JP2009147432A - 量子暗号送信器および量子暗号装置 - Google Patents

量子暗号送信器および量子暗号装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 正規利用者の持つべき装置が従来技術より簡単な装置構成で済む、量子暗号装置を提供することにある。
【解決手段】 量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源と、前記光源にて発生した光子を複数の伝搬路にランダムに分岐する分岐カップラーと、前記複数の伝搬路のそれぞれについて伝搬する光子の有無を非破壊にて検出する光子数非破壊測定装置と、複数の伝搬路のうちの光子が通過した伝搬路に依存して非直交4状態に準備された2連光子パルスを単一の伝送路に送出する光子パルス状態準備手段と、を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、量子暗号装置、特に光ファイバー通信により暗号秘密鍵を共有する量子暗号鍵配布を行う量子暗号送信器に関する。
インターネットの爆発的普及、電子商取引の実用化を迎え、通信の秘密保持・改竄防止や個人の認証など暗号技術の社会的な必要性が高まっている。
現在、DES(データ暗号化規格:Data Encryption Standard)暗号のような共通鍵方式やRSA(R. Rivest、A. Shamir、L. Adelman)暗号のような共通鍵方式やRAS暗号をはじめとする公開鍵方式が広く用いられている。しかし、これらは「計算量的安全性」にその基盤を置いている。
つまり、現行の暗号方式は計算機ハードウェアと暗号解読アルゴリズムの進歩に常に脅かされている。特に銀行間のトランザクションや軍事・外交にかかわる情報などの極めて高い安全性が要求される分野では原理的に安全な暗号方式が実用になればそのインパクトは大きい。
情報理論で無条件安全性が証明されている暗号式にワンタイムパッド法がある。ワンタイムパッド法は通信文と同じ長さの暗号鍵を用い、暗号鍵を1回で使い捨てることが特徴である。
非特許文献1(ベネット(Bennett)、ブラッサード(Brassard)著 IEEEコンピュータ、システム、信号処理国際会議(IEEE Int. Conf. on Computers, Systems, and Signal Processing, Bangalore, India, p. 175 (1984)))で、現在BB84プロトコルとして広く知られている、ワンタイムパッド法に使用する暗号秘密鍵を安全に配送する具体的なプロトコルがベネット(Bennett)らによりはじめて提案された。これを契機に量子暗号の研究が盛んになっている。
量子暗号は物理法則が暗号の安全性を保証するため、計算機の能力の限界に依存しない究極の安全性保証が可能になる。現在多く検討されている量子暗号装置では一ビットの情報を単一光子の状態にエンコードして伝送する。これは、光子が他の量子系に比べると環境による擾乱に強いと同時に、既存の光ファイバー通信技術の活用により長距離の暗号鍵配布が期待できるためである。
本発明の基盤であり、理論的にその安全性が証明されている非特許文献1に記載されている4非直交状態を用いる量子暗号鍵配付プロトコル(BB84と呼ばれる)では、送信者はあらかじめ定められた光子の2種の非直交な相補的基底(不確定な関係にある変数の組:例えば位置と運動量など)のひとつを変調基底としてランダムに選択し、鍵となるビットデータを選択した変調基底に属する2直交状態(古典的に区別可能な状態)により変調して伝送する。
受信者は到着光子をランダムに選択する復調基底に適合した復調方法で復調し、その復調結果を鍵となるビットデータの候補として記録する。送受信者は相補的基底のいずれを変復調に用いたかを、すべての量子鍵(暗号鍵が変調された光子)について公開通信路を用いて照合し、変復調基底が合致した光子に関するビットデータのみを選別して鍵の候補とする。
盗聴行為は量子力学的状態に擾乱を与え、正規送受信者の選別鍵中のエラーから漏洩情報量が推定できるようにプロトコルが設計されている。盗聴行為がなければ漏洩情報量はゼロであり、選別鍵中のエラーはゼロである。選別鍵中のエラー率をサンプリング法により測定し、測定したエラー率がしきい値より小さければ、選別鍵から安全な秘密鍵を抽出することが可能であることが公知である。
このような情報通信に用いられる量子状態はしばしば量子情報と呼ばれる。量子情報を担う量子力学的2自由度系は量子ビットと呼ばれ、それは数学的にはスピン1/2系と等価である。以下、担体となる物理系が光子の場合について、従来技術を記述する。
本発明に関わる、光子を量子ビット担体とし長距離伝送のため光ファイバーを伝送路として用いる暗号鍵配布装置について、以下に従来技術を説明する。光子を用いた量子暗号装置については、非特許文献2(ツビンデン(Zbinden)ほか著「Experimental Quantum Cryptography」、「INTRODUCTION TO QUANTUM COMPUTATION AND INORMATION(ロー(Lo)ら編著)」(World Scientific、1998年出版)、120ページ)、非特許文献3(エカート(Ekert)ほか著「Quantum Cryptography」、 「The Physics of Quantum Information(ボウメスター(Bouwmeester)ら編著)」(Springer、2000年出版)、15ページ)、非特許文献4(ジサン(Gisin)ほか著「Quantum Cryptography」 レビュー・オブ・モダン・フィジックス(Rev. Mod. Phys.)、74号(2002年出版)、145−195ページ)に詳細な説明がある。
非特許文献1では、光子の持ちうる2つの偏波状態に情報をエンコードする、偏波コーディングと呼ばれる量子暗号装置の実装が提案された。しかしながら、偏波コーディングには伝送路中の偏波回転の実時間制御および補償が必要となるため、光ファイバーを伝送路として用いる長距離暗号鍵配布システムの実装方法としてはあまり使われない。
長距離暗号鍵配布システムとしては、2連微弱光パルス間の相対位相に情報をエンコードする、位相コーディングと呼ばれる量子暗号装置の実装がやはりベネットらにより提案され、実現されている。
図7は非特許文献2〜4に記載がある、コヒーレント微弱光パルスを用いた位相コーディングによる量子暗号装置の代表的実装例を示している。この装置では、2つの非対称マッハツェンダー干渉系を光ファイバー伝送路で直列に連結した構造の光学干渉系が用いられる。
送信部に装備された微弱レーザ光源71で発生した微弱な短光パルスを、送信側の非対称マッハツェンダー干渉系72に入射することにより、光ファイバー伝送路上にその長短尺光路差だけ空間的に分離したコヒーレント2連微弱光パルス78を準備する。
ここで、コヒーレントという言葉は、長短尺光路差の明確に定義された非対称マッハツェンダー干渉系72により2連微弱光パルス78の2つのパルスの間に相対位相が明確に定義できることを意味する。
