔[水不溶性有機化合物のLogP値]−[ポリマーのLogP値]〕の値が、−4〜8であることが好ましく、−2〜6であることがより好ましく、−1.5〜5であることが更に好ましく、−1〜4であることが特に好ましい。
ここで「LogP値」とは、水不溶性有機化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値を意味し、KowWin(Syracuse Research Corporation,USA)のSRC's LOGKOW / KOWWIN Programにより、フラグメントアプローチで計算された数値を用いる(The KowWin Program methodology is described in the following journal article: Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 84: 83-92.)。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している。LogP値は、一般に有機化合物の親疎水性の相対的評価に用いられる数値である。
SP値(溶解度パラメータ)とは、凝集エネルギー密度、すなわち1分子の単位体積当たりの蒸発エネルギーを1/2乗したもので、単位体積当たりの極性の大きさを示す数値である。その値は、Fedorsの方法〔Robert F.Fedors, Polymer Engineering and Science, 14, 147-154 (1974)〕により計算することができる。
(f)化合物のエステル又はエーテル結合は、2〜3個が好ましく、エステル結合とエーテル結合とを有するものでもよい。(g)化合物のエステル又はエーテル結合は、1〜3個が好ましい。官能基数は、1〜3個が好ましい。リン酸残基とは、リン酸の一部がエステル化された残りのリン酸基のことをいう。
エステル化合物の中では、1価カルボン酸又はその塩と多価アルコールから得られるエステル、多価酸(多価カルボン酸、リン酸)又はその塩と1価アルコールから得られるエステルが好ましく、脂肪族又は芳香族カルボン酸エステル基を2つ又はリン酸エステル基を3つ有することが更に好ましい。その塩としては、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。また、エーテル化合物の中では、多価アルコールのエーテルが好ましい。
多価酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の炭素数2〜12の脂肪族カルボン酸;フタル酸、トリメリット酸等の炭素数6〜12の芳香族カルボン酸、リン酸等が挙げられる。
1価アルコールとしては、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコール(例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール)、炭素数6〜12の芳香族アルコール(例えば、フェノール)等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の炭素数2〜12の多価アルコール等が挙げられる。
脂肪酸やアルコールとしては飽和又は不飽和のいずれのものも使用できる。
これらの中では、吐出性の観点から、前記(1)〜(5)、(8)及び(10)の化合物が好ましく、(1)脂肪族ジ又はトリカルボン酸エステル、(2)芳香族カルボン酸エステル、(3)シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステル及び(4)リン酸エステルからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましく、(1)脂肪族ジカルボン酸エステル、(2)芳香族ジ又はトリカルボン酸エステル、(3)シクロアルカン(ケン)ジカルボン酸エステル、及び(4)リン酸エステルからなる群より選ばれる1種以上であることが特に好ましい。
(1)脂肪族ジカルボン酸エステル、(2)芳香族ジカルボン酸エステル、及び(3)シクロアルカン(ケン)ジカルボン酸エステルは、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
R3は、2価の脂肪族炭化水素基、環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましく、好ましくは炭素数2〜15、更に好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルカンジイル基(アルキレン基)又はアルケニレン基あるいは、炭素数6〜10のアリーレン基、更に好ましくはフェニレン基、炭素数3〜8の環式飽和又は不飽和炭化水素基である。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基、ヘプタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−1,5−ジイル基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、フェニレン基等が挙げられる。以下の式においても同様である。
m及びnは、それぞれ独立に、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜15、更に好ましくは1〜15、特に好ましくは2〜14、最も好ましくは2〜12である。
R1〜R3が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基等のオキシカルボニル基、アセチル、ベンゾイル基等のアシル基、アセチルオキシ基等のアシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、オキソ基、エポキシ基、エーテル基、エステル基等が例示できる(これらを総称して「置換基」という)。これらの置換基は1つであっても2つ以上を組み合わせてもよい。
R3が有していてもよい置換基としては、−CO(O)−(AO)L−R4が好ましい。式中、AOは前記と同じである。Lは、前記のmと同じ意味を示し、好ましい範囲も同じである。R4は、前記のR1と同じ意味を示し、好ましい範囲も同じである。この場合、R3は、芳香族炭化水素基であることが好ましい。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジエチレングリコール)アジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート等の脂肪族二塩基酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(ブチルジエチレングリコール)アジペート、ビス(オクトキシポリエチレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EOの各平均付加モル数m及びn=1〜4)、ビス(オクトキシポリプロピレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、POの各平均付加モル数m及びn=1〜6)、ビス(オクトキシポリエチレングリコール・ポロプロピレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ブロック付加)、ビス[オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)]アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ランダム付加)、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジイソブチルセバケート等の炭素数6〜14の脂肪族二塩基酸のジエステルが特に好ましい。
