JP2009153399A - 一分子型リアルタイム生物発光イメージングプローブ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セカンドメッセンジャーの増減を指標とした一分子型発光プローブとして、セカンドメッセンジャー認識タンパク質及び必要に応じて当該タンパク質と結合可能なペプチドを含む一本鎖状のタンパク質のN末側とC末側のそれぞれに、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)とC末端側フラグメント(C-LE)とが連結されている融合タンパク質を用いることを特徴とする。前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合(脱離)によって構造変化が起こると、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接(解離)し、in vivoでもin vitroでも発光(減光)を観察できる。
【選択図】なし
Description
真核・原核細胞共に生育環境における温度・信号伝達物質・栄養分の有無などに対して迅速に対応することが生物の生死に直結する。したがって、生細胞は栄養・エネルギー制御・増殖、また視覚・聴覚のような感覚関連信号伝達においては、短くて数ミリ秒、長くても数分以内に関連信号伝達を完結してしまう。
このような生命現象を覗う手段として、今まで様々な手法が開発されており、一部はすでに実用化されている。広い範囲の生命科学分野における最近の研究では、特定生命現象における細胞・動物個体内での分子イメージングが主な研究トレンドとなっている(非特許文献1)。とりわけ、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein; GFP)のような蛍光色素タンパク質を利用した生物分析の研究開発が盛んであり、特にFRET(蛍光共鳴エネルギー移動:2つの蛍光分子間で、一方の蛍光分子の励起エネルギーが他方の蛍光分子にトランスファーされて蛍光を発する現象)を利用してタンパク質間相互作用や、シグナル伝達系たんぱく質の活性度を可視化する技術、いわゆる分子イメージング技術が脚光を浴びている。一方、ホタル・ルシフェラーゼ(firefly luciferase; FLuc)のような発光酵素(Lighting Enzyme;LE)を利用した分子イメージングについても、世界各国で注目されてきており、研究開発競争が激しい。
最も長い時間を要する分子イメージング手法としては、レポータージーンアッセイ(reporter gene assay)が挙げられる。外部からの信号によって転写因子が活性化され、結果として発現されたレポータータンパク質の発光又は蛍光強度等を指標として、最初の外部信号の強度・性質などを判定できる。この手法はレポータータンパク質の量が十分に蓄積されるまでに平均24時間を要する。この手法はステロイド又は化学物質の活性を調べることに広く使われてきた。
2番目に長い時間を要する分子イメージング手法として、タンパク質スプライシング(protein splicing)に基づくものがある(非特許文献2)。タンパク質スプライシングとは、ある特定のタンパク質配列とタンパク質配列との間で起こる自己触媒的な組み継ぎ反応を意味する。レポーターとなるタンパク質を予め2分割し(N末側とC末側)、スプライシングタンパク質の両端につなげておく。後に外部信号によってレポータータンパク質断片同士がつながり、結果として回復した発光又は蛍光強度を指標に最初の外部信号の強さを判定する仕組みである。この手法は、二つの断片化されたタンパク質断片間の反応に十分な時間を要するために最低限2時間を必要とする。この手法はタンパク質の核内移行などをイメージングするのに有効に使われている。
3番目に長い時間を必要とする分子イメージング手法としては、タンパク質自己相補法(protein complementation)が挙げられる。この手法は2分割されたレポータータンパク質が再び近接するために起こる発光・蛍光強度の増加分を分析信号とするものである。例えば、ある標的タンパク質−タンパク質間の結合の有無を調べるために、各々のタンパク質にそれぞれ2分割したレポータータンパク質の一断片ずつをつなげておく。後に外部信号によって二つのタンパク質間の結合が起こった時のみにレポータータンパク質断片同士が十分に接近する。結果として回復したレポータータンパク質の発光又は蛍光強度を指標に、目的とする二つのタンパク質−タンパク質間の結合を促した本来外部信号の強度を評価する(2分子型プローブ:特許文献1,2、非特許文献3)。この手法はステロイド又は化学物質の活性を評価するのに使用され、ステロイド刺激から約20分間の測定時間を要する。最近本発明者らは、一つの分子内のタンパク質−タンパク質間相互作用をLEの自己相補の原理に基づいてバイオイメージングする方法を開発して特許出願した(特願2007-005144)。この手法の特徴は2分割されたFLuc及び、そのN末端側とC末端側断片の間に標的リガンド認識タンパク質を一分子内に配置しておき、その後リガンドの結合により引き起こされる構造変化を一次元的な発光強度で検出することである。更に本発明者らによって、この手法を発展させた単一リガンドの両面的な活性程度をそれぞれ違う発色信号(緑と赤)で見分ける手法が開発され、特許出願されている(特願2007-202308)。
前記FRET現象を利用した標的リガンドの検出プローブ(特許文献3,4,5、非特許文献4,5)は、前述のように、短時間でのリガンド検出を可能とするとともに、アゴニストとアンタゴニストをそれぞれ分別して検出可能であるという点において優れているが、自己蛍光によるバックグラウンドの高いこと、及び2つの発色団の波長変化を高精度で測定するために高感度蛍光顕微鏡と精密フィルター装置、熟練技術者を必要とする。また、外部からの短波長光による励起を必要とするため、短波長光吸収の激しい生体レベルでの生物分析が非常に難しいものであった。
上記以外の技術として、既存の有機合成手段に基づいて開発された蛍光色素試薬であるFura、Indo-1が細胞内分子イメージングに使えると公表されている(非特許文献11)が、これら合成物質には、細胞毒を誘発する点、細胞の一部分に偏在する点、選択性の乏しい点などの問題点がある。
(1)バックグラウンドが低い点、
(2)外部光励起を必要としない点、
(3)装置が非常に簡単で、軽量化・集積化が容易である点、
(4)光の組織透過性が優れ、生体イメージングに適した点、などの特長を持つ。
このため、本発明者らは生物発光を利用した分子イメージングプローブの開発に取り組んできた。本発明者らが以前開発した、タンパク質スプライシングや自己相補による従来の分割レポーター分子の再構成を利用したタンパク質−タンパク質間相互作用の検出法(特許文献1,2、非特許文献2)の場合は、それぞれの分割レポーター分子は、別個のプローブとして細胞内に導入されるため(2分子型プローブ)、各々のプローブの発現量が相違してしまう不都合が起こる。また、このことに起因するプローブのリガンド応答性の非効率さが強く懸念された。
そこで、本発明者らは最近一つのプローブ内にリガンド感知と信号発信に必要な全ての要素が集積され、優れた分析能を有する一分子型発光プローブを開発した(特願2007-202308、特願2007-005144)が、リガンドを認識してから信号発信まで、およそ10分から20分の時間が必要であり、分子量(92kD)が大きいので、細胞に負担がかかるため、生きた生細胞における短時間の分子現象の追跡には不向きである。
すなわち、従来の生物発光イメージングプローブの場合、一分子型であろうと二分子型であろうと、リガンド特異的リセプターに内在するリガンド認識部位をプローブ内に組み込んでいることと、高分子量の発光酵素を使用していることが原因で分子量が大きくなっている。また、認識する対象のリガンドが細胞膜を透過して細胞質内のプローブまで届かなければならないが、インシュリン、各種成長ホルモン、サイトカインなどの場合は、そもそも細胞膜を透過できないので細胞内部では検出できず、細胞膜を透過できるリガンドの場合でも、膜透過ステップが律速であるので数十分程度の測定時間を必要とするため、いずれにしても細胞内のさまざまな生命現象のリアルタイム観測ができない。