2連微弱光パルス78は光ファイバー伝送路73上を伝送中に擾乱を受けるが、それらの相対的位相関係や偏波面の関係は保存される。受信側の非対称マッハツェンダー干渉系74により、2連微弱光パルス78は3連パルス的光子出力79に変換され、下流側の2つのポートに出力される。
光子検出器75により、非対称マッハツェンダー干渉系74の2つの下流ポートに出力される3連パルス的光子出力79の中央の光パルス中に含まれる光子が0か1かを識別し、記録する。
3連パルス的光子出力79のうち、中央の光パルスには、送信部で非対称マッハツェンダー干渉系の長尺を通り受信部で短尺を通ってきた光パルスと、送信部で短尺を通り受信部で長尺を通ってきた光パルスが寄与し、これら2つの寄与の干渉により2つの出力ポートへの強度比は2連微弱光パルス78の光学遅延(相対的な位相)に正弦波関数的に依存する。
上記の光学干渉システムにおいて2連微弱光パルス78に光学遅延(相対的な位相)に変調を与えることにより、量子暗号の原理に基づく暗号鍵配布を行うことができる。この目的のため、光パルスが非対称マッハツェンダー干渉系72を通過中に内包された位相変調器76で{0、π/2、π、3π/2}の4値の位相変調を行い、光ファイバー73伝送後の2連パルスが非対称マッハツェンダー干渉系74を通過中に内包された位相変調器77で{0、π/2}の2値の位相変調を行う。
非対称マッハツェンダー干渉系72および74における光学遅延を適正に調整することにより、非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号鍵配布プロトコルを実行し、安全な鍵配布を行うことが可能である。
位相コーディングに基づく量子暗号装置は、光ファイバー伝送路との相性も良く、長距離鍵配布が可能であるというメリットがあるが、送受信者がそれぞれ持つ非対称マッハツェンダー干渉系の相対光学遅延を光波長なみの精度で維持しなければならないという問題がある。
これら送受信者に分散して配置された干渉系の光学遅延は、温度変化その他の原因により独立にゆらいだりドリフトしたりするため、光干渉効果は容易に消失する。この問題を解決するためには、両干渉系の相対光学遅延変化を測定し、測定結果をフィードバックして相対光学遅延を一定に維持するアクティブな制御装置が必要となる。このような測定装置はそれ自体がシステムを複雑化するだけではなく、測定に用いる参照光がシステムノイズを増加させ、量子暗号装置の性能劣化の原因となる。
近年、上記のような問題を解決するため、非特許文献5(南部ほか著「BB84 Quantum Key Distribution System Based on Silica-Based Planar Lightwave Circuits」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)、43号(2004年出版)、L1109ページ)、非特許文献6(木村ほか著「Single-photon Interference over 150 km Transmission Using Silica-based Integrated-optic Interferometers for Quantum Cryptography」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)、43号(2004年出版)、L1217ページ)、非特許文献7(南部ほか著「One-way Quantum Key Distribution System based on Planar Lightwave Circuit」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)45号、6A巻(2006年出版)、5344−5348ページ)および特許文献1(特開2003-249928号公報)にあげられるように、平面光回路(PLC: Photonic Lightwave Circuit)技術を応用した量子暗号装置が考案され開発されている。
非対称マッハツェンダー干渉系をシリコン基板上にパターニングで形成した光導波路で作製することにより、外乱により影響を受けることのない安定な光学干渉系を、温度制御というパッシブな制御のみによって実現することができ、低雑音のシステムを構築できるというメリットがある。
PLCを用いた実装の場合、先に示したような位相変調器を内包した低損失な非対称マッハツェンダー干渉系を製作することは現在の技術では容易ではない。コスト増は問題としないとしても、受信側デバイスの光学損失の増加は、微弱光を情報担体として用いる量子暗号装置の性能劣化に直結するため、許容できない問題である。この問題を解決するため、位相変調器を非対称マッハツェンダー干渉系の外部に配置した、図8に示したような量子暗号装置が考案され、開発されている。
図8に示す量子暗号装置の例では、送信部に装備された微弱レーザ光源81で発生した微弱な短光パルスを送信側のPLCにより構成された非対称マッハツェンダー干渉系82に入射することより、光ファイバー伝送路上にその長短尺光路差だけ空間的に分離したコヒーレント2連微弱光パルス89を準備する。
2連微弱光パルス89は光ファイバー伝送路83上を伝送する。受信側の非対称マッハツェンダー干渉系84により、2連微弱光パルス89は3連光パルス90に変換され、下流側の2つのポートに出力される。光子検出器85により、非対称マッハツェンダー干渉系84の2つの下流ポートに出力される3連パルス的光子出力90の中央の光パルス中に含まれる光子の有無が識別されて記録される。
送信側の非対称マッハツェンダー干渉系82の下流に直列に挿入した位相変調器86、87に、それぞれの変調器の2連微弱光パルス89の通過時に同期してパルス的な変調信号を印可することにより、2連微弱光パルス89の一方のパルスに選択的に{0、π/2、π、3π/2}の4値の位相変調を与え、もって2連微弱光パルス89の光学遅延(相対位相)に4値変調を与える。
受信側の非対称マッハツェンダー干渉系84の上流に直列に挿入した位相変調器88に、2連微弱光パルス89の通過時に同期してパルス的な変調信号を印可することにより、2連微弱光パルス89の一方のパルスに選択的に{0、π/2}の2値の位相変調を与え、もって2連微弱光パルス89の光学遅延(相対位相)に2値変調を与える。
非対称マッハツェンダー干渉系82および84における光学遅延を調整することにより、図7の量子暗号装置と同様に非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号鍵配布プロトコルを実行し、安全な鍵配布を行うことが可能である。
一方、非特許文献5および特許文献1で公知となっている図9に示す量子暗号装置の例では、送信部に装備された微弱レーザ光源91で発生した微弱な短光パルスを送信側のPLCにより構成され、対称マッハツェンダー干渉系92とカスケードに接続された非対称マッハツェンダー干渉系93に入射することより、光ファイバー伝送路上に非対称マッハツェンダー干渉系93の長短尺光路差だけ空間的に分離したコヒーレント2連微弱光パルスまたはそれらの構成要素である先進・遅延いずれかの微弱光パルス98を準備する。