芳香族カルボン酸エステルの具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ステアリルベンジルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジフェニルフタレート、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)フタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等のフタル酸エステル、トリブチルトリメリテート、トリイソブチルトリメリテート、トリ(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート等の炭素数1〜5の脂肪族アルコール残基を有するフタル酸ジエステル、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ステアリルベンジルフタレート等の炭素数3〜18のアルキル基を有するベンジルフタレート、ビス(オクトキシポリエチレングリコール)フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EOの各平均付加モル数m及びn=1〜5)、ビス(オクトキシポリプロピレングリコール)フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、POの各平均付加モル数m及びn=1〜4)、ビス(オクトキシポリエチレングリコール・ポロプロピレングリコール)フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ブロック付加)、ビス[オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)]フタレート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ランダム付加)等のフタル酸エステル、及びトリブチルトリメリテート、トリイソブチルトリメリテート等の炭素数3〜5の脂肪族アルコール残基を有するトリメリット酸ジエステルが特に好ましい。
シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステルの具体例としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルエステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキサンカルボン酸エステル類、3,4−シクロヘキセンジカルボン酸ジブチルエステル、3,4−シクロヘキセンカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキセンカルボン酸エステル等が挙げられる。
(4)リン酸エステルは下記式(4)で表される化合物が好ましい。
リン酸エステルの具体例としては、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等の炭素数5〜9のアルコキシアルキル基を有するリン酸エステル、トリブチルホスフェート等の炭素数4〜12の脂肪族炭化水素基を有するリン酸エステル、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等の炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を有するリン酸エステルが特に好ましい。リン酸エステルは、リン酸ジ又はトリエステルが好ましい。
(6)グリコールエステルの好適例としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)等が挙げられる。
(7)エポキシ系エステルの好適例としては、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が挙げられる。
(8)スルホンアミドの好適例としては、o−及びp−トルエンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
(9)ポリエステルの好適例としては、ポリ(1,2−ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)等が挙げられる。
(11)グリセリルアルキルエステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステルがあり、これらの中では、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の直鎖脂肪族カルボン酸、ピバリン酸等の分岐脂肪族カルボン酸)のエステルが好ましい。より具体的には、グリセリルトリアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノアセテート等が挙げられる。
(12)グリコールアルキルエーテルとしては、モノエーテル、ジエーテルがあり、グリコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。また、アルキル基としては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数8〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
(13)芳香族アルコールとしては、好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基と、水酸基を有する化合物であり、水酸基は1個が好ましい。具体的には、ベンジルアルコール、クミニルアルコール、フェネチルアルコール、ヒドロシンナミルアルコール等が挙げられる。
着色剤としては特に制限はなく、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等を用いることができるが、耐水性、保存安定性及び耐擦過性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。