特に、上述のFRET原理に基づいた蛍光プローブを用い、カルシウムイオン認識タンパク質であるカルモジュリン及びカルシウムイオンと結合したカルモジュリンと結合するペプチド(M13)とをつないだタンパク質の両端に、GFPの遺伝子改変によって得られた青緑蛍光タンパク質と黄色タンパク質を繋いだカルシウムセンサー(カメレオン)及びその改良型プローブが、生細胞内でのセカンドメッセンジャーであるカルシウムイオンをリアルタイムで検出できる優れたプローブとして広く用いられている。しかしながら、蛍光タンパク質は一般にpHに敏感に反応し、自己蛍光(autofulorescence)によるバックグラウンドも高く、両端に2つの蛍光タンパク質を連結するため分子量が大きくなるという問題点もある。また、蛍光を検出するための大型測定装置が必要であるなどの使用上の問題点も多い(特許文献4)。
またセカンドメッセンジャーを検出するための単一GFP分子を2分割した断片を利用した蛍光分子プローブも最近開発された(非特許文献9)が、蛍光プローブそのものが持つ問題点もあるばかりか、2分割したGFPが再結合してしまうと可逆性がないため、繰り返し使用には不適切であるという点と、GFPはタンパク質フォルディングに長い時間(約6時間)を要し、ミスフォルディングも起こりやすい点などの重大な欠点がある。
すなわち、発光酵素は、適切な位置で断片化できれば、外部信号に対して可逆的に反応し、非細胞系でも失活しにくく安定性を保つと共に、十分な基質が提供される環境にあれば、蛍光発生装置など他からのエネルギー供給なしに自己発光できるという優れた利点があるので、一分子にコンパクト化できれば、細胞内情報伝達物質であるセカンドメッセンジャーの検出にも十分適用できるものと考えた。
外部刺激物質そのものを検出しようとした従来の一分子型発光プローブが、発光酵素断片の間に核リセプター及び核リセプター結合性領域を備えていたのに対し、外部刺激による細胞内2次現象であるセカンドメッセンジャーを認識し構造変化をするタンパク質を繋ぐことで、セカンドメッセンジャーの増減を指標とした分子イメージング手段が提供できると思い至った(図1はその概念図である。)。その際、セカンドメッセンジャーのうちでも、とりわけ多くの生体内生理作用を左右するカルシウムイオン(Ca2+)と、その認識タンパク質として代表的なカルモジュリン(CaM)に注目した。
しかしながら、カルモジュリンの分子量は17KDときわめて小さく、従来の発光プローブで用いられていた発光酵素は36−64KD程度と大きいので、一分子内でCaMとつなげた場合、分子プローブ内各要素間における立体障害が生じ、カルシウムイオン結合によるカルモジュリンの構造変化を認識できなかった。
そこで、最近発見されており、知られている発光酵素中で最も小さいGaussia Princeps由来のガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)が最適であると考えたが、GLucは、一分子型発光プローブのために分割させて用いられた例はなく、一分子型で分割して用いる場合の最適な分割位置が不明であった。従来二分子型で提案されたGLucの分割位置をそのまま適用しても発光強度が十分に回復しないため、再度GLucの活性領域を正確に同定して、一分子型プローブとして最適な2分割の位置を決定した後、リンカー配列による微調整を行って本発明を完成させた。
GLucは、分子量が小さいので生細胞への負担も小さく、しかも発光強度が従来より強い(100-500倍程度)ので、生細胞内でのセカンドメッセンジャー検出には特に適しており、本発明により決定された2分割位置(99〜106位)で分割すると、外部信号に可逆的に反応し(断片間の結合定数が高いと信号が解消された時、元に戻らない)、非細胞系でも信号に瞬時に反応でき、断片化されても失活せずに安定性を保つ、優れた一分子型リアルタイム発光プローブが提供できた。そして、GLucを用いた一分子型発光プローブについては、さらに発展させ、セカンドメッセンジャー認識タンパク質に代えて、男性ホルモン受容体(AR)・ストレスホルモン受容体(GR)など、別のリガンド認識タンパク質を用いた場合でも、高い分子認識能を示すことが確認できたので、GLucを用いた汎用性の高いプローブに関するもう一つの本発明も完成した。
一方、Ca2+有りの条件でCaMと結合すると知られているM13ペプチドを連結したCaM−M13の外側にGLuc断片を連結した場合、Ca2+刺激により構造変化したCaMが分子内のM13領域に結合した結果、GLuc断片間の距離が近接し、発光強度が増加する形の発光プローブを提供できた(図8)。このように本発明は発光値上昇型と降下型の両方を提供するため、使用者は目的に応じてどちらかを、又はどちらでも使える手段を提供できる。
その際の一分子型に適用できるルシフェラーゼの分割位置については、GLucの場合にN末端からほぼ1/2程度の位置であることを決定したのは本発明がはじめてであるが、他のルシフェラーゼの場合は、N末端からほぼ4/5程度の位置で安定して分割できることが周知であるため、これら周知の分割位置を適用することができる。
また、セカンドメッセンジャーとの結合の有無に基づくセカンドメッセンジャー認識タンパク質の構造変化を、直接両端の発光酵素活性の回復程度に置き換えて観察する方式と同時に、セカンドメッセンジャー認識タンパク質が構造変化することで結合するペプチド(例えばカルモジュリンに対してのM13ペプチド)に相当する領域を連結させておくことで、セカンドメッセンジャー認識タンパク質の構造変化がより増幅されて両端の分割発光酵素断片間の相対位置の変化に反映される。特に、セカンドメッセンジャー認識タンパク質の構造変化が大幅でない場合などは、セカンドメッセンジャー認識タンパク質とその結合ペプチドを、リンカー配列を適宜介在させて連結した融合タンパク質の両端に、2分割した発光酵素断片を連結させた方式が好ましい。
〔1〕 セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質のN末側とC末側のそれぞれに、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)とC末端側フラグメント(C-LE)とが連結されている融合タンパク質であって、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離によって引き起こされた構造変化の結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質。
〔2〕 前記融合タンパク質が、さらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含むものであって、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質が、セカンドメッセンジャーとの結合又は脱離により引き起こされた構造変化によって前記ペプチドと結合した結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質である、前記〔1〕に記載の融合タンパク質。
〔3〕 前記発光酵素が、ガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の融合タンパク質。
〔4〕 前記セカンドメッセンジャーがCa2+イオンであり、セカンドメッセンジャー認識タンパク質がカルモジュリンである、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の融合タンパク質。
〔5〕 前記Ca2+イオンを認識するカルモジュリンと可逆的に結合できるペプチドがM13ペプチドであり、カルモジュリンがCa2+イオンと結合したことで構造変化を起こしてM13ペプチドと結合した結果、両端のガウシア・ルシフェラーゼ(N- GLuc及びC- GLuc)の位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質である、前記〔2〕に記載の融合タンパク質。
〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕いずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸分子であって、セカンドメッセンジャー認識タンパク質をコードする核酸を含む直鎖状核酸分子の5’末端と3’末端のそれぞれに、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)をコードする核酸と、C末端側フラグメント(C-LE)をコードする核酸とが連結されている核酸分子。