これらの微弱光パルス98は光ファイバー伝送路94上を伝送され、受信側の非対称マッハツェンダー干渉系95を通過後、その下流側の2つのポートへの光子到着時間が、送信装置に同期して動作する光子検出器96により観測され、長短尺光路差相当の時間分、分離された3つのタイムスロットのいずれであったかが識別・記録される。
送信側の対称マッハツェンダー干渉系92の一方の光路には位相変調器97が挿入されており、微弱レーザ光源91から入射された微弱光パルスは{0、π/2、π、3π/2}の4値から選択された位相変調を受ける。
付与される位相変調が{0、π}の場合には光パルスは非対称マッハツェンダー干渉系93の長尺又は短尺のみを伝搬し、位相変調値に依存して前後いずれかの光パルス98が光ファイバー伝送路94上に準備される。
付与される位相変調が{π/2、3π/2}の場合には微弱光パルスは非対称マッハツェンダー干渉系93の長短尺の両方を伝搬し、位相変調値に依存して相対位相がπ変化するコヒーレント2連光パルス98が光ファイバー伝送路94上に準備される。
位相変調器97における位相変調値が{0、π}の場合には、中央のタイムスロットに出現する光子の出力ポートと位相変調値が相関し、位相変調器97における位相変調値が{π/2、3π/2}の場合には、第1と第3のタイムスロットに出現する光子のタイムスロットと位相変調値が相関するように、非対称マッハツェンダー干渉系93および95における光学遅延を適切に調整することにより、非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号鍵配布プロトコルを実行し、安全な鍵配布を行うことが可能である。
図7および図8に示した量子暗号装置には、以下のような問題がある。
鍵データ及び変調基底選択のため送信器の位相変調器76や86、87で4値からランダムに選んだ位相変調を、復調基底選択のため受信器の位相変調器77や88で2値からランダムに選んだ位相変調を行う必要がある。このために送信器では2ビットの、受信器では1ビットの乱数列が必要になる。
セキュアな秘密鍵共有を行うためには、これらの乱数列は真性乱数列である必要がある。このような真性乱数列は熱雑音などの物理現象を用いる装置により生成することはできる。
高速な鍵共有のためには、例えばシステム動作速度を高める必要があるが、そのためには高速な真性乱数列の生成が必要となる。残念ながら、現状技術の真性乱数生成装置の乱数生成速度は高くないため、複数の装置を並列動作させるなどの方法を採用するしか生成速度の高速化の方法はなく、システムサイズの肥大化、コスト増および発熱・消費電力増加の要因となっていた。
また、プロトコルに従い到着光子に関する基底の照合を行う際、どの光子が受信器まで到着するかは確率事象であり予測がつかないため、送受信器内で基底の照合までの間、暫時記憶する必要がある。このために、莫大なサイズの記憶装置を用意し、かつ短時間のバースト的システム動作を繰り返す必要があり、このこともシステムサイズの肥大化、コスト増および発熱・消費電力増加の要因となっていた。
量子暗号装置の持つ上記のような問題点の一部は、図9に示されているシステム構成により解決される。
図9において、送信器は量子ビットの情報担体となる光子を発生する4組の微弱レーザ光源91、1組の長尺および短尺光路を有する光導波路92および非対称マッハツェンダー干渉系93が光カップラー94により共通の光伝送路95に結合されている。
受信器は送信装置と同様の1組の長尺および短尺光路を有する光導波路96および非対称マッハツェンダー干渉系97が光カップラー98により共通の光ファイバー伝送路95に結合され、4組の出力ポートそれぞれには光子検出器99が接続されている。
正規送信者は同一波長λのコヒーレント光を発生する4組の微弱レーザ光源91からランダムにひとつの光源を選び、選ばれた光源から微弱な短光パルスを出射する。微弱レーザ光源91においてLD00またはLD01が選択された場合、非対称マッハツェンダー干渉系93の2つの入力ポートに入射された短光パルスは、入力ポートの選択に依存してπだけ相対位相の異なるコヒーレントな2連微弱光パルス(相対位相が明確に定義された2つの光パルス)となって出力ポート上に出力される。
一方、LD10またはLD11が選択された場合、1組の長尺および短尺光路を有する光導波路92の導波路長を適切に調整することにより、該コヒーレント2連微弱光パルスと同一時間で入力ポートの選択に従って出射時間が変調された微弱光パルスを出力ポート上に準備することができる。
これらの2つの光回路の出力ポートを光カップラーで共通の光伝送路95に結合することにより、微弱レーザ光源91の選択に依存して、量子暗号鍵配布プロトコル実行に必要となる互いに相補的な基底系に属するコヒーレント2連微弱光パルスまたはそれらを構成する微弱光パルスのいずれかひとつからなる非直交光パルス9Aをランダムに光伝送路95上に準備することが出来る。
一方、受信器は送信器と同様の1組の長尺および短尺光路を有する光導波路96および非対称マッハツェンダー干渉系97を有し、それらの入力ポートは光カップラー98により共通の光ファイバー伝送路95に結合され、4つの出力ポートは4組の光子検出器99に接続されている。
これら4つの出力ポートのうち、非対称マッハツェンダー干渉系97から出力される3連光パルス9Bのうち、光学干渉に寄与する中央の光パルスに含まれる到着光子、長尺光導波路伝搬後の2連光パルスのうち前方パルスに含まれる到着光子、および短尺光導波路伝搬後の2連光パルスのうち後方パルスに含まれる到着光子が、送信装置に同期して動作する4組の光子検出器99により検出記録される。
このとき、選択された光源91が{LD00またはLD01}かつ光子検出器99の到着光子が{D00またはD01}である場合(全事象の1/4)、および選択された光源91が{LD10またはLD11}かつ光子検出器99の到着光子が{D10またはD11}である場合(全事象の1/4)に選択された光源と光子検出された検出器が完全相関するように非対称マッハツェンダー干渉系93または97の光路遅延量を温度制御などの方法により制御することができる。
上記以外の光源選択と光子検出された検出器の組合せに関しては、両者の間には完全に相関がなく、秘密鍵生成には用いない。以上の動作は、非特許文献1に提案された非直交4状態を用いる量子暗号装置の必要十分条件を満たしており、提案されたプロトコルに従って無条件安全な秘密鍵を送受信者間で共有することが可能である。
上記に示された量子暗号装置においては、送信器では鍵データ及び変調基底選択のため4つの光源のランダムな選択を行う。この際に、2ビットの真性乱数列が必要となる。また同時に選択基底記憶のための莫大なサイズの記憶装置は必要である。