顔料及び疎水性染料は、水分散体に使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にすることが好ましい。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、ポリマーの粒子中に顔料及び/又は疎水性染料を含有させることが好ましく、近年要求が強い高耐候性を発現させるためには、ポリマーの粒子中に顔料を含有させることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料(シリカ、炭酸カルシウム、タルク等)、自己分散顔料などを併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。また、カーボンブラックは、オゾン、硝酸、過酸化水素、窒素酸化物等の酸化剤を使用する気相又は液相酸化法、又はプラズマ処理等の表面改質法により酸化処理することもできる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料、ピロゾロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、赤色有機顔料、黄色有機顔料、青色有機顔料、オレンジ有機顔料、グリーンオレンジ有機顔料等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
有機顔料の好適例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、及びC.I.ソルベント・オレンジからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
本発明において、ポリマー粒子は、着色剤を安定に分散させると共に、水不溶性有機化合物との相互作用により、吐出性を向上させるために用いられる。
ポリマー粒子に用いるポリマーは、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー等が挙げられるが、その分散安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマー(以下、単に「ビニルポリマー」ともいう)が好ましい。また、更なる分散安定性の向上の観点から架橋ポリマーを用いてもよい。
ポリマー粒子に用いるポリマーは、水不溶性有機化合物を含有しやすくするために、水不溶性ポリマーであることが好ましい。ここで、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であるポリマーをいう。溶解量は、ポリマーが塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
ビニルポリマーとしては、(a)塩生成基含有モノマー(以下「(a)成分」ともいう)と、(b)マクロマー(以下「(b)成分」ともいう)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーが好ましい。この水不溶性ビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位及び/又は(c)成分由来の構成単位を有する。より好適なビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位、又は(a)成分由来の構成単位及び(c)成分由来の構成単位を主鎖に有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖に有するグラフトポリマーである。
(a)塩生成基含有モノマーは、得られるポリマー粒子の分散安定性を高める観点から用いられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられるが、特にカルボキシ基が好ましい。
塩生成基含有モノマーとしては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。その例として、特開平9−286939号公報段落〔0022〕等に記載されているもの等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出性等の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(b)マクロマーは、特にポリマー粒子が着色剤を含有した場合に、ポリマー粒子の分散安定性を高める観点から用いられる。(b)マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。なお、(b)マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b)マクロマーの中では、ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。例えばベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
CH2=C(CH3)-COOC3H6-〔Si(CH3)2O〕t-Si(CH3)3 (5)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
(c)疎水性モノマーは、印字濃度、分散安定性、吐出性等の向上の観点から用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
(c)成分の中では、スチレン系モノマーとしては、特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレート成分としては、特にベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
モノマー混合物には、更に、(d)水酸基含有モノマー(以下「(d)成分」ともいう)が含有されていてもよい。(d)水酸基含有モノマーは、分散安定性、吐出性を更に高めるために用いられる。
(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
CH2=C(R7)COO(R8O)pR9 (6)
(式中、R7は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R8は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R9は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、pは、平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(e)成分は、吐出性を更に高めるために用いられる。
式(6)において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
R7の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
R8O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシ(イソ)プロピレン基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらオキシアルキレンの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルキレン基が挙げられる。
R9の好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