〔7〕 前記直鎖状核酸分子中に、さらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドをコードする核酸を含むことを特徴とする、前記〔6〕に記載の核酸分子。
〔8〕 前記〔6〕又は〔7〕に記載の核酸分子を含む発現ベクターであって、当該発現ベクターを導入した形質転換細胞内で、セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質の両端に、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)とC末端側フラグメント(C-LE)とがそれぞれ連結されている融合タンパク質、又はさらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含む融合タンパク質を発現することが可能な、発現ベクター。
〔9〕 前記〔8〕に記載の発現ベクターが導入された細胞であり、セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質の両端に、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)とC末端側フラグメント(C-LE)とがそれぞれ連結されている融合タンパク質、又はさらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含む融合タンパク質を発現している形質転換細胞。
〔10〕 前記〔1〕〜〔5〕いずれかに記載の融合タンパク質を有効成分として含むことを特徴とする、セカンドメッセンジャーの検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
〔11〕 前記〔1〕〜〔5〕いずれかに記載の融合タンパク質を有効成分として含むことを特徴とする、細胞膜表面レセプターを刺激するリガンドの検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
〔12〕 前記融合タンパク質を有効成分とする分析用試薬又はそれを含むキットが、前記融合タンパク質を細胞表面又は細胞内で産生している形質転換細胞自体を含むものである、前記〔10〕又は〔11〕に記載の分析用試薬又はそれを含むキット。
〔13〕 前記分析用試薬を含むキットが、紙片、繊維切片、断片プレート又は探針素子の少なくとも1部に前記分析用試薬が固定化されていることを特徴とする、前記〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の分析用キット。
〔14〕 前記〔8〕に記載の発現ベクターを有効成分とし、生細胞へ導入し、生細胞内部で発現させてセカンドメッセンジャーの産生状況を可視化することにより、生細胞表面レセプターを刺激するリガンドを検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
〔15〕 前記〔8〕に記載の発現ベクターを細胞内に導入して細胞内部で融合タンパク質を発現させ、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離によって引き起こされた構造変化の結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離したことで発せられる光の増減を観察することにより、細胞内のセカンドメッセンジャーの発生状況を観察することによる、セカンドメッセンジャーの検出、同定又は定量方法。
〔16〕 前記N-LE及びC-LEとの位置の近接又は解離が、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離により構造変化し、当該セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドと結合した結果引き起こされたものである、前記〔15〕に記載の細胞内のセカンドメッセンジャーの検出、同定又は定量方法。
〔17〕 前記〔8〕に記載の発現ベクターを細胞内に導入して細胞内部で融合タンパク質を発現させ、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離によって引き起こされた構造変化の結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離したことで発せられる光の増減を観察することにより、細胞内のセカンドメッセンジャーの発生状況を解析し、細胞表面レセプターを刺激するリガンドの検出、同定又は定量する方法。
〔18〕 前記N-LE及びC-LEとの位置の近接又は解離が、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離により構造変化し、当該セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドと結合した結果引き起こされたものである、前記〔17〕に記載の、細胞表面レセプターを刺激するリガンドの検出、同定又は定量する方法。
〔19〕 生物・環境試料に対して前記〔15〕に記載の発光型リガンド検出用キットを用いることによる、生体由来試料中の遊離カルシウムの濃度検出、同定又は定量方法。
〔20〕 ガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)をコードするアミノ酸配列又はその2〜17位のアミノ酸残基の1部もしくは全部を欠失させたアミノ酸配列において、GLucを構成するアミノ酸配列の99位から106位のいずれかの位置のアミノ酸残基を分割位置とするN末端側フラグメント(N-GLuc)とC末端側フラグメント(C-GLuc)を、リガンド認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質のN末端及びC末端のそれぞれに連結させた融合タンパク質であって、該リガンド認識タンパク質にリガンドが結合又は脱離することにより引き起こされた構造変化の結果、両端のN-GLuc及びC-GLucとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質。
〔21〕 前記融合タンパク質が、さらに前記リガンド認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含むものであって、該リガンド認識タンパク質がリガンドとの結合又は脱離により引き起こされた構造変化によって前記ペプチドと結合した結果、両端のN-GLuc及びC-GLucとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質である、前記〔20〕に記載の融合タンパク質。
〔22〕 前記N末端側フラグメントが配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、前記C末端側フラグメントが配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、前記〔20〕又は〔21〕に記載の融合タンパク質。
〔23〕 前記〔20〕〜〔22〕のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
〔24〕 前記〔20〕〜〔22〕のいずれかに記載の融合タンパク質を有効成分として含むことを特徴とする、リガンドの検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
(1)蛍光の限界を克服し、非常に簡便な生物発光分析法を提供する。
(2)秒単位でおきる生物現象を、ほぼリアルタイムで観察する生物イメージングが可能である。
(3)リガンドが細胞膜を透過する必要がないので、細胞膜の透過の出来ないリガンド(インシュリン・成長ホルモンなど)の感受性をも測定でき、透過するリガンド、細胞内に存在するリガンドの測定もできるので、事実上全てのリガンドを分析対象にできることに
なり、幅広い生物分析ができるようになった。
(4)同一のリガンド刺激に対して、発光が下がるプローブと上がるプローブを設計可能なため、使用者が必要に応じて、どちらかを選択して使える。
(5)一つの分子内にイオンセンシングと発光発信部位を集積することによって、プローブが効率化、単純化、簡便化された。特に、非細胞系では、紙片などの末端に本発光プローブを固定・乾燥した発光プローブ試験紙(発光型リガンドセンシング手段)が提供できる。