一方、受信器では光カップラー98により復調基底がランダムかつ受動的に選択されるため、真性乱数列は不要である。また、それぞれの光子検出器に記録された到着光子記録は同時に復調基底の情報の記録となるため、莫大なサイズの記憶装置は不要である。従って上述した量子暗号装置の受信器に関わる問題点は、図9に示されているシステム構成により解決される。
ベネット(Bennett)、ブラッサ-ド(Brassard)著 IEEEコンピュータ、システム、信号処理国際会議(IEEE Int. Conf. on Computers, Systems, and Signal Processing, Bangalore, India, p. 175 (1984)) ツビンデン(Zbinden)ほか著「Experimental Quantum Cryptography」、「INTRODUCTION TO QUANTUM COMPUTATION AND INORMATION(ロー(Lo)ら編著)」(World Scientific、1998年出版)、120ページ エカート(Ekert)ほか著「Quantum Cryptography」、 「The Physics of Quantum Information(ボウメスター(Bouwmeester)ら編著)」(Springer、2000年出版)、15ページ ジサン(Gisin)ほか著「Quantum Cryptography」 レビュー・オブ・モダン・フジックス(Rev. Mod. Phys.)、74号(2002年出版)、145−195ページ 南部ほか著「BB84 Quantum Key Distribution System Based on Silica-Based Planar Lightwave Circuits」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)、43号(2004年出版)、L1109ページ 木村ほか著「Single-photon Interference over 150 km Transmission Using Silica-based Integrated-optic Interferometers for Quantum Cryptography」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)、43号(2004年出版)、L1217ページ 南部ほか著「One-way Quantum Key Distribution System based on Planar Lightwave Circuit」 ジャパン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn J. Appl. Phys.)45号(2006年出版)、5344ページ
上述の非特許文献2〜7に示された位相変調器を用いる量子暗号装置には、送信器、受信器の双方において真性乱数発生装置及び選択基底の記憶装置が必要であり、システムサイズの肥大化、コスト増および発熱・消費電力増加の要因となっている。
この問題の一部は、図9に示された装置により解消される。すなわち、受信器の真性乱数発生装置及び選択基底の記憶装置は不要となる。しかしながら、送信器の真性乱数発生装置及び選択基底の記憶装置は依然として必要であり、システムサイズの肥大化、コスト増および発熱・消費電力増加を完全に解決することは困難であった。
本発明は上記従来技術の抱える問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は正規利用者の持つべき装置をより簡単な装置構成で済む量子暗号装置、特にその送信器を実現する技術を提供することを目的とする。
本発明の量子暗号送信器は、量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源と、
前記光源にて発生した光子を複数の伝搬路にランダムに分岐する分岐カップラーと、
前記複数の伝搬路のそれぞれについて伝搬する光子の有無を非破壊にて検出する光子数非破壊測定装置と、
複数の伝搬路のうちの光子が通過した伝搬路に依存して非直交4状態に準備された2連光子パルスを単一の伝送路に送出する光子パルス状態準備手段と、を有する。
本発明の量子暗号装置は、上記の量子暗号送信器を備えている。
特許文献1〜3に示された量子暗号装置の構成要素である量子暗号送信器共通の特徴は、用いられている光学回路中に量子暗号鍵配布プロトコルに必要とされる非直交4状態と一対一対応のある4つの光路が存在することにある。光カップラーによる光の受動的分岐を利用して、乱数発生装置無しに4つの光路にランダムに光子を送り込む。この際に、4つの光路中を伝搬する光子の有無を従来技術である光子数の量子非破壊測定により光子を壊すことなく観測し、ポジティブな結果を得たものについてのみ光子の伝搬ポートを記録することにより、対応関係から非直交4状態のどの状態が個々の光子に準備されたかを関知する。この情報は、秘密鍵の生成並びに変復調基底の照合のために必要である。これによって、装置の経済的技術的負荷であった真性乱数発生器並びに莫大な記憶装置を送信器から排除できる。
本発明によると正規利用者の持つべき装置の構造が簡単化でき、システムサイズの肥大化、コスト増および発熱・消費電力増加等の問題を解決できる。従って、非特許文献2〜7に開示された量子暗号装置に比べて、正規利用者の装置および装置運用の経済的技術的負担を大幅に軽減することができる。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
以下、図を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明による量子暗号送信器の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
本実施形態の量子暗号送信器は、特許文献1に示された量子暗号装置に含まれる送信器を基盤にしており、量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源11、光子を4つの伝搬路にランダムに分岐する4分岐カップラー12、それぞれの光路の光子伝搬の有無を観測・記録する光子数非破壊測定装置13、相関光子パルス発生手段である2組の非対称マッハツェンダー干渉系14および15、これらを共通の光伝送路17に結合する光カップラー16により構成される。
図2は本発明による量子暗号送信器の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
本実施形態の送信装置は特許文献2に示された量子暗号装置に含まれる送信器を基盤にしており、量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源21、光子を4つの伝搬路にランダムに分岐する4分岐カップラー22、それぞれの光路の光子伝搬の有無を観測・記録する光子数非破壊測定装置23、相関光子パルス発生手段である、非対称マッハツェンダー干渉系24、1組の長尺および短尺光路を有する光導波路を光カップラーで結合した構造を持つ光遅延回路25、これらを共通の光伝送路27に結合する光カップラー26により構成される。