上記(a)〜(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に着色剤との相互作用により分散安定性を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、印字濃度、分散安定性、吐出性等の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜75重量%である。
(d)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性、吐出性等の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(e)成分の含有量は、得られる分散体の吐出性の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは7〜40重量%である。
モノマー混合物中における〔(a)成分+(d)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。〔(a)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜75重量%、より好ましくは13〜50重量%である。また、〔(a)成分+(d)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、分散安定性、吐出性等の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
本発明で用いられるポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
前記ポリマーは、(a)塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を有している場合は中和剤により中和して用いる。中和剤としては、ポリマー中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価(HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。ポリマーの酸価又はアミン価は、50〜200が好ましく、50〜150が更に好ましい。
本発明の製造方法においては、分散安定性の観点から、着色剤及びポリマー粒子が、着色剤がポリマーに含有されてなる、着色剤を含有するポリマー粒子であることが好ましい。そのような水分散体の製造方法に特に限定はないが、例えば、次の工程(1)及び(2)を有する方法によれば効率的に製造することができる。
工程(1):ポリマー、有機溶媒、着色剤、水、及び必要なら中和剤を含有する混合物を分散処理して、着色剤を含有するポリマー粒子の分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体を得る工程
工程(1)では、まず、前記ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。混合物中、着色剤は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%が更に好ましい。
前記ポリマーと着色剤との合計量に対する着色剤量の重量比〔着色剤/(ポリマー+着色剤)〕は、保存安定性の観点から、50/100〜90/100であることが好ましく、60/100〜85/100であることがより好ましい。
ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましい。中和剤を用いて中和する場合の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては、前記のものが挙げられる。また、ポリマーを予め中和しておいてもよい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄工株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔株式会社荏原製作所、商品名〕、TKホモミクサー〔プライミクス株式会社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
得られた着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有するポリマーの固体分が水を主媒体とする中に分散している粒子である。ここで、着色剤を含有するポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤とポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、ポリマーに着色剤が内包された粒子形態、ポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。
架橋剤としては、少なくとも2個の反応性官能基を有する架橋剤、具体的には分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物:例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを用いることができる。
架橋の条件は、架橋剤の種類・量、触媒や溶媒の種類、反応温度、反応時間等を考慮して適宜決定することができるが、架橋のための反応時間は、好ましくは0.5〜10時間、更に好ましくは1〜5時間、反応温度は、好ましくは40〜95℃である。
架橋剤の使用量は、分散体の安定性の観点から、ポリマー100重量部に対して、0.5〜15重量部が好ましく、0.75〜10重量部がより好ましく、0.8〜6重量部が更に好ましい。
本発明のインクジェット記録用水分散体は、着色剤、ポリマー粒子、水100g(20℃)に溶解しうる最大重量が5g以下であって、エステル化合物、エーテル化合物、及びスルホン酸アミド化合物からなる群から選ばれる一種以上である水不溶性有機化合物、及び水を含有する混合物を、40℃以上で加熱処理する工程を有する方法によって製造される。
水不溶性有機化合物の含有量は、吐出性を向上させる観点から、0.1〜10重量%が好ましく、0.3〜5重量%がより好ましく、0.5〜3重量%が更に好ましい。
ポリマー粒子の含有量は、吐出性を向上させる観点から、0.5〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、2〜10重量%が更に好ましい。
着色剤の含有量は、印字濃度の観点から、0.5〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、2〜10重量%が更に好ましい。
ポリマー粒子を構成するポリマーと水不溶性有機化合物との重量比(水不溶性有機化合物/ポリマー)は、吐出性を向上させる観点から、1/10〜2/1が好ましく、1/10〜1/1が更に好ましい。
混合操作は、単に、前述のアンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いた攪拌だけであってもよいが、水不溶性有機化合物をポリマー粒子に取り込ませて、加熱処理を効果的に行うために、混合時に各成分を剪断応力を与える分散機で分散させることが好ましい。分散方法としては、例えば、前述のロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等のホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、チャンバー式の高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等の分散機で行う方法が好ましい。