また、両端の2分割発光酵素としてGLucを用いた場合は、今まで開発された生物発光プローブの中で一番小さいプローブであるため、宿主細胞への負担が非常に少なく、GLucは既存発光酵素に比べ非常に明るいので、生きたままの生細胞条件下でも明瞭で正確な分析ができる。
本発明の「一分子型リアルタイム発光プローブ」は、標的特異的リガンドによって引き起こされる生細胞の膜表面上にあるリセプター活性化の際、そのリセプターの直下で2次現象として引き起こされる様々な分子現象を生きた細胞状態のままで、リアルタイムで可視化イメージングのできるプローブであって、そのための全要素が単一融合分子内に最適集積したことを特徴とする。具体的には、上記(i)から(iii)までをその基本要素とする融合タンパク質であり、それぞれの構成要素のタンパク質又はペプチドを遺伝子組換え法又は化学合成法などで得た後、化学的に連結することもできるが、典型的には、それぞれのタンパク質をコードするDNAを直鎖状に連結したキメラDNAが挿入された発現ベクターにより生細胞内で発現されたものである。ここで、「キメラDNA」とは、幾つかの異なる由来のDNA断片が人工的に直鎖状に連結されたものであり、タンパク質又はペプチドを構成要素とする融合タンパク質分子を発現することのできるDNAであり、本発明におけるキメラDNAは、生細胞内又は細胞外で一分子型リアルタイム発光プローブとして機能する融合タンパク質を発現可能なDNA分子である。
本発明の一分子型リアルタイム発光プローブをコードするDNAを含み、細胞内で発現可能な制御配列に繋ぎ、典型的には、当該DNAを含む細胞発現ベクターを用いて生細胞に導入する。生細胞内で発現させた一分子型リアルタイム発光プローブを用いて、披検物質によって2次的に引き起こされるセカンドメッセンジャーが関与する細胞内現象を可視化イメージングすることによって、被検物質の性質、濃度、活性強度が解析できる。すなわち、セカンドメッセンジャー自身を検出、同定又は定量をすることと共に、細胞膜表面レセプターを刺激する外部リガンドを間接的に検出、同定又は定量できる。
本発明において、「生細胞」とは、生物本来の生細胞(原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、ヒトを含めた哺乳類動物細胞)のみならず、その本来の機能を維持した状態の培養細胞(原核細胞、真核細胞)または生物個体内に移植、感染した細胞を指し、典型的にはマウスなど実験動物又はその細胞である。
本発明で用いる「発現ベクター」としては、公知の真核または原核細胞発現ベクターを特段の制限なく使用することができる。また、前記のキメラDNAからのプローブ発現を制御するため(例えば、生物個体における特定組織での発現、または特定リガンド・刺激物による発現)公知の組織特異的、または特定刺激特異的プロモーター配列を組み込むようにしてもよい。またプローブ発現ベクターの導入は、例えばマイクロインジェクション法やエレクトロポーレーション法、脂質試薬によるトランスフェクション法(TransIT, Mirus)により細胞内に導入することができる。また、これらの手法で導入される発現ベクターに単純にプローブの発現だけを託すのではなく、プローブの上流に発現制御をし得る制御配列を繋げることによって、プローブそのものの発現有無を指標に更なる生物分析系を組むことができる。
さらに、本プローブをコードするキメラDNAを、pMXのようなレトロウイルスベクターにつなげ、高力価のウイルス産生能を有するパッケイジング細胞PLATEに導入することによって、動物に感染するレトロウイルスの作成が可能である。このウイルスを動物の各臓器に感染させることによって、各臓器内におけるセカンドメッセンジャー特性のリアルタイムイメージングができる。
本発明における「リガンド」とは、生細胞膜上又は生細胞内の特定タンパク質と特異的に結合してその機能を変化させうる物質を意味する。例えば、核リセプターにおけるステロイド又は合成化学物質を指し、サイトカイン受容体においては各種サイトカインを、インシュリン受容体のような細胞膜上受容体に対してはインシュリンを含む刺激物質を指す。
本発明における「セカンドメッセンジャー認識タンパク質」とは、細胞外部の刺激によって細胞内で引き起こされる「セカンドメッセンジャー」と結合し、立体構造が変化するタンパク質を指す。そのことで「セカンドメッセンジャー」の濃度変化に依存したセカンドメッセンジャー認識タンパク質の構造変化を観察することが可能になる。その際、当該セカンドメッセンジャー認識タンパク質が構造変化することで、さらに他のタンパク質の一部分、又はそのペプチド断片(以下、単に「ペプチド」という。) と可逆的に結合又は解離できる特徴をもっているものが好ましい。
ここでいう「セカンドメッセンジャー」とは、ホルモンや神経伝達物質などの細胞外情報伝達物質が細胞膜に存在する受容体と結合することによって、細胞内で新たに生成される別種の細胞内情報伝達物質をいう。例えば、cGMP、cAMP、PIP、PIP2、PIP3、inositol trisphosphate (IP3)、IP4、Ca2+、diacylglycerol、arachidonic acidを対象にすることができる。
これらセカンドメッセンジャーとそれを認識するセカンドメッセンジャー認識タンパク質との好ましい組み合わせを以下に示す。
セカンドメッセンジャーのCa2+を認識するCa2+認識タンパク質としては、カルモジュリン(CaM)及びリコベリン(recoverin)等が挙げられ、cAMPを認識するcAMP認識タンパク質としてはcAMP-gated cation channel及びprotein kinase A (PKA)が挙げられる。Diacylglycerolを認識するDiacylglycerol認識タンパク質としてはprotein kinase C (PKC)を利用することができる。また、cGMPを認識するcGMP認識タンパク質としてはcGMP-gated Na+ channelが挙げられる。
たとえば、カルモジュリン(CaM)に対しては、myosin light chain kinase由来のペプチドであるM13(26個のアミノ酸:KRRWKKNFIAVSAANRFKKISSSGAL)が好ましく用いられる。また、M13以外にもカルモジュリンに対して結合できるタンパク質として、アデニリルシクラーゼ、カルモジュリンキナーゼIIのようなCaM依存性タンパク質キナーゼ類を挙げることができる。このようなタンパク質の一部分を上記M13の代わりに使い、CaMとの結合を可視化することもできる。
これらのLEは、アミノ酸配列や遺伝子(DNA)の塩基配列が公知であり(例えば、FLucはGenBank/AB062786等、CBLucはGenBank/AY258592.1等、GLucはGenBank/ AY015993等)、これらの配列情報に基づいて公知の方法によりDNAを取得することができる。
「分割された発光酵素(LE)」というとき、単一タンパク質であるLEを、2分割することで、一時的に発光活性を非活性化したことを意味する。二つの分割LEが近接した場合に切片間の相互作用によって酵素活性を変えることができるように好適に再構築される部位で分割される必要がある。ここで、分割位置はアミノ酸残基位置で示す。例えばGLuc(1‐185アミノ酸)の99位の位置で分割するというとき、99位と100位の間で分割することであり、99/100位の位置で切断するという表現と同義である。
これらのLEを2分割する位置は、公知の情報等を参考に適宜に設定することができ、通常、最初から4/5の位置にある既知の親水性領域を適当に切断すれば、分割で光を失い、再結合により発光する分割位置が簡単に決定できる。例えば、FLucの場合には、非特許文献6に開示されているように、そのアミノ酸配列の437/438部位で切断することができ、CBLucの場合には、後記実施例に示したように412/413部位で切断することができる。またRLucの場合には、特許文献2に開示されているように(2分子型の場合)、適当な部位での分割が可能であるが、そのアミノ酸配列91/92で切断した場合に、再構成後の発光強度が最も強くなる。さらに、CBLucの場合には、そのアミノ酸配列の439/440、又は412/413の位置等で2分割することができる。また後記の実施例に示したように、N末端フラグメント(N-LE)とC末端フラグメント(C-LE)の一部は重複したり、または欠失したものを使用することもできる。
2分子型発光プローブにおいて、GLucに関してN末側フラグメントとC末側フラグメントの分割位置が種々検討された例が報告されており、その結果は109番目のアミノ酸位置での分割が最適とされ、実際にこの位置で分割した両フラグメントをそれぞれ別個にビオチンとアビジンに連結し、発光性を回復させている(非特許文献7)。