図3は本発明による量子暗号送信器の第3の実施形態の構成を示すブロック図である。
本実施形態の送信装置は、特許文献2に示された量子暗号装置に含まれる送信器を基盤にしており、量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源31、光子を4つの伝搬路にランダムに分岐する4分岐カップラー32、それぞれの光路の光子伝搬の有無を観測・記録する光子数非破壊測定装置33、相関光子パルス発生手段である、長尺および短尺光路に光導波路が結合された非対称マッハツェンダー干渉系34からなり、光伝送路35により受信器に接続される。
図4は本発明による量子暗号送信器の第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
本実施形態の送信装置は、特許文献1に示された量子暗号装置に含まれる送信器を基盤にしており、量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源41、光子を4つの伝搬路にランダムに分岐する4分岐カップラー42、それぞれの光路の光子伝搬の有無を観測・記録する光子数非破壊測定装置43、相関光子パルス発生手段である、4組の偏波面コントローラー44、偏波を保持しつつ共通の光伝送路に結合する2組の偏波保持カップラーあるいは偏波ビームスプリッター45、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路46、偏波面スクランブラーまたは偏光子47により構成され、光伝送路48により受信器に接続される。
図5は本発明による量子暗号送信器の第5の実施形態の構成を示すブロック図である。
本実施形態の送信装置は特許文献3に示された量子暗号装置に含まれる送信器を基盤にしており、量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源51、光子を4つの伝搬路にランダムに分岐する4分岐カップラー52、それぞれの光路の光子伝搬の有無を観測・記録する光子数非破壊測定装置53、相関光子パルス発生手段である、4組の偏波面コントローラー54、偏波を保持しつつ共通の光伝送路に結合する2組の偏波保持カップラーあるいは偏波ビームスプリッター55、偏波コントローラー56、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路57、偏波コントローラー58、偏波選択素子59により構成され、光伝送路5Aにより受信器に接続される。
図6は本発明による量子暗号送信器の第6の実施形態の構成を示すブロック図である。
本実施形態の送信装置は特許文献3に示された量子暗号装置に含まれる送信器を基盤にしており、量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源61、偏波コントローラー62、非対称マッハツェンダー干渉系光回路63、光子を4つの伝搬路にランダムに分岐する4分岐カップラー64、それぞれの光路の光子伝搬の有無を観測・記録する光子数非破壊測定装置65、偏波選択素子66、4つの伝搬路を共通の伝搬路に結合する4合波光カップラー67により構成され、光伝送路68により受信器に接続される。
なお、光子数非破壊測定装置13,23,33,43,53,65のそれぞれは、各光路を伝搬する光子について非破壊測定を行うQND(Quantum Non Demolition)1〜4を備えている。
以下、図を参照しながら本発明の6つの実施形態の動作について順次説明する。
図1に示した本発明の第1の実施形態において、正規送信者は光源11により情報担体となる光子パルスを出射する。光子は4分岐カップラー12により4つの伝搬路にランダムに分岐される。それぞれの光路の光子パルス伝搬の有無が光子数非破壊測定装置13により観測・記録される。
光子は下流の2つの非対称マッハツェンダー干渉系14および15の4つの入力ポートの何れかに入射される。単一の非対称マッハツェンダー干渉系の2つの入力ポートに光子パルスを入射すると、入力ポートの選択に依存してπだけ相対位相の異なるコヒーレントな2連光子パルス(相対位相が明確に定義された2つの光子パルス)を出力ポート上に準備することができる。
mを整数、nを干渉系導波路の実効屈折率として、長短尺光路差が互いに(m+1/2)λ/2n異なる、すなわち一方の干渉系の長短尺光路差をΔLとすれば、他方の干渉系の長短尺光路差がΔL+(m+1/2)λ/2nである2組の干渉系14および15(これらは、長短尺光路の伝搬光位相差がπ/2異なる)の出力ポートを光カップラーで共通の光伝送路17に結合する。
干渉系14および15は、それぞれ光子入力ポートの4つの選択に依存して、0基底系:{0、π}およびπ/2基底系:{π/2、3π/2}で特徴づけられた相対位相をもつ、互いに相補的な基底系に属する2連光子パルスを光伝送路上に準備する。従って、光子数非破壊測定装置13により観測・記録された光子パルスの伝搬光路と光伝送路上に準備された非直交4状態は相関する。
4分岐カップラー12により光子パルスの伝搬光路は受動的かつランダムに選択されるので、乱数発生器無しに非直交4状態を用いる量子暗号に必要となる、相対位相が{0、π/2、π、3π/2}オフセットした4種のコヒーレント2連光子パルスからなる非直交光子パルス18をランダムに光伝送路17上に準備することが出来る。同時に光子数非破壊測定装置13の記録と照合することにより、準備された状態がどの状態であったかを知ることができる。
次に、図2に示した本発明の第2の実施形態の量子暗号送信器の動作について説明する。
正規送信者は光源21により情報担体となる光子パルスを出射する。光子は4分岐カップラー22により4つの伝搬路にランダムに分岐される。それぞれの光路の光子パルス伝搬の有無が光子数非破壊測定装置23により観測・記録される。
光子は下流の非対称マッハツェンダー干渉系24、1組の長尺および短尺光路を有する光導波路を光カップラーで結合した構造を持つ光遅延回路25の4つの入力ポートの何れかに入射される。
光子数非破壊測定装置23のQND1またはQND2に光子の伝搬が記録された場合、非対称マッハツェンダー干渉系24の2つの入力ポートに入射された光子パルスは、入力ポートの選択に依存してπだけ相対位相の異なるコヒーレントな2連光子パルス(相対位相が明確に定義された2つの光子パルス)となって出力ポート上に出力される。
一方、QND3またはQND4に光子の伝搬が記録された場合、光遅延回路25の2つの入力ポートに入射された光子パルスは、光遅延回路25の作用により該コヒーレント2連光子パルスと同一時間で出射時間が入力ポートの選択に依存して変調された光子パルスとなって出力ポート上に出力される。
非対称マッハツェンダー干渉系24と光遅延回路25の出力ポートは光カップラー26により共通の光伝送路27に結合され、その光子入力ポートの4つの選択に依存して、互いに相補的な基底系に属する光子パルスを光伝送路上に準備する。