超音波ホモジナイザーとしては、株式会社日本精機製作所製の超音波ホモジナイザーUS−300T、同US−1200T、同RUS−1200T、ヒールッシャー社製の超音波プロセッサーUIPシリーズ等を使用することができる。
混合物の調製は、5〜35℃で行うことが好ましい。
加熱処理の時間は、吐出性を向上させる観点及びハンドリング性の観点から、好ましくは30分〜12時間、より好ましくは30分〜9時間、更に好ましくは1〜6時間である。
加熱処理は、前記水分散体を好ましくは密閉容器に入れ、静置又は攪拌下に行うことができる。40℃以上の加熱処理を行うことで、水系インクとした時の吐出性が良好となる。
これは、水不溶性有機化合物の存在下で40℃以上にポリマー粒子を加熱処理することで、ポリマー粒子に取り込まれた水不溶性有機化合物が、ポリマー粒子のポリマーのコンフォメーションを変化させ、ポリマー粒子がより安定な状態になるため、ノズルからの吐出性が良好になると考えられる。なお、加熱処理時に減圧していてもよい。
また、加熱処理前の混合物中には、通常、有機溶媒等は含まれていない方が好ましいが、ポリマー粒子を溶解しない有機溶媒等であれば、存在していてもよい。すなわち、混合物には本発明の目的を損なわない限り、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル等の親水性有機溶媒、防腐剤、湿潤剤を含有していてもよい。
アルキレングリコールとしては、モノアルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールが挙げられる。アルキレングリコールのアルキレン基(アルカンジイル基)としては、炭素数2〜4のアルカンジイル基、即ちエチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基等が好ましい。
湿潤剤とは、水分散体中の水の蒸散を抑制する化合物であり、水酸基が2以上のポリオール化合物(糖類を含む)である。グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール等が挙げられる。
着色剤を含有するポリマー粒子は、着色剤を含有する架橋ポリマー粒子であってもよいが、分散安定性の観点から、加熱前に、予め架橋したものを用いることが好ましい。
加熱処理時の混合物中、着色剤を含有するポリマー粒子の含有量は、1〜30重量%が好ましく、2〜25重量%が更に好ましく、着色剤を含有するポリマー粒子(固形分)と、水不溶性有機化合物との混合重量比(着色剤を含有するポリマー粒子/水不溶性有機化合物)は、吐出性を向上させる観点から、30/1〜1/1が好ましく、10/1〜2/1が更に好ましい。
着色剤を含有するポリマー粒子、水不溶性有機化合物、及び水を含有する混合物は、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物とを混合することにより得ることができる。混合操作は前記と同じである。
得られる水分散体及び水系インクにおける、ポリマー粒子の平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.3μm、特に好ましくは0.01〜0.2μmである。なお、平均粒径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定することができる。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333) を入力する。測定濃度は、通常5×10-3重量%程度で行う。
本発明の水分散体の表面張力(20℃)は、好ましくは25〜65mN/m、更に好ましくは30〜60mN/mである。また、水系インクの表面張力(25℃)は、インクノズルからの良好な吐出性を確保する観点から、好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mである。
(ポリマーの重量平均分子量の測定)
溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK-GEL、α-M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
反応容器内に、メチルエチルケトン20部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、表1に示す各モノマーの200部の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマーの残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部及びラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から75℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量を前記方法により測定した。その結果を表1に示す。
(b)スチレンマクロマー
東亜合成株式会社製、商品名:AS−6(S)、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
(d)PP−800
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数=12、末端:ヒドロキシ基):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−800
(d)PP−500
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数=9、末端:ヒドロキシ基):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−500
(e)43PAPE−600B
フェノ−ルポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数=6、プロピレンオキシド平均付加モル数=6、末端:フェニル基):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマー43PAPE−600B
製造例1〜3で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をメチルエチルケトン70部に溶かし、その中に中和剤(5N水酸化ナトリウム水溶液)6.7部(中和度75%)及びイオン交換水230部加えて塩生成基を中和し、これに下記の顔料75部を加え、ディスパー翼で20℃以下にて1時間混合した後、寿工株式会社製UAM−05型(分散メディア:ジルコニア粒子、温度:20℃以下、分散メディア/分散液重量比:8/2)を用いて周速12m/sにて2時間分散処理を施した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、商品名)で150MPaの圧力で10パス分散処理した。