しかし、この分割位置を本発明の1分子型発光プローブにそのまま適用することはできない。すなわち、上記非特許文献7で提案された位置で分割したGLucのN末端側フラグメント及びC末端側フラグメントを、セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む1本鎖ポリペプチドの両端に連結した場合には、再結合時に発光性が十分に回復できない。
本発明者らは、本発明の1分子型発光プローブに用いるためのGLucの最適な分割位置を詳細に検討し(実施例2)、アミノ酸配列の99位から106位のいずれかの位置であることを決定した。N末端側フラグメントにおけるN末側の疎水性のシグナル配列部分(2〜17位)は削除することができ、そのことで発光プローブ全体の大きさが小さくなるので、生細胞内に導入又は発現させる際には細胞への負荷が小さく好ましい。なお、N末端のmethionine(M)は遺伝子組換え法により細胞内で発現させるためには必須である。すなわち、GLucをコードするアミノ酸配列又はその2〜17位のアミノ酸残基の1部もしくは全部を欠失させたアミノ酸配列において、GLucをコードするアミノ酸配列の99位から106位のいずれかの位置のアミノ酸残基を分割位置とするN末端側フラグメント(N-GLuc)とC末端側フラグメント(C-GLuc)を、セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質のN末端及びC末端のそれぞれに連結させた融合タンパク質は、配列番号4又は配列番号4の2〜17位の1部を欠失したアミノ酸配列からなるN末端フラグメントと、配列番号5からなるC末端フラグメントに分割することができ、両フラグメントは解離した位置では発光せず、十分に近接した位置に近づくと発光する。この両フラグメントからなるポリペプチドセットは、新規で有用なポリペプチドのセットであると言うこともでき、本発明のセカンドメッセンジャー発生による細胞内現象検出用のセカンドメッセンジャー認識タンパク質と組み合わせたリアルタイム発光プローブのために、特に適したセットである。そして、当該ポリペプチドセットは、セカンドメッセンジャー認識タンパク質ではなく、他の一般的なリガンド認識タンパク質を含むポリペプチドの両端に繋いだ場合には、リガンド認識タンパク質にリガンドが結合したことによる構造変化に応じて発光又は消光するので、直接リガンドを検出できる発光プローブとして用いることもできる。
また、各構成要素のタンパク質又はペプチドをコードするDNAを連結する際に、通常、それぞれのDNAの両端に制限酵素切断部位を設けるが、その際に、制限酵素切断部位由来のコドンが付加される場合があり、その結果付加されたアミノ酸は結果的にリンカー配列を構成する。
したがって、本発明においては、「セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質」などと、リンカー配列の存在を省略して表現するが、適宜1〜10アミノ酸に相当するリンカー配列を各要素の間に介在させる場合を含むものである。
具体的なプローブ構成においては、発光値降下型プローブのためには、N末端側から[N-LE/CaM/C-LE]であり、発光値上昇型プローブのためには[N-LE/CaM/M13/C-LE]である。ただし、発光値上昇型プローブにおいては、N末端側から[N-LE/M13/CaM/C-LE]の順番でも本質的には問題ない。
他の外部刺激による細胞内特定セカンドメッセンジャーの発光イメージングのためには、それぞれに適宜なLEの分割位置に基づいたLE断片らとセカンドメッセンジャー認識タンパク質、さらに必要であれば、セカンドメッセンジャー認識タンパク質と結合できるペプチドを上記の連結順序に基づいてつなげればプローブを構成できる。発現ベクターへのDNA挿入は当業者であれば容易に行うことができ、適切な連結順序についても、適宜確認することができる。
本発明の各検出、同定、又は定量方法においては、典型的には一分子型リアルタイム発光プローブをコードする核酸を含む発現ベクターを用いて形質転換した生細胞を披検物質で刺激し、発光した光の強度を測定するものである(in vivoイメージング)。また上記生細胞から発現された本プローブを細長い紙片上の一方に構えておき、もう一方に刺激物質を垂らすことによって、刺激物質の定性、定量分析が可能である(in vitroイメージング)。
本発明の非細胞系発光イメージング手段としては、紙片、断片プレート、探針素子などの末端に本発光プローブを固定・乾燥した、発光型リガンドセンシング手段を提供できる。材質としては、nitrocellulose紙等の紙片、ナイロン66、polyvinylidene fluoride,hydrophobic polymerなどのストリップが用いられる。特に、nitrocellulose紙片を用いることで、リトマス試験紙のような取り扱いやすい発光プローブ付着型試験紙が提供できる。
このように、本発明のプローブでは、刺激物質センシングと発光信号発信に必要な全ての要素が一分子に集積されているので、本プローブを紙片末端に付着すれば、カルシウムのような生体試料内に存在する各種生理物質を標的にすることができる。したがって、生体試料(血液、尿、汗、唾液)に対して、当該キットを用いると、ヒトの健康状態の指標として各種生理物質の濃度を計測することができる。そのために、使用者が簡便に自分の健康状態を観測することができる。例えば、血液サンプル内カルシウム濃度は骨のミネラル状態、血液凝固システム、細胞膜電位維持と直結する重要な指標である。
本発明の一分子型リアルタイム発光プローブは、上述の真核細胞のみならず、細菌のような原核細胞で大量発現させることもできる。真核細胞の場合、適切なシグナル配列(MGVKVLFALICIAVAEAなど)を繋いで培地中に大量に分泌させることによって、精製工程なしでも分析に用いることのできる、大量なプローブ含有培養上清が得られる。また、原核細胞の場合には精製用のタグ(例えば、His Tag; HHHHHH)をつけることで、大量に精製された一分子型リアルタイム発光プローブを得ることができる。これらの精製一分子型リアルタイム発光プローブを持つ紙ストリップと、発光酵素の基質を組み合わせたキットは、これらの発光プローブを発現している生細胞を用いるキットと同様に、外部刺激とそれによる2次現象であるセカンドメッセンジャーの定性定量分析ができるキット構成することができる。
(i)一分子型リアルタイム発光プローブをコードするDNAを持つプラスミドを24穴プレート上の生細胞に導入し、さらに16時間培養する。
(ii)上記細胞の培養液を除去し、その代わりに基質(coelenterazine)を含んだ200mL緩衝溶液(例えば、HBSSバーファー)に細胞を浸す。
(iii)上記細胞を特定刺激物質で刺激し、その刺激前後の発光変化値を発光プレートリーダー(luminescence plate reader; 例えば、LB 941 Multimode Reader(Berthold))を用いて観測する。
(i)精製された一分子型リアルタイム発光プローブを直径1.2センチの十字架型紙ストリップの末端に垂らして乾燥させる。
(ii)上記十字架型紙ストリップの中央に刺激物質を含む基質溶液15mLを点滴し、即時に発光Scanner(例えば、RAS-3000;FujiFilm)で発光値を観測する。
このように、本発明のスクリーニング用キットとしては、一分子型リアルタイム発光プローブをコードする核酸を含む発現ベクターを用いて形質転換した生細胞を含むキットのほか、一分子型リアルタイム発光プローブをコードする核酸を含む発現ベクターとプローブ内の発光酵素の基質とを組み合わせたキット、ならびに一分子型リアルタイム発光プローブを末端にもつ発光ストリップとその発光酵素の基質とを組み合わせたキットも用いられる。
Ca 2+ を認識するカルモジュリン(CaM)を含む一分子型発光プローブ用の種々の融合タンパク質をコードする核酸分子を含むプラスミドの構築
外部刺激によって引き起こされる、生きた細胞内での反応現象をリアルタイムでイメージングできる本プローブを英語名に因んでSimorプローブ(a SIngle MOlecule-format bioluminescent probe for Realtime imaging)と称する。カルモジュリン(CaM)を介したプローブをSicaとする。一方、カルモジュリン(CaM)と共にその認識ペプチド配列(M13)を介したプローブをSicamと名づける。各プローブを組み込んだ真核細胞発現ベクターをpSica、又はpSicamと称する。