従って、光子数非破壊測定装置23により観測・記録された光子パルスの伝搬光路と光伝送路上に準備された非直交4状態は相関する。4分岐カップラー22により光子パルスの伝搬光路は受動的かつランダムに選択されるので、乱数発生器無しに非直交4状態を用いる量子暗号に必要となる、互いに相補的な基底系に属する非直交光子パルス28をランダムに光伝送路27上に準備することが出来る。同時に光子数非破壊測定装置23の記録と照合することにより、準備された状態がどの状態であったかを知ることができる。
次に、図3に示した第3の実施形態の量子暗号送信器について説明する。
正規送信者は光源31により情報担体となる光子パルスを出射する。光子は4分岐カップラー32により4つの伝搬路にランダムに分岐される。それぞれの光路の光子パルス伝搬の有無が光子数非破壊測定装置33により観測・記録される。
光子は下流の長尺および短尺光路に光導波路が結合された非対称マッハツェンダー干渉系34の4つの入力ポートの何れかに入射される。光子数非破壊測定装置33のQND1またはQND2に光子の伝搬が記録された場合、対応する2つの入力ポートに入射された光子パルスは、入力ポートの選択に依存してπだけ相対位相の異なるコヒーレントな2連光子パルス(相対位相が明確に定義された2つの光子パルス)となって出力ポート上に出力される。
一方、QND3またはQND4に光子の伝搬が記録された場合、対応する2つの入力ポートに入射された光子パルスは、該コヒーレント2連光子パルスと同一時間で出射時間が入力ポートの選択に依存して変調された光子パルスとなって出力ポート上に出力される。
非対称マッハツェンダー干渉系34の出力ポートは光伝送路35に結合され、その光子入力ポートの4つの選択に依存して、互いに相補的な基底系に属する光子パルスを光伝送路上に準備する。従って、光子数非破壊測定装置33により観測・記録された光子パルスの伝搬光路と光伝送路上に準備された非直交4状態は相関する。
4分岐カップラー32により光子パルスの伝搬光路は受動的かつランダムに選択されるので、乱数発生器無しに非直交4状態を用いる量子暗号に必要となる、互いに相補的な基底系に属する非直交光子パルス36をランダムに光伝送路35上に準備することが出来る。同時に光子数非破壊測定装置33の記録と照合することにより、準備された状態がどの状態であったかを知ることができる。
次に、図4に示した第4の実施形態の量子暗号送信器について説明する。
正規送信者は光源41により情報担体となる光子パルスを出射する。光子は4分岐カップラー42により4つの伝搬路にランダムに分岐される。それぞれの光路の光子パルス伝搬の有無が光子数非破壊測定装置43により観測・記録される。
光子は下流の偏波面コントローラー44により、その偏波面がTE偏波またはTM偏波となるよう調整される。光子パルスは、偏波ビームスプリッター45を介して、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路46の2つの入力ポートのいずれかに入射される。
偏波ビームスプリッター45は、平面光回路を構成するシリカ導波路の複屈折特性を利用して、TE偏波光とTM偏波光に対して長短尺光路差が(m+1/2)λ/2n異なる(すなわち長短尺光路の伝搬光位相差が両偏波でπ/2異なる)ように(mは整数、nはPLC導波路の平均屈折率)、荒い温度調整によって制御される。
これにより、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路46の入力光子パルスの偏波面に依存して、0基底系:{0、π}およびπ/2基底系:{π/2、3π/2}で特徴づけられた相対位相をもつ、互いに相補的な基底系のいずれかに属するコヒーレントな2連光子パルスが光伝送路上に準備される(基底の選択)。同時に、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路46の入力ポートに依存してその相対位相はπだけ異なる(データの選択)。
この結果、偏波ビームスプリッター45および非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路46は、光子入力ポートの4つの選択に依存して、0基底系:{0、π}およびπ/2基底系:{π/2、3π/2}で特徴づけられた相対位相をもつ、互いに相補的な基底系に属する2連光子パルスを光伝送路上に準備する。
従って、光子数非破壊測定装置43により観測・記録された光子パルスの伝搬光路と光伝送路上に準備された非直交4状態は相関する。準備された2連光子パルスの偏波面と選択基底の間残る相関は、偏波面スクランブラーまたはTE/TMに対し45度傾いた直線偏波のみを透過する偏光子47を通過することによって消去され、光伝送路48に出力される。
4分岐カップラー42により光子パルスの伝搬光路は受動的かつランダムに選択されるので、乱数発生器無しに非直交4状態を用いる量子暗号に必要となる、相対位相が{0、π/2、π、3π/2}オフセットした4種のコヒーレント2連光パルスからなる非直交光子パルス49をランダムに光伝送路48上に準備することが出来る。同時に光子数非破壊測定装置43の記録と照合することにより、準備された状態がどの状態であったかを知ることができる。
次に、図5に示した第5の実施形態の量子暗号送信器について説明する。
正規送信者は光源51により情報担体となる光子パルスを出射する。光子は4分岐カップラー52により4つの伝搬路にランダムに分岐される。それぞれの光路の光子パルス伝搬の有無が光子数非破壊測定装置53により観測・記録される。
光子は下流の偏波面コントローラー54により、その偏波面がTE偏波またはTM偏波となるよう調整される。光子数非破壊測定装置53のQND1またはQND2を伝搬した光子パルスは、偏波保持カップラーあるいは偏波ビームスプリッター55を経由して、その偏波が斜め偏波(TE+TM、TE-TM)となるように偏波コントローラー56で調整された後、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路57の一方の入力ポートに入射される。
光子数非破壊測定装置53のQND3またはQND4を伝搬した光子パルスは、偏波保持カップラーあるいは偏波ビームスプリッター55を経由して、その偏波面を保持して非対称マッハツェンダー干渉系57の他方の入力ポートに入射される。
非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路57は、平面光回路を構成するシリカ導波路の複屈折特性を利用して、mを整数、nをPLC導波路の平均屈折率としたときに、TE偏波光とTM偏波光に対して長短尺光路差が(m+1/2)λ/n異なる(すなわち長短尺光路の伝搬光位相差が両偏波でπ異なる)ように、荒い温度調整によって制御される。