得られた分散液に、イオン交換水250部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が20%の顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。
反応容器内に、トリメリット酸70部及びエマルゲン104P(ラウリルアルコールのエチレンオキサイド4mol付加物、花王株式会社製)450部、テトライソプロポキシチタネート0.5部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った後、230℃に昇温し,エステル化反応を行った。さらに同温度にて減圧反応を行うことでエステル化反応を完結させ、余分なアルコールをトッピングにより除去することで、水不溶性有機化合物を得た。得られた水不溶性有機化合物は、トリメリット酸を基本構造とし各末端にラウリル基のエチレンオキサイドの4モル付加物を有していた。
反応容器内に、無水フタル酸100部及び2エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド4mol付加物(日本乳化剤製:ニューコール1004)400部、テトライソプロポキシチタネート0.5部を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った後、220℃に昇温しエステル化反応を行った。さらに同温度にて減圧反応を行うことでエステル化反応を完結させ、余分なアルコールをトッピングにより除去することでフタル酸ジエステル系の水不溶性有機化合物を得た。得られた水不溶性有機化合物は、フタル酸を基本構造とし両末端に2−エチルヘキシル基のエチレンオキサイドの4モル付加物を有していた。
製造例4〜9で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体D〜I80部、及び水不溶性有機化合物2部(ただし、実施例8、10は各1部の計2部)を混合し、超音波ホモジナイザーUS−300T(株式会社日本精機製作所製、Tip:φ26)を用い、200μAで10分間処理し、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体(固形分濃度20重量%)を得た。得られた顔料を含有するポリマー粒子の水分散体80部を、耐熱ガラスに密閉して入れ、恒温乾燥機内で表2記載の温度にて、1時間加熱処理した。
次に、加熱処理した顔料含有ポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物の混合物41部、1.2−ヘキサンジオール2部、グリセリン17部、2−ピロリドン2部、トリエタノールアミン1部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル1部、サーフィノール104PG50(日信化学工業株式会社製)0.2部、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)0.6部及びイオン交換水35.2部を混合し、得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより水系インクを得た。
水不溶性有機化合物を用いずに、その代わりにイオン交換水を用いた以外は、実施例1と同様にして水系インクを得た。
比較例2(インクジェット記録用水分散体の製造)
処理温度を表記載の20℃とした以外は、実施例1と同様にして、水系インクを得た。
(吐出性の評価)
市販のセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンター(品番:PX−V630、ピエゾ方式)にインクをセットし、吐出に問題ないことを確認する。普通紙Xerox4200に、普通紙/ファインモードにて連続1000枚印字し、印刷物の印字状態「ぬけ」と「曲がり」を下記の基準により評価した。
〔評価基準〕
1:印字物に「ぬけ」と「曲がり」が共にない。
2:印字物に「ぬけ」又は「曲がり」がわずかに見られる。
3:印字物に「ぬけ」又は「曲がり」が見られる。
ここで、「ぬけ」とは、吐出していないノズルがありインクが着弾しないこと、「曲がり」とは、インクが所定の位置からずれて着弾することをいう。
(顔料)
・シアン顔料:銅フタロシアニン系顔料(ピグメント・ブルー15:3)PB15:3(大日精化工業株式会社、商品名シアニンブルー4920)
・マゼンタ顔料:キナクリドン顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19、クラリアントジャパン株式会社製、商品名:Hostaperm Red E5B 02)
・イエロー顔料:ジアゾ顔料(C.I.ピグメント・イエロー74〔P.Y.74〕、山陽色素株式会社製、商品名:FY7413)
・ブラック顔料:カーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名:#45、DBP吸油量:53ml/100g)
(水不溶性有機化合物)
・トリメリット酸トリエステル :合成例1による
・フタル酸ジエステル :合成例2による
・セバシン酸ジブチル :和光純薬工業株式会社製、一級
・フタル酸2エチルヘキシルベンジル:株式会社ジェイ・プラス製、商品名:OBzP
・ベンジルアルコール :和光純薬工業株式会社製、特級
Claims (7)
- 着色剤、ポリマー粒子、水100g(20℃)に溶解しうる最大重量が5g以下であって、エステル化合物、エーテル化合物、芳香族アルコール及びスルホン酸アミド化合物からなる群から選ばれる一種以上である水不溶性有機化合物、及び水を含有する混合物を、40℃以上で加熱処理する工程を有する、インクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 前記着色剤及び前記ポリマー粒子が、着色剤を含有するポリマー粒子である、請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 加熱処理の温度が50〜90℃である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 加熱処理の時間が30分以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- ポリマー粒子を構成するポリマーと前記水不溶性有機化合物との重量比(水不溶性有機化合物/ポリマー)が1/10〜2/1である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- ポリマー粒子を構成するポリマーが、(a)塩生成基含有モノマー由来の構成単位と、(b)マクロマー由来の構成単位及び/又は(c)疎水性モノマー由来の構成単位とを含む、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の方法によって得られたインクジェット記録用水分散体を含有する、インクジェト記録用水系インク。
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