Xenopus laevis(African clawed frog)由来のCa2+認識タンパク質であるカルモジュリン(CaM; 1-150 AA; GenBank/NM001087395)をコードするcDNAの両端に制限酵素サイトのKpnIとBamHIを導入するためにPCR増幅を行った。一方、一分子型プローブとしてCaMに連結できる最適な発光酵素としてGaussia princeps由来のluciferase(GLuc; 1−189 AA; GenBank/AY015993)を利用することにした。GLucのcDNAの5箇所をPCR反応によって断片化した5つのペアを作成し、実施例2に示す、GLucの最適分割位置の検討に用いた(図3)。
図2で示したように、GLucのN末とC末側(GLuc-NとGLuc-C)に挟まれた形でCaMをつなげたcDNA constructを作成した。また、pSica-5の骨格内にCaMに加えM13をつなげ、さらにその外側にGLucのN末とC末側をつなげた融合タンパク質を発現できるcDNA constructを作成した。
また、生細胞内で発現させるプローブの発現が分析対象である生細胞本来の生理作用にできるだけ負担をかけない工夫として、本発明者らはGLucの疎水性分布グラフと、GLucにおける各ドメインの役割を考察し、GLucの最初2〜17番目までのアミノ酸が発光活性には影響しないであろうと予測してこの範囲のアミノ酸を含まない形で本発明のプローブを設計した。この結果、GLucの全体分子量からおよそ11%を減らした形での発光プローブを作成できた。
また本発明では、プローブ内の各要素を、通常4〜5アミノ酸程度のグリシン(G)及び/又はセリン(S)を介するように設計するが、当該実施例では、5アミノ酸相当のGlycine(G)リンカーを用いている。このリンカー配列を省略して図式化すると、本実施例のプローブは、[GLuc-N/CaM/GLuc-C]、又は[GLuc-N/CaM/M13/GLuc-C]と表すことができ、当該遺伝子コンストラクトを、pcDNA3.1(+)ベクター骨格(Invitrogen)にサブクローニングしてプラスミドを構築した。なお、構築したプラスミドはBigDye Terminator Cycle SequencingキットとABI Prism310遺伝子解析装置より配列確認を行った。GLucのN末側断片とC末側断片の間にCaMのみを持つプラスミドをpSica系統(pSica-1〜-5)と名づけた。
その対照群として、ホタルルシフェラーゼ(FLuc)の断片であるFLuc-N及びFLuc-Cを用いた場合の、[FLuc-N/CaM/FLuc-C]、又は[FLuc-N/CaM/M13/FLuc-C]の遺伝子コンストラクトを作成し、同様にpcDNA3.1(+)ベクター骨格(Invitrogen)にサブクローニングした。
GLucの分割位置の検討
本発明者らはGLucの全アミノ酸配列における疎水性分布解析をベースにGLucのアミノ酸配列内90位から108位までの親水性領域がGLucを形成する二つのタンパク質ドメイン間領域であると予測し、この領域を中心に5箇所の分割位置をきめ、上述のようにGLucのcDNAの5箇所をPCR反応によって断片化した5つのペアを作成した(図3)。
これら5つのGLucのN末側断片とC末側断片ペアの間にCaMのみを持つプラスミドをpSica系統と名づけ、その分割位置の違いからpSica-1から-5までの名前をつけた。
各プローブの発光値を見比べたところ、1−3番分割位置を有するプローブの発光値はほぼゼロであるのに対し、4−5番分割位置を持つプローブは500万RLU程度の強い発光値を示した(図3)。この結果は、3番と4番分割位置の間にある7個のアミノ酸がGLuc の活性中心である可能性を示している。また図3と4の結果から4番と5番の分割位置の間の領域がGLucを使った一分子型発光プローブを作成する上で最適な分割位置であることを示している。また、この結果は、4−5番付近の位置で切断されたGLucを持つプローブは、十分な発光酵素活性を回復できるため、カルシウムイオンの増減を指標とした分析用試薬(リアルタイム発光プローブ)としてきわめて優れていることを示すものである。また同時に、光が殆ど出なかった3番と多く出た4番の間にあるアミノ酸は酵素の発光活性を司る重要なアミノ酸を含んでいる可能性を示唆するものであるため、以下のポイント変異実験を行った(実施例3)。
一方、対照として作成したFLuc断片を用いたプローブはカルシウムに対する応答性を示さなかった(図2(B))。
ポイント変異型プラスミドの作成とその発光スペクトルの作成
上記GLucの3番と4番切断位置の間には七つのアミノ酸配列(93RCHTYEG99)が存在する。今実験ではこのアミノ酸の中、GLucの発光活性を司るアミノ酸を検索するためにそれぞれのアミノ酸を一つずつglycine(G)にポイント変異したN末側の断片を作成し、その各々のポイント変異型GLuc-N末断片を含む融合タンパク質をコードする核酸を用いて6種類のプラスミドを作成した。
このポイント変異体を作成するために以下の手順で作業をした。pSica-4を鋳型にし、GLucのN末側断片における一部分のアミノ酸であるRCHTYEGをコードするcDNAを、それぞれポイント変異を引き起こすプライマーシステムを使い、PCR合成した。その結果、合成されたN末側断片を精製し、その両端をHindIIIとKpnI切断酵素で切断する。一方のpSica-4も同じくHindIIIとKpnIサイトで切断し、上記変異型N末側断片をそれぞれ組み込んだプラスミドを作成した。これらをそれぞれpSica-4m1から数字を変えpSica-4m6まで名づけた。ここで言う“m”の意味はmutationのことを示す。
上記pSica‐4m1から‐4m6までのプラスミドをそれぞれ導入した細胞による発光スペクトルを測定した(図4)。結果からするとpSica-4m6による発光スペクトルは他の場合に比べて480 nm近傍の発光値が高いのが分かる。一方、pSica-4m4による480 nm近傍の発光値はpSica-4m6とその他のプラスミドによる発光値の真中に当たる。またpSica-4m1から-4m3およびpSica-4m5による発光値は比較的に低いことが分かる。この結果は以下に解析できる。
上記GLucの3番と4番切断位置の間には七つのアミノ酸配列(RCHTYEG)の中で、発光活性に重要なアミノ酸はR、C、H、とYであり、これらに比べて、GLucアミノ酸配列中の96位のTと98位のEは発光活性にあまり重要ではないアミノ酸であることが分かった。この実験は、本一分子型リアルタイム発光プローブが刺激物質の定量可視化手段を提供するのみならず、発光タンパク質そのものに関する基礎研究でも有力な手段であることを示している。
pSica-5を導入したCOS-7細胞におけるATP濃度依存的な発光変化値の測定
24穴プレートに培養したCOS-7細胞にpSica-5を、Transfection試薬(TransIT-LT1(Mirus))を用いて導入した。さらに16時間培養後、培地をHBSS緩衝溶液(1.3 mM Ca2+含有)と基質混合溶液200mLに換え、その後の発光変化値を発光プレートリーダーでモニターした(図5)。約5分後、それぞれ違う濃度のATPを加え、その後の発光値の変化を観測した。結果によると1mM、100mM、10mM ATP刺激に対して、それぞれ刺激濃度依存的な発光値の変化が観測された。一方、緩衝溶液そのもの(phosphate buffer saline; PBS)に対しては観測できる値の発光値の変化は認められなかった。
pSica-5を導入したCOS-7細胞における外部刺激物質による発光強度変化の測定
24穴プレートに培養したCOS-7細胞にpSica-5を、Transfection試薬(TransIT-LT1(Mirus))を用いて導入した。さらに16時間培養後、培地をHBSS緩衝溶液(1.3 mM Ca2+含有)と基質混合溶液200mLに換え、その後の発光変化値を発光プレートリーダーでモニターした(図6)。その後、2mM ionomycinを加えることによって、細胞外のCa2+が細胞内に入るようにした条件で発光値の変化を観測した(外部から細胞へのCa2+導入)。更に、1mM ATPと1mM histamineを加え、細胞内endoplasmic reticulum(ER)から細胞質へのCa2+排出を促進した条件で発光値の変動を測定した(細胞内部でのCa2+分泌促進)。この全過程における発光値の変化を発光プレートリーダーで観測した。この結果から、細胞内における代表的な信号伝達手段であるCa2+濃度変化が生きた細胞のままで、リアルタイムで測定できることが分かった。