このとき、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路57の入力光子パルスの偏波がTE偏波あるいはTM偏波である場合には、その出力側ポートには入力偏波と同一偏波面を持つコヒーレント2連光パルスが出力される。
一方、入力光子パルスの偏波が互いに直交する斜め偏光状態(TE+TM、TE-TM)であった場合、TEおよびTM偏波の等重率の重ね合わせからなり、互いに直交する偏波を持つコヒーレント2連光パルスが順次出力される。
これらの2連パルスの一方のパルスのみを切り出すように、偏波コントローラー58および偏波選択素子59を調整する。これにより、偏波ビームスプリッター55から偏波選択素子59に至る光学系は、光子入力ポートの4つの選択に依存して、量子暗号鍵配布プロトコル実行に必要となる互いに相補的な基底系に属する、πだけ相対位相の異なるコヒーレントな2連光子パルス、または出射時間が入力ポートの選択に依存して変調された光子パルスを光伝送路上に準備する。
従って、光子数非破壊測定装置53により観測・記録された光子パルスの伝搬光路と光伝送路上に準備された非直交4状態は相関する。4分岐カップラー52により光子パルスの伝搬光路は受動的かつランダムに選択されるので、乱数発生器無しに非直交4状態を用いる量子暗号に必要となる、互いに相補的な基底系に属する非直交光子パルス5Bをランダムに光伝送路59上に準備することが出来る。同時に光子数非破壊測定装置53の記録と照合することにより、準備された状態がどの状態であったかを知ることができる。
最後に、図6に示した本発明の第6の実施形態の量子暗号送信器について説明する。
正規送信者は光源61により情報担体となる光子パルスを出射する。光子パルスはその偏波が導波路の固有光学軸のTE偏波およびTM偏波の線形結合である、斜め偏光状態(TE+TMまたはTE-TM)になるように偏波コントローラー62によりその偏波が調整され、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路63の入力ポートに入射される。
非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路63は、シリカ光導波路の複屈折特性を利用して、mを整数、nをPLC導波路の平均屈折率としたときに、その構成要素である長短尺光路の光路長差がTE偏波光とTM偏波光では(m+1/2)λ/n異なる(すなわち長短尺光路の伝搬光位相差が両偏波でπ異なる)ように、荒いデバイス温度調整によって制御される。
この結果、非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路63の出力ポートに出力される光子状態は、近似的に偏波モードと2連パルスの光子波束状態で張られる状態モード(Time-binモード)の、最大縺れ合い状態になる。このことを利用して、光子の偏波モードを適切に選択して特定の偏波成分をフィルタすることにより、それに一対一対応する任意のTime-bin状態を準備することが可能になる。
4分岐光カップラー64、光子数非破壊測定装置65、偏波選択素子66、4合波光カップラ67はこの目的に使用する、受動的偏波フィルタである。4組の偏波選択素子66はそれぞれ、出力パルス光の4種の非直交偏波状態(TE/TM/TE+TM/TE-TM)のうちひとつを選択して透過するように設定されている。
従って、光子伝搬光路に依存して、出力パルス光の対応する偏波成分が選択透過される。4合波光カップラ67は光子パルスが同一の偏波(例えばTE偏波)となるように偏波面を適切に変換した後、出力パルス光を光伝送路68上に出力する。
上記のような偏波面の変換は、4合波光カップラー67を構成する偏波保存光ファイバー端面を適切に軸回転して結合することにより可能である。あるいは、偏波コントローラーを用いることも可能である。それぞれの光路の光子パルス伝搬の有無は光子数非破壊測定装置65により観測・記録される。この受動的偏波フィルタの光子伝搬光路とフィルタされる偏波面には相関があるが故に、光子伝搬光路と生成されるTime-bin光子の間にも相関がある。
従って、光子数非破壊測定装置65により観測・記録された光子パルスの伝搬光路と光伝送路上に準備された非直交4状態は相関する。4分岐カップラー64により光子パルスの伝搬光路は受動的かつランダムに選択されるので、乱数発生器無しに非直交4状態を用いる量子暗号に必要となる、互いに相補的な基底系に属する非直交光子パルス69をランダムに光伝送路68上に準備することが出来る。同時に光子数非破壊測定装置65の記録と照合することにより、準備された状態がどの状態であったかを知ることができる。
以上の本発明の実施形態の共通の特徴は、次の通りである。
量子暗号装置の送信器からも真性乱数変調器および大がかりな記憶装置を排除できる。これに加えて従来技術の量子暗号受信器を用いると、量子暗号装置から真性乱数変調器および記憶装置を完全に排除できる。これによって、正規利用者の持つべき装置の構造が簡単化でき、システムサイズの肥大化、コスト増および発熱・消費電力増加等の問題を解決できる。従って、非特許文献2〜7に開示された従来技術の量子暗号装置に比べて、正規利用者の装置および装置運用の経済的技術的負担を大幅に軽減することができる。
なお、実施形態として、量子暗号を送信する部分についてのみ説明したが、本発明には、各実施形態の送信器と、量子暗号を受信する受信器を備えた量暗号装置も当然含まれる。
本発明による量子暗号送信器の第1の実施形態の構成を示す図。 本発明による量子暗号送信器の第2の実施形態の構成を示す図。 本発明による量子暗号送信器の第3の実施形態の構成を示す図。 本発明による量子暗号送信器の第4の実施形態の構成を示す図。 本発明による量子暗号送信器の第5の実施形態の構成を示す図。 本発明による量子暗号送信器の第6の実施形態の構成を示す図。 量子暗号装置の構成図。 量子暗号装置の構成図。 量子暗号装置の構成図。
符号の説明
11 光源
12 4分岐カップラー
13 光子数非破壊測定装置
14 非対称マッハツェンダー干渉系
15 非対称マッハツェンダー干渉系
16 光カップラー
17 光伝送路
18 非直交光子パルス
21 光源
22 4分岐カップラー
23 光子数非破壊測定装置
24 非対称マッハツェンダー干渉系
25 光遅延回路
26 光カップラー
27 光伝送路
28 非直交光子パルス
31 光源
32 4分岐カップラー
33 光子数非破壊測定装置
34 長尺および短尺光路に光導波路が結合された非対称マッハツェンダー干渉系
35 光伝送路
36 非直交光子パルス
41 光源
42 4分岐カップラー
43 光子数非破壊測定装置
44 偏波面コントローラー
45 偏波保持カップラーあるいは偏波ビームスプリッター
46 対称マッハツェンダー干渉系平面光回路
47 偏波面スクランブラーまたは偏光子
48 光伝送路
49 非直交光子パルス
51 光源
52 4分岐カップラー
53 光子数非破壊測定装置
54 偏波面コントローラー
55 偏波保持カップラーあるいは偏波ビームスプリッター
56 偏波コントローラー