pSica-5を導入した生細胞のCa 2+ 濃度依存的な発光強度及び濃度検定曲線
24穴プレートに培養したCOS-7細胞又はHeLa細胞にpSica-5を、Transfection試薬(TransIT-LT1、Mirus)を用いて導入した。さらに16時間培養後、細胞培地を基質であるcoeleterazineと2mM ionomycinを含んだPBS緩衝溶液200mLに換え、その後の発光変化値を発光プレートリーダー(Mithras LB 940; Berthold)でモニターした(図7(A))。発光強度が安定化された4分後、10-3.5から10-5.5 MになるようにCa2+をウェル上細胞に加えた。その後、即時に上記発光プレートリーダーで発光値の変化をモニターした。加えたCa2+濃度依存的な発光値の変化が観測された。このCa2+濃度における発光変動値をベースに、三種類の培養細胞によるCa2+濃度検定曲線を作成した。
Ca2+濃度による発光強度値変化を基に得られた50%活性濃度(effective concentration 50%)は、COS-7とHeLa細胞に対してそれぞれ、0.25 x 10-4 Mと0.50 x 10-4 Mであることが分かった。HeLa細胞内に引き起こされたCaMとCa2+と間の解離係数(Kd)は、その発光値から0.63 x 10-17 M4であることが分かった。
pSica-5を導入したCOS-7、MCF‐7、およびHeLa細胞のATP濃度による発光強度変化を測定した(図7(B))。ATPによって刺激された場合、細胞膜上に存在するATPリセプターがATPを認識し、活性化されたリセプターの直下にIP3の濃度が増加する。結果的にIP3によるCa2+濃度が増加する。従って、外部からの与えられたATP濃度依存的な発光強度を示した。1mM ATP刺激によって各細胞における増加された細胞内Ca2+の濃度は下記表に示した。
pSicamを導入したCOS-7細胞における外部刺激物質による発光強度変化の測定
12穴プレート上に培養したCOS-7細胞にpSicamを導入した。16時間後、外部刺激依存的な発光強度変化を発光プレートリーダーでモニターした(図8)。図8(A)においては、12穴プレート上の細胞培地をHBSS緩衝溶液(1.3 mM Ca2+含有)と基質混合溶液200 mLに換え、その後の発光変化値を発光プレートリーダーでモニターした。その後、ATP有り無しの条件で発光値の変化をモニターした。図8(B)に関しては、まず、12穴プレート上の細胞培地をHBSS緩衝溶液(1.3 mM Ca2+含有)と基質混合溶液200mLに換え、その後の発光変化値を発光プレートリーダーで約5分間モニターした。その後、2mL ionomycinを加え、最後には1mM ATPで刺激した。各段階における発光強度の変化を引続き発光プレートリーダーで観測した。この結果は、pSicamを導入したCOS-7細胞は外部刺激依存的に発光強度を増加させることが分かった。この理由は、pSicam内部に挿入したCaMとM13間の結合が外部刺激依存的に起こり、その結果、CaMとM13の更に外側に連結したGLuc断片間の相互作用によって酵素活性が回復されたからだと解析できる。図8(C)はCaMとM13間の結合による酵素活性回復の概念図であり、右辺にはカルシウム有りの条件でCaMとM13が結合した時の液晶構造を示す。
この実験結果は、本手法が生きた細胞内外の分子現象をリアルタイムで観測できることを示している。
核受容体を組み込んだ一分子型発光プローブ発現用のプラスミドの構築と刺激応答性測定
上記プラスミドを使った実験によって見出された、GLuc内最適切断位置が汎用的な切断位置であることを示すために核受容体(nuclear receptor; NR)のプラスミドを構築した。
核受容体の代表的なものである、人間由来の男性ホルモン受容体(human androgen receptor; AR GenBank/M27430)又は、グルココルチコイド受容体(human glucocorticoid receptor; GR GenBank/P04150)のリガンド結合ドメイン(ligand binding domain; LBD)のcDNAから、PCR反応により各N-とC-末側に制限酵素サイトであるKpnIとBamHIを導入した。上記pSica-5におけるCaMのcDNAの変わりに本AR LBD又はGR LBDを導入したプラスミドを作成した。これらをそれぞれpSimarとpSimgrに名づけた。図9(A)はpSimarとpSimgr内のコンストラクトの遺伝子設計図である。
図9(B)と(C)はそれぞれpSimarとpSimgrを導入した生細胞のリガンド感受性を示す。pSimarを導入した細胞は男性ホルモン(DHT)に対して特異的な発光強度を示し、一方、pSimgrを導入した細胞はストレスホルモン(cortisol)に強い感受性を示した。この結果は、本AR LBDとGR LBDを搭載したプローブが生細胞の中で確かに発現されており、リガンド選択性と感受性を持つことを示している。また、本プローブに搭載したGLucの断片が、pSica-5で採用された切断位置と一致することから、この切断位置が、一分子型発光イメージングプローブのために一般的に使用できるものであることを強く示唆する。
発光紙片を用いたCa 2+ 活性の可視化イメージング
本一分子型リアルタイム発光プローブは、一つの分子内に信号認識とシグナル(発光)発信に必要なすべての要素が集積された形態であるため、生きた細胞のみならず、in vitro実験でも幅広く使用できる。その一例として、ガラス基板上に紙片を形成させた形のリガンドの可視化イメージング手段を提供できる。
本実施例では、ニトロセルロースペーパーから十字架様ストリップを切断し、取り出した紙片をガラス基板上に付着した発光ストリップを製作した(図10)。上記生細胞から分離精製したプローブを十字架型発光ストリップの末端に点滴・乾燥し、その後、Ca2+感受性を測定した。Ca2+イオンありの条件では強い発光を提示していることが分かった。一方、Ca2+イオンなしの条件では、発光が目立たないほど弱いのが分かる。
この結果は、本一分子型リアルタイム発光プローブが生細胞のリアルタイム発光イメージングのみならず、非細胞系においても一般的な分析ツールを形成できることを示している。
また、細長い紙片などの一方に本プローブを乗せて乾燥させておき、測定の時に少量のサンプルを滴下することによって、非細胞系においてもOn-site、リアルタイムで、かつ小型化された分析手段を提供する。既存に市販されている妊娠診断試薬、***診断試薬のような形で、標的リガンドの定量可視化を可能にする、簡便な分析手段を提供できる。 アレルギー、ストレス物質のような生体内障害因子の高速スクリーニング、抗がん剤の薬作用の迅速・簡便かつ高サンプル処理能での定量評価(新薬開発)に役立つ。
Claims (24)
- セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質のN末側とC末側のそれぞれに、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)とC末端側フラグメント(C-LE)とが連結されている融合タンパク質であって、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離によって引き起こされた構造変化の結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質。
- 前記融合タンパク質が、さらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含むものであって、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質が、セカンドメッセンジャーとの結合又は脱離により引き起こされた構造変化によって前記ペプチドと結合した結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質である、請求項1に記載の融合タンパク質。
- 前記発光酵素が、ガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)である、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
- 前記セカンドメッセンジャーがCa2+イオンであり、セカンドメッセンジャー認識タンパク質がカルモジュリンである、請求項1〜3のいずれかに記載の融合タンパク質。
- 前記Ca2+イオンを認識するカルモジュリンと可逆的に結合できるペプチドがM13ペプチドであり、カルモジュリンがCa2+イオンと結合したことで構造変化を起こしてM13ペプチドと結合した結果、両端のガウシア・ルシフェラーゼ(N- GLuc及びC- GLuc)の位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質である、請求項2に記載の融合タンパク質。
- 請求項1〜5いずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸分子であって、セカンドメッセンジャー認識タンパク質をコードする核酸を含む直鎖状核酸分子の5’末端と3’末端のそれぞれに、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)をコードする核酸と、C末端側フラグメント(C-LE)をコードする核酸とが連結されている核酸分子。
- 前記直鎖状核酸分子中に、さらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドをコードする核酸を含むことを特徴とする、請求項6に記載の核酸分子。
- 前記請求項6又は7に記載の核酸分子を含む発現ベクターであって、当該発現ベクターを導入した形質転換細胞内で、セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質の両端に、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)とC末端側フラグメント(C-LE)とがそれぞれ連結されている融合タンパク質、又はさらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含む融合タンパク質を発現することが可能な、発現ベクター。
- 請求項8に記載の発現ベクターが導入された細胞であり、セカンドメッセンジャー認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質の両端に、発光酵素(LE)を分割したN末端側フラグメント(N-LE)とC末端側フラグメント(C-LE)とがそれぞれ連結されている融合タンパク質、又はさらに前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含む融合タンパク質を発現している形質転換細胞。
- 請求項1〜5いずれかに記載の融合タンパク質を有効成分として含むことを特徴とする、セカンドメッセンジャーの検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
- 請求項1〜5いずれかに記載の融合タンパク質を有効成分として含むことを特徴とする、細胞膜表面レセプターを刺激するリガンドの検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
- 前記融合タンパク質を有効成分とする分析用試薬又はそれを含むキットが、前記融合タンパク質を細胞表面又は細胞内で産生している形質転換細胞自体を含むものである、請求項10又は11に記載の分析用試薬又はそれを含むキット。
- 前記分析用試薬を含むキットが、紙片、繊維切片、断片プレート又は探針素子の少なくとも1部に前記分析用試薬が固定化されていることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の分析用キット。
- 請求項8に記載の発現ベクターを有効成分とし、生細胞へ導入し、生細胞内部で発現させてセカンドメッセンジャーの産生状況を可視化することにより、生細胞表面レセプターを刺激するリガンドを検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
- 請求項8に記載の発現ベクターを細胞内に導入して細胞内部で融合タンパク質を発現させ、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離によって引き起こされた構造変化の結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離したことで発せられる光の増減を観察することにより、細胞内のセカンドメッセンジャーの発生状況を観察することによる、セカンドメッセンジャーの検出、同定又は定量方法。
- 前記N-LE及びC-LEとの位置の近接又は解離が、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離により構造変化し、当該セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドと結合した結果引き起こされたものである、請求項15に記載の細胞内のセカンドメッセンジャーの検出、同定又は定量方法。
- 請求項8に記載の発現ベクターを細胞内に導入して細胞内部で融合タンパク質を発現させ、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離によって引き起こされた構造変化の結果、両端のN-LE及びC-LEとの位置が近接又は解離したことで発せられる光の増減を観察することにより、細胞内のセカンドメッセンジャーの発生状況を解析し、細胞表面レセプターを刺激するリガンドの検出、同定又は定量する方法。
- 前記N-LE及びC-LEとの位置の近接又は解離が、前記セカンドメッセンジャー認識タンパク質がセカンドメッセンジャーとの結合又は脱離により構造変化し、当該セカンドメッセンジャー認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドと結合した結果引き起こされたものである、請求項17に記載の、細胞表面レセプターを刺激するリガンドの検出、同定又は定量する方法。
- 生物・環境試料に対して請求項15に記載の発光型リガンド検出用キットを用いることによる、生体由来試料中の遊離カルシウムの濃度検出、同定又は定量方法。
- ガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)をコードするアミノ酸配列又はその2〜17位のアミノ酸残基の1部もしくは全部を欠失させたアミノ酸配列において、GLucを構成するアミノ酸配列の99位から106位のいずれかの位置のアミノ酸残基を分割位置とするN末端側フラグメント(N-GLuc)とC末端側フラグメント(C-GLuc)を、リガンド認識タンパク質を含む一本鎖状のタンパク質のN末端及びC末端のそれぞれに連結させた融合タンパク質であって、該リガンド認識タンパク質にリガンドが結合又は脱離することにより引き起こされた構造変化の結果、両端のN-GLuc及びC-GLucとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質。
- 前記融合タンパク質が、さらに前記リガンド認識タンパク質と可逆的に結合できるペプチドを含むものであって、該リガンド認識タンパク質がリガンドとの結合又は脱離により引き起こされた構造変化によって前記ペプチドと結合した結果、両端のN-GLuc及びC-GLucとの位置が近接又は解離し、観察可能な波長の光を発する、又は減ずることができる融合タンパク質である、請求項20に記載の融合タンパク質。
- 前記N末端側フラグメントが配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、前記C末端側フラグメントが配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである、請求項20又は21に記載の融合タンパク質。
- 請求項20〜22のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
- 請求項20〜22のいずれかに記載の融合タンパク質を有効成分として含むことを特徴とする、リガンドの検出、同定又は定量するための分析用試薬又はそれを含むキット。
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