57 非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路
58 偏波コントローラー
59 偏波選択素子
5A 光伝送路
5B 非直交光子パルス
61 光源
62 偏波コントローラー
63 非対称マッハツェンダー干渉系光回路
64 4分岐カップラー
65 光子数非破壊測定装置
66 偏波選択素子
67 4合波光カップラー
68 光伝送路
69 非直交光子パルス
71 微弱レーザ光源
72 非対称マッハツェンダー干渉系
73 光伝送路
74 非対称マッハツェンダー干渉系
75 光子検出器
76 位相変調器
77 位相変調器
78 コヒーレント2連光パルス
79 3連光パルス
81 微弱レーザ光源
82 非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路
83 光伝送路
84 非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路
85 光子検出器
86 位相変調器
87 位相変調器
88 位相変調器
89 コヒーレント2連光パルス
8A 3連光パルス
91 微弱レーザ光源
92 長尺および短尺光路を有する光導波路
93 非対称マッハツェンダー干渉系
94 光カップラー
95 光伝送路
96 長尺および短尺光路を有する光導波路
97 非対称マッハツェンダー干渉系
98 光カップラー
99 光子検出器
9A 非直交光パルス
9B 3連光パルス

Claims (8)

  1. 量子ビットの情報担体となる光子を発生する光源と、
    前記光源にて発生した光子を複数の伝搬路にランダムに分岐する分岐カップラーと、
    前記複数の伝搬路のそれぞれについて伝搬する光子の有無を非破壊にて検出する光子数非破壊測定装置と、
    複数の伝搬路のうちの光子が通過した伝搬路に依存して非直交4状態に準備された2連光子パルスを単一の伝送路に送出する光子パルス状態準備手段と、
    を有する量子暗号送信器。
  2. 請求項1記載の量子暗号送信器において、
    前記光子パルス状態準備手段が前記複数の伝搬路と単一の伝送路との間に設けられ、
    mを整数、nを干渉系導波路の実効屈折率として、長短尺光路差が互いに(m+1/2)λ/2n異なる、すなわち一方の干渉系の長短尺光路差をΔLとすれば、他方の干渉系の長短尺光路差がΔL+(m+1/2)λ/2nである2組の非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路を並列に接続した光学回路により構成される量子暗号送信器。
  3. 請求項1記載の量子暗号送信器において、
    前記光子パルス状態準備手段が前記複数の伝搬路と単一の伝送路との間に設けられ、
    平面光回路で構成された非対称マッハツェンダー干渉系、光学遅延回路、およびそれらを結合する光カップラーにより構成される量子暗号送信器。
  4. 請求項1記載の量子暗号送信器において、
    前記光子パルス状態準備手段が前記複数の伝搬路と単一の伝送路との間に設けられ、
    その具備する長尺および短尺光路に独立な伝搬路が結合された非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路により構成される量子暗号送信器。
  5. 請求項1記載の量子暗号送信器において、
    前記光子パルス状態準備手段が前記複数の伝搬路と単一の伝送路との間に設けられ、
    前記複数の伝搬路より出力される光子の偏波面をTE偏波またはTM偏波となるように調整する偏波面コントローラと、
    前記TE偏波光とTM偏波光を前記非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路の2つの入力ポートに結合する2組の偏波ビームスプリッターと、
    前記偏波ビームスプリッターの出力光路が結合され、TE偏波光に対する長短尺光路差とTM偏波光に対する長短尺光路差が(m+1/2)λ/2n異なるように制御された非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路により構成される量子暗号送信器。
  6. 請求項1記載の量子暗号送信器において、
    前記光子パルス状態変調手段が前記複数の伝搬路と単一の伝送路との間に設けられ、
    前記複数の伝搬路より出力される光子の偏波面をTE偏波またはTM偏波となるように調整する偏波コントローラと、
    前記偏波コントローラから出力されたTE偏波光とTM偏波光を一つの出力光路に結合する2組の偏波ビームスプリッターと、
    前記偏波ビームスプリッターの出力光路の出力光の偏波を斜め偏波(TE+TMまたはTE-TM)に変換する偏波コントローラと、
    前記偏波ビームスプリッターから出力されたTEおよびTM偏波光子ならびに前記偏波コントローラーから出力された斜め偏波光子を入力し、TE偏波光に対する長短尺光路差とTM偏波光に対する長短尺光路差が(m+1/2)λ/n異なるように制御された非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路と、
    前記非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路の出力ポートに接続され、その出力光の偏波面を制御する偏波面コントローラおよび特定偏波光のみを選択的に透過する偏波選択素子により構成される量子暗号送信器。
  7. 請求項1記載の量子暗号送信器において、
    前記光子パルス状態準備手段が前記複数の伝搬路と伝送路以前に設けられ、
    前記光源にて発生した光子の偏波を斜め偏光状態(TE+TMまたはTE-TM)になるように制御する偏波コントローラーと、
    前記偏波コントローラーから出力された斜め偏波光子を入力し、TE偏波光に対する長短尺光路差とTM偏波光に対する長短尺光路差が(m+1/2)λ/n異なるように制御された非対称マッハツェンダー干渉系平面光回路と、
    により構成され、かつ
    前記複数の伝搬路の下流に、非直交偏波状態(TE/TM/TE+TM/TE-TM)を選択して透過させる4種の偏波選択素子と、
    前記偏波選択素子出力を合波する光カップラーと、
    を有する量子暗号送信器。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の量子暗号送信器を備えた量子暗号装置。
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JP2015019272A (ja) * 2013-07-11 2015-01-29 三菱電機株式会社 量子暗号装置および量子暗号装置に用いられる送信信号光処理方法
CN112567651A (zh) * 2018-08-10 2021-03-26 诺基亚技术有限公司 基于光纤的通信

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